(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】ポリマー組成物からの残留メルカプタンの除去
(51)【国際特許分類】
C08F 6/10 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
C08F6/10
(21)【出願番号】P 2022563485
(86)(22)【出願日】2021-06-01
(86)【国際出願番号】 US2021035090
(87)【国際公開番号】W WO2021252215
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-10-26
(32)【優先日】2020-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】サンウ・パク
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-143937(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2001-0010156(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0014902(US,A1)
【文献】特開昭51-056892(JP,A)
【文献】米国特許第03980600(US,A)
【文献】特開2004-300439(JP,A)
【文献】特表2009-504870(JP,A)
【文献】特開2008-101120(JP,A)
【文献】特開2005-194376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00 - 6/28
CAplus/REGISTRY(STN)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物中に存在するメルカプタン化合物を除去する方法であって、
前記ポリマー組成物を、前記メルカプタン化合物と反応するラジカル開始剤と接触させて、無臭化合物を形成すること、及び
任意選択で、前記ポリマー組成物を、前記メルカプタン化合物を固定化する遷移金属と接触させること
を含
み、
前記ポリマーがポリマーグラフト化ポリオールである、方法。
【請求項2】
前記ポリマーグラフト化ポリオールが、共重合スチレン-アクリロニトリルグラフト化ポリオール(SAN-POP)、ポリアクリロニトリルグラフト化ポリオール及びポリウレアグラフト化ポリオールからなる群から選択される、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマーが共重合スチレン-アクリロニトリルグラフト化ポリオールである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマーが500~50,000mP
a・sの範囲の粘度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ラジカル開始剤が、有機過酸化物及びアゾ化合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ラジカル開始剤が脂肪族アゾ化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ラジカル開始剤が、エチルヒドロペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-アミルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過酸化メチルエチルケトン、過酸化メチルイソブチルケトン、過酸化アセチルアセトン、過酸化ジアセチル、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ラジカル開始剤がアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)又はジ-tert-ブチルペルオキシドである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記遷移金属が、チタン、クロム、マンガン、銅、鉄、亜鉛、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、銀、白金及び金からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記遷移金属が銅である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマー組成物を、前記メルカプタン化合物と反応するラジカル開始剤と接触させて、無臭化合物を形成することからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマー組成物を、前記メルカプタン化合物と反応するラジカル開始剤と接触させて、無臭化合物を形成すること、及び
前記ポリマー組成物を、前記メルカプタン化合物を固定化する遷移金属と接触させること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリマー組成物を、前記メルカプタン化合物と反応するラジカル開始剤と接触させて、無臭化合物を形成すること、及び
前記ポリマー組成物を、前記メルカプタン化合物を固定化する遷移金属と接触させること
からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記遷移金属と接触させる前に、前記ポリマー組成物を前記ラジカル開始剤と接触させる、請求項
12に記載の方法。
【請求項15】
前記ラジカル開始剤と接触させる前に、前記ポリマー組成物を前記遷移金属と接触させる、請求項
12に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマー組成物を前記ラジカル開始剤及び前記遷移金属と同時に接触させる、請求項
12に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマー組成物及び前記ラジカル開始剤が50~150℃の温度で一緒に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリマー組成物及び前記遷移金属が50~150℃の温度で一緒に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記メルカプタン化合物が、前記ポリマー組成物を調製する前のステップからの残留量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記メルカプタン化合物がC
4~C
16アルキルメルカプタン化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記メルカプタン化合物が連鎖移動剤である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー組成物からのメルカプタンの除去に関する。
【背景技術】
【0002】
メルカプタンは、様々なポリマーの製造に使用される周知の連鎖移動剤である。メルカプタンの使用により、得られるポリマーの機械的及び加工特性に影響を与えるポリマー鎖長さの制御が可能になる。ポリマー製品からの残留メルカプタン臭の除去に伴う困難を考慮して、多くの製造業者は代わりにイソプロピルアルコール(IPA)などの非メルカプタン連鎖移動剤を使用している。ただし、IPAの使用には通常、残留揮発性有機化合物(VOC)の存在を除去するためのスチームストリッピングが必要であり、メルカプタンの除去に比べて費用対効果が高くない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、スチームストリッピングの使用を排除するために個別に又は組み合わせて使用される費用効果の高い化学プロセス及び物理プロセスを提供することによって、ポリマー組成物から残留メルカプタン臭を除去するための改善された技術の必要性に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施形態は、ポリマー組成物中に存在するメルカプタン化合物を除去する方法であって、ポリマー組成物を、メルカプタン化合物と反応するラジカル開始剤と接触させて、無臭化合物を形成すること、及びポリマー組成物を、メルカプタン化合物を固定化する遷移金属と接触させることのうち、少なくとも1つを含む。
【0005】
本発明の実施形態はまた、ポリマー中に存在するメルカプタン化合物を除去する方法であって、ポリマーを、メルカプタン化合物と反応するラジカル開始剤と接触させて、無臭化合物を形成すること、及びポリマーを、メルカプタン化合物を固定化する遷移金属と接触させることのうち、少なくとも1つを含む。
【0006】
以下の図面は、本発明の特定の実施形態を示すが、本明細書に記載される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、メルカプタンR
1-SHの遷移金属表面への物理的固定化を示す。
【
図2】
図2は、既知の濃縮n-ドデシルメルカプタン(n-dodecyl mercaptan、NDM)溶液からの残留/未反応NDMの量を決定するためのNDM除去研究の検量線を示す。
【
図3A】
図3Aは、スチレン-アクリロニトリルコポリマーグラフト化ポリオキシポリオール(styrene-acrylonitrile copolymer grafted polyoxy polyol、SAN-POP)中のNDM濃度の経時的な減少を測定することによる、60℃及び120℃での、異なる量のAIBNにおける、AIBN媒介ラジカル反応によるn-ドデシルメルカプタン(NDM)クエンチングの速度論的分析を示す。
【
図3B】
図3Bは、経時的なNDMの除去パーセントを測定することによる、n-ドデシルメルカプタン(NDM)クエンチングの同じ速度論的分析を示す。
【
図4A】
図4Aは、SAN-POP中のNDMの濃度の経時的な減少を測定することによる、60℃及び120℃での、異なる量のAIBN及びtBPにおける、AIBN媒介ラジカル反応及びtBP媒介反応によるn-ドデシルメルカプタン(NDM)クエンチングの速度論的分析を示す。
【
図4B】
図4Bは、経時的なNDMの除去パーセントを測定することによる、n-ドデシルメルカプタン(NDM)クエンチングの同じ速度論的分析を示す。
【
図5】
図5は、SAN-POPから経時的なNDMの除去パーセントを測定することによる、ラジカル開始剤としてのAIBN及び銅ワイヤの存在下でのn-ドデシルメルカプタン(NDM)除去の速度論的分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義
以下の説明は、本質的に単なる例示であり、決して本開示又はその適用又は使用を限定することを意図するものではない。
【0009】
