(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】下水汚泥の処理装置および処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 11/06 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
C02F11/06 B ZAB
C02F11/06 A
(21)【出願番号】P 2021204785
(22)【出願日】2021-12-17
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒木 洋志
(72)【発明者】
【氏名】明田川 恭平
(72)【発明者】
【氏名】勝又 典亮
(72)【発明者】
【氏名】大泉 雅伸
(72)【発明者】
【氏名】村橋 一毅
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-226615(JP,A)
【文献】特開2002-001398(JP,A)
【文献】特開2000-237731(JP,A)
【文献】特開平08-192196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00-11/20
C02F 3/12
C02F 3/28- 3/34
B01F 27/00-27/96
B01F 35/00-35/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水汚泥を貯留してオゾンガスと接触させる反応槽、前記反応槽に貯留した下水汚泥にオゾンガスを注入するオゾンガス注入手段、前記下水汚泥を撹拌する撹拌手段、前記下水汚泥によるオゾンガスの消費の割合に応じて検出値が変化するオゾンガス消費検出手段、前記オゾンガス消費検出手段の検出値に基づいて前記撹拌手段の撹拌を制御する制御手段を備えた下水汚泥の処理装置。
【請求項2】
前記オゾンガス消費検出手段は、排オゾンガス濃度計であることを特徴とする請求項1に記載の下水汚泥の処理装置。
【請求項3】
前記下水汚泥の濃度が、2wt%から6wt%の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の下水汚泥の処理装置。
【請求項4】
前記下水汚泥の流動性を検出する流動性検出手段をさらに備え、前記流動性検出手段によって検出された前記下水汚泥の流動性に基づいて前記撹拌手段の撹拌を制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の下水汚泥の処理装置。
【請求項5】
前記流動性検出手段は、前記下水汚泥の液面高さ、粘度、流速、pH、および前記撹拌手段のトルクのうち少なくとも1つを検出することを特徴とする請求項4に記載の下水汚泥の処理装置。
【請求項6】
下水汚泥を貯留してオゾンガスと接触させる反応槽、前記反応槽に貯留した下水汚泥にオゾンガスを注入するオゾンガス注入手段、前記下水汚泥を撹拌する撹拌手段を備え、
前記反応槽に下水汚泥を貯留した後、前記撹拌手段を作動し、前記オゾンガス注入手段によりオゾンガスを前記反応槽に注入し、前記下水汚泥と反応した後の排オゾンガスの濃度を測定し、前記排オゾンガスの濃度があらかじめ定められた値以上の場合、前記撹拌手段の撹拌速度を増加することを特徴とする下水汚泥の処理方法。
【請求項7】
前記排オゾンガスの濃度が、前記あらかじめ定められた値以上の場合、前記撹拌手段の撹拌速度を増加し、前記あらかじめ定められた値に満たない場合、撹拌速度を減少することを特徴とする請求項6に記載の下水汚泥の処理方法。
【請求項8】
