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特許7527227鮮度保持袋用フィルム、及びその製造方法、製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】鮮度保持袋用フィルム、及びその製造方法、製造装置
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/50 20060101AFI20240726BHJP
   B65D 65/02 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
B65D85/50 120
B65D65/02 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021034459
(22)【出願日】2021-03-04
(65)【公開番号】P2022134939
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000115980
【氏名又は名称】レンゴー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100117400
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 政徳
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161746
【弁理士】
【氏名又は名称】地代 信幸
(74)【代理人】
【識別番号】100166796
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 雅至
(72)【発明者】
【氏名】山原 栄司
(72)【発明者】
【氏名】藤本 丹民
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 朱音
(72)【発明者】
【氏名】殿岡 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】所 のぞみ
(72)【発明者】
【氏名】衣川 綾
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-029261(JP,A)
【文献】特開2017-197293(JP,A)
【文献】特開平06-125696(JP,A)
【文献】特開2004-195611(JP,A)
【文献】特開平04-201867(JP,A)
【文献】特開平07-191040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/50
B65D 65/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ15μm以上60μm以下のポリオレフィンフィルムからなる鮮度保持袋であり、
前記ポリオレフィンフィルムは、
複数のスリット状の穿孔部を有し、
前記穿孔部の開口長が0.1mm以上0.3mm以下であり、かつ、
前記穿孔部の開口長Lと開口幅Wとの比率W/Lが0.3以下であり、
前記ポリオレフィンフィルムの面積に対する前記穿孔部の開口面積比率が0.6×10-5%以上10.0×10-5%以下であり、
前記鮮度保持袋が有する前記穿孔部の孔数が120個以上である、鮮度保持袋。
【請求項2】
穿孔用針と、前記穿孔用針を取り付けて回転する回転具と、ポリオレフィンフィルムを移送するローラとを用い、
前記穿孔用針は、先端部の断面形状の曲率半径Rが0.02mm以下であり、先端から0.3mmの位置の針直径が0.3mm以下であり、前記先端部のRに繋がる傾斜角が25度以下であり、
前記回転具の回転によって前記穿孔用針が移送される前記ポリオレフィンフィルムに突き通されることで前記ポリオレフィンフィルムに穿孔
前記ポリオレフィンフィルムからなる鮮度保持袋が有する前記穿孔部の孔数が120個以上となるように前記穿孔部を形成する、
請求項1に記載の鮮度保持袋の製造方法。
【請求項3】
前記穿孔用針は、前記ポリオレフィンフィルムに0.2mm以上0.4mm以下の貫通長さで突き通される、
請求項2に記載の鮮度保持袋の製造方法。
【請求項4】
前記回転具は前記ローラと一体に、又は前記ローラと同軸上に設けられ、
前記穿孔用針は、前記ローラの内径側から、前記ローラ上のポリオレフィンフィルムに突き通される、請求項2又は3に記載鮮度保持袋の製造方法。
【請求項5】
前記穿孔されたポリオレフィンフィルムが、前記ローラとは別のカス除去ローラに接触した上で巻取ローラによって巻き取られる、請求項2乃至4のいずれかに記載の鮮度保持袋の製造方法。
【請求項6】
穿孔用針と、前記穿孔用針を取り付けて回転する回転具と、厚さ15μm以上60μm以下のポリオレフィンフィルムを移送するローラとを有し、
前記穿孔用針は、先端部の断面形状の曲率半径Rが0.02mm以下であり、先端から0.3mmの位置の針直径が0.3mm以下であり、前記先端部のRに繋がる傾斜角が25度以下であり、
前記回転具は前記ポリオレフィンフィルムの移送に同期して回転し、この回転によって前記穿孔用針が移送される前記ポリオレフィンフィルムに突き通されることで前記ポリオレフィンフィルムに穿孔して穿孔部を形成し
前記穿孔部の開口長が0.1mm以上0.3mm以下であり、かつ、
前記穿孔部の開口長Lと開口幅Wとの比率W/Lが0.3以下であり、
