(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】田植機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
A01C11/02 350H
(21)【出願番号】P 2021064019
(22)【出願日】2021-04-05
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】宮西 吉秀
(72)【発明者】
【氏名】山内 一喜
(72)【発明者】
【氏名】西村 浩二
(72)【発明者】
【氏名】原野 朱莉
(72)【発明者】
【氏名】尼崎 喬士
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-058314(JP,A)
【文献】実開平06-000022(JP,U)
【文献】特開平05-068412(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0375089(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を走行する走行機体と、
前記走行機体の後部に連結され、複数の苗を集めてマット状にした苗マットを載置する苗載せ台を有し、圃場に
苗の植付けを行い、かつ、複数の植付条数の苗植付けが可能な苗植付装置と、
前記走行機体に設けられ、搭乗者が着座可能な搭乗座席を有する搭乗部と、
前記苗植付装置の前方に位置する状態で前記走行機体に連結され、前記苗マットを前記搭乗部の上方を経由して前記苗載せ台へ搬送する搬送機構を有する予備苗搬送装置と、
前記予備苗搬送装置は、前記搬送機構を前記苗植付装置の前記複数の植付条数に対応する複数の数だけ備え、
前記搬送機構は、駆動可能に備えられ、
前記搭乗部の上方に設けられた機体横向きの揺動支点まわりに前記予備苗搬送装置を上下に揺動駆動する第一駆動体と、
前記複数の搬送機構の後方に設けられ、前記複数の搬送機構によって搬送された苗マットをスライド下降させて前記苗載せ台に搬送する後搬送部が備えられている田植機。
【請求項2】
前記予備苗搬送装置は、前記苗植付装置の植付け条に亘る左右幅を有し、
前記第一駆動体は、前記予備苗搬送装置が後上がりに傾斜して前記予備苗搬送装置の前端部が前記搭乗座席の上端部よりも下側に位置する下降姿勢と、前記予備苗搬送装置が前記下降姿勢よりも上向きに揺動して前記予備苗搬送装置の前端部が前記搭乗部に対して前上方に位置する上昇姿勢と、に前記予備苗搬送装置を姿勢変更可能なように構成されている請求項1に記載の田植機。
【請求項3】
前記予備苗搬送装置は、前記上昇姿勢となっている状態で、前記予備苗搬送装置の前端部の高さと前記揺動支点の高さとが同じまたは略同じ状態となるように構成されている請求項2に記載の田植機。
【請求項4】
前記予備苗搬送装置の前端部は、前記下降姿勢となっている状態で、前記走行機体の前端部よりも前側に位置する請求項2または3に記載の田植機。
【請求項5】
前記第一駆動体は電動油圧シリンダによって構成されている請求項1から4の何れか一項に記載の田植機。
【請求項6】
前記予備苗搬送装置は、機体前後方向に沿って複数の前記苗マットを貯留可能なように構成され、
前記搬送機構に、機体前後方向に沿って前記苗マットを送り搬送する無端回動体と、前記無端回動体を回動駆動する第二駆動体と、前記搬送機構の前部において前記苗マットを検出する第一検出部と、前記搬送機構の後端部において前記苗マットを検出する第二検出部と、が備えられ、
前記第二駆動体を駆動制御する制御部が備えられ、
前記制御部は、前記第一検出部が前記苗マットを検出し、かつ、前記第二検出部が前記苗マットを検出しない場合に前記苗マットが予め設定された距離だけ後方へ送り搬送されるように前記第二駆動体を回動駆動させ、前記第二検出部が前記苗マットを検出する場合に前記第一検出部の検出状態にかかわらず前記第二駆動体を回動駆動させないように構成されている請求項1から5の何れか一項に記載の田植機。
【請求項7】
前記第一検出部に、前記搬送機構の搬送方向に沿って並ぶ状態、かつ、前記苗マットの搬送方向の長さよりも短い距離で互いに離間する状態で、二つの検出装置が備えられ、
前記第一検出部は、前記二つの検出装置が前記苗マットを検出することによって苗マット検出状態になり、前記二つの検出装置の少なくとも一方が前記苗マットを検出しないことによって苗マット非検出状態になり、
前記制御部は、
前記第一検出部が前記苗マット検出状態である場合に前記第二駆動体を回動駆動させ
、前記第一検出部が前記苗マット非検出状態である場合に前記第二駆動体を回動駆動させないように構成されている請求項6に記載の田植機。
【請求項8】
前記予め設定された距離は、前記苗マットの搬送方向の長さよりも予め設定された長さだけ余分に長く設定されている請求項6または7に記載の田植機。
【請求項9】
前記制御部は、前記複数の搬送機構の夫々における前記第二駆動体に対して各別に駆動制御するように構成されている請求項6から8の何れか一項に記載の田植機。
【請求項10】
前記制御部は、前記苗マットを前記苗載せ台の位置する側へ送り搬送するように前記第二駆動体を駆動制御する正転制御状態と、前記苗マットを前記苗載せ台の位置する側と反対側へ送り搬送するように前記第二駆動体を駆動制御する逆転制御状態と、に切換え可能なように構成されている請求項6から9の何れか一項に記載の田植機。
【請求項11】
前記第一駆動体は、油圧シリンダであり、
前記油圧シリンダによって駆動される第一リンク、及び、前記第一リンクの動力を前記予備苗搬送装置に伝達する第二リンクを有し、前記油圧シリンダによって操作されて前記予備苗搬送装置の上下揺動操作を行うリンク機構が備えられている請求項1に記載の田植機。
【請求項12】
前記予備苗搬送装置は、上下揺動にかかわらず、前記走行機体の側面視において前記搬送機構の搬送経路が始端部から終端部に至るまで直線経路であるように構成されている請求項1に記載の田植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の苗を集めてマット状にした苗マットを苗植付装置の苗載せ台へ搬送する予備苗搬送装置が備えられた田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示された田植機では、予備苗搬送装置(文献では「予備苗供給装置」)が備えられ、予備苗搬送装置は苗マットを苗植付装置の苗載せ台へ搬送する。予備苗搬送装置は、平面視において搭乗部(文献では「搭乗運転部」)を挟んで左右に振り分け配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで特許文献1に開示された田植機では、予備苗搬送装置を前後に揺動駆動する駆動体(文献では「アクチュエータ」)が備えられ、予備苗搬送装置が前側に揺動すると、畦際に位置する作業者が、畦際から予備苗搬送装置の前部へ苗マットを供給できる。しかし、特許文献1に開示された田植機では、予備苗搬送装置の高さが搭乗部の高さと重複する状態で、予備苗搬送装置は搭乗部に対して左右に位置する。このため、搭乗部に位置する搭乗者の左右の視界が予備苗搬送装置によって遮られ易く、また、搭乗者が搭乗部において乗降し難い構成となっている。このことから、予備苗搬送装置の構造に改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、搭乗部に搭乗する搭乗者の乗降を妨げず、かつ、搭乗部からの圃場の視認性が良好であって、苗マットの補給の容易な予備苗搬送装置が備えられた田植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の田植機では、圃場を走行する走行機体と、前記走行機体の後部に連結され、複数の苗を集めてマット状にした苗マットを載置する苗載せ台を有し、圃場に苗の植付けを行い、かつ、複数の植付条数の苗植付けが可能な苗植付装置と、前記走行機体に設けられ、搭乗者が着座可能な搭乗座席を有する搭乗部と、前記苗植付装置の前方に位置する状態で前記走行機体に連結され、前記苗マットを前記搭乗部の上方を経由して前記苗載せ台へ搬送する搬送機構を有する予備苗搬送装置と、前記予備苗搬送装置は、前記搬送機構を前記苗植付装置の前記複数の植付条数に対応する複数の数だけ備え、前記搬送機構は、駆動可能に備えられ、前記搭乗部の上方に設けられた機体横向きの揺動支点まわりに前記予備苗搬送装置を上下に揺動駆動する第一駆動体と、前記複数の搬送機構の後方に設けられ、前記複数の搬送機構によって搬送された苗マットをスライド下降させて前記苗載せ台に搬送する後搬送部が備えられていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、予備苗搬送装置が、搭乗部の上方に設けられた機体横向きの揺動支点まわり揺動可能に構成され、予備苗搬送装置は苗マットを搭乗部の上方を通過させる構成となっている。