(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】ブリスター包装されているイサブコナゾニウム硫酸塩を含有するカプセル製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4439 20060101AFI20240726BHJP
A61J 1/03 20230101ALI20240726BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240726BHJP
B65D 75/36 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
A61K31/4439
A61J1/03 370
A61K9/48
B65D75/36
(21)【出願番号】P 2022175640
(22)【出願日】2022-11-01
【審査請求日】2023-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2021210549
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】517279920
【氏名又は名称】バジリア・ファルマスーチカ・インターナショナル・アーゲー,アルシュヴィル
【氏名又は名称原語表記】Basilea Pharmaceutica International AG, Allschwil
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・ヘフト
【審査官】井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】Isavuconazonium sulfate: a triazole prodrug for invasive fungal infections,International Journal of Pharmacy Practice,2017年,Volume 25, Issue 1,Pages 18-30,https://doi.org/10.1039/ijpp.12302
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-31/327
A61K31/33-31/80
A61K33/00-33/44
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00- 9/72
A61P 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリスター包装されているイサブコナゾニウム硫酸塩を含有するカプセル製剤の保存時におけるイサブコナゾニウム硫酸塩の分解を抑制する方法であって、同カプセル製剤を以下の条件(1)~(4)を充足するカプセル製剤とすることを特徴とする、分解抑制法;
(1)カプセル製剤に用いられているカプセルが日本薬局方の3号カプセルである。
(2)カプセル製剤を収めるポケットの長径が、日本薬局方の3号カプセルで規定される全長15.9mmの170~180%である。
(3)カプセル製剤を収めるポケットの短径が、日本薬局方の3号カプセルで規定される外径5.8mmの315~325%である。
(4)カプセル製剤を収めるポケットの高さが、日本薬局方の3号カプセルで規定される外径5.8mmの105~115%である。
【請求項2】
ブリスター包装がアルミブリスター包装である、請求項
1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリスター包装されているイサブコナゾニウム硫酸塩を含有するカプセル製剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品の中には湿気や光などに影響を受けるものがあることから、医薬品は内袋(inner bag)で包装されることが多い。内袋として、ブリスター包装が汎用されている。医薬品とじかに接触する内袋は一次包装と呼ばれることもある。
【0003】
ブリスター包装は、プラスチック又はアルミ箔のシートを成形して、1個又は複数個のくぼみ(ポケットと呼ばれることもある)を作り、その中に製剤を入れ、開口部をプラスチックフィルム又はシート、アルミ箔などで覆い,周辺部を接着又は固定した包装として理解されている。ブリスター包装された製剤を取り出すときには、フィルムや箔などを剥離等して行う。ブリスター包装は、カプセル剤や錠剤等の包装に用いられる。
【0004】
