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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】硬化剤、及び水性被覆材
(51)【国際特許分類】
   C09D 163/00 20060101AFI20240726BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240726BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D7/63
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020145237
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2021042362
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2019162766
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】599071496
【氏名又は名称】ベック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 涼
(72)【発明者】
【氏名】北脇 和智
(72)【発明者】
【氏名】三木 菜摘
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-529650(JP,A)
【文献】特開2013-100522(JP,A)
【文献】特開2002-167546(JP,A)
【文献】特開2018-065998(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0215968(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 163/00
C09D 7/63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性エポキシ樹脂用の硬化剤であって、
アミノ基含有樹脂、及びアミノ基含有シラン化合物を含み、
上記アミノ基含有樹脂は、ポリアミン樹脂(但し、アミノ基含有シラン化合物を除く)であり、
上記アミノ基含有シラン化合物は、アミノ基とアルコキシシリル基を有する化合物あり、
上記アミノ基含有樹脂と上記アミノ基含有シラン化合物の混合比(固形分重量比)が、5:95~45:55であることを特徴とする硬化剤。
【請求項2】
請求項1に記載の硬化剤と、水性エポキシ樹脂を含む主剤とからなる2液型の水性被覆材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な硬化剤、及び水性被覆材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の内外装壁面・床面等への塗装においては、基材との密着性を考慮し、種々の下塗材が選定して用いられている。このような下塗材は、従来、溶剤系のものが主であったが、最近では、環境、安全等を考慮し、水系の下塗材が採用されつつある。例えば、特許文献1には、エポキシ樹脂エマルションを含む主剤とアミン樹脂を含む硬化剤からなる下塗り塗料用二液反応硬化型水性塗料組成物が記載されている。
【0003】
ところが、水系の下塗材は、溶剤系の下塗材と比べ、密着性に劣る場合がある。特に、近年、外装壁面に用いられる外装用建材においては、高耐候性や耐汚染性等の機能性を有する種々の塗膜が設けられている。このような塗膜の改修においては、水系の下塗材では十分な密着性が得られにくい場合があり、溶剤系の下塗材が多く使用されているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-53028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、種々の基材、及び塗膜に対して、十分な密着性を確保することができる水性被覆材に好適な硬化剤、及び水性被覆材を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、このような問題に対し鋭意検討した結果、水性エポキシ樹脂用の硬化剤であって、アミノ基含有樹脂、及びアミノ基含有シラン化合物を特定重量比率で混合した硬化剤を見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の特徴を有するものである。
1.水性エポキシ樹脂用の硬化剤であって、
アミノ基含有樹脂、及びアミノ基含有シラン化合物を含み、
上記アミノ基含有樹脂は、ポリアミン樹脂(但し、アミノ基含有シラン化合物を除く)であり、
上記アミノ基含有シラン化合物は、アミノ基とアルコキシシリル基を有する化合物あり、
上記アミノ基含有樹脂と上記アミノ基含有シラン化合物の混合比(固形分重量比)が、5:95~45:55であることを特徴とする硬化剤。
2.1.に記載の硬化剤と、水性エポキシ樹脂を含む主剤とからなる2液型の水性被覆材。


【発明の効果】
【0008】
本発明の硬化剤は、水性エポキシ樹脂を含む樹脂組成物(主剤)に混合することにより、種々の基材及び塗膜に対して優れた密着性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(硬化剤)
本発明の硬化剤は、水性エポキシ樹脂(A)を含む樹脂組成物(以下、単に「主剤」ともいう)に混合するものであり、アミノ基含有樹脂(B)、及びアミノ基含有シラン化合物(M)を含有するものである。
【0010】
本発明のアミノ基含有樹脂(B)(以下、単に「(B)成分」ともいう)は、水性エポキシ樹脂(A)と反応し被膜を形成するものである。このような(B)成分としては、例えば、1分子中にアミノ基を2個以上含有するポリアミン樹脂が使用でき、例えば、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、複素環状アミン及びこれらポリアミン樹脂のアミノ基を変性してなる変性ポリアミン樹脂等が挙げられる。なお、上記ポリアミン樹脂の変性には、公知の方法が利用でき、例えば、アミノ基のアミド化、アミノ基とカルボニル化合物のマンニッヒ反応、アミノ基とエポキシ基の付加反応、アミノ基とスチレンとの付加反応等が挙げられる。また、(B)成分としては、脂肪族ポリアミド、脂環式ポリアミド、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミドアミン、脂環式ポリアミドアミン、芳香族ポリアミドアミン等も使用できる。これらは、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0011】
