(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】凝縮器、及びターボ冷凍機
(51)【国際特許分類】
F28D 7/16 20060101AFI20240726BHJP
F28F 9/24 20060101ALI20240726BHJP
F25B 39/04 20060101ALI20240726BHJP
F25B 1/053 20060101ALI20240726BHJP
F28F 9/02 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
F28D7/16 A
F28F9/24
F25B39/04 J
F25B1/053 Z
F28F9/02 301F
(21)【出願番号】P 2022128389
(22)【出願日】2022-08-10
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】末光 亮介
(72)【発明者】
【氏名】伊良 勇亮
(72)【発明者】
【氏名】三吉 直也
(72)【発明者】
【氏名】横山 明正
(72)【発明者】
【氏名】石黒 達男
(72)【発明者】
【氏名】中山 悠
(72)【発明者】
【氏名】中川 篤
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-056979(JP,A)
【文献】中国実用新案第215638955(CN,U)
【文献】実開昭54-017257(JP,U)
【文献】特開昭63-259363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 7/16
F28F 9/24
F25B 39/04
F25B 1/053
F28F 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機から吐出されたガス冷媒を吸入する吸入口、及び吸入した前記ガス冷媒が通過可能なガスバッフル板を有する導入部と、
前記ガスバッフル板を通過した前記ガス冷媒を収容可能なシェルと、
前記吸入口を開閉可能な逆止弁と、を備え、
前記逆止弁は、開状態では前記ガスバッフル板と重なり、閉状態では前記吸入口を覆う弁体を有する、
凝縮器。
【請求項2】
前記逆止弁が開状態の場合、前記弁体は
、前記吸入口
の貫通方向から見て前記吸入口
と重ならない位置に位置する、
請求項1に記載の凝縮器。
【請求項3】
前記ガスバッフル板には、前記逆止弁が開状態の場合に前記弁体と重なる領域に貫通孔が形成されている、請求項1又は2に記載の凝縮器。
【請求項4】
前記逆止弁は、前記弁体を前記ガスバッフル板に重ねる方向に弾性力を発生させるばねを有し、
前記ばねのばね定数は、前記吸入口から前記圧縮機に吐出される前記ガス冷媒の逆流の流れによって弾性力が打ち消される程度の大きさである、請求項1又は2に記載の凝縮器。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の凝縮器を備える、ターボ冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、凝縮器、及びターボ冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ターボ冷凍機が開示されている。ターボ冷凍機は、蒸発器と圧縮機と凝縮器からなる冷凍サイクルを備える。ターボ冷凍機の駆動時には、蒸発器から圧縮機、圧縮機から凝縮器と冷媒が冷凍サイクル内を流れるが、ターボ冷凍機が停電等によって停止すると、蒸発器と凝縮器との差圧によって、凝縮器から圧縮機に向けて冷媒が逆流するおそれがある。この冷媒の逆流を防止するために、圧縮機と凝縮器とを接続するラインには、逆止弁が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のターボ冷凍機では、圧縮機と凝縮器との間に逆止弁を設置するためのスペースを必要とするため、ターボ冷凍機が大型化するという問題があった。