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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】ゴムラテックス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 11/02 20060101AFI20240726BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20240726BHJP
   C08F 293/00 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
C08L11/02
C08L53/00
C08F293/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022553546
(86)(22)【出願日】2021-08-24
(86)【国際出願番号】 JP2021031029
(87)【国際公開番号】W WO2022070681
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2020163434
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【弁理士】
【氏名又は名称】古下 智也
(72)【発明者】
【氏名】安藤 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】大串 元
(72)【発明者】
【氏名】小林 直紀
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/026914(WO,A1)
【文献】特開平02-300217(JP,A)
【文献】特開2007-039654(JP,A)
【文献】特開2010-174159(JP,A)
【文献】特開2010-001458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 11/02
C08L 53/00
C08F 293/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造を有するブロック共重合体と、乳化分散剤と、を含有し、
前記ブロック共重合体が、エチレン性不飽和カルボン酸を単量体単位として有する第1ブロック鎖と、クロロプレンを単量体単位として有する第2ブロック鎖と、を備え、
前記乳化分散剤の合計量が、前記ブロック共重合体の単量体単位を与える単量体の合計量を基準として0質量%を超え1.0質量%未満である、ゴムラテックス。
【化1】
【請求項2】
前記エチレン性不飽和カルボン酸が、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の(メタ)アクリル酸を含む、請求項1に記載のゴムラテックス。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸の含有量が、前記ブロック共重合体の単量体単位を与える単量体の合計量を基準として5.0~30質量%である、請求項2に記載のゴムラテックス。
【請求項4】
前記一般式(1)で表される構造が4-((((2-カルボキシエチル)チオ)カルボノチオイル)チオ)-4-シアノペンタン酸由来の構造を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のゴムラテックス。
【請求項5】
前記ブロック共重合体が、前記第1ブロック鎖及び前記第2ブロック鎖のジブロック共重合体を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のゴムラテックス。
【請求項6】
前記乳化分散剤がβ-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のゴムラテックス。
【請求項7】
ブロック共重合体と、乳化分散剤と、を含有するゴムラテックスの製造方法であって、
下記一般式(1)で表される構造を有する化合物の存在下でエチレン性不飽和カルボン酸を乳化重合させた後に、乳化分散剤の存在下でクロロプレンを乳化重合させることにより、前記エチレン性不飽和カルボン酸を単量体単位として有する第1ブロック鎖と、前記クロロプレンを単量体単位として有する第2ブロック鎖と、を備えるブロック共重合体を得る工程を備え、
前記乳化分散剤の合計量が、前記ブロック共重合体の単量体単位を与える単量体の合計量を基準として0質量%を超え1.0質量%未満である、ゴムラテックスの製造方法。
【化2】
【請求項8】
前記エチレン性不飽和カルボン酸が、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の(メタ)アクリル酸を含む、請求項7に記載のゴムラテックスの製造方法。
【請求項9】
前記(メタ)アクリル酸の含有量が、前記ブロック共重合体の単量体単位を与える単量体の合計量を基準として5.0~30質量%である、請求項8に記載のゴムラテックスの製造方法。
【請求項10】
前記一般式(1)で表される構造を有する化合物が4-((((2-カルボキシエチル)チオ)カルボノチオイル)チオ)-4-シアノペンタン酸を含む、請求項7~9のいずれか一項に記載のゴムラテックスの製造方法。
【請求項11】
前記ブロック共重合体が、前記第1ブロック鎖及び前記第2ブロック鎖のジブロック共重合体を含む、請求項7~10のいずれか一項に記載のゴムラテックスの製造方法。
【請求項12】
前記乳化分散剤がβ-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩を含む、請求項7~11のいずれか一項に記載のゴムラテックスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムラテックス及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロプレン重合体をベースとした接着剤は、有機溶剤にクロロプレンゴムを溶解させた溶剤系接着剤が主流であった。しかしながら、溶剤系接着剤は、製造又は使用の際の有機溶剤による火災の危険性及び環境汚染の問題が懸念されており、脱溶剤化の要求が高まってきている。脱溶剤化の手段としては、クロロプレン重合体ラテックスをベースとした水系接着剤に代替する方法が有効である。
【0003】
