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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
A61B8/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020204043
(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公開番号】P2022091291
(43)【公開日】2022-06-21
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠原 英司
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-231518(JP,A)
【文献】特開2007-021088(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0238901(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0340997(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0052005(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0056711(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第110313933(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波画像を表示する表示器と、
前記表示器又はその付近から検査者を含む前方空間を撮影し、カメラ画像を生成するカメラと、
前記表示器を支持する機構であって、前記表示器の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更する駆動源を備えた支持機構と、
前記カメラ画像に含まれる検査者像に基づいて前記駆動源を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、
前記カメラ画像に含まれる照明像に基づいて前記表示器の画面への照明写り込みを判定し、
前記照明写り込みが判定された場合に前記表示器の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更することにより前記照明写り込みを軽減し又は解消する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記カメラは前記表示器に固定されており、
前記カメラの撮影視野と前記表示器の観察視野が重なり合っている、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2記載の超音波診断装置において、
前記制御部は、
前記カメラ画像における前記検査者像の代表位置を演算し、
前記代表位置に基づいて前記表示器の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項3記載の超音波診断装置において、
前記代表位置は、前記検査者像における頭部像から演算され、
前記制御部は、前記代表位置が前記カメラ画像中の目標位置に一致し又は近付くように、前記表示器の位置及び姿勢の少なくとも一方を制御する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記制御部は、
前記カメラ画像に基づいて前記検査者が前記表示器の方を向いているか否かを判定し、
前記検査者が前記表示器の方を向いている場合に前記駆動源の制御を行う、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記制御部は、指定された応答条件に従って、前記表示器の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更するに際しての運動速度を定める、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記制御部は、前記照明写り込みが判定された場合に前記表示器の高さ及び向きを変更することにより前記照明写り込みを軽減し又は解消する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
請求項記載の超音波診断装置において、
前記制御部は、
前記照明像の輪郭又は代表座標が前記カメラ画像内の判定領域に入っている場合に前記照明写り込みを判定し、
