(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】スクリーングリル
(51)【国際特許分類】
F21S 43/19 20180101AFI20240726BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20240726BHJP
F21S 43/15 20180101ALI20240726BHJP
F21S 43/14 20180101ALI20240726BHJP
F21S 43/145 20180101ALI20240726BHJP
F21S 43/50 20180101ALI20240726BHJP
F21S 45/10 20180101ALI20240726BHJP
F21S 45/50 20180101ALI20240726BHJP
F21V 19/00 20060101ALI20240726BHJP
F21W 103/00 20180101ALN20240726BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240726BHJP
F21Y 115/15 20160101ALN20240726BHJP
【FI】
F21S43/19
B60R11/02 C
F21S43/15
F21S43/14
F21S43/145
F21S43/50
F21S45/10
F21S45/50
F21V19/00 150
F21V19/00 170
F21W103:00
F21Y115:10
F21Y115:15
(21)【出願番号】P 2020140030
(22)【出願日】2020-08-21
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】504136889
【氏名又は名称】株式会社ファルテック
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 歩
(72)【発明者】
【氏名】宿里 龍司
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮
(72)【発明者】
【氏名】高野 洋一
(72)【発明者】
【氏名】千葉 道也
(72)【発明者】
【氏名】山口 和紀
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-033938(JP,A)
【文献】国際公開第2018/139202(WO,A1)
【文献】特開2019-033044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 43/19
B60R 11/02
F21S 43/15
F21S 43/14
F21S 43/145
F21S 43/50
F21S 45/10
F21S 45/50
F21V 19/00
F21W 103/00
F21Y 115/10
F21Y 115/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されると共に
車両外に向けて表示を行う
スクリーングリルであって、
単一または複数の発光素子と、
単一または複数の発光素子を三次元形状の表面に沿って支持する発光素子支持体と
を備え
、
前記発光素子支持体は、前後方向に沿った鉛直断面にて、前端に向かうに連れて前面が鉛直面に近づくように湾曲され、水平断面にて、中央から端部に向かうに連れて前面が左右方向に向くように湾曲されている
ことを特徴とする
スクリーングリル。
【請求項2】
複数の前記発光素子を備え、
複数の前記発光素子は、前記三次元形状の表面に沿って配列されている
ことを特徴とする請求項1記載の
スクリーングリル。
【請求項3】
前記発光素子支持体は、
前記発光素子が実装されると共に前記三次元形状の表面に沿った湾曲面を有する回路基板である
ことを特徴とする請求項2記載の
スクリーングリル。
【請求項4】
前記発光素子支持体は、
前記発光素子が取り付けられたテープ材が貼付されると共に前記三次元形状の表面に沿った湾曲面を有する支持基板である
ことを特徴とする請求項2記載の
スクリーングリル。
【請求項5】
単一の有機EL素子を前記発光素子として備えることを特徴とする請求項1記載の
スクリーングリル。
【請求項6】
前記発光素子の前方に配置されると共に透光性を有するアウタカバーを備え、
前記発光素子と前記アウタカバーとの間に緩衝空間が設けられている
ことを特徴とする請求項1~5いずれか一項に記載の
スクリーングリル。
【請求項7】
前記発光素子支持体と前記アウタカバーとの間に介挿される介挿部材を備え、
前記介挿部材は、前記アウタカバー側から見て、複数の前記発光素子が配置される表示領域の少なくとも一部を避けて配置される
ことを特徴とする請求項6記載の
スクリーングリル。
【請求項8】
前記表示領域は、前記アウタカバー側から見て上縁部、下縁部、左縁部及び右縁部を有する矩形状とされており、
