(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】車種判別装置、車種判別システム、車種判別方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/015 20060101AFI20240726BHJP
G08G 1/04 20060101ALI20240726BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240726BHJP
【FI】
G08G1/015 C
G08G1/04 C
G06T7/00 300F
G06T7/00 650B
(21)【出願番号】P 2021028093
(22)【出願日】2021-02-25
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】小島 洋平
(72)【発明者】
【氏名】尾張 伸行
(72)【発明者】
【氏名】中山 博之
(72)【発明者】
【氏名】山口 泰弘
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-016976(JP,A)
【文献】特開2003-217084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/015
G08G 1/04
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車線の上方から下方に向けて設置されたカメラから、当該車線を走行する車両の運転席と荷台との間を含む上面を撮影した画像を取得する画像取得部と、
前記画像の特徴に基づいて、当該車両が連結車両であるか単独車両であるかを判定する連結車両判定部と、
を備え
、
前記画像の特徴は、前記画像から検出されるエッジに基づく特徴であり、
前記画像の特徴は、前記画像から検出されるエッジの総数であり、
前記連結車両判定部は、前記画像における前記エッジの総数が所定値以上である場合に、前記車両が連結車両であると判定する、
車種判別装置。
【請求項2】
車線の上方から下方に向けて設置されたカメラから、当該車線を走行する車両の運転席と荷台との間を含む上面を撮影した画像を取得する画像取得部と、
前記画像の特徴に基づいて、当該車両が連結車両であるか単独車両であるかを判定する連結車両判定部と、
を備え、
前記画像の特徴は、前記画像から検出されるエッジに基づく特徴であり、
前記画像の特徴は、前記画像
の当該車線方向において検出されるエッジの個数の分布であり、
前記連結車両判定部は、前記エッジの個数の分布
から、エッジの個数が所定値以上である領域の大きさに基づいて、前記車両が連結車両であると判定する、
車種判別装置。
【請求項3】
前記連結車両判定部は、前記画像に映る車両の車幅を計測し、当該計測した車幅が所定値以上である場合に、前記車両が連結車両であるか単独車両であるかの判定を行う、
請求項1
又は請求項
2に記載の車種判別装置。
【請求項4】
前記連結車両判定部は、前記車両の運転席の進行方向先端が画像の端に到達した時点の画像を、前記車両が連結車両であるか単独車両であるかの判定を行うための画像として抽出する、
請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の車種判別装置。
【請求項5】
請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の車種判別装置と、
前記カメラと、
を備える車種判別システム。
【請求項6】
前記カメラに対し、車線方向の同じ位置に配置された照明装置をさらに備える、
請求項
5に記載の車種判別システム。
【請求項7】
車線の上方から下方に向けて設置されたカメラから、当該車線を走行する車両の運転席と荷台との間を含む上面を撮影した画像を取得するステップと、
前記画像の特徴に基づいて、当該車両が連結車両であるか単独車両であるかを判定するステップと、
を有
し、
前記画像の特徴は、前記画像から検出されるエッジに基づく特徴であり、
前記画像の特徴は、前記画像から検出されるエッジの総数であり、
前記判定するステップにおいて、前記画像における前記エッジの総数が所定値以上である場合に、前記車両が連結車両であると判定する車種判別方法。
【請求項8】
コンピュータに、
