(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】調心方法、調心システム、及び、ファイバ接続体の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/26 20060101AFI20240726BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20240726BHJP
G02B 6/255 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
G02B6/26
G02B6/02 461
G02B6/255
(21)【出願番号】P 2023072783
(22)【出願日】2023-04-26
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】小田 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】大関 真生
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/032506(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/130627(WO,A1)
【文献】特開2013-050695(JP,A)
【文献】特開2022-044994(JP,A)
【文献】特開2020-020998(JP,A)
【文献】特表平08-506432(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01508825(EP,A1)
【文献】特開2004-341452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26 - 6/27
G02B 6/255
G02B 6/02
G01M 11/00 - 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面における屈折率分布が異方性を有する光ファイバを調心機構にセットする準備工程と、
前記調心機構にセットされた前記光ファイバにおける特定の構造の位置
を、360°未満の範囲内に分布する複数の測定方向からの光学測定によって特定する測定工程と、
前記測定工程にて特定された前記光ファイバにおける前記特定の構造の位置に基づいて、前記光ファイバの回転調心を行う調心工程と、を含み、
前記光ファイバにおける前記特定の構造の屈折率と、前記光ファイバのクラッドの屈折率とが異なり、
前記光学測定は、前記測定方向と反対方向に配置された光源から照射される光のうち、前記光ファイバを透過する光を、前記測定方向に配置された光検出器によって検出する光学測定であり、
前記測定工程において、前記光学測定を前記複数の測定方向から行うことにより得た、スカラー量である前記光ファイバの透過光強度の方向依存性から、前記光ファイバにおける前記特定の構造の位置を特定し、
前記準備工程において、
前記光ファイバをその中心軸を通る仮想平面によって前記光源側と前記光検出器側とに二分したときに、前記光ファイバの前記特定の構造が前記光源側に位置し、且つ、前記光検出器側に位置しないように、前記光ファイバを前記調心機構にセットする、
ことを特徴とする調心方法。
【請求項2】
前記光ファイバは、断面における配置がn回対称性を有する複数のコアを有し、
前記特定の構造は、前記複数のコアの何れか、又は、前記光ファイバが有する前記コア以外の構造であり、
前記複数の測定方向は、kをn未満の自然数の何れかとして、k×360°/
nの範囲内に分布するか、又は、kを1以上(2/3)×n未満の自然数の何れかとして、(3/2)×k×360°/n以下の範囲内に分布する、
ことを特徴とする請求項
1に記載の調心方法。
【請求項3】
前記複数の測定方向は、kをn未満の自然数の何れかとして、前記特定の構造を含む、k×360°/n以下の範囲内に分布するか、又は、kを1以上(2/3)×n未満の自然数の何れかとして、前記特定の構造を含む、(3/2)×k×360°/
nの範囲内に分布する、
ことを特徴とする請求項
2に記載の調心方法。
【請求項4】
前記光ファイバは、単一のコアと、前記コア以外の複数の構造であって、断面における配置がn回対称性を有する複数の構造と、を有し、
前記特定の構造は、前記複数の構造の何れかであり、
前記複数の測定方向は、kをn未満の自然数の何れかとして、k×360°/
nの範囲内に分布するか、又は、kを1以上(2/3)×n未満の自然数の何れかとして、(3/2)×k×360°/n以下の範囲内に分布する、
ことを特徴とする請求項1に記載の調心方法。
【請求項5】
断面における屈折率分布が異方性を有する2本の光ファイバを含むファイバ接続体の製造方法であって、
請求項1に記載の調心方法を用いて、前記2本の光ファイバの調心を行う調心工程と、
前記調心工程にて回転調心された前記2本の光ファイバを融着する融着工程と、を含むことを特徴とするファイバ接続体の製造方法。
【請求項6】
単一の調心機構又は複数の調心機構と、単一の光源又は複数の光源と、単一の光検出器又は複数の光検出器と、単一の制御部又は複数の制御部と、を備え、
前記単一の制御部、又は、前記複数の制御部の少なくとも1つが、断面における屈折率分布が異方性を有する光ファイバ
を前記単一の調心機構又は前記複数の調心機構にセットする準備工程と、前記光ファイバにおける特定の構造の位置を、単一の測定方向又は360°未満の範囲内に分布する複数の測定方向からの光学測定によって特定する測定工程とを、前記単一の光源又は前記複数の光源の少なくとも1つ、及び、前記単一の光検出器又は前記複数の光検出器の少なくとも1つを用いて実行し、
前記単一の制御部、又は、前記複数の制御部の少なくとも1つが、前記測定工程にて特定された前記光ファイバにおける前記特定の構造の位置に基づいて、前記光ファイバの回転調心を行う調心工程を、前記単一の調心機構又は前記複数の調心機構の少なくとも1つを用いて実行し、
前記光ファイバにおける前記特定の構造の屈折率と、前記光ファイバのクラッドの屈折率とが異なり、
前記単一の光源、又は、前記複数の光源の少なくとも1つは、前記光学測定において前記測定方向と反対方向に配置され、
前記単一の光検出器、又は、前記複数の光検出器の少なくとも1つは、前記光学測定において前記測定方向に配置され、
前記単一の制御部、又は、前記複数の制御部の少なくとも1つが、前記測定工程において、前記光学測定を前記複数の測定方向から行うことにより得た、スカラー量である前記光ファイバの透過光強度の方向依存性から、前記光ファイバにおける前記特定の構造の位置を特定し、
前記単一の制御部、又は、前記複数の制御部の少なくとも1つが、前記
準備工程において、
前記単一の光源又は前記複数の光源の少なくとも1つ、及び、前記単一の光検出器又は前記複数の光検出器の少なくとも1つを用いて、前記光ファイバをその中心軸を通る仮想平面によって前記光源側と前記光検出器側とに二分したときに、前記光ファイバの前記特定の構造が前記光源側に位置し、且つ、前記光検出器側に位置しないように、粗回転調心
する、
ことを特徴とする調心システム。
【請求項7】
前記光ファイバは、断面における配置がn回対称性を有する複数のコアを有し、
前記特定の構造は、前記複数のコアの何れか、又は、前記光ファイバが有する前記コア以外の構造であり、
前記複数の測定方向は、kをn未満の自然数の何れかとして、k×360°/
nの範囲内に分布するか、又は、kを1以上(2/3)×n未満の自然数の何れかとして、(3/2)×k×360°/
nの範囲内に分布する、
ことを特徴とする請求項
6に記載の調心システム。
【請求項8】
前記複数の測定方向は、kをn未満の自然数の何れかとして、前記特定の構造を含む、k×360°/
nの範囲内に分布するか、又は、kを1以上(2/3)×n未満の自然数の何れかとして、前記特定の構造を含む、(3/2)×k×360°/
nの範囲内に分布する、
ことを特徴とする請求項
7に記載の調心システム。
【請求項9】
前記光ファイバは、単一のコアと、前記コア以外の複数の構造であって、断面における配置がn回対称性を有する複数の構造と、を有し、
前記特定の構造は、前記複数の構造の何れかであり、
前記複数の測定方向は、kをn未満の自然数の何れかとして、k×360°/
nの範囲内に分布するか、又は、kを1以上(2/3)×n未満の自然数の何れかとして、(3/2)×k×360°/
nの範囲内に分布する、
ことを特徴とする請求項
6に記載の調心システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを調心する調心方法及び調心システムに関する。また、2本の光ファイバを融着接続することにより得られるファイバ接続体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの接続方法として、融着接続が挙げられる。融着接続では、通常、2本の光ファイバの端面を突き合わせ、端面を加熱溶融する。そして、2本の光ファイバの端面が自然冷却によって固化すると、2本の光ファイバの融着が実現される。光ファイバの融着接続方法を開示した文献としては、例えば、特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、断面における屈折率分布が異方性を有する光ファイバが広く用いられるようになっている。断面における屈折率分布が異方性を有する光ファイバとしては、例えば、以下のような光ファイバが挙げられる。
【0005】
(1)複数のコアを有するマルチコアファイバ、
(2)コアと、複数の応力付与部と、を有する偏波保持ファイバ、
(3)コアと、複数の高屈折率ロッドと、を有するフォトニックバンドギャップファイバ、
(4)コアと、複数の空孔と、を有する空孔アシスト型光ファイバ。
【0006】
上記の光ファイバを融着接続するためには、融着しようとする端面における複数のコア(マルチコアファイバの場合)、複数の高屈折率ロッド(フォトニックバンドギャップファイバの場合)、又は、複数の空孔(空孔アシスト型光ファイバの場合)の位置が合致するように、回転調心を行う必要がある。なお、マルチコアファイバには、コアを区別するための構造が付加されることがある。クラッドの内部に形成されるマーカ、及び、クラッドの外周に形成される平坦部は、コアを区別するための構造の一例である。このような構造が形成されたマルチコアファイバについては、コア位置を参照して回転調心を行う代わりに、このような構造を参照して回転調心を行ってもよい。
【0007】
しかしながら、上記の光ファイバの回転調心を行うためには、参照する構造(偏波保持ファイバの応力付与部、フォトニックバンドギャップファイバの高屈折率ロッド、空孔アシスト型光ファイバの空孔、又は、マルチコアファイバのコア、マーカ、若しくは平坦部)が光ファイバの中心軸から見てどの方向に存在しているかを、光学測定により事前に特定する必要がある。例えば、光源から照射された光のうち、光ファイバの透過光強度(光ファイバの側面から入射して反対側の側面から出射した光の強度)を、光検出器によって検出する光学測定を行う場合、光ファイバの中心軸を回転軸として光源及び光検出器を360°回転させながら、或いは、光ファイバの中心軸を回転軸として光ファイバを360°回転させながら、この光学測定を繰り返す必要がある。このため、回転調心において参照する構造の位置の特定までに時間が掛かるという問題があった。
