(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/30 20060101AFI20240726BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20240726BHJP
H10K 59/123 20230101ALI20240726BHJP
H10K 59/80 20230101ALI20240726BHJP
G02F 1/1368 20060101ALN20240726BHJP
【FI】
G09F9/30 348A
H05B33/14 Z
H10K59/123
H10K59/80
G02F1/1368
(21)【出願番号】P 2023186649
(22)【出願日】2023-10-31
(62)【分割の表示】P 2022155871の分割
【原出願日】2013-07-18
【審査請求日】2023-11-13
(31)【優先権主張番号】P 2012161344
(32)【優先日】2012-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】保坂 泰靖
(72)【発明者】
【氏名】島 行徳
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 健一
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
【審査官】中村 直行
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-181913(JP,A)
【文献】特開2011-118377(JP,A)
【文献】特開2010-103340(JP,A)
【文献】特開2009-237573(JP,A)
【文献】特開2003-197367(JP,A)
【文献】特開2000-356788(JP,A)
【文献】特開2000-299468(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0041191(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00 - 9/46
H05B 33/00 - 33/28
H05B 44/00
H05B 45/60
H10K 50/00 - 99/00
G02F 1/1368
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のトランジスタを有する画素部と、第2のトランジスタを有する駆動回路部と、を有し、
前記画素部は、
前記第1のトランジスタのチャネル形成領域を有する第1の半導体層と、
前記第1の半導体層の上面と接する領域を有する第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜の上面と接する領域を有する第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜の上面と接する領域と、前記第2の絶縁膜に設けられた開口部において前記第1の絶縁膜の上面と接する領域と、を有する第3の絶縁膜と、を有し、
前記駆動回路部は、
前記第2のトランジスタのチャネル形成領域を有する第2の半導体層を有し、
前記第1の絶縁膜は、前記第2の半導体層の上面と接する領域を有し、
前記第3の絶縁膜は、前記第1の半導体層と重なる領域を有し、
前記第3の絶縁膜は、前記第2の半導体層と重ならない領域を有する表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
液晶パネルを用いる表示装置、または有機ELパネルを用いる表示装置に関する。また
、該表示装置を有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルを用いる表示装置や有機ELパネルを用いる表示装置の開発が盛んで
ある。この表示装置には、大別して画素制御用のトランジスタ(画素トランジスタ)のみ
を基板上に形成して走査回路(駆動回路)は周辺ICで行うものと、画素トランジスタと
ともに走査回路を同一基板上に形成するものに分類される。
【0003】
表示装置の狭額縁化または周辺ICのコスト低減のため、駆動回路一体型の表示装置の
方が、有利である。しかしながら、駆動回路に用いるトランジスタとしては、画素トラン
ジスタに用いられる電気特性(例えば、電界効果移動度(μFE)またはしきい値等)よ
りも、高い電気特性が求められる。
【0004】
トランジスタに適用可能な半導体薄膜としてシリコン系半導体材料が広く知られている
が、その他の材料として酸化物半導体が注目されている。例えば、トランジスタに用いる
半導体薄膜として、電子キャリア濃度が1018/cm3未満であるインジウム(In)
、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む非晶質酸化物を用いたトランジスタが開示
されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
酸化物半導体を半導体層に用いるトランジスタは、シリコン系半導体材料である非晶質
シリコンを半導体層に用いるトランジスタよりも電界効果移動度が大きいため、動作速度
が速く、駆動回路一体型の表示装置には好適であり、且つ多結晶シリコンを半導体層に用
いるトランジスタよりも製造工程が容易である。
【0006】
しかし、酸化物半導体を半導体層に用いるトランジスタは、酸化物半導体に水素、水分
等の不純物が入り込むことによってキャリアが形成され、該トランジスタの電気特性が変
動するという問題がある。
【0007】
上述した問題を解決するために、トランジスタのチャネル形成領域として用いる酸化物
半導体膜中の水素原子の濃度を1×1016cm-3未満とすることで、信頼性を向上さ
せたトランジスタが開示されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2006-165528号公報
【文献】特開2011-139047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2にも記載されているように、酸化物半導体膜を半導体層に用いるトランジス
