(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】防災装置
(51)【国際特許分類】
G08B 23/00 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
G08B23/00 530B
(21)【出願番号】P 2020165484
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-4249(JP,A)
【文献】国際公開第2018/198668(WO,A1)
【文献】特開2009-123371(JP,A)
【文献】特開2005-269784(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0339915(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 13/00-31/00
H04J 9/00
H04M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用交流電源の停電時に電池からの電源供給に切替える予備電源部を備え、前記電池に共通する所定の第1電池状態を監視する第1監視手段を備える防災装置に於いて、
前記予備電源部は前記電池としてニッケル水素電池が設けられる場合に、前記ニッケル水素電池に対して前記第1電池状態とは異なる所定の第2電池状態を監視する第2監視手段が取り付け可能であることを特徴とする防災装置。
【請求項2】
請求項1記載の防災装置に於いて、前記第1監視手段又は前記第2監視手段は、前記ニッケル水素電池の前記第1電池状態及び前記第2電池状態のいずれかの監視から異常を検出した場合、通常監視時には、前記ニッケル水素電池の障害警報を出力させると共に前記ニッケル水素電池に対する充電を遮断させ、火災時には、前記ニッケル水素電池に対する充電を遮断させることなく障害警報を出力させることを特徴とする防災装置。
【請求項3】
請求項2記載の防災装置に於いて、前記第2監視手段は、前記第1監視手段に対応して設けられた障害報知部を用いて、前記ニッケル水素電池の障害警報を出力させることを特徴とする防災装置。
【請求項4】
請求項1記載の防災装置に於いて、
前記第1監視手段は、前記ニッケル水素電池の前記第1電池状態として、過電流及び過電圧を監視し、
前記第2監視手段は、前記ニッケル水素電池の前記第2電池状態として、温度、長時間充電、及び満充電を監視することを特徴とする防災装置。
【請求項5】
請求項4記載の防災装置に於いて、
前記第1監視手段又は前記第2監視手段は、前記ニッケル水素電池の過電流異常、過電圧異常、高温異常又は長時間充電異常を判定した場合、通常監視時には、前記ニッケル水素電池の障害警報を出力させると共に、前記ニッケル水素電池に対する充電を遮断させ、火災時には、前記ニッケル水素電池の障害警報を出力させ、
前記第2監視手段は、前記ニッケル水素電池の満充電を判定した場合、通常監視時は前記ニッケル水素電池に対する充電を遮断させ、火災時は前記ニッケル水素電池の充電を継続させることを特徴とする防災装置。
【請求項6】
請求項1記載の防災装置に於いて、前記防災装置は、火災報知設備の受信機又は中継器を含むことを特徴とする防災装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用交流電源が停電した場合に予備電源部の電池に切替えて動作する火災受信機等の防災装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災報知設備に設けられた火災受信機や中継器の予備電源部には、ニッケルカドニウム電池が使用されている。
【0003】
ニッケルカドニウム電池は、内部抵抗が小さいことから高出力の用途に適しており、使い始めから放電停止直前まで電圧、電流ともに安定した放電を行い、電圧がほぼゼロになるまで放電しても、回復充電を行うことにより容量が回復し、バッテリーとして多少雑な扱い方にも耐え、低温状態でも使用可能であり、更に、自然放電が少ないという特徴が知られている。一方、ニッケルカドニウム電池の問題点としては、ニッケル水素電池に比べると同じ体積で放電容量が少なく、また、使用しているカドニウムが有害であることから自然環境への影響があり、使用済み電池の回収が必要となる。
【0004】
