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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】田植機
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
A01C11/02 350H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021064023
(22)【出願日】2021-04-05
(65)【公開番号】P2022159678
(43)【公開日】2022-10-18
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】宮西 吉秀
(72)【発明者】
【氏名】山内 一喜
(72)【発明者】
【氏名】西村 浩二
(72)【発明者】
【氏名】原野 朱莉
(72)【発明者】
【氏名】尼崎 喬士
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-205622(JP,A)
【文献】特開平01-141517(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0375089(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体後部に位置すると共に苗載せ台を有する苗植付装置と、
前記苗載せ台よりも前側に位置すると共に前記苗載せ台へ苗マットを搬送する苗搬送装置と、を備え、
前記苗搬送装置は、駆動状態である場合は前記苗マットの搬送を行い、且つ、停止状態である場合は前記苗マットの搬送を行わないように構成されており、
前記苗搬送装置の状態を前記駆動状態と前記停止状態との間で切り替える切替部と、
前記苗載せ台に載置されている前記苗マットの苗の量である苗残量を検知する検知部と、を備え、
前記苗植付装置は、苗植付動作を行いながら前記苗載せ台を左右に往復移送するように構成されており、
前記切替部は、前記苗残量が所定の第1残量以下であることが前記検知部によって検知された後、前記苗載せ台が左右方向における所定位置に到達した場合、前記苗搬送装置の状態を前記停止状態から前記駆動状態へ切り替え、
前記所定位置は、前記苗載せ台の往復移送における左または右のストロークエンドである田植機。
【請求項2】
機体後部に位置すると共に苗載せ台を有する苗植付装置と、
前記苗載せ台よりも前側に位置すると共に前記苗載せ台へ苗マットを搬送する苗搬送装置と、を備え、
前記苗搬送装置は、駆動状態である場合は前記苗マットの搬送を行い、且つ、停止状態である場合は前記苗マットの搬送を行わないように構成されており、
前記苗搬送装置の状態を前記駆動状態と前記停止状態との間で切り替える切替部と、
前記苗載せ台に載置されている前記苗マットの苗の量である苗残量を検知する検知部と、を備え、
前記切替部は、前記苗残量が所定の第1残量以下であることが前記検知部によって検知された場合、前記苗搬送装置の状態を前記停止状態から前記駆動状態へ切り替え、
前記苗植付装置は、苗植付動作を行いながら前記苗載せ台を左右に往復移送するように構成されており、
前記切替部は、前記苗残量が前記第1残量以下であることが前記検知部によって検知された後、前記苗載せ台が左右に所定回数往復した場合、前記苗搬送装置の状態を前記停止状態から前記駆動状態へ切り替える田植機。
【請求項3】
前記苗植付装置は、ローリングすることによって左右揺動可能な状態で設けられており、
前記苗搬送装置は、機体左右方向に並ぶ複数の搬送機構を有しており、
各前記搬送機構は、それぞれ、前記苗載せ台へ1条分の前記苗マットを搬送可能に構成されており、
前記苗載せ台は、機体左右方向に並ぶ複数の区画を有しており、
各前記区画は、それぞれ、1条分の前記苗マットを載置可能に構成されており、
前記検知部は、前記苗残量を前記区画毎に検知するように構成されており、
前記切替部は、各前記搬送機構を個別に制御することにより、前記苗搬送装置の状態を、前記搬送機構毎に、前記駆動状態と前記停止状態との間で切り替え可能に構成されており、
一つの前記区画における前記苗残量が前記第1残量以下であることが前記検知部によって検知された後、前記苗載せ台が左右に前記所定回数往復している間に、当該区画とは異なる前記区画における前記苗残量が前記第1残量以下となったことが前記検知部によって検知された場合、前記切替部は、前記苗載せ台への前記苗マットの補給による前記苗載せ台と前記苗搬送装置との間の姿勢ずれの増大が抑制されるように各前記搬送機構を駆動させる制御である姿勢ずれ抑制制御を実行する請求項2に記載の田植機。
【請求項4】
前記切替部は、前記姿勢ずれ抑制制御において、前記苗マットが最初に補給される前記区画が、前記苗残量が前記第1残量以下である各前記区画のうち機体左右方向で最も中央側に位置する前記区画であるように、各前記搬送機構を駆動させる請求項3に記載の田植機。
【請求項5】
前記切替部は、前記苗搬送装置の状態を前記停止状態から前記駆動状態へ切り替えた後、前記苗残量が前記第1残量より多いことが前記検知部によって検知された場合、前記苗搬送装置の状態を前記駆動状態から前記停止状態へ切り替える請求項1からの何れか一項に記載の田植機。
【請求項6】
前記検知部は、前記苗残量が前記第1残量以下であるか否かを検知する第1センサと、前記苗残量が前記第1残量より少ない第2残量以下であるか否かを検知する第2センサと、を有する請求項1からの何れか一項に記載の田植機。
【請求項7】
前記第1センサ及び前記第2センサは、何れも、前記苗載せ台に設けられると共に、前記苗載せ台に載置されている前記苗マットに接当するスイッチであり、
前記第1センサは、前記第2センサよりも高い位置に設けられている請求項に記載の田植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗載せ台を有する苗植付装置を備える田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような田植機として、例えば、特許文献1に記載のものが既に知られている。この田植機の機体前部には、予備苗のせ台が備えられている。作業者は、この予備苗のせ台に、予備の苗マットを載置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-168512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の田植機を用いて苗植え付け作業を行う場合、作業者は、まず、苗マットを苗植付装置(特許文献1では「苗植付け装置」)の苗載せ台(特許文献1では「苗のせ台」)に載置する。また、作業者は、苗マット支持体に支持された状態の苗マットを、予備苗のせ台に載置する。