前記ポリオレフィンフィルムの面積に対する前記穿孔部の開口面積比率が0.6×10 -5 %以上10.0×10 -5 %以下であり、
前記ポリオレフィンフィルムからなる鮮度保持袋が有する前記穿孔部の孔数が120個以上となるように、前記穿孔用針を配した、
鮮度保持袋の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、青果物の鮮度を保持するための鮮度保持袋に関する。
【背景技術】
【0002】
青果物を包装する袋に、内外のガス交換を制御できる適度な通気性を持たせ、青果物の置かれている環境の気中の二酸化炭素や酸素の濃度、水蒸気の含有量を調整することで、包装された青果物の鮮度を無包装や密封環境よりも長く保つことができることが知られている。
【0003】
青果物用の袋に通気性を持たせる手法としては、レーザー加工法、熱針を含む針加工法によって穿孔加工する手法や、ロールカッターにより裂け目を入れる手法が知られている。
【0004】
特許文献1には、内寸50×100mmの密封された袋内に25℃で空気を送り込んだ時のピーク圧力(MPa)と、40℃、90%RHにおける透湿度(g/m・day・atm)との比(ピーク圧力/透湿度)が、0.08×10-3以上、4.4×10-3以下である青果物鮮度保持包装袋が提案されている。具体的な穿孔手法としてはレーザーにより直径0.05mmの開孔を設ける旨が示されており、ミカンやエダマメの鮮度を保持する旨が記載されている。
【0005】
一方、熱を加えずに穿孔する青果物鮮度保持袋としては、例えば特許文献2には包装袋に1個以上の切れ込みを入れ、その切れ込み1個あたりの長さL(mm)/フィルムの厚みT(mm)の比(L/T)が16以上250以下であり、Tが0.01mm以上0.1mm以下であり、青果物100gあたりの切れ込みの長さの合計が0.08mm以上20mm以下である包装袋が開示されている。
【0006】
また、同じく熱を加えずに別の形状の穴を設ける手法が特許文献3に提案されている。厚さ15μm以上60μm以下のポリオレフィンフィルムであり、開口部と、前記開口部を中心とする2方向の切れ目を有する穿孔部とを有し、前記開口部の面積が0.001mm以上0.1mm以下で、前記2方向の切れ目のうち、長い方の切れ目と短い方の切れ目の長さの比が1.5以上20以下であり、前記短い方の切れ目の長さが0.1mm以上1mm以下で、前記穿孔部は、前記ポリオレフィンフィルムの元の厚さの2倍以下の厚さの部位で囲まれている鮮度保持袋である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-100112号公報
【文献】特許第4779658号公報
【文献】特開2020-029261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の実施例で用いられるレーザーや熱針など、熱を用いて穿孔したフィルムは、孔の周囲が盛り上がり、元のフィルムの3~4倍ほどの厚さになる。こうなったフィルムを巻き取ったロールでは、穿孔した位置に生じた大きな盛り上がりが穴の開いていない部分に傷をつけたり、印刷を擦れさせたりして、外観品質を低下させる要因となる。また、ロールに大きな凹凸ができるので、外観品質上の問題があると判断される場合もあり、ロールの巻圧が緩くなる懸念もある。
【0009】
さらに、孔の周囲の盛り上がった部分が、鮮度保持包装袋として使用するまでの保管や輸送などの工程で潰されると、穿孔部分が塞がったりする場合もあり、通気性、ひいては鮮度保持効果にばらつきが生じるおそれもある。
【0010】
一方で、特許文献2のように長いスリットを空けると、通気性は確保することができるものの、スリット部が当初の設計よりも大きく開いて適切なガス透過度を実現できなくなったり、場合によってはフィルム自体が裂けてしまうおそれもある。
【0011】
特許文献3のように2方向の切れ目ではフィルム自体が裂けるおそれは低いものの、孔の形状が大きく開きやすく、青果物の種類によっては鮮度保持効果を発揮しないことがある。
【0012】
そこでこの発明は、加熱することなく、青果物の鮮度保持に適した孔をフィルムに穿孔し、孔の形状のばらつきやフィルム破れがおこりにくく、かつ高速で生産できる生産性の高い手法で青果物鮮度保持袋用フィルムを製造可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、厚さ15μm以上60μm以下のポリオレフィンフィルムであり、
複数のスリット状の穿孔部を有し、
前記穿孔部の開口長が0.1mm以上0.3mm以下であり、かつ、
前記穿孔部の開口長Lと開口幅Wとの比率W/Lが0.3以下であり、
フィルムの面積に対する前記穿孔部の開口面積比率が0.6×10-5%以上10.0×10-5%以下である、鮮度保持袋用フィルムにより、上記の課題を解決したのである。
【0014】
この発明にかかる鮮度保持袋用フィルムを製造する方法としては、
穿孔用針と、前記穿孔用針を取り付けて回転する回転具と、フィルムを移送するローラとを用い、
前記穿孔用針は、先端部の断面形状の曲率半径Rが0.02mm以下であり、先端から0.3mmの位置の針直径が0.3mm以下であり、前記先端部のRに繋がる傾斜角が25度以下であり、
前記回転具の回転によって前記穿孔用針が移送される前記フィルムに突き通されて前記フィルムに穿孔することで可能となる。
【0015】
その際の貫通長さは、前記穿孔用針が、前記フィルムに0.2mm以上0.4mm以下の貫通長さで突き通される実施形態とすることができる。
【0016】
