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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】資機材管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20240726BHJP
【FI】
G06Q50/08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020205141
(22)【出願日】2020-12-10
(65)【公開番号】P2022092364
(43)【公開日】2022-06-22
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 良平
(72)【発明者】
【氏名】清水 友理
【審査官】木内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-092464(JP,A)
【文献】国際公開第2020/203043(WO,A1)
【文献】特開2019-148586(JP,A)
【文献】特開2015-055534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設現場内での現場資機材の位置を検出し管理する資機材管理システムであって、
前記建設現場内の既知の位置に配置され、識別情報が記録された識別票と、
自律動作するセンサを備え、現場作業員が保持又は装着可能に構成されて、前記現場作業員の測位開始位置に対する相対的な位置を示す移動情報を取得する歩行者自律航法手段と、
前記現場作業員が保持又は装着可能に構成され、建設現場内を撮影する撮影記録装置と、
前記撮影記録装置による撮影画像から前記現場資機材及び前記識別票を検出する検出手段と、
前記歩行者自律航法手段で得られる前記現場作業員の前記移動情報と、前記検出手段による前記現場資機材及び前記識別票の検出結果と、を時間によって関連付けてデータベースに格納する情報統合部と、
前記データベースを参照して、前記相対的な位置を示す移動情報と前記撮影画像における識別票の検出結果とに基づいて当該撮影画像の撮影位置の前記建設現場における絶対座標を特定することにより、前記撮影画像に含まれる前記現場資機材の位置を算出する位置算出部と、
前記位置算出部で算出された前記現場資機材の位置を表示する情報表示部と、
を備えることを特徴とする資機材管理システム。
【請求項2】
前記検出手段は、前記現場資機材の画像情報に対応する前記現場資機材の識別データを、学習データとして深層学習させた学習済みモデルを有しており、当該学習済みモデルに、前記現場資機材が撮影された画像を入力して、入力された前記画像に撮影された前記現場資機材の前記識別データを出力させることにより、前記現場資機材を識別することを特徴とする請求項1に記載の資機材管理システム。
【請求項3】
前記データベースには、前記識別票の前記識別情報と、当該識別票が設けられた水平及び高さ位置との対応関係が記憶され、
前記位置算出部は、前記データベースを参照して、検出された前記識別票の前記水平及び高さ位置を取得し、当該水平及び高さ位置と、前記移動情報とを基に前記現場資機材の位置を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の資機材管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設現場内において現場資機材の位置を把握するための資機材管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場においては、作業を行うに際し、様々な機材や資材(以下、これらを現場資機材と称する。)を用いる。例えば、ビルディングをはじめとする大規模な構造物を建設する際には、複数の施工会社、作業員が、現場資機材を共用することがある。すると、現場資機材を使用しようとしたときに、その現場資機材の所在がわからない場合がある。現場資機材の所在を突き止めるには手間と時間がかかり、施工効率の低下に繋がる。このため、建設現場内における現場資機材の位置を、正確に把握することが望まれる。
【0003】
これに対し、例えば特許文献1には、工事現場における現場資機材の位置を取得する位置取得部と、位置取得部によって取得された現場資機材の位置を表示する表示制御部と、を備える位置管理システムの構成が開示されている。この構成において、位置取得部は、現場資機材に取り付けられて電波を送信する送信器と、建物に取り付けられて送信器から送信される電波を受信する受信器と、を含んでいる。
特許文献1に開示されたような構成では、現場資機材のそれぞれに送信機を取り付ける必要がある。このため、多数の現場資機材のそれぞれに送信機を取り付けるための手間とコストが掛かる。
【0004】
また、特許文献2には、現場資機材に取り付けられる無線タグから発信される電波を受信する受信アンテナを室内に複数個設置し、受信アンテナが受信した無線タグからの電波を解析することで、無線タグの位置を検出する現場管理システムの構成が開示されている。
特許文献2に開示されたような構成においても、現場資機材のそれぞれに無線タグを取り付ける必要があり、手間とコストが掛かる。
【0005】
また、特許文献3には、現場資機材(建造物内の管理対象)に配された気圧センサと、気圧センサで計測された建造物内の気圧及び温度の計測データを送信する発信機と、発信機からの計測データに基づいて現場資機材の所在階及び数量を求める演算部と、を備える建造物内管理対象管理システムの構成が開示されている。
特許文献2に開示されたような構成では、現場資機材のそれぞれに気圧センサ、及び発信器を取り付ける必要があり、手間とコストが掛かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-16466号公報
【文献】特開2019-138785号公報