このようなニッケルカドニウム電池に替わる小型電池として、近年、ニッケル水素電池が広く普及している。ニッケル水素電池は、ニッケルカドニウム電池の2.5倍程度の電池容量を持ち、カドニウムを使用しないことから環境への影響が少なく、1セル当りの電圧がニッケルカドニウム電池と同じ1.2ボルトであることから互換性がある。
【0005】
一方、ニッケル水素電池は、ニッケルカドニウム電池に比べると過放電に弱く、加熱時や過放電時に引火性の水素ガスを発生するため、完全に密閉された場所での使用が制約される。
【0006】
火災受信機や中継器の予備電源部には、ニッケルカドニウム電池以外にニッケル水素電池が使用されており、それぞれについて通常時と火災時に分けてK値として知られた容量換算時間が検定規則により定められている。
【0007】
現在の容量換算時間として、受信機用の場合、通常時のK1値と火災時のK2値は、
ニッケルカドニウム電池 K1=1.8(hour)、K2=1/3(hour)
ニッケル水素電池 K1=2.7(hour)、K2=0.5(hour)
に定められている。
【0008】
また、中継器用の場合は、
ニッケルカドニウム電池 K1=2.1(hour)、K2=0.5(hour)
ニッケル水素電池 K1=3.15(hour)、K2=0.75(hour)
に定められている。
【0009】
このように現在のK値は、当初、ニッケルカドニウム電池に比べニッケル水素電池の方が安定性や信頼性が低い状況にあったことから、ニッケル水素電池に高いK値を要求している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平09-035157号公報
【文献】特開平11-086163号公報
【文献】特開2004-013257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、近年のニッケル水素電池にあっては、その問題点の多くが解消され、安全性の高さが評価されており、火災受信機や中継器の予備電源部として例えば既設の火災受信機や中継器に使用しているニッケルカドニウム電池をニッケル水素電池に交換するリニューアルの流れが進んでおり、これに伴いニッケル水素電池に必要とされるK値についてもニッケルカドニウム電池並みの値に変更することの検討が進められている。
【0012】
しかしながら、既設の火災受信機や中継器の予備電源部をニッケル水素電池に交換するリニューアルを行った場合、安全性が向上したとはいえ、ニッケルカドニウム電池にはないニッケル水素電池に固有の特性や問題がある。
【0013】
このため火災受信機や中継器に使用した場合には、ニッケル水素電池の安全性を考えると、過充電、温度等のニッケル水素電池に固有な電池状態や現象を監視し、異常を検出した場合には充電をシャットダウンし、また、障害警報を出力させる監視装置を追加して設ける必要があり、ニッケル水素電池への交換を妨げる要因となっている。
【0014】
本発明は、予備電源部の電池をニッケル水素電池に交換した場合の電池状態の監視制御を必要最小限の監視機能の追加により簡単に行うことを可能とする防災装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(防災装置)
本発明は、商用交流電源の停電時に電池からの電源供給に切替える予備電源部を備え、電池に共通する所定の第1電池状態を監視する第1監視手段を備える防災装置に於いて、
予備電源部は電池としてニッケル水素電池が設けられる場合に、ニッケル水素電池に対して第1電池状態とは異なる所定の第2電池状態を監視する第2監視手段が取り付け可能であることを特徴とする。
【0016】
(通常時と火災時の電池障害検出)
第1監視手段又は第2監視手段は、ニッケル水素電池の第1電池状態及び第2電池状態のいずれかの監視から異常を検出した場合、通常監視時には、ニッケル水素電池の障害警報を出力させると共にニッケル水素電池に対する充電を遮断させ、火災時には、ニッケル水素電池に対する充電を遮断させることなく障害警報を出力させる。
【0017】
(障害警報部の共用)
第2監視手段は、第1監視手段に対応して設けられた障害報知部を用いて、ニッケル水素電池の障害警報を出力させる。
【0018】
(監視内容)
第1監視手段は、ニッケル水素電池の第1電池状態として、過電流及び過電圧を監視し、
第2監視手段は、ニッケル水素電池の第2電池状態として、温度、長時間充電、及び満充電を監視する。
【0019】
(異常検出に対する通常時と火災時の制御)
第1監視手段又は第2監視手段は、ニッケル水素電池の過電流異常、過電圧異常、高温異常又は長時間充電異常を判定した場合、通常監視時には、ニッケル水素電池の障害警報を出力させると共に、ニッケル水素電池に対する充電を遮断させ、火災時には、ニッケル水素電池の障害警報を出力させ、