前記介挿部材は、前記アウタカバー側から見て、前記表示領域の上縁部、下縁部、左縁部及び右縁部の少なくともいずれかと重なる左右対称形状とされている
ことを特徴とする請求項7記載の
スクリーングリル。
【請求項9】
前記アウタカバー側から見て前記表示領域を囲む枠形状とされていることを特徴とする請求項8記載の
スクリーングリル。
【請求項10】
前記アウタカバーに後方から接続されると共に前記アウタカバーとの間に前記発光素子が収容される閉空間を形成する背後部材を備えることを特徴とする請求項6~9いずれか一項に記載の
スクリーングリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体搭載表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、今後の自動運転車両の普及等を想定し、車両外の歩行者や他のドライバに向けて情報を表示する表示装置を車両等に対して設置することが提案されている。例えば、特許文献1には、自車外面表示装置を備えた運転支援システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般的なディスプレイは、平面的な表示面に情報を表示する。これに対して、一般的に車両の外表面は、車両の外観印象の向上等のために立体的な三次元形状とされている。このような三次元形状とされた車両の外表面に対して、平面状のディスプレイ等の表示装置を設置すると、特に表示装置に情報が表示されている場合に、ディスプレイが周囲との一体性を欠くこととなり、車両等の移動体の外観が外部の者に違和感を与える可能性が大きくなる。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、移動体に搭載されて移動体外に向けて表示を行う移動体搭載表示装置において、周囲との一体性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
第1の発明は、移動体に搭載されると共に移動体外に向けて表示を行う移動体搭載表示装置であって、単一または複数の発光素子と、単一または複数の発光素子を三次元形状の表面に沿って支持する発光素子支持体とを備えるという構成を採用する。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、複数の上記発光素子を備え、複数の上記発光素子は、上記三次元形状の表面に沿って配列されているという構成を採用する。
【0009】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記発光素子支持体が、上記発光素子が実装されると共に上記三次元形状の表面に沿った湾曲面を有する回路基板であるという構成を採用する。
【0010】
第4の発明は、上記第2の発明において、上記発光素子支持体が、上記発光素子が取り付けられたテープ材が貼付されると共に上記三次元形状の表面に沿った湾曲面を有する支持基板であるという構成を採用する。
【0011】
第5の発明は、上記第1の発明において、単一の有機EL素子を上記発光素子として備えるという構成を採用する。
【0012】
第6の発明は、上記第1~第5いずれかの発明において、上記発光素子の前方に配置されると共に透光性を有するアウタカバーを備え、上記発光素子と上記アウタカバーとの間に緩衝空間が設けられているという構成を採用する。
【0013】
第7の発明は、上記第6の発明において、上記発光素子支持体と上記アウタカバーとの間に介挿される介挿部材を備え、上記介挿部材が、上記アウタカバー側から見て、複数の上記発光素子が配置される表示領域の少なくとも一部を避けて配置されるという構成を採用する。
【0014】
第8の発明は、上記第7の発明において、上記表示領域が、上記アウタカバー側から見て上縁部、下縁部、左縁部及び右縁部を有する矩形状とされており、上記介挿部材が、上記アウタカバー側から見て、上記表示領域の上縁部、下縁部、左縁部及び右縁部の少なくともいずれかと重なる左右対称形状とされているという構成を採用する。
【0015】
第9の発明は、上記第8の発明において、上記介挿部材が、上記アウタカバー側から見て上記表示領域を囲む枠形状とされているという構成を採用する。
【0016】
第10の発明は、上記第6~第9いずれかの発明において、上記アウタカバーに後方から接続されると共に上記アウタカバーとの間に上記発光素子が収容される閉空間を形成する背後部材を備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、単一または複数の発光素子を備え、これらの発光素子が発光素子支持体によって三次元形状の表面に沿って支持されている。このため、単一または複数の発光素子によって形成される表示面が平面状でなく立体的な三次元形状となる。したがって、本発明によれば、三次元形状とされた移動体の表面に対して平面状の表示部が設置されることによって移動体外部の者が感じる外観上の違和感を低減させることが可能となる。