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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】体腔液処理システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
A61M1/00 190
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020171473
(22)【出願日】2020-10-09
(65)【公開番号】P2022063108
(43)【公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】507365204
【氏名又は名称】旭化成メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】横山 翔太
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-013492(JP,A)
【文献】特開2020-081302(JP,A)
【文献】特開2019-134984(JP,A)
【文献】特開2020-025864(JP,A)
【文献】米国特許第03788474(US,A)
【文献】特開2019-013488(JP,A)
【文献】特開2019-013491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00-1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体腔液を濾過器で濾過し、当該濾過器によって濾過された体腔液を、濃縮膜を有する濃縮器で濃縮し、当該濃縮器で濃縮された濃縮体腔液を濃縮体腔液バッグに収容する濾過・濃縮工程を行う濾過・濃縮部と、
濃縮体腔液バッグに収容された濃縮体腔液を前記濃縮器で再度濃縮し濃縮体腔液バッグに戻すように循環させる再濃縮工程を行う再濃縮部と、
前記濾過・濃縮部により濾過・濃縮工程を実行させ、前記濾過・濃縮工程において濃縮体腔液バッグの濃縮体腔液の液量が第1の所定量に到達したら、続いて前記再濃縮部により再濃縮工程を実行させ、前記再濃縮工程において濃縮器の膜間差圧に対応する圧力が所定の閾値に到達したら、前記濾過・濃縮部による前記濾過・濃縮工程に戻す制御部と、を備える、体腔液処理システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記再濃縮工程において濃縮体腔液バッグの濃縮体腔液の液量の減少量が所定の値に満たない場合には、前記濾過・濃縮工程に戻さない、請求項1に記載の体腔液処理システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記濾過・濃縮工程において濃縮体腔液バッグの濃縮体腔液の液量が第1の所定量に到達したら、体腔液処理システムにおける処理を一旦停止させる、請求項1又は2に記載の体腔液処理システム。
【請求項4】
前記制御部は、濃縮体腔液バッグが交換された場合において、交換後の濃縮体腔液バッグの重量が所定の閾値を超えている場合には、体腔液処理システムの操作ボタンを操作不能にする、請求項1~3のいずれか一項に記載の体腔液処理システム。
【請求項5】
濾過器、濃縮器、又は濾過・濃縮工程及び再濃縮工程において体腔液が流れるラインの少なくともいずれかに残留した体腔液を濃縮器を通じて濃縮体腔液バッグに回収する回収工程を行う回収部を、さらに備え、
前記制御部は、濾過・濃縮工程及び再濃縮工程の終了後、前記回収部により前記回収工程を実行させる、請求項1~4のいずれか一項に記載の体腔液処理システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記回収工程の途中に、前記再濃縮部により再濃縮工程を実行させる、請求項5に記載の体腔液処理システム。
【請求項7】
前記制御部は、濃縮器の膜間差圧に対応する圧力が所定の閾値に到達した場合に、体腔液を送液するポンプの流量を制御して前記圧力を調整する、請求項1~6のいずれか一項に記載の体腔液処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体腔液処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
体腔液の1つである腹水における治療法として、患者から腹水を取り出し、当該腹水から細菌やがん細胞などの病因物質を除去し、アルブミンなどの有用成分を残した状態で濃縮し、当該濃縮腹水を体内に戻す腹水ろ過濃縮再静注法(Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy)がある。
【0003】
