(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 67/00 20060101AFI20240726BHJP
A01D 57/22 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
A01D67/00 C
A01D57/22 F
A01D57/22 G
(21)【出願番号】P 2020214268
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】征矢 保
(72)【発明者】
【氏名】山内 一樹
(72)【発明者】
【氏名】種市 遥香
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-072119(JP,A)
【文献】実開平02-012223(JP,U)
【文献】特開平09-266720(JP,A)
【文献】特開平11-235116(JP,A)
【文献】米国特許第04291523(US,A)
【文献】特開2013-027355(JP,A)
【文献】特開2005-087066(JP,A)
【文献】特開2008-011768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 67/00 - 69/12
A01D 57/00 - 57/30
A01D 63/00 - 65/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体前部に植立穀稈を刈り取る刈取部が備えられ、
前記刈取部に、左右方向に並ぶ複数の引起し装置と、複数の前記引起し装置の上方に位置する状態で左右方向に沿って延び且つ複数の前記引起し装置のそれぞれに動力を伝達する駆動軸と、前記駆動軸の前方側を覆う上部カバーと、が備えられ、
前記引起し装置が、前記駆動軸の軸芯周りで上下揺動可能に支持され、かつ、穀稈引起しを行う通常作用姿勢と、上方に揺動して後方側空間を開放する開放姿勢とに姿勢切り換え可能に構成され、
前記上部カバーは、前記駆動軸の前方側を覆う閉状態と、前記駆動軸の前方側を開放する開状態とにわたり、上部の横軸芯周りで上下揺動可能に前記引起し装置に支持され、
前記上部カバーを前記閉状態に位置保持する位置保持機構が備えられ、
前記位置保持機構は、前記引起し装置を前記通常作用姿勢から前記開放姿勢に切り換えると、前記引起し装置の前面が前記上部カバーに当接して位置保持を解除するように構成さ
れ、
前記位置保持機構は、前記上部カバー側に設けられた第一部材と、前記駆動軸側に設けられた第二部材とが、磁力によって引き合うことにより前記上部カバーを位置保持する構成であり、
前記上部カバーの裏面に左右方向に沿って延びる補強リブが備えられ、
前記補強リブに前記第一部材を係止保持する係止部が備えられているコンバイン。
【請求項2】
機体前部に植立穀稈を刈り取る刈取部が備えられ、
前記刈取部に、左右方向に並ぶ複数の引起し装置と、複数の前記引起し装置の上方に位置する状態で左右方向に沿って延び且つ複数の前記引起し装置のそれぞれに動力を伝達する駆動軸と、前記駆動軸の前方側を覆う上部カバーと、が備えられ、
前記引起し装置が、前記駆動軸の軸芯周りで上下揺動可能に支持され、かつ、穀稈引起しを行う通常作用姿勢と、上方に揺動して後方側空間を開放する開放姿勢とに姿勢切り換え可能に構成され、
前記駆動軸から複数の前記引起し装置のそれぞれに動力を分岐伝達する複数の駆動伝達部が左右方向に間隔をあけて備えられ、
前記上部カバーは、前記駆動軸の前方側を覆う閉状態と、前記駆動軸の前方側を開放する開状態とにわたり、上部の横軸芯周りで上下揺動可能に前記引起し装置に支持され、
前記上部カバーを前記閉状態に位置保持する位置保持機構が備えられ、
前記位置保持機構は、前記引起し装置を前記通常作用姿勢から前記開放姿勢に切り換えると、前記引起し装置の前面が前記上部カバーに当接して位置保持を解除するように構成され、
前記位置保持機構は、前記上部カバー側に設けられた第一部材と、前記駆動軸側に設けられた第二部材とが、磁力によって引き合うことにより前記上部カバーを位置保持する構成であり、
前記第一部材は、隣り合う前記駆動伝達部の左右中間部に対応する位置に備えられているコンバイン。
【請求項3】
前記第一部材は、前記駆動軸に対向する位置に備えられている請求項
