(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】玩具ピアノのアクション構造
(51)【国際特許分類】
A63H 5/00 20060101AFI20240726BHJP
G10C 3/18 20060101ALI20240726BHJP
G10D 13/08 20200101ALI20240726BHJP
G10D 13/09 20200101ALI20240726BHJP
【FI】
A63H5/00 R
G10C3/18
G10D13/08 130
G10D13/09
(21)【出願番号】P 2020143167
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001410
【氏名又は名称】株式会社河合楽器製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095566
【氏名又は名称】高橋 友雄
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(72)【発明者】
【氏名】高橋 文隆
【審査官】柳 重幸
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-045318(JP,A)
【文献】特開平08-314441(JP,A)
【文献】実開平04-057896(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 5/00
G10C 3/18
G10D 13/08
13/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びかつ長さ方向の中央付近を支点として揺動自在に構成された鍵の押鍵に伴って回動するハンマーを備えた玩具ピアノのアクション構造であって、
前記鍵の後端部に設けられ、左右方向に所定長さ延びかつ横断面が円形の支軸と、
前記ハンマーに凹状に設けられ、前記支軸の外周面に摺接した状態で係合する係合受け部と、
前記ハンマーに設けられ、前記支軸を前記係合受け部側に付勢した状態で、当該支軸の外周面に摺接し、前記係合受け部と協働して前記支軸を支持する付勢支持部と、
を備え、
前記鍵の押鍵時に、当該鍵が前下がりに揺動するのに伴い、当該鍵の後端部とともに前記支軸が上昇することにより、前記ハンマーが前記支軸を中心として回動する
ように構成されており、
前記ハンマーに設けられ、前記支軸の横断面の直径よりも大きい寸法を有しかつ前記支軸を前記係合受け部に係合させるための取付け開口部を、さらに備え、
前記付勢支持部は、前記取付け開口部の縁部から前記係合受け部に向かって延び、前記ハンマーの前記鍵への取付け時において、前記支軸が前記取付け開口部から前記係合受け部に移動する際に、当該支軸で押圧されることで次第に大きく撓み、当該支軸が前記係合受け部に係合したときに、前記撓みに基づく復元力によって前記支軸を付勢するように構成されていることを特徴とする玩具ピアノのアクション構造。
【請求項2】
前記ハンマーに設けられ、前記係合受け部よりも前方に位置する当接部と、
前記玩具ピアノ内に不動に設けられ、前記当接部が下方から当接する不動部と、
をさらに備え、
前記ハンマーは、前記鍵の押鍵時に、前記支軸を中心として回動しながら、前記当接部を支点として回動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の玩具ピアノのアクション構造。
【請求項3】
前記玩具ピアノ内には、前記鍵に応じ、所定の音を発するための発音体が設けられ、
前記ハンマーには、前記係合受け部よりも後方又は下方に位置するハンマー本体部が設けられており、
押鍵時に、前記ハンマーが回動し、前記ハンマー本体部が前記発音体に衝突することにより発音することを特徴とする請求項1
又は2に記載の玩具ピアノのアクション構造。
【請求項4】
前記係合受け部は、円弧状の曲面を有しており、当該曲面の曲率半径が前記支軸の横断面の半径よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項1から