【文献】特開2019-152928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、建設現場内の資機材の位置の管理を、低コストで、かつ正確に行うことができる、資機材管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の資機材管理システムは、建設現場内での現場資機材の位置を検出し管理する資機材管理システムであって、前記建設現場内の異なる位置に配置され、識別情報が記録された識別票と、自律動作するセンサを備え、現場作業員が保持又は装着可能に構成されて、前記現場作業員の移動情報を取得する歩行者自律航法手段と、前記現場作業員が保持又は装着可能に構成され、建設現場内を撮影する撮影記録装置と、前記撮影記録装置による撮影画像から前記現場資機材及び前記識別票を検出する検出手段と、前記歩行者自律航法手段で得られる前記現場作業員の前記移動情報と、前記検出手段による前記現場資機材及び前記識別票の検出結果と、を時間によって関連付けてデータベースに格納する情報統合部と、前記データベースを参照して、前記現場資機材の位置を算出する位置算出部と、前記位置算出部で算出された前記現場資機材の位置を表示する情報表示部と、を備えることを特徴とする。
このような構成によれば、現場作業員が歩行者自律航法手段、及び撮影記録装置を保持又は装着した状態で、建設現場内を移動しつつ、撮影記録装置で建設現場内を撮影すると、歩行者自律航法手段では、現場作業員の建設現場内で移動したときの位置や経路を示す移動情報が得られる。また、撮影記録装置では、建設現場内を撮影することで、建設現場内に位置する現場資機材の撮影画像が得られる。検出手段は、撮影記録装置の撮影画像から、建設現場内に位置する現場資機材と、建設現場に設けられた識別票とを検出する。情報統合部により、現場作業員の移動情報と、現場資機材及び識別票の検出結果とを、時間によって関連付けることで、位置算出部では、建設現場内における現場資機材の位置を算出する。具体的には、撮影画像中における識別票から、建設現場内の場所を特定することができる。識別票から特定される場所と、現場作業員の移動情報とを基にして、これらを関連付けることで、高層建物や大規模な構造物であっても、撮影画像を撮影した位置を、高精度に特定することができる。これにより、撮影画像に写っている現場資機材の位置を、高精度に特定することが可能となる。このような構成では、現場資機材に、送信機、無線タグ、気圧センサ等を備える必要が無い。したがって、建設現場内の資機材の位置の管理を、低コストで、かつ正確に行うことが可能となる。
【0009】
本発明の一態様においては、本発明の資機材管理システムは、前記検出手段が、前記現場資機材の画像情報に対応する前記現場資機材の識別データを、学習データとして深層学習させた学習済みモデルを有しており、当該学習済みモデルに、前記現場資機材が撮影された画像を入力して、入力された前記画像に撮影された前記現場資機材の前記識別データを出力させることにより、前記現場資機材を識別する。
このような構成によれば、撮影画像に映っている現場資機材の画像情報に基づき、現場資機材を識別することができる。したがって、現場作業員が移動しながら建設現場内を撮影するのみで、建設現場内に位置する現場資機材を識別することができる。したがって、現場資機材を使用する際には、その位置を容易に把握することが可能となる。
【0010】
本発明の一態様においては、本発明の資機材管理システムは、前記データベースには、前記識別票の前記識別情報と、当該識別票が設けられた水平及び高さ位置との対応関係が記憶され、前記位置算出部は、前記データベースを参照して、検出された前記識別票の前記水平及び高さ位置を取得し、当該水平及び高さ位置と、前記移動情報とを基に前記現場資機材の位置を算出する。
このような構成によれば、撮影画像中における識別票の識別情報から、識別票を撮影した建設現場内の水平及び高さ位置を特定することができる。これにより、例えば高層建物や大規模な構造物であっても、撮影画像を撮影した位置を、高精度に特定することができる。これにより、撮影画像に写っている現場資機材の位置を、高精度に特定することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、建設現場内の資機材の位置の管理を、低コストで、かつ正確に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る資機材管理システムの構成を示すブロック図である。
図2図1の資機材管理システムで、現場資機材の位置を検出する建設現場の一例を示す図である。
図3】本実施形態の資材管理システムを用いて実行される、現場資機材の管理方法の流れを示すフローチャートである。
図4】識別票が撮影された撮影画像の一例を示す図である。
図5】撮影画像から識別票が検出された履歴の一例を示す図である。
図6】検出手段における現場資機材の検知記録の一例を示す図である。
図7】識別票を含む撮影画像の一例を示す図である。
図8】現場資機材の位置推定に関する情報を統合した管理データの一例を示す図である。
図9】撮影画像中で、傾いて写っている識別票の一例を示す図である。
図10】情報端末に表示される、現場資機材の位置に関する情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、現場作業員または現場資機材の管理者を主な利用者とする、建設現場内において現場資機材の位置を検出し管理するための資機材管理システムである。資機材管理システムは、現場作業員の移動情報を取得する歩行者自律航法手段と、現場作業員が保持、または装着して建設現場内の様々な現場資機材を撮影する際に用いる撮影記録装置と、前記歩行者自律航法手段、及び撮影記録装置で得られた現場作業員の移動情報と、撮影データに基づき、現場資機材の位置を検出し、管理する管理システム本体と、建設現場内の現場資機材を探索し、位置情報を表示するための情報端末とで構成される。
