(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】メタ表面
(51)【国際特許分類】
H01Q 15/14 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
H01Q15/14 B
(21)【出願番号】P 2020193727
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2019222461
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】塩沢 隆広
(72)【発明者】
【氏名】松野 宏己
(72)【発明者】
【氏名】天野 良晃
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/082003(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0044210(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパッチ板を持つメタ表面において、パッチ板間に凹凸構造を持ち、この凹凸構造の形状
を変えることにより特性を
変えることができるメタ表面
であって、
パッチ板と導体面間又はパッチ板間の電気長を動的に変えることを特徴としたメタ表面。
【請求項2】
前記凹凸構造の形状として、凹凸構造の数、または、凹凸構造の深さ、または、凹凸構造の幅、または、これらの組合せを変えることにより特性を制御することを特徴とした請求項1記載のメタ表面。
【請求項3】
パッチ板と導体面間又はパッチ板間に誘電体を設け、前記誘電体は誘電率が可変であることを特徴とした請求項
1又は2のいずれか1項に記載のメタ表面。
【請求項4】
パッチ板と導体面間又はパッチ板間にスイッチを設けたことを特徴とした請求項
1又は2のいずれか1項に記載のメタ表面。
【請求項5】
パッチ板間に、パッチ板とは別個に凹凸構造
を形成する凸部及び凹部が設けられたことを特徴とした請求項1から
4のいずれか1項に記載のメタ表面。
【請求項6】
パッチ板とは別個に設けられた凹凸構造を形成する凸部及び凹部がそれぞれにスイッチを介して各パッチ板に電気的に接続されることを特徴とした請求項
5に記載のメタ表面。
【請求項7】
前記凸部及び前記凹部の各位置を移動させる可動部を設けたことを特徴とした請求項
6に記載のメタ表面。
【請求項8】
パッチ板間に設けられる凹凸構造の形状を可変にする機構を設けたことを特徴とした請求項1から
4のいずれか1項に記載のメタ表面。
【請求項9】
パッチ板間に設けられる凹凸構造に使用可能な導電体部品をパッチ板とは別個に設け、当該導電体部品を組み合わせることによって当該凹凸構造の形状を可変にすることを特徴とした請求項
8に記載のメタ表面。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工表面材料、すなわちメタ表面、メタサーフェイスに関し、このような材料は、電波を特定の方向に反射、または、屈曲させる反射器(リフレクタ)や、電波を送受信する際のアンテナや、特定の周波数を減衰させるフィルタ等に使用可能である。
【背景技術】
【0002】
移動通信等において、電波の経路に建物等の障害物が存在すると、受信レベルが劣化する。このため、その建物と同程度以上の高所に反射器を設け、電波が届きにくい場所に反射波または透過屈曲波を送る技術がある。反射器により電波を反射、透過する際、垂直面内における電波の入射角が比較的小さかった場合、導体板等による反射器では、電波の入射角と反射角は等しいので、電波を所望方向に向けることが困難になる。反射板に対する入射角及び反射角を大きくするために、地面を覗き込むように反射板を傾斜させることが考えられるが、高所に設置する反射器を地面側に傾けることは、安全性の観点からは好ましくない。このため、電波の入射角が比較的小さかったとしても、所望方向に反射波を向けることが可能な反射器が望まれる(
図1)。
【0003】
このような反射器として、半波長程度の素子を周期的に並べた構造を用いる方法が考えられるが、このような構造はかなり大型になってしまう。これに対して、半波長よりも小さな素子を多数並べたメタ表面が注目されている。このようなメタ表面の一例は、導体面と導体板(パッチ板)と両者を結ぶ短絡線から構成されるきのこ状の構造(マッシュルーム構造)を複数並べたメタ表面(例えば、非特許文献1参照。)である。
【0004】
マッシュルーム構造を用いた反射器は、等価回路におけるインダクタンスLと静電容量(以下、単に容量と称する場合がある)Cを調整して共振周波数を調整することで反射位相を制御し、電波が反射する方向を制御する。共振周波数を調整する方法としては、パッチのサイズを変える方法等(例えば、非特許文献2参照。)がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】D. Sievenpiper, L. Zhang, R. F. J. Broas, N. G. Alexopolous, and E. Yablonovitch, “High-Impedance Electromagnetic Surfaces with a Forbidden Frequency Band,” IEEE Trans. Microwave Theory Tech., vol. 47, no. 11, pp. 2059-2074, Nov. 1999.
