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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】缶成形装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/28 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
B21D22/28 L
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020123738
(22)【出願日】2020-07-20
(65)【公開番号】P2022020315
(43)【公開日】2022-02-01
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517311172
【氏名又は名称】株式会社G&P
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】花房 達也
(72)【発明者】
【氏名】矢口 直之
(72)【発明者】
【氏名】平松 英之
【審査官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-192510(JP,A)
【文献】特開昭64-087024(JP,A)
【文献】特開2019-051557(JP,A)
【文献】特開平10-085875(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0272410(US,A1)
【文献】特許第6456959(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/28、24/00、51/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びるラム軸と、
前記ラム軸の前端部に配置されるパンチと、
前記ラム軸の後端部に連結され、前記ラム軸を前記前後方向に往復直線移動させる往復直線運動機構と、
前記パンチが挿入される貫通孔を有するダイと、
前記ダイの前記貫通孔が開口する端面にカップ状体を押し付けるカップホルダースリーブを有するカップ押さえ機構と、
前記カップ押さえ機構を前記前後方向に揺動させるカップホルダー駆動機構と、を備え、
前記カップホルダー駆動機構は、カム構造を有し、前記カップ押さえ機構の直下に配置され
前記カップホルダー駆動機構は、
前記前後方向と直交する左右方向に延びる第1中心軸回りに回転させられるカムと、
前記カムと接触することで、前記第1中心軸と平行な第2中心軸回りに揺動させられる揺動部と、
前記ラム軸の前記左右方向の両側に配置され、前記揺動部とともに前記第2中心軸回りに揺動して前記カップ押さえ機構を前後動させる一対のアームと、を有する、
缶成形装置。
【請求項2】
前記往復直線運動機構の回転軸回りの回転駆動力を前記カップホルダー駆動機構に伝達するギアを備える、
請求項1に記載の缶成形装置。
【請求項3】
前記カップ押さえ機構は、
前記カップホルダースリーブと、
一対の前記アームに連結される一対のロッドと、
前記カップホルダースリーブと一対の前記ロッドとの間に設けられ、前記カップホルダースリーブをエア圧により前方へ付勢可能な付勢部と、を有する、
請求項1または2に記載の缶成形装置。
【請求項4】
前記ラム軸を前記前後方向に摺動自在に支持する軸受を備え、
前記カップホルダー駆動機構は、前記軸受の直下に配置される、
請求項1からのいずれか1項に記載の缶成形装置。
【請求項5】
前記ラム軸を前記前後方向に摺動自在に支持する軸受を備え、
前記軸受は、前記前後方向に互いに間隔をあけて一対設けられ、
一対の前記軸受は、一体に形成される、
請求項1からのいずれか1項に記載の缶成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有底筒状のDI(Drawing&Ironing)缶が知られている。DI缶は、アルミニウム合金製の円板状のブランクが、カッピング加工およびDI加工等を経ることにより製造される。カッピング加工では、ブランクを絞り加工してカップ状体とする。DI加工では、カップ状体をカップホルダーで押さえつつ、パンチとダイとの間で絞りしごき加工する。
【0003】
カップ状体にDI加工を施す缶成形装置として、例えば特許文献1、2に記載のものが知られている。缶成形装置は、前後方向に延びるラム軸と、ラム軸の前端部に配置されるパンチと、ラム軸の後端部に連結され、ラム軸を前後方向に往復直線移動させる往復直線運動機構と、パンチが挿入される貫通孔を有するダイと、ダイの貫通孔が開口する端面にカップ状体を押し付けるカップホルダースリーブを有するカップ押さえ機構(カップホルダー)と、カップ押さえ機構を前後方向に揺動させるカップホルダー駆動機構と、を備える。
【0004】
