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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20240726BHJP
   E02F 9/24 20060101ALI20240726BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20240726BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20240726BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20240726BHJP
   F16F 9/28 20060101ALI20240726BHJP
   F16F 9/50 20060101ALI20240726BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
E02F9/22 H
E02F9/24 K
E02F9/26 B
B60T7/12 C
F16F15/02 B
F16F9/28
F16F9/50
G08G1/16 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020163941
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022056120
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】北尾 真一
(72)【発明者】
【氏名】岡部 一慶
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-127187(JP,A)
【文献】特開2011-001712(JP,A)
【文献】特開2020-149472(JP,A)
【文献】特開平07-119179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
E02F 9/24
E02F 9/26
B60T 7/12
F16F 15/02
F16F 9/28
F16F 9/50
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体を含む本体と、前記本体に取り付けられる作業機とを有する車体と、
前記作業機を駆動する油圧シリンダと、
前記油圧シリンダに接続される油圧回路と、
開閉弁を介して前記油圧回路に接続されるアキュムレータと、
走行中において前記車体周辺の障害物を検出する障害物センサと、
前記障害物センサが前記障害物を検出した場合、前記開閉弁を開位置に切り替え、かつ、前記車体と前記障害物との衝突を抑制するための衝突抑制制御を実行するコントローラと、
を備える作業機械。
【請求項2】
前記衝突抑制制御は、前記車体を減速させる制御及び警報を発する制御のうち少なくとも1つの制御を含む、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
自動走行ダンパスイッチを備え、
前記コントローラは、前記車体にピッチングが発生することが予測されず、かつ、前記自動走行ダンパスイッチがオン位置に位置する場合であって、前記車体の速度が所定速度以下であるときには、前記開閉弁を閉位置に切り替える、
請求項1又は2に記載の作業機械。
【請求項4】
走行体を含む本体と、前記本体に取り付けられる作業機とを有する車体と、
前記作業機を駆動する油圧シリンダと、
前記油圧シリンダに接続される油圧回路と、
開閉弁を介して前記油圧回路に接続されるアキュムレータと、
前記車体にピッチングが発生することを予測した場合、前記開閉弁を開位置に切り替えるコントローラと、
走行中において前記車体周辺の障害物を検出する障害物センサと、
を備え、
前記コントローラは、前記障害物センサが前記障害物を検出したとき、前記車体にピッチングが発生することを予測し、かつ、前記車体と前記障害物との衝突を抑制するための衝突抑制制御を実行し、
前記衝突抑制制御は、前記車体を減速させる制御及び警報を発する制御のうち少なくとも1つの制御を含む、
作業機械。
【請求項5】
走行体を含む本体と、前記本体に取り付けられる作業機とを有する車体と、
前記作業機を駆動する油圧シリンダと、
前記油圧シリンダに接続される油圧回路と、