【文献】T. Maruyama, T. Furuno, Y. Oda, J. Shen, and T. Ohya, “Capacitance Value Control for Metamaterial Reflectarray Using Multi-layer Mushroom Structure with Parasitic Patches,” ACES Journal, vol. 27, No. 1, pp. 28-41, Jan. 2012.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数の素子を用いて所望の方向に電波を向ける反射器を実現するには、所定の位相を与える素子を整列させる必要がある。マッシュルーム構造のパッチ板の大きさを変えることで所定の位相を得ることが行われているが、素子間隔が変化するため効率良く素子を配置することが困難であったり、設計が煩雑となったりする問題がある。
【0007】
本発明の課題は、マッシュルーム構造を持つ複数の素子を用いたメタ表面に利用可能な構造で、素子の中心間隔、すなわち周期(ピッチ)を変えないで所定の位相を与える構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のメタ表面は、複数のパッチ板を持つメタ表面において、パッチ板間に凹凸構造を持ち、この凹凸構造の形状を変えることにより特性を変えることができるメタ表面であって、パッチ板と導体面間又はパッチ板間の電気長を動的に変えることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0009】
複数のパッチ板を持つメタ表面の等価回路は、パッチ板間の間隙で生じる容量Cとパッチ板に加えてパッチ板と導体面を結ぶ短絡線で生じるインダクタンスLの並列共振回路で表される(
図2)。または、パッチ板間の間隙で生じる容量Cとパッチ板に加えてパッチ板間を結ぶ短絡線で生じるインダクタンスLの並列共振回路で表される(
図3)。
【0010】
本発明のメタ表面は、パッチ板間に凹凸構造を設け、この凹凸構造の形状により主に等価回路の容量Cを変えることで、共振特性を制御し、所定の反射位相、あるいは、透過位相を得るので、素子の周期(ピッチ)を変えないで所定の位相を得ることができる。
【0011】
これにより素子を隙間無く配置できるので、高い反射率、または、透過率を得ることができる。また、等周期(等ピッチ)に素子を配置できるので、設計が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】移動通信の受信環境を、メタ表面を用いて改善する例を示す図。
【
図4】反射型メタ表面における実施例のパッチ板の形状を示す図。
【
図5A】パッチ板における凹凸構造の幅を説明する図。
【
図5B】パッチ板における凹凸構造の深さを説明する図。
【
図5C】パッチ板における凹凸構造の数を説明する図。
【
図6】パッチ板における凹凸構造の深さを変えることで反射位相の周波数特性が変化することを説明する図。
【
図7】第2実施形態の構成を説明するための説明図。
【
図8】第3実施形態の構成を説明するための説明図。
【
図9】第4実施形態の構成を説明するための説明図。
【
図10】第5実施形態の構成を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
図1-
図6を参照して第1実施形態を説明する。
図4は反射型メタ表面に適用した実施例について、パッチ板の形状を示す。この例では、パッチ板として六角形状のパッチ板を用いる。パッチ板と導体面の間は短絡線で接続される。パッチ板の各辺に凹凸構造(インターディジタル構造)が設けられる。
図5に示すようにこの凹凸構造の幅(
図5A),深さ(
図5B),数(
図5C)を変えることにより等価回路の容量Cの値を変えることができるので、パッチ板の周期を変えないで、等価回路の容量Cの値を連続的に変えることができる。
【0014】
図6は、
図5Bに示す凹凸構造の深さを変えることでメタ表面における反射位相の周波数特性が変化することを示す一つの例である。
【0015】
図6の例では、
図5Bに示す凹凸構造の深さを変えることによってメタ表面における反射位相の周波数特性がどのように変化するのかを観測するために、
図5Bに示す凹凸構造の深さ以外の他のパラメータを固定している。具体的には、3GHzから5GHzくらいまでの周波数に対して、
図5Bに示す凹凸構造の深さを変えることによってメタ表面における反射位相の周波数特性がどのように変化するのかを観測することができるように、