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、小型化を達成することができる凝縮器、及びターボ冷凍機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る凝縮器は、圧縮機から吐出されたガス冷媒を吸入する吸入口、及び吸入した前記ガス冷媒が通過可能なガスバッフル板を有する導入部と、前記ガスバッフル板を通過した前記ガス冷媒を収容可能なシェルと、前記吸入口を開閉可能な逆止弁と、を備え、前記逆止弁は、開状態では前記ガスバッフル板と重なり、閉状態では前記吸入口を覆う弁体を有する。
【0007】
本開示に係るターボ冷凍機は、上記の凝縮器を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の凝縮器、及びターボ冷凍機によれば、小型化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係るターボ冷凍機の全体構成を示す図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る凝縮器を上方から見た平面図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る凝縮器を第二方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第一実施形態>
(ターボ冷凍機)
以下、本開示の実施形態に係る、凝縮器20を備えたターボ冷凍機1について、
図1から
図4を参照して説明する。
図1に示すように、ターボ冷凍機1は、圧縮機10と、凝縮器20と、膨張弁2と、蒸発器3と、を備える。
【0011】
(圧縮機)
圧縮機10は、ガス冷媒を圧縮するターボ圧縮機である。圧縮機10は、ケーシング11と、モータ12と、シャフト13と、軸受14と、羽根車15と、を有する。ケーシング11には、モータ12、シャフト13、軸受14、及び羽根車15が収容されている。モータ12は、中心軸線回りに回転するロータ16と、ロータ16の周囲に所定のギャップを空けて設けられた円筒状のステータ17と、を有する。シャフト13は、ロータ16に接続され、ロータ16の回転出力が伝達される。シャフト13は、軸受14によって回転可能に支持されている。羽根車15は、シャフト13に設けられ、シャフト13を介してロータ16の回転出力が伝達される。本実施形態では、シャフト13の軸線方向に並んで2段設けられている。
【0012】
(凝縮器)
凝縮器20は、圧縮機10によって圧縮された高温高圧のガス冷媒を凝縮する。凝縮器20には、冷媒を冷却するための冷却水が流れる第一伝熱管27が設けられている。冷却水は、図示しない冷却塔で外部へと排熱された後に、再び凝縮器20へと導かれる。
【0013】
(膨張弁)
膨張弁2は、凝縮器20から導かれた液冷媒を膨張させる。
【0014】
(凝縮器)
蒸発器3は、膨張弁2によって膨張された液冷媒を蒸発させる。蒸発器3には、外部負荷へ供給される冷水を冷却するための第二伝熱管3aが設けられている。蒸発器3で生じたガス冷媒は、再び圧縮機10へと導かれる。
【0015】
(凝縮器の構造)
続いて、凝縮器20の構造について説明する。
図2から
図4に示すように、凝縮器20は、導入部30と、シェル40と、第一仕切板21と、第二仕切板22と、第三仕切板23と、第四仕切板24と、内部バッフル板25と、冷却水導入管26と、第一伝熱管27と、冷却水排出管28と、排出部29と、逆止弁50と、を備える。
【0016】
(導入部)
導入部30は、圧縮機10から供給された高圧のガス冷媒を吸入する。導入部30は、導入部本体31と、吸入部32と、ガスバッフル板33と、を備える。
【0017】
(導入部本体)
導入部本体31は、一方向に延びる矩形板状形成された、下方に向けて開口する箱型の容器である。
以下では、導入部本体31の延在方向を「第一方向D1」と称し、水平方向かつ第一方向D1に直交する方向を「第二方向D2」と称する。
