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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】歩行補助装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 1/02 20060101AFI20240726BHJP
   A61G 5/10 20060101ALI20240726BHJP
   A61H 3/00 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
A61H1/02 R
A61G5/10 704
A61H3/00 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021044479
(22)【出願日】2021-03-18
(65)【公開番号】P2022058107
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2024-02-29
(31)【優先権主張番号】P 2020164730
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年5月27日に開催された日本機械学会ロボティクスメカトロニクス講演会2020(ROBOMECH2020)において頒布された予稿集
(73)【特許権者】
【識別番号】515087972
【氏名又は名称】株式会社イノフィス
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100135356
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 宏
(72)【発明者】
【氏名】坂本 陽祐
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-80619(JP,A)
【文献】国際公開第2009/044568(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105326628(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109124907(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02
A61H 3/00
A61H 3/04
A61G 5/10
B25J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の体幹に装着される体幹装着部と、
使用者の下肢に装着される下肢装着部と、
前記下肢装着部を股関節に対応する関節部を介して、股関節の屈曲方向及び股関節の伸展方向へ回動可能に支持する連結部と、
前記下肢装着部を前記関節部周りに前記伸展方向側へ回動させる補助力を発生する第1アクチュエータと、
前記下肢装着部を前記関節部周りに前記屈曲方向側へ回動させる補助力を発生する第2アクチュエータと、
を有する歩行補助装置であって、
前記使用者の体幹の鉛直下方に配置可能であり前記使用者が着座可能な着座部と、
前記連結部と一体で上下に移動するアームレストと、を備え、
前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータは、前記アームレストに収納されている歩行補助装置。
【請求項2】
前記体幹装着部を上下方向に移動させる上下方向駆動部を備える請求項1に記載の歩行補助装置。
【請求項3】
前記着座部は、前記体幹装着部が上方向に移動したときに、前記使用者の体幹の後方に移動可能である請求項2に記載の歩行補助装置。
【請求項4】
前記着座部が前記使用者の体幹の後方に移動することにより、前記使用者の鉛直下方には使用者下方空間が形成され、
前記使用者下方空間には、便器を収容可能である請求項3に記載の歩行補助装置。
【請求項5】
前記体幹装着部を移動可能に支持する台車と、
一端部が前記台車に揺動可能に接続され、他端部に前記台車が移動する移動面に当接可能な当接部を備え、前記当接部を前記一端部に対して離間/接近可能に駆動する第3アクチュエータと、
一端部が前記台車に揺動可能に接続され、他端部に前記第3アクチュエータの他端部側の部分が接続され、前記第3アクチュエータの他端部側の部分を上下方向に移動させる第4アクチュエータと、を備える請求項1~請求項4のいずれかに記載の歩行補助装置。
【請求項6】
前記第3アクチュエータは、シングルアクションエアシリンダにより構成され、
前記第4アクチュエータは、ダブルアクションエアシリンダにより構成され、
前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータは、それぞれ人工筋肉により構成され、
前記第1アクチュエータ、前記第2アクチュエータ、前記第3アクチュエータ、及び、前記第4アクチュエータにガスを供給するガス供給装置と、
前記第1アクチュエータ、前記第2アクチュエータ、前記第3アクチュエータ、及び、前記第4アクチュエータのそれぞれの動作が連動するように前記ガス供給装置に対して制御を行う制御装置と、を備える請求項5に記載の歩行補助装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記シングルアクションエアシリンダに対して前記ガス供給装置からガスを供給して、前記当接部を前記移動面に対して当接させ、前記当接後に、所定時間ガスを供給し続けて前記台車の移動を行い、前記台車の移動の後に、前記ダブルアクションエアシリンダに対して前記ガス供給装置からガスを供給して、前記シングルアクションエアシリンダの他端部側の部分を上方向に移動させて、前記当接部の前記移動面からの離間を行い、前記移動面からの離間の後に、前記台車の移動を行う前の位置に前記当接部を戻す初期位置への移動を行うように、前記ガス供給装置に対して制御を行う請求項6に記載の歩行補助装置。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記台車の移動を開始すると共に、前記使用者の一方の下肢に対して、前記下肢装着部を前記関節部周りに前記伸展方向側へ前記第1アクチュエータにより回動させるとともに、前記使用者の他方の下肢に対して、前記下肢装着部を前記関節部周りに前記屈曲方向側へ前記第2アクチュエータにより回動させて、前記使用者に股関節の伸展と屈曲を行わせる股関節の伸展及び屈曲の制御を前記ガス供給装置に対して行い始め、