前記排オゾンガスの濃度が、前記あらかじめ定められた値以上の場合、前記撹拌手段の撹拌速度を増加し、前記あらかじめ定められた値に満たない場合、前記下水汚泥の流動性を測定し、撹拌速度の最適値を算出し、現在の撹拌速度と比較して前記最適値を超えている場合、撹拌速度を減少することを特徴とする請求項6に記載の下水汚泥の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、下水汚泥の処理装置および処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水処理では、下水に含まれる溶解性有機物を微生物によって分解させる活性汚泥法が知られている。微生物は有機物分解によってエネルギーを得ることで増殖する。この増殖した微生物の集まりは余剰汚泥と呼ばれ廃棄物となる。余剰汚泥を減量するため、余剰汚泥を濃縮して嫌気性消化槽に投入する汚泥処理法が利用される。嫌気性消化槽では、余剰汚泥の分解によってメタンガスが発生する。余剰汚泥の分解率を向上させるとともにメタンガス発生量を増加するため、浮遊物濃度を2~6%に濃縮した余剰汚泥をオゾンガスで可溶化して嫌気性消化槽へ投入する。濃縮余剰汚泥とオゾンガスの反応効率を高めるためには、濃縮余剰汚泥を撹拌してオゾンガスとの接触効率を高める(例えば、特許文献1参照)。濃縮余剰汚泥を一定速度以上で撹拌すると、濃縮余剰汚泥に注入したオゾン気泡が微細化され、濃縮余剰汚泥との接触効率が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された汚泥処理装置は、濃縮余剰汚泥を撹拌する撹拌機が設置されているため、注入したオゾンガス気泡を微細化して濃縮余剰汚泥と接触させることができる。オゾンガスと反応した濃縮余剰汚泥は有機物が分解するため、粘度が次第に低下する。このため撹拌機の速度を下げても撹拌によって微細なオゾン気泡を生成することができる。
【0005】
しかし、特許文献1の汚泥処理装置では、撹拌機を制御する機構がなく、汚泥の粘度変化に対応して撹拌速度を変えることができないため、可溶化処理において撹拌動力が変わらない。従って、撹拌に余分な動力が生じ、汚泥を可溶化するためのオゾン処理コストが高くなる。
【0006】
本願は上述のような問題を解決するためになされたもので、下水汚泥の撹拌速度を制御することで、下水汚泥とオゾンガスの反応効率を高めることができる。さらに、下水汚泥のオゾン処理に要するオゾン量を最適化することができ、オゾン処理に要するコストを低減することができることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に開示される下水汚泥の処理装置は、下水汚泥を貯留してオゾンガスと接触させる反応槽、反応槽に貯留した下水汚泥にオゾンガスを注入するオゾンガス注入手段、下水汚泥を撹拌する撹拌手段、下水汚泥によるオゾンガスの消費を検出するオゾンガス消費検出手段、オゾンガス消費検出手段の検出値に基づいて撹拌手段の撹拌を制御する制御手段を備える。
【0008】
本願に開示される下水汚泥の処理方法は、下水汚泥を貯留してオゾンガスと接触させる反応槽、反応槽に貯留した下水汚泥にオゾンガスを注入するオゾンガス注入手段、下水汚泥を撹拌する撹拌手段を備え、反応槽に下水汚泥を貯留した後、撹拌手段を作動し、オゾンガス注入手段によりオゾンガスを反応槽に注入し、下水汚泥上に浮上した排オゾンガスの濃度を測定し、排オゾンガスの濃度があらかじめ定められた値以上の場合、撹拌手段の撹拌速度を増加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本願に開示される下水汚泥の処理装置および処理方法によれば、下水汚泥の撹拌速度を制御することで、下水汚泥とオゾンガスの反応効率を高めることができる。さらに、下水汚泥のオゾン処理に要するオゾン量を最適化することができ、オゾン処理に要するコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る下水汚泥の処理装置の構成を示す図である。
【
図2】実施の形態1に係る下水汚泥の処理方法において、排オゾン濃度を測定して撹拌機構を制御するフローチャートである。
【
図3】実施の形態2に係る下水汚泥の処理装置の構成を示す図である。
【