タは、その電気特性を十分に維持するためには、水素、水分等を該酸化物半導体膜より極
力排除することが重要である。
【0010】
また、表示装置の画素領域及び駆動回路領域の双方にトランジスタを用いる場合、駆動
方法にも依存するが、画素領域よりも駆動回路領域に用いるトランジスタの方が、電気的
負荷が大きいため、駆動回路領域に用いるトランジスタの電気特性が重要となる。
【0011】
とくに、酸化物半導体膜を半導体層に用いるトランジスタを、画素領域及び駆動回路領
域に用いた表示装置では、高温高湿環境下の信頼性試験において、駆動回路領域に用いる
トランジスタの劣化が問題になっている。該トランジスタの劣化原因としては、トランジ
スタ上に形成された有機絶縁膜から、半導体層に用いる酸化物半導体膜へ水分等が入り込
み、該酸化物半導体膜のキャリア密度が増加するためである。
【0012】
そこで、本発明の一態様は、画素領域及び駆動回路領域にトランジスタを有する表示装
置において、電気特性の変動を抑制すると共に、信頼性を向上させることを課題の一とす
る。とくに、トランジスタのチャネル形成領域に酸化物半導体膜を用いた表示装置におい
て、該酸化物半導体膜への水素、水分の入り込みを抑制し、電気特性の変動を抑制すると
共に、信頼性を向上させることを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題に鑑み、本発明の一態様では、画素領域及び駆動回路領域に用いるトラン
ジスタを有する表示装置において、トランジスタの電気特性の変動を抑制することができ
る構造を提供する。より具体的には、トランジスタのチャネル形成領域に酸化物半導体膜
を用い、該トランジスタ上に設けられた有機絶縁材料により形成された平坦化膜の構造に
特徴を持たせ、水素、水分が酸化物半導体膜、特に駆動回路領域に用いる酸化物半導体膜
に入り込みづらい構造とする。より具体的には以下の通りである。
【0014】
本発明の一態様は、画素電極と、該画素電極と電気的に接続される少なくとも一つの第
1のトランジスタを含む画素が複数個配列されている画素領域と、画素領域の外側に隣接
し、該画素領域の各画素に含まれる第1のトランジスタに信号を供給する少なくとも一つ
の第2のトランジスタを含む駆動回路領域と、が形成された第1の基板と、第1の基板と
対向するように設けられた第2の基板と、第1の基板と第2の基板間に挟持された液晶層
と、を有し、第1のトランジスタ及び第2のトランジスタ上に無機絶縁材料で形成された
第1の層間絶縁膜と、第1の層間絶縁膜上に有機絶縁材料で形成された第2の層間絶縁膜
と、第2の層間絶縁膜上に無機絶縁材料で形成された第3の層間絶縁膜と、を有し、第3
の層間絶縁膜は、画素領域上の一部に設けられ、該第3の層間絶縁膜の端部が駆動回路領
域よりも内側に形成されることを特徴とする表示装置である。
【0015】
上記構成において、画素電極上に設けられた第1の配向膜と、第1の配向膜上に形成さ
れた液晶層と、液晶層上に設けられた第2の配向膜と、第2の配向膜上に設けられた対向
電極と、対向電極上に設けられた有機保護絶縁膜と、有機保護絶縁膜上に設けられた有色
膜及び遮光膜と、有色膜及び遮光膜上に設けられた第2の基板と、を有していてもよい。
【0016】
また、本発明の他の一態様は、画素電極と、該画素電極と電気的に接続される少なくと
も一つの第1のトランジスタを含む画素が複数個配列されている画素領域と、画素領域の
外側に隣接し、該画素領域の各画素に含まれる第1のトランジスタに信号を供給する少な
くとも一つの第2のトランジスタを含む駆動回路領域と、が形成された第1の基板と、第
1の基板と対向するように設けられた第2の基板と、第1の基板と第2の基板間に挟持さ
れた発光層と、を有し、第1のトランジスタ及び第2のトランジスタ上に無機絶縁材料で
形成された第1の層間絶縁膜と、第1の層間絶縁膜上に有機絶縁材料で形成された第2の
層間絶縁膜と、第2の層間絶縁膜上に無機絶縁材料で形成された第3の層間絶縁膜と、を
有し、第3の層間絶縁膜は、画素領域上の一部に設けられ、該第3の層間絶縁膜の端部が
駆動回路領域よりも内側に形成されることを特徴とする表示装置である。
【0017】
上記構成において、画素電極上に設けられた発光層と、発光層上に設けられた電極と、
を有していてもよい。
【0018】
また、上記各構成において、第3の層間絶縁膜は、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン
膜、酸化アルミニウム膜の中から選ばれたいずれか一であると好ましい。
【0019】
また、上記各構成において、第1のトランジスタ及び第2のトランジスタは、チャネル
形成領域を形成する半導体材料が酸化物半導体であると好ましい。また、第1のトランジ
スタ及び第2のトランジスタは、ゲート電極と、ゲート電極上に形成された酸化物半導体
からなる半導体層と、半導体層上に形成されたソース電極及びドレイン電極と、を有する
構成であると好ましい。
【0020】
また、本発明の一態様は、上記各構成の表示装置を有する電子機器も範疇に含めるもの
である。
【発明の効果】
【0021】
画素領域及び駆動回路領域にトランジスタを有する表示装置において、電気特性の変動
を抑制すると共に、信頼性を向上させることができる。とくに、トランジスタのチャネル
形成領域に酸化物半導体膜を用いた表示装置において、該酸化物半導体膜への水素、水分
の入り込みを抑制し、電気特性の変動を抑制すると共に、信頼性を向上させることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図5】本発明の一態様に係るイメージセンサ付表示装置の一例を示す回路図および断面図。
【
図6】本発明の一態様に係るタブレット型端末の一例を示す図。
【
図7】本発明の一態様に係る電子機器の例を示す図。
【
図8】各質量電荷比における放出ガスのイオン強度を示す図。
【
図9】基板表面温度に対する各質量電荷比のイオン強度を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明
は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であ
れば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈
されるものではない。
【0024】
以下に説明する実施の形態において、同じものを指す符号は異なる図面間で共通して用
いる。なお、図面において示す構成要素、すなわち層や領域等の厚さ幅、相対的な位置関
係等は、実施の形態において説明する上で明確性のために誇張して示される。
【0025】
また、本明細書等において「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に
限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり
、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」の用語は、複数の「電極」や「
配線」が一体となって形成されている場合なども含む。
【0026】
また、本明細書等において、窒化酸化シリコン膜とは、窒素と、酸素と、シリコンと、
を成分として含有し、且つ、窒素の含有量が酸素の含有量よりも多い膜である。また、酸
化窒化シリコン膜とは、酸素と、窒素と、シリコンと、を成分として含有し、且つ、酸素
の含有量が窒素の含有量よりも多い膜である。
【0027】
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合
や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このた
め、本明細書等においては、「ソース」や「ドレイン」の用語は、入れ替えて用いること
ができるものとする。
【0028】
(実施の形態1)
本実施の形態では、表示装置の一形態として、液晶パネルを用いた表示装置について図
1及び
図2を用いて説明する。
【0029】
図1(A)、(B)、(C)に表示装置の一形態として、表示装置の上面図を示す。な
お、
図1(A)は、表示装置全体を、
図1(B)は、表示装置の駆動回路部の一部分を、
図1(C)は画素領域の一部分の上面図を、それぞれ示す。また、
図2は、
図1(A)に
おけるX1-Y1の断面図に相当する。
【0030】
図1(A)に示す表示装置において、第1の基板102上に設けられた画素領域142
と、画素領域142の外側に隣接し、該画素領域142に信号を供給する駆動回路領域で
あるゲートドライバ回路部140及びソースドライバ回路部144を囲むようにして、シ
ール材166が設けられ、第2の基板152によって封止されている。また、画素領域1
42と、ゲートドライバ回路部140及びソースドライバ回路部144が設けられた第1
の基板102と対向するように第2の基板152が設けられている。よって画素領域14
2と、ゲートドライバ回路部140と、ソースドライバ回路部144とは、第1の基板1
02とシール材166と第2の基板152によって、表示素子と共に封止されている。
【0031】
また、
図1(A)においては、第1の基板102上のシール材166によって囲まれて
いる領域とは異なる領域に、画素領域142、ゲートドライバ回路部140、ソースドラ
イバ回路部144と電気的に接続されているFPC端子部146(FPC:Flexib
le printed circuit)が設けられており、FPC端子部146には、
FPC148が接続され、画素領域142、ゲートドライバ回路部140、及びソースド
ライバ回路部144に与えられる各種信号、及び電位は、FPC148により供給されて
いる。
【0032】
また、
図1(A)においては、ゲートドライバ回路部140及びソースドライバ回路部
144を画素領域142と同じ第1の基板102に形成している例を示しているが、この
構成に限定されない。例えば、ゲートドライバ回路部140のみを第1の基板102に形
成し、別途用意されたソースドライバ回路が形成された基板(例えば、単結晶半導体膜、
多結晶半導体膜で形成された駆動回路基板)を、第1の基板102に実装する構成として
も良い。
【0033】
また、
図1(A)においては、ゲートドライバ回路部140は画素領域142の両側に
2つ配置する構成について例示しているが、この構成に限定されない。例えば、画素領域
142の片側にのみゲートドライバ回路部140を配置する構成としても良い。
【0034】
なお、別途形成した駆動回路基板の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG
(Chip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法、或いはTAB(Tap
e Automated Bonding)方法などを用いることができる。また、表示
装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラを含むIC
等を実装した状態にあるモジュールとを含む。
【0035】
このように、トランジスタを含む駆動回路の一部または全体を、画素領域142と同じ
第1の基板102上に一体形成し、システムオンパネルを形成することができる。
【0036】
また、
図1(C)においては、画素領域142に、第1のトランジスタ101、容量素
子107が形成されている。第1のトランジスタ101は、半導体層108に対して、ゲ
ート電極104、ソース電極110、及びドレイン電極112が、それぞれ電気的に接続
されている。また、
図1(C)に示す平面図においては、図示しないが、第1のトランジ
スタ101上には、無機絶縁材料で形成された第1の層間絶縁膜と、第1の層間絶縁膜上
に有機絶縁材料で形成された第2の層間絶縁膜と、第2の層間絶縁膜上に無機絶縁材料で
形成された第3の層間絶縁膜が形成されている。また、容量素子107は、容量電極11
8と、容量電極118上に形成された第3の層間絶縁膜と、該第3の層間絶縁膜上に形成
された画素電極122により構成されている。
【0037】
また、
図1(B)においては、駆動回路領域であるゲートドライバ回路部140に、第
2のトランジスタ103、及び第3のトランジスタ105が形成されている。また、ゲー
トドライバ回路部140の各トランジスタは、半導体層108に対して、ゲート電極10
4、ソース電極110、及びドレイン電極112が、それぞれ電気的に接続されている。
また、ゲートドライバ回路部140においては、ゲート電極104を含むゲート線が左右