1又は2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記第二部材は、前記駆動軸の前方に位置して前記駆動軸を覆うカバー部材に備えられている請求項
1又は2に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記駆動軸から複数の前記引起し装置のそれぞれに動力を分岐伝達する複数の駆動伝達部が左右方向に間隔をあけて備えられ、
前記第二部材は、隣り合う前記駆動伝達部の左右中間部に対応する位置に備えられている請求項1に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体前部に植立穀稈を刈り取る刈取部が備えられ、刈取部に左右方向に並ぶ複数の引起し装置が備えられているコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記コンバインでは、複数の引起し装置の上方に位置する状態で左右方向に沿って延び且つ複数の引起し装置のそれぞれに動力を伝達する引起し駆動軸が備えられ、その引起し駆動軸の前方側が上部カバーによって覆われている。そして、従来では、上部カバーは、駆動軸の前方側を覆う閉状態と、駆動軸の前方側を開放する開状態とにわたり姿勢変更可能に、横軸芯周りで上下揺動可能に支持され、かつ、弾性係合式のクリップを固定側の取付ピンに挟み込んで閉状態で位置保持するようにしたものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成では、クリップの係止保持によって、上部カバーが機体振動や風等の影響でバタついて不測に開閉することを防止することができる。しかし、引起し装置や機体内部のメンテナンス作業を行うときは、上部カバーを上方に揺動することでクリップによる位置保持を解除して上部カバーを開状態に切り換えたのち、引起し装置を開放状態に切り換える必要がある。
【0005】
その結果、引起し装置を開放状態に切り換える作業とは別に、クリップによる係止保持力に抗して上部カバーを開状態に切り換える作業が必要であり、煩わしさがあった。
【0006】
そこで、上部カバーが不測に開閉することを防止できるようにしながら、メンテナンス作業を煩わしさなく行えるようにすることが要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
本発明に係るコンバインの特徴構成は、機体前部に植立穀稈を刈り取る刈取部が備えられ、前記刈取部に、左右方向に並ぶ複数の引起し装置と、複数の前記引起し装置の上方に位置する状態で左右方向に沿って延び且つ複数の前記引起し装置のそれぞれに動力を伝達する駆動軸と、前記駆動軸の前方側を覆う上部カバーと、が備えられ、前記引起し装置が、前記駆動軸の軸芯周りで上下揺動可能に支持され、かつ、穀稈引起しを行う通常作用姿勢と、上方に揺動して後方側空間を開放する開放姿勢とに姿勢切り換え可能に構成され、前記上部カバーは、前記駆動軸の前方側を覆う閉状態と、前記駆動軸の前方側を開放する開状態とにわたり、上部の横軸芯周りで上下揺動可能に前記引起し装置に支持され、前記上部カバーを前記閉状態に位置保持する位置保持機構が備えられ、前記位置保持機構は、前記引起し装置を前記通常作用姿勢から前記開放姿勢に切り換えると、前記引起し装置の前面が前記上部カバーに当接して位置保持を解除するように構成され、前記位置保持機構は、前記上部カバー側に設けられた第一部材と、前記駆動軸側に設けられた第二部材とが、磁力によって引き合うことにより前記上部カバーを位置保持する構成であり、前記上部カバーの裏面に左右方向に沿って延びる補強リブが備えられ、前記補強リブに前記第一部材を係止保持する係止部が備えられている点にある。
【0020】
本構成によれば、刈取作業中においては、上部カバーが位置保持機構によって閉状態に位置保持されるので、上部カバーが機体振動や風等の影響でバタついて不測に開閉することを防止することができる。引起し装置は、駆動軸の軸芯周りで上下揺動して開放姿勢に切り換えることにより、機体内部のメンテナンス作業を容易に行える。そして、メンテナンス作業のために、引起し装置を通常作用姿勢から開放姿勢に切り換えると、それに伴って、カバー部材が開状態に切り換えられる。このとき、引起し装置の前面が上部カバーに当接して上部カバーが連動して揺動して位置保持機構が位置保持を解除する。その結果、引起し装置の姿勢切り換え操作と、上部カバーの姿勢切り換え操作とを各別に行う等の操作の煩わしさがない。従って、上部カバーが不測に開閉することを防止できるようにしながら、メンテナンス作業を煩わしさなく行えるようにすることが可能となった。又、補強リブを有することにより、上部カバーの強度補強を図ることができる。そして、この補強リブを有効に利用することにより、係止部を簡単な構造で対応することができる。