開閉弁を介して前記油圧回路に接続されるアキュムレータと、
前記車体にピッチングが発生することを予測した場合、前記開閉弁を開位置に切り替えるコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記車体が減速されるとき、前記車体にピッチングが発生することを予測する、
作業機械。
【請求項6】
走行体を含む本体と、前記本体に取り付けられる作業機とを有する車体と、
前記作業機を駆動する油圧シリンダと、
前記油圧シリンダに接続される油圧回路と、
開閉弁を介して前記油圧回路に接続されるアキュムレータと、
前記車体にピッチングが発生することを予測した場合、前記開閉弁を開位置に切り替えるコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記車体の走行方向が変更されるとき、前記車体にピッチングが発生することを予測する、
作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、作業機械の一例であるホイールローダにおいて、作業機のリフトシリンダとアキュムレータとの連通及び遮断を車速に応じて切り替える手法が提案されている。
【0003】
具体的には、車速が第1閾値以上である場合には、リフトシリンダとアキュムレータとを連通させることによって、車体から作業機に伝わる力をアキュムレータによって吸収することができる。一方、車速が第2閾値以下である場合には、リフトシリンダとアキュムレータとを遮断することによって、作業機の積載性能が低下することを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-209422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際の作業現場では、車速に関わらず車体にピッチングが発生する場合が多々ある。その場合、作業機から車体に伝わる力をアキュムレータによって吸収できなければ、車体に大きなピッチングが生じて積載物が作業機から落下するおそれがある。
【0006】
本開示は、車速に関わらず車体のピッチングを抑制可能な作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る作業機械は、車体と、油圧シリンダと、油圧回路と、アキュムレータと、コントローラとを備える。車体は、走行体を含む本体と、前記本体に取り付けられる作業機とを有する。油圧シリンダは、作業機を駆動する。油圧回路は、油圧シリンダに接続される。アキュムレータは、開閉弁を介して油圧回路に接続される。コントローラは、車体にピッチングが発生することを予測した場合、開閉弁を開位置に切り替える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、車速に関わらず車体のピッチングを抑制可能な作業機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ホイールローダの側面図である。
図2】ホイールローダのシステム構成を示すブロック図である。
図3】コントローラの構成を示すブロック図である。
図4】コントローラによる走行ダンパ制御を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(ホイールローダの概要)
作業機械の一例としてのホイールローダについて図面を参照しながら以下に説明する。以下の説明において、「前」、「後」、「右」、「左」、「上」、及び「下」とは、運転席から前方を見た状態を基準とする向きである。「車幅方向」は、「左右方向」と同義である。
【0011】
図1は、本実施形態に係るホイールローダ10の全体構成を示す側面図である。
【0012】
ホイールローダ10は、本体1及び作業機3を備える。本体1及び作業機3は、ホイールローダ10の車体20を構成する。
【0013】
本体1は、車体フレーム2、一対のフロントタイヤ4、キャブ5、エンジンルーム6、一対のリアタイヤ7及びブレーキランプ8を有する。車体フレーム2、一対のフロントタイヤ4及び一対のリアタイヤ7は、ホイールローダ10の走行体を構成する。
【0014】
