(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】塗装ロボットおよび塗装方法
(51)【国際特許分類】
B05B 12/00 20180101AFI20240726BHJP
B05B 1/00 20060101ALI20240726BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20240726BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
B05B12/00 A
B05B1/00 Z
B05D1/02 B
B05D7/14 L
(21)【出願番号】P 2023175329
(22)【出願日】2023-10-10
【審査請求日】2023-10-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】飯田 輝澄
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 徳夫
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特許第7285827(JP,B2)
【文献】特表2013-530816(JP,A)
【文献】特開2012-101146(JP,A)
【文献】特表2020-501880(JP,A)
【文献】特開2017-192932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00-17/08
B05C 1/00-21/00
B05D 1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の塗装領域への塗装を行う塗装ロボットであって、
液滴を吐出する複数のノズルと、駆動することで前記ノズルから前記液滴を押し出すための圧電基板を備える塗装ヘッドを備える塗装ヘッドユニットと、
前記塗装ヘッドユニットを先端に装着すると共に、当該塗装ヘッドユニットを所望の位置へ移動させるロボットアームと、
前記塗装ヘッドの前記圧電基板の作動を制御するヘッド制御部、および前記ロボットアームの作動を制御するアーム制御部を備える制御部と、を備え、
前記ヘッド制御部は、前記塗装領域の端部側の端部塗装領域の塗装の際における前記圧電基板の変形量を、前記塗装領域の端部側よりも内側の通常塗装領域の塗装の際における前記圧電基板の変形量よりも小さくするように、当該圧電基板の作動を制御し、
前記通常塗装領域の塗装の際における前記圧電基板の駆動周波数は、前記端部塗装領域の塗装の際における前記圧電基板の駆動周波数と比較して、当該圧電基板の共振が大きくなる周波数とされる、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項2】
請求項1記載の塗装ロボットであって、
前記ヘッド制御部は、前記端部塗装領域の塗装の際における前記圧電基板の変形量を、前記端部塗装領域の輪郭から離間するにつれて大きくするように、当該圧電基板の駆動を制御する、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項3】
請求項1記載の塗装ロボットであって、
前記アーム制御部は、前記塗装領域の塗装を行うのに際して、当該塗装領域の周縁に位置する前記端部塗装領域を周回させると共に、前記端部塗装領域の塗装が終了した後に、前記端部塗装領域で囲まれた前記通常塗装領域の塗装を行うように前記ロボットアームの作動を制御すると共に、
前記ヘッド制御部は、前記端部塗装領域の塗装の際には、前記圧電基板の変形量を、前記通常塗装領域の塗装の際における前記圧電基板の変形量よりも小さくするように、当該圧電基板の作動を制御する、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項4】
請求項1記載の塗装ロボットであって、
前記塗装ヘッドにおいて、前記ノズルの開口部分が露出しているノズル形成面には、当該ノズルの開口部分の周囲に、凸状部位または凹状部位が形成されている、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか1項に記載の塗装ロボットであって、
前記ヘッド制御部は、前記圧電基板に対し、前記ノズルの内部に塗料を引き込み、その後に押し出し、その押し出しの後に再び塗料を引き込む、Pull-Push-Pull型の駆動波形を与えるように制御している、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項6】
車両の塗装領域への塗装を行う塗装ロボットであって、
液滴を吐出する複数のノズルと、駆動することで前記ノズルから前記液滴を押し出すための圧電基板を備える塗装ヘッドを備える塗装ヘッドユニットと、
前記塗装ヘッドユニットを先端に装着すると共に、当該塗装ヘッドユニットを所望の位置へ移動させるロボットアームと、
前記塗装ヘッドの前記圧電基板の作動を制御するヘッド制御部、および前記ロボットアームの作動を制御するアーム制御部を備える制御部と、を備え、
前記ヘッド制御部は、前記塗装領域の端部側の端部塗装領域の塗装の際における前記圧電基板の変形量を、前記塗装領域の端部側よりも内側の通常塗装領域の塗装の際における前記圧電基板の変形量よりも小さくして前記圧電基板の変形による圧力変動の影響を低減することで前記ノズルの開口の近傍に前記液滴が漏れ出すことによる漏出部が形成されるのを抑えるように、当該圧電基板の作動を制御し、
前記ヘッド制御部は、前記圧電基板に対し、前記ノズルの内部に塗料を引き込み、その後に押し出し、その押し出しの後に再び塗料を引き込む、Pull-Push-Pull型の駆動波形を与えるように制御している、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項7】
車両の塗装領域への塗装を行う塗装ロボットであって、
液滴を吐出する複数のノズルと、駆動することで前記ノズルから前記液滴を押し出すための圧電基板を備える塗装ヘッドを備える塗装ヘッドユニットと、
前記塗装ヘッドユニットを先端に装着すると共に、当該塗装ヘッドユニットを所望の位置へ移動させるロボットアームと、
前記塗装ヘッドの前記圧電基板の作動を制御するヘッド制御部、および前記ロボットアームの作動を制御するアーム制御部を備える制御部と、を備え、
前記ヘッド制御部は、前記塗装領域の端部側の端部塗装領域の塗装の際における前記圧電基板の変形量を、前記塗装領域の端部側よりも内側の通常塗装領域の塗装の際における前記圧電基板の変形量よりも小さくするように、当該圧電基板の作動を制御し、
前記ヘッド制御部は、前記圧電基板に対し、前記ノズルの内部に塗料を引き込み、その後に押し出し、その押し出しの後に再び塗料を引き込む、Pull-Push-Pull型の駆動波形を与えるように制御している、
ことを特徴とする塗装ロボット。
【請求項8】
車両の塗装領域への塗装を塗装ロボットを用いて行う塗装方法であって、
前記塗装ロボットは、
液滴を吐出する複数のノズルと、駆動することで前記ノズルから前記液滴を押し出すための圧電基板を備える塗装ヘッドを備える塗装ヘッドユニットと、
前記塗装ヘッドユニットを先端に装着すると共に、当該塗装ヘッドユニットを所望の位置へ移動させるロボットアームと、
前記塗装ヘッドの前記圧電基板の作動を制御するヘッド制御部、および前記ロボットアームの作動を制御するアーム制御部を備える制御部と、を備え、
前記塗装領域の端部側の端部塗装領域の塗装の際における前記圧電基板の変形量を、前記塗装領域の端部側よりも内側の通常塗装領域の塗装の際における前記圧電基板の変形量よりも小さくして前記圧電基板の変形による圧力変動の影響を低減することで前記ノズルの開口の近傍に前記液滴が漏れ出すことによる漏出部が形成されるのを抑えるように、当該圧電基板の作動を前記ヘッド制御部で制御する端部塗装ステップと、
前記端部塗装ステップの後に、前記端部塗装ステップよりも前記圧電基板の変形量が大きくなる状態で前記圧電基板を作動させて前記通常塗装領域の塗装を行う内側塗装ステップと、
を備え
、
前記通常塗装領域の塗装の際における前記圧電基板の駆動周波数は、前記端部塗装領域の塗装の際における前記圧電基板の駆動周波数と比較して、当該圧電基板の共振が大きくなる周波数とされる、