図5Bに示す凹凸構造の深さ以外の他のパラメータを設定している。また、
図6の例では、
図5Bに示す凹凸構造の深さ「D1=D2=D」に設定している。
【0016】
図5Bに示す凹凸構造の深さ「D1=D2=D」が大きくなると、等価回路の容量Cが大きくなり、これにより
図6に示されるように、位相特性が低周波数側へシフトする。同じ周波数に着目すると、
図6に示されるように、
図5Bに示す凹凸構造の深さ「D1=D2=D」が大きくなると、位相がマイナス側へ動く。
【0017】
なお、
図5Bに示す凹凸構造の深さ「D1≠D2」の場合には、「D2:固定」において深さD1が大きくなると、等価回路の容量Cが大きくなる。また、「D1:固定」において深さD2が小さくなると、等価回路の容量Cが大きくなる。そして、等価回路の容量Cが大きくなると、位相特性が低周波数側へシフトし、同じ周波数に着目すると位相がマイナス側へ動く。
【0018】
図6には、凹凸構造の深さを変えることの効果を示したが、同様に幅を変えて所定の位相を得ることもできる。また、凹凸構造の数を変えることもできる。また、凹凸構造の深さ,幅,数を組み合わせて変えることもできる。
【0019】
凹凸構造の凹凸に沿った長さが、平行平板コンデンサの容量Cを表す式「C=εS/d」における面積Sに対して相関があると考えられる。また、距離dについても、凹凸構造の形状に対して相関があると考えられる。このことから、凹凸構造の形状として例えば幅(
図5A)や深さ(
図5B)や数(
図5C)等を変えることにより等価回路の容量Cの値を変えることができる。そして、等価回路の容量Cの値を変えることができることにより、反射位相や透過位相を変えることができる。等価回路の容量Cが大きくなると、反射位相や透過位相は、位相特性が低周波数側へシフトし、同じ周波数に着目すると位相がマイナス側へ動く。但し、
図3の透過型メタ表面の場合、高い方に離れた周波数では位相特性が逆になる周波数帯があるが、当該周波数帯には適用しなければよい。
【0020】
なお、所望の位相を得るための凹凸構造の形状、例えば
図5Aに示す凹凸構造の幅W1,W2、
図5Bに示す凹凸構造の深さD1,D2、及び
図5Cに示す凹凸構造の数等については、例えばシミュレーションや実験等によって具体的な数値を求めることが挙げられる。
【0021】
図4には、六角形状のパッチ板に凹凸構造を付加する例を示したが、四角形状のパッチ板等、他の形状をもつパッチ板に凹凸構造を付加しても、また、多層の構造等を持つ他の構造のメタ表面に凹凸構造を付加しても同様な効果が得られる。また、
図4は反射型メタ表面に関する実施例として説明したが、透過型メタ表面に関しても同様な効果が得られる。
【0022】
図4に例示されるような凹凸構造を付加するパッチ板の形状として、例えば三角形状、四角形状、五角形状及び八角形状等であってもよい。また、メタ表面の構造として、例えば多層の構造やパッチ板にある程度以上の厚みを持たせたブロック形状の構造等であってもよい。また、
図3の透過型メタ表面に対しても同様にパッチ板に凹凸構造を付加し、凹凸構造の形状により透過位相を制御するようにしてもよい。
【0023】
図4,
図5において、凹凸構造として方形の凹凸構造で説明したが、その他の形状の凹凸構造を用いても同様な効果が得られる。
【0024】
凹凸構造として、例えば方形や半円形や波形等の凹凸構造であってもよい。
【0025】
ここまで電波を反射,屈曲させる方向を一方向として説明しているが、同時に複数方向へ反射,屈曲させるメタ表面を設計することも可能であり、このようなメタ表面に関しても同様な効果が得られる。
【0026】
メタ表面を複数の領域に分割し、各領域を凹凸構造の形状により所望の位相に制御してもよい。例えば、反射角が20°の領域と反射角が25°の領域とを交互に繰り返し配置するようにしてもよい。
【0027】
第1実施形態によれば、複数のパッチ板を持つメタ表面において、パッチ板間に凹凸構造を持ち、この凹凸構造の形状により反射位相や透過位相等の電波の特性を制御することができる。これにより、パッチ板の中心間隔、すなわち周期(ピッチ)を変えることなく、電波の所望の反射角や偏向角を得ることができるという効果が得られる。また、凹凸構造の形状により電波の電力特性を制御するようにしてもよい。
【0028】
[第2実施形態]
図7を参照して第2実施形態を説明する。
図7は第2実施形態の構成を説明するための説明図である。第2実施形態では、第1実施形態に対してさらに誘電体を設ける。ここでは、反射型メタ表面を例に挙げて説明する。
【0029】
