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特許7527344棘突起間椎骨インプラントおよび関連の移植補助具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】棘突起間椎骨インプラントおよび関連の移植補助具
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/44 20060101AFI20240726BHJP
   A61F 2/46 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
A61F2/44
A61F2/46
【請求項の数】 36
(21)【出願番号】P 2022500832
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2020069143
(87)【国際公開番号】W WO2021005070
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】1907608
(32)【優先日】2019-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】1907609
(32)【優先日】2019-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】522008458
【氏名又は名称】イノスピナ エスアーエールエル
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハネマ グエナエル ロイヒ
(72)【発明者】
【氏名】サマニ ジャック
(72)【発明者】
【氏名】ブシャ ドミニク コンスタント
【審査官】松山 雛子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/111301(WO,A1)
【文献】特表2018-515243(JP,A)
【文献】特表2009-545401(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0226313(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0265246(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/44
A61F 2/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプラント本体(10)を含む棘突起間椎骨インプラント(1)であって、前記インプラント本体(10)は、長軸(AL)に沿って延び、かつ、前記長軸(AL)に沿って連続して、
後端(20)を有する後部(2)と、
2つの隣り合う椎骨(VE)の2つの棘突起(AE)間を延びるように形成された中心部(3)であって、前記後部(2)を延長する中心部(3)と、
前記後部(2)に対して反対の前部(4)であって、テーパー形状の前端(40)まで先細りしながら、前記中心部(3)を延長する前部(4)と、
を備え、
前記インプラント本体(10)は、
前記椎骨(VE)の方向へ向けられるように意図された前方面(11)と、
前記インプラント本体(10)において前記インプラント本体(10)の後端(20)から前端(40)に形成されたガイドチャネルであって、前記ガイドチャネルは、移植補助具の移植スピンドル(8)の少なくとも一部分を受け取るように形成されている、ガイドチャネルと、
を有し、
前記棘突起間椎骨インプラント(1)は、前記ガイドチャネルが前記後端(20)から前記前端(40)まで曲線方向に沿って延び、前記ガイドチャネルが前記インプラント本体(10)の前記前方面(11)内に外側に開放された曲線形状の前方溝(5)を形成するように前記ガイドチャネルが前記前方面(11)内に形成されていること特徴とする、
棘突起間椎骨インプラント(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の棘突起間椎骨インプラント(1)において、
前記前方溝(5)は、前記前方面(11)内に連続して開放されるように、前記インプラント本体(10)の前記前方面(11)において前記後端(20)から前記前端(40)まで連続して形成されている、
棘突起間椎骨インプラント(1)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の棘突起間椎骨インプラント(1)において、
前記インプラント本体(10)は、関節化されておらず、静止姿勢および移植姿勢において、前記前方溝(5)は、同じ曲率の曲線形状を有する、
棘突起間椎骨インプラント(1)。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の棘突起間椎骨インプラント(1)において、
前記前方溝(5)は、所与の曲率半径(RC)を有する凸形状を有し、前記凸形状の曲率中心は、前記前方面(11)に対して反対の前記インプラント本体(10)の後方面(12)に対向する位置にある、
棘突起間椎骨インプラント(1)。
【請求項5】
請求項4に記載の棘突起間椎骨インプラント(1)において、
前記前方面(11)は、前記曲率半径(RC)を有する凸形状を有する、
棘突起間椎骨インプラント(1)。
【請求項6】
請求項4または5に記載の棘突起間椎骨インプラント(1)において、
前記前方溝(5)は、前記前方面(11)に対して深さ方向にずれた底壁(50)によって、内側の範囲が定められ、前記底壁(50)は、所与の曲率半径を有する凸形状を有する、
棘突起間椎骨インプラント(1)。
【請求項7】
請求項6に記載の棘突起間椎骨インプラント(1)において、
前記前方溝(5)は、前記曲率半径(RC)を有する凸形状を有する保持リップ(53)によってその外側の範囲が定められ、前記保持リップ(53)は、前記前方溝(5)の内部よりも狭いスペースの範囲を定めるように、前記底壁(50)に対向し、互いに向かって延びるように配置されている、
棘突起間椎骨インプラント(1)。
【請求項8】
請求項4~7の何れか1項に記載の棘突起間椎骨インプラント(1)において、
前記曲率半径(RC)は、20~300ミリメートルである、
棘突起間椎骨インプラント(1)。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の棘突起間椎骨インプラント(1)において、
前記後部(2)は、前記インプラント本体(10)が前記移植補助具のインプラントホルダ(9)上に設けられた相補的な回転手段(941、951)に対して回転可能となるように、前記長軸(AL)に対して横向きに延びた横軸(AT)の周囲に回転手段(23)を有する、
棘突起間椎骨インプラント(1)。
【請求項10】
請求項9に記載の棘突起間椎骨インプラント(1)において、
前記後部(2)は、2つの互いに対して反対の側面(21、22)、それぞれ上面(21)および下面(22)、を有し、前記回転手段は、前記互いに対して反対の側面(21、22)上に、少なくとも部分的に前記横軸(AT)に中心がある円弧状に形成された凹部(23)または凸部の形態で設けられている、
棘突起間椎骨インプラント(1)。
【請求項11】
請求項1~10の何れか1項に記載の棘突起間椎骨インプラント(1)において、
前記前部(4)は、先端へ先細りしながら前記前端(40)に向かって収束する鋭いエッジによって互いに直接的に接続された端面を備える、
棘突起間椎骨インプラント(1)。
【請求項12】
請求項1~11の何れか1項に記載の棘突起間椎骨インプラント(1)において、
前記後部(2)は、前記中心部(3)との境界面において、前記後部(2)の下側、または、前記後部(2)の前記下側に対して反対の上側で突出した少なくとも1つのブロッキングプレート(24)を備える、
棘突起間椎骨インプラント(1)。
【請求項13】
請求項12に記載の棘突起間椎骨インプラント(1)において、
前記後部(2)は、前記中心部(3)との境界面において、前記後部(2)の前記下側で突出したブロッキングプレート(24)と、前記後部(2)の前記上側で突出した別のブロッキングプレート(24)とを備える、
棘突起間椎骨インプラント(1)。
【請求項14】
請求項12または13に記載の棘突起間椎骨インプラント(1)において、
前記少なくとも1つのブロッキングプレート(24)は、前記前端(40)の方向に向いた前面(240)を有し、前記前面(240)上に、スパイクの形態の定着レリーフ、棘突起(AE)上での定着を可能にするように構成された少なくとも1つの定着レリーフ(25)が設けられている、
棘突起間椎骨インプラント(1)。
【請求項15】
請求項1~14の何れか1項に記載の棘突起間椎骨インプラント(1)において、
前記中心部(3)は、2つの互いに対して反対の側面(31、32)、それぞれ上面(31)および下面(32)、を有し、前記互いに対して反対の側面(31、32)は、前記2つの棘突起(AE)間に嵌り込むように適合化された2つの凹型側面(31、32)を規定するようにくぼんでいる、
棘突起間椎骨インプラント(1)。
【請求項16】
請求項1~15の何れか1項に記載の棘突起間椎骨インプラント(1)を2つの隣り合う椎骨(VE)の2つの棘突起(AE)の間にガイドおよび位置決めするように意図された移植補助具であって、
互いに対して反対の遠位部(91)および近位部(92)を有するインプラントホルダ(9)であって、前記遠位部(91)は、前記棘突起間椎骨インプラント(1)を支持するように形成された支持手段(94、95)を備える、インプラントホルダ(9)と、
自由端で尖端形状の遠位端(810)まで延びた遠位端部(81)を有する移植スピンドル(8)であって、前記遠位端部(81)は、曲線形状を有し、前記遠位端部(81)上に、前記棘突起間椎骨インプラント(1)の前方溝(5)に対して相補的な形状を有する曲線状ガイドレール(83)が設けられ、前記ガイドレール(83)が前記前方溝(5)内に嵌り込むことによって、前記棘突起間椎骨インプラント(1)を前記遠位端部(81)の後方面(84)に沿ってスライドガイドすることが可能にされ、前記ガイドレール(83)は、前記自由端である遠位端(810)まで延びている、移植スピンドル(8)と、
を備える移植補助具。
【請求項17】
請求項16に記載の移植補助具において、
前記移植スピンドル(8)は、中実である、
移植補助具。
【請求項18】
請求項16または17に記載の移植補助具において、
前記移植スピンドル(8)の前記遠位端部(81)は、60~120度の角度の扇形にわたる円弧状に曲がっている、
移植補助具。
【請求項19】
請求項1618の何れか1項に記載の移植補助具において、
前記移植スピンドル(8)の前記遠位端部(81)は、20~300ミリメートルの曲率半径を有する円弧状に曲がっている、
移植補助具。
【請求項20】
請求項1619の何れか1項に記載の移植補助具において、
前記移植スピンドル(8)は、前記遠位端部(81)を自由端である近位端(820)まで延長させる近位端部(82)を備え、前記ガイドレール(83)は、前記近位端部(82)上に形成された長軸方向レール(89)によって、前記遠位端部(81)から前記自由端である近位端(820)まで延長されている、
移植補助具。
【請求項21】
請求項20に記載の移植補助具において、
前記近位端部(82)および前記長軸方向レール(89)のうちの少なくとも一方は、直線状である、