本発明では、(B)成分として、例えば、脂肪族ポリアミン、変性脂肪族ポリアミンから選ばれる1種以上を含むことが好ましい。これにより、水性エポキシ樹脂を含む主剤と混合した場合、基材、塗膜への付着発現性、密着性が向上する。脂肪族ポリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン等の鎖状脂肪族ポリアミン;N-アミノエチルピペラジン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(スピロアセタールジアミン)、ノルボルナンジアミン、トリシクロデカンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等の環状脂肪族ポリアミン;メタキシレンジアミン等の脂肪芳香族アミン等が挙げられる。本発明では、特にメタキシレンジアミン、メタキシレンジアミンのスチレン付加反応生成物から選ばれる1種以上を含むことが好適である。
【0012】
(B)成分の態様としては、特に限定されないが、水性媒体に溶解可能な水可溶型樹脂、または水性媒体に分散可能な水分散型樹脂等が使用できる。本発明では、(B)成分として、水可溶型樹脂を含むことが好適である。この場合、貯蔵安定性に優れるとともに、アミノ基含有シラン化合物(M)の活性を高めることができる。また、主剤と混合した場合には、水性エポキシ樹脂との反応性が高まり、基材、塗膜への付着発現性、密着性がよりいっそう向上するとともに、耐水性、塗膜外観に優れた塗膜を形成することができる。なお、(B)成分は、無溶剤型(固形分100重量%)であっても、予め(B)成分が水性媒体に溶解又は分散したものであってもよい。(B)成分の固形分は、好ましくは50重量%以上(より好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上)である。(B)成分の固形分の上限は100重量%以下である。この範囲を満たす場合、本発明の効果を十分に発揮することができる。なお、水性媒体とは、主に水を含む媒体であり、必要に応じ、例えば、低級アルコール、多価アルコール、エーテル化合物、エステル化合物、アルキレンオキサイド含有化合物等の水溶性溶剤が混合されていてもよい。
【0013】
また、上記(B)成分は、(B)成分の活性水素当量yが、好ましくは10~1000(より好ましくは50~800、さらに好ましくは80~600)である。なお、ここでいう「活性水素当量y」は、1グラム当量の活性水素基を含む樹脂固形分のグラム数[g/eq]であり、アミノ基含有樹脂の重量平均分子量を1分子当たりのアミノ基の水素原子数で除した値である。また、本発明において「α~β」は「α以上β以下」と同義である。
【0014】
アミノ基含有シラン化合物(M)(以下、単に「(M)成分」ともいう。)としては、アミノ基とアルコキシシリル基を有する化合物、あるいはアミノ基と環状シロキサンを有する化合物等が使用できる。これらは、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0015】
アミノ基とアルコキシシリル基を有する化合物としては、例えば、アミノ基含有シランカップリング剤、及びその加水分解オリゴマー、アルコキシシリル基及びアミノ基を有するポリマー等が挙げられる。具体的に、アミノ基含有シランカップリング剤としては、例えば、
γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビニルベンジル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)-8-アミノオクチルトリメトキシシラン、γ-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロビルアミン等が挙げられる。
【0016】
上記アミノ基含有シランカップリング剤の加水分解オリゴマーとしては、アルコキシシリル基とアミノ基を有するものが使用できる。
このような(M)成分としては、アルコキシシリル基の一部ないし全部がシラノール基の状態となったものも使用することができる。
【0017】
特に、本発明では(M)成分として、アミノ基含有シランカップリング剤が好適であり、例えば、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジエトキシシランから選ばれる1種以上が好適である。これらを用いた場合、基材、塗膜への付着発現性等が向上する。
【0018】
また、上記(M)成分は、活性水素当量yが、好ましくは10~500(より好ましくは20~400、さらに好ましくは30~300)である。なお、ここでいう「活性水素当量y」は、1グラム当量の活性水素基を含むアミノ基含有シラン化合物のグラム数[g/eq]であり、アミノ基含有シラン化合物の重量平均分子量を1分子当たりのアミノ基の水素原子数で除した値である。
【0019】
本発明の硬化剤は、上記(B)成分と上記(M)成分を、固形分重量比で、(B)成分:(M)成分=5:95~90:10(好ましくは10:90~60:40、より好ましくは12:88~50:50、さらに好ましくは15:85~45:55)で含むことを特徴とする。このような範囲を満たす場合、貯蔵安定性に優れるとともに、主剤と混合した場合、基材、塗膜への付着発現性、密着性を十分に発揮することができる。
【0020】
本発明の硬化剤は、上記(B)成分と上記(M)成分を含み、その固形分が好ましくは10重量%以上(より好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上)である。固形分の上限は100重量%以下である。この範囲を満たす場合、本発明の効果を十分に発揮することができる。なお、固形分は、上記水性媒体の混合により調整することができる。具体的に、硬化剤中の水性媒体は、硬化剤製造時に混合したものであってもよいし、上記(B)成分や上記(M)成分等の媒体として含まれるものであってもよい。なお、水性媒体として水を含む場合、硬化剤中の含水量は、好ましくは30重量%以下(より好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下)であり、実質的に水を含まない態様も好適である。この範囲を満たす場合、硬化剤の貯蔵安定性を十分に発揮できるとともに、上記(M)成分の活性を高め、主剤と混合した場合には、基材、塗膜への付着発現性、密着性をよりいっそう高めることができる。
【0021】
