(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】紫外光剥離テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20240726BHJP
C09J 7/24 20180101ALI20240726BHJP
C09J 133/06 20060101ALI20240726BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20240726BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240726BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/24
C09J133/06
C09J4/02
C09J11/06
H01L21/304 631
(21)【出願番号】P 2023016094
(22)【出願日】2023-02-06
【審査請求日】2023-02-06
(32)【優先日】2022-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】曹 俊哲
(72)【発明者】
【氏名】▲頼▼ 振和
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-019150(JP,A)
【文献】特開2011-061189(JP,A)
【文献】特開2012-012506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
H01L 21/78 - 21/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、紫外光分解粘着層と、離型層とを備える、紫外光剥離テープであって、
前記紫外光分解粘着層は、前記基材層と前記離型層との間に設置され、
前記基材層は、ポリ塩化ビニル、可塑剤及び金属塩化合物を含み、前記金属塩化合物はカルシウム塩化合物及び亜鉛塩化合物を含み、
前記ポリ塩化ビニルの総重量を100重量部として、
前記金属塩化合物の添加量は、1重量部~8重量部であり、
前記紫外光分解粘着層とシリコンウェーハとの剥離強度は、10ニュートン/インチを超え、
紫外光で照射した後の、前記紫外光分解粘着層と前記シリコンウェーハとの剥離強度は、0.3ニュートン/インチ未満であり、
前記基材層の一面に、前記紫外光分解粘着層に接するバリア層を備え、前記バリア層は、酢酸エチル-無水マレイン酸-塩化ビニル共重合体、メタクリル酸メチルと天然ゴムとの共重合体、又はポリ塩化ビニルと塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂との混合物を含むことを特徴とする、紫外光剥離テープ。
【請求項2】
前記カルシウム塩化合物と前記亜鉛塩化合物との添加量の比(カルシウム塩化合物:亜鉛塩化合物)は、1:1~1:10である、請求項1に記載の紫外光剥離テープ。
【請求項3】
前記ポリ塩化ビニルの総重量を100重量部として、前記可塑剤の添加量は、20重量部~65重量部である、請求項1に記載の紫外光剥離テープ。
【請求項4】
前記バリア層は、ポリ塩化ビニル75重量部~95重量部と、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂5重量部~25重量部とを含む、請求項
1に記載の紫外光剥離テープ。
【請求項5】
前記塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂は、塩化ビニル-酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニル-酢酸ビニル-ビニルアルコールターポリマー、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸ターポリマー、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル酸ヒドロキシエチルターポリマー又はそれらの組み合わせを含む、請求項
1に記載の紫外光剥離テープ。
【請求項6】
前記紫外光分解粘着層は、接着剤組成物で形成され、
前記接着剤組成物は、アクリロイルポリマー20重量部~60重量部と、アクリロイルモノマー2重量部~20重量部と、硬化剤0.2重量部~2重量部と、光開始剤0.5重量部~5重量部と、を含む、請求項1に記載の紫外光剥離テープ。
【請求項7】
前記紫外光分解粘着層の紫外光透過率は70%を超える、請求項1に記載の紫外光剥離テープ。
【請求項8】
前記基材層の厚みは60μm~90μmである、請求項1に記載の紫外光剥離テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外光剥離テープに関し、特に、半導体プロセス(バックグラインド及びウェーハダイシング)に応用する紫外光剥離テープに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体プロセスにおいて、特に、バックグラインド及びウェーハダイシングにおいて、粘着テープを用いてチップを固定することが多い。