以下、添付図面を参照して、本発明による資機材管理システムを実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
本発明の実施形態に係る資機材管理システムの構成を示すブロック図を図1に示す。図2は、図1の資機材管理システムで、現場資機材の位置を検出する建設現場の一例を示す図である。
図1に示されるように、資機材管理システム1は、歩行者自律航法手段2と、撮影記録装置3と、管理システム本体4と、情報端末5と、を主に備えている。資機材管理システム1は、建設現場G内での現場資機材100の位置を検出し管理する。
歩行者自律航法手段2、及び撮影記録装置3は、図2に示すように、現場作業員Qが、建設現場G内を移動しながら、建設現場G内に位置する様々な現場資機材100を撮影する際に用いる。歩行者自律航法手段2、及び撮影記録装置3は、現場作業員Qが、保持、又は装着可能に構成されている。すなわち、歩行者自律航法手段2、撮影記録装置3は、現場作業員Qが手で保持してもよいし、ポケットに収納することで保持してもよい。さらに、歩行者自律航法手段2、撮影記録装置3は、現場作業員Qの身体の一部(例えば頭部等)や、装具(ヘルメットや衣服)に装着してもよい。また、歩行者自律航法手段2、撮影記録装置3が取り付けられたヘルメットやバッグ等を現場作業員Qが装着するようにしてもよい。また、歩行者自律航法手段2と、撮影記録装置3とは、別々のデバイスであってもよいが、歩行者自律航法手段2と、撮影記録装置3とを一体化したデバイスを用いるようにしてもよい。
【0014】
歩行者自律航法手段2は、歩行者自律航法すなわちPDR(Pedestrian Dead-Reckoning)により、現場作業員Qの移動情報を取得するデバイスである。上記したような歩行者自律航法手段2としては、以下に示す各機能を備えた専用のデバイスを用いてもよいし、以下に示すような各機能を実現可能なアプリケーションプログラムを備えたスマートフォン、タブレット端末等を用いてもよい。図1に示すように、歩行者自律航法手段2は、センサ21と、移動情報演算部22と、データ記憶部23と、データ出力部24と、を機能的に備えている。
センサ21としては、例えば、加速度センサ、ジャイロセンサ、地磁気センサ等が用いられている。センサ21は、測位開始後、歩行者自律航法手段2を保持又は装着した現場作業員Qの移動にともなって生じる加速度、角速度、地磁気等の変化を検出する。なお、センサ21としては、建設現場G内における現場作業員Qの移動情報を取得できるのであれば、加速度センサ、ジャイロセンサ、地磁気センサに限らず、適宜他のパラメータを検出するものを用いてもよい。
【0015】
移動情報演算部22は、センサ21からの検出データに基づき、測位開始位置から現場作業員Qが移動したときの、測位開始位置からの移動量、すなわち測位開始位置に対する相対的な位置を演算することで、現場作業員Qの移動情報を生成する。より詳細には、移動情報演算部22は、PDRにより、一定の時間間隔をおいて、前回の時間における位置からの移動量、すなわち相対的な位置を計測し、これを積算することにより、位置を演算する。現場作業員Qの移動情報は、上記のようにして計測した相対的な位置による移動経路を示す情報と、当該移動経路上の各位置の各々に、現場作業員Qが移動した時刻に関する情報である時刻情報とが、関連付けられている。
データ記憶部23は、移動情報演算部22で生成される、現場作業員Qの移動情報を記憶する。
データ出力部24は、データ記憶部23に記憶された現場作業員Qの移動情報を、管理システム本体4に出力する。データ出力部24で移動情報を出力する形態としては、例えば、Wi-Fi、Bluetooth(登録商標)等の無線LAN(Local Area Network)、携帯電話通信網等を介したデータ転送の他、接続ケーブルや各種の可搬性を有したメモリを介したデータ転送等を用いることができる。
【0016】
撮影記録装置3は、建設現場G内を撮影する。撮影記録装置3は、例えば、可搬性を有したデジタルカメラ、デジタルビデオ(身体に装着可能なウェアラブルカメラを含む)等からなる。撮影記録装置3は、周囲360度の全方位を撮影できる、いわゆる全方位カメラ(360度カメラ)であってもよい。撮影記録装置3は、カメラ機能を備えたスマートフォンやタブレット端末であってもよい。撮影記録装置3は、撮影部31と、撮影データ記憶部32と、撮影データ出力部33と、を機能的に備えている。
撮影部31は、CCD(Charge Coupled Device;電荷結合素子)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補型金属酸化膜半導体)等を用いた撮像素子を備えており、静止画、及び動画の少なくとも一方を撮影する。
【0017】
撮影データ記憶部32は、撮影部31で撮影した撮影画像を、当該撮影画像が撮影された時刻、すなわち撮影時刻と関連付けて、撮影データとして記憶する。撮影データ記憶部32は、撮影記録装置3に内蔵されたメモリや、撮影記録装置3に着脱可能に備えられた可搬性を有するメモリ等を用いてもよい。また、撮影データ記憶部32は、撮影記録装置3にWi-Fi等の無線LAN通信によって接続可能なスマートフォンやタブレット端末に撮影データを転送して記憶させるようにしてもよい。
撮影データ出力部33は、撮影データ記憶部32に記憶された建設現場G内の撮影データを、管理システム本体4に出力する。データ出力部24で移動情報を出力する形態としては、データ出力部24と同様、例えば、Wi-Fi等の無線LAN、携帯電話通信網等を介したデータ転送の他、接続ケーブルや各種の可搬性を有したメモリを介したデータ転送等を用いることができる。
【0018】
管理システム本体4は、歩行者自律航法手段2、及び撮影記録装置3で得られた現場作業員Qの移動情報と、撮影データに基づき、建設現場G内に位置する複数の現場資機材100の位置を管理するための管理データを生成する。管理システム本体4は、パーソナルコンピュータ等のコンピュータ装置からなる。管理システム本体4は、データ入力受付部41と、検出手段42と、情報統合部43と、データベース44と、管理データ出力部45と、を機能的に備えている。