特許文献1は、ブランクホルダー駆動装置が、カップリング装置を介してカップ押さえ機構と連結される。
特許文献2は、サーボモータにより、カップ押さえ機構を前後方向に揺動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2018/0272410号明細書
【文献】特許第6456959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の缶成形装置において、カップホルダー駆動機構が、カム構造を有する場合がある。この場合、カップホルダー駆動機構は、前後方向と直交する左右方向において、カップ押さえ機構から離間して配置される。具体的に、このカップホルダー駆動機構は、左右方向に連設される複数のシャフト、これらのシャフト同士を繋ぐ継手部材、およびカップ押さえ機構を前後動させる一対のアーム等を介して、カップ押さえ機構と連結される。このため、シャフトと継手部材との接続部分にガタつきが生じたり、長いシャフトにねじれが生じたりする場合がある。すなわち、カップホルダー駆動機構からカップ押さえ機構に伝達される力にロスが生じたり、一対のアームに作用する負荷が不均等となって部品寿命に影響したりするおそれがある。
【0007】
本発明は、カップホルダー駆動機構からカップ押さえ機構に伝達される力のロスを小さく抑えることができ、部品寿命を延長できる缶成形装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の缶成形装置の一つの態様は、前後方向に延びるラム軸と、前記ラム軸の前端部に配置されるパンチと、前記ラム軸の後端部に連結され、前記ラム軸を前記前後方向に往復直線移動させる往復直線運動機構と、前記パンチが挿入される貫通孔を有するダイと、前記ダイの前記貫通孔が開口する端面にカップ状体を押し付けるカップホルダースリーブを有するカップ押さえ機構と、前記カップ押さえ機構を前記前後方向に揺動させるカップホルダー駆動機構と、を備え、前記カップホルダー駆動機構は、カム構造を有し、前記カップ押さえ機構の直下に配置され、前記カップホルダー駆動機構は、前記前後方向と直交する左右方向に延びる第1中心軸回りに回転させられるカムと、前記カムと接触することで、前記第1中心軸と平行な第2中心軸回りに揺動させられる揺動部と、前記ラム軸の前記左右方向の両側に配置され、前記揺動部とともに前記第2中心軸回りに揺動して前記カップ押さえ機構を前後動させる一対のアームと、を有する
【0009】
本発明の缶成形装置は、カップホルダー駆動機構がカム構造を有するので、ラム軸を前後動させる往復直線運動機構とカップホルダー駆動機構とを同期させることが容易である。そして、カップホルダー駆動機構がカップ押さえ機構(カップホルダー)の直下に配置されるので、これらの機構間の距離を短く抑えることができる。カップホルダー駆動機構とカップ押さえ機構とを連結するために、従来のように各機構間に複数のシャフトを連設したり継手部材等を用いる必要はなく、本発明によれば部品点数が削減されて、製造コストを低減できる。また、カップホルダー駆動機構とカップ押さえ機構とを連結する部材の寸法も小さく抑えられる。
【0010】
本発明によれば、カップホルダー駆動機構からカップ押さえ機構に伝達される力にロスが生じることを抑制できる。カップホルダー駆動機構を駆動させる動力を低減でき、エネルギーの削減になる。また、カップホルダー駆動機構とカップ押さえ機構とを連結する各部材に作用する負荷を均等化することが容易であり、各部材の部品寿命にばらつきが生じることを抑えて、その結果、部品寿命を延長できる。カップホルダー駆動機構によって前後動させられるカップ押さえ機構が、カップ状体を安定してダイの端面に押し付けるため、缶の成形精度が良好に維持される。缶成形装置の構造が簡素化され、外形をコンパクトに抑えることができる。
上記缶成形装置において、前記カップホルダー駆動機構は、前記前後方向と直交する左右方向に延びる第1中心軸回りに回転させられるカムと、前記カムと接触することで、前記第1中心軸と平行な第2中心軸回りに揺動させられる揺動部と、前記ラム軸の前記左右方向の両側に配置され、前記揺動部とともに前記第2中心軸回りに揺動して前記カップ押さえ機構を前後動させる一対のアームと、を有する。
この場合、カップホルダー駆動機構に入力された第1中心軸回りの回転が、カムおよび揺動部により第2中心軸回りの揺動に変換されて、一対のアームから出力される。一対のアームは、左右方向においてラム軸の両側に配置されており、カップ押さえ機構に対して均等に作用する。これにより、カップ押さえ機構がカップ状体を安定してダイの端面に押し付け、缶の成形精度が安定して確保される。
【0011】
上記缶成形装置は、前記往復直線運動機構の回転軸回りの回転駆動力を前記カップホルダー駆動機構に伝達するギアを備えることが好ましい。
【0012】
この場合、例えばベルト等を介して往復直線運動機構の回転駆動力をカップホルダー駆動機構に伝達する構成と比べて、動力の伝達ロスが少なく抑えられる。また、缶成形装置をよりコンパクトに構成できる。