【0005】
尚、苗マット支持体とは、苗マットを支持する器具であり、例えば、すくい板である。
【0006】
そして、作業者は、田植機による苗の植え付けを開始する。苗の植え付けが進行するに伴い、苗載せ台に載置されている苗マットの苗が減少していく。
【0007】
苗載せ台に載置されている苗がある程度少なくなったとき、作業者は、苗の植え付けを中断すると共に、田植機を走行停止させる。次に、作業者は、予備苗のせ台に載置されている苗マットを、苗マット支持体に支持された状態のまま、手で保持する。そして、作業者は、苗マットを、苗マット支持体から分離させると共に、苗載せ台に補給する。
【0008】
このように、苗載せ台に載置されている苗がある程度少なくなったとき、作業者は、苗マットを苗載せ台に補給する必要がある。そして、苗マットを苗載せ台に補給する作業には、比較的多くの労力が必要となる。
【0009】
本発明の目的は、苗マットを苗載せ台に補給する作業の省力化が可能な田植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の特徴は、機体後部に位置すると共に苗載せ台を有する苗植付装置と、前記苗載せ台よりも前側に位置すると共に前記苗載せ台へ苗マットを搬送する苗搬送装置と、を備え、前記苗搬送装置は、駆動状態である場合は前記苗マットの搬送を行い、且つ、停止状態である場合は前記苗マットの搬送を行わないように構成されており、前記苗搬送装置の状態を前記駆動状態と前記停止状態との間で切り替える切替部と、前記苗載せ台に載置されている前記苗マットの苗の量である苗残量を検知する検知部と、を備え、前記苗植付装置は、苗植付動作を行いながら前記苗載せ台を左右に往復移送するように構成されており、前記切替部は、前記苗残量が所定の第1残量以下であることが前記検知部によって検知された後、前記苗載せ台が左右方向における所定位置に到達した場合、前記苗搬送装置の状態を前記停止状態から前記駆動状態へ切り替え、前記所定位置は、前記苗載せ台の往復移送における左または右のストロークエンドであることにある。
【0011】
本発明であれば、苗残量が所定の第1残量以下になると、苗搬送装置が駆動状態に切り替わる。これにより、苗マットが苗搬送装置によって苗載せ台へ搬送される。そのため、苗載せ台に載置されている苗がある程度少なくなったときに、苗搬送装置により、苗マットが苗載せ台に自動的に補給される田植機を実現できる。
【0012】
従って、本発明であれば、苗マットを苗載せ台に補給する作業の省力化が可能な田植機を実現できる。
また、この構成によれば、苗搬送装置の状態が停止状態から駆動状態へ切り替えられるときの苗載せ台と苗搬送装置との位置関係が、毎回同じとなる。そのため、苗載せ台へ苗マットが補給される際の苗載せ台と苗搬送装置との位置関係が常に好適となる田植機を実現しやすく、例えば苗搬送装置を左右方向で固定する構成にして、苗載せ台のみを左右方向で移動可能にする等構造を簡単にしやすい。
【0013】
本発明の別の特徴は、機体後部に位置すると共に苗載せ台を有する苗植付装置と、前記苗載せ台よりも前側に位置すると共に前記苗載せ台へ苗マットを搬送する苗搬送装置と、を備え、前記苗搬送装置は、駆動状態である場合は前記苗マットの搬送を行い、且つ、停止状態である場合は前記苗マットの搬送を行わないように構成されており、前記苗搬送装置の状態を前記駆動状態と前記停止状態との間で切り替える切替部と、前記苗載せ台に載置されている前記苗マットの苗の量である苗残量を検知する検知部と、を備え、前記切替部は、前記苗残量が所定の第1残量以下であることが前記検知部によって検知された場合、前記苗搬送装置の状態を前記停止状態から前記駆動状態へ切り替え、前記苗植付装置は、苗植付動作を行いながら前記苗載せ台を左右に往復移送するように構成されており、前記切替部は、前記苗残量が前記第1残量以下であることが前記検知部によって検知された後、前記苗載せ台が左右に所定回数往復した場合、前記苗搬送装置の状態を前記停止状態から前記駆動状態へ切り替えることにある
【0014】
本発明であれば、苗残量が所定の第1残量以下になると、苗搬送装置が駆動状態に切り替わる。これにより、苗マットが苗搬送装置によって苗載せ台へ搬送される。そのため、苗載せ台に載置されている苗がある程度少なくなったときに、苗搬送装置により、苗マットが苗載せ台に自動的に補給される田植機を実現できる。
従って、本発明であれば、苗マットを苗載せ台に補給する作業の省力化が可能な田植機を実現できる。
また、この構成によれば、苗残量が第1残量より少ない所定残量になったタイミングで、苗搬送装置の状態が停止状態から駆動状態へ切り替えられる構成を実現しやすい。
【0015】
例えば、苗残量が第1残量以下となった後、苗載せ台が左右に4回往復した時点で苗残量がほぼゼロとなることがわかっている場合、上記の構成における「所定回数」が4回に設定されていれば、苗残量がほぼゼロとなったタイミングで、苗搬送装置の状態が停止状態から駆動状態へ切り替えられることとなる。これにより、苗載せ台へ苗マットが補給されるタイミングが好適となる。
【0016】
このように、上記の構成によれば、苗載せ台へ苗マットが補給されるタイミングが好適である田植機を実現しやすい。
【0017】
さらに、本発明において、前記苗植付装置は、ローリングすることによって左右揺動可能な状態で設けられており、前記苗搬送装置は、機体左右方向に並ぶ複数の搬送機構を有しており、各前記搬送機構は、それぞれ、前記苗載せ台へ1条分の前記苗マットを搬送可能に構成されており、前記苗載せ台は、機体左右方向に並ぶ複数の区画を有しており、各前記区画は、それぞれ、1条分の前記苗マットを載置可能に構成されており、前記検知部は、前記苗残量を前記区画毎に検知するように構成されており、前記切替部は、各前記搬送機構を個別に制御することにより、前記苗搬送装置の状態を、前記搬送機構毎に、前記駆動状態と前記停止状態との間で切り替え可能に構成されており、一つの前記区画における前記苗残量が前記第1残量以下であることが前記検知部によって検知された後、前記苗載せ台が左右に前記所定回数往復している間に、当該区画とは異なる前記区画における前記苗残量が前記第1残量以下となったことが前記検知部によって検知された場合、前記切替部は、前記苗載せ台への前記苗マットの補給による前記苗載せ台と前記苗搬送装置との間の姿勢ずれの増大が抑制されるように各前記搬送機構を駆動させる制御である姿勢ずれ抑制制御を実行すると好適である。
【0018】
この構成によれば、苗載せ台における複数の区画へ苗マットが補給される際、苗マットの重量によって苗植付装置がローリングして苗載せ台と苗搬送装置との間の姿勢ずれが増大することが抑制される。これにより、苗載せ台と苗搬送装置との間の姿勢ずれによって苗マットの補給が正常に行われない事態を回避しやすい。