車線の上方から下方に向けて設置されたカメラから、当該車線を走行する車両の運転席と荷台との間を含む上面を撮影した画像を取得するステップと、
前記画像の特徴に基づいて、当該車両が連結車両であるか単独車両であるかを判定するステップと、
を実行させ
、
前記画像の特徴は、前記画像から検出されるエッジに基づく特徴であり、
前記画像の特徴は、前記画像から検出されるエッジの総数であり、
前記判定するステップにおいて、前記画像における前記エッジの総数が所定値以上である場合に、前記車両が連結車両であると判定するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車種判別装置、車種判別システム、車種判別方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
有料道路での課金処理の手段として、複数車線からなる本線を自由に走行している車両に対し、無線通信で自動的に料金を収受するマルチレーンフリーフロー型の電子式料金収受システム(Electronic Toll Collection System;ETC(登録商標)。以下、「ETCシステム」とも記載する。)がある。
【0003】
一般的な有料道路の料金所では、アイランドによって一車線ごとに分離された走行レーン(セパレートレーン)が設けられている。このような料金所では、走行レーンを走行する車両に対し、上記アイランドに設けられたセンサ類(光電センサやレーザスキャナなど)を介して車両側面のデータを取得し、牽引車と被牽引車との境界を検知することで、走行車両が「連結車両」か「単独車両」か、を判別している。
【0004】
なお、上記の技術に関連する技術として、特許文献1には、カメラ画像から、車両の運転席等を含む所定の形状を有するトラクタ部(前方領域)と、車両の後段(荷台)のトレーラ部(後方領域)と、を識別し、共通形状であることが多い大型車両の前方領域の代わりに、特徴部分である後方領域を車種判別に用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マルチレーンフリーフロー型のETCシステムにおいては、複数の車線からなる本線を自由に走行している車両から料金収受を行うシステムである。マルチレーンフリーフロー型の場合、上記のようなアイランドがないため車両の側面データを取得することができない。そのため、従来の料金所での構成(セパレートレーン)とは別の手段で連結車両か否かを判別する必要がある。
【0007】
本開示の目的は、マルチレーンフリーフロー型のシステムにおいて、走行車両が連結車両か単独車両かを判別することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様によれば、車種判別装置は、車線の上方から下方に向けて設置されたカメラから、当該車線を走行する車両の運転席と荷台との間を含む上面を撮影した画像を取得する画像取得部と、前記画像の特徴に基づいて、当該車両が連結車両であるか単独車両であるかを判定する連結車両判定部と、を備える。
【0009】
本開示の一態様によれば、車種判別方法は、車線の上方から下方に向けて設置されたカメラから、当該車線を走行する車両の運転席と荷台との間を含む上面を撮影した画像を取得するステップと、前記画像の特徴に基づいて、当該車両が連結車両であるか単独車両であるかを判定するステップと、を有する。
【0010】
本開示の一態様によれば、プログラムは、コンピュータに、車線の上方から下方に向けて設置されたカメラから、当該車線を走行する車両の運転席と荷台との間を含む上面を撮影した画像を取得するステップと、前記画像の特徴に基づいて、当該車両が連結車両であるか単独車両であるかを判定するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
上述の各態様によれば、マルチレーンフリーフロー型のシステムにおいて、走行車両が連結車両か単独車両かを判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係る車種判別システムの全体構成を示す図である。
【
図2】第1の実施形態に係る車種判別システムの全体構成を示す図である。
【
図3】第1の実施形態に係る車種判別装置の機能構成を示す図である。
【
図4】第1の実施形態に係る車種判別装置の処理フローを示す図である。
【
