(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
A61B8/00
(21)【出願番号】P 2020138261
(22)【出願日】2020-08-18
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 英雄
(72)【発明者】
【氏名】豊田 晋伍
(72)【発明者】
【氏名】菊地 新一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤原 周太
(72)【発明者】
【氏名】桑名 勇治
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第209548000(CN,U)
【文献】特開2002-017452(JP,A)
【文献】特開2010-068858(JP,A)
【文献】特開平04-108433(JP,A)
【文献】特表2005-526567(JP,A)
【文献】特表2016-501097(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0342562(US,A1)
【文献】特開2011-167305(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0201927(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0028160(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0220564(US,A1)
【文献】国際公開第2013/145826(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0105660(US,A1)
【文献】特開2005-342056(JP,A)
【文献】特開2007-021088(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0224544(US,A1)
【文献】特開平05-253223(JP,A)
【文献】特開2016-067842(JP,A)
【文献】特開2001-224444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波画像を生成する装置本体と、
前記装置本体の操作を行うと共に前記超音波画像を表示する操作表示部と、
前記操作表示部の床面からの高さを、電動モードと手動モードの双方の動作モードで調整することができる昇降装置と、
を
備え、
前記昇降装置は、
前記操作表示部を載置する載置台と、
前記載置台を支持する支持アームと、
前記支持アームに連結され、前記電動モードと前記手動モードの双方において、前記支持アームの動きの禁止と禁止解除を行う昇降規制機構と、
を備える、
超音波診断装置。
【請求項2】
前記手動モードは、前記昇降装置を前記電動モードで上昇又は下降させているとき以外の動作モードである、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記装置本体を収納する本体ケース、をさらに備え、
前記昇降装置は、
前記本体ケースに取り付けられ、
前記支持アームを電動で動かすことにより前記載置台の前記高さを前記電動モードで調整するモータと、
前記支持アームを手動で動かすことにより前記載置台の前記高さを前記手動モードで調整するハンドルと、
をさらに備える、
請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記昇降規制機構は、
長さを変えることができ、前記支持アームの動きを禁止するときは長さ方向の動きをロックし、前記支持アームの動きの禁止解除を行うときは前記長さ方向の動きのロック解除をするガススプリングであって、前記ロックと前記ロック解除を切り替えるプッシュロッドが前記ガススプリングの一方の端部から露出するようにして設けられているガススプリングと、
前記プッシュロッドを前記ガススプリングの内部側に押し込むことで、前記ロック解除を行うロック解除部材と、
を有する、
請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記昇降装置は、前記本体ケースに取り付けられる基部を備え、
前記支持アームの一端は前記載置台に連結され、前記支持アームの他端は、前記基部に設けられた回転軸に軸支され、
前記支持アームが前記回転軸周りに回転することにより、前記操作表示部の床面からの高さが調整される、
請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記ガススプリングは、前記支持アームの回転量に応じて、その長さが変わるように前記支持アームに連結される、
請求項5に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記昇降装置は、前記プッシュロッドを前記ガススプリングの内部側に押し込む方向に前記ロック解除部材を移動させるソレノイド、