よって、本発明によれば、移動体に搭載されて移動体外に向けて表示を行う移動体搭載表示装置において、周囲との一体性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態におけるスクリーングリルを備える車両の模式的な正面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態におけるスクリーングリルの分解斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態におけるスクリーングリルを車両前後方向沿った鉛直面で切断した断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態におけるスクリーングリルの水平断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態のスクリーングリルを車両前後方向沿った鉛直面で切断した断面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態におけるスクリーングリルの水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る移動体搭載表示装置の一実施形態について説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本第1実施形態のスクリーングリル1(移動体搭載表示装置)を備える車両20(移動体)の模式的な正面図である。
図1に示すように、車両20は、フロントガラスGの下方に配置された開閉可能なフードH、フードHの下方にて左右に離間して配置されたヘッドランプL、及びヘッドランプLの下方に配置されたフロントバンパB等を備えている。
【0021】
フードH、ヘッドランプL及びフロントバンパB等の車両パーツの表面は、搭載される車両20の種類に応じた複雑な立体的な形状とされている。例えば、フードHの上面は、本実施形態においては、車両前方に向かうに連れて下方に落ち込むように湾曲されている。ヘッドランプLの前面及びフロントバンパBの前面は、車幅方向にて車両20の端部に向かうに連れて後方に向かうように湾曲されている。
【0022】
なお、本実施形態において車両20に搭載される車両パーツは一例であり、車両20に対しては他の車両パーツが搭載可能である。また本実施形態における車両パーツの表面形状も一例であり、車両パーツの表面形状は平面ではない三次元形状にて変更可能である。ただし、全ての車両パーツの表面形状が三次元形状である必要は必ずしもない。複数の車両パーツのうち、少なくとも1つの表面形状は三次元形状とされている。
【0023】
本実施形態のスクリーングリル1は、車両20の外(移動体外)に向けてピクトグラムや文字等の表示を行う表示装置であり、
図1に示すように、これらのような三次元形状の表面を有する車両パーツに囲まれるように車両20の前部に配置されている。本実施形態においては、スクリーングリル1は、フードHの下方、フロントバンパBの上方、かつ、左右のヘッドランプLの間に配置されている。
【0024】
図2は、本実施形態のスクリーングリル1の分解斜視図である。
図3は、本実施形態のスクリーングリル1を車両前後方向沿った鉛直面で切断した断面図であり、
図1のA-A断面図である。
図4は、本実施形態のスクリーングリル1の水平断面図である。例えば、
図2及び
図3に示すように、本実施形態のスクリーングリル1は、インナ部材2(背後部材)と、表示部3と、ベゼル4と、アウタカバー5とを備えている。
【0025】
なお、以下の説明においては、表示部3によって情報を提示する先を前方と称し、表示部3によって情報を表示しない側を後方と称する。本実施形態では、インナ部材2と、表示部3と、ベゼル4と、アウタカバー5とが前後方向に配列されており、これらのうちインナ部材2が最も後方側に配置され、アウタカバー5が最も前方側に配置されている。
【0026】
インナ部材2は、表示部3、ベゼル4及びアウタカバー5を直接的あるいは間接的に支持する部材であり、表示部3、ベゼル4及びアウタカバー5の後方(背後)に配置されている。インナ部材2は、例えば黒色のABSによって形成されている。インナ部材2は、板状部2aと、板状部2aを上下左右方向から囲うように設けられたインナ縁部2bとを有している。
【0027】
板状部2aは、表示部3の後述する支持基板3aに対して前後方向に一定の隙間を空けて配置されており、表示部3を後方から覆う板状の部位である。この板状部2aは、
図3に示すように、車両前後方向に沿った断面にて、前端に向かうに連れて前面が鉛直面に近づくように湾曲されている。つまり、板状部2aは、上端付近では前面の法線が斜め上方を向き、下端付近では前面の法線が上端付近の法線よりも水平に近づくように、前面が湾曲されている。
【0028】
また、板状部2aは、
