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特許7527210法面吹付けコンクリートのひび割れ抑制方法、法面吹付けコンクリート構造体およびその構築方法
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  • 特許-法面吹付けコンクリートのひび割れ抑制方法、法面吹付けコンクリート構造体およびその構築方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】法面吹付けコンクリートのひび割れ抑制方法、法面吹付けコンクリート構造体およびその構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
E02D17/20 104B
E02D17/20 104Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021002169
(22)【出願日】2021-01-08
(65)【公開番号】P2022107303
(43)【公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹下 永造
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-119037(JP,A)
【文献】特公昭45-007489(JP,B1)
【文献】特開2009-052392(JP,A)
【文献】特開2000-129688(JP,A)
【文献】特開昭54-027205(JP,A)
【文献】特開平09-228377(JP,A)
【文献】特開平07-082749(JP,A)
【文献】米国特許第04304069(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水抜孔を有する法面吹付けコンクリートにおけるひび割れ抑制方法であって、隣接する水抜孔の間に、繊維ネットを配設し、且つ前記繊維ネットが下記式(1)及び(2)を満たすように配設されることを特徴とする法面吹付けコンクリートのひび割れ抑制方法。
式(1):5D≦L≦10D
式(2):0.3≦n・W/X≦0.6
L=繊維ネットの長さ(mm)
W=繊維ネットの幅(mm)
n=配設する繊維ネットの枚数
D=水抜孔の直径(mm)
X=隣接する水抜孔の間隔(mm)
【請求項2】
法面に吹付けられた吹付けコンクリート構造体であって、複数の水抜孔を有し、該吹付コンクリート内部に、法面に固定された金網類と、隣接する水抜孔の間に配設された繊維ネットを有し、且つ前記繊維ネットが下記式(1)及び(2)を満たすように配設されることを特徴とする法面吹付けコンクリート構造体。
式(1):5D≦L≦10D
式(2):0.3≦n・W/X≦0.6
L=繊維ネットの長さ(mm)
W=繊維ネットの幅(mm)
n=配設する繊維ネットの枚数
D=水抜孔の直径(mm)
X=隣接する水抜孔の間隔(mm)
【請求項3】
吹付けコンクリートで法面を覆う法面吹付けコンクリート構造体の構築方法であって、
法面に金網類を固定し設置する金網類設置工程と、
法面に水抜孔を設置する水抜孔設置工程と、
隣接する水抜孔の間に繊維ネットを金網類に固定して配設する繊維ネット配設工程と、
法面にコンクリートを吹付けるコンクリート吹付工程とを
具備し、且つ前記繊維ネットが下記式(1)及び(2)を満たすように配設されることを特徴とする法面吹付けコンクリート構造体の構築方法。
式(1):5D≦L≦10D
式(2):0.3≦n・W/X≦0.6
L=繊維ネットの長さ(mm)
W=繊維ネットの幅(mm)
n=配設する繊維ネットの枚数
D=水抜孔の直径(mm)
X=隣接する水抜孔の間隔(mm)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面吹付けコンクリートのひび割れ抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