図5】第1の実施形態に係る車種判別装置の処理の説明図である。
【
図6】第1の実施形態に係る車種判別装置の処理の説明図である。
【
図7】第2の実施形態に係る車種判別システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態に係る車種判別システムについて、
図1~
図6を参照しながら説明する。
【0014】
(車種判別システムの全体構成)
図1、
図2は、第1の実施形態に係る車種判別システムの全体構成を示す図である。
図1、
図2に示す車種判別システム1は、ETCシステムにおいて車種区分を特定する目的で用いられる。本実施形態に係る有料道路の料金体系では、料金収受の対象とする走行車両が「単独車両」であるか、牽引車と被牽引車との組み合わせからなる「連結車両」であるかによって収受すべき料金が変わるため、車種判別システム1は、走行車両が「単独車両」であるか「連結車両」であるかを判別可能としている。
【0015】
車線Lは、有料道路の複数車線からなる本線(マルチレーン)を構成する一つの車線である。
【0016】
なお、
図1は、「単独車両」である(すなわち、牽引車、被牽引車の組み合わせではない)貨物車両A1が車線Lを走行している例を示している。また、
図2は、牽引車と被牽引車との組み合わせからなる「連結車両」である貨物車両A2が車線Lを走行している例を示している。なお、各図において、±X方向が車線方向であり、±Y方向が車線幅方向である。また、車両は、車線Lを+X方向に走行する。また、以下の説明では、貨物車両A1、A2を総称して、単に「車両A」とも表記する。
【0017】
図1、
図2に示すように、車種判別システム1は、車種判別装置10と、カメラ11とを備えている。
【0018】
車種判別装置10は、車線Lを走行する車両Aの車種区分の判別処理を行う装置である。車種判別装置10の具体的な構成および機能については後述する。
【0019】
カメラ11は、車線Lを車線幅方向(±Y方向)にまたがるガントリ(
図1、
図2には不図示)を介して、車線Lの上方(+Z方向側)から下方(-Z方向側)を撮影可能に設置され、所定の撮影範囲Rを撮影可能とする。
図1、
図2に示すように、撮影範囲Rは、貨物車両A1、A2に対し、キャビンC(運転席車両)の上面全体と、当該キャビンCと荷台Tとの間(境界領域M)の上面全体が含まれるように調整されている。
【0020】
(車種判別装置の機能構成)
図3は、第1の実施形態に係る車種判別装置の機能構成を示す図である。
図3に示すように、車種判別装置10は、CPU100と、通信インタフェース101と、記録媒体102とを有している。
【0021】
CPU100は、車種判別装置10動作全体を司るプロセッサである。CPU100は、予め用意されたプログラムに従って動作することで種々の機能を発揮する。CPU100の機能については後述する。
【0022】
通信インタフェース101は、カメラ11(
図1、
図2)との接続インタフェースである。
【0023】
記録媒体102は、HDDやSSDなどのいわゆる補助記憶装置である。記録媒体102には、例えば、CPU100を動作させるプログラムや、後述する連結車両判定部1001の判定処理に必要な特徴量などが記録される。
【0024】
本実施形態に係るCPU100は、プログラムに従って動作することで、画像取得部1000、連結車両判定部1001及び車種判別部1002としての機能を発揮する。
【0025】
画像取得部1000は、カメラ11から出力される画像(動画データを構成する静止画像)を時々刻々と受信して取得する。受信した画像は、車種判別装置10に設けられたメモリ(
図3には不図示)等に蓄えられる。
【0026】
連結車両判定部1001は、カメラ11および画像取得部を通じて取得された画像の特徴に基づいて、当該画像に写る車両が「連結車両」であるか「単独車両」であるかを判定する。連結車両判定部1001の具体的な処理内容については後述する。
【0027】
車種判別部1002は、連結車両判定部1001による判定結果に基づいて、走行車両の車種区分を特定(判別)する。
【0028】
(車種判別装置の処理フロー)
図4は、第1の実施形態に係る車種判別装置の処理フローを示す図である。
【0029】
図4に示す処理フローは、車種判別装置10によって繰り返し実行される。
具体的には、車種判別装置10の画像取得部1000は、カメラ11から撮影される画像を取得する(ステップS0)。