その後、前記移動面からの離間を行っているとき、及び、前記初期位置への移動を行っているときにも、前記制御装置は、前記股関節の伸展及び屈曲の制御を継続して行う請求項7に記載の歩行補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自立歩行が特に困難な者に対しても歩行運動を行わせることが可能な歩行補助装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。歩行補助装置において使用者は、4つの車輪を有する台車を構成するセンタフレームを跨ぐような状態で、自動リフト装置を構成するリフタに支持されて、歩行訓練を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-14698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来の歩行補助装置においては、4つの車輪を有する台車を構成するセンタフレームが歩行訓練を行う使用者の足元に存在しており、使用者の足元の動きが制限されていた。また、使用者を介護する者が、歩行訓練を行うために使用者に歩行補助装置を装着する際に、センタフレームが装着の妨げとなり、装着の容易性の向上を妨げていた。
本発明は、歩行訓練を行う使用者の足元の動きの自由度を高め、使用者に歩行補助装置を装着する際の装着の容易性の向上が図られ、歩行訓練の容易性の向上が図られた歩行補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、使用者の体幹に装着される体幹装着部と、使用者の下肢に装着される下肢装着部と、前記下肢装着部を股関節に対応する関節部を介して、股関節の屈曲方向及び股関節の伸展方向へ回動可能に支持する連結部と、前記下肢装着部を前記関節部周りに前記伸展方向側へ回動させる補助力を発生する第1アクチュエータと、前記下肢装着部を前記関節部周りに前記屈曲方向側へ回動させる補助力を発生する第2アクチュエータと、を有する歩行補助装置であって、前記使用者の体幹の鉛直下方に配置可能であり前記使用者が着座可能な着座部と、前記連結部と一体で上下に移動するアームレストと、を備え、前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータは、前記アームレストに収納されている歩行補助装置に関する。
【0006】
ここで、前記体幹装着部を上下方向に移動させる上下方向駆動部を備えることが好ましい。また、前記着座部は、前記体幹装着部が上方向に移動したときに、前記使用者の体幹の後方に移動可能であることが好ましい。
【0007】
また、前記着座部が前記使用者の体幹の後方に移動することにより、前記使用者の鉛直下方には使用者下方空間が形成され、前記使用者下方空間には、便器を収容可能であることが好ましい。
【0008】
また、前記体幹装着部を移動可能に支持する台車と、一端部が前記台車に揺動可能に接続され、他端部に前記台車が移動する移動面に当接可能な当接部を備え、前記当接部を前記一端部に対して離間/接近可能に駆動する第3アクチュエータと、一端部が前記台車に揺動可能に接続され、他端部に前記第3アクチュエータの他端部側の部分が接続され、前記第3アクチュエータの他端部側の部分を上下方向に移動させる第4アクチュエータと、を備えることが好ましい。
【0009】
また、前記第3アクチュエータは、シングルアクションエアシリンダにより構成され、前記第4アクチュエータは、ダブルアクションエアシリンダにより構成され、前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータは、それぞれ人工筋肉により構成され、前記第1アクチュエータ、前記第2アクチュエータ、前記第3アクチュエータ、及び、前記第4アクチュエータにガスを供給するガス供給装置と、前記第1アクチュエータ、前記第2アクチュエータ、前記第3アクチュエータ、及び、前記第4アクチュエータのそれぞれの動作が連動するように前記ガス供給装置に対して制御を行う制御装置と、を備えることが好ましい。
【0010】
また、前記制御装置は、前記シングルアクションエアシリンダに対して前記ガス供給装置からガスを供給して、前記当接部を前記移動面に対して当接させ、前記当接後に、所定時間ガスを供給し続けて前記台車の移動を行い、前記台車の移動の後に、前記ダブルアクションエアシリンダに対して前記ガス供給装置からガスを供給して、前記シングルアクションエアシリンダの他端部側の部分を上方向に移動させて、前記当接部の前記移動面からの離間を行い、前記移動面からの離間の後に、前記台車の移動を行う前の位置に前記当接部を戻す初期位置への移動を行うように、前記ガス供給装置に対して制御を行うことが好ましい。
【0011】
また、前記制御装置は、前記台車の移動を開始すると共に、前記使用者の一方の下肢に対して、前記下肢装着部を前記関節部周りに前記伸展方向側へ前記第1アクチュエータにより回動させるとともに、前記使用者の他方の下肢に対して、前記下肢装着部を前記関節部周りに前記屈曲方向側へ前記第2アクチュエータにより回動させて、前記使用者に股関節の伸展と屈曲を行わせる股関節の伸展及び屈曲の制御を前記ガス供給装置に対して行い始め、その後、前記移動面からの離間を行っているとき、及び、前記初期位置への移動を行っているときにも、前記制御装置は、前記股関節の伸展及び屈曲の制御を継続して行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、歩行訓練を行う使用者の足元の動きの自由度を高め、使用者に歩行補助装置を装着する際の装着の容易性の向上が図られ、歩行訓練の容易性の向上が図られた歩行補助装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態による歩行補助装置を示す斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態による歩行補助装置を示す正面図である。
図3】本発明の第1実施形態による歩行補助装置の着座部が最も下側に位置している状態を示す説明図である。
図4】本発明の第1実施形態による歩行補助装置の着座部が最も上側に位置している状態を示す説明図である。
図5】本発明の第1実施形態による歩行補助装置により使用者が屈曲を最大に行う状態の上腿装着部の位置を示す説明図である。
図6】本発明の第1実施形態による歩行補助装置により使用者が直立した状態とされたときの上腿装着部の位置を示す説明図である。
図7】本発明の第1実施形態による歩行補助装置により使用者が伸展を最大に行う状態の上腿装着部の位置を示す説明図である。
図8】本発明の第1実施形態による歩行補助装置により屈曲を行うトルクを示すグラフである。
図9】本発明の第1実施形態による歩行補助装置により伸展を行うトルクを示すグラフである。
図10】本発明の第1実施形態による歩行補助装置の使用者にハーネスを装着した状態を示す正面図である。
図11】本発明の第1実施形態による歩行補助装置の使用者にハーネスを装着した状態を示す背面図である。
図12】本発明の第1実施形態による歩行補助装置の着座部を後側に回動させた様子を示す説明図である。
