(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】加熱調理システム
(51)【国際特許分類】
A47J 37/06 20060101AFI20240726BHJP
A47J 27/00 20060101ALI20240726BHJP
F24C 3/12 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
A47J37/06 366
A47J27/00 109L
F24C3/12 A
(21)【出願番号】P 2020157709
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕康
(72)【発明者】
【氏名】水野 達彦
(72)【発明者】
【氏名】土橋 洋樹
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-253813(JP,A)
【文献】特開平10-258097(JP,A)
【文献】特開2005-207694(JP,A)
【文献】特開平09-252933(JP,A)
【文献】特開2017-187706(JP,A)
【文献】特開2000-241363(JP,A)
【文献】特開平04-266727(JP,A)
【文献】特開2019-208665(JP,A)
【文献】特開2018-169133(JP,A)
【文献】特開2001-169903(JP,A)
【文献】特開2021-181878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 9/00-47/20
F24C 1/00-15/36
F24B 1/00-15/10
H05B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と、前記容器本体を上方から覆いつつ嵌合する容器蓋とからなる調理容器
を使用可能な加熱調理器と、撮像装置とからなる加熱調理システムにおいて、
前記容器本体は、前記容器蓋の周縁が載置される載置部を有し、
前記載置部には、前記容器蓋が前記容器本体に嵌合しているときに前記容器蓋に覆われ、前記容器蓋が前記容器本体に嵌合していないときに少なくとも一部が外部に現れる識別体が設けられ、
前記撮像装置は、
前記加熱調理器のコンロ上又はグリル上の調理容器を含む領域を撮像して撮像画像を取得する撮像部と、
前記容器蓋が前記容器本体に嵌合しているときの前記調理容器の画像からなるテンプレート画像を記憶する記憶部と、
前記撮像部が撮像した前記撮像画像と前記記憶部に記憶された前記テンプレート画像とを比較して、前記コンロ上又はグリル上の調理容器が当該記憶された前記調理容器と認識された場合に、前記撮像装置が前記識別体を検知することにより前記容器蓋が前記容器本体に嵌合しているか否かを判定する判定部と、
を備えていることを特徴とする加熱調理システム。
【請求項2】
前記識別体は前記載置部の略全周に設けられ、
前記識別体が前記容器本体の他の部分と色彩が異なる、又は前記識別体として模様若しくは標章が付されていることを特徴とする請求項1に記載の
加熱調理システム。
【請求項3】
容器本体と、前記容器本体を上方から覆いつつ嵌合する容器蓋とからなる調理容器
を使用可能な加熱調理器と、撮像装置とからなる加熱調理システムにおいて、
前記容器本体は、前記容器蓋の周縁が載置される載置部を有し、
前記容器蓋と前記載置部には、前記容器蓋が前記容器本体に嵌合しているときに連続した一体形状となり、前記容器蓋が前記容器本体に嵌合していないときに当該一体形状がずれる又は途切れる識別体が設けられ、
前記撮像装置は、
前記加熱調理器のコンロ上又はグリル上の調理容器を含む領域を撮像して撮像画像を取得する撮像部と、
前記容器蓋が前記容器本体に嵌合しているときの前記調理容器の画像からなるテンプレート画像を記憶する記憶部と、