【0003】
バックグラインドによって、チップの厚みを薄くなり、薄型チップを得ることができる。チップの表面を保護するために、粘着テープをチップ表面に完全に貼り合わせることによって、チップ表面が磨耗したり、研磨液によって汚染されることを回避する。
【0004】
ウェーハダイシングにおいて、粘着テープは、ウェーハを精密にダイシングされてサイズの小さいダイ(die)を得るように、ウェーハを固定するものである。粘着テープを用いることによって、ウェーハをダイシングする際の移動又はウェーハの飛散を回避することができる。
【0005】
市販の粘着テープは、非UV型粘着テープ及びUV型粘着テープに分けられる。一般的に、非UV型粘着テープの粘着力は、UV型粘着テープより低いため、非UV型粘着テープを用いた後に、非UV型粘着テープが直接にウェーハと分離することが可能である。一方、UV型粘着テープを用いた後に、UV光の照射によりウェーハと分離する。
【0006】
ウェーハの固定及びウェーハとの剥離を両立するために、粘着テープは、特定の粘着力を有し、且つ粘着力が時間による減弱、粘着層の軟化、若しくは粘着剤の残留を回避する必要がある。故に、材料及び構造の設計によって、粘着テープ(剥離テープと称する場合がある)の特性を向上して便利に使用する効果を果たせることは、本事業の解決しようとする重要な課題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、紫外光剥離テープを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、基材層と、紫外光分解粘着層と、離型層とを備える、紫外光剥離テープを提供する。紫外光分解粘着層は、基材層と離型層との間に設置される。基材層は、ポリ塩化ビニル、可塑剤及び金属塩化合物を含み、ポリ塩化ビニルの総重量を100重量部として、金属塩化合物の添加量は、1重量部~8重量部であり、金属塩化合物は、カルシウム塩化合物及び亜鉛塩化合物を含む。紫外光分解粘着層とシリコンウェーハとの剥離強度は、10ニュートン/インチを超え、紫外光で照射した後の、紫外光分解粘着層とシリコンウェーハとの剥離強度は、0.3ニュートン/インチ未満である。
【0009】
一つの実施形態において、基材層における、カルシウム塩化合物と亜鉛塩化合物との添加量の比(カルシウム塩化合物:亜鉛塩化合物)は、1:1~1:10である。
【0010】
一つの実施形態において、ポリ塩化ビニルの総重量を100重量部として、可塑剤の添加量は、20重量部~65重量部である。
【0011】
一つの実施形態において、基材層の一面に紫外光分解粘着層に接するバリア層を備える。
【0012】
一つの実施形態において、バリア層は、酢酸エチル-無水マレイン酸-塩化ビニル共重合体、メタクリル酸メチルと天然ゴムとの共重合体、又はポリ塩化ビニルと塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂との混合物を含む。
【0013】
一つの実施形態において、バリア層は、ポリ塩化ビニル75重量部~95重量部と、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂5重量部~25重量部とを含む。
【0014】
一つの実施形態において、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂は、塩化ビニル-酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニル-酢酸ビニル-ビニルアルコールターポリマー、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸ターポリマー、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル酸ヒドロキシエチルターポリマー又はそれらの組み合わせを含む。
【0015】
一つの実施形態において、紫外光分解粘着層は、接着剤組成物で形成され、接着剤組成物は、アクリロイルポリマー20重量部~60重量部と、アクリロイルモノマー2重量部~20重量部と、硬化剤0.2重量部~2重量部と、光開始剤0.5重量部~5重量部と、を含む。
【0016】
一つの実施形態において、紫外光分解粘着層の紫外光透過率は70%を超える。
【0017】
一つの実施形態において、基材層の厚みは60μm~90μmである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の有利な効果として、本発明に係る紫外光剥離テープは、「基材層は、ポリ塩化ビニル、可塑剤及び金属塩化合物を含む」及び「金属塩化合物は、カルシウム塩化合物及び亜鉛塩化合物を含む」といった技術特徴によって、適切な剥離強度を備えると共に、長い時間が経った後でも、良好な剥離強度を有すると共に、粘着剤の残留が発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る第一実施形態に係る紫外光剥離テープの側面図である。