図13】本発明の第1実施形態による歩行補助装置の着座部を上側に移動させた様子を示す説明図である。
図14】本発明の第1実施形態による歩行補助装置の上腿装着部を、屈曲を行う方向へ最大に回動させることにより、大腿部を支持している様子を示す説明図である。
図15】本発明の第1実施形態による歩行補助装置に便器をセットした様子を示す説明図である。
図16】本発明の第1実施形態による歩行補助装置にセットした便器に使用者を着座させた様子を示す説明図である。
図17】本発明の第2実施形態による歩行補助装置を示す斜視図である。
図18】本発明の第2実施形態による歩行補助装置を示す側面図である。
図19】本発明の第2実施形態による歩行補助装置の当接部が初期位置にある様子を示す図である。
図20】本発明の第2実施形態による歩行補助装置の当接部が、歩行補助装置が移動する床に当接した様子を示す図である。
図21】本発明の第2実施形態による歩行補助装置の当接部が、歩行補助装置が移動する床を後方へけり出した様子を示す図である。
図22】本発明の第2実施形態による歩行補助装置の当接部が、歩行補助装置が移動する床から離れた様子を示す図である。
図23】本発明の第2実施形態による歩行補助装置の当接部が、歩行補助装置が移動する床から離れた状態で初期位置へ向かって戻されている様子を示す図である。
図24】本発明の第2実施形態による歩行補助装置の当接部が初期位置に戻った様子を示す図である。
図25】本発明の第2実施形態による歩行補助装置のコントローラが操作されていない様子を示す図である。
図26】本発明の第2実施形態による歩行補助装置のコントローラの歩行ボタンが操作された様子を示す図である。
図27】本発明の第2実施形態による歩行補助装置の制御装置に接続されているガス供給装置等を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1図2に示すように、歩行補助装置1は、歩行器20を装着して使用者が歩行訓練をすることを可能とするとともに、介護者が使用者の排泄をする際の介護を容易とする装置であり、台車10と歩行器(歩行補助器)20と、を備えている。以下の説明では、説明の便宜上、矢印Aにて示す歩行訓練者の歩行方向を前側、矢印Bにて示す歩行訓練者の後退方向を後側とし、上下左右の方向は、歩行方向を基準とする。
【0015】
歩行器20は、台車10に支持されて移動可能に構成されている。台車10は、本体フレーム101と、前輪支持フレーム102と、車輪103と、を備えている。本体フレーム101は、上下方向に長い略長方形状に形成されており、台車上フレーム部1011と、左右の台車縦フレーム部1013、1014と、を有している。
【0016】
左右の台車縦フレーム部1013、1014の下端部には車輪103がそれぞれ1つずつ接続されている。前輪支持フレーム102は、左右の台車縦フレーム部1013、1014の下端部から前方向に向かって斜め上方へそれぞれ延びる下側支持フレーム1021と、左右の台車縦フレーム部1013、1014の上下方向における略中央から前方向に向かって斜め下方へそれぞれ延びる上側支持フレーム1022と、台車縦フレーム部1013、1014に平行の位置関係で配置されて下側支持フレーム1021と上側支持フレーム1022とをそれぞれ連結する連結フレーム1023とを有している。連結フレーム1023の下端部は、下側支持フレーム1021に固定されている。上側支持フレーム1022の下端部には、それぞれ車輪103がそれぞれ1つずつ接続されている。
【0017】
台車上フレーム部1011の上部には、モータ155と、プーリ156と、モータ駆動回路157とがそれぞれケースに収納されて、台車上フレーム部1011に固定されて設けられている。モータ155は、DCモータにより構成されており、モータ駆動回路157により回転駆動する。モータ駆動回路157は、制御装置を有する図示しないコントローラに電気的に接続されており、コントローラからの制御により、モータ駆動回路157は、モータ155を駆動するように構成されている。モータ155は、体幹装着部としてのフレーム21を上下方向に移動させる上下方向駆動部を構成する。モータ155の出力軸の回転は、セルフロック特性を有するウォームギヤを介してプーリ156に伝達されるように構成されている。
【0018】
プーリ156の回転軸は、前後方向に指向して配置されており、プーリ156が回転することにより、プーリ156は、歩行器20の後述のフレーム21に一端部が固定された図示しないワイヤを巻き取り、又は、繰り出すように構成されている。ワイヤが巻き取られることにより、歩行器20が上方向へ移動させられ、ワイヤが繰り出されることにより、歩行器20が下向へ移動させられる。プーリ156においては、乱巻きにならないように、フリートアングルが15°以内になるように、より好ましくは10°以内になるように構成されている。
【0019】
歩行器20は、図1図4等に示すように、フレーム21と、着座部22と、駆動部23と、被支持部24と、下肢装着部としての上腿装着部235とを備えており、フレーム21の前側の全面を覆うように、背中パッド218が設けられている。フレーム21は、上下方向に長い略長方形状に形成されており、上フレーム部211と、図示しない下フレーム部212と、左右の縦フレーム部213、214と、上部中間フレーム部215と、ガイドレール216と、を有している。上部中間フレーム部215は、上フレーム部211に平行に、上フレーム部211よりも下側において、縦フレーム部213、214を架け渡すように設けられている。縦フレーム部213、214に固定されている。
【0020】
上フレーム部211の中央部には、ベルト261が掛けられており、ベルト261の両端部には、ハーネス固定用のバックルのメス部262、オス部263がそれぞれ設けられている。また、上フレーム部211の中央部の左右の近傍には、肩ベルト251の上端部がそれぞれ掛けられている。肩ベルト251及び肩ベルト251が掛けられたフレーム21は、使用者Pの体幹に装着される体幹装着部を構成する。
【0021】
ガイドレール216は、略長方形状フレーム21の長辺に平行に一対設けられている。一対のガイドレール216の上端部は、上部中間フレーム部215にそれぞれ固定されており、一対のガイドレール216の下端部は、下フレーム部212にそれぞれ固定されている。
【0022】
着座部22は、略長方形状に形成され、使用者の体幹の鉛直下方に配置可能であり、使用者が着座可能である座面構成部220と、一対の座面支持部221と、座面支持補助部222と、一対の被レールガイド部226と、を有している。略長方形状に形成された座面構成部220の図3の上側の長辺は、中央部において上側にそれぞれ折れ曲がって延びている。一対の座面支持部221は、この延びている部分に平行に図3の下方向に延びて略長方形状の座面構成部220の内側を通り、図3における他方の座面構成部220の長辺まで延びて当該長辺に固定されている。