図4】実施の形態2に係る下水汚泥の処理方法において、濃縮余剰汚泥の流動性と排オゾン濃度を測定して撹拌機構を制御するフローチャートである。
【
図5】実施の形態3に係る下水汚泥の処理装置の構成を示す図である。
【
図6】実施の形態に係る撹拌機制御機構のハードウエアの一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願に係る下水汚泥の処理装置の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、同一内容および相当部については同一符号を配し、その詳しい説明は省略する。以降の実施形態も同様に、同一符号を付した構成について重複した説明は省略する。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本願における下水汚泥の処理装置の構成を示す図である。下水汚泥処理装置100は、下水処理場の水処理で発生した余剰汚泥が濃縮された濃縮余剰汚泥1を貯留する反応槽2と、濃縮余剰汚泥1を撹拌する撹拌羽根3と、撹拌羽根3を回転させる撹拌機構4と、オゾンガスを発生させるオゾン発生器5と、オゾンガスを反応槽2に注入するオゾン注入機構6と、濃縮余剰汚泥1と反応した後のオゾンガス(排オゾンガス)を反応槽2から引き出す排オゾン配管7と、排オゾン配管7を通して流出した排オゾンガスの濃度を計測する排オゾン濃度計8と、排オゾン濃度計8からの信号をもとに撹拌機構4を制御する撹拌機制御機構9からなる。
【0013】
濃縮余剰汚泥1は、下水の有機物処理に用いられる活性汚泥法において増殖した微生物が主体の活性汚泥を沈降させ、さらに重力濃縮または機械濃縮によって汚泥の固形物濃度(SS濃度)を2~6%に高めたものである。濃縮余剰汚泥1は汚泥投入ポンプ(図示せず)によって反応槽2に所定量貯留される。
【0014】
次に、
図1を用いて、濃縮余剰汚泥1のオゾン処理手順について説明する。反応槽2に所定の濃縮余剰汚泥1を貯留した後、撹拌機構4を作動させて撹拌羽根3を回転させる。濃縮余剰汚泥1は固形物濃度が2~6wt%となっているとともに、粘度も2~6Pa・sとなっている。オゾン発生器5で生成したオゾンガスは、オゾン注入機構6を通して反応槽2の中に注入される。オゾン注入機構6には、例えば散気板などの微細孔が設けられた装置が使用される。
【0015】
濃縮余剰汚泥1を撹拌せずにオゾンガスをオゾン注入機構6から注入すると、濃縮余剰汚泥1の粘度が2~6Pa・sと高いため、オゾンガスはオゾン注入機構6の周囲に滞留する。オゾン注入機構6の周囲に滞留したオゾンガスはガスだまりを形成し、このガスだまりの径が大きくなるとともに浮力が増大する。ガスだまりの浮力が濃縮余剰汚泥1の粘性による気泡の浮上を抑制する力よりも大きくなると、ガスだまりは大きな気泡となって濃縮余剰汚泥1の内部を浮上する。ガスだまりから浮上するオゾンガスは濃縮余剰汚泥1の限られた部分とのみ接触するため、濃縮余剰汚泥1の中にはオゾンガスと接触しない領域が発生する。
【0016】
濃縮余剰汚泥1を撹拌羽根3で撹拌すると、オゾン注入機構6から注入されたオゾンガスが濃縮余剰汚泥1とともに移動するため、オゾン注入機構6の周囲にオゾンガスのガスだまりが発生するのを抑制できる。このため、オゾン注入機構6から注入されたオゾンガスは、微細な気泡として濃縮余剰汚泥1の内部を浮上する。さらに、撹拌によって濃縮余剰汚泥1が、浮上する微細なオゾン気泡と均一に接触するため、反応槽2に貯留した濃縮余剰汚泥1が全体的にオゾンガスによって処理される。
【0017】
濃縮余剰汚泥1と反応したオゾンガスは、オゾンが消費されるためにオゾン濃度が低下し、排オゾンとして濃縮余剰汚泥1から流出する。濃縮余剰汚泥から流出した排オゾンは、反応槽2の上部の気相部にたまった後、排オゾン配管7を通って反応槽2から流出する。反応槽2から流出した排オゾンのオゾン濃度は、排オゾン濃度計8によって測定することができる。
【0018】