前記照明像の輪郭又は代表座標が前記判定領域から外れるように前記表示器の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は超音波診断装置に関し、特に、表示器の向きの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、被検者に対して超音波を送受波し、これにより得られた受信信号に基づいて超音波画像を形成する医用装置である。超音波診断装置として、各種の超音波診断装置が実用化されている。その中で、カート式の超音波診断装置について説明する。超音波診断装置本体により昇降機構を介して操作パネルが支持される。操作パネルの奥側に設けられた台座上に支持機構が設置されており、支持機構により表示器が保持されている。支持機構は多関節機構である。必要に応じて、検査者により、表示器の位置及び姿勢が好みのものに変更される。
【0003】
特許文献1には、予め設定された位置に表示器を自動的に位置決める機能を備えた超音波診断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-21088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
検査者の頭部の位置は、超音波検査の過程つまりプローブ操作の過程で随時変化する。表示器に表示された超音波画像を見易くするために、表示器の向きを調整したいこともあるが、プローブ操作中に検査者により表示器の向きを変えることは通常、困難である。その理由として、表示器に手が届かない、プローブ及び操作パネルの操作の必要から手が余っていない、検査時間をできるだけ短くしたい、等が挙げられる。
【0006】
本開示の目的は、検査者による超音波画像の観察を支援することにある。あるいは、本開示の目的は、検査者の頭部の位置にかかわらず超音波画像を見易くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る超音波診断装置は、超音波画像を表示する表示器と、前記表示器又はその付近から検査者を含む前方空間を撮影し、カメラ画像を生成するカメラと、前記表示器を支持する機構であって、前記表示器の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更する駆動源を備えた支持機構と、前記カメラ画像に含まれる検査者像に基づいて前記駆動源を制御する制御部と、を含み、前記制御部は、前記カメラ画像に含まれる照明像に基づいて前記表示器の画面への照明写り込みを判定し、前記照明写り込みが判定された場合に前記表示器の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更することにより前記照明写り込みを軽減し又は解消する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、検査者による超音波画像の観察を支援できる。あるいは、本開示によれば、検査者の顔の位置にかかわらず超音波画像を見易くできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る超音波診断装置を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る超音波診断装置を示す側面図である。
図3】実施形態に係る制御アルゴリズムを示す図である。
図4】追従制御の一例を示す図である。
図5】追従制御方法を示す図である。
図6】照明像の写り込みを示す図である。
図7】照明像の写り込みの回避を示す図である。
図8】写り込み回避方法を示す図である。
図9】追従制御及び回避制御を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
(1)実施形態の概要
実施形態に係る超音波診断装置は、表示器、カメラ、支持機構、及び、制御部を有する。表示器には超音波画像が表示される。カメラは、表示器又はその付近から検査者を含む前方空間を撮影し、カメラ画像を生成する。支持機構は、表示器を支持する機構であり、表示器の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更する駆動源を備える。制御部は、カメラ画像に含まれる検査者像に基づいて駆動源を制御する。
【0012】
上記構成によれば、前方空間内における検査者の位置等に応じて、表示器の位置及び姿勢の少なくとも一方が変更される。例えば、被検者の頭部(又は顔)の方へ向くように表示器の向きが適応的に変更される。これにより、超音波画像の観察上の便宜を図れる。
【0013】
検査者の両手がふさがっており表示器の向きをマニュアルで変更できない場合、プローブを保持していない手が表示器まで届かない場合、検査時間の短縮のために表示器の向きの調整を行う時間的な余裕がない場合等において、上記構成が効果的に機能する。
【0014】
実施形態において、カメラは表示器に固定されている。カメラの撮影視野と表示器の観察視野が重なり合っている。この構成によれば、表示器とカメラが一体化されるので、表示器と検査者の間の空間的な関係がカメラ画像内における検査者像の位置に反映される。カメラが表示器に埋設されてもよいし、カメラが表示器に外付けで固定されてもよい。いずれにしても、カメラと表示器の空間的関係が固定され、表示器前方の空間が撮影される。撮影視野は画像化を行える範囲に相当し、観察視野は観察を行える範囲に相当する。実際には、読影に適する観察範囲はそれほど大きくはない。