クロロプレン重合体ラテックスをベースとした水系接着剤としては、例えば、クロロプレン重合体ラテックスに対し、架橋密度が1000原子量当たり0.02~1.00個である水性ポリウレタン樹脂をブレンドし、さらに、アジリジン系、カーボジイミド系又はブロックイソシアネート系の架橋剤を使用する二液型の水系接着剤が知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2-127491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水系接着剤において使用可能なクロロプレン重合体ラテックスに対しては、ジエン系ゴムから構成される部材の接着において接着強度を向上させることが求められる。
【0006】
本発明の一側面は、ジエン系ゴムから構成される部材の接着において優れた接着強度を得ることが可能なゴムラテックスを提供することを目的とする。本発明の他の一側面は、このようなゴムラテックスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、下記一般式(1)で表される構造を有するブロック共重合体と、乳化分散剤と、を含有し、前記ブロック共重合体が、エチレン性不飽和カルボン酸を単量体単位として有する第1ブロック鎖と、クロロプレンを単量体単位として有する第2ブロック鎖と、を備え、前記乳化分散剤の合計量が、前記ブロック共重合体の単量体単位を与える単量体の合計量を基準として0質量%を超え1.0質量%未満である、ゴムラテックスを提供する。
【0008】
本発明の他の一側面は、ブロック共重合体と、乳化分散剤と、を含有するゴムラテックスの製造方法であって、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物の存在下でエチレン性不飽和カルボン酸を乳化重合させた後に、乳化分散剤の存在下でクロロプレンを乳化重合させることにより、前記エチレン性不飽和カルボン酸を単量体単位として有する第1ブロック鎖と、前記クロロプレンを単量体単位として有する第2ブロック鎖と、を備えるブロック共重合体を得る工程を備え、前記乳化分散剤の合計量が、前記ブロック共重合体の単量体単位を与える単量体の合計量を基準として0質量%を超え1.0質量%未満である、ゴムラテックスの製造方法を提供する。
【0009】
【化1】
【発明の効果】
【0010】
本発明の一側面によれば、ジエン系ゴムから構成される部材の接着において優れた接着強度を得ることが可能なゴムラテックスを提供することができる。本発明の他の一側面によれば、このようなゴムラテックスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の内容を詳細に説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0012】
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。数値範囲の「A以上」とは、A、及び、Aを超える範囲を意味する。数値範囲の「A以下」とは、A、及び、A未満の範囲を意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸、及び、それに対応するメタクリル酸の少なくとも一方を意味する。
【0013】
<ゴムラテックス>
本実施形態に係るゴムラテックスは、下記一般式(1)で表される構造を有するブロック共重合体(以下、場合により「ブロック共重合体A」という)と、乳化分散剤と、を含有し、ブロック共重合体Aが、エチレン性不飽和カルボン酸を単量体単位として有する第1ブロック鎖と、クロロプレンを単量体単位として有する第2ブロック鎖と、を備え、乳化分散剤の合計量が、ブロック共重合体の単量体単位を与える単量体の合計量を基準として0質量%を超え1.0質量%未満である。
【化2】
【0014】
本実施形態に係るゴムラテックスによれば、ジエン系ゴムから構成される部材の接着において優れた接着強度を得ることが可能であり、例えば、スチレンブタジエンゴムから構成される部材の接着において優れた接着強度を得ることができる。本実施形態に係るゴムラテックスによれば、ジエン系ゴムから構成される部材同士の接着において優れた接着強度を得ることができる。本実施形態に係るゴムラテックスによれば、天然ゴムから構成される部材の接着において優れた接着強度を得ることも可能であり、天然ゴムから構成される部材同士の接着において優れた接着強度を得ることもできる。
【0015】
本実施形態に係るゴムラテックスは、一般式(1)で表される構造に加えて、クロロプレンの単量体単位における二重結合と、エチレン性不飽和カルボン酸の単量体単位におけるカルボキシ基(水素結合性官能基)と、を分子中に有するブロック共重合体Aを含有するため、各種部材の接着に好適に用いることができる。また、乳化分散剤の合計量が0質量%を超え1.0質量%未満であることにより、乳化分散剤の偏析による接着性阻害を抑制し、ブロック共重合体Aの本来の接着力を発現させることができる。本実施形態に係るゴムラテックスは、そのまま接着剤として使用することができる。本実施形態に係るゴムラテックスは、有機溶剤を含有しなくてよく、水系接着剤(水系接着剤組成物)として用いることができる。
【0016】
本実施形態に係るゴムラテックスは、レゾルシン-ホルムアルデヒド樹脂を含有しなくてよい。本実施形態に係るゴムラテックスによれば、レゾルシン-ホルムアルデヒド樹脂を用いることなく、ジエン系ゴムから構成される部材の接着において優れた接着強度を得ることができると共に、天然ゴムから構成される部材の接着において優れた接着強度を得ることができる。
【0017】
ブロック共重合体Aは、エチレン性不飽和カルボン酸を単量体単位として有する第1ブロック鎖と、クロロプレン(2-クロロ-1,3-ブタジエン)を単量体単位として有する第2ブロック鎖と、を備える。第1ブロック鎖は、エチレン性不飽和カルボン酸に由来する構造単位を有する。第2ブロック鎖は、クロロプレンに由来する構造単位を有し、クロロプレン重合体のブロック鎖である。第2ブロック鎖は、第1ブロック鎖の一方の末端又は両末端に結合している。
【0018】
ブロック共重合体Aは、第1ブロック鎖に該当するブロック鎖を複数有してよく、第2ブロック鎖に該当するブロック鎖を複数有してよい。ブロック共重合体Aが複数の第1ブロック鎖を備える場合、第1ブロック鎖は、互いに同一種であってよく、互いに異なる種であってよい。ブロック共重合体Aが複数の第2ブロック鎖を備える場合、第2ブロック鎖は、互いに同一種であってよく、互いに異なる種であってよい。ブロック共重合体Aは、ジエン系ゴムから構成される部材の接着、及び、天然ゴムから構成される部材の接着において優れた接着強度を得やすい観点から、第1ブロック鎖及び第2ブロック鎖のジブロック共重合体(二元共重合体、バイポリマー)を含むことが好ましい。