データ入力受付部41は、歩行者自律航法手段2のデータ出力部24、及び撮影記録装置3の撮影データ出力部33から出力されるデータの入力を受け付ける。
【0019】
データベース44は、管理システム本体4で現場資機材100の位置を管理する為に必要な各種のデータを記憶している。データベース44には、建設現場G内で用いられる複数の現場資機材100に関するデータと、識別票Mに関するデータとが記憶されている。
現場資機材100に関するデータとしては、例えば、現場資機材100に対応する現場資機材100の識別データ等が、データベース44に記憶されている。
識別票Mは、図2に示すように、建設現場G内の異なる位置に配置される。識別票Mには、例えば2次元バーコード、ARマーカー等であり、各識別票Mに対して、個別の識別情報が対応付けられて、記録されている。識別票Mに関するデータとしては、識別票Mに対応付けられて記録された識別情報と、識別票Mが設置された建設現場G内における水平位置及び高さ位置(階層)、識別票Mを掲示する向き(方位又は角度)との対応関係がデータベース44に記憶されている。
【0020】
検出手段42は、撮影部31で撮影した撮影データの中の撮影画像から、現場資機材100及び識別票Mを検出する。検出手段42は、撮影画像が動画である場合には、当該動画を複数の静止画に分解し、各静止画に対して以下の処理を実行する。
まず、検出手段42は、処理対象となる撮影画像から、既知の画像処理方法などにより、識別票Mを検出(特定)する。
また、検出手段42は、現場資機材100の画像情報に対応する現場資機材100の識別データを、学習データとして深層学習させた学習済みモデル46を有している。学習済みモデル46は、例えば畳み込みニューラルネットワーク(CNN、Convolutional Newral Network)により構成されている。学習済みモデル46は、画像が入力されると、当該画像内に何らかの現場資機材100が撮影されている場合には、その現場資機材100に対応する識別データを出力することで、現場資機材100を識別するように、深層学習されている。このように、学習済みモデル46は、人工知能ソフトウェアの一部であるプログラムモジュールとして利用される、適切な学習パラメータが学習されたものであり、検出手段42は、この学習済みモデル46を、例えばCPUやGPU上でプログラムとして実行することで、撮影画像が入力されると、現場資機材100を識別する。
検出手段42は、このようにして、撮影画像を学習済みモデル46に入力し、現場資機材100の識別データを出力させることにより、撮影画像に撮影された現場資機材100を推定する。
識別データは、例えば本実施形態においては、現場資機材100の名称データである。それ以外にも、識別データとして、各現場資機材100に対して対応付けられた識別番号であってもよい。
【0021】
情報統合部43は、歩行者自律航法手段2で得られる現場作業員Qの移動情報と、検出手段42による現場資機材100及び識別票Mの検出結果と、を時間によって関連付け、現場資機材100の管理データとしてデータベース44に格納する。
より具体的には、情報統合部43は、撮影データ中で撮影画像に関連付けられた撮影時刻と、移動情報中の時刻情報を照合して、撮影時刻に最も近い時刻情報を抽出し、移動情報中において当該時刻情報に対応する位置を導出することで、撮影画像が撮影された位置を特定することにより、移動情報と撮影画像を関連付ける。
また、情報統合部43は、各撮影画像に対する検出手段42による現場資機材100の推定結果を基に、移動情報と、現場資機材100の検出結果とを関連付ける。
更に、情報統合部43は、現場資機材100が検出された撮影画像に対し、当該撮影画像が撮影された撮影時刻に一致、または最も近い過去の時刻において検出された識別票Mを抽出し、当該識別票Mの識別番号を算出する。
結果として、データベース44には、現場資機材100と、当該現場資機材100の近傍に位置していると考えられる識別票Mに関する情報、及び当該現場資機材100が位置していると考えられる位置に関する情報が、対応付けて格納される。
【0022】
管理データ出力部45は、情報端末5からのアクセスに応じて、データベース44に格納された現場資機材100の管理データを情報端末5に出力する。管理データ出力部45で管理データを出力する形態としては、例えば、Wi-Fi等の無線LAN、携帯電話通信網等を介したデータ転送等がある。
【0023】
情報端末5は、建設現場G内の現場資機材100を利用、又は探索する(探す)現場作業員Qが使用する。ここで、情報端末5を使用する現場作業員Qは、上記歩行者自律航法手段2、撮影記録装置3で建設現場G内の撮影を行った現場作業員Qと異なっていてもよい。情報端末5は、例えば、現場作業員Qが携帯するスマートフォンやタブレット端末であってもよい。情報端末5は、データ取得部51と、入力部52と、位置管理手段53と、を機能的に備えている。
データ取得部51は、管理システム本体4にアクセスし、管理データ出力部45から、管理データを取得する。
入力部52は、情報端末5を使用する現場作業員Qが、探索対象の現場資機材100に関する情報を入力する。入力部52は、例えば、スマートフォンやタブレット端末の表示画面に表示されるタッチキー等である。入力部52に入力する探索対象の現場資機材100に関する情報としては、現場資機材100の名称(例えば、「高所作業車」、「扇風機」等)や、現場資機材100の型式名称、探索対象となる場所(例えば、「5階」等)である。
【0024】
位置管理手段53は、位置算出部54と、情報表示部55と、を備えている。位置算出部54は、データベース44から得られたデータを参照して、建設現場G内における、探索対象の現場資機材100の位置を算出する。位置算出部54は、データベース44から、管理データや、検出された識別票Mの水平及び高さ位置等の各種データを取得し、これを基に現場資機材100の位置を算出する。