前記撮像部が撮像した前記撮像画像と前記記憶部に記憶された前記テンプレート画像とを比較して、前記コンロ上又はグリル上の調理容器が当該記憶された前記調理容器と認識された場合に、前記撮像装置が前記識別体のずれ若しくは途切れを検知することにより前記容器蓋が前記容器本体に嵌合しているか否かを判定する判定部と、
を備えていることを特徴とする加熱調理システム。
【請求項4】
前記加熱調理器又は前記撮像装置は、報知部を備え、
前記報知部は、前記判定部が前記識別体を一定時間検知したか、又は前記識別体のずれ若しくは途切れを一定時間検知した場合に報知を行うことを特徴とする請求項
1~3の何れか1項に記載の加熱調理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理容器、及び当該調理容器を使用可能な加熱調理器が含まれる加熱調理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グリル庫内を加熱するグリルバーナを有し、調理物を入れた調理容器をグリル庫内に収納し、加熱調理することができる加熱調理器が知られている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1の加熱調理器では、グリル庫内に、ダッチオーブン(無水調理器)のような金属製又は陶器製の調理器具が収納される。ダッチオーブンとは、容器本体と容器蓋とが別部材の調理容器であり、無水調理を行うことができる。
【0004】
この加熱調理器は、グリル庫内の上壁の中央部に、調理容器を上方から加熱するための上火バーナが設けられている。また、グリル庫内の左右の側壁の中央部より下方位置に、調理容器を側方及び下方から加熱するための下火バーナが設けられている(特許文献1/段落0021、
図2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の加熱調理器において、グリル調理の場合には、調理容器の容器本体と容器蓋とが完全に閉じているかの見分けがつき難い。そして、容器本体に対して容器蓋が完全に閉じていない(異常セット)状態でグリル調理を開始することで、調理に失敗してしまうという問題があった。
【0007】
また、コンロバーナ上で当該調理容器を用いる場合も同様であり、使用者が、容器本体に対して容器蓋が完全に閉じていない状態に気付かず調理を行い、失敗するケースがあった。
【0008】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、容器本体に対して容器蓋が正しくセットされているかを判別して、調理の失敗を防止することができる調理容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1の発明は、容器本体と、前記容器本体を上方から覆いつつ嵌合する容器蓋とからなる調理容器を使用可能な加熱調理器と、撮像装置とからなる加熱調理システムにおいて、
前記容器本体は、前記容器蓋の周縁が載置される載置部を有し、
前記載置部には、前記容器蓋が前記容器本体に嵌合しているときに前記容器蓋に覆われ、前記容器蓋が前記容器本体に嵌合していないときに少なくとも一部が外部に現れる識別体が設けられ、
前記撮像装置は、
前記加熱調理器のコンロ上又はグリル上の調理容器を含む領域を撮像して撮像画像を取得する撮像部と、
前記容器蓋が前記容器本体に嵌合しているときの前記調理容器の画像からなるテンプレート画像を記憶する記憶部と、
前記撮像部が撮像した前記撮像画像と前記記憶部に記憶された前記テンプレート画像とを比較して、前記コンロ上又はグリル上の調理容器が当該記憶された前記調理容器と認識された場合に、前記撮像装置が前記識別体を検知することにより前記容器蓋が前記容器本体に嵌合しているか否かを判定する判定部と、
を備えていることを特徴とする。
【0010】