移植補助具。
【請求項22】
請求項1621の何れか1項に記載の移植補助具において、
前記ガイドレール(83)は、前記移植スピンドル(8)の前記遠位端部(81)の少なくとも1つの外面上に形成されている、
移植補助具。
【請求項23】
請求項1622の何れか1項に記載の移植補助具において、
前記移植スピンドル(8)の前記遠位端部(81)は、2つの互いに対して反対の側面(85)、それぞれ上面および下面、を有し、前記ガイドレール(83)は、それぞれの前記側面(85)内に形成された2つのノッチ(830)の形態で形成されている、
移植補助具。
【請求項24】
請求項1623の何れか1項に記載の移植補助具において、
前記移植スピンドル(8)の前記遠位端部(81)は、前記後方面(84)に対して反対の前方面(87)を有し、前記前方面(87)に沿って、前記棘突起間椎骨インプラント(1)がスライドし、前記前方面(87)上に第1の回転ガイド手段(86)が設けられ、
前記移植補助具は、遠位部(71)を有する主支持体(7)と、第2の回転ガイド手段(74)とを備え、前記遠位部(71)上に定着のための少なくとも1つの定着レリーフ(711)が設けられ、前記第2の回転ガイド手段(74)は、前記移植スピンドル(8)の前記遠位端部(81)を挿入する際に前記移植スピンドル(8)を回転可能にガイドするために、第1の回転ガイド手段(86)と協働するように適合化されている、
移植補助具。
【請求項25】
請求項24に記載の移植補助具において、
前記第1の回転ガイド手段および前記第2の回転ガイド手段はそれぞれ、相補的な形状を有する弓形状レール(74)および弓形状スライド(86)を備える、
移植補助具。
【請求項26】
請求項24または25に記載の移植補助具において、
前記第1の回転ガイド手段および前記第2の回転ガイド手段は、60~120度の回転角度にわたって前記移植スピンドルを回転可能にガイドするように形成されている、
移植補助具。
【請求項27】
請求項2426の何れか1項に記載の移植補助具において、
前記主支持体(7)は、把持ヘッド(77)を備える保持グリップ(75)に結合された近位部(72)を有する、
移植補助具。
【請求項28】
請求項2427の何れか1項に記載の移植補助具において、
前記主支持体(7)は、前記主支持体(7)の前記遠位部(71)の遠位面(710)内に開放された遠位穴(73)を有し、前記移植補助具は、椎骨(VE)における定着を意図された尖端形状の遠位端(61)を備えた位置決めパンチ(6)を備え、前記位置決めパンチ(6)は、前記位置決めパンチ(6)を前記遠位穴(73)内に挿入することによって前記主支持体(7)を長軸方向にスライド可能にガイドするように形成されている、
移植補助具。
【請求項29】
請求項1628の何れか1項に記載の移植補助具において、
前記インプラントホルダ(9)の前記遠位部(91)上に設けられた前記支持手段(94、95)は、前記棘突起間椎骨インプラント(1)が横軸(AT)の回りで回転可能となるために、前記インプラントの後部(2)の回転手段(23)と協働するように形成された相補的な回転手段(941、951)を備える、
移植補助具。
【請求項30】
請求項29に記載の移植補助具において、
前記支持手段は、互いに対向する内面(940、950)を有する2つの支持要素(94、95)を備え、前記内面(940、950)は、それぞれ少なくとも部分的に前記横軸(AT)上に中心を有する円弧状に形成され、前記相補的な回転手段を形成する凹部または凸部(941、951)を備える、
移植補助具。
【請求項31】
請求項30に記載の移植補助具において、
前記2つの支持要素(94、95)は、互いに取り外し可能に取り付けられ、そうするために、前記棘突起間椎骨インプラント(1)の支持を可能にする取り付け構成と、前記棘突起間椎骨インプラント(1)を前記インプラントホルダ(9)から解放することを可能にする取り外し構成との間で前記2つの支持要素(94、95)が構成可能であるように、取り外し可能取り付け手段(942、952)を備える、
移植補助具。
【請求項32】
請求項30または31項に記載の移植補助具において、
前記インプラントホルダ(9)の前記遠位部(91)および前記近位部(92)は、2つのロッド(93)によって連結され、前記ロッド(93)は、それぞれの前記支持要素(94、95)に固定された遠位端と、前記遠位端に対して反対の近位端とを有し、前記ロッド(93)の近位端は、前記近位部(92)に取り外し可能に固定されている、
移植補助具。
【請求項33】
請求項32に記載の移植補助具において、
前記ロッド(93)の前記遠位端は、前記インプラント(1)のそれぞれのブロッキングプレート(24)を支持するために、それぞれの前記支持要素(94、95)から突出したそれぞれ終端部(930)を有する、
移植補助具。
【請求項34】
請求項1633の何れか1項に記載の移植補助具において、
前記移植補助具は、前記インプラントホルダ(9)の前記近位部(92)上に回転可能に取り付けられたインパクタ(13)を備える、
移植補助具。
【請求項35】
請求項34に記載の移植補助具において、
前記インパクタ(13)は、前記インプラントホルダ(9)の前記近位部(92)上に固定された遠位端と、前記遠位端に対して反対の近位端とを備える衝撃ロッド(14)を備え、前記衝撃ロッド(14)の前記近位端上にグリップ(15)が固定されている、
移植補助具。
【請求項36】
請求項35に記載の移植補助具において、
前記インパクタ(13)は、前記グリップ(15)と前記インプラントホルダ(9)の前記近位部(92)との間に、前記衝撃ロッド(14)の周囲に回転可能に取り付けられた衝撃スリーブ(16)をさらに備える、
移植補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棘突起間椎骨インプラントの技術分野に関する。また、本発明は、そのような棘突起間椎骨インプラントを移植するための補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
棘突起間椎骨インプラントは、2つの隣り合う椎骨の棘突起間に位置づけられるように意図されたインプラントである。そのようなインプラントは、2つの隣り合う棘突起を互いに引き離すことができる。すなわち、それらの間に間隙またはスペースを得ることができる。
【0003】
特に、本発明は、例えば、腰痛などの治療に利用される。
【0004】
当該技術水準(特に、特許文献1)から知られる棘突起間椎骨インプラントは、2つの隣り合う棘突起間において延びるように意図された中心部と、棘突起を椎骨から漸進的に離れるように移動させ、2つの椎骨間に達する経路を開くように適合化されたプロファイル形状を有する前部と、インプラント本体を通って形成され、インプラント本体の前端および後端上においてのみ開口し、ガイドニードルを受け取るように意図された、直線状ガイド穴の形態のガイドチャネルとを備えるインプラント本体を含む。
【0005】
2つの椎骨間にインプラントを移植するためには、外科的介入が必要である。この介入は、経皮または切開(open)であり得、特許文献1の趣旨においては、患者の側方進入路を介して行われるが、棘突起間椎骨インプラントの他のモデルを用いた、背側進入路も考えられ得る。いずれにせよ、そのような介入は、移植の正確な場所を位置決定し、当該位置までの経路を開く、重要な装置を必要とする。
【0006】
実際に、特許文献1によれば、ガイドニードルを使用する。特に、ガイドニードルは、インプラントの移植時にインプラントをガイドするためにインプラント内に形成された直線状ガイド穴に嵌め込まれるように意図されている。直線状ガイド穴に沿って、2種類の器具によって、椎骨間スペースへの接近を阻止している組織を取り除くことが可能にされ、棘突起を部分的または一時的に離れるように移動させて、移植がより適切になされるようにする。第1の器具は、ねじ様形状、または、平滑なプロファイル形状を有する頭部を有し、ガイドニードルに沿って滑る。第1の器具は、棘突起間靭帯を切断しながら、棘突起を一時的に離れるように移動させるように構成されている。
【0007】
この第1の取り除き(clearance)が一旦完了すると、第2の器具がガイドニードルに沿って挿入される。第2の器具は、第1の器具と同じ全体形状を有するが、より多くの組織を取り除き、移植の場所をより大きく準備するようにより大きな寸法を有する。場所が完全に開けられるか、または、インプラントを受け取るのに十分な大きさの寸法を有するまで、複数の器具を連続して使用し得ることが記載されている。次いで、インプラントは、ガイドニードルに沿って滑ることによって、開かれた場所に設置される。
【0008】
この既知である記載の方法は、インプラントを設置するために複数の操作を必要とし、移植の前に多数の器具を必要とするので、制約がある。さらに、側方進入路による手術は、全身麻酔下で行われることが多く、これは、患者における広い切開をともなう長時間で複雑な手順を意味する。さらに、皮膚と挿入領域と間に距離があるために、位置が不適切となる危険が大きい。
【0009】
当該技術水準はまた、特許文献2の教示によって例示され得る。特許文献2は、関節式インプラント本体を含む棘突起間椎骨インプラントを開示する。この関節式インプラント本体は、最初に直線状構成(それを挿入するため)、次いで、曲線状構成(2つの隣り合う棘突起間に一旦挿入された場合)となるような、複数の連続した、相互接続のセグメントを備える。したがって、静止時に、このインプラント本体は、直線状構成をとり、セグメント内に形成された、直線状に並ぶ穴の形態であるチャネルを通る可撓性収縮要素によって横断される。静止時に、これらの穴は、直線状に並び、チャネルは、可撓性収縮要素の導入のために直線状となる。可撓性収縮要素は、直線状構成から曲線状構成に切り換わることができるように、インプラント本体の前部におけるセグメントを引っ張るように使用される。
【0010】
しかし、特許文献2に記載のインプラントは、直線状構成から曲線状構成に切り換わる関節体によって形成されているが、曲線状構成は、関節体に与える機械的強度が低減するので、必然的に、2つの隣り合う棘突起を確実に引き離すことの信頼性が低いという欠点を有する。さらに、移植時に直線状構成から曲線状構成に切り換わる際に、最初は間隔が開いているが次いで接触するインプラント本体のセグメント間に物が詰まる危険性がある。これにより、患者がつねられたり、損傷を与えられたりし得るし、また、移植が阻害され得る。
【0011】
本発明の目的は、とりわけ、移植時により確実で、より外傷の少ない非関節式インプラント本体の使用を確保することによって、関節式インプラント本体を不要とすることである。
【0012】
また、軸対称のシェル型インプラント本体を含む棘突起間椎骨インプラントを使用することが特許文献3から知られている。このシェル型インプラント本体は、後部と、細くされた中心部と、流線形状の前部とを備える。ここで、インプラントの全長にわたってインプラントを横断するように、軸穴がインプラントの中心に形成されている。この軸穴は、軸穴の後部に設けられた六角形口内に嵌め込まれる六角形頭部を有する押し込みスクリュードライバによって側方進入路を介して、インプラント本体を直線状ガイドロッドに沿ってスライドさせて、側方の押し込みと回転とを組み合わせた動きを介して、インプラントが所定の場所に設定されるように意図されている。これは、「ねじ回し」による移植に相当する。なお、インプラント本体はまた、前部の半分、中心部の全体、および後部の半分にわたって長軸方向に形成された溝を有する。そのような溝は、インプラントの移植時にインプラントが収縮でき、したがって患者に与えるストレスを低減するように、非常に薄く、インプラントに可撓性を与えるように意図されている。
