(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】電気流体力学的噴霧器の機能制御
(51)【国際特許分類】
B05D 1/04 20060101AFI20240726BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20240726BHJP
B05B 5/08 20060101ALI20240726BHJP
B05B 5/025 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
B05D1/04 A
B05D1/04 B
B05D7/00 K
B05B5/08 B
B05B5/025 E
B05B5/025 F
(21)【出願番号】P 2021536238
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2019086281
(87)【国際公開番号】W WO2020127712
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-08-16
(31)【優先権主張番号】102018133439.7
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】318011417
【氏名又は名称】ジェイ. ワグナー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マンゴールド セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】フィーゼル マニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ウーブリッヒ ヤンス
(72)【発明者】
【氏名】イェルチュ トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ゲーリング アルフレート
(72)【発明者】
【氏名】バルテルメス ヤン
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/193069(WO,A1)
【文献】特開2009-115438(JP,A)
【文献】米国特許第5566042(US,A)
【文献】国際公開第2017/112781(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00- 7/26
B05B5/00- 5/16
A61K8/00- 8/99
A61Q1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気流体力学的噴霧器(20)の機能制御方法において、前記噴霧器(20)からの電気流体力学的に噴霧された流体(23)は、少なくとも人間の体の特定の部分をコーティングするために、前記体に塗布され、前記噴霧器(20)は、前記流体を貯蔵する流体タンクと、高電圧を可能にする少なくとも1つの高電圧源と、前記流体を移送する少なくとも1つのポンプユニットとを備え、前記流体は、前記ポンプユニットにより前記噴霧器(20)のノズル装置へ送出され、前記流体は、前記高電圧源からの前記高電圧の作用により前記ノズル装置で電気流体力学的に噴霧される、方法であって、
前記高電圧源の電圧(U)および/または電流(I)は、電流/電圧特性曲線(10)又は特性曲線図により前記高電圧源の動作点(A0-A5)を取得するために、評価され、
評価された前記電圧(U)および/または前記電流(I)は、前記噴霧器(20)と前記噴霧器(20)を作動する使用者(21)の手(22)との間の電流の直接の流れおよび/または電圧の直接の降下を取得されることが可能な方法にて、少なくとも1つの補正パラメータを用いて補正されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
評価された前記電圧(U)および/または前記電流(I)は、前記高電圧源の前記実際の電圧値および/または電流値に比例する基準電圧および/または基準電流である、ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記噴霧器(20)は、前記使用者(21)の前記手(22)に保持され、前記高電圧源(20)からの電流は、前記噴霧された流体(23)を介して前記使用者(21)の前記手(22)を介し、前記噴霧器(20)の手動の接触要素を通り、前記高電圧源に戻る流れが取得され、評価されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
種々の動作点(A0-A5)は、前記電流/電圧特性曲線(10)上に規定され、前記高電圧源で前記取得された実際の動作点は、動作点(A0-A5)と比較される、又は少なくとも前記電流/電圧特性曲線上の2つの動作点(A0-A5)間の範囲内で取得されることを特徴とする、請求項1、2、又は3に記載の方法。
【請求項5】
設定点の動作範囲は、前記電流/電圧特性曲線(10)上に規定され、前記取得された実際の動作点が前記設定点の動作範囲外にある場合、異常を知らせる、ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記動作点(A0-A5)の規則的な取得が実行され、取得された動作点(A3)は、前記動作点の変化を検出するために、少なくとも1つの既に取得した動作点(A3‘)と比較されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記取得された動作点(A0-A5)は、規定された使用者情報項目および/または装置応答