をさらに備え、
前記電動モードでは、前記ソレノイドの電磁力によって前記ロック解除部材を移動させて前記ガススプリングのロックを解除し、その後、前記モータの回転によって前記支持アームを順方向又は逆方向に回転させることで、前記操作表示部の高さを調整する、
請求項4乃至6のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記昇降装置は、前記ハンドルと前記ロック解除部材との間に張られるワイヤ、
をさらに備え、
前記手動モードでは、前記ハンドルに対する手動操作によって前記ワイヤを引っ張って前記ガススプリングのロックを解除し、その後、前記ハンドルを手動で動かすことで、前記操作表示部の高さを調整する、
請求項4乃至6のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波プローブに内蔵された振動素子から発生する超音波パルスや超音波連続波を被検体内に放射し、被検体組織の音響インピーダンスの差異によって生じる超音波反射を振動素子により電気信号に変換して、被検体内の情報を非侵襲的に収集するものである。超音波診断装置を用いた医療検査は、超音波プローブを体表に接触させる操作によって、被検体内部の断層画像や3次元画像などの医用画像を容易に生成し、収集することができるため、臓器の形態診断や機能診断に広く用いられている。
【0003】
通常、超音波診断装置は、生成した医用画像を表示する表示部と、超音波診断装置を操作する操作部とを有している。表示部は、例えば、ディスプレイパネル等を備えて構成され、操作部は、各種のスイッチ、トラックボール、タッチパネル等を備えて構成されている。以下では、表示部と操作部とを包括的に操作表示部と呼ぶ場合がある。
【0004】
超音波診断装置の多くは、操作表示部の高さを調整することが可能に構成されている。医師や超音波検査技師等のユーザは、被検体を検査するときの姿勢や、ユーザ自身の身長や座高に応じて、操作表示部の高さを、医用画像の見易い位置、或いは、操作し易い位置に調整することができる。
【0005】
操作表示部の高さ調整は、操作表示部が載置される昇降装置によって行われる。従来の超音波診断装置は、ユーザが手動で高さを調整する手動タイプの昇降装置を備えたものや、モータ駆動によって高さを調整する電動タイプの昇降装置を備えたものがある。
【0006】
手動タイプの昇降装置は、電動タイプの昇降装置に比べてユーザの操作負担が大きい。一方、電動タイプの昇降装置は、昇降装置に電源が供給されていない場合や、装置本体は動作可能であるにも関わらず昇降装置のモータ周りの電動機能だけが故障した場合などでは、操作表示部の高さを調整することができず、不便である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の1つは、超音波診断装置の操作表示部の高さを調整する昇降装置を、電動で昇降させる電動モードと、手動で昇降させる手動モードの双方の動作モードで容易に動作できるようにすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態の超音波診断装置は、超音波画像を生成する装置本体と、前記装置本体を収納する本体ケースと、前記装置本体の操作を行うと共に前記超音波画像を表示する操作表示部と、前記操作表示部を載置すると共に前記本体ケースに取り付けられ、前記操作表示部の床面からの高さを、電動モードと手動モードの双方の動作モードで調整することができる昇降装置と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る超音波診断装置の外観の一例を示す斜視図。
【
図2】超音波診断装置の移動時と運用時の外観を模式的に例示する側面図。
【
図3】操作表示部の高さ調整の様子を模式的に示す側面図。
【
図4】昇降装置の内部構造を模式的に示すと共にガススプリングの作用を説明する第1の図。
【
図6】本実施形態のガススプリングの作用を説明する第2の図。
【
図7】本実施形態のガススプリングの作用を説明する第3の図。
【
図8】支持アームの基部近傍の細部構成を拡大して示す図。
【
図9】手動によるロック解除のメカニズムを説明する図。
【
図10】電動によるロック解除のメカニズムを説明する図。
【
図11】電動モードによる操作表示部の昇降操作を説明する図。
【
図12】本実施形態の超音波診断装置の機能構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
(全体構成)
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置1の外観の一例を示す斜視図である。また、
図2は、超音波診断装置1の移動時(
図2(a))と、運用時(
図2(b))の外観を模式的に例示する側面図である。
図1及び