車体フレーム2は、いわゆるアーティキュレート式のフレームである。車体フレーム2は、フロントフレーム11、リアフレーム12及び連結軸部13を含む。フロントフレーム11は、リアフレーム12の前方に配置される。連結軸部13は、車幅方向の中央に設けられる。連結軸部13は、フロントフレーム11とリアフレーム12とを揺動可能に連結する。リアフレーム12に対するフロントフレーム11の角度は、アーティキュレートシリンダ9の伸縮によって調整される。
【0015】
一対のフロントタイヤ4は、フロントフレーム11の左右に取り付けられる。一対のリアタイヤ7は、リアフレーム12の左右に取り付けられる。
【0016】
作業機3は、本体1に取り付けられる。作業機3は、種々の作業(例えば、土砂の積み込み作業、土砂の排出作業など)に用いられる。作業機3は、後述する油圧ポンプ64からの作動油によって駆動される。作業機3は、ブーム14、バケット15、一対のリフトシリンダ16及びバケットシリンダ17を有する。ブーム14は、フロントフレーム11に取り付けられる。バケット15は、ブーム14の先端に取り付けられる。
【0017】
各リフトシリンダ16及びバケットシリンダ17は、作業機3を駆動するための油圧シリンダである。各リフトシリンダ16は、フロントフレーム11及びブーム14に連結される。各リフトシリンダ16の伸縮によってブーム14が上下に駆動する。各リフトシリンダ16は、本開示における「油圧シリンダ」の一例である。バケットシリンダ17は、フロントフレーム11及びベルクランク18に連結される。バケットシリンダ17の伸縮によってバケット15が上下に駆動する。
【0018】
キャブ5は、リアフレーム12上に載置される。キャブ5の内部には、ホイールローダ10の走行方向を変更させるためのハンドル、作業機3を操作するためのレバー、各種ペダル、各種スイッチ、表示装置などが配置される。
【0019】
エンジンルーム6は、キャブ5の後側においてリアフレーム12上に配置される。エンジンルーム6には、後述するエンジン31が収納される。エンジンルーム6の後方には、カウンタウェイト6aが配置される。カウンタウェイト6aは、リアフレーム12の後端部上に配置される。
【0020】
ブレーキランプ8は、車体20の後端部に配置される。ブレーキランプ8は、後述するブレーキペダル54が操作された場合、又は、後述する自動ブレーキ制御が実行される場合に点灯する。
【0021】
(ホイールローダのシステム構成)
図2は、ホイールローダ10のシステム構成を模式的に示すブロック図である。
【0022】
ホイールローダ10は、走行部21、制動部22、操作部23、警報部24、障害物センサ25、走行ダンパ部26及びコントローラ27を備える。
【0023】
1.走行部21
走行部21は、エンジン31、HST(Hydro Static Transmission)32、トランスファ33、アクスル34、フロントタイヤ4及びリアタイヤ7を有する。
【0024】
エンジン31は、例えばディーゼル式のエンジンである。HST32は、ポンプ32a、モータ32b及び油圧回路32cを含む。
【0025】
ポンプ32aは、斜板式可変容量型のポンプである。ポンプ32aの斜板の角度は、ソレノイド32dによって変更可能である。ポンプ32aは、エンジン31によって駆動されることによって作動油を吐出する。ポンプ32aから吐出された作動油は、油圧回路32cを通ってモータ32bに送られる。モータ32bは、斜板式ポンプである。モータ32bの斜板の角度は、ソレノイド32eによって変更可能である。
【0026】
油圧回路32cは、ポンプ32a及びモータ32bに接続される。油圧回路32cは、第1駆動回路32c1と第2駆動回路32c2とを含む。第1駆動回路32c1を介してポンプ32aからモータ32bに作動油が供給されることにより、モータ32bが一方向(例えば、前進方向)に駆動される。第2駆動回路32c2を介してポンプ32aからモータ32bに作動油が供給されることにより、モータ32bが他方向(例えば、後進方向)に駆動される。なお、第1駆動回路32c1又は第2駆動回路32c2への作動油の吐出方向は、ソレノイド32dによって変更可能である。
【0027】
モータ32bは、ドライブ軸35を介してトランスファ33に連結される。ドライブ軸35には、車速センサ36が設けられる。車速センサ36は、車体20の速度(以下、車速という。)を検出する。車速センサ36は、ドライブ軸35の回転速度に基づいて車速を検出する。車速センサ36は、車速を示す検出信号をコントローラ27に送信する。
【0028】