【0008】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転調心において参照する構造の位置の特定までに要する時間を短縮することが可能な調心方法、調心システム、又は、ファイバ接続体の製造方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
態様1に係る調心方法は、断面における屈折率分布が異方性を有する光ファイバを調心機構にセットする準備工程と、前記調心機構にセットされた前記光ファイバにおける特定の構造の位置を、単一の測定方向又は360°未満の範囲内に分布する複数の測定方向からの光学測定によって特定する測定工程と、前記測定工程にて特定された前記光ファイバにおける前記特定の構造の位置に基づいて、前記光ファイバの回転調心を行う調心工程と、を含み、前記準備工程において、前記単一の測定方向又は前記複数の測定方向の何れかからの光学測定によって前記特定の構造の位置を特定できるように、前記光ファイバを前記調心機構にセットする調心方法である。
【0010】
態様2に係る調心方法は、態様1に係る調心方法において、前記光学測定において、前記測定方向と反対方向に配置された光源から照射される光のうち、前記光ファイバを透過する光を、前記測定方向に配置された光検出器によって検出し、前記準備工程において、前記光ファイバをその中心軸を通る仮想平面によって前記光源側と前記光検出器側とに二分したときに、前記光ファイバの前記特定の構造が前記光源側に位置するように、前記光ファイバを前記調心機構にセットする。
【0011】
態様3に係る調心方法は、態様1又は2に係る調心方法において、前記測定工程において、前記光学測定を前記複数の測定方向から行うことにより得た、前記光ファイバの透過光強度の方向依存性から、前記光ファイバにおける前記特定の構造の位置を特定する。
【0012】
態様4に係る調心方法は、態様1~3の何れか一態様に係る調心方法において、前記光ファイバは、断面における配置がn回対称性を有する複数のコアを有し、前記特定の構造は、前記複数のコアの何れか、又は、前記光ファイバが有する前記コア以外の構造であり、前記複数の測定方向は、kをn未満の自然数の何れかとして、k×360°/n以下の範囲内に分布するか、又は、kを1以上(2/3)×n未満の自然数の何れかとして、(3/2)×k×360°/n以下の範囲内に分布する。
【0013】
態様5に係る調心方法は、態様4に係る調心方法において、前記複数の測定方向は、kをn未満の自然数の何れかとして、前記特定の構造を含む、k×360°/n以下の範囲内に分布するか、又は、kを1以上(2/3)×n未満の自然数の何れかとして、前記特定の構造を含む、(3/2)×k×360°/n以下の範囲内に分布する。
【0014】
態様6に係る調心方法は、態様1~3の何れか一態様に係る調心方法において、前記光ファイバは、単一のコアと、前記コア以外の複数の構造であって、断面における配置がn回対称性を有する複数の構造と、を有し、前記特定の構造は、前記複数の構造の何れかであり、前記複数の測定方向は、kをn未満の自然数の何れかとして、k×360°/n以下の範囲内に分布するか、又は、kを1以上(2/3)×n未満の自然数の何れかとして、(3/2)×k×360°/n以下の範囲内に分布する。
【0015】
態様7に係る調心方法は、態様1又は2に係る調心方法において、前記測定工程において、前記光学測定を前記単一の測定方向から行うことにより得た、前記光ファイバを透過した光の2次元強度分布に基づいて、前記光ファイバにおける前記特定の構造の位置を特定する。
【0016】
態様8に係るファイバ接続体の製造方法は、断面における屈折率分布が異方性を有する2本の光ファイバを含むファイバ接続体の製造方法であって、態様1~7の何れか一態様に係る調心方法を用いて、前記2本の光ファイバの調心を行う調心工程と、前記調心工程にて回転調心された前記2本の光ファイバを融着する融着工程と、を含むことを特徴とするファイバ接続体の製造方法である。
【0017】
態様9に係る調心システムは、単一の光源又は複数の光源と、単一の光検出器又は複数の光検出器と、単一の制御部又は複数の制御部と、を備え、前記単一の制御部、又は、前記複数の制御部の少なくとも1つが、断面における屈折率分布が異方性を有する光ファイバにおける特定の構造の位置を、単一の測定方向又は360°未満の範囲内に分布する複数の測定方向からの光学測定によって特定する測定工程を、前記単一の光源又は前記複数の光源の少なくとも1つ、及び、前記単一の光検出器又は前記複数の光検出器の少なくとも1つを用いて実行し、前記単一の制御部、又は、前記複数の制御部の少なくとも1つが、前記測定工程にて特定された前記光ファイバにおける前記特定の構造の位置に基づいて、前記光ファイバの回転調心を行う調心工程を、前記単一の調心機構又は前記複数の調心機構の少なくとも1つを用いて実行し、前記測定工程において、前記光ファイバは、前記単一の測定方向又は前記複数の測定方向の何れかからの光学測定によって前記特定の構造の位置を特定できるように、粗回転調心された状態で配置されている調心システムである。
【0018】
態様10に係る調心システムは、態様9に係る調心システムにおいて、前記単一の光源、又は、前記複数の光源の少なくとも1つは、前記光学測定において前記測定方向と反対方向に配置され、前記単一の光検出器、又は、前記複数の光検出器の少なくとも1つは、前記光学測定において前記測定方向に配置され、前記測定工程において、前記光ファイバをその中心軸を通る仮想平面によって前記光源側と前記光検出器側とに二分したときに、前記光ファイバの前記特定の構造が前記光源側に位置するように、前記光ファイバが粗回転調心された状態で配置されている。
【0019】
態様11に係る調心システムは、態様9又は10に係る調心システムにおいて、前記測定工程において、前記光学測定を前記複数の測定方向から行うことにより得た、前記光ファイバの透過光強度の方向依存性から、前記光ファイバにおける前記特定の構造の位置を特定する。
【0020】
態様12に係る調心システムは、態様9~11の何れか一態様に係る調心システムにおいて、前記光ファイバは、断面における配置がn回対称性を有する複数のコアを有し、前記特定の構造は、前記複数のコアの何れか、又は、前記光ファイバが有する前記コア以外の構造であり、前記複数の測定方向は、kをn未満の自然数の何れかとして、k×360°/n以下の範囲内に分布するか、又は、kを1以上(2/3)×n未満の自然数の何れかとして、(3/2)×k×360°/n以下の範囲内に分布する。
【0021】
態様13に係る調心システムは、態様12に係る調心システムにおいて、前記複数の測定方向は、kをn未満の自然数の何れかとして、前記特定の構造を含む、k×360°/n以下の範囲内に分布するか、又は、kを1以上(2/3)×n未満の自然数の何れかとして、前記特定の構造を含む、(3/2)×k×360°/n以下の範囲内に分布する。
【0022】
態様14に係る調心システムは、態様9~11の何れか一態様に係る調心システムにおいて、前記光ファイバは、単一のコアと、前記コア以外の複数の構造であって、断面における配置がn回対称性を有する複数の構造と、を有し、前記特定の構造は、前記複数の構造の何れかであり、
前記複数の測定方向は、kをn未満の自然数の何れかとして、k×360°/n以下の範囲内に分布するか、又は、kを1以上(2/3)×n未満の自然数の何れかとして、(3/2)×k×360°/n以下の範囲内に分布する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様によれば、回転調心において参照する構造の位置の特定までに要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る融着方法の流れを示すフロー図である。
【
図2】
図1に示す融着接続方法に含まれる各工程における光ファイバの状態を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す融着接続方法の適用対象となる光ファイバの一例として、マルチコアファイバを示す図である。(a)は、そのマルチコアファイバの側面図であり、(b)は、そのマルチコアファイバの一方の端面を視線E1方向から見た正面図であり、(c)は、マルチコアファイバの他方の端面を視線E2方向から見た正面図である。
【
図4】通常接続された2本の光ファイバの接続箇所を示す図である。(a)は、これら2本の光ファイバの側面図、(b)は、これら2本の光ファイバの一方の端面を視線E2方向から見た正面図、(c)は、これら2本の光ファイバの他方の端面を視線E1方向から見た正面図である。
【
図5】非通常接続された2本の光ファイバの融着接続箇所を示す図である。(a)は、これら2本の光ファイバの側面図、(b)は、これら2本の光ファイバの一方の端面を視線E2方向から見た正面図、(c)は、これら2本の光ファイバの他方の端面を視線E1方向から見た正面図である。
【
図6】非通常接続された2本の光ファイバの融着接続箇所を示す図である。(a)は、これら2本の光ファイバの側面図、(b)は、これら2本の光ファイバの一方の端面を視線E2方向から見た正面図、(c)は、これら2本の光ファイバの他方の端面を視線E1方向から見た正面図である。
【
図7】非通常接続された2本の光ファイバの融着接続箇所を示す図である。(a)は、これら2本の光ファイバの側面図、(b)は、これら2本の光ファイバの一方の端面を視線E2方向から見た正面図、(c)は、これら2本の光ファイバの他方の端面を視線E1方向から見た正面図である。
【
図8】反転接続(軸L1に対する反転接続)された2本の光ファイバの融着接続箇所を示す図である。(a)は、これら2本の光ファイバの側面図、(b)は、これら2本の光ファイバの一方の端面を視線E2方向から見た正面図、(c)は、これら2本の光ファイバの他方の端面を視線E1方向から見た正面図である。
【
図9】反転接続(軸L2に対する反転接続)された2本の光ファイバの融着接続箇所を示す図である。(a)は、これら2本の光ファイバの側面図、(b)は、これら2本の光ファイバの一方の端面を視線E2方向から見た正面図、(c)は、これら2本の光ファイバの他方の端面を視線E1方向から見た正面図である。
【
図10】反転接続(軸L3に対する反転接続)された2本の光ファイバの融着接続箇所を示す図である。(a)は、これら2本の光ファイバの側面図、(b)は、これら2本の光ファイバの一方の端面を視線E2方向から見た正面図、(c)は、これら2本の光ファイバの他方の端面を視線E1方向から見た正面図である。
【
図11】反転接続(軸L4に対する反転接続)された2本の光ファイバの融着接続箇所を示す図である。(a)は、これら2本の光ファイバの側面図、(b)は、これら2本の光ファイバの一方の端面を視線E2方向から見た正面図、(c)は、これら2本の光ファイバの他方の端面を視線E1方向から見た正面図である。
【
図12】(a)は、
図4に示すように通常接続された2本の光ファイバの各々の透過光強度の方向依存性を示すグラフである。(b)は、
図8に示すように反転接続された2本の光ファイバの各々の透過光強度の方向依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(融着接続方法の流れ)
本発明の一実施形態に係る調心方法S10を含む融着接続方法S1の流れについて、
図1及び
図2を参照して説明する。融着接続方法S1は、断面における屈折率分布が異方性を有する2本の光ファイバOF1,OF2を、融着接続装置1を用いて融着する方法である。
図1は、融着接続方法S1の流れを示すフロー図であり、
図2は、融着接続方法S1に含まれる各工程における光ファイバOF1,OF2の状態を示す斜視図である。また、融着接続方法S1は、光ファイバOF1,OF2を融着することにより得られるファイバ接続体の製造方法と見做すこともできる。