【0013】
上記のように、特許文献3のインプラントは、側方進入路を介した移植によって、移植手順の複雑さについて短所を有する。その移植手順は、本質的に手探りで行われ、したがって、信頼性のないやり方で行われるからである。また、特許文献3のインプラントは、患者の外傷について短所を有する。溝を有するがそのようなストレスを低減するのには不十分であり得るからである。さらに、特許文献3のインプラントの「ねじ回し」による移植は、外傷の元になり得るねじれを組織および棘突起に引き起こすからである。
【0014】
また、弓形状のインプラント本体を含む棘突起間椎骨インプラントを使用することが特許文献4から知られている。この弓形状のインプラント本体は、2つのブロッキングフィンガーを受け取るように意図された横スロットを備え、その2つのブロッキングフィンガーのうちの1つに挟圧力を印加するように適合化された後部におけるねじを備える。2つのブロッキングフィンガーは、2つの隣り合う棘突起を左右に離れさせるように意図され、これに対し、インプラント本体は、これら2つの棘突起の間に収容される。しかしながら、そのようなインプラントは、組み立てられるべき3つの要素(インプラント本体および2つのブロッキングフィンガー)によって構成されているので、機械的信頼性が限定される。このインプラントは、パンチ上に中心づけられたプラットフォームであって、他の要素を支持する機能を有するプラットフォームを備える移植補助具と協働するが、そのようなプラットフォームの動作全体にわたる不安定性に関連して大きな問題がある。言うまでもなく、複数の切開を含むので、外傷の外観が生じる。複数の切開のうちの1つは、インプラント本体を通すものであり、1~2の他の切開は、2つのブロッキングねじを通すものである。他の要素は、90度の弓形状を有する曲線状ロッドであって、プラットフォーム上に回転可能に関節接続されたレバーアームに固定された曲線状ロッドと、曲線状チャネルを規定し、プラットフォーム上に回転可能に取り付けられたレバーアームに固定された曲線状ガイドチューブとからなる。移植時に、プラットフォームが一旦所定位置に設置され、安定性には欠けるが、曲線状ロッドは、その先端を2つの棘突起間に位置づけるようにプラットフォーム上で回転し、次いで、曲線状ガイドチューブもまた、曲線状チャネル内に存在する曲線状ロッドによってガイドされながらプラットフォーム上を回転する。その後、曲線状ロッドは、取り除かれ、次いで、2つの棘突起間に位置づけられるまで、曲線状ガイドチューブの曲線状チャネル内に押し込むことができる。最後に、2つのガイドフィンガーは、やはりプラットフォーム上に回転可能に取り付けられた2つの他の曲線状チューブ内にスライドする。特許文献4に記載の移植方法は、上記のプラットフォームの安定性欠如に加えて、外傷を起こす曲線状ロッドや3つの曲線状チューブの挿入などの複数の短所を有する。曲線状ロッドや曲線状チューブが外傷を起こすのは、それらが90度の曲線形状を有し、そのために、それらの挿入には長い変位がかかわるので、それらの移植が必然的に外傷を起こすような寸法を有するからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】米国第2012/0265246号
【文献】米国第8672977号
【文献】米国第9101409号
【文献】米国第2012/0226313号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、主に背側(dorsal)であるが、わずかに側方(lateral)の進入路(すなわち、背側であるが、背軸(または脊柱軸)に対してわずかにずれた進入路を含む)を介した移植のより簡単な方法に適した棘突起間椎骨インプラントを提供することによって、上記の短所のすべてまたは一部を克服することを目的とする。実際に、患者の切開(opening)は、背面において、インプラントの挿入領域に応じて、かつ、インプラントの大きさおよび移植器具の大きさに応じて決定される必要最小限の部分において行われる。これにより、局所麻酔下でインプラントを確実かつ正確に移植でき、したがって、全身麻酔をともなう重度の外科的介入がないので、術後合併症の危険性を低減できる。
【0017】
本発明はまた、本発明に係る棘突起間椎骨インプラント用に特別に適合化された移植補助具であって、2つの隣り合う椎骨の棘突起間(椎骨終板間ではない)への移植のための、主背側進入路を介したより簡単な方法のために適合化された移植補助具を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記を鑑み、本発明の目的は、インプラント本体を含む棘突起間椎骨インプラントであって、インプラント本体は、長軸に沿って延び、かつ、当該長軸に沿って連続して、
後端を有する後部と、
2つの隣り合う椎骨の2つの棘突起間を延びるように形成された中心部であって、後部を延長する中心部と、
後部に対して反対の前部であって、流線形状の前端まで先細りしながら、中心部を延長する前部と、
を備え、
当該インプラント本体は、
椎骨の方向へ向けられるように意図された前方面と、
インプラント本体においてインプラント本体の後端から前端に形成されたガイドチャネルであって、ガイドチャネルは、移植補助具の移植スピンドルの少なくとも一部分を受け取るように形成されている、ガイドチャネルと、
を有し、
棘突起間椎骨インプラントは、ガイドチャネルが後端から前端まで曲線方向に沿って延び、ガイドチャネルがインプラント本体の当該前方面内に外側に開放された曲線形状の前方溝を形成するようにガイドチャネルが前方面内に形成されていること特徴とする、
棘突起間椎骨インプラントである。
【0019】
したがって、そのような前方溝により、本発明に係るそのようなインプラントは、所定のやり方で曲げられた移植スピンドルを受け取ることを可能にする。よって、本発明に係るそのようなインプラントは、当該技術水準の直線状ガイド穴を想定することが困難であり、不可能でさえもある、主背側進入路を使用した介入を可能にする。実際に、その曲線形状によって、背軸から若干ずれた背側切開による、椎骨間への直感的かつ漸進的な挿入が可能となるので、決定された移植領域内に直接移植することが促進される。
【0020】
本発明において、用語を以下のように定義する。
「前」は、患者の体に最初に貫入することを意図されたインプラント本体の部分と理解されるべきである。
「後」は、患者の体に最後に貫入することを意図されたインプラント本体の部分と理解されるべきである。
「流線形状」は、長軸方向に沿って後から前に細くなる前端の形状と理解されるべきである。
「曲線方向」は、通しチャネルの方向が、直線でなく曲線、例えば、所与の曲率半径を有する円弧をなす曲線を追従すると理解されるべきである。
「前方面」は、患者の解剖学的構造を参照し、椎骨の方向へ向いた面を示す。
「後方面」は、患者の解剖学的構造を参照し、背皮側の、椎骨に対して反対の方向を向いた面を示す。
「下面」は、患者の解剖学的構造を参照し、下の椎骨(底部椎骨)の棘突起の方向を向いた面を示す。
「上面」は、患者の解剖学的構造を参照し、上の椎骨(頂部椎骨)の棘突起の方向を向いた面を示す。
【0021】
本発明に係るインプラントは、単独でまたは組み合わせて考慮される以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。
【0022】
一特徴によると、前方溝は、前方面内に連続して開放されるように、インプラント本体の前方面において後端から前端まで連続して(中断または切れ目なく)形成されている。
【0023】
別の特徴によると、インプラント本体は、関節化されておらず、静止姿勢(移植前)および移植姿勢(2つの棘突起間に一旦移植)において、前方溝は、同じ曲率の曲線形状を有する。
【0024】
別の特徴によると、前方溝は、所与の曲率半径を有する凸形状を有し、凸形状の曲率中心は、前方面に対して反対のインプラント本体の後方面に対向する位置にある。
【0025】
円弧における曲線方向に対応する凸形状は、インプラントの挿入全体にわたって、インプラントの柔軟で継ぎ目のないガイド経路に沿って、インプラントの向きが鉛直向きから水平向きに切り換わることを可能にするので有利である。
【0026】
一可能性によると、前方面は、上記曲率半径を有する凸形状を有する。
【0027】
したがって、インプラントのガイドはまた、やはり曲線形状のこの前方面を追従することによってなされ得る。
【0028】
別の可能性によると、前方溝は、前方面に対して深さ方向にずれた底壁によって、内側の範囲が定められ、底壁は、所与の曲率半径を有する凸形状を有する。
【0029】
したがって、インプラントのガイドはまた、やはり曲線形状のこの底壁を追従することによってなされ得る。
【0030】
一変形例によると、底壁および前方面は、同じ曲率中心を有し、底壁の曲率半径は、前方面の曲率半径よりも小さい。
【0031】
別の可能性によると、前方溝は、上記曲率半径を有する凸形状を有する保持リップによって外側の範囲が定められ、当該保持リップは、前方溝の内部よりも狭いスペースの範囲を定めるように、底壁に対向し、互いに向かって延びるように配置されている。
【0032】
したがって、前方溝は、「C」状断面を有し、「C」の終端部において保持リップを有するので、インプラントを移植スピンドル上に保持する機能、換言すると、挿入時に移植スピンドルから外れる危険性なく、インプラントを保持する機能を確保する。
【0033】
特定の実施形態において、曲率半径は、20~300ミリメートルである。
【0034】
そのような曲率半径によって与えられる利点は、主背側進入路(背軸に対して若干ずれた背側切開)を使用する外科的介入が容易になること、かつ、切開の大きさを限定することである。
【0035】
特定の実施形態において、後部は、当該インプラント本体が移植補助具のインプラントホルダ上に設けられた相補的な回転手段に対して回転可能となるように、長軸に対して横向きに延びた横軸の周囲に回転手段を有する。
【0036】
したがって、これらの回転手段は、インプラントの挿入時にインプラントが容易に回転できるようにする。インプラントの挿入は、少なくとも1つの曲線部を有する挿入経路に沿って行われる。これにより、この挿入が容易になる。なぜなら、インプラントは、経路のこの曲線部分の全体に沿って、このインプラントホルダによって結合および保持されるからである。
【0037】
一特徴によると、後部は、2つの互いに対して反対の側面、それぞれ上面および下面、を有し、回転手段は、互いに対して反対の側面上に、少なくとも部分的に横軸に中心がある円弧状に形成された凹部または凸部の形態で設けられている。
【0038】
したがって、回転手段は、フォームフィット(form-fitting)式に、インプラントホルダ上に設けられた相補的な回転手段に作用する。相補的な回転手段は、インプラントとインプラントホルダとの相対的な回転を可能にするフォームフィットによる結合のための相補的な形状を有する。
【0039】
特定の実施形態において、前部は、先端へ先細りしながら前端に向かって収束する鋭いエッジによって互いに直接的に接続された端面を備える。
【0040】