このことから、予備苗搬送装置が上向きに揺動することによって、予備苗搬送装置が搭乗部の上方に位置する構成が可能となる。これにより、予備苗搬送装置が搭乗部の機体横側方に位置する構成と比較して、搭乗者の左右の視界が予備苗搬送装置によって遮られ難く、また、搭乗者が搭乗部において乗降し易い構成となる。また、予備苗搬送装置が下向きに揺動することによって、畦際に位置する作業者が、畦際から予備苗搬送装置の前部へ苗マットを供給できる。これにより、搭乗部に搭乗する搭乗者の乗降を妨げず、かつ、搭乗部からの圃場の視認性が良好であって、苗マットの補給の容易な予備苗搬送装置が備えられた田植機が実現される。
【0008】
本発明において、前記予備苗搬送装置は、前記苗植付装置の植付け条に亘る左右幅を有し、前記第一駆動体は、前記予備苗搬送装置が後上がりに傾斜して前記予備苗搬送装置の前端部が前記搭乗座席の上端部よりも下側に位置する下降姿勢と、前記予備苗搬送装置が前記下降姿勢よりも上向きに揺動して前記予備苗搬送装置の前端部が前記搭乗部に対して前上方に位置する上昇姿勢と、に前記予備苗搬送装置を姿勢変更可能なように構成されていると好適である。
【0009】
本構成によると、予備苗搬送装置は苗植付装置の植付け条に亘る左右幅を有するため、予備苗搬送装置は苗植付装置の植付け条ごとに苗マットを苗載せ台へ搬送可能となる。また、予備苗搬送装置が苗植付装置の左右幅よりも幅狭な構成と比較して、予備苗搬送装置は多くの苗マットを受け入れ可能となる。また、第一駆動体は、予備苗搬送装置を下降姿勢と上昇姿勢とに姿勢変更可能なように構成され、下降姿勢では予備苗搬送装置の前端部が搭乗座席の上端部よりも下側に位置する。このため、予備苗搬送装置が下降姿勢である状態で、畦際に位置する作業者が、畦際から予備苗搬送装置の前端部へ苗マットを容易に供給できる。また、予備苗搬送装置が上昇姿勢に姿勢変更されることによって、搭乗者の左右の視界が予備苗搬送装置によって遮られ難く、また、搭乗者が搭乗部において乗降し易くなる。
【0010】
本発明において、前記予備苗搬送装置は、前記上昇姿勢となっている状態で、前記予備苗搬送装置の前端部の高さと前記揺動支点の高さとが同じまたは略同じ状態となるように構成されていると好適である。
【0011】
本構成であれば、予備苗搬送装置が上昇姿勢である状態で、予備苗搬送装置の姿勢が水平に近付く。このため、たとえ田植機が圃場で作業走行を行って予備苗搬送装置が振動する場合であっても、予備苗搬送装置に受け入れられた苗マットは、予備苗搬送装置から落下せずに、安定的に支持される。
【0012】
本発明において、前記予備苗搬送装置の前端部は、前記下降姿勢となっている状態で、前記走行機体の前端部よりも前側に位置すると好適である。
【0013】
本構成によって、畦際に位置する作業者が、畦際から予備苗搬送装置の前端部へ苗マットを一層容易に供給できる。
【0014】
本発明において、前記第一駆動体は電動油圧シリンダによって構成されていると好適である。
【0015】
本構成によると、第一駆動体は電動油圧シリンダであるため、例えば田植機のエンジンが駆動していない場合であっても、第一駆動体は電源供給だけで駆動可能となる。
【0016】
本発明において、前記予備苗搬送装置は、機体前後方向に沿って複数の前記苗マットを貯留可能なように構成され、前記搬送機構に、機体前後方向に沿って前記苗マットを送り搬送する無端回動体と、前記無端回動体を回動駆動する第二駆動体と、前記搬送機構の前部において前記苗マットを検出する第一検出部と、前記搬送機構の後端部において前記苗マットを検出する第二検出部と、が備えられ、前記第二駆動体を駆動制御する制御部が備えられ、前記制御部は、前記第一検出部が前記苗マットを検出し、かつ、前記第二検出部が前記苗マットを検出しない場合に前記苗マットが予め設定された距離だけ後方へ送り搬送されるように前記第二駆動体を回動駆動させ、前記第二検出部が前記苗マットを検出する場合に前記第一検出部の検出状態にかかわらず前記第二駆動体を回動駆動させないように構成されていると好適である。
【0017】
本構成によると、第二駆動体が無端回動体を回動駆動することによって苗マットが苗載せ台へ搬送されるため、簡素な構成によって搬送機構が実現される。また、第一検出部が搬送機構の前部において苗マットを検出するため、搬送機構は作業者によって供給された苗マットを苗載せ台の位置する側へ搬送可能となる。また、第二検出部の検出結果に基づいて搬送機構が停止するため、作業者が不意に苗マットを予備苗搬送装置に供給し過ぎる虞が軽減される。
【0018】
本発明において、前記第一検出部に、前記搬送機構の搬送方向に沿って並ぶ状態、かつ、前記苗マットの搬送方向の長さよりも短い距離で互いに離間する状態で、二つの検出装置が備えられ、前記第一検出部は、前記二つの検出装置が前記苗マットを検出することによって苗マット検出状態になり、前記二つの検出装置の少なくとも一方が前記苗マットを検出しないことによって苗マット非検出状態になり、前記制御部は、前記第一検出部が前記苗マット検出状態である場合に前記第二駆動体を回動駆動させ、前記第一検出部が前記苗マット非検出状態である場合に前記第二駆動体を回動駆動させないように構成されていると好適である。
【0019】
搬送機構の前部は、苗マットが供給される領域であるため、例えば作業者が誤って第一検出部に触れる虞が考えられる。このとき、第一検出部が一つの検出装置であると、搬送機構が誤動作を起こしたり誤検知を起こしたりする虞が考えられる。本構成では、二つの検出装置が、搬送機構の搬送方向に沿って並び、苗マットの搬送方向の長さよりも短い距離で離間する。このため、搬送機構に苗マットが供給された際に、二つの検出装置が一つの苗マットを検出可能となる。また、制御部は二つの検出装置の両方が苗マットを検出した場合のみに制御を行う。このため、たとえ作業者が誤って検出装置の一つに触れた場合であっても、搬送機構が誤動作や誤検知を起こし難くなる。
【0020】
本発明において、前記予め設定された距離は、前記苗マットの搬送方向の長さよりも予め設定された長さだけ余分に長く設定されていると好適である。
【0021】
本構成であれば、苗マットは、一度の送り搬送時にマット一枚分よりも余分に長く搬送される。このため、一つの搬送機構に複数の苗マットが供給されると、複数の苗マットは、搬送機構の搬送方向に沿って間隔を空けて並ぶ。これにより、隣り合う二つの苗マットが第一検出部と第二検出部との夫々を通過する際に、第一検出部と第二検出部との夫々は、搬送方向下手側の苗マットを検出した後、搬送方向上手側の苗マットを検出する前に、一旦非検出状態となる。これにより、第一検出部と第二検出部との夫々は、隣り合う二つの苗マットを連続的に検出する虞が回避され、搬送機構の不測の誤動作や誤検知が回避される。
【0022】
本発明において、前記複数の搬送機構の夫々における前記第二駆動体に対して各別に駆動制御するように構成されていると好適である。
【0023】
本構成であれば、作業者が苗マットを植付け条ごとに供給することが可能となる。また、第二検出部の検出結果に基づいて搬送機構が停止すると、作業者は他の植付け条に対応する搬送機構に対して苗マットを供給できる。つまり、搬送機構が植付け条数に対応して複数備えられる構成によって、搬送機構が一つの場合と比較して、苗マットが植付け条に応じて左右にバランス良く配置される。また、苗載せ台に載置された苗マットの量は植付け条ごとにバラつく場合が多いが、本構成であれば、作業者は、例えば苗載せ台において補給の必要な植付け条のみに対して苗補給を行える。これにより、苗載せ台において補給の不要な植付け条に対して不必要な苗補給が行われる虞が回避され、苗載せ台において補給の必要な植付け条に対して適切な苗補給が行われる。
【0024】