本発明の硬化剤には、硬化促進剤(O)(以下、単に「(O)成分」ともいう)を混合することが好ましい。(O)成分としては、例えば、安息香酸、サリチル酸、トリヒドロキシ安息香酸、フタル酸、ケイ皮酸、ベンゼンヘキサカルボン酸等の各種芳香族カルボン酸類;トリメチルアミン、エチルジメチルアミン、プロピルジメチルアミン、N,N’-ジメチルピペラジン、ピリジン、ピコリン、1,8-ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン-1(DBU)、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP-10)、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP-30)等の第三アミン類、ヒドロキシルアミン、フェノキシアミン等のヒドロキシルアミン類、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4(5)-メチルイミダゾール、2-エチル-4メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール類等の上記(B)成分、上記(M)成分以外のアミン類;フェノールノボラック、o-クレゾールノボラック、p-クレゾールノボラック、t-ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール等のフェノール類、オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、オルガノチタネート、酢酸ナトリウム等の有機金属化合物等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。これら(O)成分の中でも、特に、芳香族カルボン酸類が好適に用いられる。
【0022】
上記(O)成分の混合量は、上記(B)成分及び上記(M)成分の合計(固形分)100重量部に対して、好ましくは0.01~10重量部(好ましくは0.02~8重量部)である。このような範囲の場合、水性エポキシ樹脂との反応性が高まり、基材、塗膜への付着発現性、密着性がよりいっそう向上するとともに、耐水性、塗膜外観に優れた塗膜を形成することができる。
【0023】
<水性被覆材>
上記硬化剤は、水性エポキシ樹脂(A)用の硬化剤として使用するものである。本発明では、上記硬化剤と、水性エポキシ樹脂(A)を含む主剤とからなる2液型の水性被覆材として使用することが好ましい。
【0024】
(主剤)
本発明の主剤は、水性エポキシ樹脂(A)を含むことを特徴とするものである。本発明において、水性エポキシ樹脂(A)(以下、単に「(A)成分」ともいう。)とは、エポキシ基を含有する水性の樹脂成分であり、例えば、
(A1)エポキシ樹脂を水性媒体に溶解又は分散させたもの(以下、単に「(A1)成分」ともいう。)、
(A2)エポキシ基含有モノマーを含むモノマー群を乳化重合して得られるもの(以下、単に「(A2)成分」ともいう。)、
等が挙げられ、これらを混合して使用することもできる。なお、本発明では、エポキシ基とアミノ基を併有する樹脂は、1分子中に相対的にエポキシ基を多く含むものを(A)成分、アミノ基を多く含むものを(B)成分として取り扱えばよい。
【0025】
上記(A1)成分としては、例えば、水溶性エポキシ樹脂、エポキシ樹脂水分散体等が挙げられる。本発明では、(A1)成分として、エポキシ樹脂を水性媒体に分散・乳化させたエポキシ樹脂水分散体(エポキシ樹脂エマルション)を含むことが好適である。なお、エポキシ樹脂を水性媒体に分散させる場合には、必要に応じて乳化剤等を用いることができる。なお、水性媒体とは、主に水を含む媒体であり、必要に応じ、例えば、低級アルコール、多価アルコール、エーテル化合物、エステル化合物、アルキレンオキサイド含有化合物等の水溶性溶剤が混合されていてもよい。
【0026】
上記(A1)成分のエポキシ樹脂としては、水性媒体に溶解又は分散しうるものであればよく、固形型エポキシ樹脂及び/または液状型エポキシ樹脂のいずれであってもよい。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、分子中にエポキシ基を1個以上、好ましくは2個以上含有する樹脂が使用でき、例えば、芳香族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、エポキシ基を有するポリブタジエン樹脂、エポキシ基を有するポリウレタン樹脂等が挙げられる。本発明では、芳香族エポキシ樹脂が好ましく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられ、この中でも、特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂から選ばれる1種以上が好適である。さらに、上記エポキシ樹脂は、必要に応じで分子量を増大させたものや、脂肪酸を反応させることにより得られる脂肪酸変性エポキシ樹脂、あるいはアミノ基含有化合物を付加反応させて得られるアミン付加エポキシ樹脂(アミン変性エポキシ樹脂)を水性化することより得られるもの等であっても良い。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、固形型エポキシ樹脂とは、常温(23℃)で固形のもの、液状型エポキシ樹脂とは、常温(23℃)で液状のものをいう。
【0027】
本発明では、上記(A1)成分として、固形型エポキシ樹脂(a1)を必須成分として含む態様が好ましい。このような態様としては、固形型エポキシ樹脂(a1)のみの態様、固形型エポキシ樹脂(a1)及び液状型エポキシ樹脂(a2)を含む態様が挙げられる。これにより、本発明の効果を十分に得ることができる。固形型エポキシ樹脂(a1)と液状型エポキシ樹脂(a2)を混合する場合、その混合比(固形分重量比)は、各エポキシ樹脂のエポキシ当量にもよるが、好ましくは100:0~5:95(より好ましくは100:0~10:90)である。
【0028】
エポキシ樹脂水分散体(エポキシ樹脂エマルション)の調製方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、固形型エポキシ樹脂及び/または液状型エポキシ樹脂と、必要に応じて乳化剤を混合し樹脂溶液を調製した後、水性媒体(必要に応じて乳化剤を含む)と混合することにより乳化する方法等が挙げられる。なお、上記の調製時には、必要に応じて加熱することもできる。本発明において、固形型エポキシ樹脂と液状型エポキシ樹脂を併用する場合、固形型エポキシ樹脂と液状型エポキシ樹脂のそれぞれの水分散体を調整した後、混合して使用することが好ましい。エポキシ樹脂水分散体の樹脂固形分は、特に限定されないが、好ましくは10~80重量%(より好ましくは20~70重量%)である。
【0029】
上記乳化剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等をそれぞれ単独でまたは組み合わせて用いることができる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ステアリルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸アルカリ金属塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステルアルカリ金属塩等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー等が挙げられる。
