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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】改質処理装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/36 20060101AFI20240726BHJP
   B01J 23/88 20060101ALI20240726BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
C01B3/36
B01J23/88 M
C01B3/56 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021058612
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022155214
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】中神 翔
(72)【発明者】
【氏名】池田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】松尾 日向子
(72)【発明者】
【氏名】松村 南月
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-097914(JP,A)
【文献】特開2006-248863(JP,A)
【文献】特開2008-105895(JP,A)
【文献】特開2016-000675(JP,A)
【文献】特開2020-158334(JP,A)
【文献】特開2009-084084(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102730638(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0131533(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00 -6/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される原料ガスを脱硫処理する脱硫器と、当該脱硫器からの前記原料ガスを水蒸気改質処理して改質ガスを生成する改質反応管及び当該改質反応管を加熱する改質用バーナを備える改質器と、当該改質器からの前記改質ガスに含まれる一酸化炭素を二酸化炭素に変成処理して変成ガスを生成する一酸化炭素変成触媒を有し且つ当該一酸化炭素変成触媒を冷却する冷却水を流動させる冷却管を備えるCO変成器と、水蒸気生成用水を前記改質用バーナの燃焼ガスにて加熱して前記原料ガスに混合する水蒸気を生成する水蒸気生成用熱交換器と、が備えられた改質処理装置であって、
水供給源からの水を前記冷却水として前記冷却管に供給し、当該冷却管を流動した後の水を前記水蒸気生成用水として前記水蒸気生成用熱交換器に供給する定常運転モードと、前記水供給源からの水を前記水蒸気生成用熱交換器に供給して昇温用蒸気を生成し、当該昇温用蒸気を前記冷却管に供給する起動運転モードとに切換えるモード切換部が備えられている改質処理装置。
【請求項2】
運転制御部が、前記原料ガスの供給を停止しかつ前記改質用バーナの燃焼を停止させた運転停止状態から運転を開始する際に、前記原料ガスの供給を停止しかつ前記改質用バーナを燃焼させた状態で、昇温用ガスを、前記CO変成器から排出されると前記脱硫器に戻す形態で、前記脱硫器、前記改質器、前記CO変成器を通して循環させる起動運転を行った後に、前記原料ガスの供給を開始して前記変成ガスを生成する定常運転を行うように構成され、且つ、前記起動運転において前記モード切換部を前記起動運転モードに、前記定常運転において前記モード切換部を前記定常運転モードに制御するように構成されている請求項1に記載の改質処理装置。
【請求項3】
前記CO変成器が、改質ガス入口を一端側に備えかつ変成処理後の変成ガス出口を他端側に備える筒状の変成炉本体を備える形態に構成され、
前記変成炉本体の内部の径方向の中央箇所に、柱状の充填体が前記一端側から前記他端側に向かう状態で配置され、前記変成炉本体の内部における前記充填体の外方側空間に、前記冷却管が前記一端側から前記他端側に向けて螺旋状に配置され且つ前記一酸化炭素変成触媒が充填されている請求項1又は2に記載の改質処理装置。
【請求項4】
前記改質器が、天井壁と底壁との間に円筒状の側壁が配置された改質炉を備える形態に構成され、
前記天井壁の中央箇所に、前記改質用バーナが下向きに燃焼する状態で設けられ、当該改質用バーナの周囲に、前記改質反応管が前記天井壁から垂下する姿勢で設けられ、
前記側壁の上方側箇所に、前記改質用バーナの燃焼ガスを排出する排出部が開口され、 前記側壁の外方側箇所に、前記天井壁と前記底壁との間に配置される形態で円筒状の外方壁が設けられ、
前記水蒸気生成用熱交換器が、前記側壁と前記外方壁との間の外部空間に配置され、
前記外方壁の下方側箇所に、前記排出部から前記外部空間を通して流動する前記燃焼ガスを排出する外部排出口が設けられている請求項1~3のいずれか1項に記載の改質処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給される原料ガスを脱硫処理する脱硫器と、当該脱硫器からの前記原料ガスを水蒸気改質処理して改質ガスを生成する改質反応管及び当該改質反応管を加熱する改質用バーナを備える改質器と、当該改質器からの前記改質ガスに含まれる一酸化炭素を二酸化炭素に変成処理して変成ガスを生成する一酸化炭素変成触媒を有し且つ当該一酸化炭素変成触媒を冷却する冷却水を流動させる冷却管を備えるCO変成器と、水蒸気生成用水を前記改質用バーナの燃焼ガスにて加熱して前記原料ガスに混合する水蒸気を生成する水蒸気生成用熱交換器と、が備えられた改質処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる改質処理装置は、天然ガスやナフサ等の炭化水素系ガスである原料ガスを脱硫器に供給して脱硫処理し、脱硫処理後の原料ガスを水蒸気の混合状態で改質反応管に供給することにより、改質器にて水素成分が多い改質ガスに改質し、改質ガスに含まれる一酸化炭素をCO変成器にて二酸化炭素に変成処理することにより、水素成分が多く且つ一酸化炭素の濃度が低い変成ガスを生成することになる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1においては、CO変成器の詳細な説明が省略されているが、CO変成器は、改質ガスに含まれる一酸化炭素を二酸化炭素に変成処理する一酸化炭素変成触媒を有し且つ当該一酸化炭素変成触媒を冷却する冷却水を流動させる冷却管を備える形態に構成されることになる(例えば、特許文献2参照)。