本明細書で使用されるメルカプタン(チオールとも呼ばれる)は、-SH官能基を有する硫黄含有有機化合物を指す。
【0010】
本明細書で使用される場合、ラジカル開始剤とは、合成方法論において反応中間体として機能するフリーラジカルに容易に分解する化学物質を指す。
【0011】
本明細書で使用される場合、遷移金属は、周期表の中央ブロック(第3から第12族)を占める金属元素を指す。
【0012】
本明細書で使用される場合、アゾ化合物は、アゾ基(-N=N-)を含有する有機化学化合物を指す。
【0013】
本明細書で使用される場合、有機過酸化物は、酸素-酸素(-O-O-)結合を含む有機化合物を指す。
【0014】
本発明は、ポリマー組成物中に存在するメルカプタン化合物の除去(典型的には残留量のみ)を提供する。例示的な実施形態では、メルカプタン化合物の発生源はポリマーの調製に使用される連鎖移動剤であるが、本発明はそのように限定されず、メルカプタン化合物は任意の理由でポリマー組成物中に存在し得る。本発明によって達成される利点の1つは、ポリマー組成物からのメルカプタン化合物に関連する望ましくない臭気の減少又は排除である。
【0015】
ポリマー
本発明における処理に適したポリマーは特に限定されず、特にメルカプタン連鎖移動剤を利用するポリマー、例えば、限定されないが、アクリレート、メタクリレート、スチレン、及びそれらの誘導体などである。例示的な実施形態では、ポリマーは、500~50,000mPA・s、例えば1000~35,000mPA・s、例えば2000~25,000mPA・s、例えば3000~20,000mPA・s、例えば3500~15,000mPA・s、例えば4000~12,000、例えば4000~10,000、例えば4000~8000、例えば5000~10,000、例えば5000~8000の範囲の粘度を有する。
【0016】
例示的な実施形態では、適切なポリマーには、以下が含まれるが、これらに限定されない:グラフト化ポリオールポリマーなどのグラフト化ポリマー(例えば、ポリアクリロニトリルグラフト化ポリオール及びポリウレアグラフト化ポリオール)、グラフトコポリマー(例えば、メタクリル酸メチルコポリマー、スチレンコポリマー、アクリル酸コポリマー)、グラフトポリオールコポリマー(例えば、共重合スチレン-アクリロニトリルグラフトポリオール(SAN-POP))、並びに、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシル化スチレンブタジエンラテックス(SBラテックス)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)コポリマー及びポリクロロプレン(ネオプレン)。特定の実施形態では、ポリマーはSAN-POPである。
【0017】
例示的な実施形態では、ポリマーは、メルカプタン連鎖移動剤を使用して調製された任意のポリマーである。
【0018】
例示的な実施形態では、ポリマーは、未反応のモノマー残基、界面活性剤、有機溶媒及び水のうちの1つ以上をさらに含むポリマー組成物中に存在する。
【0019】
ラジカル開始剤
一般に、従来のラジカル開始剤が本発明での使用に適している。例示的な実施形態では、適切なラジカル開始剤には、以下が含まれるが、これらに限定されない:過酸化物(アルキル及びアリールヒドロペルオキシドを含む有機過酸化物、アルキル及びアリール過酸化物など)、ペルエステル、過硫酸塩、過炭酸塩、NorishタイプI及びII光開始剤、及びアゾ化合物。ラジカル開始剤の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、ペルオキシ一硫酸カリウム、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニル-エタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン。ベンゾフェノン、イソプロピルチオキサントン、エチルヒドロペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-アミルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過酸化メチルエチルケトン、過酸化メチルイソブチルケトン、過酸化アセチルアセトン、過酸化ジアセチル、過酸化ジ(t-ブチル)、tert-ブチルペルオキシジエチルアセテート、tert-ブチルペルオクトエート、tert-ブチルペルオキシイソブチレート、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、tert-ブチルペルオキシ3,5,5-トリメチルヘキサノエート、tert-ブチルペルベンゾエート、tert-ブチルペルオキシピバレート、tert-アミルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-ジ(tert-アミルペルオキシ)シクロヘキサン、過酸化ラウロイル、クメンヒドロペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス-(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス-(2-メトキシルブチロニトリル)、及びこれらの混合物。特定の実施形態では、ラジカル開始剤はジ-tert-ブチルペルオキシド又はAIBNである。
【0020】