前記回転具は前記ローラと一体に、又は前記ローラと同軸上に設けられ、
前記穿孔用針は、前記ローラの内径側から、前記ローラ上のフィルムに突き通される実施形態とすることができる。
【0017】
また、前記穿孔されたフィルムが、前記ローラとは別のカス除去ローラに接触した上で巻取ローラによって巻き取られる実施形態とすることができる。
【0018】
上記の製造方法を実施する製造装置としては、
穿孔用針と、前記穿孔用針を取り付けて回転する回転具と、フィルムを移送するローラとを有し、
前記穿孔用針は、先端部の断面形状の曲率半径Rが0.02mm以下であり、先端から0.3mmの位置の針直径が0.3mm以下であり、前記先端部のRに繋がる傾斜角が25度以下であり、
前記回転具は前記フィルムの移送に同期して回転し、この回転によって前記穿孔用針が移送される前記フィルムに突き通されることで前記フィルムに穿孔する、鮮度保持袋用フィルムの製造装置が採用できる。
【0019】
このような鮮度保持袋用フィルムの製造装置を構成するために、既存のフィルム用装置に取り付ける穿孔加工装置として、
回転する円盤状の回転具と、前記回転具を梁に対して固定する固定具と、
を有し、
回転する円盤の外周に、環状の滑り止め具と、外径方向に向いて取り付けられた一本又は複数本の穿孔用針とを有し、
前記穿孔用針は、先端部の断面形状の曲率半径Rが0.02mm以下であり、先端から0.3mmの位置の針直径が0.3mm以下であり、前記先端部のRに繋がる傾斜角が25度以下である、穿孔加工装置が採用できる。
【発明の効果】
【0020】
この発明にかかる鮮度保持袋用フィルムを包装に用いると、穿孔部の形状が微細なスリットであるため、袋の印刷する部分に穿孔部があっても外観上目立たない。これにより、袋の印刷部分と穿孔する部分との位置を細かく区別する必要がなく、複雑な製造工程となるのを避けて、無孔フィルムと同様に鮮度保持袋を製造することができる。
【0021】
また、穿孔部の数を調整することで、包装しようとする青果物の量や種類に応じた最適なガス交換性能を発揮させることができる。
【0022】
さらに、穿孔部が幅の小さい微細なスリットであるため、穿孔加工を行う際に切れ端として生じるフィルム片の発生量は、円形に近いものや開口長の大きい穿孔部を形成させる場合よりも減少する。これにより、袋にした際に異物となるフィルム片の混入を抑止でき、袋の品質及び歩留まりを向上させることができる。
【0023】
さらにまた、穿孔部が幅の小さい微細なスリットであることで、個々の穿孔部を通過するガス量が限られ、急激な穿孔部の拡大も起こりにくいため、包装袋からの急激なガスや水蒸気の抜けが起こりにくい。これにより、包装袋が緩衝性を保つため、輸送時の振動による衝撃から内容した青果物を保護しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】この発明にかかる鮮度保持袋用フィルムの穿孔部の形状を示す模式図
図2】この発明にかかる鮮度保持袋用フィルムの穿孔部を開口する穿孔用針の断面形状を示す図
図3】この発明にかかる製造装置の第一の実施形態例におけるフィルムと回転具付近の斜視図
図4図3の接触部分における周方向断面拡大図
図5】この発明にかかる穿孔加工装置を梁に取り付けた状態の斜視図
図6図5の接触部分の正面図
図7】フィルムに穿孔し、カス除去ローラを経由して巻き取るまでのフィルムパスを示す概略図
図8】この発明にかかる製造装置の第二の実施形態例におけるローラの表面付近の断面図
図9図8の外観斜視図
図10】実施例1における穿孔部の写真
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明について実施形態を挙げながら詳細に説明する。この発明は、青果物に用いる鮮度保持袋用フィルムと、その製造方法、製造装置、及びその製造装置に用いる穿孔加工装置である。
【0026】
この発明にかかる鮮度保持袋用フィルムに用いる素材としては、青果物の包装用に使用されているポリエチレンフィルム、またはポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルムを用いることができる。
【0027】
上記ポリオレフィンフィルムの厚さは、15μm以上が好ましく、20μm以上であるとより好ましい。15μm未満であると破れやすくなるため、裂けて生じる穿孔部の大きさを好適な範囲に収めることが難しくなるおそれがある。一方、60μm以下が好ましく、50μm以下であるとより好ましい。60μmを超えると後述する穿孔用針を用いて好適な形状の穿孔部を形成させることが難しくなるだけでなく、そもそも貫通しにくくなるおそれがある。
【0028】
この発明にかかる鮮度保持袋用フィルムは、上記のポリオレフィンフィルム(フィルム10)に、複数のスリット状の穿孔部を形成させてある。この穿孔部11の模式図を図1に示す。スリットの長方向の長さである開口長Lは、0.3mm以下である必要があり、0.25mm以下であると好ましい。0.3mmを超えると、袋にして内容物が収納された際に開口部分が左右に開きやすくなりすぎてしまい、通過するガス量を十分に制限しきれなくなるおそれがある。また、内容物を収納した際に、当初の開口長以上に裂け目が拡大しやすくなるおそれがある。一方で、開口長Lは0.1mm以上であると好ましい。穿孔部11の個々の開口長が短くても、穿孔部11の数を必要な範囲で設定すれば基本的には外気とのガス交換性能を確保できる。ただし、あまりに小さすぎると二酸化炭素や水蒸気が通過しにくくなり、青果物を包装して保存する条件次第ではわずかの結露によって穿孔部11が塞がれてしまうおそれがある。また、埃や青果物の欠片などの何らかの障害物によって穿孔部11が覆われてしまいやすくなるので、ガス交換性能を発揮しにくくなってしまう場合がある。さらに、形成させる穿孔部11の数が多すぎると、穿孔に時間がかかったり、穿孔する設備が大掛かりになるという問題が生じる。