鋭いエッジによって与えられる利点は、棘突起間靭帯を容易に穿孔およびスライスし、インプラントのための進路を開くことができることである。
【0041】
一変形例によると、前部の先端および端面は、円錐台形、四角錐形、または台形状の立体を規定する。そのような形状によって与えられる利点は、形状を小型に維持しつつ、靭帯領域の穿孔を容易にすることである。
【0042】
本発明の一変形例において、鋭いエッジは、ならい盤によって、簡単な加工を使用して得ることができる。
【0043】
本発明の一変形例において、鋭いエッジのうちの少なくとも1つ、好ましくはすべてが直線状であり、それにより、靭帯領域をきれいに穿孔することが可能になる。
【0044】
有利な実施形態において、後部は、中心部との境界面において、後部の下側、または、後部の下側に対して反対の上側で突出した少なくとも1つのブロッキングプレートを備える。
【0045】
また、上記または各ブロッキングプレートは、後部と中心部との間で、後部の前で延び、したがって、中心部の後で延び、そして、インプラントをその挿入経路において停止させ、2つの棘突起間において正確な位置決めが確実になされるように、棘突起に当接するように適合化されたプレートを形成する。したがって、インプラントの移植時に、上記または各ブロッキングプレートは、インプラントが意図せず取り除かれることを回避するために、インプラントが隣接の棘突起に押し付けられることにより棘突起間スペースからインプラントが外れることを防止する。
【0046】
有利には、後部は、中心部との境界面において、後部の下側で突出したブロッキングプレートと、後部の上側で突出した別のブロッキングプレートとを備える。
【0047】
一変形例によると、2つのブロッキングプレートは、同一平面上にある。
【0048】
別の変形例によると、2つのブロッキングプレートは、同一であり、長軸を含む中央平面を中心として対称である。
【0049】
一可能性によると、少なくとも1つのブロッキングプレートは、後部の所定の側から、長軸に対して直交する平面内において、または、長軸に対して60~120度の角度だけ傾斜した平面内において延びている。
【0050】
したがって、上記または各ブロッキングプレートがインプラント本体の長軸に対して実質的に垂直な平面において後部から延びている場合、ブロッキングプレートは、対応する棘突起上に自然と定着される。
【0051】
別の可能性によると、少なくとも1つのブロッキングプレートは、後部上に固定または関節接続されている。
【0052】
固定されたブロッキングプレートの利点は、インプラント本体の設計が容易で安価なことである。
【0053】
ブロッキングプレートが関節接続されている場合、ブロッキングプレートは、インプラント本体の長軸に対して実質的に垂直な軸に沿ってブロッキングプレートが延びた少なくとも1つの展開姿勢と、インプラント本体の長軸対して実質的に平行な軸に沿って、好ましくは後部の所定側に対向してブロッキングプレートが延びた折りたたみ姿勢との間で可動である。
【0054】
別の可能性によると、少なくとも1つのブロッキングプレートは、前端の方向に向いた前面を有し、前面上に、スパイクの形態の定着レリーフなどの、棘突起上での定着を可能にするように構成された少なくとも1つの定着レリーフが設けられている。
【0055】
この前面は、棘突起の一方に対向するように位置づけられるように意図されている。定着レリーフは、インプラントの最終姿勢において、この棘突起内に安定した定着を与える。
【0056】
一変形例によると、少なくとも1つのブロッキングプレートは、複数の定着レリーフを有する。
【0057】
別の変形例によると、少なくとも1つのスパイクは、インプラントの長軸に対して実質的に平行な軸に沿って延びている。
【0058】
別の変形例によると、少なくとも1つのブロッキングプレートの前面は、骨とインプラント本体との接着を促進する、例えば、多孔質材料などの骨結合材料によって被覆されている。
【0059】
特定の実施形態において、中心部は、2つの互いに対して反対の側面、それぞれ上面および下面、を有し、これらの側面は、2つの棘突起間に嵌め込まれるように適合化された2つの凹型側面を規定するようにくぼんでいる。
【0060】
なお、中心部の上面は、下の椎骨の棘突起を支持するように意図され、他方、中心部の下面は、下の椎骨の棘突起を支持するように意図されている。したがって、これら2つの面のこの凹形状は、2つの棘突起の基部に合うことが可能になり、また、隣り合う棘突起が互いに対して柔らかに離反することを確保し、脊柱前湾をこのレベル(level)において低減するように適合化された若干の弾性変形を促進する。
【0061】
一変形例によると、インプラント本体は、少なくとも1つの生体適合性滅菌可能材料から作成される。例として、限定しないが、インプラント本体は、チタン、チタン系合金、鋼、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)など生体適合性プラスチック材料から選択される材料から作成され得る。
【0062】
本発明はまた、本発明に係る棘突起間椎骨インプラントを2つの隣り合う椎骨の2つの棘突起の間にガイドおよび位置決めするように意図された移植補助具であって、
互いに対して反対の遠位部および近位部を有するインプラントホルダであって、当該遠位部は、当該棘突起間椎骨インプラントを支持するように形成された支持手段を備える、インプラントホルダと、
自由端で尖端形状の遠位端まで延びた遠位端部を有する移植スピンドルであって、当該遠位端部は、曲線形状を有し、当該遠位端部上に、棘突起間椎骨インプラントの前方溝に対して相補的な形状を有する曲線状ガイドレールが設けられ、ガイドレールが前方溝内に嵌り込むことによって、棘突起間椎骨インプラントを当該遠位端部の後方面に沿ってスライドガイドすることが可能にされ、当該ガイドレールは、自由端である遠位端まで延びている、移植スピンドルと、
を備える移植補助具に関する。
【0063】
したがって、棘突起間椎骨インプラントは、2つの椎骨棘突起の間への直感的かつ漸進的な挿入を可能にする少なくとも部分的に曲線状である経路に沿って、この曲線状移植スピンドルのガイドレールによってガイドされることが可能になる。換言すると、インプラントの前方溝を用いると、インプラントは、曲線状経路(曲線状移植スピンドルの形状によって可能にされる)に沿って、かつ、背軸に対して若干ずれた背側切開によって、主背側進入路を使用した介入が可能になるように、曲線状移植スピンドル上で、それ自体が位置づけられ、そしてスライドすることが可能になる。これにより、決定された移植領域において直接的な移植が促進される。
【0064】
換言すると、本発明に係るそのような移植補助具により、移植スピンドルは、その遠位端部において曲線状に方向付けられるので、主背側進入路を使用した外科的介入が可能になる。さらに、インプラントに対して移植スピンドルが前方位置にあることにより、移植スピンドルは、脊椎チャネル内に存在する神経要素を保護する。
【0065】
なお、本発明の趣旨において、移植スピンドルは、組織を通る経路を開くことによって、2つの棘突起間の棘突起間スペースに対向する十分な位置まで患者の体内に貫入できる(外科分野におけるスピンドルの従来機能)ように、自由端で尖端形状の遠位端を終端とする、細い、特に曲線形状の、ボディを形成する。さらに、この移植スピンドルは、上記の特徴、すなわち、棘突起間椎骨インプラントがスライド可能にガイドされるガイドレールを有する。このスライドは、移植スピンドル内ではなく、移植スピンドル上で必ず行われる(換言すると、インプラントは、移植スピンドルの外側にある)。なぜなら、外科分野においては、スピンドルは、その内部でインプラントが滑り得るチャネルまたはチューブを形成しないことが一般的である。
【0066】
また、なお、移植スピンドル上に設けられたガイドレールは、棘突起間椎骨インプラントを曲線状移植経路に沿ってガイドする機能を有するが、インプラントがガイドレールから外れることを回避するために、インプラントが横に変位することを防止または制限する機能を必ず有する。
【0067】
有利には、移植スピンドルの曲線状遠位端部の位置決めは、棘突起間スペースのレベルにおいて可能な限り最も前方で行われる。なぜなら、介入の最後におけるインプラントの最適な状態は、骨が最も幅広であり最も中実である領域である棘突起間スペースの前方部分に対応するからである。したがって、ガイド溝の曲線方向は、移植スピンドルが棘突起間スペースにアクセスすることを満足する迎え角を有するように選択される。
【0068】
本発明において、用語「近位」は、インプラントの移植時において外科医の手に最も近い部分または端を指す。用語「遠位」は、移植時において外科医の手から最も遠い部分または端、または換言すると、介入時に患者に最も近い部分または端を指す。
【0069】
一特徴によると、移植スピンドルは、中実であり、チューブまたはチャネルを形成しない。
【0070】
一可能性によると、移植スピンドルの遠位端部は、60~120度の角度の扇形にわたる円弧状に曲がっている。
【0071】
特定の実施形態において、移植スピンドルの遠位端部は、曲率半径が20~300ミリメートルである円弧状に曲がっている。
【0072】
そのような曲率半径によって提供される利点は、主背側進入路を使用した外科的介入を容易にし、切開の大きさを限定することである。
【0073】
別の可能性によると、移植スピンドルは、自由端である近位端まで遠位端部を延長する近位端部を備え、ガイドレールは、近位端部上に形成された長軸方向レールによって、遠位端部から近位端まで延長されている。
【0074】
したがって、棘突起間椎骨インプラントは、曲線状ガイドレール内を通って曲線状経路をスライドおよび追従するために曲線状遠位端部の方向にスライドするように、近位端のレベルで長軸方向レール上を滑らすことができる。
【0075】
本発明の趣旨において、ガイドレールおよび長軸方向レールは、棘突起間椎骨インプランが近位端から遠位端まで嵌り込み得る1つの連続したレールを形成し得ることが明らかである。
【0076】
換言すると、ガイドレールおよび長軸方向レールは、移植スピンドル上にともに設けられ、直線の後で湾曲する移植経路全体に沿って棘突起間椎骨インプラントをガイドする機能を有するが、このガイドレールおよびこの長軸方向レールはまた、インプラントがガイドレールおよび長軸方向レールから外れることを回避するために、インプラントの横方向の変位を防止または制限する機能を必ず有する。
【0077】
一可能性によると、近位端部および長軸方向レールの少なくとも一方は、直線状である。換言すると、この近位端部は、直線状であり、かつ/または、この長軸方向レールは、直線状である。
【0078】
したがって、棘突起間椎骨インプラントは、最初に直線部(長軸方向レール上を滑る)、次いで最後に曲線部(曲線状ガイドレール上を滑る)を有する挿入経路を追従する。これにより、インプラントは、鉛直姿勢(患者の外側)から水平姿勢(患者の内側の棘突起間スペース内)に切り換わることができる。
【0079】
一特徴によると、ガイドレールは、移植スピンドルの遠位端部の少なくとも1つの外面上に形成されている。
【0080】
換言すると、ガイドレールは、インプラントを移植スピンドル上(チューブまたはチャネルの内側でない)においてスライドさせるために、移植スピンドルの外側に形成されている。
【0081】
別の特徴によると、移植スピンドルの自由端であり尖端形状の遠位端は、90度以下、好ましくは60度以下、おそらくは45度以下の先端角度を有する。
【0082】