第2監視手段は、ニッケル水素電池の満充電を判定した場合、通常監視時はニッケル水素電池に対する充電を遮断させ、火災時はニッケル水素電池の充電を継続させる。
【0020】
(受信機及び中継器)
防災装置は、火災報知設備の受信機又は中継器を含む。
【発明の効果】
【0021】
(基本的な効果)
本発明は、商用交流電源の停電時に電池からの電源供給に切替える予備電源部を備え、電池に共通する所定の第1電池状態を監視する第1監視手段を備える防災装置に於いて、予備電源部は電池としてニッケル水素電池が設けられる場合に、ニッケル水素電池に対して第1電池状態とは異なる所定の第2電池状態を監視する第2監視手段が取り付け可能であることとしたため、例えば既設の火災受信機や中継器等の防災装置の予備電源部に使用しているニッケルカドニウム電池をニッケル水素電池に交換した場合、交換前のニッケルカドニウム電池に設けられているニッケル水素電池と同じ電池状態、即ち、電池に共通する第1電池状態の監視については、第1監視手段をそのまま使用してニッケル水素電池の電池状態を第1監視手段により監視し、それ以外の第1電池状態とは異なるニッケル水素電池に固有な第2電池状態は新たに設ける第2監視手段で行うことで、ニッケル水素電池の監視を行う第2監視手段の構成を簡単にすることができ、予備電源部の電池をニッケルカドニウム電池からニッケル水素電池に交換した場合の電池状態の監視を必要最小限の監視機能の追加により簡単に行うができる。
【0022】
(通常時と火災時の電池障害検出による効果)
また、第1監視手段又は第2監視手段は、ニッケル水素電池の第1電池状態及び第2電池状態のいずれかの監視から異常を検出した場合、通常監視時には、ニッケル水素電池の障害警報を出力させると共にニッケル水素電池に対する充電を遮断させ、火災時には、ニッケル水素電池に対する充電を遮断させることなく障害警報を出力させるようにしたため、通常監視時は、ニッケル水素電池を保護するために充電を遮断して警報するが、火災時は、ニッケル水素電池の充電を継続することで予備電源部の電池による動作を保証することができる。
【0023】
(障害警報部の共用による効果)
また、第2監視手段は、第1監視手段に対応して設けられた障害報知部を用いて、ニッケル水素電池の障害警報を出力させるようにしたため、ニッケル水素電池に交換しても、既存のニッケルカドニウム電池に対応して設けている警報報知部を利用したニッケル水素電池の障害警報を行うことができ、ニッケル水素電池への交換に伴う回路や機器の変更を必要最小限に抑えることができる。
【0024】
(異常検出に対する通常時と火災時の制御による効果)
また、第1監視手段又は第2監視手段は、ニッケル水素電池の過電流異常、過電圧異常、高温異常又は長時間充電異常を検出した場合、通常監視時には、ニッケル水素電池の障害警報を出力させると共に、ニッケル水素電池に対する充電を遮断させ、火災時には、ニッケル水素電池の障害警報を出力させ、第2監視手段は、ニッケル水素電池の満充電を検出した場合、通常監視時はニッケル水素電池の障害警報を出力させると共にニッケル水素電池に対する充電を遮断させ、火災時はニッケル水素電池の充電を継続させるようにしたため、交換したニッケル水素電池の電池状態の異常とそのときの防災装置の監視状態から予備電源部の電池性能を確保しつつ、より高い信頼性と安全性の実現を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】防災装置の一例として既設のP型の火災受信機の概略を示した説明図
【
図2】
図1の火災受信機に設けた電源部と予備電源部を示したブロック図
【
図3】
図2の第1監視部の監視制御を示したフローチャート
【
図4】
図2の第2監視部の監視制御を示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係る防災装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、この発明が限定されるものではない。
【0027】
[実施形態の基本的な概念]
実施形態は、概略的に、商用交流電源が停電した場合に電池を用いた予備電源部に切替えて動作する防災装置に関するものである。ここで、「防災装置」とは、対象領域での防災を行うものであり、具体的には、火災、又は、ガス漏れなどの防災を行う火災報知設備の火災受信機や中継器などを含む概念である。また、「予備電源部」とは、商用交流電源が停電した場合に電池に切替えて防災装置、例えば火災受信機を動作させるものである。