かかる治療法には、一般的に腹水処理システムが用いられている。この腹水処理システムには、腹水バッグと、濾過器と、濃縮器と、濃縮腹水バッグがこの順番で接続され、ポンプ或いは落差により腹水を流して腹水を濾過・濃縮処理するものが用いられている。濾過器と濃縮器には、中空糸膜などの分離膜が用いられている。
【0004】
また、上述のような腹水処理システムには、濃縮腹水バッグに回収された濃縮腹水を濃縮器で再濃縮して濃縮腹水バッグ戻すように循環させる再濃縮処理を行う機能を有したものがある(例えば特許文献1参照)。そして、当該腹水処理システムでは、上述の濾過・濃縮処理と再濃縮を組み合わせることで、生成される濃縮腹水の濃度と液量を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-80975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような腹水処理システムでは、濃縮器にかかる圧力が高くなると、濃縮器において廃液される量が多くなり、その結果有用物質が多く排出されてしまう。
【0007】
よって、上述の腹水処理システムでは、生成される濃縮腹水の液量を調整することはできるが、例えば再循環処理において濾過器にかかる圧力が高くなることがあるため、腹水からの有用物質の損失が大きくなる恐れがある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、腹水などの体腔液からの有用物質の損失を抑えながらも、生成される濃縮体腔液を所望の液量に近づけることができる体腔液処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、再濃縮工程において濃縮器の膜間差圧に対応する圧力が所定の閾値を超えたら、濾過・濃縮工程に戻す制御を行うことにより上記問題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の態様を含む。
(1)体腔液を濾過器で濾過し、当該濾過器によって濾過された体腔液を、濃縮膜を有する濃縮器で濃縮し、当該濃縮器で濃縮された濃縮体腔液を濃縮体腔液バッグに収容する濾過・濃縮工程を行う濾過・濃縮部と、濃縮体腔液バッグに収容された濃縮体腔液を前記濃縮器で再度濃縮し濃縮体腔液バッグに戻すように循環させる再濃縮工程を行う再濃縮部と、前記濾過・濃縮部により濾過・濃縮工程を実行させ、前記濾過・濃縮工程において濃縮体腔液バッグの濃縮体腔液の液量が第1の所定量に到達したら、続いて前記再濃縮部により再濃縮工程を実行させ、前記再濃縮工程において濃縮器の膜間差圧に対応する圧力が所定の閾値に到達したら、前記濾過・濃縮部による前記濾過・濃縮工程に戻す制御部と、を備える、体腔液処理システム。
(2)体腔液を濾過器で濾過し、当該濾過器によって濾過された体腔液を、濃縮膜を有する濃縮器で濃縮し、当該濃縮器で濃縮された濃縮体腔液を濃縮体腔液バッグに収容する濾過・濃縮工程を行う濾過・濃縮部と、濃縮体腔液バッグに収容された濃縮体腔液を前記濃縮器で再度濃縮し濃縮体腔液バッグに戻すように循環させる再濃縮工程を行う再濃縮部と、前記濾過・濃縮部により濾過・濃縮工程を実行させ、前記濾過・濃縮工程において濃縮体腔液バッグの濃縮体腔液の液量が第1の所定量に到達したら、続いて前記再濃縮部により再濃縮工程を実行させ、前記再濃縮工程において、濃縮器の膜間差圧に対応する圧力が所定の閾値に到達するか、又は、濃縮体腔液バッグの濃縮体腔液の液量が前記第1の所定量よりも少ない第2の所定量になったら、前記濾過・濃縮部による前記濾過・濃縮工程に戻す制御部と、を備える、体腔液処理システム。
(3)前記制御部は、前記再濃縮工程において濃縮体腔液バッグの濃縮体腔液の液量の減少量が所定の値に満たない場合には、前記濾過・濃縮工程に戻さない、(1)又は(2)に記載の体腔液処理システム。
(4)前記制御部は、前記濾過・濃縮工程において濃縮体腔液バッグの濃縮体腔液の液量が第1の所定量に到達したら、体腔液処理システムにおける処理を一旦停止させる、(1)~(3)のいずれか一項に記載の体腔液処理システム。
(5)前記制御部は、濃縮体腔液バッグが交換された場合において、交換後の濃縮体腔液バッグの重量が所定の閾値を超えている場合には、体腔液処理システムの操作ボタンを操作不能にする、(1)~(4)のいずれか一項に記載の体腔液処理システム。
(6)濾過器、濃縮器、又は濾過・濃縮工程及び再濃縮工程において体腔液が流れるラインの少なくともいずれかに残留した体腔液を濃縮器を通じて濃縮体腔液バッグに回収する回収工程を行う回収部を、さらに備え、前記制御部は、濾過・濃縮工程及び再濃縮工程の終了後、前記回収部により前記回収工程を実行させる、(1)~(5)のいずれか一項に記載の体腔液処理システム。
(7)前記制御部は、前記回収工程の途中に、前記再濃縮部により再濃縮工程を実行させる、(6)に記載の体腔液処理システム。