乳化剤の配合量としては、樹脂固形分に対して好ましくは0.1~15重量%(より好ましくは0.1~10重量%、さらに好ましくは0.5~5重量%)の範囲内である。
【0030】
本発明の(A1)成分のエポキシ樹脂水分散体の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは100~1000nm(より好ましくは150~900nm、さらに好ましくは200~800nm)である。平均粒子径がこのような範囲内であれば、シール性、耐白華性、耐白化性等において有利な効果を得ることができる。なお、ここに言う平均粒子径は、動的光散乱法により測定される値である。
【0031】
また、本発明の(A1)成分は、エポキシ当量xが、好ましくは100~3000(より好ましくは110~2000、さらに好ましくは120~1500)である。なお、ここでいう「エポキシ当量x」は、1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂固形分のグラム数[g/eq]であり、エポキシ樹脂の重量平均分子量を1分子当たりのエポキシ基の数で除した値である。
【0032】
なお、上記(A1)成分として、エポキシ当量xや平均粒子径等が異なるものを混合して使用することもできる。
【0033】
上記(A2)成分としては、エポキシ基含有モノマーを含むモノマー群として(メタ)アクリル酸アルキルエステル、芳香族モノマー等を含むことが好ましく、さらには、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを樹脂骨格(主成分)とするものが好ましい。このような(A2)成分としては、例えば、
・エポキシ基含有モノマー、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むモノマー群の重合体、
・エポキシ基含有モノマー、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び芳香族モノマーを含むモノマー群の重合体、
等が挙げられる。(A2)成分としては、このような重合体のエマルション(「エポキシ基含有アクリル樹脂エマルション」ともいう。)が好適である。
【0034】
エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、ジグリシジルフマレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシビニルシクロヘキサン、アリルグリシジルエーテル、ε-カプロラクトン変性グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明では、エポキシ基含有モノマーの含有量が、(A2)成分を構成する全モノマー中に、好ましくは0.5~50重量%(より好ましくは1~30重量%)である。これにより、本発明の効果を十分に発揮することができる。
【0035】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル、芳香族モノマーは、樹脂骨格の主成分とすることができるものである。なお、本発明では、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルを合わせて、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと表記している。また、モノマーとは、重合性不飽和二重結合を有する化合物の総称である。
【0036】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。
【0037】
芳香族モノマーは、芳香環と重合性不飽和二重結合を有する化合物であり、その具体例としては、例えばスチレン、2-メチルスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
(A2)成分においては、さらに本発明の効果を阻害しない範囲内で、上記成分と共重合可能なその他のモノマーを使用することもできる。このようなモノマーとしては、例えば、
(メタ)アクリロニトリル、シアン化ビニリデン、α-シアノエチル(メタ)アクリレート等のニトリル基含有モノマー;
マレイン酸アミド、(メタ)アクリルアミド、N-モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N、N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタクリレート)、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、ビニルアミド等のアミド基含有モノマー;
アクロレイン、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン等のカルボニル基含有モノマー;
【0039】
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、イソクロトン酸、サリチル酸等のカルボキシル基含有モノマー;
3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシシシラン、ビニルトリエトキシシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン等のアルコキシシリル基含有モノマー;
アミノメチルアクリレート、アミノエチルアクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノ-n-ブチル(メタ)アクリレート、ブチルビニルベンジルアミン、ビニルフェニルアミン、p-アミノスチレン、N-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;
ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;
フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系モノマー;
エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、ビニルエーテル、ビニルケトン、シリコーンマクロマー;
等が挙げられる。
【0040】
上記(A2)成分は、上記モノマーを適宜混合したモノマー群を乳化重合することにより製造することができる。重合方法としては公知の方法を採用すればよく、通常の乳化重合の他、ソープフリー乳化重合、フィード乳化重合、シード乳化重合、多段階乳化重合等を採用することもできる。重合時には、例えば、乳化剤、開始剤、分散剤、重合禁止剤、重合抑制剤、緩衝剤、連鎖移動剤、pH調整剤等を使用することができる。
【0041】
乳化剤としては、乳化重合に使用可能な各種界面活性剤が使用でき、これらは重合性不飽和二重結合を有する反応性タイプ(反応性界面活性剤)であってもよい。乳化剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等をそれぞれ単独でまたは組み合わせて用いることができる。具体的には、例えば上記(A)成分に記載したものの中から適宜選択できる。