つまり、CO変成器における一酸化炭素を二酸化炭素に変成処理する反応は発熱反応であるから、冷却管を通して冷却水を流動させることにより、CO変成器の温度を、一酸化炭素を二酸化炭素に変成処理するのに適する温度(例えば、200℃前後)に維持することになる。
【0004】
ちなみに、改質処理装置にて生成された変成ガスは、例えば、圧力変動吸着式の水素精製装置に供給されて、変成ガス中の水素成分以外の雑ガスを吸着除去することにより、水素成分の濃度が高い製品ガスが製造されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-675号公報
【文献】特開平9-268001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
改質処理装置においては、原料ガスの供給を停止しかつ改質用バーナの燃焼を停止させた運転停止状態から運転を開始する際には、原料ガスの供給を停止しかつ改質用バーナの燃焼を開始させた状態で、昇温用ガスを、CO変成器から排出されると脱硫器に戻す形態で、脱硫部、改質器、CO変成器を通して循環流動させて、脱硫部、改質器、CO変成器を昇温させる起動運転を行い、その後、原料ガスを脱硫器に供給する定常運転を行うことになる。
【0007】
ちなみに、改質処理装置を停止しておくときに、改質処理装置の内部流路に水素ガスを充填させておく場合には、その水素ガスを昇温用ガスとして用いて、起動運転を行うことになる。
また、改質処理装置を停止して保管しておくときに、改質処理装置の内部流路に不活性ガス(例えば、窒素ガス)を充填させておく場合には、改質処理装置の内部流路に水素ガスを供給しながら不活性ガス(例えば、窒素ガス)を装置外に排出する水素ガスパージ処理を行い、その後、改質処理装置に充填された水素ガスを昇温用ガスとして用いて、起動運転を行うことになる。
【0008】
起動運転を行うと、改質器は改質用バーナの燃焼により迅速に昇温させ易いものであるが、CO変成器は、通流する昇温用ガスの加熱により昇温されるものであるから、冷却管に冷却水を流動させることを停止しても、迅速に昇温させ難い傾向となる。
尚、CO変成器を迅速に昇温させるために、起動運転用のヒータを設置することが考えられるが、この場合、イニシャルコスト、ランニングコストが大幅に増加することになるため、実用し難いものである。
【0009】
本発明は、上記実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、既設の構成を有効利用しながら、起動運転の際にCO変成器を迅速に昇温させることができる改質処理装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の改質処理装置は、供給される原料ガスを脱硫処理する脱硫器と、当該脱硫器からの前記原料ガスを水蒸気改質処理して改質ガスを生成する改質反応管及び当該改質反応管を加熱する改質用バーナを備える改質器と、当該改質器からの前記改質ガスに含まれる一酸化炭素を二酸化炭素に変成処理して変成ガスを生成する一酸化炭素変成触媒を有し且つ当該一酸化炭素変成触媒を冷却する冷却水を流動させる冷却管を備えるCO変成器と、水蒸気生成用水を前記改質用バーナの燃焼ガスにて加熱して前記原料ガスに混合する水蒸気を生成する水蒸気生成用熱交換器と、が備えられたものであって、その特徴構成は、
水供給源からの水を前記冷却水として前記冷却管に供給し、当該冷却管を流動した後の水を前記水蒸気生成用水として前記水蒸気生成用熱交換器に供給する定常運転モードと、前記水供給源からの水を前記水蒸気生成用熱交換器に供給して昇温用蒸気を生成し、当該昇温用蒸気を前記冷却管に供給する起動運転モードとに切換えるモード切換部が備えられている点にある。
【0011】
すなわち、原料ガスを脱硫器に供給して変成ガスを生成する定常運転を行うときには、モード切換部を定常運転モードに切換えることにより、水供給源からの水を冷却水としてCO変成器の冷却管に供給し、当該冷却管を流動した後の水を水蒸気生成用水として水蒸気生成用熱交換器に供給することになるから、CO変成器の熱及び改質用バーナの燃焼ガスの熱を有効利用しながら、原料ガスに供給する水蒸気を生成できることになる。
【0012】
運転停止状態から運転を開始する際には、原料ガスの供給を停止しかつ改質用バーナの燃焼を開始させた状態で、昇温用ガスを、CO変成器から排出されると脱硫器に戻す形態で、脱硫部、改質器、CO変成器を通して循環流動させて、脱硫部、改質器、CO変成器を昇温させる起動運転を行うことになるが、その起動運転を行うときに、モード切換部を起動運転モードに切換えることにより、水供給源からの水を水蒸気生成用熱交換器に供給して昇温用蒸気を生成し、当該昇温用蒸気をCO変成器の冷却管に供給することができる。
【0013】
従って、起動運転を行うときに、昇温用ガスによりCO変成器を加熱することに加えて、冷却管に供給される昇温用蒸気にてもCO変成器を加熱することができるから、起動運転を行う際に、CO変成器を迅速に昇温させることができる。
つまり、既設の構成、つまり、水蒸気生成用熱交換器及びCO変成器の冷却管を有効利用しながら、起動運転の際にCO変成器を迅速に昇温させることができるのである。