ことを特徴とする塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装ロボットおよび塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の塗装ラインにおいては、ロボットを用いたロボット塗装が主流となっている。このロボット塗装に関する構成の一例として、たとえば特許文献1には、以下の構成が開示されている。
【0003】
この特許文献1に開示の塗装ロボットには、オーバーラップ塗装領域での塗装膜厚の制御について開示されている。具体的には、塗装制御部は、ノズルヘッドユニット50の走査のそれぞれで形成される分割塗装面において、目標とする塗装膜厚となるように塗装を行う通常塗装領域と、通常塗装領域よりも塗料の吐出量が減じられた状態で塗装を行うオーバーラップ塗装領域とが形成されるように塗装を実行する。そして、この塗装の際に、前後の走査におけるオーバーラップ塗装領域を混在させることで、混在後のオーバーラップ塗装領域の塗装膜厚が目標とする塗装膜厚となるように塗装を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ノズル形成面において、ノズルの周囲に塗料が溢れてしまうと、ノズルから吐出される塗料に対して、溢れた塗料が付着してしまい、その結果、液滴が大きくなった状態で吐出される。そのため、塗装部位に着弾を想定している液滴のサイズに対して、より大きな液滴が着弾されることになる。
【0006】
そのような、想定よりも大きなサイズの液滴が着弾されてしまうと、特に、塗膜の端部(輪郭)の形成の際には、想定しているようなシャープな輪郭とはならずに、着弾した液滴間の段差が目立つような状態で、輪郭が形成されてしまう。
【0007】
また、溢れた塗料は、時間が経過すると乾燥により固化してしまい、ノズル形成面に固化による膜を形成し始めてしまう。この場合、塗料が全く吐出されないか、または吐出されたとしても、塗料の固化によってノズルの開口面積が減じられて、小さな液滴しか吐出できない場合がある。
【0008】
また、溢れた塗料により、液滴の吐出方向が意図しない方向に変更されてしまう、異常な吐出が生じることもあり、そのような液滴の異常な吐出によっても、塗膜の端部(輪郭)の形成の際の品質が低下してしまう虞がある。
【0009】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、ノズルにおける塗料溢れを抑制することで、特に塗膜の端部における塗装品質を向上させることが可能な塗装ロボットおよび塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、車両の塗装領域への塗装を行う塗装ロボットであって、液滴を吐出する複数のノズルと、駆動することでノズルから液滴を押し出すための圧電基板を備える塗装ヘッドを備える塗装ヘッドユニットと、塗装ヘッドユニットを先端に装着すると共に、当該塗装ヘッドユニットを所望の位置へ移動させるロボットアームと、塗装ヘッドの圧電基板の作動を制御するヘッド制御部、およびロボットアームの作動を制御するアーム制御部を備える制御部と、を備え、ヘッド制御部は、塗装領域の端部側の端部塗装領域の塗装の際における圧電基板の変形量を、塗装領域の端部側よりも内側の通常塗装領域の塗装の際における圧電基板の変形量よりも小さくするように、当該圧電基板の作動を制御する、ことを特徴とする塗装ロボットが提供される。
【0011】
また、上述の発明において、通常塗装領域における圧電基板の駆動周波数の塗装の際は、端部塗装領域の塗装の際における圧電基板の駆動周波数と比較して、当該圧電基板の共振が大きくなる周波数とされる、ことが好ましい。
【0012】
また、上述のいずれかの発明において、ヘッド制御部は、端部塗装領域の塗装の際における圧電基板の変形量を、端部塗装領域の輪郭から離間するにつれて大きくするように、当該圧電基板の駆動を制御する、ことが好ましい。
【0013】
また、上述のいずれかの発明またはそれらの組み合わせにおいて、アーム制御部は、塗装領域の塗装を行うのに際して、当該塗装領域の周縁に位置する端部塗装領域を周回させると共に、端部塗装領域の塗装が終了した後に、端部塗装領域で囲まれた通常塗装領域の塗装を行うようにロボットアームの作動を制御すると共に、ヘッド制御部は、端部塗装領域の塗装の際には、圧電基板の変形量を、通常塗装領域の塗装の際における圧電基板の変形量よりも小さくするように、当該圧電基板の作動を制御する、ことが好ましい。
【0014】
また、上述のいずれかの発明またはそれらの組み合わせにおいて、塗装ヘッドにおいて、ノズルの開口部分が露出しているノズル形成面には、当該ノズルの開口部分の周囲に、凸状部位または凹状部位が形成されている、ことが好ましい。
【0015】
また、上述のいずれかの発明またはそれらの組み合わせにおいて、ヘッド制御部は、圧電基板に対し、ノズルの内部に塗料を引き込み、その後に押し出し、その押し出しの後に再び塗料を引き込む、Pull-Push-Pull型の駆動波形を与えるように制御している、ことが好ましい。
【0016】
また、本発明の第2の観点によると、車両の塗装領域への塗装を塗装ロボットを用いて行う塗装方法であって、塗装ロボットは、液滴を吐出する複数のノズルと、駆動することでノズルから液滴を押し出すための圧電基板を備える塗装ヘッドを備える塗装ヘッドユニットと、塗装ヘッドユニットを先端に装着すると共に、当該塗装ヘッドユニットを所望の位置へ移動させるロボットアームと、塗装ヘッドの圧電基板の作動を制御するヘッド制御部、およびロボットアームの作動を制御するアーム制御部を備える制御部と、を備え、塗装領域の端部側の端部塗装領域の塗装の際における圧電基板の変形量を、塗装領域の端部側よりも内側の通常塗装領域の塗装の際における圧電基板の変形量よりも小さくするように、当該圧電基板の作動をヘッド制御部で制御する端部塗装ステップと、端部塗装ステップの後に、端部塗装ステップよりも圧電基板の変形量が大きくなる状態で圧電基板を作動させて通常塗装領域の塗装を行う内側塗装ステップと、を備えることを特徴とする塗装方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、ノズルにおける塗料溢れを抑制することで、特に塗膜の端部における塗装品質を向上させることが可能な塗装ロボットおよび塗装方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る塗装ロボットの全体構成を示す概略図である。
【
図2】
図1に示す塗装ロボットにおける塗装ヘッドユニットのうち、塗料を吐出させるノズル形成面を正面視した状態を示す図である。
【
図3】
図1に示す塗装ロボットにおいて、複数の塗装ヘッドを千鳥状に配置した状態を示す図である。
【
図4】
図1に示す塗装ロボットにおいて、ノズル加圧室付近の構成を示す断面図である。
【
図5】
図2に示す塗装ヘッドユニットとは異なる他の塗装ヘッドユニットにおけるノズル形成面の構成を示す平面図である。
【
図6】
図1に示す塗装ロボットが備える塗料供給機構等の概略的な構成を示す図である。
【
図7】
図1に示す塗装ロボットの制御部を中心とした制御的な概略構成を示す図である。
【
図8】
図1に示す塗装ロボットを用いて形成される、塗装領域を示す図である。
【
図9】
図8に示す塗装領域を形成するための、分割塗装データの一例を示す図である。
【
図10】
図8に示す塗装領域を形成する際に、塗料溢れによりノズルの周囲に漏出塗料が付着した状態を示す断面図である。
【
図11】
図8に示す塗装領域を形成するための吐出液滴の吐出に際して、現状の液滴の吐出方法にて、塗装面の端部塗装領域付近を塗装した状態を示す図である。
【
図12】
図8に示す塗装領域を形成するための吐出液滴の吐出に際して、端部塗装データ領域付近における、吐出予定の液滴のサイズを画素毎に模式的に示す図である。
【
図13】本実施の形態における液滴の吐出方法にて、塗装面の端部塗装領域付近を塗装した状態を示す図である。
【
図14】
図12に示す状態の変形例に係る、吐出予定の液滴のサイズを画素毎に設定した場合を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の各実施の形態に係る塗装ロボット10について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、必要に応じて、X方向はノズル形成面52(塗装ヘッド53)の長手方向とし、X1側は
図2における右側、X2側は