(8)前記制御部は、濃縮器の膜間差圧に対応する圧力が所定の閾値に到達した場合に、体腔液を送液するポンプの流量を制御して前記圧力を調整する、(1)~(7)のいずれか一項に記載の体腔液処理システム。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、体腔液からの有用物質の損失を抑えながらも、生成される濃縮体腔液を所望の液量に近づけることができる体腔液処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施の形態における腹水処理装置の構成の概略を示す説明図である。
図2】腹水処理の制御フローの一例を示すフローチャートである。
図3】腹水処理における濃縮腹水バッグの濃縮腹水の液量の変動と、濃縮器における膜間差圧の変動の一例を示すグラフである。
図4】再濃縮工程の腹水処理装置の様子を示す説明図である。
図5】回収工程の腹水処理装置の様子を示す説明図である。
図6】膜洗浄の腹水処理装置の様子を示す説明図である。
図7】第2の実施の形態における腹水処理の制御フローの一例を示すフローチャートである。
図8】第2の実施の形態における腹水処理における濃縮腹水バッグの濃縮腹水の液量の変動と、濃縮器における膜間差圧の変動の一例を示すグラフである。
図9】再濃縮工程における濃縮腹水バッグの濃縮腹水の液量の減少量が所定値Hに満たない場合に濾過・濃縮工程に戻さない例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態の一例について説明する。なお、本明細書における上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る体腔液処理システムとしての腹水処理システム1の構成の概略を示す説明図である。
【0015】
腹水処理システム1は、濾過・濃縮工程を行う濾過・濃縮部2と、再濃縮工程を行う再濃縮部3と、回収工程と行う回収部4と、濾過・濃縮部2、再濃縮部3及び回収部4を制御する制御部5等を備えている。腹水処理システム1は、濾過・濃縮部2、再濃縮部3及び回収部4の機能を実現するため、例えば以下の構成を有している。
【0016】
腹水処理システム1は、腹水バッグ10と、濾過器11と、濃縮器12と、濃縮腹水バッグ13と、第1の送液ライン14と、第2の送液ライン15と、第3の送液ライン16と、第4の送液ライン17と、第5の送液ライン18と、第6の送液ライン19と、洗浄液の供給手段20と、重量計21等を備えている。
【0017】
腹水バッグ10は、例えば軟質性のバッグであり、患者から採取された腹水を収容することができる。
【0018】
濾過器11は、例えば円筒形状の筐体を有している。濾過器11は、長手方向(上下方向)の両端部に通液口11a、11bを有し、側面に2つの通液口11c、11dを有している。なお、本明細書において腹水処理システム1における上下は、通常使用時の姿勢に基づくものとする。
【0019】
濾過器11は、例えば細菌やがん細胞などの所定の病因物質を除去し、アルブミンなどの所定の有用成分を通過させる濾過膜30を備えている。濾過膜30は、例えば多数本の中空糸膜から構成されている。濾過膜30の一次側の空間(中空糸膜の内部空間)30aは、通液口11a、11bに通じ、濾過膜30の二次側の空間(中空糸膜の外部空間)30bは、通液口11c、11dに通じている。
【0020】
濃縮器12は、例えば円筒形状の筐体を有している。濃縮器12は、長手方向(上下方向)の両端部に通液口12a、12bを有し、側面に2つの通液口12c、12dを有している。
【0021】
濃縮器12は、例えば腹水から水分を除去して濃縮する濃縮膜40を備えている。濃縮膜40は、例えば多数本の中空糸膜から構成されている。濃縮膜40の一次側の空間(中空糸膜の内側空間)40aは、通液口12a、12bに通じ、濃縮膜40の二次側の空間(中空糸膜の外側空間)40bは、通液口12c、12dに通じている。
【0022】
濃縮腹水バッグ13は、例えば軟質性のバッグであり、濃縮器12で濃縮された濃縮腹水を収容することができる。
【0023】
第1の送液ライン14は、腹水バッグ10と濾過器11を接続している。第1の送液ライン14の上流側の端部は、腹水バッグ10に接続され、第1の送液ライン14の下流側の端部は、濾過器11の通液口11aに接続されている。すなわち、濾過器11の通液口11aは、腹水が流入する濾過器11の入口となっている。なお、本明細書において、「上流側」とは、腹水が、濾過器11、濃縮器12の順に流れる通常の腹水処理時に上流側になる方向を示し、「下流側」とは、通常の腹水処理時の下流側になる方向を示す。
【0024】
第1の送液ライン14には、第1の圧力測定装置50が設けられている。第1の圧力測定装置50は、濾過器11の一次側の空間30aに通じており、この空間30aの圧力を測定することができる。
【0025】
第6の送液ライン19の上流側の端部は、濾過器11の通液口11bに接続されている。第6の送液ライン19の下流側の端部は、例えば濾過器11で腹水から除去された排液を収容する廃液部(図示せず)に接続されている。