一般に医薬品分野に用いられているブリスター包装の1つとして、PTP(プレススルーパック)が知られている。PTPとは、錠剤やカプセル剤などの内容物が充填されるポケット部が形成された容器材と、その容器材にポケット部の開口側を密封するように取着されるカバー材(蓋材と呼ばれることもある)とから構成されている。PTPでは、ポケット部を押圧し、そこに収容された内容物によってカバー材を突き破ることで、当該内容物を取出すことができる(特許文献2)。
【0005】
また、容器材と蓋材の両方にアルミ箔を有するブリスターをアルミブリスターと称することもある。一般的にアルミブリスターは内容物のバリア機能が高い。
【0006】
アルミブリスターは、開封時にあらかじめ錠剤やカプセル剤などの製剤を視認できないため、透明なPTPより製剤紛失・落薬のリスクが高いのが課題と言われている(非特許文献2)。ピールタイプブリスター包装は、押しだし時の負荷に耐えられない低硬度の製剤で採用されるケースがあるが、これをアルミブリスターに適用すると、アルミ箔を剥がした際に製剤が勢いよく飛び出してしまうケースがある(非特許文献2)。そこで、ピールタイプアルミブリスター包装において、蓋材のアルミ箔をはがした後、透明フィルムが残る形とし、内容物を視認しながら押しだして内容物を取り出せる工夫された包装も開発されている(非特許文献2)。
【0007】
一方、イサブコナゾニウム硫酸塩を含有するカプセル製剤が海外で臨床応用されている(非特許文献3、4)。同製剤は、アルミブリスター包装されており、1枚のシートに7剤のカプセル製剤が包装されている(非特許文献3、4)。
【0008】
同製剤のブリスター包装では、1剤のカプセル製剤に対応して2つのポケットが備えられ、一方のポケットに乾燥剤が、他方のポケットにカプセル製剤が充填されている(非特許文献3)。その2つのポケットに対応してカバー材に破断線が用意され、破断線に沿って切断することで、1剤のカプセル製剤及び1剤の乾燥剤を含むブリスター包装物を得ることができる(非特許文献3)。カバー材は積層構造を有し、カバー材の表面のシートを剥ぎ取る(Peel Away)とアルミシートが表出し、アルミシートを突き破ることで、カプセル製剤を取出すことができることが案内されている(非特許文献3)。
【0009】
イサブコナゾニウム硫酸塩を186.3mg(イサブコナゾール換算で100mg)含有するカプセル製剤の長さは24.2mmであることが報告されている(非特許文献5)。
【0010】
一般的にカプセル製剤に用いるカプセルは硬カプセルと軟カプセルに分類される。硬カプセルは、大きいものから小さいものまで8つに分類される(000号、00号、0号、1号、2号、3号、4号、5号)(非特許文献1)。
【0011】
3号カプセルの大きさは、5.8mm(外径)×充填後全長(15.9mm)、と公表されている(非特許文献7)。
【0012】
上記イサブコナゾニウム硫酸塩を186.3mg(イサブコナゾール換算で100mg)含有するカプセル製剤の長さ24.2mmは、カプセル0号と00号の各全長の間に相当する長さであり、全長が15.9mmである3号カプセル製剤とは異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特許第3787307号公報
【文献】特許第5727972号公報
【文献】特開2019-135090号公報
【非特許文献】
【0014】
【文献】松吉医科器械株式会社, [online], [令和3年12月9日検索], インターネット <URL: https://www.matsuyoshi.co.jp/catalog-pdf/19/19-7805-00.pdf>
【文献】シオノギファーマ株式会社, [online], [令和3年12月9日検索], インターネット <URL: https://www.shionogi-ph.co.jp/news/2020/11/1109.html>
【文献】CRESEMBA(登録商標)(isavuconazonium sulfate)186mg capsules PATIENT EDUCATION(2020)
【文献】CRESEMBA(登録商標)添付文書(2015)
【文献】PRODUCT MONOGRAPH INCLUDING PATIENT MEDICATION INFORMATION PRCRESEMBATMT, AVIR Pharma Inc.(2018)
【文献】CKD技法(2017)Vol.3,pp.2~7
【文献】Technical Reference File Vcaps Capsules
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
日本薬局方の3号カプセルに充填されたイサブコナゾニウム硫酸塩を含有するカプセル製剤は未だ知られておらず、また、ブリスター包装の仕様等によってこの製剤がどのような影響を受けるかについても全く知られていない。