【0026】
なお、本実施形態においては、光ファイバOF1,OF2として、クラッドと、クラッドの内部に形成された複数のコアと、クラッドの内部に形成された単一のマーカと、を有するマルチコアファイバを想定する。光ファイバOF1,OF2の具体例については、参照する図面を代えて後述する。
【0027】
融着接続方法S1は、
図1に示すように、準備工程S11と、測定工程S12と、調心工程S13と、突合工程S14と、融着工程S15と、含む。融着接続装置1は、
図2に示すように、光源11と、光検出器12と、加熱部13(本実施形態においては電極対)と、調心機構(不図示)と、制御部(不図示)と、を備える。本実施形態に係る調心方法S10は、これらの構成のうち、準備工程S11と、測定工程S12と、調心工程S13とにより構成される。
【0028】
本実施形態に係る調心方法S10を含む融着接続方法S1は、例えば、本実施形態に係る調心システム10を含む融着接続装置1を用いて実施される。融着接続装置1は、
図2に示すように、光源11と、光検出器12と、加熱部13と、調心機構(不図示)と、制御部15と、を備える。調心システム10は、これらの構成のうち、加熱部13以外の構成により構成される。なお、
図2においては、光源11と光検出器12との組み合わせを1組だけ例示しているが、融着接続装置1は、光源11と光検出器12との組み合わせを2組以上備えていてもよい。また、以下の説明においては、光ファイバOF1,OF2の軸方向をz軸方向とし、z軸方向に直交する2方向をx軸方向及びy軸方向とする。x軸方向及びy軸方向は、互いに直交する方向である。
【0029】
光源11は、光ファイバOF1,OF2に光を照射するための構成である。本実施形態においては、光源11として、LEDを用いる。LEDの代わりに、LDを光源11として用いてもよい。光検出器12は、光ファイバOF1,OF2を透過した光を検出するための構成である。本実施形態においては、光検出器12として、フォトダイオード又はフォトコンダクタを用いる。フォトダイオード又はフォトコンダクタの代わりに、カメラを光検出器12として用いてもよい。光検出器12は、光源11から照射され、光ファイバOF1,OF2を透過した光の光路上に配置される。
図2においては、光源11と光検出器12とが光ファイバOF1,OF2を介して対向する配置を例示しているが、これに限定されない。例えば、光源11と光ファイバOF1,OF2との間、及び/又は、光検出器12と光ファイバOF1,OF2との間にミラーなどの光路を折り曲げる光学素子が配置されている場合には、光源11と光検出器12とが光ファイバOF1,OF2を介して対向しない配置もあり得る。加熱部13は、融着する光ファイバOF1,光ファイバOF2の端面を加熱するための構成である。本実施形態においては、加熱部13として、2つの電極からなる電極対を用いている。電極対の代わりに、3つ以上の電極からなる電極群、或いは、CO
2レーザなどのレーザ装置を加熱部13として用いてもよい。調心機構は、光ファイバOF1,OF2を保持すると共に、光ファイバOF1,OF2のそれぞれを独立に調心(並進及び回転)させるための構成である。調心機構は、光ファイバOF1,OF2の両方を調心できるように構成されている必要はなく、光ファイバOF1,OF2の何れか一方のみを調心できるように構成されていてもよい。本実施形態においては、調心機構として、保持部材と並進機構と回転機構とを含む調心機構を用いる。保持部材は、調心機構から着脱可能であるため、調心機構とは独立した、融着接続装置1、調心システム10または後述する融着接続システムもしくは検査システムのひとつの構成要素と見做してもよい。保持部材は、光ファイバOF1,OF2を保持するための部材であって、光ファイバOF1,OF2の端部をチャッキング又は固定する機能を有する。本実施形態において、保持部材は、例えば、光ファイバOF1,OF2を収容するV溝が形成された板状部材と、V溝に収容された光ファイバOF1,OF2を押さえ付けることによって、V溝に収容された光ファイバOF1,OF2を板状部材に固定する押さえ部材により構成され得る。並進機構は、押さえ部材による固定が無効化された状態で保持部材に保持された光ファイバOF1,OF2を、それぞれを独立に、x軸方向、y軸方向、及びz軸方向に移動させるための機構である。回転機構は、押さえ部材による固定が無効化された状態で保持部材に保持された光ファイバOF1,OF2を、それぞれ独立に、z軸を回転軸として回転させるための機構である。なお、この保持部材は、調心後の光ファイバOF1,OF2を、その状態を保ったまま他の装置に移載する場合に必要になる構成であり、省略することが可能である。また、この保持部材に加え、或いは、この保持部材に代えて、調心動作中では固定が有効化された状態で用いられ、調心動作後では固定が無効化された状態で用いられる他の保持部材を用いてもよい。この場合、上述した並進機構は、光ファイバOF1,OF2を、当該他の保持部材ごと、z軸方向、y軸方向、及びz軸方向に平行移動させる。また、上述した回転機構は、光ファイバOF1,OF2を、当該他の保持部材ごと、z軸を回転軸として回転させる。制御部15は、光源11、光検出器12、加熱部13、及び調心機構を制御することによって、融着接続方法S1に含まれる各工程を実施するための構成である。本実施形態においては、制御部15として、マイクロコントローラを用いる。マイクロコントローラの代わりに、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large-scale Integrated Circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの集積回路、或いは、NC(Numerical Control)装置を制御部15として用いてもよい。NC装置は、機械学習器を用いたものであってもよい。
【0030】
なお、上述した光源11は、単一の光源または複数の光源として、上述した光検出器12は、単一の光検出器または複数の光検出器として、上述した加熱部13は、単一の加熱部または複数の加熱部として、上述した調心機構は、単一の調心機構または複数の調心機構として、上述した制御部15は、単一の制御部または複数の制御部として設けられていてもよい。この場合、上述した単一の制御部、または、複数の制御部の少なくとも1つが、準備工程S11の粗回転調心工程を、単一の光源、または、複数の光源の少なくとも1つ、及び、単一の光検出器、または、複数の光検出器の少なくとも1つ、及び、単一の調心機構、または、複数の調心機構の少なくとも1つを用いて実行する。また、上述した単一の制御部、または、複数の制御部の少なくとも1つが、測定工程S12を、単一の光源、または、複数の光源の少なくとも1つ、及び、単一の光検出器、または、複数の光検出器の少なくとも1つを用いて実行する。また、上述した単一の制御部、または、複数の制御部の少なくとも1つが、調心工程S13又は突合工程S14を、単一の調心機構、または、複数の調心機構の少なくとも1つを用いて実行する。また、上述した単一の制御部、または、複数の制御部の少なくとも1つが、融着工程S15を、単一の加熱部、または、複数の加熱部の少なくとも1つを用いて実行する。
【0031】
準備工程S11は、作業者が光ファイバOF1,OF2を融着接続装置1の調心機構にセットする工程である。光ファイバOF1,OF2は、それぞれ、融着接続装置1の調心機構によって、その中心軸がz軸と平行になるように保持される。準備工程S11を実施後の光ファイバOF1,OF2の状態を、
図2の(a)に示す。なお、準備工程S11において、清掃放電を実施してもよい。清掃放電は、光ファイバOF1,OF2の表面に付着したガラス屑等の異物を吹き飛ばしたり溶かしたりして消失させることによって、光ファイバOF1,OF2の表面を清浄化する工程である。清掃放電を実施する場合、光ファイバOF1,OF2のうち、後述する融着前測定工程S12において測定対象となる部位の表面を清浄化することが好ましい。光ファイバOF1,OF2の表面が清浄化されたか否かを光源11及び光検出器12を用いて確認する確認作業を更に実施するようにしてもよい。また、光ファイバOF1,OF2の表面が清浄化されたことが確認されるまで、清掃放電と確認作業とを繰り返し実施してもよい。
【0032】
準備工程S11が完了すると、測定工程S12が実施される。測定工程S12は、融着接続装置1が融着前の光ファイバOF1,OF2の中心位置又は外周位置、及び、コア位置又はマーカ位置を測定する工程である。なお、光ファイバOF1,OF2の中心位置又は外周位置の測定は、必要がなければ省略しても構わない。測定工程S12において、融着接続装置1の制御部は、融着接続装置1の調心機構を用いて、光ファイバOF1をz軸負方向に移動する。これにより、光ファイバOF1の端部を、光源11と光検出器12との間に位置させる。また、融着接続装置1の制御部は、融着接続装置1の調心機構を用いて、光ファイバOF2をz軸正方向に移動する。これにより、光ファイバOF2の端部を、光源11と光検出器12との間に位置させる。その結果、光ファイバOF1の端面と光ファイバOF2の端面との間隔dは、十分に小さくなる。間隔dは、下記の検出処理を実施できる程度に小さければよく、例えば、0<d≦200μmである。下記の検出処理を実施できるのであれば、間隔dは、200μmよりも大きくても構わない。本実施形態においては、間隔dを50μmとしている。なお、光ファイバOF1,OF2の端部には、上述した保持部材、例えば、ファイバホルダが予め取り付けられていてもよい。光ファイバOF1,OF2にマーカが含まれている場合、ファイバホルダは、ファイバホルダの基準面の位置と光ファイバのマーカの位置とが特定の関係を満たすように、光ファイバOF1,OF2に取り付けられる。
【0033】
そして、融着接続装置1の制御部は、光ファイバOF1,OF2の中心位置又は外周位置、及び、コア位置又はマーカ位置を、単一の測定方向又は360°未満の範囲に分布する複数の測定方向からの光学測定によって特定する。上述したように、光ファイバOF1,OF2の中心位置又は外周位置の測定は、必要がなければ省略しても構わない。測定方向が光ファイバOF1,OF2の端面に対向する単一の方向である構成(エンドビュー測定)を採用してもよいし、測定方向が光ファイバOF1,OF2の側面に対向する単一の又は複数の方向である形構成(サイドビュー測定)を採用してもよいが、本実施形態では、後者の構成を採用する。この場合、この光学測定は、例えば、測定方向と反対方向に配置された光源11から照射された光のうち、光ファイバOF1,OF2を透過した光を、測定方向に配置された光検出器12によって検出することによって実現される。ここで、光ファイバOF1,OF2を透過した光とは、光ファイバOF1,OF2の光源11側の側面から入射し、光ファイバOF1,OF2の光検出器12側の側面から出射した光のことを指す。この光学測定の具体的な方法としては、例えば、以下に説明する第1の方法と第2の方法とが挙げられる。
【0034】