ちなみに、CO変成器を迅速に昇温させるようにすれば、CO変成器の熱を利用して脱硫器をも迅速に昇温させることができる。
【0014】
要するに、本発明の改質処理装置の特徴構成によれば、既設の構成を有効利用しながら、起動運転の際にCO変成器を迅速に昇温させることができる。
【0015】
本発明の改質処理装置の更なる特徴構成は、運転制御部が、前記原料ガスの供給を停止しかつ前記改質用バーナの燃焼を停止させた運転停止状態から運転を開始する際に、前記原料ガスの供給を停止しかつ前記改質用バーナを燃焼させた状態で、昇温用ガスを、前記CO変成器から排出されると前記脱硫器に戻す形態で、前記脱硫器、前記改質器、前記CO変成器を通して循環させる起動運転を行った後に、前記原料ガスの供給を開始して前記変成ガスを生成する定常運転を行うように構成され、且つ、前記起動運転において前記モード切換部を前記起動運転モードに、前記定常運転において前記モード切換部を前記定常運転モードに制御するように構成されている点にある。
【0016】
すなわち、運転制御部が、原料ガスの供給を停止しかつ改質用バーナの燃焼を停止させた運転停止状態から運転を開始する際には、先ず、原料ガスの供給を停止しかつ改質用バーナを燃焼させた状態で、昇温用ガスを、CO変成器から排出されると脱硫器に戻す形態で、脱硫器、改質器、CO変成器を通して循環させる起動運転を行った後に、原料ガスの供給を開始して変成ガスを生成する定常運転を行うことになる。
【0017】
そして、運転制御部が、起動運転においてモード切換部を起動運転モードに、定常運転モードにおいてモード切換部を定常運転モードに制御するものであるから、起動運転モードにおいて、冷却管に供給される昇温用蒸気にてCO変成器を加熱することを適切に行い、また、定常運転モードにおいて、原料ガスに供給する水蒸気を適切に生成することができる。
【0018】
要するに、本発明の改質処理装置の更なる特徴構成によれば、起動運転においてCO変成器を昇温用蒸気にて適切に加熱しかつ定常運転モードにおいて原料ガスに供給する水蒸気を適切に生成することができる。
【0019】
本発明の改質処理装置の更なる特徴構成は、前記CO変成器が、改質ガス入口を一端側に備えかつ変成処理後の変成ガス出口を他端側に備える筒状の変成炉本体を備える形態に構成され、
前記変成炉本体の内部の径方向の中央箇所に、柱状の充填体が前記一端側から前記他端側に向かう状態で配置され、前記変成炉本体の内部における前記充填体の外方側空間に、前記冷却管が前記一端側から前記他端側に向けて螺旋状に配置され且つ前記一酸化炭素変成触媒が充填されている点にある。
【0020】
すなわち、筒状の変成炉本体の内部の径方向の中央箇所に、柱状の充填体が一端側から他端側に向かう状態で配置され、変成炉本体の内部における充填体の外方側空間に、冷却管が変成炉本体の一端側から他端側に向けて螺旋状に配置され且つ一酸化炭素変成触媒が充填されているから、改質ガスに含まれる一酸化炭素を二酸化炭素に変成処理する一酸化炭素変成触媒の全体を、冷却管にて適正温度に良好に冷却できるものとなる。
【0021】
つまり、柱状の充填体が存在しない場合には、筒状の変成炉本体の内部の径方向の中央箇所にも一酸化炭素変成触媒が充填されることになるが、変成炉本体の内部の径方向の中央箇所に充填されている一酸化炭素変成触媒は、変成炉本体の一端側から他端側に向けて螺旋状に配置される冷却管の内部における径方向の中央箇所に位置することになるため、冷却管にて適正温度に冷却できないものとなる虞があるが、柱状の充填体が筒状の変成炉本体の内部の径方向の中央箇所に存在することにより、一酸化炭素変成触媒の全体を、冷却管にて適正温度に良好に冷却できるものとなる。
【0022】
そして、一酸化炭素変成触媒の全体を、冷却管にて適正温度に良好に冷却できることにより、CO変成器の一酸化炭素変成触媒を通して流動する改質ガスの全体に対して良好に変成処理することができる。
【0023】
要するに、本発明の改質処理装置の特徴構成によれば、CO変成器の一酸化炭素変成触媒を通して流動する改質ガスの全体に対して良好に変成処理することができる。
【0024】
本発明の改質処理装置の更なる特徴構成は、前記改質器が、天井壁と底壁との間に円筒状の側壁が配置された改質炉を備える形態に構成され、
前記天井壁の中央箇所に、前記改質用バーナが下向きに燃焼する状態で設けられ、当該改質用バーナの周囲に、前記改質反応管が前記天井壁から垂下する姿勢で設けられ、
前記側壁の上方側箇所に、前記改質用バーナの燃焼ガスを排出する排出部が開口され、 前記側壁の外方側箇所に、前記天井壁と前記底壁との間に配置される形態で円筒状の外方壁が設けられ、
前記水蒸気生成用熱交換器が、前記側壁と前記外方壁との間の外部空間に配置され、
前記外方壁の下方側箇所に、前記排出部から前記外部空間を通して流動する前記燃焼ガスを排出する外部排出口が設けられている点にある。
【0025】
すなわち、改質炉の側壁の外方側箇所に、円筒状の外方壁が、天井壁と底壁との間に配置される状態で設けられて、排出部から排出される燃焼ガスが、側壁と外方壁との間の外部空間を通して流動して、外方壁の下方側箇所の外部排出口から外部に排出されることになるから、炉本体の側壁の外方側箇所を外方壁にて覆うこと、および、側壁と外方壁との間の外部空間を通して燃焼ガスが流動することにより、バーナの燃焼により発生する熱が、炉本体の外部に逃げることを抑制する断熱性を向上させることができることになり、その結果、改質反応管の内部の触媒を適正な反応温度に維持しながらもバーナの燃焼量の低下を十分に図ることができる。
【0026】
しかも、側壁と外方壁との間の燃焼ガスが流動する外部空間に、水蒸気生成用熱交換器を配置するものであるから、水蒸気生成用熱交換器を改質炉とを別の箇所に配置する場合に較べて、水蒸気生成用熱交換器と改質炉とをコンパクトに配置することができる。
【0027】