【0026】
濾過器11の通液口11cには、大気開放された気体導入ライン70が接続されている。気体導入ライン70には、濾過器11の二次側の空間30bの圧力を測定可能な第2の圧力測定装置71が接続されている。
【0027】
第2の送液ライン15は、濾過器11と濃縮器12を接続している。第2の送液ライン15の上流側の端部は、濾過器11の通液口11dに接続され、第2の送液ライン15の下流側の端部は、濃縮器12の上端部の通液口12aに接続されている。すなわち、濾過器11の通液口11dは、濾過器11の出口となり、濃縮器12の通液口12aは、濃縮器12の入口となっている。
【0028】
第2の送液ライン15には、例えばバルブ80と、第1のポンプ81及びドリップチャンバー82が上流側から下流側に向けてこの順番で設けられている。バルブ80は、第2の送液ライン15を開閉する。第1のポンプ81は、第2の送液ライン15のチューブを扱いて送液するチューブポンプである。第1のポンプ81は、停止時にチューブを閉塞するため閉塞手段としての機能も備えている。
【0029】
ドリップチャンバー82には、第3の圧力測定装置83が接続されている。第3の圧力測定装置83は、濃縮器12の一次側の空間40aに通じており、この空間40aの圧力を測定することができる。
【0030】
第3の送液ライン16は、濃縮器12と濃縮腹水バッグ13を接続している。第3の送液ライン16の上流側の端部は、濃縮器12の下端部の通液口12bに接続され、第3の送液ライン16の下流側の端部は、濃縮腹水バッグ13に接続されている。すなわち、濃縮器12の通液口12bは、濃縮器12の第1の出口となっている。
【0031】
第3の送液ライン16には、第2のポンプ90が設けられている。第2のポンプ90は、第3の送液ライン16のチューブを扱いて送液するチューブポンプである。第2のポンプ90は、停止時にチューブを閉塞するため閉塞手段としての機能も備えている。
【0032】
第4の送液ライン17の上流側の端部は、例えば濃縮器12の通液口12c、12dに接続されている。すなわち、濃縮器12の通液口12c、12dは、濃縮器12の第2の出口となっている。なお、第4の送液ライン17の上流側の端部は、通液口12c、12dのいずれか一方にのみ接続されていてもよい。第4の送液ライン17の下流側の端部は、濃縮器12で腹水から除去された排液(主に水分)を収容する廃液部(図示せず)に接続されている。
【0033】
第4の送液ライン17には、バルブ100と第4の圧力測定装置101が設けられている。バルブ100は、第4の送液ライン17を開閉する。第4の圧力測定装置101は、濃縮器12の二次側の空間40bに通じており、この空間40bの圧力を測定することができる。
【0034】
第5の送液ライン18は、濃縮腹水バッグ13と第2の送液ライン15を接続している。第5の送液ライン18の一端部(上流側の端部)は、濃縮腹水バッグ13に接続されている。第5の送液ライン18の他端部(下流側の端部)は、第2の送液ライン15における第1のポンプ81よりも上流側に接続されている。第5の送液ライン18には、第5の送液ライン18を開閉するバルブ110が設けられている。なお、第1~第6の送液ライン14~19には、例えば軟質性のチューブが用いられている。
【0035】
洗浄液の供給手段20は、第2の送液ライン15に洗浄液を供給するものである。供給手段20は、例えば洗浄液を収容する収容部120と、収容部120と第2の送液ライン15を接続する供給ライン121と、供給ライン121を開閉する開閉手段としてのバルブ122を備えている。供給ライン121は、第2の送液ライン15における第1のポンプ81よりも下流側に接続されている。なお、開閉手段は、バルブでなく、ポンプであってもよい。洗浄液は、例えば生理食塩水である。
【0036】
第1~第4の圧力測定装置50、71、83、101の圧力測定結果は、制御部5に出される。第1の圧力測定装置50により測定された圧力P1と第2の圧力測定装置71により測定された圧力P2から、濾過器11における膜間差圧(一次側の空間30aと二次側の空間30bの圧力差P3(P1-P2))を測定することができる。また第3の圧力測定装置83により測定された圧力P4と第4の圧力測定装置101により測定された圧力P5から、濃縮器12における膜間差圧(一次側の空間40aと二次側の空間40bの圧力差P6(P4-P5))を測定することができる。
【0037】
重量計21は、濃縮腹水バッグ13の重量を計測することができる。重量計21の計測結果は、制御部5に出力される。重量計21の計測結果により、濃縮腹水バッグ13の重量や、濃縮腹水バッグ13の濃縮腹水の液量を測定することができる。なお、濃縮腹水バッグ13の濃縮腹水の液量は、例えば濃縮腹水の入った濃縮腹水バッグ13の重量から、空の状態の濃縮腹水バッグ13の重量を引き算したものとなる。
【0038】