情報表示部55は、位置算出部54で算出された、探索対象の現場資機材100の位置に関する情報を表示する。情報表示部55としては、スマートフォンやタブレット端末の表示画面が用いられる。情報表示部55では、探索対象の現場資機材100の位置に関する情報として、現場資機材100の位置を示すテキスト(文字)情報、現場資機材100の位置を、建設現場Gの図面やマップ上で示す画像情報、現場資機材100が含まれる撮影記録装置3で撮影した撮影画像等によって表示することができる。
【0025】
図3は、本実施形態の資材管理システムを用いて実行される、現場資機材の管理方法の流れを示すフローチャートである。
図3に示されるように、本実施形態における資機材管理システム1で現場資機材100を管理するには、まず、識別票Mを、建設現場G内に設置する(工程S11)。
識別票Mは、例えば、複数階層を有する建設現場Gであれば、各階層(フロア)に設置する。また、識別票Mは、建設現場G内で人の往来が多く、各階層での人の移動の始点や終点になりやすい階段室やエレベータ質の近傍に設置するのが好ましい。また、識別票Mは、各階層の複数個所に設置してもよい。
識別票Mは、例えば施工中の柱や壁の表面に設けるのが望ましい。特に、建設対象となる建物が複数階層を有する場合には、階数を記載した紙などを、各階の柱などに貼り付けて掲示することが多い。このような場合には、識別票Mを、この階数の掲示の近くに設けるようにすることで、階数の表示を掲示する際に、同時に識別票Mを設けることができる。このようにすれば、識別票Mの設置のために建物内を巡回する必要がない。
また、識別票Mは、磁石や粘着剤で貼り付けるように設置すると、撤去する際に作業が容易である。
【0026】
識別票Mの設置後、管理システム本体4のデータベース44に、識別票Mに関する情報を登録する(工程S12)。具体的には、データベース44に、前述したように、各識別票Mの識別情報と、識別票Mが設置された建設現場G内における水平位置及び高さ位置の情報、及び識別票Mを掲示する向き(方位又は角度)とを関連付けて記憶させる。識別票Mが設置された建設現場G内における水平位置及び高さ位置の情報としては、各識別票Mを設置した階層(階数)、その階層における平面位置(X-Y座標:設計図面の画像データ上における絶対座標や相対座標)などがある。
上記の工程S12は、建設現場Gにおいて、工程S11における識別票Mの設置に伴い、一度行えばよい。
【0027】
工程S13では、現場作業員Qが、歩行者自律航法手段2、及び撮影記録装置3を保持又は装着して、建設現場G内を歩行して移動しながら、建設現場G内に位置する複数の現場資機材100の撮影を行う。このとき、現場作業員Qは、各階層において、識別票Mが設置されている場所付近を始点として、各階層内を移動するのが好ましい。
この際に、歩行者自律航法手段2が、センサ21からの検出データに基づき、現場作業員Qの移動情報を生成する。また、撮影記録装置3の撮影部31の先に識別票Mが位置していれば、撮影記録装置3により識別票Mが撮影される。
資機材管理システム1によって現場資機材100の位置を検出するという目的を考えると、現場作業員Qは、建設現場G内に設置されている識別票M、及び現場資機材100のなるべく全てが撮影記録装置3で撮影されるように、建設現場G内を移動するのが、本来であれば望ましい。しかし、安全管理などを目的とした建設現場Gの定時的な巡回時に、現場作業員Qが歩行者自律航法手段2、及び撮影記録装置3を保持又は装着することにより、現場資機材100の位置検出のための建設現場G内の移動を、巡回と兼ねるようにしてもよい。あるいは、多数の現場作業員Qが、常時、各々の作業の支障にならない態様で歩行者自律航法手段2、及び撮影記録装置3を携帯することで、建設現場G内での撮影記録装置3による撮影の網羅性を向上させることも可能である。
【0028】
これにより、歩行者自律航法手段2では、センサ21、及び移動情報演算部22により、建設現場G内における現場作業員Qの移動情報が取得され、時刻情報に関連付けられてデータ記憶部23に記憶される。移動情報としては、予め設定された時間間隔をおいて、例えば時刻情報と、当該時刻における現場作業員Qの位置の、相対的な座標値が、テキストデータとして記録される。
また、撮影記録装置3では、撮影部31により、現場作業員Qの移動経路の周囲に位置する識別票M、及び現場資機材100を含む建設現場G内が撮影され、その撮影画像が、当該撮影画像が撮影された時刻である撮影時刻と関連付けられた撮影データとして、撮影データ記憶部32に記憶される。
続いて、歩行者自律航法手段2で得られた現場作業員Qの移動情報と、撮影記録装置3による建設現場G内の撮影データとを、データ出力部24、撮影データ出力部33から管理システム本体4に転送する(工程S14)。なお、この工程S14は、上記工程S13の完了後に行ってもよいし、上記工程S13を実行しながら、無線LAN等による通信を利用して、随時行ってもよい。
【0029】
管理システム本体4では、工程S14で転送された現場作業員Qの移動情報、及び建設現場G内の撮影データの入力を受け付けると、これらをデータベース44に保管する。管理システム本体4は、撮影データの撮影画像に含まれる現場資機材100の検出を行う(工程S15)。
これには、まず、管理システム本体4の検出手段42が、撮影画像が動画である場合には、当該動画を複数の静止画に分解し、以下の各処理を、この分解された各静止画を撮影画像として実行する。そのうえで、検出手段42は、処理対象となる撮影画像から、既知の画像処理方法などにより、識別票Mを検出する。図4は、識別票が撮影された撮影画像Pの一例を示す図である。検出手段42は、識別票Mが検出された履歴である識別票検出履歴を作成し、データベース44に保存する。
図5は、検出手段42が作成した、識別票検出履歴の一例である。識別票検出履歴としては、撮影画像が撮影された時刻である撮影時刻(日時)と、検出された識別票Mの識別番号(ID)、及び、撮影画像中の、識別票Mの角部Mc(図9参照)の画素が位置する座標値である角部座標(コーナー座標)の対応が、識別票Mが検出されるたびに保存される。