【0029】
穿孔部11の開口長Lと、短方向の長さである開口幅Wとの比率W/Lは0.3以下である必要があり、0.2以下であると好ましい。開口幅Wが大きくなりすぎると、通過するガス量が増大しすぎてしまい、鮮度保持効果が十分に発揮されなくなってしまう。一方、袋として内容物が収容されれば穿孔部11の周囲のフィルムがある程度変形するため、開口幅Wが小さくてもある程度はガス交換性能を確保できる。ただし、比率W/Lを0.0001未満とするには、非常に細い穿孔用針を用意する必要があり、そのような穿孔用針を製造するのは困難で、強度的にも現実的ではなく、0.0001以上であると好ましい。スリットが細すぎると、状況次第では穿孔部11の左右の唇部12が重なってしまい、穿孔部11が塞がってガス交換性能が低くなりすぎるおそれがある。
【0030】
この発明に係る鮮度保持袋用フィルムに空けられる穿孔部11の数は、フィルム10の表面積1mあたり、10個以上あると好ましく、50個以上あるとより好ましい。少なすぎるとガス交換性能が十分に発揮されず、鮮度保持効果が十分に発揮されなくなってしまう。一方で、表面積1mあたり10000個以下であると好ましく、5000個以下であるとより好ましい。孔が多すぎてガス交換性能が高すぎると、逆に鮮度保持効果が発揮されなくなるおそれがある。なお、安定した鮮度保持効果を発揮させるためには、鮮度保持袋用フィルムを用いて製造される鮮度保持袋ごとに、複数個の穿孔部11が配されていることが望ましい。
【0031】
また、フィルム10の面積に対する穿孔部11の開口面積比率、すなわち、袋の外周として用いられるフィルムの全面積に対する、袋の表面に配される複数の穿孔部11の開口した部分の面積の和の比率は、0.6×10-5%以上である必要があり、1.0×10-5%以上であると好ましい。0.6×10-5%未満であるとガス交換性能が低すぎ、二酸化炭素や水蒸気がほとんど抜け出ていかない密封状態に近くなってしまい、鮮度保持効果を発揮できなくなってしまうためである。なお、包装する青果物の種類にもよるが、1.0×10-5%以上であると概ね良好な鮮度保持効果を発揮できる。一方で、10.0×10-5%以下である必要があり、9.0×10-5%以下であると好ましい。10.0×10-5%を超えるとガス交換性能が高すぎてしまい、袋から空気が抜けて内容物を十分に保護できなくなる。また、包装しない状況に近づいてしまい、逆に鮮度保持効果が望めなくなるおそれがある。
【0032】
なお、ここで開口した部分の面積とは、フィルム10を正面視した際に開口して見える部分の面積をいう。
【0033】
穿孔部11は、フィルム10にスリット状に開口した部分が形成されるように、穿孔用針23をフィルム10に貫通させて形成された裂け目である。穿孔用針23がフィルム10を貫通して穿孔部11を形成する際の断面図を図2に示す。
【0034】
この穿孔部11は後述するように、フィルム10を移送しながら、穿孔用針23もフィルム10の移送方向へ動かしつつ貫通させて形成させることができる。この場合、フィルム10を移送させる方向が開口長Lとなる穿孔部11の長方向である。
【0035】
この穿孔部11を形成させるために用いる穿孔用針23は加熱されていない常温のものを用いることが望ましい。これにより、穿孔部11の周囲は上記のポリオレフィンフィルムであるフィルム10の元の厚さの2倍以下の厚さとなる。すなわち、加熱によって2倍を超える厚さになる部位が穿孔部11の周囲には存在していない。なお、ここでいう厚さの測定は、JIS K 7130A法に準拠した測定方法で行うものとする。周囲とは厳格なものではないが、穿孔部11のスリットの中心線から開口長の半分程度の長さの範囲までである。本発明のフィルムは、常温の穿孔用針23によって貫通されて加工され、加熱によって盛り上がった箇所が無い。従来の手法で加熱して穿孔した場合、フィルムを巻き取ったロールには穿孔位置に大きな盛り上がりが生じて、孔周囲の盛り上がりが孔の開いていない部分と擦れることで傷をつけ、外観品質を低下させる要因になっていた。また、巻き取ったロール自体に大きな凹凸がある点も、外観品質上問題と判断される場合があった。これに対して、本発明にかかる非加熱で穿孔したフィルムでは、巻き取ったロールの凹凸が少なく、孔の開いていない部分にできる傷が低減される。そのため、外観品質に問題がなく、穿孔部と印刷が擦れることを避けるために穿孔位置を印刷から外すなどの制約を設ける必要がない。また、後述するように、加熱及び冷却の仕組みを設けなくてもよいため、穿孔処理を高速で行うことができる。
【0036】
また、穿孔用針23は上記の穿孔部11の形成に適した形状であることが望ましい。穿孔用針23の先端の形状例を、図2を用いて説明する。穿孔用針23の先端部の断面形状の曲率半径Rは0.02mm以下であると好ましく、0.015mm以下であるとより好ましい。曲率半径Rが大きすぎるとフィルム10がスリット状ではなく、十字状に裂けやすくなり、本発明にかかる鮮度保持袋用フィルムとして不適格なものが得られやすくなってしまう。一方、先端が鋭い分にはそれほど制限はないが、針の製造が難しかったり、摩耗し易くなったりするので、曲率半径Rが0.005mm以上であるものが現実的である。