第1の方法:(1)光源11から照射された光のうち、光ファイバOF1を透過した光の強度I1(以下、透過光強度I1と記載)、及び、(2)光源11から照射された光のうち、光ファイバOF2を透過した光の強度I2(以下、透過光強度I2と記載)を、光検出器12を用いて検出する。光検出器12としてフォトダイオード又はフォトコンダクタを用いる場合、この光学測定は、光ファイバOF1,OF2の透過光強度I1,I2を検出する検出処理により実現される。融着接続装置1の制御部は、この光学測定を、360°未満の範囲に分布する、予め定められた複数の測定方向の各々から行う。具体的には、この光学測定を、光ファイバOF1,OF2の中心軸を回転軸として、光源11及び光検出器12を回転させながら、又は、光ファイバOF1,OF2の中心軸を回転軸として、光ファイバOF1,OF2を回転させながら繰り返す。これにより、融着接続装置1の制御部は、光ファイバOF1の透過光強度I1の方向依存性を表すデータ、及び、光ファイバOF2の透過光強度I2の方向依存性を表すデータを得る。ここで、この光学測定により得られるデータは、例えば、フォトダイオード又はフォトコンダクタが検出した光の強度を表す輝度値である。また、この光学測定を繰り返すことにより得られる、透過光強度I1,I2の方向依存性を表すデータは、フォトダイオード又はフォトコンダクタが検出した光の強度を表す輝度値の一次元配列になる。また、光検出器12としてカメラを用いる場合、この光学測定は、光ファイバOF1,OF2を撮像する撮像処理、及び、この撮像処理により得られた画像から、光ファイバOF1,OF2の透過光強度I1,I2を導出する演算処理(例えば、積算処理、平均処理、又は加重平均処理)とにより実現される。融着接続装置1の制御部は、この光学測定を、複数の測定方向の各々から行う。具体的には、この光学測定を、光ファイバOF1,OF2の中心軸を回転軸として、光源11及び光検出器12を回転させながら、又は、光ファイバOF1,OF2の中心軸を回転軸として、光ファイバOF1,OF2を回転させながら繰り返す。これにより、融着接続装置1の制御部は、光ファイバOF1の透過光強度I1の方向依存性を表すデータ、及び、光ファイバOF2の透過光強度I2の方向依存性を表すデータを得る。ここで、各撮像処理により得られるデータは、例えば、カメラのイメージセンサを構成する各セルが検出した光の強度を表す輝度値の二次元配列(すなわち、画像)であり、各演算処理により得られるデータは、例えば、カメラのイメージセンサを構成する各セルが検出した強度の積算値、平均値、又は加重平均値(以下、「積算値等」と記載する)である。また、この光学測定(撮像処理及び演算処理)を繰り返すことにより得られる、透過光強度I1,I2の方向依存性を表すデータは、カメラのイメージセンサを構成する各セルが検出した強度の積算値等の一次元配列になる。そして、融着接続装置1の制御部は、光ファイバOF1の透過光強度I1の方向依存性(を表すデータ)に基づき、光ファイバOF1の中心位置又は外周位置、及び、コア位置又はマーカ位置を特定する。また、融着接続装置1の制御部は、光ファイバOF2の透過光強度I2の方向依存性(を表すデータ)に基づき、光ファイバOF2の中心位置又は外周位置、及び、コア位置又はマーカ位置を特定する。第1の方法を実施中の光ファイバOF1,OF2の状態を、
図2の(b)に示す。
【0035】
第2の方法:(1)光源11から照射された光のうち、光ファイバOF1を透過した光の2次元強度分布(以下、透過光強度分布I1’と記載)、及び、(2)光源11から照射された光のうち、光ファイバOF2を透過した光の2次元強度分布(以下、透過光強度分布I2’と記載)を、光検出器12を用いて検出する。この場合、光検出器12としては、例えば、カメラを用いる。融着接続装置1の制御部は、この光学測定を、予め定められた単一の測定方向から行う。これにより、融着接続装置1の制御部は、光ファイバOF1の透過光強度分布I1’を表す画像、及び、光ファイバOF2の透過光強度分布I2’を表す画像を得る。ここで、光ファイバOF1,OF2の透過光強度分布I1’,I2’を表す画像は、例えば、輝度値の2次元配列である。そして、融着接続装置1の制御部は、光ファイバOF1の透過光強度分布I1’を表す画像に基づき、光ファイバOF1の中心位置又は外周位置、及び、コア位置又はマーカ位置を特定する。また、融着接続装置1の制御部は、光ファイバOF2の透過光強度分布I2’を表す画像に基づき、光ファイバOF2の中心位置又は外周位置、及び、コア位置又はマーカ位置を特定する。第2の方法を実施中の光ファイバOF1,OF2の状態を、
図2の(c)に示す。
【0036】
第1の方法は、複数の測定方向から光学測定を行うので、第2の方法よりもコア又はマーカの位置をより精密に特定することができる点で、第2の方法よりも有利である。逆に、第2の方法は、単一の測定方向から光学測定を行うので、第1の方法よりも測定工程S12をより短時間で実施できる点で、第1の方法よりも有利である。
【0037】
測定工程S12が完了すると、調心工程S13が実施される。調心工程S13は、融着接続装置1が光ファイバOF1,OF2との調心を行う工程である。調心工程S13において、融着接続装置1の制御部は、測定工程S12にて特定した光ファイバOF1,OF2の中心位置又は外周位置が一致するように、光ファイバOF1,OF2の各々を、融着接続装置1の調心機構を用いてx軸方向及び/又はy軸方向に移動する(並進調心)。また、融着接続装置1の制御部は、測定工程S12にて特定した光ファイバOF1,OF2のコア位置が一致するように、又は、測定工程S12にて特定した光ファイバOF1,OF2のマーカ位置が予め定められた関係を満たすように、光ファイバOF1,OF2の各々を、融着接続装置1の調心機構を用いてz軸を回転軸として回転する(回転調心)。調心工程S13を実施中の光ファイバOF1,OF2の状態を、
図2の(d)に示す。なお、並進調心及び回転調心を実施する順序は任意である。並進調心を実施した後に回転調心を実施してもよいし、回転調心を実施した後に並進調心を実施してもよい。
【0038】
なお、本実施形態においては、測定工程S12を1回実施した後、調心工程S13を1回実施する構成を採用しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、測定工程S12と調心工程S13とを交互に繰り返し実行することによって、調心作業を段階的に進める構成を採用してもよい。
【0039】
調心工程S13が完了すると、突合工程S14が実施される。突合工程S14は、融着接続装置1が光ファイバOF1の端面と光ファイバOF2の端面とを突き合わせる工程である。突合工程S14において、融着接続装置1の制御部は、融着接続装置1の調心機構を用いて光ファイバOF1をz軸負方向にd/2(本実施形態においては5μm程度)移動する。また、融着接続装置1の制御部は、融着接続装置1の調心機構を用いて光ファイバOF2をz軸正方向にd/2(本実施形態においては5μm程度)移動する。突合工程S14を実施後の光ファイバOF1,OF2の状態を、
図2の(e)に示す。なお、突合工程S14において、前放電を実施してもよい。前放電は、光ファイバOF1,OF2の先端を軟化させるための工程である。前放電を実施したうえで光ファイバOF1,OF2の先端を突き合せることにより、光ファイバOF1,OF2の先端を確実に密着させることが可能になる。この場合、光ファイバOF1,OF2の移動量をd/2+εとすることが好ましい。εは、光ファイバOF1,OF2の先端をオーバーラップさせるための追加の移動量であり、例えば10μmである。これにより、光ファイバOF1,OF2の先端を更に確実に密着させることが可能になる。
【0040】
突合工程S14が完了すると、融着工程S15が実施される。融着工程S15は、融着接続装置1が光ファイバOF1と光ファイバOF2とを融着する工程である。融着工程S15において、融着接続装置1の制御部は、加熱部13を用いて(例えば、電極対を用いてアーク放電を生じさせ)、光ファイバOF1及び光ファイバOF2の端部を加熱溶融する。加熱溶融された光ファイバOF1及び光ファイバOF2の端部が自然冷却により固化すると、光ファイバOF1と光ファイバOF2とが融着される。融着工程S15を実施後の光ファイバOF1,OF2の状態を、
図2の(f)に示す。
【0041】
本実施形態に係る融着接続方法S1において特徴的な点は、準備工程S11において、作業者が、光ファイバOF1,OF2を、上述した単一の測定方向又は上述した複数の測定方向の何れかからの光学測定によって、回転調心において参照される特定の構造(本実施形態においては、何れかのコア、又は、マーカ)の位置を特定できるように、融着接続装置1の調心機構にセットする点にある。これにより、回転調心において参照する構造の位置の特定までに要する時間を短縮することができる。すなわち、測定工程S12の実施に要する時間を短縮することができる。その結果、融着接続方法S1の実施に要する時間を短縮することができる。なお、回転調心において参照される特定の構造は、回転調心の基準となる特定の構造と言い換えることもできる。
【0042】
なお、作業者は、光ファイバOF1,OF2における特定の構造の凡その位置を様々な方法により特定することができる。例えば、作業者は、顕微鏡を用いて光ファイバOF1,OF2の端面及び/又は側面を観察することによって、光ファイバOF1,OF2における特定の構造の凡その位置を特定することができる。また、光ファイバOF1,OF2の被覆の表面にマーク(例えば、記号や文字など)が形成されており、そのマークと特定の構造との位置関係が既知である場合、作業者は、そのマークを参照することによって、光ファイバOF1,OF2における特定の構造の凡その位置を特定することができる。また、光ファイバOF1,OF2のクラッドの断面がD字型になるように光ファイバOF1,OF2の側面に平坦部が形成されており、その平坦部と特定の構造との位置関係が既知である場合、作業者は、その平坦部を参照することによって、光ファイバOF1,OF2における特定の構造の凡その位置を特定することができる。また、光ファイバOF1,OF2の断面構造の異方性に起因して光ファイバOF1,OF2が特定の方向にカールするようになっており、カールする方向と特定の構造との位置関係が既知である場合、作業者は、カールする方向を参照することによって、光ファイバOF1,OF2における特定の構造の凡その位置を特定することができる。また、光ファイバOF1,OF2の端部にファイバホルダが取り付けられており、そのファイバホルダの基準面と特定の構造との位置関係が既知である場合、作業者は、ファイバホルダの基準面を参照することによって、光ファイバOF1,OF2における特定の構造の凡その位置を特定することができる。特定の構造の位置が揃うように、複数の光ファイバを束ねた光ファイバ束(例えば、マルチコアファイバリボン)から光ファイバOF1,OF2を単芯分離した場合、作業者は、光ファイバOF1,OF2における特定の構造の凡その一を特定することができる。特に、特定の構造の位置が外観から分かるように、連結材やシースにマークを形成した光ファイバ束では、特定作業が特に容易になる。このようにして、光ファイバOF1,OF2における特定の構造の凡その位置を特定することができれば、作業者は、光ファイバOF1,OF2を適切に融着接続装置1の調心機構にセットすることができる。なお、光ファイバOF1,OF2とで、特定の構造は同一の構造は同一の構造であることを要さず、また、特定の構造の凡その位置を特定する方法も同一の方法であることを要さない。例えば、光ファイバOF1がクラッドの内部にマーカが形成されたマルチコアファイバであり、光ファイバOF2は、被覆にマークが形成されたマルチコアファイバであるといったケースもあり得る。
【0043】
また、本実施形態においては、作業者が光ファイバOF1,OF2を融着接続装置1の調心機構にセットする構成を採用しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、装置が光ファイバOF1,OF2を融着接続装置1の調心機構にセットする構成を採用することも可能である。上述したように光ファイバOF1,OF2における特定の構造の凡その位置を特定し、ロボット等の装置が、その作業者による操作に従って光ファイバOF1,OF2を融着接続装置1の調心機構にセットしてもよいし、装置が、作業者と同様に光ファイバOF1,OF2における特定の構造の凡その位置を特定し、その装置が、自律的に光ファイバOF1,OF2を融着接続装置1の調心機構にセットしてもよい。このように、準備工程S11の動作主体は、作業者であってもよいし、装置であってもよい。また、この装置は、融着接続装置1に組み込まれた機構(融着接続装置1の一部分)であってもよいし、融着接続装置1とは別体の機構(例えば、ロボット)であってもよい。