【0023】
座面支持補助部222は、座面支持部221の途中の位置から、座面支持部221の長手方向に直交する方向へ延びて、長方形状に形成された座面構成部220の短辺の中央部まで延びて、当該短辺に固定されている。被レールガイド部226は、前述の略長方形状に形成された座面構成部220の長辺から側に折れ曲がって延びている部分の上端部に対して、回動可能に連結されている。
【0024】
被レールガイド部226は、ガイドレール216に支持されており、ガイドレール216に対して摺動して案内されることにより、ガイドレール216に沿って、上下方向に移動し、これにより着座部22は、上下方向に移動するように構成されている。また、被レールガイド部226が、座面部に対して回動することにより、図1に示すように、使用者が座面構成部220に座ることができるように座面構成部220が水平に配置されたり、垂直に配置されて上方向に移動することにより、フレーム21の背後に配置されたりすることが可能である。
【0025】
即ち、着座部22は、体幹装着部としてのフレーム21が上方向に移動したときに、使用者の体幹の後方に移動可能に構成されている。そして、着座部22が使用者の体幹の後方に移動することにより、使用者の鉛直下方には、後述のように便器Tを収容可能な使用者下方空間が形成される。
【0026】
座面構成部220の左右の部分、即ち、略長方形状に形成された座面構成部220の短辺の中央部には、ローラ223が設けられている。ローラ223は、座面構成部220に対して回転可能に座面構成部220に支持されており、ローラ223の軸心は、左右方向に指向している。ローラ223は、上側支持フレーム1022の上面に当接可能であり、上側支持フレーム1022の上面を転がるようにして移動可能に構成されている。
【0027】
駆動部23は、一対設けられており、左右対称の構成であるため、以下、一方の駆動部23について説明する。駆動部23は、図5等に示すように、一対の人工筋肉231-1、231-2と、3つのプーリ233-1、233-2、233-3と、上腿装着部235と、一対のワイヤ232-1、232-2と、を備えている。McKibben型の一対の人工筋肉231-1、231-2は、互いに平行な位置関係で、且つ、それぞれの長手方向が前後方向に平行な位置関係で、後述の支持部材2303と一体で上下に移動するアームレストを構成するハウジング230の中に収納されている。人工筋肉231-2は、第1アクチュエータを構成し、人工筋肉231-1は、第2アクチュエータを構成する。
【0028】
人工筋肉231-1、231-2は、ゴム等の弾性材料を用いて管状に形成された図示しない弾性チューブと、図示しない弾性チューブを覆う筒状の図示しないメッシュスリーブと、を含んで構成されており、弾性チューブをメッシュスリーブで被覆して両端をかしめた構造となっている。
【0029】
図示しない弾性チューブは、内部にガス(空気)が供給される空間を有しており、図示しない弾性チューブの内部には、管部材を通して接続されたコンプレッサを介して空気が供給されるように構成されている。
【0030】
図示しないメッシュスリーブは、例えば伸縮性の小さい高張力繊維等の線材が織り上げられること等により形成されている。そして、メッシュスリーブ内に配置された図示しない弾性チューブ内に空気が供給されて、弾性チューブが膨張すると、メッシュスリーブの長さ方向と直交する方向への寸法が増加すると共に、当該メッシュスリーブの長さ方向への寸法が減少する。これにより、人工筋肉231-1、231-2の長さが短くなって(人工筋肉231-1、231-2が収縮して)後述する大腿部を支持する力が発生するように構成されている。
【0031】
人工筋肉231-1、231-2の一端部は、ハウジング230の取り付け部に対して固定されており、人工筋肉231-1、231-2の他端部には、ワイヤ232-1、232-2の一端部がそれぞれ係止されている。
【0032】
3つのプーリ233-1、233-2、233-3は、ハウジング230の後部においてこの順で上から配置されており、3つのプーリ233-1、233-2、233-3の軸心は、それぞれ左右方向に指向している。また、ハウジング230の下側には、支持部材2303が接続されており、支持部材2303は、軸心が3つのプーリ233-1、233-2、233-3の軸心と平行に配置された、略円柱形状の回転体234を回転可能に支持している。回転体234は、使用者Pの股関節に対応する関節部を構成する。支持部材2303は、関節部を介して、上腿装着部235を使用者Pの股関節の屈曲方向(上腿装着部235が図6に示す状態から図5に示す状態へ回動する方向)及び股関節の伸展方向(上腿装着部235が図6に示す状態から図7に示す状態へ回動する方向)へ回動可能に支持する連結部を構成する。また、支持部材2303には、図1に示すように、図示しない固定部材によって、ベルト271の一端部が固定されている。ベルト271の他端部には、バックルのメス部272が設けられている。
【0033】
回転体234の円周部には、上腿装着部235が連結されている。上腿装着部235は、使用者Pの下肢を構成する上腿である大腿部に装着されるために、アーム部2351と、大腿部支持部2352と、パッド2352と、を有している。アーム部2351の一端部は、蝶番を介して回転体234の円周部に連結されており、回転体234の円周部に対して、蝶番の軸を中心として、左右方向に回動可能に回転体234の円周部に支持されている。
【0034】
アーム部2351の他端部には、略Uの字形状に形成された大腿部支持部2352が固定されている。略Uの字形状に形成された大腿部支持部2352の開口は、図2に示すように、左右方向において、互いに対向している。パッド2353は、大腿部支持部2352に接続されている。パッド2353は、大腿部支持部2352の開口からU字の内側に挿入された使用者の大腿部が、大腿部支持部2352から外れないように、パッド2353が大腿部支持部2352の開口を塞ぐように、使用者の大腿部に巻き付けられて使用される。
【0035】
前述ように一端部がそれぞれ一対の人工筋肉231-1、231-2の一端部に接続された一対のワイヤ232-1、232-2は、プーリ233-1及び233-3、プーリ233-2にそれぞれ掛けられており、一対のワイヤ232-1、232-2の他端部は、回転体234の円周部に固定されている。一対のワイヤ232-1、232-2の他端部が固定されている回転体234の円周部の位置は、人工筋肉231-1の長手方向の長さが短くなることにより、図6に示す状態から図5に示すように上腿装着部235が前方向に回動し、人工筋肉231-2の長手方向の長さが短くなることにより、図6に示す状態から図7に示すように上腿装着部235が後方向に回動することとなる位置である。図示しないコントローラからの制御により、図示しないコンプレッサを駆動させることによる、前方向への上腿装着部235の回動により、使用者の大腿部を前方向に回動させて使用者の足の屈曲を行い、また、後方向への上腿装着部235の回動により、使用者の大腿部を後方向に回動させて使用者の足の伸展を行い、これらを交互に行うことが可能であり、これにより歩行訓練を行うことが可能である。