第1の発明の調理システムは、載置部に、容器蓋が容器本体に嵌合しているときは容器蓋に覆われ、容器蓋が容器本体に嵌合していないときには少なくとも一部が外部に現れる識別体が設けられている。使用者は、識別体を視認した場合に容器蓋が容器本体に嵌合しておらず、容器蓋が正しくセットされていない(異常セット)と認識する。本調理容器は、容器蓋が容器本体に正しくセットされているかが容易に判別できるので、調理の失敗を防止することができる。また、撮像装置の撮像部は、加熱調理器のコンロ上又はグリル上の調理容器を含む領域を撮像し、撮像画像を取得する。判定部は、撮像部が撮像した撮像画像と、記憶部に記憶されたテンプレート画像とを比較する。ここで、テンプレート画像は、容器蓋が容器本体に嵌合しているときの調理容器の画像からなる。このため、コンロ上又はグリル上の調理容器が予め記憶されている調理容器として認識が可能ものであり、さらに識別体が検知された場合、又は一体形状の識別体のずれ若しくは途切れが検知された場合には、容器蓋が容器本体に嵌合しておらず、正常にセットされていない(異常セット)と判定される。加熱調理システムは、容器蓋が正しくセットされていない事象を自動で認識することができるので、調理の失敗を確実に防止することができる。
【0011】
第1の発明の調理システムにおいて、前記識別体は前記載置部の略全周に設けられ、
前記識別体が前記容器本体の他の部分と色彩が異なる、又は前記識別体として模様若しくは標章が付されていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、識別体が載置部のほぼ全周に設けられているので、容器蓋が少しでもずれていれば、識別体が外部に現れて、使用者に視認される。また、識別体として、容器本体の他の部分とは異なる色彩が施されているか、模様や標章(マーク)が付されていてもよい。これにより、使用者は、容器蓋が容器本体に正しくセットされているかを容易に判別することができる。
【0013】
また、上記目的を達成するため、第2の発明は、容器本体と、前記容器本体を上方から覆いつつ嵌合する容器蓋とからなる調理容器を使用可能な加熱調理器と、撮像装置とからなる加熱調理システムにおいて、
前記容器本体は、前記容器蓋の周縁が載置される載置部を有し、
前記容器蓋と前記載置部には、前記容器蓋が前記容器本体に嵌合しているときに連続した一体形状となり、前記容器蓋が前記容器本体に嵌合していないときに当該一体形状がずれる又は途切れる識別体が設けられ、
前記撮像装置は、
前記加熱調理器のコンロ上又はグリル上の調理容器を含む領域を撮像して撮像画像を取得する撮像部と、
前記容器蓋が前記容器本体に嵌合しているときの前記調理容器の画像からなるテンプレート画像を記憶する記憶部と、
前記撮像部が撮像した前記撮像画像と前記記憶部に記憶された前記テンプレート画像とを比較して、前記コンロ上又はグリル上の調理容器が当該記憶された前記調理容器と認識された場合に、前記撮像装置が前記識別体のずれ若しくは途切れを検知することにより前記容器蓋が前記容器本体に嵌合しているか否かを判定する判定部と、
を備えていることを特徴とする。
【0014】
第2の発明の調理システムは、容器蓋と容器本体の載置部に、容器蓋が容器本体に嵌合しているときは連続した一体形状となり、容器蓋が容器本体に嵌合していないときには当該一体形状がずれる又は途切れる識別体が設けられている。使用者は、嵌合時には一体形状(例えば、直線状の模様)となる識別体のずれ又は途切れを認識した場合には、容器蓋が容器本体に嵌合しておらず、容器蓋が正しくセットされていない(異常セット)と認識する。本調理容器は、容器蓋が容器本体に正しくセットされているかが容易に判別できるので、調理の失敗を防止することができる。また、撮像装置の撮像部は、加熱調理器のコンロ上又はグリル上の調理容器を含む領域を撮像し、撮像画像を取得する。判定部は、撮像部が撮像した撮像画像と、記憶部に記憶されたテンプレート画像とを比較する。ここで、テンプレート画像は、容器蓋が容器本体に嵌合しているときの調理容器の画像からなる。このため、コンロ上又はグリル上の調理容器が予め記憶されている調理容器として認識が可能ものであり、さらに識別体が検知された場合、又は一体形状の識別体のずれ若しくは途切れが検知された場合には、容器蓋が容器本体に嵌合しておらず、正常にセットされていない(異常セット)と判定される。加熱調理システムは、容器蓋が正しくセットされていない事象を自動で認識することができるので、調理の失敗を確実に防止することができる。