【0044】
また、融着接続装置1とは別の粗調心用装置を利用して光ファイバOF1,OF2を融着接続装置1の調心機構にセットする構成を採用することも可能である。この場合、まず、作業者が、粗調心用装置の保持部材(例えば、ファイバホルダ)に光ファイバOF1,OF2をセットする。次に、上述した測定方向からの光学測定によって特定の構造(本実施形態においては、何れかのコア、又は、マーカ)の位置を特定できるように、粗調心装置の回転機構が光ファイバOF1,OF2を保持部材上で回転させたうえで、光ファイバOF1,OF2を保持部材上に固定する。このようなラフな回転調心を行うために、粗調心用装置の装置は、例えば、上述した融着接続装置1が備えている光源、光検出器、調心機構(回転機構等)、及び制御部と同様の光源、光検出器、調心機構(回転機構等)、及び制御部を有してもよい。次に、作業者が、光ファイバOF1,OF2を保持部材ごと融着接続装置1に移載する。ここで、保持部材の融着接続装置1へのセットの仕方を、保持部材の粗調心用装置へのセットの仕方と一致させることで、光ファイバOF1,OF2の粗調心の結果を融着接続装置1上で再現することができる。なお、光ファイバOF1,OF2の粗調心装置から融着接続装置1への移載は、上述した作業者の代わりに、ロボット等の装置が行ってもよい。
【0045】
本実施形態においては、光検出器12が測定方向に配置され、光源11が測定方向の反対方向に配置される。この場合、
図2の(a)に示すように、準備工程S11において、作業者は、光ファイバOF1をその(光ファイバOF1の)中心軸を通る仮想平面P1によって光源11側と光検出器12側とに二分したときに、光ファイバOF1の特定の構造(何れかのコア又はマーカ)が光源11側に位置するように、光ファイバOF1を融着接続装置1の調心機構にセットする。ここで、仮想平面P1は、例えば、光ファイバOF1の中心軸を通る平面のうち、初期位置にある光源11と光検出器12とを結ぶ仮想直線と直交する平面である。また、準備工程S11において、作業者は、光ファイバOF2をその(光ファイバOF2の)中心軸を通る仮想平面P2によって光源11側と光検出器12側とに二分したときに、光ファイバOF2の特定の構造(何れかのコア又はマーカ)が光源11側に位置するように、光ファイバOF2を融着接続装置1の調心機構にセットする。ここで、仮想平面P2は、例えば、光ファイバOF2の中心軸を通る平面のうち、初期位置にある光源11と光検出器12とを結ぶ仮想直線と直交する平面である。
【0046】
これにより、測定工程S12において上述した第1の方法を採用する場合、透過光強度I1,I2の方向依存性を得るために、光源11及び光検出器12、又は、光ファイバOF1,OF2を回転する回転角を、180°以下に抑えることができる。その結果、測定工程S12の実施に要する時間を、光ファイバOF1,OF2を360°回転させて全方向から光学測定を行う場合と比べて、1/2以下に短縮することができる。また、測定工程S12において上述した第2の方法を採用する場合、光ファイバOF1,OF2の透過光強度分布I1’,I2’を表す画像を得るために、光源11及び光検出器12、又は、光ファイバOF1,OF2を反転させる必要がなくなる。したがって、測定工程S12の実施に要する時間を、光ファイバOF1,OF2を反転させて2方向から光学測定を行う場合と比べて、1/2に短縮することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、測定工程S12において、光ファイバOF1を透過した光と光ファイバOF2を透過した光とを、同一の光源11及び同一の光検出器12を用いて測定する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。例えば、測定工程S12において、光ファイバOF1を透過した光を第1の光源及び第1の光検出器を用いて測定し、光ファイバOF2を透過した光を第1の光源とは異なる第2の光源及び第1の光検出器とは異なる第2の光検出器を用いて測定してもよい。この場合、準備工程S11において、光ファイバOF1は、第1の光検出器が存在する方向からの光学測定によって、回転調心において参照される特定の構造の位置を特定できるように、融着接続装置1の調心機構にセットされる。また、光ファイバOF2は、第2の光検出器が存在する方向からの光学測定によって、回転調心において参照される特定の構造の位置を特定できるように、融着接続装置1の調心機構にセットされる。
【0048】
また、本実施形態では、測定工程S12において2本の光ファイバOF1,OF2におけるコア位置又はマーカ位置を特定し、調心工程S13において2本の光ファイバOF1,OF2を回転させる回転調心を行う構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。例えば、光ファイバOF1におけるコア位置又はマーカ位置が既知の場合には、測定工程S12においてファイバOF2におけるコア位置又はマーカ位置を特定し、調心工程S13において光ファイバOF2を回転させる回転調心を行う構成を採用してもよい。同様に、光ファイバOF2におけるコア位置又はマーカ位置が既知の場合には、測定工程S12においてファイバOF1におけるコア位置又はマーカ位置を特定し、調心工程S13において光ファイバOF1を回転させる回転調心を行う構成を採用してもよい。これらの場合、光ファイバOF1,OF2の何れか一方に対する光学測定及び/又は回転調心を省略することができるので、測定工程S12及び/又は調心工程S13の実施に要する時間を短縮し得る。
【0049】
また、本実施形態においては、光ファイバOF1,OF2として、クラッドの内部にマーカが形成されたマルチコアファイバを想定し、何れかのコアの位置又はマーカの位置を参照して回転調心を実施する構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、光ファイバOF1,OF2として、クラッドの断面がD字型になるよう、クラッドの外周部に平坦部が形成されたマルチコアファイバを想定し、この平坦部の位置を参照して回転調心を実施する構成を採用してもよい。この場合、この平坦部が特許請求の範囲における「特定の構造」に該当し、測定工程S12においては、この平坦部の位置を測定することになる。
【0050】
また、光ファイバOF1,OF2として、コアと、複数の応力付与部と、を有する偏波保持ファイバを想定し、これらの応力部付与部の何れかの位置を参照して回転調心を実施する構成を採用してもよい。この場合、この応力付与部が特許請求の範囲における「特定の構造」に該当し、測定工程S12においては、この応力付与部の位置を測定することになる。また、光ファイバOF1,OF2として、コアと、複数の高屈折率ロッドと、を有するフォトニックバンドギャップファイバを想定し、これらの高屈折率ロッドの何れかの位置を参照して回転調心を実施する構成を採用してもよい。この場合、この高屈折率ロッドが特許請求の範囲における「特定の構造」に該当し、測定工程S12においては、この高屈折率ロッドの位置を測定することになる。また、光ファイバOF1,OF2として、コアと、複数の空孔と、を有する空孔アシスト型光ファイバを想定し、これらの空孔の何れかの位置を参照して回転調心を実施する構成を採用してもよい。この場合、この空孔が特許請求の範囲における「特定の構造」に該当し、測定工程S12においては、この空孔の位置を測定することになる。
【0051】
(光ファイバの具体例)
光ファイバOF1,OF2の具体例について、
図3を参照して説明する。本具体例に係る光ファイバOF1,OF2は、マルチコアファイバMFである。
図3において、(a)は、マルチコアファイバMFの側面図であり、(b)は、マルチコアファイバMFの一方の端面σ1を視線E1方向から見た正面図であり、(c)は、マルチコアファイバMFの他方の端面σ2を視線E2方向から見た正面図である。
【0052】
マルチコアファイバMFは、n個(nは2以上の自然数)のコアa1~anと、クラッドbと、を備えている。クラッドbは、円柱状の部材である。クラッドbは、例えば、石英ガラスにより構成される。各コアai(iは1以上n以下の自然数)は、クラッドbの内部に設けられた、クラッドbよりも屈折率の高い、クラッドbと同一方向に延在する円柱状の領域である。各コアaiは、例えば、ゲルマニウムなどのアップドーパントが添加された石英ガラスにより構成さる。なお、クラッドbは、柱状であればよく、その断面形状は、任意である。クラッドbの断面形状は、例えば、四角形や六角形などの多角形状であってもよいし、樽型であってもよい。
【0053】
端面σ1,σ2において、コアa1~anは、マルチコアファイバMFの中心軸L0と直交する軸L1に対して線対称に配置されている。また、端面σ1,σ2において、コアa1~anは、軸L1を避けるように配置されている。換言すれば、端面σ1,σ2において、コアa1~anは、軸L1以外の位置に配置されている。
【0054】
マルチコアファイバMFは、更に、マーカcを備えている。マーカcは、クラッドbの内部に設けられた、クラッドbとは屈折率の異なる、クラッドbと同一方向に延在する柱状の領域である。マーカcの断面形状は任意であり、例えば、円形状、三角形状、四角形状などである。マーカcは、例えば、フッ素やホウ素などのダウンドーパントが添加された石英ガラスにより構成される。この場合、マーカcの屈折率は、クラッドbの屈折率よりも低くなる。マーカcは、或いは、ゲルマニウム、アルミニウム、リン、塩素などのアップドーパントが添加された石英ガラスにより構成される。この場合、マーカcの屈折率は、クラッドbの屈折率よりも高くなる。マーカcの形成には、例えば、孔開法やスタック&ドロー法などを用いればよい。マーカcの外径は、通常、コアaiの外径よりも小さい。
【0055】
端面σ1,σ2において、マーカcの中心は、軸L1を避けるように配置されている。換言すれば、端面σ1,σ2において、マーカcの中心(幾何中心)は、軸L1以外の位置に配置されている。なお、マーカcは、その中心が軸L1を避けるように配置されていればよく、マーカcの一部が軸L1と重なっていても構わない。
【0056】
なお、
図3に例示したマルチコアファイバMFのコアa1~a4は、軸L2に対して線対象に配置されていると見做すこともできるし、軸L3に対して線対称に配置されていると見做すこともできるし、軸L4に対して線対称に配置されていると見做すこともできる。ここで、軸L2は、中心軸L0及び軸L1の双方に直交する軸である。また、軸L3,L4は、中心軸L0に直交し、且つ、軸L1との成す角が45度になる軸である。
【0057】
(光ファイバの接続箇所の具体例)
光ファイバOF1,OF2の接続箇所の具体例について、
図4~
図6を参照して説明する。ここでは、光ファイバOF1,OF2がマルチコアファイバMFである場合の光ファイバOF1,OF2の接続形態について説明する。
【0058】
光ファイバOF1,OF2の接続態様には、通常接続、非通常接続、及び反転接続が存在する。
【0059】