【
図2】本発明に係る第二実施形態に係る紫外光剥離テープの側面図である。
【
図3】本発明に係る第二実施形態に係る紫外光剥離テープの使用模式図である。
【
図4】本発明に係る第二実施形態に係る紫外光剥離テープを用いた後の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照されたい。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0021】
以下、所定の具体的な実施態様によって本発明の「紫外光剥離テープ」を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実施または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つまたは複数の組み合わせを含むことがある。
【0022】
本発明に係る紫外光剥離テープは、UV型粘着テープであり、適切な剥離強度を有し、半導体プロセス、特にバックグラインド(wafer back grinding)及びウェーハダイシング(wafer dicing)の工程に適用することができる。紫外光剥離テープを使用する際に、紫外光剥離テープがシリコンウェーハによく付着して、シリコンウェーハを保護・固定する効果を果たせる。紫外光剥離テープを使用した後に、紫外光の照射によって、紫外光剥離テープのシリコンウェーハへの接着力を低減して、紫外光剥離テープをシリコンウェーハから容易に剥離すると共に、粘着剤の残留が生じない。明細書において、例としてシリコンウェーハを用いて説明するが、実際に応用する際に、本発明に係る紫外光剥離テープは、シリコンウェーハに用いることに限らず、電子部品又は他の基材に用いることができる。
【0023】
具体的に説明すると、紫外光が照射される前に、紫外光剥離テープのシリコンウェーハとの剥離強度(P0)は10ニュートン/インチを超える。紫外光が照射された後に、紫外光剥離テープのシリコンウェーハとの剥離強度(P1)は0.3ニュートン/インチ未満である。容易に定義するために、紫外光の照射前後の剥離強度の差(P0-P1)と紫外光の照射前の剥離強度(P0)との比((P0-P1)/P0)を剥離強度の変化率とする。紫外光剥離テープが高い剥離強度の変化率を有する場合、紫外光剥離テープの紫外光が照射した後の剥離強度が大幅に低減し、シリコンウェーハから容易に剥離することが可能であり、容易に用いる効果を果たせる。
【0024】
本発明において、紫外光剥離テープの剥離強度の変化率は、65%を超える。好ましくは、紫外光剥離テープの剥離強度の変化率は、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%を超えてもよい。
【0025】
[第一実施形態]
図1に示すように、本発明の第一実施形態において、基材層1と、紫外光分解粘着層2と、離型層3と、を備える紫外光剥離テープを提供する。
【0026】
基材層1の材料は、ポリ塩化ビニル、可塑剤及び金属塩化合物を含む。ポリ塩化ビニルは、優れた耐衝撃性、伸び性及び耐候性を有するため、基材層1に曲げ性を与えられると共に、シリコンウェーハを保護することができる。可塑剤の添加は、ポリ塩化ビニルの加工性を改善することができ、紫外光剥離テープのプロセスの便利性を向上させることができる。金属塩化合物の添加によって、ポリ塩化ビニルを安定することによって、ポリ塩化ビニルが120℃~130℃の高温条件で分解されて塩化水素を生じることを回避することができ、塩化水素がポリ塩化ビニルの分解を加速する。また、ポリ塩化ビニルの熱履歴(thermal history)の経った時間が長すぎると、ポリ塩化ビニルが黄変しやすくなる。
【0027】
一つの示範例において、基材層1の材料は、ポリ塩化ビニル100重量部と、可塑剤20重量部~65重量部と、金属塩化合物1重量部~8重量部とを含む。例えば、可塑剤の添加量は、25重量部、30重量部、35重量部、40重量部、45重量部、50重量部、55重量部又は60重量部であってもよい。金属塩化合物の添加量は、2重量部、3重量部、4重量部、5重量部、6重量部又は7重量部であってもよい。
【0028】
例えば、可塑剤は、テレフタル酸ジイソオクチル(dioctyl terephthalate,DOTP)、フタル酸ジイソノニル(di-iso-nonyl phthalate,DINP)、フタル酸ビス(2-プロピルヘプチル)(di-(2-propylheptyl)phthalate,DPHP)、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸イソノニル(1,2-cyclohexanedicarboxylate isononyl ester,DHIN)、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(diethylhexyl phthalate,DEHP)又はエポキシ化大豆油であってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0029】