制御部5は、例えばCPU、メモリ等を有するコンピュータである。制御部5は、第1のポンプ81、第2のポンプ90、バルブ80、100、110、122、圧力測定装置50、71、83、101、重量計21等の各装置の動作を制御して腹水処理を実行することができる。制御部5は、例えばメモリに記憶されたプログラムをCPUで実行することにより腹水処理を実現することができる。
【0039】
例えば制御部5は、メモリに記憶された所定のプログラムを実行することで、濾過・濃縮部2により濾過・濃縮工程を実行させ、濾過・濃縮工程において濃縮腹水バッグ13の濃縮腹水の液量が、予め設定された第1の所定量に到達したら、続いて再濃縮部3により再濃縮工程を実行させ、再濃縮工程において濃縮器12の膜間差圧P6に対応する圧力が所定の閾値に到達したら、濾過・濃縮部2による濾過・濃縮工程に戻す。また制御部5は、濾過・濃縮工程と再濃縮工程を繰り返し実行させ、最後に濾過・濃縮工程を実行させる。さらに、制御部5は、濾過・濃縮工程及び再濃縮工程の終了後、回収部4により回収工程を実行させる。
【0040】
なお、本実施の形態において濾過・濃縮部2は、例えば腹水バッグ10と、濾過器11と、濃縮器12と、濃縮腹水バッグ13と、第1の送液ライン14と、第2の送液ライン15と、第3の送液ライン16と、第4の送液ライン17と、第6の送液ライン19と、バルブ80、100と、第1のポンプ81及び第2のポンプ90等により構成される。再濃縮部3は、例えば濃縮器12と、濃縮腹水バッグ13と、第5の送液ライン18と、第2の送液ライン15と、第3の送液ライン16と、第4の送液ライン17と、バルブ100、110と、第1のポンプ81及び第2のポンプ90等により構成される。回収部4は、例えば濾過器11と、濃縮器12と、濃縮腹水バッグ13と、気体導入ライン70と、第2の送液ライン15と、第3の送液ライン16、第4の送液ライン17と、バルブ80、100と、第1のポンプ81及び第2のポンプ90等により構成される。
【0041】
次に、上述の腹水処理システム1を用いて行われる腹水処理について説明する。図2は、腹水処理の制御フローの一例を示す図である。また図3は、腹水処理における濃縮腹水バッグ13の濃縮腹水の液量の変動と、濃縮器12における膜間差圧P6の変動の一例を示すグラフである。
【0042】
腹水処理が開始されると、先ず濾過・濃縮工程(フェーズ1)が行われる(図2のS1)。濾過・濃縮工程(フェーズ1)では、図1に示すようにバルブ110及びバルブ122が閉鎖され、バルブ80及びバルブ100が開放され、第1のポンプ81及び第2のポンプ90が作動する。このとき第1のポンプ81の設定流量Q1は、第2のポンプ90の設定流量Q2よりも大きく設定されている。
【0043】
腹水バッグ10の腹水は、第1の送液ライン14を通じて濾過器11に送られる。腹水は、濾過器11の通液口11aから濾過膜30の一次側の空間30aに流入し、濾過膜30を通過して、濾過膜30の二次側の空間30bに流出する。このとき、腹水から所定の病因物質が除去される。濾過膜30の一次側の空間30aにおいて濾過膜30を通過しない排液は、第6の送液ライン19を通って図示しない廃液部に排出される。
【0044】
濾過膜30の二次側の空間30bに流出した腹水は、濾過器11の通液口11dから第2の送液ライン15に流出し、第2の送液ライン15を通って濃縮器12に送られる。腹水は、濃縮器12の入口12aから濃縮膜40の一次側の空間40aに流入し、第1の出口12bから排出される。このとき、第1のポンプ81の設定流量Q1が、第2のポンプ90の設定流量Q2よりも大きいため、腹水の一部の水分が、濃縮膜40を通過して濃縮膜40の二次側の空間40bに流出する。これにより腹水から主に水分が除去されて腹水が濃縮される。濃縮器12で濃縮された濃縮腹水は、第3の送液ライン16を通って濃縮腹水バッグ13に収容される。濃縮器12で除去された排液は、第4の送液ライン17を通って図示しない排液部に排出される。濾過・濃縮工程(フェーズ1)では、図3に示すように濃縮腹水バッグ13の液量が次第に増加していく。
【0045】
このとき、重量計21により濃縮腹水バッグ13の濃縮腹水の液量がモニタリングされている(図2のS3)。濃縮腹水バッグ13の濃縮腹水の液量が第1の所定量B1に到達すると、次の再濃縮工程(フェーズ2)が開始される(図2のS4)。なお、濃縮腹水バッグ13の濃縮腹水の液量は、必ずしも重量計21によりモニタリングされる必要はなく、第2のポンプ90の設定流量Q2と濾過・濃縮工程の経過時間から計算して求めてもよい。第1の所定量B1は、任意に設定可能であるが、例えば濃縮腹水バッグ13の最大許容量が1000ccの場合、第1の所定量B1は濃縮腹水バッグ13の製造ばらつきを考慮し、最大許容量よりも少ない900cc等に設定することができる。また、第1の所定量B1は、必ずしもユーザが設定できる必要はなく、システムにおいてユーザに関係なく決定されてもよい。
【0046】