トランスファ33は、前側のアクスル34及び後側のアクスル34にエンジン31からの出力を分配する。前側のアクスル34には、一対のフロントタイヤ4が接続されている。一対のフロントタイヤ4は、前側のアクスル34に分配された出力によって回転する。後側のアクスル34には、一対のリアタイヤ7が接続されている。一対のリアタイヤ7は、後側のアクスル34に分配された出力によって回転する。
【0029】
2.制動部22
制動部22は、ブレーキ弁41、サービスブレーキ42及びパーキングブレーキ43を有する。
【0030】
ブレーキ弁41は、例えばEPC弁(Electric Proportional Valve)である。サービスブレーキ42に送られる作動油量は、ブレーキ弁41の開度に応じて調整される。ブレーキ弁41の開度は、コントローラ27によって制御される。コントローラ27は、後述するブレーキペダル54の操作量に応じて、或いは、後述する自動ブレーキ制御のために、ブレーキ弁41の開度を制御する。
【0031】
サービスブレーキ42は、前側のアクスル34及び後側のアクスル34に設けられる。サービスブレーキ42は、油圧式のブレーキである。サービスブレーキ42の制動力は、ブレーキ弁41の開度が大きいほど強くなる。
【0032】
パーキングブレーキ43は、トランスファ33に設けられる。パーキングブレーキ43としては、例えば、制動状態と非制動状態に切り替え可能な湿式多段式のブレーキや、ディスクブレーキなどを用いることができる。
【0033】
3.操作部23
操作部23は、アクセル51、FNRレバー52、パーキングスイッチ53、ブレーキペダル54、ハンドル55及び自動走行ダンパスイッチ56を有する。
【0034】
アクセル51は、キャブ5内に設けられる。アクセル51は、アクセル操作量を示す操作信号をコントローラ27に送信する。コントローラ27は、受信した操作信号に基づいてエンジン31のスロットル開度を制御する。
【0035】
アクセル51が走行中にオフ状態になると、エンジン31への燃料供給が停止され、ポンプ32a及びモータ32bそれぞれの斜板が走行抵抗となるため、内部慣性による制動力が発生する。その結果、ホイールローダ10は減速する。
【0036】
FNRレバー52は、キャブ5内に設けられる。FNRレバー52は、前進位置、ニュートラル位置及び後進位置のいずれかに切り替え可能である。FNRレバー52は、FNRレバー52の位置を示す操作信号をコントローラ27に送信する。コントローラ27は、受信した操作信号に基づいてソレノイド32dを制御することによって、前進、ニュートラル又は後進を切り替える。また、FNRレバー52がニュートラル位置に切り替えられた場合、コントローラ27は、ソレノイド32d,32eを制御することによって、ポンプ32a及びモータ32bそれぞれの斜板が走行抵抗となるよう制御する。これにより、内部慣性による制動力が発生して、ホイールローダ10は減速する。
【0037】
パーキングスイッチ53は、キャブ5内に設けられる。パーキングスイッチ53は、オン位置及びオフ位置のいずれかに切り替え可能である。パーキングスイッチ53は、パーキングスイッチ53の位置を示す操作信号をコントローラ27に送信する。コントローラ27は、受信した操作信号に基づいて、パーキングブレーキ43を制動状態又は非制動状態にする。
【0038】
ブレーキペダル54は、キャブ5内に設けられる。ブレーキペダル54は、ペダル操作量及びペダル操作速度を示す操作信号をコントローラ27に送信する。コントローラ27は、受信した操作信号に基づいて、ブレーキ弁41の開度を制御する。
【0039】
ハンドル55は、キャブ5内に設けられる。ハンドル55は、ハンドル操作方向及びハンドル操作量を示す操作信号をコントローラ27に送信する。コントローラ27は、受信した操作信号に基づいて、車体フレーム2に配置されたアーティキュレートシリンダ9を伸縮させる。
【0040】
自動走行ダンパスイッチ56は、キャブ5内に設けられる。自動走行ダンパスイッチ56は、オン位置及びオフ位置のいずれかに切り替え可能である。自動走行ダンパスイッチ56は、自動走行ダンパスイッチ56の位置を示す操作信号をコントローラ27に送信する。コントローラ27は、受信した操作信号に基づいて、自動走行ダンパ制御を作動状態又は非作動状態にする。
【0041】
4.警報部24
警報部24は、コントローラ27から後述する警報指示信号を受信した場合、衝突抑制制御の一つとして、オペレータに警報(例えば警告灯の点灯、警報音の発報、警告の表示など)を発する。
【0042】