【0037】
さらに、穿孔用針23は、先端pから0.3mmの位置の針直径Dは0.3mm以下であると好ましく、0.25mm以下であるとより好ましい。太すぎると穿孔部11が大きくなりすぎてしまい、上記開口長を上記の範囲に収められなくなり、ガス交換が制御しきれなくなるおそれがある。一方、針直径Dが0.1mm以上であると好ましく、0.15mm以上であるとより好ましい。穿孔用針の耐久性を確保するだけでなく、貫通した際に穿孔部11の開口幅Wをある程度広げてガス交換性能を確保するためにも、ある程度の針直径Dが必要となるからである。
【0038】
さらにまた、穿孔用針23は、前記の先端部のRに繋がる傾斜角θが25度以下であると好ましく、20度以下であるとより好ましい。25度を超えると穿孔性能がやや低下し、貫通しても穿孔部がスリットにならずに広がりやすくなってしまう。一方で、細い分には特段の制限はないが、穿孔時に折損し難くするためには3度以上であるのが現実的であり、5度以上であると好ましい。なお、ここで傾斜角θとは、先端部のRを形成する断面円に接するように続く針の側周面が接する点から側周面に沿って100μm分広がった位置でのRに向かって続く傾斜が成す角度をいう。
【0039】
穿孔用針23をフィルム10に突き通す際の貫通深さlは、0.2mm以上であると好ましく、0.25mm以上であるとより好ましい。この貫通深さlとは、貫通した穿孔用針23の先端pと、貫通されたフィルム10の穿孔部11の中心におけるフィルム面が存在した位置との最大距離である。実際には、フィルム10の面と、穿孔用針23の軌道との相対位置として製造装置を調整する。この貫通深さが浅すぎると穿孔部11の大きさが不十分になるだけでなく、そもそもフィルム10を貫通しにくくなる場合もある。一方で、貫通深さlは0.4mm以下であると好ましく、0.35mm以下であるとより好ましい。深く挿し過ぎると、針の抜き差しの際に想定以上に開口長Lが広がってしまうおそれがある。なお、図2では貫通深さlが0.3mm未満である実施形態を示しているが、これはあくまで例であり、この形態に限定されるものではない。
【0040】
穿孔用針23を貫通させる向きは、フィルム10の裏面、すなわち、製袋する際に内側面となる側から、表面に向かって貫通させるとよい。それにより、印刷を施した袋の場合、印刷面である表面に存在する印刷インクに穿孔用針23が直接、接触することがないため、インクに含まれる無機顔料等による穿孔用針23の摩耗を軽減できる。また万が一、貫通の際にフィルム片が発生したとしても、それは表面に残り易く、内容物へ付着するリスクを回避できるからである。
【0041】
前記鮮度保持袋用フィルムを製造するにあたっては、穿孔用針23と、穿孔用針23を取り付けて回転する回転具と、フィルム10を移送するローラ31を有する製造装置を用いるとよい。前記回転具の回転によって穿孔用針23が移送されるフィルム10に突き通されることでフィルム10に穿孔する。前記回転具は、フィルム10に対してローラ31の外径側に設置してもよいし、フィルム10に対してローラ31の内径側に設置してもよいし、二つのローラ31の間に張られたフィルム10に対していずれかの面から前記回転具が接するように配置してもよい。前記回転具をフィルム10に対して内径側に取り付ける場合、前記回転具をローラ31と一体に設けてもよいし、ローラ31と同軸上に設けてもよい。これら内径側に取り付ける場合、穿孔用針23は、ローラ31の内径側からローラ31上のフィルム10に突き通される。
【0042】
一方、前記回転具をフィルム10に対してローラ31の外径側に設置したり、ローラ31の間に張られたフィルム10に対して取り付ける場合、前記回転具を、フィルム10の移送に同期して回転させると、穿孔部11が予期せぬ方向に裂けることがないため、スリット状の穿孔部を形成できる。同期させる方法としては、前記回転具の外周に滑り止めを設けてその滑り止めをフィルム10に接触させることで、フィルム10の移送する力によって前記回転具を回転させると、高い精度で同期できるので好ましい。一方、前記回転具に別途回転させる駆動装置を取り付けて回転させてもよいし、前記回転具がフィルム上を走行して穿孔させてもよい。
【0043】
いずれの形態でも、前記回転具の回転に伴い、フィルム10上に複数個の穿孔部11が長さ方向に列を為すように形成される。移送とともに穿孔されたフィルム10を、そのまま製袋して鮮度保持袋としてもよいし、一旦、別の巻取ロールとして仕上げ、それを製袋して鮮度保持袋としてもよいし、あるいは製袋充填機で中身の青果物を詰めながら製袋してもよい。ただし、一旦巻き取る場合は、穿孔部11の周囲にある唇部12が穿孔時にめくれ上がっていても、重なった外径側のフィルム10によって押しつぶされるため、穿孔直後は立体的に開いていた穿孔部11が、平面状の開口へと変形されて実際の開口面積が変化する。この潰された後の開口面積は、上記の正面視した際に開口して見える部分の面積となる。このため、一旦巻き取る場合は、巻き取りによって穿孔部11の開口面積が平面の開口面積にまで縮小することを想定して穿孔部11を形成させることが望ましい。
【0044】