図2に示すように、超音波診断装置1は、装置本体20、昇降装置10、及び、操作表示部30を備えている。
【0013】
装置本体20は、超音波プローブで収集した超音波信号から超音波画像データを生成する。また、装置本体20は、生成した超音波画像データに基づく超音波画像をディスプレイ32に表示させたり、装置本体20の内部に保存したりする。
【0014】
装置本体20は、
図2に示すように本体ケース22に収納されている。本体ケース22は、例えば4つのキャスターを有しており、ユーザは、昇降装置10に設けられた移動ハンドルを把持しながら、超音波診断装置1を移動させることができる。
【0015】
昇降装置10は、操作表示部30と本体ケース22とを連結すると共に、後述するように、操作表示部30を、手動モードと電動モードの双方で昇降させることができるように支持する。
【0016】
操作表示部30は、ディスプレイ32と操作部34を具備する。ディスプレイ32は、前述したように、装置本体で生成された超音波画像データに基づいて、Bモード画像やカラードップラ画像等の各種の超音波画像を表示する。また、ディスプレイ32には、超音波画像や本装置の動作に関連する各種の情報やデータも表示される。ディスプレイ32は、例えば、液晶パネルや有機EL(Electro Luminescence)を備えて構成される。
【0017】
操作部34は、超音波診断装置1の各種の動作の設定やデータの入力を行うためのデバイスである。操作部34は、
図1に例示するように、例えば、スイッチパネルとタッチパネルとを備える。スイッチパネルには、トラックボールや各種のスイッチやダイアルが配置される。また、タッチパネルは、パネル面をユーザがタッチすることにより、パネル面の表示内容に応じた各種のデータや情報を入力できるように構成されている。
【0018】
非運用時等に超音波診断装置1が所定の収納場所に収納される場合や、ある検査場所から次の検査場所の移動される場合等では、通常、
図2(a)に示すように、ディスプレイ32は操作部34側に重なるように折りたたまれる。一方、運用時においては、
図2(b)に示すように、ディスプレイ32は、その表示画面がユーザ側に向くように展開される。
【0019】
なお、
図2(b)は、ディスプレイ32と操作部34を含めた操作表示部30の高さが、床面から最も低い状態を示しているが、本実施形態の超音波診断装置1では、医師や超音波検査技師等のユーザが被検体(例えば、患者)を検査するときの姿勢や、ユーザ自身の身長や座高に応じて、操作表示部30の高さを、医用画像の見易い位置、或いは、操作し易い位置に調整することができる。
図3は、本実施形態の超音波診断装置1が行う、操作表示部30の高さ調整の様子を模式的に示す側面図である。
【0020】
図3(a)は、操作表示部30の床面からの高さが最も低い状態(即ち、最低位の状態)を示しており、
図2(b)と同じ図である。この最低位の状態では、後述するように、昇降装置10の支持アーム100(
図4参照)が下方に傾斜することにより、例えば、支持アーム100が、マイナス40度下方に傾斜することにより、支持アーム100の先端に設けられている載置台102(
図4参照)が最も低い位置となる。この結果、載置台102に載っている操作表示部30も最も低い位置となる。
【0021】
図3(b)は、操作表示部30の床面からの高さが中程度の状態(即ち、中位の状態)を示している。この中位の状態では、昇降装置10の支持アーム100がほぼ水平となることにより、支持アーム100の先端に設けられている載置台102の高さが、
図3(a)に示す最下位の状態よりも高くなる。この結果、載置台102に載っている操作表示部30も持ち上げられ、中程度の高さとなる。
【0022】
一方、
図3(c)は、操作表示部30の床面からの高さが最も高い状態(即ち、最高位の状態)を示している。この最高位の状態では、昇降装置10の支持アーム100が上方に傾斜することにより、例えば、支持アーム100が、プラス40度上方に傾斜することにより、支持アーム100の先端に設けられている載置台102が最も高い位置となる。この結果、載置台102に載っている操作表示部30も最も高い位置となる。
【0023】
(昇降装置)
上述したように、本実施形態の超音波診断装置1における操作表示部30の高さ調整は、主に昇降装置10の動きによって行われる。以下、昇降装置10の構成、及び、動作について説明する。
【0024】
図4は、昇降装置10を側方から見た図であり、昇降装置10の内部構造を模式的に示す図である。また、
図5は、昇降装置10の内部構造、特に支持アーム100の内部構造を説明するための斜視図である。
【0025】
図4に示すように、昇降装置10は、基部107と、支持アーム100と、載置台102とを備えている。基部107の下方の端部は本体ケース22に固定され、基部107の上方の端部は支持アーム100と連結され、支持アーム100の一端を回転可能に保持する。基部107の上方には、支持アーム100を電動で駆動するためのモータ105が収納されている。
【0026】