要するに、本発明の改質処理装置の特徴構成によれば、改質反応管の内部の触媒を適正な反応温度に維持しながらもバーナの燃焼量の低下を十分に図ることができ、しかも、蒸気生成用熱交換器と改質炉とをコンパクトに配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】水素製造装置の概略構成図である。
図2】水素製造装置の起動運転中のガスの流通状態を示す図である。
図3】起動運転モードの純水の流れ状態を示す図
図4】定常運転モードの純水の流れ状態を示す図である。
図5】CO変成器を示す縦断正面図である。
図6】改質炉を示す縦断正面図である。
図7】改質炉における反応管の配置形態を示す平面図である。
図8】反応管を示す一部省略縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔実施形態〕
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
(水素製造装置の全体構成)
図1に基づいて、水素製造装置100について説明する。尚、図1は、水素精製運転を実行しているときの状態を例示するものであって、図中、原料ガスG等の各種ガスが流通している流路については太線で示し、各種ガスが流通していない流路については細線で示している。また、流路を開閉するバルブ類に関し、開放状態にあるものは白抜きで示し、閉止状態にあるものは黒塗りで示している。起動運転を実行して状態を示す図2、起動運転モードを示す図3、及び、定常運転モードを示す図4も同様である。
【0031】
水素製造装置100には、改質部R(改質処理装置の一例)、及び、当該改質部Rから供給される変成ガス中に含まれる不純物を吸着除去して、水素濃度が高い製品ガスを精製する圧力変動吸着式の水素分離部20が備えられている。
そして、運転制御部Mが、改質部R及び水素分離部20の作動を制御するように構成されている。
【0032】
(改質部の詳細)
改質部Rは、圧縮器Dにより圧送される状態で供給される炭化水素系ガスである原料ガスGを脱硫処理する脱硫器Pと、脱硫後の原料ガスGが水蒸気の混合状態で供給される改質器Hと、改質器Hにて生成された改質ガスKに含まれる一酸化炭素を二酸化炭素に変成処理するCO変成器Qとを備えている。
尚、原料ガスGの供給を断続しかつ原料ガスGの供給量を調整する原料ガス弁V1が、圧縮器Dの上手側箇所に設けられている。
【0033】
圧縮器Dにて圧送される原料ガスGが第1流路L1を通して脱硫器Pに供給される。脱硫器Pには、Ni-Mo系、ZnO系等の脱硫触媒が充填されており、当該脱硫触媒により、原料ガスG中の付臭剤等の硫黄成分を除去するように構成されている。
脱硫後の原料ガスGが、第2流路L2を通して改質器Hに供給される。当該第2流路L2には、水蒸気生成用熱交換器Jにて生成された水蒸気が供給されて、第2流路L2を流動する原料ガスGに水蒸気が混合される。
【0034】
そして、改質器Hでは、改質用バーナBの燃焼により、改質反応管A(図6参照)を加熱して、水蒸気が混合された原料ガスGを水蒸気改質処理することにより、改質ガスKを生成するように構成されている。
尚、図1においては、改質器Hの構成を概略的に示すものであり、また、改質用バーナBに対して燃焼用空気を供給する構成の記載を省略する。
【0035】
改質器Hで得られた改質ガスKは、第3流路L3を通して、改質ガス中の一酸化炭素を水蒸気と反応させるCO変成器Qに供給される。CO変成器Qには、一酸化炭素変成触媒Z(図5参照)が充填され、改質ガス中の一酸化炭素が水蒸気と反応して水素と二酸化炭素に変成処理される。
CO変成器Qでの反応により、改質ガスKは、水素、一酸化炭素、二酸化炭素およびメタンを含む変成ガス(水素濃度が64~96体積%)となる。
尚、脱硫器Pにおける脱硫反応は吸熱反応であり、CO変成器QにおけるCO変成反応は発熱反応であるため、これらを一体の反応容器に格納する等により、互いに熱交換可能に構成されている。
【0036】
(変成ガスの流動について)
CO変成器Qより排出された変成ガスは、第4流路L4を流動する途中において、冷却水熱交換器18により冷却水と熱交換して降温されて水蒸気が液化され、気液分離部19により水分が除去され、その後、第5流路L5を通して水素分離部20に導かれる。
第5流路L5には、当該第5流路L5を開閉する変成ガス弁V5が設けられている。
【0037】
第5流路L5には、気液分離部19にて水分が除去された変成ガスを、PSA装置22を迂回して圧縮器Dの上流側に返送する返送路L10が分岐されている。
返送路L10には、当該返送路L10を開閉する返送弁V10が設けられている。
【0038】
尚、図示は省略するが、気液分離部19にて水分が除去された変成ガスを脱硫器Pでの脱硫処理のために、圧縮器Dの上流側に返送する脱硫処理用返送ラインが設けられ、そして、この脱硫処理用返送ラインを開閉する脱硫処理用開閉弁が設けられている。
脱硫処理用開閉弁は、後述する水素精製運転(定常運転)のときには開かれ、その他のときには、閉じられることになる。
【0039】
また、第4流路L4における冷却水熱交換器18によりも上流側箇所には、純水を貯留する純水タンク24から純水供給ポンプ25にて供給される純水と変成ガスとを熱交換する純水熱交換器26が設けられている。
また、第5流路L5には、当該第5流路L5を流動するガスを外部に排出する排気路L12が分岐されている。排気路L12には、当該排気路L12を開閉する排気弁V12が設けられている。
【0040】
ちなみに、第1流路L1、第2流路L2、第3流路L3、第4流路L4、及び、返送路L10を用いて、CO変成器Qを通過したガスを、脱硫器P、改質器H、CO変成器Qを経由して循環させる閉循環回路Cが形成可能に構成されている(図2参照)。
【0041】
(水素分離部の詳細)
水素分離部20は、CO変成器Qにて変成処理された変成ガスに含まれる水素以外の不純物(雑ガス)を分離して水素ガスの濃度が高い製品ガスを精製する圧力揺動吸着式のPSA装置22と、精製された製品ガスを貯留する製品タンク23と、PSA装置22から排出されるオフガスを貯留するオフガスタンク21とを備えている。
【0042】