本発明の課題は、物性に優れ、ブリスター包装されている、イサブコナゾニウム硫酸塩を含有する3号カプセル製剤等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様は、以下の条件(1)~(4)を充足し、ブリスター包装されている、イサブコナゾニウム硫酸塩を含有するカプセル製剤;
(1)カプセル製剤に用いられているカプセルが日本薬局方の3号カプセルである。
(2)カプセル製剤を収めるポケットの長径が、日本薬局方の3号カプセルで規定される全長15.9mmの150~200%である。
(3)カプセル製剤を収めるポケットの短径が、日本薬局方の3号カプセルで規定される外径5.8mmの295~345%である。
(4)カプセル製剤を収めるポケットの高さが、日本薬局方の3号カプセルで規定される外径5.8mmの100~150%である。
【0017】
本発明の一態様は、ブリスター包装されているイサブコナゾニウム硫酸塩を含有するカプセル製剤の保存時における当該イサブコナゾニウム硫酸塩の分解を抑制する方法であって、同カプセル製剤を前記条件(1)~(4)を充足するカプセル製剤とすることを特徴とする、分解抑制法である。
【0018】
本発明の一態様は、ブリスター包装されているイサブコナゾニウム硫酸塩を含有するカプセル製剤の保存時における当該製剤中の水分含量の増加を抑制する方法であって、同カプセル製剤を前記条件(1)~(4)を充足するカプセル製剤とすることを特徴とする、水分含量の増加抑制法である。
【0019】
本発明の一態様は、ブリスター包装されているイサブコナゾニウム硫酸塩を含有するカプセル製剤の保存方法であって、同カプセル製剤を前記条件(1)~(4)を充足するカプセル製剤とすることを特徴とする、保存方法である。
【0020】
すなわち、本発明は、以下の発明等に関する。
【0021】
[1]以下の条件(1)~(4)を充足し、ブリスター包装されている、イサブコナゾニウム硫酸塩を含有するカプセル製剤;
(1)カプセル製剤に用いられているカプセルが日本薬局方の3号カプセルである。
(2)カプセル製剤を収めるポケットの長径が、日本薬局方の3号カプセルで規定される全長15.9mmの165~185%である。
(3)カプセル製剤を収めるポケットの短径が、日本薬局方の3号カプセルで規定される外径5.8mmの310~330%である。
(4)カプセル製剤を収めるポケットの高さが、日本薬局方の3号カプセルで規定される外径5.8mmの100~120%である。
【0022】
[2]ブリスター包装がアルミブリスター包装である、前記[1]に記載のカプセル製剤。
【0023】
[3]ブリスター包装されているイサブコナゾニウム硫酸塩を含有するカプセル製剤の保存時における当該イサブコナゾニウム硫酸塩の分解を抑制する方法であって、同カプセル製剤を以下の条件(1)~(4)を充足するカプセル製剤とすることを特徴とする、分解抑制法;
(1)カプセル製剤に用いられているカプセルが日本薬局方の3号カプセルである。
(2)カプセル製剤を収めるポケットの長径が、日本薬局方の3号カプセルで規定される全長15.9mmの165~185%である。
(3)カプセル製剤を収めるポケットの短径が、日本薬局方の3号カプセルで規定される外径5.8mmの310~330%である。
(4)カプセル製剤を収めるポケットの高さが、日本薬局方の3号カプセルで規定される外径5.8mmの100~120%である。
【0024】
[4]ブリスター包装されているイサブコナゾニウム硫酸塩を含有するカプセル製剤の保存時における当該製剤中の水分含量の増加を抑制する方法であって、同カプセル製剤を以下の条件(1)~(4)を充足するカプセル製剤とすることを特徴とする、水分含量の増加抑制法;
(1)カプセル製剤に用いられているカプセルが日本薬局方の3号カプセルである。
(2)カプセル製剤を収めるポケットの長径が、日本薬局方の3号カプセルで規定される全長15.9mmの165~185%である。
(3)カプセル製剤を収めるポケットの短径が、日本薬局方の3号カプセルで規定される外径5.8mmの310~330%である。
(4)カプセル製剤を収めるポケットの高さが、日本薬局方の3号カプセルで規定される外径5.8mmの100~120%である。
【0025】
[5]ブリスター包装されているイサブコナゾニウム硫酸塩を含有するカプセル製剤の保存方法であって、同カプセル製剤を以下の条件(1)~(4)を充足するカプセル製剤とすることを特徴とする、保存方法;
(1)カプセル製剤に用いられているカプセルが日本薬局方の3号カプセルである。
(2)カプセル製剤を収めるポケットの長径が、日本薬局方の3号カプセルで規定される全長15.9mmの165~185%である。