【0019】
詳述すると、一般に、田植機では各条クラッチや苗取り量の誤差もあり、条ごとの苗マットの消費量が不均一になることがある。
【0020】
ここで、上記の構成であれば、苗残量が第1残量以下になった後、所定回数往復することで、例えば苗載せ台の一つの条で苗切れが起こった後に所定回数の往復中に他の条でも苗切れが起きた場合に、苗載せ台の左右重量バランスを考慮して、どの条から苗マットを優先的に補給するのが最適かを判断することができる。即ち、例えば苗切れを最初に検知した条から機械的に苗補給を行うのではなく、左右バランスに影響を与えにくい中央側の条から苗マットを補給するというようなことが可能になる。
【0021】
さらに、本発明において、前記切替部は、前記姿勢ずれ抑制制御において、前記苗マットが最初に補給される前記区画が、前記苗残量が前記第1残量以下である各前記区画のうち機体左右方向で最も中央側に位置する前記区画であるように、各前記搬送機構を駆動させると好適である。
【0022】
この構成によれば、苗載せ台における複数の区画へ苗マットが補給される際、機体左右方向で最も中央側に位置する区画に、苗マットが最初に補給される。これにより、機体左右方向外側に位置する区画に苗マットが最初に補給される構成に比べて、苗マットの重量によって苗植付装置がローリングしにくい。その結果、苗載せ台と苗搬送装置との間の姿勢ずれの増大が確実に抑制されやすい。
【0023】
【0024】
【0025】
さらに、本発明において、前記切替部は、前記苗搬送装置の状態を前記停止状態から前記駆動状態へ切り替えた後、前記苗残量が前記第1残量より多いことが前記検知部によって検知された場合、前記苗搬送装置の状態を前記駆動状態から前記停止状態へ切り替えると好適である。
【0026】
この構成によれば、苗搬送装置によって苗載せ台に苗マットが十分に補給された時点で、苗搬送装置の状態が駆動状態から停止状態へ切り替えられる構成を実現しやすい。即ち、搬送装置の状態が駆動状態から停止状態へ切り替えられるタイミングが適切である田植機を実現しやすい。
【0027】
さらに、本発明において、前記検知部は、前記苗残量が前記第1残量以下であるか否かを検知する第1センサと、前記苗残量が前記第1残量より少ない第2残量以下であるか否かを検知する第2センサと、を有すると好適である。
【0028】
この構成によれば、苗残量が第1残量より少ない第2残量以下となった場合、そのことを第2センサにより検知可能である。そのため、例えば、苗搬送装置に苗マットが載置されておらず、苗残量が第1残量以下となっても苗載せ台への苗マットの補給が行われない状態で苗植付作業が行われて、苗載せ台に載置されている苗が残りわずかとなった場合に、第2センサの検知結果に基づいて、苗載せ台に載置されている苗が残りわずかであることをオペレータに報知する構成を実現できる。
【0029】
さらに、本発明において、前記第1センサ及び前記第2センサは、何れも、前記苗載せ台に設けられると共に、前記苗載せ台に載置されている前記苗マットに接当するスイッチであり、前記第1センサは、前記第2センサよりも高い位置に設けられていると好適である。
【0030】
この構成によれば、第1センサ及び第2センサを備える田植機を、比較的簡素な構成で実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】田植機の左側面図である。
図2】田植機の平面図である。
図3】縦送り機構及び横送り機構の構成を示す図である。
図4】検知部等の構成を示す背面図である。
図5】第1センサ等の構成を示す縦断左側面図である。
図6】制御部に関する構成を示すブロック図である。
図7】搬送制御ルーチンのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、図1図2図5に示す矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」として、図2から図4に示す矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。また、図1図4図5に示す矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0033】
〔田植機の全体構成〕
図1に示すように、乗用型の田植機Aには、左右一対の操舵車輪10,10と、左右一対の後車輪11,11と、を有し、圃場を走行可能な走行機体Cが備えられている。図1及び図2に示すように、走行機体Cの中央部には、各種の運転操作が行われる搭乗部23が備えられている。搭乗部23は、走行機体Cの横幅に亘って走行機体Cの上に設けられる。
【0034】
苗植付装置Wが上下昇降可能なように走行機体Cの後部に支持連結され、苗植付装置Wは圃場に苗を植え付け可能に構成されている。左右一対の操舵車輪10は、走行機体Cの機体前部に設けられて走行機体Cの向きを変更操作自在なように構成され、左右一対の後車輪11は、走行機体Cの機体後部に設けられている。苗植付装置Wは、植付リンク機構17を介して走行機体Cの後部に昇降可能に連結されている。これにより、苗植付装置Wは、田植機Aの機体後部に設けられている。植付リンク機構17は昇降用油圧シリンダ16の伸縮作動により昇降作動する。
【0035】
尚、図1においては、上昇位置の苗植付装置Wが、実線にて示されている。また、下降位置の苗植付装置Wが、仮想線にて示されている。昇降用油圧シリンダ16の伸縮作動により、苗植付装置Wの位置は、上昇位置と下降位置との間で変化する。
【0036】
また、苗植付装置Wは、走行機体Cに対してローリング可能に設けられている。即ち、苗植付装置Wは、ローリングすることによって左右揺動可能な状態で設けられている。
【0037】
走行機体Cの前部には、走行機体Cを走行駆動可能なエンジン13と、開閉式のボンネット12と、が備えられている。ボンネット12は後上がりに傾斜する傾斜面を有するとともにエンジン13を収納可能に構成されている。詳述はしないが、操舵車輪10若しくは後車輪11、またはその両方に、エンジン13の動力を伝達するための変速機構として、公知のHST(静油圧式無段変速装置、不図示)、及び、トランスミッションTM(図3参照)が備えられている。エンジン13の動力が、機体に備えられた変速機構を介して操舵車輪10及び後車輪11に伝達され、変速後の動力が電動モータ駆動式の植付クラッチ(不図示)を介して苗植付装置Wに伝達される。
【0038】
図1及び図2に示すように、苗植付装置Wに、複数(例えば4個)の伝動ケース18と、複数(例えば8個)の回転ケース19と、整地フロート21と、苗載せ台22と、が備えられている。回転ケース19は、各伝動ケース18の後部の左側部及び右側部に、夫々回転自在に支持されている。夫々の回転ケース19の両端部に、一対のロータリ式の植付アーム20が備えられている。整地フロート21は、圃場の田面を整地するものであり、苗植付装置Wに複数備えられている。苗載せ台22に、植え付け用のマット状の苗である苗マットM(図5参照)が載置される。