図4に示すように、水平断面にて、車両20の中央から端部に向かうに連れて前面が左右方向に向くように湾曲されている。つまり、板状部2aは、左右端付近では前面の法線が斜め側方を向き、中央付近では前面の法線が左右端付近の法線よりも前後方向と平行に近づくように、前面が湾曲されている。
【0029】
このように、本実施形態において、インナ部材2の板状部2aは、鉛直断面及び水平断面において湾曲された三次元形状とされている。このように前面が三次元形状とされたインナ部材2の板状部2aは、同様に三次元形状とされた表示部3の後述する支持基板3aに対して一定の隙間を空けて配置されている。なお、インナ部材2の板状部2aの表面は必ずしも三次元形状である必要はなく、平面であっても良い。
【0030】
また、このような板状部2aには、表示部3をねじ6(
図3参照)によって固定するための孔部2a1が複数設けられている。これらの孔部2a1に挿入されたねじ6が表示部3の後述する支持基板3aに設けられた螺合部3bに螺合されることで、インナ部材2に対して表示部3が固定される。また、インナ部材2のインナ縁部2bには、インナ部材2を車体に対して取り付けるための複数の取付部2cが設けられている。これらの取付部2cが車体に対して不図示のねじ等によって固定されることによって、本実施形態のスクリーングリル1が車体に対して固定される。
【0031】
また、インナ部材2のインナ縁部2bには、アウタカバー5を係止するための係止突起2dが設けられている。インナ部材2には、係止突起2dによってアウタカバー5が接続される。このようなインナ部材2は、アウタカバー5に後方から接続されると共にアウタカバー5との間にLED素子3dが収容される閉空間を形成する。
【0032】
表示部3は、不図示の制御装置の制御に基づいて文字やピクトグラムを表示する装置であり、支持基板3a(発光素子支持体)と、螺合部3bと、貼付シート3c(テープ材)と、LED(発光ダイオード)素子3d(発光素子)とを備えている。
【0033】
支持基板3aは、前面に貼付シート3cが貼付される板状の部位であり、貼付シート3cを介して、LED素子3dを支持する。この支持基板3aは、
図3に示すように、車両前後方向に沿った断面にて、前端に向かうに連れて前面が鉛直面に近づくように湾曲されている。つまり、支持基板3aは、上端付近では前面の法線が斜め上方を向き、下端付近では前面の法線が上端付近の法線よりも水平に近づくように、前面が湾曲されている。
【0034】
また、支持基板3aは、
図4に示すように、水平断面にて、車両20の中央から端部に向かうに連れて前面が左右方向に向くように湾曲されている。つまり、支持基板3aは、左右端付近では前面の法線が斜め側方を向き、中央付近では前面の法線が左右端付近の法線よりも前後方向と平行に近づくように、前面が湾曲されている。
【0035】
このように、本実施形態において、支持基板3aは、鉛直断面及び水平断面において湾曲された三次元形状とされている。このように前面が三次元形状とされた支持基板3aは、同様に三次元形状とされたアウタカバー5に対して一定の隙間を空けて配置されている。このような支持基板3aは、複数のLED素子3dを支持基板3aの前面に沿うように支持する。つまり、支持基板3aは、三次元形状の表面に沿って配列かつ支持する。
【0036】
螺合部3bは、支持基板3aの裏面から後方に向けて突出して設けられた筒状の部位であり、インナ部材2の板状部2aに設けられた孔部2a1に対応して複数設けられている。これらの螺合部3bには、
図3に示すように、ねじ6が螺合される。
【0037】
貼付シート3cは、表面側にLED素子3dが固定されており、裏面側が粘着面とされたシート材である。この貼付シート3cは、支持基板3aの前面に貼付されており、LED素子3dを支持基板3aに対して固定している。
【0038】
LED素子3dは、貼付シート3cを介して支持基板3aの前面に固定されており、前後左右方向に複数配列されている。これらのLED素子3dは、前方から見て、支持基板3aの中央部に設けられた表示領域R(
図2参照)に集めて配置されている。各々のLED素子3dには、LED素子3dに給電するための不図示のリード線が接続されている。これらのリード線は、表示領域Rから側方に引き延ばされ、例えば支持基板3aやインナ部材2の板状部2aに設けられた開口を介して外部に引き出され、制御装置に接続される。なお、リード線を通過させるための開口は、封止しておくことが好ましい。これらのLED素子3dが選択的に発光されることによって、表示領域Rに所望の文字やピクトグラムが表示される。
【0039】
なお、
図2に示すように、支持基板3aにおいて表示領域Rの周囲には、LED素子3dが配置されていない領域が環状に設けられており、このLED素子3dが設けられていない領域の背面に螺合部3bが設けられている。
【0040】