(3)カプセル製剤を収めるポケットの短径が、日本薬局方の3号カプセルで規定される外径5.8mmの310~330%である。
(4)カプセル製剤を収めるポケットの高さが、日本薬局方の3号カプセルで規定される外径5.8mmの100~120%である。
【0026】
[6]ブリスター包装がアルミブリスター包装である、前記[3]~[5]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、物性に優れ、ブリスター包装されている、イサブコナゾニウム硫酸塩を含有する3号カプセル製剤等が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明のカプセル製剤の一例を示す図である。(1)はブリスター包装を、(2)はカプセル製剤を収めるポケットを、(3)は後述の乾燥剤を収めるポケットを、(4)はカプセル製剤を、(5)はカプセル製剤の湿気による劣化を抑制する目的等で同包される乾燥剤を、それぞれ示す。(2)と(3)は空間的に連結されている。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を具体的な実施の形態に即して詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施の形態に束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形態で実施することが可能である。
【0030】
1.有効成分
本発明において、イサブコナゾールとは、下記式(I)で示される化合物を意味する。
【0031】
【0032】
イサブコナゾールは、Isavuconazoleやアイサブコナゾールと称されることもある。イサブコナゾールのCAS番号は241479-67-4である。米国において、イサブコナゾールのプロドラッグであるイサブコナゾニウム硫酸塩を含有する製剤が臨床応用されている(非特許文献3、4)。イサブコナゾニウム硫酸塩は、下記式(II)で示される化合物である。イサブコナゾニウム硫酸塩は、生体内で加水分解され、イサブコナゾールとなり得る。
【0033】
【0034】
イサブコナゾール又はそのプロドラッグであるイサブコナゾニウム硫酸塩は自体公知の方法で製造又は調製できる(特許文献1、非特許文献3,4等)。
【0035】
2.ブリスター包装
本発明において、ブリスター包装は、プラスチック又はアルミ箔のシートを成形して、1個又は複数個のくぼみ(ポケットと呼ばれることもある)を作り、その中に製剤を入れ、開口部をプラスチックフィルム又はシート、アルミ箔などで覆い,周辺部を接着又は固定した包装として理解される。ブリスター包装された製剤を取り出すときには、フィルムや箔などを剥離等して行う。ブリスター包装は、カプセル剤や錠剤等で用いられる。
【0036】
ブリスター包装の製造方法は、特に限定されず、慣用の方法であることができる(非特許文献6等)。ここで、容器材に熱可塑性樹脂を用いた場合のPTP包装を例にとると、通例、PTP包装機(ブリスター包装機)を使用して連続的に熱可塑性樹脂フィルムを所定の形状に成形させ、カプセル剤等の固形製剤を投入し、アルミ箔等の複合フィルムで溶着させてPTP包装品(PTPシート)を製造することができる。
【0037】
ブリスター包装の容器材や蓋材に用いる素材は特に限定されない。例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)、PCTFE(三フッ化塩化エチレン)、CPP(無軸延伸ポリプロピレン)、A-PET(ポリエチレンテレフタレート)が挙げられる。あるいは、アルミ箔などを貼り合わせて製造されたラミネートであってもよく(特許文献3)、例えば、バリア層が入った各種フィルム(ポリプロピレン樹脂の間に酸素吸収バリア層が入ったバリア包材等)やアルミラミネートフィルム(アルミブリスターと称することもある)を容器材や蓋材として用いることができる。イサブコナゾニウム硫酸塩の物性の観点から、アルミブリスターで包装されることが好ましい。
【0038】
本発明は、ブリスター包装におけるポケットの大きさに1つの特徴を有する。ポケットは、日本薬局方3号カプセルのカプセル製剤が収容できる空間を提供する。
【0039】
前述の通り、硬カプセルは、大きいものから小さいものまで8つに分類される(000号、00号、0号、1号、2号、3号、4号、5号)(非特許文献1)。3号カプセルの大きさは、5.8mm(外径)×充填後全長(15.9mm)、と公表されている(非特許文献7)。従って、本発明のブリスター包装におけるポケットは、5.8mm(外径)×充填後全長(15.9mm)のサイズを有する硬カプセル製剤(すなわち、日本薬局方3号カプセルのカプセル製剤)を収容できる大きさである。