【0039】
このように、田植機Aは、機体後部に位置すると共に苗載せ台22を有する苗植付装置Wを備えている。
【0040】
苗植付装置Wは、苗載せ台22を左右に往復横送り駆動しながら、伝動ケース18から伝達される動力により各回転ケース19を回転駆動して、苗載せ台22の下部から各植付アーム20により交互に苗を取り出して圃場の田面に植え付けるようになっている。即ち、苗植付装置Wは、複数の回転ケース19に備えられた植付アーム20により苗を植え付けるように構成されている。
【0041】
〔縦送り機構及び横送り機構の構成〕
図3に示すように、苗植付装置Wは、縦送り機構82及び横送り機構83を有している。
【0042】
横送り機構83は、横送り軸83a及び横送り部材83bを有している。横送り軸83aは、トランスミッションTMからの動力によって回転する。
【0043】
横送り部材83bは、横送り軸83aに対して相対回転可能な状態で、且つ、横送り軸83aに対してスライド可能な状態で、横送り軸83aに取り付けられている。また、横送り部材83bは、苗載せ台22に連結されている。
【0044】
そして、横送り軸83aが回転すると、横送り部材83bは、横送り軸83aに形成された螺旋送り溝によって、横送り軸83aの延びる方向に往復移送される。これにより、苗載せ台22は、左右に往復移送される。この構成により、苗植付装置Wは、植付アーム20により苗植付動作を行いながら、苗載せ台22を左右に往復移送する。
【0045】
即ち、苗植付装置Wは、苗植付動作を行いながら苗載せ台22を左右に往復移送するように構成されている。苗載せ台22が左右に往復移送されることにより、走行機体Cに対する苗載せ台22の位置が、左右方向に変化する。
【0046】
また、図3に示すように、縦送り機構82は、縦送り軸82a、第1伝動アーム82b、第2伝動アーム82c、受動アーム82d、ワンウェイクラッチ82e、駆動軸82f、縦送りベルト82gを有している。
【0047】
ここで、本実施形態における田植機Aは、8条植えである。即ち、苗載せ台22には、8条分の苗マットMを載置可能である。そのため、本実施形態においては、8個の縦送りベルト82gが備えられている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、縦送りベルト82gの個数は、7個以下でも良いし、9個以上でも良い。
【0048】
縦送り軸82aは、トランスミッションTMからの動力によって回転する。また、第1伝動アーム82b及び第2伝動アーム82cは、縦送り軸82aに対して相対回転不能な状態で、縦送り軸82aに固定されている。第1伝動アーム82bは、第2伝動アーム82cよりも左側に位置している。
【0049】
受動アーム82dは、ワンウェイクラッチ82eを介して、駆動軸82fに連結されている。そして、縦送りベルト82gは、駆動軸82fが回転することによって回動するように構成されている。
【0050】
苗載せ台22が左のストロークエンド(本発明に係る「左右方向における所定位置」に相当)に到達すると、受動アーム82dが、第1伝動アーム82bの回転域に入る。これにより、第1伝動アーム82bが受動アーム82dに接当する。そして、縦送り軸82aの動力が、第1伝動アーム82b、受動アーム82d、ワンウェイクラッチ82eを介して、駆動軸82fに伝達される。
【0051】
その結果、駆動軸82fが設定回転角だけ回転すると共に、縦送りベルト82gが回動する。このときの縦送りベルト82gの回動量は、所定の送り距離に相当する回動量である。
【0052】
また、苗載せ台22が右のストロークエンドに到達すると、受動アーム82dが、第2伝動アーム82cの回転域に入る。これにより、第2伝動アーム82cが受動アーム82dに接当する。そして、縦送り軸82aの動力が、第2伝動アーム82c、受動アーム82d、ワンウェイクラッチ82eを介して、駆動軸82fに伝達される。
【0053】
その結果、駆動軸82fが設定回転角だけ回転すると共に、縦送りベルト82gが回動する。このときの縦送りベルト82gの回動量は、所定の送り距離に相当する回動量である。
【0054】
ここで、縦送りベルト82gは、苗載せ台22に載置されている苗マットM(図5参照)に接当するように構成されている。そのため、縦送りベルト82gが回動することにより、苗載せ台22に載置されている苗マットMは下側へ移動する。
【0055】
以上で説明した構成により、苗載せ台22が左右のストロークエンドに到達する度に、苗載せ台22に載置されている苗マットMは、所定の送り距離だけ下側へ移動することとなる。
【0056】
尚、図2においては、左のストロークエンドに位置している状態の苗載せ台22が、実線にて示されている。また、右のストロークエンドに位置している状態の苗載せ台22の右端部が、仮想線にて示されている。
【0057】
図2に示すように、苗載せ台22が左のストロークエンドに位置している状態では、苗載せ台22は、機体左右方向において、後述の予備苗搬送装置30に対応する位置に位置している。言い換えれば、苗載せ台22が左のストロークエンドに位置している状態では、機体左右方向における苗載せ台22の位置と予備苗搬送装置30の位置とが一致する。
【0058】
〔予備苗搬送装置について〕
図1及び図2に示すように、搭乗部23の上方に予備苗搬送装置30(本発明に係る「苗搬送装置」に相当)が備えられている。予備苗搬送装置30は、苗載せ台22へ苗マットM(図5参照)を搬送するように構成されている。以下では、予備苗搬送装置30について説明する。
【0059】
予備苗搬送装置30は、平面視において搭乗部23の搭乗座席23Aと重複する。また、予備苗搬送装置30は、苗載せ台22よりも前側に位置している。
【0060】
このように、田植機Aは、苗載せ台22よりも前側に位置すると共に苗載せ台22へ苗マットMを搬送する予備苗搬送装置30を備えている。
【0061】
予備苗搬送装置30は、上昇部31と下降部32とを有している。上昇部31は、予備苗搬送装置30の前部に位置している。また、上昇部31は、後側ほど上側に位置するように傾斜する。即ち、上昇部31は、後上がりに傾斜した状態で設けられている。また、上昇部31は、後端部の機体横向き軸芯X1まわりに上下揺動可能に構成されている。
【0062】
即ち、上昇部31は、予備苗搬送装置30の前部に位置すると共に、後上がりに傾斜した状態で設けられている。
【0063】
下降部32は、上昇部31の後端から後側へ延びている。また、下降部32は、後側ほど下側に位置するように傾斜する。即ち、下降部32は、後下がりに傾斜した状態で設けられている。