【0019】
第1ブロック鎖は、ジエン系ゴムから構成される部材の接着、及び、天然ゴムから構成される部材の接着において優れた接着強度を得やすい観点から、エチレン性不飽和カルボン酸の単独重合体であることが好ましい。第1ブロック鎖は、複数のエチレン性不飽和カルボン酸の共重合体であってもよい。第1ブロック鎖は、エチレン性不飽和カルボン酸と、エチレン性不飽和カルボン酸とは異なる単量体との共重合体であってもよく、すなわち、エチレン性不飽和カルボン酸とは異なる単量体を単量体単位として有してよい。第1ブロック鎖は、クロロプレンを単量体単位として有さなくてよい。エチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸、グルタコン酸等が挙げられる。エチレン性不飽和カルボン酸とは異なる単量体としては、スチレン、アルキルスチレン、アリールスチレン、ハロゲン化スチレン、アルコキシスチレン、ビニル安息香酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。第1ブロック鎖は、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸、グルタコン酸、スチレン、アルキルスチレン、アリールスチレン、ハロゲン化スチレン、アルコキシスチレン、ビニル安息香酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエン、及び、イソプレンからなる群より選ばれる少なくとも一種を単量体単位として有さなくてよい。第1ブロック鎖は、芳香族ビニル化合物を単量体単位として有さなくてよい。第1ブロック鎖は、不飽和ニトリルを単量体単位として有さなくてよい。
【0020】
エチレン性不飽和カルボン酸は、ジエン系ゴムから構成される部材の接着、及び、天然ゴムから構成される部材の接着において優れた接着強度を得やすい観点から、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の(メタ)アクリル酸を含むことが好ましい。第1ブロック鎖において(メタ)アクリル酸の単量体単位の含有量は、第1ブロック鎖の全量を基準として、70質量%以上が好ましく、70質量%を超えることがより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上が特に好ましく、95質量%以上が極めて好ましく、98質量%以上が非常に好ましく、99質量%以上がより一層好ましい。
【0021】
第2ブロック鎖は、ジエン系ゴムから構成される部材の接着、及び、天然ゴムから構成される部材の接着において優れた接着強度を得やすい観点から、クロロプレンの単独重合体であることが好ましい。第2ブロック鎖は、クロロプレンと、クロロプレンとは異なる単量体との共重合体であってもよく、すなわち、クロロプレンとは異なる単量体を単量体単位として有してよい。第2ブロック鎖は、エチレン性不飽和カルボン酸を単量体単位として有さなくてよい。第2ブロック鎖は、不飽和ニトリルを単量体単位として有さなくてよい。第2ブロック鎖は、炭素数4~24のアルキル基を有する重合性不飽和単量体、及び、水酸基含有重合性単量体からなる群より選ばれる少なくとも一種を単量体単位として有さなくてよい。クロロプレンとは異なる単量体としては、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。第2ブロック鎖においてクロロプレンの単量体単位の含有量は、第2ブロック鎖の全量を基準として、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましく、98質量%以上が特に好ましく、99質量%以上が極めて好ましい。
【0022】
ブロック共重合体Aにおいてエチレン性不飽和カルボン酸の単量体単位の含有量は、ジエン系ゴムから構成される部材の接着、及び、天然ゴムから構成される部材の接着において優れた接着強度を得やすい観点から、ブロック共重合体Aの単量体単位を与える単量体の合計量、又は、エチレン性不飽和カルボン酸の単量体単位及びクロロプレンの単量体単位の合計量を基準として下記の範囲が好ましい。エチレン性不飽和カルボン酸の単量体単位の含有量は、5.0質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましい。エチレン性不飽和カルボン酸の単量体単位の含有量は、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。これらの観点から、エチレン性不飽和カルボン酸の単量体単位の含有量は、5.0~30質量%が好ましく、10~25質量%がより好ましく、15~20質量%が更に好ましい。同様の観点から、(メタ)アクリル酸の含有量は、ブロック共重合体Aの単量体単位を与える単量体の合計量、又は、エチレン性不飽和カルボン酸の単量体単位及びクロロプレンの単量体単位の合計量を基準としてこれらの範囲であることが好ましく、例えば、5.0~30質量%であることが好ましい。
【0023】
ブロック共重合体Aにおいてクロロプレンの単量体単位の含有量は、ジエン系ゴムから構成される部材の接着、及び、天然ゴムから構成される部材の接着において優れた接着強度を得やすい観点から、ブロック共重合体Aの単量体単位を与える単量体の合計量、又は、エチレン性不飽和カルボン酸の単量体単位及びクロロプレンの単量体単位の合計量を基準として下記の範囲が好ましい。クロロプレンの単量体単位の含有量は、70質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。クロロプレンの単量体単位の含有量は、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。これらの観点から、クロロプレンの単量体単位の含有量は、70~95質量%が好ましく、75~90質量%がより好ましく、80~85質量%が更に好ましい。
【0024】
ブロック共重合体Aにおいて不飽和ニトリルの単量体単位の含有量は、ブロック共重合体Aの単量体単位を与える単量体の合計量、又は、エチレン性不飽和カルボン酸の単量体単位及びクロロプレンの単量体単位の合計量を基準として、5質量%以下、5質量%未満、1質量%以下、1質量%未満、0.1質量%以下、又は、0.01質量%以下であってよい。ブロック共重合体Aは、不飽和ニトリルを単量体単位として有さなくてよい。
【0025】