方向に延在し、ソース電極110を含むソース線が上下方向に延在し、ドレイン電極11
2を含むドレイン線がソース電極と離間して上下方向に延在している。
【0038】
第2のトランジスタ103、及び第3のトランジスタ105を含むゲートドライバ回路
部140は、画素領域142の各画素に含まれる第1のトランジスタ101に信号を供給
することができる。
【0039】
また、ゲートドライバ回路部140における第2のトランジスタ103、及び第3のト
ランジスタ105は、各種信号の制御、及び昇圧等を行うために、比較的高い電圧が必要
となる。具体的には、10V~30V程度の電圧が必要となる。一方、画素領域142に
おける第1のトランジスタ101は、画素のスイッチングのために用いるのみであるため
、数V~20V程度の電圧で駆動することができる。そのため、ゲートドライバ回路部1
40における第2のトランジスタ103、及び第3のトランジスタ105は、画素領域1
42における第1のトランジスタ101と比較し、与えられるストレスが非常に大きい構
成となる。
【0040】
図1(A)、(B)、(C)に示す表示装置の構成をより具体的に説明するため、
図1
(A)、(B)、(C)におけるX1-Y1の断面図に相当する
図2を用いて、ゲートド
ライバ回路部140、及び画素領域142の構成について、以下説明を行う。
【0041】
画素領域142において、第1の基板102と、第1の基板102上に形成されたゲー
ト電極104と、ゲート電極104上に形成されたゲート絶縁膜106と、ゲート絶縁膜
106と接し、ゲート電極104と重畳する位置に設けられた半導体層108と、ゲート
絶縁膜106、及び半導体層108上に形成されたソース電極110及びドレイン電極1
12と、により、第1のトランジスタ101が形成されている。
【0042】
また、画素領域142において、第1のトランジスタ101上、より詳しくはゲート絶
縁膜106、半導体層108、ソース電極110、及びドレイン電極112上に無機絶縁
材料で形成された第1の層間絶縁膜114と、第1の層間絶縁膜114上に有機絶縁材料
で形成された第2の層間絶縁膜116と、第2の層間絶縁膜116上に形成された容量電
極118と、第2の層間絶縁膜116及び容量電極118上に無機絶縁材料で形成された
第3の層間絶縁膜120と、第3の層間絶縁膜120上に形成された画素電極122と、
を有している。
【0043】
なお、容量電極118と、第3の層間絶縁膜120と、画素電極122と、により容量
素子107が形成されている。容量電極118、第3の層間絶縁膜120、及び画素電極
122を、それぞれ、可視光において、透光性を有する材料により形成することで、画素
領域の開口率を損ねることなく大きな容量を確保することができるので、好適である。
【0044】
また、画素電極122上には、第1の配向膜124と、第1の配向膜124上に設けら
れた液晶層162と、液晶層162上に設けられた第2の配向膜164と、第2の配向膜
164上に設けられた対向電極158と、対向電極158上に設けられた有機保護絶縁膜
156と、有機保護絶縁膜156上に設けられた有色膜153及び遮光膜154と、有色
膜153及び遮光膜154上に設けられた第2の基板152と、を有する。
【0045】
なお、画素電極122と、第1の配向膜124と、液晶層162と、第2の配向膜16
4と、対向電極158と、により表示素子である液晶素子150が形成されている。
【0046】
ゲートドライバ回路部140において、第1の基板102と、第1の基板102上に形
成されたゲート電極104と、ゲート電極104上に形成されたゲート絶縁膜106と、
ゲート絶縁膜106と接し、ゲート電極104と重畳する位置に設けられた半導体層10
8と、ゲート絶縁膜106、及び半導体層108上に形成されたソース電極110及びド
レイン電極112と、により、第2のトランジスタ103、及び第3のトランジスタ10
5が形成されている。
【0047】
また、ゲートドライバ回路部140において、第2のトランジスタ103及び第3のト
ランジスタ105上、より詳しくはゲート絶縁膜106、及び半導体層108、ソース電
極110、及びドレイン電極112上に形成された第1の層間絶縁膜114と、第1の層
間絶縁膜114上に形成された第2の層間絶縁膜116が形成されている。
【0048】
すなわち、第3の層間絶縁膜120は、画素領域142上の一部に設けられ、第3の層
間絶縁膜120の端部が駆動回路領域であるゲートドライバ回路部140よりも内側に形
成される。
【0049】
このような構成とすることによって、外部から取り込まれる水分、または表示装置内部
で生じた水分、水素等のガスをゲートドライバ回路部140の第2の層間絶縁膜116か
ら上部へ放出することができる。したがって、第1のトランジスタ101、第2のトラン
ジスタ103、及び第3のトランジスタ105内部に水分、水素等のガスが取り込まれる
のを抑制することができる。
【0050】
なお、有機絶縁材料により形成される第2の層間絶縁膜116は、表示装置を構成する
トランジスタの凹凸等を低減するために、平坦性の高い有機絶縁材料が必要とされる。こ
れは、トランジスタの凹凸等を低減することにより、表示装置の画質を向上させることが
できるためである。しかしながら、該有機絶縁材料は加熱等により、水素、水分、または
有機成分をガスとして放出してしまう。
【0051】
しかし、半導体層108に、例えば、シリコン系半導体材料であるシリコン膜を用いた
トランジスタにおいては、上述の水素、水分、または有機成分のガスが大きな問題になる
可能性が低い。しかし、本発明の一態様においては、半導体層108に酸化物半導体膜を
用いるため、有機絶縁材料により形成される第2の層間絶縁膜116からのガスを外部に
好適に放出させる必要がある。なお、第3の層間絶縁膜120の端部が駆動回路領域であ
るゲートドライバ回路部140よりも内側に形成される構成は、半導体層108を酸化物
半導体膜により形成した場合において、優れた効果を奏する。ただし、半導体層108に
酸化物半導体以外の材料(例えば、シリコン系半導体材料である非晶質シリコン、結晶性
シリコンなど)により形成したトランジスタにおいても、同様の効果が得られる。
【0052】
また、有機絶縁材料で形成された第2の層間絶縁膜116上に形成される無機絶縁材料