一つの示範例において、金属塩化合物は、カルシウム塩化合物及び亜鉛塩化合物を含む。カルシウム塩化合物と亜鉛塩化合物との添加量の比(カルシウム塩化合物:亜鉛塩化合物)は、1:1~1:10であり、例えば、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8又は1:9である。基材層の材料は、カルシウム塩化合物及び亜鉛塩化合物を同時に含む場合、ポリ塩化ビニルが高温条件(120℃~130℃)で分解されることを回避することができ、更に、黄変を回避することができる。一つの示範例において、カルシウム塩化合物はステアリン酸カルシウムであり、亜鉛塩化合物はステアリン酸亜鉛である。
【0030】
説明すべきことは、紫外光剥離テープに高い剥離強度の変化率を与えるため、紫外光剥離テープは、紫外光分解粘着層2が紫外光の照射を受けるように、良好な紫外光透過率を有する必要である。
【0031】
金属塩化合物としてカルシウム塩化合物及び亜鉛塩化合物を用いる場合、基材層1に良好な紫外光透過率(70%を超える)を与える。このように、紫外光で紫外光剥離テープに照射する際に、紫外光が基材層1を透過して紫外光分解粘着層に照射することを確保することができる。よって、紫外光分解粘着層2が解膠作用(peptization)によって、シリコンウェーハから完全な剥離することができ、粘着剤の残留が発生しない。
【0032】
基材層1の材料は、改質剤、滑剤及び顔料を更に含んでもよい。ポリ塩化ビニル100重量部に対し、改質剤の添加量は1重量部~4重量部であり、滑剤の添加量は0.1重量部~1重量部であり、顔料の添加量は0.1重量部~4重量部である。
【0033】
例えば、改質剤の添加は、ポリ塩化ビニルの可塑化を加速させ、熱可塑剤メルトのレオロジー特性を改良すると共に、熱弾性状態でのメルトの力学特性を改善し、成品の外観品質及び耐衝撃性などの機械的強度を改善することができる。改質剤は、塩素化ポリエチレン、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、アクリレート共重合体(ACR)、アクリロニトリルやブタジエンランダム共重合体であってもよい。
【0034】
滑剤は、紫外光剥離テープ表面の平滑度を維持することができる。滑剤は、フタル酸エステル、クエン酸エステル、クエン酸アセチル、エチレン酢酸-ビニル共重合体ワックス、パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、アミドワックス(オレアミド、エルカミド)、エステルワックス(モノグリセリド、ペンタエリスリトールエステル、ステアリン酸n-ブチル)、ステアリン酸、ステアリン酸塩、メタ安息香酸エステル、ホワイトミネラルオイル又はポリシリコンであってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0035】
紫外光分解粘着層2は、基材層1と離型層3との間に設置される。また、紫外光分解粘着層2と基材層1との接着力は、紫外光分解粘着層2と離型層3との接着力を超える。
【0036】
紫外光分解粘着層2は、接着剤組成物で形成され、接着剤組成物は、アクリロイルポリマー20重量部~60重量部と、アクリロイルモノマー2重量部~20重量部と、硬化剤0.2重量部~2重量部と、光開始剤0.5重量部~5重量部と、溶媒20重量部~80重量部と、を含む。簡単に言えば、紫外光分解粘着層2は、アクリロイル紫外光分解粘着層であってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0037】
具体的に説明すると、アクリロイルポリマーは、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸n-ブチル、ポリアクリル酸イソブチル、ポリアクリル酸イソオクチル、ポリアクリル酸ヒドロキシエチル、ポリメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート又はそれらの誘導体のポリマーであってもよい。アクリロイルモノマーは、メタクリル酸メチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート又はそれらの誘導体であってもよい。硬化剤は、有機過酸化物の混合物、ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン又はジアミノジフェニルメタンであってもよい。光開始剤は、アゾイソブチロニトリル、過酸化ジベンゾイル、過酸化物系又はアゾ化合物系であってもよい。溶媒は、アセトン、IPA(イソプロピルアルコール)、メタノール又は酢酸エチルであってもよい。しかしながら、本発明はこれに制限されるものではない。
【0038】
離型層3は、紫外光分解粘着層2に設置されると共に、紫外光分解粘着層2と分離可能である。紫外光剥離テープを用いる前に、離型層3を先に剥離して、紫外光分解粘着層2でシリコンウェーハに貼り合わせる。
【0039】
