(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】回路遮断器のハンドル構造
(51)【国際特許分類】
H01H 71/52 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
H01H71/52
(21)【出願番号】P 2020148439
(22)【出願日】2020-09-03
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕史
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-287576(JP,A)
【文献】特開2009-176618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 69/00 - 69/01
H01H 71/00 - 83/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルの傾倒操作により、リンク部材を介して開閉機構部が閉動作し、電路がオンする回路遮断器のハンドル構造であって、
オン/オフのそれぞれの状態は、前記ハンドルの回動軸と前記リンク部材と開閉機構部との連結部を結ぶ第1の直線と、前記リンク部材のハンドル連結部と前記開閉機構部との連結部を結ぶ第2の直線との成す角度が、途中0度の重なり合う状態を経て、正負の相反する角度の状態を生成し、オン状態は前記第1の直線と前記第2の直線との成す角度が、3~6度の間の一定の角度を保持して
成る一方、
傾倒操作された前記ハンドルは、ハンドルが配置された遮断器のケースの上面に当接する部位を有し、当該上面に当接することで前記第1の直線と前記第2の直線との成す角度が前記一定の角度で保持され、
前記ハンドルの前記当接する部位の突出量を変えることで、オン状態での前記第1の直線と、前記第2の直線との成す角度の変更が可能であることを特徴とする回路遮断器のハンドル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回路遮断器のハンドル構造に関し、詳しくはハンドルによるオフ操作の操作性を改善したハンドル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
回路遮断器は、接点の接続性能(通電時の温度上昇の抑制等の短絡性能)を向上させる場合、接点圧即ち可動接点と固定接点との密着力を上げる工夫が成されるが、トグル式の開閉機構部の場合、接点圧を上げるとハンドルのオン/オフ操作の操作荷重が重くなり、操作性に難が生ずる。また、連動する複数の開閉機構部を1つのハンドルで同時に操作する場合も操作荷重が重くなる。
この問題の解消としては、単純にハンドルを長くすることが考えられるが、広い操作空間が必要になるし、回路遮断器の収容空間を含めた大幅な設計変更を伴うため現実的ではない。
そのため、例えば特許文献1に記載されているような技術が提案されている。特許文献1では、スライド操作部材をハンドルに取り付けて、操作性の改善が図られた。
【0003】
一方で、オフ状態では遮断器のケース上に起立した状態にあるハンドルを、傾倒することでオンさせ、オン状態でハンドルが遮断器のケース上面に略平行となるよう構成された回路遮断器が普及している(例えば、特許文献2参照)。このようにオン状態をハンドルの傾倒操作で生成することで、オン状態にあることを認識し易くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-176618号公報
【文献】特開2005-158394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているような新たな部材をハンドルに取り付ける構成は、部品点数が増加して、コスト増を招いた。
一方で、特許文献2に示すような傾倒操作でオンさせる構成は、操作荷重が大きくてもオン操作はそれほど苦にならないが、オフ操作はハンドルの起立操作になるため、その場合操作荷重が大きくなると操作し辛くなった。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、オフ操作がハンドルを起立させる操作となる構成において、新たな部材を設けること無く、操作荷重が比較的大きくてもスムーズにオフ操作できる回路遮断器のハンドル構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、ハンドルの傾倒操作により、リンク部材を介して開閉機構部が閉動作し、電路がオンする回路遮断器のハンドル構造であって、オン/オフのそれぞれの状態は、ハンドルの回動軸とリンク部材と開閉機構部との連結部を結ぶ第1の直線と、リンク部材のハンドル連結部と開閉機構部との連結部を結ぶ第2の直線との成す角度が、途中0度の重なり合う状態を経て、正負の相反する角度の状態を生成し、オン状態は第1の直線と第2の直線との成す角度が、3~6度の間の一定の角度を保持して成る一方、傾倒操作されたハンドルは、ハンドルが配置された遮断器のケースの上面に当接する部位を有し、当該上面に当接することで第1の直線と第2の直線との成す角度が一定の角度で保持され、ハンドルの当接する部位の突出量を変えることで、オン状態での第1の直線と、第2の直線との成す角度の変更が可能であることを特徴とする。
この構成によれば、オン状態は、ハンドルの回動軸とリンク部材と開閉機構部との連結部を結ぶ第1の直線と、リンク部材のハンドル連結部と開閉機構部との連結部を結ぶ第2の直線との成す角度が、3~6度の間の一定の角度であるため、例えば11度に対しては十分小さく、ハンドルを起立させてオフ操作する力は比較的小さな力で済む。
【0008】
加えて、ハンドルの特定部位の厚みを変えることで、第1の直線と第2の直線との成す角度を変更できる。よって、ハンドルのみ変更する簡易な設計変更で好ましい角度に調整でき、低コストで実施できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、オン状態は、ハンドルの回動軸とリンク部材と開閉機構部との連結部を結ぶ第1の直線と、リンク部材のハンドル連結部と開閉機構部との連結部を結ぶ第2の直線との成す角度が、3~6度の間の一定の角度であるため、例えば11度に対しては十分小さく、ハンドルを起立させてオフ操作する力は比較的小さな力で済む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る回路遮断器のハンドル構造の一例を示し、ケースを開けた回路遮断器の側面図である。