【0018】
導入部本体31の上壁31aは、水平方向に延在するとともに、導入部本体31の側壁31bは、鉛直面に延在している。導入部本体31には、圧縮機10から吐出された高圧のガス冷媒が流れる。
また、導入部本体31の側壁31bうち第一方向D1両側に位置する2つの側壁31bには、連通孔34が形成されている。
【0019】
(吸入部)
吸入部32は、導入部本体31の第一方向D1の中央部に設けられている。吸入部32は、導入部本体31と、例えば溶接によって接続されている。吸入部32は、導入部本体31の側壁31bから第二方向D2に突出する吸入部本体35と、吸入部本体35を第二方向D2に貫通する吸入口36と、吸入部本体35の外面に設けられたフランジ37と、を有する。
【0020】
(吸入部本体)
吸入部本体35は、上下方向から見て、導入部本体31から離間するにしたがって先細る台形状に形成されている。
【0021】
(吸入口)
吸入口36は、吸入部本体35と導入部30とを連通させ、圧縮機10から吐出されたガス冷媒を吸入する。吸入口36は、吸入部本体35の外面に沿って形成されており、上下方向から見て、導入部本体31から離間するにしたがって先細る台形状に形成されている。一方、吸入口36は、第二方向D2から見て、矩形状に形成されている。吸入口36の導入部本体31側の端部は、第二方向D2から見て、第一方向D1に延びる矩形状に形成されている。
【0022】
(フランジ)
フランジ37は、導入部本体31とは反対側であって吸入部本体35の先細り側の端部に設けられている。フランジ37は、吸入口36の全周にわたって設けられ、吸入部本体35の外面から外側に突出している。
【0023】
(ガスバッフル板)
ガスバッフル板33は、導入部本体31の下方の開口を閉塞する板材である。ガスバッフル板33は、水平方向に延在している。ガスバッフル板33は、導入部30が吸入したガス冷媒が通過可能とされている。ガスバッフル板33には、ガスバッフル板33を貫通する貫通孔38が設けられている。本実施形態では、貫通孔38は、ガスバッフル板33の第一方向D1の中間部に複数設けられている。本実施形態では、複数の貫通孔38は、全て同じ円形状に設けられている。また、貫通孔38は、1つの貫通孔38を囲むように正六角形状に6つの貫通孔38が設けられている。
導入部30のガスバッフル板33を含む下部は、シェル40によって下方から覆われている。
【0024】
(シェル)
シェル40は、ガスバッフル板33を通過したガス冷媒を収容可能とする容器である。シェル40の外形は、円柱状に形成されている。シェル40は、胴部41と、第一端部42と、第二端部43と、を備える。
【0025】
胴部41は、第一方向D1に延びる円筒状に形成されている。胴部41には、ガスバッフル板33及び連通孔34を含む導入部30の下部が埋め込まれるように設けられている。胴部41は、連通孔34及び貫通孔38によって、導入部30と連通されている。胴部41と導入部30とは、例えば溶接により接合されている。第一端部42は、胴部41の第一方向D1一方側の端部に設けられ、胴部41の第一方向D1一方側を覆っている。第二端部43は、胴部41の第一方向D1他方側の端部に設けられ、胴部41の第一方向D1他方側を覆っている。
【0026】
(第一仕切板及び第二仕切板)
第一仕切板21は、シェル40の胴部41と第一端部42との境界に設けられている。第二仕切板22は、シェル40の胴部41と第二端部43との境界に設けられている。第一仕切板21及び第二仕切板22は、シェル40の内部を、第一方向D1一方側から順に、第一室44、第二室45、第三室46の3つに仕切っている。
【0027】
(第三仕切板)
第三仕切板23は、シェル40の第一室44内に設けられている。第三仕切板23は、第一室44を入口室44aと出口室44bとの2つに仕切っている。本実施形態では、入口室44aは、出口室44bの上方に位置している。
【0028】
(第四仕切板)