図2における左側とする。また、Y方向はノズル形成面52(塗装ヘッド53)の短手方向(幅方向)とし、Y1側は
図2における紙面上側、Y2側は
図2における紙面下側とする。
【0020】
本実施の形態の塗装ロボット10は、自動車製造の工場における塗装ラインに位置する車両または車両部品(以下、車両の一部となる車両部品も車両として説明する)といった塗装対象物に対して、「塗装」を行うものであり、塗膜を塗装対象物の表面に形成して、その表面の保護や美観を与えることを目的としている。したがって、所定時間毎に、塗装ラインに沿って移動してくる車両に対し、一定の時間内に所望の塗装品質にて、塗装を行う必要がある。
【0021】
ただし、塗装ロボット10での塗装によって形成される塗膜は、表面の保護や美観を与えるのみならず、例えば接着剤のような、何らかの機能を備える機能性の液体の吐出によって形成されるものであっても良い。
【0022】
また、本実施の形態の塗装ロボット10では、上述した塗膜を形成するのみならず、各種のデザインや画像を、車両や車両部品といった塗装対象物に対して形成することが可能である。なお、塗装対象物は、車両や車両部品には限られず、自動車以外の各種部品(一例としては、飛行機や鉄道の外装部品)等、塗装を行う必要があるものであれば良い。
【0023】
(1-1.インクジェット式の車両用塗装ロボットの全体構成について)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る塗装ロボット10の全体構成を示す概略図である。
図1に示すように、塗装ロボット10は、ロボット本体20と、塗装ヘッドユニット50とを主要な構成要素としている。
図1に示す塗装ロボット10は、その一例として、6軸の垂直多関節ロボットを示しているが、当該塗装ロボット10は、6軸以外の垂直多関節型、水平多関節型、直交ロボット等、どのようなタイプのロボットでも良い。
【0024】
(1-2.塗装装置本体について)
図1に示すように、ロボット本体20は、基台21と、第1~第6回転軸22a~22fと、脚部23と、第1回動アーム24と、第2回動アーム25と、回転アーム26と、リスト部27と、これらを駆動させるための不図示のモータと、を主要な構成要素としている。なお、脚部23からリスト部27までの部分は、ロボットアームR1に対応するが、基台21等のようなそれ以外の部分も、ロボットアームR1に対応するものとしても良い。
【0025】
これらのうち、基台21は床面等の設置部位に設置される部分であるが、この基台21が設置部位に対して走行可能であっても良い。また、脚部23は、基台21から上部に向かい立設された部分であり、図示を省略するモータ(第1モータ)の駆動によって第1回転軸22aを介して基台21に対して回転可能に設けられている。なお、脚部23は、基台21に対して回転しないように構成しても良い。
【0026】
また、脚部23の上端には、図示を省略するモータ(第2モータ)の駆動によって第2回転軸22bを介して第1回動アーム24が回動可能に設けられている。さらに、第1回動アーム24の先端側には、図示を省略するモータ(第3モータ)の駆動によって第3回転軸22cを介して第2回動アーム25が回動可能に設けられている。
【0027】
また、第2回動アーム25の先端側には、回転アーム26が第2回動アーム25の中心軸周りに回転可能に設けられている。この回転アーム26は、図示を省略するモータ(第4モータ)の駆動によって、第4回転軸22dを介して回転可能となっている。また、回転アーム26の先端側には、リスト部27が設けられている。このリスト部27は、複数(たとえば2つ)の異なる向きの軸部を中心に、回転運動を可能としている。
図1においては、その回転運動が可能な回転軸を、それぞれ第5回転軸22eおよび第6回転軸22fとしている。それにより、塗装ヘッドユニット50の向きを精度良くコントロールすることが可能となっている。なお、軸部の個数は、2つ以上であれば幾つでも良い。
【0028】
また、リスト部27には、塗装ヘッドユニット50が取り付けられているが、この塗装ヘッドユニット50は、リスト部27に対して着脱自在に設けられていても良い。
【0029】
(1-3.塗装ヘッドユニットについて)
次に、塗装ヘッドユニット50について説明する。
図2は、塗装ヘッドユニット50のうち、塗料を吐出させるノズル形成面52を正面視した状態を示す図である。
図2に示すように、塗装ヘッドユニット50は、不図示のヘッドカバーを備え、そのヘッドカバー内に、種々の構成が内蔵されている。
図2に示すように、ノズル形成面52には、ノズル54が塗装ヘッドユニット50の長手方向に対して傾斜する方向に並ぶノズル列55が複数設けられている。かかるノズル列55には、本実施の形態では、主走査方向(Y方向)の一方側(Y2側)に存在する第1ノズル列55Aと、主走査方向の他方側(Y1側)に存在する第2ノズル列55Bとが設けられている。
【0030】
なお、塗料を吐出する場合、第1ノズル列55Aにおける隣り合うノズル54から吐出される液滴の間に、第2ノズル列55Bにおけるノズル54から吐出される液滴が着弾されるように、各ノズル54の駆動タイミングが制御される。それにより、塗装の際にドット密度を向上させることができる。
【0031】
ところで、
図2に示すように、ノズル形成面52には、単一の塗装ヘッド53が存在している。しかしながら、ノズル形成面52には、複数の塗装ヘッド53から構成されるヘッド群が存在するようにしても良い。この場合、一例として、
図3に示すように、複数の塗装ヘッド53を位置合わせしつつ千鳥状に配置する構成が挙げられるが、ヘッド群における塗装ヘッド53の配置は千鳥状でなくても良い。
【0032】
なお、塗料は、塗料供給路72(
図6参照)や、塗装ヘッド53内のノズル供給流路59aやその他の供給流路を介して、
図4に示すノズル加圧室59へと供給されるが、このノズル加圧室59の所定部位(例えば底面)に、ノズル54が形成されている。また、ノズル54から吐出されなかった塗料は、当該ノズル加圧室59に接続されている塗装ヘッド53内の排出流路(図示省略)を介して排出される。なお、塗装ヘッド53内の排出流路には、後述する塗料供給機構70の戻り流路73が接続されている。
【0033】
このような構成により、後述する塗料供給機構70の塗料供給路72から供給された塗料は、塗装ヘッド53内のノズル供給流路59aを含む供給流路およびノズル加圧室59を経て、ノズル54から吐出される。また、ノズル54から吐出されなかった塗料は、ノズル加圧室59から塗装ヘッド53内の排出流路を経て、後述する塗料供給機構70の戻り流路73へと戻される。
【0034】
また、
図4に示すように、ノズル加圧室59の天面(ノズル54とは反対側の面)には、圧電基板62が配置されている。この圧電基板62は、圧電体である2枚の圧電セラミック層63a,63bを備え、さらに共通電極64と、個別電極65とを備えている。圧電セラミック層63a,63bは、外部から電圧を印加することで、伸縮可能な部材である。このような圧電セラミック層63a,63bとしては、強誘電性を有する、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系、NaNbO3系、BaTiO3系、(BiNa)NbO3系、BiNaNb5O15系等のセラミックス材料を用いることができる。
【0035】
また、
図4に示すように、共通電極64は、圧電セラミック層63aと圧電セラミック層63bの間に配置されている。また、圧電基板62の上面には、共通電極用の表面電極(不図示)が形成されている。これら共通電極64と共通電極用の表面電極とは、圧電セラミック層63aに存在する不図示の貫通導体を通じて、電気的に接続されている。また、個別電極65は、上記のノズル加圧室59と対向する部位にそれぞれ配置されている。さらに、圧電セラミック層63aのうち、共通電極64と個別電極65とに挟まれた部分は、厚さ方向に分極している。したがって、個別電極65に電圧を印加すると、圧電効果によって圧電セラミック層63aが歪む。このため、所定の駆動信号を個別電極65に印加すると、ノズル加圧室59の体積を減少させるように圧電セラミック層63bが相対的に変動し、それによって塗料が吐出される。
【0036】
なお、
図4において、共通電極64がノズル加圧室59の天面に配置されているが、共通電極64は、