【0036】
支持部材2303には、前側ストッパ2304と、後側ストッパ2305とが設けられている。前側ストッパ2304は、側面視で略長方形状に形成された部材により構成されている。図5に示すように、上腿装着部235を前方向に回動させたときに、前側ストッパ2304は、アーム部2351に当接して、それ以上上腿装着部235が回動しないように回動を規制する。
【0037】
後側ストッパ2305は、側面視で略長方形状に形成された部材により構成されている。図7に示すように、上腿装着部235を後方向に回動させたときに、前側ストッパ2304は、アーム部2351に当接して、それ以上上腿装着部235が回動しないように回動を規制する。
【0038】
前側ストッパ2304により回動が規制される上腿装着部235の位置は、使用者が後述のように排泄を行う際に、パッド2353を装着したまま便器に対して座位を取ることができるように、図6に示すアーム部2351が垂直の位置にある状態に対して、図5に示すように前方向に85°回動させた位置である。また、後側ストッパ2305により回動が規制される上腿装着部235の位置は、使用者の脚の可動域限界までとなるように、図6に示すアーム部2351が垂直の位置にある状態に対して、図7に示すように後方向に20°回動させた位置である。そして、上腿装着部235の回動するための必要トルクについては、健常成人男女の平均体重である58.1kgより、図8図9に示すように、屈曲85°、伸展20°のときのトルクである23.0Nm、7.9Nmとし、これを満たすように,設計出力トルクを23.3Nm以上とする。
【0039】
使用者Pが歩行訓練を行う際には、ハーネス60が用いられる。図10図11に示すように、ハーネス60は、腰ベルト61と、左右の腿ベルト62と、前部ベルト63と、後部ベルト64と、を有している。腰ベルト61は腰回りを一周し、使用者Pの正面において、バックルで留められて装着される。腿ベルト62は、左右の大腿部の付け根回りを一周した状態で装着される。
【0040】
前部ベルト63は、使用者Pの前側の位置に左右一対設けられており、前部ベルト63の上端部は、それぞれ腰ベルト61に掛けられ、前部ベルト63の下端部は、それぞれ左右の腿ベルト62に掛けられている。上下方向における前部ベルト63の中間の位置に設けられたバックルにより、前部ベルト63の上部と下部とは連結されている。
【0041】
後部ベルト64は、使用者の後側の位置に左右一対設けられており、後部ベルト64の上端部は、それぞれ左右方向における腰ベルト61の中央近傍の部分に掛けられ固定されている。後部ベルト64の下端部は、腿ベルト62の側部に接続されている。腿ベルト62の側部に接続されている後部ベルト64の部分には、それぞれ支持ベルト661の一端部が固定されている。左右の支持ベルト661の他端部には、それぞれバックルのオス部662、663が設けられている。バックルのオス部662、663は、駆動部23のバックルのメス部272に嵌合することにより連結される。これにより、使用者Pが歩行訓練をする際に、腰を歩行器20に対して動いてしまうことが抑制される。
【0042】
腰ベルト61の後部の左右方向における中央位置の近傍には、一対の固定用ベルト651の一端部がそれぞれ掛けられている。固定用ベルト651の他端部には、それぞれバックルのオス部652、メス部653が設けられている。バックルのオス部652、メス部653には、ハーネス固定用のバックルのメス部262、オス部263がそれぞれ嵌合可能である。
【0043】
以上の構成による歩行補助装置1を用いて、使用者Pの排泄を行う際の動作について説明する。
先ず、介護者は、使用者Pを図示しないベッド上に寝かせた状態とし、ハーネス60を装着する。また介護者は、着座部22の座面構成部220を、図1に示すように、水平の状態として、使用者Pが着座可能な状態とする。次に、介護者は、使用者Pを着座部22に着座させるとともに、使用者Pの大腿部を大腿部支持部2352及びパッド2352に通した状態とし、また、ハーネス60のハーネス固定用のバックルのメス部262、オス部263をバックルのオス部652、メス部653に嵌合させて、ハーネス60を歩行器20に接続する。
【0044】
次に、介護者は、図示しないコントローラを操作することにより、モータ155を駆動させてプーリ156を回転させて図示しないワイヤを巻き取り、歩行器20を台車10に対して上方向へ移動させる。これに伴い、着座部22のローラ223は、上側支持フレーム1022の上面上において転がるようにして回転し、今まで水平とされていた座面構成部220が、徐々に座面構成部220の後部が上側となり座面構成部220の前部が下側となるように傾斜してゆき、図12に示すように、座面構成部220の前部が座面構成部220の後部の鉛直下側となる位置関係となる。このとき、使用者は、図12に示すように、脚を鉛直下方に伸ばした状態で、脚が床から離れた状態となる。
【0045】
次に、介護者は、ガイドレール216により着座部22をガイドさせて着座部22を上に移動させて、歩行器20のフレーム21の全体に一致する位置関係となるように、フレーム21の後側に配置させて、フレーム21に固定する。
【0046】
次に、介護者は、図示しないコントローラを操作することにより、図示しないコンプレッサを駆動させて、駆動部23の人工筋肉231-1の長手方向の長さを短くするように、圧縮空気を人工筋肉231-1に供給するとともに、人工筋肉231-2の長手方向の長さを長くするように圧縮空気を人工筋肉231-2から排気させる。これにより、図14に示すように、ストッパ2304にアーム部2351が当接する、上腿装着部235が最も前側の位置まで回動した状態となる。これにより、使用者Pの大腿部は、上腿装着部235によって図14に示すように持ち上げられた状態となり、使用者Pの体重は、肩ベルト251と、上腿装着部235の大腿部支持部2352及びパッド2352とによって支えられた状態となる。
【0047】
次に、介護者は、使用者P及び歩行補助装置1を移動させて、後側の2つの車輪103の間を通して、使用者P及び歩行補助装置1に対して相対的に便器Tを歩行補助装置1の下方に挿入してゆく。そして、図15に示すように、便器Tが使用者Pの鉛直下方に位置するように、便器Tに対して使用者P及び歩行補助装置1を移動させる。このように便器Tを収容する、使用者Pの鉛直下方の空間は、使用者下方空間を構成する。
【0048】