5.障害物センサ25
障害物センサ25は、車体20周辺の障害物を検出する。特に、障害物センサ25は、車体20の前方又は後方に位置する障害物を検出することが好ましい。
【0043】
障害物センサ25は、障害物までの距離を測定する。障害物センサ25としては、ミリ波レーダ又はカメラなどを用いることができる。障害物センサ25は、障害物を検出したこと及び障害物までの距離を示す障害物情報をコントローラ27に送信する。
【0044】
6.走行ダンパ部26
走行ダンパ部26は、油圧回路61、開閉弁62、アキュムレータ63、油圧ポンプ64、ブームシリンダ制御弁65及び作動油タンク66を有する。
【0045】
油圧回路61は、一対のリフトシリンダ16、開閉弁62及びブームシリンダ制御弁65に接続される。
【0046】
開閉弁62は、各リフトシリンダ16及びアキュムレータ63の間に配置される。開閉弁62は、開位置X及び閉位置Yのいずれかに切り替え可能な2位置切換え弁である。開閉弁62の位置は、コントローラ27によって制御される。
【0047】
開閉弁62が開位置Xに位置する場合、開閉弁62は、各リフトシリンダ16とアキュムレータ63とを連通させる。これにより、各リフトシリンダ16とアキュムレータ63とが接続され、ホイールローダ1の走行ダンパ機能がオン状態になる。開閉弁62が閉位置Yに位置する場合、開閉弁62は、各リフトシリンダ16とアキュムレータ63とを遮断する。これにより、各リフトシリンダ16とアキュムレータ63との接続が切断され、ホイールローダ1の走行ダンパ機能はオフ状態になる。
【0048】
アキュムレータ63は、開閉弁62を介して油圧回路61に接続される。アキュムレータ63は、開閉弁62が開位置Xに位置する場合、油圧回路61を介して各リフトシリンダ16に接続される。この場合、アキュムレータ63は、各リフトシリンダ16の振動を低減させるダンパ機構として機能する。
【0049】
アキュムレータ63は、開閉弁62が閉位置Yに位置する場合、リフトシリンダ16との接続が開閉弁62によって切断される。この場合、アキュムレータ63は、各リフトシリンダ16の振動を低減させるダンパ機構として機能しない。
【0050】
油圧ポンプ64は、エンジン31によって駆動される。油圧ポンプ64は、ブームシリンダ制御弁65及び油圧回路61を介して、作動油タンク66に貯留された作動油を各リフトシリンダ16に供給する。
【0051】
7.コントローラ27
コントローラ27は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)などの不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリを含むメインメモリと、ストレージとを含む。コントローラ27は、ストレージに記憶されているプログラムを読み出してメインメモリに展開し、プログラムに従って所定の処理を実行する。
【0052】
図3は、コントローラ27の構成を示すブロック図である。ただし、図3では、走行部21に関する基本的なシステム構成は省略されている。
【0053】
コントローラ27は、障害物判定部71、ブレーキ制御部72、ブレーキランプ制御部73、予測部74及び走行ダンパ制御部75を有する。
【0054】
(1)障害物判定部71
障害物判定部71は、障害物センサ25から障害物情報を受信した場合、障害物センサ25が障害物を検出したと判定する。障害物判定部71は、障害物が検出されたことを示す障害物検出信号を予測部74に送信する。
【0055】
障害物判定部71は、障害物情報に含まれる障害物までの距離を参照して、障害物と車体20との距離が所定距離以下であるか否かを判定する。
【0056】
障害物判定部71は、障害物と車体20との距離が所定距離以下である場合、衝突抑制制御を実行する必要があると判断して、ブレーキ制御部72に自動ブレーキ指示信号を送信するとともに、警報部24に警報指示信号を送信する。障害物判定部71は、障害物と車体20との距離が所定距離以下でない場合、衝突抑制制御を実行する必要がないと判断して、ブレーキ制御部72及び警報部24に信号を送信しない。
【0057】
(2)ブレーキ制御部72