3のいずれかに記載の玩具ピアノのアクション構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玩具ピアノのアクション構造に関し、特に押鍵に連動して回動するハンマーの回動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の玩具ピアノのアクション構造として、例えば本出願人がすでに出願した特許文献1に開示されたものが知られている。この玩具ピアノは、グランド型のものであり、所定の外形を有する木製のケースと、このケースの前部に設けられた鍵盤と、この鍵盤が操作されることによって音を発する発音装置とを備えている。鍵盤は、各々が前後方向に延びるとともに長さ方向の中央付近を支点として揺動自在に構成された複数の鍵で構成されている。発音装置は、鍵ごとに設けられた複数のハンマー及び発音体を備えており、押鍵に伴って動作するアクション構造としてのハンマーが、鍵の後部に回動自在に連結され、対応する発音体を下方から打つことで音を発するようになっている。
【0003】
上記のハンマーには、前端部の突出爪の後ろ側に、水平に突出する左右2つの支軸が設けられる一方、鍵には、ハンマーの両支軸がそれぞれ係合し、いずれも貫通孔から成る2つの軸孔が設けられている。押鍵時に、鍵が前下がりに揺動することにより、ハンマーの両支軸が鍵の両軸孔を介して引き上げられる。そして、ハンマーの前端部の突出爪がストッパに下方から当接することで、上方への移動が阻止され、それにより、ハンマーの後端部のハンマー本体が上昇するように回動し、そのハンマー本体が発音体に下方から衝突して、これを打つ。これにより、押鍵された鍵に対応する音が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の玩具ピアノでは、鍵及びハンマーはいずれも合成樹脂の成形品から成り、ハンマーの両支軸がそれぞれ、鍵の両軸孔に直接、挿入されている。このような鍵とハンマーの連結構造において、押鍵時にハンマーを円滑に回動させるためには、鍵の軸孔の径をハンマーの支軸のそれよりも若干大きくする必要がある。つまり、ハンマーは、両支軸が鍵の両軸孔に遊挿された状態で、鍵に連結される。
【0006】
しかし、この場合、ハンマーの回動中に、ハンマーの支軸が鍵の軸孔に対してがたつき、それによる騒音が発生するおそれがある。加えて、ハンマーのハンマー本体が上方に回動し、発音体に衝突したときや、その後、ハンマー本体が下方に回動し、元の位置に戻ってクッションに載置されるときに、小さなバウンドが生じやすい。そのようなバウンドが生じると、それによる振動や騒音が発生してしまう。したがって、上記の従来の玩具ピアノのアクション構造には、改善の余地がある。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、押鍵に伴うハンマーの円滑な回動を確保しながら、回動するハンマーのがたつきやバウンドを抑制するとともに、それらによる振動及び騒音の発生を防止することができる玩具ピアノのアクション構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、前後方向に延びかつ長さ方向の中央付近を支点として揺動自在に構成された鍵の押鍵に伴って回動するハンマーを備えた玩具ピアノのアクション構造であって、鍵の後端部に設けられ、左右方向に所定長さ延びかつ横断面が円形の支軸と、ハンマーに凹状に設けられ、支軸の外周面に摺接した状態で係合する係合受け部と、ハンマーに設けられ、支軸を係合受け部側に付勢した状態で、支軸の外周面に摺接し、係合受け部と協働して支軸を支持する付勢支持部と、を備え、鍵の押鍵時に、鍵が前下がりに揺動するのに伴い、鍵の後端部とともに支軸が上昇することにより、ハンマーが支軸を中心として回動するように構成されており、ハンマーに設けられ、支軸の横断面の直径よりも大きい寸法を有しかつ支軸を係合受け部に係合させるための取付け開口部を、さらに備え、付勢支持部は、取付け開口部の縁部から係合受け部に向かって延び、ハンマーの鍵への取付け時において、支軸が取付け開口部から係合受け部に移動する際に、支軸で押圧されることで次第に大きく撓み、支軸が係合受け部に係合したときに、撓みに基づく復元力によって支軸を付勢するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、押鍵に伴って動作する玩具ピアノのアクション構造として、鍵の後端部に回動自在に連結されたハンマーを備えている。鍵の後端部には、左右方向に所定長さ延びかつ横断面が円形の支軸が設けられている。一方、ハンマーには、凹状の係合受け部及び付勢支持部が設けられている。鍵とハンマーが連結された状態では、鍵の支軸に対し、ハンマーの係合受け部が支軸の外周面に摺接した状態で係合するとともに、ハンマーの付勢支持部が係合受け部側に付勢した状態で、支軸の外周面に摺接する。このように、ハンマーの係合受け部及び付勢支持部は、協働して鍵の支軸を支持する。そして、鍵の押鍵時に、鍵が前下がりに揺動するのに伴い、鍵の後端部とともに支軸が上昇することにより、ハンマーが支軸を中心として回動する。この場合、ハンマーは、その係合受け部及び付勢支持部が鍵の支軸の外周面に摺接した状態を維持しながら回動するので、ハンマーの円滑な回動を確保しながら、従来に比べて、回動するハンマーのがたつきやバウンドを抑制するとともに、それらによる振動及び騒音の発生を防止することができる。
