(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】抗体製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240726BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240726BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240726BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240726BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240726BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240726BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240726BHJP
C12N 5/09 20100101ALI20240726BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240726BHJP
C07K 16/46 20060101ALN20240726BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240726BHJP
【FI】
A61K39/395 U ZNA
A61K47/18
A61K47/26
A61K9/08
A61P35/00
A61P43/00 121
C12N5/0783
C12N5/09
C07K16/28
C07K16/46
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2021523670
(86)(22)【出願日】2019-11-06
(86)【国際出願番号】 EP2019080445
(87)【国際公開番号】W WO2020094744
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2018/080369
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507316398
【氏名又は名称】ジェンマブ エー/エス
(73)【特許権者】
【識別番号】519011636
【氏名又は名称】ビオンテック エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】アルトゥンタシュ イシリ
(72)【発明者】
【氏名】サテン ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】ラダマーカー リック
(72)【発明者】
【氏名】パレン ポール
(72)【発明者】
【氏名】シャヒン ウグル
(72)【発明者】
【氏名】ギーゼケ フリーデリケ
(72)【発明者】
【氏名】ミューイク アレクサンダー
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/056821(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/011421(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/162749(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/098370(WO,A1)
【文献】特表2016-533335(JP,A)
【文献】特表2018-513159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61K 47/26
A61K 47/18
C07K 16/28
C07K 16/46
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a. ヒトCD137(4-1BB)に結合する第1の抗原結合領域と、ヒトPD-L1(CD274)に結合する第2の抗原結合領域とを含
み、二重特異性抗体である、結合物質であって、
- 該第1の抗原結合領域が、
SEQ ID NO:9に示したCDR1配列、SEQ ID NO:10に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:11に示したCDR3配列を含む第1の重鎖可変領域(VH)と、
SEQ ID NO:13に示したCDR1配列、GASとして示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:14に示したCDR3配列を含む第1の軽鎖可変領域(VL)とを含み、かつ
- 該第2の抗原結合領域が、
SEQ ID NO:18に示したCDR1配列、SEQ ID NO:19に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:20に示したCDR3配列を含む第2の重鎖可変領域(VH)と、
SEQ ID NO:22に示したCDR1配列、DDNとして示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:23に示したCDR3配列を含む第2の軽鎖可変領域(VL)とを含む、
該結合物質、
b. ヒスチジン緩衝液、
c. 約100~約400mMの糖、ならびに
d. 約0.001~約0.1%(w/v)の非イオン性界面活性剤
を含み、かつ約4.5~約6.5のpHを有する、薬学的製剤。
【請求項2】
1~100mMのヒスチジン、例えば、5~100mM、10~100mM、15~100mM、5~90mM、5~80mM、5~70mM、5~60mM、5~50mM、5~40mM、5~30mM、10~90mM、10~80mM、10~70mM、10~60mM、10~50mM、10~40mM、10~30mM、15~90mM、15~80mM、15~70mM、15~60mM、15~50mM、15~40mM、15~30mM、または15~20mMのヒスチジンを含む、請求項1記載の薬学的製剤。
【請求項3】
約20mMのヒスチジン、例えば、20mMのヒスチジンを含む、請求項1または2記載の薬学的製剤。
【請求項4】
100~400mMの糖、例えば、125~400mM、150~400mM、150~400mM、175~400mM、200~400mM、225~400mM、100~375mM、100~350mM、100~325mM、100~300mM、125~375mM、125~350mM、125~325mM、125~300mM、125~275mM、150~375mM、150~350mM、150~325mM、150~300mM、150~275mM、175~375mM、175~350mM、175~325mM、175~300mM、175~275mM、200~375m
M、200~350m
M、200~325mM、200~300mM、200~275mM、225~375mM、225~350mM、225~325mM、225~300mM、または、例えば、225~275mMの糖を含む、請求項1~3のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項5】
約250mMの糖、例えば、250mMの糖を含む、請求項1~4のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項6】
前記糖がスクロースである、請求項1~5のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項7】
0.005~0.1%(w/v)の非イオン性界面活性剤、例えば、0.01~0.1%(w/v)、0.015~0.1%(w/v)、0.001~0.09%(w/v)、0.001~0.08%(w/v)、0.001~0.07%(w/v)、0.001~0.06%(w/v)、0.001~0.05%(w/v)、0.001~0.04%(w/v)、0.001~0.02%(w/v)、0.005~0.1%(w/v)、0.005~0.09%(w/v)、0.005~0.08%(w/v)、0.005~0.07%(w/v)、0.005~0.06%(w/v)、0.005~0.05%(w/v)、0.005~0.04%(w/v)、0.005~0.03%(w/v)、0.005~0.02%(w/v)、0.01~0.09%(w/v)、0.01~0.08%(w/v)、0.01~0.07%(w/v)、0.01~0.06%(w/v)、0.01~0.05%(w/v)、0.01~0.04%(w/v)、0.01~0.03%(w/v)、0.01~0.02%(w/v)、0.015~0.09%(w/v)、0.015~0.08%(w/v)、0.015~0.07%(w/v)、0.015~0.06%(w/v)、0.015~0.05%(w/v)、0.015~0.04%(w/v)、0.015~0.03%(w/v)、または、例えば、0.015~0.02%(w/v)の非イオン性界面活性剤を含む、請求項1~6のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項8】
約0.02%(w/v)の非イオン性界面活性剤、例えば、0.02%(w/v)の非イオン性界面活性剤を含む、請求項1~7のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項9】
前記非イオン性界面活性剤が、2-[2-[3,4-bis(2-ヒドロキシエトキシ)オキソラン-2-イル]-2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル(E)-オクタデカ-9-エノエート(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート;ポリソルベート80)、または2-[2-[3,4-bis(2-ヒドロキシエトキシ)オキソラン-2-イル]-2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチルドデカノエート(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート;ポリソルベート20)である、請求項1~8のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項10】
4.5~6.5、例えば、4.7~6.5、例えば、4.9~6.5、5.1~6.5、5.3~6.5、4.5~6.3、4.7~6.1、4.7~5.9、4.7~5.7、5.1~6.3、4.7~6.1、4.7~5.9、4.7~5.7、4.9~6.3、4.9~6.1、4.9~5.9、4.9~5.7、5.1~6.3、5.1~6.1、5.1~5.9、5.1~5.7、5.3~6.3、5.3~6.1、5.3~5.9、例えば、5.3~5.7のpHを有する、請求項1~9のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項11】
約5.5のpH、例えば、5.5のpHを有する、請求項1~10のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項12】
5~200mg/mLの結合物質、例えば、10~200mg/mL、20~200mg/mL、40~200mg/mL、60~200mg/mL、80~200mg/mL、100~200mg/mL、120~200mg/mL、150~200mg/mL、5~150mg/mL、10~150mg/mL、20~150mg/mL、40~150mg/mL、60~150mg/mL、80~150mg/mL、100~150mg/mL、5~130mg/mL、10~130mg/mL、20~130mg/mL、40~130mg/mL、60~130mg/mL、80~130mg/mL、100~130mg/mL、5~100mg/mL、10~100mg/mL、15~100mg/mL、20~100mg/mL、30~100mg/mL、40~100mg/mL、50~100mg/mL、60~100mg/mL、5~80mg/mL、5~60mg/mL、5~50mg/mL、5~40mg/mL、5~30mg/mL、5~20mg/mL、10~80mg/mL、10~60mg/mL、10~50mg/mL、10~40mg/mL、10~30mg/mL、15~80mg/mL、15~60mg/mL、15~40mg/mL、または、例えば、15~25mg/mLの結合物質を含む、請求項1~11のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項13】
約20mg/mLの結合物質、例えば、20mg/mLの結合物質を含む、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項14】
(i)約20mg/mL、例えば、約40mg/mL、約60mg/mL、約80mg/mL、約100mg/mL、約120mg/mL、または約140mg/mLの結合物質と、
(ii)約20mMのヒスチジン、約250mMの糖、および約0.02%(w/v)の非イオン性界面活性剤と
を含み、かつ約5.5のpHを有する、請求項1~13のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項15】
(i)20mg/mL、例えば、40mg/mL、60mg/mL、80mg/mL、100mg/mL、120mg/mL、または140mg/mLの結合物質と、
(ii)20mMのヒスチジン、250mMの糖、および0.02%(w/v)の非イオン性界面活性剤と
を含み、かつ5.5のpHを有する、請求項1~14のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項16】
-65℃で12時間の凍結とそれに続く25℃で12時間の融解からなる凍結融解サイクル5回に供された後に、2000~3750ルクスの強さの照度で黒色を背景にしておよび白色を背景にして行われたビジブル粒子計数によって測定された場合にビジブル粒子を本質的に含まない、請求項1~15のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項17】
それぞれの可変領域が、3つの相補性決定領域のCDR1、CDR2、およびCDR3と、4つのフレームワーク領域のFR1、FR2、FR3、およびFR4とを含む、請求項1~
16のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項18】
前記相補性決定領域および前記フレームワーク領域が、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置されている、請求項
17記載の薬学的製剤。
【請求項19】
- 前記第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:15に示した配列との
少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する第1の重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:16に示した配列との
少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する第1の軽鎖可変領域(
VL)とを含み、かつ
- 前記第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:17に示した配列との
少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する第2の重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:21に示した配列との
少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する第2の軽鎖可変領域(VL)とを含む、
請求項1~
18のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項20】
- 前記第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:9に示したCDR1配列、SEQ ID NO:10に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:11に示したCDR3配列を含む第1の重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:13に示したCDR1配列、GASとして示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:14に示したCDR3配列を含む第1の軽鎖可変領域(VL)とを含み、該第1の重鎖可変領域が、SEQ ID NO:15に示した配列との
少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有し、該第1の軽鎖可変領域が、SEQ ID NO:16に示した配列との
少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有し、かつ
- 前記第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:18に示したCDR1配列、SEQ ID NO:19に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:20に示したCDR3配列を含む第2の重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:22に示したCDR1配列、DDNとして示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:23に示したCDR3配列を含む第2の軽鎖可変領域(VL)とを含み、該第2の重鎖可変領域が、SEQ ID NO:17に示した配列との
少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有し、該第2の軽鎖可変領域が、SEQ ID NO:21に示した配列との
少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する、
請求項1~
19のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項21】
a. ヒトCD137に結合する前記第1の抗原結合領域が、
- SEQ ID NO:15に示した配列、または、SEQ ID NO:15に示した配列と比較して20個までのアミノ酸残基、例えば、19個までの、18個までの、17個までの、16個までの、15個までの、14個までの、13個までの、12個までの、11個までの、10個までの、9個までの、8個までの、7個までの、6個までの、5個までの、4個までの、3個までの、2個までの、1個までのアミノ酸残基が改変されている配列を含む、第1の重鎖可変領域であって、該第1の重鎖可変領域(VH)が、SEQ ID NO:9に示したCDR1配列、SEQ ID NO:10に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:11に示したCDR3配列を含む、該第1の重鎖可変領域と、
- SEQ ID NO:16に示した配列、または、SEQ ID NO:16に示した配列と比較して20個までのアミノ酸残基、例えば、19個までの、18個までの、17個までの、16個までの、15個までの、14個までの、13個までの、12個までの、11個までの、10個までの、9個までの、8個までの、7個までの、6個までの、5個までの、4個までの、3個までの、2個までの、1個までのアミノ酸残基が改変されている配列を含む、第1の軽鎖可変領域であって、該第1の軽鎖可変領域(VL)が、SEQ ID NO:13に示したCDR1配列、GASとして示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:14に示したCDR3配列を含む、該第1の軽鎖可変領域と
を含み、かつ
b. ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域が、
- SEQ ID NO:17に示した配列、または、SEQ ID NO:17に示した配列と比較して20個までのアミノ酸残基、例えば、19個までの、18個までの、17個までの、16個までの、15個までの、14個までの、13個までの、12個までの、11個までの、10個までの、9個までの、8個までの、7個までの、6個までの、5個までの、4個までの、3個までの、2個までの、1個までのアミノ酸残基が改変されている配列を含む、第2の重鎖可変領域であって、該第2の重鎖可変領域(VH)が、SEQ ID NO:18に示したCDR1配列、SEQ ID NO:19に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:20に示したCDR3配列を含む、該第2の重鎖可変領域と、
- SEQ ID NO:21に示した配列、または、SEQ ID NO:21に示した配列と比較して20個までのアミノ酸残基、例えば、19個までの、18個までの、17個までの、16個までの、15個までの、14個までの、13個までの、12個までの、11個までの、10個までの、9個までの、8個までの、7個までの、6個までの、5個までの、4個までの、3個までの、2個までの、1個までのアミノ酸残基が改変されている配列を含む、第2の軽鎖可変領域であって、該第2の軽鎖可変領域(VH)が、SEQ ID NO:22に示したCDR1配列、DDNとして示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:23に示したCDR3配列を含む、該第2の軽鎖可変領域と
を含む、
請求項1~
20のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項22】
前記結合物質が、(i)前記第1の重鎖可変領域(VH)を含みかつ第1の重鎖定常領域(CH)をさらに含むポリペプチドと、(ii)前記第2の重鎖可変領域(VH)を含みかつ第2の重鎖定常領域(CH)をさらに含むポリペプチドとを含む、請求項1~
21のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項23】
(i)前記第1の軽鎖可変領域(VL)を含みかつ第1の軽鎖定常領域(CL)をさらに含むポリペプチドと、(ii)前記第2の軽鎖可変領域(VL)を含みかつ第2の軽鎖定常領域(CL)をさらに含むポリペプチドとを含む、請求項1~
22のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項24】
前記結合物質が、第1の結合アームと第2の結合アームとを含
み、
a. 該第1の結合アームが、(i)前記第1の重鎖可変領域(VH)および前記第1の重鎖定常領域(CH)を含むポリペプチドと、(ii)前記第1の軽鎖可変領域(VL)および前記第1の軽鎖定常領域(CL)を含むポリペプチドとを含み、かつ
b. 該第2の結合アームが、(i)前記第2の重鎖可変領域(VH)および前記第2の重鎖定常領域(CH)を含むポリペプチドと、(ii)前記第2の軽鎖可変領域(VL)および前記第2の軽鎖定常領域(CL)を含むポリペプチドとを含む、
請求項
23記載の薬学的製剤。
【請求項25】
前記第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:30に示したヒトCD137、またはその成熟ポリペプチドに結合する、請求項1~
24のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項26】
前記第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:31に示したカニクイザル(マカカ・ファシキュラリス(Macaca fascicularis))CD137、またはその成熟ポリペプチドに結合する、請求項1~
25のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項27】
前記第
2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:28に示したヒトPD-L1、またはその成熟ポリペプチドに結合する、請求項1~
26のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項28】
前記第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:29に示したカニクイザル(マカカ・ファシキュラリス)PD-L1、またはその成熟ポリペプチドに結合する、請求項1~
27のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項29】
前記第2の抗原結合領域がヒトPD-L1とヒトPD-1との結合を阻害する、請求項1~
28のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項30】
前記結合物質が完全長抗体または抗体断片の形をとる、請求項1~
29のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項31】
前記結合物質が、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群より選択されるアイソタイプの結合物質である、請求項1~
30のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項32】
前記結合物質が完全長IgG1抗体である、請求項1~
31のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項33】
a. CD137に結合する前記第1の抗原結合領域がキメラ抗体に由来し、かつ/または
b. ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域がキメラ抗体に由来する、
請求項1~
32のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項34】
a. CD137に結合する前記第1の抗原結合領域がヒト化抗体に由来し、かつ/または
b. ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域がヒト化抗体に由来する、
請求項1~
32のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項35】
a. ヒトCD137に結合する前記第1の抗原結合領域がヒト抗体に由来し、かつ/または
b. ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域がヒト抗体に由来する、
請求項1~
32のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項36】
a. ヒトCD137に結合する前記第1の抗原結合領域がヒト化抗体に由来し、かつ/または
b. ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域がヒト抗体に由来する、
請求項1~
32のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項37】
前記第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)のそれぞれが、定常領域ドメイン1領域(CH1領域)、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域のうちの1つまたは複数、好ましくは少なくとも、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含む、請求項
24~
36のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項38】
前記第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)のそれぞれがCH3領域を含み、かつ2つの前記CH3領域が非対称的な変異を含む、請求項
37記載の薬学的製剤。
【請求項39】
前記第1の重鎖定常領域(CH)において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、かつ前記第2の重鎖定常領域(CH)において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、かつ該第1の重鎖および該第2の重鎖が同じ位置において置換されていない、請求項
23~
38のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項40】
(i)EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置にあるアミノ酸が第1の重鎖定常領域(CH)ではLであり、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置にあるアミノ酸が第2の重鎖定常領域(CH)ではRであるか、または(ii)EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置にあるアミノ酸が第1の重鎖ではRであり、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置にあるアミノ酸が第2の重鎖ではLである、請求項
39記載の薬学的製剤。
【請求項41】
同じ第1の抗原結合領域および第2の抗原結合領域とヒトIgG1
のヒンジ
領域、CH2領域、およびCH3領域を含む2つの重鎖定常領域(CH)とを含む別の抗体と比較してより低い程度まで、前記
結合物質がFc媒介エフェクター機能を誘導する、請求項1~
40のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項42】
改変されていない第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)を含むこと以外は同一の抗体と比較してより低い程度まで
、前記
結合物質がFc媒介エフェクター機能を誘導するように、前記第1の重鎖定常領域(CH)および前記第2の重鎖定常領域(CH)が改変されている、請求項
41記載の薬学的製剤。
【請求項43】
前記Fc媒介エフェクター機能が、Fcγ受容体への結合によって、C1qへの結合によって、またはFcγ受容体のFc媒介架橋結合の誘導によって測定される、請求項
41または
42記載の薬学的製剤。
【請求項44】
前記Fc媒介エフェクター機能がC1qとの結合によって測定される、請求項
43記載の薬学的製剤。
【請求項45】
C1qと前記
結合物質の結合が野生型抗体と比較して低下するように、好ましくは、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%低下するように前記第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域が改変されており、C1q結合が好ましくは、ELISAによって測定される、請求項
41~
44のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項46】
前記第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)のうちの少なくとも一方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置にある1つまたは複数のアミノ酸が、それぞれL、L、D、N、およびPでない、請求項1~
45のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項47】
EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置が、前記第1の重鎖および第2の重鎖においてそれぞれFおよびEである、請求項
46記載の薬学的製剤。
【請求項48】
EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置が、前記第1の重鎖定常領域(HC)および第2の重鎖定常領域(HC)においてそれぞれF、E、およびAである、請求項
46記載の薬学的製剤。
【請求項49】
第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域の両方の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置が、それぞれF、E、およびAであり、かつ、(i)第1の重鎖定常領域のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLであり、かつ第2の重鎖定常領域のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであるか、または(ii)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLである、請求項
46記載の薬学的製剤。
【請求項50】
第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域の両方の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置が、それぞれFおよびEであり、かつ、(i)第1の重鎖定常領域のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであるか、または(ii)第1の重鎖定常領域のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLである、請求項
46記載の薬学的製剤。
【請求項51】
前記第1の結合アームが、カッパ(κ)軽鎖、例えば、SEQ ID NO:26に示したアミノ酸配列を含むカッパ軽鎖を含み、かつ前記第2の結合アームが、ラムダ(λ)軽鎖、例えば、SEQ ID NO:27に示したアミノ酸配列を含むラムダ軽鎖を含む、請求項
24~
50のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項52】
前記第1の結合アームが、ラムダ(λ)軽鎖、例えば、SEQ ID NO:27に示したアミノ酸配列を含むラムダ軽鎖を含み、かつ前記第2の結合アームが、カッパ(κ)軽鎖、例えば、SEQ ID NO:26に示したアミノ酸配列を含むカッパ軽鎖を含む、請求項
24~
50のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項53】
前記第1の結合アームと前記第2の結合アームが両方とも、ラムダ(λ)軽鎖、例えば、SEQ ID NO:27に示したアミノ酸配列を含むラムダ軽鎖を含む、請求項
24~
50のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項54】
前記第1の結合アームと前記第2の結合アームが両方とも、カッパ(κ)軽鎖、例えば、SEQ ID NO:26に示したアミノ酸配列を含むカッパ軽鎖を含む、請求項
24~
50のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項55】
前記第1の結合アームがSEQ ID NO:24に示したアミノ酸配列を含み、かつ前記第2の結合アームがSEQ ID NO:25に示したアミノ酸配列を含む、請求項
24~
54のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項56】
前記第1の結合アームがSEQ ID NO:25に示したアミノ酸配列を含み、かつ前記第2の結合アームがSEQ ID NO:24に示したアミノ酸配列を含む、請求項
24~
54のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項57】
前記結合物質がT細胞の増殖を誘導および/または強化する、請求項1~
56のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項58】
前記T細胞がCD4
+T細胞および/またはCD8
+T細胞である、請求項
57記載の薬学的製剤。
【請求項59】
前記第2の抗原結合領域がPD-L1に結合した場合のみ、前記結合物質がCD137シグナル伝達を活性化する、請求項1~
58のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項60】
特異的なT細胞受容体(TCR)を発現するT細胞を、TCRによって認識される対応する抗原を主要組織適合遺伝子複合体上で提示する樹状細胞(DC)と共に同時培養することによって、T細胞の増殖が測定される、請求項
57~
59のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項61】
水性製剤である、請求項1~
60のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項62】