【0021】
本発明に係るコンバインの特徴構成は、機体前部に植立穀稈を刈り取る刈取部が備えられ、前記刈取部に、左右方向に並ぶ複数の引起し装置と、複数の前記引起し装置の上方に位置する状態で左右方向に沿って延び且つ複数の前記引起し装置のそれぞれに動力を伝達する駆動軸と、前記駆動軸の前方側を覆う上部カバーと、が備えられ、前記引起し装置が、前記駆動軸の軸芯周りで上下揺動可能に支持され、かつ、穀稈引起しを行う通常作用姿勢と、上方に揺動して後方側空間を開放する開放姿勢とに姿勢切り換え可能に構成され、前記駆動軸から複数の前記引起し装置のそれぞれに動力を分岐伝達する複数の駆動伝達部が左右方向に間隔をあけて備えられ、前記上部カバーは、前記駆動軸の前方側を覆う閉状態と、前記駆動軸の前方側を開放する開状態とにわたり、上部の横軸芯周りで上下揺動可能に前記引起し装置に支持され、前記上部カバーを前記閉状態に位置保持する位置保持機構が備えられ、前記位置保持機構は、前記引起し装置を前記通常作用姿勢から前記開放姿勢に切り換えると、前記引起し装置の前面が前記上部カバーに当接して位置保持を解除するように構成され、前記位置保持機構は、前記上部カバー側に設けられた第一部材と、前記駆動軸側に設けられた第二部材とが、磁力によって引き合うことにより前記上部カバーを位置保持する構成であり、前記第一部材は、隣り合う前記駆動伝達部の左右中間部に対応する位置に備えられている点にある。
【0022】
本構成によれば、刈取作業中においては、上部カバーが位置保持機構によって閉状態に位置保持されるので、上部カバーが機体振動や風等の影響でバタついて不測に開閉することを防止することができる。引起し装置は、駆動軸の軸芯周りで上下揺動して開放姿勢に切り換えることにより、機体内部のメンテナンス作業を容易に行える。そして、メンテナンス作業のために、引起し装置を通常作用姿勢から開放姿勢に切り換えると、それに伴って、カバー部材が開状態に切り換えられる。このとき、引起し装置の前面が上部カバーに当接して上部カバーが連動して揺動して位置保持機構が位置保持を解除する。その結果、引起し装置の姿勢切り換え操作と、上部カバーの姿勢切り換え操作とを各別に行う等の操作の煩わしさがない。従って、上部カバーが不測に開閉することを防止できるようにしながら、メンテナンス作業を煩わしさなく行えるようにすることが可能となった。又、複数の引起し装置に対して動力伝達する駆動伝達部が左右に間隔をあけて備えられる点に着目して、駆動伝達部の左右中間部の空き領域を有効に利用して第一部材をコンパクトに配置することができる。
【0023】
本発明においては、前記第一部材は、前記駆動軸に対向する位置に備えられていると好適である。
【0024】
本構成によれば、上部カバーは、駆動軸に対向する位置において位置保持されるので、駆動軸との間での間隔を良好に保持することができ、外物との接当によって後方に押されることがあっても駆動軸に近接することを防止できる。
【0025】
本発明においては、前記第二部材は、前記駆動軸の前方に位置して前記駆動軸を覆うカバー部材に備えられていると好適である。
【0026】
本構成によれば、駆動軸は、回転することによって作物が巻き付かないようにカバー部材によって覆われている。そこで、このカバー部材を有効に利用して第二部材を取り付けることができる。
【0027】
本発明においては、前記駆動軸から複数の前記引起し装置のそれぞれに動力を分岐伝達する複数の駆動伝達部が左右方向に間隔をあけて備えられ、前記第二部材は、隣り合う前記駆動伝達部の左右中間部に対応する位置に備えられていると好適である。
【0028】
本構成によれば、複数の引起し装置に対して動力伝達する駆動伝達部が左右に間隔をあけて備えられる点に着目して、駆動伝達部の左右中間部の空き領域を有効に利用して第二部材をコンパクトに配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図5】第二部材の取り付け状態を示す斜視図である。
【