ブロック共重合体Aは、上述の一般式(1)で表される構造を有する。一般式(1)で表される構造は、一般式(1)で表される構造を有する化合物の存在下で重合を行うことにより導入することが可能であり、13C-NMR法によってブロック共重合体Aが当該構造を有することを確認できる。ブロック共重合体Aは、一般式(1)で表される構造を第1ブロック鎖において有することができる。一般式(1)で表される構造は、後述する化合物A由来の構造であり、ジエン系ゴムから構成される部材の接着、及び、天然ゴムから構成される部材の接着において優れた接着強度を得やすい観点から、4-((((2-カルボキシエチル)チオ)カルボノチオイル)チオ)-4-シアノペンタン酸由来の構造を含むことが好ましい。
【0026】
本実施形態に係るゴムラテックスにおけるブロック共重合体Aの含有量は、ジエン系ゴムから構成される部材の接着、及び、天然ゴムから構成される部材の接着において優れた接着強度を得やすい観点から、ゴムラテックスの固形分の全量を基準として下記の範囲が好ましい。ブロック共重合体Aの含有量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましい。ブロック共重合体Aの含有量は、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましい。これらの観点から、ブロック共重合体Aの含有量は、5~40質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましく、15~25質量%が更に好ましい。
【0027】
本実施形態に係るゴムラテックスは、少なくとも一種の乳化分散剤を含有する。乳化分散剤としては、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤等が挙げられる。アニオン系乳化剤としては、ロジン酸カリウム、脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級脂肪酸アミドのスルホン酸塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物の金属塩(例えば、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩等の芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩)などが挙げられる。ノニオン系乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリビニルアルコール等が挙げられる。乳化分散剤は、ジエン系ゴムから構成される部材の接着、及び、天然ゴムから構成される部材の接着において優れた接着強度を得やすい観点から、アニオン系乳化剤を含むことが好ましく、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物の金属塩を含むことがより好ましく、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩を含むことが更に好ましく、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩を含むことが特に好ましい。乳化分散剤は、1種を単独で含んでよく、2種以上を含んでもよい。
【0028】
乳化分散剤の合計量は、ジエン系ゴムから構成される部材の接着において優れた接着強度を得る観点、及び、天然ゴムから構成される部材の接着において優れた接着強度を得やすい観点から、ブロック共重合体Aの単量体単位を与える単量体の合計量を基準として0質量%を超え1.0質量%未満である。乳化分散剤の合計量は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0029】
乳化分散剤の合計量は、ジエン系ゴムから構成される部材の接着、及び、天然ゴムから構成される部材の接着において優れた接着強度を得やすい観点から、ブロック共重合体Aの単量体単位を与える単量体の合計量を基準として下記の範囲が好ましい。乳化分散剤の合計量は、0.001質量%以上が好ましく、0.002質量%以上がより好ましく、0.003質量%以上が更に好ましく、0.004質量%以上が特に好ましく、0.005質量%以上が極めて好ましい。乳化分散剤の合計量は、0.8質量%以下が好ましく、0.6質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましく、0.3質量%以下が特に好ましく、0.1質量%以下が極めて好ましく、0.08質量%以下が非常に好ましく、0.05質量%以下がより一層好ましく、0.03質量%以下が更に好ましく、0.01質量%以下が特に好ましく、0.008質量%以下が極めて好ましく、0.005質量%以下が非常に好ましい。乳化分散剤の合計量は、0.001~0.8質量%が好ましく、0.002~0.6質量%がより好ましく、0.002~0.5質量%が更に好ましく、0.002~0.3質量%が特に好ましく、0.002~0.1質量%が極めて好ましく、0.002~0.08質量%が非常に好ましく、0.002~0.05質量%がより一層好ましく、0.002~0.03質量%が更に好ましく、0.002~0.01質量%が特に好ましく、0.002~0.008質量%が極めて好ましく、0.002~0.005質量%が非常に好ましい。乳化分散剤の合計量は、0.008質量%以上、0.01質量%以上、0.03質量%以上、0.05質量%以上、0.08質量%以上、0.1質量%以上、0.3質量%以上、又は、0.5質量%以上であってよい。乳化分散剤の合計量は、0.004質量%以下、0.003質量%以下、又は、0.002質量%以下であってよい。乳化分散剤の合計量は、0.004~0.5質量%、0.004~0.1質量%、0.004~0.05質量%、0.004~0.01質量%、0.004~0.005質量%、0.005~0.5質量%、0.005~0.1質量%、0.005~0.05質量%、又は、0.005~0.01質量%であってよい。
【0030】
本実施形態に係るゴムラテックスは、ブロック共重合体A及び乳化分散剤以外の成分を含有してよい。このような成分としては、粘着付与樹脂、増粘剤、イソシアネート、リン酸系化合物、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、消泡剤、防錆剤等が挙げられる。本実施形態に係るゴムラテックスは、これらの成分の少なくとも一種を含有しなくてもよい。
【0031】