PSA装置22には、複数(当該実施形態では3つ)の吸着塔20a、20b、20cが備えられている。各吸着塔20a、20b、20cには、吸着材としてゼオライト系吸着材、活性炭、シリカゲルなどを組み合わせたものが充填されている。
各吸着塔20a、20b、20cでは、吸着工程、減圧工程、パージ工程、および昇圧工程のプロセス(PSA法のプロセス)を、複数の吸着塔20a、20b、20cで位相を異ならせて実行することにより水素ガス濃度が高い製品ガスを精製するように構成されている。
【0043】
詳細な説明は省略するが、上述のプロセス(PSA法のプロセス)は、運転制御部Mにより、複数の吸着塔20a、20b、20cに接続される各流通路に設けられる複数のバルブ(図示略)の開閉を行って、順次実行される。
尚、図1では、吸着塔20aが、変成ガスを流通して製品ガスを得る吸着工程が行われている状態を示している。
【0044】
PSA装置22にて精製された製品ガスは、第6流路L6を通して製品タンク23に供給され、製品タンク23に貯留された製品ガスが水素使用箇所へ安定供給される。
第6流路L6には、当該第6流路L6を開閉する製品ガス弁V6が設けられている。
PSA装置22にて水素が分離された後のオフガス(雑ガス)は、第7流路L7を通してオフガスタンク21に供給される。
第7流路L7には、当該第7流路L7を開閉するオフガス弁V7が設けられている。
【0045】
オフガスタンク21に貯留されたオフガスは、メタン、水素等の可燃性ガスを含むため、オフガス流通路L8を介して燃料ガス供給部10に導かれ、燃料ガスとして、燃料ガス供給部10から改質用バーナBへ供給される。
オフガス流通路L8には、当該オフガス流通路L8を開閉するオフガス返送弁V8が設けられている。
図1では、製品ガスの流れのみを示しているが、製品ガスの送出と、オフガスの送出は、異なった吸着塔20a、20b、20cを対象として、同時に行われるタイミングが存在する。
【0046】
ちなみに、後述する水素パージ処理を実行するために、製品タンク23から返送路L10に対して水素ガスを供給する水素供給路L11が設けられている。
水素供給路L11には、当該水素供給路L11を開閉する水素ガス弁V11が設けられている。
【0047】
(水素精製運転の詳細)
図1に示すように、水素精製運転状態(定常運転)においては、原料ガスGが、原料ガス弁V1を通過した後、圧縮器Dにて圧送され、第1流路L1を流通して脱硫器Pに導かれて脱硫処理される。その後、水蒸気が混合された原料ガスGが改質器Hに導かれて水蒸気改質処理されて改質ガスKが生成される。改質ガスKが、CO変成器Qで変成処理され、変成ガスが、冷却水熱交換器18にて冷却され、気液分離部19にて水分が除去された後、第5流路L5を通して水素分離部20に導入されて、製品ガス(水素ガス)が精製される。
【0048】
(改質器の全体構成)
図6に示すように、改質器Hは、天然ガスやナフサ等の炭化水素系の原料ガスGを水蒸気改質処理により水素成分が多い改質ガスKに改質するものであって、改質反応管A及び当該改質反応管Aを加熱する改質用バーナBを装備した改質炉2を備えている。
【0049】
改質炉2が、天井壁2Uと、底壁2Dと、天井壁2Uと底壁2Dとの間に配置される円筒状の側壁2Sを備える形態に構成されている。
そして、改質器Hにおける天井壁2Uの中央箇所に、改質用バーナBが下向きに燃焼する形態に設けられ、側壁2Sの上方側箇所に、改質用バーナBの燃焼ガスEを排出する排出部2Eが開口されている。
【0050】
図6及び図7に示すように、複数の改質反応管Aが、改質器Hの天井壁2Uから垂下する姿勢で、且つ、改質用バーナBの周囲に沿って間隔を隔てて並置される形態で設けられている。
尚、本実施形態においては、複数の改質反応管Aとして、4つの改質反応管Aを設ける場合を例示するが、3つや5つ以上の改質反応管Aを設ける形態で実施してもよい。
【0051】
また、図6に示すように、円筒状の外方壁2Gが、改質器Hの側壁2Sの外方側箇所に、天井壁2Uと底壁2Dとの間に配置される状態で設けられている。
そして、側壁2Sと外方壁2Gとの間の外部空間Fに、改質反応管Aの上部に供給する原料ガスGに混合する水蒸気を生成する水蒸気生成用熱交換器Jが配置され、また、外方壁2Gの下方側箇所に、排出部2Eから外部空間Fを通して流動する燃焼ガスEを排出する外部排出口2Zが設けられている。
【0052】
さらに、図6に示すように、外部空間Fにおける水蒸気生成用熱交換器Jと外方壁2Gとの間に、改質用バーナBに供給する空気を予熱する空気予熱用熱交換器Nが設けられている。
【0053】
(反応管部の詳細)
改質反応管Aは、図8に示すように、底部が閉塞された外管3と、当該外管3の内部に配置される内管4とを備え、内管4が、底部を開口する状態に形成され、外管3と内管4との間に、粒状の改質処理用触媒Sが充填された充填部が上下方向に向かう姿勢で形成されている。
外管3の上端側部分が、改質器Hの天井壁2Uを貫通する状態で当該天井壁2Uに支持され、内管4の上端側部分が、外管3の管上壁3uを貫通する状態で、当該管上壁3uに支持されている。
【0054】
外管3と内管4との間には、改質処理用触媒Sを受止め支持する多孔状の触媒支持部Tが設けられている。
触媒支持部Tは、外管3の底部側に向けて外管3と内管4との間を通して流動する改質ガスK(処理ガスの一例)を通流させる通流孔を備える状態に形成され、そして、内管4の下端部に支持されている。
ちなみに、図8においては、触媒支持部Tとして、通流孔が全体に亘って形成されている多孔板状の形態を例示するが、例えば、通流孔が周方向に沿って一列状に並ぶ状態に形成された板状の形態に構成する等、触媒支持部Tとしては、改質処理用触媒Sを受止め且つ改質ガスKを通流させる通流孔を備える形態であれば、各種の形態に構成できる。
【0055】
図6及び図8に示すように、外管3における改質器Hの天井壁2Uから突出する部分には、水蒸気が混合された原料ガスGを導入する原料ガス導入管5aが接続されている。この原料ガス導入管5aが、図6に示すように、環状の原料ガス分配管5bに接続され、この原料ガス分配管5bに、水蒸気が混合された原料ガスGを供給する原料ガス管5が接続されている。