ブレーキ制御部72は、ホイールローダ10の走行中に障害物判定部71から自動ブレーキ指示信号を受信すると、衝突抑制制御の一つとして、車体20を減速させるための自動ブレーキ制御を実行する。具体的には、ブレーキ制御部72は、ブレーキ弁41の開度を大きくすることによって、サービスブレーキ42による制動力を発生させる。或いは、ブレーキ制御部72は、パーキングブレーキ43を作動させることによって制動力を発生させてもよい。ブレーキ制御部72は、車体20が停止するまでサービスブレーキ42及びパーキングブレーキ43の少なくとも一方によって制動力を発生させることができる。
【0058】
ブレーキ制御部72は、障害物判定部71から自動ブレーキ指示信号を受信していない場合、オペレータによるブレーキペダル54の操作に応じたブレーキ制御を実行する。この場合、ブレーキ制御部72は、オペレータによるブレーキペダル54の操作量に応じて、ブレーキ弁41の開度を制御する。
【0059】
ブレーキ制御部72は、自動ブレーキ制御又はブレーキ制御を実行する場合、ブレーキランプ制御部73に制動信号を送信する。
【0060】
(3)ブレーキランプ制御部73
ブレーキランプ制御部73は、ブレーキ制御部72から制動信号を受信すると、ブレーキランプ8を点灯させる旨を示す点灯指示信号を予測部74に送信するとともに、ブレーキランプ8を点灯させる。
【0061】
(4)予測部74
予測部74は、車体20にピッチングが発生することを予測する。具体的には、予測部74は、ホイールローダ10の走行中において、障害物センサ25によって障害物が検出されたとき、車体20が減速されるとき、及び、車体20の走行方向が変更されるときに、車体20にピッチングが発生することを予測する。ホイールローダ10が走行中であることは、車速センサ36から受信する検出信号に基づいて判断される。
【0062】
予測部74は、障害物判定部71から障害物検出信号を受信した場合に、障害物センサ25が障害物を検出したと判断することができる。
【0063】
予測部74は、ブレーキペダル54からの操作信号に基づいてブレーキペダル54が操作されたことを検出した場合に、車体20が減速されると判断することができる。或いは、予測部74は、ペダル操作量が所定量以上であること、及び、ペダル操作速度が所定値以上であることの一方又は両方が成立する場合に、車体20が減速されると判断してもよい。
【0064】
予測部74は、パーキングスイッチ53からの操作信号に基づいてパーキングスイッチ53がオン位置に位置することを検出した場合に、車体20が減速されると判断することができる。
【0065】
予測部74は、FNRレバー52からの操作信号に基づいて、FNRレバー52が前進位置からニュートラル位置又は後進位置に切り替えられたこと、又は、FNRレバー52が後進位置からニュートラル位置又は前進位置に切り替えられたことを検出した場合に、車体20が減速されると判断することができる。
【0066】
予測部74は、ブレーキランプ制御部73からの点灯指示信号に基づいて、ブレーキランプ8が点灯されることを検出した場合に、車体20が減速されると判断することができる。
【0067】
予測部74は、ハンドル55からの操作信号に基づいてハンドル55が操作されていることを検出した場合に、車体20の走行方向が変更されると判断することができる。或いは、予測部74は、ハンドル操作量が所定量以上であること、及び/又は、ハンドル操作速度が所定値以上であることを検出した場合に、車体20の走行方向が変更されると判断してもよい。
【0068】
予測部74は、車体20にピッチングが発生することを予測すると、その旨を示すピッチング予測情報を走行ダンパ制御部75に送信する。
【0069】
(5)走行ダンパ制御部75
走行ダンパ制御部75は、予測部74からピッチング予測情報を受信すると、開閉弁62を開位置Xに切り替えることによって、ホイールローダ1の走行ダンパ機能をオン状態にする。
【0070】
走行ダンパ制御部75は、自動走行ダンパスイッチ56からの操作信号を参照して、自動走行ダンパスイッチ56がオン位置及びオフ位置のいずれに切り替えられているか判定する。
【0071】
走行ダンパ制御部75は、車速センサ36から受信する検出信号に基づいて、車速が所定速度以下であるか否かを判定する。所定速度は、作業機3を用いた作業が行われうる十分遅い速度(例えば、5km/h)に設定される。
【0072】
走行ダンパ制御部75は、予測部74からピッチング予測情報を受信しておらず、かつ、自動走行ダンパスイッチ56がオフ位置に位置する場合には、開閉弁62を閉位置Yに切り替えることによって、ホイールローダ1の走行ダンパ機能をオフ状態にする。
【0073】