【0028】
本実施形態の防災装置に設けられた予備電源部は、電池としてニッケルカドニウム電池を備えており、防災装置のリニューアルに伴い、ニッケルカドニウム電池をニッケル水素電池に交換することを前提としたものである。なお、「交換」とは「置き換え」を含む概念である。
【0029】
このため本実施形態の防災装置には、第1監視手段と第2監視手段が設けられ、第1監視手段は防災装置に予め設けられており、第2監視手段は、防災装置に取り付け可能である。
【0030】
ここで、「第1監視手段」とは、電池に共通する所定の第1電池状態を監視するものである。また、「第2監視手段」とは、予備電源部の電池としてニッケル水素電池が設けられる場合に、ニッケル水素電池に対して第1電池状態とは異なる所定の第2電池状態を監視するものである。そして、予備電源部に設けられた例えばニッケルカドニウム電池がニッケル水素電池に交換された場合に、第1監視手段及び第2監視手段により、交換後のニッケル水素電池の第1電池状態と第2電池状態を監視するものである。
【0031】
また、「電池に共通する所定の第1電池状態」とは、任意であるが、例えば電池の過電流及び過電圧である。また、「ニッケル水素電池に対して第1電池状態とは異なる第2電池状態」とは、任意であるが、一例として、電池に共通する第1電池状態である例えば過電流と過電圧を除くニッケル水素電池に固有な温度、長時間充電、及び満充電などである。
【0032】
第1監視手段又は第2監視手段は、ニッケル水素電池の第1電池状態及び第2電池状態の監視から異常を検出した場合、通常監視時には、ニッケル水素電池の障害警報を出力させると共にニッケル水素電池に対する充電を遮断させ、火災時には、ニッケル水素電池に対する充電を遮断させることなく障害警報を出力させるものである。
【0033】
以下、具体的な実施形態を説明する。以下に示す実施形態では、防災装置の一例として既設の火災報知設備に設けられたP型(Proprietary-type)の火災受信機を例にとって具体的な実施形態を説明する。
【0034】
[実施形態の具体的内容]
(火災受信機)
図1は防災装置の一例として既設のP型の火災受信機の機能構成の概略を示した説明図である。
図1に示すように、既設の火災報知設備に設けられた火災受信機10から監視領域に対し火報回線16、更には図示していない制御回線、防排煙回線、警報回線が引き出されている。火報回線16には、火災感知器18や発信機20等が接続されている。また、図示していない制御回線には防火戸の自動開放装置(ラッチレリーズ装置)が接続され、防排煙回線には防排煙用感知器が接続されている。
【0035】
火災受信機10は、制御部12を備え、制御部12は、CPU、メモリ、各種の入出力ポートを備えたコンピュータ回路で構成されている。制御部12に対しては、回線受信部14、表示部22、操作部24、警報部26及び移報部28が設けられている。
【0036】
また、火災受信機10には電源部30と予備電源部32が設けられている。電源部30は商用交流電源AC100ボルトを入力して所定電圧の直流電源に変換して火災受信機10内の各回路部及び火報回線16に電源を供給している。また、電源部30は商用交流電源の停電を検出すると予備電源部32からの予備電源の供給に切替えて、火災受信機10内の各回路部及び火報回線16に電源を供給する。
【0037】
予備電源部32はニッケルカドニウム電池の使用を予定して構成されており、本実施形態にあっては、既設のニッケルカドニウム電池を、ニッケル水素電池に交換する場合を例にとっている。
【0038】
予備電源部32は電源部30を介して入力した商用交流電源の整流により、使用している電池の充電と充電中にある電池の電池状態の監視を行っている。予備電源部32はニッケルカドニウム電池の使用を予定していることから、ニッケルカドニウム電池の充電中における電池状態、即ち、電池に共通する第1電池状態の監視として、過電圧と過電流を監視する機能が予め設けられている。
【0039】
予備電源部32のニッケルカドニウム電池をニッケル水素電池に交換した場合には、ニッケル水素電池の充電中における第1電池状態である過電圧と過電流の監視は、既設のニッケルカドニウム電池に対し設けられた監視機能を使用するが、交換したニッケル水素電池に固有な第2電池状態、即ち、第1電池状態である過電圧と過電流とは異なる第2電池状態を新たに監視するため、電池温度、満充電、長時間充電等のニッケル水素電池に固有な第2電池状態の監視機能が着脱自在なアダプタを用いて取付け可能に実現されている。