【0015】
上記缶成形装置において、前記カップ押さえ機構は、前記カップホルダースリーブと、一対の前記アームに連結される一対のロッドと、前記カップホルダースリーブと一対の前記ロッドとの間に設けられ、前記カップホルダースリーブをエア圧により前方へ付勢可能な付勢部と、を有することが好ましい。
【0016】
この場合、カップ押さえ機構が、付勢部によりカップホルダースリーブをエア圧で前方付勢するので、カップホルダースリーブがカップ状体をダイの端面に押し付ける圧力(カップ押さえ圧)が、装置の稼働初期から安定する。また、例えば油圧によりカップホルダースリーブを前方付勢する場合と比べて、本発明の上記構成によれば、カップ押さえ圧の調整が容易である。
【0017】
上記缶成形装置は、前記ラム軸を前記前後方向に摺動自在に支持する軸受を備え、前記カップホルダー駆動機構は、前記軸受の直下に配置されることが好ましい。
【0018】
この場合、カップ押さえ機構および軸受と、カップホルダー駆動機構とが、上下方向に隣接して配置されるため、缶成形装置をよりコンパクトに構成できる。
【0019】
上記缶成形装置は、前記ラム軸を前記前後方向に摺動自在に支持する軸受を備え、前記軸受は、前記前後方向に互いに間隔をあけて一対設けられ、一対の前記軸受は、一体に形成されることが好ましい。
【0020】
この場合、一対の軸受つまり前軸受と後軸受との芯合わせが容易であり、組み立て時などにおける芯出し作業を省略または簡略化できる。ラム軸の直進性が良好に維持されるため、缶の成形精度が安定して確保される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一つの態様の缶成形装置によれば、カップホルダー駆動機構からカップ押さえ機構に伝達される力のロスを小さく抑えることができ、部品寿命を延長できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本実施形態の缶成形装置を模式的に示す概略図である。
図2図2は、缶成形装置の構成の一部を示す斜視図である。
図3図3は、缶成形装置のカップホルダー駆動機構、カップ押さえ機構および軸受ユニットを示す部分透過斜視図である。
図4図4(a)、(b)および(c)は、缶成形装置のカップホルダー駆動機構およびカップ押さえ機構の動作を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態の缶成形装置1について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の缶成形装置1は、ワークであるカップ状体WにDI加工を施してDI缶100とする、DI缶製造装置である。
【0024】
まず、DI缶100について説明する。
DI缶100は、有底筒状である。DI缶100は、飲料等の内容物が充填、密封される2ピース缶やボトル缶等の缶体に用いられる。2ピース缶の場合、缶体は、DI缶100と、DI缶100の開口端部に巻き締められる円板状の缶蓋と、を備える。ボトル缶の場合、缶体は、DI缶100にネッキング加工およびねじ加工等が施されたボトル缶本体と、ボトル缶本体の開口端部に螺着されるキャップと、を備える。
【0025】
DI缶100は、アルミニウム合金製等の板材から打ち抜いた円板状のブランクに、カッピング工程(絞り工程)およびDI工程(絞りしごき工程)を施すことにより、有底筒状に形成される。具体的にDI缶100は、例えば2ピース缶の場合、板材打ち抜き工程、カッピング工程、DI工程、トリミング工程、印刷工程、塗装工程、ネッキング工程およびフランジング工程をこの順に経て、製造される。
【0026】
DI缶100を製造する過程では、ブランクをカッピングプレスによって絞り加工(カッピング加工)し、カップ状体Wに成形する。つまりカップ状体Wは、上記カッピング工程において、ブランクからDI缶100へ移行する過程で作製される成形中間体である。カップ状体Wは、DI缶100よりも周壁の高さ(缶軸方向に沿う長さ)が小さく、直径が大きい有底筒状である。
【0027】
次に、缶成形装置1について説明する。
缶成形装置1は、上記DI工程に用いられるものであり、カップ状体WにDI加工、すなわち絞り(再絞り)しごき加工を施して、カップ状体Wよりも周壁の高さが大きく、直径が小さいDI缶100に成形する。また缶成形装置1は、上記DI工程において、DI缶100の缶底をドーム形状に成形する。
【0028】
缶成形装置1は、中心軸Oを中心として軸方向に延びるラム軸3と、パンチ2と、往復直線運動機構4と、軸受ユニット50と、パンチ2が挿入される貫通孔7を有するダイ8と、ダイ8の貫通孔7が開口する端面9にカップ状体Wを押し付けるカップホルダースリーブ31を有するカップ押さえ機構(カップホルダー)30と、カップホルダー駆動機構10と、ギア20と、パンチ2との間でDI缶100の缶底を挟み込みドーム状に成形するドーマー6と、を備える。