【0042】
また、上記(A2)成分のガラス転移温度は、上記モノマーの種類、混合比率等を選定することで調整できる。このガラス転移温度は、最終的な要求性能等を考慮して適宜設定すればよいが、好ましくは-50~80℃程度(より好ましくは-40~60℃程度)である。なお、ガラス転移温度は、Foxの計算式により求めることができる。
【0043】
上記(A2)成分の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは300nm以下(より好ましくは20~250nm、さらに好ましくは30~200nm)である。平均粒子径がこのような範囲内であれば、含浸補強性、シール性、耐白華性、耐白化性等において有利な効果を得ることができる。なお、ここに言う平均粒子径は、動的光散乱法により測定される値である。
【0044】
なお、上記(A2)成分としては、樹脂組成、ガラス転移温度、平均粒子径等が異なるものを2種以上混合して使用することもできる。
【0045】
本発明において、上記(A)成分の態様としては、上記(A1)成分のみの態様、上記(A2)成分のみの態様、上記(A1)成分及び上記(A2)成分を含む態様が挙げられる。特に、本発明では、上記(A1)成分及び上記(A2)成分を併用して含むことが好ましい。これにより、上記硬化剤を使用した場合に、種々の基材、及び塗膜に対して、より一層優れた密着性、耐水性等を確保することができる。
【0046】
上記(A1)成分と(A2)成分の混合比(固形分重量比)は、(A1):(A2)=5:95~80:20(より好ましくは10:90~60:40、さらに好ましくは12:88~50:50、特に好ましくは15:85~45:55)であることが好ましい。このような場合、種々の基材及び塗膜に対して優れた密着性を発揮し、特に、既存塗膜及び上塗塗膜との密着性も高めることができる。さらには、耐水性、塗膜外観に優れた塗膜を形成することができる。
【0047】
本発明の主剤には、さらに、上記アミノ基含有シラン化合物(M)を除くシラン化合物(N)(以下、単に「(N)成分」ともいう)を含むことができる。このような(N)成分としては、アルコキシシリル基を有する化合物であればよいが、本発明では、グリシジル基含有シラン化合物(N1)、及び/またはアルコキシシラン化合物(N2)等が好適である。
【0048】
上記グリシジル基含有シラン化合物(N1)(以下、単に「(N1)成分」ともいう)としては、グリシジル基(エポキシ基)とアルコキシシリル基を有する化合物、あるいはグリシジル基と環状シロキサンを有する化合物等が使用できる。これらは、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0049】
グリシジル基(エポキシ基)とアルコキシシリル基を有する化合物としては、例えば、グリシジル基含有シランカップリング剤、及びその加水分解オリゴマー等が挙げられる。
【0050】
具体的に、グリシジル基含有シランカップリング剤としては、例えば、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピル(エチル)ジメトキシシラン、β-3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、β-3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン、8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、8-グリシドキシオクチルメチルジメトキシシラン、8-グリシドキシオクチルメチルジエトキシシラン等が挙げられ、好ましくはエポキシ当量xn1が、10~1000(より好ましくは50~500)であるもの等が挙げられる。なお、ここでいう「エポキシ当量xn1」は、1グラム当量のエポキシ基を含むシラン化合物のグラム数[g/eq]であり、グリシジル基含有シラン化合物の重量平均分子量を1分子当たりのエポキシ基の数で除した値である。
【0051】
上記グリシジル基含有シランカップリング剤の加水分解オリゴマーとしては、アルコキシシリル基とグリシジル基を有するものであり、好ましくはアルコキシ基量が10~80wt%(より好ましくは20~75wt%)、エポキシ当量xn1が200~950(より好ましくは300~900)であるもの等が挙げられる。このような(N1)成分としては、2種以上のアルコキシシリル基を有するもの、あるいはアルコキシシリル基の一部ないし全部がシラノール基の状態となったものも使用することができる。
【0052】
グリシジル基と環状シロキサンを有する化合物としては、反応性官能基としてグリシジル基のみを有するシリコーンオリゴマーであり、好ましくはエポキシ当量xn1が100~500(より好ましくは150~400)であるもの等が挙げられる。
【0053】
特に、本発明では上記(N1)成分として、グリシジル基含有シランカップリング剤が好適であり、例えば、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、β-3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシランから選ばれる1種以上が好適であり、β-3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、β-3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシランから選ばれる1種以上を含む態様がより好適である。これらを用いた場合、よりいっそう基材、塗膜への付着発現性、密着性が向上する。さらには、水性被覆材の安定性、可使時間を高めることができる。
【0054】
本発明の主剤において、上記成分に加えて上記(N1)成分を含む場合の混合比は、上記(A)成分の固形分100重量部に対し、上記(N1)成分を好ましくは0.5~20重量部(より好ましくは1~15重量部)である。このような場合、基材、塗膜への付着発現性が高まり、密着性がよりいっそう向上する。さらには、水性被覆材の安定性、可使時間を高めることができる。
【0055】
アルコキシシラン化合物(N2)(以下、単に「(N2)成分」ともいう)としては、アルコキシシラン、及びその加水分解縮合物等が使用できる。これらは、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。このような(N2)成分を使用することによって、基材への密着性をよりいっそう高めることができる。
【0056】