本発明において、前記制御部は、前記苗マットを前記苗載せ台の位置する側へ送り搬送するように前記第二駆動体を駆動制御する正転制御状態と、前記苗マットを前記苗載せ台の位置する側と反対側へ送り搬送するように前記第二駆動体を駆動制御する逆転制御状態と、に切換え可能なように構成されていると好適である。
【0025】
本構成であれば、マット苗が余った場合に、作業者は、第二駆動体の回転方向を切換えることによって、苗マットを容易に回収できる。
本発明において、前記第一駆動体は、油圧シリンダであり、前記油圧シリンダによって駆動される第一リンク、及び、前記第一リンクの動力を前記予備苗搬送装置に伝達する第二リンクを有し、前記油圧シリンダによって操作されて前記予備苗搬送装置の上下揺動操作を行うリンク機構が備えられていると好適である。
本発明において、前記予備苗搬送装置は、上下揺動にかかわらず、前記走行機体の側面視において前記搬送機構の搬送経路が始端部から終端部に至るまで直線経路であるように構成されていると好適である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】予備苗搬送装置を有する田植機の側面図であって、予備苗搬送装置の前搬送部が下降姿勢である。
【
図2】予備苗搬送装置を有する田植機の側面図であって、予備苗搬送装置の前搬送部が上昇姿勢である。
【
図3】予備苗搬送装置を有する田植機の平面図である。
【
図4】予備苗搬送装置の前搬送部を示す要部平面図である。
【
図5】予備苗搬送装置の前搬送部及びすくい部を示す縦断面図(
図4のV-V線断面図)である。
【
図6】予備苗搬送装置の前搬送部及びすくい部を示す縦断面図(
図4のV-V線断面図)である。
【
図7】予備苗搬送装置の前搬送部及びすくい部を示す縦断面図(
図4のV-V線断面図)である。
【
図8】ベルト搬送用モータを駆動する制御部を示すブロック線図である。
【
図9】ベルト搬送用モータの駆動制御に関するフローチャート図である。
【
図10】ベルト搬送用モータの駆動制御に関する別実施形態のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔乗用型田植機の基本構成〕
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、
図1~
図3において、矢印「F」が機体前方、矢印「B」が機体後方、矢印「U」が機体上方、矢印「D」が機体下方、矢印「L」が機体左方、矢印「R」が機体右方である。
【0028】
図1~
図3に示されているように、乗用型田植機に、圃場を走行可能な走行機体Cが備えられている。走行機体Cは、左右一対の操舵車輪10,10と、左右一対の後車輪11,11と、を有する。左右一対の操舵車輪10は、走行機体Cの機体前部に設けられて走行機体Cの向きを変更操作自在なように構成され、左右一対の後車輪11は、走行機体Cの機体後部に設けられている。走行機体Cの中央部に、各種の運転操作が行われる搭乗部23が備えられている。搭乗部23は、走行機体Cの横幅に亘って走行機体Cの上に設けられ、搭乗者が着座可能な搭乗座席23Aを有する。また、苗植付装置Wが上下昇降可能なように走行機体Cの後部に支持連結され、苗植付装置Wは圃場に対する苗を植付け可能に構成されている。苗植付装置Wは、一度に8条分の苗を植付け可能である。苗植付装置Wは、リンク機構17を介して走行機体Cの後部に昇降可能に連結されている。リンク機構17は昇降用油圧シリンダ16の伸縮動作により昇降動作する。
【0029】
走行機体Cの前部に、操舵車輪10及び後車輪11を走行駆動可能なエンジン13と、開閉式のボンネット12と、が備えられている。ボンネット12は後上がりに傾斜する傾斜面を有するとともにエンジン13を収納する。詳述はしないが、操舵車輪10と後車輪11との少なくとも一方に、エンジン13の動力を伝達するための変速機構として、公知のHST(静油圧式無段変速装置、不図示)が備えられている。エンジン13の動力が変速機構を介して操舵車輪10及び後車輪11に伝達され、変速後の動力が電動モータ駆動式の植付クラッチ(不図示)を介して苗植付装置Wに伝達される。
【0030】
苗植付装置Wに、4個の伝動ケース18と、8個の回転ケース19と、整地フロート21と、苗載せ台22と、が備えられている。回転ケース19は、各伝動ケース18の後部の左側部及び右側部に、夫々回転自在に支持されている。夫々の回転ケース19の両端部に、一対のロータリ式の植付アーム20が備えられている。整地フロート21は、圃場の田面を整地するものであり、苗植付装置Wに複数備えられている。苗載せ台22に、植付け用のマット状苗が載置される。
【0031】
苗植付装置Wは、苗載せ台22を左右に往復横送り駆動しながら、伝動ケース18から伝達される動力により各回転ケース19を回転駆動して、苗載せ台22の下部から各植付アーム20により交互に苗を取り出して圃場の田面に植付ける。詳述はしないが、苗植付装置Wは、複数の回転ケース19に備えられた植付アーム20によって苗を植付ける。
【0032】
〔予備苗搬送装置について〕
搭乗部23の上方に予備苗搬送装置30が備えられている。予備苗搬送装置30は、苗植付装置Wの前方(前上方)に位置する状態で走行機体Cに連結されている。予備苗搬送装置30は、苗植付装置Wの植付け条に亘る左右幅を有し、平面視において搭乗部23の搭乗座席23Aと重複する。予備苗搬送装置30に、前搬送部31と後搬送部32とが備えられ、前搬送部31は、後端部の機体横向きの揺動支点X1まわりに上下揺動可能に構成されている。
【0033】
後搬送部32は後側ほど下側に位置するように傾斜する。前搬送部31に搬送機構40が備えられ、搬送機構40は複数の苗を集めてマット状にした苗マットを、後方へ搬送し、後搬送部32へ受け渡す。本実施形態では、苗植付装置Wは、一度に8条分の苗を植付け可能であるため、苗植付装置Wの植付け条数に対応して8条分の搬送機構40が左右に並列配置されている。前搬送部31から後搬送部32へ受け渡された苗マットは、後搬送部32の上をスライドしながら下方の苗載せ台22へ案内される。つまり、搬送機構40は、搭乗部23の上方を経由して苗載せ台22へ搬送する。なお、前搬送部31及び後搬送部32は、苗載せ台22の往復横送り駆動と連動して左右に往復横送り駆動可能なように構成されている。
【0034】
走行機体Cに左右の側部フレーム24,24が備えられ、側部フレーム24,24は搭乗座席23Aの左右両側方において上向きに立設される。側部フレーム24,24に後支持フレーム部25が連結されている。後支持フレーム部25の上端部は、揺動支点X1に沿って機体横向きに延びる。後支持フレーム部25の上端部における左右両端部において、後支持フレーム部25は下向きに屈曲し、後支持フレーム部25の左右両端部における下端部の夫々が側部フレーム24,24に連結されている。そして、後支持フレーム部25の上端部に前搬送部31の後端部が揺動可能に連結される。また、後搬送部32の前端部は後支持フレーム部25に支持されている。
【0035】
ボンネット12の左右両側方に前支持フレーム部26,27が備えられている。前支持フレーム部26,27の夫々に、電動油圧シリンダ28と、リンク機構33と、が支持されている。リンク機構33は、前支持フレーム部26と、前搬送部31の前部における支持受け部34と、の夫々に枢支されている。本発明の『第一駆動体』は、電動油圧シリンダ28によって構成されている。
【0036】
リンク機構33に基端ブーム部33A(第一リンクに相当)と先端アーム部33B(第二リンクに相当)とが備えられ、基端ブーム部33Aと先端アーム部33Bとは互いに揺動可能に連結されている。基端ブーム部33Aの一端部が前支持フレーム部26に枢支され、基端ブーム部33Aの他端部が先端アーム部33Bに枢支されている。基端ブーム部33Aの長手方向中央部分が電動油圧シリンダ28の上端部と枢支されている。先端アーム部33Bの一端部が基端ブーム部33Aに枢支され、先端アーム部33Bの他端部が支持受け部34に枢支されている。
【0037】
電動油圧シリンダ28は前支持フレーム部27と基端ブーム部33Aとの夫々に枢支され、電動油圧シリンダ28の伸縮動作によって、基端ブーム部33Aが上下に揺動し、支持受け部34が昇降動作する。これにより、前搬送部31は揺動支点X1まわりに上下揺動可能に構成されている。換言すると、電動油圧シリンダ28は、搭乗部23の上方に設けられた機体横向きの揺動支点X1まわりに予備苗搬送装置30の前搬送部31を上下に揺動駆動する。