ラム軸3、パンチ2、軸受ユニット50、ダイ8の貫通孔7、カップホルダースリーブ31およびドーマー6の各中心軸Oは、互いに同軸に配置される。本実施形態では、これらの部材の共通軸である中心軸Oが、水平方向に延びる。
【0029】
また缶成形装置1は、ダイ8の端面9上にカップ状体Wを供給するカップフィーダー(図示省略)と、この端面9上にカップ状体Wを保持する受け座(図示省略)と、成形後のDI缶100を装置外部へ搬送する缶搬送機構(図示省略)と、パンチ2の先端面および外周面の少なくともいずれかに開口するエア吐出孔からエアを吐出し、パンチ2からDI缶100を離型させるエア吐出機構(図示省略)と、駆動モータ等の駆動源(図示省略)と、を備える。
【0030】
本実施形態では、中心軸Oが延びる方向(X軸方向)を、前後方向と呼ぶ。前後方向において、ダイ8と往復直線運動機構4とは、互いに異なる位置に配置される。前後方向のうち、往復直線運動機構4からダイ8へ向かう方向(-X側)を前側と呼び、ダイ8から往復直線運動機構4へ向かう方向(+X側)を後側と呼ぶ。前後方向は、軸方向と言い換えてもよい。この場合、前側は軸方向一方側であり、後側は軸方向他方側である。
鉛直方向(Z軸方向)を上下方向と呼ぶ。各図において、+Z側は上側であり、-Z側は下側である。
水平方向のうち前後方向と直交する方向、すなわち、前後方向および上下方向と直交する方向(Y軸方向)を、左右方向と呼ぶ。各図において、+Y側は右側であり、-Y側は左側である。
【0031】
ラム軸3は、前後方向に延びる軸状である。ラム軸3は、前後方向に摺動自在に軸受ユニット50に支持される。
パンチ2は、ラム軸3の前端部に配置される。パンチ2は、円筒状または円柱状であり、前後方向に延びる。
【0032】
往復直線運動機構4は、ラム軸連結部4aを有する。往復直線運動機構4は、図示しない駆動源から入力される回転軸C回りの回転駆動力を、前後方向への往復直線運動に変換して、ラム軸連結部4aに出力する。ラム軸連結部4aは、ラム軸3の後端部と連結される。すなわち、往復直線運動機構4は、ラム軸3の後端部に連結され、ラム軸3を前後方向に往復直線移動させる。
【0033】
軸受ユニット50は、前後方向において、往復直線運動機構4とダイ8との間に配置される。図2および図3に示すように、軸受ユニット50は、前後方向に延びる筒状である。軸受ユニット50は、ラム軸3を前後方向に摺動自在に支持する軸受5を備える。つまり缶成形装置1は、軸受5を備える。軸受5は、前後方向に互いに間隔をあけて一対設けられる。一対の軸受5は、軸受ユニット50に一体に形成される。一対の軸受5のうち、前側に位置する一方の軸受5は、前軸受5Fであり、後側に位置する他方の軸受5は、後軸受5Rである。前軸受5Fおよび後軸受5Rは、例えばハイドロスタティック軸受や静圧軸受等と呼ばれる流体軸受の構造を有する。
【0034】
図1に示すように、ダイ8は、前後方向に並んで複数設けられる。複数のダイ8はそれぞれ、ダイ8を前後方向に貫通する断面円形の貫通孔7を有する。複数のダイ8は、1つの再絞りダイ8Aと、この再絞りダイ8Aよりも前側に位置する複数のアイアニングダイ(しごきダイ)8Bと、を有する。特に図示しないが、各アイアニングダイ8Bの前側には、それぞれパイロットリングが配置される。パイロットリングが設けられることにより、成形時にDI缶100が各アイアニングダイ8Bを外れた(通過した)ときの衝撃でパンチ2が各アイアニングダイ8Bに接触することが抑制される。
また、成形時において再絞りダイ8Aおよび各アイアニングダイ8Bには、潤滑と冷却のためクーラント液が供給される。
【0035】
図2および図3に示すように、カップ押さえ機構30は、カップホルダースリーブ31と、カップホルダー駆動機構10の後述する一対のアーム15に連結される一対のロッド32と、カップホルダースリーブ31と一対のロッド32との間に設けられ、カップホルダースリーブ31をエア圧により前方へ付勢可能な付勢部33と、を有する。
【0036】
カップホルダースリーブ31は、前後方向に延びる円筒状である。図1に示すように、カップホルダースリーブ31内には、パンチ2およびラム軸3が前後方向に挿通される。カップホルダースリーブ31と、パンチ2およびラム軸3とは、前後方向に相対的にスライド移動可能である。カップホルダースリーブ31は、再絞りダイ8Aの後側を向く端面9に、カップ状体Wの底壁を押圧可能である。カップホルダースリーブ31は、ダイ8の端面9に配置されたカップ状体Wの内部に挿入され、カップ状体Wの底壁を端面9に押し付けて支持する。
【0037】
図1から図3に示すように、一対のロッド32は、ラム軸3を間に挟んでラム軸3の左右方向の両側に配置される。各ロッド32は、前後方向に延びる。本実施形態では一対のロッド32間に、軸受ユニット50のうち少なくとも前軸受5Fを含む前側部分が位置する。
【0038】
ロッド32は、ロッド本体32aと、コロ32bと、を有する。
ロッド本体32aは、軸状または筒状であり、前後方向に延びる。一対のロッド32のロッド本体32a同士は、互いに平行である。ロッド本体32aは、例えばボールスプラインやドライベアリング等により前後方向に摺動自在に支持される。