本発明で使用されるラジカル開始剤の量は、広い範囲内で変えることができる。例示的な実施形態では、ラジカル開始剤の量は、ポリマーの100重量%に基づいて、約0.001重量%~20重量%の範囲、例えば0.005重量%~15重量%、例えば0.005重量%~10重量%、例えば0.01重量%~10重量%である。ラジカル開始剤の量が増加すると、ポリマー中に存在するメルカプタンの除去/低減が一定の点まで増加するが、それ以上増加しても低減が有意に増加しないことが観察された。
【0021】
遷移金属
一般に、任意の遷移金属が本発明での使用に適している。例示的な実施形態では、遷移金属には、チタン、クロム、マンガン、銅、鉄、亜鉛、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、銀、白金、及び金が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、遷移金属は銅又は金である。
【0022】
本発明で使用される遷移金属の量は、広い範囲内で変えることができる。例示的な実施形態では、遷移金属の量は、ポリマーの100重量%に基づいて、約0.5重量%~10.0重量%、例えば1.0重量%~8.0重量%、例えば2.0重量%~7.0重量%、例えば3.0重量%~7.0重量%の範囲である。あるいは、遷移金属の量は、表面積対体積(S/V)比を使用して測定することができる。例示的な実施形態では、遷移金属のS/Vは、0.03cm-1~0.6cm-1、例えば0.05cm-1~0.5cm-1、例えば0.07cm-1~0.4cm-1、例えば0.10cm-1~0.3cm-1の範囲である。特定の実施形態では、遷移金属は銅であり、S/Vは、0.0628cm-1(銅ワイヤの1cm片について)~0.314cm-1(銅ワイヤの5cm片について)の範囲である。遷移金属の量が増加すると、ポリマー中に存在するメルカプタンの除去/低減が一定の点まで増加するが、それ以上増加しても低減が有意に増加しないことが観察された。
【0023】
遷移金属の形態は特に限定されない。一般に、大きな表面積を有する形態が好ましい。適切な形態には、ワイヤとワイヤメッシュ、プレート、パイプ、及びドラムが含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
メルカプタン
ポリマー組成物から除去されるメルカプタンは特に限定されない。
【0025】
例示的な実施形態では、メルカプタン化合物はC4~16アルキルメルカプタン化合物である。
【0026】
特定の実施形態では、メルカプタンは、ポリマー製造に使用するための連鎖移動剤である。
【0027】
適切なメルカプタンには、以下のそれぞれのすべての直鎖異性体、分岐異性体、環状異性体が含まれるが、これらに限定されない:ヘキシルメルカプタン(ヘキサンチオール)、ヘプチルメルカプタン(ヘプタンチオール)、オクチルメルカプタン(オクタンチオール)、ノニルメルカプタン(ノナンチオール)、デシルメルカプタン(デカンチオール)、ウンデシルメルカプタン(ウンデカンチオール)、ドデシルメルカプタン(ドデカンチオール)、トリデシルメルカプタン(トリデカンチオール)、テトラデシルメルカプタン(テトラデカンチオール)、ペンタデシルメルカプタン(ペンタデカンチオール)、及びヘキサデシルメルカプタン(ヘキサデカンチオール)。
【0028】
他の適切なメルカプタンには、以下が含まれるが、これらに限定されない:チオグリコール酸、1,8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタン、チオグリコール酸2-エチルヘキシル、1,2-エタンジチオール、2,3-ジメルカプトプロパノール、ピリチオン、ジチオエリスリトール、3,4-ジメルカプトトルエン、2,3-ブタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、2-ヒドロキシプロパンチオール、1-メルカプト-2-プロパノール、ジチオエリスリトール、ジチオトレイトール、エタン2-プロパンチオール、tert-ブチルメルカプタン、システイン、2-メルカプトエタノール、2-メルカプトインドール、1,11-ウンデカンジチオール、1,16-ヘキサデカンジチオール、1,4-ベンゼンジメタンチオール、1,4-ブタンジチオール、1,4-ブタンジチオールジアセテート、1,5-ペンタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,8-オクタンジチオール、1,9-ノナンジチオール、アダマンタンチオール、1-メルカプト-トリエチレングリコール、1-メルカプト-トリエチレングリコールメチルエーテル、1-メルカプト-2-プロパノール、2,2’-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、2-エチルヘキサンチオール、2-メチル-1-プロパンチオール、2-メチル-2-プロパンチオール、2-フェニルエタンチオール、3-クロロ-1-プロパンチオール、3-メルカプト-1-プロパノール、3-メルカプト-2-ブタノール、3-メルカプト-N-ノニルプロピオンアミド、3-メルカプトプロピオン酸、3-メチル-1-ブタンチオール、4-シアノ-1-ブタンチオール、4-メルカプト-1-ブタノール、6-メルカプト-1-ヘキサノール、6-メルカプトヘキサン酸、8-メルカプト-1-オクタノール、8-メルカプトオクタン酸、9-メルカプト-1-ノナノール、ビフェニル-4,4’-ジチオール、3-メルカプトプロピオン酸ブチル、シクロヘキサンチオール、シクロペンタンチオール、メルカプトコハク酸、3-メルカプトプロピオン酸メチル、PEGジチオール、S-(4-シアノブチル)チオアセテート、チオフェノール。