【0038】
電動油圧シリンダ28は、予備苗搬送装置30を下降姿勢と上昇姿勢とに姿勢変更可能なように構成されている。電動油圧シリンダ28が縮められると、リンク機構33の基端ブーム部33A及び先端アーム部33Bが折り畳まれ、前搬送部31は前下がりに傾斜する。この状態で、前搬送部31の前部における支持受け部34が、前支持フレーム部27の前部に設けられた載置フレーム部35に載置支持される。この状態が、予備苗搬送装置30の下降姿勢である。
【0039】
下降姿勢では、予備苗搬送装置30の前搬送部31が後上がりに傾斜する。そして、
図1の線L1で示されるように、下降姿勢では、予備苗搬送装置30の前端部が搭乗座席23Aの上端部よりも下側に位置する。また、下降姿勢では、予備苗搬送装置30の前端部がボンネット12の上端部よりも下側に位置する。予備苗搬送装置30の前端部は、下降姿勢となっている状態で、走行機体Cの前端部よりも前側に位置する。この状態で、作業者は、機体前方から予備苗搬送装置30に対して苗マットを供給できる。例えば機体前方に畦が位置する場合、作業者は、畦から予備苗搬送装置30に対して苗マットを供給できる。
【0040】
図2に示されるように、電動油圧シリンダ28が伸ばされると、リンク機構33の基端ブーム部33A及び先端アーム部33Bが前上方へ延ばされ、前搬送部31は前後に亘って水平方向に沿う。
【0041】
上昇姿勢では、予備苗搬送装置30の前搬送部31が下降姿勢よりも上向きに揺動して予備苗搬送装置30の前端部が搭乗部23に対して前上方に位置する。予備苗搬送装置30は、上昇姿勢となっている状態で、予備苗搬送装置30の前端部の高さと揺動支点X1の高さとが同じまたは略同じ状態となるように構成されている。この状態で、搭乗部23の前方は開放される。このため、搭乗部23に搭乗する搭乗者は、前搬送部31に前方の視界を遮られることなく、機体前方の圃場を視認できる。この状態が、予備苗搬送装置30の上昇姿勢である。
【0042】
〔予備苗搬送装置の搬送機構について〕
図4~
図7に示されるように、搬送機構40に、無端回動ベルト41と、複数のローラー43と、が備えられている。無端回動ベルト41は、本発明の『無端回動体』に相当する。また、
図4~
図7に示されていないが、搬送機構40の搬送方向終端部に電動式のベルト搬送用モータ42(
図8参照)が備えられ、ベルト搬送用モータ42は揺動支点X1の下方領域に設けられている。本発明の『第二駆動体』はベルト搬送用モータ42によって構成されている。搬送方向に沿って複数のローラー43が配置され、ローラー43の夫々は機体横向き軸芯回りに回動可能である。無端回動ベルト41は前端部のローラー43と後端部のローラー43とに亘って巻き掛けられ、後端部のローラー43がベルト搬送用モータ42によって回動駆動される。つまり、ベルト搬送用モータ42は無端回動ベルト41を回動駆動する。無端回動ベルト41は、前端部のローラー43と後端部のローラー43とに亘って、上側の搬送経路と、下側の戻り経路と、を巡回するように回動駆動される。
【0043】
無端回動ベルト41の上側の搬送経路における表面部分は苗マットの載置面部41sである。上側の搬送経路において、無端回動ベルト41の上に苗マットが載置され、苗マットは無端回動ベルト41の回動によって機体後方へ送り搬送される。即ち、搬送機構40に、苗マットを載置支持しながら搬送する載置面部41sが備えられ、苗マットが搬送機構40によって載置面部41s上を送り搬送される。
【0044】
無端回動ベルト41の横幅、即ち載置面部41sの横幅は、搬送方向視において苗マットの横幅よりも幅狭に構成されている。前搬送部31に摺接ガイド部31Gが備えられ、摺接ガイド部31Gは載置面部41sを挟んで左右に振り分け配置されている。苗マットのうち、載置面部41sよりも左右外側に位置する領域の根部は、後方へ送り搬送される際に摺接ガイド部31Gと摺接するが、摺接ガイド部31Gは平坦面状に形成されているため、苗マットの根部と摺接ガイド部31Gとで摩擦は殆ど生じない。摺接ガイド部31Gは、後述のロッド部53の位置する領域で切り欠かれ、後述の苗補給スイッチ45、ベルトスイッチ46、及び、4枚目検出スイッチ47の位置する領域で穿孔されている。
【0045】
無端回動ベルト41の載置面部41sは、搬送方向に沿って苗マットを4枚分載置可能な長さを有する。本実施形態では、4枚の苗マットを、前から順番に1枚目、2枚目、3枚目、4枚目と称する。つまり、予備苗搬送装置30は、搬送方向(機体前後方向)に沿って複数の苗マットを貯留可能なように構成されている。本実施形態では、8条分の搬送機構40が左右に並列配置されている。このため、予備苗搬送装置30は32枚分の苗マットを貯留可能なように構成されている。無端回動ベルト41の載置面部41sに、複数の係止部44として、第一係止部44Aと第二係止部44Bとが形成されている。
【0046】
第一係止部44Aは、搬送方向視において載置面部41sの左右両側部から突起し、苗マットの根部に食い込む。第二係止部44Bは、搬送方向視において載置面部41sの左右方向中央部から突起するとともに第一係止部44Aの大きさよりも大きく構成される。
第二係止部44Bは傾斜面部44cと立上り面部44dとを有する。傾斜面部44cは、搬送方向下手側ほど載置面部41sから離れる側に傾斜する。立上り面部44dは、載置面部41sと、傾斜面部44cの搬送方向後端部と、に亘って搬送方向と直交(または略直交)する方向に立ち上がる。つまり、第二係止部44Bは、傾斜面部44c及び立上り面部44dによって、機体側面視において三角形状に形成されている。これにより、前搬送部31が前下がりに傾斜する場合であっても、無端回動ベルト41の載置面部41sに載置された苗マットが、載置面部41sの上を滑ることなく、第一係止部44Aと第二係止部44Bとによってしっかりと係止搬送される。このように、搬送機構40は、苗マットを後方へ搬送するように構成されている。
【0047】
〔予備苗搬送装置のすくい部について〕
予備苗搬送装置30の前端部は、走行機体Cの前端部よりも前側まで延ばされている。
このため、走行機体Cの前方に畦が隣接する状態で田植機が圃場の畦際に停止し、予備苗搬送装置30が前下がりに傾斜すると、作業者は畦から予備苗搬送装置30の前端部に対して苗マットを補給できる。作業者が田植機に対して苗マットを補給する際、一般的にはすくい板で苗マットを苗箱からすくい取って苗載せ台22や予備苗台(不図示)に載置する。本実施形態では、予備苗搬送装置30が予備苗台として用いられる。本実施形態では、予備苗搬送装置30の前端部にすくい部50が備えられており、作業者は、一般的なすくい板を用いなくても苗マットを予備苗搬送装置30に供給できる。即ち、予備苗搬送装置30のうち、搬送機構40の搬送始端部の位置する部分にすくい部50が備えられ、すくい部50は苗箱に載置された状態の苗マットを苗箱からすくい取る。
【0048】
図4~
図7に示されるように、すくい部50は、搬送機構40の搬送始端部に対して搬送方向上手側に設けられている。すくい部50は、苗箱に載置された状態の苗マットを苗箱から分離する。すくい部50に、板状のすくい板部51と、底受け部52と、左右のロッド部53,53と、が備えられている。すくい板部51は搬送機構40の搬送始端部に対して前方に延びる。底受け部52はすくい板部51の下方に設けられている。
【0049】
左右のロッド部53,53の夫々は、搬送方向視において苗マットの横幅の範囲内に位置する状態で無端回動ベルト41の載置面部41sを挟んで左右に振り分け配置され、搬送機構40の搬送方向に沿って延びる。左右の摺接ガイド部31G,31Gは、左右のロッド部53,53の位置する領域でロッド部53の延び方向に沿って切り欠かれている。
左右のロッド部53,53の夫々の後端部は揺動支点X2となっており、ロッド部53,53の夫々は揺動支点X2まわりに上下揺動可能に構成されている。
【0050】