で形成された第3の層間絶縁膜120は、本実施の形態においては、容量素子107の誘
電体として用いる。また、無機絶縁材料で形成された第3の層間絶縁膜120は、外部か
ら第2の層間絶縁膜116に入り込む水素、水分等を抑制することができる。
【0053】
しかしながら、第3の層間絶縁膜120をゲートドライバ回路部140に用いる第2の
トランジスタ103及び第3のトランジスタ105上の第2の層間絶縁膜116上に形成
すると、第2の層間絶縁膜116に用いる有機絶縁材料から放出されるガスを外部に拡散
することができず、第2のトランジスタ103、及び第3のトランジスタ105内部に入
り込む。
【0054】
上述した有機絶縁材料から放出されるガスが、トランジスタの半導体層108に用いる
酸化物半導体に入り込むと、酸化物半導体膜中で不純物として取り込まれ、該半導体層1
08を用いたトランジスタの特性が変動してしまう。
【0055】
しかし、
図2に示すように、ゲートドライバ回路部140に用いる第2のトランジスタ
103、及び第3のトランジスタ105上の第3の層間絶縁膜120が開口された構成、
すなわち第3の層間絶縁膜120が、画素領域142の一部に設けられ、第3の層間絶縁
膜120の端部がゲートドライバ回路部140よりも内側に形成される構成とすることに
よって、第2の層間絶縁膜116から放出されるガスを、外部へ拡散できる構造とするこ
とができる。
【0056】
なお、
図2に示すように、画素領域142に用いる第1のトランジスタ101において
も、半導体層108の重畳する位置の無機絶縁材料で形成された第3の層間絶縁膜120
が除去された構成が好ましい。このような構成とすることで、有機絶縁材料で形成された
第2の層間絶縁膜116から放出されるガスが、第1のトランジスタ101へ入り込むの
を抑制することができる。
【0057】
ここで、
図1及び
図2に示す表示装置の他の構成要素について、以下詳細な説明を行う
。
【0058】
第1の基板102及び第2の基板152としては、アルミノシリケートガラス、アルミ
ノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスなどのガラス材料を用いる。量産する上
では、第1の基板102及び第2の基板152は、第8世代(2160mm×2460m
m)、第9世代(2400mm×2800mm、または2450mm×3050mm)、
第10世代(2950mm×3400mm)等のマザーガラスを用いることが好ましい。
マザーガラスは、処理温度が高く、処理時間が長いと大幅に収縮するため、マザーガラス
を使用して量産を行う場合、作製工程の加熱処理は、好ましくは600℃以下、さらに好
ましくは450℃以下、さらに好ましくは350℃以下とすることが望ましい。
【0059】
なお、第1の基板102及びゲート電極104の間に下地絶縁膜を設けてもよい。下地
絶縁膜としては、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化シリコン膜、窒化酸化シリ
コン膜、酸化ガリウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化アルミニウム膜
、酸化窒化アルミニウム膜等がある。なお、下地絶縁膜として、窒化シリコン膜、酸化ガ
リウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化アルミニウム膜等を用いること
で、第1の基板102から不純物、代表的にはアルカリ金属、水、水素等が半導体層10
8へ入り込むのを抑制することができる。
【0060】
ゲート電極104としては、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデ
ン、タングステンから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、
上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いて形成することができる。また、マンガン
、ジルコニウムのいずれか一または複数から選択された金属元素を用いてもよい。また、
ゲート電極104は、単層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコ
ンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、
窒化チタン膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層
する二層構造、窒化タンタル膜または窒化タングステン膜上にタングステン膜を積層する
二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタ
ン膜を形成する三層構造等がある。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングス
テン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素の膜、または複数
組み合わせた合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
【0061】
また、ゲート電極104は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム
酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸
化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化シリコンを添
加したインジウム錫酸化物等の透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また
、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とすることもできる。
【0062】
また、ゲート電極104とゲート絶縁膜106との間に、In-Ga-Zn系酸窒化物
半導体膜、In-Sn系酸窒化物半導体膜、In-Ga系酸窒化物半導体膜、In-Zn