コロ32bは、ロッド本体32aから左右方向に突設される。コロ32bは、左右方向に延びるコロ軸回りに回転自在とされて、ロッド本体32aに支持される。コロ32bには、後述するアーム15が連結される。
【0039】
付勢部33は、略円筒状である。付勢部33内には、パンチ2およびラム軸3が前後方向に挿通される。付勢部33と、パンチ2およびラム軸3とは、前後方向に相対的にスライド移動可能である。
【0040】
図2および図3に示すように、付勢部33は、ロッド取付部33aと、カップホルダースリーブ取付部33bと、エアバッグ33cと、を有する。
ロッド取付部33aは、中心軸Oを中心とする円筒状の筐体である。ロッド取付部33aは、ロッド32に取り付けられる。ロッド取付部33aの後壁は、ロッド本体32aの前端部と固定される。
【0041】
カップホルダースリーブ取付部33bは、中心軸Oを中心とする円環板状である。カップホルダースリーブ取付部33bは、ロッド取付部33aの前側に配置される。カップホルダースリーブ取付部33bは、カップホルダースリーブ31の後端部に取り付けられる。カップホルダースリーブ取付部33bおよびカップホルダースリーブ31は、ロッド取付部33aに対して前後方向にスライド移動可能である。
【0042】
エアバッグ33cは、中心軸Oを中心とする円環状である。エアバッグ33cは、前後方向において、ロッド取付部33aの後壁とカップホルダースリーブ取付部33bとにより挟まれる。エアバッグ33cは、図示しないエア供給手段から供給されるエアを内部に保持可能である。エアバッグ33cは、例えばゴム製であり、弾性変形可能である。
【0043】
付勢部33は、前後動するロッド32によってロッド取付部33aが前側へ押されたときに、エアバッグ33cおよびカップホルダースリーブ取付部33bを介して、カップホルダースリーブ31を前側へ向けて付勢する。すなわち、付勢部33は、エアバッグ33cのエア圧および弾性復元力によって、カップホルダースリーブ31を前方付勢する。これによりカップ状体Wは、ダイ8の端面9に押し付けられ密着した状態で、カップホルダースリーブ31に保持される。
【0044】
図1に示すように、カップホルダー駆動機構10は、カップ押さえ機構30を前後方向に揺動させる。具体的に、カップホルダー駆動機構10は、図示しない駆動源から往復直線運動機構4およびギア20を介して伝達された回転駆動力を、前後方向への往復運動に変換してカップ押さえ機構30に伝えることにより、ラム軸連結部4aとは異なるストローク長で、カップ押さえ機構30を前後方向に往復直線移動させる。
【0045】
カップホルダー駆動機構10は、往復直線運動機構4と同期するカム構造を有する。カップホルダー駆動機構10は、カップ押さえ機構30の直下に配置される。具体的に、カップホルダー駆動機構10は、カップ押さえ機構30のうち少なくともロッド32の一部の下側に隣接配置される。上下方向から見て、カップ押さえ機構30とカップホルダー駆動機構10とは、互いに重なる。またカップホルダー駆動機構10は、軸受ユニット50の直下に配置される。つまりカップホルダー駆動機構10は、軸受5の直下に配置される。上下方向から見て、軸受5(軸受ユニット50)とカップホルダー駆動機構10とは、互いに重なる。
【0046】
図2および図3に示すように、カップホルダー駆動機構10は、左右方向に延びる第1中心軸J1を中心とするカムシャフト11と、カム12と、第1中心軸J1と平行な第2中心軸J2を中心とする揺動シャフト13と、揺動部14と、一対のアーム15と、を有する。
第1中心軸J1と第2中心軸J2とは、互いに離れて配置される。本実施形態では第2中心軸J2が、第1中心軸J1よりも前側かつ上側に位置する。第1中心軸J1が延びる軸方向および第2中心軸J2が延びる軸方向はそれぞれ、左右方向に相当する。
【0047】
以下の説明では、第1中心軸J1と直交する方向を、第1径方向と呼ぶ。第1径方向のうち、第1中心軸J1に近づく向きを第1径方向の内側と呼び、第1中心軸J1から離れる向きを第1径方向の外側と呼ぶ。
第1中心軸J1回りに周回する方向を第1周方向と呼ぶ。
【0048】
第2中心軸J2と直交する方向を、第2径方向と呼ぶ。第2径方向のうち、第2中心軸J2に近づく向きを第2径方向の内側と呼び、第2中心軸J2から離れる向きを第2径方向の外側と呼ぶ。
第2中心軸J2回りに周回する方向を第2周方向と呼ぶ。
【0049】
図2に示すように、カムシャフト11は、軸状または筒状であり、左右方向に延びる。特に図示しないが、カムシャフト11は、装置フレームに保持されるベアリングにより、第1周方向に回転自在に支持される。
【0050】
カム12は、カムシャフト11の外周部に固定される。カム12は、カムシャフト11とともに第1中心軸J1回りに回転させられる。図3に示すように、カム12は、第1中心軸J1と垂直な方向に拡がる板状である。カム12の第1径方向の外側を向く外周面は、第1周方向の各部において第1径方向の位置が互いに異なる。第1中心軸J1からカム12の外周面までの第1径方向の距離は、第1周方向へ向かうに従い徐々に変化する。