このような(N2)成分としては、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラn-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラsec-ブトキシシラン、テトラt-ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、等の4官能アルコキシシラン化合物;
【0057】
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、ブチルトリブトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリブトキシシラン等の3官能アルキルアルコキシシラン化合物;
【0058】
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、メチルフェニルジエトキシシラン等の2官能アルキルアルコキシシラン化合物;
等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、または2種以上が混合されて用いられてもよい。
【0059】
本発明では、(N2)成分として、3官能アルキルアルコキシシラン化合物、及び/または2官能アルキルアルコキシシラン化合物を含むことが好ましい。さらには、フェニル基を含有するものを含むことが好ましい。このような(N2)成分としては、例えば、フェニルトリメトキシシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン等が挙げられる。これらを用いた場合、形成被膜の硬化性が高まり、よりいっそう基材、塗膜への付着発現性、密着性が向上する。特に、既存塗膜を有する基材への付着発現性、密着性向上において優れた効果を発揮することができる。
【0060】
本発明の主剤において、上記成分に加えて上記(N2)成分を含む場合の混合比は、上記(A)成分の固形分100重量部に対し、上記(N2)成分を好ましくは0.3~20重量部(より好ましくは0.5~18重量部、さらに好ましくは2~15重量部)である。このような場合、上記効果を十分に発揮することができる。
【0061】
本発明の水性被覆材は、上記主剤と上記硬化剤を、主剤:硬化剤(固形分重量比)=100:5~100(より好ましくは100:8~80、さらに好ましくは100:10~50)となるように混合することが好ましい。このような場合、水性被覆材の基材、塗膜への付着発現性、密着性が向上する。さらには、水性被覆材の安定性、可使時間を高めることができる。
【0062】
主剤と硬化剤の混合比が上記の比である場合、上記(A)成分の固形分100重量部に対し、固形分換算で上記(B)成分を好ましくは1~50重量部(より好ましくは1.2~40重量部、さらに好ましくは1.5~30重量部)に設定できる。
また、上記(A)成分の固形分100重量部に対し、上記(M)成分を好ましくは3~85重量部(より好ましくは4~70重量部、さらに好ましくは5~50重量部)に設定できる。
【0063】
また、主剤中の(A)成分として、(A1)成分を含む場合には、主剤と硬化剤の混合比は、主剤中の(A1)成分のエポキシ当量([XA1];固形分換算値)と、硬化剤中の(B)成分の活性水素当量([Y];固形分換算値)の比[XA1/Y]が、好ましくは0.5~5(より好ましくは0.6~4、さらに好ましくは0.7~3、特に好ましくは0.8~2.5)となるように設定することができる。
【0064】
さらに、主剤中の(A1)成分のエポキシ当量([XA1]:固形分換算値)と、硬化剤中の(B)成分の活性水素当量([Y];固形分換算値)及び(M)成分の活性水素当量([Y];固形分換算値)の比[XA1/(Y+Y)]が、好ましくは0.1~3(より好ましくは0.12~2、さらに好ましくは0.15~1)となるように設定することができる。このような場合、水性被覆材の基材、塗膜への付着発現性、密着性が向上する。さらには、水性被覆材の安定性、可使時間を高めることができる。
【0065】
なお、上記XA1、上記Yは混合時の配合部数から求められるものであり、具体的に、上記[XA1]は、主剤に含まれる(A1)成分の配合量(固形分重量部)を、(A1)成分のエポキシ当量xで除した値である。また、上記[Y]は、硬化剤に含まれる(B)成分の配合量(固形分重量部)を、(B)成分の活性水素当量yで除した値である。さらに上記[Y]は、硬化剤に含まれる(M)成分の配合量(固形分重量部)を、(M)成分の活性水素当量yで除した値である。
【0066】
本発明の水性被覆材には、上述の成分の他、主剤及び/または硬化剤に必要に応じ着色顔料、体質顔料、防錆顔料、pH調整剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、レベリング剤、分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、増粘剤(チクソトロピック調整剤)、造膜助剤、艶消し剤、架橋剤、触媒、硬化促進剤、密着性付与剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を、本発明の効果が阻害されない範囲内で混合することができる。本発明の水性被覆材のpHは、好ましくは3~12(より好ましくは4~11)である。なお、本発明では主剤のpHが上記を満たすことが好ましい。
【0067】
本発明の水性被覆材では、主剤に触媒(P)(以下、単に「(P)成分」ともいう)を混合することが好ましい。(P)成分は、例えば、水性被覆材中のグリシジル基(エポキシ基)とアミノ基との反応、あるいはアルコキシシリル基の加水分解・縮合等を促進させるものであり、基材への密着性、特に既存塗膜を有する基材への密着性をよりいっそう高めることができる。
【0068】
上記(P)成分としては、上記(O)成分として記載の1種または2種以上が使用できる。これらの中でも、(P)成分としては、特に、オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート等の有機錫化合物が好適に用いられる。
【0069】
上記(P)成分の混合量は、(A)成分(固形分)100重量部に対して、好ましくは0.01~10重量部(より好ましくは0.02~8重量部)である。このような範囲の場合、本発明の効果を高めることができる。
【0070】
本発明の水性被覆材としては、着色ないし無着色、あるいは不透明ないし透明等の種々のものが使用できる。本発明では、好ましくは透明性を有するクリヤー型水性被覆材として使用できる。また、本発明の水性被覆材は、固形分が好ましくは5~60重量%(より好ましくは6~50重量%、さらに好ましくは7~45重量%)である。なお、固形分は、上記水性媒体の混合により調整することができる。このような範囲の場合、塗装作業性に優れるとともに、種々の基材、及び塗膜に対して、密着性をよりいっそう向上させることができる。
【0071】