【0015】
実施形態において、制御部は、カメラ画像における検査者像の代表位置を演算し、代表位置に基づいて表示器の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更する。代表位置として、頭部像内の特定の位置、顔像内の特定の位置、2つの目の位置、2つの目の中間位置、等が挙げられる。
【0016】
実施形態において、代表位置は、検査者像における頭部像から演算される。制御部は、代表位置がカメラ画像中の目標位置に一致し又は近付くように、表示器の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更する。この構成によれば、表示器の画面を検査者の頭部又は顔の方へ向け続けることが可能となる。目標位置は、点であってもよいし、線であってもよいし、領域であってもよい。
【0017】
実施形態において、制御部は、カメラ画像に基づいて検査者が表示器の方を向いているか否かを判定し、検査者が表示器の方を向いている場合に駆動源の制御を行う。この構成によれば、表示器の位置又は姿勢の無用な変更が回避される。フリーズ中や、生体表面からプローブが離れている状況において、駆動源の制御を自動的に停止してもよい。
【0018】
実施形態において、制御部は、指定された応答条件に従って、表示器の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更するに際しての運動速度を定める。表示器の位置や姿勢の変化が速すぎても遅すぎても検査者に対してストレスを与えてしまう。上記構成によれば、そのようなストレスを解消又は緩和できる。
【0019】
実施形態において、制御部は、カメラ画像に含まれる照明像に基づいて表示器の表示画面への照明写り込みを判定し、照明写り込みが判定された場合に表示器の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更することにより照明写り込みを軽減し又は解消する。この構成によれば、照明写り込みによる問題(画像観察困難性)を解消又は軽減できる。
【0020】
実施形態において、制御部は、照明像の輪郭又は代表座標がカメラ画像内の判定領域に入っている場合に照明写り込みを判定し、制御部は、照明像の輪郭又は代表座標が判定領域から外れるように表示器の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更する。その場合、例えば、表示器の高さとチルト角とが同時に変更されてもよい。
【0021】
実施形態に係る超音波診断装置は、検査者の方へ表示器を向け続ける追従制御、及び、照明写り込みを自動的に回避又は軽減する回避制御を備える。それらは基本的に互いに独立しているが、それらが組み合わされて実行されてもよい。いずれもカメラ画像を基礎として検査者を支援する技術である。
【0022】
(2)実施形態の詳細
図1には、実施形態に係る超音波診断装置の構成例がブロック図として示されている。超音波診断装置は、病院等の医療機関に設置される医用装置である。超音波診断装置において、被検者に対して超音波が送受波され、それにより得られた情報に基づいて被検者内の組織を表す超音波画像が形成される。実施形態に係る超音波診断装置は、カート式の超音波診断装置である。
【0023】
超音波診断装置は、本体(超音波診断装置本体)10を有する。本体10には、プローブ12が着脱可能に接続される。本体10により、昇降機構を介して、操作パネル14が支持されている。操作パネル14の奥側に台座が設けられており、その台座上に支持機構18が搭載されている。支持機構18は、後述するように多関節機構である。支持機構18は表示器16を保持している。表示器16は、フラットパネルディスプレイであり、具体的には、LCD、有機EL表示デバイス等により構成される。
【0024】
支持機構18は、駆動源20として、複数のモータ(又は複数のアクチュエータ)を備えている。支持機構18における各可動部分が各モータにより駆動される。複数のモータに対してドライバ群22から複数の駆動信号が並列的に供給されている。ドライバ群22は、支持機構18の外部に設けられ又はその内部に設けられる。ドライバ群22が本体10内に設けられてもよい。
【0025】
操作パネル14は、複数のスイッチ、複数のボタン、トラックボール、キーボード等を有する入力デバイスである。超音波検査時においては、通常、検査者の一方の手でプローブ12が保持され、検査者のもう一方の手で操作パネル14が操作される。
【0026】
表示器16の上部には、カメラ24が固定配置されており、本実施形態では、埋設されている。後に説明するように、カメラ24によって表示器16の前方に存在する空間(検査者を含む空間)が動画像として撮影される。表示器16の観察視野とカメラ24の撮影視野はオーバーラップしている。観察視野は表示器16の観察を行える空間的範囲であり、撮影視野は撮影を行える空間的範囲である。観察視野は実際には読影を行える範囲となり、それは一般にそれほど広くない範囲である。カメラ24は白黒カメラ又はカラーカメラである。複数台のカメラが設置されてもよい。表示器16の外側にカメラ24が固定的に配置されてもよい。