第四仕切板24は、シェル40の第二室45内に設けられている。第四仕切板24は、第三室46を第一直管室45aと第二直管室45bとの2つに仕切っている。本実施形態では、第四仕切板24は、第三仕切板23と上下方向で同じ位置に設けられ、第一直管室45aは、第二直管室45bの上方に位置している。
【0029】
第一直管室45aは、連通孔34を介して導入部30の内部と連通している。
また、第四仕切板24の第一方向D1他方側の端部には、内部連通孔24aが形成されている。内部連通孔24aは、第一直管室45aと第二直管室45bとを連通させている。このため、導入部30に導入されたガス冷媒は、第一直管室45a、第二直管室45bの順に導かれるように流れる。
【0030】
(内部バッフル板)
内部バッフル板25は、第一直管室45aと第二直管室45bとにそれぞれ複数設けられている。内部バッフル板25は、第一方向D1に並んで複数枚設けられている。第一直管室45aと第二直管室45bとのそれぞれに、内部バッフル板25が、上下に互い違いになるように配置されている。ガス冷媒は、内部バッフル板25によって蛇行しながら流れる。内部バッフル板25には、細かい不図示の孔が設けられており、冷媒(ガス冷媒、及び凝縮によって生じた液冷媒)は、この不図示の孔内を通って第二室45内を流動することができる。
また、第一直管室45a内の内部バッフル板25のうち少なくとも一部は、ガスバッフル板33に接合され、ガスバッフル板33と熱的に接続されている。
【0031】
(冷却水導入管)
冷却水導入管26は、シェル40の第一端部42の外面に設けられている。冷却水導入管26は、シェル40内の入口室44aと連通している。冷却水導入管26は、不図示の冷却塔から入口室44a内に冷却水を導く。
【0032】
(第一伝熱管)
第一伝熱管27は、シェル40内の第二室45及び第三室46に複数本設けられている。第一伝熱管27は、第一直管27aと、第二直管27bと、曲管27cと、を有する。
【0033】
第一直管27aは、第一直管室45aに設けられている。第一直管27aは、第一方向D1に延びて、第一仕切板21と第二仕切板22とを接続している。第一直管27aは、第一直管室45a内の内部バッフル板25を第一方向D1に貫通している。第二直管27bは、第二直管室45bに設けられている。第二直管27bは、第一方向D1に延びて、第一仕切板21と第二仕切板22とを接続している。第二直管27bは、第二直管室45b内の内部バッフル板25を第一方向D1に貫通している。曲管27cは、第三室46に設けられている。曲管27cは、第二方向D2からみて、U字状に形成されている。曲管27cの上側の端部は、第一直管27aに接続され、曲管27cの下側の端部は、第二直管27bに接続されている。曲管27cは、第一直管27a及び第二直管27bと連通している。
【0034】
第一伝熱管27には、入口室44aに導かれた冷却水が流入する。冷却水は、第一直管27a、曲管27c、第二直管27bの順に、第一伝熱管27内を流れ、出口室44bに導かれる。冷却水は、第一伝熱管27内を流れる過程で、第二室45内のガス冷媒と熱交換を行う。これにより、ガス冷媒は、冷却されて液冷媒に凝縮される。この液冷媒は、第二直管室45bに一時的に貯留される。一方で、冷却水は、ガス冷媒の熱を受けて加熱される。
【0035】
(冷却水排出管)
冷却水排出管28は、シェル40の第一端部42の外面に設けられている。冷却水排出管28は、シェル40内の出口室44bと連通している。冷却水排出管28は、第一伝熱管27内を通過した冷却水を、不図示の冷却塔に導く。冷却水排出管28から冷却塔に戻った冷却水は、冷却塔で冷却されて再び入口室44aに導かれる。
【0036】
(排出部)
排出部29は、シェル40の胴部41に設けられている。排出部29は、胴部41の外周面に設けられ、第二直管室45bと連通する管状に形成されている。排出部29は、第二直管室45b内に貯留された液冷媒を膨張弁2に導く。液冷媒は、膨張弁2で膨張されると、蒸発器3に導かれ再びガス冷媒に気化する。蒸発器3で生じたガス冷媒は、圧縮機10によって圧縮されて再び凝縮器20に導かれる。