実際に、小さな先端角度は、移植スピンドルの組織を通る貫入を促進する。
【0083】
特定の実施形態において、移植スピンドルの遠位端部は、2つの互いに対して反対の側面、それぞれ上面および下面、を有し、ガイドレールは、当該それぞれの側面内に形成された2つのノッチの形態で形成されている。
【0084】
そのようなノッチは、それぞれ上記の保持リップを受け取り、したがって全体距離にわたって安定かつ確実なガイドを可能にするように適合化されている。
【0085】
一特徴によると、移植スピンドルの遠位端部は、インプラントがスライドする後方面に対して反対の前方面を有し、前方面上に第1の回転ガイド手段が設けられ、移植補助具は、遠位部を有する主支持体と、第2の回転ガイド手段とを備え、遠位部上に定着のための少なくとも1つの定着レリーフが設けられ、第2の回転ガイド手段は、移植スピンドルの遠位端部を2つの棘突起間に挿入する際に移植スピンドルを回転可能にガイドするために、第1の回転ガイド手段と協働するように適合化されている。
【0086】
したがって、この主支持体は、椎骨内の、2つの棘突起間を通る中央平面内に位置する領域内で定着される。その後、この主支持体は、移植スピンドルを回転または傾斜させることにより、2つの棘突起間に移植スピンドルの遠位端部が嵌め込まれるように移植スピンドルを方向付けるように使用される。
【0087】
特定の実施形態において、第1の回転ガイド手段および第2の回転ガイド手段はそれぞれ、相補的な形状を有する弓形状レールおよび弓形状スライドを備える。
【0088】
一変形例によると、第1の回転ガイド手段および第2の回転ガイド手段は、60~120度、特に90度範囲の回転角度に沿って移植スピンドルを回転可能にガイドするように形成されている。
【0089】
別の特徴によると、主支持体は、把持ヘッドを備える保持グリップに結合された近位部を有する。
【0090】
そのような保持グリップの主な機能は、特に、主支持体を押し込むために把持ヘッドに押し込む力および必要に応じて衝撃力を、好ましくは繰り返し、印加することによって、主支持体を椎骨内に定着させるために、外科医による把持を可能にし、したがって、外科医が主支持体をセットアップし、保持することを可能にすることである。
【0091】
一変形例によると、保持グリップは、主支持体と異なり、主支持体に固定されているか、または、保持グリップおよび主支持体は、単一部品として一体的に作成されている。
【0092】
別の特徴によると、主支持体は、主支持体の遠位部の遠位面内に開放された遠位穴を有し、移植補助具は、椎骨における定着を意図された尖端形状の遠位端を備えた位置決めパンチを備え、当該位置決めパンチは、位置決めパンチを遠位穴内に挿入することによって主支持体を長軸方向にスライド可能にガイドするように形成されている。
【0093】
したがって、この位置決めパンチは、椎骨内の、外科医によって決定された、2つの棘突起を通る中央平面内に実質的に位置する正確なポイントに定着され、主支持体が所望の領域内に位置するように主支持体をガイドするために使用される。
【0094】
特定の実施形態において、インプラントホルダの遠位部上に設けられた支持手段は、この棘突起間椎骨インプラントが横軸の回りで回転可能となるために、棘突起間椎骨インプラントの後部の回転手段と協働するように形成された相補的な回転手段を備える。
【0095】
一可能性によると、支持手段は、互いに対向する内面を有する2つの支持要素を備え、内面は、それぞれ少なくとも部分的に横軸上に中心を有する円弧状に形成され、かつ、相補的な回転手段を形成する凹部または凸部を備える。
【0096】
したがって、棘突起間椎骨インプラントは、2つのそれぞれの支持要素の内面間に押し込まれるとともに、これらの2つの内面の間で回転可能となっている。
【0097】
さらに、回転手段は、フォームフィット式に、インプラントホルダに設けられた相補的な回転手段に作用する。相補的な回転手段は、インプラントとインプラントホルダとの相対的な回転を可能にするフォームフィットによる結合のための相補的な形状を有する。
【0098】
別の可能性によると、2つの支持要素は、互いに取り外し可能に取り付けられ、そうするために、棘突起間椎骨インプラントの支持を可能にする取り付け構成と、棘突起間椎骨インプラントをインプラントホルダから解放することを可能にする取り外し構成との間で2つの支持要素が構成可能であるように、取り外し可能取り付け手段を備える。
【0099】
このように、一旦棘突起間椎骨インプラントが2つの棘突起間の所定位置に配置されると、必要なことは、棘突起間椎骨インプラントを解放し、したがって、棘突起間椎骨インプラントを所定位置に残したままインプラントホルダを取り除くことを可能にするために、2つの支持要素を互いに引き離すだけである。
【0100】
一可能性によると、取り外し可能取り付け手段は、それぞれの支持要素上に設けられた上部スライドおよび上部レールによって形成されている。
【0101】
別の可能性によると、上部スライドおよび上部レールの両方は、一方の支持要素を他方の支持要素に対して横軸の回りで回転可能にガイドするように協働するように適合化された回転ガイド手段を形成するために、弓形状であり、かつ相補的な形状を有し、そして、インプラントホルダの遠位部の前方面および後方面の間を延びている。
【0102】
したがって、2つの支持要素の引き離しは、インプラントの邪魔をせずに、回転によってなされる。
【0103】
別の可能性によると、インプラントホルダの遠位部および近位部は、2つのロッドによって連結され、当該ロッドは、それぞれの支持要素上に固定された遠位端と、遠位端に対して反対の近位端とを有し、ロッドの近位端は、近位部上に取り外し可能に固定されている。
【0104】
有利には、ロッドの遠位端は、インプラントのそれぞれのブロッキングプレートを支持可能とするために、それぞれの支持要素から突出したそれぞれの終端部を有する。
【0105】
特定の実施形態において、移植補助具は、インプラントホルダの近位部上に回転可能に取り付けられたインパクタを備える。
【0106】
一特徴によると、インパクタは、インプラントホルダの近位部上に固定された遠位端と、遠位端に対して反対の近位端とを備える衝撃ロッドを備え、衝撃ロッドの近位端上にグリップが固定されている。
【0107】
別の特徴によると、インパクタは、グリップとインプラントホルダの近位部との間に、衝撃ロッドの周囲に回転可能に取り付けられた衝撃スリーブをさらに備える。
【0108】
添付の模式図を参照し、以下の非限定な実装例の詳細な記載を読むことによって、本発明の他の特徴および利点が明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
図1図1は、本発明に係る棘突起間椎骨インプラントの一例の後方側の透視図である。
図2図2は、図1のインプラントの正面図(前側)である。
図3図3は、図1のインプラントの底面図(内面側)である。
図4図4は、図1のインプラントの前方側の透視図である。
図5図5は、図1のインプラントの背面図(後側)である。
図6図6は、図1のインプラントの後方側の図である。
図7図7は、図1のインプラントの前方側の図である。
図8図8は、2つの棘突起間の所定位置にある図1のインプラントの透視図(背面および後方側の図)である。
図9図9は、2つの棘突起間の所定位置にある図1のインプラントの透視図(前面および後方側の図)である。
図10図10は、2つの棘突起間の所定位置にある図1のインプラントの後方側の図である。
図11図11は、本発明に係る移植補助具の位置決めパンチを挿入する第1のステップの図である。
図12図12は、本発明に係る移植補助具の主支持体を挿入する第2のステップの図である。
図13図13は、2つの異なる視点から見た、図12の主支持体の遠位部の透視図である。
図14図14は、保持グリップを主支持体上に結合する第3のステップ、および、本発明に係る移植補助具の移植スピンドルを挿入する第4のステップの図である。
図15図15は、図14の保持グリップだけの透視図である。
図16図16は、図14の第4のステップにおいて移植スピンドルの遠位端部がガイドされる主支持体の遠位部の拡大透視図である。
図17図17は、複数の視点から見た、図14の移植スピンドルだけの全体(左側面図)または部分(3つの右側面図)の透視図である。
図18図18は、静止した主支持体に対して移植スピンドルを回転(または傾斜)させる第5のステップの図である。
図19図19は、図1のインプラントを支持する補助具ホルダと、さらにインプラントホルダに取り付けられたインパクタとを備える、本発明に係る移植補助具の透視図である。
図20図20は、図19のインプラントホルダだけの透視図である。
図21図21は、図19のインプラントホルダの遠位部の、その2つの支持要素が取り付け構成(左)および取り外し構成(右)にある状態の透視図である。
図22図22は、補助具ホルダが図1のインプラントを支持した状態で、図19の合体した補助具ホルダおよびインパクタを挿入する第6のステップの図である。
図23図23は、主支持体の遠位部、および、図19のインプラントホルダによって支持されるインプラントがスライドする移植スピンドルの遠位端部の拡大透視図である。
図24図24は、主支持体の遠位部、および、図19のインプラントホルダによって支持されるインプラントがスライドする移植スピンドルの遠位端部の拡大透視図である。
図25図25は、図1のインプラントを押して、2つの棘突起間の棘突起間スペースの方向に移植スピンドル上をスライドさせる第7のステップの開始時の図である。
図26図26は、図25の第7のステップの開始時に移植スピンドル上をスライドするインプラントの拡大透視図である。
図27図27は、図1のインプラントを押して、移植スピンドル上をスライドさせた後、2つの棘突起間にインプラントを位置づける第7のステップの終了時の図である。
図28図28は、図27の第7のステップの終了時の、移植スピンドル上にあるインプラントの拡大透視図である。
図29図29は、インパクタをインプラントホルダから取り除く第8のステップの図である。
図30図30は、2つの支持端を取り外し構成に切り換えることによってインプラントホルダをロック解除する第9のステップの図である。
図31図31は、図30の第9のステップにおけるインプラントおよびインプラントホルダの拡大透視図である。
図32図32は、図30の第9のステップに続いてインプラントホルダを取り除いた後に、移植スピンドルを取り除く第10のステップの図である。
【発明を実施するための形態】
【0110】
簡単のため、同一の要素または同じ機能を確保する要素は、異なる実施形態に対しても同じ参照符号を有する。
【0111】
以下に、図1~7を参照して本発明に係るインプラント1を説明する。この本発明に係るインプラント1は、少なくとも1つの生体適合性材料から作成されたインプラント本体10を含む棘突起間椎骨インプラントである。より詳細には、このインプラント1は、このインプラント本体10によって一体的にかつそれのみによって形成されている。
【0112】
このインプラント本体10は、長軸ALに沿って延び、かつ、この長軸ALに沿って連続して、
後端20を有する後部2と、
2つの隣り合う椎骨VEの2つの棘突起AE(図8~10に示す)間を延びるように形成された中心部3であって、後部2を延長する中心部3と、
後部3に対して反対の前部4であって、流線形前端40まで先細りしながら、中心部3を延長する前部4と、
を備える。
【0113】