支持アーム100の他端(基部107との連結部と反対側の端部)には、操作表示部30を載置するための載置台102が連結されている。載置台102のさらに先には、手動ハンドル12とロック解除レバー121が設けられている。手動ハンドル12は、例えば、操作表示部30の操作部34の底面に固定されている(
図1参照)。
【0027】
手動モードでは、ユーザが、手動ハンドル12を把持しつつ、ロック解除レバー121を動かして支持アーム100のロックを解除した状態で、手動ハンドル12を上下方向に動かすことにより、操作表示部30を昇降させることができる。
【0028】
また、載置台102の上部には、
図5に示すように、環状の回転台が設けられており、ユーザが手動ハンドル12を左右方向に動かすことにより、載置台102の上の環状の回転台に載置された操作表示部30を方位方向に回転させることができる。
【0029】
図4に示すように、支持アーム100は、平行リンク104と昇降規制機構101とを有している。平行リンク104は、支持アーム100の主たる構造部材であり、載置台102の上に載置された操作表示部30の重量を支えつつ、回転軸111(
図5参照)の周りに支持アーム100をエレベーション方向に回転させる。
【0030】
昇降規制機構101は、例えば、ガススプリング103とロック解除部材(例えば、ロック解除板106)とを少なくとも有して構成され、支持アーム100の動きを規制する。ガススプリング103やロック解除板106のより詳しい動作は後述する。
【0031】
図5に示すように、支持アーム100は、
図5において奥側の平行リンク104と手前側の平行リンク104の一対の平行リンク104を有している。そして、この一対の平行リンク104に挟まれるように、2本のガススプリング103が配置されている。
【0032】
ガススプリング103のモータ105側の端部の近傍には、ロック解除板106とソレノイド109が配設されている。ロック解除板106には、ワイヤ108の一方の端部が固定されている。ワイヤ108は、ロック解除板106から支持アーム100の内部を通り、さらに載置台102を経由してロック解除レバー121へ至っている。
【0033】
手動モードにおいて、ロック解除レバー121をユーザが動かすことにより、ワイヤ108が手動ハンドル12の方に引っ張られる。そして、ワイヤ108のこの動きに連動して、ワイヤ108の端部に固定されたロック解除板106が手動ハンドル12側に僅かに傾くことで、ガススプリング103のロックが解除される。ロック解除の状態で、ユーザが手動ハンドル12を上下に動かすことにより、支持アーム100が回転軸111周りに回転して、載置台102の上に置かれた操作表示部30を手動で動かすことができる。
【0034】
一方、電動モードにおいては、ソレノイド109の電磁力によりロック解除板106を、手動モードと同様に、手動ハンドル12側に傾かせる。この結果、ガススプリング103のロックが解除される。このロック解除の状態でモータ105を回転させると、モータ105の回転が、モータ軸のギアから駆動ギア110に伝搬される。駆動ギア110は、一方の端部がモータ軸のギアに歯合するように構成され、他方の端部は、平行リンク104の帯状の隙間に挿入されるリンクレバー112として構成されている。このような構成により、モータ105が回転すると、リンクレバー112が回転軸111周りに回転し、この動きに連動し、平行リンク104も回転軸111の周りに回転する。そして、支持アーム100が回転軸111周りに回転して、載置台102の上に置かれた操作表示部30を電動で動かすことができる。
【0035】
次に、本実施形態の超音波診断装置1で使用するガススプリング103の作用について、
図4、
図6、
図7を用いて説明する。これらの図に示すように、実施形態のガススプリング103は、円筒状のシリンダと、シリンダ内部に挿入される円盤状のピストン及びピストンに連結する棒状のピストンロッドとを有して構成されている。ガススプリング103は、その長さが支持アーム100の回転量に応じて変化するように支持アーム100に取り付けられてる。一方、
図4、
図6、
図7からわかるように、ピストンロッドの一部はシリンダから露出している。そして、支持アーム100の回転量に応じて支持アーム100の長さが変化するのに対応して、シリンダから露出するピストンロッドの長さも、L1(
図4)、L2(
図6)、L3(
図7)(ここで、L1<L2<L3である)のように、変化する。
【0036】
ガススプリング103の内部にはガスとオイルが充填されており、オイルが充填されている領域は、オリフィス(オイルが通過する穴)が形成されたピストンによって区分けされている。オリフィスを閉じることで、ピストンによって区分けされている領域間のオイルの流れが止まり、ピストンの動きは止められる。即ち、オリフィスを閉じることでガススプリング103はロックされ、ガススプリング103の長さは固定される。この結果、手動モードと電動モードのどちらの動作モードにおいても、支持アーム100が回転することなく固定され、操作表示部30の昇降が禁止される。