粘着付与樹脂としては、ロジン樹脂、重合ロジン樹脂、α-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、C5留分系石油樹脂、C9留分系石油樹脂、C5/C9留分系石油樹脂、DCPD系石油樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂等が挙げられる。増粘剤としては、カルボキシルメチルセルロース(CMC)水溶液、ヒドロキシルエチルセルロース水溶液、ポリビニルアルコール、親水性基含有合成樹脂エマルジョン等が挙げられる。イソシアネートとしては、イソシアン酸メチル、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
【0032】
本実施形態に係るゴムラテックスにおいてリン酸系化合物の含有量は、100質量部のブロック共重合体Aに対して、0.5質量部未満であってよく、実質的に0質量部であってよい。
【0033】
本実施形態に係るゴムラテックスは、水系接着剤組成物であってよい。本実施形態に係るゴムラテックスは、水を含有することができる。本実施形態に係るゴムラテックスの固形分濃度は、40質量%以下、30質量%以下、又は、25質量%以下であってよい。本実施形態に係るゴムラテックスの固形分濃度は、5質量%以上、10質量%以上、又は、15質量%以上であってよい。本実施形態に係るゴムラテックスの固形分濃度は、5~40質量%であってよい。
【0034】
本実施形態に係るゴムラテックスは、有機溶剤を含有しなくてよい。有機溶剤の含有量は、ゴムラテックスの全質量を基準として1.0質量%以下、0.5質量%以下、又は、0.1質量%以下であってよく、実質的に0質量%であってよい。
【0035】
<ゴムラテックスの製造方法>
本実施形態に係るゴムラテックスの製造方法は、ブロック共重合体と、乳化分散剤と、を含有するゴムラテックスの製造方法である。本実施形態に係るゴムラテックスの製造方法は、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物(以下、「化合物A」という)の存在下でエチレン性不飽和カルボン酸を乳化重合させた後に、乳化分散剤の存在下でクロロプレンを乳化重合させることにより、エチレン性不飽和カルボン酸を単量体単位として有する第1ブロック鎖と、クロロプレンを単量体単位として有する第2ブロック鎖と、を備えるブロック共重合体(ブロック共重合体A)を得る重合工程を備える。
【化3】
【0036】
本実施形態に係るゴムラテックスの製造方法によれば、本実施形態に係るゴムラテックスを得ることができる。本実施形態に係るゴムラテックスの製造方法より得られるゴムラテックスにおいて乳化分散剤の合計量は、ブロック共重合体の単量体単位を与える単量体の合計量を基準として0質量%を超え1.0質量%未満である。
【0037】
本実施形態に係るゴムラテックスの製造方法は、重合工程として、化合物Aの存在下でエチレン性不飽和カルボン酸を乳化重合させることにより、エチレン性不飽和カルボン酸を単量体単位として有する第1ブロック鎖を得る第1重合工程と、当該第1ブロック鎖及び乳化分散剤の存在下でクロロプレンを乳化重合させることにより、クロロプレンを単量体単位として有する第2ブロック鎖を得る第2重合工程と、を備えてよい。第1重合工程では、化合物A及び乳化分散剤の存在下でエチレン性不飽和カルボン酸を乳化重合させることにより、エチレン性不飽和カルボン酸を単量体単位として有する第1ブロック鎖を得てもよい。
【0038】
第1重合工程及び第2重合工程は同一容器内で行ってよく、第1重合工程で得られた第1ブロック鎖の重合体を重合系内から一旦取り出した後に当該重合体とクロロプレンとを溶媒に溶解して第2重合工程を行ってもよい。第2重合工程におけるクロロプレン等の単量体は、一括添加されてよく、分添されてもよい。第1重合工程及び第2重合工程では、リビングラジカル乳化重合を行うことが可能であり、リビングラジカルソープフリー乳化重合(乳化分散剤の使用量が少ない(例えばCMC(臨界ミセル濃度以下))乳化重合)を行うことができる。
【0039】
第1重合工程では、一種のエチレン性不飽和カルボン酸を単独で重合させてよく、複数種のエチレン性不飽和カルボン酸を共重合させてよく、エチレン性不飽和カルボン酸と、エチレン性不飽和カルボン酸とは異なる単量体とを共重合させてよい。
【0040】
第1重合工程では、化合物Aを連鎖移動剤として用いることができる。当該化合物Aの残基が、一般式(1)で表される構造としてブロック共重合体A中に残存する。化合物Aは、下記一般式(1a)として表される。第1重合工程では、化合物Aを可逆的付加脱離連鎖移動剤(RAFT剤)として用いて可逆的付加脱離連鎖移動重合(RAFT重合)を行うことができる。
【0041】
【化4】
[式(1a)中、R及びRは、それぞれ独立に1価の基を示す。]
【0042】
式(1a)におけるR及びRは、互いに同一であってよく、互いに異なっていてよい。R及びRは、置換もしくは無置換のアルキル基;置換もしくは無置換の飽和、不飽和もしくは芳香族の炭素環;置換もしくは無置換の飽和、不飽和もしくは芳香族の複素環;有機金属種;又は、任意の重合体鎖であってよい。アルキル基の炭素数は、1以上、2以上、3以上、又は、4以上であってよい。アルキル基の炭素数は、20以下、10以下、8以下、6以下、5以下、4以下、3以下、又は、2以下であってよい。置換基としては、カルボキシ基、カルボン酸塩基、シアノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基等が挙げられる。R及びRからなる群より選ばれる少なくとも一種は、ジエン系ゴムから構成される部材の接着、及び、天然ゴムから構成される部材の接着において優れた接着強度を得やすい観点から、置換もしくは無置換のアルキル基であることが好ましく、カルボキシ基、カルボン酸塩基及びシアノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種が置換されたアルキル基であることがより好ましい。
【0043】
化合物A(一般式(1a)で表される化合物)としては、4-((((2-カルボキシエチル)チオ)カルボノチオイル)チオ)-4-シアノペンタン酸、2-シアノ-2-プロピルドデシルトリチオカルボナート、ジベンジルトリチオカルボナート、ブチルベンジルトリチオカルボナート、2-[[(ブチルチオ)チオキソメチル]チオ]プロピオン酸、2-[[(ドデシルチオ)チオキソメチル]チオ]プロピオン酸、2-[[(ブチルチオ)チオキソメチル]チオ]コハク酸、2-[[(ドデシルチオ)チオキソメチル]チオ]コハク酸、2-[[(ドデシルチオ)チオキソメチル]チオ]-2-メチルプロピオン酸、2,2’-[カルボノチオイルビス(チオ)]ビス[2-メチルプロピオン酸]、2-アミノ-1-メチル-2-オキソエチルブチルトリチオカルボナート、ベンジル2-[(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-1-メチル-2-オキソエチルトリチオカルボナート、3-[[[(tert-ブチル)チオ]チオキソメチル]チオ]プロピオン酸、シアノメチルドデシルトリチオカルボナート、ジエチルアミノベンジルトリチオカルボナート、ジブチルアミノベンジルトリチオカルボナート等のトリチオカルボナート類などが挙げられる。化合物Aは、ジエン系ゴムから構成される部材の接着、及び、天然ゴムから構成される部材の接着において優れた接着強度を得やすい観点から、4-((((2-カルボキシエチル)チオ)カルボノチオイル)チオ)-4-シアノペンタン酸を含むことが好ましい。