【0040】
[電源部と予備電源部の概要]
図2は
図1の火災受信機に設けた電源部と予備電源部を取り出して実施形態を示したブロック図である。
【0041】
図2に示すように、電源部30はACコネクタ34、整流平滑回路部36、停電検出部38、切替リレー接点42を備えたリレー40を備える。また、予備電源部32は、電池コネクタ44、ニッケル水素電池46、電池収納ケース48、充放電制御部50、第1監視手段として機能する第1監視部60、第2監視手段として機能する第2監視部70を備える。
【0042】
このうち電池コネクタ44、充放電制御部50及び第1監視部60は、電池コネクタ44にニッケルカドニウム電池を接続した場合に対応した既設の回路機能として設けられており、電池コネクタ44にニッケルカドニウム電池から交換したニッケル水素電池46を接続することに伴い、アダプタ82として後付け可能な第2監視部70が設けられている。
【0043】
電源部30は商用交流電圧を変圧器で降圧した所定の交流電圧をACコネクタ34を介して入力し、整流平滑回路部36により所定の直流電圧に変換して出力している。整流平滑回路部36の出力側には停電検出部38とリレー40を設けている。リレー40は切替リレー接点42を備え、a側に整流平滑回路部36からの電源供給ラインを接続し、b側に予備電源部32からの予備電源供給ラインを接続している。
【0044】
停電検出部38は交流電源を検出した場合、即ち整流平滑回路部36からの直流電源電圧を検出した場合に内蔵したスイッチング素子をオンすることでリレー40に通電して、切替リレー接点42を図示のa側に切替え、整流平滑回路部36からの直流電源電圧を受信機回路部側に供給している。
【0045】
商用交流電源が停電した場合には、整流平滑回路部36からの直流電源電圧がなくなることで停電検出部38に設けたスイッチング素子がオフし、リレー40の通電を停止して復旧し、これにより切替リレー接点42はb側に切り替わり、予備電源御部32に設けられたニッケル水素電池46からの予備電源を充放電制御部50を介して受信機回路部に供給する。
【0046】
[予備電源部の構成]
(充放電制御部)
充放電制御部50はACコネクタ34から入力した交流電圧を例えば半波整流し、スイッチング素子を介して電池コネクタ44に接続したニッケル水素電池46を充電する。また、充放電制御部50は停電検出部38により停電が検出されてリレー40の復旧により切替リレー接点42はb側に切り替った場合、スイッチング素子を介してニッケル水素電池46の放電による予備電源を受信機回路部に供給する。
【0047】
また、充放電制御部50には、電圧センサ52、電流センサ54及び充電遮断部56が設けられる。電圧センサ52はスイッチング素子を介して充放電されるニッケル水素電池46の電池電圧を検出し、電圧検出信号E1を出力する。電流センサ54はスイッチング素子を介してニッケル水素電池46に対し流れる充電電流及び放電電流を検出し、電流検出信号E2を出力する。充電遮断部56は第1監視部60からの異常検出信号E4又は第2監視部70からの異常検出信号E6が入力した場合に、電池コネクタ44に対する充放電ラインに設けているスイッチング素子を遮断制御する。
【0048】
(第1監視部)
第1監視部60は、ニッケルカドニウム電池及びニッケル水素電池を含む電池に共通する所定の第1電池状態として、例えば、過電圧と過電流を監視する機能が設けられている。第1監視部60には、電圧監視部62と電流監視部64が設けられる。
【0049】
電圧監視部62と電流監視部64は、電池コネクタ44にニッケルカドニウム電池を接続して使用することを予定して構成されているが、ニッケルカドニウム電池と交換して設置しているニッケル水素電池46は1セル当りの電圧が1.2ボルトと同じになることから、同じ数の電池セルを直列接続したニッケル水素電池46によりニッケルカドニウム電池と同じ電池電圧が得られ、ニッケルカドニウム電池と同様に、これを交換したニッケル水素電池46について、電池電圧と電池電流の監視ができる。
【0050】
電圧監視部62は、電圧センサ52により検出したニッケル水素電池46の電池電圧が所定の閾値電圧以上となった場合に過電圧異常を判定し、過電圧判定信号を出力制御部66に出力する。
【0051】
出力制御部66は、