【0037】
このように、上述したターボ冷凍機1では、冷媒は圧縮機10、凝縮器20、膨張弁2、蒸発器3のサイクル内を循環する。しかしながら、例えば停電等によってターボ冷凍機1が急停止すると、凝縮器20と蒸発器3との差圧によって、凝縮器20から圧縮機10に冷媒が逆流する場合がある。この逆流を防止するために、導入部30の内部に、逆止弁50が設けられている。
なお、以下では、圧縮機10、凝縮器20、膨張弁2、蒸発器3の順に流れる冷媒の流れを順流とし、その反対向きの流れを逆流と称して説明する。
【0038】
(逆止弁)
逆止弁50は、導入部本体31の内部に設けられている。逆止弁50は、吸入口36を開閉可能に設けられている。逆止弁50は、ヒンジ51と、弁体52と、ばね53と、を有する。
【0039】
(ヒンジ)
ヒンジ51は、吸入部32が設けられた側壁31bと接続するガスバッフル板33の縁部上に設けられている。ヒンジ51は、第一方向D1に延びている。
【0040】
(弁体)
弁体52は、ヒンジ51によって、第一方向D1に延びるヒンジ51の中心軸線回りに回転可能とされている。逆止弁50は、このヒンジ51回りの弁体52の回転によって吸入口36を開閉する。弁体52は、開状態では、ガスバッフル板33の貫通孔38が形成された領域と重なり、閉状態では吸入口36を覆うように設置されている。
【0041】
また、逆止弁50が開状態の場合、弁体52は、圧縮機10から吸入口36に吸入されるガス冷媒の順流の流れ方向から見て吸入口36の外側に位置する。これにより、逆止弁50が開状態の場合、吸入口36は全開となる。
【0042】
また、上述した弁体52は、本実施形態では、第一方向D1に延びる矩形板状に形成されている。
【0043】
(ばね)
ばね53は、弁体52をガスバッフル板33に重ねる方向に弾性力を発生させる。本実施形態のばね53は、ヒンジ51の外周面に用いられた、いわゆるヒンジばねである。ばね53のばね定数は、吸入口36から圧縮機10に吐出されるガス冷媒の逆流の流れによって弾性力が打ち消される程度の大きさとされている。
【0044】
(逆止弁の機能)
続いて、逆止弁50の機能について説明する。
ターボ冷凍機1が通常通り起動していると、ターボ冷凍機1のサイクル内を、圧縮機10、凝縮器20、膨張弁2、蒸発器3の順に流れる。この時、逆止弁50の弁体52は、重力及びばね53の弾性力によって、ガスバッフル板33に重ねられた状態で維持されている。このため、吸入口36は完全に開放され、反対に貫通孔38は弁体52によって完全に閉塞される。これにより、圧縮機10から吐出されたガス冷媒は、吸入口36から導入部30の内部にスムーズに吸入された後、貫通孔38からシェル40内に流入することなくガスバッフル板33を流れて、連通孔34を通ってシェル40内に導かれる。
【0045】
一方、例えば、停電等によってターボ冷凍機1が急停止すると、凝縮器20が蒸発器3よりも高圧の状態で、凝縮器20から圧縮機10、圧縮機10から蒸発器3が連通してしまう場合がある。この場合、凝縮器20と蒸発器3との差圧によって、凝縮器20から圧縮機10に冷媒が逆流しようとする。しかしながら、本実施形態では、凝縮器20から圧縮機10に向けて逆流しようとする冷媒の動圧が、貫通孔38を通して弁体52に加えられる。この動圧によって弁体52が即座に押し上げられ、吸入口36を閉塞し、冷媒の逆流を防止する。
このように、逆止弁50は、ターボ冷凍機1の通常起動時には冷媒を順流方向に流しつつ、ターボ冷凍機1の緊急停止時には凝縮器20と蒸発器3との差圧によって生じうる逆流を即座に防止する。
【0046】
(作用効果)
本実施形態の凝縮器20、及びターボ冷凍機1は、以下の作用効果を発揮できる。
【0047】
本実施形態では、凝縮器20は、圧縮機10から吐出されたガス冷媒を吸入する吸入口36、及び吸入したガス冷媒が通過可能なガスバッフル板33を有する導入部30と、ガスバッフル板33を通過したガス冷媒を収容可能なシェル40と、吸入口36を開閉可能な逆止弁50と、を備える。逆止弁50は、開状態ではガスバッフル板33と重なり、閉状態では吸入口36を覆う弁体52を有する。