図4に示すような、ノズル加圧室59の天面に配置されている構成には限られない。たとえば、共通電極64は、ノズル加圧室59の側面(上記の天面と直交または概ね直交する面)に配置される構成を採用しても良く、その他、塗料をノズル54から良好に吐出可能であれば、どのような構成を採用しても良い。
【0037】
(1-4.塗装ヘッドユニットの他の構成について)
次に、塗装ヘッドユニット50の他の構成について説明する。
図5は、他の塗装ヘッドユニット50のノズル形成面52の構成を示す平面図である。
図5に示すように、複数のノズル54が塗装ヘッド53の短手方向(幅方向;Y方向)に沿って並ぶことでノズル列55を構成するようにしても良い。なお、
図5に示す構成では、複数のノズル54が塗装ヘッド53の短手方向(幅方向;主走査方向)に並んでノズル列55を構成しているが、1つの(単一の)ノズル54のみが塗装ヘッド53の短手方向(幅方向;主走査方向)に配置される構成としても良い。すなわち、ノズル列55が1つのノズル54から構成されていても良い。
【0038】
また、
図5に示すような塗装ヘッド53を用いて車両に塗装を行う場合、塗装ヘッド53の長手方向が、塗装ヘッド53の主走査方向に対して若干傾斜させた状態で塗装を実行するようにしても良い。たとえば、
図2に示す塗装ヘッド53の構成では、ノズル列55は主走査方向に対して角度αだけ傾斜しているとすると、塗装ヘッド53の長手方向を、塗装ヘッド53の主走査方向に対して角度αだけ傾斜させるようにすればよい。このように傾斜させる場合には、各ノズル54からの塗料の吐出タイミングを調整するだけで、
図2に示す塗装ヘッド53と同等の塗装を実現することができる。
【0039】
(1-5.塗料供給機構について)
次に、塗料供給機構70について説明する。
図6は、塗料供給機構70等の概略的な構成を示す図である。この塗料供給機構70は、塗料循環経路71と、外部供給路75と、気泡除去部材76と、供給ポンプ90と、吸引ポンプ91と、第1ペイントレギュレータ92と、第2ペイントレギュレータ93と、脱気モジュール94と、除去フィルタ95と、圧力センサS1~S8と、第1流量計FM1と、第2流量計FM2とを主要な構成要素としている。
【0040】
塗料循環経路71は、塗料を循環させるための流路であり、塗料供給路72と、戻り流路73と、バイパス流路74とを有している。塗料供給路72は、外部供給路75から供給された、または戻り流路73から戻ってきた塗料を、塗装ヘッド53に向けて供給するための流路であり、上述した塗装ヘッド53内の供給流路と接続されている。
【0041】
戻り流路73は、上述した塗装ヘッド53内の排出流路と接続されていて、塗装ヘッド53で吐出されなかった塗料を、気泡除去部材76へと戻すための流路である。
【0042】
バイパス流路74は、塗料供給路72と戻り流路73とを接続する流路である。すなわち、バイパス流路74は、塗装ヘッド53と並列状態で設けられていて、塗装ヘッド53から塗料が不吐出となる場合には、後述する三方弁77の作動を切り替えることで、このバイパス流路74に塗料が流される。
【0043】
外部供給路75は、サーキュレーションタンクのような塗料の貯留部位側から供給される塗料を、気泡除去部材76のタンク本体の内部に供給するための管路である。
【0044】
気泡除去部材76は、塗料に含まれる気泡を除去するための部材である。この気泡除去部材76は、ロボットアームR1外の姿勢が変化しない安定部位に設けられている。また、気泡除去部材76は、塗料供給路72に対して塗料を供給可能に接続されていると共に、戻り流路73から塗料を供給されるように当該戻り流路73に接続されている。この気泡除去部材76は、外部から密閉可能なタンク本体を備えていて、そのタンク本体には、内部に溜まった気泡による気体を排出する排出口が設けられている。
【0045】
また、塗料供給路72は、後述する第1ペイントレギュレータ92よりも下流側で三方弁77に接続されている。この三方弁77は、塗料供給路72の中途部に接続されると共に、バイパス流路74にも接続されている。したがって、塗装時には塗料供給路72の三方弁77よりも上流側と下流側とが開状態となって、塗装ヘッド53へ塗料が供給される。一方、塗装を行わない場合には、塗料供給路72からバイパス流路74へと塗料が流れるが、塗料供給路72の下流側(塗装ヘッド53側)には塗料が供給されないように切り替えられる。
【0046】
また、上述したバイパス流路74の中途部分には、開閉弁78が設けられている。この開閉弁78を開くように作動させることで、塗料はバイパス流路74を流れることが可能となっている。
【0047】
さらに、開閉弁78よりもバイパス流路74の下流側には、三方弁79が接続されていて、さらにこの三方弁79には戻り流路73の上流側(すなわち戻り流路73の塗装ヘッド53側)と下流側(すなわち戻り流路73の後述する吸引ポンプ91側)とが接続されている。このため、塗装を行う場合には、戻り流路73の三方弁79よりも上流側と下流側とが開状態となり、塗装ヘッド53から吐出されなかった塗料が戻り流路73の下流側へと流れる。一方、塗装を行わない場合には、三方弁79は、バイパス流路74を流れる塗料が、戻り流路73の下流側(吸引ポンプ91側)に塗料が流れるように切り替えられる。
【0048】
また、戻り流路73のうち、後述する吸引ポンプ91よりも下流側には、切替弁80が配置されている。この切替弁80も三方弁であり、戻り流路73の上流側および下流側以外に、排出路81にも接続されている。この切替弁80は、通常の状態では、戻り流路73の上流側と下流側とで、塗料が流れる状態となっている。しかしながら、たとえば洗浄用の液体が塗料供給路72から塗装ヘッド53またはバイパス流路74を介して戻り流路73まで流れた場合に、切替弁80の作動が切り替えられて、上記の洗浄用の液体(廃液)が排出路81を介して排出される。
【0049】
なお、戻り流路73は、切替弁80よりも下流側で、上述した気泡除去部材76に接続されている。
【0050】
また、塗料供給路72の中途部には、供給ポンプ90が接続されている。なお、供給ポンプ90は、塗料移送手段および塗料供給手段に対応する。供給ポンプ90は、塗料供給路72を流れる塗料に対し、当該供給ポンプ90よりも下流側に向かって正圧を加えるための手段である。なお、供給ポンプ90としては、回転数を制御することで、塗料の供給量を制御することが可能なギヤポンプを用いることが好ましい。しかしながら、供給ポンプ90は、ギヤポンプ以外のポンプを用いるようにしても良い。この供給ポンプ90は、後述する制御部100で作動が制御させられる。それによって、供給ポンプ90の作動は、所定の圧力設定値となるように制御可能となっている。
【0051】
また、戻り流路73の中途部には、吸引ポンプ91が接続されている。なお、吸引ポンプ91は、塗料移送手段および塗料回収手段に対応する。吸引ポンプ91は、戻り流路73を流れる塗料に対し、当該供給ポンプ90よりも上流側に負圧を加える手段である。なお、吸引ポンプ91としては、上記の供給ポンプ90と同様に、回転数を制御することで、塗料の供給量を制御することが可能なギヤポンプを用いることが好ましい。しかしながら、吸引ポンプ91は、ギヤポンプ以外のポンプを用いるようにしても良い。この吸引ポンプ91も、後述する制御部100で作動が制御させられる。それによって、吸引ポンプ91の作動は、その下流側が所定の圧力設定値となるように制御可能となっている。
【0052】
また、塗料供給路72において、供給ポンプ90よりも下流側には、第1ペイントレギュレータ92が配置されている。第1ペイントレギュレータ92は、供給ポンプ90での脈動を緩和して、一定の圧力で塗料を供給するものである。なお、第1ペイントレギュレータ92は、調整弁および第1調整弁に対応する。この第1ペイントレギュレータ92は、後述する制御部100での制御により、制御エア圧や電気信号に応じて開度を調整可能となっている。それにより、当該第1ペイントレギュレータ92の上流側の圧力に対応して、第1ペイントレギュレータ92の下流側の圧力を、所定の圧力設定値となるように制御可能となっている。
【0053】
また、戻り流路73において、吸引ポンプ91よりも上流側には、第2ペイントレギュレータ93が配置されている。第2ペイントレギュレータ93は、吸引ポンプ91での脈動を緩和して、一定の圧力(負圧)で塗料を吸引するものである。この第2ペイントレギュレータ93も、後述する制御部100での制御により、制御エア圧や電気信号に応じて開度を調整可能となっている。それにより、当該第2ペイントレギュレータ93の下流側の圧力に対応して、第2ペイントレギュレータ93の上流側の圧力を、所定の圧力設定値となるように制御可能となっている。