図1の制御部12から火災移報信号E8が入力していない通常監視時に過電圧判定信号を入力した場合、過電圧異常に基づく異常検出信号E4をダイオードD1を介して充放電制御部50の充電遮断部56に出力し、電池コネクタ44に対する充放電ラインに設けられたスイッチチング素子をオフしてニッケル水素電池46に対する充電を遮断停止させ、更に、
図1に示した表示部22と警報部26に異常警報信号E5を出力し、予備電源障害表示灯の点灯又は点滅と警報部26のスピーカからの警報音の出力により予備電源異常警報を出力させる。
【0052】
また、出力制御部66は、火災移報信号E8が入力している火災時に過電圧判定信号を入力した場合、ニッケル水素電池46に対する充電遮断は行わず、
図1に示した表示部22と警報部26にダイオードD2を介して異常警報信号E5を出力し、予備電源障害表示灯の点灯又は点滅と警報部26のスピーカからの警報音の出力により予備電源異常警報を出力させる。
【0053】
電流監視部64は、電流センサ54により検出したニッケル水素電池46に対する充電電流又は放電電流が所定の閾値電流以上となった場合に過電流異常を判定し、過電流判定信号を出力制御部66に出力する。
【0054】
出力制御部66は、
図1の制御部12から火災移報信号E8が入力していない通常監視時に過電流判定信号を入力した場合、過電流異常に基づく異常検出信号E4を充放電制御部50の充電遮断部56に出力し、電池コネクタ44に対する充放電ラインに設けられたスイッチング素子をオフしてニッケル水素電池46に対する充電又は放電を遮断停止させ、更に、
図1に示した表示部22と警報部26に異常警報信号E5を出力し、予備電源障害表示灯の点灯又は点滅と警報部26のスピーカからの警報音の出力により予備電源異常警報を出力させる。
【0055】
また、出力制御部66は、火災移報信号E8が入力している火災時に過電流判定信号を入力した場合、ニッケル水素電池46に対する充電遮断は行わず、
図1に示した表示部22と警報部26に異常警報信号E5を出力し、予備電源障害表示灯の点灯又は点滅と警報部26のスピーカからの警報音の出力により予備電源異常警報を出力させる。
【0056】
(第2監視部)
第2監視部70は、ニッケル水素電池に対する所定の電池状態の監視の中から、電池に共通する所定の第1電池状態である過電圧と過電流とは異なるニッケル水素電池46に固有な第2電池状態として、例えば充電中のピーク電圧の低下による満充電の監視、充電中の急激な温度上昇による満充電の監視、及び満充電の時間を超える長充電時間の監視を行う。
【0057】
このため、第2監視部70には、温度監視部72、-ΔV監視部74、ΔT/Δt監視部76及び長充電監視部78の機能が設けられている。
【0058】
(温度監視部)
温度監視部72は、ニッケル水素電池46の電池収納ケース48に設けたサーミスタ等の温度センサ84で検出した温度検出信号E3を入力し、検出温度が所定の閾値温度以上となった場合に高温異常を判定し、高温判定信号を出力制御部68に出力する。
【0059】
出力制御部68は、
図1の制御部12から火災移報信号E8が入力していない通常監視時に高温判定信号を入力した場合、高温異常に基づく異常検出信号E6を、ダイオードD3を介して充放電制御部50の充電遮断部56に出力し、電池コネクタ44に対する充放電ラインに設けられたスイッチング素子をオフしてニッケル水素電池46に対する充電を遮断停止させ、更に、
図1に示した表示部22と警報部26にダイオードD4を介して異常警報信号E7を出力し、予備電源障害表示灯の点灯又は点滅と警報部26のスピーカからの警報音の出力により予備電源異常警報を出力させる。
【0060】
ニッケル水素電池46は、温度管理が重要であり、充電効率の良い周囲温度は10~30℃といわれており、過充電が続くと電池の温度が上昇してくることから、異常な温度上昇の検知により充電遮断を行ってニッケル水素電池46を保護する。
【0061】
また、出力制御部68は、火災移報信号E8が入力している火災時に高温判定信号を入力した場合、火災時における電池性能を可能な限り維持するためにニッケル水素電池46に対する充電遮断は行わず、
図1に示した表示部22と警報部26に異常警報信号E7を出力し、予備電源障害表示灯の点灯又は点滅と警報部26のスピーカからの警報音の出力により予備電源異常警報を出力させる。
【0062】
(-ΔV監視部)
-ΔV監視部74は、ニッケル水素電池46の満充電を監視するものであり、電圧センサ52により検出した電圧検出信号E1を入力し、ニッケル水素電池46の充電中にピーク電圧に対する電池電圧の低下量-ΔVが所定閾値以上に低下した場合に満充電と判定し、満充電判定信号を出力制御部68に出力する。