次に、介護者は、使用者Pからハーネス60を取り外すとともに、使用者Pの臀部の脱衣を行う。この際、前述のように使用者Pの体重は、肩ベルト251と、上腿装着部235の大腿部支持部2352及びパッド2352とによって支えられた状態となっているため、使用者Pからのハーネス60の取り外し、及び、臀部の脱衣は容易である。
【0049】
次に、介護者は、図示しないコントローラを操作することにより、モータ155を駆動させてプーリ156を回転させて図示しないワイヤを繰り出して、歩行器20を台車10に対して下方向へ移動させる。そして、使用者Pが便器Tに着座したときに、モータ155の駆動を停止させる。使用者Pはこの状態で排泄を行う。
【0050】
使用者Pの排泄後に介護者は、図示しないコントローラを操作することにより、モータ155を駆動させてプーリ156を回転させて図示しないワイヤを巻き取り、歩行器20を台車10に対して上方向へ移動させる。このときには使用者Pの体重は、肩ベルト251と、上腿装着部235の大腿部支持部2352及びパッド2352とによって支えられた状態となっている。そして、介護者は、使用者Pの臀部に着衣を行い、使用者Pにハーネス60を取り付け、ハーネス60を歩行器20のバックルのオス部263、メス部262に接続する。
【0051】
そして介護者は、便器Tに対して使用者P及び歩行補助装置1を移動させ、図示しないコントローラを操作することにより、駆動部23の人工筋肉231-1の長手方向の長さを長くするように、圧縮空気を人工筋肉231-1から排気させる。これにより、図13に示す状態となる。
【0052】
この後に歩行訓練を行わない場合には、介護者は、ガイドレール216により着座部22をガイドさせて着座部22を下に移動させる。そして介護者は、図示しないコントローラを操作することにより、モータ155を駆動させてプーリ156を回転させて図示しないワイヤを繰り出し、歩行器20を台車10に対して下方向へ移動させ、使用者Pを着座部22の座面構成部220に着座させる。
【0053】
この後に歩行訓練を行う場合には、図13に示す状態から、介護者は、図示しないコントローラを操作することにより、モータ155を駆動させてプーリ156を回転させて図示しないワイヤを繰り出し、歩行器20を台車10に対して下方向へ移動させ、使用者Pの足を着地させる。そして、介護者は、図示しないコントローラを操作することにより、図示しないコンプレッサを駆動させて人工筋肉231-1、231-2を駆動させて、図6に示す上腿装着部235の回動位置から図5に示す上腿装着部235の回動位置へと上腿装着部235を回動させて使用者Pに脚の屈曲を行わせ、また、図6に示す上腿装着部235の回動位置から図7に示す上腿装着部235の回動位置へと上腿装着部235を回動させて使用者Pに脚の伸展を行わせることにより、歩行訓練を行う。以上の工程により、使用者Pの排泄の工程が完了する。
【0054】
上述の実施形態によれば、以下のような効果を発揮することができる。
本実施形態においては、歩行補助装置1は、上腿装着部235を、関節部を構成する回転体234周りに伸展方向側へ回動させる補助力を発生する第1アクチュエータとしての人工筋肉231-2と、上腿装着部235を回転体234周りに屈曲方向側へ回動させる補助力を発生する第2アクチュエータとしての人工筋肉231-1と、使用者Pの体幹の鉛直下方に配置可能であり使用者Pが着座可能な着座部22と、連結部としての支持部材2303と一体で上下に移動するアームレストとしてのハウジング230と、を備え、人工筋肉231-1、231-2は、アームレストとしてのハウジング230に収納されている。
【0055】
この構成により、人工筋肉231-1、231-2を、使用者Pの腕の重量の負荷がかかるアームレストを構成する、剛性の高いハウジング230に、安定してコンパクトに収納することが可能となる。このため、人工筋肉231-1、231-2を収納するスペースを別途確保する必要がなくなり、歩行補助装置1の構成を簡素化することが可能となる。この結果、歩行訓練の容易性の向上を図ることが可能となる。
【0056】
また、本実施形態においては、歩行補助装置1は、体幹装着部としてのフレーム21を上下方向に移動させる上下方向駆動部としてのモータ155を備える。この構成により、フレーム21と一体で使用者Pを上下させることが容易である。これにより、例えば、使用者Pを便器Tに着座させるために、上下方向へ容易に移動させることができ、介護者は、使用者Pの排泄の際の脱衣や着衣等を、極めて容易に行うことが可能となる。
【0057】
また、本実施形態においては、着座部22は、体幹装着部としてのフレーム21が上方向に移動したときに、使用者Pの体幹の後方に移動可能である。この構成により、使用者Pの体幹の後方の下方に、体幹装着部としてのフレーム21が存在していると都合が悪い場合、例えば、便器Tを使用者Pの体幹の鉛直下方へ位置させるために、使用者Pの体幹の後方の下方において便器Tを通過させたい等の場合に、体幹装着部としてのフレーム21を移動させることが可能である。
【0058】
また、本実施形態においては、着座部22が使用者Pの体幹の後方に移動することにより、使用者Pの鉛直下方には使用者下方空間が形成され、使用者下方空間には、便器Tを収容可能である。この構成により、使用者下方空間には、便器Tを収容した状態として、介護者による使用者Pの排泄を容易とすることが可能である。
【0059】
次に、本発明の第2実施形態に係る歩行補助装置1Aについて詳細に説明する。歩行補助装置1Aは、台車10に第3アクチュエータとしてのシングルアクションエアシリンダ111と、第4アクチュエータとしてのダブルアクションエアシリンダ121とが設けられている点で、第1実施形態に係る歩行補助装置1とは異なる。これ以外の構成については、第1実施形態に係る歩行補助装置1と同一であり、同一の部材については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
図17図18に示すように、左右の下側支持フレーム1021に接続されている部分よりも下側の上側支持フレーム1022の部分には、それぞれ、第1シリンダ端部支持部材113が設けられている。第1シリンダ端部支持部材113は、第1シリンダ部支持部1131と、第1支持部固定部1132とを有している。
【0061】
第1シリンダ部支持部1131は、上側支持フレーム1022に沿って延び、下側に開口するコの字状の板状の部材により構成されている。第1支持部固定部1132は、一対設けられており、第1シリンダ部支持部1131の長手方向における一端部及び他端部において上側支持フレーム1022を巻くようにして、第1シリンダ部支持部1131を上側支持フレーム1022に対して固定する。
【0062】
シングルアクションエアシリンダ111は、その上端部が、中空の四角柱状のシリンダ収容筒112に収容されて固定されている。シリンダ収容筒112の上端部と、第1シリンダ部支持部1131とを貫通するピンによって、シリンダ収容筒112の上端部は、第1シリンダ部支持部1131に回転可能に支持されている。