【0017】
第1または第2の発明の加熱調理システムにおいて、
前記加熱調理器又は前記撮像装置は、報知部を備え、
前記報知部は、前記判定部が前記識別体を一定時間検知したか、又は前記識別体のずれ若しくは途切れを一定時間検知した場合に報知を行うことが好ましい。
【0018】
この構成によれば、判定部が識別体を一定時間検知したとき、報知部が異常セットを報知する。また、一体形状の識別体の場合は、判定部が当該識別体のずれ若しくは途切れを一定時間検知したとき、報知部が異常セットを報知する。これにより、使用者がコンロ上又はグリル上の調理容器に対して、容器蓋を外して中身を確認する場合等の報知の必要がない場合に、報知しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る加熱調理システムの概略図。
【
図3】(a)調理容器の斜視図(容器蓋を閉じた状態)。(b)調理容器の斜視図(容器蓋を持ち上げた状態)。(c)調理容器の断面図(正常セット状態)。
【
図4A】撮像装置の撮像領域を説明する図(コンロ上)。
【
図4B】撮像装置の撮像領域を説明する図(グリル庫内)。
【
図5A】(a)容器本体の上面図(容器蓋なし)。(b)調理容器の上面図(正常セット状態)。(c)調理容器の上面図(異常セット状態)。
【
図5B】(a)調理容器の上面図(正常セット状態)。(b)調理容器の上面図(異常セット状態)。
【0020】
以下では、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0021】
初めに、
図1を参照して、本発明(第3の発明)の実施形態に係る加熱調理システム1について説明する。加熱調理システム1は、主に加熱調理器10と撮像装置20とで構成され、撮像装置20は、加熱調理器10による調理の状況等を撮像できるシステムとなっている。
【0022】
まず、加熱調理器10について説明すると、加熱調理器10の前面側の中央部にグリル扉2が設けられている。グリル扉2は、加熱調理器10の内部に設けられたグリル庫2aに被加熱物を出し入れする際に、グリル庫2aの前面開口部を開閉する。
【0023】
加熱調理器10は、システムキッチンのカウンタトップWに組み込むビルトイン式であり、上面を開放面とする箱形のコンロ本体3を備えている。コンロ本体3の上部には天板4が設けられ、天板4からはコンロ本体3に支持されたコンロバーナ5,6,7が上方に露出している。ここで、コンロバーナ5上には、調理容器9が置かれている。なお、調理容器9は、容器本体と容器本体を上方から覆う容器蓋とからなる、いわゆる無水調理器である。
【0024】
また、加熱調理器10の前面側におけるグリル扉2の両側には、各コンロバーナ5,6,7、及びグリル庫2a内のグリルバーナ8の点消火ボタン13a~13dと、電源スイッチ13eが設けられている。
【0025】
各点消火ボタン13a~13dはプッシュ式であって、前面パネルに没入した
図1に示す消火位置から一旦押し込んで押込み解除することにより前面パネルの前方の燃焼位置に突出し、この状態で火力調節のために回動操作することができるようになっている。
【0026】
電源スイッチ13e、各バーナ5~8の点消火ボタン13a~13dの操作検知スイッチ(図示省略)からの信号は、各バーナ5~8の火炎検知素子からの信号と共にマイクロコンピュータからなる、後述する制御部11に入力される。そして、制御部11によりイグナイタ、元弁及び各ガス弁装置が制御される。
【0027】
次に、撮像装置20について説明する。撮像装置20は加熱調理器10の上方位置であって、換気扇用フードの下端枠30に取り付けられている。詳細は後述するが、撮像装置20の撮像部21は、加熱調理器10のコンロバーナ5~7が含まれる撮像領域と、グリル庫2aが含まれる撮像領域とを撮像することができる。