【0037】
一方、オリフィスを開くことによって、ピストンによって区切られた領域のオイルがオリフィスを通過でき、ピストンが動くことが可能となる。即ち、オリフィスを開くことによりガススプリング103のロックは解除され、ガススプリング103の長さが可変となる。この結果、手動モードと電動モードのどちらの動作モードにおいても、支持アーム100の回転が可能となり、操作表示部30の昇降も可能となる。
【0038】
ガススプリング103のもう1つの役割は、操作表示部30を持ち上げるときの力を補助することにある。補助する力は、ピストンによって圧縮されたガスの反力による。
図4に示すように、昇降装置10が最低位のときにピストンがシリンダに最も深く押し込まれ(即ち、ガススプリング103の長さが最も短くなり)、ガスの反力が最も大きくなる。したがって、ロック解除後において、操作表示部30を持ち上げる力を補助する力が最も大きくなる。昇降装置10が中位の状態(
図6)となり、さらに、最高位の状態(
図7)となるにつれて、ガススプリング103の長さは長くなり、シリンダ内の圧縮ガスの反力は小さくなっていくものの、ガスの反力はガススプリング103の長さが長くなる方向、即ち、載置台102の位置を高くする方向に働く。したがって、手動モードにおいては、操作表示部30を持ち上げるときのユーザの負担が軽減され、電動モードにおいては、操作表示部30を持ち上げるとこのモータ105の負荷が軽減される。
【0039】
次に、昇降装置10のロックとロック解除のメカニズムについて、
図8乃至
図10を用いて説明する。
図8は、支持アーム100の基部107近傍の細部構成を拡大して示す図である。
【0040】
図8の右図に示すように、ガススプリング103の基部107側の端部には、プッシュロッド116が突出している。プッシュロッド116は、前述したオリフィスを開閉する弁に連結されている。一方、プッシュロッド116に接触するようにロック解除板106が配置されている。ロック解除板106は、プッシュロッド116をガススプリング103の内部側に押し込むためのロック解除部材である。ロック解除部材の形状は必ずしも板状部材である必要はないが、以下では、ロック解除部材がロック解除板106であるものとして説明する。
【0041】
ロック解除板106の一方の端部は解除板支点114に支持され、解除板支点114との接点の周りに回転可能に構成されている。ロック解除板106の他方の端部には、ワイヤ108の端部が固定されている。
【0042】
一方、ロック解除板106のプッシュロッド116と接触する面と反対側の面には、ソレノイド109の構成の一部であるプッシュバー113が接触している。プッシュバー113は、ソレノイド109の電磁力によって伸縮できるように構成されている。
【0043】
図9は、手動によるロック解除のメカニズムを説明する図である。
図9(a)は、ロック状態を示す図であり、
図8の右図と同じ図である。ロック状態は、ガススプリング103のプッシュロッド116がガススプリング103の内部から突出した状態である。この状態では、ガススプリング103内部のオリフィスの弁が閉じるようになっている。この結果、ガススプリング103の長さが変化することなく固定され、支持アーム100の回転も固定された状態、即ち、ロックされた状態となる。
【0044】
一方、
図9(b)は、手動モードでのロック解除の動作を示す図である。前述したように、ワイヤ108は、ロック解除板106から支持アーム100の内部を通り、さらに載置台102を経由してロック解除レバー121へ至っている。ロック解除レバー121をユーザが動かすことにより、ワイヤ108が手動ハンドル12の方に引っ張られる。この動きに連動して、ワイヤ108の端部に固定されたロック解除板106が、解除板支点114との接触点の周りに、
図9において反時計方向に回転する。この結果、ロック解除板106に接しているプッシュロッド116が、ガススプリング103の内部側に押し込まれ、ロック解除状態となる。
【0045】
一方、
図10は、電動によるロック解除のメカニズムを説明する図である。
図10(a)は、ロック状態を示す図であり、
図8の右図と同じ図である。
図10(b)は、電動モードでのロック解除の動作を示す図である。電動モードでは、ソレノイド109をアクティブにする電気信号(以下、ソレノイドオン信号と言う)がソレノイド109に印加される。そして、ソレノイドオン信号の印加に応じて、ソレノイド109のプッシュバー113がソレノイド109の本体から押し出される。さらに、プッシュバー113の押し出しによって、ロック解除板106が、解除板支点114との接触点の周りに反時計方向に回転することになる。この結果、手動モードと同様に、ロック解除板106に接しているプッシュロッド116が、ガススプリング103の内部側に押し込まれ、ロック解除状態となる。電動モードでは、上記のようにしてロック解除状態にした後、モータ105の回転により支持アーム100を回転軸111周りに順方向又は逆方向に回転させることにより、操作表示部30を昇降させる。