また、上記構成によれば、ハンマーには、上記の取付け開口部が設けられ、その取付け開口部の縁部から係合受け部に向かって延びるように、付勢支持部が設けられている。ハンマーの鍵への取付け時において、鍵の支軸をハンマーの係合受け部に係合させる際には、まず支軸を取付け開口部に挿入し、その支軸を係合受け部に向かって移動させる。この場合、付勢支持部は、支軸で押圧されることで次第に大きく撓み、支軸が係合受け部に係合したときに、撓みに基づく復元力によって、支軸を係合受け部側に付勢する。ハンマーに設けられた取付け開口部は、支軸の直径よりも大きく、加えて、係合受け部への支軸の係合の際に、付勢支持部がガイドとして機能するので、鍵へのハンマーの取付けを容易に行うことができる。また、付勢支持部による支軸への付勢は、付勢支持部の上述した撓みに基づく復元力によって行われるので、上記付勢を長期間にわたり安定して維持することができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の玩具ピアノのアクション構造において、ハンマーに設けられ、係合受け部よりも前方に位置する当接部と、玩具ピアノ内に不動に設けられ、当接部が下方から当接する不動部と、をさらに備え、ハンマーは、鍵の押鍵時に、支軸を中心として回動しながら、当接部を支点として回動するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、ハンマーには、係合受け部よりも前方に位置する当接部が設けられており、この当接部が、玩具ピアノ内の不動部に下方から当接している。この状態において、鍵が押鍵されると、鍵の後端部の支軸が上昇し、それにより、ハンマーは、当接部を支点として回動しながら、鍵に対し、その支軸を中心として回動する。このように、押鍵時に、上昇する支軸を中心として、ハンマーを円滑に回動させることができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の玩具ピアノのアクション構造において、玩具ピアノ内には、鍵に応じ、所定の音を発するための発音体が設けられ、ハンマーには、係合受け部よりも後方又は下方に位置するハンマー本体部が設けられており、押鍵時に、ハンマーが回動し、ハンマー本体部が発音体に衝突することにより発音することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、押鍵時に、ハンマーが回動し、係合受け部よりも後方又は下方に位置するハンマー本体部が、玩具ピアノ内の発音体に衝突する。これにより、その発音体が振動し、押鍵された鍵の音階に対応する音を発生させることができる。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1から3のいずれかに記載の玩具ピアノのアクション構造において、係合受け部は、円弧状の曲面を有しており、曲面の曲率半径が支軸の横断面の半径よりも大きく設定されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、係合受け部が円弧状の曲面を有していて、その曲面の曲率半径が支軸の横断面の半径よりも大きく設定されているので、支軸の外周面と係合受け部との接触面積を、係合受け部の曲面全体の面積に比べて小さくすることができる。それにより、支軸と係合受け部との摩擦を低減でき、ハンマーの円滑な回動を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態によるアクション構造を適用したグランド型玩具ピアノの外観を示す斜視図である。
【
図2】(a)は、
図1の玩具ピアノの内部構造を示す左側面図であり、(b)及び(c)はそれぞれ、分解したハンマー及び鍵を示している。
【
図3】(a)は、ハンマーの外観を拡大して示す左側面図であり、(b)は、支軸係合部を拡大して示す図であり、(c)は、支軸と付勢支持部との位置関係を説明するための図である。
【
図4】ハンマーを鍵に取り付ける際の支軸と付勢支持部との関係を説明するための図であり、(a)は、支軸が係合受け部に係合する前の状態、(b)は、支軸が係合受け部に係合した後の状態を示す。
【
図5】押鍵時のハンマーの動作を順に説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるアクション構造を適用したグランド型の玩具ピアノの外観を示しており、