医薬として使用するための、請求項1~
61のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項63】
がんの処置のための、請求項1~
62のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項64】
請求項1~
62のいずれか一項において定義された結合物質を提供する工程、ならびに、約4.5~約6.5のpHで該結合物質を、
a. ヒスチジン緩衝液、
b. 約100~約400mMの糖、および
c. 約0.001~約0.1%(w/v)の非イオン性界面活性剤
と組み合わせる工程を含む、請求項1~
62のいずれか一項において定義された薬学的製剤を作製するための方法。
【請求項65】
PD-L1を発現する腫瘍細胞の細胞死を誘導するか、またはPD-L1を発現する腫瘍細胞の成長および/もしくは増殖を阻害することを必要とする対象および/または該腫瘍細胞を有する対象において、PD-L1を発現する腫瘍細胞の細胞死を誘導するか、またはPD-L1を発現する腫瘍細胞の成長および/もしくは増殖を阻害するための、請求項1~
62のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項66】
前記がんが、固形腫瘍の存在を特徴とするか、または黒色腫、卵巣がん、肺がん、結腸がん、および頭頸部がんからなる群より選択される、請求項
63記載の薬学的製剤。
【請求項67】
前記がんが非小細胞肺がん(NSCLC)である、請求項
63または
66記載の薬学的製剤。
【請求項68】
医薬、例えば、固形腫瘍の存在を特徴とするがん、または黒色腫、卵巣がん、肺がん、結腸がん、および頭頸部がんからなる群より選択されるがんなどのがんを処置するための医薬を製造するための、請求項1~
62のいずれか一項記載の薬学的製剤の使用。
【請求項69】
前記肺がんが非小細胞肺がん(NSCLC)である、請求項
68記載の使用。
【請求項70】
静脈内投与される、請求項
62、
63、および
65~
67のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項71】
1種類または複数種類のさらなる治療用物質、例えば、化学療法剤と組み合わせて使用される、請求項
62、
63、および
65~
67のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【請求項72】
前記薬学的製剤が静脈内投与される、請求項
68または
69記載の使用。
【請求項73】
前記使用が、1種類または複数種類のさらなる治療用物質、例えば、化学療法剤との組み合わせを含む、請求項
68または
69記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、PD-L1とCD137(4-1BB)に結合する二重特異性抗体に関する。本発明は、抗体を含む薬学的組成物および治療のための製剤の使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
背景
CD137(4-1BB、TNFRSF9)は腫瘍壊死因子(TNF)受容体(TNFR)ファミリーのメンバーである。CD137は、CD8+T細胞およびCD4+T細胞、調節性T細胞(Treg)、ナチュラルキラー(NK)細胞およびNKT細胞、B細胞、ならびに好中球の表面にある共刺激分子である。T細胞上でCD137は構成的に発現していないが、T細胞受容体(TCR)が活性化されると誘導される。その天然リガンドである4-1BBLまたはアゴニスト抗体を介して刺激されると、アダプターとしてTNFR関連因子(TRAF)-2およびTRAF-1を用いてシグナル伝達が起こる。CD137による初期シグナル伝達は、最終的に核内因子(NF)-κBと分裂促進因子活性化タンパク質(MAP)-キナーゼ経路を活性化するK-63ポリ-ユビキチン結合反応を伴う。シグナル伝達によってT細胞共刺激、増殖、サイトカイン産生、成熟が増加し、CD8+T細胞の生存が延長した。CD137に対するアゴニスト抗体は様々な前臨床モデルにおいてT細胞による抗腫瘍管理を促進することが示されている(Murillo et al. 2008 Clin. Cancer Res. 14(21): 6895-6906(非特許文献1))。CD137を刺激する抗体はT細胞の生存および増殖を誘導し、それによって抗腫瘍免疫応答を強化することができる。CD137を刺激する抗体は先行技術に開示されており、ヒトIgG4抗体であるウレルマブ(WO2005035584(特許文献1))およびヒトIgG2抗体であるウトミルマブ(utomilumab)を含む(Fisher et al. 2012 Cancer Immunol. Immunother. 61: 1721-1733(非特許文献2))。
【0003】
プログラム細胞死リガンド1(PD-L1、PDL1、CD274、B7H1)は33kDa1回膜貫通I型膜タンパク質である。選択的スプライシングに基づいて3種類のPD-L1アイソフォームが述べられている。PD-L1は、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーに属し、1つのIg様C2型ドメインと1つのIg様V型ドメインとを含む。新鮮に単離されたT細胞およびB細胞はごくわずかな量のPD-L1しか発現せず、CD14+単球の一部(約16%)がPD-L1を構成的に発現する。しかしながら、インターフェロン-γ(IFNγ)が腫瘍細胞上のPD-L1をアップレギュレートすることが知られている。
【0004】
PD-L1は、(1)活性化T細胞上のPD-L1受容体であるプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)(CD279)に結合することで腫瘍反応性T細胞を寛容化することによって;(2)腫瘍細胞発現PD-L1を介したPD-1シグナル伝達によりCD8+T細胞およびFasリガンド媒介性溶解に対して腫瘍細胞を耐性にすることによって;(3)T細胞発現CD80(B7.1)を介した逆向きのシグナル伝達によりT細胞を寛容化することによって;ならびに(4)誘導されたT調節細胞の発生および維持を促進することによって抗腫瘍免疫を妨げる。PD-L1は、黒色腫、卵巣がん、肺がん、および結腸がんを含む多くのヒトがんにおいて発現している(Latchman et al., 2004 Proc Natl Acad Sci USA 101, 10691-6(非特許文献3))。
【0005】
PD-L1遮断抗体は、PD-L1を過剰発現させることが知られている数種類のがん(黒色腫、NSCLCを含む)において臨床活性を示した。例えば、アテゾリズマブは、PD-L1に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体である。現在、アテゾリズマブは、様々なタイプの固形腫瘍を含む数種類の適応症の免疫療法として臨床試験されており(例えば、Rittmeyer et al., 2017 Lancet 389:255-265(非特許文献4)を参照されたい)、非小細胞肺がんおよび膀胱がん適応症に対して認可されている。PD-L1抗体であるアベルマブ(Kaufman et al Lancet Oncol. 2016;17(10):1374-1385(非特許文献5))は、転移性メルケル細胞がんを有する成人患者および12才またはそれ以上の小児患者の治療用にFDAに認可され、膀胱がん、胃がん、頭頸部がん、中皮腫、NSCLC、卵巣がん、および腎臓がんを含む数種類のがん適応症において臨床試験されている。PD-L1抗体であるデュルバルマブが局所進行性または転移性の尿路上皮がん適応症に対して認可されており、複数の固形腫瘍および血液がんにおいて臨床開発されている(例えば、Massard et al., 2016 J Clin Oncol. 34(26):3119-25(非特許文献6)を参照されたい)。さらなる抗PD-L1 抗体が、WO2004004771(特許文献2)、WO2007005874(特許文献3)、WO2010036959(特許文献4)、WO2010077634(特許文献5)、WO2013079174(特許文献6)、WO2013164694(特許文献7)、WO2013173223(特許文献8)、および WO2014022758(特許文献9)において記載されている。
【0006】
Horton et al (J Immunother Cancer. 2015; 3(Suppl 2): O10(非特許文献7))はアゴニスト4-1BB抗体とPD-L1中和抗体の組み合わせを開示する。
【0007】
現在、ウトミルマブとアベルマブの併用療法が診療所において試験されている(Chen et al., J Clin Oncol 35, 2017 suppl; abstr TPS7575(非特許文献8)、および臨床試験NCT02554812)。
【0008】
しかしながら、当技術分野における進歩にもかかわらず、PD-L1とCD137の両方に結合することができる多重特異性抗体および該多重特異性抗体の薬学的製剤が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】WO2005035584
【文献】WO2004004771
【文献】WO2007005874
【文献】WO2010036959
【文献】WO2010077634
【文献】WO2013079174
【文献】WO2013164694
【文献】WO2013173223
【文献】WO2014022758
【非特許文献】
【0010】
【文献】Murillo et al. 2008 Clin. Cancer Res. 14(21): 6895-6906
【文献】Fisher et al. 2012 Cancer Immunol. Immunother. 61: 1721-1733
【文献】Latchman et al., 2004 Proc Natl Acad Sci USA 101, 10691-6
【文献】Rittmeyer et al., 2017 Lancet 389:255-265
【文献】Kaufman et al Lancet Oncol. 2016;17(10):1374-1385
【文献】Massard et al., 2016 J Clin Oncol. 34(26):3119-25
【文献】J Immunother Cancer. 2015; 3(Suppl 2): O10
【文献】Chen et al., J Clin Oncol 35, 2017 suppl; abstr TPS7575
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、
a. ヒトCD137(4-1BB)に結合する第1の抗原結合領域と、ヒトPD-L1(CD274)に結合する第2の抗原結合領域とを含む結合物質であって、
- 第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:15に示したアミノ酸配列中に存在する3つの相補性決定領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む第1の重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:16に示したアミノ酸配列中に存在する3つの相補性決定領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む第1の軽鎖可変領域(VL)とを含み、かつ
- 第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:17に示したアミノ酸配列中に存在する3つの相補性決定領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む第2の重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:21に示したアミノ酸配列中に存在する3つの相補性決定領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む第2の軽鎖可変領域(VL)とを含む、結合物質、
b. ヒスチジン緩衝液、
c. 約100~約400mMの糖、ならびに
d. 約0.001~約0.1%(w/v)の非イオン性界面活性剤
を含み、かつ約4.5~約6.5のpHを有する、薬学的製剤を提供することである。
【0012】
別の局面では、本発明は、医薬として使用するための、上記で定義された薬学的製剤に関する。
【0013】
別の局面では、本発明は、がんの処置において使用するための、上記で定義された薬学的製剤に関する。
【0014】
さらに別の局面では、本発明は、それを必要とする対象に、上記で定義された薬学的製剤の有効量を投与する工程を含む、疾患を処置するための方法に関する。
【0015】
さらに別の局面では、本発明は、PD-L1を発現する腫瘍細胞の細胞死を誘導するか、またはPD-L1を発現する腫瘍細胞の成長および/もしくは増殖を阻害する方法であって、それを必要とする対象および/または前記腫瘍細胞を有する対象に、上記で定義された薬学的製剤の有効量を投与する工程を含む、方法に関する。
【0016】
医薬、例えば、固形腫瘍の存在を特徴とするがん、または黒色腫、卵巣がん、肺がん、結腸がん、および頭頸部がんからなる群より選択されるがんなどのがんを処置するための医薬を製造するための上記で定義された薬学的製剤の使用を提供することも本発明の範囲内である。
【0017】
最後に、本発明は、本明細書において定義された結合物質を提供する工程、ならびに、約4.5~約6.5のpHで該結合物質を、
a. ヒスチジン緩衝液、
b. 約100~約400mMの糖、および
c. 約0.001~約0.1%(w/v)の非イオン性界面活性剤
と組み合わせる工程を含む、本発明の薬学的製剤を作製するための方法を提供する。
[本発明1001]
a. ヒトCD137(4-1BB)に結合する第1の抗原結合領域と、ヒトPD-L1(CD274)に結合する第2の抗原結合領域とを含む結合物質であって、
- 該第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:15に示したアミノ酸配列中に存在する3つの相補性決定領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む第1の重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:16に示したアミノ酸配列中に存在する3つの相補性決定領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む第1の軽鎖可変領域(VL)とを含み、かつ
- 該第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:17に示したアミノ酸配列中に存在する3つの相補性決定領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む第2の重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:21に示したアミノ酸配列中に存在する3つの相補性決定領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む第2の軽鎖可変領域(VL)とを含む、
該結合物質、
b. ヒスチジン緩衝液、
c. 約100~約400mMの糖、ならびに
d. 約0.001~約0.1%(w/v)の非イオン性界面活性剤
を含み、かつ約4.5~約6.5のpHを有する、薬学的製剤。
[本発明1002]
1~100mMのヒスチジン、例えば、5~100mM、10~100mM、15~100mM、5~90mM、5~80mM、5~70mM、5~60mM、5~50mM、5~40mM、5~30mM、10~90mM、10~80mM、10~70mM、10~60mM、10~50mM、10~40mM、10~30mM、15~90mM、15~80mM、15~70mM、15~60mM、15~50mM、15~40mM、15~30mM、または15~20mMのヒスチジンを含む、本発明1001の薬学的製剤。
[本発明1003]
約20mMのヒスチジン、例えば、20mMのヒスチジンを含む、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1004]
100~400mMの糖、例えば、125~400mM、150~400mM、150~400mM、175~400mM、200~400mM、225~400mM、100~375mM、100~350mM、100~325mM、100~300mM、125~375mM、125~350mM、125~325mM、125~300mM、125~275mM、150~375mM、150~350mM、150~325mM、150~300mM、150~275mM、175~375mM、175~350mM、175~325mM、175~300mM、175~275mM、200~375mM 1、200~350mM 1、200~325mM、200~300mM、200~275mM、225~375mM、225~350mM、225~325mM、225~300mM、または、例えば、225~275mMの糖を含む、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1005]
約250mMの糖、例えば、250mMの糖を含む、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1006]
前記糖がスクロースである、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1007]
0.005~0.1%(w/v)の非イオン性界面活性剤、例えば、0.01~0.1%(w/v)、0.015~0.1%(w/v)、0.001~0.09%(w/v)、0.001~0.08%(w/v)、0.001~0.07%(w/v)、0.001~0.06%(w/v)、0.001~0.05%(w/v)、0.001~0.04%(w/v)、0.001~0.02%(w/v)、0.005~0.1%(w/v)、0.005~0.09%(w/v)、0.005~0.08%(w/v)、0.005~0.07%(w/v)、0.005~0.06%(w/v)、0.005~0.05%(w/v)、0.005~0.04%(w/v)、0.005~0.03%(w/v)、0.005~0.02%(w/v)、0.01~0.09%(w/v)、0.01~0.08%(w/v)、0.01~0.07%(w/v)、0.01~0.06%(w/v)、0.01~0.05%(w/v)、0.01~0.04%(w/v)、0.01~0.03%(w/v)、0.01~0.02%(w/v)、0.015~0.09%(w/v)、0.015~0.08%(w/v)、0.015~0.07%(w/v)、0.015~0.06%(w/v)、0.015~0.05%(w/v)、0.015~0.04%(w/v)、0.015~0.03%(w/v)、または、例えば、0.015~0.02%(w/v)の非イオン性界面活性剤を含む、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1008]
約0.02%(w/v)の非イオン性界面活性剤、例えば、0.02%(w/v)の非イオン性界面活性剤を含む、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1009]
前記非イオン性界面活性剤が、2-[2-[3,4-bis(2-ヒドロキシエトキシ)オキソラン-2-イル]-2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル(E)-オクタデカ-9-エノエート(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート;ポリソルベート80)、または2-[2-[3,4-bis(2-ヒドロキシエトキシ)オキソラン-2-イル]-2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチルドデカノエート(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート;ポリソルベート20)である、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1010]
4.5~6.5、例えば、4.7~6.5、例えば、4.9~6.5、5.1~6.5、5.3~6.5、4.5~6.3、4.7~6.1、4.7~5.9、4.7~5.7、5.1~6.3、4.7~6.1、4.7~5.9、4.7~5.7、4.9~6.3、4.9~6.1、4.9~5.9、4.9~5.7、5.1~6.3、5.1~6.1、5.1~5.9、5.1~5.7、5.3~6.3、5.3~6.1、5.3~5.9、例えば、5.3~5.7のpHを有する、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1011]
約5.5のpH、例えば、5.5のpHを有する、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1012]
5~200mg/mLの結合物質、例えば、10~200mg/mL、20~200mg/mL、40~200mg/mL、60~200mg/mL、80~200mg/mL、100~200mg/mL、120~200mg/mL、150~200mg/mL、5~150mg/mL、10~150mg/mL、20~150mg/mL、40~150mg/mL、60~150mg/mL、80~150mg/mL、100~150mg/mL、5~130mg/mL、10~130mg/mL、20~130mg/mL、40~130mg/mL、60~130mg/mL、80~130mg/mL、100~130mg/mL、5~100mg/mL、10~100mg/mL、15~100mg/mL、20~100mg/mL、30~100mg/mL、40~100mg/mL、50~100mg/mL、60~100mg/mL、5~80mg/mL、5~60mg/mL、5~50mg/mL、5~40mg/mL、5~30mg/mL、5~20mg/mL、10~80mg/mL、10~60mg/mL、10~50mg/mL、10~40mg/mL、10~30mg/mL、15~80mg/mL、15~60mg/mL、15~40mg/mL、または、例えば、15~25mg/mLの結合物質を含む、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1013]
約20mg/mLの結合物質、例えば、20mg/mLの結合物質を含む、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1014]
(i)約20mg/mL、例えば、約40mg/mL、約60mg/mL、約80mg/mL、約100mg/mL、約120mg/mL、または約140mg/mLの結合物質と、
(ii)約20mMのヒスチジン、約250mMの糖、および約0.02%(w/v)の非イオン性界面活性剤と
を含み、かつ約5.5のpHを有する、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1015]
(i)20mg/mL、例えば、40mg/mL、60mg/mL、80mg/mL、100mg/mL、120mg/mL、または140mg/mLの結合物質と、
(ii)20mMのヒスチジン、250mMの糖、および0.02%(w/v)の非イオン性界面活性剤と
を含み、かつ5.5のpHを有する、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1016]
-65℃で12時間の凍結とそれに続く25℃で12時間の融解からなる凍結融解サイクル5回に供された後に、2000~3750ルクスの強さの照度で黒色を背景にしておよび白色を背景にして行われたビジブル粒子計数によって測定された場合にビジブル粒子を本質的に含まない、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1017]
前記結合物質が、抗体、例えば、二重特異性抗体である、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1018]
それぞれの可変領域が、3つの相補性決定領域のCDR1、CDR2、およびCDR3と、4つのフレームワーク領域のFR1、FR2、FR3、およびFR4とを含む、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1019]
前記相補性決定領域および前記フレームワーク領域が、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置されている、本発明1018の薬学的製剤。
[本発明1020]
- 前記第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:9に示したCDR1配列、SEQ ID NO:10に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:11に示したCDR3配列を含む第1の重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:13に示したCDR1配列、GASとして示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:14に示したCDR3配列を含む第1の軽鎖可変領域(VL)とを含み、かつ
- 前記第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:18に示したCDR1配列、SEQ ID NO:19に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:20に示したCDR3配列を含む第2の重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:22に示したCDR1配列、DDNとして示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:23に示したCDR3配列を含む第2の軽鎖可変領域(VL)とを含む、
前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1021]
- 前記第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:15に示した配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する第1の重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:16に示した配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する第1の軽鎖可変領域(VH)とを含み、かつ
- 前記第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:17に示した配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する第2の重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:21に示した配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する第2の軽鎖可変領域(VL)とを含む、
前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1022]
- 前記第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:9に示したCDR1配列、SEQ ID NO:10に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:11に示したCDR3配列を含む第1の重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:13に示したCDR1配列、GASとして示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:14に示したCDR3配列を含む第1の軽鎖可変領域(VL)とを含み、該第1の重鎖可変領域が、SEQ ID NO:15に示した配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有し、該第1の軽鎖可変領域が、SEQ ID NO:16に示した配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有し、かつ
- 前記第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:18に示したCDR1配列、SEQ ID NO:19に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:20に示したCDR3配列を含む第2の重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:22に示したCDR1配列、DDNとして示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:23に示したCDR3配列を含む第2の軽鎖可変領域(VL)とを含み、該第2の重鎖可変領域が、SEQ ID NO:17に示した配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有し、該第2の軽鎖可変領域が、SEQ ID NO:21に示した配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する、
前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1023]
a. ヒトCD137に結合する前記第1の抗原結合領域が、
- SEQ ID NO:15に示した配列、または、SEQ ID NO:15に示した配列と比較して20個までのアミノ酸残基、例えば、19個までの、18個までの、17個までの、16個までの、15個までの、14個までの、13個までの、12個までの、11個までの、10個までの、9個までの、8個までの、7個までの、6個までの、5個までの、4個までの、3個までの、2個までの、1個までのアミノ酸残基が改変されている配列を含む、第1の重鎖可変領域であって、該第1の重鎖可変領域(VH)が、SEQ ID NO:9に示したCDR1配列、SEQ ID NO:10に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:11に示したCDR3配列を含む、該第1の重鎖可変領域と、
- SEQ ID NO:16に示した配列、または、SEQ ID NO:16に示した配列と比較して20個までのアミノ酸残基、例えば、19個までの、18個までの、17個までの、16個までの、15個までの、14個までの、13個までの、12個までの、11個までの、10個までの、9個までの、8個までの、7個までの、6個までの、5個までの、4個までの、3個までの、2個までの、1個までのアミノ酸残基が改変されている配列を含む、第1の軽鎖可変領域であって、該第1の軽鎖可変領域(VL)が、SEQ ID NO:13に示したCDR1配列、GASとして示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:14に示したCDR3配列を含む、該第1の軽鎖可変領域と
を含み、かつ
b. ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域が、
- SEQ ID NO:17に示した配列、または、SEQ ID NO:17に示した配列と比較して20個までのアミノ酸残基、例えば、19個までの、18個までの、17個までの、16個までの、15個までの、14個までの、13個までの、12個までの、11個までの、10個までの、9個までの、8個までの、7個までの、6個までの、5個までの、4個までの、3個までの、2個までの、1個までのアミノ酸残基が改変されている配列を含む、第2の重鎖可変領域であって、該第2の重鎖可変領域(VH)が、SEQ ID NO:18に示したCDR1配列、SEQ ID NO:19に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:20に示したCDR3配列を含む、該第2の重鎖可変領域と、
- SEQ ID NO:21に示した配列、または、SEQ ID NO:21に示した配列と比較して20個までのアミノ酸残基、例えば、19個までの、18個までの、17個までの、16個までの、15個までの、14個までの、13個までの、12個までの、11個までの、10個までの、9個までの、8個までの、7個までの、6個までの、5個までの、4個までの、3個までの、2個までの、1個までのアミノ酸残基が改変されている配列を含む、第2の軽鎖可変領域であって、該第2の軽鎖可変領域(VH)が、SEQ ID NO:22に示したCDR1配列、DDNとして示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:23に示したCDR3配列を含む、該第2の軽鎖可変領域と
を含む、
前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1024]
前記結合物質が、(i)前記第1の重鎖可変領域(VH)を含みかつ第1の重鎖定常領域(CH)をさらに含むポリペプチドと、(ii)前記第2の重鎖可変領域(VH)を含みかつ第2の重鎖定常領域(CH)をさらに含むポリペプチドとを含む、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1025]
(i)前記第1の軽鎖可変領域(VL)を含みかつ第1の軽鎖定常領域(CL)をさらに含むポリペプチドと、(ii)前記第2の軽鎖可変領域(VL)を含みかつ第2の軽鎖定常領域(CL)をさらに含むポリペプチドとを含む、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1026]
第1の結合アームと第2の結合アームとを含む抗体であり、
a. 該第1の結合アームが、(i)前記第1の重鎖可変領域(VH)および前記第1の重鎖定常領域(CH)を含むポリペプチドと、(ii)前記第1の軽鎖可変領域(VL)および前記第1の軽鎖定常領域(CL)を含むポリペプチドとを含み、かつ
b. 該第2の結合アームが、(i)前記第2の重鎖可変領域(VH)および前記第2の重鎖定常領域(CH)を含むポリペプチドと、(ii)前記第2の軽鎖可変領域(VL)および前記第2の軽鎖定常領域(CL)を含むポリペプチドとを含む、
前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1027]
前記第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:30に示したヒトCD137、またはその成熟ポリペプチドに結合する、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1028]
前記第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:31に示したカニクイザル(マカカ・ファシキュラリス(Macaca fascicularis))CD137、またはその成熟ポリペプチドに結合する、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1029]
前記第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:28に示したヒトPD-L1、またはその成熟ポリペプチドに結合する、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1030]
前記第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:29に示したカニクイザル(マカカ・ファシキュラリス)PD-L1、またはその成熟ポリペプチドに結合する、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1031]
前記第2の抗原結合領域がヒトPD-L1とヒトPD-1との結合を阻害する、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1032]
前記結合物質が完全長抗体または抗体断片の形をとる、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1033]
前記結合物質が、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群より選択されるアイソタイプの結合物質である、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1034]
前記結合物質が完全長IgG1抗体である、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1035]