この発明にかかる製造方法を実施する製造装置の第一の実施形態例を図3~6とともに説明する。この実施形態例は、回転具20がローラ31の外径側に取り付けられた例である。図3は、フィルム10と回転具20とが接している部分の斜視図であり、図4はその接している部分の周方向断面拡大図である。回転具20は、回転可能な円盤21の外周に、外径方向へ向かって複数本の穿孔用針23が等間隔で取り付けられている。この本数及び間隔を調整することで、形成される穿孔部11の数および間隔を調整できる。円盤21と同軸上に、エラストマー製のOリングからなる滑り止め具22が取り付けられている。一方、回転するローラ31の外周に接してフィルム10が移送される。ローラ31の表面は一様ではなく、フィルム10と直接接する峰部32と、凹んだ溝部33とが軸方向に交互に存在している。滑り止め具22は峰部32の上のフィルム10に接することで、ローラ31によって移送されるフィルム10から力を受ける。これにより、ローラ31の峰部32の表面速度と滑り止め具22の表面速度とが同期される。滑り止め具22の外周の径方向位置を、穿孔用針23の径方向位置よりわずかに小さい程度としておくと、穿孔用針23の表面速度はフィルム10の移送速度とほぼ同期される。これにより、フィルム10の移送方向に向いた開口長Lに比べて開口幅Wが小さいスリット状の穿孔部11を、連続して形成可能となる。また、このように滑り止め具22により同期する方式では、駆動装置が別途必要ではないため、穿孔装置が小型化でき、既存の装置にも容易に取り付けることができる。
【0045】
このような同期により穿孔する際のフィルムの移送速度は、スリッターのような高速移送にも対応できる。遅い分には生産速度が落ちるだけで特に制限はないが、速い分には移送速度がスリッターの最大速度400m/分でも十分に対応できる。また、穿孔部11の大きさはフィルムの移送速度に依存しないため、十分に制御できる。
【0046】
なお、溝部33には穿孔用針23を受けるウレタン製その他樹脂製の発泡体を敷設してもよい。この場合、フィルム10にかかる力が軽減され、不測の破れが生じにくくなる。一方で、発泡体を敷設すると樹脂の破片が混入するおそれがあり、針先も消耗しやすくなるため、これらの状況を避けるために発泡体を敷設しない、いわゆる空中刺しとしてもよい。図では空中刺しを示している。
【0047】
このような回転具20の取り付け方としては、ローラ31と平行に設けられた梁27に、回転具20を固定する固定具25を取り付けて、ローラ31上のフィルム10に対して、上記の望ましい位置関係となるように回転具20の穿孔用針23が位置するように調整する実施形態が挙げられる。そのような回転具20と固定具25とを有する穿孔加工装置の実施形態例を図5及び図6に示す。図5は梁27とローラ31との位置関係を含めた斜視図であり、図6は可動アーム26によって固定具25が固定された状態の正面図である。梁27を囲む受け具29を有し、軸方向の動きを固定する固定ネジ28を有する。受け具29からは所定のトルクを加えることで位置調整が可能だが、先端の位置を固定することができる可動アーム26が延びている。可動アーム26の先端には回転具20が取り付けられている。可動アーム26を調整することで、滑り止め具22をフィルム10に接触させるとともに、微調整することで上記の貫通深さを調整可能である。
【0048】
このような回転具20(円盤21、滑り止め具22、穿孔用針23)から可動アーム26及び固定具25までを有する一連の穿孔加工装置30を、フィルム10を加工する既存の加工装置に取り付けることで、この発明にかかる鮮度保持袋用フィルムの製造装置とすることができる。
【0049】
鮮度保持袋用フィルムに穿孔部11を幅方向複数列に亘って形成させる場合には、このような穿孔加工装置30を梁27上に等間隔または任意の間隔で複数個取り付け、軸方向に複数の穿孔部11を形成させる実施形態でもよい。この形態ではそれぞれの回転具20が一列ずつ穿孔部11を形成していく。また別の形態として、一つの穿孔加工装置30が有する回転具20が、穿孔用針23を備えた円盤21を軸方向に複数枚連ねて固定した形態としてもよい。この形態では、一つの穿孔加工装置30で、それぞれの円盤21の外周に取り付けられた穿孔用針23が穿孔部11を複数列分形成していく。さらに、複数枚の円盤21を備えた穿孔加工装置30を、梁27に複数個取り付けた形態としてもよい。いずれの形態であっても、最終的に製袋して得られる包装袋において好ましい位置に複数列の穿孔部11を設ける際の選択肢として採用できる。
【0050】
このように、穿孔用針23の数を適宜調整することで、包装しようとする青果物の鮮度保持に適した開口面積比率を確保できるように穿孔部11の数で調整することができる。フィルム10に設ける穿孔部11の間隔は特に限定されないが、近すぎると穿孔部11同士が連結して大きな裂け目になってしまう可能性が出てくる。このため、フィルムの幅方向に対しては10mm以上の間隔を有すると好ましい。これは円盤21の厚みや、固定具25の幅によって調整することができる。また、フィルムの流れ方向に対しては、10mm以上240mm以下に調整すると好ましい。この流れ方向の間隔は、円盤21の外周における穿孔用針23の間隔によって調整できる。
【0051】
この発明にかかる製造方法を実施する製造装置としては、具体的には、加工前のフィルムを適切な幅に切断して巻き取るスリッターに穿孔加工装置30を取り付ける実施形態が挙げられる。適切なサイズに切断するとともに、切断された個々の部分に適切なサイズと数の穿孔部11を形成することで、そのまま製袋して適切なガス交換性能を有する鮮度保持袋を製造できる鮮度保持袋用フィルムとすることができる。
【0052】