底受け部52は、すくい板部51の下方で苗箱の底部に下方から当接可能なように構成されている。すくい板部51と底受け部52とは、苗箱の四隅の立上り部分の高さに相当する距離だけ離間しており、すくい板部51と底受け部52との間に隙間部Sが形成されている。このため、隙間部Sに苗箱を挿入可能なように、すくい部50は構成されている。作業者は、苗箱に入れられた苗マットの端部を引っ張り上げ、苗マットの根部がすくい板部51に対して上側に位置する状態で、苗箱を隙間部Sに押し込む。これにより、苗マットと苗箱とがすくい板部51によって分離され、苗マットはすくい板部51の上をスライドしながら搬送機構40の搬送始端部へ案内される。このように、すくい部50は、苗箱が隙間部Sへ挿入されると、苗マットを苗箱から分離してすくい板部51の上をスライドさせ、搬送機構40の搬送始端部へ案内するように構成されている。
【0051】
搬送機構40の搬送始端部に、無端回動ベルト41の載置面部41sが存在する。つまり、作業者が苗箱を隙間部Sに押し込むと、苗マットは無端回動ベルト41の載置面部41sまでスライドする。苗箱の押し込み方向は、搬送機構40の搬送方向に対して下側に向いている。このため、隙間部Sに押し込まれた状態の苗箱は、搬送機構40の搬送方向に対して後下がりに傾斜する。
【0052】
上述の通り、無端回動ベルト41の載置面部41sに、第一係止部44Aが形成されている。このため、苗マットが無端回動ベルト41の載置面部41sまでスライドする途中で、苗マットの根部が第一係止部44Aに引っ掛かると、苗マットの根部が荒れてしまう。このような不都合を回避するため、苗マットは、無端回動ベルト41の載置面部41sまでスライドする際に、左右のロッド部53,53によって第一係止部44A及び第二係止部44Bに対して上側に持ち上げられる。このとき、左右のロッド部53,53は押し上げ部Pによって上方へ押し上げられる。押し上げ部Pは隙間部Sに設けられている。本実施形態では、押し上げ部Pとして、板バネ部材54と、当接部材55と、が備えられている。
【0053】
つまり、左右のロッド部53,53は、搬送方向視において載置面部41sよりも下側に位置する状態と、押し上げ部Pによって搬送方向視において載置面部41sよりも上側に押し上げられた状態で苗マットを載置面部41sへ案内する状態(以下、『押し上げ状態』と称する)と、に状態変更可能なように構成されている。
【0054】
板バネ部材54は、すくい板部51の前端部に支持され、すくい板部51から隙間部Sの奥側(苗箱の押し込まれる側)へ延びる。つまり、板バネ部材54は、すくい板部51の先端部から隙間部Sへ向けて延ばされ、搬送方向視においてすくい板部51の先端部から離れる側ほど下側に位置するように傾斜する。また、左右のロッド部53,53の前端部(搬送方向上手側端部)は隙間部Sまで延ばされ、当接部材55はロッド部53の前端部に溶接固定されている。つまり、当接部材55はロッド部53の前端部に支持される。
当接部材55は、板バネ部材54に対して機体後側で隣接する。当接部材55にスライド面部分が備えられ、スライド面部分は板バネ部材54に対して摺接する。本実施形態では、左右の板バネ部材54,54が、左右のロッド部53,53の夫々の当接部材55,55と当接する。
【0055】
図5~
図7に示されるように、苗箱が隙間部Sへ押し込まれると、板バネ部材54が苗箱の挿入先端部分によって押し上げられ、当接部材55と当接する。当接部材55は、板バネ部材54から押圧作用を受け、板バネ部材54と摺接しながら上方へ押し上げられる。これにより、ロッド部53が当接部材55と一体的に揺動支点X2まわりに上向きに揺動する。このように、押し上げ部Pは、隙間部Sに設けられるとともに苗箱の挿入に伴ってロッド部53を搬送方向視において上方へ押し上げる。換言すると、隙間部Sに挿入される苗箱が板バネ部材54を押圧すると板バネ部材54が当接部材55を押し上げる。これにより、押し上げ部Pは、ロッド部53を、搬送方向視において載置面部41sよりも下側に位置する状態から上述の押し上げ状態に変更させる。
【0056】
苗箱の左右幅が、搬送機構40の左右幅と、すくい部50の左右幅と、の少なくとも一方よりも幅広な場合が考えられる。このような場合、搬送機構40に対して左右両側に位置するロッド部53,53の一方の当接部材55が苗箱の左右の立上り部分と当接せず、一方のロッド部53が意図通りに押し上げられない虞が考えられる。このような不都合を回避するため、
図4に示されるように、当接部材55として、当接部材55Aと当接部材55Bとが備えられている。当接部材55Aは、一つのロッド部53の前端部に溶接固定されている。当接部材55Bは、二つのロッド部53,53の夫々の前端部に溶接固定されている。当接部材55Bは当接部材55Aよりも幅広に構成されている。
【0057】
当接部材55Bは、機体横方向において互いに隣接するすくい部50,50のうち、右側(左右一方側)のすくい部50における左側(左右他方側)のロッド部53と、左側(左右他方側)のすくい部50における右側(左右一方側)のロッド部53と、の夫々の前端部に溶接固定されている。このため、当接部材55Bに連結された二つのロッド部53,53は、一体的に揺動支点X2まわりに上下揺動する。当接部材55Bは、平面視において、機体横方向において互いに隣接するすくい部50,50のうち、右側(左右一方側)のすくい部50における左側(左右他方側)の板バネ部材54と、左側(左右他方側)のすくい部50における右側(左右一方側)の板バネ部材54と、の夫々と重複する。この構成によって、上述の幅広の苗箱であっても、供給対象の搬送機構40の左右に位置するロッド部53,53が、当該幅広の苗箱の左右の立上り部分と、当接部材55Bと、の当接によってしっかりと上側へ押し上げられる。なお、
図5~
図7に示される当接部材55は、
図4に示される当接部材55Aであるが、当接部材55Bであっても、ロッド部53及び当接部材55Bは、
図5~
図7に示される通りに揺動する。
【0058】
作業者が更に苗箱を隙間部Sに押し込むと、苗箱の挿入先端部分が板バネ部材54の延出端部よりも更に奥側に挿入される。このとき、苗箱の左右の立上り部分(四隅の立上り部分のうちの左右の部分)が当接部材55に押圧作用することによって、押し上げ部Pは、ロッド部53の押し上げ状態を保持するように構成されている。そして、苗マットは、すくい板部51及び左右のロッド部53,53をスライドしながら、無端回動ベルト41の載置面部41sまで移動する。このとき、ロッド部53は、押し上げ状態であるため、搬送方向視において複数の第一係止部44Aの上端部よりも上側に位置する。このため、苗マットの根部は第一係止部44Aに対して上側に位置する状態で、苗マットが無端回動ベルト41の載置面部41sの上方をスライド移動する。これにより、苗マットが無端回動ベルト41の載置面部41sまでスライド移動する途中で、苗マットの根部が第一係止部44Aに引っ掛からない。また、苗マットの左右中央領域が撓むが、苗マットの左右中央領域は、第二係止部44Bの傾斜面部44cと摺接する。傾斜面部44cは後ろ上がりに傾斜するため、苗マットは、傾斜面部44cに対して引っ掛かることなく、左右のロッド部53,53と、傾斜面部44cと、によって無端回動ベルト41の載置面部41sの上方を円滑にスライド移動する。また、苗マットが、左右のロッド部53,53と、第一係止部44Aよりも大きく構成された第二係止部44Bと、に支持されるため、苗マットが第一係止部44Aとの摺接を避けながら載置面部41sまで案内される。
【0059】
苗マットが苗箱から分離(または略分離)した状態で、作業者が苗箱を隙間部Sから引き抜くと、当接部材55は押圧作用を受けなくなるため、左右のロッド部53,53は揺動支点X2まわりに下向きに揺動する。そして左右のロッド部53,53は、搬送方向視において無端回動ベルト41の載置面部41sよりも下側に下がり、苗マットが無端回動ベルト41の載置面部41sに載置される。この構成によって、苗マットの根部が第一係止部44Aに引っ掛からずに、苗マットが無端回動ベルト41の載置面部41sまでスライド移動する。このとき、苗マットは、前後方向において無端回動ベルト41の載置面部41sとすくい板部51とに亘って位置するが、前後方向において苗マットの5割以上が載置面部41sに載置されていると、苗マットは第一係止部44A及び第二係止部44Bに対して十分係止される。そして、ベルト搬送用モータ42によって無端回動ベルト41が回動すると苗マットは後方へ送り搬送される。
【0060】
図5~
図7に示されるように、板バネ部材54の下部(延出端部の位置する側の部分)に折り返し面部54aが形成されている。また、当接部材55の下部に折り返し面部55cが形成されている。折り返し面部54aは板バネ部材54の延出端部の位置する側の部分において上向きに曲げ形成されている。また、折り返し面部55cは当接部材55の下部において上向きに曲げ形成されている。即ち、板バネ部材54の延出先端部と、当接部材55の下部と、の夫々は搬送機構40の搬送方向側へ向くように屈曲形成されている。