【0063】
ニッケル水素電池46は充電時間の経過に伴い電池電圧が上昇し、満充電になると電池電圧がピーク電圧から一定の電圧だけ低下する現象が見られ、-ΔV監視部74は満充中に電池電圧が低下する現象を捉えて満充電を判定する。
【0064】
出力制御部68は、火災移報信号E8が入力していない通常監視時に満充電判定信号を入力した場合、満充電に基づく異常検出信号E6を、ダイオードD3を介して充放電制御部50の充電遮断部56に出力し、電池コネクタ44に対する充放電ラインに設けられたスイッチング素子をオフしてニッケル水素電池46に対する充電を遮断停止させる制御を行う。
【0065】
また、出力制御部68は、火災移報信号E8が入力している火災時に満充電判定信号を入力した場合、火災時における電池性能を可能な限り維持するためにニッケル水素電池46に対する充電遮断は行わない。
【0066】
(ΔT/Δt監視部)
ΔT/Δt監視部76も、ニッケル水素電池46の満充電を監視するものであり、電圧センサ52により検出した電圧検出信号E1を入力し、ニッケル水素電池46の充電中に、単位時間当りの温度上昇率ΔT/Δtが所定閾値以上に増加した場合に満充電を判定し、満充電判定信号を出力制御部68に出力する。
【0067】
ニッケル水素電池46は充電時間の経過に伴い電池温度が徐々に増加し、満充電になると電池温度が急激に増加する現象が見られ、ΔT/Δt監視部76は満充中に温度上昇率ΔT/Δtが急激に上昇する現象を捉えて満充電を判定する。
【0068】
出力制御部68は、火災移報信号E8が入力していない通常監視時にΔT/Δt監視部76から満充電判定信号を入力した場合、満充電に基づく異常検出信号E6を、ダイオードD3を介して放電制御部50の充電遮断部56に出力し、電池コネクタ44に対する充放電ラインに設けられたスイッチング素子をオフしてニッケル水素電池46に対する充電を遮断停止させる制御を行う。
【0069】
また、出力制御部68は、火災移報信号E8が入力している火災時に満充電判定信号を入力した場合、火災時における電池性能を可能な限り維持するためにニッケル水素電池46に対する充電遮断は行わない。
【0070】
(長充電監視部)
長充電監視部78は、-ΔV監視部74及びΔT/Δt監視部76によりニッケル水素電池46の満充電が判定されずに、満充電を超えて長時間充電となる異常を判定するものであり、電圧センサ52により検出した電圧検出信号E1を入力してタイマを起動し、-ΔV監視部74又はΔT/Δt監視部76の満充電判定によりリセットされることなくタイマにより計時している充電時間が所定の設定時間以上となった場合に長時間充電異常を判定し、長充電異常判定信号を出力制御部68に出力する。
【0071】
出力制御部68は、火災移報信号E8が入力していない通常監視時に長充電監視部78から長充電異常判定信号を入力した場合、ダイオードD3を介して充放電制御部50の充電遮断部56に異常検出信号E6を出力し、電池コネクタ44に対する充放電ラインに設けられたスイッチング素子をオフしてニッケル水素電池46に対する充電を遮断停止させ、更に、
図1に示した表示部22と警報部26にダイオードD4を介して異常警報信号E7を出力し、予備電源障害表示灯の点灯又は点滅と警報部26のスピーカからの警報音の出力により予備電源異常警報を出力させる。
【0072】
また、出力制御部80は、火災移報信号E8が入力している火災時に長充電判定信号を入力した場合、火災時における電池性能を可能な限り維持するためにニッケル水素電池46に対する充電遮断は行わず、
図1に示した表示部22と警報部26に異常警報信号E7を出力し、予備電源障害表示灯の点灯又は点滅と警報部26のスピーカからの警報音の出力により予備電源異常警報を出力させる。
【0073】
[第1監視部による監視制御]
図3は
図2の第1監視部の監視制御を示したフローチャートであり。
図2に示した第1監視部60の機能をCPU、メモリ、入出力ポート等を備えたコンピュータ回路により実現した場合を例にとっている。
【0074】
図3に示すように、第1監視部60は、ステップS1でニッケル水素電池46の電池電圧を読み込み、ステップS2で所定の閾値電圧以上を判別するとステップS3に進んで過電圧を判定し、ステップS4で火災移報なしとして通常監視時を判別するとステップS5に進んで障害警報の出力と充電遮断を指示する。一方、ステップS4で火災移報ありを判別した火災時にはステップS6に進み、充電遮断はせずに障害警報の出力を指示する。
【0075】