【0029】
例示的な実施形態では、メルカプタンは、ポリマーの100重量%に基づいて、0.001重量%~10重量%、例えば0.003重量%~10重量%、例えば0.005重量%~8重量%、例えば0.01重量%~6重量%、例えば0.05%~3重量%の量で、ポリマー中に存在する。
【0030】
例示的な実施形態では、メルカプタンはポリマー中に残留量で存在する。
【0031】
プロセス
本発明のプロセスは、主にメルカプタンに伴う悪臭からポリマーを脱臭する目的で、典型的には残留量で存在する1つ以上のメルカプタンをポリマーから除去する。
【0032】
様々な実施形態において、メルカプタンの除去は、(i)化学的、(ii)物理的、又は(iii)メルカプタンの化学的及び物理的クエンチングの組み合わせによって行われる。プロセスは、(i)及び(ii)の順序によって制限されず、メルカプタンの除去は、最初に化学的除去(i)に続いて物理的除去(ii)によって進行することができ、あるいは、メルカプタンの除去は、最初に物理的除去(ii)に続いて化学的除去(i)によって進行することができる。例示的な実施形態では、化学的クエンチングは、1つのラジカル開始剤又は異なる活性化温度を有する2つ以上のラジカル開始剤の添加によって行われる。ラジカル開始剤はラジカル(R・又はR2・)を形成し、ポリマーから不安定なプロトンを捕捉してポリマーラジカル(ポリマー・)を生成するか、メルカプタンからチイルラジカル(R1-S・)を生成する。チイルラジカルは、ポリマーラジカルと反応して無臭化合物(R1-S-ポリマー、すなわちスルフィド)を形成することができる。スキーム1を参照すること。
ラジカル開始剤 → R・
R・ + ポリマー-H → R-H + ポリマー・
R1-SH + R2・ → R1-S・ + R2-H
R1-S・ + ポリマー・ → R1-S-ポリマー
スキーム1:メルカプタン類の脱臭における化学的クエンチングメカニズム
【0033】
例示的な実施形態では、メルカプタンの物理的クエンチングは、メルカプタンが遷移金属の表面に捕捉されて付着し、メルカプタンに関連する悪臭を効果的に除去するチオール-金属相互作用によって発生する。
図1を参照すること。一実施形態では、遷移金属は、ポリマーの大きな凝集体を濾過するためのステンレス鋼メッシュに取って代わる。
【0034】
例示的な実施形態では、メルカプタン除去の化学的及び物理的方法が組み合わされた。組み合わせされた方法の特定の実施形態では、ラジカル開始剤はジ-tert-ブチルペルオキシドであり、遷移金属は銅であり、ポリマーはSAN-POPである。
【0035】
例示的な実施形態では、化学的及び物理的クエンチング反応は、50~150℃、例えば60~130℃、例えば70~120℃、例えば70~100℃、例えば80~90℃の温度で行われる。
【0036】
例示的な実施形態では、化学的及び物理的クエンチング反応の時間は、30分~15時間、例えば1時間~10時間、例えば3時間~8時間の範囲である。
【0037】
例示的な実施形態では、化学的及び物理的クエンチング反応は、ニート(無溶媒)条件下で実施される。別の例示的な実施形態では、化学的及び物理的クエンチングは、限定されないが、以下を含む溶媒中で実施される:アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール)、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン)、DMF、DMSO、メチルエチルケトン、クロロホルム、ジクロロメタン。
【0038】
例示的な実施形態では、本発明の化学的及び/又は物理的クエンチング反応は、メルカプタン除去の1つ又は複数の従来のプロセスと組み合わせて使用される。
【0039】
本開示の非限定的な態様を以下に要約することができる。
【0040】
態様1:ポリマー組成物中に存在するメルカプタン化合物を除去する方法であって、前記ポリマー組成物を、前記メルカプタン化合物と反応するラジカル開始剤と接触させて、無臭化合物を形成すること、及び前記ポリマー組成物を、前記メルカプタン化合物を固定化する遷移金属と接触させることのうち、少なくとも1つを含む方法。
【0041】
態様2:前記ポリマー組成物がポリマーを含む、態様1に記載の方法。
【0042】
態様3:前記ポリマー組成物が本質的にポリマーからなる、態様1又は態様2に記載の方法。
【0043】
態様4:前記ポリマー組成物がポリマーからなる、態様1~3のいずれか1項に記載の方法。
【0044】
態様5:前記ポリマーがポリマーグラフト化ポリオールである、態様1~4のいずれか1項に記載の方法。
【0045】
態様6:前記ポリマーグラフト化ポリオールが、共重合スチレン-アクリロニトリルグラフト化ポリオール(SAN-POP)、ポリアクリロニトリルグラフト化ポリオール及びポリウレアグラフト化ポリオールからなる群から選択される、態様1~5のいずれか1項に記載の方法。
【0046】
態様7:前記ポリマーが共重合スチレン-アクリロニトリルグラフト化ポリオール(SAN-POP)である、態様1~6のいずれか1項に記載の方法。
【0047】
態様8:前記ポリマーが共重合スチレン-アクリロニトリルグラフト化ポリオールである、態様1~7のいずれか1項に記載の方法。
【0048】
態様9:前記ポリマーが500~50,000mPA・sの範囲の粘度を有する、態様1~8のいずれか1項に記載の方法。
【0049】