a. CD137に結合する前記第1の抗原結合領域がキメラ抗体に由来し、かつ/または
b. ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域がキメラ抗体に由来する、
前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1036]
a. CD137に結合する前記第1の抗原結合領域がヒト化抗体に由来し、かつ/または
b. ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域がヒト化抗体に由来する、
前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1037]
a. ヒトCD137に結合する前記第1の抗原結合領域がヒト抗体に由来し、かつ/または
b. ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域がヒト抗体に由来する、
前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1038]
a. ヒトCD137に結合する前記第1の抗原結合領域がヒト化抗体に由来し、かつ/または
b. ヒトPD-L1に結合する前記第2の抗原結合領域がヒト抗体に由来する、
前記本発明のいずれかの結合物質。
[本発明1039]
前記第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)のそれぞれが、定常領域ドメイン1領域(CH1領域)、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域のうちの1つまたは複数、好ましくは少なくとも、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含む、本発明1026~1038のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1040]
前記第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)のそれぞれがCH3領域を含み、かつ2つの前記CH3領域が非対称的な変異を含む、本発明1039の薬学的製剤。
[本発明1041]
前記第1の重鎖定常領域(CH)において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、かつ前記第2の重鎖定常領域(CH)において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、かつ該第1の重鎖および該第2の重鎖が同じ位置において置換されていない、本発明1025~1040のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1042]
(i)EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置にあるアミノ酸が第1の重鎖定常領域(CH)ではLであり、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置にあるアミノ酸が第2の重鎖定常領域(CH)ではRであるか、または(ii)EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置にあるアミノ酸が第1の重鎖ではRであり、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置にあるアミノ酸が第2の重鎖ではLである、本発明1041の薬学的製剤。
[本発明1043]
同じ第1の抗原結合領域および第2の抗原結合領域とヒトIgG1ヒンジ、CH2領域、およびCH3領域を含む2つの重鎖定常領域(CH)とを含む別の抗体と比較してより低い程度まで、前記抗体がFc媒介エフェクター機能を誘導する、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1044]
改変されていない第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)を含むこと以外は同一の抗体と比較してより低い程度まで前記抗体がFc媒介エフェクター機能を誘導するように、前記第1の重鎖定常領域(CH)および前記第2の重鎖定常領域(CH)が改変されている、本発明1043の薬学的製剤。
[本発明1045]
前記Fc媒介エフェクター機能が、Fcγ受容体への結合によって、C1qへの結合によって、またはFcγ受容体のFc媒介架橋結合の誘導によって測定される、本発明1043または1044の薬学的製剤。
[本発明1046]
前記Fc媒介エフェクター機能がC1qとの結合によって測定される、本発明1045の薬学的製剤。
[本発明1047]
C1qと前記抗体の結合が野生型抗体と比較して低下するように、好ましくは、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%低下するように前記第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域が改変されており、C1q結合が好ましくは、ELISAによって測定される、本発明1043~1046のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1048]
前記第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)のうちの少なくとも一方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置にある1つまたは複数のアミノ酸が、それぞれL、L、D、N、およびPでない、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1049]
EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置が、前記第1の重鎖および第2の重鎖においてそれぞれFおよびEである、本発明1048の薬学的製剤。
[本発明1050]
EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置が、前記第1の重鎖定常領域(HC)および第2の重鎖定常領域(HC)においてそれぞれF、E、およびAである、本発明1048の薬学的製剤。
[本発明1051]
第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域の両方の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置が、それぞれF、E、およびAであり、かつ、(i)第1の重鎖定常領域のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLであり、かつ第2の重鎖定常領域のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであるか、または(ii)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLである、本発明1048の薬学的製剤。
[本発明1052]
第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域の両方の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置が、それぞれFおよびEであり、かつ、(i)第1の重鎖定常領域のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであるか、または(ii)第1の重鎖定常領域のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLである、本発明1048の薬学的製剤。
[本発明1053]
前記第1の結合アームが、カッパ(κ)軽鎖、例えば、SEQ ID NO:26に示したアミノ酸配列を含むカッパ軽鎖を含み、かつ前記第2の結合アームが、ラムダ(λ)軽鎖、例えば、SEQ ID NO:27に示したアミノ酸配列を含むラムダ軽鎖を含む、本発明1026~1052のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1054]
前記第1の結合アームが、ラムダ(λ)軽鎖、例えば、SEQ ID NO:27に示したアミノ酸配列を含むラムダ軽鎖を含み、かつ前記第2の結合アームが、カッパ(κ)軽鎖、例えば、SEQ ID NO:26に示したアミノ酸配列を含むカッパ軽鎖を含む、本発明1026~1052のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1055]
前記第1の結合アームと前記第2の結合アームが両方とも、ラムダ(λ)軽鎖、例えば、SEQ ID NO:27に示したアミノ酸配列を含むラムダ軽鎖を含む、本発明1026~1052のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1056]
前記第1の結合アームと前記第2の結合アームが両方とも、カッパ(κ)軽鎖、例えば、SEQ ID NO:26に示したアミノ酸配列を含むカッパ軽鎖を含む、本発明1026~1052のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1057]
前記第1の結合アームがSEQ ID NO:24に示したアミノ酸配列を含み、かつ前記第2の結合アームがSEQ ID NO:25に示したアミノ酸配列を含む、本発明1026~1056のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1058]
前記第1の結合アームがSEQ ID NO:25に示したアミノ酸配列を含み、かつ前記第2の結合アームがSEQ ID NO:24に示したアミノ酸配列を含む、本発明1026~1056のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1059]
前記結合物質がT細胞の増殖を誘導および/または強化する、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1060]
前記T細胞がCD4
+
T細胞および/またはCD8
+
T細胞である、本発明1059の薬学的製剤。
[本発明1061]
前記第2の抗原結合領域がPD-L1に結合した場合のみ、前記結合物質がCD137シグナル伝達を活性化する、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1062]
特異的なT細胞受容体(TCR)を発現するT細胞を、TCRによって認識される対応する抗原を主要組織適合遺伝子複合体上で提示する樹状細胞(DC)と共に同時培養することによって、T細胞の増殖が測定される、本発明1059~1061のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1063]
水性製剤である、前記本発明のいずれかの薬学的製剤。
[本発明1064]
医薬として使用するための、前記本発明のいずれかにおいて定義された薬学的製剤。
[本発明1065]
がんの処置において使用するための、本発明1001~1064のいずれかにおいて定義された薬学的製剤。
[本発明1066]
それを必要とする対象に、本発明1001~1064のいずれかにおいて定義された薬学的製剤の有効量を投与する工程を含む、疾患を処置する方法。
[本発明1067]
前記疾患ががんである、本発明1066の方法。
[本発明1068]
本発明1001~1065のいずれかにおいて定義された結合物質を提供する工程、ならびに、約4.5~約6.5のpHで該結合物質を、
a. ヒスチジン緩衝液、
b. 約100~約400mMの糖、および
c. 約0.001~約0.1%(w/v)の非イオン性界面活性剤
と組み合わせる工程を含む、本発明1001~1064のいずれかにおいて定義された薬学的製剤を作製するための方法。
[本発明1069]
PD-L1を発現する腫瘍細胞の細胞死を誘導するか、またはPD-L1を発現する腫瘍細胞の成長および/もしくは増殖を阻害する方法であって、
それを必要とする対象および/または該腫瘍細胞を有する対象に、本発明1001~1064のいずれかにおいて定義された薬学的製剤の有効量を投与する工程を含む、該方法。
[本発明1070]
前記がんが、固形腫瘍の存在を特徴とするか、または黒色腫、卵巣がん、肺がん、結腸がん、および頭頸部がんからなる群より選択される、本発明1065の使用のための薬学的製剤または本発明1067の方法。
[本発明1071]
前記がんが非小細胞肺がん(NSCLC)である、本発明1065の使用のための薬学的製剤または本発明1067もしくは1068の方法。
[本発明1072]
医薬、例えば、固形腫瘍の存在を特徴とするがん、または黒色腫、卵巣がん、肺がん、結腸がん、および頭頸部がんからなる群より選択されるがんなどのがんを処置するための医薬を製造するための、本発明1001~1064のいずれかの薬学的製剤の使用。
[本発明1073]
前記肺がんが非小細胞肺がん(NSCLC)である、本発明1072の使用。
[本発明1074]
前記薬学的製剤が静脈内投与される、本発明1064もしくは1065の使用のための薬学的製剤、本発明1072もしくは1073の使用、または本発明1066、1067、1069のいずれかの方法。
[本発明1075]
前記使用または方法が、1種類または複数種類のさらなる治療用物質、例えば、化学療法剤との組み合わせを含む、本発明1064もしくは1065の使用のための薬学的製剤、本発明1072もしくは1073の使用、または本発明1066、1067、1069のいずれかの方法。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】ヒトCD137、アフリカゾウCD137、およびイノシシCD137の配列アラインメント。ヒト配列のアミノ酸とは異なる、アフリカゾウCD137およびイノシシCD137のアミノ酸を黒色で強調した。
【
図2】アフリカゾウ(シャッフル5)CD137ドメインまたはイノシシ(シャッフル1-4、6)CD137ドメインを含むCD137シャッフル構築物。
【
図3】HEK293-T17細胞上でのCD137シャッフル構築物の発現。HEK293-T17細胞にCD137シャッフル構築物をトランスフェクトした。構築物の細胞表面発現を、ヒトCD137、イノシシCD137、およびアフリカゾウCD137を認識するポリクローナル抗CD137抗体を用いたフローサイトメトリーによって測定した。
【
図4】抗体CD137-009と、HEK293-T17細胞上で発現させたCD137シャッフル構築物との結合。HEK293-T17細胞にCD137シャッフル構築物、およびヒトCD137(hCD137 wt)、アフリカゾウCD137、またはイノシシCD137をトランスフェクトした。抗体CD137-009と、HEK293-T17細胞上で発現させた、これらの構築物との結合をフローサイトメトリーによって測定した。ポリクローナル抗CD137抗体による染色を対照として示した。
【
図5】PD-1/PD-L1相互作用に対する一価抗体b12-FEAL×PD-L1-547-FEARの効果。b12-FEAL×PD-L1-547-FEARの効果をPD-1/PD-L1阻害バイオアッセイ法において測定した。示したデータは、1回の代表的な実験の、(抗体を添加しなかった)対照に対する誘導倍率である。
【
図6】CD137×PD-L1二重特異性抗体の予想された作用機序の模式図。(A)PD-L1は抗原提示細胞(APC)ならびに腫瘍細胞の表面で発現している。PD-L1と、負の調節分子PD-1を発現するT細胞との結合はT細胞活性化シグナルを効果的に無効にし、最終的にT細胞を阻害する。(B)CD137×PD-L1二重特異性抗体を添加すると、阻害性のPD-1:PD-L1相互作用がPD-L1特異的アームによってブロックされると同時に、この二重特異性抗体は細胞間相互作用を介して、アゴニストシグナル伝達をT細胞上で発現しているCD137にもたらし、その結果、強力なT細胞共刺激が生じる。
【
図7】活性なPD-1/PD-L1軸を用いた抗原特異的T細胞アッセイ法におけるCD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEARによる、PD-1/PD-L1を介したT細胞阻害の放出と、CD8
+T細胞増殖のさらなる共刺激。0.1μg/mLおよび0.02μg/mLのCD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEAR、b12-FEAL×PD-L1-547-FEAR、またはb12対照抗体の存在下で、クローディン-6特異的TCRおよびPD-1インビトロ翻訳(IVT)-RNAで電気穿孔したCFSE標識T細胞を、クローディン-6-IVT-RNAで電気穿孔した未熟樹状細胞と共に5日間インキュベートした。CD8
+T細胞増殖をフローサイトメトリーによって測定した。示したデータは、(AおよびC)2人の異なるドナーからの代表的なCFSEヒストグラムと、(BおよびD)FlowJoソフトウェアを用いて算出した場合の対応する分裂細胞パーセントおよび増殖指数である。(B)は、(A)に示したドナー1代表からのデータの分析を示す。(D)は、(C)に示したドナー2代表からのデータの分析を示す。エラーバー(SD)は実験内でのばらつきを示す(1人のドナーからの細胞を用いた3回の繰り返し)。
【
図8】活性なPD-1/PD-L1軸を用いた抗原特異的T細胞アッセイ法における二重特異性抗体CD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEARのEC
50値の分析。CD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEAR(1~0.00015μg/mLの3倍段階希釈度)の存在下で、クローディン-6特異的TCRおよびPD-1-IVT-RNAで電気穿孔したCFSE標識T細胞を、クローディン-6-IVT-RNAで電気穿孔した未熟樹状細胞と共に5日間インキュベートした。CD8
+T細胞増殖をフローサイトメトリーによって測定した。示したデータは、抗体濃度の関数としての分裂細胞パーセント(白抜きのダイアモンド)および増殖指数(べた塗りの三角)である。エラーバー(SD)は実験内でのばらつきを示す(1人のドナーからの細胞を用いた6回の繰り返し)。曲線を非線形回帰によってフィットさせ、EC
50値を、GraphPad Prismソフトウェアを用いて求めた。
【
図9】活性なPD-1/PD-L1軸を用いた抗原特異的T細胞アッセイ法における、CD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEARと、2種類の一価結合CD137抗体(CD137-009-FEAL×b12-FEAR+b12-FEAL×PD-L1-547-FEAR)または2種類の親抗体(CD137-009+PD-L1-547)の組み合わせの比較。0.25μg/mLの(i)CD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEAR、(ii)CD137-009-FEAL×b12+b12-FEAL×PD-L1-547-FEAR、(iii)CD137-009-FEAL×b12、(iv)b12-FEAL×PD-L1-547-FEAR、(v)CD137-009+PD-L1-547、(vi)CD137-009、(vii)PD-L1-547、または(viii)b12対照抗体の存在下で、クローディン-6特異的TCRおよびPD1-IVT-RNAで電気穿孔したCFSE標識T細胞を、クローディン-6-IVT-RNAで電気穿孔した未熟樹状細胞と共に5日間インキュベートした。CD8
+T細胞増殖をフローサイトメトリーによって測定した。示したデータは、(A)代表的なCFSEヒストグラムと、(BおよびC)FlowJoソフトウェアを用いて算出した場合の分裂細胞パーセントおよび増殖指数の対応する平均値である。エラーバー(SD)は実験内でのばらつきを示す(1人のドナーからの細胞を用いた3回の繰り返し)。
【
図10】CD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEARによるヒト非小細胞肺がん組織切除からの腫瘍浸潤リンパ球(TIL)のエクスビボ増大。切除した組織からの腫瘍断片を、10U/mL IL-2および示された濃度のCD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEARと共に培養した。10日間培養した後に、細胞を収集し、フローサイトメトリーによって分析した。(A)未処置対照と比較した増大倍率としてのTIL数、(B)未処置対照と比較した増大倍率としてのCD3
+CD8
+T細胞数、(C)未処置対照と比較した増大倍率としてのCD3
+CD4
+T細胞数、(D)未処置対照と比較した増大倍率としてのCD3
-CD56
+NK細胞数。バーはn=5の個々のウェルの平均±SDを表し、出発物質として1ウェルあたり2個の腫瘍断片を用いた。
【
図11】OT-I養子細胞移入セットアップにおける抗原特異的T細胞増殖に対するmCD137-3H3×mPD-L1-MPDL3280Aマウス代理抗体の効果。ドナーマウスから単離したオボアルブミン(OVA)特異的OT1
+Thy1.1
+二重陽性細胞障害性T細胞をナイーブC57BL/6レシピエントマウスの後眼窩に(r.o.)注射した。養子細胞移入の翌日に、レシピエントマウスに抗原刺激として100μgのOVAをr.o.注射し、その後に、マウス1匹につき100μgまたは20μgのmCD137-3H3×mPD-L1-MPDL3280A、mCD137-3H3×b12、またはmPD-L1-MPDL3280A×b12抗体をr.o.注射した。PBS注射(図中のOVA単独として示した)をベースライン参照として使用し、未処置動物を陰性対照として使用した。6日後に、100μLの血液をr.o.経路を介して採取し、Thy1.1
+CD8
+T細胞について分析した。示したデータは、(A)OT-I養子細胞移入実験概略の模式図と、(B)6日目の各治療群のThy1.1
+CD8
+T細胞頻度である。四角は個々の動物を表し、エラーバー(SD)は実験内でのばらつきを示す(n=5マウス/群)。統計解析を一方向Anovaとチューキー多重比較検定を用いて行った。ns=群間で有意差なし。
***=P<0.001。
【
図12】皮下同系CT26マウス腫瘍モデルにおけるmCD137-3H3×mPD-L1-MPDL3280Aマウス代理抗体の抗腫瘍効力。腫瘍の体積が≧30mm
3に達した後に、皮下CT26腫瘍を有する雌BALB/cマウスを、マウス1匹あたり20μgの(i)mCD137-3H3×mPD-L1-MPDL3280A、(ii)mCD137-3H3×b12、もしくは(iii)mPD-L1-MPDL3280A×b12抗体、または(iv)PBSの腹腔内注射によって処置した。投与計画は、最初の8回の注射については2~3日ごとであり、その後、実験が終了するまで7日ごとの注射であった。29日目に、100μLの血液をr.o.経路を介して採取し、gp70特異的CD8
+T細胞について分析した。示したデータは、(A)各線が1匹のマウスを表す腫瘍成長曲線、(B)結果として得られたカプラン・マイヤー生存分析、および(C)移植後29日目の各治療群のgp70特異的CD8
+T細胞頻度である。PFS=無増悪生存期間。
【
図13】単一特異性二価PD-L1抗体および一価b12×PD-L1抗体と腫瘍細胞との結合。PD-L1-547およびb12-FEAL×PD-L1-547-FEARと、MDA-MB-231(A)、PC-3(B)、およびSK-MES-1(C)細胞との結合。示したデータは、フローサイトメトリーによって求めた蛍光強度(MFI)の平均である。単一特異性二価b12抗体を陰性対照として含めた。
【
図14】非抗原特異的T細胞増殖アッセイ法におけるPD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEARと、2種類の一価対照の組み合わせ(b12-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEAR+b12-FEAL×PD-L1-547-FEAR)または2種類の親抗体の組み合わせ(CD137-009-HC7LC2-FEAR+PD-L1-547-FEAR)のとの比較。CFSE標識PBMCを、最適以下の濃度の抗CD3抗体(0.03μg/mLおよび0.1μg/mL)と共にインキュベートし、または(T細胞活性化の陰性対照として)抗CD3抗体無し(w/o)でインキュベートし、かつ、0.2μg/mLの(i)PD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEAR、(ii)b12-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEAR+b12-FEAL×PD-L1-547-FEAR、(iii)b12-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEAR、(iv)b12-FEAL×PD-L1-547-FEAR、(v)CD137-009-HC7LC2-FEAR+PD-L1-547-FEAR、(vi)CD137-009-HC7LC2-FEAR、(vii)PD-L1-547-FEAR、または(viii)b12-IgG-FEAL対照抗体の存在下で4日間培養した。CD4
+(A)およびCD8
+(B)T細胞の増殖をフローサイトメトリーによって測定した。3人のドナーからのデータを、FlowJo v10.4ソフトウェアを用いて算出した場合の3回の繰り返しの増大指数の平均として示した。エラーバー(SD)は実験内でのばらつきを示す(1人のドナーからの細胞を用いた3回の繰り返し)。
【
図15】非抗原特異的T細胞増殖アッセイ法におけるPD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEARxによるT細胞増殖誘導のEC
50値の決定。CFSE標識PBMCを、最適以下の濃度の抗CD3抗体、およびPD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEAR(1~0.00015μg/mL)または対照抗体である1μg/mL b12 IgGの段階希釈液と共に4日間インキュベートした。2人の代表的なドナーからのデータを示した。ドナー1からのPBMCを0.03μg/mL抗CD3(A、B)で刺激し、ドナー2からのPBMCを0.09μg/mL抗CD3(C、D)で刺激した。CD4
+(AおよびC)ならびにCD8
+(BおよびD)T細胞増殖をフローサイトメトリーによって測定した。示したデータは、FlowJo v10.4ソフトウェアを用いて算出して、4パラメータ対数フィット(logarithmic fit)を用いてフィットさせた場合の3回の繰り返しの増大指数値の平均である。エラーバー(SD)は実験内でのばらつきを示す(1人のドナーからの細胞を用いた3回の繰り返し)。
【
図16】T細胞へのPD-1電気穿孔があるまたはT細胞へのPD-1電気穿孔が無い抗原特異的T細胞アッセイ法における10種類の炎症促進性サイトカインの分泌に対するPD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEARの効果。CLDN6特異的TCRおよび2μg PD1-IVT-RNAで電気穿孔したT細胞、またはCLDN6特異的TCRで電気穿孔したT細胞を、CLDN6-IVT-RNAで電気穿孔したiDCと共に、異なる濃度のCD137-009-HC7LC2-FEAL×PD-L1-547-FEAR(3倍段階希釈;1μg/mL~0.00015μg/mL)またはb12対照抗体b12-IgG-FEALの存在下でインキュベートした。抗体添加の48時間後に、上清のサイトカインレベルを、MSD V-Plex Human Proinflammatory panel 1(10-Plex)キットを用いるマルチプレックスサンドイッチイムノアッセイ法によって測定した。各データ点は3個の個々のウェルの平均±SDを表す。
【
図17】抗原非特異的T細胞アッセイ法における10種類の炎症促進性サイトカインの分泌に対するPD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEARの効果。異なる濃度のPD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEAR(3倍段階希釈;1μg/mL~0.00015μg/mL)またはb12対照抗体b12-IgG-FEALの存在下で、抗CD3抗体でヒトPBMCを最適以下で刺激した。抗体添加の48時間後に、上清中のサイトカインレベルを、MSD V-Plex Human Proinflammatory panel 1(10-Plex)キットを用いるマルチプレックスサンドイッチイムノアッセイ法によって測定した。各データ点は3個の個々のウェルの平均±SDを表す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
定義
本発明の文脈において「結合物質」という用語は、望ましい抗原に結合することができる任意の作用物質を指す。本発明のある特定の態様では、結合物質は、抗体、抗体断片、またはその構築物である。結合物質はまた、合成部分、改変された部分、または非天然部分、特に、非ペプチド部分も含んでよい。このような部分は、例えば、望ましい抗原結合機能性または抗原結合領域、例えば、抗体または抗体断片を連結し得る。一態様において、結合物質は、抗原結合CDRまたは可変領域を含む合成構築物である。
【0020】
「免疫グロブリン」という用語は、一対が低分子量の軽鎖(L)、一対が重鎖(H)の二対のポリペプチド鎖からなり、4本全てがジスルフィド結合で相互接続されている、構造上関連する糖タンパク質のクラスをいう。免疫グロブリンの構造ははっきりと特徴決定されている。例えば、Fundamental Immunology Ch. 7(Paul, W., ed., 2nd ed. Raven Press, N.Y. (1989))を参照されたい。簡単に述べると、それぞれの重鎖は、典型的には、重鎖可変領域(本明細書ではVHまたはVHと略す)と重鎖定常領域(本明細書ではCHまたはCHと略す)で構成される。重鎖定常領域は、典型的には、3つのドメイン、CH1、CH2、およびCH3で構成される。ヒンジ領域は重鎖のCH1ドメインとCH2ドメインの間にある領域であり、可動性が高い。ヒンジ領域におけるジスルフィド結合は、IgG分子にある2本の重鎖間の相互作用の一部である。それぞれの軽鎖は、典型的には、軽鎖可変領域(本明細書ではVLまたはVLと略す)と軽鎖定常領域(本明細書ではCLまたはCLと略す)で構成される。軽鎖定常領域は、典型的には、1つのドメインCLで構成される。VH領域およびVL領域は、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる超可変性領域(または配列が著しく変化し得る、かつ/もしくは構造が規定されたループの形をとり得る超可変領域)にさらに細分することができ、超可変性領域には、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、超可変性領域より保存された領域が点在している。それぞれのVHおよびVLは、典型的には、3つのCDRと4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置されている(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196, 901-917(1987)も参照されたい)。特別の定めのない限り、または文脈と相反しない限り、本明細書におけるCDR配列は、IMGT規則に従い、DomainGapAlignを用いて特定される(Lefranc MP., Nucleic Acids Research 1999;27:209-212およびEhrenmann F., Kaas Q. and Lefranc M.-P. Nucleic Acids Res., 38, D301-307 (2010);インターネットhttpアドレスwww.imgt.org/も参照されたい)。特別の定めのない限り、または文脈と相反しない限り、本発明における定常領域のアミノ酸位置についての記載はEUナンバリングに従う(Edelman et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1969 May;63(1):78-85; Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition. 1991 NIH Publication No. 91-3242)。
【0021】
本明細書で使用する「アイソタイプ」という用語は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる、免疫グロブリンクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、またはIgM)またはその任意のアロタイプ、例えば、IgG1m(za)およびIgG1m(f))を指す。さらに、それぞれの重鎖アイソタイプはカッパ(κ)またはラムダ(λ)軽鎖と組み合わせることができる。
【0022】
本発明の文脈において「抗体」(Ab)という用語は、免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の断片、またはそのいずれかの誘導体を指し、これらは、代表的な生理学的条件下で、かなり長い時間の半減期、例えば、少なくとも約30分、少なくとも約45分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、約24時間またはそれ以上、約48時間またはそれ以上、約3、4、5、6、7日間、またはそれ以上など、あるいは他の任意の関連する、機能によって規定された期間(例えば、抗体と抗原との結合に関連する生理学的応答を誘導、促進、増強、および/もしくは調節するのに十分な時間、ならびに/または抗体がエフェクター活性を高めるのに十分な時間)で抗原に特異的に結合する能力を有する。免疫グロブリン分子の重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。本明細書で使用する「抗原抗体結合領域」という用語は、抗原と相互作用する領域をいい、VH領域とVL領域を両方とも含む。抗体という用語が本明細書で使用する場合、単一特異性抗体だけでなく、複数の、例えば、2つまたはそれ以上の、例えば、3つまたはそれ以上の、異なる抗原結合領域を含む多重特異性抗体も含む。抗体(Ab)の定常領域は、免疫グロブリンと、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および補体系成分、例えば、補体活性化の古典経路の第1の成分であるC1qを含む宿主組織または宿主因子との結合を媒介し得る。前記のように、本明細書において抗体という用語は、特に定めのない限り、または文脈と明らかに相反しない限り、抗原結合断片である、すなわち、抗原に特異的に結合する能力を保持している抗体断片を含む。抗体の抗原結合機能は完全長抗体の断片によって果たされ得ることが示されている。「抗体」という用語の中に含まれる抗原結合断片の例には、(i)Fab'またはFab断片、VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価断片、またはWO2007059782(Genmab)に記載の一価抗体;(ii)F(ab')2断片、2つのFab断片がヒンジ領域でのジスルフィド架橋によって連結された二価断片;(iii)VHおよびCH1ドメインから本質的になるFd断片;(iv)抗体のシングルアームのVLおよびVHドメインから本質的になるFv断片、(v)VHドメインから本質的になり、ドメイン抗体(Holt et al; Trends Biotechnol. 2003 Nov; 21(11):484-90)とも呼ばれる、dAb断片(Ward et al., Nature 341, 544-546(1989));(vi)キャメリド(camelid)またはナノボディ分子(Revets et al; Expert Opin Biol Ther. 2005 Jan; 5(1):111-24)、ならびに(vii)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVLおよびVHは別々の遺伝子によってコードされるが、VLおよびVH領域が対形成して一価分子(単鎖抗体または単鎖Fv(scFv)と知られる。例えば、Bird et al., Science 242, 423-426(1988)およびHuston et al., PNAS USA 85, 5879-5883(1988)を参照されたい)を形成する1本のタンパク質鎖として作られるのを可能にする合成リンカーによって組換え法を用いて接続されてもよい。このような単鎖抗体は、特に定めのない限り、または文脈によって明らかに示されない限り、抗体という用語の中に含まれる。このような断片は、一般的に、抗体の意味の中に含まれるが、ひとまとめにして、およびそれぞれ独立して、異なる生物学的な特性および有用性を示す本発明の独特の特徴である。本発明の文脈における、これらの抗体断片および他の有用な抗体断片ならびにこのような断片の二重特異性型が本明細書においてさらに議論される。抗体という用語は、特に定めのない限り、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、抗体様ポリペプチド、例えば、キメラ抗体およびヒト化抗体、ならびに任意の公知の技法、例えば、酵素的切断、ペプチド合成、および組換え技法によって提供される、抗原に特異的に結合する能力を保持している抗体断片(抗原結合断片)も含むことも理解されるはずである。作製される抗体は任意のアイソタイプを有してよい。本明細書で使用する「アイソタイプ」という用語は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる免疫グロブリンクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、またはIgM)をいう。特定のアイソタイプ、例えば、IgG1が本明細書において言及される場合、この用語は、特定のアイソタイプ配列、例えば、特定のIgG1配列に限定されないが、抗体の配列が、他のアイソタイプよりも、そのアイソタイプ、例えば、IgG1に似ていることを示すために用いられる。従って、例えば、本発明のIgG1抗体は、定常領域の変化を含む、天然IgG1抗体の配列変種でもよい。