図6】第二部材の取り付け状態を示す横断平面図である。
【
図7】第一部材の取り付け状態を示す斜視図である。
【
図9】別実施形態の上部カバー配設部の縦断側面図である。
【
図10】別実施形態の上部カバー配設部の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、矢印「F」の方向を「機体前側」、矢印「B」の方向を「機体後側」とし(
図1参照)、矢印「L」の方向を「機体左側」、矢印「R」の方向を「機体右側」とする(
図2参照)。
【0031】
〔全体構成〕
図1に示すように、本発明に係るコンバインは、走行機体1と、7条の植立穀稈を刈り取り可能な刈取部2とを備えている。刈取部2は、横軸芯P1まわりで揺動昇降可能に走行機体1に連結され、昇降用油圧シリンダ3により駆動昇降可能に設けられている。
【0032】
走行機体1は、左右のクローラ走行装置4が備えられ、機体前部の右側(左右方向一方側)に運転部5が備えられている。運転部5の後方に、刈取部2にて刈り取られた穀稈を脱穀処理する脱穀装置6と、脱穀処理にて得られた穀粒を貯留する穀粒タンク7とを機体横方向に並ぶ状態で備えられている。運転部5はキャビン8にて覆われている。脱穀装置6は、図示はしないが、刈取部2から搬送される刈取穀稈の株元を脱穀フィードチェーン9により挟持して搬送しながら、扱室内部で穂先側を扱き処理し、扱室の下部に備えられた選別部にて穀粒と塵埃に選別処理する。穀粒は穀粒タンク7に貯留し、塵埃は機外に排出する。穀粒タンク7に貯留される穀粒を外部に排出可能な穀粒排出装置10と、脱穀処理後の排ワラを細断したのちに機外に排出する細断装置11とが備えられている。
【0033】
図1,2に示すように、刈取部2には、左右方向に間隔をあけて設けられ、かつ、7つの穀稈導入経路に対して各条の植立穀稈を導入すべく分草案内する複数(8個)の分草具12と、全ての穀稈導入経路のそれぞれに対応して左右方向に並ぶ状態で設けられ、かつ、植立穀稈を引き起こす複数(7個)の引起し装置13と、引起された植立穀稈の株元を切断するバリカン型の刈刃14と、刈り取った刈取穀稈を刈幅方向に合流させて後方に搬送する搬送装置15とが備えられている。
【0034】
刈取部2には、刈取部2全体を支持する刈取フレーム20が備えられている。刈取フレーム20は、機体フレーム21から機体前方に延び且つ後端部が上下揺動可能に支持されたメインフレーム22と、このメインフレーム22の前端部に左右方向に延びる横フレーム23と、横フレーム23の一端部から走行機体上方向きに延出された引起し伝動ケース24等を備えている。
【0035】
メインフレーム22と機体フレーム4にわたって油圧シリンダ3が連結され、刈取部2は、油圧シリンダ3によって上下に揺動操作されることにより、刈取用の作業位置(
図1に実線で示す状態)と上方に位置する最大上昇位置としての退避位置(
図1及び
図2に仮想線で示す状態)とにわたって昇降可能に構成されている。
【0036】
刈取部2には、複数の引起し装置13の左右方向両側の横側方を覆う左右のサイドカバー25が備えられている。左右のサイドカバー25の上方には、左右の前照灯装置26と、前照灯装置26を覆う左右の前照灯カバー27と、が備えられている。
【0037】
前照灯カバー27は、刈取部2の左右両側部の上部に備えられた前照灯装置26の周囲並びに複数の引起し装置13の左右方向両側の横側方のうちの上部側部分を覆うように構成されている。左右のサイドカバー25は、複数の引起し装置13の左右方向両側の横側方のうちの下部側部分を覆うように構成されている。
【0038】
〔引起し装置〕
引起し装置13は、下端側が機体前部側に位置し且つ上端側ほど機体後方側に位置する後倒れ傾斜状態の起立姿勢で備えられている。
図2に示すように、引起し装置13は、引起しケース28の上部に配備された駆動輪体29及びテンション輪体30と、ケース下部に配備された案内輪体31とに亘って無端回動チェーン32が巻回張設されている。無端回動チェーン32に多数本の引起し爪33が起伏自在に所定ピッチで支持されている。
【0039】
引起し装置13は、無端回動チェーン32の左右両側の移動経路のうちの上方に移動する経路が引起し経路Q1であり、反対側が戻り経路Q2である。引起し経路においては、無端回動チェーン32が通過する箇所に引起し爪33を起立案内するガイド板が備えられている。引起し装置13は、引起し経路Q1においては、横向きに突出する引起し爪33が穀稈に梳き上げ作用しながら上昇移動し、引起し経路Q1の終端に到達すると、穀稈から外れて引起しケース28の内部に収納されて戻し経路を下降して引起し作用経路側に戻っていく。