一つの示範例において、紫外光剥離テープの総厚みは、85μm~220μmである。具体的に説明すると、基材層1の厚みは、60μm~150μmであってもよく、例えば、70μm、80μm、90μm、100μm、110μm、120μm、130μm又は140μmであってもよい。紫外光分解粘着層2の厚みは、8μm~20μmであってもよく、例えば、10μm、12.5μm、15μm又は17.5μmであってもよい。離型層3の厚みは、20μm~50μmであってもよく、例えば、25μm、30μm、35μm、40μm又は45μmであってもよい。
【0040】
紫外光剥離テープの製造方法について、まず、基材層1を形成するための材料を、高速ミキサーで均一に混合して、圧延、ブロー成形、キャスティング又はTダイ押出で押し出すことによって、ポリ塩化ビニル層を製造することができる。次に、離型層3(PET離型フィルム)に接着剤組成物を塗布すると共に、ポリ塩化ビニル層を接着剤組成物に設置して、乾燥・硬化したら、本発明に係る紫外光剥離テープを得られる。
【0041】
[第二実施形態]
図2に示すように、本発明の第二実施形態において、紫外光剥離テープを提供する。当該紫外光剥離テープは、前記実施形態と類似する基材層1と、紫外光分解粘着層2と、離型層3と、を備える。
【0042】
高温、高圧又は溶媒が存在する場合、基材層1における可塑剤は、基材層1の内部から紫外光分解粘着層2へ移行することによって、紫外光分解粘着層2を軟化して、接着強度が低下となる問題を起こす。また、紫外光分解粘着層2へ移行した可塑剤は、紫外光分解粘着層2の紫外光を吸収する効果に影響することがある。紫外光分解粘着層2が完全に解膠されないと、シリコンウェーハに接着剤を残留することがある。
【0043】
このように、可塑剤の移行を回避するために、本発明において、可塑剤の移行をバリアするように、紫外光分解粘着層2と接触するバリア層11を基材層1の一面に設置する。即ち、バリア層11の設置は、紫外光分解粘着層2の接着強度の減弱、及び剥離した後に接着剤の残留の問題を防止することができる。一つの示範例において、基材層1及びバリア層11の厚みは、60μm~150μmであってもよい。
【0044】
一つの実施形態において、バリア層11と基材層1とは一体成型されている。例えば、バリア層11及び基材層1は、共押出又は他の積層方法によって、一体成型されてもよい。もう一つの実施形態において、バリア層11は、塗布で基材層1に形成されてもよい。
【0045】
バリア層11の材料は、酢酸エチル-無水マレイン酸-塩化ビニル共重合体、メタクリル酸メチルと天然ゴムとの共重合体、又はポリ塩化ビニルと塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂(vinyl chloride-vinyl acetate based copolymer)との混合物であってもよい。また、前記材料は、共押出又は塗布でバリア層を形成することができるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0046】
バリア層11の材料がポリ塩化ビニルと塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂との混合物である場合、バリア層11の材料は、ポリ塩化ビニル75重量部~95重量部と、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂5重量部~25重量部を含んでもよい。具体的に説明すると、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂は、塩化ビニル-酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニル-酢酸ビニル-ビニルアルコールターポリマー、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸ターポリマー、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル酸ヒドロキシエチルターポリマー又はそれらの組み合わせであってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0047】
バリア層11は、帯電防止剤を更に含んでもよい。帯電防止剤を添加することによって、シリコンウェーハ又は電子部品が静電気による毀損を回避することができる。帯電防止剤は、カチオン系帯電防止剤、アニオン系帯電防止剤、両性イオン系帯電防止剤又は非イオン系帯電防止剤であってもよい。カチオン系帯電防止剤は、アンモニウム塩、第四級アンモニウム塩、アルキルイミダゾリン又はアルキルイミダゾリン塩であってもよい。アニオン系帯電防止剤は、アルキルスルホン酸ナトリウム、リン酸エステル又はリン酸塩であってもよい。両性イオン系帯電防止剤は、アルキルジヒドロキシエチルアンモニウムベタイン塩又はN-アルキルアミノ酸塩であってもよい。非イオン系帯電防止剤は、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、脂肪族アルコールエチレンオキサイド付加物又はアルキルフェノールエチレンオキサイド付加物であってもよい。
【0048】