【0023】
本明細書において使用する場合、「アーム」、「Fabアーム」、および「半分子(half molecule)」という用語は1つの重鎖-軽鎖ペアをいう。二重特異性抗体が、第1の抗体「に由来する」半分子抗体と、第2の抗体「に由来する」半分子抗体とを含むと述べられた場合、「に由来する」という用語は、任意の公知の方法によって、前記第1の抗体および第2の抗体のそれぞれに由来する半分子を組み換えて、結果として生じる二重特異性抗体にすることによって二重特異性抗体が作製されたことを示す。これに関連して、「組み換える」とは、特定の組み換え方法によって限定されることが意図されず、従って、例えば、半分子交換による組み換え、ならびに核酸レベルでの組み換え、および/または2種類の半分子を同じ細胞内で同時発現することによる組み換えを含む本明細書において以下で説明される二重特異性抗体を産生するための方法の全てを含む。
【0024】
本明細書で使用する「抗原結合領域」または「結合領域」という用語は、抗原に結合することができる抗体領域を指す。抗原は、任意の分子、例えば、ポリペプチド、例えば、細胞、細菌、またはビリオンの表面に存在するポリペプチドでもよい。「抗原結合領域」および「抗原結合部位」という用語は、本発明の文脈と矛盾しない限り、本発明の文脈において互換的に用いられることがある。
【0025】
「抗原」および「標的」という用語は、本発明の文脈と矛盾しない限り、本発明の文脈において互換的に用いられることがある。
【0026】
本明細書で使用する「結合」という用語は、抗体と、予め決定された抗原または標的が結合すること、典型的には、リガンドとして抗体を使用し、分析物として抗原を使用してバイオレイヤー干渉法によって測定された場合に、1E-6Mもしくはそれ未満、例えば、5E-7Mもしくはそれ未満、1E-7Mもしくはそれ未満、例えば、5E-8Mもしくはそれ未満、例えば、1E-8Mもしくはそれ未満、例えば、5E-9Mもしくはそれ未満、または、例えば、1E-9Mもしくはそれ未満のKDに対応する結合親和性で結合し、予め決定された抗原または密接に関係している抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)に結合するための親和性の、少なくとも1/10、例えば、少なくとも1/100、例えば、少なくとも1/1,000、例えば、少なくとも1/10,000、例えば、少なくとも1/100,000のKDに対応する親和性で、予め決定された抗原に結合することを指す。
【0027】
本明細書で使用する「KD」(M)という用語は特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指し、kdをkaで割ることによって得られる。
【0028】
本明細書で使用する「kd」(sec-1)という用語は特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数を指す。この値はkoff値またはオフレート(off-rate)とも呼ばれる。
【0029】
本明細書で使用する「ka」(M-1×sec-1)という用語は特定の抗体-抗原相互作用の会合速度定数を指す。この値はkon値またはオンレート(on-rate)とも呼ばれる。
【0030】
「PD-L1」という用語は、本明細書で使用する場合、プログラム死リガンド1タンパク質をいう。PD-L1はヒトおよび他の種において見出され、従って、「PD-L1」という用語は、文脈と相反しない限り、ヒトPD-L1に限定されない。ヒトPD-L1配列、マカク(カニクイザル)PD-L1配列、アフリカゾウPD-L1配列、イノシシPD-L1配列、およびマウスPD-L1配列はそれぞれ、Genbankアクセッション番号NP_054862.1、XP_005581836、XP_003413533、XP_005665023、およびNP_068693によって見出される。ヒトPD-L1の配列もSEQ ID NO:28に示した。アミノ酸1~18はシグナルペプチドであると予測される。マカク(カニクイザル)PD-L1の配列もSEQ ID NO:29に示した。アミノ酸1~18はシグナルペプチドであると予測される。
【0031】
本明細書で使用する「CD137」という用語はヒト表面抗原分類137タンパク質を指す。CD137(4-1BB)はTNFRSF9とも呼ばれ、リガンドTNFSF9/4-1BBLの受容体である。CD137はT細胞活性化に関与すると考えられている。一態様では、CD137は、UniProtアクセッション番号Q07011を有するヒトCD137である。ヒトCD137の配列をSEQ ID NO:30にも示した。アミノ酸1~23はシグナルペプチドであると予測される。一態様において、CD137は、UniProtアクセッション番号A9YYE7-1を有するカニクイザル(マカカ・ファシキュラリス(Macaca fascicularis))CD137である。カニクイザルCD137の配列をSEQ ID NO:31に示した。アミノ酸1~23はaaシグナルペプチドであると予測される。イノシシ(サス スクロファ (Sus scrofa))CD137をSEQ ID NO:38に示した。アミノ酸1~23はaaシグナルペプチドであると予測される。アフリカゾウ(ロクソドンタ アフリカーナ(Loxodonta africana))CD137をSEQ ID NO:39に示した。アミノ酸1~23はaaシグナルペプチドであると予測される。
【0032】
「PD-L1抗体」または「抗PD-L1抗体」は、抗原PD-L1、特にヒトPD-L1に特異的に結合する、上記で説明した抗体である。
【0033】
「CD137抗体」または「抗CD137抗体」は、抗原CD137に特異的に結合する上記で説明した抗体である。
【0034】
「CD137×PD-L1抗体」、「抗CD137×PD-L1抗体」、「PD-L1×CD137抗体」、または「抗PD-L1×CD137抗体」は、2つの異なる抗原結合領域を含む二重特異性抗体であり、該抗原結合領域の1つは抗原PD-L1に特異的に結合し、かつ該抗原結合領域の1つはCD137に特異的に結合する。
【0035】
「二重特異性抗体」という用語は、少なくとも2つの異なる、典型的には、重複しないエピトープに対して特異性がある抗体を指す。このようなエピトープは同じ標的上にあってもよく、異なる標的上にあってもよい。本発明の場合、エピトープは同じ標的、すなわち、PD-L1および4-1BBの上にある。Fc領域を含む、異なるクラスの二重特異性抗体の例には、非対称性二重特異性分子、例えば、相補的CH3ドメインがあるIgG様分子、および対称性二重特異性分子、例えば、分子のそれぞれの抗原結合領域が少なくとも2つの異なるエピトープに結合する組換えIgG様二重標的化分子が含まれるが、これに限定されない。
【0036】
二重特異性分子の例には、Triomab(登録商標)(Trion Pharma/Fresenius Biotech, WO/2002/020039)、ノブズイントゥーホールズ(Knobs-into-Holes)(Genentech, WO1998/50431)、クロスMAb(CrossMAb)(Roche, WO2009/080251、WO2009/080252、WO2009/080253)、静電気的にマッチしたFcヘテロ二量体分子(electrostatically-matched Fc-heterodimeric molecule)(Amgen, EP1870459およびWO2009089004; Chugai, US201000155133; Oncomed, WO2010/129304)、LUZ-Y(Genentech)、DIGボディ(DIG-body)、PIGボディ(PIG-body)、およびTIGボディ(TIG-body)(Pharmabcine)、鎖交換操作ドメインボディ(Strand Exchange Engineered Domain body)(SEEDbody)(EMD Serono、WO2007110205)、二重特異性IgG1およびIgG2(Pfizer/Rinat, WO2011/143545)、アザイメトリックスキャフォールド(Azymetric scaffold)(Zymeworks/Merck、WO2012058768)、mAb-Fv(Xencor, WO2011/028952)、XmAb(Xencor)、二価二重特異性抗体(Roche, WO2009/080254)、二重特異性IgG(Eli Lilly)、DuoBody(登録商標)分子(Genmab A/S, WO2011/131746)、DuetMab(Medimmune, US2014/0348839)、Biclonics(Merus, WO2013/157953)、NovImmune(κλBodies, WO2012/023053)、FcΔAdp(Regeneron, WO2010/151792)、(DT)-Ig(GSK/Domantis)、トゥーインワン抗体(Two-in-one Antibody)またはデュアルアクションFab(Dual Action Fab)(Genentech, Adimab)、mAb2(F-Star, WO2008/003116)、Zybody(登録商標)分子(Zyngenia)、CovXボディ(CovX-body)(CovX/Pfizer)、FynomAbs(Covagen/Janssen Cilag)、DutaMab(Dutalys/Roche)、iMab(MedImmune)、デュアル可変ドメイン(Dual Variable Domain)(DVD)-IgTM(Abbott)、デュアルドメインダブルヘッド抗体(dual domain double head antibodies)(Unilever; Sanofi Aventis, WO2010/0226923)、Ts2Ab(MedImmune/AZ)、BsAb(Zymogenetics)、HERCULES(Biogen Idec, US7,951,918)、scFv融合(Genentech/Roche, Novartis, Immunomedics, Changzhou Adam Biotech Inc, CN 102250246)、TvAb(Roche, WO2012/025525、WO2012/025530)、ScFv/Fc融合、SCORPION(Emergent BioSolutions/Trubion, Zymogenetics/BMS)、インターセプター(Interceptor)(Emergent)、デュアルアフィニティリターゲティングテクノロジー(Dual Affinity Retargeting Technology)(Fc-DARTTM)(MacroGenics、WO2008/157379、WO2010/080538)、BEAT(Glenmark)、ジダイアボディ(Di-Diabody)(Imclone/Eli Lilly)および化学架橋mAb(Karmanos Cancer Center)、ならびに共有結合により融合したmAb(AIMM therapeutics)が含まれるが、これに限定されない。
【0037】
本発明の文脈において、「一価抗体」という用語は、抗原結合ドメインが1つしかない(例えば、1つのFabアーム)、抗原の特異的エピトープと相互作用することができる抗体分子を指す。二重特異性抗体の文脈において、「一価抗体結合」とは、二重特異性抗体が、たった1つの抗原結合ドメイン(例えば、1つのFabアーム)を用いて、抗原上にある1つの特異的エピトープに結合することを指す。
【0038】
本発明の文脈において、「単一特異性抗体」という用語は、1つのエピトープとの結合特異性しかない抗体を指す。前記抗体は単一特異性一価抗体(すなわち、抗原結合領域が1つしかない)でもよく、単一特異性二価抗体(すなわち、同一の抗原結合領域が2つある抗体)でもよい。
【0039】
「二重特異性抗体」という用語は、同一でない2つの抗原結合ドメイン、例えば、同一でない2つのFabアームまたは2つの、同一でないCDR領域を有するFabアームを有する抗体を指す。本発明の文脈において、二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する特異性を有する。このようなエピトープは同じ抗原上または標的上にあってもよく、異なる抗原上または標的上にあってもよい。エピトープが異なる抗原上にあれば、このような抗原は同じ細胞の表面にあってもよく、異なる細胞、細胞タイプまたは構造、例えば、細胞外マトリックスまたは小胞および可溶性タンパク質の表面にあってもよい。従って、二重特異性抗体は、複数の抗原、例えば、2つの異なる細胞を架橋することができる可能性がある。
【0040】
「二価抗体」という用語は、2つの抗原結合領域がある抗体を指し、これらの抗原結合領域は、1種類もしくは2種類の標的上もしくは抗原上にあるエピトープに結合するか、または同じ抗原上にある1種類もしくは2種類のエピトープに結合する。従って、二価抗体は単一特異性の二価抗体でもよく、二重特異性の二価抗体でもよい。
【0041】
本明細書で使用する「モノクローナル抗体」、「モノクローナルAb」、「モノクローナル抗体組成物」、「mAb」などという用語は、分子組成が1種類しかない抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、ある特定のエピトープに対して結合特異性および親和性を1つしか示さない。従って、「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する、結合特異性を1つしか示さない抗体をいう。ヒトモノクローナル抗体は、トランスジェニック非ヒト動物またはトランスクロモソーム非ヒト動物、例えば、ヒト重鎖トランスジーンと軽鎖トランスジーンを含むゲノムを有するトランスジェニックマウスから得られたB細胞が不死化細胞と融合したハイブリドーマから産生することができる。モノクローナル抗体はまた、組み替えにより改変された宿主細胞から産生されてもよく、前記抗体をコードする核酸配列のインビトロ転写および/または翻訳を支持する細胞抽出物を用いる系から産生されてもよい。
【0042】
「完全長抗体」という用語は本明細書において用いられる場合には、このアイソタイプの野生型抗体の重鎖-軽鎖対に通常見出される一対または二対の重鎖および軽鎖を含む抗体であって、それぞれの鎖が全ての、重鎖および軽鎖の定常ドメインおよび可変ドメインを含む、抗体(例えば、親抗体または変種抗体)を指す。完全長変種抗体において、重鎖および軽鎖の定常ドメインおよび可変ドメインは、特に、完全長親抗体または野生型抗体と比較して抗体の機能的特性を改善するアミノ酸置換を含む場合がある。本発明による完全長抗体は、(i)CDR配列を、完全重鎖配列および完全軽鎖配列を含む適切なベクターにクローニングする工程、ならびに(ii)完全重鎖配列および完全軽鎖配列を適切な発現系において発現させる工程を含む方法によって産生され得る。CDR配列または完全可変領域配列のいずれかからとりかかった場合に完全長抗体を産生することは当業者の知識の範囲内である。従って、当業者は、本発明による完全長抗体を作製するやり方を知っていると考えられる。
【0043】
本明細書で使用する「キメラ抗体」という用語は、可変領域が非ヒト種に由来し(例えば、げっ歯類に由来する)、定常領域が異なる種、例えば、ヒトに由来する抗体を指す。抗体免疫原性を低減するために、治療用途のためのキメラモノクローナル抗体が開発される。
【0044】
本明細書で使用する「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域およびフレームワーク領域と、ヒト免疫グロブリン定常ドメインとを有する抗体を含むことが意図される。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム変異誘発もしくは部位特異的変異誘発によって導入される、またはインビボでの体細胞変異によって導入される変異、挿入、または欠失)を含んでもよい。しかしながら、本明細書で使用する「ヒト抗体」という用語は、マウスなどの別の非ヒト種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことは意図されない。
【0045】
本明細書で使用する「ヒト化抗体」という用語は、ヒト抗体定常ドメインと、ヒト可変ドメインに対して高レベルの配列相同性を含むように改変された非ヒト可変ドメインとを含有する、遺伝子操作された非ヒト抗体を指す。これは、一緒になって抗原結合部位を形成する6つの非ヒト抗体相補性決定領域(CDR)を相同なヒトアクセプターフレームワーク領域(FR)とつなぎ合わせることによって成し遂げることができる(WO92/22653およびEP0629240を参照されたい)。親抗体の結合親和性および特異性を完全に再現するために、親抗体(すなわち、非ヒト抗体)に由来するフレームワーク残基をヒトフレームワーク領域に代入(復帰突然変異)することが必要な場合がある。構造的相同性モデリングが、抗体の結合特性に重要なフレームワーク領域にあるアミノ酸残基を特定するのに役立つ場合がある。従って、ヒト化抗体は、非ヒトCDR配列、主として、非ヒトアミノ酸配列への1つまたは複数のアミノ酸復帰突然変異を任意で含むヒトフレームワーク領域と、完全ヒト定常領域とを含んでもよい。任意で、好ましい特徴、例えば、親和性および生化学的特性を有するヒト化抗体を得るために、さらなるアミノ酸修飾が適用される場合があるが、この修飾は必ずしも復帰突然変異であるとは限らない。
【0046】
本明細書で使用する「Fc領域」という用語は、抗体のN末端からC末端の方向に、少なくとも、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含む領域を指す。抗体のFc領域は、免疫グロブリンと、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)を含む宿主組織または因子および補体系の成分との結合を媒介し得る。
【0047】
本明細書で使用する「ヒンジ領域」という用語は免疫グロブリン重鎖のヒンジ領域を指す。従って、例えば、ヒトIgG1抗体のヒンジ領域は、Kabat Kabat, E.A. et al., Sequences of proteins of immunological interest. 5th Edition - US Department of Health and Human Services, NIH publication No. 91-3242, pp 662,680,689 (1991)に示したEuナンバリングに従うアミノ酸216-230に対応する。しかしながら、ヒンジ領域また、本明細書に記載の他のサブタイプのどのヒンジ領域でもよい。
【0048】
本明細書で使用する「CH1領域」または「CH1ドメイン」という用語は免疫グロブリン重鎖のCH1領域を指す。従って、例えば、ヒトIgG1抗体のCH1領域は、Kabat(同上)に示したEuナンバリングに従うアミノ酸118-215に対応する。しかしながら、CH1領域はまた、本明細書に記載の他のサブタイプのどのCH1領域でもよい。
【0049】
本明細書で使用する「CH2領域」または「CH2ドメイン」という用語は免疫グロブリン重鎖のCH2領域を指す。従って、例えば、ヒトIgG1抗体のCH2領域は、Kabat(同上)に示したEuナンバリングに従うアミノ酸231-340に対応する。しかしながら、CH2領域はまた、本明細書に記載の他のサブタイプのどのCH2領域でもよい。
【0050】
本明細書で使用する「CH3領域」または「CH3ドメイン」という用語は免疫グロブリン重鎖のCH3領域を指す。従って、例えば、ヒトIgG1抗体のCH3領域は、Kabat(同上)に示したEuナンバリングに従うアミノ酸341-447に対応する。しかしながら、CH3領域はまた、本明細書に記載の他のサブタイプのどのCH3領域でもよい。
【0051】
「エピトープ」という用語は、抗体の抗原結合領域(「パラトープ」)に結合することができるタンパク質決定基を意味する。エピトープは、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の表面グループからなり、通常、特異的な三次元構造特性ならびに特異的な電荷特性を有する。コンホメーションエピトープおよび非コンホメーションエピトープは変性溶媒の存在下では前者への結合が失われ、後者への結合が失われないという点で区別される。エピトープマッピング法によって「構造的エピトープ」または「機能的エピトープ」を決定することができる。構造的エピトープは、抗体と直接接触しており、例えば、構造ベースの方法、例えば、X線結晶学によって評価することができる構造内にある残基と定義される。構造的エピトープは、抗体の結合に直接関与するアミノ酸残基、および結合に直接関与しない他のアミノ酸残基、例えば、抗体によって効果的にブロックされるか、または覆われるアミノ酸残基(言い換えると、このアミノ酸残基は抗体のフットプリント(footprint)の中にある)を含むことがある。機能的エピトープは、抗原-抗体結合相互作用にエネルギー的に寄与し、例えば、部位特異的変異誘発、例えば、アラニンスキャニング(Cunningham, B. C., & Wells, J. A. (1993) Journal of Molecular Biology; Clackson, T., & Wells, J. (1995) Science, 267(5196), 383-386)によって評価することができる残基と定義される。機能的エピトープは、抗体の結合に直接関与するアミノ酸残基ならびに結合に直接関与しない他のアミノ酸残基、例えば、直接相互作用に関与する残基の場所に対してコンホメーション変化を引き起こすアミノ酸残基を含んでもよい(Greenspan, N. S., & Di Cera, E. (1999) Nature Biotechnology, 17(10), 936-937)。抗体-抗原相互作用の場合、機能的エピトープは抗体分子を互いに区別するのに用いられる場合がある。
【0052】
本明細書で使用する「Fcエフェクター機能」または「Fc媒介エフェクター機能」という用語は、ポリペプチドまたは抗体と、細胞膜上にあるその標的、例えば、抗原が結合し、その後に、IgG Fcドメインが自然免疫系の分子(例えば、可溶性分子または膜結合型分子)と相互作用した結果である機能を指すことが意図される。Fcエフェクター機能の例には、(i)C1q結合、(ii)補体活性化、(iii)補体依存性細胞障害(CDC)、(iv)抗体依存性細胞性細胞障害(ADCC)、(v)Fc-γ受容体結合、(vi)抗体依存性細胞性食作用(ADCP)、(vii)補体依存性細胞障害(CDCC)、(viii)補体強化細胞障害(complement-enhanced cytotoxicity)、(ix)抗体によって媒介されるオプソニン化抗体の補体受容体との結合、(x)オプソニン化、および(xi)(i)~(x)のいずれかの組み合わせが含まれる。
【0053】
「アミノ酸」および「アミノ酸残基」という用語は本明細書において互換的に用いられることがあり、限定するものと理解してはならない。アミノ酸は、各アミノ酸に特有の側鎖(R基)とともに、アミン(-NH2)とカルボキシル(-COOH)官能基を含有する有機化合物である。本発明の文脈において、アミノ酸は構造および化学的特徴に基づいて分類され得る。従って、アミノ酸クラスは以下の表の一方または両方に反映され得る。
【0054】
R基の構造および一般的な化学的特徴決定に基づいた主な分類
【0055】
【0056】
あるアミノ酸を別のアミノ酸で置換することは保存的置換または非保存的置換で分類される場合がある。本発明の文脈において、「保存的置換」とは、あるアミノ酸を、類似する構造的特徴および/または化学的特徴をもつ別のアミノ酸で置換することである。このように、上記の2つの表のいずれかにおいて定義された、あるアミノ酸残基の、同じクラスの別のアミノ酸残基への置換:例えば、ロイシンとイソロイシンは両方とも脂肪族の分枝疎水性物質であるので、ロイシンはイソロイシンで置換され得る。同様に、アスパラギン酸とグルタミン酸は両方とも小さな負に荷電した残基であるので、アスパラギン酸はグルタミン酸で置換され得る。
【0057】
本発明の文脈において、抗体中の置換は、
元のアミノ酸-位置-置換されたアミノ酸
として示される。十分に認識されたアミノ酸名称に関して、任意のアミノ酸残基を示すために表記「Xaa」または「X」を含めて三文字表記または一文字表記が用いられる。従って、XaaまたはXは、典型的には、20種類の天然アミノ酸の任意のアミノ酸であり得る。本明細書で使用する「天然の」という用語は、以下のアミノ酸残基;グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン、メチオニン、およびシステインのいずれか1つを指す。従って、「K409R」または「Lys409Arg」という表記は、抗体がアミノ酸位置409においてリジンからアルギニンへの置換を含むことを意味する。
【0058】
ある特定の位置にあるアミノ酸の、他の任意のアミノ酸への置換は、
元のアミノ酸-位置;または、例えば「K409」
と呼ばれる。
【0059】
元のアミノ酸および/または置換されたアミノ酸が複数のアミノ酸を含むが、全てのアミノ酸を含むわけではない修飾については、複数のアミノ酸は「,」または「/」で区切られている場合がある。例えば、位置409にあるリジンの、アルギニン、アラニン、またはフェニルアラニンへの置換は、「Lys409Arg、Ala、Phe」または「Lys409Arg/Ala/Phe」または「K409R、A、F」または「K409R/A/F」または「K409からR、A、またはF」である。
【0060】
このような名称は本発明の文脈において互換的に用いられることがあるが、同じ意味および同じ目的を有する。
【0061】
さらに、「置換」という用語は、任意の1つもしくは他の19種類の天然アミノ酸または他のアミノ酸、例えば、非天然アミノ酸で置換することを包含する。例えば、位置409にあるアミノ酸Kの置換は、以下の置換:409A、409C、409D、409E、409F、409G、409H、409I、409L、409M、409N、409Q、409R、409S、409T、409V、409W、409P、および409Yのそれぞれを含む。ところで、これは名称409Xと同じであり、Xは、元のアミノ酸以外の任意のアミノ酸を示す。これらの置換はまたK409A、K409Cなど、またはK409A,Cなど、またはK409A/C/などと呼ばれることもある。このような置換のいずれか1つを本明細書において個別に含めるために、同じことが、本明細書において言及された全ての位置一つ一つに類推によって当てはまる。
【0062】
本発明による抗体はまたアミノ酸残基の欠失も含む場合がある。このような欠失は「del」と示される場合があり、例えば、K409delと書くことを含む。従って、このような態様において、位置409のリジンはアミノ酸配列から欠失されている。
【0063】
本発明の目的において、2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、EMBOSSパッケージのNeedleプログラム(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice et al., 2000, Trends Genet. 16: 276-277)、好ましくは、バージョン5.0.0以降に実装されているNeedleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48: 443-453)を用いて求められる。使用されるパラメータは、ギャップオープンペナルティ10、ギャップエクステンションペナルティ0.5、およびEBLOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換行列(substitution matrix)である。(-nobriefオプションを用いて得られる)「最長の同一性(longest identity)」と表示されるNeedleの出力はパーセント同一性として用いられ、以下の通りに算出される。
(同一残基数×100)/(アラインメントの長さ - アラインメントにおけるギャップの総数)
【0064】
BLASTプログラム(例えば、標準的な設定であるBLOSUM62、オープンギャップ=11、およびエクステンディッドギャップ(Extended Gap)=1を用いた、NCBIを介して入手可能なBLAST2.2.8)を用いて求められる類似性スコアによって、類似残基の保持も測定されることがある、または類似残基の保持が代わりに測定されることがある。適切な変種は、典型的には、親配列に対して少なくとも約45%、例えば、少なくとも約55%、少なくとも約65%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、またはそれ以上(例えば、約99%)の類似性を示す。
【0065】
本発明の文脈において、「PD-L1とPD-1の結合の阻害」とは、PD-L1に結合することができる抗体の存在下での、PD-L1とPD-1の結合の任意の検出可能に有意な低下を指す。典型的に、阻害は、抗PD-L1抗体の存在によって引き起こされる、PD-L1とPD-1の結合の少なくとも約10%低下、例えば、少なくとも約15%、例えば、少なくとも約20%、例えば、少なくとも40%低下を意味する。PD-L1とPD-1の結合の阻害は任意の適切な技法によって測定されることができる。一態様において、阻害は、本明細書中の実施例6に記載のように測定される。
【0066】
「処置」という用語は、症状または疾患状態を和らげる、寛解させる、停止する、または根絶する(治癒する)目的で、有効量の本発明の薬学的組成物を投与すること指す。
【0067】
「有効量」または「治療的有効量」という用語は、望ましい治療結果を実現するのに有効な量、望ましい治療結果を実現するのに必要な投与量および期間を指す。結合物質、例えば、抗体、特に、二重特異性抗体の治療的有効量は、要因、例えば、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに結合物質が個体において望ましい応答を誘発する能力に従って変化する場合がある。治療的有効量はまた、治療上有益な作用が抗体または抗体部分の毒性作用または有害作用より勝っている量でもある。
【0068】
第1の局面において、本発明は、
a. ヒトCD137(4-1BB)に結合する第1の抗原結合領域と、ヒトPD-L1(CD274)に結合する第2の抗原結合領域とを含む結合物質であって、
- 第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:15に示したアミノ酸配列中に存在する3つの相補性決定領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む第1の重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:16に示したアミノ酸配列中に存在する3つの相補性決定領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む第1の軽鎖可変領域(VL)とを含み、
- 第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:17に示したアミノ酸配列中に存在する3つの相補性決定領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む第2の重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:21に示したアミノ酸配列中に存在する3つの相補性決定領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む第2の軽鎖可変領域(VL)とを含む、
結合物質、
b. ヒスチジン緩衝液、
c. 約100~約400mMの糖、ならびに
d. 約0.001~約0.1%(w/v)の非イオン性界面活性剤
を含み、かつ約4.5~約6.5のpHを有する、薬学的製剤に関する。
【0069】
本発明による薬学的製剤に含まれる結合物質は、ある細胞にあるCD137に結合すると同時に、別の細胞の表面にあるPD-L1に同時に結合することで増殖を活性化および/または誘導し得る。ヒトでは、CD137は活性化T細胞、例えばCD8+T細胞およびCD4+T細胞の表面に発現しているのに対して、PD-L1は、主に、抗原提示細胞(APC)、例えば、樹状細胞または腫瘍細胞の表面に発現している。従って、CD137とPD-L1の両方に結合することができる本発明による結合物質、例えば、二重特異性抗体はT細胞とAPCまたはT細胞と腫瘍細胞に同時結合することができる。従って、本発明による製剤中の結合物質は、APCとT細胞との間の細胞間相互作用を、これらの細胞の表面にあるPD-L1とCD137に同時結合することによって媒介する可能性がある。従って、これにより抗原特異的T細胞が増殖する可能性がある。さらに、本発明による製剤中に存在する結合物質は、腫瘍細胞とT細胞との間の細胞間相互作用を、腫瘍細胞の表面にあるPD-L1とT細胞の表面にあるCD137の同時結合によって媒介する可能性がある。従って、これにより、T細胞の表面にあるCD137に結合することで腫瘍細胞の存在下でT細胞がさらに活性化される可能性があり、その一方で、腫瘍細胞の表面にあるPD-L1に結合することでT細胞と腫瘍細胞は近接する。従って、腫瘍細胞の存在下でT細胞が活性化されるとT細胞による腫瘍細胞の死滅が増加する可能性がある。さらに、本発明による製剤中の結合物質のPD-L1抗原結合領域が、腫瘍細胞の表面にあるPD-L1とT細胞の表面にあるPD-1との結合を阻害する能力により、腫瘍細胞はT細胞阻害を誘導し、それによって、活性化T細胞の抗腫瘍作用から逃げることができなくなる。
【0070】
従って、本発明の結合物質、例えば二重特異性抗体は、T細胞の再活性化から利益を得ることができる疾患、例えばがんの処置に用いられてもよい。
【0071】
前記薬学的製剤は、1~100mMのヒスチジン、例えば、5~100mM、10~100mM、15~100mM、5~90mM、5~80mM、5~70mM、5~60mM、5~50mM、5~40mM、5~30mM、10~90mM、10~80mM、10~70mM、10~60mM、10~50mM、10~40mM、10~30mM、15~90mM、15~80mM、15~70mM、15~60mM、15~50mM、15~40mM、15~30mM、または15~20mMのヒスチジンを含んでもよい。
【0072】
前記薬学的製剤は、特に、約20mMのヒスチジン、例えば、20mMのヒスチジンを含んでもよい。
【0073】
前記薬学的製剤は、100~400mMの糖、例えば、125~400mM、150~400mM、150~400mM、175~400mM、200~400mM、225~400mM、100~375mM、100~350mM、100~325mM、100~300mM、125~375mM、125~350mM、125~325mM、125~300mM、125~275mM、150~375mM、150~350mM、150~325mM、150~300mM、150~275mM、175~375mM、175~350mM、175~325mM、175~300mM、175~275mM、200~375mM 1、200~350mM 1、200~325mM、200~300mM、200~275mM、225~375mM、225~350mM、225~325mM、225~300mM、または、例えば、225~275mMの糖を含んでもよい。
【0074】
特に、前記薬学的製剤は、約250mMの糖、例えば、250mMの糖を含んでもよい。例示的な糖には、グルコース、ガラクトース、スクロース、およびトレハロース脱水和物が含まれる。糖は特にスクロースでもよい。
【0075】