つまり、原料ガス管5から環状の原料ガス分配管5bに、水蒸気が混合された原料ガスGが供給され、環状の原料ガス分配管5bから複数の改質反応管Aに、水蒸気が混合された原料ガスGが供給されるように構成されている。
【0056】
ちなみに、図6に示す如く、原料ガス管5には、後述の如く、水蒸気生成用熱交換器Jにて生成された水蒸気が供給されることになり、原料ガス管5を通して、原料ガスGと水蒸気とが混合された状態で外管3に供給されることになる。
【0057】
図6及び図8に示すように、内管4における外管3から突出する部分には、改質ガスKを排出する排出管6aが接続されている。この排出管6aが、図6に示すように、環状の合流管6bに接続され、この合流管6bに改質ガスKを案内する案内管6が接続されている。
つまり、改質反応管Aから排出管6aを通して改質ガスKが排出され、その改質ガスKが、環状の合流管6bを経由して案内管6を通してCO変成器Qに向けて流動することになる。
【0058】
(水蒸気生成用熱交換器の詳細)
水蒸気生成用熱交換器Jは、図6に示すように、改質器Hの側壁2Sの外周に沿って伝熱用管7を螺旋状に配置する形態に構成されている。
つまり、伝熱用管7の下端部に、純水Wが供給される純水導入管部7aが形成され、伝熱用管7の上端部に、水蒸気を原料ガス管5に供給する水蒸気排出管部7bが形成されている。
【0059】
したがって、水蒸気生成用熱交換器Jは、純水導入管部7aに供給された純水Wを、外部空間Fを流動する燃焼ガスにて加熱される伝熱用管7の内部を通して流動させることにより、水蒸気を生成するように構成され、そして、生成した水蒸気を水蒸気排出管部7bより原料ガス管5に供給するように構成されている。
また、水蒸気排出管部7bには、後述する起動運転において、生成した水蒸気を昇温用蒸気UとしてCO変成器Qに供給する分岐管7cが接続されている。
【0060】
(空気予熱用熱交換器の詳細)
空気予熱用熱交換器Nは、図6及び図7に示すように、円筒状の内壁8nと円筒状の外壁8gとの間で空気を流動させる円筒状に構成されている。
そして、空気予熱用熱交換器Nの下方側箇所に、送風機(図示せず)から供給される燃焼用空気ARを導入する空気導入部8dが設けられている。
空気予熱用熱交換器Nの上方側箇所と改質用バーナBとを接続する複数の空気供給管9が、改質用バーナBの周囲に沿って放射状に配置される状態で、改質器Hの天井壁2Uの内部に設けられている。
【0061】
したがって、空気予熱用熱交換器Nは、空気導入部8dに供給された燃焼用空気を、外部空間Fを流動する燃焼ガスにて加熱される内壁8nと外壁8gとの間を通して流動させることにより、高温状態に加熱するように構成され、そして、空気供給管9を通して高温に加熱された燃焼用空気を改質用バーナBに供給するように構成されている。
【0062】
ちなみに、改質用バーナBの詳細な構成は省略するが、改質用バーナBには、空気供給管9が接続されることに加えて、燃料ガス供給部10に接続された燃料供給管10a(図1参照)が接続され、燃料ガス供給部10から供給される燃料ガスを、空気供給管9を通して供給される燃焼用空気にて燃焼させるように構成されている。
【0063】
尚、燃料ガス供給部10は、オフガスタンク21(図1参照)からのオフガスを燃料ガスとして供給するものであり、オフガスが不足するときには、原料ガスGを燃料ガスとして供給することになる。したがって、燃料ガス供給部10は、詳細な説明は省略するが、オフガスの供給量や原料ガスGの供給量を調整する供給量調整弁を備える形態に構成されている。
また、燃焼用空気ARを空気導入部8dに送風する送風機(図示せず)は、出力調整により、空気供給量を調整できるように構成されている。
【0064】
(CO変成器の詳細)
CO変成器Qは、図5に示すように、改質ガスKに含まれる一酸化炭素を二酸化炭素に変成処理する一酸化炭素変成触媒Zを有し且つ当該一酸化炭素変成触媒Zを冷却する冷却水を流動させる冷却管11を備えている。
すなわち、CO変成器Qが、改質ガス入口12aを一端側に備えかつ変成処理後の変成ガス出口12bを他端側に備える筒状の変成炉本体12を備える形態に構成されている。
変成炉本体12の内部の径方向の中央箇所に、柱状の充填体13が一端側から他端側に向かう状態で配置され、変成炉本体12の内部における充填体13の外方側空間に、冷却管11が一端側から他端側に向けて螺旋状に配置され且つ一酸化炭素変成触媒Zが充填されている。
充填体13は、例えば、円筒状の鉄製パイプにて構成されている。
【0065】
説明を加えると、変成炉本体12が、有底筒状の本体部分12Aと当該本体部分12Aの上部にフランジ接続される改質ガス受入部12Bとを備えている。
改質ガス受入部12Bは、第3流路L3を通して改質ガスKが導入され、導入された改質ガスKを本体部分12Aに向けて排出する筒状部として構成されている。
【0066】
本体部分12Aの内部の上方側箇所には、例えば、ポーラス状に形成されて通気性がある多孔状枠14が、充填体13の上端を閉塞する状態で配置されている。また、周方向に複数の改質ガス入口12aを形成する円筒状のガス受入体15が、充填体13の上方に相当する箇所に、改質ガス受入部12Bに連通しかつ下端側部分を多孔状枠14に挿入させる状態で設けられている。
従って、改質ガス受入部12Bからガス受入体15に流動した改質ガスKが、改質ガス入口12aから排出され、その改質ガスKが多孔状枠14を通して充填体13の外方側空間に流動するように構成されている。
【0067】
本体部分12Aの内部の下方側箇所には、一酸化炭素変成触媒Zを受止める受止板16が、充填体13に対向する部分は無孔状態とし、且つ、充填体13の外方に位置する部分は多孔状態とする形態で、充填体13の下端に相当する箇所に設けられている。
尚、受止板16の下方側の空間には、金属製の球状体16aが充填されている。
【0068】
(モード切換部について)