【0030】
次に、車種判別装置10の車種判別部1002は、取得された画像に対し所定の画像認識処理を行い、車両が写っているか否かを判定する(ステップS1)。ここで、例えば、車種判別部1002は、車両が写っていない状態の画像(車線Lの路面のみが写っている画像)を基準画像として予め保持しておき、ステップS1で新たに取得された画像と基準画像との差分を演算することで画像に車両が写っているか否かを判定する。ステップS1で取得された画像に車両が写っていない場合(ステップS1;NO)、車種判別装置10は、ステップS0に戻り、新たな画像を取得する。
【0031】
取得された画像に車両が写っている場合(ステップS1;YES)、車種判別部1002は、画像の情報から、その画像に写っている車両の車幅計測を行う(ステップS2)。
【0032】
車種判別部1002は、ステップS2の車幅計測結果から、貨物車か否かを判定する(ステップS3)。ここで、車種判別部1002は、貨物車の車体構造(車幅)の規格に応じた判定閾値を有しており、車幅の計測結果が当該判定閾値を上回っているかどうかで、貨物車であるか否かの判定を行う。
【0033】
画像に写っている車両が貨物車ではない場合(ステップS3;NO)、車種判別部1002は、通常の車種判別処理を行い、いずれの車種区分に属するかを判別する(ステップS7)。
【0034】
画像に写っている車両が貨物車である場合(ステップS3;YES)、連結車両判定部1001は、当該車両が「連結車両」であるか「単独車両」であるかを判定するための判定用画像を取得する(ステップS4)。
続いて、連結車両判定部1001は、ステップS4で取得された判定用画像に対し、エッジ検出処理を行う(ステップS5)。
更に、連結車両判定部1001は、ステップS5でのエッジ検出処理結果の特徴に基づいて、画像に写る車両が「単独車両」か「連結車両」かの判定を行う(ステップS6)。
以上のステップS4からステップS6までの処理の詳細については後述する。
【0035】
車種判別部1002は、連結車両判定部1001によるステップS5の判定結果に基づいて、いずれの車種区分に属するかを判別する(ステップS7)。
【0036】
(車種判別装置の処理の説明)
図5、
図6は、第1の実施形態に係る車種判別装置の処理の説明図である。
以下、
図5、
図6を参照しながら、
図4の処理フローにおけるステップS4~ステップS6の処理について詳しく説明する。
【0037】
図5、
図6は、ステップS4で取得される判定用画像Pの例であって、
図1、
図2に示すカメラ11の撮影範囲Rが撮影された画像データである。
図5は、判定用画像Pに、「単独車両」である貨物車両A1が写されている例を、
図6は、判定用画像Pに、「連結車両」である貨物車両A2が写されている例を示している。
【0038】
図4のステップS4において、連結車両判定部1001は、カメラ11から、撮影範囲R(
図1、
図2)が撮影された動画データ(画像)を時々刻々と取得しながら画像認識処理を行い、キャビンCの進行方向先端が画像の右端(+X方向側の端)に到達した時点の画像を抽出する。そして、連結車両判定部1001は、このようにして抽出した画像を判定用画像Pとして扱う。
【0039】
図5、
図6のいずれの場合も、判定用画像Pには貨物車両A1、A2それぞれのキャビンCと荷台Tとの間の領域である境界領域Mが含まれている。このように、貨物車両が「連結車両」、「単独車両」のいずれであったとしても、貨物車両におけるキャビンCの形状やサイズは、車両ごとの差が比較的小さい。この特徴を利用して、映像上におけるキャビンCの検出位置を基準に、カメラ11の撮影範囲R(
図1、
図2)を適切に調整することで、車線Lを走行するあらゆる貨物車A1、A2に対しても、キャビンCと荷台Tとの間の境界領域Mを含むように撮影することができる。
なお、他の実施形態においては、画像上のキャビンCの位置を基準とすることに限定されることはなく、例えば、境界領域Mそのもの共通する特徴(形状やサイズ)から当該境界領域Mの画像上の位置を検出し、判定用画像Pを抽出するようにしてもよい。
【0040】
次に、