本明細書において開示される薬学的製剤は、0.005~0.1%(w/v)の非イオン性界面活性剤、例えば、0.01~0.1%(w/v)、0.015~0.1%(w/v)、0.001~0.09%(w/v)、0.001~0.08%(w/v)、0.001~0.07%(w/v)、0.001~0.06%(w/v)、0.001~0.05%(w/v)、0.001~0.04%(w/v)、0.001~0.02%(w/v)、0.005~0.1%(w/v)、0.005~0.09%(w/v)、0.005~0.08%(w/v)、0.005~0.07%(w/v)、0.005~0.06%(w/v)、0.005~0.05%(w/v)、0.005~0.04%(w/v)、0.005~0.03%(w/v)、0.005~0.02%(w/v)、0.01~0.09%(w/v)、0.01~0.08%(w/v)、0.01~0.07%(w/v)、0.01~0.06%(w/v)、0.01~0.05%(w/v)、0.01~0.04%(w/v)、0.01~0.03%(w/v)、0.01~0.02%(w/v)、0.015~0.09%(w/v)、0.015~0.08%(w/v)、0.015~0.07%(w/v)、0.015~0.06%(w/v)、0.015~0.05%(w/v)、0.015~0.04%(w/v)、0.015~0.03%(w/v)、または、例えば、0.015~0.02%(w/v)の非イオン性界面活性剤を含んでもよい。
【0076】
特に、前記薬学的製剤は、約0.02%(w/v)の非イオン性界面活性剤、例えば、0.02%(w/v)の非イオン性界面活性剤を含んでもよい。
【0077】
非イオン性界面活性剤は、2-[2-[3,4-bis(2-ヒドロキシエトキシ)オキソラン-2-イル]-2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル(E)-オクタデカ-9-エノエート(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート;ポリソルベート80)、または2-[2-[3,4-bis(2-ヒドロキシエトキシ)オキソラン-2-イル]-2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチルドデカノエート(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート;ポリソルベート20)より選択されてもよい。
【0078】
前記薬学的製剤は、4.5~6.5、例えば、4.7~6.5、例えば、4.9~6.5、5.1~6.5、5.3~6.5、4.5~6.3、4.7~6.1、4.7~5.9、4.7~5.7、5.1~6.3、4.7~6.1、4.7~5.9、4.7~5.7、4.9~6.3、4.9~6.1、4.9~5.9、4.9~5.7、5.1~6.3、5.1~6.1、5.1~5.9、5.1~5.7、5.3~6.3、5.3~6.1、5.3~5.9、例えば、5.3~5.7のpHを有してもよい。
【0079】
現在好ましい態様において、本発明による薬学的製剤は、約5.5のpH、例えば、5.5.のpHを有する。
【0080】
前記薬学的製剤は、5~200mg/mLの結合物質、例えば、10~200mg/mL、20~200mg/mL、40~200mg/mL、60~200mg/mL、80~200mg/mL、100~200mg/mL、120~200mg/mL、150~200mg/mL、5~150mg/mL、10~150mg/mL、20~150mg/mL、40~150mg/mL、60~150mg/mL、80~150mg/mL、100~150mg/mL、5~130mg/mL、10~130mg/mL、20~130mg/mL、40~130mg/mL、60~130mg/mL、80~130mg/mL、100~130mg/mL、5~100mg/mLの結合物質、10~100mg/mL、15~100mg/mL、20~100mg/mL、30~100mg/mL、40~100mg/mL、50~100mg/mL、60~100mg/mL、5~80mg/mL、5~60mg/mL、5~50mg/mL、5~40mg/mL、5~30mg/mL、5~20mg/mL、10~80mg/mL、10~60mg/mL、10~50mg/mL、10~40mg/mL、10~30mg/mL、15~80mg/mL、15~60mg/mL、15~40mg/mL、または、例えば、15~25mg/mLの結合物質を含んでもよい。
【0081】
(i)約20mg/mL、例えば、約40mg/mL、約60mg/mL、約80mg/mL、約100mg/mL、約120mg/mL、または約140mg/mLの結合物質と、
(ii)約20mMのヒスチジン、約250mMの糖、および約0.02%(w/v)の非イオン性界面活性剤と
を含み、かつpH約5.5を有する、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的製剤。
【0082】
特に、本明細書において提供される薬学的製剤は約20mg/mLの結合物質、例えば、20mg/mLの結合物質を含んでもよい。
【0083】
前記製剤は、特に、約20mg/mLの結合物質、約20mMのヒスチジン、約250mMの糖、および約0.02%(w/v)の非イオン性界面活性剤を含んでもよく、pH約5.5を有する。
【0084】
前記薬学的製剤は、
(i)20mg/mL、例えば、40mg/mL、60mg/mL、80mg/mL、100mg/mL、120mg/mL、または140mg/mLの結合物質と、
(ii)20mMのヒスチジン、250mMの糖、および0.02%(w/v)の非イオン性界面活性剤と
を含んでもよく、かつpH5.5を有する。
【0085】
現在好ましい一態様において、本発明による薬学的製剤は、20mg/mLの結合物質、20mMのヒスチジン、250mMの糖、および0.02%(w/v)の非イオン性界面活性剤を含み、pH約5.5を有する。
【0086】
好ましくは、本発明による薬学的製剤は、-65℃で12時間の凍結とそれに続く25℃で12時間の融解からなる凍結融解サイクル5回に供された後に、2000~3750ルクスの強さの照度で黒色を背景にしておよび白色を背景にして行われたビジブル粒子計数によって測定された場合にビジブル粒子を本質的に含まない。
【0087】
前記薬学的製剤が含む結合物質は、特に、抗体、例えば、二重特異性抗体でもよい。
【0088】
上記で定義された可変領域はそれぞれ、3つの相補性決定領域のCDR1、CDR2、およびCDR3と、4つのフレームワーク領域のFR1、FR2、FR3、およびFR4とを含んでもよい。
【0089】
前記薬学的製剤において、前記相補性決定領域および前記フレームワーク領域はアミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置されている。
【0090】
本発明の一態様において、結合物質、特に、抗体、例えば、二重特異性抗体の形をとる結合物質は、相補性決定領域およびフレームワーク領域がアミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:HFR1、HCDR1、HFR2、HCDR2、HFR3、HCDR3、HFR4で配置されている重鎖可変領域を含む。
【0091】
本発明の一態様において、結合物質、特に、抗体、例えば、二重特異性抗体の形をとる結合物質は、相補性決定領域およびフレームワーク領域がアミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:LFR1、LCDR1、LFR2、LCDR2、LFR3、LCDR3、LFR4で配置されている軽鎖可変領域を含む。
【0092】
前記薬学的製剤において、
- 第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO: 9に示したCDR1配列、SEQ ID NO: 10に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO: 11に示したCDR3配列を含む第1の重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO: 13に示したCDR1配列、GASとしてCDR2配列、およびSEQ ID NO:14に示したCDR3配列を含む第1の軽鎖可変領域(VL)とを含んでもよく、かつ
- 第2の抗原結合領域は、SEQ ID NO:18に示したCDR1配列、SEQ ID NO:19に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:20に示したCDR3配列を含む第2の重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:22に示したCDR1配列、DDNとして示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:23に示したCDR3配列を含む第2の軽鎖可変領域(VL)とを含んでもよい。
【0093】
本発明はまた、抗体が本願の実施例に開示される重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む製剤も提供する。実施例に開示されるVL領域、VH領域の機能的変種を含む抗体の製剤も提供される。抗体の文脈において用いられるVLまたはVHの機能的変種を用いても、抗体は、少なくとも、「参照」または「親」抗体の親和性および/または特異性/選択性のかなりの割合(少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上)を依然として保持することができ、場合によっては、このような抗体は親抗体よりも大きな親和性、選択性、および/または特異性と関連する場合がある。このような機能的変種は典型的には親抗体に対してかなりの配列同一性を保持している。
【0094】
従って、本発明による薬学的製剤は、
- 第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:15に示した配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する第1の重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:16に示した配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する第1の軽鎖可変領域(VL)とを含み、かつ
- 第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:17に示した配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する第2の重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO: 21に示した配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する第2の軽鎖可変領域(VL)とを含む、薬学的製剤でもよい。
【0095】
さらに、本開示による薬学的製剤は、
- 第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:9に示したCDR1配列、SEQ ID NO:10に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:11に示したCDR3配列を含む第1の重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:13に示したCDR1配列、GASとして示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:14に示したCDR3配列を含む第1の軽鎖可変領域(VL)とを含み、第1の重鎖可変領域が、SEQ ID NO:15に示した配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有し、第1の軽鎖可変領域が、SEQ ID NO:16に示した配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有し、かつ
- 第2の抗原結合領域が、SEQ ID NO:18に示したCDR1配列、SEQ ID NO:19に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:20に示したCDR3配列を含む第2の重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:22に示したCDR1配列、DDNとして示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:23に示したCDR3配列を含む第2の軽鎖可変領域(VL)とを含み、第2の重鎖可変領域が、SEQ ID NO:17に示した配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有し、第2の軽鎖可変領域が、SEQ ID NO:21に示した配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する、
薬学的製剤でもよい。
【0096】
本発明による薬学的製剤は、
a. ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域が、
- SEQ ID NO:15に示した配列、または、SEQ ID NO:15に示した配列と比較して20個までのアミノ酸残基、例えば、19個までの、18個までの、17個までの、16個までの、15個までの、14個までの、13個までの、12個までの、11個までの、10個までの、9個までの、8個までの、7個までの、6個までの、5個までの、4個までの、3個までの、2個までの、1個までのアミノ酸残基が改変されている配列を含む、第1の重鎖可変領域であって、第1の重鎖可変領域(VH)が、SEQ ID NO:9に示したCDR1配列、SEQ ID NO:10に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:11に示したCDR3配列を含む、第1の重鎖可変領域と、
- SEQ ID NO:16に示した配列、または、SEQ ID NO:16に示した配列と比較して20個までのアミノ酸残基、例えば、19個までの、18個までの、17個までの、16個までの、15個までの、14個までの、13個までの、12個までの、11個までの、10個までの、9個までの、8個までの、7個までの、6個までの、5個までの、4個までの、3個までの、2個までの、1個までのアミノ酸残基が改変されている配列を含む、第1の軽鎖可変領域であって、第1の軽鎖可変領域(VL)が、SEQ ID NO:13に示したCDR1配列、GASとして示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:14に示したCDR3配列を含む、第1の軽鎖可変領域と
を含み、かつ
b. ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域が、
- SEQ ID NO:17に示した配列、または、SEQ ID NO:17に示した配列と比較して20個までのアミノ酸残基、例えば、19個までの、18個までの、17個までの、16個までの、15個までの、14個までの、13個までの、12個までの、11個までの、10個までの、9個までの、8個までの、7個までの、6個までの、5個までの、4個までの、3個までの、2個までの、1個までのアミノ酸残基が改変されている配列を含む、第2の重鎖可変領域であって、第2の重鎖可変領域(VH)が、SEQ ID NO:18に示したCDR1配列、SEQ ID NO:19に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:20に示したCDR3配列を含む、第2の重鎖可変領域と、
- SEQ ID NO:21に示した配列、または、SEQ ID NO:21に示した配列と比較して20個までのアミノ酸残基、例えば、19個までの、18個までの、17個までの、16個までの、15個までの、14個までの、13個までの、12個までの、11個までの、10個までの、9個までの、8個までの、7個までの、6個までの、5個までの、4個までの、3個までの、2個までの、1個までのアミノ酸残基が改変されている配列を含む、第2の軽鎖可変領域であって、第2の軽鎖可変領域(VL)が、SEQ ID NO:22に示したCDR1配列、DDNとして示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:23に示したCDR3配列を含む、第2の軽鎖可変領域と
を含む、
薬学的製剤でもよい。
【0097】
特定の態様において、上記で言及されたアミノ酸残基の修飾は、アミノ酸置換、例えば、保存的アミノ酸置換でもよい。本開示に含まれるアミノ酸残基の他の修飾は、1つまたは複数のアミノ酸の欠失ならびに1つまたは複数のアミノ酸残基の付加および/または挿入を含む。
【0098】
さらに、本開示は、前記結合物質が、(i)前記第1の重鎖可変領域(VH)を含みかつ第1の重鎖定常領域(CH)をさらに含むポリペプチドと、(ii)前記第2の重鎖可変領域(VH)を含みかつ第2の重鎖定常領域(CH)をさらに含むポリペプチドとを含む薬学的製剤を提供する。
【0099】
本明細書において開示される薬学的組成物は、(i)前記第1の軽鎖可変領域(VL)を含みかつ第1の軽鎖定常領域(CL)をさらに含むポリペプチドと、(ii)前記第2の軽鎖可変領域(VL)を含みかつ第2の軽鎖定常領域(CL)をさらに含むポリペプチドとを含んでもよい。
【0100】
前記薬学的製剤は、結合物質、例えば、第1の結合アームと第2の結合アームとを含む抗体を含んでもよく、
a. 第1の結合アームは、(i)前記第1の重鎖可変領域(VH)および前記第1の重鎖定常領域(CH)を含むポリペプチドと、(ii)前記第1の軽鎖可変領域(VL)および前記第1の軽鎖定常領域(CL)を含むポリペプチドとを含み、かつ
b. 第2の結合アームは、(i)前記第2の重鎖可変領域(VH)および前記第2の重鎖定常領域(CH)を含むポリペプチドと、(ii)前記第2の軽鎖可変領域(VL)および前記第2の軽鎖定常領域(CL)を含むポリペプチドとを含む。
【0101】
本発明の特定の態様において、第1の抗原結合領域は、SEQ ID NO:30に示したヒトCD137、またはその成熟ポリペプチドに結合する。
【0102】
第1の抗原結合領域はまた、SEQ ID NO:31に示したカニクイザル(マカカ・ファシキュラリス)CD137、またはその成熟ポリペプチドに結合できる場合がある。ヒトCD137とカニクイザルCD137の両方に対して交差特異性(cross-specific)がある抗原結合領域があると、薬学的製剤中の結合物質はカニクイザルでの前臨床試験に適するようになる。
【0103】
本開示による薬学的製剤において、第2の抗原結合領域は、好ましくは、SEQ ID NO:28に示したヒトPD-L1、またはその成熟ポリペプチドに結合する。
【0104】
第2の抗原結合領域はまた、SEQ ID NO:29に示したカニクイザル(マカカ・ファシキュラリス)PD-L1、またはその成熟ポリペプチドに結合できる場合がある。
【0105】
さらに、第2の抗原結合領域はヒトPD-L1とヒトPD-1の結合を阻害できる場合がある。それによって、PD-1を介した抗腫瘍免疫をPD-L1が妨げるのを結合物質が阻止し得るので、上記のことは関心が高い。従って、結合物質は、T細胞がPD-1/PD-L1相互作用を介した阻害シグナルを受け取るのを阻止すると同時に、T細胞の増殖、活性化、エフェクター機能および記憶機能を強化するシグナル伝達をもたらす、CD137分子との結合を介した活性化シグナルを受け取るのを阻止する可能性がある。
【0106】
前記結合物質は完全長抗体の形をとってもよく、抗体断片の形をとってもよい。
【0107】
特に、前記結合物質、例えば、前記抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群より選択されるアイソタイプの抗体でもよい。
【0108】
本開示によれば、結合物質は完全長IgG1抗体である。
【0109】
様々な態様において、抗体は、IgG1抗体、さらに詳細にはIgG1、κまたはIgG1、ラムダアイソタイプ(すなわち、IgG1、κ、λ)、IgG2a抗体(例えば、IgG2a、κ、λ)、IgG2b抗体(例えば、IgG2b、κ、λ)、IgG3抗体(例えば、IgG3、κ、λ)、またはIgG4抗体(例えば、IgG4、κ、λ)である。
【0110】
本開示による薬学的製剤において、
a. CD137に結合する第1の抗原結合領域はキメラ抗体に由来してもよく、かつ/または
b. ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域はキメラ抗体に由来してもよい。
【0111】
または、前述の開示による薬学的製剤において、
a. CD137に結合する第1の抗原結合領域はヒト化抗体に由来してもよく、かつ/または
b. ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域はヒト化抗体に由来してもよい。
【0112】
別の選択肢として、
a. ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域はヒト抗体に由来してもよく、かつ/または
b. ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域はヒト抗体に由来してもよい。
【0113】
なおさらなる選択肢では、
a. ヒトCD137に結合する第1の抗原結合領域はヒト化抗体に由来してもよく、かつ/または
b. ヒトPD-L1に結合する第2の抗原結合領域はヒト抗体に由来してもよい。
【0114】
第1の抗原結合領域は特にウサギ抗体に由来してもよい。さらに、第1の抗原結合領域はヒト化抗体に由来してもよい。また、第1の結合アームは完全長抗体に由来してもよい。本発明の一態様において、第1の結合アームはモノクローナル抗体に由来する。第1の結合アームは完全長IgG1、λ(ラムダ)またはIgG1、κ(カッパ)抗体に由来してもよい。
【0115】
第2の抗原結合領域はラット抗体に由来してもよい。本発明の一態様において、第2の抗原結合領域はヒトである。または、第2の抗原結合領域はヒト化抗体に由来してもよい。また、第2の結合アームは完全長抗体に由来してもよい。本発明の一態様において、第2の結合アームはモノクローナル抗体に由来する。本発明の一態様において、第2の結合アームは完全長IgG1、λ(ラムダ)またはIgG1、κ(カッパ)抗体に由来する。第1の抗原結合領域および第2の抗原結合領域はヒト化抗体に由来してもよい。第1の抗原結合領域および第2の抗原結合領域はヒト抗体でもよい。第1の結合アームおよび第2の結合アームは完全長抗体、例えば、完全長IgG1、λ(ラムダ)またはIgG1、κ(カッパ)抗体に由来してもよい。第1の結合アームおよび第2の結合アームはモノクローナル抗体に由来してもよい。
【0116】
本発明の一態様において、第1の抗原結合領域はIgG1λに由来し、第2の抗原結合領域はIgG1κに由来する。
【0117】
二重特異性抗体の多くの異なる型および使用が当技術分野において公知であり、Kontermann; Drug Discov Today, 2015 Jul;20(7):838-47およびMAbs, 2012 Mar-Apr;4(2):182-97によって概説された。
【0118】
結合物質が二重特異性抗体である本発明の態様では、本開示は、どの特定の二重特異性型にも作製方法にも限定されない。
【0119】
本発明において用いられ得る二重特異性抗体分子の例は、(i)異なる抗原結合領域を含む2つのアームを有する単一抗体;(ii)例えば、余分なペプチドリンカーによって直列に連結された2つのscFvを介して、2つの異なるエピトープに対する特異性を有する単鎖抗体;(iii)それぞれの軽鎖および重鎖が、短いペプチド結合を介して2つの可変ドメインを直列に含む、二重-可変-ドメイン抗体(DVD-Ig)(Wu et al., Generation and Characterization of a Dual Variable Domain Immunoglobulin (DVD-Ig(商標)) Molecule, In:Antibody Engineering, Springer Berlin Heidelberg(2010));(iv)化学的に連結された二重特異性(Fab')2断片;(v)2つの単鎖ダイアボディが融合して、標的抗原のそれぞれに対して2つの結合部位を有する四価二重特異性抗体となった、Tandab;(vi)scFvとダイアボディとが組み合わされて多価分子となった、フレキシボディ;(vii)プロテインキナーゼAにある「二量体化・ドッキングドメイン」に基づく、いわゆる「ドック・ロック(dock and lock)」分子。これをFabに適用すると、2つ同一のFab断片が異なる1つのFab断片と連結した三価二重特異性結合タンパク質を得ることができる;(viii)いわゆる、スコーピオン分子。例えば、2つのscFvがヒトFabアームの両末端と融合しているスコーピオン分子;ならびに(ix)ダイアボディを含む。
【0120】
本発明の結合物質は、例えば、ダイアボディまたはクロスボディであってもよい。
【0121】
一態様において、本発明の結合物質は、制御されたFabアーム交換を介して得られた二重特異性抗体(例えば、WO2011131746(Genmab)に記載)である。
【0122】
本発明の文脈において適用可能であってもよい結合物質の異なるクラスの例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:(i)ヘテロ二量体化を強制する相補的CH3ドメイン分子を有するIgG様分子;(ii)トリオマブ(Triomab)/クアドロマ(Quadroma)分子(Trion Pharma/Fresenius Biotech; Roche, WO2011069104)、いわゆる、ノブイントゥホール(Knob-into-Hole)分子(Genentech, WO9850431)、CrossMAb(Roche, WO2011117329)および静電気的にマッチした分子(electrostatically-matched molecule)(Amgen, EP1870459およびWO2009089004; Chugai, US201000155133; Oncomed, WO2010129304)、LUZ-Y分子(Genentech, Wranik et al. J. Biol. Chem. 2012, 287(52): 43331-9, doi: 10.1074/jbc.M112.397869. Epub 2012 Nov 1)、DIG ボディおよびPIGボディ分子(Pharmabcine, WO2010134666, WO2014081202)、鎖交換操作ドメインボディ(Strand Exchange Engineered Domain body: SEEDbody)分子(EMD Serono, WO2007110205)、Biclonics分子(Merus, WO2013157953)、FcΔAdp分子(Regeneron, WO201015792)、二重特異性IgG1分子およびIgG2分子(Pfizer/Rinat, WO11143545)、Azymetricスキャフォールド分子(Zymeworks/Merck, WO2012058768)、mAb-Fv分子(Xencor, WO2011028952)、二価二重特異性抗体(WO2009080254)、ならびにデュオボディ(DuoBody)(登録商標)分子(Genmab, WO2011131746)を含むがこれに限定されない、組換え分子。
【0123】
組換えIgG様二重標的化分子の例には、二重標的化(Dual Targeting)(DT)-Ig分子(WO2009058383)、トゥーインワン抗体(Two-in-one Antibody)(Genentech; Bostrom, et al 2009. Science 323, 1610-1614.)、クロスリンクドMab (Cross-linked Mab)(Karmanos Cancer Center)、mAb2(F-Star, WO2008003116)、Zybody分子(Zyngenia; LaFleur et al. MAbs. 2013 Mar-Apr;5(2):208-18)、共通軽鎖を用いるアプローチ(Crucell/Merus, US7,262,028)、κλボディ(NovImmune, WO2012023053)、およびCovXボディ(CovX/Pfizer; Doppalapudi, V.R., et al 2007. Bioorg. Med. Chem. Lett. 17,501-506.)が含まれるが、これに限定されない。
【0124】
IgG融合分子の例には、二重可変ドメイン(Dual Variable Domain)(DVD)-Ig分子(Abbott, US7,612,181)、デュアルドメインダブルヘッド(Dual domain double head)抗体(Unilever; Sanofi Aventis, WO20100226923)、IgG様二重特異性分子(ImClone/Eli Lilly, Lewis et al. Nat Biotechnol. 2014 Feb;32(2):191-8)、Ts2Ab(MedImmune/AZ; Dimasi et al.J Mol Biol. 2009 Oct 30;393(3):672-92)、およびBsAb分子(Zymogenetics, WO2010111625)、ヘラクレス(HERCULES)分子(Biogen Idec, US007951918)、scFv融合分子(Novartis)、scFv融合分子(Changzhou Adam Biotech Inc, CN 102250246)、およびTvAb分子(Roche, WO2012025525, WO2012025530)が含まれるが、これに限定されない。
【0125】
Fc融合分子の例には、ScFv/Fc融合(Pearce et al., Biochem Mol Biol Int. 1997 Sep;42(6):1179-88)、スコーピオン分子(Emergent BioSolutions/Trubion, Blankenship JW, et al. AACR 100th Annual meeting 2009 (Abstract # 5465); Zymogenetics/BMS, WO2010111625)、デュアルアフィニティリターゲティングテクノロジー(Dual Affinity Retargeting Technology)(Fc-DART)分子(MacroGenics, WO2008157379, WO2010080538)、およびデュアル(ScFv)2-Fab分子(National Research Center for Antibody Medicine-China)が含まれるが、これに限定されない。
【0126】
Fab融合二重特異性抗体の例には、F(ab)2分子(Medarex/AMGEN; Deo et al J Immunol. 1998 Feb 15;160(4):1677-86.)、デュアルアクション(Dual-Action)またはBis-Fab分子(Genentech, Bostrom, et al 2009. Science 323, 1610-1614.)、ドックアンドロック(Dock-and-Lock)(DNL)分子(ImmunoMedics, WO2003074569, WO2005004809)、二価二重特異性分子(Biotecnol, Schoonjans, J Immunol. 2000 Dec 15;165(12):7050-7.)、およびFab-Fv分子(UCB-Celltech, WO2009040562A1)が含まれるが、これに限定されない。
【0127】
ScFv抗体、ダイアボディベースの抗体、およびドメイン抗体の例には、二重特異性T細胞エンゲージャー(Bispecific T Cell Engager)(BiTE)分子(Micromet, WO2005061547)、タンデムダイアボディ分子(TandAb)(Affimed) Le Gall et al., Protein Eng Des Sel. 2004 Apr;17(4):357-66.)、デュアルアフィニティリターゲティングテクノロジー(DART)分子(MacroGenics, WO2008157379, WO2010080538)、単鎖ダイアボディ分子(Lawrence, FEBS Lett. 1998 Apr 3;425(3):479-84)、TCR様抗体(AIT, ReceptorLogics)、ヒト血清アルブミンScFv融合(Human Serum Albumin ScFv Fusion)(Merrimack, WO2010059315)、およびコムボディ(COMBODY)分子(Epigen Biotech, Zhu et al. Immunol Cell Biol. 2010 Aug;88(6):667-75.)、二重標的化分子(Ablynx, Hmila et al., FASEB J. 2010)、ならびに二重標的化重鎖のみのドメイン抗体(dual targeting heavy chain only domain antibody)が含まれるが、これに限定されない。
【0128】
第1および第2の重鎖定常領域(CH)のそれぞれは、定常領域ドメイン1領域(CH1領域)、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域のうちの1つまたは複数、好ましくは少なくとも、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含む。
【0129】
本開示の二重特異性抗体などの結合物質は、第1のCH3領域を含む第1のFc配列、および第2のCH3領域を含む第2のFc配列を含んでもよく、第1のCH3領域および第2のCH3領域の配列は異なり、かつ前記第1のCH3領域と第2のCH3領域との間のヘテロ二量体相互作用が前記第1のCH3領域および第2のCH3領域のホモ二量体相互作用のそれぞれより強くなるような配列である。これらの相互作用、およびこれらの相互作用をどうやって実現できるかについてのさらに詳しい内容は、参照により本明細書に組み入れられるWO2011131746およびWO2013060867(Genmab)に示される。
【0130】
本明細書においてさらに説明されるように、安定した二重特異性抗体PD-L1×CD137抗体は、CH3領域にごく少数の保存的非対称変異を含有し、1種類のホモ二量体出発PD-L1抗体と、1種類のホモ二量体出発CD137抗体とをベースにした特定の方法を用いて高収率で得ることができる。非対称変異とは、前記第1のCH3領域および第2のCH3領域の配列が、同一でない位置にアミノ酸置換を含有することを意味する。
【0131】
従って、本発明の一態様において、第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)のそれぞれはCH3領域を含み、2つのCH3領域は非対称的な変異を含む。
【0132】
本開示による薬学的製剤は、前記第1の重鎖定常領域(CH)において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、かつ、前記第2の重鎖定常領域(CH)において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、かつ前記第1の重鎖および前記第2の重鎖が同じ位置において置換されていない、結合物質を含んでもよい。
【0133】
本明細書において開示される薬学的製剤は、(i)EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置にあるアミノ酸が前記第1の重鎖定常領域(CH)ではLであり、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置にあるアミノ酸が前記第2の重鎖定常領域(CH)ではRであるか、または(ii)EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置にあるアミノ酸が前記第1の重鎖ではRであり、かつEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置にあるアミノ酸が前記第2の重鎖ではLである、結合物質を含んでもよい。
【0134】
本明細書において開示される二重特異性抗体は、ヒトIgG1重鎖中の位置366にアミノ酸置換を有する第1のCH3領域、ならびに、ヒトIgG1重鎖中の368、370、399、405、407、および409からなる群より選択される位置においてアミノ酸置換を有する第2のCH3領域を含んでもよい。ヒトIgG1重鎖中の位置366にあるアミノ酸は、Ala、Asp、Glu、His、Asn、Val、またはGlnより選択されてもよい。
【0135】
本明細書において開示される二重特異性抗体は、ヒトIgG1重鎖中の位置368にアミノ酸置換を有する第1のCH3領域、ならびに、ヒトIgG1重鎖中の366、370、399、405、407、および409からなる群より選択される位置においてアミノ酸置換を有する第2のCH3領域を含んでもよい。
【0136】
本明細書において開示される二重特異性抗体は、ヒトIgG1重鎖中の位置370にアミノ酸置換を有する第1のCH3領域、ならびに、ヒトIgG1重鎖中の366、368、399、405、407、および409からなる群より選択される位置においてアミノ酸置換を有する第2のCH3領域を含んでもよい。
【0137】
本明細書において開示される二重特異性抗体は、ヒトIgG1重鎖中の位置399にアミノ酸置換を有する第1のCH3領域、ならびに、ヒトIgG1重鎖中の366、368、370、405、407、および409からなる群より選択される位置においてアミノ酸置換を有する第2のCH3領域を含んでもよい。
【0138】