として、前記電流/電圧特性曲線(10)上の前記動作点(A0-A5)の位置に従ってメモリに保存された接続、をトリガすることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
出力された前記高電圧に比例する低電圧信号は、基準電圧として取り出し可能である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法を実行することを特徴とする、高圧電源。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
先行技術:
流体の電気流体力学的噴霧は、コーティング方法の分野にて重要性が増大している。例を挙げると、国際特許出願PCT/EP2018/060117は、例えば、身体への日焼け防止のようなケア製品の電気流体力学的噴霧を利用した装置を開示する。
【0002】
流体の電気流体力学的噴霧方法は、従来技術から公知である。
電気流体力学的噴霧は、帯電可能な流体、特に高電圧下で強力な不均一電場にて十分に帯電された流体の不安定性に基づく。ここでの流体とは、高電圧を受けたものである。本文脈では流体は変形して円錐を形成し、その先端から細流、いわゆる噴流が放出された後、直ちに噴流は微分散した液滴からなる噴霧に分解される。テイラーコーンの状態での特定の条件下では、液滴は狭い粒度分布を有する。非常に強力な電場がこの噴霧には必要なので、所望しない静電気を回避するために、機能制御は有利である。
【0003】
従って、本発明の目的は、電気流体力学的噴霧の結果として、所望しない作用を回避するために、そのような装置の機能制御を可能にすることである。
この目的は、請求項1に記載の電気流体力学的噴霧器の機能制御方法を用いることにより達成される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
続く本文では、
図1の電流/電圧特性曲線を参照して、本発明とその有利な発展形および実施形態とを説明する。
また、例として、様々なコーティングの状況を
図2aから
図2dに示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本文脈では、噴霧器からの電気流体力学的に噴霧された流体は、少なくとも体の特定の部分をコーティングするために、体、例えば人間、に塗布される。この目的のため、本噴霧器は、流体を貯蔵する流体タンクと、高電圧を可能にする少なくとも1つの高電圧源と、流体を移送する少なくとも1つのポンプユニットとを備える。この流体は、ポンプユニットにより噴霧器のノズル装置へ送出され、高電圧源からの高電圧の作用によりノズル装置で電気流体力学的に噴霧される。
【0006】
機能制御のため、ここでは、電流/電圧特性曲線10により高電圧源の動作点A1、A2、A3、A4を取得するために、高電圧源の電圧Uおよび/または電流Iを評価する。
【0007】
電気流体力学的噴霧は、高電圧の作用を利用することで、電荷が流体に伝達され、流体からコーティングされる体へ伝達される。電流および/または電圧を測定し、この測定結果を電流/電圧特性曲線(10)と比較することにより、高電圧源の負荷について、特に電流の流れが発生しているか、また、そのために、コーティングされた体も、コーティングにより印加された電荷を再び出力しているかについての確定的な情報を取得することが可能になる。高電圧が印加されたときに所望の電流の流れが発生した場合、コーティングが正しく行われ、印加された電荷が噴霧器に還流される。よって、作動中のシステムを用いて実現可能である電流値および電圧値の各組合せは、電流/電圧特性曲線における動作点を規定する。
【0008】
好ましい一実施形態では、評価された電圧Uおよび/または電流Iは、高電圧源の実際の電圧値および/または電流値に比例した基準電圧および/または基準電流である。
基準電圧および基準電流を用いることで、高電圧を測定電子機器に直接供給する必要がなくなるため、値を取得して評価し易くなる可能性がある。本文脈では、基準電圧値および/または基準電流値は、高電圧源により可能となり、該電流値は、好ましくは高電圧の発生中に付され、噴霧のために使用される高電圧回路に直接負荷を与えない。
【0009】
例えば
図2aに示すような、有利な一実施形態では、噴霧器20は使用者21の手22に保持され、高電圧源からの電流は、噴霧された流体23を介して、例えば、腕24に向かい、使用者21の胴体を経由して使用者の手22を介し、噴霧器20上の手動の接触要素を通り、高電圧源に戻る流れが取得され、評価される。
【0010】
所望しない荷電の回避と電気流体力学的噴霧器20の機能制御とのための閉回路28の最も簡便な変更例は、使用者の手による接触を遮断することである。構造的要件では、これを実現させるために、通常の使用時に常に接触される導電性の接触要素を、例えばプラスチック製のハウジング上に設けることが必要である。例えば、オペレータ制御押しボタンキーや相当するオペレータ制御要素がこれに適する。
【0011】
特に、本方法では、種々の動作点A0からA5が、電流/電圧特性曲線上に規定され、高電圧源において、取得された実際の動作点(例えば、A3に対応)は、特性曲線A0からA5の動作点と比較される、又は少なくとも電流/電圧特性曲線10上の2つの動作点A2、A4間の範囲11内で取得される。
【0012】