【0051】
カム12は、左右方向に互いに間隔をあけて一対設けられる。一対のカム12は、上下方向から見て、中心軸Oを間に挟んで中心軸Oの左右方向の両側に配置される。一対のカム12のうち、中心軸Oよりも右側(+Y側)に位置する一方のカム12は、前進用カム12Aであり、中心軸Oよりも左側(-Y側)に位置する他方のカム12は、後退用カム12Bである。前進用カム12Aと後退用カム12Bとは、第1中心軸J1回りの角度位置つまり位相が、互いに異なって配置される。前進用カム12Aと後退用カム12Bとは、互いに同一形状を有する共通品(同一部材)であることが好ましい。
【0052】
揺動シャフト13は、軸状または筒状であり、左右方向に延びる。揺動シャフト13は、図示しない装置フレームに保持されるベアリング19により、第2周方向に回転自在に支持される。
【0053】
揺動部14は、揺動シャフト13の外周部に固定される。図4(c)に示すように、揺動部14は、カム12と接触することで、揺動シャフト13とともに第2中心軸J2回りに揺動(回動)させられる。揺動部14は、揺動プレート14aと、カムフォロア25と、を有する。
【0054】
揺動プレート14aは、揺動シャフト13の外周部に取り付けられる。図2に示すように、揺動プレート14aは、第2中心軸J2と垂直な方向に拡がる板状である。揺動プレート14aは、上下方向から見て、中心軸Oと重なる。図4(c)に示すように、本実施形態では揺動プレート14aが、左右方向から見て略V字状である。揺動プレート14aは、第2周方向に互いに離れて配置される一対の突出部14bを有する。各突出部14bはそれぞれ、第2径方向の外側へ向けて突出する。
【0055】
図3に示すように、カムフォロア25は、揺動プレート14aから左右方向に突設される。カムフォロア25は、左右方向に延びるカムフォロア軸回りに回転自在とされて、揺動プレート14aに支持される。カムフォロア25の外周面は、カム12の外周面と接触する。
【0056】
カムフォロア25は、揺動プレート14aの右側(+Y側)を向く面と左側(-Y側)を向く面とに、一対設けられる。一対のカムフォロア25は、上下方向から見て、中心軸Oを間に挟んで中心軸Oの左右方向の両側に配置される。一対のカムフォロア25のうち、揺動プレート14aの右側を向く面に突設される一方のカムフォロア25は、前進用カムフォロア25Aであり、揺動プレート14aの左側を向く面に突設される他方のカムフォロア25は、後退用カムフォロア25Bである。
【0057】
図4(c)に示すように、前進用カムフォロア25Aと後退用カムフォロア25Bとは、第2周方向において、互いに異なる位置に配置される。前進用カムフォロア25Aは、一対の突出部14bのうち上側に位置する一方の突出部14bから、右側に突出する。後退用カムフォロア25Bは、一対の突出部14bのうち下側に位置する他方の突出部14bから、左側に突出する。具体的に、前進用カムフォロア25Aは、左右方向から見て、第1中心軸J1と第2中心軸J2とを通る図示しない仮想直線よりも上側に位置する。後退用カムフォロア25Bは、左右方向から見て、前記仮想直線よりも下側に位置する。
前進用カムフォロア25Aの外周面は、前進用カム12Aの外周面と接触する。後退用カムフォロア25Bの外周面は、後退用カム12Bの外周面と接触する。
【0058】
図2および図3に示すように、アーム15は、揺動シャフト13の外周部に固定される。アーム15は、第2中心軸J2と垂直な方向に拡がる板状である。アーム15は、揺動シャフト13から上側に突出する。アーム15は、上下方向に延びる。アーム15は、揺動シャフト13とともに第2中心軸J2回りに揺動(回動)させられる。
【0059】
一対のアーム15は、ラム軸3を間に挟んでラム軸3の左右方向の両側に配置される(図1参照)。一対のアーム15は、揺動部14を間に挟んで揺動部14の左右方向の両側に配置される。言い換えると、ラム軸3および揺動部14は、左右方向において、一対のアーム15間に位置する。一対のアーム15のうち右側に位置する一方のアーム15と揺動プレート14aとの間の左右方向の距離と、左側に位置する他方のアーム15と揺動プレート14aとの間の左右方向の距離とは、互いに同じである。つまり揺動部14は、左右方向において、一対のアーム15から等しい距離に配置される。
【0060】
図4(c)に示すように、アーム15の上端部は、コロ32bと連結される。具体的に、アーム15の上端部には、アーム15を左右方向に貫通しかつ上側に開口するU字状の凹部が形成されており、この凹部内にコロ32bが配置されて、前後方向から挟まれる。アーム15は、コロ32bを介してカップ押さえ機構30を前後方向に往復直線移動させる。すなわち、一対のアーム15は、揺動部14および揺動シャフト13とともに第2中心軸J2回りに揺動して、カップ押さえ機構30を前後動させる。