したがって、中心部3は、後部2を前部4に連結し、この中心部3は、後部2と前部4との間を延びている。
【0114】
なお、中心部3は、前部2と比較して、ある程度の弾性を有し得るので、中心部3の挿入経路全体にわたり(特に、この挿入経路の曲線状部分全体にわたり)中心部3を曲げることができる。一旦挿入されると、インプラント本体1のこの可撓性により、2つの隣り合う椎骨間において所与の範囲内で可動性を保存することが可能になる。中心部3のこの弾性は、インプラント本体10が異なる剛性/可撓性を有する2つの領域を有することに寄与し、例えば、幾何学的変更(例えば、格子型構造)および/または異なる材料の使用によって得られ得る。
【0115】
後部2は、丸形の後端20を有する半円盤状の全体形状、より詳細には、長軸ALに垂直な横軸AT上に中心を有する半円筒形状を有する。
【0116】
この後部2は、半円盤状の全体形状を有する2つの互いに対して反対の側面21、22、それぞれ上面21および下面22、を有する。これら2つの側面21、22上に、横軸ATの回りで回転するための手段が設けられている。この目的のために、回転手段は、それぞれの側面21、22上に形成され、少なくとも部分的に横軸ATに上に中心を有する円弧状に形成にされた凹部23の形態で設けられている。図3に示すように、凹部23は、180度より小さい角度の扇形、例えば、限定しないが、20~175度の角度の扇形などにわたる円弧形状の凹部の形態である。
【0117】
後述するが、これらの凹部23は、インプラント本体10がインプラントホルダ9上で横軸ATの回りに相対的に回転できるようにするために、このインプラントホルダ9上に設けられた相補的な凸部941、951と協働するように意図されている。
【0118】
後部2と中心部3との間の接合部において、後部2は、後部2の下側(下面22と同じ側)で突出したブロッキングプレート24と、後部2の上側(上面21と同じ側)で突出した別のブロッキングプレート24とを備える。
【0119】
2つのブロッキングプレート24は、長軸ALを含み横軸ATと直交する中央平面PMを中心として対称であり、一方のブロッキングプレート24は、下面22に対して垂直に延び、他方のブロッキングプレート24は、上面21に対して実質的に垂直に延びている。
【0120】
これらのブロッキングプレート24は、同一平面上にあり、長軸ALに対して実質的に直交する面内を延びている。より一般には、これらのブロッキングプレート24は、長軸ALに対して60~120度の角度だけ傾斜した平面内を延びている。一般に、インプラント本体10は、この中央平面PMを中心として対称である。
【0121】
2つのブロッキングプレート24は、それぞれの側面21、22およびまた中心部3に対して外向きに突出している。2つのブロッキングプレート24は、インプラント本体10に固定され、一体化される。一変形例(図示せず)において、ブロッキングプレート24は、それぞれの側面21、22に関節接続(articulate)されるか、または、ブロッキングプレート24は、側面21、22に取り外し可能に取り付けられる。
【0122】
2つのブロッキングプレート24のそれぞれは、前端40の方向へ向いた前面240と、前面240に対して反対の、後端20の方向へ向いた後面241とを有する。
【0123】
2つのブロッキングプレート24の前面240のそれぞれ上に、複数のスパイク25が設けられ、棘突起AE上で定着(anchorage)を可能にするように構成された定着レリーフ(anchoring relief)を形成する。これらのスパイク25は、長軸ALに対して平行な方向に延びている。そして、2つのブロッキングプレート24の後面241は、平滑である。
【0124】
中心部3は、2つの互いに対して反対の側面31、32、それぞれ上面31および下面32、を有する。側面31、32は、2つの棘突起AEの間に嵌め込まれるように適合化された2つの凹型側面31、32を規定するようにくぼんでいる。換言すると、中心部3は、棘突起AEの形状に合うようにその中心において薄くされている。2つのブロッキングプレート24は、それぞれの側面31、32に対して外向きに突出している。
【0125】
前部4は、靭帯領域を穿孔するように適合化された流線形状を有し、この目的のために、先端へ先細りしながら前端40に向かって収束する鋭い直線状エッジによって互いに直接的に接続された平面端面を備える。
【0126】
インプラント本体10はまた、椎骨VEの方向へ向けられるように意図された前方面11と、前方面11に対して反対の後方面12とを有する。
【0127】
前方面11は、20~300ミリメートルの曲率半径RCを有する凸形状を有し、曲率中心は、インプラント本体10の後方面12に対向する位置にある。そして、後方面12は、中心部3のレベルにおける凸形状と、前部4のレベルにおける平面端面形状とを有する。
【0128】
インプラント本体10はまた、前方面11内に形成された前方溝5を有する。前方溝5は、後述のガイドチャネルを形成するように、インプラント本体10をその後端20から前端40まで完全に横断する。ガイドチャネルは、後述の移植補助具の移植スピンドル8の少なくとも一部分を受け取るように形成されている。
【0129】
図4および7に明瞭に図示されるように、この前方溝5は、インプラント本体10の前方面11内に連続して開放されるように、前方面11において後端20から前端40まで連続して形成されている。
【0130】
この前方溝5は、曲率半径RCを有する凸形状を有し、したがって、円弧形状の曲線方向に沿って後端20から前端40まで延びている。この前方溝5は、中央平面PM内を延び、中央平面PMを中心として対称である。
【0131】
インプラント本体10についてある程度の可撓性が考えられ得るが、このインプラント本体10は、関節体を全く形成しない。換言すると、このインプラント本体10は、関節化されておらず、静止姿勢(図1~7において図示される姿勢)および移植姿勢(図8~10および27~32において図示される姿勢)において、前方溝5は、同じ曲率の曲線形状を有する。
【0132】
前方溝5は、図5に示すように、後端20から前端40まで、前方面に対して所与の深さPR定数だけ深さ方向にずれた底壁50によって、その内側の範囲が定められている。
【0133】
この底壁50は、前方面11の曲率中心に一致する曲率中心を有し、この前方面11の曲率半径RCよりも小さい曲率半径RP(図示せず)を有する凸形状を有する。深さPRは、曲率中心を通る半径方向に沿って測定され、RC=RP+PRである。
【0134】
この前方溝5は、中央平面PMに対して平行で円弧形状の2つの側壁51、52によって、その内側の範囲が定められている。2つの側壁51、52の間隔によって、前方溝5の幅LAの範囲が定められている。
【0135】
前方溝5は、前方面11のレベルにおいて曲率半径RCを有する凸形状を有する保持リップ(retaining lip)53によってその外側の範囲が定められている。これらの保持リップ53は、前方溝5の内部よりも狭いスペースの範囲を定めるように、それぞれの側壁51、52から突出し、さらに、底壁50に対向するように配置され、そして、互いに向かって延びている。換言すると、2つの保持リップ53間の間隔ECは、前方溝5の幅LAよりも小さい。これらの保持リップ53は、前方溝5が開放されている前方面11と一体化されている。
【0136】
各保持リップ53は、図5に示すように、曲率中心を通る半径方向に沿って測定されるリップ厚さまたは高さHLを有する。したがって、前方溝5は、やはり曲率中心を通る半径方向に測定される、保持リップ53と底壁50との間の溝高さHRを有し、PR=HR+HLである。
【0137】
さらに、前方溝5は、以下のように形成されている。
長軸ALに対して平行な第1のディレクタ(director)および第2のディレクタであって、第1のディレクタは、底壁50の最低点(後端20と前端40との実質的に中間)を通り、第2のディレクタは、保持リップ53の最高点(後端20または前端40のレベル)を通る、第1のディレクタおよび第2のディレクタを考慮すると、前方溝5は、長軸ALおよび横軸ATに直交する方向に沿って第1のディレクタと第2のディレクタとの間で測定される距離に対応するゼロでない中間高さHIを有する(図5を参照)。
長軸ALに対して平行な第3のディレクタであって、保持リップの最低点(後端20と前端40との間の実質的に中間)を通る第3のディレクタを考慮すると、保持リップ53は、長軸ALおよび横軸ATに直交する方向に沿って第2のディレクタと第3のディレクタとの間で測定される距離に対応する全体高さHGを有する(図5を参照)。
【0138】
そのような構造は、長軸方向(換言すると、直線状)経路に沿う長軸方向レール89(後述)上を、次いで、曲線または弓形状経路に沿う曲線状ガイドレール83(後述)上でインプラント1をスライドさせることを可能にするという利点がある。
【0139】
前方溝5は、その2つのそれぞれの端において、後端20上に開放された後部開口54と、前端40上に開放された前部開口55とを有する。
【0140】
以下に、図11~32を参照して、隣り合う椎骨VEの2つの棘突起AE間にインプラント1をガイドおよび位置決めするように意図された移植補助具、および、そのような移植補助具によってインプラント1を移植するための方法について説明する。
【0141】
この移植補助具は、主背側進入路を使用したインプラント1の移植を可能にするように協働する複数の異なる機能コンポーネントを備えるキットの形態である。移植補助具のこれらの異なるコンポーネントは、移植方法の実装における使用とともに漸次説明する。
【0142】
まず、図11を参照して、外科医は、椎骨VEの側部PL内に位置する基準点を、脊柱CVの軸AC(背軸とも呼ぶ)に対して側方距離DLの位置に決定する。そのような側方距離DLは、手術前に予め決定され、例えば、5~70ミリメートルである。この基準点は、実質的に2つの棘突起AE間を通る中央平面内に位置する。したがって、移植方法は、主背側進入路移植法と呼ばれるが、背軸に対して側方距離DLだけわずかにずれた背側進入路を含む。
【0143】
この基準点を決定する前ステップは、例えば、術前スキャナの使用を介して、かなり前に行われ得る。術前スキャナはまた、目標の棘突起間スペースの幅を測定し、この幅に応じてインプラント1の大きさを選択することを可能にする。
【0144】
その後、外科医は、基準点の上方で、脊柱CVの軸ACに対して側方距離DLにおいて切開を行う。
【0145】
図11に例示する第1のステップにおいて、外科医は、組織、筋肉、靭帯などの異なる要素をスペーサ(図示せず)によって移動させ、背側進入路を介して、移植補助具のコンポーネントを形成する位置決めパンチ6をそれが基準点上に定着されるまで挿入する。
【0146】
この位置決めパンチ6は、尖端形状の遠位端61を有する細長い直線状ロッドである。この位置決めパンチ6は、長方形状の断面を有するが、この形状に限定されず、位置決めパンチ6はまた、円形、正方形、多角形断面などを有し得る。尖端形状の遠位端61は、椎骨PEの側部PL内の基準点上に定着される。
【0147】
この位置決めパンチ6はまた、遠位端61に対して反対の近位端62を有する。位置決めパンチ6は、患者の背面からこの近位端62が突出するのに十分な長さを有する。
【0148】
図12に例示する第2のステップにおいて、外科医は、矢印GUによって模式的に示されるように、主支持体7を位置決めパンチ6上でスライドさせることによって主支持体7を挿入する。この主支持体7は、移植補助具の別のコンポーネントである。