【0040】
複数の引起し装置13の上方に位置する状態で、左右方向に沿って延び且つ複数の引起し装置13のそれぞれに動力を伝達する引起し駆動軸34が備えられている。伝動構造については、図示しないが、機体側からの動力が、メインフレーム22の内部に設けられた前後向き伝動軸、横フレーム23の内部に設けられた横向き伝動軸、及び、引起し伝動ケース24の内部に設けられた縦向き伝動軸を介して、引起し駆動軸34に伝達される。
【0041】
引起し駆動軸34から複数の引起し装置13のそれぞれに動力を分岐伝達する複数の駆動伝達部35が左右方向に間隔をあけて備えられている。
図4に示すように、駆動伝達部35は、縦長の駆動ケース36の内部に、上側のベベルギア機構37と、ケース長手方向に沿って延びる縦向き伝動軸38と、下側のベベルギア機構39と、前後向き伝動軸40と、が内装され、引起し駆動軸34から引起し装置13の駆動輪体29に動力伝達するように構成されている。
【0042】
図3に示すように、刈取フレーム20の基端ボス部から山形に屈曲されたパイプ製の支持アーム41が前方に向けて引起し装置13の上方箇所にまで延出されている。支持アーム41の前端に複数の引起し装置13の上方に沿って左右方向に延びる支持フレーム42が連結されている。支持フレーム42は板材を屈曲して形成されており、支持アーム41の前端が連結されている。
【0043】
支持フレーム42には左右方向に間隔をあけて複数の支持ブラケット43がボルト連結され、各支持ブラケット43に駆動ケース36が横軸芯X1周りで上下揺動可能に嵌合支持されている。駆動ケース36の上部に引起し駆動軸34が貫通支持されている。駆動ケース36は引起し駆動軸34の軸芯X1周りに上下揺動可能に支持されている。
【0044】
引起し装置13が一体的に揺動可能な状態で駆動ケース36に連結されている。引起し装置13は、引起し駆動軸34の軸芯X周りで上下揺動することにより、
図3,4に示すように、穀稈引起しを行う通常作用姿勢(
図4では実線で示す)と、上方に揺動して後方側空間を開放する開放姿勢(
図4では仮想線で示す)とに姿勢切り換え可能に構成されている。開放姿勢にて位置保持するためのエアーダンパ44が備えられている。
【0045】
図4,5に示すように、左右方向に離間している駆動伝達部35にて挟まれる領域のうち、引起し経路Q1の上方に対応する位置に、引起し駆動軸34の前方側及び下方側を覆う状態で巻付き防止カバー45が備えられている。巻付き防止カバー45は、左右両側が支持ブラケット43にボルト連結されている。
【0046】
〔上部カバー〕
図2,3,4に示すように、引起し駆動軸34の前方側を覆う上部カバー46が備えられている。上部カバー46は、左端の引起し装置13から右端の引起し装置13にわたって左右に延びる状態で備えられている。上部カバー46は、樹脂材にて構成されており、引起し駆動軸34の前方側を覆う閉状態と、引起し駆動軸34の前方側を開放する開状態とにわたり、上部の横軸芯X2周りで上下揺動可能に引起し装置13に支持されている。
【0047】
上部カバー46には、複数の引起し装置13それぞれの引起し経路Q1の上方に対応する箇所に、上方に凹入する上向き凹入部47が形成されている。そのため、引起し装置13により引き起こされた植立穀稈の上部が上部カバー46に干渉することによって穀稈の搬送不良が生じることを回避しやすい。
【0048】
上部カバー46の上部側箇所46Aが引起し装置13の前面13aに対して段違い状に前方側に寄った状態で設けられ、かつ、上部カバー46のうち引起し駆動軸34よりも下側の下部側箇所46Bに引起し装置13に向けて近づく近接部48が備えられている。
図4,7に示すように、上部カバー46の下部側箇所46Bに、引起し装置13に向けて近づくように後向きに湾曲状に引退する後方向き湾曲面49により、近接部48が構成されている。
【0049】
上部カバー46の下部側箇所46Bのうち複数の引起し装置13それぞれの戻り経路Q2の上方に対応する箇所に、近接部48が備えられている。上部カバー46の戻り経路Q2の上方に対応する箇所は上下方向に幅広であり、引起し装置13の上端位置よりも下側にまで延びている。その幅広の延設部における上下方向の途中に近接部48が設けられている。