図4に示すように、純水タンク24(水供給源の一例)からの水(純水W)を冷却水として冷却管11に供給し、当該冷却管11を流動した後の水(純水W)を水蒸気生成用水として水蒸気生成用熱交換器Jに供給する定常運転モードと、図3に示すように、純水タンク24(水供給源の一例)からの水(純水W)を水蒸気生成用熱交換器Jに供給して昇温用蒸気を生成し、当該昇温用蒸気を冷却管11に供給する起動運転モードとに切換えることができるように構成されている。
【0069】
説明を加えると、図4に示すように、定常運転モードにおいて、純水供給ポンプ25にて供給する純水Wを冷却管11の入口部に流動させる第1純水供給路L13、及び、冷却管11の出口部から排出される純水Wを伝熱用管7の純水導入管部7aに流動させる第2純水供給路L14が設けられている。
【0070】
また、図3に示すように、起動運転モードにおいて、第1純水供給路L13を流動する純水Wを、冷却管11を迂回して、伝熱用管7の純水導入管部7aに流動させる第3純水供給路L15が、第1純水供給路L13から分岐しかつ第2純水供給路L14に合流される状態で設けられている。
また、起動運転モードにおいて、伝熱用管7の水蒸気排出管部7bから排出される水蒸気を、昇温用蒸気として冷却管11の入口部に流動させる蒸気流路L16が、第1純水供給路L13に合流する状態で設けられている。
【0071】
さらに、冷却管11の出口部から排出される蒸気を純水タンク24に流動させる蒸気排出路L17が、第2純水供給路L14から分岐する状態で設けられている。当該蒸気排出路L17には、蒸気を冷却水にて冷却して凝縮させる蒸気冷却用熱交換器27が設けられている。
ちなみに、詳細な説明は省略するが、純水タンク24には、蒸気排出路L17を通して戻る凝縮水を純水化するイオン交換式などの純水装置が装備されている。
【0072】
また、第1純水供給路L13における第3純水供給路L15の分岐箇所よりも下流側に第1開閉弁28が設けられ、蒸気流路L16における冷却管11の入口部の近くには第2開閉弁29が設けられている。
また、第2純水供給路L14における蒸気排出路L17の分岐箇所よりも下流側には、第3開閉弁30が設けられ、蒸気排出路L17には、第4開閉弁31が設けられている。
【0073】
従って、第1開閉弁28及び第3開閉弁30を開き、且つ、第2開閉弁29及び第4開閉弁31を閉じることにより、定常運転モードに切換え、また、第1開閉弁28及び第3開閉弁30を閉じ、且つ、第2開閉弁29及び第4開閉弁31を開くことによって、起動運転モードに切換えることができるように構成されている。
【0074】
ちなみに、本実施形態では、定常運転モードと起動運転モードとを切換えるモード切換部Yが、第1開閉弁28、第2開閉弁29、第3開閉弁30及び第4開閉弁31を主要部として構成されることになる。
また、第1開閉弁28、第2開閉弁29、第3開閉弁30及び第4開閉弁31は、運転制御部Mにて開閉制御される。
【0075】
(停止運転の詳細)
水素精製運転を停止して、水素ガスの製造を長期にわたって(例えば、数日間よりも長く)停止する場合には、水素パージ処理、水蒸気排出処理、及び、水素充填処理が順次実行される。
すなわち、水素精製運転を停止する際には、先ず、圧縮器Dを継続して作動させながら、水蒸気の混合(供給)及び改質用バーナBによる改質器Hの加熱を継続した状態で、原料ガス弁V1、変成ガス弁V5及び返送弁V10を閉成するとともに、水素ガス弁V11及び排気弁V12を開成して、閉循環回路Cに製品ガス(水素ガス)を供給する水素パージ処理を行う。
この水素パージ処理により、閉循環回路Cに製品ガス(水素ガス)を流動させて、閉循環回路C内に残留するガスを排気路L12より排出しつつ、閉循環回路Cの内部を製品ガス(水素ガス)で置換する。
【0076】
次に、圧縮器Dを継続して作動させた状態で、水蒸気の混合(供給)を停止し、改質用バーナBによる改質器Hの加熱を停止し、水素ガス弁V11、排気弁V12を開成するとともに、返送弁V10を閉成することにより、閉循環回路Cに充填された製品ガス(水素ガス)を、閉循環回路Cを通して流動させることにより、閉循環回路Cの内部の水蒸気を排出する水蒸気排出処理を行うことになる。
【0077】
その後、圧縮器Dを停止し、水蒸気の混合(供給)を継続して停止し、改質用バーナBによる改質器Hの加熱を継続して停止し、水素ガス弁V11、排気弁V12を閉成して、閉循環回路Cの内部に製品ガス(水素ガス)を充填させる水素充填処理が行われることになる。
また、図示は省略するが、閉循環回路Cの内部圧を検出する圧力センサを設けて、閉循環回路Cの内部圧が低下した場合には、水素ガス弁V11を開成して、製品ガス(水素ガス)を補充することになる。
尚、詳細な説明は省略するが、停止運転が実行される際には、PSA装置22の吸着塔20a、20b、20cに対して、製品ガス(水素ガス)を供給して充填する水素充填処理が行われる。
【0078】
(起動運転について)
原料ガスGの供給を停止しかつ改質用バーナBの燃焼を停止させた停止運転状態から運転を再開する際には、運転制御部Mが、先ず、モード切換部Yを起動運転モードに切換えた状態で、起動運転を実行する(図2参照)。
すなわち、原料ガスGの供給を停止しかつ改質用バーナBを燃焼させた状態で、昇温用ガスを、CO変成器Qから排出されると脱硫器Pに戻す形態で、脱硫器P、改質器H、CO変成器Qを通して循環させる起動運転を実行する。
【0079】
つまり、原料ガス弁V1、変成ガス弁V5、水素ガス弁V11及び排気弁V12を閉成した状態で、圧縮器Dの作動を開始し、改質用バーナBによる改質器Hの加熱を開始して、閉循環回路Cを通して充填した昇温用ガスとしての製品ガス(水素ガス)を流動させながら、脱硫器P、改質器H、CO変成器Qを昇温させるようにする。その際、水素ガス弁V11を開成して、製品ガス(水素ガス)を補充することにより、閉循環回路Cの内部圧を上昇させることになる。
また、昇温用ガスとしての製品ガス(水素ガス)を循環流動させるときに、純水タンク24の純水Wを水蒸気生成用熱交換器Jに供給して昇温用蒸気を生成し、当該昇温用蒸気を冷却管11に供給する起動運転モードを行う。