本発明の水性被覆材は、内外装壁面・床面等への塗装における下塗材として好適に用いられる。例えば、モルタル、コンクリート、窯業系サイディングボード、セラミック系サイディングボード、金属系サイディングボード、押出成形板、スレート板、ケイ酸カルシウム板、ALC板、金属、木材、ガラス、陶磁器、合成樹脂等の基材、あるいはこのような基材上(基材の表面)に形成された多種多様な既存塗膜等の下地に適用する下塗材として好適に用いられる。また、このような下地(基材や既存塗膜)の形状としては、平滑(フラット)なもの、各種凹凸模様(例えば石材調、レンガ・タイル調、木目調、ボーダー調、塗り壁調、吹付け調等)を有するもの等が挙げられる。さらには、シーリング目地部を含む下地に対して、適用することもできる。
【0072】
特に、本発明の水性被覆材は、下地の改修用下塗材として好適であり、例えば、既存塗膜が設けられたサイディングボードの改修時の下塗材として好適に適用することができる。
【0073】
既存塗膜は、上記基材上に、現場塗装、あるいは工場塗装(ライン塗装)等により既に塗装されている種々の塗膜であり、例えば、有機質塗膜、無機質塗膜、有機無機複合塗膜等から選ばれる少なくとも1種の塗膜が挙げられる。また、既存塗膜としては、着色塗膜(エナメル系塗膜、印刷塗膜等)、クリヤー塗膜、あるいはこれらの積層塗膜等が挙げられ、各種コーティング材を基材に塗布・硬化させ、形成された塗膜である。このようなコーティング材は、常温乾燥型、常温硬化型、焼付け硬化型、紫外線(UV)硬化型、電子線硬化型等のいずれのものであってもよい。
【0074】
このようなコーティング材の結合材としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂等の有機質結合材、あるいはシリコン樹脂、アルコキシシラン、コロイダルシリカ、ケイ酸塩等の無機質結合材、アクリルシリコン樹脂等の有機無機複合結合材等が挙げられる。
【0075】
本発明は、特に、既存塗膜が、無機質塗膜(上記無機質結合材を含む塗膜)、有機無機複合塗膜(上記有機無機複合結合材を含む塗膜)、フッ素樹脂塗膜(上記フッ素樹脂を含む塗膜)等から選ばれる1種以上である場合に好適であり、さらには、これらのクリヤー塗膜に好適に適用できる。このような既存塗膜は、光触媒酸化チタン等を含むものであってもよい。
【0076】
具体的なコーティング材としては、例えば、建築用耐候性上塗り塗料(JIS K5658:2010)、鋼構造物用耐候性塗料(JIS K5659:2008)、つや有合成樹脂エマルションペイント(JIS K5660:2008)、建築用防火塗料(JIS K5661:1970)、合成樹脂エマルションペイント(JIS K5663:2008)、路面標示用塗料(JIS K5665:2011)、多彩模様塗料(JIS K5667:2003)、合成樹脂エマルション模様塗料(JIS K5668:2010)、アクリル樹脂系非水分散形塗料(JIS K5670:2008)、鉛・クロムフリーさび止めペイント(JIS K5674:2008)、屋根用高日射反射率塗料(JIS K5675:2011)、建物用床塗料(JIS K5970:2008)、建築用塗膜防水材(JIS A6021:2011)、建築用仕上塗材(JIS A6909:2014)、等が挙げられる。
【0077】
本発明の水性被覆材の塗装においては、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、スプレー塗装等の種々の方法を採用することができる。また、工場内で塗装する場合は、上記以外にもロールコーター、フローコーター等を用いて塗装することもできる。
【0078】
水性被覆材の塗付け量については、好ましくは0.05~0.5kg/m(より好ましくは0.07~0.3kg/m)程度である。水性被覆材の塗回数は、下地の状態によって適宜設定すればよいが、好ましくは1~2回である。水性被覆材の乾燥時間は、好ましくは1時間以上1週間以内とすればよい。また乾燥温度は、好ましくは-10℃以上50℃以下、より好ましくは-5℃以上40℃以下であればよい。本発明の水性被覆材は、常温硬化型として好ましいものである。
【0079】
本発明の水性被覆材により形成された塗膜は、多種多様な上塗材に対し優れた密着性を有している。上塗材としては、一般的に建築物の塗装に使用されるものであれば特に限定されるものではなく、その結合材としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂等の有機質結合材、あるいはシリコン樹脂、アルコキシシラン、コロイダルシリカ、ケイ酸塩等の無機質結合材、アクリルシリコン樹脂等の有機無機複合結合材等が挙げられる。特に、本発明では、上記有機質結合材、上記有機無機複合結合材から選ばれる1種以上を含む上塗材との密着性を十分に発揮することができる。
【0080】
具体的な上塗材としては、例えば、建築用耐候性上塗り塗料(JIS K5658:2010)、鋼構造物用耐候性塗料(JIS K5659:2008)、つや有合成樹脂エマルションペイント(JIS K5660:2008)、建築用防火塗料(JIS K5661:1970)、合成樹脂エマルションペイント(JIS K5663:2008)、路面標示用塗料(JIS K5665:2011)、多彩模様塗料(JIS K5667:2003)、合成樹脂エマルション模様塗料(JIS K5668:2010)、アクリル樹脂系非水分散形塗料(JIS K5670:2008)、鉛・クロムフリーさび止めペイント(JIS K5674:2008)、屋根用高日射反射率塗料(JIS K5675:2011)、建物用床塗料(JIS K5970:2008)、建築用塗膜防水材(JIS A6021:2011)、建築用仕上塗材(JIS A6909:2014)、等が挙げられる。
【0081】
上塗材の塗装方法としては、特に限定されず公知の方法で塗装することができるが、例えば、刷毛塗り、コテ塗り、スプレー塗装、ローラー塗装、ロールコーター、フローコーター等種々の方法により塗装することができる。即ち、それぞれの上塗材に最適な塗装仕様で、通常の工程に基づいて、各上塗材を塗装すればよい。
【実施例
【0082】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明の特徴をより明確にする。
【0083】
<硬化剤1~11の製造>
アミノ基含有樹脂(B)と、アミノ基含有シラン化合物(M)を表1に示す混合比で混合したものを硬化剤1~11とした。
なお、原料としては以下のものを使用した。
【0084】
(B)アミノ基含有樹脂
(B-1)ポリアミン樹脂[水可溶型、変性脂肪族ポリアミン及びメタキシレンジアミン含有、固形分80重量%(溶媒;水、含水量20重量%)、活性水素当量y:147]
(B-2)ポリアミン樹脂[水分散型、変性脂肪族ポリアミン及びメタキシレンジアミン含有、固形分60重量%(溶媒;水、含水量40重量%)、活性水素当量y:160]
(B-3)ポリアミン樹脂[水可溶型、メタキシレンジアミンのスチレン付加反応生成物、固形分100重量%、活性水素当量y:103]
【0085】
(M)アミノ基含有シラン化合物[N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、活性水素当量y:103]