図7に示されるように、誘電体100は、パッチ板5毎に、パッチ板5と導体面7との間に、短絡線6の周囲を囲むように配置される。全てのパッチ板5に誘電体100を設けてもよく、又は一部のパッチ板5のみに誘電体100を設けてもよい。
【0030】
誘電体100がパッチ板5と導体面7との間に配置されることにより、誘電体100の誘電率ε_rに応じて等価回路の容量Cの値を変えることができる。これにより、凹凸構造の形状に加えてさらに誘電体100の誘電率ε_rによって、制御可能な反射位相の範囲を変えることができる。誘電体100によって等価回路の容量Cを大きくすれば、反射位相の特性が低周波数側へシフトし、同じ周波数に着目すると反射位相がマイナス側へ動く。したがって、凹凸構造の形状のみでは実現することができない反射位相を、パッチ板の中心間隔、すなわち周期(ピッチ)を変えることなく、誘電体100によって実現することができるという効果が得られる。
【0031】
なお、誘電体100の誘電率ε_rは、固定であってもよく、又は可変であってもよい。
【0032】
誘電体100の誘電率ε_rを可変にする構成の一例として、誘電体100として液晶を利用し、液晶に印加するバイアス電圧を変えることによって誘電率ε_rを変える。液晶に印加するバイアス電圧を変えることによって、誘電体100の誘電率ε_rが変わり、したがって反射位相を変えることができる。この構成によれば、液晶に印加するバイアス電圧によって、反射位相を動的に変える制御を行うことができる。
【0033】
上述した第2実施形態では、反射型メタ表面を例に挙げて説明したが、透過型メタ表面についても同様に適用可能である。透過型メタ表面に適用すれば、誘電体100の誘電率ε_rによって、パッチ板の中心間隔、すなわち周期(ピッチ)を変えることなく、透過位相を変えることができる。
【0034】
なお、第2実施形態は、反射型メタ表面において、誘電体100によってパッチ板5と導体面7間の電気長を変えるものに対応する。また、第2実施形態は、透過型メタ表面において、誘電体100によってパッチ板5間の電気長を変えるものに対応する。
【0035】
[第3実施形態]
図8を参照して第3実施形態を説明する。
図8は第3実施形態の構成を説明するための説明図である。第3実施形態では、第1実施形態又は第2実施形態に対してさらに、パッチ板5と導体面7との間を電気的に接続又は切断するスイッチを設ける。ここでは、反射型メタ表面を例に挙げて説明する。
【0036】
図8に示されるように、スイッチSWは、パッチ板5と導体面7との間に設けられる。スイッチSWがオン(ON)すると、パッチ板5と導体面7とが短絡線6により電気的に接続されるので、第1実施形態や第2実施形態と同じ構成になって第1実施形態や第2実施形態と同様に反射位相を変えることができる。
【0037】
一方、スイッチSWがオフ(OFF)すると、パッチ板5と導体面7とが電気的に切断されてパッチ板5と導体面7との間の容量が大きくなるので、スイッチSWがオンの状態に比べて等価回路の容量Cが大きくなる。したがって、スイッチSWがオフすると、スイッチSWがオンの状態に比べて、反射位相は、位相特性が低周波数側へシフトし、同じ周波数に着目すると位相がマイナス側へ動く。言い換えると、スイッチSWがオンすると、スイッチSWがオフの状態に比べて、反射位相は、位相特性が高周波数側へシフトし、同じ周波数に着目すると位相がプラス側へ動く。
【0038】
第3実施形態によれば、スイッチSWのオンオフによって、反射位相を動的に変える制御を行うことができる。なお、スイッチSWとして、例えばバラクタダイオードを利用してもよい。
【0039】
上述した第3実施形態では、反射型メタ表面を例に挙げて説明したが、透過型メタ表面についても同様に適用可能である。透過型メタ表面に適用すれば、スイッチSWのオンオフによって、透過位相を動的に変える制御を行うことができる。
【0040】
なお、第3実施形態は、反射型メタ表面において、スイッチSWによってパッチ板5と導体面7間の電気長を変えるものに対応する。また、第3実施形態は、透過型メタ表面において、スイッチSWによってパッチ板5間の電気長を変えるものに対応する。
【0041】
[第4実施形態]
図9を参照して第4実施形態を説明する。
図9は第4実施形態の構成を説明するための説明図である。第1実施形態ではパッチ板の辺に凹凸構造が設けられたが、第4実施形態では、パッチ板間に設けられる凹凸構造をパッチ板とは別個に設ける。以下、第1実施形態と異なる点を主に説明する。ここでは、反射型メタ表面を例に挙げて説明する。
【0042】
図9には、六角形状のパッチ板5が示される。パッチ板5は、第1実施形態と同様に、短絡線6によって導体面7に電気的に接続される。