【0064】
このように、下降部32は、上昇部31の後端から後側へ延びると共に、後下がりに傾斜した状態で設けられている。
【0065】
上昇部31に、複数の搬送機構40が備えられている。複数の搬送機構40は、左右方向に並ぶ状態で配置されている。即ち、予備苗搬送装置30は、機体左右方向に並ぶ複数の搬送機構40を有している。ここで、上述の通り、本実施形態における田植機Aは、8条植えである。即ち、苗載せ台22には、8条分の苗マットMを載置可能である。そして、本実施形態において、搬送機構40の設けられる個数は、苗載せ台22に載置可能な苗マットMの条数に一致している。即ち、本実施形態において、搬送機構40の設けられる個数は、8個である。
【0066】
図1及び図2に示すように、各搬送機構40は、無端回動ベルト41と、ベルト搬送用モータ42と、を有している。ベルト搬送用モータ42は、無端回動ベルト41を回動駆動するように構成されている。尚、ベルト搬送用モータ42は、田植機Aに搭載されたバッテリー(図示せず)から供給される電力によって駆動する。無端回動ベルト41が回動駆動されているとき、無端回動ベルト41は、無端回動ベルト41の上側面が後側へ移動し、無端回動ベルト41の下側面が前側へ移動するように、回動する。
【0067】
無端回動ベルト41の上側面に苗マットMが載置された状態で、ベルト搬送用モータ42が駆動すると、苗マットMが無端回動ベルト41によって後側へ搬送される。これにより、上昇部31は、苗マットMを後側へ搬送し、下降部32へ受け渡す。
【0068】
上昇部31から下降部32へ受け渡された苗マットMは、下降部32の上をスライドしながら下方の苗載せ台22へ案内される。即ち、苗マットMは、下降部32を滑り降りることにより、苗載せ台22に供給される。
【0069】
このように、予備苗搬送装置30は、上昇部31によって後側へ搬送された苗マットMが、下降部32を滑り降りることにより、苗マットMが苗載せ台22に供給されるように構成されている。また、各搬送機構40は、それぞれ、苗載せ台22へ1条分の苗マットMを搬送可能に構成されている。
【0070】
尚、以上で説明した構成により、上昇部31は、8条分の苗マットMを後側へ搬送可能である。また、下降部32は、8条分の苗マットMを苗載せ台22へ案内可能である程度の横幅を有している。これにより、本実施形態における予備苗搬送装置30は、8条分の苗マットMを苗載せ台22へ搬送可能である。
【0071】
また、以上で説明した構成により、予備苗搬送装置30は、駆動状態である場合は苗マットMの搬送を行う。尚、駆動状態とは、予備苗搬送装置30が駆動している状態である。より具体的には、駆動状態とは、無端回動ベルト41が駆動している状態である。
【0072】
また、以上で説明した構成により、予備苗搬送装置30は、停止状態である場合は苗マットMの搬送を行わない。尚、停止状態とは、予備苗搬送装置30が駆動停止している状態である。より具体的には、停止状態とは、無端回動ベルト41が停止している状態である。
【0073】
即ち、予備苗搬送装置30は、駆動状態である場合は苗マットMの搬送を行い、且つ、停止状態である場合は苗マットMの搬送を行わないように構成されている。
【0074】
図1に示すように、走行機体Cに左右の側部フレーム24,24が備えられ、側部フレーム24,24は搭乗座席23Aの左右両側方において上向きに立設される。側部フレーム24,24に後支持フレーム部25が連結されている。後支持フレーム部25の上端部は、機体横向き軸芯X1に沿って延びる。
【0075】
後支持フレーム部25の左右両端部における下端部の夫々が側部フレーム24,24に連結されている。そして、後支持フレーム部25の上端部に上昇部31の後端部が揺動可能に連結される。下降部32の前端部は後支持フレーム部25に支持されている。
【0076】
ボンネット12の左右両側方に前支持フレーム部26,26が備えられている。前支持フレーム部26,26の夫々に、電動油圧シリンダ28と、リンク機構33と、が連結されている。リンク機構33は、前支持フレーム部26と、上昇部31の前部における支持受け部34と、の夫々に枢支されている。また、電動油圧シリンダ28は前支持フレーム部26とリンク機構33との夫々に枢支され、電動油圧シリンダ28の伸縮動作によって、リンク機構33が上下に揺動し、支持受け部34が昇降動作する。これにより、上昇部31は機体横向き軸芯X1まわりに上下揺動可能に構成されている。
【0077】
〔検知部について〕
図4に示すように、田植機Aは、検知部50を備えている。検知部50は、苗残量を検知するように構成されている。尚、苗残量とは、苗載せ台22に載置されている苗マットMの苗の量である。
【0078】
即ち、田植機Aは、苗載せ台22に載置されている苗マットMの苗の量である苗残量を検知する検知部50を備えている。
【0079】
以下では、検知部50について説明する。
【0080】
図4に示すように、検知部50は、複数の第1センサ51、及び、複数の第2センサ52を有している。各第1センサ51、及び、各第2センサ52は、何れも、苗載せ台22に設けられている。
【0081】
尚、図2及び図4に示すように、苗載せ台22は、左右方向に並ぶ8つの区画22aを有するように構成されている。即ち、苗載せ台22は、機体左右方向に並ぶ複数の区画22aを有している。各区画22aの左右幅は、苗マットMの左右幅に対応している。これにより、各区画22aは、それぞれ、1条分の苗マットMを載置可能に構成されている。そして、各区画22aに、第1センサ51及び第2センサ52が1つずつ設けられている。
【0082】
図4に示すように、各第1センサ51は、機体上下方向における苗載せ台22の上部に設けられている。また、各第2センサ52は、機体上下方向における苗載せ台22の下部に設けられている。即ち、第1センサ51は、第2センサ52よりも高い位置に設けられている。
【0083】
図5に示すように、第1センサ51は、苗載せ台22に載置されている苗マットMに接当するスイッチである。第1センサ51は、側面視で三角形状の部分を有している。そして、苗載せ台22において苗マットMが載置される面から、この三角形状の部分が上側へ突出するように、第1センサ51は付勢部材により付勢されている。
【0084】
図5に仮想線で示すように、苗マットMが第1センサ51を踏むと、第1センサ51が下側へ変位する。これにより、第1センサ51はON状態となる。また、図5に実線で示すように、苗マットMが第1センサ51を踏んでいない場合、第1センサ51は付勢部材の付勢力により元の位置へ戻る。これにより、第1センサ51はOFF状態となる。
【0085】
尚、以上の説明では、第1センサ51の構造について詳述したが、第2センサ52は第1センサ51と同一の構造を有している。そのため、第2センサ52の構造についての説明は省略する。