本明細書において開示される二重特異性抗体は、ヒトIgG1重鎖中の位置405にアミノ酸置換を有する第1のCH3領域、ならびに、ヒトIgG1重鎖中の366、368、370、399、407、および409からなる群より選択される位置においてアミノ酸置換を有する第2のCH3領域を含んでもよい。
【0139】
本明細書において開示される二重特異性抗体は、ヒトIgG1重鎖中の位置407にアミノ酸置換を有する第1のCH3領域、ならびに、ヒトIgG1重鎖中の366、368、370、399、405、および409からなる群より選択される位置においてアミノ酸置換を有する第2のCH3領域を含んでもよい。
【0140】
本明細書において開示される二重特異性抗体は、ヒトIgG1重鎖中の位置409にアミノ酸置換を有する第1のCH3領域、ならびに、ヒトIgG1重鎖中の366、368、370、399、405、および407からなる群より選択される位置においてアミノ酸置換を有する第2のCH3領域を含んでもよい。
【0141】
従って、本明細書において開示される二重特異性抗体は、非対称変異、すなわち、2つのCH3領域の異なる位置にある変異、例えば、一方のCH3領域において位置405に変異、他方のCH3領域において位置409に変異を含有する、第1のCH3領域および第2のCH3領域の配列を含んでもよい。
【0142】
本明細書において開示される二重特異性抗体は抗体であってもよく、第1のCH3領域は、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有し、前記第2のCH3領域は、位置366、368、370、399、405、および407からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有する。前記第1のCH3領域は、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有してもよく、前記第2のCH3領域は、位置405に、Phe以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Lys、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、Cys、Lys、またはLeuを有してもよい。そのさらなる態様において、前記第1のCH3領域は、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有してもよく、前記第2のCH3領域は、位置405に、Phe、Arg、またはGly以外のアミノ酸、例えば、Leu、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Met、Lys、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有してもよい。
【0143】
本明細書において開示される二重特異性抗体は抗体であってもよく、前記第1のCH3領域は位置405にPheを含み、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを含み、前記第2のCH3領域は位置405に、Phe以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Lys、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、Leu、Met、またはCysを含み、位置409にLysを含む。前記第1のCH3領域は位置405にPheを含んでもよく、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを含んでもよく、前記第2のCH3領域は、位置405に、Phe、Arg、またはGly以外のアミノ酸、例えば、Leu、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Met、Lys、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを含んでもよく、位置409にLysを含んでもよい。
【0144】
本明細書において開示される二重特異性抗体は抗体であってもよく、前記第1のCH3領域は位置405にPheを含み、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを含み、前記第2のCH3領域は、位置405にLeuを含み、位置409にLysを含む。前記第1のCH3領域は位置405にPheを含んでもよく、位置409にArgを含んでもよく、前記第2のCH3領域は、位置405に、Phe、Arg、またはGly以外のアミノ酸、例えば、Leu、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Lys、Met、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを含んでもよく、位置409にLysを含んでもよい。前記第1のCH3領域は位置405にPheを含み、位置409にArgを含んでもよく、前記第2のCH3領域は位置405にLeuを含んでもよく、位置409にLysを含んでもよい。
【0145】
本明細書において開示される二重特異性抗体は抗体であってもよく、前記第1のCH3領域は、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを含み、前記第2のCH3領域は位置409にLysを含み、位置370にThrを含み、位置405にLeuを含む。前記第1のCH3領域は位置409にArgを含んでもよく、前記第2のCH3領域は位置409にLysを含んでもよく、位置370にThrを含んでもよく、位置405にLeuを含んでもよい。
【0146】
本明細書において開示される二重特異性抗体は抗体であってもよく、前記第1のCH3領域は位置370にLys、位置405にPhe、位置409にArgを含み、前記第2のCH3領域は位置409にLys、位置370にThr、位置405にLeuを含む。
【0147】
本明細書において開示される二重特異性抗体は抗体であってもよく、前記第1のCH3領域は、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを含み、前記第2のCH3領域は位置409にLysを含み、(a)位置350にIle、位置405にLeuを含むか、または(b)位置370にThr、位置405にLeuを含む。
【0148】
本明細書において開示される二重特異性抗体は抗体であってもよく、前記第1のCH3領域は位置409にArgを含み、前記第2のCH3領域は位置409にLysを含み、(a)位置350にIle、位置405にLeuを含むか、または(b)位置370にThr、位置405にLeuを含む。
【0149】
本明細書において開示される二重特異性抗体は抗体であってもよく、前記第1のCH3領域は位置350にThrを含み、位置370にLysを含み、位置405にPheを含み、位置409にArgを含み、前記第2のCH3領域は位置409にLysを含み、(a)位置350にIle、位置405にLeuを含むか、または(b)位置370にThr、位置405にLeuを含む。
【0150】
本明細書において開示される二重特異性抗体は抗体であってもよく、前記第1のCH3領域は位置350にThrを含み、位置370にLysを含み、位置405にPheを含み、位置409にArgを含み、前記第2のCH3領域は、位置350にIleを含み、位置370にThrを含み、位置405にLeuを含み、位置409にLysを含む。
【0151】
本明細書において開示される二重特異性抗体は抗体であってもよく、前記第1のCH3領域は、位置409にLys、Leu、もしくはMet以外のアミノ酸を有し、前記第2のCH3領域は、位置405にPhe以外のアミノ酸を有し、例えば、位置405にPhe、Arg、もしくはGly以外のアミノ酸を有するか、または前記第1のCH3領域は位置409にLys、Leu、もしくはMet以外のアミノ酸を有し、前記第2のCH3領域は、位置407にTyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、Ser、もしくはThr以外のアミノ酸を有する。
【0152】
本明細書において開示される二重特異性抗体は、位置409にLys、Leu、またはMet以外のアミノ酸を有する第1のCH3領域、および、位置407にTyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、Ser、もしくはThr以外のアミノ酸を有する第2のCH3領域を含んでもよい。
【0153】
本明細書において開示される二重特異性抗体は、位置407にTyrを有しかつ位置409にLys、Leu、またはMet以外のアミノ酸を有する、第1のCH3領域、および、位置407にTyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、Ser、もしくはThr以外のアミノ酸を有しかつ位置409にLysを有する、第2のCH3領域を含んでもよい。
【0154】
本明細書において開示される二重特異性抗体は、位置407にTyrを有しかつ位置409にArgを有する、第1のCH3領域、および、位置407にTyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、Ser、もしくはThr以外のアミノ酸を有しかつ位置409にLysを有する、第2のCH3領域を含んでもよい。
【0155】
前記第1のCH3領域は、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有してもよく、前記第2のCH3領域は、位置407に、Tyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、Ser、またはThr以外のアミノ酸、例えば、Leu、Met、Gly、Ala、Val、Ile、His、Asn、Pro、Trp、またはCysを有してもよい。前記第1のCH3領域は、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有してもよく、前記第2のCH3領域は、位置407に、Ala、Gly、His、Ile、Leu、Met、Asn、Val、またはTrpを有してもよい。
【0156】
本明細書において開示される二重特異性抗体は抗体であってもよく、前記第1のCH3領域は、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有し、前記第2のCH3領域は位置407にGly、Leu、Met、Asn、またはTrpを有する。
【0157】
本明細書において開示される二重特異性抗体は抗体であってもよく、前記第1のCH3領域は位置407にTyrを有し、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有し、前記第2のCH3領域は、位置407に、Tyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、Ser、またはThr以外のアミノ酸、例えば、Leu、Met、Gly、Ala、Val、Ile、His、Asn、Pro、Trp、またはCysを有し、位置409にLysを有する。
【0158】
本明細書において開示される二重特異性抗体は抗体であってもよく、前記第1のCH3領域は位置407にTyrを有し、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有し、前記第2のCH3領域は位置407にAla、Gly、His、Ile、Leu、Met、Asn、Val、またはTrpを有し、位置409にLysを有する。
【0159】
本明細書において開示される二重特異性抗体は抗体であってもよく、前記第1のCH3領域は位置407にTyrを有し、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有し、前記第2のCH3領域は、位置407にGly、Leu、Met、Asn、またはTrpを有し、409にLysを有する。
【0160】
本明細書において開示される二重特異性抗体は抗体であってもよく、前記第1のCH3領域は位置407にTyrを有し、位置409にArgを有し、前記第2のCH3領域は、位置407に、Tyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、Ser、またはThr以外のアミノ酸、例えば、Leu、Met、Gly、Ala、Val、Ile、His、Asn、Pro、Trp、またはCysを有し、位置409にLysを有する。
【0161】
本明細書において開示される二重特異性抗体は抗体であってもよく、前記第1のCH3領域は位置407にTyrを有し、位置409にArgを有し、前記第2のCH3領域は、位置407にAla、Gly、His、Ile、Leu、Met、Asn、Val、またはTrpを有し、位置409にLysを有する。
【0162】
本明細書において開示される二重特異性抗体は抗体であってもよく、前記第1のCH3領域は位置407にTyrを有し、位置409にArgを有し、前記第2のCH3領域は、位置407にGly、Leu、Met、Asn、またはTrpを有し、位置409にLysを有する。
【0163】
本明細書において開示される二重特異性抗体は抗体であってもよく、第1のCH3領域は、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有し、第2のCH3領域は、
(i)位置368に、Phe、Leu、およびMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Lys、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、もしくはCysを有してもよいか、または
(ii)位置370にTrpを有してもよいか、または
(iii)位置399にAsp、Cys、Pro、Glu、もしくはGln以外のアミノ酸、例えば、Phe、Leu、Met、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Lys、Arg、His、Asn、Trp、Tyr、もしくはCysを有してもよいか、または
(iv)位置366に、Lys、Arg、Ser、Thr、もしくはTrp以外のアミノ酸、例えば、Phe、Leu、Met、Ala、Val、Gly、Ile、Asn、His、Asp、Glu、Gln、Pro、Tyr、もしくはCysを有してもよい。
【0164】
第1のCH3領域は位置409にArg、Ala、His、またはGlyを有してもよく、第2のCH3領域は、
(i)位置368に、Lys、Gln、Ala、Asp、Glu、Gly、His、Ile、Asn、Arg、Ser、Thr、Val、もしくはTrpを有してもよいか、または
(ii)位置370にTrpを有してもよいか、または
(iii)位置399に、Ala、Gly、Ile、Leu、Met、Asn、Ser、Thr、Trp、Phe、His、Lys、Arg、もしくはTyrを有してもよいか、または
(iv)位置366に、Ala、Asp、Glu、His、Asn、Val、Gln、Phe、Gly、Ile、Leu、Met、もしくはTyrを有してもよい。
【0165】
第1のCH3領域は位置409にArgを有してもよく、第2のCH3領域は、
(i)位置368に、Asp、Glu、Gly、Asn、Arg、Ser、Thr、Val、もしくはTrpを有してもよいか、または
(ii)位置370にTrpを有してもよいか、または
(iii)位置399に、Phe、His、Lys、Arg、もしくはTyrを有してもよいか、または
(iv)位置366に、Ala、Asp、Glu、His、Asn、Val、Glnを有してもよい。
【0166】
前記二重特異性抗体は第1の重鎖および第2の重鎖を含んでもよく、前記第1の重鎖および第2の重鎖のそれぞれは、少なくとも、ヒンジ領域、CH2、およびCH3領域を含み、(i)前記第1の重鎖において、ヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置にあるアミノ酸はLであり、かつ、前記第2の重鎖において、ヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置にあるアミノ酸はRであるか、または(ii)第1の重鎖において、ヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置にあるアミノ酸はRであり、かつ、第2の重鎖において、ヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置にあるアミノ酸はLである。
【0167】
前記のアミノ酸置換に加えて、前記第1の重鎖および第2の重鎖は、野生型重鎖配列と比べてアミノ酸置換、欠失、または挿入をさらに含有してもよい。
【0168】
本開示の一態様において、前記第1のFc配列も前記第2のFc配列も(コア)ヒンジ領域にCys-Pro-Ser-Cys配列を含まない。別の態様では、前記第1のFc配列と前記第2のFc配列は両方とも(コア)ヒンジ領域にCys-Pro-Pro-Cys配列を含む。
【0169】
好ましくは、本発明の薬学的製剤に含まれる抗体は、同じ第1の抗原結合領域および第2の抗原結合領域とヒトIgG1ヒンジ、CH2領域、およびCH3領域を含む2つの重鎖定常領域(CH)とを含む別の抗体と比較してより低い程度まで、Fc媒介エフェクター機能を誘導する。
【0170】
改変されていない第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)を含むこと以外は同一の抗体と比較してより低い程度まで前記抗体が、Fc媒介エフェクター機能を誘導するように、前記第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)は改変されてもよい。
【0171】
前記Fc媒介エフェクター機能は、好ましくは、Fcγ受容体への結合によって、C1qへの結合によって、またはFcγ受容体のFc媒介架橋結合の誘導によって測定される。
【0172】
特に、Fc媒介エフェクター機能はC1qとの結合によって測定される。
【0173】
C1qと前記抗体の結合が野生型抗体と比較して低下するように、好ましくは、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%低下するように前記第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域は改変されていてもよく、C1q結合は好ましくは、ELISAによって測定される。
【0174】
前記薬学的製剤が含む結合物質は、前記第1の重鎖定常領域(CH)および第2の重鎖定常領域(CH)のうちの少なくとも一方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置にある1つまたは複数のアミノ酸が、それぞれL、L、D、N、およびPでない、結合物質でもよい。
【0175】
前記薬学的製剤の結合物質では、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置は、前記第1の重鎖および第2の重鎖においてそれぞれFおよびEでもよい。
【0176】
前記薬学的製剤の結合物質では、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置は、前記第1の重鎖定常領域(HC)および第2の重鎖定常領域(HC)においてそれぞれF、E、およびAでもよい。
【0177】
前記薬学的製剤は、第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域の両方の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置が、それぞれF、E、およびAであり、かつ、(i)第1の重鎖定常領域のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLであり、かつ第2の重鎖定常領域のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであるか、または(ii)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLである、結合物質を含んでもよい。
【0178】
前記薬学的製剤は、第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域の両方の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置が、それぞれFおよびEであり、かつ、(i)第1の重鎖定常領域のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであるか、または(ii)第1の重鎖定常領域のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLである、結合物質を含んでもよい。
【0179】
特定の態様において、第1の結合アームは、カッパ(κ)軽鎖、例えば、SEQ ID NO:26に示したアミノ酸配列を含むカッパ軽鎖を含んでもよく、かつ第2の結合アームは、ラムダ(λ)軽鎖、例えば、SEQ ID NO:27に示したアミノ酸配列を含むラムダ軽鎖を含む。
【0180】
他の態様において、第1の結合アームは、ラムダ(λ)軽鎖、例えば、SEQ ID NO:27に示したアミノ酸配列を含むラムダ軽鎖を含み、かつ第2の結合アームは、カッパ(κ)軽鎖、例えば、SEQ ID NO:26に示したアミノ酸配列を含むカッパ軽鎖を含む。
【0181】
さらに他の態様において、第1の結合アームと第2の結合アームは両方とも、ラムダ(λ)軽鎖、例えば、SEQ ID NO:27に示したアミノ酸配列を含むラムダ軽鎖を含む。
【0182】
さらなる態様において、第1の結合アームと第2の結合アームは両方とも、カッパ(κ)軽鎖、例えば、SEQ ID NO:26に示したアミノ酸配列を含むカッパ軽鎖を含む。
【0183】
前記結合物質は、第1の結合アームがSEQ ID NO:24に示したアミノ酸配列を含み、第2の結合アームがSEQ ID NO:25に示したアミノ酸配列を含む結合物質でもよい。
【0184】
または、前記結合物質は、第1の結合アームがSEQ ID NO:25に示したアミノ酸配列を含み、第2の結合アームがSEQ ID NO:24に示したアミノ酸配列を含む結合物質でもよい。
【0185】
前記結合物質は、T細胞の増殖を誘導および/または強化する結合物質でもよい。
【0186】
特に、前記T細胞はCD4+T細胞および/またはCD8+T細胞でもよい。
【0187】
本発明による薬学的製剤において、前記結合物質は、第2の抗原結合領域がPD-L1に結合した場合のみ、CD137シグナル伝達を活性化する、結合物質でもよい。
【0188】
T細胞の増殖は、特異的なT細胞受容体(TCR)を発現するT細胞を、TCRによって認識される対応する抗原を主要組織適合遺伝子複合体上で提示する樹状細胞(DC)と共に同時培養することによって、測定されてもよい。
【0189】
一態様において、前記のT細胞増殖の誘導または強化は抗原特異的アッセイ法によって判定される。この場合、DCにクローディン-6抗原をトランスフェクトし、T細胞に、DC上のHLA-A2に提示されるクローディン-6由来エピトープを認識するTCRをトランスフェクトする。このアッセイ法を実施例7において説明する。
【0190】
本発明の結合物質は、ヒト腫瘍組織のエクスビボ培養において腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の増大を媒介できる可能性がある。TILの増大は、1.5倍もしくはそれ以上、2倍もしくはそれ以上、3倍もしくはそれ以上、4倍もしくはそれ以上、5倍もしくはそれ以上、6倍もしくはそれ以上、7倍もしくはそれ以上、8倍もしくはそれ以上、9倍もしくはそれ以上、または10倍もしくはそれ以上になる場合がある。CD3-CD56+ナチュラルキラー(NK)細胞の増大は、少なくとも10倍、例えば、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、または例えば、少なくとも50倍になる場合がある。CD3+CD8+細胞障害性Tリンパ球(CTL)の増大は、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、または例えば、少なくとも7倍になる場合がある。好ましくは、TILの増大は、0.01μg/mL、0.1μg/mL、および1μg/mLに対応する濃度の二重特異性結合物質とのインキュベーションに応答した、例えば、0.1μg/mLに対応する濃度の二重特異性結合物質とのインキュベーションに応答したヒト非小細胞肺がん組織標本からのTILの増大として判定される。
【0191】
TILの増大は、
(i)腫瘍組織の切除標本、例えば、新鮮な切除標本を提供し、かつ造血細胞培地で標本を洗浄する工程、
(ii)腫瘍組織を、直径1~2mmの断片に切断し、かつ2つの腫瘍組織断片を含む試料を提供する工程、
(iii)10%ヒト血清アルブミン、抗生物質、およびProleukin(登録商標)S(組換えヒトIL-2類似体;SEQ ID NO:56)を含む造血細胞培地、例えば、Lonza(商標)X-VIVO(商標)15が入っている組織培養プレートウェルの中で、試料を、濃度0.1μg/mlの本発明の二重特異性結合物質と37℃、5%CO2で72時間インキュベートする工程であって、試料中に25個より多いTILマイクロクラスター(microcluster)が観察された場合に、前記試料中の細胞が、6つの試料に、または組織培養プレート中で6ウェルに分割および移動される、工程、
(iv)10~14日の全インキュベーション期間後にTILを収集し、かつヒトCD3、ヒトCD4、ヒトCD56、およびヒトCD8に対する標識された抗体と、非生細胞を染色する色素、例えば、アミノアクチマイシンDを用いてTILを染色に供する工程、ならびに
(v)各試料をフローサイトメトリーによって分析する工程
を含むアッセイ法において、判定され得る。
【0192】
本発明の結合物質は、特に、末梢血単核球(PBMC)集団の中でCD40+およびCD8+T細胞の増大を誘導できる可能性があり、T細胞は、好ましくは、0.03~0.1μg/mLの濃度の、抗CD3抗体、例えば、クローンUCHT1)とインキュベートすることによって活性化され、例えば、最適以下で活性化され、好ましくは、0.2μg/mLに対応する濃度の本発明による二重特異性結合物質とインキュベートされる。特に、T細胞増大を判定するための方法は、
(i)健常ドナーのバフィーコートから、例えば、Ficoll勾配を単離することでPBMCを得る工程、
(ii)PBMCを、PBSに溶解したカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)で標識する工程、
(iii)75000個のCFSE標識PBMCを含む試料を提供し、かつ、グルタミンを含みかつヒトAB血清を加えたIscove's Modified Dulbecco's Medium中で、前記試料を、抗CD3抗体、好ましくは、各ドナーに対して最適以下のT細胞増殖を誘導する濃度であると予め決定された0.03~0.1μg/mLの濃度の抗CD3抗体と、および0.2μg/mLの濃度の本発明の二重特異性結合物質と、37℃、5%CO2で4日間インキュベートする工程、
(iv)ヒトCD4、ヒトCD8、ヒトCD56に対する標識された抗体を用いる、および非生細胞を染色する色素、例えば、7-アミノアクチマイシンDを用いる染色にPBMCを供する工程、ならびに
(v)試料中にある様々な亜集団(CD4+およびCD8+T細胞)のCSFEをフローサイトメトリーによって分析する工程
を含んでもよい。
【0193】
本発明の文脈において開示される結合物質の調製では、ハイブリッドハイブリドーマおよび化学結合法(Marvin and Zhu (2005) Acta Pharmacol Sin 26:649)などの従来法を使用することができる。異なる重鎖および軽鎖からなる2種類の抗体を宿主細胞において同時発現させると、望ましい二重特異性結合物質の他に、可能性のある抗体産物の混合物が生じる。次いで、望ましい二重特異性結合物質を、例えば、アフィニティクロマトグラフィーまたは同様の方法によって単離することができる。
【0194】
異なる抗体構築物が同時発現された場合に、機能的な二重特異性産物の形成に有利に働く戦略、例えば、Lindhofer et al. (1995 J Immunol 155:219)に記載の方法も使用することができる。異なる抗体を産生するラットハイブリドーマとマウスハイブリドーマを融合すると、種に限定された優先的な重鎖/軽鎖対形成のために、限られた数のヘテロ二量体タンパク質が生じる。ホモ二量体を上回ってヘテロ二量体形成を促進する別の戦略が「ノブイントゥホール」戦略である。この戦略では、ヘテロ二量体形成を促進し、ホモ二量体形成を妨げる目的で、突起が第1の重鎖ポリペプチド上に、対応する空洞が第2の重鎖ポリペプチドに、これらの2本の重鎖の境界面にある空洞内に突起を配置できるように導入される。「突起」は、第1のポリペプチドの境界面に由来する小さいアミノ酸側鎖を、さらに大きい側鎖と交換することによって構築される。突起と同一または類似のサイズの、埋め合わせとなる「空洞」は、大きいアミノ酸側鎖を小さいアミノ酸側鎖と交換することによって第2のポリペプチドの境界面に作り出される(米国特許第5,731,168号)。EP1870459(Chugai)およびWO2009089004(Amgen)は、宿主細胞における異なる抗体ドメインが同時発現された場合にヘテロ二量体形成に有利に働く他の戦略について説明している。これらの方法では、ホモ二量体形成が静電気的に不利であり、ヘテロ二量体化が静電気的に有利になるように、両CH3ドメインにあるCH3-CH3境界面を構成する1つまたは複数の残基が荷電アミノ酸と交換される。WO2007110205(Merck)は、ヘテロ二量体化を促進するためにIgAとIgG CH3ドメインとの間の相違点が利用される、さらに別の戦略について説明している。
【0195】
二重特異性抗体を産生するための別のインビトロ方法はWO2008119353(Genmab)に記載されており、ここでは、二重特異性抗体は、還元条件下でインキュベートされた場合の2種類の単一特異性IgG4抗体間またはIgG4様抗体間での「Fabアーム」交換または「半分子」交換(重鎖と、取り付けられている軽鎖の入れ替え)によって形成される。結果として生じた産物は、異なる配列を含み得る2つのFabアームを有する二重特異性抗体である。
【0196】
本明細書において開示される二重特異性PD-L1×CD137結合物質を調製するための好ましい方法は、
(a)Fc領域を含む第1の抗体を提供する工程であって、前記Fc領域が第1のCH3領域を含む、工程;
(b)第2のFc領域を含む第2の抗体を提供する工程であって、前記Fc領域が第2のCH3領域を含み、第1の抗体が、CD137抗体であり、第2の抗体が、PD-L1抗体であるか、または逆も同じであり、前記第1のCH3領域および第2のCH3領域の配列が異なり、かつ前記第1のCH3領域と第2のCH3領域との間のヘテロ二量体相互作用が前記第1のCH3領域および第2のCH3領域のホモ二量体相互作用のそれぞれより強くなるような配列である、工程;
(c)還元条件下で、前記第1の抗体を前記第2の抗体と一緒にインキュベートする工程;ならびに
(d)前記二重特異性PD-L1×CD137抗体を得る工程
を含む、WO2011131746およびWO2013060867(Genmab)に記載の方法を含む。
【0197】
同様に、
(a)本明細書において定義されたヒトCD137に結合することができる抗原結合領域を含む第1の抗体を産生する宿主細胞を培養し、かつ培養物から前記第1の抗体を精製する工程;
(b)本明細書において定義されたヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む第2の抗体を産生する宿主細胞を培養し、培養物から前記第2の抗体を精製する工程;
(c)ヒンジ領域におけるシステインがジスルフィド結合異性化を受けることを可能にするのに十分な還元条件下で、前記第1の抗体を前記第2の抗体と一緒にインキュベートする工程;ならびに
(d)前記二重特異性抗体を得る工程
を含む、本発明の文脈において開示される結合物質を産生するための方法が提供される。
【0198】
本発明の一態様において、前記第1の抗体と前記第2の抗体は、ヒンジ領域におけるシステインがジスルフィド結合異性化を受けることを可能にするのに十分な還元条件下でインキュベートされ、結果として生じたヘテロ二量体抗体における前記第1の抗体と第2の抗体との間のヘテロ二量体相互作用は、0.5mM GSHで、37℃で24時間後にFabアーム交換が起こらないようなヘテロ二量体相互作用である。
【0199】
理論に限定されないが、工程(c)では、親抗体のヒンジ領域における重鎖ジスルフィド結合は還元され、次いで、結果として生じたシステインは、(初めから、異なる特異性を有する)別の親抗体分子のシステイン残基と重鎖間ジスルフィド結合を形成することができる。この方法の一態様において、工程(c)における還元条件は、還元剤、例えば、2-メルカプトエチルアミン(2-MEA)、ジチオスレイトール(DTT)、ジチオエリスリトール(DTE)、グルタチオン、tris(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、L-システイン、およびβ-メルカプト-エタノールからなる群より選択される還元剤、好ましくは、2-メルカプトエチルアミン、ジチオスレイトール、およびtris(2-カルボキシエチル)ホスフィンからなる群より選択される還元剤の添加を含む。さらなる態様において、工程(c)は、例えば、還元剤を除去することで、例えば、脱塩することで、条件を非還元条件または弱還元(less reducing)条件に回復させることを含む。
【0200】
この方法のために、前記のCD137抗体およびPD-L1抗体のいずれかを、それぞれ、第1のFc領域および/または第2のFc領域を含む、第1および第2のCD137抗体およびPD-L1抗体を含めて使用することができる。このような第1のFc領域および第2のFc領域の例は、このような第1のFc領域および第2のFc領域の組み合わせを含めて、前記の任意のものを含んでよい。特定の態様において、第1および第2のCD137抗体およびPD-L1抗体はそれぞれ、本明細書に記載の通りに二重特異性抗体を得るように選択されてもよい。
【0201】
この方法の一態様において、前記第1の抗体および/または第2の抗体は完全長抗体である。
【0202】
第1の抗体および第2の抗体のFc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4を含むが、これに限定されない任意のアイソタイプのものでよい。好ましくは、前記第1の抗体と前記第2の抗体の両方のFc領域はIgG1アイソタイプのFc領域である。あるいは、前記抗体のFc領域の一方はIgG1アイソタイプのFc領域であり、他方はIgG4アイソタイプのFc領域である。後者の場合では、結果として生じた二重特異性抗体はIgG1のFc配列とIgG4のFc配列を含み、従って、エフェクター機能の活性化に関して興味深い中間特性を有する可能性がある。
【0203】
抗体出発タンパク質の1つは、プロテインAに結合しないように操作されてもよく、従って、産物をプロテインAカラム上に通過させることで前記ホモ二量体出発タンパク質からヘテロ二量体タンパク質を分離することが可能になってもよい。
【0204】
前記のように、ホモ二量体出発抗体の第1のCH3領域および第2のCH3領域の配列は異なり、かつ前記第1のCH3領域と第2のCH3領域との間のヘテロ二量体相互作用が前記第1のCH3領域および第2のCH3領域のホモ二量体相互作用のそれぞれより強くなるような配列である。これらの相互作用、およびこれらの相互作用をどうやって成し遂げるかについてのさらに詳しい内容は、WO2011131746およびWO2013060867(Genmab)に示され、WO2011131746およびWO2013060867(Genmab)は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0205】
特に、安定した二重特異性PD-L1×CD137抗体は、CD137およびPD-L1にそれぞれ結合する2種類のホモ二量体出発抗体をベースにして本発明の上記の方法を用いて高収率で得ることができ、CH3領域にごく少数の保存的非対称変異を含有する。非対称変異とは、前記第1のCH3領域および第2のCH3領域の配列が、同一でない位置にアミノ酸置換を含有することを意味する。
【0206】
本明細書において開示される二重特異性抗体はまた、単一細胞において第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドをコードする構築物を同時発現させることによって得られてもよい。従って、さらなる局面において、本発明は、
(a)第1の抗体重鎖の第1のFc配列と第1の抗原結合領域とを含む第1のポリペプチドをコードする第1の核酸構築物を提供する工程であって、前記第1のFc配列が第1のCH3領域を含む、工程、