排オゾン濃度は、オゾン発生器5で発生させてオゾン注入機構6を通して反応槽2に注入したオゾンガス濃度と、濃縮余剰汚泥1とオゾンガスの反応によって消費された量との比率によって、すなわちオゾンガスの消費の割合によって変化する。濃縮余剰汚泥1とオゾンガスの反応効率が高ければ、オゾン消費量が増えるため排オゾン濃度は低くなる。
【0019】
濃縮余剰汚泥1とオゾンガスの反応効率は、撹拌羽根3による濃縮余剰汚泥1の撹拌の度合いによって変化する。撹拌羽根3による濃縮余剰汚泥1の撹拌度合いが大きければ、オゾン注入機構6から注入されたオゾン気泡のサイズが小さくなり、濃縮余剰汚泥1とオゾンガスの反応効率が高くなる。このため、排オゾン濃度は撹拌羽根3による濃縮余剰汚泥1の撹拌速度、すなわち撹拌羽根3の回転数によって変化する。撹拌羽根3の回転数が小さければ排オゾン濃度は大きくなり、撹拌羽根3の回転数が大きくなれば排オゾン濃度は小さくなる。
【0020】
撹拌羽根3の回転数と排オゾン濃度の関係は、反応槽2のサイズと形状、反応槽2に貯留する濃縮余剰汚泥1の貯留量、および濃縮余剰汚泥1の粘度に依存する。濃縮余剰汚泥1の粘度が大きい場合、濃縮余剰汚泥1を撹拌して微細なオゾン気泡をオゾン注入機構6から発生させるためには、撹拌羽根3の回転数を大きくする必要がある。濃縮余剰汚泥1の粘度が小さくなると、微細なオゾン気泡をオゾン注入機構6から発生させるために必要な撹拌羽根3の回転数は小さくなる。
【0021】
オゾン注入機構6から注入されたオゾン気泡の微細化は、オゾンガスと濃縮余剰汚泥1の反応効率として排オゾン濃度からも評価できる。すなわち、排オゾン濃度が小さいことは、オゾン気泡の微細化によってオゾンと濃縮余剰汚泥の反応効率が向上していることを示している。このことから、排オゾン濃度計8から得られた排オゾン濃度の信号を撹拌機制御機構9に入力して撹拌機構4を制御することで排オゾン濃度計8によって検出される排オゾン濃度を一定値以下に制御することができる。
【0022】
排オゾン濃度を排オゾン濃度計8で測定して撹拌機構4を制御するフローチャートを
図2に示す。反応槽2に濃縮余剰汚泥1を貯留した後、撹拌機制御機構9から撹拌機構4に信号を送り撹拌羽根3を回転させる(ステップS1)。次に、オゾン発生器5を作動させてオゾンガスを発生し、オゾン注入機構6を通して反応槽2にオゾンガスを注入する(ステップS2)。反応槽2に貯留した濃縮余剰汚泥1を浮上したオゾンガスは排オゾン配管7を通って排オゾン濃度計8に入り、排オゾン濃度が測定される(ステップS3)。
【0023】
測定された排オゾン濃度は撹拌機制御機構9に入力される(ステップS4)。この排オゾン濃度が設定値(例えば5mgO3/L)よりも高い場合、オゾンガスの吸収が不足していると判断して撹拌機制御機構9から撹拌機構4に回転数を増加させる信号を送る(ステップS4)。撹拌機構4の回転数が増加すると、撹拌羽根3の回転数が増加し、反応槽2に貯留した濃縮余剰汚泥1の撹拌が上昇する(ステップS5)。これにより、反応槽2に注入したオゾンガスと濃縮余剰汚泥1の反応効率が高まる。濃縮余剰汚泥1とオゾンガスの反応効率が高くなると、排オゾン配管7を通って排オゾン濃度計8に入る排オゾン濃度が低下する。排オゾン濃度が設定値(例えば5mgO3/L)よりも低くなると、撹拌機制御機構9から撹拌機構4に対して回転数を下げる信号が出て(ステップS6)、撹拌羽根3の回転数を下げる。撹拌羽根3の回転数が下がると撹拌動力が低下する。このように、排オゾン濃度を測定して撹拌機構4の回転数を制御することで、撹拌動力の増加を抑えることができる。
【0024】
以上のように、下水汚泥の撹拌速度を制御することで、下水汚泥に注入したオゾンガス気泡のサイズを微細化して下水汚泥とオゾンガスの反応効率を高めることができる。さらに、下水汚泥の流動性に応じて撹拌速度を制御することで、排オゾン濃度を設定値以下となるための撹拌機動力を最小にすることができる。また、排オゾン濃度を設定値以下に制御することで、濃縮余剰汚泥のオゾン処理に要するオゾン量を最適化することができる。これによってオゾン処理に要するコストを低減することができる。
【0025】
実施の形態2.