法面吹付け工法は、モルタルやコンクリートで崖面や法面を覆う工法である。風化等により劣化した崖面に対しては、外気や温度変化、浸透水の遮断効果が非常に高く、施工性も優れていることから、採用実績の多い工法の一つである。また、切土のり面やトンネル覆工にも広く用いられている。適用範囲は、浸食~崩落しかけた法面や、表層崩壊・地すべり性崩壊を引き起こす可能性がある法面等がある。その施工は、圧縮空気によってモルタルやコンクリートを高圧ホースまたはパイプを介して所定の位置まで搬送し、その打設および締固めは型枠を用いずに圧縮空気にて吹き付けることでなされる。そのため、表面凹凸は地山の形状によるところが大きく、また、吹付け厚は10cm程度と小さいのが特徴である。さらに、水抜き用の孔(パイプ)が2~4m2程度に1本以上設置する必要があり、はく落防止のために金網張り工も必要となる。また、「ワレン」と呼ばれる水抜き用孔の周辺に入るひび割れを防止する金具を設置する方法も知られている(特許文献1)。さらに、繊維補強モルタルによる吹付け方法も提案されている(例えば特許文献2)。
【0003】
一方、耐アルカリ性ガラス繊維ネットがコンクリートのひび割れ抑制に使用されている(例えば、特許文献3、4)。使用例としては、コンクリート打込み前に鉄筋に結束することで、コンクリート打込み後に一体化を図り、硬化後にコンクリートと耐アルカリ性ガラス繊維の相互作用によりひび割れ抵抗性が向上するものである。この効果により、ひび割れが発生したとしても有害なひび割れ幅となることを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-52392号報
【文献】特開平11-322390号報
【文献】特開2012-132189号報
【文献】特開2012-132190号報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の工法には以下のような課題がある。
(1)はく落防止用金網を設置したとしてもひび割れが発生する点、
(2)ひび割れ防止金具を使用したとしても、水抜孔周辺部以外のひび割れが懸念される点、
(3)吹付け材料に繊維補強モルタルおよびコンクリートを使用することは、コストの増加や施工性の低下につながる点。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決すべく、法面吹付けコンクリート工法について鋭意検討を行った結果、繊維ネットを水抜孔間に配設することで、前記課題が解消できる知見を得て、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕水抜孔を有する法面吹付けコンクリートにおけるひび割れ抑制方法であって、隣接する水抜孔の間に、繊維ネットを配設することを特徴とする法面吹付けコンクリートのひび割れ抑制方法。
〔2〕前記繊維ネットが、下記式(1)及び(2)を満たすように配設される〔1〕の法面吹付けコンクリートのひび割れ抑制方法。
式(1):5D≦L≦10D
式(2):0.3≦n・W/X≦0.6
L=繊維ネットの長さ(mm)
W=繊維ネットの幅(mm)
n=配設する繊維ネットの枚数
D=水抜孔の直径(mm)
X=隣接する水抜孔の間隔(mm)
〔3〕法面に吹付けられた吹付けコンクリート構造体であって、複数の水抜孔を有し、該吹付コンクリート内部に、法面に固定された金網類と、隣接する水抜孔の間に配設された繊維ネットを有する法面吹付けコンクリート構造体。
〔4〕吹付けコンクリートで法面を覆う法面吹付けコンクリート構造体の構築方法であって、法面に金網類を固定し設置する金網類設置工程と、法面に水抜孔を設置する水抜孔設置工程と、隣接する水抜孔の間に繊維ネットを金網類に固定して配設する繊維ネット配設工程と、法面にコンクリートを吹付けるコンクリート吹付工程とを具備する法面吹付けコンクリート構造体の構築方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、水抜孔を有する法面吹付け工法において、ひび割れ抵抗性に優れる法面吹付けコンクリート構造体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】繊維ネットの一部平面図
図2】法面吹付けコンクリート構造体の断面図
図3】水抜孔に対する繊維ネットの配設概念図
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の本発明は法面吹付けコンクリートのひび割れ抑制方法である。法面吹付けコンクリート構造体には、地山等から湧出する雨水等を排出するため、複数の水抜孔が設けられている。本発明は、特に水抜孔を有する法面吹付けコンクリート構造体におけるひび割れ抑制方法である。具体的には、隣接する水抜孔の間に、繊維ネットを配設することを特徴とする。使用する繊維ネットは、その長さが20~80cm、幅が10~50cmであることが好ましい。さらに、繊維ネットが、下記式(1)及び(2)を満たすように配設されることが好ましい。