(b)第2の抗体重鎖の第2のFc配列および第2の抗原結合領域を含む第2のポリペプチドをコードする第2の核酸構築物を提供する工程であって、前記第2のFc配列が第2のCH3領域を含み、前記第1のCH3領域および第2のCH3領域の配列が、異なり、かつ、前記第1のCH3領域と第2のCH3領域との間のヘテロ二量体相互作用が前記第1のCH3領域および第2のCH3領域のホモ二量体相互作用のそれぞれより強くなるような配列であり、前記第1のホモ二量体タンパク質が、位置409にLys、Leu、またはMet以外のアミノ酸を有し、かつ、前記第2のホモ二量体タンパク質が、位置366、368、370、399、405、および407からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有し、任意で、前記第1の核酸構築物および第2の核酸構築物が、前記第1の抗体および第2の抗体の軽鎖配列をコードする、工程、
(c)前記第1の核酸構築物および第2の核酸構築物を宿主細胞において同時発現させる工程、ならびに
(d)細胞培養物から前記ヘテロ二量体タンパク質を得る工程
を含む、二重特異性抗体を産生するための方法に関する。
【0207】
本発明によって提供される薬学的製剤は好ましくは水性製剤である。
【0208】
本発明はまた、上記で定義された結合物質を提供する工程、ならびに約4.5~約6.5のpHで該結合物質を、
a. ヒスチジン緩衝液、
b. 約100~約400mMの糖、および
c. 約0.001~約0.1%(w/v)の非イオン性界面活性剤
と組み合わせる工程を含む、上記で定義された薬学的製剤を作製するための方法も提供する。
【0209】
ヒスチジン緩衝液、糖、非イオン性界面活性剤、およびpHについて上記で提供された詳細は製剤を作製するための方法にも適用されることが理解される。
【0210】
さらなる局面において、本発明は、医薬として使用するための、上記で定義された薬学的製剤を提供する。
【0211】
前記薬学的製剤は、特に、がんの処置において使用するための薬学的製剤でもよい。
【0212】
さらに、本発明は、それを必要とする対象に、本明細書において定義された薬学的製剤の有効量を投与する工程を含む、疾患を処置するため方法を提供する。
【0213】
疾患は特にがんでもよい。
【0214】
本発明はまた、PD-L1を発現する腫瘍細胞の細胞死を誘導するか、またはPD-L1を発現する腫瘍細胞の成長および/もしくは増殖を阻害する方法であって、それを必要とする対象および/または前記腫瘍細胞を有する対象に、上記で定義された薬学的製剤の有効量を投与する工程を含む、方法も提供する。
【0215】
上記で説明された使用または上記で定義された方法のための薬学的製剤に関して、がんは、特に、固形腫瘍の存在を特徴としてもよいか、または、黒色腫、卵巣がん、肺がん、結腸直腸がん、頭頸部がん、胃がん、乳がん、腎臓がん、膀胱がん、食道がん、膵臓がん、肝臓がん、胸腺腫および胸腺がん、脳がん、神経膠腫、副腎皮質がん腫、甲状腺がん、他の皮膚がん、肉腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、卵巣がん、子宮内膜症がん(endometriosis cancer)、前立腺がん、陰茎がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、メルケル細胞がん、ならびに中皮腫からなる群より選択されてもよい。
【0216】
がんは特に非小細胞肺がん(NSCLC)でもよい。
【0217】
本発明は、医薬、例えば、固形腫瘍の存在を特徴とするがん、または黒色腫、卵巣がん、肺がん、結腸がん、および頭頸部がんからなる群より選択されるがんなどのがんを処置するための医薬を製造するための、上記で定義された薬学的製剤の使用を提供する。
【0218】
肺がんは、特に非小細胞肺がん(NSCLC)であってもよい。
【0219】
前記の治療方法および使用における投与レジメンは最適な望ましい応答(例えば、治療応答)をもたらすように調節される。例えば、単一ボーラスを投与してもよく、いくつかの分割量を、ある期間にわたって投与してもよく、その用量は、治療状況の難局により示されるように比例して減少または増加されてもよい。投与の容易さおよび投薬の均一性のために単位剤形で非経口組成物が製剤化されてもよい。
【0220】
前記薬学的製剤のための効率的な投与量および投与レジメンは、治療しようとする疾患または状態に左右され、当業者によって決定することができる。本発明の化合物の治療的有効量の例示的で非限定的な範囲は、約0.001~10mg/kg、例えば、約0.001~5mg/kg、例えば、約0.001~2mg/kg、例えば、約0.001~1mg/kg、例えば、約0.001mg/kg、約0.01mg/kg、約0.1mg/kg、約1mg/kg、または約10mg/kgである。本発明の結合物質(例えば二重特異性抗体)の治療的有効量の別の例示的で非限定的な範囲は、約0.1~100mg/kg、例えば、約0.1~50mg/kg、例えば、約0.1~20mg/kg、例えば、約0.1~10mg/kg、例えば、約0.5mg/kg、例えば、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kg、または約8mg/kgである。
【0221】
当技術分野において通常の知識を有する医師または獣医師は、必要とされる薬学的製剤の有効量を容易に決定および処方することができる。例えば、医師または獣医師は、薬学的組成物において用いられる前記結合物質(例えば二重特異性抗体)の用量を、望ましい治療効果を達成するのに必要とされる用量よりも低いレベルで開始し、望ましい効果が達成されるまで投与量を段々と増やすことができる。一般的に、本発明の結合物質(例えば二重特異性抗体)の適切な一日量は、治療効果を生じるのに有効な最小用量である化合物量である。投与は、例えば、非経口、例えば、静脈内、筋肉内、または皮下でもよい。一態様において、前記結合物質(例えば二重特異性抗体)は、mg/m2単位で算出された毎週投与量で注入されることによって投与されてもよい。このような投与量は、例えば、用量(mg/kg)×70:1.8に従う、上記で示されたmg/kg投与量に基づいてもよい。このような投与は、例えば、1~8回、例えば、3~5回繰り返されてもよい。投与は、2~24時間、例えば、2~12時間の期間にわたる連続注入によって行われてもよい。一態様において、毒性副作用を弱めるために、前記結合物質(例えば二重特異性抗体)は、長期間にわたる、例えば、24時間を超える、ゆっくりとした連続注入によって投与されてもよい。
【0222】
前記薬学的製剤は、1週間に1回与えられる場合、8回まで、例えば、4~6回の、ある決まった用量として算出された、毎週投与量で投与されてもよい。このようなレジメンは、例えば、6ヶ月後または12ヶ月後に、必要に応じて1回または複数回、繰り返されてもよい。このような、ある決まった投与量は、70kgの体重推定量で、上記で示されたmg/kg投与量に基づいてもよい。投与量は、投与時に本発明の結合物質(例えば二重特異性抗体)の血中量を測定することによって、例えば、生物学的試料を採取し、本発明の抗体のPD-L1抗原抗原結合領域を標的とする抗イディオタイプ抗体を使用することによって決定または調節されてもよい。
【0223】
前記薬学的製剤は維持療法として、例えば、6ヶ月またはそれ以上にわたって1週間に1回、投与されてもよい。
【0224】
前記薬学的製剤はまた、がんを発症するリスクを下げるために、がん進行における事象の発生の開始を遅延するために、および/またはがんが寛解している場合には再発リスクを下げるために予防的に投与されてもよい。
【0225】
上記で定義されたように使用する場合、本発明による薬学的製剤は、好ましくは静脈内投与される。
【0226】
上記で定義された使用または方法は、1種類または複数種類のさらなる治療用物質、例えば化学療法剤と組み合わせて、薬学的製剤を使用することを含んでもよい。
【0227】
本発明は以下の実施例によってさらに例示され、以下の実施例は本発明の範囲を限定すると解釈してはならない。
【0228】
【実施例】
【0229】
実施例1: CD137抗体の作製
WO2016/110584の実施例1に記載の通りに、抗体CD137-009を作製した。手短に言うと、ウサギを、ヒトCD137-Fc融合タンパク質を含有するタンパク質混合物で免疫した。単一B細胞を血液から選別し、CD137特異的抗体が産生されたかどうかELISAおよびフローサイトメトリーによってスクリーニングした。スクリーニング陽性B細胞からRNAを抽出し、配列決定を行った。重鎖および軽鎖の可変領域を遺伝子合成し、以下のアミノ酸変異:L234F、L235E、D265AおよびF405L(FEAL)またはK409R(FEAR)を含むヒトIgG1重鎖を含むヒトIgG1κ発現ベクターまたはヒトIgG1λ発現ベクターにクローニングした。アミノ酸位置の数字はEUナンバリングに従う(SEQ ID NO:25に対応する)。キメラCD137抗体(CD137-009)の可変領域配列を本明細書中の配列表SEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:12に示した。
【0230】
実施例2: ウサギ(キメラ)CD137抗体のヒト化
ウサギ抗CD137-009からのヒト化抗体配列をAntitope(Cambridge, UK)において作製した。ヒト化抗体配列を、生殖系列ヒト化(CDRグラフティング)技術を用いて作製した。ヒト化V領域遺伝子は、ウサギ抗体のVHおよびVκアミノ酸配列との最も近い相同性をもつヒト生殖系列配列に基づいて設計した。一連の7つのVHおよび3つのVκ(VL)生殖系列ヒト化V領域遺伝子を設計した。非ヒト親抗体V領域の構造モデルをSwiss PDBを用いて作成し、抗体の結合特性に重要な可能性があるV領域フレームワーク中のアミノ酸を特定する目的で分析した。1つまたは複数の変種CDRがグラフトされた抗体に組み込むために、これらのアミノ酸に注目した。ヒト化設計の土台として使用した生殖系列配列を表2に示した。
【0231】
(表2)最もよくマッチしているヒト生殖系列VセグメントおよびJセグメントの配列
【0232】
次いで、潜在的なT細胞エピトープの発生率が最も低い変種配列を、Antitopeの知的財産権下にあるインシリコ技術、iTope(商標)およびTCED(商標)(T Cell Epitope Database)を用いて選択した(Perry, L.C.A, Jones, T.D. and Baker, M.P. New Approaches to Prediction of Immune Responses to Therapeutic Proteins during Preclinical Development (2008). Drugs in R&D 9 (6): 385-396; 20 Bryson, C.J., Jones, T.D. and Baker, M.P. Prediction of Immunogenicity of Therapeutic Proteins (2010). Biodrugs 24 (1):1-8)。最後に、設計された変種のヌクレオチド配列はコドン最適化されている。
【0233】
ヒト化CD137抗体(CD137-009-HC7LC2)の可変領域配列を本明細書中の配列表SEQ ID NO:15およびSEQ ID NO:16に示した。
【0234】
実施例3: CD137抗体の結合に重要なドメインを決定するための、イノシシCD137またはゾウCD137とヒトCD137との間のDNAシャフリング
CD137抗体とヒトCD137との結合に重要なドメインを決定するために、DNAシャフリングをヒトCD137とイノシシCD137(サス スクロファ; XP_005665023)との間で、またはヒトCD137とアフリカゾウCD137(ロクソドンタ アフリカーナ; XP_003413533)との間で行った。シャッフル構築物を、ヒトドメインをイノシシ(シャッフル構築物1-4、6)ドメインまたはゾウ(シャッフル構築物5)ドメインと交換することによって、ヒトCD137をコードするDNAから調製した。シャッフル構築のアミノ酸配列を表1に示した。
【0235】
ヒトCD137中のドメインが抗CD137抗体の結合に重要である場合には、このドメインとイノシシドメインまたはアフリカゾウドメインが交換されたら結合は失われる。ヒトCD137とイノシシCD137との間の相同性およびヒトCD137とアフリカゾウCD137との間の相同性はそれぞれ70.2%および74.5%である。これらの2種が選択される必要条件は、アフリカゾウおよびイノシシの関心対象のドメインがヒトと比較して十分な差があり、その結果、ミスフォールディングまたは発現消失のリスクを最小化するのに必要な重大な構造上の相互作用を残しながら結合消失が起こることであった。
図1は、ヒトCD137、イノシシCD137、およびアフリカゾウCD137の配列アラインメントを示す。
図2は、示されたような、イノシシCD137ドメインまたはアフリカゾウCD137ドメインを含有するヒトCD137の構築物を示す。
【0236】
3×106個のHEK293T-17細胞を、10%FCS(Biochrom,カタログ番号S0115)を含有する20 mL RPMI 1640 GlutaMAX培地が入っているT75培養フラスコ(Greiner Bio-One,カタログ番号658175)に播種した。O/Nインキュベーション後に、細胞に、構成的に活性なヒト伸長因子-1α(EF-1α)プロモーターの下流にシャッフル構築物またはイノシシCD137、アフリカゾウCD137、もしくはヒトCD137をコードする発現ベクターを、TransIT(登録商標)-LT1トランスフェクション試薬, Mirus Bio(VWR International,カタログ番号731-0029)を用いて製造業者の説明書に従って一過的に形質導入した。翌日、細胞を1.5mL Accutase(Sigma Aldrich,カタログ番号A6964)(37℃で5分間のインキュベーション)を用いて収集し、シャッフル構築物ならびにヒトCD137、アフリカゾウCD137、およびイノシシCD137の表面発現を測定するために、ならびに抗体クローンと様々なシャッフル構築物との結合を測定するために、フローサイトメトリーを本質的に前記のように行った。前記構築物の細胞表面発現を測定するために、形質導入された細胞を、FACS緩衝液(4℃、20分)中で1μg/mLヤギポリクローナル抗ヒトCD137(R&D Systems,カタログ番号AF838)と共にインキュベートした後に、APC標識抗ヤギIgG(H+L)(R&D Systems,カタログ番号F0108)(4℃、20分)と共にインキュベートした。様々なCD137抗体クローンとシャッフル構築物発現細胞との結合を、形質導入された細胞を1μg/mLの抗体クローンと共にインキュベートし、その後にAPC標識AffiniPure F(ab')2断片(1:50最終希釈;Jackson,カタログ番号109-136-127)と共にインキュベートすることによって測定した。
【0237】
全てのCD137シャッフル構築物ならびにヒトCD137、アフリカゾウCD137、およびイノシシCD137を細胞表面上で発現させた。発現レベルは似ていた(
図3)。
【0238】
図4は、CD137-009がアフリカゾウCD137およびイノシシCD137に対して結合消失を示したことを示す。CD137-009はまた、ヒトCD137との結合と比較してシャッフル構築物5に対して結合消失も示した。
【0239】
実施例4: PD-L1抗体の作製
免疫化およびハイブリドーマ作製をAldevron GmbH(Freiburg, Germany)において行った。ヒトPD-L1のアミノ酸19-238をコードするcDNAをAldevronの知的財産権下にある発現プラスミドにクローニングした。抗体PD-L1-547は、手持ち式パーティクルボンバードメント装置(「遺伝子銃」)を用いたヒトPD-L1 cDNAコーティング金粒子の皮内適用を用いてOmniRat動物(完全ヒトイディオタイプをもつ多様な抗体レパートリーを発現するトランスジェニックラット; Ligand Pharmaceuticals Inc., San Diego, USA)を免疫することによって作製した。一連の免疫後に血清試料を収集し、ヒトPD-L1を発現させるために上記の発現プラスミドを一過的にトランスフェクトしたHEK細胞に対してフローサイトメトリーにおいて試験した。抗体産生細胞を単離し、標準的な手法に従ってマウスミエローマ細胞(Ag8)と融合させた。PD-L1特異的抗体を産生するハイブリドーマに由来するRNAを抽出し、配列決定を行った。重鎖および軽鎖の可変領域(SEQ ID NO:17および21)を遺伝子合成し、以下のアミノ酸変異:L234F、L235E、D265AおよびK409R(FEAR)を含むヒトIgG1重鎖を含むヒトIgG1λ発現ベクターにクローニングした。アミノ酸位置の番号はEUナンバリングに従う(SEQ ID NO:24に対応する)。
【0240】
実施例5: 2-MEA誘導性Fabアーム交換による二重特異性抗体の作製
二重特異性IgG1抗体を、管理された還元条件下でのFabアーム交換によって作製した。この方法の基盤は、WO2011/131746に記載の通りに特定のアッセイ条件下でヘテロ二量体形成を促進する相補的CH3ドメインの使用である。相補的CH3ドメインを有する抗体ペアを生成するために、F405LおよびK409R(EUナンバリング)変異を関連抗体に導入した。
【0241】
二重特異性抗体を作製するために、各抗体の最終濃度が0.5mg/mLである2種類の親相補的抗体を、総体積100μLのPBS中で、75mM 2-メルカプトエチルアミン-HCl(2-MEA)と共に31℃で5時間インキュベートした。スピンカラム(Microcon遠心フィルター,30k,Millipore)を用いて製造業者のプロトコールに従って還元剤2-MEAを除去することによって還元反応を止めた。二重特異性抗体を、実施例1および4からの以下の抗体を組み合わせることによって作製した。
- PD-L1-547-FEAR抗体と組み合わせたCD137-009-FEAL抗体、
- CD137-009-FEARと組み合わせたPD-L1-547-FEAL抗体、
- CD137-009-HC7LC2-FEAR抗体と組み合わせたPD-L1-547-FEAL抗体、
- 第1のアームとしてgp120特異的抗体である抗体b12(Barbas,CF.J Mol Biol.1993 Apr 5;230(3):812-23)を用いて、PD-L1-547-FEAR抗体、CD137-009-FEAR、またはCD137-009-HC7LC2-FEAR抗体と組み合わせたb12-FEAL抗体、
- PD-L1-547-FEALまたはCD137-009-FEALとb12-FEAR抗体。
【0242】
実施例6: PD-1/PD-L1相互作用に対するPD-L1抗体の効果
PD-1およびPD-L1の相互作用に対する一価PD-L1抗体b12-FEAL×PD-L1-547-FEARの効果を、Promega(Madison,USA)が開発したPD-1/PD-L1阻害バイオアッセイ法において測定した。これは、2種類の遺伝子操作された細胞株:ヒトPD-1と、NFAT応答エレメント(NFAT-RE)によって動かされるルシフェラーゼレポーターとを発現するジャーカットT細胞であるPD-1エフェクター細胞、およびヒトPD-L1と、抗原非依存的にコグネイトTCRを活性化するように設計された操作された細胞表面タンパク質とを発現するCHO-K1細胞であるPD-L1 aAPC/CHO-K1細胞からなる生物発光細胞アッセイ法である。2種類の細胞タイプが同時培養されると、PD-1/PD-L1相互作用によって、TCRシグナル伝達、および、NFAT-REを介したルミネセンスが阻害される。PD-1/PD-L1相互作用をブロックする抗体を添加すると阻害シグナルが放出されて、TCR活性化、および、NFAT-REを介したルミネセンスが生じる。
【0243】
PD-L1 aAPC/CHO-K1細胞(Promega,カタログ番号J109A)を製造業者のプロトコールに従って解凍し、10%胎仔ウシ血清(FBS; Promega, カタログ番号J121A)を含有するHam’s F12培地(Promega, カタログ番号J123A)に再懸濁し、96ウェル平底培養プレート(CulturPlate-96, Perkin Elmer, カタログ番号6005680)にプレートした。プレートを、5%CO2、37℃で16時間インキュベートした。上清を除去し、抗体の段階希釈液(5~0.001μg/mLの最終濃度;1%胎仔ウシ血清[FBS; Promega、カタログ番号J121A]を含有するRPMI1640[Lonza、カタログ番号BE12-115F]で4倍希釈)を添加した。PD-1エフェクター細胞(Promega, カタログ番号J115A; 製造業者のプロトコールに従って解凍し、RPMI/1%FBSに再懸濁した)を添加した。プレートを、5%CO2、37℃で6時間インキュベートした。室温まで平衡化した後に、40μl Bio-Glo試薬(製造業者のプロトコールに従ってBio-Gloルシフェラーゼアッセイ緩衝液[Promega, カタログ番号G7198]で再構成したBio-Gloルシフェラーゼアッセイ基質[Promegaカタログ番号G720B])を各ウェルに添加した。プレートを室温で5~10分間インキュベートし、ルミネセンスを、EnVision Multilabel Reader(PerkinElmer)を用いて測定した。対照(抗体を添加していない)と比べたPD1-PD-L1相互作用に対する効果を以下の通りに算出した。
誘導倍率 = RLU(誘導 - バックグラウンド)/RLU(抗体なし対照 - バックグラウンド)
RLUは相対光量(relative light unit)である。
【0244】
図5は、一価抗体b12-FEAL×PD-L1-547-FEARがPD1-PD-L1相互作用を効率的に阻害したことを示す。
【0245】
実施例7: PD-L1およびCD137に結合する二重特異性抗体による効果を測定するための抗原特異的CD8
+T細胞増殖アッセイ法
CD137×PD-L1二重特異性抗体の予想された作用機序の模式図を
図6に示した。
【0246】
抗原特異的アッセイ法においてPD-L1とCD137を標的とする二重特異性抗体によるT細胞増殖の誘導を測定するために、樹状細胞(DC)にクローディン-6インビトロ転写RNA(IVT-RNA)をトランスフェクトして、クローディン-6抗原を発現させた。T細胞にPD-1 IVT-RNAおよびクローディン-6特異的HLA-A2制約(restricted)T細胞受容体(TCR)をトランスフェクトした。このTCRは、DC上のHLA-A2において提示されたクローディン-6由来エピトープを認識することができる。CD137×PD-L1二重特異性抗体は、単球由来樹状細胞または腫瘍細胞上で内因的に発現させたPD-L1とT細胞上のCD137を架橋して、阻害性PD-1/PD-L1相互作用を阻害すると同時にCD137をクラスター化し、その結果としてT細胞を増殖することができる。T細胞上で発現させたCD137受容体がクラスター化するとCD137受容体が活性化され、それによって共刺激シグナルがT細胞に送達される。
【0247】
HLA-A2+末梢血単核球(PBMC)を健常ドナー(Transfusionszentrale, University Hospital, Mainz, Germany)から得た。単球を、磁気活性化細胞選別(MACS)技術によって、抗CD14マイクロビーズ(Miltenyi;カタログ番号130-050-201)を用いて製造業者の説明書に従ってPBMCから単離した。末梢血リンパ球(PBL, CD14陰性画分)を、将来のT細胞単離のために凍結した。未熟DC(iDC)に分化させるために、1×106単球/mlを、5%ヒトAB血清(Sigma-Aldrich Chemie GmbH,カタログ番号H4522-100ML)、ピルビン酸ナトリウム(Life technologies GmbH,カタログ番号11360-039)、非必須アミノ酸(Life technologies GmbH,カタログ番号11140-035)、100IU/mLペニシリン-ストレプトマイシン(Life technologies GmbH,カタログ番号15140-122)、1000IU/mL顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF; Miltenyi,カタログ番号130-093-868)、および1,000IU/mLインターロイキン-4(IL-4; Miltenyi,カタログ番号130-093-924)を含有するRPMI GlutaMAX(Life technologies GmbH,カタログ番号61870-044)の中で5日間培養した。これらの5日の間に1回、培地の半分を新鮮な培地と交換した。非付着細胞を収集することでiDCを採取し、2mM EDTAを含有するPBSと共に37℃で10分間インキュベートすることによって付着細胞を剥離した。洗浄後に、将来の抗原特異的T細胞アッセイ法のために、iDCを、10%v/v DMSO(AppliChem GmbH, カタログ番号A3672,0050)+50%v/vヒトAB血清を含有するRPMI GlutaMAXに入れて凍結した。
【0248】
抗原特異的CD8+T細胞増殖アッセイ法を開始する1日前に、同じドナーに由来する凍結したPBLおよびiDCを解凍した。CD8+T細胞を、抗CD8マイクロビーズ(Miltenyi、カタログ番号130-045-201)を用いたMACS技術によって製造業者の説明書に従ってPBLから単離した。BTX ECM(登録商標)830 Electroporation System装置(BTX; 500V、1×3msパルス)を用いて、250μL X-Vivo15(Biozym Scientific GmbH,カタログ番号881026)が入っている4mmエレクトロポレーションキュベット(VWR International GmbH,カタログ番号732-0023)の中で、約10~15×106個のCD8+T細胞をクローディン-6特異的マウスTCRのα鎖コードインビトロ翻訳(IVT)-RNA 10μgとβ鎖コードIVT-RNA 10μg(HLA-A2制約; WO2015150327A1に記載)と10μgのPD-1コードIVT-RNAで電気穿孔した。電気穿孔の直後に、細胞を、5%ヒトAB血清を加えた新鮮なIMDM培地(Life Technologies GmbH,カタログ番号12440-061)に移し、37℃、5%CO2で少なくとも1時間休ませた。T細胞を、PBSに溶解した1.6μMカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE; Invitrogen,カタログ番号C34564)を用いて、製造業者の説明書に従って標識し、5%ヒトAB血清を加えたIMDM培地中でO/Nインキュベートした。
【0249】
250μL X-Vivo15培地中で前記(300V、1×12msパルス)のようにエレクトロポレーションシステムを用いて、5×106個までの解凍したiDCを5μgの完全長クローディン-6コードIVT-RNAで電気穿孔し、5%ヒトAB血清を加えたIMDM培地中でO/Nインキュベートした。
【0250】
翌日、細胞を収集した。DC上でのクローディン-6およびPD-L1の細胞表面発現と、T細胞上でのTCRおよびPD-1の細胞表面発現とをフローサイトメトリーによってチェックした。DCをAlexa647結合CLDN6特異的抗体(非市販品; 社内で作製)および抗ヒトCD274抗体(PD-L1, eBioscienes,カタログ番号12-5983)で染色し、T細胞を抗マウスTCRβ鎖抗体(Becton Dickinson GmbH,カタログ番号553174)および抗ヒトCD279抗体(PD-1, eBioscienes,カタログ番号17-2799)で染色した。5%ヒトAB血清を加えたIMDM GlutaMAXが入っている96ウェル丸底プレートの中で、二重特異性抗体または対照抗体の存在下で5,000個の電気穿孔したDCを50,000個の電気穿孔したCFSE標識T細胞と共にインキュベートした。5日後にT細胞増殖をフローサイトメトリーによって測定した。細胞分裂を示すCFSEピークに基づくT細胞増殖の詳細な分析をFlowJoソフトウェアで行った。結果において、「分裂細胞%」は、分裂した細胞のパーセントを示し、「増殖指数」は、分裂した細胞の分裂回数の平均を示す。
【0251】
1つの無関係の結合アームを有する一価PD-L1対照抗体、b12-FEAL×PD-L1-547-FEARは、(通常のIgG1として)b12とのインキュベーションと比較してT細胞増殖をある程度まで強化し、二重特異性抗体CD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEARは強力なCD8
+T細胞増殖を誘導した(
図7)。これは分裂細胞パーセントの増加(
図7BおよびD左パネル)と増殖指数の増加(
図7BおよびD右パネル)によって反映された。
【0252】
さらに、このアッセイ法では、CD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEARのEC
50値を求めた。この目標に向かって、二重特異性抗体を1~0.00015μg/mLの3倍段階希釈で分析した(
図8)。分裂細胞パーセントおよび増殖指数をFlowJoソフトウェアで求めた。曲線を、GraphPad Prism 5ソフトウェア(GraphPad Software, San Diego, CA, USA)を用いて非線形回帰(勾配変化のあるシグモイド用量反応)によって分析した。CD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEARの抗原特異的T細胞増殖の誘導のEC
50値は「分裂細胞%」については0.003492μg/mL、「増殖指数」については0.005388μg/mLであった。
【0253】
実施例8: 活性なPD-1/PD-L1軸を用いた抗原特異的T細胞アッセイ法における、PD-L1およびCD137を標的とする二重特異性抗体と、2種類の一価結合CD137抗体およびPD-L1抗体の組み合わせまたは2種類の親抗体の組み合わせ(PD-L1-547+CD137-009)との比較
PD-L1とCD137を標的とする二重特異性抗体によるT細胞増殖の誘導を測定するために、活性なPD-1/PD-L1軸を用いた抗原特異的T細胞増殖アッセイ法を行った(実施例7に類似した一般的なアッセイセットアップ)。手短に言うと、5%ヒトAB血清を加えたIMDM GlutaMAXが入っている96ウェル丸底プレートの中で、二重特異性抗体または対照抗体の存在下で、クローディン-6-IVT-RNAで電気穿孔した5,000個のDCを、クローディン-6特異的TCRおよびPD1-IVT-RNAで電気穿孔した50,000個のCFSE標識T細胞と共にインキュベートした。5日後にT細胞増殖をフローサイトメトリーによって測定した。細胞分裂を示すCFSEピークに基づくT細胞増殖の詳細な分析をFlowJoソフトウェアを用いて行った。結果において、「分裂細胞%」は、分裂した細胞のパーセントを示し、「増殖指数」は、分裂した細胞の分裂回数の平均を示す。
【0254】
1つの無関係の結合アームを有する一価CD137対照抗体であるCD137-009-FEAL×b12-FEARも、対応する二価親抗体CD137-009もIgG1-b12と比較した場合にT細胞増殖に影響を及ぼさなかった。対照的に、一価PD-L1対照抗体ならびに二価親抗体(それぞれ、b12-FEAL×PD-L1-547-FEARおよびPD-L1-547)とのインキュベーションは、IgG1-b12対照抗体とのインキュベーションと比較してT細胞増殖を中程度に高めた。組み合わされた一価対照抗体(CD137-009-FEAL×b12-FEAR+b12-FEAL×PD-L1-547-FEAR)および組み合わされた対応する親抗体(CD137-009+PD-L1-547)と共にインキュベートすると、同等のレベルのT細胞増殖を検出することができた。対照的に、二重特異性抗体CD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEARは強力なCD8
+T細胞増殖を誘導し、これは両方の組み合わされた対照(一価および二価)より優れていた(
図9)。これは分裂細胞パーセントの増加(
図9B)ならびに増殖指数の増加(
図9C)によって反映された。
【0255】
実施例9: 腫瘍浸潤リンパ球に対するCD137×PD-L1二重特異性抗体の効果を評価するためのエクスビボTIL増大アッセイ法
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)に対するCD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEARの効果を評価するために、ヒト腫瘍組織のエクスビボ培養を以下の通りに行った。新鮮なヒト腫瘍組織切除標本を、スパチュラまたはセロロジカルピペットを用いて、洗浄培地を含む6ウェルプレート(Fisher Scientificカタログ番号10110151)の1個のウェルから単離した腫瘍塊を次のウェルに移すことによって3回洗浄した。洗浄培地は、1%Pen/Strep(Thermo Fisher,カタログ番号15140-122)および1%Fungizone(Thermo Fisher,カタログ番号15290-026)を加えたX-VIVO 15(Biozym, カタログ番号881024)で構成された。次に、腫瘍を外科手術刀(Braun/Roth, カタログ番号5518091 BA223)で解剖し、直径が約1~2mmの断片に切断した。2つの断片を、それぞれ、1mL TIL培地(X-VIVO 15, 10%ヒト血清アルブミン(HSA, CSL Behring,カタログ番号PZN-6446518)1%Pen/Strep、1%Fungizoneを含有し、10U/mL IL-2(Proleukin(登録商標)S, Novartis Pharma,カタログ番号02238131))を加えた24ウェルプレート(VWR international,カタログ番号701605)の1個のウェルに入れた。CD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEARを、示された最終濃度で添加した。培養プレートを37℃および5%CO2でインキュベートした。72時間後に、示された濃度の二重特異性抗体を含有する新鮮なTIL培地1mLを各ウェルに添加した。TILクラスターが発生したかどうか1日おきにウェルを顕微鏡によってモニタリングした。それぞれのウェルに25個より多いTILマイクロクラスターが検出された場合にウェルを1つ1つ移した。TIL培養物を分割するために、24ウェルプレートのウェル中の細胞を2mL培地に再懸濁し、6ウェルプレートのウェルに移した。その上、さらに2mLのTIL培地を各ウェルに加えた。
【0256】
10~14日の全培養期間後に、TILをフローサイトメトリーによって収集および分析した。細胞を以下の試薬で染色した。全ての試薬を染色用緩衝液(staining-buffer)、(5%FCSおよび5mM EDTAを含有するD-PBS)、抗ヒトCD4-FITC(Miltenyi Biotec,カタログ番号130-080-501)、抗ヒトCD3-PE-Cy7(BD Pharmingen,カタログ番号563423)、7-アミノアクチマイシンD(7-AAD, Beckman Coulter,カタログ番号A07704)、抗ヒトCD56-APC(eBioscience,カタログ番号17-0567-42)、および抗ヒトCD8-PE(TONBO,カタログ50-0088)で1:50に希釈した。異なる治療群間で、得られた細胞を定量的に比較するために、BD(商標)CompBeads(BD biosciences,カタログ番号51-90-9001291)を加えたFACS緩衝液での最後の洗浄工程後に細胞ペレットを再懸濁した。フローサイトメトリー分析をBD FACSCanto(商標)IIフローサイトメーター(Becton Dickinson)によって行い、得られたデータを、FlowJo 7.6.5ソフトウェアを用いて分析した。得られたビーズ数に対して得られた7AAD陰性細胞画分を標準化することによって、6ウェルプレートの対応するウェルに関係する1,000個のビーズあたりの相対的な生TIL数、CD3+CD8+T細胞数、CD3+CD4+T細胞数、およびCD3-CD56+NK細胞数を算出した。
【0257】
図10は、ヒト非小細胞肺がん組織標本からのTIL増大の分析を示す。ここでは、以下の濃度:0.01μg/mL、0.1μg/mL、および1μg/mLのCD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEARを添加した。抗体を添加しなかった同じ患者に由来する組織標本は陰性対照として役立った。10日間培養した後に、TILを収集し、フローサイトメトリーによって分析した。24ウェルプレートの異なるウェルに由来する各抗体濃度について5つの試料(5つの最初のウェルに由来する)を測定した。二重特異性抗体と共に培養した全ての試料において、生TIL数は、抗体が無い対照試料と比較して著しく増加した。全体的に見て、0.1μg/mL CD137-009-FEAL×PD-L1-547-FEARを培養物に添加した場合に、生TILの10倍までの増大が観察された(
図10A)。CD3
+CD4
+Tヘルパー細胞はわずかにしか増大しなかったのに対して(
図10C; 2.8倍増大)、対照的に、CD3
-CD56
+NK細胞については最も顕著なTIL増大が認められた(
図10D; 対照と比較して64倍までの増大)。CD3
+CD8
+細胞障害性Tリンパ球(CTL)に対する強力な効果も観察された(
図10B; 対照と比較して7.4倍の増大)。
【0258】