【0149】
この主支持体7は、チューブ状の細長体の形態をとる。主支持体7は、互いに対して反対の遠位部71および近位部72を有する。遠位部71は、所定位置に置かれた際に椎骨の方向へ向く遠位面710を有する。遠位面710から、椎骨VEの側部PL上での定着を可能にするように構成された定着レリーフを形成する複数のスパイク711が突出している。近位部72は、遠位面710に対して反対に、外側を向く近位面720を有する。
【0150】
主支持体7は、その遠位面710内に開放された遠位穴73(図13に示す)を有し、また、その近位面720内に開放された近位穴730(図12に示す)を有する。これらの2つの穴73、730は、互いに開通していないか、または、開通している2つの穴からなり得る。
【0151】
この主支持体7は、位置決めパンチ6よりも長く、遠位穴73は、位置決めパンチ6よりも実質的に長い。したがって、位置決めパンチ6は、位置決めパンチ6を遠位穴73に挿入することによって主支持体7を長軸方向にスライド可能にガイドするように形成されている。
【0152】
主支持体7は、近位面720のレベルにおいて嵌め込まれることによって、近位端62のレベルにおいて外側から導入され、次いで、主支持体7は、スパイク711が椎骨VEの側部PLに接触するまで、位置決めパンチ6に沿ってスライドする(矢印GUによって模式的に示される)。
【0153】
主支持体7の遠位部71は、遠位面710の方向に幅広くなり、棘突起AEの方向に向いた前面712を有する。前面712は、曲線状にくぼんだ形状を有する。前面712から鳩尾形状断面を有する凹形弓形状レール74が突出している。
【0154】
図12に例示する第3のステップにおいて、外科医は、保持グリップ75を主支持体7の近位部72に結合し、より具体的には、保持グリップ75を主支持体7の近位面720に固定する。
【0155】
なお、保持グリップ75は、一好適な変形例において、上記の第2のステップ時に主支持体7に既に結合され得るので、外科医が合体された主支持体7/保持グリップ75を適切に保持し、それを位置決めパンチ6上でスライドさせることができるようにこの主支持体7を挿入する前に、保持グリップ75が主支持体7に既に固定されている。
【0156】
この保持グリップ75は、本体76を備える。本体76は、一方の側で把持ヘッド77によって延長され、他方の側で嵌め込みピン78によって延長されている。嵌め込みピン78は、結合のために主支持体7の近位穴730内に篏め込まれるように適合化されている。把持ヘッド77は、保持グリップ7を手で把持することを可能にする2つの側袖部770を備える。
【0157】
有利には、把持ヘッド77は、90度にわたって回転移動可能に本体76に取り付けられ、ロックシステムによって、把持ヘッド77を第1の位置に、90度回転した後に第2の位置にロックすることが可能である。また、このロックシステムは、把持ヘッド77上の、2つの側袖部770の中央において、本体70と一直線に並ぶロック解除ボタン771を備える。このロックシステムは、第1の位置から第2の位置へ、または、その逆へ切り換えるように把持ヘッド77の回転のロックを解除できる。
【0158】
その後、外科医は、主支持体7を椎骨VEの側部PLに定着するために、保持グリップ75により、把持ヘッド77に押力(衝撃力でもよい)を、好ましくは繰り返し、印加して、主支持体7を押し込むことによって、主支持体7を押すことになる。
【0159】
図14に例示の第4のステップにおいて、外科医は、移植補助具の別のコンポーネントである移植スピンドル8を挿入する。後述するが、そのような移植スピンドル8は、外科医が合体された主支持体7/保持グリップ75/移植スピンドル8を一ステップで挿入するように、主支持体7上に予め取り付けられ得る。
【0160】
この移植スピンドル8は、自由端である尖端形状遠位端810まで延びた遠位端部81を有する。移植スピンドル8はまた、遠位端部81を自由端である近位端820まで延長する近位端部82を有する。
【0161】
図16および17に示すように、尖端形状であり自由端である遠位端810は、90度より小さく、好ましくは、45度よりも小さい尖端角度を有する。
【0162】
遠位端部81は、曲線形状を有し、曲線状ガイドレールがこの遠位端部81上に設けられている。後述するが、このガイドレール83は、インプラント1の前方溝5に対して相補的な形状を有し、同じ曲率半径RCを有するので、インプラント1のスライドをガイドできる。近位端部82は、直線形状を有する。
【0163】
遠位端部81の曲率は、この遠位端部81が、近位端部82に対して、90度±30度の範囲の角度の扇形にわたって延びるような曲率である。特に、遠位端部81は、そのような90度範囲の角度の扇形にわたる、所与の曲率半径RCの円弧状に曲がっている。
【0164】
移植スピンドル8は、その遠位端810から始まって、その近位端820までの全長にわたって、正方形または長方形状の断面を有する。移植スピンドル8は、
所定位置に置かれた場合に主支持体7の方向へ向く前方面87と、
前方面87に対して反対の、挿入時にインプラント1の方向へ向く後方面84と、
互いに対して反対の、それぞれ上面および下面である2つの側面85と、
を有する。
【0165】
ガイドレール83は、遠位端部81のレベルにおいて、それぞれの側面85内に形成された2つのノッチ830の形態で作成されている。ガイドレール83は、遠位端810まで延びている。換言すると、ノッチ830は、遠位端810まで延びている。
【0166】
このガイドレール83は、90度±30度の範囲の角度の扇形にわたる、所与の曲率半径RCの円弧状に曲がっている。
【0167】
さらに、ガイドレール83は、遠位端部81から長軸方向レール89によって延長されている。長軸方向レール89は、近位端部82上に形成され、近位端820まで延びている。この長軸方向レール89は、直線状レールである。長軸方向レール89は、近位部82のレベルにおいて、それぞれの側面85内に形成された2つのノッチ890によって形成されている。ノッチ890は、ノッチ830を延長している。
【0168】
したがって、移植スピンドル8は、遠位端部81(これも弓形状)に沿う弓形状ガイドレール83と、近位端部82(これも直線状)に沿う直線状長軸方向レール89とを連続して有する。
【0169】
さらに、遠位端部81は、前方面87上に形成された弓形状スライド86を有する。この弓形状スライド86は、90度±30度の範囲の角度の扇形にわたり、遠位端810まで延びている。
【0170】
特に、この弓形状スライド86は、遠位端部81のみにわたって延び、近位端部82の始まりで止まる。一変形例(図示せず)において、例えば、移植スピンドル8が、製造時に、まず押し出しされ、次いで曲げられる場合には、この弓形状スライド86は、遠位端部81にわたって延び、そして近位端部82にわたって近位端820まで延びている。
【0171】
この弓形状スライド86は、主支持体7の遠位部71の前面712上に設けられた弓形状レール74に対して相補的な形状を有する。この弓形状レール74およびこの弓形状スライド86は、それぞれ第1の回転ガイド手段および第2の回転ガイド手段を形成する。第1の回転ガイド手段および第2の回転ガイド手段は、移植スピンドル8の遠位端部81を2つの棘突起AE間に挿入する際に、移植スピンドル8を回転可能にガイドするように協働するように適合化されている。
【0172】
また、移植スピンドル8を挿入する第4のステップにおいて、図14に示すように、移植スピンドル8は、その近位端部82が主支持体7に対して実質的に垂直な状態、かつ、その遠位端部81の遠位端810が主支持体7の遠位部71の前面712の方向へ向いた状態で、弓形状スライド86が弓形状レール74にかみ合うまで挿入される。
【0173】
図示しないが、移植スピンドル8が非傾斜姿勢で主支持体7上に既に予め取り付けられ(図14に図示)、外科医が合体した主支持体7/保持グリップ75/移植スピンドル8を(一回の導入ステップで)、保持グリップ75への動作を介して位置決めパンチ6上でその全体をスライドさせるよって、挿入することが有利である。
【0174】
しかし、外科医が、例えば、スクレーパなどのかき取り器具によって、より多くの組織を側方進入路の軸方向(インプラント1の軸AL)に移動させる必要がある場合、移植スピンドル8は、組織を広げやすいように、主支持体7上に直接的には取り付けられない。
【0175】
図18に例示する第5のステップにおいて、外科医は、矢印PGによって模式的に示すように、近位端部82が主支持体7に押し付けられ、遠位端部81が2つの棘突起AE間を部分的に延びるまで、定着されて静止した主支持体7に対して移植スピンドル8を回転(または傾斜)させる。
【0176】
上述のように、この移植スピンドル8の回転は、弓形状スライド86と弓形状レール74との協働によって行われる。移植スピンドル8の回転は、90度範囲の角度にわたって行われる。
【0177】
弓形状スライド86および弓形状レール74の相補的な鳩尾形状によって、移植スピンドル8の遠位端部81が主支持体7から外れる危険性なく、弓形状スライド86と弓形状レール74との間の接触を維持することが可能になる。
【0178】
図22に例示する第6のステップにおいて、外科医は、補助具ホルダ9とインパクタ13とを合体したものを挿入する。補助具ホルダ9およびインパクタ13はまた、移植補助具のコンポーネントである。
【0179】
図19および20を参照する。補助具ホルダ9は、2つの平行ロッド93によって連結された、互いに対して反対の遠位部91および近位部92を有する。
【0180】
遠位部91は、インプラント1を支持するように形成された支持手段を備える。ここで、これらの支持手段は、互いに対向する内面940、950を有する2つの支持要素94、95を有する。内面940、950は、それぞれ凸部941、951を備える。
【0181】
これらの凸部941、951は、少なくとも部分的に、横軸AT上に中心を有する円弧状に形成されている。凸部941、951は、このインプラントホルダ9上で横軸ATの回りにインプラント1を相対的に回転可能にするために、インプラント1の後部2内に形成された凹部23に対して相補的な回転手段を形成する。
【0182】
図21に示すように、各凸部941、951は、例えば、限定しないが、20~175度の角度の扇形などの180度よりも小さい角度の扇形にわたる円弧状に形成された凸部の形態である。
【0183】
さらに、支持要素94、95はまた、それぞれ弓形状面943、953を有する。弓形状面943、953は、それぞれ内面940、950と境界をなし、横軸AT上に中心を有する円弧状に形成されている。これらの2つの弓形状面943、953は、インプラント1を所定位置に保持することを可能にし、また、挿入時にインプラント1を押すことを可能にするように、インプラント1の後端20の丸み形状に合うように意図されている。
【0184】
したがって、凸部941、951は、凹部23に嵌め込まれた状態で、インプラント1を支える。ここで、インプラント1の後部2は、内面940、950の間に押し込まれ、また、インプラント1の丸形後端20は、弓形状面943、953を支える。
【0185】
2つのロッド93は、それぞれ支持要素94、95上に固定された遠位端を有する。さらに、2つの支持要素94、95は、互いに取り外し可能に取り付けられる。そうするために、これらの支持要素94、95は、以下のように構成できるように、取り外し可能な取り付け手段を備える。