式(1):5D≦L≦10D
式(2):0.3≦n・W/X≦0.6
L=繊維ネットの長さ(mm)
W=繊維ネットの幅(mm)
n=配設する繊維ネットの枚数
D=水抜孔の直径(mm)
X=隣接する水抜孔の間隔(mm)
【0010】
第2の本発明は法面吹付けコンクリート構造体である。当該法面吹付けコンクリート構造体は、法面に吹付けられた吹付けコンクリート構造体であって、複数の水抜孔を有し、該吹付コンクリート内部に、法面に固定された金網類と、隣接する水抜孔の間に配設された繊維ネットを有する。
【0011】
第3の本発明は、法面吹付けコンクリート構造体の構築方法である。当該法面吹付けコンクリート構造体の構築方法は、法面に金網類を固定し設置する金網類設置工程と、法面に水抜孔を設置する水抜孔設置工程と、隣接する水抜孔の間に繊維ネットを金網類に固定して配設する繊維ネット配設工程と、法面にコンクリートを吹付けるコンクリート吹付工程とを具備する。
【0012】
<法面吹付けコンクリート構造体>
前記発明の法面吹付けコンクリート構造体は、法面に構築されるコンクリート構造体であって、全体として吹付けコンクリートにより構成され、複数の水抜孔を有し、内部には法面に固定された金網類と、隣接する水抜孔の間に配設された繊維ネットを含む。ここで、法面とは、切土や盛土により作られる人工的な斜面のことをいう。なお、本発明においては、崖面等の自然傾斜面も含むものとする。
【0013】
<吹付けコンクリート>
前記吹付コンクリートは、セメント、骨材及び水を配合混練してなり、ホースを介して、空気圧送され、ホース先端の吐出ノズルから法面に吹付けられる。ポンプ圧送性と法面への付着性を有し、所定の強度発現性(例えば、18N/mm2程度)を有するコンクリートであれば、特に限定されるものではない。一般には、ポンプ圧送性および法面への付着性を目的として、減水剤や増粘剤を含有することが好ましい。なお、本発明でコンクリートとは、セメントペースト、モルタル及びコンクリートを総称するものである。
【0014】
吹付けコンクリートに用いるセメントは、特に制限されず、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、およびエコセメント等から選ばれる1種以上が挙げられる。単位セメント量は、好ましくは190~310kg/m3、より好ましくは210~250kg/m3である。
【0015】
吹付けコンクリートに用いる細骨材は、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、硅砂、スラグ細骨材、および軽量細骨材等から選ばれる1種以上が挙げられる。また、粗骨材は川砂利、山砂利、砕石、スラグ粗骨材、および軽量粗骨材等から選ばれる1種以上が挙げられる。さらに、前記粗骨材および細骨材は、天然骨材のほか、人工骨材や再生骨材を用いることができる。また、前記細骨材および粗骨材の単位量は、いずれの骨材も、良好なワーカビリティの観点から、好ましくは500~1100kg/m3、より好ましくは600~1000kg/m3である。
【0016】
吹付けコンクリートに用いる水は、上水道水、下水処理水、および生コンの上澄み水等の、コンクリートの強度発現性や流動性等に影響を与えないものであれば用いることができる。また、単位水量は、良好なワーカビリティの観点から、好ましくは100~200kg/m3、より好ましくは120~180kg/m3である。
【0017】
吹付けコンクリートには、上記以外に、その特長が損なわれない範囲で各種添加剤(材)が併用されても良い。この種の添加剤としては、例えば、AE剤、凝結遅延剤、強度促進材、セメント用ポリマー、繊維、膨張材、発泡剤、起泡剤、防水剤、防錆剤、収縮低減剤、保水剤、顔料、撥水剤、白華防止剤、消泡剤等が挙げられる。
【0018】
本発明に使用する吹付装置は特に限定されるものではなく、一般に使用されている吹付装置を使用できる。具体的には、例えば、撹拌装置を備えたコンクリートタンク、圧縮空気を供給するコンプレッサー、コンクリート及び圧縮空気用のホース、ホース先端に取り付けられる吐出ノズル等から構成される吹付装置である。
【0019】
<水抜孔>