【0040】
本発明のブリスター包装におけるポケットの大きさとして、以下を例示できる。
【0041】
(1)カプセル製剤を収めるポケットの長径が、日本薬局方の3号カプセルで規定される全長15.9mmの150~200%である。
(2)カプセル製剤を収めるポケットの短径が、日本薬局方の3号カプセルで規定される外径5.8mmの295~345%である。
(3)カプセル製剤を収めるポケットの高さが、日本薬局方の3号カプセルで規定される外径5.8mmの100~150%である。
【0042】
ポケットの長径として、例えば、カプセル全長15.9mmの150~200%、カプセル全長15.9mmの160~190%、カプセル全長15.9mmの165~185%、又はカプセル全長15.9mmの170~180%を好ましく挙げることができる。ポケットの長径とは、1単位のカプセル製剤が収容されているポケットに対応する蓋材部分の形状が概ね長方形あるいは楕円形となっていることにおいて、その長方形あるいは楕円形の長径に相当する(
図1を参照)。
【0043】
ポケットの短径として、例えば、カプセル外径5.8mmの295~345%、カプセル外径5.8mmの305~335%、カプセル外径5.8mmの310~330%、又は、カプセル外径5.8mmの315~325%を好ましく挙げることができる。ポケットの短径とは、1単位のカプセル製剤が収容されているポケットに対応する蓋材部分の形状が概ね長方形あるいは楕円形となっていることにおいて、その長方形あるいは楕円形の短径に相当する(
図1を参照)。
【0044】
ポケットの高さとして、例えば、カプセル外径5.8mmの100~150%、カプセル外径5.8mmの100~130%、カプセル外径5.8mmの100~120%、又は、カプセル外径5.8mmの105~115%を好ましく挙げることができる。ポケットの高さとは、1単位のカプセル製剤が収容されているポケットに対応する蓋材からポケット最上部までの距離を意味する(
図1を参照)。
【0045】
ブリスター包装におけるポケットの大きさを前述の大きさとすることにより、収容されたカプセル製剤の保存時における当該製剤中の水分含量の増加を抑制し得る。あるいは、ブリスター包装におけるポケットの大きさを前述の大きさとすることにより、収容されたカプセル製剤の保存時における当該製剤中のイサブコナゾニウム硫酸塩の分解を抑制し得る。
【0046】
ブリスター包装は、カプセル製剤を収めるポケットに加えて、乾燥剤を収めるポケットを更に有していてもよい。カプセル製剤を収めるポケットと、乾燥剤を収めるポケットと、は空間的に連結されていることが好ましい。
【0047】
3.カプセル製剤
本発明は、ブリスター包装されるカプセル製剤が、日本薬局方の3号カプセルで規定される硬カプセル剤であることに1つの特徴を有する。
【0048】
日本薬局方は、局方と呼ばれることもあり、日本国内で定められている、厚生労働大臣によって公示される文書であり、医薬品の品質・純度・強度の基準が定められているほか、各医薬品の有効性を問う試験法や判定方法も掲載されている。当該基準内におさまっている医薬品は「局方品」と呼ばれることもあり、その医薬品一覧も日本薬局方に掲載されている。
【0049】
カプセル製剤とは、粉状、液状などの医薬品等をカプセルに充填するか、カプセル皮膜で被包成型した製剤である。前者を硬カプセル剤、後者を軟カプセル剤と呼ぶこともある。
【0050】
硬カプセルは、大きいものから小さいものまで8つに分類される(000号、00号、0号、1号、2号、3号、4号、5号)(非特許文献1)。3号カプセルの大きさは、5.8mm(外径)×充填後全長(15.9mm)、と公表されている(非特許文献7)。
【0051】
カプセル製剤の製造法は特に限定されず、慣用の方法であってよい。一般的には、例えば、有効成分、賦形剤、崩壊剤など各種成分をそれぞれ篩過した後に混合し、混合物をカプセルに充填し、ブリスター包装など一次包装することでカプセル製剤を製造することができる。ブリスター包装された製剤(単に、ブリスターシートと称することもある)は、個箱に詰めて、封緘させ、二次包装されることもできる。
【0052】
カプセルも自体公知の製造技術で製造され得る。一般的には、カプセル原料(例:ゼラチン、ヒプロメロース、酸化チタン)などを精製水等で溶解させ、攪拌することで均一なゼリーを作り、成形ピンをゼリーに均一に付着させ、ゼリーを成形ピン上で乾燥させ、切断や仮結合を経て、カプセルが製造され得る。カプセルは、さらに、印刷・検査・包装されることもできる。
【0053】