【0044】
第1重合工程における化合物Aの配合量は、ジエン系ゴムから構成される部材の接着、及び、天然ゴムから構成される部材の接着において優れた接着強度を得やすい観点から、エチレン性不飽和カルボン酸100質量部に対して下記の範囲が好ましい。化合物Aの配合量は、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上が更に好ましく、0.5質量部以上が特に好ましく、1質量部以上が極めて好ましい。化合物Aの配合量は、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、8質量部以下が更に好ましく、5質量部以下が特に好ましく、2質量部以下が極めて好ましい。これらの観点から、化合物Aの配合量は、0.01~20質量部が好ましく、0.05~10質量部がより好ましく、0.1~8質量部が更に好ましく、0.5~5質量部が特に好ましく、1~2質量部が極めて好ましい。同様の観点から、4-((((2-カルボキシエチル)チオ)カルボノチオイル)チオ)-4-シアノペンタン酸は、エチレン性不飽和カルボン酸100質量部に対してこれらの範囲であることが好ましい。
【0045】
第2重合工程では、第1重合工程で得られた重合体(第1ブロック鎖)、及び、乳化分散剤の存在下でクロロプレンを乳化重合させることによって、クロロプレンを単量体単位として有する第2ブロック鎖を得ることにより、ブロック共重合体A及び乳化分散剤を含有するゴムラテックスを得ることができる。すなわち、第2重合工程で用いた乳化分散剤がゴムラテックスにおいて残存する。第2重合工程で用いる乳化分散剤は、第2重合工程で添加された乳化分散剤であってよく、第1重合工程で添加されて残存した乳化分散剤であってもよい。
【0046】
第2重合工程における乳化分散剤の合計量は、ジエン系ゴムから構成される部材の接着、及び、天然ゴムから構成される部材の接着において優れた接着強度を得やすい観点から、クロロプレン100質量部に対して下記の範囲が好ましい。乳化分散剤の合計量は、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上が更に好ましく、0.2質量部以上が特に好ましく、0.3質量部以上が極めて好ましく、0.5質量部以上が非常に好ましい。乳化分散剤の合計量は、100質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、50質量部以下が更に好ましく、20質量部以下が特に好ましく、10質量部以下が極めて好ましく、5質量部以下が非常に好ましく、3質量部以下がより一層好ましく、1質量部以下が更に好ましく、0.7質量部以下が特に好ましい。これらの観点から、乳化分散剤の合計量は、0.01~100質量部が好ましく、0.05~80質量部がより好ましく、0.1~50質量部が更に好ましく、0.2~20質量部が特に好ましく、0.3~10質量部が極めて好ましく、0.5~5質量部が非常に好ましく、0.5~3質量部がより一層好ましく、0.5~1質量部が更に好ましく、0.5~0.7質量部が特に好ましい。乳化分散剤の合計量は、0.7質量部以上、1質量部以上、3質量部以上、5質量部以上、10質量部以上、20質量部以上、又は、50質量部以上であってよい。乳化分散剤の合計量は、0.5質量部以下又は0.3質量部以下であってよい。
【0047】
第2重合工程における乳化分散剤の合計量は、ジエン系ゴムから構成される部材の接着、及び、天然ゴムから構成される部材の接着において優れた接着強度を得やすい観点から、ブロック共重合体Aの単量体単位を与える単量体の合計量(エチレン性不飽和カルボン酸、クロロプレン等の合計量)100質量部に対して下記の範囲が好ましい。乳化分散剤の合計量は、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上が更に好ましく、0.15質量部以上が特に好ましく、0.3質量部以上が極めて好ましく、0.5質量部以上が非常に好ましい。乳化分散剤の合計量は、100質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、50質量部以下が更に好ましく、20質量部以下が特に好ましく、10質量部以下が極めて好ましく、5質量部以下が非常に好ましく、3質量部以下がより一層好ましく、1質量部以下が更に好ましく、0.7質量部以下が特に好ましい。これらの観点から、乳化分散剤の合計量は、0.01~100質量部が好ましく、0.05~80質量部がより好ましく、0.1~50質量部が更に好ましく、0.15~20質量部が特に好ましく、0.3~10質量部が極めて好ましく、0.5~5質量部が非常に好ましく、0.5~3質量部がより一層好ましく、0.5~1質量部が更に好ましく、0.5~0.7質量部が特に好ましい。乳化分散剤の合計量は、0.7質量部以上、1質量部以上、3質量部以上、5質量部以上、10質量部以上、20質量部以上、又は、50質量部以上であってよい。乳化分散剤の合計量は、0.5質量部以下又は0.3質量部以下であってよい。
【0048】
第2重合工程における乳化分散剤の合計量は、ジエン系ゴムから構成される部材の接着、及び、天然ゴムから構成される部材の接着において優れた接着強度を得やすい観点から、第1重合工程における100質量部の化合物Aに対して下記の範囲が好ましい。乳化分散剤の合計量は、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上が更に好ましく、20質量部以上が特に好ましく、30質量部以上が極めて好ましく、50質量部以上が非常に好ましい。乳化分散剤の合計量は、10000質量部以下が好ましく、6000質量部以下がより好ましく、5000質量部以下が更に好ましく、2000質量部以下が特に好ましく、1000質量部以下が極めて好ましく、600質量部以下が非常に好ましく、500質量部以下がより一層好ましく、200質量部以下が更に好ましく、100質量部以下が特に好ましい。これらの観点から、乳化分散剤の合計量は、1~10000質量部が好ましく、5~6000質量部がより好ましく、10~5000質量部が更に好ましく、20~2000質量部が特に好ましく、30~1000質量部が極めて好ましく、50~600質量部が非常に好ましく、50~500質量部がより一層好ましく、50~200質量部が更に好ましく、50~100質量部が特に好ましい。乳化分散剤の合計量は、100質量部以上、200質量部以上、500質量部以上、600質量部以上、1000質量部以上、2000質量部以上、又は、5000質量部以上であってよい。乳化分散剤の合計量は、50質量部以下又は30質量部以下であってよい。