【0028】
次に、
図2を参照して、加熱調理器10及び撮像装置20の内部構成を説明する。
【0029】
まず、加熱調理器10は、制御部11と、操作部13とで構成されている。制御部11は、主にコンロバーナ5~7及びグリルバーナの火力制御を行う。制御部11は、点消火ボタン13a~13d等からなる操作部13の操作指令を受けて、各コンロバーナのオン又はオフを行う。
【0030】
次に、撮像装置20は、撮像部21と、判定部23と、記憶部25と、報知部27とで構成されている。撮像部21は、例えばWebカメラであり、コンロバーナ5~7及びその周辺領域(引き出された状態のグリル庫2aを含む)を撮像可能な位置に設置されている。撮像部21は、ズームイン、ズームアウトや角度を調整することができ、撮像領域の位置を変更可能であることが好ましい。
【0031】
撮像部21は、コンロバーナ5~7及びその周辺領域を撮像し、撮像画像(静止画又は動画)を判定部23に送信する。判定部23は、撮像画像と記憶部25に格納されたテンプレート画像とを比較して、まずは調理容器が、予め登録された無水調理器であるか否かを判定する。そして、無水調理器であった場合に、さらに容器本体に対する容器蓋の嵌合が正常であるか否かを判定する。
【0032】
記憶部25に格納されたテンプレート画像は、容器蓋が容器本体に嵌合しているときの調理容器の画像で構成される。なお、加熱調理器10用の蓋付き調理容器が複数種類ある場合は、それぞれの調理容器の画像が記憶部25に記憶され、登録されている。
【0033】
次に、
図3を参照して、本発明(第1の発明)の調理容器について説明する。
図3(a)に示すように、調理容器9の容器蓋9bを閉じた状態では、容器本体9aの上方に容器蓋9bが載置される。また、
図3(b)に、容器蓋9bを持ち上げた状態を示す。詳細は後述するが、容器本体9aの縁部(フランジ)は、容器蓋9bの縁部(周縁9b1)が載置される載置部9a1を有している。
【0034】
また、
図3(c)に、調理容器9の断面図(正常セット状態)を示す。容器本体9aは、壁部9a2を有している。壁部9a2は容器本体9aの高さ(深さ)方向に延び、最下部で底面9a3(
図3(b)参照)と接続されている。また、壁部9a2は、その最上部で載置部9a1と接続されている。載置部9a1の壁部9a2側の端部には、識別体Pが設けられている。
【0035】
容器蓋9bの上面9b2は所定の高さを有するが、容器本体9aの底面9a3に略平行な板部であり、端部は周縁9b1と接続されている。また、容器蓋9bは、上面9b2から周縁9b1よりも下方に延びる嵌合部9b3を有している。本発明において「嵌合」とは、容器蓋9bの嵌合部9b3が、容器本体9aの被嵌合部である壁部9a2に内嵌されることにより、容器本体9aと容器蓋9bが一体となることをいう。
【0036】
嵌合部9b3が、容器本体9aの載置部9a1に外嵌される態様であってもよい。また、本体容器9の壁部9a2が、その最上部において本体容器9の中心方向に突出した突起部を有する形態もあり得る。この場合、当該突起部が、容器本体9aの被嵌合部に相当する。
【0037】
また、載置部9a1上には、その全周に亘り、容器蓋9bが容器本体9aに嵌合している場合に容器蓋9b(周縁9b1)よって覆われる識別体Pが設けられている。容器蓋9bが嵌合していない場合には識別体Pの少なくとも一部が検知されるため、判定部23は、容器蓋9bが容器本体9aに嵌合せず、容器蓋9bが容器本体9aに正しくセットされていない状態(異常セット状態)を検出することができる。周縁9b1は、容器本体9aの載置部9a1と同等か、それ以下の大きさであることが好ましい。また、識別体Pは、一部分が欠けた周状(ほぼ全周の形状)であってもよい。
【0038】
なお、判定部23は、コンロバーナ5~7の炎の状態、又はコンロバーナ5~7のそれぞれの位置に調理容器9が置かれているか否かを認識し、コンロバーナ5~7のうちどれが使用中で、どれが使用中でないか等も判定することもできる。