図4のステップS5において、連結車両判定部1001は、判定用画像Pに対しエッジ検出処理を施し、当該判定用画像Pの車線方向に検出されるエッジの総数を計測する。なお、画像データにおける「エッジ」とは、画像データのうち明るさや色合いが急峻に変化している箇所のことであり、画素単位またはラベル単位で扱われ得る。ここで、ラベルとは、エッジとして検出された画素が連なったひとかたまりの単位のことを示す。本実施形態においては「エッジ」は画素単位で扱われるものとし、したがって、「エッジの個数」とは判定用画像Pのうちエッジとして検出された画素の個数であり、「エッジの総数」とは判定用画像Pのうちエッジとして検出された画素全ての個数である。
図5、
図6に示すグラフQは、判定用画像Pの車線方向(±X方向)における検出されたエッジの個数の分布図(エッジの個数を車線方向にプロジェクション(投影)したグラフ)である。
【0041】
ここで、
図5と
図6との間でグラフQを対比すると、
図6の方が、
図5に比べて検出されたエッジの総数が多いことが読み取られる。これは、
図6の貨物車両A2(連結車両)は、
図5の貨物車両A1(単独車両)に比べて、境界領域Mの面積が大きく、かつ、複雑な構造をしていることに由来する。つまり、単独車両は、キャビンCと荷台Tとが単一の車体で構成されていることから、境界領域Mの面積が小さく比較的シンプルな構成であるのに対し、連結車両は、別個の車体からなるキャビンCと荷台Tとが連結された構造であるため、境界領域Mの面積が相対的に大きく複雑な構成となる。具体的には、連結車両は、カーブする際、キャビンCに対し荷台Tが連結部分で折れ曲がる構造であるため、キャビンCと荷台Tとが干渉しないように構造的に間隔をあける必要がある。また、連結車両の境界領域Mには、一般に、荷台Tの連結/切り離し作業を行うための踊り場や機材、ケーブル類が備え付けられている。
【0042】
図4のステップS6において、連結車両判定部1001は、判定用画像Pから検出されたエッジの総数(グラフQの総面積)が所定の判定閾値以上となった場合に車両Aを「連結車両」と判定し、当該エッジの総数が所定の判定閾値を下回った場合に、車両Aを「単独車両」と判定する。
【0043】
なお、ステップS6の判定処理は、上記に限定されることはなく、実施形態に応じてあらゆる態様に変形可能である。例えば、エッジを画素単位で扱う場合、連結車両判定部1001は、各判定用画像Pの車線方向におけるエッジの個数の分布(グラフQ)から、
図5、
図6に示すような、エッジの個数が所定の判定閾値を上回る領域mを抽出し、この領域mの大きさに基づいて「単独車両」か「連結車両」か、を判定するものであってもよい。
【0044】
なお、他の実施形態においてエッジをラベル単位で扱う場合は、領域mを抽出するためのパラメータとして「エッジの個数」を用いるのではなく、代わりに「エッジの面積」(ラベルの画素数)を用いるのが好ましい。また、エッジをラベル単位で扱う場合において、領域mを抽出するためのパラメータとして「エッジの個数」を用いる場合は、予め面積の小さなエッジをノイズとして除去しておくとよい。
【0045】
また、他の実施形態においては、多数の貨物車A1、A2それぞれについてのグラフQを用意して機械学習を行う態様であってもよい。機械学習によって得られた学習済みモデルは、新たに入力されたグラフQに対し、貨物車が「連結車両」か「単独車両」か、を適切に判別することができる。
また、上記実施形態ではグラフQを入力とする機械学習モデルを説明したが、更に他の実施形態においてはこの態様に限定されない。他の実施形態においては、例えば、エッジ検出画像を入力とする機械学習モデルであってもよいし、原画像を入力とする機械学習モデルであってもよい。
【0046】
(作用、効果)
以上のとおり、第1の実施形態に係る車種判別装置10は、車線Lの上方から下方に向けて設置されたカメラ11から、当該車線Lを走行する車両Aの運転席(キャビンC)と荷台Tとの間を含む上面を撮影した判定用画像Pを取得する画像取得部1000と、判定用画像Pの特徴に基づいて、車両Aが「連結車両」であるか「単独車両」であるかを判定する連結車両判定部1001とを備える。
【0047】
このような構成によれば、車両を上方から撮影するカメラ11の映像(判定用画像P)に基づいて走行車両が「連結車両」であるか「単独車両」であるかを判定することができるので、マルチレーンフリーフロー型のシステムにおいて、走行車両が連結車両か単独車両かを判別することができる。
【0048】
また、第1の実施形態に係る車種判別装置10は、判定用画像Pから検出されるエッジの総数を画像の特徴として抽出し、判定用画像Pにおけるエッジの総数が所定値以上である場合に、車両Aが連結車両であると判定する。