図2(a)は、その玩具ピアノの内部構造を示している。両図に示すように、この玩具ピアノ1は、所定の外形を有するケース2と、このケース2の前部に設けられた鍵盤3と、押鍵に伴って動作するアクション構造としての複数(
図2(a)では1つのみ図示)のハンマー4と、ハンマー4の後述するハンマー本体22が下方から当たることで音を発する複数(
図2(a)では1つのみ図示)の発音体5とを備えている。なお、ケース2の底面には、上下方向に所定長さを有する4つ(
図1では2つのみ図示)の脚部1aが設けられている。
【0020】
ケース2は、所定の平面形状及び断面形状を有する底板2aと、所定の高さを有し、底板2aの側方に、その縁部に沿って連続して延びるように設けられた側板2bと、鍵盤3の上側において、側板2bの前部の左右両側を連結するように設けられた横長矩形状の前框2cと、側板2b及び前框2cの上端に載置された状態で設けられた大屋根2dなどで構成されている。なお、ケース2の上記の各部品は、木質材や合成樹脂などで構成されている。
【0021】
図2(a)に示すように、ケース2の底板2a上には、鍵盤3の各鍵11を揺動自在に支持するための支持レール6と、この支持レール6よりも前方(
図2(a)の右方)の所定位置に、鍵11ごとに設けられた鍵ガイド7が設けられている。
【0022】
支持レール6は、左右方向(
図2(a)の表裏方向)に延び、横断面がほぼ三角形状に形成されている。この支持レール6により、その上端部の頂部6aを支点として、各鍵11が揺動自在に支持されている。一方、鍵ガイド7は、上方に所定長さ突出しかつ鍵11の内側の横幅とほぼ同じ幅を有する板状に形成されている。この鍵ガイド7が、対応する鍵11に下方から挿入されることにより、押鍵時に、その鍵11の横振れを防止しながら鍵11を上下方向に案内する。
【0023】
また、底板2a上には、押鍵時又は離鍵時に、鍵11が上方から当接する複数のクッション8が設けられている。具体的には、玩具ピアノ1の前側から後方(
図2の右側から左方)に向かって、鍵11の前端部の下方に前クッション8aが設けられ、鍵ガイド7の直ぐ前側に中クッション8bが設けられ、さらに鍵11の後端部の下方に後クッション8cが設けられている。また、底板2a上には、後クッション8cの後方に、離鍵状態におけるハンマー4が上方から当接するハンマークッション9が設けられている。
【0024】
鍵盤3は、白鍵11a及び黒鍵11bから成る複数(本実施形態では32本)の鍵11で構成されている。鍵11は、合成樹脂から成り、
図2(a)及び(c)に示すように、前後方向に所定長さ延びるとともに、前半部(
図2(a)の右半部)の横断面が、下方に開放するコ字状に形成されている。また、鍵11の左右の側壁には、長さ方向の中央付近に、下方に開放する凹部11c、11cがそれぞれ形成されており、これらの凹部11c、11cに、支持レール6の頂部6aが下方から挿入された状態で、鍵11が揺動自在に支持されている。
【0025】
さらに、鍵11の後端部には、上方に所定長さ延び、ハンマー4が連結されるハンマー連結部12が設けられている。このハンマー連結部12は、前方(
図2(a)及び(c)の右方)から見たときの状態が、上方に開放するU字状に形成され(
図2(c)の一点鎖線円内参照)、互いに所定間隔を隔てて対向する左右2つの壁部12a、12aを有しており、両壁部12a、12aの上端部に、左右方向に水平に延びる支軸12bが設けられている。なお、
図2(a)では、図示の便宜上、左側(
図2(a)の表裏方向の表側)の壁部12aを省略している。
【0026】
ハンマー4は、所定種類の合成樹脂(例えばポリプロピレン)から成り、
図2に示すように、所定の側面形状を有している。離鍵状態において、ハンマー4は、前上がりに傾斜して延びるように形成されている。なお、ハンマー4の詳細な構成については後述する。
【0027】
図2(a)に示すように、玩具ピアノ1のケース2内には、ハンマー4の上側に、左右方向に延びるハンマー当接レール14(不動部)が不動に設けられている。このハンマー当接レール14は、左右方向に並ぶように配置された全てのハンマー4にわたり、左右方向に延びている。また、このハンマー当接レール14は、その横断面が上方に開放するコ字状に形成されている。ハンマー当接レール14の底面14aには、その長さ方向(
図2(a)の表裏方向)にわたり、ハンマー4の後述する当接部27が底面14aに滑らかに摺接するための滑りテープ15が貼り付けられている。また、ハンマー当接レール14の後面14bには、その長さ方向(
図2(a)の表裏方向)にわたり、後方に突出するクッション16が設けられている。