図4は、通常接続の接続箇所を示す図であり、(a)は、光ファイバOF1,OF2の側面図、(b)は、光ファイバOF1の端面σ2を視線E2方向から見た正面図、(c)は、光ファイバOF2の端面σ1を視線E1方向から見た正面図である。通常接続の接続箇所は、光ファイバOF1の端面σ2と光ファイバOF2の端面σ1とを接続する接続箇所、又は、光ファイバOF1の端面σ1と光ファイバOF2の端面σ2とを接続する接続箇所である(
図4は前者)。通常接続の接続箇所は、以下の条件を満たす。
【0060】
条件1:光ファイバOF2の端面σ1のコアa1~anの各々は、光ファイバOF1の端面σ2のコアa1~anの何れかと重なる。具体的には、(1)光ファイバOF2の端面σ1のコアa1は、光ファイバOF1の端面σ2のコアa1と重なり、(2)光ファイバOF2の端面σ1のコアa2は、光ファイバOF1の端面σ2のコアa2と重なり、(3)光ファイバOF2の端面σ1のコアa3は、光ファイバOF1の端面σ2のコアa3と重なり、(4)光ファイバOF2の端面σ1のコアa4は、光ファイバOF1の端面σ2のコアa4と重なる。
【0061】
条件2a:光ファイバOF2の端面σ1のマーカcは、光ファイバOF1の端面σ2のマーカcと重なる。
【0062】
通常接続は、一言で言えば、コアa1~anが光学結合し、且つ、マーカcが連通する接続形態である。
【0063】
なお、光ファイバOF1,OF2が
図3に例示したマルチコアファイバMFである場合、光ファイバOF1の端面σ2と光ファイバOF2の端面σ1とを接続する接続態様として、通常接続の他に、
図5に示す接続態様、
図6に示す接続態様、
図7に示す接続態様が考えられる。
【0064】
図5は、光ファイバOF1のコアa1が光ファイバOF2のコアa2に接続される接続態様を示す。
図5において、(a)は、光ファイバOF1,OF2の側面図、(b)は、光ファイバOF1の端面σ2を視線E2方向から見た正面図、(c)は、光ファイバOF2の端面σ1を視線E1方向から見た正面図である。
【0065】
図6は、光ファイバOF1のコアa1が光ファイバOF2のコアa3に接続される接続態様を示す。
図6において、(a)は、光ファイバOF1,OF2の側面図、(b)は、光ファイバOF1の端面σ2を視線E2方向から見た正面図、(c)は、光ファイバOF2の端面σ1を視線E1方向から見た正面図である。
【0066】
図7は、光ファイバOF1のコアa1が光ファイバOF2のコアa4に接続される接続態様を示す。
図7において、(a)は、光ファイバOF1,OF2の側面図、(b)は、光ファイバOF1の端面σ2を視線E2方向から見た正面図、(c)は、光ファイバOF2の端面σ1を視線E1方向から見た正面図である。
【0067】
図5~
図7に示す接続態様は、条件1を満たすが、条件2aを満たさない。このため、
図5~
図7に示す接続態様は、通常接続と呼ばずに、非通常接続と呼ぶ。
【0068】
図8は、反転接続の接続箇所を示す図であり、(a)は、光ファイバOF1,OF2の側面図、(b)は、光ファイバOF1の端面σ2を視線E2方向から見た正面図、(c)は、光ファイバOF2の端面σ2を視線E1方向から見た正面図である。反転接続の接続箇所は、光ファイバOF1の端面σ2と光ファイバOF2の端面σ2とを接続する接続箇所、又は、光ファイバOF1の端面σ1と光ファイバOF2の端面σ1とを接続する接続箇所である(
図5は前者)。反転接続の接続箇所は、以下の条件を満たす。
【0069】
条件1:光ファイバOF2の端面σ1のコアa1~an各々は、光ファイバOF1の端面σ2のコアa1~anの何れかと重なる。具体的には、(1)光ファイバOF2の端面σ2のコアa1は、光ファイバOF1の端面σ2のコアa4と重なり、(2)光ファイバOF2の端面σ2のコアa2は、光ファイバOF1の端面σ2のコアa3と重なり、(3)光ファイバOF2の端面σ2のコアa3は、光ファイバOF1の端面σ2のコアa2と重なり、(4)光ファイバOF2の端面σ2のコアa4は、光ファイバOF1の端面σ2のコアa1と重なる。
【0070】
条件2b:光ファイバOF2の端面σ2のマーカcは、光ファイバOF1の端面σ2において軸L1に対して光ファイバOF1のマーカcと線対称な位置xと重なる。
【0071】
反転接続は、一言で言えば、コアa1~anが光学結合し、且つ、マーカcが連通しない接続形態である。
【0072】
なお、光ファイバOF1,OF2が
図3に例示したマルチコアファイバMFである場合、光ファイバOF1の端面σ2と光ファイバOF2の端面σ2とを接続する接続態様として、
図8に示す反転接続の他に、
図9に示す接続態様、
図10に示す接続態様、
図11に示す接続態様が考えられる。
【0073】
図9は、光ファイバOF1のコアa1が光ファイバOF2のコアa3に接続される接続態様を示す。
図9において、(a)は、光ファイバOF1,OF2の側面図、(b)は、光ファイバOF1の端面σ2を視線E2方向から見た正面図、(c)は、光ファイバOF2の端面σ1を視線E1方向から見た正面図である。
図9に示す接続態様は、条件1を満たす共に、軸L1を軸L3と読み替えたうえで条件2bを満たす。このため、
図9に示す接続態様は、軸L3に対する反転接続と呼ぶ。
【0074】
図10は、光ファイバOF1のコアa1が光ファイバOF2のコアa2に接続される接続態様を示す。
図10において、(a)は、光ファイバOF1,OF2の側面図、(b)は、光ファイバOF1の端面σ2を視線E2方向から見た正面図、(c)は、光ファイバOF2の端面σ1を視線E1方向から見た正面図である。
図10に示す接続態様は、条件1を満たす共に、軸L1を軸L2と読み替えたうえで条件2bを満たす。このため、
図10に示す接続態様は、軸L2に対する反転接続と呼ぶ。
【0075】
図11は、光ファイバOF1のコアa1が光ファイバOF2のコアa1に接続される接続態様を示す。
図11において、(a)は、光ファイバOF1,OF2の側面図、(b)は、光ファイバOF1の端面σ2を視線E2方向から見た正面図、(c)は、光ファイバOF2の端面σ1を視線E1方向から見た正面図である。
図11に示す接続態様は、条件1を満たす共に、軸L1を軸L4と読み替えたうえで条件2bを満たす。このため、
図11に示す接続態様は、軸L4に対する反転接続と呼ぶ。
【0076】
(光学測定を行う方向が分布する範囲)
測定工程S12において上述した第1の方法を採用する場合、測定方向が分布する範囲を小さくするほど、測定工程S12の実施に要する時間を短くすることができる。例えば、コアの配置がn回対称性を有するマルチコアファイバの場合、光学測定を行う測定方向が分布する範囲を、kをn未満の自然数の何れかとして、k×360°/n以下の範囲に限定する(設定する)ことができる。その結果、k個のコアの光学測定に要する時間を、360°スキャンする場合のk/n以下に短縮することができる。或いは、光学測定を行う測定方向が分布する範囲を、kを(2/3)×n未満の自然数の何れかとして、(3/2)×k×360°/n以下の範囲に限定する(設定する)ことができる。その結果、k+1個のコアの光学測定に要する時間を、(2/3)×k/n以下に短縮することができる。いずれの場合も、kが小さいほど、光学測定に要する時間が短くなる。なぜなら、光学測定を行う方向の範囲が小さくなるからである。一方、kが大きいほど、回転調心の精度が高くなる。なぜなら、より多くのコアの位置を測定することができるので、或るコアの偏心により他のコアの位置がずれてしまうような場合でも、偏心したコアや位置ずれが生じたコア以外のコアの位置を参照して回転調心を行うことができるからである。なお、光学測定を行う測定方向が分布する範囲の上限値を(3/2)×k×360°/nとする代わりに、その範囲の上限値をk×360°/n+(透過光強度I1,I2の方向依存性を表すグラフにおいてコアに対応するピークの半値幅)としてもよい。この場合でも、k+1個のコアの位置を判定することができる。応力付与部の配置がn回対称性を有する偏波保持ファイバ、高屈折率ロッドの配置がn回対称性を有するフォトニックバンドギャップファイバ、空孔の配置がn回対称性を有する空孔アシスト型光ファイバについても、同様のことが言える。
【0077】
以下、光ファイバOF1,OF2が
図3に示すマルチコアファイバMF、すなわち、コア配置が4回対称性を有するマルチコアファイバMFである場合を例に、この点について説明する。
【0078】
例えば、光ファイバOF1,OF2の融着接続が通常接続である場合、測定工程S12において得られる光ファイバOF1,OF2の透過光強度I1,I2の方向依存性は、例えば、
図12の(a)に示すようになる。また、光ファイバOF1,OF2の融着接続が軸L1に対する反転接続である場合、測定工程S12において得られる光ファイバOF1,OF2の透過光強度I1,I2の方向依存性は、例えば、
図12の(b)に示すようになる。
【0079】
これらの透過光強度I1,I2の方向依存性において、ピークが出現する方向は、光源11、コアai、光検出器12が一列に並ぶ方向のうち、コアaiが光源11に近い方の方向に対応する。また、透過光強度I1,I2の方向依存性において、ディップが出現する方向は、光源11、マーカc、光検出器12が一列に並ぶ方向のうち、マーカcが光源11に近い方向に対応する。このため、融着接続装置1の制御部は、透過光強度I1,I2の方向依存性においてピークが出現する方向から、光ファイバOF1,OF2のコア位置を特定することができる。また、透過光強度I1,I2の方向依存性においてディップが存在する方向から、光ファイバOF1,OF2のマーカ位置を特定することができる。
【0080】
したがって、測定工程S12において1つのコアの位置を特定する場合、そのコアに対応するピークが出現する方向(光ファイバOF1,OF2の中心軸から見てそのコアが存在する方向)を含む、広さが90°=1×360°/4以下の範囲Rcについて光学測定を行えば、そのコアの位置を特定することができる。なお、範囲Rcの広さの下限は、任意であるが、例えば、そのコアに対応するピークの半値幅に応じて決めればよく、例えば、15°である。
【0081】
また、測定工程S12において2つのコアの位置を特定する場合、それら2つのコアに対応するピークが出現する2つの方向を含む、広さが120°=(3/2)×1×360°/4以下の範囲Rcについて光学測定を行えば、それら2つのコアの位置を特定することができる。或いは、それら2つのコアに対応するピークが出現する2つの方向を含む、広さが180°=2×360°/4以下の範囲Rcについて光学測定を行えば、それら2つのコアの位置を特定することができる。2つのコアの位置を特定できる点は同じであっても、前者の構成を採用する方が、光学測定を行う範囲が小さくなるので、より高速な光学測定が可能である。逆に、後者の構成を採用する方が、光学測定を行う範囲が広くなるので、より正確な光学測定が可能である。なお、範囲Rcの広さの下限は、90°(一般には、(k-1)×360°)とするか、或いは、コアに対応するピークの半値幅に応じて決めればよく、例えば、90°+15°(一般には、(k-1)×360°/n+15°)とすればよい。
【0082】
なお、測定工程S12においてマーカcの位置を特定する場合、マーカcに対応するディップが出現する方向(光ファイバOF1,OF2の中心軸から見てマーカcが存在する方向)を含む、kをn未満の自然数の何れかとして、k×360°/n以下の範囲Rm、又は、kを(2/3)×n未満の自然数の何れかとして、(3/2)×k×360°/n以下の範囲Rmについて光学測定を行えば、k個のコア、又は、k+1個のコアに加えて、マーカcの位置を特定することができる。なお、範囲Rmの広さの下限は、任意であるが、例えば、(k-1)×360°とするか、或いは、マーカcに対応するピークの半値幅に応じて決めればよく、例えば、(k-1)×360°/n+15°とすればよい。