一つの実施形態において、基材層1の材料は、ポリオレフィンを含んでもよい。ポリオレフィンを用いることで、一部のポリ塩化ビニルに取って代わることによって、可塑剤の使用量を低減させることができる。換言すると、基材層1は、ポリ塩化ビニル層及びポリオレフィン層で共に構成されてもよい。積層する方法は、特に限定されていない。ポリ塩化ビニルの材料は、第一実施形態の基材層1に説明したので、ここで重複して説明しない。ポリ塩化ビニルの材料は、ポリエチレン5重量部~95重量部と、ポリプロピレン5重量部~95重量部と、滑剤0.1重量部~1重量部と、顔料0.1重量部~4重量部と、酸化防止剤0.5重量部~6.5重量部と、を含んでもよい。
【0049】
図3及び
図4は、本発明の紫外光剥離テープの使用模式図である。
図3に示すように、紫外光剥離テープを用いる際に、離型層3を先に剥離して、紫外光分解粘着層2でシリコンウェーハWに接着することによって、保護又は固定の効果を達成する。紫外光剥離テープを用いた後に、紫外光で紫外光剥離テープを先に照射することによって、紫外光分解粘着層2を解膠した後に、基材層1及び紫外光分解粘着層2をシリコンウェーハWから剥離する。
【実施例】
【0050】
本発明の紫外光剥離テープが適切の剥離強度を有することを証明するために、前記第一実施形態又は第二実施形態の構造に基づいて、実施例1~3及び比較例1~3の紫外光剥離テープを製造した。実施例と比較例との相違点は、実施例に含まれた金属塩化合物は、カルシウム塩化合物及び亜鉛塩化合物を含み、比較例に含まれた金属塩化合物は、バリウム塩化合物及び亜鉛塩化合物を含む。
【0051】
紫外光剥離テープの基材層の材料の配合は、表1に示す通りであり、特に説明しない限り、その単位は重量部である。表1において、可塑剤はフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)であり、改質剤はアクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体であり、滑剤はステアリン酸石鹸であり、顔料はウルトラマリン有機系であった。バリア層の材料は、酢酸エチルと無水マレイン酸と塩化ビニルとの共重合体であった。金属塩化合物は、カルシウム塩化合物及び亜鉛塩化合物の混合物(表1でカルシウム/亜鉛塩化合物と称す)又はバリウム塩化合物及び亜鉛塩化合物の混合物(表1でバリウム/亜鉛塩化合物と称す)であった。実施例1~3において、カルシウム塩化合物と亜鉛塩化合物との添加比(カルシウム塩化合物:亜鉛塩化合物)は1:4であった。比較例1~3において、バリウム塩化合物と亜鉛塩化合物との添加比(バリウム塩化合物:亜鉛塩化合物)は1:4であった。
【0052】
ASTM D3330の基準の測定方法によれば、紫外光剥離テープを測定する紫外光剥離テープのシリコンウェーハとの剥離強度(P0)及び紫外光が照射した後の紫外光剥離テープのシリコンウェーハとの剥離強度(P1)を測定すると共に、剥離強度の変化率((P0-P1)/P0)を計算した。また、品番がSHIMADZU UV-3600i Plusである紫外可視近赤外分光光度計を用いて、紫外光剥離テープの紫外光透過率を測定した。紫外光剥離テープの剥離強度及び紫外光透過率は、表1に示す通りである。
【0053】
【0054】
表1の結果によれば、本発明の紫外光剥離テープは、良好な紫外光透過率を有するため、紫外光分解粘着層2の解膠効果を確保して、紫外光剥離テープを剥離した後に接着剤の残留を回避することができる。具体的に説明すると、紫外光剥離テープの紫外光透過率は70%を超え、75%を超えることが好ましい。
【0055】
上記の実施例において、カルシウム塩化合物としてステアリン酸カルシウムを用い、亜鉛塩化合物としてステアリン酸亜鉛を用い、バリウム塩化合物としてステアリン酸バリウムを用いた場合に、同じ結果が得られる。
【0056】
表1の結果によれば、本発明の紫外光剥離テープは、適切の剥離強度を有するため、シリコンウェーハ又は他の電子部品に貼り合わせることができ、また、紫外光を照射した後に、紫外光剥離テープを容易に剥離することが可能であるため、使いやすい効果を有する。具体的に説明すると、紫外光剥離テープの紫外光が照射される前の剥離強度は、10ニュートン/インチを超え、紫外光剥離テープの紫外光が照射された後の剥離強度は、0.3ニュートン/インチ未満である。好ましくは、紫外光剥離テープの紫外光が照射される前の剥離強度は、18ニュートン/インチを超え、紫外光剥離テープの紫外光が照射された後の剥離強度は、0.15ニュートン/インチ未満である。
【0057】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明に係る紫外光剥離テープは、「基材層は、ポリ塩化ビニル、可塑剤及び金属塩化合物を含む」及び「金属塩化合物は、カルシウム塩化合物及び亜鉛塩化合物を含む」といった技術特徴によって、適切の剥離強度を備えると共に、長い時間を経った後でも、良好な剥離強度を有すると共に、粘着剤の残留が発生しない。
【0058】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1…基材層
11…バリア層
2…紫外光分解粘着層
3…離型層
W…シリコンウェーハ