【0027】
プローブ12は、プローブヘッド、ケーブル及びコネクタにより構成される。プローブヘッド内に、直線状又は円弧状に配列された複数の振動素子からなる振動素子アレイが設けられている。振動素子アレイから被検体内へ超音波が送波され、生体内からの反射波が振動素子アレイで受波される。より詳しくは、振動素子アレイにより、超音波ビーム(送信ビーム及び受信ビーム)が形成され、その電子的な走査により、走査面(ビーム走査面)が形成される。電子走査方式として、電子セクタ走査方式、電子リニア走査方式等が知られている。プローブヘッドが主要な部分であり、検査者により保持される部分である。一次元振動素子アレイに代えて二次元振動素子アレイが設けられてもよい。
【0028】
送受信部26は、送信ビームフォーマー及び受信ビームフォーマーとして機能する電子回路である。送信時において、送受信部26から振動素子アレイに対して複数の送信信号が並列的に供給される。これにより送信ビームが形成される。受信時において、生体内からの反射波が振動素子アレイにおいて受波されると、振動素子アレイから送受信部26に対して複数の受信信号が出力される。送受信部26において、複数の受信信号に対する整相加算(遅延加算)により受信ビームデータが生成される。通常、超音波ビームの1回の走査により、1つの受信フレームデータが構成される。1つの受信フレームデータは電子走査方向に並ぶ複数の受信ビームデータにより構成される。1つの受信ビームデータは深さ方向に並ぶ複数のエコーデータにより構成される。超音波ビームの電子走査が繰り返され、これにより複数の受信フレームデータが繰り返し生成される。それらは受信フレームデータ列を構成する。
【0029】
画像形成部32は、受信フレームデータ列に基づいて断層画像データ列を生成する。具体的には、画像形成部32は、デジタルスキャンコンバータ(DSC)を有する。DSCは、座標変換機能、画素補間機能、フレームレート変換機能等を有する専用プロセッサである。図示の構成例では、断層画像データ列が画像形成部32から制御部30へ送られている。
【0030】
制御部30は、プログラムを実行するプロセッサにより構成される。具体的にはそれはCPUで構成される。制御部30は、超音波診断装置を構成する各構成要素の動作を制御する機能の他、画像処理機能、表示処理機能、等を備える。実施形態に係る制御部30は、超音波検査過程において追従制御及び回避制御を同時に又は選択的に実行する。追従制御は、表示器16の画面を検査者の顔に向け続ける制御である。回避制御は、検査者から見て、表示器16の画面内に照明が写り込まないようにする制御である。実際には、駆動源20の動作の制御を通じて、表示器の位置及び姿勢が最適化される。
【0031】
カメラ24から制御部30へカメラ画像データが送られている。制御部30から表示器16へ超音波画像データが送られている。表示器16には超音波画像が表示される。必要に応じて、カメラ24で取得されたカメラ画像が表示器16に表示されてもよい。
【0032】
図2には、超音波診断装置の外観が示されている。本体10は箱状の形態を有し、その下部には4つのキャスタが設けられている。本体10と操作パネル14との間に昇降機構33が設けられている。昇降機構33を介して本体10により操作パネル14が支持されている。操作パネル14の奥側には台座34が設けられ、その台座34に支持機構18が設けられている。
【0033】
支持機構18は、多関節機構としてのアーム機構であり、それは駆動源としての複数のモータを備えている。支持機構18により表示器16が保持されている。支持機構18の形態等の変更により、表示器16の位置及び姿勢が変更される。
【0034】
支持機構18は、図示の構成例において、第1アーム36、第2アーム38、第3アーム40、第4アーム42、チルト機構44等を有する。第1アーム36は、台座34に対して旋回運動する。第2アーム38は、平行リンクを有し、第1アーム36に対して、傾斜運動する。第2アーム38の上端部と第3アーム40の基端部とが連結されている。第3アーム40は、第2アーム38に対して旋回運動する。第3アーム40も平行リンクを備えており、第2アーム38に対して、傾斜運動する。第4アーム42は、第3アームに対して旋回運動する。チルト機構44は、表示器16を水平回転軸回りにおいて回転運動させる。図示された支持機構18は一例に過ぎない。支持機構18として、自動的に運動する多様な機構を採用し得る。
【0035】
表示器16の前側が画面である。表示器16の上部中央にカメラ24が埋設されている。表示器16の観察視野46とカメラ24の撮影視野48はオーバーラップしている。カメラ画像を通じて、表示器16と検査者との間の空間的関係を特定し得る。また、カメラ画像の解析により、検査者の位置、特に検査者の頭部の位置を特定し得る。なお、観察視野46と撮影視野48は、それらを上方から見てもオーバーラップしており、特にそれらの中心軸は一致している。
【0036】