【0054】
また、塗料供給路72において、供給ポンプ90よりも下流側かつ第1ペイントレギュレータ92よりも上流側には、脱気モジュール94が配置されている。脱気モジュール94は、後述する除去フィルタ95よりも塗料供給路72の下流側に配置されていて、塗料に溶存している溶存気体を除去(脱気)するための部材である。
【0055】
また、塗料供給路72において、脱気モジュール94よりも上流側であって供給ポンプ90よりも下流側には、除去フィルタ95が配置されている。除去フィルタ95は、塗料供給路72を流れる塗料に含まれている異物を除去するものである。除去フィルタ95は、たとえば顔料が含まれる塗料中から、粗大異物や顔料凝集物を確実に除去することで、塗装ヘッド53が正常に作動し続けるのを保つものである。
【0056】
次に、圧力センサS1~S8および流量計FM1,FM2について説明する。塗料供給路72において、供給ポンプ90の上流側には圧力センサS1が配置されている。加えて、塗料供給路72において、供給ポンプ90よりも下流側であって除去フィルタ95よりも上流側には圧力センサS2が配置されている。圧力センサS1は供給ポンプ90への塗料の供給圧力を測定し、その測定結果を制御部100へ送信する。また、圧力センサS2は供給ポンプ90から吐出される塗料の圧力を測定し、その測定結果を制御部100へ送信する。
【0057】
このように、圧力センサS1,S2によって、供給ポンプ90の上流側と下流側で塗料の圧力を測定することで、供給ポンプ90の推定圧力を精度良く測定することが可能となっている。なお、供給ポンプ90の推定圧力は、圧力センサS1の圧力値と圧力センサS2の圧力値の平均値としても良く、いずれか一方の圧力値としても良い。また、上記の推定圧力は、後述する水頭圧および水頭圧差の算出に用いられる。
【0058】
また、上述した脱気モジュール94には、吸引管路96を介して真空ポンプ97が接続されている。真空ポンプ97は、上述したように、脱気モジュール94の筐体内部(中空糸膜の内部)を減圧するための装置である。この減圧により、筐体内部に供給されている塗料に溶存している溶存気体を除去(脱気)される。
【0059】
また、圧力センサS3は、上記の真空ポンプ97と脱気モジュール94の間の吸引管路96の圧力を測定している。
【0060】
なお、塗料供給路72において、脱気モジュール94よりも下流側であって、第1ペイントレギュレータ92よりも上流側には、第1流量計FM1が配置されている。第1流量計FM1は、第1ペイントレギュレータ92へ送り込まれる塗料の流量を測定し、その測定結果を制御部100へ送信する。この第1流量計FM1は、たとえば超音波方式、光学式、電磁式、熱式等のような、可動部分が存在しない非接触型の流量計であるので、塗料供給路72の外部に第1流量計FM1が設置されている。なお、第1流量計FM1は、可動部分の存在する流量計を用いるようにしても良い。
【0061】
また、塗料供給路72において、第1流量計FM1よりも下流側であって第1ペイントレギュレータ92よりも上流側には、圧力センサS4が配置されている。また、塗料供給路72において、第1ペイントレギュレータ92よりも下流側であって三方弁77よりも上流側には、圧力センサS5が配置されている。圧力センサS4は第1ペイントレギュレータ92への塗料の供給圧力を測定し、その測定結果を制御部100へ送信する。また、圧力センサS5は第1ペイントレギュレータ92から吐出される塗料の圧力を測定し、その測定結果を制御部100へ送信する。
【0062】
このように、圧力センサS4,S5によって、第1ペイントレギュレータ92の上流側と下流側で塗料の圧力を測定することで、第1ペイントレギュレータ92の推定圧力を精度良く測定することが可能となっている。なお、第1ペイントレギュレータ92の推定圧力は、圧力センサS4の圧力値と圧力センサS5の圧力値の平均値としても良く、いずれか一方の圧力値としても良い。
【0063】
なお、塗料供給機構70には、上記の圧力センサS4が設けられることが好ましいが、この圧力センサS4を省略する構成を採用しても良い。また、圧力センサS4は、塗装ヘッドユニット50側に設けても良いが、第2回動アーム25側(ロボットアームR1側)に設けても良い。また、圧力センサS4は、第1流量計FM1よりも上流側に設けるようにしても良い。
【0064】
また、戻り流路73において、三方弁79よりも下流側であって第2ペイントレギュレータ93よりも上流側には、圧力センサS6が配置されている。また、戻り流路73において、第2ペイントレギュレータ93よりも下流側の流量計FM2(後述)のさらに下流側には、圧力センサS7が配置されている。圧力センサS6は第2ペイントレギュレータ93への塗料の供給圧力を測定し、その測定結果を制御部100へ送信する。また、圧力センサS7は第2ペイントレギュレータ93から吐出される塗料の圧力(すなわち、吸引ポンプ91への塗料の供給圧力)を測定し、その測定結果を制御部100へ送信する。
【0065】
このように、圧力センサS6,S7によって、第2ペイントレギュレータ93の上流側と下流側で塗料の圧力を測定することで、第2ペイントレギュレータ93の推定圧力を精度良く測定することが可能となっている。なお、第2ペイントレギュレータ93の推定圧力は、圧力センサS6の圧力値と圧力センサS7の圧力値の平均値としても良く、いずれか一方の圧力値としても良い。
【0066】
なお、戻り流路73において、第2ペイントレギュレータ93よりも下流側であって流量計FM2の上流側に、圧力センサを配置するようにしても良い。
【0067】
また、戻り流路73において、第2ペイントレギュレータ93よりも下流側には、第2流量計FM2が配置されている。第2流量計FM2は、吸引ポンプ91へ送り込まれる塗料の流量を測定し、その測定結果を制御部100へ送信する。この第2流量計FM2も、上記の第1流量計FM1と同様に、たとえば超音波方式、光学式、電磁式、熱式等のような、可動部分が存在しない非接触型の流量計であるので、その詳細についての説明は省略する。なお、第2流量計FM2も、可動部分の存在する流量計を用いるようにしても良い。
【0068】
また、戻り流路73において、吸引ポンプ91よりも下流側であって、上述した切替弁80よりも上流側には圧力センサS8が配置されている。圧力センサS8は吸引ポンプ91から吐出される塗料の圧力を測定し、その測定結果を制御部100へ送信する。
【0069】
このように、圧力センサS7,S8によって、吸引ポンプ91の上流側と下流側で塗料の圧力を測定することで、吸引ポンプ91の推定圧力を精度良く測定することが可能となっている。なお、吸引ポンプ91の推定圧力は、圧力センサS7の圧力値と圧力センサS8の圧力値の平均値としても良く、いずれか一方の圧力値としても良い。
【0070】
(1-8.制御部の概略的な構成について)
【0071】
次に、塗装ロボット10の作動を制御するための制御部100の概略的な構成について説明する。
図7は、塗装ロボット10の制御部100を中心とした制御的な概略構成を示す図である。
図7に示すように、制御部100は、主制御部110と、アーム制御部120と、ヘッド制御部130と、塗料供給制御部140と、制御用メモリ150と、位置センサ300と、傾きセンサ310とを主要な構成要素としている。また、塗装ロボット10は、画像処理装置200に接続されることで、塗装ロボットシステム(符号省略)を構成している。
【0072】
なお、主制御部110、アーム制御部120、ヘッド制御部130、塗料供給制御部140および後述する画像処理部210は、CPU(Central Processing Unit)、記憶部位(ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発メモリ等)、その他の要素から構成されている。なお、画像処理部210は、画像処理性能に優れたCPUと共に、またはCPUに代えて、GPU(Graphics Processing Unit)を用いるようにしても良い。
【0073】
上記の制御的な構成のうち、主制御部110は、ロボットアームR1の各モータ(第1~第6モータ)、塗料供給機構70の各作動部、および圧電基板62が協働して塗装対象物に対して塗装が実行されるように、上述したアーム制御部120、ヘッド制御部130および塗料供給制御部140に所定の制御信号を送信する部分である。
【0074】