【0046】
ソレノイドオン信号がオフとなると、プッシュバー113がソレノイド109の本体に引き込まれ、これにより、ロック解除板106に接しているプッシュロッド116が、ガススプリング103の内部から押し出されて、
図10(a)に示すロック状態に戻る。
【0047】
図11は、電動モードによる操作表示部30の昇降操作を説明する図である。電動モードによる操作表示部30の昇降を操作するためのスイッチ、即ち、電動昇降用スイッチは、例えば、操作部34の操作パネルの一部に設けられている。電動昇降用スイッチは、例えば、「UP]ポジション、中立ポジション、「DOWN」ポジションの3つのポジションを有する3ポジション型のシーソースイッチとして構成される。ユーザが電動昇降用スイッチを中立ポジションから「UP]ポジションに設定すると、ソレノイドオン信号がソレノイド109に印加されてロック状態が解除されると共に、モータ105の回転により操作表示部30が上昇する。その後、ユーザが電動昇降用スイッチを中立ポジションに戻すと、モータ105の回転が停止すると共に、ソレノイドオン信号がオフとなり、ロック状態に戻り、支持アーム100の動きが固定される。
【0048】
一方、ユーザが電動昇降用スイッチを中立ポジションから「DOWN]ポジションに設定すると、ソレノイドオン信号が再びソレノイド109に印加されてロック状態が解除されると共に、モータ105の逆方向の回転により操作表示部30が下降する。その後、ユーザが電動昇降用スイッチを再び中立ポジションに戻すと、モータ105の回転が停止すると共に、ソレノイドオン信号がオフとなり、ロック状態に戻り、支持アーム100の動きが固定される。
【0049】
電動昇降用スイッチを「UP]ポジション又は「DOWN]ポジションのどちらかのポジションに設定することで、動作モードを電動モードに設定することになり、モータ105の回転により、操作表示部30を電動で上昇又は下降させることができる。
【0050】
一方、電動昇降用スイッチを中立ポジションに設定しているとき、即ち、電動モードで上昇又は下降させているとき以外の動作モードが手動モードに相当する。電動昇降用スイッチを中立ポジションに設定しているときは、即ち、手動モードでは、ユーザが手動ハンドル12とロック解除レバー121を操作することにより、操作表示部30を手動で上昇又は下降させることができる。
【0051】
(全体機能ブロック)
図12は、本実施形態の超音波診断装置1の機能構成例を示すブロック図である。超音波診断装置1は、例えば、超音波プローブ300、昇降装置10、装置本体20、ディスプレイ32、及び、操作部34を有している。また、装置本体20は、例えば、送信回路201、ビームフォーマ202、走査制御回路203、信号処理回路204、画像処理回路205、及び、制御回路206を備えている。
【0052】
超音波プローブ300は、送信回路201で生成された超音波パルスを被検体に向けて送信すると共に、被検体からの反射波を受信する。ビームフォーマ202は、超音波プローブ300で受信された反射波に対して重みづけ加算処理等を行うことにより、受信ビームを形成する。また、ビームフォーマ202は、走査制御回路203からの制御信号によって受信ビームの方向を走査する。信号処理回路204は、ビーム形成処理された受信信号に対して、対数検波処理、相関処理、ドップラ処理等の信号処理を行う。画像処理回路205は、信号処理後の信号と走査角等の情報に基づいて、Bモード画像、ドップラモード画像、カラードップラモード画像等の画像を生成する。ディスプレイ32は生成された画像を表示する。操作部34は、トラックボールや電動昇降用スイッチなどの各種のスイッチを有する操作パネルとタッチパネル等を備えて構成される操作デバイスである。制御回路206は、操作部34から入力された操作情報やデータ等に基づいて、装置本体20の各部を制御するための制御信号を生成する。また、操作部34の電動昇降用スイッチに基づく信号は昇降装置10のモータ105やソレノイド109に伝送され、昇降装置10の電動モードの制御を行う。
【0053】
以上説明してきたように、各実施形態の超音波診断装置1によれば、超音波診断装置の操作表示部の高さを調整する昇降装置を、電動で昇降させる電動モードと、手動で昇降させる手動モードの双方の動作モードで容易に動作できる。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0055】
1 超音波診断装置
10 昇降装置
12 手動ハンドル
20 装置本体
22 本体ケース
30 操作表示部
32 ディスプレイ
34 操作部
100 支持アーム
102 載置台
103 ガススプリング
104 平行リンク
105 モータ
106 ロック解除板
108 ワイヤ
109 ソレノイド
110 駆動ギア
111 回転軸
113 プッシュバー
116 プッシュロッド
121 ロック解除レバー