図3には、制御アルゴリズムが示されている。S10では、追従制御及び/又は回避制御を実行するか否かが判定される。ユーザーにより、実行する制御モードが選択されてもよい。超音波の送受信が行われている限りにおいて、追従制御が実行されるようにしてもよい。
【0037】
例えば、S10Aで示すように、カメラ画像における検査者像に基づいて検査者の顔の向きを判定し、具体的には、検査者が表示器の方を向いているか否かを判定し、検査者が表示器の方を向いている場合に限り、S12及びS14以降の複数の工程の実行を許容してもよい。逆に言えば、検査者が表示器の方を向いていない場合には、S12及びS14以降の複数の工程の実行を禁止してもよい。フリーズ中やプローブ空中放置状態で支持機構の制御を一時的に停止させてもよい。
【0038】
追従制御の実行が指示された場合、S12及びS18が実行される。S12での画像解析では、カメラ画像IMに基づいて、検査者像における頭部像(又は顔像)が特定され、頭部像に基づいて代表座標が特定される。S18では、指定された追従条件に従って、検査者の代表座標に基づいて、表示器の画面の向きが制御される。例えば、代表座標がカメラ画像内の目標エリアから外れていることが判定され、代表座標が目標エリア内に属するように、表示器の画面の向き(同時にカメラの向き)が適応的に制御される。これにより、画面を検査者の方へ向け続けることが可能となる。超音波検査に際して、検査者の顔の位置が変化するが、その変化に応じて画面の向きが自動的に最適化されることになる。
【0039】
追従条件には、応答条件としての時定数τ1が含まれる。時定数τ1を小さくすると、追従が高速となり、時定数τ1を大きくすると、追従が低速となる。追従条件として、目標エリアのサイズや位置が定められてもよい。
【0040】
回避制御の実行が指示された場合、S14及びS20が実行される。S14での画像処理では、カメラ画像に基づいて、照明映り込みが判定され、照明映り込みが判定された場合に、照明像の輪郭が抽出される。S20では、回避条件に従って、カメラ画像における判定エリアから照明像の輪郭像が外れるように、画面の位置及び姿勢が変更される。例えば、表示器の高さが引き上げられると同時に、表示器の向きが下げられる。これにより、検査者から見て画面内から照明像が取り除かれる。照明像の輪郭に代えて、照明像の代表座標が利用されてもよい。
【0041】
回避条件には、応答条件としての時定数τ2が含まれる。時定数τ2を小さくすると、回避速度が高速となり、時定数τ2を大きくすると、回避速度が低速となる。回避条件として、判定エリアのサイズや位置が定められてもよい。
【0042】
S16において、追従制御(S18)と回避制御(S20)の両者が実行されてもよい。その場合には、一方の制御を優先させ、他方の制御を行える限りにおいてそれを実行させてもよい。
【0043】
以下、追従制御及び回避制御のそれぞれについて具体例を説明する。
【0044】
図4には、追従制御の一例が示されている。超音波診断装置50に隣接してベッド52が設けられている。ベッド52上に被検者が横たわっている。符号16Aは、表示器の当初の姿勢を示している。その場合において、検査者の頭部58Aは、表示器16Aの前方(正面)に位置している。符号60Aは視線方向を示している。例えば、被検者54へのプローブ56の当接や当接位置の変更によって、頭部位置が随時変化する。符号58Bは変化後の頭部を示している。その際の視線方向が符号60Bで示されている。頭部位置の変化に伴って、表示器姿勢が変化する。変化後の表示器が符号16Bで示されている。検査者は、超音波画像を見続けている過程において、表示器16Bの画面を検査者の方へ自動的に向け続けることが可能である。これにより超音波画像を読影し易くなる。
【0045】
図5には、追従制御のための画像解析方法の一例が示されている。カメラ画像62には検査者像64が含まれる。検査者像64には頭部像(又は顔像)64Aが含まれる。それを抽出するために、関心領域66が自動的に設定される。例えば、画像認識技術を用いて頭部像又はそれが存在するエリアを特定し得る。
【0046】
頭部像64Aに基づいて、それに含まれる代表座標70が特定される。その場合、2つの目の位置68R,68Lが特定され、それらの中間点として代表座標70が定められてもよい。他の位置が代表座標とされてもよい。例えば、頭部像64Aの重心点、中点等が代表座標とされてもよい。
【0047】
カメラ画像62内の中央部に目標エリア(目標位置)が設定されている(図示せず)。目標エリアから代表座標が外れている場合、目標エリア内に代表座標が属するように、表示器の向き(姿勢)が変更される(符号74を参照)。向きの変更に際しては、代表座標から目標エリア中心点へ向かうベクトルが演算されてもよい。そのベクトルを定義する2つの成分に基づいて、旋回角θ及びチルト角φを変更する方向や速度が決定されてもよい。その際、表示器の向きに加えてその位置が変更されてもよい。
【0048】
図5に示す例では、向きの変更後においてカメラ画像72が取得されている。その中央部には、目標エリア71が定義されており、目標エリア71内に代表座標70が属している。実際には、フレームごとに、画像解析を含む追従制御が実行されており、頭部の移動に伴って表示器の向きが連続的に変化する。もっとも、その際の運動速度は時定数τ1による。