このようにすることで、「連結車両」と「単独車両」との境界領域Mにおける構造上の相違点を、判定用画像Pの画像上の特徴から精度よく抽出することができる。
また、上述したように、他の実施形態に係る車種判別装置10は、判定用画像Pから検出されるエッジの個数の車線方向における分布を画像の特徴として抽出してもよい。この場合、車種判別装置10は、判定用画像Pにおけるエッジの個数の分布が所定の条件を満たした場合に(例えば、エッジの個数が所定値を上回る領域m(
図5、
図6)の大きさが判定閾値以上であった場合に)、車両Aが連結車両であると判定する。
【0049】
また、第1の実施形態に係る車種判別装置10(連結車両判定部1001)は、カメラ11の映像に映る車両の車幅を計測し、当該計測した車幅が所定値以上である場合に、当該車両が「連結車両」であるか「単独車両」であるかの判定を行う。
このようにすることで、貨物車であるか否かを車体の車幅に基づいて適切に判別し、貨物車であると特定できた場合のみ、「連結車両」であるか「単独車両」であるかの判定を行う。これにより、貨物車ではない車両(乗用車等)に対しては通常通りの車種判別処理がなされるので、不要な処理が発生することを抑制し、コンピュータの負荷を軽減することができる。
【0050】
なお、第1の実施形態の上記処理フロー(
図4)では、映像に映る車両の車幅が所定値以上である場合に当該車両が“貨物車”であると判断し(ステップS3)、“貨物車”として判定された車両に対し、その車両が「連結車両」であるか「単独車両」であるかの判定処理を行う(ステップS4~S6)ものとして説明した。しかし、実際には、車幅が所定値以上であるか否かの判定によってその車両が貨物車か否かを正確に判定することは難しい。具体的には、車幅が同程度に大きいが貨物車には該当しない“バス”が存在する。
しかしながら、通常のバスの上面は起伏が少なく色も一様である。それ故、判定用画像Pにバスが撮影されたとしても、その判定用画像Pからはエッジはほとんど検出されない。そうすると、連結車両判定部1001は、判定用画像Pから検出されたエッジの総数が少ないことにより、当該バスである車両に対し「単独車両」と判定する。つまり、(車幅のみを用いた判定のために)“貨物車”として判定された車両が実際はバスであったとしても、連結車両判定部1001は、当該バスである車両に対しても正しい判定を行うことができるので、何ら問題は生じない。
【0051】
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態に係る車種判別システムについて、
図7を参照しながら説明する。
【0052】
図7は、第2の実施形態に係る車種判別システムの構成を示す図である。
図7に示すように、本実施形態に係る車種判別システム1は、第1の実施形態の構成(
図1、
図2)に加え、照明装置12を備える点で異なる。
【0053】
照明装置12は、車線Lの上方から下方に向けて照明光を照射するように配置された照明装置である。
図7に示すように、照明装置12は、カメラ11と同じガントリGに取り付けられ、当該カメラ11に対し、車線方向(±X方向)の同じ位置に配置される。
【0054】
照明装置12は、周囲環境(昼夜の時間帯、天候)によらず、カメラ11による判定用画像Pの撮影を可能とすべく設けられるものである。ここで、貨物車A1、A2を側面から見たとき、その境界領域MはキャビンCと荷台Tとの壁面に挟まれた凹形状に構成されている(
図1、
図2参照)。このような凹形状の構造において、仮に、照明装置12が、カメラ11とは車線方向(±X方向)に異なる位置に配置されていた場合、照明装置12からの光がキャビンC、荷台Tの壁面によって遮蔽されて境界領域Mの下端(-Z方向の端)まで光が届かず、鮮明に撮影することができなくなってしまう。そこで、照明装置12は、カメラ11による判定用画像Pの撮影時において照明光が境界領域Mに入り込むようにすべく、カメラ11と車線方向(±X方向)の同じ位置に配置することが好ましい。
【0055】
また、照明装置12は、
図7に示すように、カメラ11に対し、車線幅方向(±Y方向)に異なる位置に配置することが好ましい。このようにすることで、照明装置12から境界領域M内に投光される光がカメラの撮影方向(-Z方向)とは異なる方向から入射されることとなり、境界領域M内の立体構造の陰影が強調される。したがって、境界領域Mの特徴を、カメラ11で撮像される画像の明暗としてより鮮明に表現することができる。