日本薬局方の3号カプセルで規定される硬カプセル製剤に含まれるイサブコナゾニウム硫酸塩の含有量は特に限定されないが、10~200mg、30~150mg、50~100mg、又は70~80mgが例示され、74.5mg(イサブコナゾール換算で40mg)が好ましくは例示される。
【0054】
日本薬局方の3号カプセルで規定される硬カプセル製剤に含まれる各種成分として表1の成分及び組成量を例示することができる。カプセルは、以下の表2に沿って、前述のように、慣用の方法を用いて、製造され得る。
【0055】
【0056】
【0057】
4.分解抑制
本発明における分解抑制とは、本発明に係るブリスター包装されている、イサブコナゾニウム硫酸塩を含有するカプセル製剤を保存する過程において、製剤に含まれるイサブコナゾニウム硫酸塩の含有量が保存開始時のイサブコナゾニウム硫酸塩の含有量と比較して低減することを、抑制することを意味する。
【0058】
製剤に含まれるイサブコナゾニウム硫酸塩の含有量はLC/MS/MSなどの方法で測定可能である。
【0059】
ここで、保存の条件は特に問わず、冷蔵保存であっても室温保存であってもよく、遮光下の保存であってもよい。また、保存経過に連動するイサブコナゾニウム硫酸塩の含有量の経時変化をより明確に確認する等の目的で、長期保存試験・加速試験・苛酷試験などで採用されている条件の下、製剤を保存し、その経時変化を観察することもできる。例えば、25℃/60%RH(相対湿度)、40℃/75%RH等を保存条件として例示できる。
【0060】
分解抑制に際して、製剤の保存期間は1ヵ月以上であることが好ましく、2ヵ月以上、3ヵ月以上、又は6ヵ月以上であることが好ましい。また、製剤の保存期間の別の態様として、9ヵ月以上、12ヵ月以上、18ヵ月以上、24ヵ月以上、又は30ヵ月以上であることが好ましく例示される場合もある。
【0061】
5.水分含量の増加抑制
本発明における水分含量の増加抑制とは、本発明に係るブリスター包装されている、イサブコナゾニウム硫酸塩を含有するカプセル製剤を保存する過程において、保存開始後の製剤の充填組成物、カプセル、及び/又は製剤全体に含まれる水分含量が保存開始時のそれらと比較して増加していく状態を抑制することを意味する。
【0062】
当業者であれば、製剤中の充填組成物やカプセル又は製剤全体の水分含量を容易に測定することができる。測定方法は特に限定されないが、例えば、乾燥減量試験法やカールフィッシャー法などを例示することができる。
【0063】
ここで、保存の条件は特に問わず、冷蔵保存であっても室温保存であってもよく、遮光下の保存であってもよい。また、水分含量の変化をより明確に確認する等の目的で、一般的な長期保存試験・加速試験・苛酷試験などで採用されている条件の下、製剤を保存し、その経時変化を観察することもできる。例えば、25℃/60%RH(相対湿度)、40℃/75%RH等を保存条件として例示できる。
【0064】
水分含量の増加抑制に際して、製剤の保存期間は1ヵ月以上であることが好ましく、2ヵ月以上、3ヵ月以上、又は6ヵ月以上であることが好ましい。また、製剤の保存期間の別の態様として、9ヵ月以上、12ヵ月以上、18ヵ月以上、24ヵ月以上、又は30ヵ月以上であることが好ましく例示される場合もある。
【0065】
6.保存
本発明のカプセル製剤は、アルミブリスターで1次包装された状態で保存されることが好ましい。また、本発明のカプセル製剤は、1次包装される際、空気中の水分が製剤に与える影響を低減する等の目的で、乾燥剤を同包させることが好ましい。乾燥剤の種類は特に限定されないが、例えば、シリカゲル、酸化カルシウム(生石灰)、シリカアルミナゲル系化合物(モンモリナイト等)を例示することができる。乾燥剤の量は、製剤中のイサブコナゾニウム硫酸塩の含有量の10%以上であり得、20%以上、30%以上、又は50%以上であることが好ましい。
【0066】
本発明のカプセル製剤は、個箱やポリエチレンバックなどで二次包装されることができ、二次包装の際にも、乾燥剤を同封させておくことが好ましい。
【0067】
本発明のカプセル製剤は、室温保存であってもよいが、冷蔵保存されることが好ましい。本発明のカプセル製剤は、空気中の湿度が低い環境下や暗室で保存されることが好ましい。
【0068】
製剤の保存期間は特に限定されないが、1ヵ月以上であることが好ましく、2ヵ月以上、3ヵ月以上、又は6ヵ月以上であることが好ましい。また、製剤の保存期間の別の態様として、9ヵ月以上、12ヵ月以上、18ヵ月以上、24ヵ月以上、又は30ヵ月以上であることが好ましく例示される場合もある。
【0069】
7.使用
本発明のカプセル製剤は、例えば、真菌症治療用医薬製剤として用いることもできる。すなわち、真菌症患者に対して本発明の製剤を投与することで、真菌症治療をすることもできる。真菌症治療を目的に本発明の製剤を投与する際の、投与経路、投与頻度、投与量、投与対象については、医師等によって決定され得る。