【0063】
図19に示すように、シングルアクションエアシリンダ111の内部には、シングルアクションエアシリンダ111に対して摺動するピストン1112が設けられており、ピストン1112のロッド1113の先端部(下端部)には、円柱形状の当接部115が設けられている。なお、図19図24にいては、説明の便宜上、当接部115を球形で図示している。当接部115は、シングルアクションエアシリンダ111のピストン1112が下方向へ摺動することにより、台車10が移動する移動面床Fに当接する。
【0064】
図17図18に示すように、上側支持フレーム1022に接続されている下側支持フレーム1021の上端部の近傍の部分には、第2シリンダ端部支持部材123が設けられている。第2シリンダ端部支持部材123は、第2シリンダ部支持部1231と、第2支持部固定部1232とを有している。
【0065】
第2シリンダ部支持部1231は、下側支持フレーム1021に沿って延びる部材により構成されている。第2支持部固定部1232は、第2シリンダ部支持部1231の長手方向における上側の端部において下側支持フレーム1021を巻くようにして、第2シリンダ部支持部1231を下側支持フレーム1021に対して固定する。ダブルアクションエアシリンダ121と、第2シリンダ部支持部1231と、を貫通するピンによって、ダブルアクションエアシリンダ121の上端部は、第2シリンダ部支持部1231に回転可能に支持されている。
【0066】
ダブルアクションエアシリンダ121の内部には、図19等に示すように、ダブルアクションエアシリンダ121に対して摺動するピストン1212が設けられており、ピストン1212のロッド1213の先端部(下端部)は、図17等に示すように、シリンダ収容筒112の下端部の上面に固定された板部材116に対して回動可能に支持されて接続されている。ダブルアクションエアシリンダ121のピストン1212が下方向へ摺動することにより、当接部115は、床Fに当接可能となる。逆にダブルアクションエアシリンダ121のピストン1212が上方向へ摺動することにより、当接部115は、床Fから離れる。
【0067】
図27に示すように、人工筋肉231-1と、人工筋肉231-2と、シングルアクションエアシリンダ111と、ダブルアクションエアシリンダ121とは、ガス供給装置300に接続されている。
【0068】
ガス供給装置300は、コントローラ400(図25等参照)を構成する制御装置401に電気的に接続された図示しないコンプレッサとコンプレッサから人工筋肉231-2、人工筋肉231-1、シングルアクションエアシリンダ111、及び、ダブルアクションエアシリンダ121へ圧縮空気を供給するための図示しないチューブと、を有している。
【0069】
制御装置401は、例えば、CPU、ROM、RAMなどを有して構成される。制御装置401は、ROM等の記憶媒体に記憶されているプログラムをRAMにロードし、CPUで実行する。これにより、人工筋肉231-1、人工筋肉231-2、シングルアクションエアシリンダ111の上室1111、ダブルアクションエアシリンダ121の上室1211及び下室1214への、ガス供給装置300からの圧縮空気の供給の制御を行い、これらの動作が連動するように駆動させる。
【0070】
コントローラ400は、制御装置401によるガス供給装置300に対する制御を行うために、使用者と、制御装置401との間で、情報の出力及び入力をするためのインターフェイスである。コントローラ400には、各種の操作ボタン(例えば、図25図26に示すように、歩行ボタン411、脱力ボタン412等)が設けられている。
【0071】
歩行ボタン411(図25等参照)は、歩行補助装置1Aを前進させて使用者に歩行をさせるためのボタンである。具体的には、使用者が歩行を行う際に、歩行ボタン411が押されることにより、制御装置401においてプログラムが実行されて、シングルアクションエアシリンダ111の上室1111、及び、ダブルアクションエアシリンダ121の上室1211及び下室1214に対して、圧縮空気が供給されて、歩行補助装置1Aを前進させる。また、歩行ボタン411が押されることにより、制御装置401においてプログラムが実行されて、人工筋肉231-1、及び、人工筋肉231-2に対して、圧縮空気が供給されて、使用者の大腿部を前方向に回動させる足の屈曲と、使用者の大腿部を後方向に回動させる使用者の足の伸展と、を行う。これにより、使用者において歩行が行われる。脱力ボタン412は、人工筋肉231-2、人工筋肉231-1、シングルアクションエアシリンダ111の上室1111、ダブルアクションエアシリンダ121の上室1211及び下室1214から排気させるためのボタンである。
【0072】
次に、制御装置401による制御について、図19図24を参照して説明する。制御装置401による制御は、それぞれ左右一対で儲けられたシングルアクションエアシリンダ111、及び、ダブルアクションエアシリンダ121に対して同時に行われる。
【0073】
制御装置401によるガス供給装置300に対する制御が行われる前には、図19に示すように、シングルアクションエアシリンダ111、及び、ダブルアクションエアシリンダ121は、初期状態の位置とされている。次に、使用者によりコントローラ400の歩行ボタン411が押されると、制御装置401によるガス供給装置300に対する制御により、シングルアクションエアシリンダ111の上室1111にガス供給装置300から圧縮空気が供給され始める。
【0074】
すると、ピストン1112及びロッド1113が、図19における斜め右下へ移動してゆき、図20に示すように当接部115が床Fに当接する。そして、更に、シングルアクションエアシリンダ111の上室1111にガス供給装置300から圧縮空気が供給され続けることにより、図21に示すように、当接部115が床Fを、後方へ蹴りだすようにして押して、シングルアクションエアシリンダ111が固定されている前輪支持フレーム102を含む歩行補助装置1Aを、床Fに対して相対的に前方向へ、加速させながら移動させる。
【0075】
このとき、制御装置401は、ガス供給装置300に対して制御を行い、使用者の一方の下肢を伸展させ、使用者の他方の下肢を屈曲させて、歩行の補助を行うための制御を行う。具体的には、使用者の一方の下肢に対して、上腿装着部235を回転体234周りに伸展方向側へ人工筋肉231-2により回動させるとともに、使用者の他方の下肢に対して、上腿装着部235を回転体234周りに屈曲方向側へ人工筋肉231-1により回動させる。これにより、使用者に股関節の伸展と屈曲を行わせる。即ち、当接部115が床Fを後方へ蹴りだし始めることにより、歩行補助装置1Aの台車10が床Fに対して加速しながら前進を開始すると同時に、使用者の一方の下肢は伸展して床Fを蹴りだすように、股関節の伸展と屈曲を行わせる制御を、制御装置401は、ガス供給装置300に対して行う。