ここで、LED素子3dは、三次元形状とされた支持基板3aの前面に沿って配列されている。つまり、複数のLED素子3dは、三次元形状の表面に沿って配列されている。本実施形態においては、車両の前後方向に沿う断面において、フードHの上面から連続する湾曲面に沿うようにLED素子3dが配列されている。また、本実施形態においては、水平断面において、フロントバンパBの前面から連続する湾曲面に沿うようにLED素子3dが配列されている。このように、本実施形態においては、複数のLED素子3dは、周囲の車両パーツの表面から連続する三次元形状の曲面に沿うように配列されている。これにより、表示面が平面状でなく立体的な三次元形状となる。
【0041】
また、LED素子3dとアウタカバー5との間には、緩衝空間Kが設けられている。この緩衝空間Kは、車両20の走行振動によってLED素子3dとアウタカバー5とが相対移動した場合であっても、LED素子3dがアウタカバー5と接触することを防止する空間である。また、緩衝空間Kを設けることによって、LED素子3dが消灯している場合に、アウタカバー5の前方からLED素子3dが視認され難くすることが可能となる。
【0042】
ベゼル4は、
図2に示すように、中央に開口4aが設けられた環状の板部材であり、アウタカバー5側から見て表示領域Rを囲う枠形状とされている。このベゼル4は、表示部3とアウタカバー5との間に介挿されている介挿部材であり、例えば黒色のABSによって形成されている。ベゼル4の開口4aは、アウタカバー5の前方側から見て表示領域Rよりも僅かに小さな形状とされており、アウタカバー5の外側から発光するLED素子3dを視認可能としている。
【0043】
ベゼル4は、LED素子3dよりも僅かに前方に配置されており、LED素子3dに対して僅かに隙間を空けて配置されている。このベゼル4は、
図3に示すように、表示領域Rの端に配列されたLED素子3dに対して、前方から見て内縁部が僅かに重なるように配置されている。このようにベゼル4の開口4aを形成する内縁部が前方から見て僅かに端のLED素子3dに重なることによって、ベゼル4とLED素子3dとの間に隙間を設けても、表示領域Rの外側が外部から視認されることを防止できる。
【0044】
また、このようなベゼル4は、車両20の走行等によって表示部3がアウタカバー5に近づくことを規制するストッパとして機能する。このため、車両20が緊急停止したような場合であっても、ベゼル4が表示部3のアウタカバー5に接近することを防止し、LED素子3dがアウタカバー5に接触することや、LED素子3dとアウタカバー5までの距離が変化することを防止することができる。
【0045】
アウタカバー5は、表示部3(すなわちLED素子3d)の前方に配置された透明のカバー部材である。このアウタカバー5は、例えばPMMA等によって形成されている。このようなアウタカバー5は、透明板状部5aと、透明板状部5aを上下左右方向から囲うように設けられたアウタ縁部5bとを有している。
【0046】
透明板状部5aは、LED素子3dの前方に配置されており、表示部3を前方から覆う板状の部位である。この透明板状部5aは、
図3に示すように、車両前後方向に沿った断面にて、前端に向かうに連れて後面が鉛直面に近づくように湾曲されている。つまり、透明板状部5aは、上端付近では後面の法線が斜め下方を向き、下端付近では後面の法線が上端付近の法線よりも水平に近づくように、内面が湾曲されている。また、透明板状部5aは、上端付近では前面の法線が斜め上方を向き、下端付近では前面の法線が上端付近の法線よりも水平に近づくように、前面が湾曲されている。
【0047】
また、透明板状部5aは、
図4に示すように、水平断面にて、車両20の中央から端部に向かうに連れて後面が左右方向に向くように湾曲されている。つまり、透明板状部5aは、左右端付近では後面及び前面の法線が前後方向に対して傾斜され、中央付近では後面及び前面の法線が左右端付近の法線よりも前後方向と平行に近づくように、後面が湾曲されている。
【0048】
本実施形態においては、透明板状部5aは、前面と後面との間隔が常に一定となるように、前面と後面とが同一の曲率で湾曲された立体面とされている。このように、本実施形態において、アウタカバー5の透明板状部5aは、鉛直断面及び水平断面において湾曲された三次元形状とされている。
【0049】
このように前面が三次元形状とされたアウタカバー5の透明板状部5aは、同様に三次元形状とされた表示部3のLED素子3d(表示領域R)に対して一定の隙間を空けて配置されている。
【0050】
また、アウタカバー5のアウタ縁部5bには、アウタカバー5をインナ部材2に係止するための係止爪部5cが設けられている。アウタカバー5は、係止爪部5cがインナ部材2の係止突起2dに係止されることによってインナ部材2が接続される。なお、アウタ縁部5bとインナ縁部2bとの境界部分には、必要に応じてシーリングが施される。このようなシーリングによって、インナ部材2とアウタカバー5との間の閉空間が封止され、LED素子3dを空気中の水分等から守ることが可能となる。
【0051】