これにより、作業者が苗箱を隙間部Sから引き抜く際に、苗箱が、板バネ部材54の延出先端部または当接部材55の下部に引っ掛かる虞が軽減され、作業者は苗箱を隙間部Sから円滑に引き抜ける。
【0061】
なお、当接部材55Bの折り返し面部55cを挟んで左右に板バネ部材54,54が位置する。つまり、当接部材55Bの折り返し面部55cは、機体横方向において互いに隣接するすくい部50,50のうち、右側(左右一方側)のすくい部50における左側(左右他方側)の板バネ部材54と、左側(左右他方側)のすくい部50における右側(左右一方側)の板バネ部材54と、の間に位置する。
【0062】
〔搬送装置の搬送制御について〕
すくい部50から苗マットが予備苗搬送装置30に供給されると、作業者が苗マットを予備苗搬送装置30に続けて供給できるように、搬送機構40は、無端回動ベルト41をベルト搬送用モータ42で回動することによって、苗マットを後方へ送り搬送する。
【0063】
図3及び
図4に示されるように、搬送機構40の搬送始端部における無端回動ベルト41の側方に、苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46とが前後に並んで備えられている。苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46との離間距離は、無端回動ベルト41の載置面部41sに載置された苗マットの前後方向の長さよりも短い。換言すると、苗補給スイッチ45及びベルトスイッチ46は、予備苗搬送装置30の1枚目の領域において前後に配置されている。このため、すくい部50から苗マットが予備苗搬送装置30の前部に供給されると、苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46との両方が苗マットの側部に踏まれる。本発明の『第一検出部』は、苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46とによって構成されている。つまり、本発明の『第一検出部』に、二つの検出装置として苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46とが備えられている。左右の摺接ガイド部31G,31Gの一方が、苗補給スイッチ45及びベルトスイッチ46に対応して穿孔されている。苗補給スイッチ45及びベルトスイッチ46は、搬送機構40の搬送方向に沿って並ぶ状態、かつ、苗マットの搬送方向の長さよりも短い距離で互いに離間する状態で備えられている。苗補給スイッチ45はベルトスイッチ46に対して前側に位置する。苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46との夫々は、いわゆるリミットスイッチである。苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46との夫々の上部に三角形状の部材が備えられ、当該三角形状の部材が摺接ガイド部31Gの上面部分よりも上側に突出するように付勢される。無端回動ベルト41の載置面部41sに載置された苗マットの側部が苗補給スイッチ45を踏むと、苗補給スイッチ45における当該三角形状の部材が摺接ガイド部31Gの上面部分よりも下側にスライドし、苗補給スイッチ45はON状態となる。また、無端回動ベルト41の載置面部41sに載置された苗マットの側部がベルトスイッチ46を踏むと、ベルトスイッチ46における当該三角形状の部材が摺接ガイド部31Gの上面部分よりも下側にスライドし、ベルトスイッチ46はON状態となる。苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46との夫々は、踏まれるとON状態となり、踏まれなければOFF状態となる。苗補給スイッチ45は、OFF状態からON状態に切換わることによって、一枚の苗マットが苗箱からすくい部50を介して予備苗搬送装置30の前部にしっかりと載り移ったことを検知する。また、ベルトスイッチ46は、ON状態からOFF状態に切換わることによって、一枚の苗マットが予備苗搬送装置30の前部から苗マット一枚分だけ後方へ搬送されたことを検知する。このように、苗補給スイッチ45及びベルトスイッチ46は、搬送機構40の前部において苗マットを検出する。苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46との夫々の状態は、制御部60(
図8参照)へ送られる。
【0064】
搬送機構40の搬送終端部における無端回動ベルト41の側方に、4枚目検出スイッチ47が備えられている。本発明の『第二検出部』は、4枚目検出スイッチ47によって構成されている。左右の摺接ガイド部31G,31Gの一方が、4枚目検出スイッチ47に対応して穿孔されている。4枚目検出スイッチ47もリミットスイッチであって、4枚目検出スイッチ47の上部に三角形状の部材が備えられ、当該三角形状の部材が摺接ガイド部31Gの上面部分よりも上側に突出するように付勢される。無端回動ベルト41によって搬送機構40の搬送終端部まで搬送された苗マットの側部が4枚目検出スイッチ47を踏むと、当該三角形状の部材が摺接ガイド部31Gの上面部分よりも下側にスライドし、4枚目検出スイッチ47はON状態となる。つまり、4枚目検出スイッチ47は、踏まれるとON状態となり、踏まれなければOFF状態となる。この構成によって、4枚目検出スイッチ47は、搬送機構40の後端部において苗マットを検出する。4枚目検出スイッチ47の状態は、制御部60(
図8参照)へ送られる。
【0065】
図8に示されるように、制御部60は、苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46と4枚目検出スイッチ47との検出結果に基づいて、ベルト搬送用モータ42を駆動制御し、すくい部50から搬送機構40の搬送始端部に供給された苗マットを自動的に送り搬送できる。
図8に、苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46と4枚目検出スイッチ47とベルト搬送用モータ42とが一つずつ示されているが、8条分の搬送機構40に応じて、8組の苗補給スイッチ45、ベルトスイッチ46、4枚目検出スイッチ47、及び、ベルト搬送用モータ42が制御部60と接続されている。制御部60は、複数の搬送機構40の夫々におけるベルト搬送用モータ42に対して各別に駆動制御するように構成されている。苗載せ台22に載置された苗マットの量は植付け条ごとにバラつく場合が多いが、この構成であれば、作業者は、例えば苗載せ台22において補給の必要な植付け条のみに対して苗補給を行える。これにより、苗載せ台22において補給の不要な植付け条に対して不必要な苗補給が行われる虞が回避され、苗載せ台22において補給の必要な植付け条に対して適切な苗補給が行われる。
【0066】
上述したように、搬送機構40の搬送終端部まで送り搬送された苗マットは、更に後方に送り搬送されると、前搬送部31の後端部から後搬送部32の上をスライドしながら下方の苗載せ台22へ送られる。しかし、苗植付装置Wは、一般的なものと同様に左右にロールする。このため、苗載せ台22に対して左右一方に偏って苗マットが供給されると、苗植付装置Wが全体的に左右一方に傾き、後搬送部32と苗載せ台22とが左右に位置ずれし、苗マットが苗載せ台22に正常に案内されなくなる虞がある。このような不都合を回避するため、前搬送部31の後端部から苗マットが左右均一に苗載せ台22へ送られる構成が望ましい。
【0067】
図9のフローチャートに示されるように、制御部60は、最初に苗補給スイッチ45がOFF状態からON状態に切換ったかどうかを判定する(ステップ#01)。苗補給スイッチ45がOFF状態であれば(ステップ#01:No)、ベルト搬送用モータ42が回動駆動されずにフローチャートが終了する。苗補給スイッチ45がOFF状態からON状態に切換っていれば(ステップ#01:Yes)、制御部60は、4枚目検出スイッチ47がOFF状態であるかどうかを判定する(ステップ#02)。4枚目検出スイッチ47がON状態であれば(ステップ#02:No)、ベルト搬送用モータ42が回動駆動されずにフローチャートが終了する。4枚目検出スイッチ47がOFF状態であれば(ステップ#02:Yes)、制御部60は、ベルト搬送用モータ42を所定の回転量だけ駆動させる(ステップ#03)。本実施形態において所定の回転量は、苗マット一枚分である。