【0080】
その後、脱硫器P、改質器H、CO変成器Qが昇温すると、運転制御部Mが、モード切換部Yを定常運転モードに切換えた状態で、原料ガスGの供給を開始して変成ガスを生成する定常運転を行うようにする。
つまり、原料ガス弁V1及び変成ガス弁V5を開成するとともに、返送弁V10を閉成して、変成ガスを生成し、その変成ガスをPSA装置22に供給するようにする。
詳細な説明は省略するが、PSA装置22は、運転を再開した後、精製した製品ガスの水素濃度が設定値以上になるまで、精製した製品ガスを排気し、精製した製品ガスの水素濃度が設定値以上になると、精製した製品ガスを製品タンク23に貯留することになる。
【0081】
(待機運転の詳細)
ちなみに、水素精製運転を一時的に停止して、水素ガスの製造を一時的に(例えば、数時間)停止する際には、待機運転が行われる。
つまり、運転制御部Mが、改質用バーナBによる改質器Hの加熱を継続した状態で、閉循環回路Cに充填された製品ガス(水素ガス)を、閉循環回路Cを通して、圧縮器D、脱硫器P、改質器H、CO変成器Qを経由する状態で循環させる待機運転を実行する。
【0082】
説明を加えると、水素精製運転から待機運転に移行する際には、先ず、圧縮器Dを継続して作動させながら、水蒸気の混合(供給)及び改質用バーナBによる改質器Hの加熱を継続した状態で、原料ガス弁V1、変成ガス弁V5及び返送弁V10を閉成するとともに、水素ガス弁V11及び排気弁V12を開成して、閉循環回路Cに製品ガス(水素ガス)を供給する水素パージ処理を行うことになる。
この水素パージ処理により、閉循環回路Cに製品ガス(水素ガス)を流動させて、閉循環回路C内に残留するガスを排気路L12より排出しつつ、閉循環回路Cの内部を製品ガス(水素ガス)で置換する。
【0083】
その後、圧縮器Dを継続して作動させ、かつ、改質用バーナBによる改質器Hの加熱を継続した状態で、水蒸気の混合(供給)を停止し、且つ、水素ガス弁V11、排気弁V12を閉成するとともに、返送弁V10を開成することにより、閉循環回路Cに充填された製品ガス(水素ガス)を、閉循環回路Cを通して循環させる待機運転を行うことになる。
【0084】
尚、詳細な説明は省略するが、待機運転が実行される際には、PSA装置22の吸着塔20a、20b、20cに対して、製品ガス(水素ガス)を供給して充填する水素置換処理が行われる。
【0085】
待機運転から水素精製運転に移行させる際には、先ず、圧縮器Dを継続して作動させ、かつ、改質用バーナBによる改質器Hの加熱を継続した状態で、水蒸気の混合(供給)を開始し、且つ、原料ガス弁V1及び変成ガス弁V5を開成するとともに、返送弁V10を閉成して、変成ガスをPSA装置22に供給するようにする。
詳細な説明は省略するが、PSA装置22は、運転を再開した後、精製した製品ガスの水素濃度が設定値以上になるまで、精製した製品ガスを排気し、精製した製品ガスの水素濃度が設定値以上になると、精製した製品ガスを製品タンク23に貯留することになる。
【0086】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、水素精製運転を停止して、水素ガスの製造を長期にわたって停止する場合に、水素パージ処理、水蒸気排出処理、及び、水素充填処理を順次実行する形態を例示したが、水蒸気排出処理において、製品ガス(水素ガス)に代えて、不活性ガス貯留ボンベ(例えば、窒素ボンベ等)に貯留した不活性ガス(窒素ガス等)を閉循環回路Cに供給し、水素充填処理において、不活性ガス(窒素ガス等)を閉循環回路Cに充填させるようにしてもよい。
つまり、水素充填処理に代えて、不活性ガス(窒素ガスを等)を充填する不活性ガス充填処理を行う形態で実施してもよい。
【0087】
このように、不活性ガス(窒素ガス等)を閉循環回路Cに充填させる場合において、起動運転を行う際には、先ず、閉循環回路Cに製品ガス(水素ガス)を供給しながら、閉循環回路Cに充填されている不活性ガス(窒素ガス等)を閉循環回路Cから排出する不活性ガス排出処理を行い、その後、モード切換部Yを起動運転モードに切換えた状態で、起動運転を実行する(図2参照)。
つまり、原料ガス弁V1、変成ガス弁V5、水素ガス弁V11及び排気弁V12を閉成した状態で、圧縮器Dの作動を開始し、改質用バーナBによる改質器Hの加熱を開始して、閉循環回路Cを通して充填した昇温用ガスとしての製品ガス(水素ガス)を流動させながら、脱硫器P、改質器H、CO変成器Qを昇温させるようにする。
その際、純水タンク24の純水Wを水蒸気生成用熱交換器Jに供給して昇温用蒸気を生成し、当該昇温用蒸気を冷却管11に供給する起動運転モードを行う。
【0088】
(2)上記実施形態においては、複数の改質反応管Aを備える改質器Hを例示したが、単一の改質反応管Aを備える改質器Hに対しても本発明は適用できる。
【0089】
(3)上記実施形態では、改質器Hが、水蒸気生成用熱交換器Jや空気予熱用熱交換器Nを備える場合を例示したが、水蒸気生成用熱交換器Jや空気予熱用熱交換器Nを備えない形態で改質器Hを形成する形態で実施してもよい。
【0090】
(4)上記実施形態では、改質部Rからの変成ガスに対して、水素ガスを分離処理する水素分離部20を設ける場合を例示したが、変成ガスを製品ガスとしてガスエンジンに供給する等、変成ガスをそのまま使用する形態で実施してもよい。
【0091】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0092】
2 改質炉
2U 天井壁
2D 底壁
2S 側壁
2E 排出部
2G 外方壁
11 冷却管
12 変成炉本体
12a 改質ガス入口
12b 変成ガス出口
13 充填体
24 水供給源
A 改質反応管
B 改質用バーナ
G 原料ガス
H 改質器
J 水蒸気生成用熱交換器
K 改質ガス
Q CO変成器
Z 一酸化炭素変成触媒
Y モード切換部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8