【0076】
そして、第1の所定時間経過後に、シングルアクションエアシリンダ111の上室1111へのガス供給装置300からの圧縮空気の供給が停止するように、制御装置401はガス供給装置300に対して制御を行い、これと同時に、図22に示すように、ダブルアクションエアシリンダ121の下室1214へ、ガス供給装置300からの圧縮空気の供給が行われる。これより、当接部115は持ち上げられて、床Fから離れる。
【0077】
このように、当接部115が持ち上げられて、床Fから離れたときであっても、引き続き、使用者に股関節の伸展と屈曲を行わせるための制御を、制御装置401は、ガス供給装置300に対して行い続ける。
【0078】
そして、第2の所定時間経過後に、ダブルアクションエアシリンダ121の下室1214への、ガス供給装置300からの圧縮空気の供給が停止するように、制御装置401はガス供給装置300に対して制御を行い、これと同時に、図23に示すように、ダブルアクションエアシリンダ121の上室1211へ、ガス供給装置300からの圧縮空気の供給が行われる。これより、当接部115は、持ち上げられて床Fから離れた状態で、床Fに近付けられて、図24に示すように、初期状態の位置に戻される。
【0079】
このように、当接部115が初期状態の位置へ移動させられて戻されているときであっても、引き続き、使用者に股関節の伸展と屈曲を行わせるための制御を、制御装置401は、ガス供給装置300に対して行い続ける。
【0080】
上述の実施形態によれば、以下のような効果を発揮することができる。
本実施形態においては、フレーム21を移動可能に支持する台車10と、一端部が台車10に揺動可能に接続され、他端部に台車10が移動する床Fに当接可能な当接部115を備え、当接部115を一端部に対して離間/接近可能に駆動するシングルアクションエアシリンダ111と、一端部が台車10に揺動可能に接続され、他端部にシングルアクションエアシリンダ111の他端部側の部分が接続され、シングルアクションエアシリンダ111の他端部側の部分を上下方向に移動させるダブルアクションエアシリンダ121と、を備える。この構成により、シングルアクションエアシリンダ111とダブルアクションエアシリンダ121とを駆動させることにより、台車10を加速させながら移動させることが可能である。この結果、歩行訓練の容易性の向上を図ることが可能となる。
【0081】
また、本実施形態においては、制御装置401は、シングルアクションエアシリンダ111、ダブルアクションエアシリンダ121、人工筋肉231-1、及び、人工筋肉231-2のそれぞれの動作が連動するようにガス供給装置300に対して制御を行う。これにより、歩行補助を台車10と共に前進するように歩行者の歩行の補助をすることが可能となり、より実際の歩行に近い歩行の補助を行うことが可能となる。
【0082】
また、本実施形態においては、制御装置401は、シングルアクションエアシリンダ111に対してガス供給装置300からガスとしての圧縮空気を供給して、当接部115を床Fに対して当接させ、当接後に、所定時間ガスとしての圧縮空気を供給し続けて台車10の移動を行い、台車10の移動の後に、ダブルアクションエアシリンダ121に対してガス供給装置300からガスを供給して、シングルアクションエアシリンダ111のロッド1113の端部の当接部115を上方向に移動させて、当接部115の床Fからの離間を行い、床Fからの離間の後に、台車10の移動を行う前の位置に当接部115を戻す初期位置への移動を行うように、ガス供給装置300に対して制御を行う。
【0083】
これにより、当接部115により床Fを蹴りだすようにして押して、台車10を前方向へ移動させることが可能となる。また、床Fを蹴りだすようにして押したあとに、初期状態の位置に当接部115を戻すため、当接部115が床Fを押していない時間が生ずるが、このため、床Fを蹴りだした後の当接部115が邪魔になることを防ぐことが可能となる。このときには、歩行の補助が行われている状態で、使用者が自ら歩行の訓練を行うことが可能となる。
【0084】
また、本実施形態においては、制御装置401は、台車10の移動を開始すると共に、使用者の一方の下肢に対して、下肢装着部としての上腿装着部235を関節部としての回転体234周りに伸展方向側へ人工筋肉231-2により回動させるとともに、使用者の他方の下肢に対して、上腿装着部235を回転体234周りに屈曲方向側へ人工筋肉231-1により回動させて、使用者に股関節の伸展と屈曲を行わせる股関節の伸展及び屈曲の制御をガス供給装置300に対して行い始め、その後、床Fからの離間を行っているとき、及び、初期位置への移動を行っているときにも、制御装置401は、股関節の伸展及び屈曲の制御を継続して行う。
【0085】
これにより、床Fからの離間を行っているとき、及び、初期位置への移動を行っているときにも、制御装置401は、前記股関節の伸展及び屈曲の制御を継続して行われているため、使用者は、台車10が前進しているときの延長として、股関節の伸展及び屈曲が行われるため、上腿装着部235による股関節の伸展及び屈曲を行うことによる歩行訓練を、無理なく自然に行うことができる。
【0086】
本発明は、上述した実施形態に制限されることなく、請求の範囲に記載した範囲において、様々な形態で実施することができる。例えば、歩行補助装置の各部の構成は、歩行補助装置1の各部の構成に限定されない。即ち、体幹装着部、下肢装着部、関節部、連結部、第1アクチュエータ、第2アクチュエータ、着座部、アームレスト、等の構成は、本実施形態におけるフレーム21及び251、上腿装着部235、回転体234、支持部材2303、人工筋肉231-2、人工筋肉231-1、着座部22、ハウジング230の構成に限定されない。具体的には例えば、下肢装着部は、上腿を支持する上腿装着部235により構成されたが、上腿に代えて下腿を支持する下腿装着部により構成されてもよいし、上腿及び下腿を支持する上下腿支持部により構成されてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1、1A 歩行補助装置
10 台車
21 フレーム(体幹装着部)
22 着座部
111 シングルアクションエアシリンダ(第3アクチュエータ)
115 当接部
121 ダブルアクションエアシリンダ(第4アクチュエータ)
155 モータ(上下方向駆動部)
230 ハウジング(アームレスト)
231-1、231-2 人工筋肉(第1アクチュエータ、第2アクチュエータ)
234 回転体(関節部)
235 上腿装着部(下肢装着部)
251 肩ベルト(体幹装着部)
300 ガス供給装置
401 制御装置
2303 支持部材(連結部)
P 使用者
T 便器
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