【
図4】従来の回路遮断器のハンドル構造を示し、ケースを開けた回路遮断器の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る回路遮断器のハンドル構造の一例を示し、ケースを開けて内部を露出させた回路遮断器の側面図である。
図1において、2は電源側端子、3は負荷側端子、4はハンドル、5は可動接点5a及び固定接点5bとから成る接点部、6はハンドル4の操作を受けて接点部5の開閉を実施する開閉機構部であり、オン状態の回路遮断器を示している。
【0012】
電源側端子2は遮断器のケース1の背部に配置され、負荷側端子3は前面側に配置されている。両端子2,3の間には可撓導線等から成る電路9が配設され、ハンドル4はケース1の上面に配置されている。
また、ハンドル4と開閉機構部6とはリンク部材7で連結され、ハンドル4を後方へ傾倒するとオンし、起立させるとオフするよう構成されている。
【0013】
ハンドル4は、リンク部材7を介して開閉機構部6を構成する作動板8に連結されている。作動板8は、引き外し部材14と共にラッチ機構を構成し、一端に形成された係止片8aが、引き外し部材14の上端に係止することで、オン状態が保持される。
尚、引き外し部材14は、過電流検知動作する電磁引き外し素子11、及びバイメタル片12の作用で回動軸14aを中心に揺動し、作動板8との係止状態が解除される。即ちラッチが解除される。結果、開閉機構部6がオフ動作して接点部5が解放され、電路9が遮断される。
【0014】
リンク部材7は、コ字状に折り曲げられた金属製棒体であり、一端がハンドル4の連結孔4aに挿入され、他端が作動板8の連結孔8bに挿入され、ハンドル4と開閉機構部6とを連結している。
尚、作動板8は、図示しない付勢手段により常時上方に付勢されており、ハンドル4の操作を受けたリンク部材7により、下方に押圧されて係止片8aが引き外し部材14に係止している。
【0015】
図2は
図1のA部の拡大図である。
図2に示すように、オン状態では、ハンドル4の後部側面4cがケース1の上面に当接した状態となる。そして、オン状態でハンドル4の回動軸4bと作動板8のリンク部材7の連結孔8bとを結ぶ直線(第1の直線)S1と、ハンドル4のリンク部材7を連結する連結孔4aと作動板8のリンク部材7を連結する連結孔8bとを結ぶ直線(第2の直線)S2との成す角度θ1は小さく、ここではθ1=4度となっている。
【0016】
一方、
図3はオフ状態の回路遮断器のケース1を開けた側面図である。
図3に示すように、ハンドル4を起立させることでオフ状態となる。ハンドル4には所定の起立角度で停止するストッパー(図示せず)があり、
図3に示す角度で停止し、この状態が保持される。
このオフ状態では、第1の直線S1と第2の直線S2の関係が、途中重なって0度に成った後、更に反転して両直線S1,S2の成す成す角度は、例えばθ2=26度(-26度)となり、その角度が保持される。
【0017】
このように、オン状態でのハンドル4の回動軸4bと作動板8のリンク部材7の連結孔8bとを結ぶ第1の直線S1と、ハンドル4のリンク部材7を連結する連結孔4aと作動板8のリンク部材7を連結する連結孔8bとを結ぶ第2の直線S2との成す角度θ1は4度と、後述する従来の11度に対して十分小さいため、ハンドル4を起立させてオフ操作する力は比較小さな力で済む。
【0018】
図4、5は、上記本発明の構成に対比するために示す従来の回路遮断器のハンドル構造の説明図であり、
図4はケース1を開けた回路遮断器の側面図、
図5はB部拡大図である。
図4に示すように、ケース1の形状、端子2,3やハンドル4の位置、開閉機構部6等は、上記
図1に示す構造と共通であるがハンドル4の形状が異なっている。
図5に示すように、ハンドル4の傾倒方向の厚みが異なり、従来のハンドル4は薄く形成されている。逆に、
図2にD1で示しているように、発明の構成のハンドル4は
図5のハンドル4に対して、傾倒方向の厚みをD1に示す量だけ増加させている。
その結果、第1の直線S1と第2の直線S2の成す角度が、
図5では11度(θ3)であるのに対し、上記発明の構造ではオン状態の第1の直線S1と第2の直線S2の成す角度は4度(θ1)となる。
【0019】
本発明では、ハンドル4及び開閉機構部6の各種部材を製造するにあたり、製造上の寸法精度の向上、更には組み立て制度の向上を図った。結果、単にハンドル4の厚みを変えるだけで、オン操作時の第1の直線S1と第2の直線S2との成す角度を、従来より小さくした状態でも安定させることを可能とした。結果、リンク部材7を介してハンドル4に加わる応力を小さくしている。
例えば、第1の直線S1と第2の直線S2との成す角度が、11度から4度になることで、リンク部材7を介してハンドル4に加わる応力が同一であっても、支点と作用点との間の距離(回動軸4bから第2の直線S2までの距離(
図5に示す距離L1))が約3分の1に成るため、起立操作に必要な力が約3分の1となる。
【0020】
このように、ハンドル4の前後方向の厚みを変えることで、第1の直線S1と第2の直線S2との成す角度を変更できる。よって、ハンドル4のみ変更する簡易な設計変更で好ましい角度に調整でき、低コストで実施できる。
【0021】
尚、上記実施形態では、ハンドル4の前後方向の厚みを従来より肉厚にして、オン状態の第1の直線S1と第2の直線S2との成す角度を小さくしたが、ハンドル4の形状は従来と変えず、ケース1上部のハンドル4が当接する部位を盛り上げてオン状態の角度を小さくしても良い。また、ハンドル4の後部側面4c全体を肉厚にして実現させているが、ハンドル4の後部側面4cの一部を突出させるだけでも良い。
更に、オン状態の第1の直線S1と第2の直線S2との成す角度を4度としたが、3~6度の間であれば良く、従来の11度の状態に比べて小さな力でオフ操作が可能となる。
【符号の説明】
【0022】
1・・ケース、4・・ハンドル、4b・・回動軸、5・・接点部、6・・開閉機構部、7・・リンク部材、8・・作動板、9・・電路、14・・引き外し部材、S1・・第1の直線、S2・・第2の直線。