【0086】
【表1】
【0087】
<主剤1~20の製造>
水性エポキシ樹脂(A)、(N1)グリシジル基含有シラン化合物、(N2)アルコキシシラン化合物、(P)触媒、添加剤、及び水を表2、3に示す混合比で混合したものを主剤1~20とした。
なお、原料としては以下のものを使用した。
【0088】
(A)水性エポキシ樹脂
(A1)水性エポキシ樹脂[ビスフェノールA型エポキシ樹脂(固形型)水分散体、固形分46重量%、エポキシ当量x508]
(A2-1)エポキシ基含有アクリル樹脂エマルション[スチレン/2-エチルヘキシルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、固形分:33重量%、グリシジルメタクリレート含有量:9重量%、平均粒子径:70nm]
(A2-2)エポキシ基含有アクリル樹脂エマルション[スチレン/2-エチルヘキシルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、固形分:33重量%、グリシジルメタクリレート含有量:9重量%、平均粒子径:150nm]
【0089】
(N1)グリシジル基含有シラン化合物[β-3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、エポキシ当量xn1:246]
(N2-1)アルキルアルコキシシラン化合物[フェニルトリメトキシシラン]
(N2-2)アルキルアルコキシシラン化合物[ジメトキシメチルフェニルシラン]
(P)触媒[有機錫化合物分散液、固形分:10重量%]
・添加剤:消泡剤、増粘剤、造膜助剤等
【0090】
【表2】
【0091】
(実施例1)
表2に示す主剤1(337.4重量部)と、表1に示す硬化剤1(100重量部)を混合した水性被覆材(クリヤー型水性被覆材)を使用し、下記の評価を実施した。
<可使時間>
主剤と、硬化剤を混合後、流動性が失われるまでの時間を測定した。評価基準は、以下の通りである。結果は、表3に示す。
A:240分以上
B:120分以上240分未満
C:30分以上120分未満
D:30分未満
【0092】
<密着性評価1>
・試験体[I]
既存塗膜として無機質クリヤー塗膜が形成されたサイディングボード上に、主剤と硬化剤を表3に示す組み合わせで混合して得られた水性被覆材(クリヤー型水性被覆材)を塗付け量0.1kg/mとなるように混合直後に塗付し、標準状態(気温23℃、相対湿度50%)で4時間乾燥させ、次いで、水性上塗材(アクリルシリコン樹脂エマルション塗料)を塗付け量0.1kg/mとなるように塗付し、50℃環境下で、1日間乾燥させた試験体[I]を作製した。
【0093】
作製した試験体[I]を、JIS K 5600-5-6に準じた碁盤目テープ法にて密着性を評価した。結果は表3に示す。
評価基準は、以下の通りである。
AA:欠損部面積が5%未満
A:欠損部面積が5%以上10%未満
AB:欠損部面積が10%以上25%未満
B:欠損部面積が25%以上40%未満
C:欠損部面積が40%以上55%未満
D:欠損部面積が55%以上
【0094】
<密着性評価2>
・試験体[II]
硬化剤として、50℃下で7日間貯蔵後の硬化剤1~11を使用した以外は、試験体[I]と同様の手順で水性被覆材、及び水性上塗材を塗付、乾燥させ試験体[II]を作製した。
作製した試験体[II]について、上記試験体[I]と同様に密着性を評価した。結果は表3に示す。
【0095】
(実施例2~8、比較例1~3)
表2に示す主剤(各合計重量部)と、表1に示す硬化剤2~11(各合計重量部)をそれぞれ混合した水性被覆材(クリヤー型水性被覆材)を使用し、上記と同様に可使時間、及び密着性評価1~2を実施した。なお、主剤と硬化剤の組み合わせは表3に示す。例えば、実施例2では主剤1(337.4重量部)と、硬化剤2(75重量部)を混合している。
【0096】
実施例1~8は、基材及び上塗材と良好な密着性を有するものであった。また、実施例2~4、及び実施例8は、硬化剤の貯蔵後においても良好な密着性を有するものであった。
一方、比較例1~3は、基材との密着性が不十分であった。
【0097】
<密着性評価3>
次いで、実施例3、及び8について、以下の試験体[III]、[IV]、[V]、[VI]を作製し、上記試験体[I]と同様に密着性を評価した。結果は表3に示す。
【0098】
・試験体[III]~[V]
既存塗膜として無機質クリヤー塗膜が形成されたサイディングボード上に、水性被覆材を塗付け量0.1kg/mとなるように混合直後に塗付し、標準状態(気温23℃、相対湿度50%)で4時間乾燥させ、次いで、水性上塗材(アクリルシリコン樹脂エマルション塗料)を塗付け量0.1kg/mとなるように塗付し、標準状態で、1日間乾燥させた試験体[III]、4日間乾燥させた試験体[IV]、7日間乾燥させた試験体[V]を作製した。
【0099】
・試験体[VI]
既存塗膜として無機質クリヤー塗膜が形成されたサイディングボード上に、水性被覆材を塗付け量0.1kg/mとなるように混合直後に塗付し、50℃環境下で7日間乾燥させ、次いで、水性上塗材(アクリルシリコン樹脂エマルション塗料)を塗付け量0.1kg/mとなるように塗付し、標準状態で、1日間乾燥させた試験体[VI]を作製した。
【0100】
実施例3、及び8において、良好な密着性を有するものであった。
【0101】
【表3】
【0102】
(実施例9~27)
表2に示す各主剤(各合計重量部)と、硬化剤3(50重量部)をそれぞれ混合した水性被覆材(クリヤー型水性被覆材)を使用し、上記と同様に可使時間、及び密着性評価1~3を実施した。なお、主剤と硬化剤の組み合わせ及び結果は、表4に示す。
(実施例28~46)
表2に示す各主剤(各合計重量部)と、硬化剤8(25重量部)をそれぞれ混合した水性被覆材(クリヤー型水性被覆材)を使用し、上記と同様に可使時間、及び密着性評価1~3を実施した。なお、主剤と硬化剤の組み合わせ及び結果は、表5に示す。
【0103】
実施例9~46において、基材及び上塗材と良好な密着性を有するものであった。特に、実施例15、17、19~26、34、36、38~45においては、すべて評価A以上であり、十分な密着性を有するものであった。そこで、これらについて、耐水性評価を実施した。
【0104】
<耐水性評価>
既存塗膜として黒色アクリル板(150mm×200mm×3mm)上に、主剤と硬化剤を混合して得られた水性被覆材を塗付厚み0.15mmとなるように混合直後に塗付し、標準状態(気温23℃、相対湿度50%)で1日間乾燥させた試験体[VII]を作製した。それぞれの試験体を20℃の水に24時間浸漬させた後、試験体を取り出し、乾燥(23℃、3時間)させ、塗膜状態を目視にて、膨れ、剥れ、白化等を観察し評価した。
評価基準は、ほぼ異常がなかったものを「AA」、異常があったものを「D」とする6段階評価(AA>A>AB>B>C>D)評価とした。結果は、表4、表5に示す。
【0105】
【表4】
【0106】
【表5】