法面吹付けコンクリート構造体には、地山等から湧出する雨水等を排出するため、複数の水抜孔が設けられている。通常、2~4m2程度に1本以上設置される。水抜孔としては、塩化ビニル、酢酸ビニル等のパイプが使用される。パイプの径は30~80mmが好ましい。
【0020】
<金網類>
法面吹付けコンクリート構造体には、はく落防止およびひび割れを分散させるため、金網類が使用されている。ここで金網類とは、金網、鉄筋、鉄骨等をいう。使用される金網類としては、例えばラス金網、ファイバーメッシュ溶接鋼等が挙げられる。金網類は、アンカーピンやアンカーバーで法面に固定される。
【0021】
<繊維ネット>
本発明で用いる繊維ネットは、各種繊維の繊維束が網状に織り上げられたものであり、通常、繊維束は樹脂によって表面が被覆されている。使用する繊維としては、例えばアラミド繊維などの合成繊維、炭素繊維、ガラス繊維等が挙げられる。好ましくは、弾性係数が高い繊維を用いて構成される。さらに、セメントとの親和性やコストを鑑みると、ガラス繊維製の糸を用いて構成された繊維ネットが好ましく、中でも、耐アルカリ性のガラス繊維(例えば、酸化ジルコニウム(ZrO2)を14質量%以上含有するガラス繊維)使用した耐アルカリ性ガラス繊維ネットが好ましい。また、樹脂の種類は特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂等が挙げられる。本発明においては、様々な法面の形状に追随可能性を確保する観点から、柔軟性を有する樹脂が好ましい。
【0022】
前記繊維ネットは、好ましくは、長さが20~80cm、幅が10~50cmである。繊維ネットは、水抜孔の中心を結ぶ線上に、前記繊維ネットの長さ方向が垂直となるよう配設されることが好ましい。繊維ネット幅が短すぎると、それだけ数多くの繊維ネットを用いないと、ひび割れ抑制効果が少ない。数多くの枚数のネットを使用しなければならないと、それだけ作業性が低下する。逆に、前記ネット幅が長すぎると、コンクリート打設時の充填性が低下する。また、繊維ネットの長さが短すぎるひび割れ抑制効果が少ない。逆に長すぎると、作業性が低下し、経済性も悪くなる。
【0023】
本発明で用いられる繊維ネットは、好ましくは、第1の糸と該第1の糸より長さが長い第2の糸とが用いられてネット状に構成されたものである。そして、(前記第1の糸の引張剛性)/(前記第2の糸の引張剛性)=1.5~30であった。前記ネットは、少なくとも二つの方向に存する糸(単に、糸と称しているが、これは、繊維そのものであったり、複数本の繊維が撚られたものであったり、或いは複数本の繊維が撚られたものが更に撚られたものであったり、或いは紐や幅狭なシート状のものであったりする。)が、交差した網状のものである。この交差点(交点)によって囲まれる形状(開口部形状:窓部の形状)は、例えば正方形、菱形、或いは長方形である。勿論、前記の如き四角形のみならず、その他の多角形であっても良いが、四角形以外の形状のものとなるネットを作製しようとすると、コストが高くなることから、好ましくは開口部形状が四角形(正方形または長方形。特に、長方形)のネットである。前記ネットにおける二つの方向に存する糸の第1の方向に存する糸(第1の糸)と第2の方向に存する糸(第2の糸:第1の糸より長さが短い第2の糸)とは、好ましくは、次の関係を持つ。二つの方向とは、例えば縦方向と横方向とである。ネットを作製しようとした場合、一般的には、長手方向の糸が縦糸であり、短手方向の糸が横糸である。(第1の糸(例えば、縦方向の糸:縦糸)の引張剛性)/(第2の糸(例えば、横方向の糸:横糸)の引張剛性)=1.5~30。より好ましくは、該値が1.8以上である。更に好ましくは、該値が5以上であった。より好ましくは、該値が25以下であった。更に好ましくは、該値が20以下であった。尚、糸の引張剛性は(糸の弾性係数)×(糸の断面積)で求められる。数本の繊維が撚られて糸が出来ている場合、断面を取った場合、該断面には繊維間に隙間が有ることから、本来ならば、断面積には斯かる隙間を除外しなければならないが、(縦糸の引張剛性)/(横糸の引張剛性)にあっては、糸の断面積において前記隙間を無視しても殆ど差し支えが無く、従って糸の断面積は断面における外形によって決まる面積で求めた値である。ネットにおける(第1の糸の引張剛性)/(第2の糸の引張剛性)が上記値となるように構成させる為には、引張剛性比が上記値となるような糸を各々選定することでも達成できるが、同等な糸を用いる場合にあっては、糸の幅や糸の本数を考慮することによって達成できる。例えば、実質上同じ糸を用いる場合には、第1の糸を複数本用いることで達成できる。すなわち、第2の糸1本に対して第1の糸をN(Nは2以上の整数)本の割合で用いてネットに編むことで達成できる。