実施例10: OT-I CD8+養子T細胞移入後のC57BL/6マウスにおけるオボアルブミン特異的T細胞増殖に対する、mPD-L1およびmCD137に結合する代理二重特異性マウス抗体の効果
代理マウス二重特異性抗体mCD137-3H3×mPD-L1-MPDL3280A、mCD137-3H3×b12、およびmPD-L1-MPDL3280A×b12を、管理されたFabアーム交換に基づいてマウス二重特異性抗体を作製する方法(Labrijn et al, 2017 Sci Rep. 7(1): 2476およびWO2016097300)を用いて作製した。
【0259】
マウス4-1BBに結合するモノクローナル抗体3H3をBioXcell(カタログ番号BE0239)から得て、タンパク質をProtTechにおいて配列決定した。特定されたcDNA配列を、知的財産権下にある方法を用いて推定した。重鎖および軽鎖の可変領域を遺伝子合成し、以下のアミノ酸変異:L234A、L235A、F405L、およびR411Tを含むマウスIgG2a定常領域を含むマウスIgG2a発現ベクターにクローニングした。同様に、b12可変領域を、この発現ベクターにクローニングした。
【0260】
抗体MPDL3280A(重鎖可変配列および軽鎖可変配列をそれぞれSEQ ID NO:50 および51に示した)はヒトPD-L1とマウスPD-L1の両方に結合すると述べられている。この抗体の重鎖および軽鎖の可変領域を、以下のアミノ酸変異:L234A、L235A、T370K、およびK409Rを含むマウスIgG2a定常領域を含むマウスIgG2a発現ベクターにクローニングした。
【0261】
前記のように管理された還元条件下で、二重特異性マウス(本質的にはラット-ヒト-マウスキメラ)抗体をFabアーム交換によって作製した。
【0262】
雌C57BL/6JOlaHsdマウス(Envigo RMS GmbH, Rossdorf, Germany)、6~8週齢、体重17~24gを、試験登録前に少なくとも6日間にわたって動物施設に順化した。これらのマウスをレシピエントとして使用した。OT-1およびThy1.1対立遺伝子の両方についてホモ接合性の雌または雄C57BL/6 Thy1.1×C57BL/6J OT-1マウスを社内で交配させ(C57BL/6-Tg(TcraTcrb)1100Mjb/CrlおよびB6.PL-Thy1a/CyJマウスから異種交配させた)、ドナーとして使用した。マウスは食物(ssniff M-Z autoclavable Soest, Germany)と滅菌水を自由に摂取することができ、12時間明/暗サイクル、22℃±2℃、55%±15%の相対湿度で飼育した。
【0263】
試験開始日に、C57BL/6 Thy1.1×C57BL/6J OT-1ドナーマウスを屠殺し、脾臓を単離した。脾臓を機械的に解離し、脾細胞ペレットを赤血球溶解緩衝液(8.25g/L NH4Cl, 1g/L KHCO3, 0.1 mM EDTA, pH7)に再懸濁することによって赤血球を溶解した。その後に、脾細胞をDulbecco’s PBS(DPBS)で洗浄し、CD8+T細胞を、autoMACS Pro Separator (both Miltenyi Biotec GmbH, Bergisch Gladbach, Germany)と組み合わせたCD8a (Ly-2)マイクロビーズ, マウスを用いて単離した。CD8+/OT-1+/Thy1.1+T細胞(2.5~5×105個の細胞)を、C57BL/6JOlaHsdレシピエントマウス1匹につき総体積200μLで後眼窩に注射した。養子細胞移入の翌日に、レシピエントマウスの後眼窩に抗原刺激として100μgオボアルブミン/200μL PBSを「ワクチン接種した」。6時間後に、マウスの後眼窩を、それぞれの二重特異性抗体で処置した。詳しくは、マウス1匹につき100μgまたは20μgのmCD137-3H3×mPD-L1-MPDL3280A、mCD137-3H3×b12、またはmPD-L1-MPDL3280A×b12抗体を注射した。普通のPBSの注射をベースライン参照として使用し、未処置動物(ドナー細胞のみを与えたマウス)を陰性対照として使用した。6日後に、100μLの血液を後眼窩経路を介して採取し、BD FACSCanto IIサイトメーター(Becton Dickinson GmbH)によってV500ラット抗マウスCD45(Becton Dickinson GmbH, カタログ番号561487)、FITCラット抗マウスCD8a(Life technologies, カタログ番号MCD0801)、およびAlexa Fluor 647抗ラットCD90/マウスCD90.1(BioLegend Europe, カタログ番号202508)抗体を用いてThy1.1+CD8+T細胞があるかどうか分析した。Thy1.1(CD90.1)陽性をOT-1特異的T細胞の代わりとして使用した。
【0264】
図11Aは、OT-1養子T細胞移入アッセイ法概略の模式図である。
図11Bは、フローサイトメトリーによって測定された場合のThy1.1
+CD8
+T細胞頻度の分析を示す。それぞれの二重特異性抗体治療モダリティーについてn=5マウスを使用した。オボアルブミン抗原刺激単独で、未処置動物と比較してThy1.1+CD8+T細胞頻度が検出可能に増加した。興味深いことに、1つの無関係のb12結合アームを有する一価対照抗体であるmCD137-3H3-×b12とmPD-L1-MPDL3280A×b12は両方とも、オボアルブミンのみで処置した動物と比較してオボアルブミン特異的OT-1 T細胞増大を増やすことができなかった。対照的に、二重特異性抗体mCD137-3H3×mPD-L1-MPDL3280Aは、試験した用量レベル(20μgおよび100μgの抗体)で、10~20%のCD8
+/OT-1
+/Thy1.1
+T細胞(全T細胞集団に対する%)のT細胞頻度につながる強力なOT-1 T細胞増殖を誘導することができた。
【0265】
実施例11: 皮下同系CT26マウス腫瘍モデルにおける腫瘍成長に対する、mPD-L1およびmCD137に結合する代理二重特異性マウス抗体の効果
雌BALB/c Rjマウス(Janvier, Genest-St.-Isle, France)、6~8週齢、体重17~24gを試験登録前に少なくとも6日間にわたって順化した。マウスは食物(ssniff M-Z autoclavable Soest, Germany)と滅菌水を自由に摂取することができ、12時間明/暗サイクル、22℃±2℃、55%±10%の相対湿度で飼育した。CT26細胞をATCC(登録商標)(カタログ番号CRL-2638(商標))から得て、10%胎仔ウシ血清(FBS)(Biochrom, カタログ番号S0115)を加えたRoswell Park Memorial Institute培地(RPMI)1640培地、GlutaMAX(商標)(Life technologies, カタログ番号61870-044)に入れて5%CO2、37℃で培養した。前記細胞をStemPro(登録商標)Accutase(登録商標)細胞解離試薬(Life technologies, カタログ番号A1110501)を用いて収集し、DPBS(Life technologies, カタログ番号14190-169)に再懸濁し、マウス1匹につき0.5×106個の細胞/100μlを雌BALB/c Rjマウスの剪毛した右側腹部に皮下(SC)移植した。腫瘍量を2~3日ごとにカリパス測定によって評価し、式: a2×b/2を用いて垂直直径(perpendicular diameter)の積として表した。式中、bは2つの直径のうち長い方の直径である(a<b)。30mm3の平均腫瘍量に達すると動物を4群に層別化した。翌日、mPD-L1とmCD137に結合する20μgの二重特異性抗体(mCD137-3H3×mPD-L1-MPDL3280A)の腹腔内注射、1つの無関係の結合アームを有する一価mCD137対照抗体またはmPD-L1対照抗体(mCD137-3H3×b12およびmPD-L1-MPDL3280A×b12)、または陰性対照であるPBSを用いて処置を開始した。投与計画は最初の8回の注射については2~3日ごとであり、その後に、実験が終了するまで7日ごとの注射であった。腫瘍細胞接種後29日目に、後眼窩経路を介して100μLの血液を採取し、BD FACSCanto IIサイトメーター(Becton Dickinson GmbH)によってV500ラット抗マウスCD45(Becton Dickinson GmbH, カタログ番号561487)、FITCラット抗マウスCD8α(Life technologies, カタログ番号MCD0801)抗体、およびT-Select H-2Ld MuLV gp70四量体-SPSYVYHQF-APC(MBL Ltd. Corp., カタログ番号TS-M521-2)を用いてgp70特異的CD8+T細胞について分析した(gp70は、CT26腫瘍細胞上で発現しているエンベロープタンパク質である)。
【0266】
図12Aは、4つ全ての治療群の腫瘍成長曲線を示す。個々の線は1個の腫瘍/マウスを表している。それぞれの治療群の無増悪生存期間(PFS)頻度を各プロットの下部に示した。
図12Bは、腫瘍細胞接種後71日目に実験が終了するまでの、対応するカプラン・マイヤー生存曲線を示す。
図12Cは、フローサイトメトリーによって測定された場合のgp70四量体
+CD8
+T細胞頻度の分析を示す。それぞれの治療モダリティーについて、腫瘍細胞移植後29日目でもまだ生存しているマウスを全て分析した。要約すると、mPD-L1とmCD137に結合する二重特異性抗体(mCD137-3H3×mPD-L1-MPDL3280A)によって最も効率的に腫瘍が管理され、10匹のうち5匹の(すなわち、50%)動物が完全に腫瘍退縮した。比較すると、mCD137-3H3×b12対照については、わずかに弱いが依然として目立つ抗腫瘍効果が観察された。処置によって、11匹のうち3匹の(すなわち、27%)動物が腫瘍を拒絶することができた。両症例とも、完全寛解したマウスは全て実験終了まで腫瘍が無いままであった。著しい対照をなして、mPD-L1-MPDL3280A×b12処置コホートとPBS対照は両方とも腫瘍量を管理することができず、mPD-L1-MPDL3280A×b12処置によって、腫瘍細胞接種後15日目~30日目の間に11匹のうち2匹(すなわち、18%)の動物において少なくともいくらかの断続的な腫瘍成長阻害が起こった。gp70四量体に結合することができたCD8+T細胞の頻度に注目すると、mCD137-3H3×mPD-L1-MPDL3280A処置動物において最も高いgp70特異的CD8+T細胞頻度を検出することができた(2.14%±1.52%)。比較すると、mCD137-3H3×b12(0.90%±0.46%)、mPD-L1-MPDL3280A×b12(0.94%±1.06%)、およびPBS処置対照動物(0.66%±0.49%)におけるgp70四量体
+CD8-T細胞頻度はかなり低く、これらの3つの治療モダリティー間では、わずかな差しかなかった。
【0267】
実施例12: PD-L1抗体またはb12×PD-L1二重特異性抗体と腫瘍細胞との結合
PD-L1抗体およびb12×PD-L1二重特異性抗体と、ヒト腫瘍細胞株MDA-MB-231(乳房腺がん;ATCC;カタログ番号HTB-26)、PC-3(前立腺腺がん;ATCC;カタログ番号CRL-1435)、およびSK-MES-1(肺扁平上皮がん;ATCC;カタログ番号HTB-58)との結合をフローサイトメトリーによって分析した。
【0268】
細胞(3~5×104個の細胞/ウェル)を、ポリスチレン96ウェル丸底プレート(Greiner bio-one,カタログ番号650101)の中で、50μL PBS/0.1%BSA/0.02%アジド(FACS緩衝液)で溶解した抗体段階希釈液(5倍希釈段階で範囲0.0001~10μg/mL)と共に4℃で30分間インキュベートした。FACS緩衝液で2回洗浄した後に、細胞を二次抗体と共に4℃で30分間インキュベートした。二次抗体として、50μL FACS緩衝液で1:500に希釈したR-フィコエリトリン(PE)結合ヤギ-抗ヒトIgG F(ab’)2(カタログ番号109-116-098, Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc., West Grove, PA)を全実験に使用した。次に、細胞をFACS緩衝液で2回洗浄し、20μL FACS緩衝液に再懸濁し、iQueスクリーナー(Intellicyt Corporation, USA)で分析した。結合曲線を、GraphPad Prism V75.04ソフトウェア(GraphPad Software, San Diego, CA, USA)を用いて非線形回帰(勾配変化のあるシグモイド用量反応)を用いて分析した。
【0269】
MDA-MB-231細胞、PC-3細胞、およびSK-MES-1細胞の原形質膜上の抗原密度を定量するために、(Poncelet and Carayon, 1985, J. Immunol. Meth. 85: 65-74)に記載のように、MPDL3280A(重鎖可変配列および軽鎖可変配列をそれぞれSEQ ID NO:50および51に示した)を用いて、定量フローサイトメトリー(QIFIKIT(登録商標), Dako; カタログ番号K0078)を行った。細胞株は、以下のPD-L1抗原密度(ABC、抗体結合能力):
●MDA-MB-231: 約21,000 ABC/細胞、
●PC-3: 約6,000 ABC/細胞、
●SK-MES-1: 約30,000 ABC/細胞
を有することが確認された。
【0270】
MDA-MB-231細胞への結合
図13(A)は、b12-FEAL×PD-L1-547-FEARとMDA-MB-231細胞の用量依存性結合を示す。最大結合は単一特異性二価PD-L1-547-FEARより大きい。
【0271】
PC-3細胞への結合
図13(B)は、b12-FEAL×PD-L1-547-FEARとPC3細胞の用量依存性結合を示す。最大結合は単一特異性二価PD-L1-547-FEARより大きい。
【0272】
SK-MES-1細胞への結合
図13(C)は、b12-FEAL×PD-L1-547-FEARとSK-MES-1細胞の用量依存性結合を示す。最大結合は単一特異性二価PD-L1-547-FEARより大きい。
【0273】
実施例13: pd-l1およびcd137に結合する二重特異性抗体の効果を測定するための非抗原特異的t細胞増殖アッセイ法
PD-L1×CD137二重特異性抗体の予想された作用機序の模式図を
図6に示した。
【0274】
ポリクローナル的に活性化されたT細胞におけるT細胞増殖の誘導を測定するために、T細胞を活性化する目的で、PBMCを、PD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEAR二重特異性抗体または対照抗体と組み合わせて最適以下の濃度の抗CD3抗体(クローンUCHT1)と共にインキュベートした。PBMC集団内でPD-L1発現細胞は二重特異性抗体のPD-L1特異的アームに結合できるのに対して、この集団内のT細胞はCD137特異的アームに結合することができる。このアッセイ法において、T細胞増殖は、二重特異性抗体を介したPD-L1発現細胞との架橋結合によって誘導され、PD-L1:PD-1相互作用の遮断によって誘導された、CD137特異的アームを介したT細胞トランス活性化の尺度であり、T細胞増殖として測定した。
【0275】
PBMCを、健常ドナー(Transfusionszentrale, University Hospital, Mainz, Germany)のバフィーコートからFicoll勾配(VWR、カタログ番号17-5446-02)を用いて得た。PBMCを、PBSに溶解した1.6μMカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)(Thermo Fisher, カタログ番号C34564)を用いて製造業者の説明書に従って標識した。1ウェルにつき75,000個のCFSE標識PBMCを96ウェル丸底プレート(Sigma Aldrich, CLS3799-50EA)に播種し、5%ヒトAB血清を加えたIMDM GlutaMAX 150μL中で、各ドナーに対して最適以下のT細胞増殖を誘導すると予め決定された最適以下の濃度の抗CD3抗体(R&D Systems, クローンUCHT1, カタログ番号MAB100; 0.03~0.1μg/mL最終濃度)および二重特異性抗体または対照抗体と共に37℃、5%CO2で4日間インキュベートした。CD4+T細胞およびCD8+T細胞の増殖を、本質的に前記のようにフローサイトメトリーによって分析した。FACS緩衝液にPE標識CD4抗体(BD Biosciences, カタログ番号555347; 1:80最終希釈度)、PE-Cy7標識CD8α抗体(クローンRPA-T8, eBioscience, カタログ番号25-0088-41; 1:80最終希釈度)、APC標識CD56抗体(eBiosciences, カタログ番号17-0567; 1:80最終希釈度)、および7-AAD(Beckman Coulter, カタログ番号A07704; 1:80最終希釈度)を含有する30μLを用いて、前記細胞を染色し、CD56+ナチュラルキラー(NK)細胞および7-AAD+死細胞を分析から排除した。試料をBD FACSCanto IIフローサイトメーター(BD Biosciences)によって増殖読み取り測定値として測定した。細胞分裂を示すCFSEピークに基づいたT細胞増殖の詳細な分析をFlowJo 10.4ソフトウェアによって行い、エクスポートされた増大指数値を用いてGraphPad Prismバージョン6.04(GraphPad Software, Inc)で用量反応曲線をプロットした。増大指数は全培養物の増大倍率を規定する。2.0の増大指数は細胞数が2倍になったことを表し、1.0の増大指数は全細胞数が変わらなかったことを表す。
【0276】
3人の異なるドナーからのPBMCは、刺激のために2つの異なる抗CD3濃度と、対照として抗CD3無しとを試験して分析された。
図14は、二重特異性抗体PD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEARが、CD4
+T細胞およびCD8
+T細胞の両方の強力な増大を誘導したことを示す。1つの無関係のアームを有する一価CD137対照抗体であるb12-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEAR、および対応する二価親抗体CD137-009-HC7LC2-FEARは、アイソタイプ対照抗体b12 IgGとのインキュベーションと比較した場合にCD4
+(A)またはCD8
+(B)T細胞増殖に影響を及ぼさなかった。(培地のみの対照群における高い増大指数によって観察された[0.1μg/ml抗CD3刺激でのドナー1を参照されたい])抗CD3によるPBMC刺激が既に強力にT細胞を活性化している場合のみ、一価PD-L1対照抗体ならびに二価親抗体(それぞれ、b12-FEAL×PD-L1-547-FEARおよびPD-L1-547-FEAR)はb12 IgGと比較してT細胞増殖をわずかに強化した。一価および二価PD-L1対照抗体に匹敵するT細胞増殖レベルは、組み合わされた一価対照抗体(b12-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEAR+b12-FEAL×PD-L1-547-FEAR)について、および組み合わされた対応する親抗体(CD137-009-HC7LC2-FEAR+PD-L1-547-FEAR)についても検出可能であった。しかしながら、二重特異性PD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEAR抗体によって誘導された増殖の強化は両方の組み合わされた対照(一価および二価)よりも優れていた(
図14)。
【0277】
別の独立した研究において、PD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEARのEC
50値を、0.03μg/mLおよび0.09μg/mLの抗CD3を用いて最適以下で刺激した、2人のドナーから得たPBMCを用いて求めた。PD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEARを、1μg/mLから開始して、0.15ng/mLで終了した段階希釈液を用いてアッセイし、1μg/mLのb12-IgG-FEALをアイソタイプ対照抗体として含めた。CD4
+T細胞およびCD8
+T細胞の増殖については用量反応曲線を作製し(
図15)、CD8
+T細胞増殖については表4に示したようにEC
20、EC
50、およびEC
90値も求めた。
【0278】
(表4)非抗原特異的T細胞増殖アッセイ法によって測定したCD8
+T細胞増大データに基づくPD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEARのEC
20、EC
50、およびEC
90値の決定。示したデータは、4パラメータ対数フィットに基づいて算出した値である(
図15)。
【0279】
実施例14: PD-L1およびCD137に結合する二重特異性抗体によって誘導されたサイトカイン放出を測定するための抗原特異的CD8+T細胞増殖アッセイ法
PD-L1およびCD137を標的とする二重特異性抗体PD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEARによるサイトカイン放出の誘導を、本質的に実施例7に記載のように行った抗原特異的アッセイ法において測定した。
【0280】
T細胞を、2μgのPD-1コードIVT RNAと共にまたは2μgのPD-1コードIVT RNAなしで10μgのTCRα鎖コードRNAおよび10μgのβ鎖コードRNAを用いて電気穿孔した。電気穿孔したT細胞を(前記のように)CFSE標識しなかったが、電気穿孔の直後に、5%ヒトAB血清を加えた新鮮なIMDM培地(Life Technologies GmbH, カタログ番号12440-061)に移した。iDCを、前記のように5μgのクローディン-6(CLDN6)コードRNAで電気穿孔した。O/Nインキュベーション後に、前記のように、DCをAlexa647結合CLDN6特異的抗体で染色し、T細胞を抗マウスTCRβ鎖抗体および抗ヒトCD279抗体で染色した。
【0281】
5%ヒトAB血清を加えたIMDM GlutaMAXが入っている96ウェル丸底プレートの中で、様々な濃度のPD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEAR二重特異性抗体または対照抗体b12×IgG-FEALの存在下で、5,000個の電気穿孔したDCを50,000個の電気穿孔したT細胞と共にインキュベートした。48時間のインキュベーション期間後に、プレートを500×gで5分間遠心分離し、上清を各ウェルから新鮮な96ウェル丸底プレートに注意深く移し、MSD(登録商標)プラットフォームによるサイトカイン分析まで80℃で保管した。抗原特異的増殖アッセイ法から収集した上清を、10の異なるサイトカインのサイトカインレベルについて、MESO QuickPlex SQ 120装置(Meso Scale Diagnostics, LLC.,カタログ番号R31QQ-3)においてMSD V-Plex Human Proinflammatory panel 1(10-Plex)キット(Meso Scale Diagnostics, LLC., カタログ番号K15049D-2)によって製造業者の説明書に従って分析した。
【0282】
PD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEARを添加すると、主としてIFN-γ、TNF-α、IL-13、およびIL-8の分泌が濃度依存的に増加した(
図16)。他の全てのサイトカイン(IL-10、IL-12p70、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-6)のサイトカインレベルは、対照抗体b12-IgG-FEALで処理した同時培養物について検出されたレベルを超えて上昇しなかった。T細胞をPD-1 RNAで電気穿孔しなかったT細胞:DC同時培養物を、T細胞を2μgのPD-1 RNAで電気穿孔したT細胞:DC同時培養を比較すると、PD-1 RNA電気穿孔がない同時培養物の方がわずかに高いサイトカインレベルを検出することができた。これは、PD-L1-547-FEAL×CD137-009-FEAR用量反応曲線ならびにb12-IgG-FEAL対照抗体値の両方について観察された。
【0283】
実施例15: PD-L1およびCD137に結合する二重特異性抗体によって誘導されたサイトカイン放出を測定するための抗原非特異的インビトロT細胞増殖アッセイ法
PD-L1およびCD137を標的とする二重特異性抗体PD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEARによるサイトカイン放出の誘導を、本質的に前記(実施例14)のように行った抗原非特異的インビトロT細胞増殖アッセイ法において測定した。10種類の炎症促進性サイトカイン(IFN-γ、TNF-α、IL-13、IL-8、IL-10、IL-12p70、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-6)のサイトカイン放出に対するトランス結合、すなわち、両アームと、両アームのそれぞれの標的との同時結合の効果を、抗体添加の48時間後に収集した上清のマルチプレックスサンドイッチイムノアッセイ法によって分析した。
【0284】
PBMCを(前記のように)CFSE標識しなかったが、単離した直後に播種し、1種類の抗CD3抗体濃度(0.03μg/mL最終濃度)だけを使用した。
【0285】
48時間のインキュベーション期間後に、前記細胞を500×gで5分間遠心分離することによって収集し、上清を各ウェルから新鮮な96ウェル丸底プレートに注意深く移し、MSD(登録商標)プラットフォームによるサイトカイン分析まで-80℃で保管した。収集した上清を、MESO QuickPlex SQ 120装置(Meso Scale Diagnostics, LLC.,カタログ番号R31QQ-3)においてMSD V-Plex Human Proinflammatory panel 1(10-Plex)キット(Meso Scale Diagnostics, LLC., カタログ番号K15049D-2)によって製造業者の説明書に従って10の異なるサイトカインのサイトカインレベルについて分析した。
【0286】
PD-L1-547-FEAL×CD137-009-HC7LC2-FEARの添加は、主としてIFN-γ、TNF-α、IL-2、およびIL-13の分泌の濃度依存的増加を誘導した(
図17)。IL-10、IL-12p70、ならびにIL-4については、レベルがわずかにしか上昇しなかった用量反応曲線も検出することができた。IL-1β、IL-6、およびIL-8のサイトカインレベルはベースラインレベルのままであり、従って、対照抗体b12-IgG-FEALで処理した同時培養物について検出されたレベルと同等であった。
【0287】
実施例16: 抗体製剤
実施例5に記載の2-MEA誘導Fabアーム交換方法を用いて、抗体IgG1-7717-547-FEAL(7717b)およびIgG1-CD137-009-HC7LC2-FEAR(7729a)をDuoBody(登録商標)BisG1-7717-547-FEAL/CD137-009-HC7LC2-FEARと組み合わせた。交換方法の後に、DuoBodyを、0.02%PS80またはPS20を添加して、pH5.5で20mMヒスチジン、250mMスクロースに溶解して20mg/mLで製剤化した。製剤の適切な特徴を検証するために、pH、賦形剤濃度、および界面活性剤のタイプの影響を評価する試験を行った。以下の表5は、3種類の液体製剤と1種類の凍結乾燥製剤を含む、調製された製剤の概略を示す。
【0288】
【0289】
製剤安定性試験の開始時に、それぞれの液体製剤を2つのワークストリーム(work stream)に分けた。一方のワークストリームでは、液体製剤を、-65℃で12時間の凍結とそれに続く25℃で12時間の融解からなる凍結融解サイクル5回に供した。他方のワークストリームについては、使用した同じ方法で5回の凍結/融解サイクルを行った後に試料を試験し、時点0ヶ月、1ヶ月、および2ヶ月で液体製剤の安定性を評価した。
【0290】
ビジブル粒子(Visible particle)
ビジブル粒子計数は、2000~3750ルクスの最低の強さの照度で黒色を背景にしておよび白色を背景にして行った。
【0291】
全製剤が時間0でビジブル粒子をほぼ含まなかったが(0~3個の粒子/ml)、凍結融解サイクル後にビジブル粒子を含まなかったものはF1およびF2だけであった。従って、ビジブル粒子形成に関してF1およびF2製剤中の試料は安定していた。結果を表6に示した。
【0292】
濁度
濁度試験は、濁度計を用いて薬局方標準品溶液と比較して測定することによって行った。試料溶液の結果(比濁計濁度単位(NTU))を最も似ている標準品溶液の結果と比較した。試料結果が各標準品溶液のNTU値の[-10%~+10%]以内の場合、結果は標準品溶液に等しいと報告した。
【0293】
全ての濁度値は小さかった。F1は濁度が最も小さく、保管時に、およびストレスを加えた条件下でほとんど変化しなかった。結果を表6に示した。
【0294】
サブビジブル粒子(Sub-visible particle)
5回の凍結融解サイクル後のサブビジブル粒子がHIAC装置を用いて光遮蔽(light obscuration)の原理によって検出された。2、5、10、または25マイクロメートルより大きな粒子を計数した。結果を表6に示した。
【0295】
試験した製剤は全て、ごくわずかなサブビジブル粒子、特に、10または25マイクロメートルを超えるごくわずかな粒子しか含まなかった。
【0296】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
サイズ排除UPLC(SE-UPLC)を用いて、試料中に存在する単量体、高分子量種(HMWS/凝集物)、および低分子量種(LMWS/断片)の量を求めた。主ピーク、HMWS、およびLMWSを相対ピーク面積のパーセント(%)で表した。結果を表8に示した。
【0297】
データから、全製剤について全体のHMWSおよびLMWSは少なく、5回の凍結融解サイクル後にHMWSおよびLMWSは有意に増加しなかったが、ストレスを加えた条件については凝集の増加が観察されたことが分かった。製剤間で大きな違いは無かった。結果を表8に示した。
【0298】
画像化キャピラリー等電点電気泳動(Imaged capillary isoelectric focusing)(icIEF)
促進条件とストレスを加えた条件で主アイソフォームの低下が観察された。この損失は酸性変種と塩基性変種の原因となったように思われ、pH依存性でもあり、他の製剤と比較して、高pH(F3)では、より多くの酸性変種が生じた。推奨された保管条件では変化は観察されなかった。結果を表8に示した。
【0299】
逆相クロマトグラフィー(RP-HPLC):
非還元条件下では促進条件とストレスを加えた条件で主ピーク含有率が増加した。還元条件では、わずかな変化が観察された。結果を表9に示した。
【0300】
キャピラリー電気泳動ドデシル硫酸ナトリウム(CE-SDS)
試験した全試料について、このパラメータの安定性プロファイルは極めてロバストである。結果を表10に示した。
【0301】
全体的に見て、F1製剤は薬学的使用に適した特徴を示した。
【0302】
(表6)ビジブル粒子、濁度、およびサブビジブル粒子の測定
【0303】
(表7)重量オスモル濃度、pH、およびタンパク質含有率の測定
【0304】
(表8)サイズ排除クロマトグラフィー(単量体、高分子量種(HMW/凝集物)、および低分子量種(LMW/断片)の量の測定));CEX/iCE(様々な条件下での塩基性変種および酸性変種の出現の測定);界面活性剤含有率の測定
【0305】
【0306】
(表10)キャピラリー電気泳動-SDS(CE-SDS)による純度測定
【0307】
実施例17: 抗体製剤;安定性試験
長期(12ヶ月)安定性試験をDuoBody(登録商標)BisG1-7717-547-FEAL/CD137-009-HC7LC2-FEAR、バッチ6371-16(作製日:2018年5月18日)に対して行った。
【0308】
DuoBody(登録商標)BisG1-7717-547-FEAL/CD137-009-HC7LC2-FEAR、バッチ6371-16の安定性試料の保管条件と試験間隔を表11に示した。
【0309】
(表11)保管条件およびプル間隔
rHは「相対湿度」を意味する。
【0310】
DuoBody(登録商標)BisG1-7717-547-FEAL/CD137-009-HC7LC2-FEAR、バッチ6371-16の適切な代表試料をバルクコンテナから取り出した。それぞれの保管条件と時間間隔について、輸送および保管容器をシミュレートした表12に記載のように、20mL DuoBody(登録商標)BisG1-7717-547-FEAL/C 37-009-HC7LC2-FEARのアリコートを保管した。
【0311】
【0312】
それぞれのプル点および保管条件について、試験を遂行するために適切な保管チャンバーから1個のバッグを取り出した。
【0313】
外観および色(欧州薬局方カラービジュアルリキッドカラースケール(Color visual liquid color scale)):
≦-65℃および5℃の保管条件の場合、外観と色の変化は観察されなかった。40℃/75%rHの保管条件の場合、6ヶ月の保管後に色は≦BY7から≦BY5に変化した。
【0314】
乳光:
乳光試験は、濁度計を用いて薬局方標準品溶液と比較して測定することによって行った。試料溶液の結果(比濁計濁度単位(NTU))を最も似ている標準品溶液の結果と比較した。試料結果が各標準品溶液のNTU値の[-10%~+10%]以内の場合、結果は標準品溶液に等しいと報告した。乳光について有意な変化は観察されなかった。結果は<Ref.II~<Ref.IIIであった。
【0315】
pH:
pHは5.4~5.6であり、十分に指定範囲5.2~5.8の範囲内であった。
【0316】
UV280によるタンパク質濃度:
≦-65℃および5℃の保管条件の場合、タンパク質濃度は20.1~20.6mg/mlであり、これは十分に指定範囲18.0~22.0mg/mlの範囲内であった。40℃/75%rHの保管条件の場合、結果は19.5~22.9mg/mlであった。タンパク質濃度の増加はおそらく溶媒蒸発によって引き起こされた。
【0317】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)-HPLCによる純度:
40℃/75%rHの保管条件の場合、主ピークから低分子量(LMW)型および高分子量(HMW)型へのシフトが観察された。主ピークは6ヶ月保管後に99.1%面積から71.1%面積に減少した。5℃の保管条件の場合、2ヶ月の保管後に主ピークのわずかだが有意でない減少が観察された。≦-65℃の保管条件の場合、12ヶ月後に有意な変化は観察されず、全結果が、規定された仕様を満たした。
【0318】
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)-HPLCによる純度:
抗体純度に有意な変化は観察されなかった。抗体純度のばらつきは分析のばらつきを反映している。ホモ二量体PD-L1は検出されなかった。
【0319】
画像化キャピラリー等電点電気泳動(icIEF)による電荷不均一性:
40℃/75%rHの保管条件の場合、主ピークから酸性種へのシフトが観察された。主ピークは6ヶ月の保管後に58.3%面積から5.7%面積へと減少した。≦-65℃および5℃の保管条件の場合、有意な変化は観察されなかった。
【0320】
キャピラリー電気泳動(CE)-SDSによる純度:
40℃/75%rHで保管された試料を除けば、全試料が標準品と同等であった。還元条件下および非還元条件下で40℃/75%rHで保管した場合の純度は減少傾向が観察された。6ヶ月の保管後にインタクトなIgG、非還元は94.9cor.%面積から77.0cor.%面積に減少し、HCおよびLC、還元の合計は99.0cor.%面積から87.4cor.%面積に減少した。≦-65℃および5℃の保管条件の場合、有意な変化は観察されなかった。
【0321】
結論:
安定性データから、DuoBody(登録商標)BisG1-7717-547-FEAL/CD137-009-HC7LC2-FEARは無傷のオリジナル包装に入れられて≦-65℃で保管された場合には12ヶ月間、5℃で保管された場合には2ヶ月間安定していることが分かった。40℃/75%rHの保管条件の場合、SEC-HPLC、icIEF、およびCE-SDSからの結果から、DuoBody(登録商標)BisG1-7717-547-FEAL/CD137-009-HC7LC2-FEARは1ヶ月後に有意に分解したことが分かった。DuoBody(登録商標)BisG1-7717-547-FEAL/CD137-009-HC7LC2-FEARバッチ6371-16の安定性データから、材料が無傷のオリジナル包装に入れられて≦-65℃を超えずに保管された場合に、365日の規定された貯蔵寿命が確認された。
【0322】
(表13)DuoBody(登録商標)BisG1-7717-547-FEAL/CD137-009-HC7LC2-FEAR、バッチ6371-16、試料保管条件:≦-65℃
【配列表】