態様10:前記ラジカル開始剤が、有機過酸化物、過硫酸塩及びアゾ化合物からなる群から選択される、態様1~9のいずれか1項に記載の方法。
【0050】
態様11:前記ラジカル開始剤が脂肪族アゾ化合物である、態様1~10のいずれか1項に記載の方法。
【0051】
態様12:前記ラジカル開始剤が、エチルヒドロペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-アミルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過酸化メチルエチルケトン、過酸化メチルイソブチルケトン、過酸化アセチルアセトン、過酸化ジアセチル、及びこれらの混合物からなる群から選択される、態様1~11のいずれか1項に記載の方法。
【0052】
態様13:前記ラジカル開始剤がアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)又はジ-tert-ブチルペルオキシドである、態様1~12のいずれか1項に記載の方法。
【0053】
態様14:前記遷移金属が、チタン、クロム、マンガン、銅、鉄、亜鉛、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、銀、白金及び金からなる群から選択される、態様1~13のいずれか1項に記載の方法。
【0054】
態様15:前記遷移金属が銅である、態様1~14のいずれか1項に記載の方法。
【0055】
態様16:前記ポリマー組成物を、前記メルカプタン化合物と反応するラジカル開始剤と接触させて、無臭化合物を形成することを含む、態様1~15のいずれか1項に記載の方法。
【0056】
態様17:前記ポリマー組成物を、前記メルカプタン化合物と反応するラジカル開始剤と接触させて、無臭化合物を形成することからなる、態様1~16のいずれか1項に記載の方法。
【0057】
態様18:前記ポリマー組成物を、前記メルカプタン化合物を固定化する遷移金属と接触させることを含む、態様1~17のいずれか1項に記載の方法。
【0058】
態様19:前記ポリマー組成物を、前記メルカプタン化合物を固定化する遷移金属と接触させることからなる、態様1~18のいずれか1項に記載の方法。
【0059】
態様20:前記方法が、前記ポリマー組成物を、前記メルカプタン化合物と反応するラジカル開始剤と接触させて、無臭化合物を形成すること、及び前記ポリマー組成物を、前記メルカプタン化合物を固定化する遷移金属と接触させることを含む、態様1~19のいずれか1項に記載の方法。
【0060】
態様21:前記方法が、前記ポリマー組成物を、前記メルカプタン化合物と反応するラジカル開始剤と接触させて、無臭化合物を形成すること、及び前記ポリマー組成物を、前記メルカプタン化合物を固定化する遷移金属と接触させることからなる、態様1~20のいずれか1項に記載の方法。
【0061】
態様22:前記遷移金属と接触させる前に、前記ポリマー組成物を前記ラジカル開始剤と接触させる、態様1~21のいずれか1項に記載の方法。
【0062】
態様23:前記ラジカル開始剤と接触させる前に、前記ポリマー組成物を前記遷移金属と接触させる、態様1~22のいずれか1項に記載の方法。
【0063】
態様24:前記ポリマー組成物を前記ラジカル開始剤及び前記遷移金属と同時に接触させる、態様1~23のいずれか1項に記載の方法。
【0064】
態様25:前記ポリマー組成物及び前記ラジカル開始剤が50~150℃の温度で一緒に維持される、態様1~24のいずれか1項に記載の方法。
【0065】
態様26:前記ポリマー組成物及び前記遷移金属が50~150℃の温度で一緒に維持される、態様1~25のいずれか1項に記載の方法。
【0066】
態様27:前記メルカプタン化合物が、前記ポリマー組成物を調製する前のステップからの残留量で存在する、態様1~26のいずれか1項に記載の方法。
【0067】
態様28:前記メルカプタン化合物がC4~C16アルキルメルカプタン化合物である、態様1~27のいずれか1項に記載の方法。
【0068】
態様29:前記メルカプタン化合物が連鎖移動剤である、態様1~28のいずれか1項に記載の方法。
【0069】
態様30:前記メルカプタンは、以下のそれぞれのすべての直鎖異性体、分岐異性体、環状異性体からなる群から選択される、態様1~29のいずれか1項に記載の方法:ヘキシルメルカプタン(ヘキサンチオール)、ヘプチルメルカプタン(ヘプタンチオール)、オクチルメルカプタン(オクタンチオール)、ノニルメルカプタン(ノナンチオール)、デシルメルカプタン(デカンチオール)、ウンデシルメルカプタン(ウンデカンチオール)、ドデシルメルカプタン(ドデカンチオール)、トリデシルメルカプタン(トリデカンチオール)、テトラデシルメルカプタン(テトラデカンチオール)、ペンタデシルメルカプタン(ペンタデカンチオール)、及びヘキサデシルメルカプタン(ヘキサデカンチオール)。
【0070】
態様31:前記メルカプタンがn-ドデシルメルカプタン(n-ドデカンチオール)である、態様1~30のいずれか1項に記載の方法。
【0071】