【0083】
なお、融着接続装置1の制御部は、対称性の次数nを示すユーザ操作を検出するように構成されていてもよい。この場合、融着接続装置1の制御部は、検出したユーザ操作に基づいて対称性の次数nを特定すると共に、特定した次数に基づいて光学測定を行う範囲を上記のように設定する。
【0084】
(マーカ位置を参照した回転調心)
光ファイバOF1,OF2がマルチコアファイバMFである場合、融着接続装置1は、光ファイバOF1のコアa1~anの各々が光ファイバOF2のコアa1~anの何れと光学結合するように、光ファイバOF1,OF2を融着接続する。このときに生じ得る光ファイバOF1のマーカcと光ファイバOF2のマーカcとの関係は、複数通り存在する。例えば、光ファイバOF1,OF2が
図3に例示したマルチコアファイバMFである場合、光ファイバOF1のコアa1~anの各々が光ファイバOF2のコアa1~anの何れと光学結合するときに生じ得る、光ファイバOF1のマーカcと光ファイバOF2のマーカcとの位置関係は、以下のように8通り存在する。
【0085】
関係1:
図4に示す接続態様(通常接続)において生じる光ファイバOF1のマーカcと光ファイバOF2のマーカcの位置関係。
【0086】
関係2:
図5に示す接続態様(非通常接続)において生じる光ファイバOF1のマーカcと光ファイバOF2のマーカcの位置関係。
【0087】
関係3:
図6に示す接続態様(非通常接続)において生じる光ファイバOF1のマーカcと光ファイバOF2のマーカcの位置関係。
【0088】
関係4:
図7に示す接続態様(非通常接続)において生じる光ファイバOF1のマーカcと光ファイバOF2のマーカcの位置関係。
【0089】
関係5:
図8に示す接続態様(軸L1に対する反転接続)において生じる光ファイバOF1のマーカcと光ファイバOF2のマーカcの位置関係。
【0090】
関係6:
図9に示す接続態様(軸L3に対する反転接続)において生じる光ファイバOF1のマーカcと光ファイバOF2のマーカcの位置関係。
【0091】
関係7:
図10に示す接続態様(軸L2に対する反転接続)において生じる光ファイバOF1のマーカcと光ファイバOF2のマーカcの位置関係。
【0092】
関係8:
図11に示す接続態様(軸L4に対する反転接続)において生じる光ファイバOF1のマーカcと光ファイバOF2のマーカcの位置関係。
【0093】
マーカ位置の関係が予め定められている場合、融着接続装置1の制御部は、(1)光ファイバOF1,OF2のマーカ位置の関係が予め定められた関係を満たすよう、マーカ位置を参照した光ファイバOF1,OF2の回転調心を行い、その後、(2)光ファイバOF1,OF2のコア位置が合致するよう、コア位置を参照した光ファイバOF1,OF2の回転調心を行う。ここで、光ファイバOF1,OF2がn回対称性を有するマルチコアファイバである場合、マーカ位置を参照した光ファイバOF1,OF2の回転調心は、誤差が360°/n以下になるように行うとよい。また、準備工程において、この誤差が360°/n以下になるように光ファイバOF1,OF2にセットできるのであれば、マーカ位置を参照した回転調心を省略してもよい。
【0094】
なお、融着接続装置1の制御部は、上述した関係1~8から2つ以上の関係を選択し、光ファイバOF1,OF2のマーカ位置の関係が選択した2つ以上の関係を何れかを満たすよう、マーカ位置を参照した光ファイバOF1,OF2の回転調心を行ってもよい。反転接続に該当する関係5~8のなかで、光ファイバOF1,OF2のマーカが特に接近する関係は、それぞれのマーカが2つのコアに挟まれて近接する関係5(
図8)と、それぞれのマーカが1つのコアを挟んで近接する関係8(
図11)とである。どちらの関係を満たすときに透過光I1,I2を測定する測定方向が分布する範囲を最小化できるかは、マーカcの位置による。したがって、通常接続に該当する関係と反転接続に該当する関係とを一つずつ選択する場合、関係1(
図4)と関係5(
図8)とを選択するか、又は、関係1(
図4)と関係8(
図11)とを選択することが好ましい。どちらを選択した場合であっても、それぞれのマーカが近接しているので、透過光I1,I2を測定する方向の範囲を十分に小さくすることができ、その結果、マーカ位置の測定が容易になる。なお、関係1と関係5とを選択する方が、関係1と関係8とを選択するよりも好ましい。なお、関係5を選択した場合、光ファイバOF1のマーカcとOF2のマーカcとが2つのコアに挟まれて近接するので、サイドビュースキャンの範囲をこれら2つのコア間に限定しても、光ファイバOF1のマーカc及びOF2のマーカcの両方の位置を測定することができる。一方、関係8を選択した場合、光ファイバOF1のマーカcとOF2のマーカcとが1つのコアを挟んで近接するので、サイドビュースキャンの範囲をそのコアとそのコアに隣接するコアの間に限定すると、光ファイバOF1のマーカc及びOF2のマーカcの一方の位置しか測定することができない。このため、後者を選択した場合、光ファイバOF1のマーカc及びOF2のマーカcの両方の位置を測定しようと思えば、サイドビュースキャンの範囲を広げる必要があり、その結果、前者を選択する場合よりもサイドビュースキャンに要する時間が長くなる。したがって、関係1と関係5とを選択する方が、関係1と関係8とを選択するよりも好ましい。
【0095】
(融着接続システム及び調心システム)
融着接続システムは、融着接続方法S1を構成する各工程(但し作業者が実施する工程を除く)を実施する単一の又は複数の装置を含むシステムである。それぞれの装置は、単一の工程を実施する構成されていてもよいし、複数の工程を実施されるように構成されていてもよい。融着接続システムが単一の装置で構成されている場合、融着接続システムは、上述した融着接続装置1の構成と同じ構成を備え得る。融着接続システムが複数の装置により構成されている場合、融着接続システムは、例えば以下のように構成され得る。なお、以下では、準備工程S11を、(1)単一の又は複数の測定方向からの光学測定によって光ファイバOF1,OF2の特定の構造の位置を特定できるように、光ファイバOF1,OF2の粗回転調心を行う粗回転調心工程と、(2)粗回転調心された光ファイバOF1,OF2を調心機構にセットするセット工程とに分割して考える。
【0096】
例えば、融着接続システムは、準備工程S11の粗回転調心工程を実施する第1の装置と、測定工程S12、調心工程S13、突合工程S14、及び融着工程S15を実施する第2の装置と、を含むシステムであり得る。この場合、第1の装置は、例えば、上述した光源、光検出器、調心機構(回転機構等)、及び制御部により構成され得る。この場合、第1の装置の制御部は、準備工程S11の粗回転調心工程を、上述した光源、光検出器、調心機構(回転機構等)を用いて実行し得る。また、第2の装置は、例えば、上述した光源、光検出器、調心機構(回転機構及び並進機構等)、加熱部、及び制御部により構成され得る。この場合、第2の装置の制御部は、測定工程S12、調心工程S13、突合工程S14、及び融着工程S15を、上述した光源、光検出器、調心機構(回転機構及び並進機構等)、及び加熱部を用いて実行し得る。
【0097】
この場合、まず、第1の装置において、第1の装置の制御部が、第1の装置の調心機構を用いて、粗回転調心工程を実施する。次に、作業者が、セット工程を実施する。セット工程においては、粗く回転調心された光ファイバOF1,OF2が、それぞれ、保持部材(例えば、第1の装置及び第2の装置に着脱可能なファイバホルダ)に固定された状態で第1の装置から第2の装置へと移載される。ここで、保持部材の第2の装置の調心機構へのセット仕方を、保持部材の第1の装置の調心機構へのセットの仕方と一致させることで、粗調心の結果が保たれる。次に、第2の装置において、第2の装置の制御部が、第2の装置の光源、光検出器、調心機構、及び加熱部を用いて、測定工程S12、調心工程S13、突合工程S14、融着工程S15を実施する。なお、セット工程は、作業者が行うのではなく、ロボットなどの移載装置が行ってもよい。この場合、ロボットなどの移載装置も、融着接続システムの構成要素としてもよい。なお、粗回転調心は、第1の装置が自動的に行うのではなく、作業者が第1の装置の調心機構を手動操作して行ってもよい。この場合、第1の装置は、必ずしも光源、光検出器を有している必要はなく、例えば、調心機構及び制御部により構成してもよい。
【0098】
なお、測定工程S12を、第2の装置ではなく、第1の装置が行うようにしてもよい。この場合、融着接続システムは、準備工程S11の粗回転調心工程及び測定工程S12を実施する第1の装置と、調心工程S13、突合工程S14、及び融着工程S15を実施する第2の装置と、を含むシステムとなる。この場合、第1の装置は、例えば、上述した光源、光検出器、調心機構(回転機構等)、及び制御部により構成され得る。この場合、第1の装置の制御部は、準備工程S11の粗回転調心工程及び測定工程S12を、上述した光源、光検出器、調心機構(回転機構等)を用いて実行する。また、第2の装置は、例えば、上述した調心機構(回転機構及び並進機構等)、加熱部、及び制御部により構成され得る。この場合、第2の装置の制御部は、調心工程S13、突合工程S14、及び融着工程S15を、上述した調心機構(回転機構及び並進機構等)、及び加熱部を用いて実行し得る。
【0099】
また、測定工程S12及び調心工程S13を、第2の装置ではなく、第1の装置が行うようにしてもよい。この場合、融着接続システムは、準備工程S11の粗回転調心工程、測定工程S12、及び調心工程S13を実施する第1の装置と、突合工程S14、及び融着工程S15を実施する第2の装置と、を含むシステムとなる。この場合、第1の装置は、例えば、上述した光源、光検出器、調心機構(並進機構及び回転機構等)、及び制御部により構成され得る。この場合、第1の装置の制御部は、準備工程S11の粗回転調心工程、測定工程S12、調心工程S13を、上述した光源、光検出器、調心機構(並進機構及び回転機構等)を用いて実行する。また、第2の装置は、例えば、上述した調心機構(並進機構等)、加熱部、及び制御部により構成され得る。この場合、第2の装置の制御部は、突合工程S14、及び融着工程S15を、上述した調心機構(並進機構等)、及び加熱部を用いて実行し得る。
【0100】
或いは、融着接続システムは、準備工程S11の粗回転調心工程を実施する第1の装置と、測定工程S12を実施する第2の装置と、調心工程S13、突合工程S14、及び融着工程S15を実施する第3の装置と、を含むシステムであり得る。この場合、第1の装置は、例えば、上述した光源、光検出器、調心機構(回転機構等)、及び制御部により構成され得る。この場合、第1の装置の制御部は、準備工程S11の粗回転調心工程を、上述した光源、光検出器、調心機構(回転機構等)を用いて実行し得る。また、第2の装置は、例えば、上述した光源、光検出器、調心機構(回転機構等)、及び制御部により構成され得る。この場合、第2の装置の制御部は、測定工程S12を、上述した光源、光検出器、及び調心機構(回転機構等)を用いて実行する。第3の装置は、例えば、上述した調心機構(回転機構及び並進機構等)、加熱部、及び制御部により構成され得る。この場合、第3の装置の制御部は、調心工程S13、突合工程S14、及び融着工程S15を、上述した調心機構(回転機構及び並進機構等)、及び加熱部を用いて実行する。
【0101】