走行ダンパ制御部75は、予測部74からピッチング予測情報を受信しておらず、かつ、自動走行ダンパスイッチ56がオン位置に位置する場合であっても、車速が所定速度以下であるときには、開閉弁62を閉位置Yに切り替えることによって、ホイールローダ1の走行ダンパ機能をオフ状態にする。
【0074】
走行ダンパ制御部75は、予測部74からピッチング予測情報を受信しておらず、かつ、自動走行ダンパスイッチ56がオン位置に位置する場合であって、車速が所定速度以下でないときには、開閉弁62を開位置Xに切り替えることによって、ホイールローダ1の走行ダンパ機能をオン状態にする。
【0075】
(コントローラによる走行ダンパ制御)
図4は、コントローラ27による走行ダンパ制御を説明するためのフロー図である。図4では、ホイールローダ10が前方又は後方に向かって走行中であることが前提とされている。
【0076】
ステップS1において、予測部74は、車体20にピッチングが発生することが予測されるか否かを判定する。予測部74は、上述の通り、障害物センサ25が障害物を検出したとき、車体20が減速されるとき、及び、車体20の走行方向が変更されるときに、車体20にピッチングが発生することを予測する。
【0077】
ステップS1において車体20にピッチングが発生することが予測された場合、処理はステップS2に進み、走行ダンパ制御部75は、開閉弁62を開位置Xに切り替える。これによって、ホイールローダ1の走行ダンパ機能がオン状態になる。
【0078】
ステップS1において車体20にピッチングが発生することが予測されなかった場合、処理はステップS3に進み、走行ダンパ制御部75は、自動走行ダンパスイッチ56がオン位置に位置するか否かを判定する。
【0079】
ステップS3において自動走行ダンパスイッチ56がオン位置に位置しなかった場合、処理はステップS4に進み、走行ダンパ制御部75は、開閉弁62を閉位置Yに切り替える。これによって、ホイールローダ1の走行ダンパ機能がオフ状態になる。
【0080】
ステップS3において自動走行ダンパスイッチ56がオン位置に位置していた場合、処理はステップS5に進み、走行ダンパ制御部75は、車速が所定速度以下であるか否かを判定する。
【0081】
ステップS5において車速が所定速度以下でなかった場合、処理はステップS2に進み、走行ダンパ制御部75は、開閉弁62を開位置Xに切り替える。
【0082】
ステップS5において車速が所定速度以下であった場合、処理はステップS4に進み、走行ダンパ制御部75は、開閉弁62を閉位置Yに切り替える。
【0083】
(特徴)
(1)本実施形態に係るホイールローダ10(作業機械の一例)において、コントローラ27は、車体20にピッチングが発生することを予測した場合、アキュムレータ63と一対のリフトシリンダ16とを接続する油圧回路61に配置された開閉弁62を開状態にする。
【0084】
これによって、ホイールローダ10の車速に関わらず、車体20にピッチングが発生することが予測される場合には、ホイールローダ1の走行ダンパ機能を予めオン状態にすることができる。その結果、車体20に生じるピッチングを抑制できるため、オペレータの負担を軽減できるとともに、積載物が作業機3から落下することを抑制できる。
【0085】
(2)コントローラ27は、障害物センサ25が障害物を検出したとき、車体20が減速されるとき、及び、車体20の走行方向が変更されるときに、ピッチングの発生を予測する。特に、障害物センサ25が障害物を検出したときには、自動ブレーキ制御によって、或いは、警報に応じたオペレータの操作によって、車体20が緊急停止することが予測されるが、このような場合であっても車体20に発生するピッチングを抑制できる。
【0086】
(3)コントローラ27は、車体20にピッチングが発生することが予測されず、かつ、自動走行ダンパスイッチ56がオン位置に位置する場合であっても、車速が所定速度以下であるときには開閉弁62を閉状態にする。
【0087】
これによって、作業機3を用いた作業に伴って車体20が低速で移動せざるをえない場合には、走行ダンパ機能をオフ状態とすることによって、作業機3の積載性能が低下することを抑制できる。
【0088】
(実施形態の変形例)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0089】
(変形例1)