また、アーム制御部120は、上述したロボットアームR1の各モータ(第1~第6モータ)の駆動を制御する部分である。このアーム制御部120は、アーム用メモリ(図示省略)を備えていて、アーム用メモリには、塗装ヘッド53における塗装可能な塗装幅を勘案したロボットティーチングによって作成された、塗装ヘッド53の軌跡に関するデータ(軌跡データ)、および塗装ヘッド53の傾き等の姿勢に関する姿勢データが記憶されている。
【0075】
そして、アーム制御部120では、アーム用メモリに記憶された軌跡データ、姿勢データおよび後述する画像処理部210での画像処理に基づいて、上述したロボットアームR1の各モータ(第1~第6モータ)の駆動を制御する。その制御により、塗装ヘッド53は、塗装を実行するための所望の位置を、所望の速度で通過したり、所定の位置で停止することができる。なお、アーム用メモリは、塗装ロボット10が備えていても良いが、塗装ロボット10の外部にアーム用メモリ(たとえば、
図7に示すメモリ220)が存在し、そのアーム用メモリに対して、有線または無線の通信手段を介して、情報の送受信を可能としても良い。
【0076】
また、ヘッド制御部130は、画像処理装置200での画像処理に基づいて、塗装ヘッドユニット50内の圧電基板62の作動を制御する部分である。このヘッド制御部130は、後述する位置センサ300、傾きセンサ310等の位置を検出する手段によって軌跡データにおける所定の位置に到達したときに、その位置に対応した分割塗装データに基づいて、塗料の吐出を制御する。なお、この場合、車両の膜厚が均一となるように、圧電基板62の駆動周波数を制御してノズル54から吐出されるドット数(液滴の数)を制御したり、圧電基板62に印加する駆動周波数および/または電圧に基づいて、当該圧電基板62の変形量を制御することで、ノズル54から吐出される液滴のサイズを制御する。
【0077】
なお、圧電基板62に印加する駆動周波数に基づいて圧電基板62の変形量を制御することで、液滴サイズの制御を行う場合、当該圧電基板62の固有振動数と一致する駆動周波数にて圧電基板62を駆動させる場合が、液滴サイズが最も大きくなる。このため、印加する駆動周波数が固有振動数からずれるにしたがって、液滴サイズが小さくなるように制御することができる。また、圧電基板62に印加する電圧に基づいて圧電基板62の変形量を制御することで、液滴サイズの制御を行う場合、当該圧電基板62に印加する電圧が高くなるほど、液滴サイズが大きくなるように制御することができる。
【0078】
また、塗料供給制御部140は、塗装ヘッド53への塗料の供給を制御する部分であり、具体的には塗料供給機構70における、供給ポンプ90、吸引ポンプ91、第1ペイントレギュレータ92、第2ペイントレギュレータ93、真空ポンプ97、三方弁77,79、開閉弁78、切替弁80等の各作動部位の作動を制御する。このとき、塗料供給制御部140は、塗装ヘッド53に対して一定の圧力にて塗料が供給されるように、上記のポンプや弁等の作動部位の作動を制御することが好ましい。しかしながら、塗料供給制御部140は、塗装ヘッド53に対して一定の流量にて塗料が供給されるように、上記のポンプや弁等の作動部位の作動を制御可能であっても良い。
【0079】
ここで、塗料供給制御部140は、制御用メモリ150に対してアクセス可能となっており、かかるアクセスによって、この制御用メモリ150に記憶されている、圧力設定値などの制御に関するデータを読み出すことが可能となっている。
【0080】
また、位置センサ300は、塗装ヘッド53の現在の位置を検出するセンサである。かかる位置センサ300としては、ロータリエンコーダ、レゾルバ、レーザセンサ、その他、種々のセンサを用いることが可能である。また、傾きセンサ310は、塗装ヘッド53の傾斜角度を検出するセンサである。かかる傾きセンサ310としては、たとえば、ジャイロセンサ、加速度センサ、傾斜センサ、その他、種々のセンサを用いることが可能である。
【0081】
(2.液滴の吐出制御に関して)
以下に、塗装ヘッド53のノズル54から、液滴を吐出させて、
図8に示すような、塗装対象物に塗装領域CRを形成する際の制御について説明する。本実施の形態では、画像処理装置200は、
図8に示すような塗装領域CRに対応した画像データを作成するが、その塗装領域CRの幅は、塗装ヘッド53の幅よりも十分に大きいことが通常である。
【0082】
このような、塗装領域CRの幅が塗装ヘッド53の幅よりも十分に大きい場合には、画像処理装置200は、塗装ヘッド53の塗装可能な幅(塗装パス)に対応させて画像データを短冊状に分割した分割塗装データD1を作成する。
図9は、分割塗装データD1の一例を示す図である。このような分割塗装データD1に基づく、塗料の吐出を実行させることで、塗装ヘッドユニット50が走査する毎(塗装パス毎)の塗装が可能となる。
【0083】
この分割塗装データD1は、上記のように短冊状であるので、例えば、塗装開始部位や塗装終了部位といった部位は、通常は、塗装領域の端部側に位置する部位となっている。また、分割塗装データD1の並びの方向の両端も、塗装領域の端部側に位置する部位となっている。
【0084】
以下では、分割塗装データD1において、塗装領域の端部側には位置せずに、端部側よりも内側のデータ領域(通常の膜厚を有する塗膜を形成するためのデータ領域)を、通常塗装データ領域DR1とする。また、分割塗装データD1において、塗装領域の最も端部側に位置する部位に対応したデータ領域を、端部塗装データ領域DR2とする。
【0085】
このような分割塗装データD1を作成した後に、主制御部110は、上記の分割塗装データD1に基づいて、アーム制御部120、ヘッド制御部130および塗料供給制御部140に、塗装を実行するための制御信号を送信する。すると、アーム制御部120は、塗装対象物に対して塗装を実行可能なように、ロボットアームR1に内蔵されているモータの少なくとも1つを、所定の駆動速度で駆動させる。また、塗料供給制御部140は、位置センサ300や傾きセンサ310によって塗装ヘッドユニット50が塗装対象物に対して所定の空間的な位置に到達したときに、塗装ヘッドユニット50のいずれかのノズル54から塗料の吐出を開始する。
【0086】
このとき、塗装対象物の端部に到達したノズル54から、順次、塗料を吐出するように、ヘッド制御部130は各ノズル54の圧電基板62の駆動を制御する。それにより、塗装対象物には、
図8に示すような塗装領域CRが形成される。
【0087】
ここで、上記の塗装領域CRには、通常塗装データ領域DR1に対応して塗料を吐出することで形成された通常塗装領域CR1と、端部塗装データ領域DR2に対応して塗料を吐出することで形成された端部塗装領域CR2とが、それぞれの塗装パスPS毎に形成される。以下では、この詳細(液滴の吐出の制御の詳細)について説明する。
【0088】
(2-1.液滴の吐出の制御の詳細について)
液滴を吐出する際には、通常塗装データ領域DR1では、所定の膜厚に対応させて、ノズル54から塗料の液滴を吐出させるか否かと、塗料を吐出させる際には塗料の液滴のサイズが決定される。
【0089】
例えば、圧電基板62の駆動周波数や電圧を調整することで、液滴のサイズを、8段階に調整可能であるとする。この場合には、通常塗装データ領域DR1に基づく通常塗装領域CR1では、塗膜の厚みを十分に確保するために、比較的大きなサイズの液滴の吐出によって形成される。ここで、サイズが一番小さな液滴を、液滴1とし、次にサイズの小さな液滴を液滴2とし、以後、数字が大きくなるにつれて、液滴のサイズが大きくなるものとし、最もサイズの大きな液滴を、液滴8とする。この場合において、
図9では、例えば、通常塗装データ領域DR1に基づく塗装では、全体的に液滴6~8にて、塗装されるものとする。
【0090】
すると、特に、塗装ヘッド53の駆動停止状態から、駆動が開始されると、特に、当該圧電基板62が対応付けられているノズル54の内部において、比較的大きな圧力変動が生じてしまう。同様に、塗装ヘッド53が駆動している状態から、駆動が停止されると、特に、当該圧電基板62が対応付けられているノズル54の内部において、比較的大きな圧力変動が生じてしまう。
【0091】
このような圧力変動が生じると、ノズル54の開口の近傍に形成されるメニスカスから塗料溢れが生じてしまう場合がある。以下では、塗料溢れによって、塗装ヘッド53のノズル54の周囲に形成される部位(液滴)を、漏出塗料P1とする。