【0030】
また、検出手段42は、撮影画像を学習済みモデル46に入力し、学習済みモデル46によって現場資機材100の識別データを出力させることにより、撮影画像に撮影された現場資機材100を識別し、推定する。検出手段42は、現場資機材100が検出された履歴である現場資機材検出履歴を作成し、データベース44に保存する。検出手段42においては、学習済みモデル46に1枚の画像を入力することで、複数個、複数種類の現場資機材100の検出を行うようにすることもできる。
図6は、検出手段42が作成した、現場資機材検出履歴の一例を示す図である。この図6に示すように、現場資機材検出履歴には、撮影画像から検出された現場資機材100の名称(資機材種類名)と、撮影画像の画像ファイル名と、撮影画像が撮影された撮影時刻(日時)とを含むテキストデータが示されている。
また、図7は、検出手段42で検出を行った撮影画像Pの一例を示す図である。この図7に示すように、撮影画像P中に、検出された現場資機材100が囲み枠Pxで囲われて示されている。
【0031】
次いで、管理システム本体4の情報統合部43で、現場資機材100の管理データを生成する(工程S16)。
これには、情報統合部43が、歩行者自律航法手段2で得られた現場作業員Qの移動情報と、検出手段42による現場資機材100及び識別票Mの検出結果、すなわち識別票検出履歴及び現場資機材検出履歴と、を時間(移動情報中の時刻情報と、撮影画像に対応する撮影時刻)によって関連付ける。
情報統合部43は、現場資機材100が検出された撮影画像に対し、当該撮影画像が撮影された撮影時刻に一致、または最も近い過去の時刻において検出された識別票Mを抽出し、当該識別票Mの識別番号を算出する。
情報統合部43は、現場資機材検出履歴を参照し、現場資機材100が撮影された撮影時刻を取得すると、当該撮影時刻に一致、または最も近い時刻における、移動情報の時刻情報を抽出し、当該時刻情報における現場作業員Qの、PDRにより取得された相対的な座標値を取得する。更に、情報統合部43は、当該時刻情報の直前の時刻において計測された、現場作業員Qの位置の座標値を取得する。
情報統合部43は、このようにして、現場資機材100が検出された撮影画像に対し、識別票Mの識別番号、識別票検出履歴から取得した識別票Mの角部座標、移動情報すなわち現場作業員Qの位置、現場資機材検出履歴等を統合した管理データを作成し、データベース44に保存する。
図8は、情報統合部43において作成された管理データの一例を示す図である。この図8に示すように、管理データには、撮影画像が撮影された撮影時刻(日時)と、撮影画像の画像ファイル名と、当該撮影画像に対して検出された現場資機材100の名称(資機材種類名)と、上記のように算出された識別票Mの識別番号(ID)と、当該識別票Mが撮影された撮影画像中の当該識別票Mの角部Mc(図9参照)の画素座標(コーナー座標)と、当該撮影画像が撮影された撮影時刻に対応する時刻情報における現場作業員Qの位置の座標値と、当該時刻情報の直前の時刻において計測された現場作業員Qの位置の座標値を含むテキストデータが示されている。
図8における最後の項目として記載された、直前の時刻において計測された現場作業員Qの位置の座標値は、後に説明するように撮影画像を撮影した方向を算出するためのものである。したがって、この値に替えて、算出後の値、すなわち撮影画像を撮影した方向の値そのものが管理データとして登録されてもよい。
【0032】
このようにして、管理システム本体4におけるデータベース44内の各種データの関連付けが終了した後、現場作業員Qが情報端末5を用い、管理システム本体4にアクセスする。この場合、管理システム本体4は、管理データ出力部45から、図8に示される管理データをはじめとした、データベース44内の、現場資機材100の位置の検出に必要な各種データを情報端末5に送信する(工程S17)。
情報端末5側では、管理システム本体4のデータベース44から取得したデータに基づき、情報端末5の利用者(現場作業員Q)が探している現場資機材100の位置を推定する(工程S18)。これには、利用者が、探している現場資機材100に関する情報を、入力部52に入力する。探している現場資機材100に関する情報が入力されると、位置算出部54が、以下のようにして、データベース44から得られた各種データを参照して、建設現場G内における、探索対象の現場資機材100の位置を推定する。
【0033】
まず、位置算出部54は、データベース44から得られた管理データを参照して、現場資機材100が検出された各撮影画像に対し、当該撮影画像に対して関連付けられた識別票Mの識別番号を取得する。また、位置算出部54は、この識別番号を基に、当該識別票Mが設置された建設現場G内における水平位置及び高さ位置、識別票Mを掲示する向きを取得する。
また、位置算出部54は、識別票Mの角部Mcの位置を基に、識別票Mの正面位置からの、撮影画像が撮影された角度を計算する。識別票Mを正面から撮影した場合には、例えば撮影画像内において識別票Mが矩形となるような位置に、各角部は撮影画像中に位置するはずである。しかし、識別票Mの正面となる位置から角度をつけた位置から識別票Mを撮影すると、例えば図9に示されるように、各角部Mcを結んだ線は矩形とはならず、例えば台形などの、歪んだ形状となるような位置に、角部Mcは位置する。位置算出部54は、このような角部Mcの位置を基に、識別票Mの正面位置からの、撮影画像が撮影された角度を計算する。
また、位置算出部54は、撮影画像内の識別票Mの大きさを計算し、これを基に、撮影画像が撮影された位置の、識別票Mからの距離を計算する。