【0050】
近接部48は引起し装置13の上端位置よりも上側に位置している。つまり、引起し装置13の上端位置よりも上側において引起し装置13に向けて近づくように凹入する後方向き湾曲面49が形成されている。これにより、引起し装置13によって引き起こされた植立穀稈の穂先側が、戻り経路Q2の上方に対応する箇所に寄り掛かることがあっても、上部カバー46と干渉して穀稈の搬送不良が生じることを回避しやすい。
【0051】
図8に示すように、前照灯カバー27の左右方向内方側箇所のうち上部カバー46の下部側箇所に隣り合う部分に、正面視で、左右方向外方側へ引退する横向き引退部50が備えられている。そして、上部カバー46の下部側箇所のうち左右方向外端部に、前照灯カバー27の横向き引退部50に入り込むように左右方向外方側へ張り出す張り出し部51が備えられている。このように構成することで、前照灯カバー27と上部カバー46との間の隙間が小さくなり、穀稈が入り込みことがなく、穀稈の搬送不良が生じることを回避しやすい。
【0052】
〔位置保持機構〕
上部カバー46を閉状態に位置保持する位置保持機構52が備えられている。
図2に示すように、位置保持機構52は、正面視において、上部カバー46における上向き凹入部47が形成される複数の箇所のそれぞれに対応する位置に備えられている。位置保持機構52は、上部カバー46側に設けられた第一部材53と、引起し駆動軸34側に設けられた第二部材54とが、磁力によって引き合うことにより上部カバー46を位置保持するように構成されている。すなわち、鉄材と磁石とが磁力によって引き合う構成となっている。第一部材53が鉄材にて構成され、第二部材54が永久磁石にて構成されている。
【0053】
図4,7に示すように、上部カバー46の裏面に左右方向に沿って延びる補強リブ55が備えられている。補強リブ55は、上部カバー46の裏面の上下2箇所に、上部カバー46と一体成型される状態で形成されている。この補強リブ55に第一部材53を係止保持する係止部56が備えられている。
【0054】
係止部56は、上側の補強リブ55から下方に向けて延びる延出部が設けられ、この延出部と上部カバー46との間の凹部に第一部材53を挟み込む状態で係止保持するように構成され、下側の補強リブ55から上方に向けて延びる延出部が設けられ、この延出部と上部カバー46との間の凹部に第一部材53を挟み込む状態で係止保持するように構成されている。
【0055】
第一部材53は鉄板を上下の係止部材56に入り込み易い形状に折り曲げて形成されている。上下の入り込み凹部58,60は、第一部材53を入り込んでいる状態で弾性変形により挟み込み保持するように構成されている。
【0056】
第一部材53は、正面視において、上部カバー46における上向き凹入部47が形成される複数の箇所のそれぞれに対応する位置、すなわち、複数の駆動伝達部35のうち隣り合う駆動伝達部35の左右中間部に対応する位置に備えられている。又、第一部材53は、側面視において、引起し駆動軸34に対向する位置に備えられている。
【0057】
第二部材54は、永久磁石にて構成され、第一部材53に対向する位置、すなわち、複数の駆動伝達部35のうち隣り合う駆動伝達部35の左右中間部に対応する位置に備えられている。第二部材54は、引起し駆動軸34の前方側に備えられた巻付き防止カバー45に取り付けられている。
【0058】
図5,6に示すように、第二部材54が固定状態で取り付けられた連結用の台座部61が、巻付き防止カバー45の後面側から当て付けられてボルト連結されている。台座部61が取り付けられると、第二部材54が巻付き防止カバー45に形成された挿通孔62を通して、前方に向けて露出するように構成されている。
【0059】
上部カバー46が閉状態にあると、第一部材53が第二部材54に対向して近接する状態で位置し、第一部材53と第二部材54とが磁力によって引き合うことで上部カバー46が閉状態で位置保持される。
【0060】
位置保持機構52は、上部カバー46を上昇揺動させる力によって位置保持を解除するように構成されている。すなわち、磁力により引き合う力が、手動操作にて上部カバーを上昇揺動させることで位置保持を解除できる程度の力に設定されている。
【0061】