また、第1監視部60は、ステップS7でニッケル水素電池46の電池電流を読み込み、ステップS8で所定の閾値電流以上を判別するとステップS9に進んで過電流を判定し、ステップS10で火災移報なしとして通常監視時を判別するとステップS11に進んで障害警報の出力と充電遮断を指示する。一方、ステップS10で火災移報ありを判別した火災時にはステップS12に進み、充電遮断はせずに障害警報の出力を指示する。
【0076】
[第2監視部による監視制御]
図4は
図2の第2監視部の監視制御を示したフローチャートであり。
図2に示した第2監視部70の機能をCPU、メモリ、入出力ポート等を備えたコンピュータ回路により実現した場合を例にとっている。
【0077】
図4に示すように、第2監視部70は、ステップS21でニッケル水素電池46の電池温度を読み込み、ステップS22で所定の閾値温度以上を判別するとステップS23に進んで高温異常を判定し、ステップS24で火災移報なしとして通常監視時を判別するとステップS25に進んで障害警報の出力と充電遮断を指示する。一方、ステップS24で火災移報ありを判別した火災時にはステップS26に進み、充電遮断はせずに障害警報を出力させる。
【0078】
また、第2監視部70は、ステップS27でニッケル水素電池46の温度上昇率ΔT/Δtを検出し、ステップS28で所定の上昇率閾値以上を判別するとステップS29に進んで満充電を判定し、ステップS30で火災移報なしとして通常監視時を判別するとステップS31に進み、障害警報は出力せず、充電遮断を指示する。一方、ステップS30で火災移報ありを判別した火災時にはステップS31はスキップし、充電遮断は行なわない。
【0079】
また、第2監視部70は、ステップS32でニッケル水素電池46のピーク電圧からの電圧低下-ΔVを検出し、ステップS33で所定の低下閾値以上を判別するとステップS34に進んで満充電を判定し、ステップS35で火災移報なしとして通常監視時を判別するとステップS36に進み、障害警報は出力せず、充電遮断を指示する。一方、ステップS35で火災移報ありを判別した火災時にはステップS36はスキップし、充電遮断は行なわない。
【0080】
更に、第2監視部70は、ステップS37で充電開始によりタイマを起動し、ステップS38で所定の設定時間の経過を判別するとステップS39に進んで満充電の時間を超える長時間充電異常を判定し、ステップS40で火災移報なしとして通常監視時を判別するとステップS41に進み、障害警報の出力と充電遮断を指示する。一方、ステップS40で火災移報ありを判別した火災時にはステップS42に進み、障害警報の出力を指示する。
【0081】
[本発明の変形例]
上記の実施形態は、第2監視部によるニッケル水素電池の第2電池状態の監視として、温度監視、-ΔV監視(電圧低下監視)、ΔT/Δt監視(温度上昇率監視)、長充電監視を例にとっているが、任意であり、これ以外にニッケル水素電池に固有な電池状態や電池現象の監視を行うようにしても良い。
【0082】
また、上記の実施形態は、P型火災報知設備の火災受信機を例にとっているが、火災感知器にアドレスを設定して火災を監視するR型(Record-type)火災報知設備に設けた火災受信機についても同様となる。
【0083】
また、上記の実施形態は、防災装置として、火災報知設備に設けられた火災受信機を例にとっているが、火災報知設備に設けられる中継器の予備電源部についても同様に適用でき、更に、商用交流電源の停電時に予備電源部の電池に切り替えて電源供給を行う適宜の防災装置に適用できる。
【0084】
また、上記の実施形態は火災を監視する火災報知設備を例にとるものであったが、火災以外にガス漏れや盗難などの適宜の異常を検知して警報する予備電源切替機能を備えた防災設備の監視盤についても同様に適用できる。
【0085】
また、本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0086】
10:火災受信機
12:制御部
18:火災感知器
20:発信機
30:電源部
32:予備電源部
36:整流平滑回路部
38:停電検出部
40:リレー
42:切替リレー接点
44:電池コネクタ
46:ニッケル水素電池
48:電池収納ケース
50:充放電制御部
52:電圧センサ
54:電流センサ
56:充電遮断部
60:第1監視部
62:電圧監視部
64:電流監視部
66,80:出力制御部
70:第2監視部
72:温度監視部
74:-ΔV監視部
76:ΔT/Δt監視部
78:長充電監視部
82:アダプタ
84:温度センサ