【0049】
頭部像(又は顔像)64Aにおける代表座標の位置から、顔の向きを判定し得る。検査者が表示器の方を向いている場合に限り、追従制御を実行してもよい。他の方法で顔の向きが判定されてもよい。例えば視線ベクトルの検出により顔の向きが特定されてもよい。
【0050】
図6には、照明写り込み状態が示されている。表示器16は、支持機構18Aにより保持されている。表示器16の画面17は上向きである。検査者の頭部が符号76で示されており、その視線が符号78Aで示されている。照明80が検査室の天井に設置されている。照明80からの光線80Aが画面17で反射し、それにより生じた光線80Bが検査者の視野に入ってしまう。すなわち、画面17内に照明像が写り込んでしまい、それが超音波画像の観察の妨げとなる。検査室は通常、暗室となっているが、照明を完全に消すことはないので、状況次第では、照明像の映り込みが生じ得る。
【0051】
実施形態に係る超音波診断装置においては、図7に示されるように、照明映り込みが判定された場合、回避制御が実行される。具体的には、支持機構18の駆動源が制御され、表示器16の高さが引き上げられ(符号80を参照)、同時に、表示器16のチルト角度が変更され、画面17の向きが下げられる(符号82を参照)。これにより、照明80からの光線84が画面17で反射して、光線86が生じても、その光線86が検査者の視野内に入ることが回避される(符号78Aを参照)。仮にその光線86が検査者の視野内に入っても照明映り込みの問題を軽減できる。回避制御後においても、できるだけ画面が検査者の頭部に正対するように、表示器の位置及び姿勢が定められる。
【0052】
図8には、回避制御のための画像解析方法の一例が示されている。(A)は回避前の状態を示しており、(B)は回避後の状態を示している。(A)において、カメラ画像88内には検査者像90が含まれる。例えば、頭部像における代表座標94の位置から検査者が表示器の方を向いていることを判定し得る。カメラ画像88内には照明像92が写り込んでいる。観察視野と撮影視野との重複関係から、カメラ画像88内の照明像92の位置に基づいて、画面上での映り込みの有無を凡そ判定することが可能である(実際には検査者と表示器との間の空間的関係による)。
【0053】
例えば、カメラ画像88において写り込みを判定する判定エリア96が定められる。その際には頭部像又は代表座標94が基準とされてもよい。判定エリア96内に照明像又はその輪郭が属する場合、写り込みが判定される。照明像92の代表座標(例えば中心位置)が判定エリア96内に入っているか否かにより写り込みの有無が判定されてもよい。
【0054】
写り込みが判定された場合、実施形態においては、表示器の高さが引き上げられ(撮影視野がz方向へ引き上げられ)、且つ、チルト角φがマイナス方向へ変更される(撮影視野が下向きに変えられる)。複数の回避パターンを登録しておき、状況に応じて、最適な回避パターンが自動的に選択されてもよい。
【0055】
(B)には、変更後のカメラ画像100が示されている。照明像92Aは判定エリア106から上方に外れている(代表座標98Aも同様に外れている)。判定エリア106は、図示の例では、カメラ画像100内の検査者像102における代表座標104を基準として設定されたものである。例えば、代表座標104を中心として判定エリアが定義されてもよい。
【0056】
図9には、追従制御と回避制御とを同時に実行した結果が示されている。表示器の位置及び姿勢の制御により、カメラ画像110に対して設定された判定エリアから照明像92Aが外れている。しかし、検査者像112の代表座標114は、カメラ画像110の中央部から大きく偏移している。追従制御により、表示器が旋回され、これによりカメラ画像118が取得されている。そのカメラ画像118に対して目標エリア116が定義され、目標エリア116内に代表座標114が属している。カメラ画像118においては、新しい判定エリア120が設定されているが、そこに照明像92Aは入り込んでいない。つまり、表示器の画面を検査者の方に向けつつ、照明写り込みが回避されている。2つの制御を同時に行えない場合、事前に定めた制御が優先されてもよい。あるいは、2つの制御が折衷的に実施されてもよい。
【0057】
上記実施形態によれば、表示器にカメラを固定的に設置し、その画像解析により追従制御及び回避制御を実現できるので、それらの制御の実現に際して複雑な構成を設ける必要がないという利点を得られる。支持機構における各可動部分にリミッタを設け、一定以上の負荷が生じた場合には、運動を停止させてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 本体、12 プローブ、14 操作パネル、16 表示器、18 支持機構、20 駆動源、24 カメラ、30制御部、46 観察視野、48 撮影視野。
図1
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図9