態様32:前記メルカプタンが、以下からなる群から選択される、態様1~29のいずれか1項に記載の方法:チオグリコール酸、1,8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタン、チオグリコール酸2-エチルヘキシル、1,2-エタンジチオール、2,3-ジメルカプトプロパノール、ピリチオン、ジチオエリスリトール、3,4-ジメルカプトトルエン、2,3-ブタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、2-ヒドロキシプロパンチオール、1-メルカプト-2-プロパノール、ジチオエリスリトール、ジチオトレイトール、エタン2-プロパンチオール、tert-ブチルメルカプタン、システイン、2-メルカプトエタノール、2-メルカプトインドール、1,11-ウンデカンジチオール、1,16-ヘキサデカンジチオール、1,4-ベンゼンジメタンチオール、1,4-ブタンジチオール、1,4-ブタンジチオールジアセテート、1,5-ペンタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,8-オクタンジチオール、1,9-ノナンジチオール、アダマンタンチオール、1-メルカプト-トリエチレングリコール、1-メルカプト-トリエチレングリコールメチルエーテル、1-メルカプト-2-プロパノール、2,2’-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、2-エチルヘキサンチオール、2-メチル-1-プロパンチオール、2-メチル-2-プロパンチオール、2-フェニルエタンチオール、3-クロロ-1-プロパンチオール、3-メルカプト-1-プロパノール、3-メルカプト-2-ブタノール、3-メルカプト-N-ノニルプロピオンアミド、3-メルカプトプロピオン酸、3-メチル-1-ブタンチオール、4-シアノ-1-ブタンチオール、4-メルカプト-1-ブタノール、6-メルカプト-1-ヘキサノール、6-メルカプトヘキサン酸、8-メルカプト-1-オクタノール、8-メルカプトオクタン酸、9-メルカプト-1-ノナノール、ビフェニル-4,4’-ジチオール、3-メルカプトプロピオン酸ブチル、シクロヘキサンチオール、シクロペンタンチオール、メルカプトコハク酸、3-メルカプトプロピオン酸メチル、PEGジチオール、S-(4-シアノブチル)チオアセテート、チオフェノール。
【0072】
態様33:ポリマー組成物からメルカプタン臭を脱臭する方法であって、前記ポリマー組成物を、前記メルカプタン化合物と反応するラジカル開始剤と接触させて、無臭化合物を形成すること、及び前記ポリマー組成物を、前記メルカプタン化合物を固定化する遷移金属と接触させることのうち、少なくとも1つを含み、態様1~31のいずれか1項が適用される方法。
【0073】
態様34:本発明の化学的及び/又は物理的クエンチング反応が、メルカプタン除去の1つ又は複数の従来のプロセスと組み合わせて使用される、態様1~33のいずれか1項に記載の方法。
【実施例】
【0074】
例1.既知の濃縮NDM溶液から残留/未反応n-ドデシルメルカプタン(NDM)の量を決定するためのガスクロマトグラフィー(GC)較正曲線の作成
2つの母液(MS1及びMS2)を、次のように調製した。
(i)MS1:0.5047gのNDMをイソオクタンに溶解し、総重量は10.02gであった(目標:100ppmのNDM;実際:104.5ppm)。
(ii)MS2:0.2542gのNDMをイソオクタンに溶解し、総重量は10.00gであった(目標:50ppm;実際:52.25ppm)。
【0075】
MS1とMS2を使用して、10.45、5.23、1.05、及び0.52ppmの標準サンプルを調製し、保持時間と同位体パターンを分析する(検出されたピークからNDMを確認する)ために、質量分析(GC-MS)を備えたガスクロマトグラフィー(GC)で測定した。全体的に、NDMのピークは6.15~6.20分で見られた。ピーク面積(5回測定)から検量線を作成した。
図1を参照すること。検量線に基づいて、SAN-POP中のNDMの元の濃度は10.45(誤差12.13%)であると決定された。
【0076】
例2.ラジカル反応の一般的手順
5gのSAN-POP混合物を20mlガラスバイアルに入れ、酸素を除去するために窒素(N2)でパージした。ラジカル開始剤として4mg又は8mgのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)又はジ-tert-ブチルペルオキシド(tBP)と、マグネティックバースターラー(高粘度下で十分に撹拌するための希土類スターラーバー)をバイアルに入れた。反応物を60又は120℃の温度で撹拌した。サンプルを定期的に採取し、GC-MSで測定してNDMの量を決定した。
【0077】
例3.物理的固定化の一般的手順
銅(又は金)のワイヤを希塩酸(HCl)で穏やかに洗浄して、表面の破片を除去した後、大量の水とメタノールで順次洗浄した。ワイヤをN2ブローによって乾燥させ、次に清潔な20mlバイアルに入れた。最大5gのSAN-POP溶液及びマグネティックバースターラー(希土類スターラーバー)をバイアルに入れ、N2でパージした。反応物を60又は120℃の温度で撹拌した。サンプルを定期的に採取し、GC-MSで測定してNDMの量を決定した。
【0078】
例4.化学的及び物理的クエンチングの一般的手順
銅(又は金)のワイヤ(直径=1mm、長さ=1又は5cm)を希塩酸(HCl)で穏やかに洗浄して、表面の破片を除去した後、大量の水とメタノールで順次洗浄した。ワイヤをN2ブローによって乾燥させ、次に清潔な20mlバイアルに入れた。最大5gのSAN-POP溶液、4又は8mgのラジカル開始剤、及びマグネティックバースターラー(希土類スターラーバー)をバイアルに入れ、N2でパージした。反応物を60又は120℃の温度で撹拌した。サンプルを定期的に採取し、GC-MSで測定してNDMの量を決定した。
【0079】
例5.