【0049】
第1重合工程及び第2重合工程では、重合開始剤(例えばラジカル重合開始剤)の存在下で乳化重合を行うことができる。重合開始剤としては、公知の重合開始剤を使用可能であり、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルパレロニトリル、アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルパレロニトリル)、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスメトキシバレロニトリル等のアゾ化合物;アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド、2,4,4-トリメチルペンチル-2-パーオキシフェノキシアセテート等の過酸化物;ジイソプピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;t-ブチルパーオキシネオデカネート、α-クミルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシネオデカネート等のパーエステル化合物などが挙げられる。
【0050】
第1重合工程及び第2重合工程における重合温度は、特に制限はなく、10~100℃、20~80℃、又は、30~60℃であってよい。第1重合工程及び第2重合工程における重合率は、特に限定されない。重合率は、重合禁止剤を用いて重合反応を停止させることで調整できる。重合禁止剤としては、チオジフェニルアミン、4-t-ブチルカテコール、2,2-メチレンビス-4-メチル-6-t-ブチルフェノール、ジエチルヒドロキシルアミン等が挙げられる。
【0051】
本実施形態に係るゴムラテックスの製造方法は、第1重合工程及び/又は第2重合工程の後に、未反応の単量体を除去する工程を備えてよい。未反応の単量体は、減圧加熱等の公知の方法により行うことができる。本実施形態に係るゴムラテックスの製造方法では、pH調整、凍結凝固、水洗、熱風乾燥等の工程を経てブロック共重合体を回収できる。本実施形態に係るゴムラテックスの製造方法は、第2重合工程の後に、他のブロック鎖を得る重合工程を備えてよい。本実施形態に係るゴムラテックスの製造方法は、第2重合工程の後に、ブロック共重合体A及び乳化分散剤以外の成分をブロック共重合体Aと混合する工程を備えてよい。
【0052】
<ゴム物品、ゴム補強材、及び、接着剤付き繊維部材>
本実施形態に係るゴム物品は、本実施形態に係るゴム補強材を備える。ゴム物品としては、タイヤ、各種ベルト(例えば伝動ベルト)等が挙げられる。
【0053】
本実施形態に係るゴム補強材は、本実施形態に係るゴムラテックスと、繊維部材(例えば繊維コード)と、ゴムラテックスを介して繊維部材に接着したゴム部材と、を備える。ゴム部材は、繊維部材の表面を被覆してよい。繊維部材とゴム部材とは、ゴムラテックスを介して積層されていてよい。ゴム補強材は、カーカス、ベルト補強材等として用いることができる。
【0054】
本実施形態に係る接着剤付き繊維部材は、本実施形態に係るゴムラテックスと、当該ゴムラテックスが付着した繊維部材と、を備える。接着剤付き繊維部材は接着剤付きタイヤコード(タイヤ補強用の繊維部材)であってよく、繊維部材はタイヤコードであってよい。上述のゴム補強材は、接着剤付き繊維部材と、ゴムラテックスを介して繊維部材に接着したゴム部材と、を備える。
【0055】
繊維部材としては、有機繊維、無機繊維等を用いることができる。有機繊維の材質としては、レーヨン、ポリアミド(ナイロン等)、ポリエステル、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリカーボネート、ポリアクリレート、スチレン系樹脂(ABS樹脂等)、塩化ビニル樹脂などが挙げられる。無機繊維の材質としては、ガラス等が挙げられる。
【0056】
ゴム部材の材質としては、天然ゴム;ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴム(共役ジエン系合成ゴム)などが挙げられる。
【実施例
【0057】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0058】
<ゴムラテックスの作製>
(実施例1)
内容量10Lの重合缶に、窒素雰囲気下で、RAFT剤を含有する水溶液(RAFT剤:4-((((2-カルボキシエチル)チオ)カルボノチオイル)チオ)-4-シアノペンタン酸、RAFT剤の含有量:0.12質量%、BORON MOLECULAR社製、商品名:BM1433)172.053質量部、アクリル酸20.32質量部、及び、重合開始剤を含有する水溶液(重合開始剤:2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、重合開始剤の含有量:1.0質量%、富士フィルム和光純薬株式会社製、商品名:VA-044)55.030質量部を加えて混合物を得た後、45℃で20時間混合物を加熱攪拌した。
【0059】
上述の重合缶に、乳化分散剤(β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、花王株式会社製、商品名:デモールN)0.24質量部、クロロプレン100質量部、重合開始剤を含有する水溶液(重合開始剤:2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、重合開始剤の含有量:2.0質量%、富士フィルム和光純薬株式会社製、商品名:VA-044)11.19質量部、及び、水298質量部を加えた後、45℃で重合を行った。重合が完全に進まなくなったことを確認後、放冷して重合を終了することにより、アクリル酸の単独重合体のブロック鎖及びクロロプレンの単独重合体のブロック鎖を備えるブロック共重合体(ジブロック共重合体)を含有するゴムラテックスを得た。ゴムラテックス中の固形分濃度は23.3質量%であった。
【0060】
(実施例2)