図10は、塗料溢れにより、ノズル54の周囲に漏出塗料P1が付着した状態を示す断面図である。
図10に示すように、ノズル形成面52において、ノズル54の周囲に漏出塗料P1が形成されると、新たにノズル54から吐出される吐出液滴P2に、漏出塗料P1が付着してしまう(巻き込んでしまう)虞がある。
【0092】
すると、吐出液滴P2は、本来の液滴サイズよりも大きくなった状態で、塗装対象物に付着してしまう。そのため、特に端部塗装データ領域DR2に対応する塗装領域では、想定している液滴サイズよりも大きなサイズの液滴が着弾することで、段差が際立つ状態となる。
【0093】
図11は、吐出液滴P2の吐出に際して、現状の液滴の吐出方法にて、塗装面(塗装領域CR)の端部塗装領域CR2付近を塗装した状態を示す図である。この
図11に示すように、現状の液滴の吐出方法では、圧力変動の影響により、ノズル54の近傍に漏出塗料P1が形成され、その漏出塗料P1が付着した状態(巻き込んだ状態)で吐出液滴P2が吐出されることで、段差状の輪郭CR3が形成され、シャープな輪郭とはならない。このため、塗装領域CRの端部塗装領域CR2の見切り品質の低下を招いてしまう。
【0094】
また、漏出塗料P1の影響により、ノズル54から液滴が吐出できない場合、そのノズル54が液滴を吐出すべき吐出開始位置に到達しても、液滴が吐出不能となってしまう。このとき、漏出塗料P1の表面張力や、乾燥により形成された固化による膜を打ち破ることができる圧力を、塗料に与えることができれば、ノズル54から液滴を吐出することが可能である。しかしながら、この場合には、漏出塗料P1や破られた膜が液滴の吐出を阻害してしまう。そのため、この場合には、通常よりも小さな液滴が吐出されてしまい、既定の膜厚に到達せずに塗装不良となる虞がある。
【0095】
また、溢れた塗料により、液滴の吐出方向が意図しない方向に変更されてしまう、異常な吐出が生じることもあり、そのような液滴の異常な吐出によっても、塗膜の端部(輪郭)の形成の際の品質が低下してしまう虞がある。
【0096】
これに対し、本実施の形態では、端部塗装データ領域DR2に基づいて液滴を吐出する際には、通常塗装データ領域DR1に基づいて液滴を吐出する場合よりも、小さいサイズの液滴(例えば、液滴1や液滴2)を吐出するように、端部塗装データ領域DR2が形成されている。
図12は、端部塗装データ領域DR2付近における、吐出予定の液滴のサイズを画素毎に模式的に示す図である。この
図12に示すように、液滴の着弾後に塗装領域CRの輪郭CR3となり得る画素には、例えば液滴1~2のような、小さいサイズの液滴が吐出されるように、端部塗装データ領域DR2が形成されている。
【0097】
なお、端部塗装データ領域DR2は、塗装後の輪郭CR3に対応する最端部の画素を含むデータ領域であり、最端部の画素のみが端部塗装データ領域DR2に対応するものとしても良く、その最端部の画素から数画素までデータ内部側の画素までが端部塗装データ領域DR2に対応するものとしても良い。
【0098】
また、端部塗装データ領域DR2においては、液滴の着弾後に塗装領域CRの輪郭CR3となり得る画素には、例えば液滴6~8のような大きいサイズの液滴と共に、その大きいサイズの液滴に隣接する部位に、例えば液滴1~2のような、小さいサイズの液滴が吐出されるように、端部塗装データ領域DR2を形成しても良い。
【0099】
以上のようにして形成された端部塗装データ領域DR2を有する分割塗装データD1に基づいて、それぞれの塗装パスで塗装を実行する。すると、それぞれの塗装パスにおいては、塗装の開始時および塗装の終了時には、通常塗装データ領域DR1を塗装する場合と比較して小さなサイズの液滴を吐出するべく、圧電基板62の変形量(駆動量)が小さくなる。そして、その状態で、塗装領域CRの端部塗装領域CR2が形成される(端部塗装ステップに対応)。
【0100】
そのため、特に、塗装ヘッド53の駆動停止状態から、駆動が開始されると、当該圧電基板62が対応付けられているノズル54の内部において、圧力変動が大きくなるのを抑えることができる。同様に、塗装ヘッド53が駆動している状態から、駆動が停止された場合でも、当該圧電基板62が対応付けられているノズル54の内部において、圧力変動が大きくなるのを抑えることができる。
【0101】
したがって、
図10に示すような、ノズル54の開口の近傍に漏出塗料P1が形成されるのを抑えることができ、それによって、新たにノズル54から吐出される吐出液滴P2に、漏出塗料P1が付着してしまう(巻き込んでしまう)のを抑えることができる。
【0102】
なお、上記の端部塗装ステップの実行後に、当該端部塗装ステップよりも圧電基板62の変形量が大きくなる状態で圧電基板62を作動させて、通常塗装領域CR1の塗装を行う(内側塗装ステップに対応)。
【0103】
ここで、本実施の形態の液滴の吐出方法にて、塗装領域CRの端部塗装領域CR2付近を塗装した状態を、
図13に示す。この
図13に示すように、本実施の形態の液滴の吐出方法では、
図11に示す、現状の液滴の吐出方法と比較して、塗装領域CRの輪郭CR3の段差が緩和された、シャープな輪郭が形成されている。そのため、塗装領域CRの端部塗装領域CR2の見切り品質を向上させることが可能となっている。
【0104】
なお、圧力変動の影響を一層抑えるようにするために、ヘッド制御部130は、端部塗装領域CR2の塗装の際における圧電基板62の変形量を、その端部塗装領域CR2の輪郭CR3から離間するにつれて大きくなるように、当該圧電基板62の駆動を制御するようにしても良い。このような、
図12とは異なるように、液滴のサイズを、画素毎に設定した状態を、
図14に示す。
図14では、輪郭CR3から離間するにつれて、液滴のサイズが、液滴1から徐々に大きくなる状態が示されている。
【0105】
(3.効果について)
以上のように、車両の塗装領域CRへの塗装を行う塗装ロボット10は、液滴を吐出する複数のノズル54と、駆動することでノズル54から液滴を押し出すための圧電基板62を備える塗装ヘッド53を備える塗装ヘッドユニット50と、塗装ヘッドユニット50を先端に装着すると共に、当該塗装ヘッドユニット50を所望の位置へ移動させるロボットアームR1と、塗装ヘッド53の圧電基板62の作動を制御するヘッド制御部130、およびロボットアームR1の作動を制御するアーム制御部120を備える制御部100と、を備える。
【0106】
そして、ヘッド制御部130は、塗装領域CRの端部側の端部塗装領域CR2の塗装の際における圧電基板62の変形量を、塗装領域CRの端部側よりも内側の通常塗装領域CR1の塗装の際における圧電基板62の変形量よりも小さくするように、当該圧電基板62の作動を制御する。
【0107】
このように、圧力変動の大きなタイミングである塗装開始時と塗装終了時の少なくとも一方のタイミングに該当する、端部塗装領域CR2の塗装では、圧電基板62の変形量が、塗装領域CRの内側の通常塗装領域CR1の塗装の際における圧電基板62の変形量よりも小さくなるように、ヘッド制御部130が圧電基板62の作動を制御している。それにより、端部塗装領域CR2の塗装では、圧電基板62の変形による、圧力変動の影響を低減することが可能となる。それにより、ノズル54の開口の近傍に漏出塗料P1が形成されるのを抑えることができる。そのため、新たにノズル54から吐出される吐出液滴P2に、漏出塗料P1が付着してしまう(巻き込んでしまう)のを抑えることができる。
【0108】
また、ノズル54の開口の近傍に漏出塗料P1が形成されるのを抑えることで、漏出塗料P1や破られた膜が液滴の吐出を阻害してしまうのを防ぐことができる。それにより、ノズル54が液滴を吐出すべき吐出開始位置に到達しても、液滴が吐出不能となるのを防ぐことができる。また、通常よりも小さな液滴が吐出されて、既定の膜厚に到達せずに塗装不良となるのを防ぐことも可能となる。
【0109】
また、溢れた塗料により、液滴の吐出方向が意図しない方向に変更されてしまう、異常な吐出が生じるのを防ぐことも可能となる。
【0110】
また、端部塗装領域CR2の塗装では、ノズル54から吐出される液滴のサイズを、通常塗装領域CR1の塗装における液滴のサイズよりも小さくすることが可能となる。それにより、塗装領域CRの輪郭CR3の形成の際に、着弾した液滴間の段差を小さくすることが可能となり、それによって、より塗装品質の高い、シャープな輪郭を形成することが可能となる。
【0111】