再濃縮工程(フェーズ2)では、図4に示すようにバルブ80及びバルブ122が閉鎖され、バルブ110及びバルブ100が開放される。引き続き第1のポンプ81及び第2のポンプ90が作動し、濃縮腹水バッグ13の濃縮腹水が、第5の送液ライン18を通って第2の送液ライン15に供給され、第2の送液ライン15を通じて濃縮器12に供給され、濃縮器12で再濃縮される。その後濃縮腹水は、第3の送液ライン16を通って濃縮腹水バッグ13に戻される。こうして、濃縮腹水バッグ13の濃縮腹水が、濃縮腹水バッグ13→濃縮器12→濃縮腹水バッグ13の順に循環する。再濃縮工程(フェーズ2)では、濃縮器12で排液が除去されるため、図3に示すように濃縮腹水バッグ13の液量は次第に減少し、濃縮腹水の蛋白質濃度が高くなる。
【0047】
再濃縮工程(フェーズ2)では、第3の圧力測定装置83と第4の圧力測定装置101により、濃縮器12における膜間差圧P6(一次側の空間40aと二次側の空間40bの圧力差)がモニタリングされている。膜間差圧P6が、所定の閾値Aに到達したら、再濃縮工程(フェーズ2)が停止され、濾過・濃縮工程(フェーズ1)に戻される(図2のS5)。所定の閾値Aは、例えば濃縮膜40において一次側の空間40aから二次側の空間40bへの有用物質の損失が多くなるような値や、濃縮膜40が目詰まりを起こすような値に予め設定される。
【0048】
濾過・濃縮工程(フェーズ1)に戻されると、再度腹水が、濾過器11、濃縮器12を通じて濃縮腹水バッグ13に供給され、腹水の濾過・濃縮が行われる。そして、濃縮腹水バッグ13の濃縮腹水の液量が第1の所定量B1となると、再び再濃縮工程(フェーズ2)が開始される。そして、また、再濃縮工程(フェーズ2)において、濃縮器12の膜間差圧P6が再び所定の閾値Aに到達すると、濾過・濃縮工程(フェーズ1)に戻される。こうして例えば複数回、濾過・濃縮工程(フェーズ1)と再濃縮工程(フェーズ2)が繰り返される。
【0049】
そして、濾過・濃縮工程(フェーズ1)において、腹水バッグ10の腹水が全て処理される(腹水バッグ10の腹水の処理量が目標量に到達する)(図2のS2)と、濾過・濃縮工程(フェーズ1)が終了し、次に回収工程が開始される(図2のS6)。なお、必ずしも腹水を全て処理しなくとも、ユーザが任意のタイミングで濾過・濃縮工程(フェーズ1)を終了し、回収工程に移行してもよい。
【0050】
回収工程では、例えば図5に示すようにバルブ80、バルブ100が開放され、バルブ110及びバルブ122が閉鎖され、第1のポンプ81及び第2のポンプ90が作動する。これにより、気体導入ライン70から大気が流入し、濾過器11の二次側の空間30bと、第2の送液ライン15と、濃縮器12の一次側の空間40a及び第3の送液ライン16に残存している腹水及び濃縮腹水が、濃縮腹水バッグ13に向かって流れ、濃縮腹水バッグ13に回収される。このとき濃縮器12では、通過する腹水から水分が除去され腹水が濃縮される。
【0051】
例えば回収工程を所定時間行った後、第1のポンプ81と第2のポンプ90が停止され、一連の腹水処理が終了する。
【0052】
なお、上記濾過・濃縮工程と再濃縮工程において、濾過器11の濾過膜30を洗浄する膜洗浄を適宜行ってもよい。
【0053】
この場合、例えば図6に示すように例えば第2のポンプ90が停止し、バルブ80及びバルブ122が開放され、バルブ110、100が閉鎖された状態で、第1のポンプ81が逆方向に作動し、収容部120の洗浄液が、供給ライン121及び第2の送液ライン15を通じて濾過器11に供給され、洗浄液が濾過膜30の二次側の空間30bから一次側の空間30aに流出して、濾過膜30が洗浄される。濾過膜30の一次側の空間30aに流出した洗浄液は、第6の送液ライン19を通じて排出される。
【0054】
本実施の形態によれば、再濃縮工程において濃縮器12の膜間差圧P6が所定の閾値Aに到達すると、再び濾過・濃縮工程に戻すようにしたので、濃縮器12の膜間差圧P6を低く維持して濃縮膜40の一次側から二次側への有用物質の損失を抑えながらも、生成される濃縮腹水を所望の液量及び濃度に近づけることができる。
【0055】
制御部5が、濾過・濃縮工程と再濃縮工程を繰り返し実行させ、最後に濾過・濃縮工程を実行させるので、濃縮器12の膜間差圧P6が所定の閾値Aを超えずに、濃縮腹水バッグ13の濃縮腹水の液量が次第に第1の所定量B1に近づくので、高濃度の濃縮腹水を所望の液量にさらに近づけることができる。
【0056】
(第2の実施の形態)
上記実施の形態において、制御部5は、再濃縮工程(フェーズ2)において、濃縮器12の膜間差圧P6が所定の閾値Aに到達したら、濾過・濃縮工程(フェーズ1)に戻す制御を行っていたが、再濃縮工程(フェーズ2)において、濃縮器12の膜間差圧P6が所定の閾値Aに到達するか、又は、濃縮腹水バッグ13の濃縮腹水の液量が第1の所定量B1よりも少ない第2の所定量B2になったら、濾過・濃縮部2による濾過・濃縮工程(フェーズ1)に戻す制御を行うようにしてもよい。かかる場合の一例を本発明の第2の実施の形態として説明する。なお、第2の実施の形態において特に言及しないことについては、上記第1の実施の形態と同様であり、説明を省略している。図7は、第2の実施の形態における腹水処理の制御フローの一例を示す図である。また図8は、第2の実施の形態における腹水処理における濃縮腹水バッグ13の濃縮腹水の液量の変動と、濃縮器12における膜間差圧P6の変動の一例を示すグラフである。