【0086】
このように、第1センサ51及び第2センサ52は、何れも、苗載せ台22に設けられると共に、苗載せ台22に載置されている苗マットMに接当するスイッチである。
【0087】
ここで、図4には、第1高さ位置H1が示されている。区画22aにおいて、苗上端位置が第1高さ位置H1よりも高い場合、その区画22aに位置する第1センサ51はON状態となる。尚、苗上端位置とは、区画22aに載置されている苗マットMのうち、最も上側に位置する苗マットMの上端の位置である。
【0088】
また、区画22aにおいて、苗上端位置が第1高さ位置H1以下である場合、その区画22aに位置する第1センサ51はOFF状態となる。即ち、苗残量が、第1高さ位置H1に対応する苗の量よりも多い場合、第1センサ51はON状態となる。また、苗残量が、第1高さ位置H1に対応する苗の量以下である場合、第1センサ51はOFF状態となる。
【0089】
ここで、第1高さ位置H1に対応する苗の量は、本発明に係る「第1残量」に相当する。即ち、苗残量が第1残量よりも多い場合、第1センサ51はON状態となる。また、苗残量が第1残量以下である場合、第1センサ51はOFF状態となる。
【0090】
この構成により、第1センサ51は、苗残量が第1残量以下であるか否かを検知する。
【0091】
また、図4には、第2高さ位置H2が示されている。区画22aにおいて、苗上端位置が第2高さ位置H2よりも高い場合、その区画22aに位置する第2センサ52はON状態となる。また、区画22aにおいて、苗上端位置が第2高さ位置H2以下である場合、その区画22aに位置する第2センサ52はOFF状態となる。即ち、苗残量が、第2高さ位置H2に対応する苗の量よりも多い場合、第2センサ52はON状態となる。また、苗残量が、第2高さ位置H2に対応する苗の量以下である場合、第2センサ52はOFF状態となる。
【0092】
ここで、第2高さ位置H2に対応する苗の量は、本発明に係る「第2残量」に相当する。即ち、苗残量が第2残量よりも多い場合、第2センサ52はON状態となる。また、苗残量が第2残量以下である場合、第2センサ52はOFF状態となる。
【0093】
この構成により、第2センサ52は、苗残量が第2残量以下であるか否かを検知する。尚、第2高さ位置H2は、第1高さ位置H1よりも低い。即ち、第2残量は第1残量よりも少ない値である。
【0094】
このように、検知部50は、苗残量が第1残量以下であるか否かを検知する第1センサ51と、苗残量が第1残量より少ない第2残量以下であるか否かを検知する第2センサ52と、を有する。
【0095】
また、この構成により、検知部50は、苗残量を区画22a毎に検知するように構成されている。
【0096】
〔切替部について〕
図6に示すように、田植機Aは、制御部53を備えている。制御部53は、切替部60を有している。
【0097】
切替部60は、各ベルト搬送用モータ42の駆動状態を制御可能に構成されている。具体的には、切替部60は、各ベルト搬送用モータ42の駆動を開始させることが可能である。また、切替部60は、各ベルト搬送用モータ42の駆動を停止させることが可能である。
【0098】
この構成により、切替部60は、予備苗搬送装置30の状態を駆動状態と停止状態との間で切り替えることが可能である。
【0099】
このように、田植機Aは、予備苗搬送装置30の状態を駆動状態と停止状態との間で切り替える切替部60を備えている。
【0100】
また、制御部53は、装置制御部62を有している。装置制御部62は、苗植付装置Wの駆動状態を制御可能に構成されている。また、装置制御部62は、昇降用油圧シリンダ16の伸縮を制御可能に構成されている。これにより、装置制御部62は、苗植付装置Wの昇降を制御可能に構成されている。
【0101】
尚、制御部53、及び、制御部53に含まれる切替部60等の各要素は、マイクロコンピュータ等の物理的な装置であっても良いし、ソフトウェアにおける機能部であっても良い。
【0102】
図6に示すように、制御部53は、各第1センサ51がON状態とOFF状態との何れであるかを示す情報を、各第1センサ51から取得するように構成されている。尚、制御部53は、各第2センサ52がON状態とOFF状態との何れであるかを示す情報も取得するように構成されていても良い。
【0103】
また、田植機Aは、左右位置センサ61を備えている。上述のように、苗載せ台22が左右に往復移送されることにより、走行機体Cに対する苗載せ台22の位置が、左右方向に変化する。左右位置センサ61は、左右方向における、走行機体Cに対する苗載せ台22の位置を検知するように構成されている。
【0104】
左右位置センサ61は、特に限定されないが、例えば、左右方向における横送り部材83bの位置を検知する接触式のセンサであっても良い。
【0105】
左右位置センサ61による検知結果は、制御部53へ送られる。
【0106】
制御部53は、各第1センサ51から取得した情報と、左右位置センサ61による検知結果と、に基づいて、図7に示す搬送制御ルーチンにより、予備苗搬送装置30の状態を駆動状態と停止状態との間で切り替えるように構成されている。この搬送制御ルーチンは、制御部53に格納されている。制御部53は、この搬送制御ルーチンを、一定時間毎に繰り返し実行する。
【0107】
以下では、図7を参照し、搬送制御ルーチンについて説明する。
【0108】
搬送制御ルーチンが開始されると、まず、ステップS01の処理が実行される。ステップS01では、各第1センサ51のうち、少なくとも何れか1つの第1センサ51がOFF状態であるか否かが判定される。
【0109】
全ての第1センサ51がON状態である場合、ステップS01でNoと判定され、処理は一旦終了する。また、少なくとも何れか1つの第1センサ51がOFF状態である場合、ステップS01でYesと判定され、処理はステップS02へ移行する。
【0110】
この構成により、苗残量が所定の第1残量以下であることが検知部50における第1センサ51によって検知された場合、ステップS01でYesと判定されることとなる。
【0111】
ステップS02では、苗載せ台22の左右往復移送の回数のカウントが開始される。このカウントは、左右位置センサ61による検知結果に基づいて、制御部53により行われる。そして、処理はステップS03へ移行する。
【0112】
ステップS03では、ステップS02で開始されたカウントが所定回数に達したか否かが判定される。カウントが所定回数に達していない場合、ステップS03でNoと判定され、処理はステップS03へ戻る。即ち、処理が初めてステップS03へ移行してから、カウントが所定回数に達するまでの間、ステップS03が繰り返されることとなる。
【0113】
そして、カウントが所定回数に達すると、ステップS03でYesと判定され、処理はステップS04へ移行する。