【実施例】
【0070】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例にも束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形態で実施することが可能である。
【0071】
[実施例1]包装された3号カプセル製剤1の製造
イサブコナゾニウム硫酸塩を含有する3号カプセル製剤1を自体公知の方法により製造した。ここで、3号カプセルに充填された各種成分は前記表1に示す通りであり、3号カプセル自体は前記表2に示す成分を用いて慣用の方法により製造されたものであった。
【0072】
1シートに7剤の同製剤が包装される形態でアルミブリスター包装を実施した。
図1に示すように、本包装では、1剤の同製剤に対して1剤の乾燥剤(25mg)が同包される構造とした。すなわち、1剤の同製剤を収めるポケット(くぼみ)と1剤の乾燥剤を収めるポケット(くぼみ)が空間的に連結される構造であった。アルミブリスター包装は慣用の方法により製造されたものであった。
【0073】
ここで、同製剤を収めるポケットの長径は、3号で規定される全長15.9mmの177%であった。同ポケットの短径は、3号で規定される外径5.8mmの319%であった。同ポケットの高さは、3号で規定される外径5.8mmの108%であった。
【0074】
[実施例2]包装された3号カプセル製剤1の評価
(1)方法
実施例1で製造された3号カプセル製剤1を25℃/60%RHの条件の下で6ヵ月間保存した。保存開始時と保存開始6ヵ月後に、同製剤に含まれるイサブコナゾニウム硫酸塩含有量を測定した。含有量は理論的なイサブコナゾニウム硫酸塩含有量74.5mgに対する相対値(%)とした。イサブコナゾニウム硫酸塩含有量の測定は、HPLCを用いた逆相液体クロマトグラフィーにより実施された。さらに、保存開始時と保存開始6ヵ月後に、同製剤の内容物に含まれる水分含有量をカールフィッシャー電量滴定法に従って測定した。
【0075】
【0076】
分解率は、保存開始時のイサブコナゾニウム硫酸塩含有量から保存開始6ヵ月後のイサブコナゾニウム硫酸塩含有量を差し引いて、保存開始時のイサブコナゾニウム硫酸塩含有量で除し、100を乗じて得た値(%)として、定義した。
【0077】
驚くべきことに、3号カプセル製剤1では、後述の3号カプセル製剤2(比較例2)の場合と比較し、保存時におけるイサブコナゾニウム硫酸塩の分解が顕著に抑制されることが分かった。この差は、互いの包装のポケットの空隙の大きさの相違に起因するものと考えられる。
【0078】
【0079】
水分量増加率は、保存開始6ヵ月後の水分含有量から保存開始時の水分含有量を差し引いて、保存開始時の水分含有量で除し、100を乗じて得た値(%)として、定義した。
【0080】
驚くべきことに、3号カプセル製剤1では、後述の3号カプセル製剤2(比較例2)の場合と比較し、保存時の水分量増加が顕著に抑制されることが分かった。この差は、互いの包装のポケットの空隙の大きさの相違に起因するものと考えられる。
【0081】
[比較例1]3号カプセル製剤2の製造
イサブコナゾニウム硫酸塩を含有する3号カプセル製剤(3号カプセル製剤2)を自体公知の方法により製造した。ここで、3号カプセルに充填された各種成分は前記表1に示す通りであり、カプセル自体は前記表2に示す成分を用いて慣用の方法により製造されたものであった。3号カプセル製剤2は3号カプセル製剤1と同一であった。
【0082】
1シートに7剤の同製剤が包装される形態でアルミブリスター包装を実施した。
図1に示すように、本包装では、1剤の同製剤に対して1剤の乾燥剤(25mg)が同包される構造とした。すなわち、1剤の同製剤を収めるポケット(くぼみ)と1剤の乾燥剤を収めるポケット(くぼみ)が空間的に連結される構造であった。アルミブリスター包装は慣用の方法により製造されたものであった。
【0083】
ここで、実施例1の場合と異なり、同製剤を収めるポケットの長径は、3号で規定される全長15.9mmの245%であった。同ポケットの短径は、3号で規定される外径5.8mmの415%であった。同ポケットの高さは、3号で規定される外径5.8mmの155%であった。
【0084】
[比較例2]3号カプセル製剤2の評価
(1)方法
実施例2と同様の方法により、3号カプセル製剤2の保存安定性等を評価した。
【0085】
【0086】
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明のカプセル製剤は優れた物性を示す。本発明は医薬品産業において極めて有用である。