【0024】
前記繊維ネットは、吹付けコンクリートの吹付性状およびひび割れ抵抗性の観点から、下記式(1)及び(2)を満たすように配設されることが好ましい。
式(1):5D≦L≦10D
式(2):0.3≦n・W/X≦0.6
L=繊維ネットの長さ(mm)
W=繊維ネットの幅(mm)
n=配設する繊維ネットの枚数
D=水抜孔の直径(mm)
X=隣接する水抜孔の間隔(mm)
ここで、式(2)のn・W/Xは、繊維ネットの線密度を表すものである。
式(1)の繊維ネットの長さが下限未満の場合、ひび割れ抵抗性が低下し、逆に上限を超えた場合は、吹付性状が悪くなる虞がある。また、式(2)の繊維ネットの線密度が下限未満の場合、吹付性状が悪化し、逆に上限を超えた場合は、ひび割れ抵抗性が低下する虞がある。
【0025】
<法面吹付けコンクリート構造体の構築方法>
以下、法面吹付けコンクリート構造体の構築方法について説明する(図を参照)。
まず、法面2に金網類5が設置される(金網類設置工程)。金網類5は、アンカーバー7やアンカーピン8で法面2に固定される。
次に、法面2に水抜孔6が設置される(水抜孔設置工程)。水抜孔としては、塩化ビニル製パイプ等が用いられる。雨水等の湧水が法面に沿って排出されるので、パイプは法面に沿って設置される。水抜孔6はコンクリートを吹付けた際に吹付コンクリート表面から、0~1cm程度突出するように設置される。水抜孔6は前記金網類5に番線などで固定することにより設置される。水抜孔としては、2~4m2程度に1本以上設置される。
次に、繊維ネット1が配設される(繊維ネット配設工程)。繊維ネット1は、隣接する水抜孔6の間に、1枚ないし複数枚が配設される。具体的には、隣接する水抜孔6を結ぶ直線上に繊維ネット1のほぼ中心がくるように、また、該直線に対して繊維ネット1の長さ方向が垂直となるよう配設されることが好ましい。さらに、繊維ネット1の引張剛性の強い方向軸が、該直線に対して垂直となるように配設されることが望ましい。
最後に、法面2に吹付けコンクリートが吹付けられる(コンクリート吹付工程)。吹付けコンクリート4は金網類5および繊維ネット1が完全に覆われるように吹付けられる。吹付けコンクリート4の厚さは、10~20cmが好ましい。
【0026】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明が説明される。但し、この実施例によって本発明は限定されるものではない。
【0027】
吹付けモルタルによる試験を実施し、その効果を数値的に評価した。
1m×2mの法面に対し、5か所の水抜孔とはく落防止用の金網を設置し、吹付けモルタルにて施工した。吹付けモルタルの厚さは10cmとした。吹付けモルタルは、水/セメント比=0.5、砂/セメント比=4の配合とした。セメントは普通ポルトランドセメントを使用した。水抜孔は直径50mmの塩化ビニル製パイプとした。金網はラス金網とし、アンカーバー(主)とアンカーピン(補助)で固定した。繊維ネットは耐アルカリ性ガラス繊維ネットを使用し、水抜孔間の配設枚数は2枚を基本とした。図3に試験状況を表す繊維ネットの配設概念図を示す。
試験水準および試験結果を表1に示す。
ここで、水抜孔間の線密度とは、繊維ネットの幅の合計(繊維ネットの配設枚数(n)×1枚の繊維ネットの幅(W))/隣接する水抜孔の間隔(X)である。
吹付け性状については、吹付状況を目視観察し、モルタルおよびコンクリートが法面に充填され、かつ金網や水抜孔と一体となったものを○、モルタルおよびコンクリートが法面に未充填となったり、金網や水抜孔と一体とならなかったものを×とした。ひび割れ抵抗性については、1か月後のコンクリート表面を目視観察し、ひび割れがなかったものを○、補修可能かつ劣化抵抗性に対する許容ひび割れ幅0.3mm以下となったものを△、明瞭なひび割れが認められかつ0.3mmより大きいひび割れ幅となったものを×とした。
繊維ネットの長さ/水抜孔の直径が5~10の場合、また、水抜孔間の線密度が0.3~0.6の場合に、吹付性状ならびにひび割れ抵抗性が良好であった。
【0028】
【表1】
【符号の説明】
【0029】
1:繊維ネット
2:法面
3:法面吹付けコンクリート構造体
4:吹付コンクリート
5:金網類
6:水抜孔
7:アンカーバー
8:アンカーピン
図1
図2
図3