【0048】
本実施形態では、逆止弁50は、ガス冷媒が圧縮機10から吸入口36に吸入される順流時に、弁体52とガスバッフル板33とを重ねて吸入口36を開放し、ガス冷媒が吸入口36から圧縮機10に吐出される逆流時に、弁体52によって吸入口36を覆い吸入口36を閉塞することができる。また。逆止弁50は、凝縮器20に設けられている。このため、凝縮器20は、凝縮器20自身の機能により、ガス冷媒の逆流を防止することができる。よって、凝縮器20の外部に冷媒の逆流を防止する装置を設ける必要がないので、凝縮器20の小型化を達成することができる。すなわち、ターボ冷凍機1の小型化を達成することがきるので、ターボ冷凍機1の低接地面積化が可能となる。
【0049】
また、凝縮器20から圧縮機10に冷媒が逆流すると、圧縮機10のシャフト13が逆転し軸受14に過大な荷重が発生する。これは、軸受14が損傷する要因となり得るが、本実施形態では、逆止弁50によって、冷媒の逆流を防止することができるので、逆流による軸受14の損傷を防止することができる。
【0050】
本実施形態では、逆止弁50が開状態の場合、弁体52は、圧縮機10から吸入口36に吸入されるガス冷媒の順流の流れ方向から見て吸入口36の外側に位置する。
【0051】
これにより、逆止弁50は、ガス冷媒の順流時に、吸入口36を全開にすることができる。このため、凝縮器20は、圧縮機10から吐出されるガス冷媒をスムーズに回収することができる。これにより、冷媒が凝縮器20内をスムーズに流れることができるので、凝縮器20の熱交換効率が向上される。また、ガス冷媒の順流が弁体52によって阻害されないので、圧損の増加を抑制し、凝縮器20の高COP(Coefficient of Performance)化が可能となる。すなわち、ターボ冷凍機1の高COP化が可能となる。
【0052】
本実施形態では、ガスバッフル板33には、逆止弁50が開状態の場合に弁体52と重なる領域に貫通孔38が形成されている。
【0053】
これにより、吸入口36から圧縮機10に吐出されるガス冷媒の逆流の流れによって、弁体52が動圧によって動かされる。これにより、ガス冷媒の逆流発生時には、吸入口36が弁体52によって迅速に覆われる。したがって、逆止弁50を簡素な構成にしつつ、ガス冷媒の逆流を迅速に防止することができる。
【0054】
本実施形態では、逆止弁50は、弁体52をガスバッフル板33に重ねる方向に弾性力を発生させるばね53を有する。ばね53のばね53定数は、吸入口36から圧縮機10に吐出されるガス冷媒の逆流の流れによって弾性力が打ち消される程度の大きさである。
【0055】
これにより、ガス冷媒の順流時には、逆止弁50がばね53の弾性力によって開状態で維持されるので、圧縮機10から吐出されるガス冷媒が凝縮器20にスムーズに回収される。一方で、ガス冷媒の逆流発生時には逆流の動圧によってばね53の弾性力が打ち消されて逆止弁50が閉状態となるので、ガス冷媒の逆流が迅速に防止される。例えば、ばね53のばね53定数を適切な値に設定することにより、軸受14の損傷が発生しない程度の逆流では弁体52が開状態で維持されつつ、軸受14の損傷が発生し得る最低流量以上の逆流では弁体52が閉状態となるようにすることができる。
【0056】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0057】
なお、上記実施形態では、凝縮器20が内部バッフル板25を有する場合について説明したが、これに限るものではなく、凝縮器20は、内部バッフル板25を有していなくてもよい。
【0058】
なお、上記実施形態では、ガスバッフル板33には、複数の貫通孔38が設けられているとしたが、これに限られない。貫通孔38の大きさ、形状、個数は適宜変更可能である。
【0059】
なお、上記実施形態では、逆止弁50が、弁体52に弾性力を付与するばね53を有するとしたが、これに限るものではなく、逆止弁50はばね53を有していなくてもよい。ばね53が無い場合、部品点数が削減され、逆止弁50が損傷する確率が減少する。