【0039】
報知部27は、判定部23が識別体Pを一定時間(例えば、数十秒)検知した場合に報知を行う。例えば、使用者がコンロバーナ5~7上の調理容器9に対して、容器蓋9bを外して中身を確認するような場合は、識別体Pの検知が数秒であって一定時間に到達しないため、報知が行われない。なお、この報知は、警告音や音声で行われることが好ましい。
【0040】
また、報知部27は、判定部23が識別体Pのほぼ全周を検知した場合に、容器蓋9bが容器本体9aに載置されていない旨の報知を行うことができる。この場合、調理中に容器蓋9bが開けられたと判断して、その旨の報知を行ってもよい。なお、この報知を行った場合でも、容器蓋9bがない状態で調理を継続することができる。
【0041】
次に、
図4A、
図4Bを参照して、撮像装置20の撮像領域を説明する。
【0042】
図4Aは、撮像装置20により加熱調理器10のコンロバーナ5~7の上面を撮像したときの様子を示している。判定部23は、撮像画像からコンロバーナ5上の調理容器9を検知し、調理容器9の周辺領域R1に注目する。もちろん、調理容器9がコンロバーナ6上にあれば、その周辺領域に注目することになる。
【0043】
判定部23は、テンプレート画像と比較して調理容器9が無水調理器であると判定した後、識別体Pの検知を行って容器本体9aに対して容器蓋9bが異常セット状態となっていないかを判定する。判定部23は、容器本体9aの識別体Pが検知された場合に、異常セット状態と判定する。
【0044】
次に、
図4Bは、撮像装置20により加熱調理器10のグリル庫2a(一部、引き出された状態)の上面を撮像したときの様子を示している。判定部23は、撮像画像からグリル庫2a上の調理容器9を検知し、調理容器9の周辺領域R2に注目する。その後、判定部23は、テンプレート画像を用いて調理容器9が無水調理器であると判定した後、容器本体9aに対して容器蓋9bが異常セット状態となっていないかを判定する。
【0045】
判定部23は、テンプレート画像と比較して調理容器9が無水調理器であると判定した後、さらに容器本体9aの識別体Pが検知された場合に、異常セット状態と判定する。
【0046】
ここで、
図5Aに、調理容器9の上面図を示す。
図5A(a)は容器本体9aの上面図であるが、容器本体9aは、容器蓋9bの周縁9b1が載置される載置部9a1を有している。また、載置部9a1上に識別体Pが設けられている。
【0047】
図5A(b)に示すように、識別体Pは、容器蓋9bが容器本体9aに嵌合している場合(正常セット状態)は、使用者が視認できない位置に設けられている。識別体Pは、容器本体9aの他の部分(特に、容器蓋9bが載置される縁部)と異なる色彩となっていることが好ましい。これにより、判定部23は、容器蓋9bが容器本体9aに正常にセットされていることを判断することができる。
【0048】
図5A(c)に示すように、容器蓋9bが容器本体9aに嵌合してない場合(異常セット状態)は、撮像装置20が撮像した撮像画像から、異常セット状態が認識され易くなる。これにより、判定部23は、識別体Pの検知により、容器蓋9bのセットが異常であると判断することができる。
【0049】
なお、識別体の別態様としては、載置部9a1に沿うように所定の模様が施されていたり、図形、マーク、文字等の標章が付されていたりと、視覚的に区別可能になっているものであればよい。
【0050】
また、識別体は、
図5Bに示すような形態であってもよい。以下では、
図5Bを参照して、本発明(第2の発明)の調理容器について説明する。
【0051】
図5B(a)は、容器本体19aと容器蓋19bとからなる調理容器19の上面図である。容器本体19aは、容器蓋19bの周縁が載置される載置部19a1を有している。また、載置部19a1と容器蓋19bの上面に、それぞれ識別体Qa,Qbが設けられている。容器蓋19bが容器本体19aに嵌合している場合(正常セット状態)は、識別体Qaと識別体Qbとは連続した直線状の一体形状(識別体Q)となる。