さらに、フィルム10に穿孔した後の巻き取り側に、穿孔時に発生するフィルム片を除去する機構を設けておくとより好ましい。そのようなフィルムパスの機構を図7の概略図とともに説明する。ローラ31の外周側からフィルム10に接するように回転具20を取り付けてフィルム10に穿孔部11を形成した後、このフィルム10をカス除去ローラ41a,41bに接触させて移送させる。カス除去ローラ41a,41bは表面に粘着性を有する素材を配している。表面にフィルム10が接触するとフィルム10自体を固定はしないが、表面に付着したフィルム片を粘着してフィルム10から除去する。これを裏表両面について行うため、カス除去ローラ41a,41bの2つのローラを用意し、それぞれがフィルム10の一方の面と他方の面とに接触するように配置する。なお、カス除去ローラ41a,41bには動力を備えなくても、移送させるフィルム10に粘着することによって駆動力を得る連回りとすることができる。なお、カス除去ローラ41a,41bに付着したフィルム片は、別途粘着テープなどをカス除去ローラ41a,41bの表面に押し当てて剥がすことで、容易に除去することができる。
【0053】
カス除去ローラ41a,41bを経たフィルム10は、押えローラ42を介して巻き取りローラ43に巻き取られる。巻取ローラ43によりフィルム10を巻き取り、カス除去ローラ41a,41bと回転具20とをともにフィルム10の移送による連れ回りとすることで、穿孔加工装置30の設備費用やランニングコストを抑制することができる。
【0054】
さらに、この発明にかかる製造方法を実施する製造装置の第二の実施形態例を図8図9とともに説明する。この実施形態では、回転具はローラ31と一体化している。ローラの表面に、回転具となる穿孔用針23が周方向に等間隔に設けられている。穿孔用針23はローラ31にフィルム10が巻き付く際にローラ31の表面から飛び出した分に合わせた貫通深さでフィルム10を貫通して、穿孔部11を形成させる。ローラ31によるフィルムの移送に合わせて、穿孔部11が形成された鮮度保持袋用フィルムが繰り出される。
【0055】
上記の実施形態ではローラ31に直接に穿孔用針23を取り付けてローラ31を回転具としているが、同軸上にある二つのローラで、ローラとほぼ同じ径に調整した回転具を挟み、同様に内径側から穿孔させる実施形態でもよい。
【0056】
この発明にかかる鮮度保持袋用フィルムにより製袋した袋は、青果物の包装に用いることで、内部のガスが容易には抜けず内容物を流通時の衝撃や振動から守るクッションとなって保護効果を発揮できる。また、そのような状態でもガス交換が進むため、二酸化炭素や水蒸気などの青果物から生じるガス等が適度に残留しかつ適度に抜け出ることで、青果物の鮮度を長く保つことができる。この発明にかかる鮮度保持袋用フィルムにより製袋した袋で包むことで、特にホウレンソウ、コマツナなどの葉菜類の他、ブロッコリーなどの花蕾を食べるもの、エダマメなどの豆類等の柔らかい青果物に用いると、流通時の衝撃や振動による物理的な損傷で傷みやすい青果物を保護する効果と、鮮度を保持する効果との両方が好適に発揮される。また、物理的な損傷には比較的丈夫な野菜や果物であっても、振動からの保護や鮮度保持の機能が好適に用いられるものがある。
【実施例
【0057】
次に、この発明を実際に実施した実施例を挙げて、この発明をさらに具体的に示す。
【0058】
<穿孔加工>
(実施例1)
先端の断面形状の曲率半径Rが0.012mmで、先端から0.3mmの位置の針直径が0.17mm、先端部のRに繋がる傾斜角θが18度である穿孔用針Aを用いて、スリッター((株)ゴードーキコー製:MODEL536A)上で防曇OPP30μmのフィルム(フタムラ化学(株)製:AF-642)に穿孔加工を行った。穿孔加工装置は図5及び図6に示すような回転具による。なお、針は加熱しておらず、常温である。針を2mm間隔の溝に対して0.3mmの深さで刺し込んで、受けのない空中刺しにて穿孔を行った。この時、スリッター上でのフィルムのテンションは110N/m、フィルムを巻き取る際のタッチロールの接触圧は0.2MPaで行った。
【0059】
これにより、複数の穿孔部をフィルムに形成した。この穿孔部のうちの一つの写真を図10に示す。このうち、10個の穿孔部を無作為に選択して大きさを測定したところ、それぞれの開口長が0.18~0.25mmであり、平均開口長が0.2mmであった。また、開口長Lの平均と開口幅Wの平均との比率W/Lは5.0×10-3であった。このフィルムを用いて200mm×180mmの袋を製袋したところ、袋の表面に合計140個の穿孔部が形成された。この数を表1中「孔数」と表記する。上記のように選択した穿孔部について開口した面積の平均と孔数との積から、袋の表面に配される複数の穿孔部11の開口した部分の面積の和を算出し、開口面積比率を求めたところ、3.89×10-5%となった。
【0060】
【表1】
【0061】
<空気保持性>
200mm×180mmに製袋した袋に、1000ccの空気を注入した。この時点での袋の厚みは50mmであった。袋の上からステンレス板と錘を合わせて1.6kgの荷重を掛け、2分後の袋厚みを測定した。その結果を表1に示す。2分後の袋厚みが40mm以上45mm未満であるものを◎、35mm以上39mm未満であるものを〇、20mm以上35mm未満または45mm以上50mm未満であるものを△、20mm未満又は50mm以上であるものを×と評価した。
【0062】
<振動試験>
200mm×180mmに製袋した袋に、エダマメ250gを入れてヒートシールしたものを、4袋×2列に並べて段ボール箱に入れ、JIS Z 0232「包装貨物 振動試験方法」に準じて振動試験を実施し、エダマメの外観変化を確認した。試験条件はランダム振動試験で振動区分:レベル3、加速度実効値5.8m/s、振動数範囲3~200Hz、振動時間15分とした。エダマメに傷みが見られなかった良好なものを〇、傷みがわずかに見られたものを△、傷みがはっきりと確認できたものを×と評価した。