【0061】
具体的には、図4(a)から図4(c)に示すように、第1中心軸J1回りにカム12が回転すると、第1径方向における第1中心軸J1からカム12の外周面までの距離が第1周方向に沿って変化するのに応じて、カム12と接触するカムフォロア25の第2中心軸J2回りの位置が変化し、揺動部14、揺動シャフト13および一対のアーム15が、第2周方向に回動する。
【0062】
より詳しくは、図4(a)に示す状態から、前進用カム12Aが第1周方向に回転すると、前進用カム12Aと前進用カムフォロア25Aとの接触部分と、第1中心軸J1との間の第1径方向の距離が徐々に大きくなるのに応じて、前進用カムフォロア25Aが第2中心軸J2回りの所定方向(図4(a)における反時計回り)に回動し、これにともない揺動部14、揺動シャフト13および一対のアーム15が、第2中心軸J2回りの前記所定方向に回動する。
これにより、図4(b)、図4(c)に示す順に、一対のアーム15が各コロ32bを介して、カップ押さえ機構30を前側へ向けて前進移動させる。
【0063】
また、図4(c)に示す状態から、後退用カム12Bが第1周方向に回転すると、後退用カム12Bと後退用カムフォロア25Bとの接触部分と、第1中心軸J1との間の第1径方向の距離が徐々に大きくなるのに応じて、後退用カムフォロア25Bが第2中心軸J2回りの前記所定方向とは反対方向(図4(c)における時計回り)に回動し、これにともない揺動部14、揺動シャフト13および一対のアーム15が、第2中心軸J2回りの前記所定方向とは反対方向に回動する。
これにより、図4(a)に示すように、一対のアーム15が各コロ32bを介して、カップ押さえ機構30を後側へ向けて後退移動させる。
【0064】
図2および図3に示すように、本実施形態では、一対のアーム15がそれぞれ、カバー15aを有する。カバー15aは、アーム15の上端部に取り外し可能に設けられる。カバー15aは、アーム15の凹部およびコロ32bを左右方向から覆う。
【0065】
図2に示すように、ギア20は、往復直線運動機構4の回転軸C回りの回転駆動力をカップホルダー駆動機構10に伝達する。ギア20は、複数設けられる。複数のギア20は、往復直線運動機構4に取り付けられる第1ギア21と、カップホルダー駆動機構10に取り付けられる第2ギア22と、第1ギア21と第2ギア22とに噛み合う第3ギア23と、を有する。
【0066】
第1ギア21は、回転軸Cを中心とする円環板状である。第1ギア21は、往復直線運動機構4の回転軸C回りの回転駆動力を、往復直線運動機構4の外部に出力する。
第2ギア22は、回転軸Cと平行な第1中心軸J1を中心とする円環板状である。第2ギア22は、カムシャフト11の左右方向の端部(右端部)に固定される。
第1ギア21の歯数と第2ギア22の歯数とは、互いに同じである。これにより、往復直線運動機構4とカップホルダー駆動機構10とは、互いに同期して動作可能である。
【0067】
第3ギア23は、第1ギア21と第2ギア22との間に配置される。第3ギア23は、左右方向に延びる第3ギア軸(図示省略)を中心とする円環板状である。図示の例では、第3ギア23の外径が、第1ギア21および第2ギア22の各外径よりも小さい。第3ギア23の歯数は、第1ギア21および第2ギア22の各歯数よりも少ない。
【0068】
図1に示すように、ドーマー6は、DI缶100の缶底を成形する金型である。ドーマー6は、前後方向に延びる略円筒状である。パンチ2が前後方向の前進端位置に配置されたときに、ドーマー6は、前後方向においてパンチ2と対向する。
【0069】
本実施形態の缶成形装置1によるカップ状体WへのDI加工は、下記のように行われる。
まず、ワークであるカップ状体Wが、カップ軸(缶軸)を前後方向に延ばし、その開口を後側へ向けた姿勢で、パンチ2と再絞りダイ8Aとの間に配置される。カップ状体Wの底壁は、再絞りダイ8Aの端面9と対向する。
【0070】
このカップ状体Wに対して、カップ押さえ機構30のカップホルダースリーブ31、およびパンチ2が、前進移動させられる。そしてカップホルダースリーブ31が、再絞りダイ8Aの端面9にカップ状体Wの底壁を押し付けてカップ押し付け動作を行いつつ、パンチ2が、カップ状体Wを再絞りダイ8Aの貫通孔7内に押し込んでいくことにより、カップ状体Wに再絞り加工を施す。
【0071】
再絞り加工により、カップ状体Wは小径に成形され、かつカップ軸方向(つまり前後方向)の長さが大きくなる。さらにこのカップ状体Wをパンチ2で押し込んでいき、複数のアイアニングダイ8Bの各貫通孔7を順次通過させつつしごき加工を施す。すなわち、カップ状体Wの周壁をしごいて延伸させ、周壁高さを高くするとともに周壁の厚さを薄くして、有底筒状のDI缶100の形状に成形する。DI缶100は、周壁がしごかれることで冷間加工硬化され、強度が高められる。
【0072】