系酸窒化物半導体膜、Sn系酸窒化物半導体膜、In系酸窒化物半導体膜、金属窒化膜(
InN、ZnN等)等を設けてもよい。これらの膜は5eV以上、好ましくは5.5eV
以上の仕事関数を有し、酸化物半導体の電子親和力よりも大きい値であるため、酸化物半
導体を用いたトランジスタのしきい値電圧をプラスにシフトすることができ、所謂ノーマ
リーオフ特性のスイッチング素子を実現できる。例えば、In-Ga-Zn系酸窒化物半
導体膜を用いる場合、少なくとも半導体層108より高い窒素濃度、具体的には7原子%
以上のIn-Ga-Zn系酸窒化物半導体膜を用いる。
【0063】
ゲート絶縁膜106としては、例えば酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化
シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化ガリウム膜
またはGa-Zn系金属酸化物膜、などを用いればよく、積層または単層で設ける。なお
、半導体層108との界面特性を向上させるため、ゲート絶縁膜106において少なくと
も半導体層108と接する領域は酸化絶縁膜で形成することが好ましい。
【0064】
また、ゲート絶縁膜106に、酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する絶縁膜を
設けることで、半導体層108からの酸素の外部への拡散と、外部から半導体層108へ
水素、水等が入り込むのを防ぐことができる。酸素、水素、水等のブロッキング効果を有
する絶縁膜としては、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒
化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフ
ニウム等がある。
【0065】
また、ゲート絶縁膜106を積層構造とし、第1の窒化シリコン膜として、欠陥が少な
い窒化シリコン膜とし、第1の窒化シリコン膜上に、第2の窒化シリコン膜として、水素
放出量及びアンモニア放出量の少ない窒化シリコン膜を設け、第2の窒化シリコン膜上に
酸化絶縁膜を設けることで、ゲート絶縁膜106として、欠陥が少なく、且つ水素及びア
ンモニアの放出量の少ないゲート絶縁膜106を形成することができる。この結果、ゲー
ト絶縁膜106に含まれる水素及び窒素が、半導体層108へ移動することを抑制するこ
とが可能である。
【0066】
また、ゲート絶縁膜106に窒化シリコン膜を用いることで、以下の効果を得ることが
できる。窒化シリコン膜は、酸化シリコン膜と比較して比誘電率が高く、同等の静電容量
を得るのに必要な膜厚が大きいため、ゲート絶縁膜を物理的に厚膜化することができる。
よって、第1のトランジスタ101、第2のトランジスタ103、及び第3のトランジス
タ105の絶縁耐圧の低下を抑制、さらには絶縁耐圧を向上させて、表示装置に用いるト
ランジスタの静電破壊を抑制することができる。
【0067】
また、ゲート電極104として銅を用い、ゲート電極104に接するゲート絶縁膜10
6に窒化シリコン膜を用いる場合、銅とアンモニア分子が反応することを抑制するために
当該窒化シリコン膜は、加熱によるアンモニア分子放出量をできる限り低減することが好
ましい。
【0068】
酸化物半導体膜を半導体層108に用いるトランジスタにおいて、酸化物半導体膜及び
ゲート絶縁膜の界面またはゲート絶縁膜中に捕獲準位(界面準位ともいう。)があると、
トランジスタのしきい値電圧の変動、代表的にはしきい値電圧のマイナスシフト、及びト
ランジスタがオン状態となるときにドレイン電流が一桁変化するのに必要なゲート電圧を
示すサブスレッショルド係数(S値)の増大の原因となる。この結果、トランジスタごと
に電気特性がばらつくという問題がある。このため、ゲート絶縁膜として、欠陥の少ない
窒化シリコン膜を用いることで、しきい値電圧のマイナスシフト、及びトランジスタの電
気特性のばらつきを低減することができる。
【0069】
また、ゲート絶縁膜106として、ハフニウムシリケート(HfSiOx)、窒素が添
加されたハフニウムシリケート(HfSixOyNz)、窒素が添加されたハフニウムア
ルミネート(HfAlxOyNz)、酸化ハフニウム、酸化イットリウムなどのhigh
-k材料を用いることでトランジスタのゲートリークを低減できる。
【0070】
ゲート絶縁膜106の厚さは、5nm以上400nm以下、より好ましくは10nm以
上300nm以下、より好ましくは50nm以上250nm以下とするとよい。
【0071】
半導体層108は、酸化物半導体を用い、少なくともインジウム(In)若しくは亜鉛
(Zn)を含むことが好ましい。または、InとZnの双方を含むことが好ましい。また
、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすため、それらと共
に、スタビライザーの一または複数を有することが好ましい。
【0072】
スタビライザーとしては、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、ハフニウム(Hf)、ア
ルミニウム(Al)、またはジルコニウム(Zr)等がある。また、他のスタビライザー
としては、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(
Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム
(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビ
ウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等があ
る。
【0073】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、In-Zn系金
属酸化物、Sn-Zn系金属酸化物、Al-Zn系金属酸化物、Zn-Mg系金属酸化物
、Sn-Mg系金属酸化物、In-Mg系金属酸化物、In-Ga系金属酸化物、In-
W系金属酸化物、In-Ga-Zn系金属酸化物(IGZOとも表記する)、In-Al
-Zn系金属酸化物、In-Sn-Zn系金属酸化物、Sn-Ga-Zn系金属酸化物、