つまり、制御部60は、苗補給スイッチ45がOFF状態からON状態に切換わり、かつ、4枚目検出スイッチ47がOFF状態である場合に、ベルト搬送用モータ42で無端回動ベルト41を苗マット一枚分だけ回動駆動させる。
【0068】
本実施形態では、『苗マット一枚分』とは、無端回動ベルト41の載置面部41sに載置された苗マットの搬送方向の長さよりも予め設定された長さだけ余分に長く設定された距離である。このため、無端回動ベルト41の載置面部41sに前後に並んで載置される複数の苗マットは、互いに干渉せずに、前後方向に所定の距離だけ離間した状態となる。
苗マット一枚分の長さは、例えば、苗マットの前後方向の長さよりも、ベルトスイッチ46の前後方向の寸法分だけ余分に設定される。
【0069】
無端回動ベルト41が苗マット一枚分だけ回動駆動し終えると、制御部60は、ベルトスイッチ46がON状態からOFF状態に切換ったかどうかを判定する(ステップ#04)。無端回動ベルト41が苗マット一枚分だけ回動駆動し終えた状態で、ベルトスイッチ46がON状態のままである場合が考えられる。この場合、苗マットが搬送途中で不意に引っ掛かって意図通りに搬送されず、予備苗搬送装置30の前部に留まっている可能性が考えられる。また、苗マットが意図通りに搬送された場合であっても、苗マットの搬送中に、更に新たな苗マットが予備苗搬送装置30の前部に載置され、ベルトスイッチ46が当該新たな苗マットに踏まれている可能性が考えられる。このため、ベルトスイッチ46がON状態のままである場合(ステップ#04:No)、制御部60はエラー処理を行ってアラームを出力する(アラーム報知)。これにより、作業者は予備苗搬送装置30の異常に気付いて予備苗搬送装置30における苗マットの整理作業を行える。ベルトスイッチ46がON状態からOFF状態に切換わると(ステップ#04:Yes)、フローチャートが終了する。
【0070】
すくい部50から苗マットが予備苗搬送装置30に供給される度に、苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46との両方が苗マットの側部に踏まれてON状態となって、無端回動ベルト41の載置面部41sに載置された苗マットが、苗マット一枚分だけ後方に送り搬送される。苗マットが後方へ送り搬送された後、搬送機構40の搬送始端部に、苗マット一枚分の供給スペースが確保される。このとき、苗補給スイッチ45が苗マットに踏まれなくなってOFF状態に戻り、ベルトスイッチ46が苗マットに踏まれなくなってOFF状態に戻る。
【0071】
図9のエンド処理では、苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46との両方がOFF状態に戻っていることをチェックする処理があっても良い。このチェック処理で、苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46との少なくとも一方がON状態になっていると、制御部60はエラー処理を行ってアラームを出力する構成であっても良い。そして制御部60は、アラームがリセットされない限り、ベルト搬送用モータ42を駆動制御しない構成であっても良い。また、ステップ#01で、苗補給スイッチ45がOFF状態からON状態に切換ったかどうかを判定する処理に加えて、ベルトスイッチ46がOFF状態からON状態に切換ったかどうかを判定する処理があっても良い。この場合、ベルトスイッチ46がON状態に切り換わっていなければ、制御部60はベルトスイッチ46の異常と判定し、エラー処理を行ってアラームを出力する構成であっても良い。この場合も、制御部60は、アラームがリセットされない限り、ベルト搬送用モータ42を駆動制御しない構成であっても良い。
【0072】
搬送機構40の搬送終端部まで送り搬送された苗マットが、4枚目検出スイッチ47を踏み、4枚目検出スイッチ47がON状態となる。このとき、一つの無端回動ベルト41の載置面部41sに3枚の苗マットが前後に並んで載置されている。そして、作業者が4枚目の苗マットをすくい部50から予備苗搬送装置30に供給しても、4枚目検出スイッチ47がON状態であるため、
図9のステップ#02でNoの判定となり、無端回動ベルト41の載置面部41sに載置された苗マットは送り搬送されない。このため、作業者が気付かないまま、苗載せ台22に対して左右一方に偏って苗マットが供給される虞が回避される。
【0073】
また、本実施形態の構成であれば、複数の苗マットが、互いに干渉せずに前後方向に所定の距離だけ離間する。このため、無端回動ベルト41が苗マット一枚分だけ回動駆動する際に、ベルトスイッチ46と4枚目検出スイッチ47との夫々は、必ず一旦OFF状態に切換わる。これにより、ベルトスイッチ46や4枚目検出スイッチ47が前後に並ぶ2つの苗マットによって連続的に踏まれ続ける虞が無く、ベルト搬送用モータ42が誤動作や誤検知によって余分に回動駆動し続ける虞が回避される。
【0074】
このように、制御部60は、苗補給スイッチ45が苗マットを検出し、かつ、4枚目検出スイッチ47が苗マットを検出しない場合に、苗マットが一枚分の距離だけ後方へ送り搬送されるようにベルト搬送用モータ42を自動的に回動駆動させるように構成されている。また、制御部60は、4枚目検出スイッチ47が苗マットを検出する場合に、苗補給スイッチ45及びベルトスイッチ46の検出状態にかかわらずベルト搬送用モータ42を自動的に回動駆動させないように構成されている。
【0075】
また、制御部60は、ベルト搬送用モータ42を正転制御状態と逆転制御状態とに切換え可能なように構成されている。正転制御状態で制御部60は、苗マットを苗載せ台22の位置する側へ送り搬送するようにベルト搬送用モータ42を駆動制御する。また、逆転制御状態で制御部60は、苗マットを苗載せ台22の位置する側と反対側へ送り搬送するようにベルト搬送用モータ42を駆動制御する。この構成であれば、田植機の植付け作業完了後においてマット苗が余った場合に、作業者は、ベルト搬送用モータ42の回転方向を切換えることによって、苗マットを容易に回収できる。
【0076】
〔別実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
【0077】
(1)上述の実施形態では、
図9のフローチャートに示されるように、制御部60は、苗補給スイッチ45がOFF状態からON状態に切換ったかどうかを判定してベルト搬送用モータ42を駆動させ、ベルト搬送用モータ42の駆動終了後にベルトスイッチ46がON状態からOFF状態に切換ったかどうかを判定するが、この実施形態に限定されない。
例えば、
図10のフローチャートに示される構成であっても良い。
図10のフローチャートでは、制御部60は、最初に苗補給スイッチ45がON状態であるかどうかを判定する(ステップ#11)。苗補給スイッチ45がOFF状態であれば(ステップ#11:No)、ベルト搬送用モータ42が回動駆動されずにフローチャートが終了する。苗補給スイッチ45がON状態であれば(ステップ#11:Yes)、制御部60は、次にベルトスイッチ46がON状態であるかどうかを判定する(ステップ#12)。ベルトスイッチ46がOFF状態であれば(ステップ#12:No)、ベルト搬送用モータ42が回動駆動されずにフローチャートが終了する。このように、ベルト搬送用モータ42が回動駆動される条件に、苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46との両方がON状態であることが含まれる。これにより、例えば作業者が予備苗搬送装置30へ苗マットを補給する際に誤って苗補給スイッチ45またはベルトスイッチ46に触れてしまっても、ベルト搬送用モータ42の誤作動が防止される。
【0078】