乳化分散剤の配合量を0.602質量部に変更したことを除き実施例1と同様に行うことにより、ブロック共重合体を含有するゴムラテックスを得た。ゴムラテックス中の固形分濃度は23.4質量%であった。
【0061】
(実施例3)
乳化分散剤の配合量を1.204質量部に変更したことを除き実施例1と同様に行うことにより、ブロック共重合体を含有するゴムラテックスを得た。ゴムラテックス中の固形分濃度は23.5質量%であった。
【0062】
(実施例4)
乳化分散剤の配合量を6.02質量部に変更したことを除き実施例1と同様に行うことにより、ブロック共重合体を含有するゴムラテックスを得た。ゴムラテックス中の固形分濃度は24.3質量%であった。
【0063】
(実施例5)
乳化分散剤の配合量を12.04質量部に変更したことを除き実施例1と同様に行うことにより、ブロック共重合体を含有するゴムラテックスを得た。ゴムラテックス中の固形分濃度は25.3質量%であった。
【0064】
(実施例6)
乳化分散剤の配合量を60.2質量部に変更したことを除き実施例1と同様に行うことにより、ブロック共重合体を含有するゴムラテックスを得た。ゴムラテックス中の固形分濃度は33.1質量%であった。
【0065】
(比較例1)
乳化分散剤の配合量を0質量部に変更したことを除き実施例1と同様に行うことにより、ブロック共重合体を含有するゴムラテックスを得た。ゴムラテックス中の固形分濃度は23.3質量%であった。
【0066】
(比較例2)
乳化分散剤の配合量を120.4質量部に変更したことを除き実施例1と同様に行うことにより、ブロック共重合体を含有するゴムラテックスを得た。ゴムラテックス中の固形分濃度は42.9質量%であった。
【0067】
<ゴムラテックスの固形分濃度の測定>
ゴムラテックスの上述の固形分濃度は、次の手順で測定した。まず、アルミニウム皿のみの質量X[g]を得た。次に、ゴムラテックス2gをアルミニウム皿に入れた後、ゴムラテックス及びアルミニウム皿の合計の質量Y[g]を得た。続いて、ゴムラテックスを入れたアルミニウム皿を125℃の熱風乾燥器で1時間乾燥させた後の質量Z[g]を得た後、下記式に基づき固形分濃度[質量%]を算出した。
固形分濃度={(Z-X)/(Y-X)}×100
【0068】
<乳化分散剤の合計量の測定>
上述のゴムラテックスを凍結乾燥した後、メタノール-トルエン混合溶液により乳化分散剤を抽出した液を蒸発乾固して固形分を得た。固形分を高速液体クロマトグラフィーで分析することにより、ゴムラテックスにおける乳化分散剤の合計量(ブロック共重合体の単量体単位を与える単量体の合計量を基準とした合計量)を測定した。結果を表1に示す。
【0069】
<乳化状態の評価>
乳化分散剤を混合した後に1分間静置した時点における乳化状態を目視で観察した。相分離が生じておらず乳化状態が安定である場合を「A」と評価し、相分離が生じて乳化状態が不安定である場合を「B」と評価し、乳化しなかった場合を「C」と評価した。結果を表1に示す。
【0070】
<接着強度の評価>
実施例1~6及び比較例2のゴムラテックスを用いた接着部材、及び、接着部材を挟むためのゴム部材を下記の手順で作製した。比較例1のゴムラテックスに関しては、乳化状態が得られなかったことから接着部材が得られなかったため、接着強度の評価を行えなかった。
【0071】
15cm×40cmのナイロン布(6,6-ナイロン、東レ株式会社製、商品名:鎧布)を1枚準備した後、送風乾燥機を用いてナイロン布を2分間100℃で乾燥させた。上述のゴムラテックスをバット内に流し込んだ後、ナイロン布の全体をゴムラテックスに30秒浸漬した。ナイロン布の厚さ(上述の乾燥時の厚さ)の半分のギャップ幅のスペーサーでナイロン布を絞った後、送風乾燥機を用いて、ゴムラテックスが含浸したナイロン布を10分間150℃で乾燥させることにより接着部材を得た。
【0072】
ゴム成分(スチレンブタジエンゴム、JSR株式会社製、商品名:SBR1502、スチレン量:23.5質量%)100質量部、ステアリン酸(花王株式会社製、商品名:ルナック S-70V)1質量部、及び、カーボンブラック(旭カーボン株式会社製、商品名:SRF50)35質量部を混練して混練物を得た後に、この混練物に酸化亜鉛(ZnO、堺化学工業株式会社製、商品名:ゴム用酸化亜鉛)3質量部、硫黄1.75質量部、及び、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(大内新興化学工業株式会社製、商品名:ノクセラーNS)1質量部を混合して混練することにより15cm×40cmのゴム部材Aを作製した。また、ゴム成分(天然ゴム、HALCYON社製、商品名:SMR-5、ムーニー粘度:60)100質量部、ステアリン酸2.5質量部、カーボンブラック(旭カーボン株式会社製、商品名:カーボンブラック)50質量部、及び、ナフテン系プロセスオイル(出光興産株式会社製、商品名:ダイアナプロセスオイル NP-24)4質量部を混練して混練物を得た後に、この混練物に酸化亜鉛(ZnO、堺化学工業株式会社製、商品名:ゴム用酸化亜鉛)3.5質量部、硫黄(細井化学工業株式会社製、商品名:硫黄粉末)2.5質量部、及び、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(大内新興化学工業株式会社製、商品名:CZ)0.5質量部を混合して混練することにより15cm×40cmのゴム部材Bを作製した。
【0073】
2つのゴム部材Aを準備した後、1枚の上述の接着部材及び1枚のセロハンフィルム(材質:フッ素樹脂、7.5cm×40cm、厚さ:50μm)をゴム部材Aの間に挟み込んで積層体を得た。セロハンフィルムは、セロハンフィルムの長手方向の端部が積層体の長手方向の端部に位置するように配置した。続いて、150℃、35分間、プレス圧120kgf/cmで積層体の構成部材同士を加硫接着した。そして、引張試験機(株式会社島津製作所製、商品名「オートグラフAG-IS」)を用いて500mm/minの引張速度で180°剥離試験を行い、最大接着力を測定した。また、剥離時の剥離状態を目視で観察した。同様に、ゴム部材Aをゴム部材Bに変更して積層体を作製した後、加硫接着及び剥離試験を行った。結果を表1に示す。剥離状態については、ゴム部材の材料破壊が生じている場合を「I」と表記し、接着部材とゴム部材との界面剥離が生じている場合を「II」と表記した。
【0074】
【表1】
【0075】
表1に示されるように、実施例では、ジエン系ゴムから構成される部材の接着、及び、天然ゴムから構成される部材の接着において優れた接着強度が得られることがわかる。また、一部の実施例では、接着部材とゴム部材との接着強度が非常に高いことから、ゴム部材の材料破壊が生じていた。