クエンチング結果
5.02gのSAN-POPと3.8mgのAIBNを用いて、60℃でラジカルクエンチング反応を一晩行った。結果は、NDMの最大87%(誤差8%)がラジカルクエンチングプロセスを使用して除去/クエンチされたことが示された。ラジカル開始剤の濃度と温度の影響を評価することにより、詳細な速度論的研究を行った。
図2を参照すること。一般に、ラジカル濃度が高いほど、残留NDMの量がより迅速に減少することが観察された。ただし、ラジカル源の解離速度によってラジカルの消費が速すぎるため、AIBNは高い温度(すなわち120℃)では適切なラジカル開始剤ではないことも観察された。高い反応温度で操作するというこの問題を克服するために、125℃での10時間の半減期を考慮して、tBPがラジカル開始剤として選択された。AIBNと比較して、tBPはNDMのクエンチングにおいてより優れた効率を示した。
図3を参照すること。
【0080】
銅ワイヤと金ワイヤの存在下で物理的固定化実験を実施した。温度60℃で一晩反応させた。銅ワイヤの存在下では約19.36%(誤差7%)のNDM除去が観察され、一方、金ワイヤの存在下では約6.36%(誤差3%)のNDM除去が観察された。これらの収率は、(化学)ラジカル反応で得られる収率よりも低かった。
【0081】
(化学的)ラジカルクエンチングと物理的固定化実験の組み合わせを、次のように実行した:AIBN(4又は8mg)をラジカル源として選択し、銅ワイヤ(直径=1mm、長さ=1又は5cm)を遷移金属源として選択し、反応温度は60℃であった。速度論的研究により、銅ワイヤの量が多いほど、SAN-POPからのNDMの除去が改善されることが示された。したがって、1cmの銅ワイヤ+AIBNの組み合わせは、NDM除去において有意な改善を示さなかったが、AIBNと組み合わせた5×過剰銅ワイヤの使用は、2×AIBNと同様のNDM除去効率を示した(
図4)。
【0082】
以下の表1は、ラジカル開始剤AIBN若しくはtBP単独で、又は遷移金属としての銅ワイヤと組み合わせて使用した場合のNDM除去をまとめたものである。記載されているすべての重量パーセントは、ポリマーの総重量パーセントに対するものである。
【0083】
【0084】
表1の結果は、tBP(×2)でNDMの除去率が最も高かったことを示している。AIBN(×2)及びAIBN+Cu(×5)で良好な結果が得られた。
【0085】
本明細書で言及されるすべての刊行物は、その全体が参照により組み込まれる。
【0086】
本明細書内で、実施形態は、明確かつ簡潔な明細書を書くことを可能にする方法で説明されてきたが、本発明から逸脱することなく、実施形態が様々に組み合わされ、又は分離され得ることが意図され、理解される。例えば、本明細書に記載されたすべての好ましい特徴は、本明細書に記載された本発明のすべての態様に適用可能であることを理解されたい。
【0087】
本発明の様々な形態の上記の説明は、例示及び説明の目的で提示された。網羅的であること、又は開示された正確な形態に本発明を限定することは意図されていない。上記の教示に照らして、多数の修正又は変形が可能である。論じられた形態は、本発明の原理及びその実際の応用の最良の説明を生成するために選択され、説明され、それにより、当業者が、考えられる特定の用途に適した様々な形態及び様々な修正で本発明を利用することを可能にする。そのようなすべての修正及び変更は、公正、法的、及び衡平に権利が与えられる範囲に従って解釈される場合、添付の特許請求の範囲によって決定される本発明の範囲内にある。