上部カバー46は、引起し装置13の上部前側部分に覆い被さる状態で備えられ、位置保持機構52は、引起し装置13を通常作用姿勢から開放姿勢に切り換えると、第一部材53と第二部材54とが磁力により引き合う力に打ち勝って、引起し装置13の前面13aが当接して位置保持を解除するように構成されている。
【0062】
〔方向指示器〕
機体前部に位置する状態で左右の方向指示器62R,62Lが備えられている。左右の方向指示器62R,62Lは、そのうちの一方としての右側の方向指示器62Rがキャビン8の前部における左右方向一方側としての右側箇所に設けられている。他方としての左側の方向指示器62Lは、機体前部のうちの左右方向反対側としての左側箇所、すなわち、刈取部2の左側箇所に設けられている。左側の方向指示器62Lは、
図3に示すように、刈取フレーム20に連結された支持体72に支持されている。
【0063】
右側の方向指示器62Rは、キャビン8のフロントピラー64に支持されている。キャビン8の横外側部にバックミラー65が備えられ、右側の方向指示器62Rは、バックミラー65の下端部よりも下方で、かつ、脱穀装置6の上端部と同じ高さに設けられている。
【0064】
キャビン8内部の前部における右側箇所に、方向指示器62R,62Lの作動状態を切り換える操作具としての切換スイッチ66を有する操作部67が備えられている。右側の方向指示器62Rは、操作部67と同じ高さであって、かつ、正面視においてキャビン8のフロントガラス68の右側端部の下端部に対応する高さに設けられている。
【0065】
刈取部2の右側端部はキャビン8の右側端部よりも右方向外方側に位置している。このような構成であっても、刈取部2を格納位置まで上昇させた際に前方側から右側の方向指示器62Rを目視することが可能である。
【0066】
右側の方向指示器62Rは、刈取部2を退避位置にまで上昇したときに、機体前方側から目視することが可能なように、退避位置における刈取部2よりも高い位置に設けられている。右側の方向指示器62Rは、刈取部2が退避位置にまで上昇している場合であっても、左側の方向指示器62Rの高さよりも高い位置に設けられている。
【0067】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、第一部材53が鉄材であり、第二部材54が磁石である構成としたが、この構成に代えて、第一部材53が磁石であり、第二部材54が鉄材である構成としてもよく、第一部材53及び第二部材54が共に磁石である構成としてもよい。
【0068】
(2)上記実施形態では、第一部材53及び第二部材54が、隣り合う駆動伝達部35の左右中間部に対応する位置に備えられる構成としたが、第一部材53及び第二部材54が駆動伝達部35と上部カバー46の裏面との間に備えられる構成としてもよい。
【0069】
(3)上記実施形態では、上部カバー46の裏面に設けられた補強リブ55に係止部56が備えられる構成としたが、この構成に代えて、上部カバー46に第一部材53を支持するための専用のブラケットが備えられ、そのブラケットに係止部が備えられる構成としてもよい。
【0070】
(4)上記実施形態では、巻付き防止カバー45が引起し駆動軸34の前方側及び下方側を覆う状態で設けられ、この巻付き防止カバー45に第二部材54が備えられる構成としたが、この構成に代えて、駆動軸34の全周を覆う筒状のケースが備えられ、この筒状のケースに第二部材54が備えられる構成としてもよい。
【0071】
【0072】
(5)上記実施形態では、上部カバー46に上向き凹入部47が形成される構成としたが、このような上向き凹入部47が形成されない構成としてもよい。
【0073】
(6)上記実施形態では、近接部48として、引起し装置13に向けて近づくように凹入する後方向き湾曲面49が形成される構成としたが、この構成に代えて、例えば、
図9に示すように、下部側箇所46Bに、近接部48として、上部側箇所46Aから引起し装置13に向けて近づくように傾斜する傾斜面69が形成される構成としてもよく、また、
図10に示すように、近接部48として、上部側箇所46Aから前方へ膨出する形状で湾曲しながら引起し装置13に向けて近づく前方向き湾曲面70が形成される構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、自脱型コンバインに適用できる。
【符号の説明】
【0075】
2 刈取部
13 引起し装置
34 駆動軸
46 上部カバー
52 位置保持機構
53 第一部材
54 第二部材
55 補強リブ
56 係止部