【0114】
尚、この所定回数は、具体的には、4回であっても良いし、4回以外のいかなる回数であっても良い。
【0115】
この構成により、ステップS01でYesと判定された後、苗載せ台22が左右に所定回数往復した場合、ステップS03でYesと判定されることとなる。
【0116】
ステップS04では、苗載せ台22が左のストロークエンドに到達した時点で、装置制御部62の制御により、苗植付装置Wの駆動が停止される。これにより、苗載せ台22の左右往復移送は停止する。また、このとき、田植機Aの走行が自動的に停止されても良い。そして、処理はステップS05へ移行する。
【0117】
ステップS05では、装置制御部62の制御により、苗植付装置Wが上昇する。そして、処理はステップS06へ移行する。
【0118】
ステップS06では、切替部60の制御により、各ベルト搬送用モータ42の駆動が開始される。これにより、予備苗搬送装置30の状態が停止状態から駆動状態へ切り替わる。
【0119】
以上の説明から理解されるように、切替部60は、苗残量が所定の第1残量以下であることが検知部50によって検知された場合(ステップS01にてYes)、予備苗搬送装置30の状態を停止状態から駆動状態へ切り替える(ステップS06)。
【0120】
より具体的には、切替部60は、苗残量が第1残量以下であることが検知部50によって検知された(ステップS01にてYes)後、苗載せ台22が左右に所定回数往復した場合(ステップS03にてYes)、予備苗搬送装置30の状態を停止状態から駆動状態へ切り替える(ステップS06)。また、切替部60は、苗残量が第1残量以下であることが検知部50によって検知された(ステップS01にてYes)後、苗載せ台22が左のストロークエンドに到達した場合(ステップS04)、予備苗搬送装置30の状態を停止状態から駆動状態へ切り替える(ステップS06)。
【0121】
ステップS06の後、処理はステップS07へ移行する。ステップS07では、各第1センサ51のうち、全ての第1センサ51がON状態であるか否かが判定される。
【0122】
少なくとも何れか1つの第1センサ51がOFF状態である場合、ステップS07でNoと判定され、処理はステップS07へ戻る。即ち、処理が初めてステップS07へ移行してから、全ての第1センサ51がON状態となるまでの間、ステップS07が繰り返されることとなる。
【0123】
そして、全ての第1センサ51がON状態になると、ステップS07でYesと判定され、処理はステップS08へ移行する。
【0124】
この構成により、ステップS06での処理が行われた後、苗残量が第1残量より多いことが検知部50における第1センサ51によって検知された場合、ステップS07でYesと判定されることとなる。
【0125】
ステップS08では、切替部60の制御により、各ベルト搬送用モータ42の駆動が停止される。これにより、予備苗搬送装置30の状態が駆動状態から停止状態へ切り替わる。尚、ステップS06での処理が行われてから、ステップS08での処理が行われるまでの間、予備苗搬送装置30の状態は、駆動状態のままで維持される。
【0126】
以上の説明から理解されるように、切替部60は、予備苗搬送装置30の状態を停止状態から駆動状態へ切り替えた(ステップS06)後、苗残量が第1残量より多いことが検知部50によって検知された場合(ステップS07にてYes)、予備苗搬送装置30の状態を駆動状態から停止状態へ切り替える(ステップS08)。
【0127】
ステップS08の後、処理はステップS09へ移行する。ステップS09では、装置制御部62の制御により、苗植付装置Wが下降する。その後、処理は一旦終了する。
【0128】
以上で説明した構成によれば、苗残量が所定の第1残量以下になると、予備苗搬送装置30が駆動状態に切り替わる。これにより、苗マットMが予備苗搬送装置30によって苗載せ台22へ搬送される。そのため、苗載せ台22に載置されている苗がある程度少なくなったときに、予備苗搬送装置30により、苗マットMが苗載せ台22に自動的に補給される田植機Aを実現できる。
【0129】
従って、以上で説明した構成であれば、苗マットMを苗載せ台22に補給する作業の省力化が可能な田植機Aを実現できる。
【0130】
〔その他の実施形態〕
(1)田植機Aは、自動走行可能に構成されていても良いし、自動走行不能に構成されていても良い。田植機Aが自動走行可能である場合、作業者は、搭乗部23に搭乗していなくても良い。
【0131】
(2)苗植付装置Wの植え付け条数は、7条以下でも良いし、9条以上でも良い。また、苗載せ台22に載置可能な苗マットMの数は、7条以下の条数分でも良いし、9条以上の条数分でも良い。また、予備苗搬送装置30が搬送可能な苗マットMの数は、7条以下の条数分でも良いし、9条以上の条数分でも良い。
【0132】
(3)切替部60は、各ベルト搬送用モータ42の駆動状態が一致するように各ベルト搬送用モータ42を制御するように構成されていても良いし、各ベルト搬送用モータ42を個別に制御するように構成されていても良い。
【0133】
切替部60が各ベルト搬送用モータ42を個別に制御する構成において、切替部60は、苗残量が所定の第1残量以下であることが1つの第1センサ51によって検知された場合、複数のベルト搬送用モータ42のうち、その第1センサ51の位置に対応するベルト搬送用モータ42のみの駆動を開始するように構成されていても良い。これにより、苗残量が所定の第1残量以下であることが1つの第1センサ51によって検知された場合、予備苗搬送装置30のうち、その第1センサ51の位置に対応する部分のみが停止状態から駆動状態へ切り替わることとなる。
【0134】
即ち、この構成において、切替部60は、各搬送機構40を個別に制御することにより、予備苗搬送装置30の状態を、搬送機構40毎に、駆動状態と停止状態との間で切り替え可能に構成されている。
【0135】
そして、この構成では、一つの区画22aにおける苗残量が第1残量以下であることが検知部50によって検知された後、苗載せ台22が左右に所定回数往復している間に、当該区画22aとは異なる区画22aにおける苗残量が第1残量以下となったことが検知部50によって検知された場合、切替部60は、姿勢ずれ抑制制御を実行する。姿勢ずれ抑制制御とは、苗載せ台22への苗マットMの補給による苗載せ台22と予備苗搬送装置30との間の姿勢ずれの増大が抑制されるように各搬送機構40を駆動させる制御である。
【0136】
即ち、この構成においては、一つの区画22aにおける苗残量が第1残量以下であることが検知部50によって検知された後、苗載せ台22が左右に所定回数往復している間に、当該区画22aとは異なる区画22aにおける苗残量が第1残量以下となったことが検知部50によって検知された場合、切替部60は、苗載せ台22への苗マットMの補給による苗載せ台22と予備苗搬送装置30との間の姿勢ずれの増大が抑制されるように各搬送機構40を駆動させる制御である姿勢ずれ抑制制御を実行する。