【0060】
<付記>
各実施形態に記載の凝縮器20、及びターボ冷凍機1は、例えば以下のように把握される。
【0061】
(1)第1の態様に係る凝縮器20は、圧縮機10から吐出されたガス冷媒を吸入する吸入口36、及び吸入した前記ガス冷媒が通過可能なガスバッフル板33を有する導入部30と、前記ガスバッフル板33を通過した前記ガス冷媒を収容可能なシェル40と、前記吸入口36を開閉可能な逆止弁50と、を備え、前記逆止弁50は、開状態では前記ガスバッフル板33と重なり、閉状態では前記吸入口36を覆う弁体52を有する。
【0062】
本態様では、逆止弁50は、ガス冷媒が圧縮機10から吸入口36に吸入される順流時に、弁体52とガスバッフル板33とを重ねて吸入口36を開放し、ガス冷媒が吸入口36から圧縮機10に吐出される逆流時に、弁体52によって吸入口36を覆い吸入口36を閉塞することができる。また。逆止弁50は、凝縮器20に設けられている。このため、凝縮器20は、凝縮器20自身の機能により、ガス冷媒の逆流を防止することができる。
【0063】
(2)第2の態様の凝縮器20は、(1)の凝縮器20であって、前記逆止弁50が開状態の場合、前記弁体52は、前記圧縮機10から前記吸入口36に吸入される前記ガス冷媒の順流の流れ方向から見て前記吸入口36の外側に位置してもよい。
【0064】
これにより、逆止弁50は、ガス冷媒の順流時に、吸入口36を全開にすることができる。このため、凝縮器20は、圧縮機10から吐出されるガス冷媒をスムーズに回収することができる。
【0065】
(3)第3の態様の凝縮器20は、(1)又は(2)の凝縮器20であって、前記ガスバッフル板33には、前記逆止弁50が開状態の場合に前記弁体52と重なる領域に貫通孔38が形成されていてもよい。
【0066】
これにより、吸入口36から圧縮機10に吐出されるガス冷媒の逆流の流れによって、弁体52が動圧によって動かされる。これにより、ガス冷媒の逆流発生時には、吸入口36が弁体52によって迅速に覆われる。
【0067】
(4)第4の態様の凝縮器20は、(1)から(3)のいずれかの凝縮器20であって、前記逆止弁50は、前記弁体52を前記ガスバッフル板33に重ねる方向に弾性力を発生させるばね53を有し、前記ばね53のばね定数は、前記吸入口36から前記圧縮機10に吐出される前記ガス冷媒の逆流の流れによって弾性力が打ち消される程度の大きさであってもよい。
【0068】
これにより、ガス冷媒の順流時には、逆止弁50がばね53の弾性力によって開状態で維持されるので、圧縮機10から吐出されるガス冷媒が凝縮器20にスムーズに回収される。一方で、ガス冷媒の逆流発生時には逆流の動圧によってばね53の弾性力が打ち消されて逆止弁50が閉状態となるので、ガス冷媒の逆流が迅速に防止される。
【0069】
(5)第5の態様のターボ冷凍機1は、(1)から(4)のいずれかの凝縮器20を備える。
【符号の説明】
【0070】
1…ターボ冷凍機 2…膨張弁 3…蒸発器 3a…第二伝熱管 10…圧縮機 11…ケーシング 12…モータ 13…シャフト 14…軸受 15…羽根車 16…ロータ 17…ステータ 20…凝縮器 21…第一仕切板 22…第二仕切板 23…第三仕切板 24…第四仕切板 24a…内部連通孔 25…内部バッフル板 26…冷却水導入管 27…第一伝熱管 27a…第一直管 27b…第二直管 27c…曲管 28…冷却水排出管 29…排出部 30…導入部 31…導入部本体 31a…上壁 31b…側壁 32…吸入部 33…ガスバッフル板 34…連通孔 35…吸入部本体 36…吸入口 37…フランジ 38…貫通孔 40…シェル 41…胴部 42…第一端部 43…第二端部 44…第一室 44a…入口室 44b…出口室 45…第二室 45a…第一直管室 45b…第二直管室 46…第三室 50…逆止弁 51…ヒンジ 52…弁体 53…ばね D1…第一方向 D2…第二方向