【0028】
発音体5は、アルミなどの金属製パイプから成り、各鍵11の音階に応じて前後方向に所定長さ延びるとともに、全ての鍵11に対応するように左右方向に並設されている。より具体的には、発音体5は、低音側で長く、高音側で短い長さ寸法を有しており、鍵11と同じ数分、設けられている。
【0029】
ここで、
図3を参照して、ハンマー4について詳述する。同図(a)に示すように、ハンマー4は、前上がり(
図3(a)では右上がり)に傾斜して延びるアーム21と、このアーム21の下端部に設けられ、アーム21の延び方向とほぼ直交し、斜め上に突出するハンマー本体22とを有している。アーム21の所定位置、具体的には長さ方向の中央部よりも上端寄りの所定位置には、鍵11の支軸12bに回動自在に係合する支軸係合部23が設けられている。
【0030】
この支軸係合部23は、ほぼ半円形の凹状に形成された係合受け部24と、斜め下(
図3(a)では右下)に開放した取付け開口部25の縁部から上記係合受け部24に向かって延び、係合受け部24と協働して、支軸12bを支持する付勢支持部26とを有している。なお、上記の取付け開口部25は、玩具ピアノ1の製造工程において、ハンマー4を鍵11のハンマー連結部12に取り付ける際に、支軸12bが挿入される開口部であり、支軸12bの直径よりも大きい開口寸法を有している(
図4(a)参照)。
【0031】
係合受け部24は、円弧状の曲面を有し、その曲面の曲率半径が支軸12bの横断面の半径よりも大きく設定されており、曲面の一部が支軸12bの外周面に摺接した状態で係合する。一方、付勢支持部26は、取付け開口部25の下側の縁部に連なり、係合受け部24に向かって延びるように形成されている。より具体的には、
図3(b)に示すように、取付け開口部25から係合受け部24に向かう通路は、その幅が付勢支持部26によって次第に狭くなるように形成されている。また、支軸12bが係合受け部24に係合する前の状態では、
図3(c)に示すように、付勢支持部26の先端部が、係合受け部24に係合される支軸12bの外形の仮想線(2点鎖線)の内側に若干入った状態、すなわち、支軸12bに対し若干、オーバーラップした状態となっている。
【0032】
また、ハンマー4のアーム21における支軸係合部23の前方(
図3(a)の右上)には、上方に凸に湾曲し、ハンマー当接レール14に下方から当接する当接部27が設けられている。なお、この当接部27は、左右方向(
図3(a)の表裏方向)に幅広に形成されている。また、アーム21には、支軸係合部23の付近から上方(
図3(a)に左上)に突出し、押鍵時に所定位置まで回動したハンマー4のそれ以上の回動を阻止するためのストッパ28が設けられている。
【0033】
さらに、ハンマー4のハンマー本体22は、先端部が円弧状に突出するように形成されている。また、このハンマー本体22の先端寄りの所定位置には、左右方向に貫通する半円状の空洞部29が形成されている。この空洞部29が形成されることにより、ハンマー本体22には、それ自体の先端面と空洞部29の間に、薄肉に形成されかつハンマー本体22自体の硬さよりも見掛け上軟らかい軟質部22aが設けられている。この軟質部22aを介して、ハンマー本体22が発音体5に衝突することにより、ハンマー本体22が発音体5に接触する時間を比較的長く確保でき、それにより、その発音体5からの良好な音色の音を発生させることができる。
【0034】
図4は、ハンマー4を鍵11に取り付ける際の支軸12bと付勢支持部26との関係を示している。同図(a)に示すように、鍵11の支軸12bへのハンマー4の取付けの際には、その支軸12bが、ハンマー4の取付け開口部25を介して挿入され、係合受け部24に向かって移動する。この場合、付勢支持部26は、支軸12bで押圧され、同図(a)の矢印で示すように、次第に大きく撓む。そして、支軸12bが、係合受け部24に到達し、これに係合すると、同図(b)の矢印で示すように、付勢支持部26が上記撓みに基づく復元力によって、支軸12bを係合受け部24側に付勢する。
【0035】
図4(a)に示すように、ハンマー4の取付け開口部25は、支軸12bの直径よりも大きく、加えて、係合受け部24への支軸12bの係合の際に、付勢支持部26がガイドとして機能する。これにより、鍵11へのハンマー4の取付けを容易に行うことができる。
【0036】
次に、前述した
図2及び
図5を参照して、押鍵時のハンマー4の動作について説明する。なお、
図5では、ハンマー4を中心として、その周囲を示している。
図2及び
図5(a)は、離鍵状態におけるハンマー4の状態を示している。この状態から、鍵11の前端部が押し下げられると、その鍵11は、支持レール6の頂部6aを支点として前下がりに揺動し、鍵11の後端部の支軸12bが上昇する。