図3は、実施の形態1で説明した
図1に示す汚泥処理装置に、濃縮余剰汚泥1の流動性を計測する流動性測定機構10を付加したものである。流動性測定機構10は反応槽2に設置されている。
【0026】
濃縮余剰汚泥1の流動性は、粘度、流速、および撹拌による液面の上昇などを測定することで評価できる。また、オゾンガスと濃縮余剰汚泥1の反応によって変化するpH値を測定することによっても流動性を評価することができる。従って、流動性測定機構10としては、流速測定装置、粘度測定装置、液面高さ計測器、pH測定器などを用いることができる。これらの装置は、単一装置を設置することも、異なる装置を複数設置することもできる。
【0027】
濃縮余剰汚泥1をオゾンで処理すると、濃縮余剰汚泥1の有機物がオゾンガスによって分解される。濃縮余剰汚泥1の有機物が分解されると、濃縮余剰汚泥1の微細化が生じ、粘度が低下する。粘度が低下した濃縮余剰汚泥1は、オゾン注入機構6から注入されるオゾン気泡の浮上を抑制する力が小さくなるため、オゾン注入機構6から注入されたオゾン気泡径は小さくなる。また、オゾン気泡の微細化に必要な撹拌羽根3の回転数も小さくすることができる。
【0028】
次に、流動性測定機構10を使用して汚泥処理を行う手順を、
図3を用いて説明する。オゾン発生器5から発生したオゾンガスは、オゾン注入機構6を介して濃縮余剰汚泥1に注入される。撹拌羽根3の回転によって微細化されたオゾンガス気泡が濃縮余剰汚泥1と反応すると、有機物が分解されて濃縮余剰汚泥の粘度が低下する。粘度の低下によって、濃縮余剰汚泥1の流動性が向上する。
【0029】
反応槽2に設置された流動性測定機構10を用いて濃縮余剰汚泥1の流動性を測定すると、オゾン処理時間に対する濃縮余剰汚泥1の流動性の変化を求めることができる。濃縮余剰汚泥1の流動性が上昇すると、オゾン注入機構6を介して注入されたオゾン気泡を微細化するために必要な撹拌羽根3の回転数が低下する。これは、濃縮余剰汚泥の流動性が上昇することで、撹拌羽根3の回転数を下げても濃縮余剰汚泥1にオゾン気泡の微細化に必要な流速を発生させることが可能となるためである。
【0030】
このため、流動性測定機構10で濃縮余剰汚泥1の流動性を測定し、流動性測定機構10からの信号を撹拌機制御機構9に入力して撹拌機構4を制御することで、オゾン気泡の微細化に必要な撹拌速度で撹拌羽根3を回転させることができる。これにより、濃縮余剰汚泥1の流動性が低いときは撹拌羽根3の回転数を上げ、濃縮余剰汚泥1の 流動性がオゾン処理によって上昇したときは撹拌羽根3の回転数を下げる制御を実施することができ、オゾン処理における撹拌動力を低減することができる。
【0031】
図4に、流動性測定機構10と排オゾン濃度計8の測定結果を用いて撹拌機制御機構9で撹拌機構4を制御しながらオゾン処理を行うフローを示す。まず、反応槽2に貯留した濃縮余剰汚泥1の流動性を流動性測定機構10で測定する(ステップS11)。その測定結果から排オゾン濃度が設定値以下になる最適な回転数(n0)を計算し(ステップS12)、撹拌とオゾン注入を開始する(ステップS13、S14)。
【0032】
次に、濃縮余剰汚泥から流出する排オゾン濃度を排オゾン濃度計8で測定し(ステップS15)、設定値(例えば、5mgO3/L)と比較する(ステップS16)。排オゾン濃度が設定値よりも高い場合は、撹拌羽根3の回転数が不足しているため回転数を増加させる(ステップS17)。排オゾン濃度が設定値よりも低い場合は、回転数が過大となっている可能性があるため流動性を測定して(ステップS18)最適な回転数(n0)を計算する(ステップS19)。また、現在の回転数(n)は測定されている(ステップS20)。