Al-Ga-Zn系金属酸化物、Sn-Al-Zn系金属酸化物、In-Hf-Zn系金
属酸化物、In-La-Zn系金属酸化物、In-Ce-Zn系金属酸化物、In-Pr
-Zn系金属酸化物、In-Nd-Zn系金属酸化物、In-Sm-Zn系金属酸化物、
In-Eu-Zn系金属酸化物、In-Gd-Zn系金属酸化物、In-Tb-Zn系金
属酸化物、In-Dy-Zn系金属酸化物、In-Ho-Zn系金属酸化物、In-Er
-Zn系金属酸化物、In-Tm-Zn系金属酸化物、In-Yb-Zn系金属酸化物、
In-Lu-Zn系金属酸化物、In-Sn-Ga-Zn系金属酸化物、In-Hf-G
a-Zn系金属酸化物、In-Al-Ga-Zn系金属酸化物、In-Sn-Al-Zn
系金属酸化物、In-Sn-Hf-Zn系金属酸化物、In-Hf-Al-Zn系金属酸
化物を用いることができる。
【0074】
なお、ここで、例えば、In-Ga-Zn系金属酸化物とは、InとGaとZnを主成
分として有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、I
nとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。
【0075】
また、酸化物半導体として、InMO3(ZnO)m(m>0、且つ、mは整数でない
)で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、Mn及びCoから選ばれ
た一の金属元素または複数の金属元素を示す。また、酸化物半導体として、In2SnO
5(ZnO)n(n>0、且つ、nは整数)で表記される材料を用いてもよい。
【0076】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Ga:
Zn=2:2:1(=2/5:2/5:1/5)、あるいはIn:Ga:Zn=3:1:
2(=1/2:1/6:1/3)の原子数比のIn-Ga-Zn系金属酸化物やその組成
の近傍の酸化物を用いることができる。あるいは、In:Sn:Zn=1:1:1(=1
/3:1/3:1/3)、In:Sn:Zn=2:1:3(=1/3:1/6:1/2)
あるいはIn:Sn:Zn=2:1:5(=1/4:1/8:5/8)の原子数比のIn
-Sn-Zn系金属酸化物を用いるとよい。なお、金属酸化物の原子数比は、誤差として
上記の原子数比のプラスマイナス20%の変動を含む。
【0077】
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性及び電気特性(電界効果移動度、し
きい値電圧、ばらつき等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする
半導体特性を得るために、キャリア密度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子
数比、原子間距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0078】
例えば、In-Sn-Zn系金属酸化物では比較的容易に高い移動度が得られる。しか
しながら、In-Ga-Zn系金属酸化物でも、バルク内欠陥密度を低くすることにより
電界効果移動度を上げることができる。
【0079】
また、半導体層108として用いることのできる酸化物半導体膜としては、エネルギー
ギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である。
このように、エネルギーギャップの広い酸化物半導体膜を用いることで、トランジスタの
オフ電流を低減することができる。
【0080】
次に、半導体層108として用いることのできる、酸化物半導体膜の構造について説明
する。
【0081】
酸化物半導体膜は、非単結晶酸化物半導体膜と単結晶酸化物半導体膜とに大別される。
非単結晶酸化物半導体膜とは、CAAC-OS(C Axis Aligned Cry
stalline Oxide Semiconductor)膜、多結晶酸化物半導体
膜、微結晶酸化物半導体膜、非晶質酸化物半導体膜などをいう。
【0082】
ここでは、CAAC-OS膜について説明する。
【0083】
CAAC-OS膜は、複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つであり、ほとんどの
結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさである。従って、CAAC-
OS膜に含まれる結晶部は、一辺が10nm未満、5nm未満または3nm未満の立方体
内に収まる大きさの場合も含まれる。
【0084】
CAAC-OS膜を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Elec
tron Microscope)によって観察すると、明確な結晶部同士の境界、即ち
結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、C
AAC-OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0085】
CAAC-OS膜を、試料面と概略平行な方向からTEMによって観察(断面TEM観
察)すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原
子の各層は、CAAC-OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹
凸を反映した形状であり、CAAC-OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
【0086】
一方、CAAC-OS膜を、試料面と概略垂直な方向からTEMによって観察(平面T
EM観察)すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列している
ことを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られ
ない。
【0087】
なお、本明細書において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角度