このような本実施形態のスクリーングリル1においては、LED素子3dが選択的に発光させられることによって、表示領域Rに文字やピクトグラムが表示される。このとき、本実施形態のスクリーングリル1においては、LED素子3dが、フードHの上面やフロントバンパBの前面に沿った三次元形状の表面に沿って配列かつ支持されているため、表示領域Rの表示された文字やピクトグラムが、同様に三次元形状の表面に沿って表示される。このため、表示された文字やピクトグラムが平面的となることを防止し、周囲の立体的な車両パーツの表面と文字やピクトグラムの一体性を高めることができる。
【0052】
以上のような本実施形態のスクリーングリル1は、車両20に搭載されると共に車両20外に向けて表示を行う。本実施形態のスクリーングリル1は、複数のLED素子3dと、複数のLED素子3dを三次元形状の表面に沿って配列かつ支持する支持基板3aとを備えている。
【0053】
このような本実施形態のスクリーングリル1によれば、複数のLED素子3dを備え、これらのLED素子3dが支持基板3aによって三次元形状の表面に沿って配列かつ支持されている。このため、複数のLED素子3dによって形成される表示面が平面状でなく立体的な三次元形状となる。したがって、本実施形態のスクリーングリル1によれば、三次元形状とされた車両20の表面に対して平面状の表示部3が設置されることによって車両外部の者が感じる外観上の違和感を低減させることが可能となる。よって、本実施形態のスクリーングリル1によれば、車両20に搭載されて車両外に向けて表示を行うスクリーングリル1において、周囲のパーツとの一体性を向上させることが可能となる。
【0054】
本実施形態のスクリーングリル1において支持基板3aは、LED素子3dが取り付けられた貼付シート3cが貼付されると共に三次元形状の表面に沿った湾曲面を有している。このため、支持基板3aの表面にLED素子3dを取り付けることによって、容易にLED素子3dを三次元形状の表面に沿って配列かつ支持することが可能となる。
【0055】
また、本実施形態のスクリーングリル1においては、LED素子3dの前方に配置されると共に透光性を有するアウタカバー5を備え、LED素子3dとアウタカバー5との間に緩衝空間Kが設けられている。このため、車両20の走行振動等によってLED素子3dとアウタカバー5とが相対移動した場合であっても、LED素子3dがアウタカバー5と接触することを防止することができる。また、緩衝空間Kを設けることによって、LED素子3dが消灯している場合に、アウタカバー5の前方からLED素子3dが視認され難くすることが可能となる。
【0056】
また、本実施形態のスクリーングリル1においては、支持基板3aとアウタカバー5との間に介挿されるベゼル4を備え、ベゼル4が、アウタカバー5側から見て、複数のLED素子3dが配置される表示領域Rの少なくとも一部を避けて配置される。このようなベゼル4によれば、車両20の走行等によって表示部3がアウタカバー5に近づくことを規制するストッパとして機能する。このため、車両20が緊急停止したような場合であっても、ベゼル4が表示部3のアウタカバー5への接近を防止し、LED素子3dがアウタカバー5に接触することや、LED素子3dとアウタカバー5までの距離が変化することを防止することができる。
【0057】
また、本実施形態のスクリーングリル1においてベゼル4は、アウタカバー5側から見て表示領域Rを囲む枠形状とされている。このため、ベゼル4によって、LED素子3dが配置された領域の上下左右方向を隠すことができ、LED素子3dに接続されるリード線等を隠すことができる。したがって、本実施形態のスクリーングリル1は、ベゼル4を備えることによって、スクリーングリル1の外観印象を向上させることが可能となる。
【0058】
また、本実施形態のスクリーングリル1においては、アウタカバー5に後方から接続されると共にアウタカバー5との間にLED素子3dが収容される閉空間を形成するインナ部材2を備えている。このため、インナ部材2とアウタカバー5との間の空間に外部の水分等が侵入することを抑止し、LED素子3dを水分等から保護することが可能となる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0060】
図5は、本実施形態のスクリーングリル1Aを車両前後方向沿った鉛直面で切断した断面図である。この図に示すように、本実施形態のスクリーングリル1Aにおいては、表示部3が、支持基板3a及び貼付シート3cを備えておらず、回路基板3e(発光素子支持体)を備えている。
【0061】
回路基板3eは、LED素子3dが前面側に実装される配線基板であり、実装されたLED素子3dを支持する。この回路基板3eは、
図5に示すように、車両前後方向に沿った断面にて、後端に向かうに連れて前面が鉛直面に近づくように湾曲されている。つまり、回路基板3eは、上端付近では前面の法線が斜め上方を向き、下端付近では前面の法線が上端付近の法線よりも水平に近づくように、前面が湾曲されている。
【0062】