しごき加工が施されたDI缶100は、パンチ2によりダイ8の貫通孔7から前側へと押し出される。そしてDI缶100の底部(缶底となる部分)が、パンチ2とドーマー6との間で挟まれ押圧されることにより、DI缶100の底部が、ドーム形状に成形される。
【0073】
以上説明した本実施形態の缶成形装置1は、カップホルダー駆動機構10がカム構造を有するので、ラム軸3を前後動させる往復直線運動機構4とカップホルダー駆動機構10とを同期させることが容易である。そして、カップホルダー駆動機構10がカップ押さえ機構30の直下に配置されるので、これらの機構10,30間の距離を短く抑えることができる。カップホルダー駆動機構10とカップ押さえ機構30とを連結するために、従来のように各機構10,30間に複数のシャフトを連設したり継手部材等を用いる必要はなく、本実施形態によれば部品点数が削減されて、製造コストを低減できる。また、カップホルダー駆動機構10とカップ押さえ機構30とを連結する部材の寸法も小さく抑えられる。
【0074】
本実施形態によれば、カップホルダー駆動機構10からカップ押さえ機構30に伝達される力にロスが生じることを抑制できる。カップホルダー駆動機構10を駆動させる動力を低減でき、エネルギーの削減になる。また、カップホルダー駆動機構10とカップ押さえ機構30とを連結する各部材に作用する負荷を均等化することが容易であり、各部材の部品寿命にばらつきが生じることを抑えて、その結果、部品寿命を延長できる。カップホルダー駆動機構10によって前後動させられるカップ押さえ機構30が、カップ状体Wを安定してダイ8の端面9に押し付けるため、DI缶100の成形精度が良好に維持される。缶成形装置1の構造が簡素化され、外形をコンパクトに抑えることができる。
【0075】
また本実施形態では、缶成形装置1が、往復直線運動機構4の回転軸C回りの回転駆動力をカップホルダー駆動機構10に伝達するギア20を備える。
この場合、例えばベルト等を介して往復直線運動機構4の回転駆動力をカップホルダー駆動機構10に伝達する構成と比べて、動力の伝達ロスが少なく抑えられる。また、缶成形装置1をよりコンパクトに構成できる。
【0076】
また本実施形態では、カップホルダー駆動機構10に入力された第1中心軸J1回りの回転が、カム12および揺動部14等により第2中心軸J2回りの揺動に変換されて、一対のアーム15から出力される。一対のアーム15は、左右方向においてラム軸3の両側に配置されており、カップ押さえ機構30に対して均等に作用する。これにより、カップ押さえ機構30がカップ状体Wを安定してダイ8の端面9に押し付け、DI缶100の成形精度が安定して確保される。
【0077】
また本実施形態では、カップ押さえ機構30が、付勢部33によりカップホルダースリーブ31をエア圧および弾性復元力で前方付勢するので、カップホルダースリーブ31がカップ状体Wをダイ8の端面9に押し付ける圧力(カップ押さえ圧)が、装置の稼働初期から安定する。また本実施形態と異なり、例えば油圧によりカップホルダースリーブ31を前方付勢する場合と比べて、本実施形態によれば、カップ押さえ圧の調整が容易である。
【0078】
また本実施形態では、カップホルダー駆動機構10が、軸受5(軸受ユニット50)の直下に配置される。
この場合、カップ押さえ機構30および軸受5と、カップホルダー駆動機構10とが、上下方向に隣接して配置されるため、缶成形装置1をよりコンパクトに構成できる。
【0079】
また本実施形態では、軸受ユニット50の一対の軸受5が、一体に形成される。
この場合、一対の軸受5つまり前軸受5Fと後軸受5Rとの芯合わせが容易であり、組み立て時などにおける芯出し作業を省略または簡略化できる。ラム軸3の直進性が良好に維持されるため、DI缶100の成形精度が安定して確保される。
【0080】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0081】
カップホルダー駆動機構10が備えるカム構造は、前述の実施形態で説明した構成に限定されない。例えばカム12の形状、カムフォロア25の配置、カム12およびカムフォロア25の各数量、揺動部14の形状などが、前述の実施形態と異なっていてもよい。
【0082】
本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態および変形例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の缶成形装置によれば、カップホルダー駆動機構からカップ押さえ機構に伝達される力のロスを小さく抑えることができ、部品寿命を延長できる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0084】
1…缶成形装置、2…パンチ、3…ラム軸、4…往復直線運動機構、5…軸受、7…貫通孔、8…ダイ、9…端面、10…カップホルダー駆動機構、12…カム、14…揺動部、15…アーム、20…ギア、31…カップホルダースリーブ、32…ロッド、33…付勢部、C…回転軸、J1…第1中心軸、J2…第2中心軸、W…カップ状体
図1
図2
図3
図4