更に、位置算出部54は、管理データにおいて、撮影画像に関連付けられた、現場作業員Qの位置の座標値を取得する。この座標値としては、情報統合部43は、移動情報中の、すなわちPDRが計測した値を入力しているため、相対的な値となっている。位置算出部54は、先に取得、計算した、識別票Mが設置された建設現場G内における水平位置及び高さ位置、識別票Mを掲示する向き、識別票Mからの距離、及び、識別票Mを撮影した時点における撮影画像が撮影された角度等によって計算される、識別票Mを撮影した時点における現場作業員Qの位置と、現場資機材100が撮影された撮影画像に関連付けられた、現場作業員Qの位置の座標値と、を基に、現場資機材100を撮影した時点における、現場作業員Qの、建設現場Gにおける絶対位置(絶対座標)を計算する。
【0034】
位置算出部54は、更に、撮影画像に関連付けられた、現場作業員Qの位置と、その直前の時刻における現場作業員Qの位置を基に、現場作業員Qの、現場資機材100が撮影された撮影時刻における移動方向を計算する。現場作業員Qに対する撮影部31の向きが前向きに固定されているという前提の上では、このように計算された移動方向は、撮影画像を撮影した方向であると考えることができる。これにより、上記のように計算された、現場資機材100が撮影された撮影時刻における現場作業員Qの絶対位置からの、現場資機材100が位置する方位が計算される。
例えば、現場資機材100の高さ位置は、識別票Mが設置された高さ位置とすることができる。また、現場資機材100の水平位置は、識別票Mが設置された水平位置と、PDRにより計測した値、現場作業員Qからの現場資機材100が位置する方位等を基に計算することができる。
【0035】
このようにして、位置算出部54では、各撮影画像に含まれる複数の現場資機材100の建設現場G内における位置を推定する。このとき、一つの現場資機材100が、複数枚の撮影画像に含まれている(写っている)場合、複数枚の撮影画像の撮影時刻と撮影位置とに基づいて、各撮影画像の撮影方向を、より高精度に推定することもできる。
【0036】
続いて、情報端末5では、情報表示部55で、位置算出部54で推定された、探索対象の現場資機材100の位置に関する情報を表示する(工程S19)。
図10は、情報端末に表示される、現場資機材100の位置に関する情報の一例を示す図である。図10においては、現場作業員Qの位置が、矢印Zとして示されている。矢印Zの向きは、撮影画像を撮影した方向である。この矢印Zの先の位置に、探している現場資機材100があると考えられる。
【0037】
上述したような資機材管理システム1は、建設現場G内での現場資機材100の位置を検出し管理する資機材管理システム1であって、建設現場G内の異なる位置に配置され、識別情報が記録された識別票Mと、自律動作するセンサを備え、現場作業員Qが保持又は装着可能に構成されて、現場作業員Qの移動情報を取得する歩行者自律航法手段2と、現場作業員Qが保持又は装着可能に構成され、建設現場G内を撮影する撮影記録装置3と、撮影記録装置3による撮影画像から現場資機材100及び識別票Mを検出する検出手段42と、歩行者自律航法手段2で得られる現場作業員Qの移動情報と、検出手段42による現場資機材100及び識別票Mの検出結果と、を時間によって関連付けてデータベース44に格納する情報統合部43と、データベース44を参照して、現場資機材100の位置を算出する位置算出部54と、位置算出部54で算出された現場資機材100の位置を表示する情報表示部55と、を備えている。
このような構成によれば、現場作業員Qが歩行者自律航法手段2、及び撮影記録装置3を保持又は装着した状態で、建設現場G内を移動しつつ、撮影記録装置3で建設現場G内を撮影すると、歩行者自律航法手段2では、現場作業員Qの建設現場G内で移動したときの位置や経路を示す移動情報が得られる。また、撮影記録装置3では、建設現場G内を撮影することで、建設現場G内に位置する現場資機材100の撮影画像が得られる。検出手段42は、撮影記録装置3の撮影画像から、建設現場G内に位置する現場資機材100と、建設現場Gに設けられた識別票Mとを検出する。情報統合部43により、現場作業員Qの移動情報と、現場資機材100及び識別票Mの検出結果とを、時間によって関連付けることで、位置算出部54では、建設現場G内における現場資機材100の位置を算出することができる。具体的には、撮影画像中における識別票Mから、建設現場G内の場所を特定することができる。識別票Mから特定される場所と、現場作業員Qの移動情報とを基にして、これらを関連付けることで、高層建物や大規模な構造物であっても、撮影画像を撮影した位置を、高精度に特定することができる。これにより、撮影画像に写っている現場資機材100の位置を、高精度に特定することが可能となる。このような構成では、現場資機材100に、送信機、無線タグ、気圧センサ等を備える必要が無い。したがって、建設現場G内の資機材の位置の管理を、低コストで、かつ正確に行うことが可能となる。
また、資機材管理システム1では、現場資機材100の検索履歴、移動履歴から現場資機材100の利用頻度および紛失の推定が可能となり、その検索情報を現場資機材100の管理者に定期的にメール送信することなどにより、現場資機材100の手配や返却などを効率的に管理・運用することが可能となる。
【0038】
特に本実施形態においては、建設現場G内の異なる位置に識別票Mを設け、撮影記録装置3による撮影画像から識別票Mを検出し、これを基に現場資機材100の位置を算出している。これにより、移動量として測定される歩行者自律航法手段の、多分に誤差を含み得る測定結果を、建設現場Gの中の絶対位置として、正確な値に補正することができる。これにより、建設現場G内の資機材の位置の管理を、正確に行うことができる。
また、本実施形態においては、識別票Mとして2次元バーコード、ARマーカー等を使用している。このため、識別票Mを準備する際には、印刷物を建設現場G内の柱や壁に貼り付けるだけで済む。したがって、設置が容易である。また、上記実施形態のように、識別票Mを、階数の掲示の近くに設けるようにすると、工事の進捗に応じて識別票Mを移設する必要がない。