図6は、本実施形態のスクリーングリル1Aの水平断面図である。この図に示すように、回路基板3eは、水平断面にて、車両20の中央から端部に向かうに連れて前面が左右方向に向くように湾曲されている。つまり、回路基板3eは、左右端付近では前面の法線が斜め側方を向き、中央付近では前面の法線が左右端付近の法線よりも前後方向と平行に近づくように、前面が湾曲されている。
【0063】
このように、本実施形態において、回路基板3eは、鉛直断面及び水平断面において湾曲された三次元形状とされている。このように前面が三次元形状とされた回路基板3eは、同様に三次元形状とされたアウタカバー5に対して一定の隙間を空けて配置されている。このような回路基板3eは、複数のLED素子3dを回路基板3eの前面に沿うように支持する。つまり、回路基板3eは、三次元形状の表面に沿って配列かつ支持する。
【0064】
以上のような本実施形態のスクリーングリル1Aにおいて回路基板3eは、LED素子3dが実装される前面が三次元形状とされている。このため、回路基板3eの表面にLED素子3dを実装することによって、容易にLED素子3dを三次元形状の表面に沿って配列かつ支持することが可能となる。
【0065】
また、回路基板3eにLED素子3dを実装することによって、回路基板3eを通じてLED素子3dに通電することができ、LED素子3dの各々に接続されるリード線をスクリーングリル1Aの外部まで引き出す必要がなくなる。すなわち、回路基板本体に通電するためのリード線及び信号を送る信号線を除き、スクリーングリル1Aの外部に引き出される線がなくなり、スクリーングリル1Aの外部に引き出される線を大幅に減らすことができる。また、回路基板3eに制御チップを実装することによって、回路基板3eに実装した制御チップによって各々のLED素子3dの点灯制御を行うことが可能となる。
【0066】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0067】
例えば、上記実施形態においては、発光素子としてLED素子3dを備える構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、発光素子として、三次元形状を有する単数の面発光の有機EL(エレクトロルミネセンス)素子等を用いることも可能である。この場合、簡易な構成で発光素子を構成することができる。
【0068】
また、上記実施形態においては、LED素子3dが湾曲面に沿って配列かつ支持された構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、段差部や屈曲部が設けられた三次元形状の面に沿って発光素子を配列かつ支持する構成を採用することも可能である。
【0069】
また、上記実施形態においては、ベゼル4が環状の板部材である構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。車両前方から見て、ベゼル4は表示領域Rの上縁部、下縁部、左縁部及び右縁部の少なくとも1つに重なる左右対称とすることもできる。例えば、ベゼル4の形状を上縁部のみに重なる形状、下縁部のみに重なる形状、左右両辺のみに重なる形状、上縁部及び下縁部のいずれかと左右両辺に重なる形状とする。このような場合に、表示部3がアウタカバー5に近づくことを規制するストッパとしてベゼル4が機能する。また、ベゼル4によって、表示領域Rの外側が外部から視認されることを防止できる。なお、表示領域Rの上縁部、下縁部、左縁部、右縁部の少なくとも1つと重なっていればストッパとして機能するが、車両の美観上車両前方から見て左右対称であることが好ましい。
【0070】
また、上記実施形態においては、本発明の移動体搭載表示装置がスクリーングリル1Aとして車両20の前部に搭載される構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、移動体搭載表示装置を車両20の側部、後部、上部に設置することも可能である。
【0071】
また、上記実施形態においては、本発明の移動体搭載装置が搭載される移動体が車両20である構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ドローンや飛行船等の空中移動体に本発明の移動体搭載装置を搭載することも可能である。
【0072】
また、上記実施形態においては、アウタカバー5を備える構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、発光素子が耐候性を有する場合には、アウタカバー5を備えない構成を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0073】
1……スクリーングリル、1A……スクリーングリル、2……インナ部材(背後部材)、2a……板状部、3……表示部、3a……支持基板(発光素子支持体)、3b……螺合部、3c……貼付シート、3d……LED素子(発光素子)、3e……回路基板(発光素子支持体)、4……ベゼル(介挿部材)、5……アウタカバー、20……車両(移動体)、B……フロントバンパ、H……フード、K……緩衝空間、R……表示領域