【0052】
一方で、
図5B(b)に示すように、容器蓋19bが容器本体19aに嵌合してない場合(異常セット状態)は、識別体Qの一体形状が途中でずれた状態となるか、容器蓋19bが横にずれて識別体Qが途切れた状態となる。識別体Qのずれは、撮像装置20が撮像した撮像画像から認識され易いため、判定部23は、識別体Qのずれを検知することにより、容器蓋19bのセットが異常であると判断することができる。
【0053】
識別体Qについて、直線の方向、幅、その数は任意である。また、識別体Qは直線状に限られず、容器蓋19bを容器本体19aに載置したときの境界部分に施された図形、マーク、文字等の標章であってもよい。
【0054】
撮像装置20の報知部27は、判定部23が識別体Qのずれ又は途切れを一定時間(例えば、数十秒)検知した場合に報知を行う。例えば、使用者がコンロバーナ5~7上の調理容器19に対して、容器蓋19bを外して中身を確認するような場合は、識別体Qのずれ又は途切れの検知が数秒であって一定時間に到達しないため、報知が行われない。
【0055】
また、報知部27は、判定部23が容器蓋19bの識別体Qbを検知できない場合に、容器蓋19bが容器本体19aに載置されていない旨の報知を行うことができる。この場合、調理中に容器蓋19bが開けられたと判断して、その旨の報知を行ってもよい。
【0056】
最後に、
図6を参照して、調理容器9を用いる場合の加熱調理システム1のフローチャートを説明する。なお、以下の各ステップは、主に加熱調理システム1の撮像装置20で、常時実行される。
【0057】
まず、撮像装置20がオンされる(STEP01)。これにより、撮像装置20の撮像部21によるグリル庫2a、コンロバーナ5~7の周辺領域の撮像が開始する。
【0058】
次に、撮像装置20は、グリルを使用中であるか否かを判定する(STEP02)。具体的には、撮像装置20の判定部23が、撮像部21により撮像された撮像画像を解析し、グリル扉2が開いているかを判定する。グリルを使用中の場合にはSTEP03に進み、グリルを使用中でない場合にはSTEP04に進む。
【0059】
グリルを使用中である場合(STEP02で「YES」)、撮像装置20は撮像領域R2(
図4B参照)を撮像して、判定部23はグリルエリアの検知を開始する(STEP03)。その後、STEP05に進む。
【0060】
一方、グリルを使用中でない場合(STEP02で「NO」)、撮像装置20は撮像領域R1(
図4A参照)を撮像して、判定部23はコンロエリアの検知を開始する(STEP04)。その後、STEP05に進む。
【0061】
次に、撮像装置20は、調理容器9が存在するか否かを判定する(STEP05)。これは、テンプレート画像を用いて行われる判定であり、調理容器9がグリル庫2a内でも、コンロバーナ5~7上でも使用可能な無水調理器であるかの判定となる。グリル庫2a又はコンロバーナ5~7上に調理容器9(無水調理器)が存在する場合にはSTEP06に進み、存在しない場合にはSTEP02にリターンする。
【0062】
調理容器9が存在する場合(STEP05で「YES」)、撮像装置20は、調理容器9の識別体が検知されたか否かを判定する(STEP06)。容器本体9aに対して容器蓋9bが異常セット状態である場合には、識別体Pが検知される。識別体Pが検知された場合にはSTEP08に進み、検知されなかった場合にはSTEP07に進む。
【0063】
まず、識別体Pが検知されなかった場合(STEP06で「NO」)、撮像装置20は、容器蓋9bが容器本体9aに正常にセットされていると認識する(STEP07)。容器蓋9bの正常セット状態の場合には、識別体Pは撮像されないためである。この場合、STEP02にリターンする。
【0064】
次に、識別体Pが検知された場合(STEP06で「YES」)、撮像装置20は、識別体Pが一定時間(例えば、数十秒)検知されたか否かを判定する(STEP08)。これは、使用者が容器蓋9bを開けたり、位置を動かしたりして、一時的に識別体Pが検知される場合を考慮したものである。識別体Pが一定時間検知された場合にはSTEP09に進み、一定時間検知されなかった場合にはSTEP02にリターンする。