【0037】
この場合、支軸12bに係合するハンマー4が、支軸12bとともに上昇しようとするものの、ハンマー4の先端部の当接部27が、ハンマー当接レール14の底面14aに当接しているため、それ以上の上昇が阻止される。これにより、
図5(b)に示すように、ハンマー4は、支軸12bを中心として時計方向に回動しながら、また、ハンマー4の当接部27がハンマー当接レール14の底面14aに摺動しながら、その当接部27を支点としても時計方向に回動する。
【0038】
そして、鍵11の前端部が下限位置まで押し下げられたときには、
図5(c)に示すように、ハンマー4は、支軸12bを中心として自由回動し、ハンマー本体22が発音体5に下方から衝突する。この場合、同図(c)に示すように、ハンマー4の当接部27がハンマー当接レール14の底面14aから離れるとともに、ハンマー4のストッパ28がクッション16に当接し、それを若干押し潰す。そして、その直後には、ハンマー4のストッパ28が、押し潰されたクッション16の復元力で押圧され、それにより、
図5(d)に示すように、ハンマー4は、支軸12bを中心として反時計方向に若干回動する。この場合、同図(d)に示すように、ハンマー本体22が発音体5から離れる一方、ハンマー4の当接部27がハンマー当接レール14の底面14aに当接する。以上のようなハンマー4の回動動作により、押鍵された鍵11に対応する音が発生する。
【0039】
なお、鍵11が離鍵されると、鍵11は後ろ下がりに揺動し、支軸12bが下降する。それに伴い、ハンマー4は、
図5(d)に示す状態からさらに反時計方向に回動し、ハンマー本体22がハンマークッション9に上方から当接して、元の位置(
図5(a)に示す位置)に戻る。
【0040】
以上詳述したように、本実施形態によれば、鍵11とハンマー4が連結された状態では、鍵11の支軸12bに対し、ハンマー4の係合受け部24が支軸12bの外周面に摺接した状態で係合するとともに、ハンマー4の付勢支持部26が係合受け部24側に付勢した状態で、支軸12bの外周面に摺接している。これにより、押鍵時には、ハンマー4は、その係合受け部24及び付勢支持部26が鍵11の支軸12bの外周面に摺接した状態を維持しながら回動するので、ハンマー4の円滑な回動を確保しながら、従来に比べて、回動するハンマー4のがたつきやバウンドを抑制するとともに、それらによる振動及び騒音の発生を防止することができる。
【0041】
また、ハンマー4の当接部27が、ハンマー当接レール14の底面14aに下方から当接しているので、押鍵時に、当接部27を支点として回動させながら、鍵11に対し、その支軸12bを中心として、ハンマー4を円滑に回動させることができる。さらに、ハンマー4の付勢支持部26による支軸12bへの付勢は、付勢支持部26の撓みに基づく復元力によって行われるので、上記付勢を長期間にわたり安定して維持することができる。
【0042】
なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、本発明のアクション構造を、グランド型の玩具ピアノに適用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、アップライト型の玩具ピアノにも、もちろん適用することができる。
【0043】
また、実施形態では、ハンマー4の係合受け部24を半円状の曲面で形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、支軸12bの外周面に対し、所定サイズの曲面領域で接したり、少なくとも2点で接したりする状態であればよく、種々の形状を採用することが可能である。
【0044】
また、実施形態では、鍵11に支軸12bを設ける一方、ハンマー4に、係合受け部24及び付勢支持部26を有する支軸係合部23を設けたが、鍵11及びハンマー4における支軸12bと支軸係合部23の位置関係を逆にすることも可能である。
【0045】
さらに、実施形態で示した鍵盤3、鍵11、ハンマー4、並びに支軸係合部23の係合受け部24及び付勢支持部26の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 玩具ピアノ
2 ケース
3 鍵盤
4 ハンマー
5 発音体
6 支持レール
6a 頂部(支点)
11 鍵
12 ハンマー連結部
12b 支軸
14 ハンマー当接レール(不動部)
14a 底面
14b 後面
21 アーム
22 ハンマー本体
23 支軸係合部
24 係合受け部
25 取付け開口部
26 付勢支持部
27 当接部