上記実施形態において、予測部74は、障害物の検出、車体20の減速、及び、走行方向の変更に基づいてピッチングの発生を予測することとしたが、これらのうち1つ又は2つに基づいてピッチングの発生を予測してもよい。
【0090】
例えば、予測部74は、障害物の検出のみに基づいてピッチングの発生を予測してもよい。この場合であっても、緊急停止に伴って大きなピッチングが発生することを効果的に抑制できる。
【0091】
なお、障害物の検出のみに基づいてピッチングの発生が予測される場合、コントローラ27が予測部74を備える必要はなく、障害物判定部71から走行ダンパ制御部75へ走行ダンパのオン指示を送信すればよい。
【0092】
(変形例2)
上記実施形態において、予測部74は、障害物センサ25によって障害物が検出されたことをもってピッチングの発生を予測することとしたが、これに限られない。予測部74は、障害物センサ25によって障害物が検出された後、障害物判定部71がブレーキ制御部72に自動ブレーキ指示信号を送信したことをもって、或いは、ブレーキ制御部72がブレーキ弁41に制御信号を送信したことをもってピッチングの発生を予測してもよい。
【0093】
(変形例3)
上記実施形態において、コントローラ27は、衝突抑制制御の一つとして、車体20を減速させるための自動ブレーキ制御を実行することとしたが、これに限られない。例えば、コントローラ27は、車体20を減速させるためのエンジン出力低減制御を実行してもよい。エンジン出力低減制御としては、スロットル開度を小さくしたり、燃料供給を停止したりすることが挙げられる。
【0094】
(変形例4)
上記実施形態において、ホイールローダ10は、一対のリフトシリンダ16を備えることとしたが、これに限られない。ホイールローダ10は、リフトシリンダ16を1つ以上備えていればよい。
【0095】
(変形例5)
上記実施形態では、作業機械の一例としてホイールローダ10について説明したが、作業機械としては、ホイールローダのほか、車輪を備える油圧ショベル及びバックホーローダーなどが挙げられる。
【0096】
(変形例6)
上記実施形態において、ホイールローダ10は、変速機としてHST32を備えることとしたが、これに限られない。変速機としては、例えば、HMT(Hydro Mechanical Transmission)、T/C(トルクコンバータ)などを用いることができる。
【0097】
(変形例7)
上記実施形態において、ブレーキ弁41の開度は、ブレーキペダル54の操作量に応じてコントローラ27が制御することとしたが、これに限られない。ブレーキ弁41の開度は、ブレーキペダル54の操作量に応じて発生するPPC圧によって制御してもよい。この場合、ブレーキペダル54の操作量に応じたPPC圧と、コントローラ27からの指令に基づいて発生するPPC圧とのうち、より大きいPCC圧によってブレーキ弁41の開度は制御される。
【0098】
(変形例8)
上記実施形態において、コントローラ27の予測部74は、ブレーキペダル54からの操作信号に基づいてブレーキペダル54が操作されたことを検出することとしたが、これに限られない。例えば、ブレーキペダル54の操作量に応じたPPC圧によってブレーキ弁41の開度が制御される場合、コントローラ27は、ブレーキペダル54の操作量に応じてPPC圧が発生したときに、ブレーキペダル54が操作されたことを検出できる。
【0099】
(変形例9)
上記実施形態において、ホイールローダ10は、ブレーキペダル54を備えることとしたが、自動運転システム等が採用される場合には、ブレーキペダル54を備えていなくてよい。この場合、コントローラ27の予測部74は、障害物判定部71から障害物検出信号を受信したとき、或いは、外部からブレーキ指令を受信したときに、車体20が減速されると判断できる。
【0100】
(変形例10)
上記実施形態において、予測部74は、ハンドル55が操作されたときに、車体20の走行方向が変更されると判断することとしたが、これに限られない。例えば、予測部74は、右左折又は進路変更を周囲に示すための方向指示器に操作信号が送信されたときに、車体20の走行方向が変更されると判断してもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 本体
3 作業機
10 ホイールローダ
16 リフトシリンダ
20 車体
25 障害物センサ
27 コントローラ
56 自動走行ダンパスイッチ
61 油圧回路
62 開閉弁
63 アキュムレータ
図1
図2
図3
図4