【0065】
識別体Pが一定時間検知された場合(STEP08で「YES」)、撮像装置20は、識別体全周が検知されたか否かを判定する(STEP09)。識別体Pの全周が検知された場合にはSTEP10に進み、識別体Pの全周が検知されなかった場合(識別体Pの一部が検知された場合)にはSTEP11に進む。
【0066】
まず、識別体Pの全周が検知された場合(STEP09で「YES」)、撮像装置20は、報知部27により容器蓋9bが載置されていないことを報知する(STEP10)。その後、STEP02にリターンする。
【0067】
一方、識別体Pの全周が検知されなかった場合(STEP09で「NO」)、撮像装置20は、報知部27により容器蓋9bが異常セットであること、すなわち、異常セット状態を報知する(STEP11)。その後、STEP02にリターンする。このように、加熱調理システム1では、撮像装置20が容器蓋9bの異常セット状態や、容器蓋9bの付け忘れについて報知又は警告を行う。これにより、容器蓋9bによるシールがなされず、調理の失敗が生じることを防止することができる。
【0068】
上記フローチャートでは、撮像装置20が加熱調理器10のグリル庫2a上とコンロバーナ5~7上の何れか領域に対して、調理容器9の存在を確認したが(STEP02~05)、順番に両方の領域を確認するようにしてもよい。また、両方の領域を同時に確認して、調理容器9が存在する領域に対して、上記判定を行うこともできる。
【0069】
加熱調理システム1において、識別体Qを有する調理容器19(
図5B参照)を使用する場合、上記フローチャートは以下のような処理となる。STEP01~07の各処理は共通であるが、STEP08において、撮像装置20は、識別体Qのずれ又は途切れが一定時間(例えば、数十秒)検知されたか否かを判定する。
【0070】
識別体Qのずれ又は途切れが一定時間検知された場合はSTEP09に進み、撮像装置20は、容器蓋19bの識別体Qbが検知されたか否かを判定する。識別体Qbが検知された場合には、撮像装置20は、報知部27により容器蓋19bが異常セットであること、すなわち、異常セット状態を報知する。
【0071】
一方、識別体Qbが検知されなかった場合には、撮像装置20は、報知部27により容器蓋19bが載置されていないことを報知する。このように、加熱調理システム1は、識別体Qを有する調理容器19の使用にも対応可能である。
【0072】
上記実施形態では、撮像装置20側で容器蓋9bの異常セット状態等の判定から報知までを行ったが、この態様に限られない。例えば、加熱調理器10と撮像装置20とを通信可能にし、加熱調理器10が報知部を備え、加熱調理器10側で報知を担当するようにしてもよい。また、撮像装置20が撮像画像を加熱調理器10に送信し、判定以降の処理を加熱調理器10側で担当するようにしてもよい。
【0073】
報知については、音声による報知を説明したが、特に加熱調理器10側で報知を行う場合には、液晶表示装置等で報知するようにしてもよい。また、テンプレート画像は、撮像装置20の記憶部25に記憶されていたが、撮像装置20と通信可能な外部サーバ上に記憶するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…加熱調理システム、2…グリル扉、2a…グリル庫、5~7…コンロバーナ、8…グリルバーナ、9,19…調理容器、9a,19a…容器本体、9a1,19a1…載置部、壁部…9a2、9a3…底面、9b,19b…容器蓋、9b1…周縁、9b2…上面、9b3…嵌合部、10…加熱調理器、11…制御部、13…操作部、13a~13d…点消火ボタン、13e…電源スイッチ、20…撮像装置、21…撮像部、23…判定部、25…記憶部、27…報知部、P,Q,Qa,Qb…識別体、R1,R2…撮像領域。