図9に示されるように、パッチ板間には、パッチ板5とは別個に、凹凸構造を形成する凸部210と凹部220とが配置される。凸部210及び凹部220は導電体である。
【0043】
さらには、凸部210及び凹部220は、それぞれにスイッチSWを介して各パッチ板5に電気的に接続されるように構成されている。凸部210に接続されるスイッチSWのオン、オフによって、当該スイッチSWに接続されるパッチ板5と凸部210とが電気的に接続、切断される。凹部220に接続されるスイッチSWのオン、オフによって、当該スイッチSWに接続されるパッチ板5と凹部220とが電気的に接続、切断される。
【0044】
パッチ板間に設けられた凸部210及び凹部220から成る凹凸構造は、各スイッチSWがオンされると、当該凹凸構造に電流が流れてパッチ板5の面上に
図2に示されるようなLC回路が形成されるので、有効に機能する。一方、各スイッチSWがオフされると、当該凹凸構造に電流が流れないので、当該凹凸構造が機能しなくなる。したがって、各パッチ板間のスイッチSWのオンオフによって、各パッチ板間に設けられた凹凸構造を有効に機能させるか否かを制御することができる。これにより、各パッチ板間のスイッチSWのオンオフによって、反射位相を動的に変える制御を行うことができる。
【0045】
なお、スイッチSWを設けず、凸部210及び凹部220がそれぞれ直接に各パッチ板5に電気的に接続されるように構成してもよい。
【0046】
また、凸部210及び凹部220を、可動部を有するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems、微小電気機械システム)を利用して構成してもよい。この構成によれば、MEMSによって凸部210及び凹部220の各位置を移動させることにより、パッチ板間に設けられた凸部210及び凹部220から成る凹凸構造における凹凸の間の距離を変えることができる。したがって、MEMSによって当該凹凸構造における凹凸の間の距離を変えることにより、反射位相を動的に変える制御を行うことができる。MEMSとして例えばペルチェ素子や電歪効果(ヒエゾ素子)等を利用してもよい。
【0047】
上述した第4実施形態では、反射型メタ表面を例に挙げて説明したが、透過型メタ表面についても同様に適用可能である。透過型メタ表面に適用すれば、スイッチSWのオンオフによって、透過位相を動的に変える制御を行うことができる。
【0048】
また、第4実施形態を第2実施形態や第3実施形態と組み合わせてもよい。
【0049】
[第5実施形態]
図10を参照して第5実施形態を説明する。
図10は第5実施形態の構成を説明するための説明図である。第5実施形態では、第1実施形態に対して、パッチ板間に設けられる凹凸構造の形状を可変にする機構を設ける。本実施形態に係る一例として、パッチ板間に設けられる凹凸構造に使用可能な導電体部品をパッチ板とは別個に設け、当該導電体部品を組み合わせることによって当該凹凸構造の形状を可変にする。以下、第1実施形態と異なる点を主に説明する。ここでは、反射型メタ表面を例に挙げて説明する。
【0050】
図10に示されるように、パッチ板間には、パッチ板5とは別個に、凹凸構造に使用可能な導電体部品310が配置される。各導電体部品310は、それぞれにスイッチSWを介して各パッチ板5に電気的に接続されるように構成されている。導電体部品310に接続されるスイッチSWのオン、オフによって、当該スイッチSWに接続されるパッチ板5と当該導電体部品310とが電気的に接続、切断される。この構成によれば、各導電体部品310のスイッチSWのオンオフによって、パッチ板間に設けられる凹凸構造の形状(凹凸構造の幅や深さや数等)を動的に変えることができる。したがって、各導電体部品310のスイッチSWのオンオフによって、反射位相を動的に変える制御を行うことができる。
【0051】
また、導電体部品310を、可動部を有するMEMSを利用して構成してもよい。この構成によれば、MEMSによって導電体部品310の位置を移動させることにより、パッチ板間に設けられた凹凸構造の深さを変えることができる。したがって、MEMSによって当該凹凸構造の深さを変えることにより、反射位相を動的に変える制御を行うことができる。
【0052】
また、第5実施形態を第2実施形態や第3実施形態と組み合わせてもよい。
【0053】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1 反射型メタ表面
2 透過型メタ表面
3 基地局アンテナ
4 建物
5 パッチ板
6 短絡線
7 導体面
100 誘電体
210 凸部
220 凹部
310 導電体部品
SW スイッチ