【0057】
かかる場合、濾過・濃縮工程(フェーズ1)が開始され(図7のS1)、濾過・濃縮工程(フェーズ1)において濃縮腹水バッグ13の濃縮腹水の液量が第1の所定量に到達したら(図7のS3)、続いて再濃縮工程が開始される(図7のS4)。この再濃縮工程(フェーズ2)においては、第3の圧力測定装置83と第4の圧力測定装置101により濃縮器12における膜間差圧P6(一次側の空間40aと二次側の空間40bの圧力差)がモニタリングされるとともに、重量計21により濃縮腹水バッグ13の濃縮腹水の液量がモニタリングされている。そして、再濃縮工程(フェーズ2)において、濃縮器12の膜間差圧P6が所定の閾値Aに到達するか、又は濃縮腹水バッグ13の濃縮腹水の液量が第2の所定量B2になったら、再濃縮工程(フェーズ2)が停止され、濾過・濃縮工程(フェーズ1)に戻される(図7のS5)。第2の所定量B2は、任意に設定可能であり、必ずしもユーザが設定できる必要はなく、システムにおいてユーザに関係なく決定されてもよい。
【0058】
濾過・濃縮工程(フェーズ1)に戻されると、再度腹水が、濾過器11、濃縮器12を通じて濃縮腹水バッグ13に供給され、腹水の濾過・濃縮が行われる。そして、濃縮腹水バッグ13の濃縮腹水の液量が第1の所定量B1となり、腹水バッグ10の全ての腹水が処理されていない場合(腹水バッグ10の腹水の処理量が目標量に達していない場合)(図7のS2)には、その後再び再濃縮工程(フェーズ2)が開始される。そして、また、再濃縮工程(フェーズ2)において、濃縮器12の膜間差圧P1が再び所定の閾値Aに到達か、又は、濃縮腹水バッグ13の濃縮腹水の液量が第2の所定量B2になったら、濾過・濃縮工程(フェーズ1)に戻される。こうして複数回、濾過・濃縮工程(フェーズ1)と再濃縮工程(フェーズ2)が繰り返される。
【0059】
そして、濾過・濃縮工程(フェーズ1)において、腹水バッグ10の腹水が全て処理されると、濾過・濃縮工程(フェーズ1)が終了し、次に回収工程が行われ(図7のS6)、回収工程を所定時間行った後一連の腹水処理が終了する。
【0060】
本実施の形態によれば、濃縮器12の膜間差圧P6を低く維持して濃縮膜40の一次側から二次側への有用物質の損失を抑えながらも、生成される濃縮腹水を所望の液量及び濃度に近づけることができる。また濃縮腹水バッグ13の濃縮腹水の液量が下がりすぎることがないので、濃縮腹水バッグ13の濃縮腹水の液量がより早く第1の所定量B1に収束していく。この結果、腹水処理に要する時間を短縮することができる。
【0061】
以上の実施の形態において、制御部5は、再濃縮工程(フェーズ2)において濃縮腹水バッグ13の濃縮腹水の液量の減少量が所定の値Hに満たない場合には、濾過・濃縮工程(フェーズ1)に戻さないようにしてもよい。濾過・濃縮工程(フェーズ1)と再濃縮工程(フェーズ2)を複数回にわたって繰り返す場合、図2及び図7で示したように濃縮膜40の処理能力が低下し、再濃縮工程(フェーズ2)において減少する濃縮腹水の液量は次第に少なくなり、濃縮膜40の膜間差圧P6が相対的に高くなる。この場合、濃縮膜40の膜間差圧P6が閾値Aに到達しやすくなり、濾過・濃縮工程(フェーズ1)と再濃縮工程が頻繁に切り替わることがあるため、図9に示すように濃縮腹水バッグ13の濃縮腹水の液量の減少量が所定の値Hに満たない場合には、濾過・濃縮工程(フェーズ1)に戻らず、再濃縮工程(フェーズ2)を停止し、例えばその停止状態を継続したり、回収工程に移行してもよい。濃縮腹水バッグ13の濃縮腹水の液量の減少量の所定の値Hは、例えば第1の所定値B1と第2の所定値B2の差より小さく、例えば50mL以下の値であってもよい。
【0062】
以上の実施の形態において、制御部5は、回収工程の途中に、再濃縮部3により再濃縮工程を実行させるようにしてもよい。例えば図5において、濾過器11の二次側の空間30bと、第2の送液ライン15と、濃縮器12の一次側の空間40a及び第3の送液ライン16に残存している腹水及び濃縮腹水の一部が、濃縮腹水バッグ13に回収され、濃縮器12に濃縮腹水が残存している状態の回収工程の途中で、再濃縮工程が行われ、その後濃縮器12等に残存している濃縮腹水が回収されるようにしてもよい。こうすることにより、濾過・濃縮工程と再濃縮工程において生成された濃縮腹水と回収工程で回収した濃縮腹水を含む濃縮腹水が、再濃縮され、濃縮腹水バッグ13に最終的に収容される濃縮腹水の液量と濃度を調整することができる。
【0063】