この場合、まず、第1の装置において、第1の装置の制御部が、第1の装置の調心機構を用いて、粗回転調心工程を実施する。次に、作業者が、第1のセット工程を実施する。第1のセット工程においては、粗く回転調心された光ファイバOF1,OF2が、それぞれ、保持部材(例えば、第1の装置及び第2の装置に着脱可能なファイバホルダ)に固定された状態で第1の装置から第2の装置へと移載される。ここで、保持部材の第2の装置へのセット仕方を、保持部材の第1の装置へのセットの仕方と一致させることで、粗調心の結果が保たれる。次に、第2の装置において、第2の装置の制御部が、第2の装置の光源及び光検出器を用いて、測定工程S12を実施する。測定工程S12の測定結果は、第2の装置の制御部から第3の装置の制御部へと通信により伝達される。次に、作業者が、第2のセット工程を実施する。第2のセット工程においては、粗く回転調心された光ファイバOF1,OF2が、それぞれ、保持部材(例えば、第2の装置及び第3の装置に着脱可能なファイバホルダ。第1の装置から第2の装置への移載に利用されるファイバホルダであってもよい)に固定された状態で第2の装置から第3の装置へと移載される。ここで、保持部材の第3の装置へのセット仕方を、保持部材の第1の装置へのセットの仕方、又は、保持部材の第2の装置へのセットの仕方と一致させることで、粗調心の結果が保たれる。次に、第3の装置において、第3の装置の制御部が、第3の装置の調心機構、及び加熱機構を用いて、調心工程S13、突合工程S14、及び融着工程S15を実施する。なお、第1のセット工程及び第2のセット工程は、作業者が行うのではなく、ロボットなどの移載装置が行ってもよい。この場合、ロボットなどの移載装置も、融着接続システムの構成要素としてもよい。なお、粗回転調心は、第1の装置が自動的に行うのではなく、作業者が第1の装置の調心機構を手動操作して行ってもよい。この場合、第1の装置は、必ずしも光源、光検出器を有している必要はなく、例えば、調心機構及び制御部により構成してもよい。
【0102】
なお、調心工程S13を、第3の装置ではなく、第2の装置が行うようにしてもよい。この場合、融着接続システムは、準備工程S11の粗回転調心工程を実施する第1の装置と、測定工程S12及び調心工程S13を実施する第2の装置と、突合工程S14及び融着工程S15を実施する第3の装置と、を含むシステムであり得る。この場合、第1の装置は、例えば、上述した光源、光検出器、調心機構(回転機構等)、及び制御部により構成され得る。この場合、第1の装置の制御部は、準備工程S11の粗回転調心工程を、上述した光源、光検出器、調心機構(回転機構等)を用いて実行し得る。また、第2の装置は、例えば、上述した光源、光検出器、調心機構(回転機構及び並進機構等)、及び制御部により構成され得る。この場合、第2の装置の制御部は、測定工程S12及び調心工程S13を、上述した光源、光検出器、及び調心機構(回転機構及び並進機構等)を用いて実行する。第3の装置は、例えば、上述した調心機構(並進機構等)、加熱部、及び制御部により構成され得る。この場合、第3の装置の制御部は、突合工程S14及び融着工程S15を、上述した調心機構(並進機構等)、及び加熱部を用いて実行する。
【0103】
また、調心システムは、調心方法S10を構成する各工程(但し作業者が実施する工程を除く)を実施する単一の又は複数の装置を含むシステムである。それぞれの装置は、単一の工程を実施する構成されていてもよいし、複数の工程を実施されるように構成されていてもよい。調心システムが単一の装置により構成されている場合、調心システムは、上述した融着接続装置1の構成要素のうち、加熱部13以外の構成要素により構成され得る。すなわち、調心システムは、上述した光源、光検出器、調心機構、及び制御部により構成され得る。調心システムが複数の装置により構成される場合、調心システムは、例えば以下のように構成され得る。
【0104】
例えば、調心システムは、準備工程S11の粗回転調心工程を実施する第1の装置と、測定工程S12及び調心工程S13を実施する第2の装置と、を含むシステムであり得る。この場合、第1の装置は、例えば、上述した光源、光検出器、調心機構(回転機構等)、及び制御部により構成され得る。この場合、第1の装置の制御部は、準備工程S11の粗調心工程を、上述した光源、光検出器、及び調心機構(回転機構等)を用いて実行し得る。また、第2の装置は、例えば、上述した光源、光検出器、調心機構(回転機構及び並進機構等)、及び制御部により構成され得る。この場合、第2の装置の制御部は、測定工程S12及び調心工程S13を、上述した光源、光検出器、調心機構(回転機構及び並進機構等)を用いて実行する。
【0105】
この場合、まず、第1の装置において、第1の装置の制御部が、第1の装置の光源、光検出器、及び調心機構を用いて、粗回転調心工程を実施する。次に、作業者が、セット工程を実施する。セット工程においては、粗く回転調心された光ファイバOF1,OF2が、それぞれ、保持部材(例えば、第1の装置及び第2の装置に着脱可能なファイバホルダ)に固定された状態で第1の装置から第2の装置へと移載される。ここで、保持部材の第2の装置の調心機構へのセット仕方を、保持部材の第1の装置の調心機構へのセットの仕方と一致させることで、粗調心の結果が保たれる。次に、第2の装置において、第2の調心装置の制御部が、第2の調心装置の光源、光検出器、及び調心機構を用いて、測定工程S12及び調心工程S13を実施する。なお、セット工程は、作業者が行うのではなく、ロボットなどの移載装置が行ってもよい。この場合、ロボットなどの移載装置も、調心システムの構成要素としてもよい。なお、粗回転調心は、第1の装置が自動的に行うのではなく、作業者が第1の装置の調心機構を手動操作して行ってもよい。この場合、第1の装置は、必ずしも光源、光検出器を有している必要はなく、例えば、調心機構及び制御部により構成してもよい。
【0106】
なお、測定工程S12を、第2の装置ではなく、第1の装置が行うようにしてもよい。この場合、調心システムは、準備工程S11の粗回転調心工程及び測定工程S12を実施する第1の装置と、調心工程S13を実施する第2の装置と、を含むシステムとなる。この場合、第1の装置は、例えば、上述した光源、光検出器、調心機構(回転機構等)、及び制御部により構成され得る。この場合、第1の装置の制御部は、準備工程S11の粗回転調心工程及び測定工程S12を、上述した光源、光検出器、調心機構(回転機構等)を用いて実行する。また、第2の装置は、例えば、上述した調心機構(回転機構及び並進機構等)、及び制御部により構成され得る。この場合、第2の装置の制御部は、調心工程S13を、上述した調心機構(回転機構及び並進機構等)を用いて実行し得る。
【0107】
或いは、調心システムは、準備工程S11の粗回転調心工程を実施する第1の装置と、測定工程S12を実施する第2の装置と、調心工程S13を実施する第3の装置と、を含むシステムであり得る。この場合、第1の装置は、例えば、上述した光源、光検出器、調心機構(回転機構等)、及び制御部により構成され得る。この場合、第1の装置の制御部は、準備工程S11の粗回転調心工程を、上述した光源、光検出器、調心機構(回転機構等)を用いて実行し得る。また、第2の装置は、例えば、上述した光源、光検出器、及び制御部により構成され得る。この場合、第2の装置の制御部は、測定工程S12を、上述した光源、光検出器、及び調心機構(回転機構及び並進機構等)を用いて実行し得る。第3の装置は、例えば、上述した調心機構(回転機構及び並進機構等)及び制御部により構成され得る。この場合、第3の装置の制御部は、調心工程S13を、上述した調心機構(回転機構及び並進機構等)を用いて実行し得る。
【0108】
この場合、まず、第1の装置において、第1の装置の制御部が、第1の装置の調心機構を用いて、粗回転調心工程を実施する。次に、作業者が、第1のセット工程を実施する。第1のセット工程においては、粗く回転調心された光ファイバOF1,OF2が、それぞれ、保持部材(例えば、第1の装置及び第2の装置に着脱可能なファイバホルダ)に固定された状態で第1の装置から第2の装置へと移載される。ここで、保持部材の第2の装置へのセット仕方を、保持部材の第1の装置へのセットの仕方と一致させることで、粗調心の結果が保たれる。次に、第2の装置において、第2の装置の制御部が、第2の装置の光源及び光検出器を用いて、測定工程S12を実施する。測定工程S12の測定結果は、第2の装置の制御部から第3の装置の制御部へと通信により伝達される。次に、作業者が、第2のセット工程を実施する。第2のセット工程においては、粗く回転調心された光ファイバOF1,OF2が、それぞれ、保持部材(例えば、第2の装置及び第3の装置に着脱可能なファイバホルダ。第1の装置から第2の装置への移載に利用されるファイバホルダであってもよい)に固定された状態で第2の装置から第3の装置へと移載される。ここで、保持部材の第3の装置へのセット仕方を、保持部材の第1の装置へのセットの仕方、又は、保持部材の第2の装置へのセットの仕方と一致させることで、粗調心の結果が保たれる。次に、第3の装置において、第3の装置の制御部が、第3の装置の調心機構を用いて、調心工程S13を実施する。なお、第1のセット工程及び第2のセット工程は、作業者が行うのではなく、ロボットなどの移載装置が行ってもよい。この場合、ロボットなどの移載装置も、融着接続システムの構成要素としてもよい。なお、粗回転調心は、第1の装置が自動的に行うのではなく、作業者が第1の装置の調心機構を手動操作して行ってもよい。この場合、第1の装置は、必ずしも光源、光検出器を有している必要はなく、例えば、調心機構及び制御部により構成してもよい。
【0109】
(付記事項)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、上述した実施形態に開示された各技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、単心の光ファイバを融着接続する構成であっても、複数心の光ファイバを融着接続する構成であってもよい。
【0110】
例えば、本発明に係る調心方法は、少なくとも上述した準備工程、測定工程、及び調心工程を含んでいればよく、その他の工程については、含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。また、本発明に係る調心方法を含む光ファイバの融着接続方法、及び、本発明に係る調心方法を含むファイバ接続体の製造方法も、本発明の範疇に含まれ得る。また、本発明に係る調心システムは、少なくとも上述した準備工程、測定工程、及び調心工程を実施するために必要な構成を含んでいればよく、その他の工程を実施するために必要な構成は、含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。また、本発明に係る調心システムを含む光ファイバの融着接続システム、及び、本発明に係る調心システムを含むファイバ接続体の製造システムも、本発明の範疇に含まれ得る。
【符号の説明】
【0111】
S1 融着接続方法
S11 準備工程
S12 測定工程
S13 調心工程
S14 突合工程
S15 融着工程
【要約】
【課題】融着接続に要する時間を短縮する。
【解決手段】融着接続方法(S1)は、光ファイバ(OF1,OF2)を融着接続装置(1)にセットする準備工程(S11)と、光ファイバ(OF1,OF2)における特定の構造の位置を、単一の測定方向又は360°未満の範囲に分布する複数の測定方向からの光学測定によって特定する測定工程(S12)と、特定の構造の位置に基づいて光ファイバ(OF1,OF2)の回転調心を行う調心工程(S13)と、光ファイバ(OF1,OF2)を融着する融着工程(S15)と、を含む。準備工程(S11)において、光ファイバ(OF1,OF2)は、上記単一の測定方向又は上記複数の測定方向の何れかからの光学測定によって特定の構造の位置を特定できるように、融着接続装置(1)にセットされる。
【選択図】
図1