また、本実施の形態では、通常塗装領域CR1における圧電基板62の駆動周波数は、端部塗装領域CR2の塗装の際における圧電基板62の駆動周波数と比較して、当該圧電基板62の共振が大きくなる周波数とされることができる。
【0112】
このように圧電基板62を制御することにより、塗装開始時と塗装終了時の少なくとも一方に対応する、端部塗装領域CR2の塗装の際における圧電基板62の駆動周波数は、共振時の周波数(固有振動数)からずれた状態となる。このため、圧電基板62の振動の打ち消し方向へ、より駆動され易い状態となる。そのため、端部塗装領域CR2の塗装においては、ノズル54から吐出される液滴のサイズを小さくすることが可能となる。それにより、端部塗装領域CR2の塗装において、塗料の圧力変動が大きくなることによって、ノズル54から塗料が溢れてしまうのを防止することが可能となる。そのため、新たにノズル54から吐出される吐出液滴P2に、漏出塗料P1が付着してしまう(巻き込んでしまう)のを抑えることができる。
【0113】
また、塗装領域CRの輪郭CR3の形成の際に、着弾した液滴間の段差を小さくすることが可能となり、それによって、より塗装品質の高い、シャープな輪郭を形成することが可能となる。
【0114】
また、本実施の形態では、ヘッド制御部130は、端部塗装領域CR2の塗装の際における圧電基板62の変形量を、端部塗装領域CR2の輪郭から離間するにつれて大きくするように、当該圧電基板62の駆動を制御するようにしても良い。
【0115】
このように制御する場合には、塗装領域CRにおいて、その端部から中央側に向かうと、ノズル54から吐出される液滴のサイズが大きくなる。すなわち、形成される塗膜の端部に向かうにつれて、着弾される液滴のサイズが徐々に小さくなることで、塗膜に傾斜状の部分を形成することができる。したがって、その端部側に向かうにつれて着弾した液滴のサイズが徐々に小さくなることで、端部側に向かう塗料の流れ出しを抑えることができ、塗装品質の一層の向上を図ることが可能となる。
【0116】
(4.変形例について)
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態以外に、種々変形可能である。以下に、変形例について説明する。
【0117】
上述した実施の形態では、
図8に示すような塗装パスPSに代えて、アーム制御部120は、塗装領域CRの塗装を行うのに際して、当該塗装領域CRの周縁に位置する端部塗装領域を周回させるようにしても良い。さらに、端部塗装領域CR2の塗装が終了した後に、端部塗装領域CR2で囲まれた通常塗装領域CR1の塗装を行うようにロボットアームR1の作動を制御すると共に、ヘッド制御部130は、端部塗装領域CR2の塗装の際には、圧電基板62の変形量を、通常塗装領域CR1の塗装の際における圧電基板62の変形量よりも小さくするように、当該圧電基板62の作動を制御するようにしても良い。
【0118】
このようにロボットアームR1の作動を制御することにより、塗装開始時からの端部塗装領域CR2の塗装実行時には、その内部側の通常塗装領域CR1の塗装実行時よりも、圧電基板62の変形量が小さな状態で塗装が実行される。そのため、塗装領域CRの輪郭CR3での塗装においては、ノズル54から吐出される液滴のサイズを小さくすることが可能となる。それにより、塗装開始時からの端部塗装領域CR2の塗装実行時において、塗料の圧力変動が大きくなることによって、ノズル54から塗料が溢れてしまうのを防止することが可能となる。
【0119】
また、塗装領域CRの輪郭CR3の形成の際に、着弾した液滴間の段差を小さくすることが可能となり、それによって、より塗装品質の高い、シャープな輪郭を形成することが可能となる。
【0120】
また、上述の実施の形態では、塗装パスPS毎に分割塗装データD1が形成され、その分割塗装データD1毎に、端部塗装データ領域DR2が存在している。しかしながら、塗装領域CRを形成するための一連の(複数の)塗装パスPSのうち、最初の塗装パスPSにおける塗装開始時と、最後の塗装パスPSにおける塗装終了時には、圧力変動が大きくなると考えられる。そこで、塗装領域CRを形成するための一連の(複数の)塗装パスPSのうち、最初の塗装パスPSにおける塗装開始時の端部塗装領域CR2と、最後の塗装パスPSにおける塗装終了時の端部塗装領域CR2において、圧電基板62の変形量を抑えるような制御を行うようにしても良い。
【0121】
また、隣り合う塗装パスPSにおいて、塗り重ねられる部位に端部塗装領域CR2を設定しても良く、当該端部塗装領域CR2を設定しなくても良い。
【0122】
また、上述の実施の形態においては、ノズル54が露出しているノズル形成面52は、平面状としても良いが、ノズル54の開口部分の周囲に凸状部位が形成される構成としても良い。この場合において、ノズル54の開口部分の周囲を、全周に亘って突出させても良く、全周の一部(単数の部位または複数の部位)を突出させても良い。このように構成した場合には、例えば、ノズル54の経路長が伸びたり、土手状の頂部がノズル54の開口部分から若干離れることで、圧力変動時に漏出塗料P1がノズル54の開口部分の近傍に形成されるのを抑えることができる。
【0123】
また、ノズル54の開口部分の周囲を、ノズル形成面52の平面から凹ませた凹状部位が形成される構成としても良い。このように構成した場合には、漏出塗料P1が凹んだ部分よりも下側のノズル形成面52に形成されることで、圧力変動時に漏出塗料P1がノズル54の開口部分の近傍に形成されるのを抑えることができる。
【0124】
また、上述の実施の形態において、ノズル54に存在する塗料のメニスカスの振動による影響を低減するために、ヘッド制御部130は、圧電基板62に対し、ノズル54の内部に塗料を引き込んで押し出した後に、再び塗料を引き込むような、Pull-Push-Pull型の駆動波形が与えられるように制御しても良い。
【符号の説明】
【0125】
10…塗装ロボット、11…塗装ロボットシステム、20…ロボット本体、21…基台、22a…第1回転軸、22b…第2回転軸、22c…第3回転軸、22d…第4回転軸、22e…第5回転軸、22f…第6回転軸、24…第1回動アーム、25…第2回動アーム、26…回転アーム、27…リスト部、50…塗装ヘッドユニット、52…ノズル形成面、53…塗装ヘッド、54…ノズル、55…ノズル列、55A…第1ノズル列、55B…第2ノズル列、59…ノズル加圧室、59a…ノズル供給流路、62…圧電基板、63a…圧電セラミック層、63b…圧電セラミック層、64…共通電極、65…個別電極、70…塗料供給機構、71…塗料循環経路、72…塗料供給路、73…戻り流路、74…バイパス流路、75…外部供給路、76…気泡除去部材、77…三方弁、78…開閉弁、79…三方弁、80…切替弁、81…排出路、90…供給ポンプ(塗料供給手段に対応)、91…吸引ポンプ(塗料回収手段に対応)、92…第1ペイントレギュレータ(第1調整弁に対応)、93…第2ペイントレギュレータ(第2調整弁に対応)、94…脱気モジュール、95…除去フィルタ、96…吸引管路、97…真空ポンプ、100…制御部、110…主制御部、120…アーム制御部、130…ヘッド制御部、140…塗料供給制御部、150…制御用メモリ、200…画像処理装置、210…画像処理部、220…メモリ、300…位置センサ、310…傾きセンサ、CR…塗装領域、CR1…通常塗装領域、CR2…端部塗装領域、CR3…輪郭、D1…分割塗装データ、DR1…通常塗装データ領域、DR2…端部塗装データ領域、FM1…第1流量計、FM2…第2流量計、P1…漏出塗料、P2…吐出液滴、PS…塗装パス、R1…ロボットアーム、S1~S8…圧力センサ
【要約】
【課題】ノズルにおける塗料溢れを抑制することで、特に塗膜の端部における塗装品質を向上させることが可能な塗装ロボットおよび塗装方法を提供する。
【解決手段】塗装ロボット10は、液滴を吐出する複数のノズル54と、ノズル54から液滴を押し出すための圧電基板62を備える塗装ヘッド53を備える塗装ヘッドユニット50と、塗装ヘッドユニット50を先端に装着すると共に、塗装ヘッドユニット50を所望の位置へ移動させるロボットアームR1と、圧電基板62の作動を制御するヘッド制御部130、およびロボットアームR1の作動を制御するアーム制御部120を備える制御部100とを備え、ヘッド制御部130は、塗装領域CRの端部側の端部塗装領域CR2の塗装の際における圧電基板62の変形量を、通常塗装領域CR1の塗装の際における圧電基板62の変形量よりも小さくするように、圧電基板62の作動を制御する。
【選択図】
図7