インプラント1の支持を可能にする取り付け構成(図21の左)。
インプラント1を解放し、したがってインプラントホルダ9を取り除くことを可能にする取り外し構成(図21の右)(後述)。
【0186】
より詳細には、図21に示すように、取り外し可能な取り付け手段は、上部スライド942および上部レール952によって形成されている。上部スライド942および上部レール952は、それぞれ支持要素94、95上に設けられている。その逆も可能である。
【0187】
この上部スライド942およびこの上部レール952の両方は、弓形状であり、相補的な鳩尾形状を有する。上部スライド942および上部レール952は、遠位部91の前方面および後方面の間を延びている。前方面は、所定位置にある場合、移植スピンドル8の方向へ向く。前方面に対して反対の後方面は、所定位置にある場合、棘突起AEの方向へ向く。
【0188】
この上部スライド942およびこの上部レール952は、一方の支持要素94を他方の支持要素95に対して横軸ATの回りで回転可能にガイドするように協働するように適合化された回転ガイド手段を形成している。
【0189】
取り付け構成において、上部レール952は、上部スライド942内に一体に入れ子にされるか、または受け取られ、2つの支持要素94、95は、互いに取り付けられて、インプラント1をそれらの凸部941、951上で支持できる。
【0190】
さらに、なお、ロッド93の遠位端は、それぞれの支持要素94、95から突出したそれぞれの終端部930を有し、これらの終端部930は、インプラント1を所定位置に保持し、また、挿入時にインプラント1を押すことができるように、インプラント1のそれぞれのブロッキングプレート24の後面241を支持するように意図されている(図23に示す)。
【0191】
取り付け構成から取り外し構成へ切り換えるために必要なことは、上部レール952が上部スライド942から完全に外れるまで、インプラント1を邪魔していない支持要素94、95の一方を横軸ATの回りで回転させることだけである。
【0192】
図23に示すように、インプラントホルダ9の遠位部91の前方面は、移植スピンドル8を部分的に受け取るための溝96を有する。この溝96は、互いに対向する、それぞれの支持要素94、95内に形成された2つの半溝によって形成されている。
【0193】
2つのロッド93のそれぞれは、円形状断面を有するが、この形状に限定されず、各ロッド93はまた、長方形、正方形、多角形状などの断面を有し得る。
【0194】
2つのロッド93は、それらの遠位端に対して反対の近位端であって、近位部92上に取り外し可能に固定された近位端を有する。この近位部92は、2つのロッド93の近位端を互いに連結する一体化体の形態である。この近位部92は、必要に応じて2つのロッド93の近位端から取り外しされ得る(後述)。
【0195】
インパクタ13は、衝撃ロッド14を備える。衝撃ロッド14は、2つのロッド93の近位端の間に、近位部92に固定された遠位端を備える。この衝撃ロッド14はまた、遠位端に対して反対の近位端を備える。近位端上に、インパクタ13を手で把持できるようにする2つの側袖部によって形成されたグリップ15が固定されている。インパクタ13は、グリップ15とインプラントホルダ9の近位部92との間に、衝撃ロッド14の周囲にスライド可能に取り付けられた衝撃スリーブ16をさらに備える。
【0196】
このように、インパクタ13によって、外科医は、インプラント1を2つの棘突起AE間に配置するために、押す力を好ましくは繰り返し印加することによって、インプラントホルダ9を押すことができ、したがって、インプラント1を押すことができる。これは、インパクタ13が近位部92に衝撃を与えるように、グリップ15を一方の手で持ち、他方の手で衝撃グリップ16をスライド移動させることからなる。次いで、この衝撃力は、ロッド93を介して支持要素94、95まで伝達され、最後に終端部930および弓形状面943、953を介してインプラントまで伝達される。
【0197】
第6のステップの開始において、インプラント1は、移植スピンドル8の長軸方向レール89上に、後方面84に沿って、近位端820のレベルでかみ合い、同時に、前方溝5をその前部開口55によって長軸方向レール89上にかみ合させ、インプラント1の前端40は、椎骨VEの側部PLの方向へ向く。
【0198】
より詳細には、前方溝5の保持リップ53は、移植スピンドル8のそれぞれの側面85内に形成されたノッチ890内に嵌め込まれる。保持リップ53によって、インプラント1が移植スピンドル8から外れる危険性なく、前方溝5と長軸方向レール89との接触を維持することが可能になる。
【0199】
なお、前方溝5およびその保持リップ53の弓形状により、長軸方向レール86は、弓形状ガイドレール83よりも幅広い。換言すると、図17に示すように、長軸方向レール89のノッチ890は、幅LRを有し、LRよりも小さい幅LCを有するノッチ830によって延長されている。
【0200】
より詳細には、図17に示すように、長軸方向レール89の各ノッチ890は、後方面84のレベルにおいて、厚さERを有するノッチエッジ891によって範囲を定められている。同様に、図17に示すように、弓形状ガイドレール83の各ノッチ830は、後方面84のレベルにおいて、厚さECを有するノッチエッジ831によって範囲が定められている。ここで、ECは、ERよりも大きく、LR+ER=LC+ECである。このように、各ノッチエッジ891は、一方を他方に向けて幅広くした状態で、対応するノッチエッジ831によって延長されている。
【0201】
なお、厚さERは、前方溝5の中間高さHIに実質的に相当し(図5を参照)、幅LRは、前方溝5の保持リップ53の全体高さHGに実質的に相当する(図5を参照)ので、インプラント1は、前方溝5の保持リップ53がノッチ890内をスライドする状態で、長軸方向レール89に沿った直線状経路に沿ってスライドし得る。次いで、ノッチエッジ891は、この中間高さHIによって規定された長軸方向間隙内をスライドする。
【0202】
さらに、厚さECは、前方溝5の溝高さHRに実質的に相当し(図5を参照)、幅LCは、前方溝5の保持リップ53のリップ高さHLに実質的に相当する(図5を参照)ので、インプラント1は、前方溝5の保持リップ53がノッチ830内をスライドする状態で、弓形状経路(ガイドレール83の曲率中心に一致するインプラント1の前方面11の曲率中心に中心を有する)に沿ってスライドし得る。
【0203】
したがって、第6のステップにおいて、外科医は、図22において矢印ENによって模式的に示すように、前方溝5が弓形状ガイドレール83に達するまで、インプラントホルダ9およびインプラント1を長軸方向レール89に沿って、したがって、移植スピンドル8の近位端部82に沿って下降させるために、インパクタ13によって、インプラントホルダ9を押す。
【0204】
なお、外科医は、図22に示すように、把持ヘッド77が2つのロッド93間を通ることができるように、ロック解除ボタン771を押した後、予め保持グリップ75の把持ヘッド77を90度だけ回転させておく。
【0205】
図25~28に例示する第7のステップにおいて、外科医は、インプラント1が2つの棘突起AE間の最終の位置に到達するまで(図27および28に示す)、インプラント1を遠位端部81の弓形状ガイドレール83(後方面84に対向する)に沿って、したがって、曲線状経路に沿ってスライドさせるように、インパクタ13によって、インプラントホルダ9を押し続ける。当該曲線状経路は、インプラント1を90度の範囲の角度にわたって回転させ、そして2つの棘突起AE間の棘突起間スペースの方向に向かって移動させる経路である。
【0206】
この第7のステップにおいて、前方溝5の保持リップ53は、ノッチ890を通された後、ノッチ830内に嵌め込まれる。これらの保持リップ53によって、インプラント1が移植スピンドル8から外れる危険性なく、前方溝5とガイドレール83との接触を維持することが可能になる。
【0207】
インプラント1のこのような曲線状に変位する際に、このインプラント1は、凹部23と協働する凸部941、951により、インプラントホルダ9に対して回転し、主支持体7に対して実質的に平行な初期の向きから主支持体7に対して実質的に垂直な最終の向きに切り換わる。
【0208】
したがって、インプラントホルダ9は、図25において矢印BAによって模式的に示すように、近位部92が保持グリップ75の上方を通る状態で、インプラント1のスライドと同時に回転(または傾斜)する。この挿入の際に、インプラント1の前部4の流線形状により、2つの棘突起AE間に中心部3が嵌め込まれるように、2つの棘突起AEを広げることが可能になる。
【0209】
インプラント1が一旦所定位置に配置されると、外科医は、X線操作を行う。必要に応じて、外科医は、衝撃ヘッド15を引いてインプラントホルダ9およびしたがってインプラント1を起き上げることによってインプラント1を取り外すことができる。インプラントが適切に配置されたら、外科医は、下記の第8のステップに進む。
【0210】
図29に例示する第8のステップにおいて、外科医は、インパクタ13をインプラントホルダ9から取り除く。そうするために、外科医は、ロッド93の近位部92を取り外し、グリップ15を引いてこのインパクタ13を取り除く。
【0211】
図30に例示する第9のステップにおいて、外科医は、インプラントホルダ9の2つの支持要素94、95を取り外し構成に切り換えることによって、インプラントホルダ9をロック解除する。
【0212】
そうするために、外科医は、上部レール952が上部スライド942から完全に外れるまで(図31に示す)、図30および31において矢印MAによって模式的に示すように、一方の支持要素94を他方の支持要素95に対して回転させるように、ロッド93に働きかける。
【0213】
このように、外科医は、続けて、インプラント1から取り外されたインプラントホルダ9を完全に取り除き、一方のロッド93に取り付けられた支持要素94を支持するそのロッド93を引き、その後、他方のロッド93に取り付けられた他方の支持要素95を支持する他方のロッド93を引く。
【0214】
図32に例示する第10のステップにおいて、外科医は、移植スピンドル8を取り除く。そうするために、外科医は、近位端部82を主支持体7から引き離し、そして遠位端部81をインプラント1の前方溝5(その後部開口54による)から外すために、矢印BRによって模式的に示すように、定着されて静止した主支持体7に対して移植スピンドル8を回転(または傾斜)させる。
【0215】
この移植スピンドル8の回転は、90度の範囲の角度にわたり行われる。この回転は、主支持体7上でのその移植時に行われる回転に対して反対である。
【0216】
このように、外科医は、続いて、移植スピンドル8を完全に取り除く。次いで、外科医は、主支持体7を取り除くために、保持グリップ75の把持ヘッド77によって主支持体7を引き、そして最後に、外科医は、位置決めパンチ6を取り除く。
【0217】
この段階において、図8~10に例示するように、インプラント1のみが棘突起AE間の所定位置に配置され、外科医は、特にスプレッダを取り除き、切開部を閉じることによって介入を終了することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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