さらに制御部5は、回収工程において、濃縮器12の膜間差圧P6が所定の閾値Aに到達した場合に、腹水を送液するポンプ81、90の流量を調整して濃縮器12の膜間差圧P6を調整してもよい。この場合、回収工程においても濃縮器12の膜間差圧P6を低く維持して、濃縮膜40の一次側から二次側への有用物質の損失を抑えることができる。
【0064】
また、制御部5は、濾過・濃縮工程において濃縮腹水バッグ13の濃縮腹水の液量が第1の所定量B1に到達したら、腹水処理システム1における処理を一旦停止させるようにしてもよい。かかる場合、処理を一旦停止し、ユーザがその後の動作(例えば処理を継続するか、処理を終了するのか)を選択できるようにしてもよい。これにより、この段階で、濃縮腹水バッグ13を新しいものに交換し、再び腹水処理を実施することをユーザが選択することも可能になる。また、濾過・濃縮工程から再濃縮工程に切り替わるタイミングで、腹水バッグ10の腹水の量が少ない場合には、ここで回収工程に移行することをユーザが選択することも可能になる。
【0065】
制御部5は、濃縮腹水バッグ13が交換された場合において、交換後の濃縮腹水バッグ13の重量が所定の閾値を超えている場合には、腹水処理システム1のユーザの操作ボタンを操作不能にしてもよい。この場合、濃縮腹水バッグ13の重量は、例えば重量計21により測定される。かかる場合、例えば操作ボタンが、例えば表示装置において非表示になったり、無効化されて操作不能になることで、濃縮腹水バッグ13に既に腹水が入っているにも関わらず、ユーザが間違って操作ボタンを押して腹水処理を開始することができなくなる。このときの濃縮腹水バッグ13の重量の所定の閾値は、特になにかに限定される値ではなく、任意に設定可能であるが、空の濃縮腹水バッグ13と、腹水が大量に入っている濃縮腹水バッグ13とを区別できる重量値であることが望ましい。
【0066】
以上の実施の形態において、濾過・濃縮工程、再濃縮工程及び回収工程の全ての工程において、濃縮膜40の膜間差圧P6が所定の閾値Aに到達する場合、所定の閾値Aを超えた状態を継続しないように第1のポンプ81と第2のポンプ90を調整したり、他の処理を移行したりすることで、全ての処理を通して所定の閾値Aを超えずに腹水処理を行うようにしてもよい。
【0067】
なお、以上の実施の形態において、閾値Aは処理工程毎に変動させてもよく、また、一連の腹水処理の途中で変更してもよい。
【0068】
腹水処理システム1の構成は、以上の実施の形態のものに限られない。例えば第1のポンプ81及び第2のポンプ90の位置は、適宜変更することができる。特に第1のポンプ81は、第1の送液ライン14にあってもよい。
【0069】
以上の実施の形態において、第2の送液ライン15及び第3の送液ライン16が濃縮器12の濃縮膜40の内側領域に接続され、第4の送液ライン17が濃縮器12の濃縮膜40の外側領域に接続されていたが、その逆、すなわち第2の送液ライン15及び第3の送液ライン16が濃縮器12の濃縮膜40の外側領域に接続され、第2の送液ライン15が濃縮器12の濃縮膜40の内側領域に接続されていてもよい。また、第1の送液ライン14及び第6の送液ライン19が濾過器11の濾過膜30の内側領域に接続され、第2の送液ライン15が濾過膜30の外側領域に接続されていたが、その逆、すなわち第1の送液ライン14及び第6の送液ライン19が濾過器11の濾過膜30の外側領域に接続され、第2の送液ライン15が濾過膜30の内側領域に接続されていてもよい。また、濾過器11及び濃縮器12は、上下逆に設置されていてもよい。すなわち濾過器11は、入口11aが下で出口11bが上に向き、濃縮器12は、入口12aが下で出口12bが上に向くように設置されていてもよい。
【0070】
以上の実施の形態において、腹水処理システム1は、腹水バッグ10に収容された腹水を濾過し、濃縮して濃縮腹水バッグ13に収容するものであったが、患者から直接第1の送液ライン14に腹水を取り出し、濾過、濃縮するものであってもよい。
【0071】
以上の実施の形態は、腹水を処理する腹水処理システム1に本発明を適用した好適な一例であったが、本発明は、胸水などの他の体腔液を処理する体腔液処理システムにも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、体腔液からの有用物質の損失を抑えながらも、生成される濃縮体腔液を所望の液量に近づけることができる体腔液処理システムを提供する際に有用である。
【符号の説明】
【0073】
1 腹水処理システム
2 濾過・濃縮部
3 再濃縮部
4 回収部
5 制御部
10 腹水バッグ
11 濾過器
12 濃縮器
13 濃縮腹水バッグ
14 第1の送液ライン
15 第2の送液ライン
16 第3の送液ライン
17 第4の送液ライン
18 第5の送液ライン
19 第6の送液ライン
40 濃縮膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9