【0033】
次に、計算で算出した最適な回転数(n0)と、現行の回転数(n)を比較する(ステップS21)。現行の回転数(n)が最適な回転数(n0)よりも小さい場合は、撹拌羽根3の回転数を変化させない。現行の回転数(n)が最適な回転数(n0)よりも大きい場合は、撹拌羽根3の回転数を最適な回転数(n0)に下げる(ステップS22)。この排オゾン測定と流動性測定の手順(ステップS15~S21)を繰り返す。
【0034】
以上のように、流動性測定機構10により、濃縮余剰汚泥1の流動性を測定することにより、オゾン処理における撹拌機構4の動力を低下させることができるとともに、オゾン発生器5から濃縮余剰汚泥1に注入したオゾンガスの反応効率を高めることができる。また、濃縮余剰汚泥1の流動性を測定して撹拌機構4を制御すると、オゾンガスと濃縮余剰汚泥1の反応効率を最適化する撹拌速度を短時間で設定することで、撹拌機構4を最適に制御することができる。
【0035】
実施の形態3.
実施の形態2では、反応槽に流動性測定機構10を取り付けて、濃縮余剰汚泥1の流速、粘度、液面高さ、またはpHを測定するなどして流動性を測定したが、撹拌羽根3の回転によって撹拌機構4に生じるトルクを測定することにより流動性を算出することができる。
【0036】
図5は、撹拌羽根3の回転によって撹拌機構4に生じるトルクを測定するトルク検知機構11が設置されている汚泥処理装置の構成図である。濃縮余剰汚泥1の粘度がオゾンとの反応によって低下すると撹拌羽根3が受ける抗力が低下する。これにより、撹拌機構4のトルクも低下する。このトルクの減少量を用いて濃縮余剰汚泥1の流動性を算出することができる。
【0037】
処理手順は
図4と同様であり、撹拌機構4のトルクから流動性を算出(ステップS11、S18)し、その値を用いて撹拌羽根3の回転数を制御すると、濃縮余剰汚泥1の流動性に応じた最適な回転数で撹拌羽根3を回すことが可能となり、反応槽2に注入したオゾン気泡を微細化して濃縮余剰汚泥1から流出する排オゾン濃度を所定量以下に制御することができる。
【0038】
以上のように、濃縮余剰汚泥1の状態から流動性を測定する必要がなく、トルク検知器を撹拌機構4に取り付ける簡単な構成で流動性を算出することができる。
【0039】
撹拌機制御機構9をマイコンなどの計算機で制御する場合のハードウエアの一例を
図6に示す。プロセッサ20と記憶装置30から構成され、図示していないが、記憶装置30はランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置と、フラッシュメモリ等の不揮発性の補助記憶装置とを具備する。また、フラッシュメモリの代わりにハードディスクの補助記憶装置を具備してもよい。プロセッサ20は、記憶装置30から入力されたプログラムを実行することにより、例えば、
図2、
図3で説明したフローチャートの制御を行う。この場合、補助記憶装置から揮発性記憶装置を介してプロセッサ20にプログラムが入力される。また、プロセッサ20は、演算結果等のデータを記憶装置30の揮発性記憶装置に出力してもよいし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置にデータを保存してもよい。
【0040】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0041】
1:濃縮余剰汚泥、2:反応槽、3:撹拌羽根、4:撹拌機構、5:オゾン発生器、6:オゾン注入機構、7:排オゾン配管、8:排オゾン濃度計、9:撹拌機制御機構、10:流動性測定機構、11:トルク検知機構、20:プロセッサ、30:記憶装置、100:下水汚泥処理装置。