ここで有利には、動作点A3の厳密な分類は必ずしも必要でない。代わりに、設定点の動作範囲の境界を示す設定点の動作点A2、A4により規定された範囲11内に取得された動作点A3を設ければ十分である。この場合、例えば低いけれどもコーティングされた体から荷電を移送するには十分な低電流値は第1設定点の動作点A2を規定し、電圧源に負荷を与えることで高電圧の絶対値を降下させる一方で電気流体力学的噴霧がまだ可能な高電流値は第2設定点の動作点A4を規定し、動作点A2と動作点A4との間は噴霧器の動作の範囲11である。
【0013】
さらに、好ましくは、動作の範囲11は電流/電圧特性曲線上に規定され、取得された動作点がこの設定点の動作の範囲11の範囲外である場合、異常40を知らせる。
対応する状態を、
図2dに示す。本文脈では、第1人物41が、第2人物43に流体を塗布するために、噴霧器42を使用する。開回路44のため電流Iは流れず、動作点A1又は他のいずれかにある動作点を異常範囲12内に得る。電気流体力学的噴霧器は、要件を満たした機能が実行できないので、ここで異常40を知らせる。この状況は、例えば、人物41、43が立っている下敷面45が十分に絶縁可能な絶縁体により構成されている場合や、
図2cに示すように、閉回路47が可能となるような接触46によって人物同士がつながっていない場合に発生する。
【0014】
図2cに示した変更例では、動作点A3は、動作の範囲11内に位置することになるので、噴霧48が行われる。
本方法の好適な発展形では、動作点の規則的な取得が実行され、取得された動作点A3は、その動作点の変化を検出するために、少なくとも1つの既に取得した動作点A3‘と比較される。
【0015】
作動中、動作点は、例を挙げると、コーティングされる物体、例えば
図2aの腕24、から噴霧器20までの距離などの直接的な幾何学的影響に大きく依存しているので、動作点の変動を利用して、噴霧器が使用されているか、つまり動かされているかを検知することも可能である。動作点が依然として同じままである、又は複数の時間周期に亘り規定の公差範囲内にとどまる場合、コーティングされる物体に表面被覆塗布されずに噴霧又はコーティングが行われているので、噴霧器は異常状態となっている。このような方法では、例えば、噴霧器を下に置く場合に、機能的異常を回避することができる。
【0016】
また、一つの発展形では、取得された動作点は、電流/電圧特性曲線上の動作点の位置に従ってメモリに保存された規定の使用者情報項目をトリガする。
動作点を決定する回路内に含まれた使用者の物理的な線特性により、使用者情報項目をメモリから検索可能な特性動作点を検出できる可能性がある。例えば、直接接触は、特性動作点が発生するスイッチON工程中に、噴霧器と主表面との間で実行可能である。この特性動作点は、例えば、厳密には前記使用者についての特性曲線10の高い流れの電流の動作点A4とA5との間の範囲13において発生する。
【0017】
また、特に本方法では、高電圧源のスイッチON曲線が取得され、このスイッチON曲線は動作点にて終了する。
スイッチON曲線を取得することにより、電気流体力学的噴霧器は、どの状態で初期に作動されるべきかを判断することが可能である。スイッチON曲線K1点が向かう動作点A1は、例えば
図2dによる状況によってもたらされた異常の状態を対象としたものである。
【0018】
スイッチON曲線(例えばK1からK4まで)を取得することにより、例えば、この動作点に到達する前に開始された動作点に割り当てられた測定を早期に実行することが可能である。例えば、機能範囲外の動作点A5‘をスイッチON曲線K5により対象とした場合、高電圧又はポンプを遮断することできる。
【0019】
動作点A2でのスイッチON曲線K2、動作点A3でのスイッチON曲線K3、動作点A4でのスイッチON曲線K4は、可能性のある作動している状態を構成している。
図2aによる状況は、通常は回路28のローサイドで内部抵抗を与えるので、ハイサイドで電流が流れるようになり、これにより動作点A4が用いられる。
【0020】
図2bおよび
図2cによる状況では、二人の人物41および43の内部抵抗と、必要ならば導電性下敷面30の抵抗とを考慮すべきなので、回路29および回路47の抵抗は、より高くなることが予想される。
【0021】
図2bから
図2dでは、同等な物体には同一の参照符号を付す。
また、本発明にかかる特性曲線という用語は、本発明にかかる機能制御を実行するために、取得された動作点と比較可能な特性データの集合を意味するものとして理解されるべきである。
【0022】
例えば
図2aに示され得るような本方法の更なる好ましい実施形態では、評価された電圧Uおよび/または電流Iは、少なくとも1つの補正パラメータを用いて補正される。噴霧器20を作動している使用者21の手22と噴霧された流体23との間の所与のこの問題は、空間的な近接のため、相当な流量の電流又は電圧降下が、保持している手22と噴霧器20と間で直接的に発生し、この電流の流れ又は電圧降下はコーティング結果に寄与しない。噴霧器20と噴霧器20を作動する使用者21の手22との間の電流の直接の流れおよび/または電圧の直接の降下の影響は、少なくとも1つの補正パラメータ、例えば較正操作や測定パルスを用いて取得することが可能である。この少なくとも1つの補正パラメータを用いて、例えば、機能制御のための本方法に包含された干渉変数などを決定する。
【符号の説明】
【0023】
10…電流/電圧特性曲線、11…範囲、12…異常範囲、20…噴霧器、21…使用者、22…手、23…噴霧された流体、24…腕、28…閉回路、29…回路、30…導電性下敷面、40…異常、41…第1人物、42…噴霧器、43…第2人物、44…開回路、45…下敷面、46…接触、47…回路、48…噴霧、A0-A5…動作点、A3‘…既に取得した動作点、A5‘…動作点、I…電流/電流の流れ、K1-K4…スイッチON曲線、U…電圧。