更に、例えば現場資機材100の各々に送信器を設置し、建設現場G内の複数か所に送信機からの信号を受信する受信機を設置して、これら受信機による受信結果を基に現場資機材100の位置を特定するような方法に比べると、本実施形態の資機材管理システム1は、導入コストが低い。また、資機材管理システム1の運用中に、受信機や送信機のような相応のコストを要する物品の、損傷、紛失のおそれが低減するため、運用コストも低減できる。かつ、管理対象となる現場資機材100の種類や数が増えたとしても、容易にこれに対応可能である。
【0039】
また、検出手段42は、現場資機材100の画像情報に対応する現場資機材100の識別データを、学習データとして深層学習させた学習済みモデル46を有しており、当該学習済みモデル46に、現場資機材100が撮影された画像を入力して、入力された画像に撮影された現場資機材100の識別データを出力させることにより、現場資機材100を識別する。
このような構成によれば、撮影画像に映っている現場資機材100の画像情報に基づき、現場資機材100を識別することができる。したがって、現場作業員Qが移動しながら建設現場G内を撮影するのみで、建設現場G内に位置する現場資機材100を識別することができる。したがって、現場資機材100を使用する際には、その位置を容易に把握することが可能となる。
【0040】
また、データベース44には、識別票Mの識別情報と、当該識別票Mが設けられた水平及び高さ位置との対応関係が記憶され、位置算出部54は、データベース44を参照して、検出された識別票Mの水平及び高さ位置を取得し、当該水平及び高さ位置と、移動情報とを基に現場資機材100の位置を算出する。
このような構成によれば、撮影画像中における識別票Mの識別情報から、識別票Mを撮影した建設現場G内の水平及び高さ位置を特定することができる。これにより、例えば高層建物や大規模な構造物であっても、撮影画像を撮影した位置を、高精度に特定することができる。これにより、撮影画像に写っている現場資機材100の位置を、高精度に特定することが可能となる。
【0041】
(実施形態の変形例)
なお、本発明の資機材管理システムは、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、検出手段42を、管理システム本体4に備えるようにしたが、これに限らない。撮影記録装置3による撮影画像から現場資機材100及び識別票Mを検出する検出手段42は、撮影記録装置3に備えるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、データベース44を参照して、現場資機材100の位置を算出して、表示する位置管理手段53を、情報端末5に備えるようにしたが、これに限らない。位置管理手段53のうち、データベース44を参照して、検出された識別票Mの水平及び高さ位置を取得し、これを基に現場資機材100の位置を算出する位置算出部54を、管理システム本体4に備えるようにし、位置算出部54で算出された、探索対象の現場資機材100の位置に関する情報を表示する情報表示部55のみを、情報端末5に備えるようにしてもよい。
あるいは、データ取得部51と、入力部52と、位置管理手段53を、管理システム本体4が備えるようにして、資機材管理システムが情報端末5を備えない構成としてもよい。
【0042】
また、上記実施形態においても説明したように、撮影記録装置3として、360度カメラを用いることもできる。この場合においては、カメラの向きは、360度カメラによって撮影した画像内の識別票Mの位置関係を基に計算すればよい。
更に、360度カメラを用いる場合には、現場資機材100を検出するに際し、撮影画像中における現場資機材100の方位を示す角度情報を、検知記録に含めておくのが好ましい。このようにすることで、現場資機材100の位置を算出する際に、上記実施形態のように現場作業員Qの、撮影画像を撮影した方向を計算したうえで、この方向に対して撮影画像中における現場資機材100の方位を示す角度情報を適用することで、現場資機材100が位置する方位を計算することができる。
【0043】
また、撮影画像中の現場資機材100が占める領域の画素座標を計算することで、撮影画像のなかで現場資機材100が占める大きさを計算することができる。例えば、現場資機材100の種類ごとに、撮影画像のなかで現場資機材100が占める大きさと、撮影部31からの距離との関係をデータベース44に保持しておけば、撮影画像を撮影した位置からの、現場資機材100の距離を推定することができる。
上記のように、実施形態においては、現場資機材100が位置すると考えられる方位が推定されるため、この方位情報と、現場資機材100の撮影位置からの距離情報の双方を用いることにより、建設現場G内における現場資機材100の位置を、より詳細に検出することができる。
【0044】
更に、対象となる現場資機材100の各々に対して、これらを識別可能となるような、2次元コードなどの識別票を貼り付けてもよい。このようにすることで、現場資機材100が同じ種類のものであっても、各個体を認識することができるようになるため、更なる細やかな、現場資機材100の管理が可能となる。
また、上記実施形態においては、識別票Mを建設現場G内に設置する工程S11と、及び識別票Mに関する情報を登録する工程S12は、共に一度のみ行うように説明したが、実際にはこれに限られない。例えば、建設現場Gにおける工事の進捗に応じて、識別票Mの設置位置や方向を変更し、これに伴って識別票Mに関する情報を更新しても構わない。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 資機材管理システム 46 学習済みモデル
2 歩行者自律航法手段 54 位置算出部
3 撮影記録装置 55 情報表示部
4 管理システム本体 100 現場資機材
5 情報端末 Z 矢印
21 センサ G 建設現場
42 検出手段 M 識別票
43 情報統合部 P 撮影画像
44 データベース Q 現場作業員
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10