【0063】
<鮮度保持効果試験>
200mm×180mmに製袋した袋に、エダマメ250gを入れ、12~27℃の変動環境下で7日間保管し、エダマメの品質を評価した。外観に変色が見られず異臭の無いものを〇、変色又は異臭がわずかに感じられるものを△、変色又は異臭のすくなくともいずれかが確認できたものを×と評価した。
【0064】
(実施例1の結果)
振動試験でも十分にエダマメを保護し、内部の空気を保持し続けることができた。一方で、ガス交換も行うことができ、一週間後までエダマメの鮮度を保持することができた。
【0065】
(実施例2)
実施例1において、孔数を倍にした以外は同様の手順により製袋し、評価を行った。ややガスが抜けやすくなったが、それ以外は良好な結果を示した。
【0066】
(比較例1)
実施例1において、フィルムに孔を空けないこと以外は同様の手順により製袋し、評価を行った。内部のガスはまったく抜けなかった。また、鮮度保持効果は得られなかった。
【0067】
(比較例2)
実施例1において、孔数を7分の1に減らした以外は同様の手順により製袋し、評価を行った。孔はあるもののガスの抜けが観測されず、鮮度保持効果は得られなかった。
【0068】
(比較例3)
実施例1において、用いる穿孔用針を先端の断面形状の曲率半径Rが0.06mmで、先端から0.3mmの位置の針直径が0.38mm、先端部のRに繋がる傾斜角θが40度である穿孔用針Bに変え、平均開口長(フィルム長さ方向)が0.1mm、平均開口幅(フィルム幅方向)が0.04mmとなる菱形の孔を穿孔するように変更した。平均のW/Lは0.4であった。実施例1と同様に製袋して、開口面積比率が実施例1に近くなるように孔数は8個とした。空気保持性は実施例1よりやや低下した。振動試験では問題がなかったが、鮮度保持効果ではやや問題を生じてしまった。
【0069】
(比較例4)
比較例3において、孔数を8個から30個に増加させ、開口面積比率を約4倍にした。空気保持性が低下し、鮮度は保持できたものの、振動試験ではエダマメにわずかに傷みが生じてしまった。
【0070】
(比較例5)
実施例1において、穿孔用針の代わりにレーザーマーカー(Panasonic(株)製COレーザーマーカー LP-430TU)を用いて、平均長径(フィルム幅方向)が0.45mm、平均短径(フィルム長さ方向)が0.25mmとなる、幅方向に長い楕円形の孔を穿孔するように変更した。実施例1とフィルムの方向に合わせて、幅方向の長径をW、長さ方向の短径をLとした場合の平均のW/Lは1.8であった。実施例1と同様に製袋して、孔数は2個とした。開口面積比率は24.5×10-5%となり、空気保持性はほとんど発揮されず、振動試験ではエダマメに傷みが生じてしまった。また、鮮度も保持されなかった。
【0071】
(比較例6)
比較例5において、孔数を4倍にした。エダマメの鮮度は保持できたものの、空気保持性試験でガスは完全に抜けてしまった。振動試験ではエダマメを保護できない結果となった。
【0072】
<ブロッコリーによる評価試験>
(実施例3、4、比較例7~12)
上記の実施例1,2、比較例1~6の各穿孔仕様の試験について、袋の大きさを300×240mm(面積は2倍)に変更し、青果物をブロッコリーとして同様の試験を行った。振動試験及び鮮度保持効果試験で袋に入れるブロッコリーは一株とした。振動試験では3袋×2列で段ボール箱に詰めて試験を実施した。また、鮮度保持効果試験では、3日間、20℃で保管して評価を行った。また、個々の穿孔方法はエダマメについての試験と同一であるが、孔数および開口面積比率は一部調整し、表2に記載のように変更した。それ以外はエダマメについての試験と同様に行った。その結果を表2に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
スリット状で適した穿孔部を有する実施例3と、孔数および開口面積比率を約2倍にした実施例4とは、いずれも空気保持性、ブロッコリーの傷みの無さ、鮮度保持効果の点で好適な結果となった。孔を空けない比較例7は内部のガスはまったく抜けず、鮮度保持効果は得られなかった。実施例3から孔数を6分の1にした比較例8は、孔はあるもののガスの抜けが観測されず、鮮度保持効果は得られなかった。穿孔部の形状を菱形孔として開口面積比率を実施例3と同じに調整した比較例9は、空気保持性と振動試験は良好な結果を示したが、鮮度保持の点で問題を生じた。比較例9から孔数を4倍にした比較例10は、鮮度保持効果は得られたものの、空気保持性の低下が無視できない値となった。穿孔部を幅方向に長い楕円形にした比較例11、12では、いずれも空気保持性に問題を生じてブロッコリーに傷みを生じてしまった。また、比較例11では鮮度保持効果にも問題を生じてしまった。
【符号の説明】
【0075】
10 フィルム
11 穿孔部
12 唇部
20 回転具
21 円盤
22 滑り止め具
23 穿孔用針
25 固定具
26 可動アーム
27 梁
28 固定ネジ
29 受け具
30 穿孔加工装置
31 ローラ
32 峰部
33 溝部
41a,41b カス除去ローラ
42 押えローラ
43 巻取ローラ
D 針直径
l 貫通深さ
L 開口長
p 先端
R 曲率半径
W 開口幅
θ 傾斜角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10