ベルトスイッチ46がON状態であれば(ステップ#12:Yes)、制御部60は、4枚目検出スイッチ47がOFF状態であるかどうかを判定する(ステップ#13)。4枚目検出スイッチ47がON状態であれば(ステップ#13:No)、ベルト搬送用モータ42が回動駆動されずにフローチャートが終了する。4枚目検出スイッチ47がOFF状態であれば(ステップ#13:Yes)、制御部60は、ベルト搬送用モータ42を所定の回転量だけ駆動させる(ステップ#14)つまり、
図10に示されるフローチャートでは、制御部60は、苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46との両方がON状態であって、かつ、4枚目検出スイッチ47がOFF状態である場合に、ベルト搬送用モータ42で無端回動ベルト41を苗マット一枚分だけ回動駆動させる。
【0079】
(2)上述の実施形態では、すくい部50から苗マットが予備苗搬送装置30の前部に供給されると、苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46との両方が苗マットの側部に踏まれるが、この実施形態に限定されない。例えば、ベルトスイッチ46が、予備苗搬送装置30における2枚目以降の苗マットが載置される領域に配置されても良い。例えば、2枚目の苗マットが載置される領域にベルトスイッチ46が配置されている場合、苗マットが1枚目の領域から2枚目の領域に後送りされることによって、ベルトスイッチ46がOFF状態からON状態に切換わる。このため、
図9に示されるステップ#04の制御では、ベルトスイッチ46がOFF状態からON状態に切換ったかどうかを判定する構成であっても良い。また、複数の苗マットは、互いに干渉せずに前後方向に所定の距離だけ離間する。このため、苗マットが2枚目の領域から3枚目の領域に後送りされ、かつ、別の苗マットが1枚目の領域から2枚目の領域に後送りされると、ベルトスイッチ46は、まずはON状態からOFF状態に切換わり、その後にOFF状態からON状態に切換わる。このため、
図9に示されるステップ#04の制御では、ベルトスイッチ46が一旦OFF状態に切換わって、その後にON状態に切換ったかどうかを判定する構成であっても良い。
【0080】
(3)上述の実施形態では、制御部60は、苗補給スイッチ45がOFF状態からON状態に切換わり、かつ、4枚目検出スイッチ47がOFF状態である場合に、ベルト搬送用モータ42が自動的に回動駆動されるが、この実施形態に限定されない。例えば、ベルト搬送用モータ42を駆動させるスイッチが備えられ、当該スイッチが作業者によって操作されるとベルト搬送用モータ42が駆動する構成であっても良い。この場合、苗補給スイッチ45がOFF状態からON状態に切換わり、かつ、4枚目検出スイッチ47がOFF状態である場合に、報知装置(例えばブザー、音声ガイダンス、操作画面等)が作業者に当該スイッチを操作可能であることを報知する構成であっても良い。そして、作業者が当該スイッチを操作すると、苗マットが一枚分の距離だけ後方へ送り搬送されるように、ベルト搬送用モータ42が回動駆動する構成であっても良い。要するに、制御部60は、苗補給スイッチ45が苗マットを検出し、かつ、4枚目検出スイッチ47が苗マットを検出しない場合に、苗マットが一枚分の距離だけ後方へ送り搬送されるようにベルト搬送用モータ42を回動駆動させるように構成されている。
【0081】
(4)上述の実施形態において、搬送機構40に無端回動体として無端回動ベルト41が備えられているが、無端回動ベルト41が備えられない構成であっても良い。例えば搬送機構40に、無端回動体として無端回動チェーンが備えられ、無端回動チェーンにバケットが取り付けられる構成であっても良いし、無端回動チェーンに係止搬送用のプレートが取り付けられる構成であっても良い。つまり、苗マットを搭乗部23の上方を経由して苗載せ台22へ搬送する搬送機構40を有する予備苗搬送装置30が備えられると良い。あるいは、搬送機構40はローラーコンベアであっても良い。
【0082】
(5)上述の実施形態では、第一駆動体は電動油圧シリンダ28によって構成されているが、例えば第一駆動体は油圧モータで駆動する油圧シリンダによって構成されても良いし、電動リニアガイドで構成されても良い。つまり、第一駆動体は、搭乗部23の上方に設けられた機体横向きの揺動支点X1まわりに予備苗搬送装置30を上下に揺動駆動する構成であれば良い。
【0083】
(6)上述の実施形態では、予備苗搬送装置30は、上昇姿勢となっている状態で、予備苗搬送装置30の前端部の高さと揺動支点X1の高さとが同じまたは略同じ状態となるように構成されているが、この実施形態に限定されない。例えば、予備苗搬送装置30は、上昇姿勢となっている状態で後上がりに傾斜しても良いし、後下がりに傾斜しても良い。
【0084】
(7)予備苗搬送装置30の前搬送部31及び後搬送部32が一体的に揺動支点X1まわりに上下揺動可能に構成されても良い。また、後搬送部32が備えられない構成であっても良い。つまり、第一駆動体としての電動油圧シリンダ28は、予備苗搬送装置30を揺動支点X1まわりに上下に揺動駆動する構成であれば良い。
【0085】
(8)上述の実施形態では、予備苗搬送装置30の前端部は、下降姿勢となっている状態で、走行機体Cの前端部よりも前側に位置するが、この実施形態に限定されない。例えば、予備苗搬送装置30の前端部は、下降姿勢となっている状態で、走行機体Cの前端部よりも後側に位置する構成であっても良い。
【0086】
(9)上述の実施形態では、第二駆動体は電動式のベルト搬送用モータ42によって構成されているが、第二駆動体は油圧モータで構成されても良い。
【0087】
(10)上述の実施形態では、第一検出部として二つの検出装置、即ち苗補給スイッチ45及びベルトスイッチ46が備えられているが、苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46との一方のみが備えられる構成であっても良い。例えば、ベルトスイッチ46の配置されている箇所に、苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46との両方を兼用する一つのスイッチが配置される構成であっても良い。この場合、
図9に示されるステップ#01の制御では、当該一つのスイッチがOFF状態からON状態に切換ったかどうかを判定する構成であっても良い。また、
図9に示されるステップ#04の制御では、当該一つのスイッチがON状態からOFF状態に切換ったかどうかを判定する構成であっても良い。
【0088】
(11)苗補給スイッチ45とベルトスイッチ46との夫々は、リミットスイッチでなくても良く、例えばマグネットスイッチであっても良いし、画像認識処理を可能なカメラセンサであっても良いし、圧力センサであっても良いし、光センサであっても良い。
【0089】
(12)上述の実施形態では、第二検出部としてリミットスイッチである4枚目検出スイッチ47が備えられているが、4枚目検出スイッチ47はリミットスイッチに限定されない。例えば、4枚目検出スイッチ47は、マグネットスイッチであっても良いし、画像認識処理を可能なカメラセンサであっても良いし、圧力センサであっても良いし、光センサであっても良い。
【0090】
(13)第一検出部及び第二検出部は、例えばベルト搬送用モータ42の電流値を検出し、当該電流値に基づいて載置面部41sに載置された苗マットの個数を算出する構成であっても良い。
【0091】
なお、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。
また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、複数の苗を集めてマット状にした苗マットを苗植付装置の苗載せ台へ搬送する予備苗搬送装置が備えられた田植機に適用できる。
【符号の説明】
【0093】
22 :苗載せ台
23 :搭乗部
23A :搭乗座席
28 :電動油圧シリンダ(第一駆動体)
30 :予備苗搬送装置
31 :前搬送部(予備苗搬送装置)
32 :後搬送部(予備苗搬送装置)
33 :リンク機構
33A :基端ブーム部(第一リンク)
33B :先端アーム部(第二リンク)
40 :搬送機構
41 :無端回動ベルト(無端回動体)
42 :ベルト搬送用モータ(第二駆動体)
45 :苗補給スイッチ(第一検出部、検出装置)
46 :ベルトスイッチ(第一検出部、検出装置)
47 :4枚目検出スイッチ(第二検出部)
60 :制御部
C :走行機体
W :苗植付装置
X1 :揺動支点