なお、照明装置12を、カメラ11を基準に、車線幅方向に対称に複数配置すると、一方の照明装置12の光によって強調された陰影を他方の照明装置12の光が消してしまうことになる。したがって、照明装置12は、
図7に示すように、カメラ11の一方側のみに配置するのが好ましい。
【0056】
上述の実施形態においては、車種判別装置10の各種処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって上記各種処理が行われる。また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【0057】
上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。更に、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0058】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0059】
<付記>
各実施形態に記載の車種判別装置10、車種判別システム1、車種判別方法およびプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0060】
(1)第1の態様において、車種判別装置10は、車線Lの上方から下方に向けて設置されたカメラ11から、車線Lを走行する車両Aの運転席(キャビンC)と荷台Tとの間(境界領域M)を含む上面を撮影した画像(判定用画像P)を取得する画像取得部1000と、画像の特徴に基づいて、当該車両Aが連結車両であるか単独車両であるかを判定する連結車両判定部1001と、を備える。
【0061】
(2)第2の態様において、前記画像の特徴は、前記画像から検出されるエッジに基づく特徴である。
【0062】
(3)第3の態様において、前記画像の特徴は、前記画像から検出されるエッジの総数であり、前記連結車両判定部は、前記画像における前記エッジの総数が所定値以上である場合に、前記車両が連結車両であると判定する。
【0063】
(4)第4の態様において、前記画像の特徴は、前記画像から検出されるエッジの個数の分布であり、前記連結車両判定部は、前記エッジの個数の分布が予め定められた条件を満たした場合に、前記車両が連結車両であると判定する。
【0064】
(5)第5の態様において、上述の連結車両判定部1001は、画像に映る車両Aの車幅を計測し、当該計測した車幅が所定値以上である場合に、車両Aが連結車両であるか単独車両であるかの判定を行う。
【0065】
(6)第6の態様において、連結車両判定部1001は、車両Aのキャビン(運転席)の進行方向先端が画像の端に到達した時点の画像を、車両Aが連結車両であるか単独車両であるかの判定を行うための画像(判定用画像P)として抽出する。
【0066】
(7)第7の態様において、車種判別システム1は、上述の車種判別装置10と、カメラ11と、を備える。
【0067】
(8)第8の態様において、上述の車種判別システム1は、カメラ11に対し、車線方向の同じ位置に配置された照明装置12をさらに備える。
【0068】
(9)第9の態様において、車種判別方法は、車線Lの上方から下方に向けて設置されたカメラ11から、当該車線Lを走行する車両Aの運転席(キャビンC)と荷台Tとの間(境界領域M)を含む上面を撮影した画像(判定用画像P)を取得するステップと、画像の特徴に基づいて、当該車両Aが連結車両であるか単独車両であるかを判定するステップと、を有する。
【0069】
(10)第10の態様において、プログラムは、コンピュータに、車線Lの上方から下方に向けて設置されたカメラ11から、当該車線Lを走行する車両Aの運転席(キャビンC)と荷台Tとの間(境界領域M)を含む上面を撮影した画像(判定用画像P)を取得するステップと、画像の特徴に基づいて、当該車両Aが連結車両であるか単独車両であるかを判定するステップと、を実行させる。
【符号の説明】
【0070】
1 車種判別システム
10 車種判別装置
100 CPU
1000 画像取得部
1001 連結車両判定部
1002 車種判別部
101 通信インタフェース
102 記録媒体
11 カメラ
12 照明装置