【0137】
尚、この構成においては、苗載せ台22の複数回の往復に備えて、第1センサ51の配置が、比較的余裕をもった配置であることが望ましい。
【0138】
また、この構成において、例えば、切替部60は、姿勢ずれ抑制制御において、苗マットMが最初に補給される区画22aが、苗残量が第1残量以下である各区画22aのうち機体左右方向で最も中央側に位置する区画22aであるように、各搬送機構40を駆動させるように構成されていても良い。この場合、例えば、最も機体左側に位置する区画22aと、機体左側から四つ目の区画22aと、における苗残量が第1残量以下であれば、切替部60は、姿勢ずれ抑制制御において、まず、機体左側から四つ目の区画22aに苗マットMが補給され、次に、最も機体左側に位置する区画22aに苗マットMが補給されるように、各搬送機構40を駆動させる。
【0139】
ただし、姿勢ずれ抑制制御において、苗マットMが最初に補給される区画22aが、苗残量が第1残量以下である各区画22aのうち機体左右方向で最も中央側に位置する区画22a以外の区画22aである方が、上述の姿勢ずれの増大を抑制できるケースも想定される。切替部60は、そのようなケースでは、苗残量が第1残量以下である各区画22aのうち機体左右方向で最も中央側に位置する区画22a以外の区画22aに最初に苗マットMが補給されるように、各搬送機構40を駆動させるように構成されていても良い。
【0140】
例えば、最も機体左側に位置する区画22aと、機体左側から二つ目の区画22aと、機体右側から四つ目の区画22aと、における苗残量が第1残量以下である場合、切替部60は、姿勢ずれ抑制制御において、まず、機体左側から二つ目の区画22aに苗マットMが補給され、次に、機体右側から四つ目の区画22aに苗マットMが補給され、最後に、最も機体左側に位置する区画22aに苗マットMが補給されるように、各搬送機構40を駆動させても良い。
【0141】
また、走行機体Cに対する苗載せ台22の傾斜を検知する傾斜検知部を備えていても良い。さらに、切替部60は、姿勢ずれ抑制制御において、傾斜検知部による検知結果に基づいて、走行機体Cに対する苗載せ台22の傾斜を解消するように、各搬送機構40を駆動させても良い。
【0142】
(4)第2センサ52は設けられていなくても良い。
【0143】
(5)切替部60は、苗切れ状態であることが検知部50によって検知された場合、予備苗搬送装置30の状態を停止状態から駆動状態へ切り替えるように構成されていても良い。この場合、苗切れ状態であることは、本発明に係る「苗残量が所定の第1残量以下であること」に相当する。
【0144】
(6)検知部50は、苗載せ台22の下端に設けられた高精度な苗切れセンサであっても良い。この苗切れセンサは、例えば、縦送りベルト82gによる苗マットMの縦送り幅を検知することにより、苗切れ状態であるか否かを検知するように構成されていても良い。
【0145】
(7)検知部50は、マグネットスイッチにより構成されていても良い。
【0146】
(8)検知部50は、苗載せ台22に載置された苗マットMを撮像可能なカメラを含むと共に、カメラによる撮像画像に基づいて、苗切れ状態であるか否かを検知するように構成されていても良い。
【0147】
(9)検知部50は、苗載せ台22に載置された苗マットMによる圧力を検知する圧力センサにより構成されていても良い。
【0148】
(10)検知部50は、苗載せ台22において苗マットMが載置される面に設けられた光センサにより構成されていても良い。
【0149】
(11)図7に示す搬送制御ルーチンにおいて、1つまたは複数のステップが備えられていなくても良い。
【0150】
例えば、搬送制御ルーチンは、ステップS04を備えていなくても良い。即ち、切替部60は、苗残量が第1残量以下であることが検知部50によって検知された後、苗載せ台22が左右に所定回数往復した時点で、苗載せ台22が左のストロークエンドに到達する前に、予備苗搬送装置30の状態を停止状態から駆動状態へ切り替えるように構成されていても良い。
【0151】
また、例えば、搬送制御ルーチンは、ステップS02及びステップS03を備えていなくても良い。即ち、切替部60は、苗残量が第1残量以下であることが検知部50によって検知された後、苗載せ台22が左右方向における所定位置に最初に到達した時点で、予備苗搬送装置30の状態を停止状態から駆動状態へ切り替えるように構成されていても良い。
【0152】
また、例えば、搬送制御ルーチンは、ステップS02、ステップS03、ステップS04、ステップS05を備えていなくても良い。即ち、切替部60は、苗残量が所定の第1残量以下であることが検知部50によって検知された時点で、即座に、予備苗搬送装置30の状態を停止状態から駆動状態へ切り替えるように構成されていても良い。
【0153】
(12)切替部60は、苗残量が第1残量以下であることが検知部50によって検知された後、苗載せ台22が右のストロークエンドに到達した場合、予備苗搬送装置30の状態を停止状態から駆動状態へ切り替えるように構成されていても良い。
【0154】
(13)切替部60は、苗残量が第1残量以下であることが検知部50によって検知された後、苗載せ台22が、左のストロークエンドと右のストロークエンドとの間における、予め決められた位置に到達した場合、予備苗搬送装置30の状態を停止状態から駆動状態へ切り替えるように構成されていても良い。
【0155】
(14)検知部50は、苗載せ台22に載置されている全ての苗マットMの苗の量を検知しても良い。言い換えれば、検知部50は、苗載せ台22における全ての区画22aに載置されている苗マットMの苗の量を検知しても良い。この場合、苗載せ台22に載置されている全ての苗マットMの苗の量、及び、苗載せ台22における全ての区画22aに載置されている苗マットMの苗の量は、何れも、本発明に係る「苗残量」に相当する。
【0156】
(15)検知部50は、1つの区画22aに載置されている苗マットMの苗の量を検知しても良い。この場合、1つの区画22aに載置されている苗マットMの苗の量は、本発明に係る「苗残量」に相当する。
【0157】
尚、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明は、苗載せ台を有する苗植付装置を備える田植機に利用可能である。
【符号の説明】
【0159】
22 苗載せ台
22a 区画
30 予備苗搬送装置(苗搬送装置)
40 搬送機構
50 検知部
51 第1センサ
52 第2センサ
60 切替部
A 田植機
M 苗マット
W 苗植付装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7