で配置されている状態をいう。従って、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「
垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。
従って、85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0088】
断面TEM観察および平面TEM観察より、CAAC-OS膜の結晶部は配向性を有し
ていることがわかる。
【0089】
CAAC-OS膜に対し、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)
装置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnO4の結晶を有するCAAC-OS
膜のout-of-plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピーク
が現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属され
ることから、CAAC-OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に
概略垂直な方向を向いていることが確認できる。
【0090】
一方、CAAC-OS膜に対し、c軸に概略垂直な方向からX線を入射させるin-p
lane法による解析では、2θが56°近傍にピークが現れる場合がある。このピーク
は、InGaZnO4の結晶の(110)面に帰属される。InGaZnO4の単結晶酸
化物半導体膜であれば、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)
として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行うと、(110)面と等価な結晶面
に帰属されるピークが6本観察される。これに対し、CAAC-OS膜の場合は、2θを
56°近傍に固定してφスキャンした場合でも、明瞭なピークが現れない。
【0091】
以上のことから、CAAC-OS膜では、異なる結晶部間ではa軸およびb軸の配向は
不規則であるが、c軸配向性を有し、かつc軸が被形成面または上面の法線ベクトルに平
行な方向を向いていることがわかる。従って、前述の断面TEM観察で確認された層状に
配列した金属原子の各層は、結晶のab面に平行な面である。
【0092】
なお、結晶部は、CAAC-OS膜を成膜した際、または加熱処理などの結晶化処理を
行った際に形成される。上述したように、結晶のc軸は、CAAC-OS膜の被形成面ま
たは上面の法線ベクトルに平行な方向に配向する。従って、例えば、CAAC-OS膜の
形状をエッチングなどによって変化させた場合、結晶のc軸がCAAC-OS膜の被形成
面または上面の法線ベクトルと平行にならないこともある。
【0093】
また、CAAC-OS膜中の結晶化度が均一でなくてもよい。例えば、CAAC-OS
膜の結晶部が、CAAC-OS膜の上面近傍からの結晶成長によって形成される場合、上
面近傍の領域は、被形成面近傍の領域よりも結晶化度が高くなることがある。また、CA
AC-OS膜に不純物を添加する場合、不純物が添加された領域の結晶化度が変化し、部
分的に結晶化度の異なる領域が形成されることもある。
【0094】
なお、InGaZnO4の結晶を有するCAAC-OS膜のout-of-plane
法による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現
れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、ZnGa2O4の結晶の(311)面に
帰属されることから、InGaZnO4の結晶を有するCAAC-OS膜中の一部に、Z
nGa2O4の結晶が含まれることを示している。CAAC-OS膜は、2θが31°近
傍にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
【0095】
CAAC-OS膜は、不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。不純物は、水素、炭素
、シリコン、遷移金属元素などの酸化物半導体膜の主成分以外の元素である。特に、シリ
コンなどの、酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸
化物半導体膜から酸素を奪うことで酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させ
る要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半
径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体膜内部に含まれると、酸化物半導体膜
の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。なお、酸化物半導体膜に含まれる不
純物は、キャリアトラップやキャリア発生源となる場合がある。
【0096】
また、CAAC-OS膜は、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜である。例えば、酸化
物半導体膜中の酸素欠損は、キャリアトラップとなることや、水素を捕獲することによっ
てキャリア発生源となることがある。
【0097】
不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損の少ない)ことを、高純度真性また
は実質的に高純度真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体
膜は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。従って、当
該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノ
ーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度
真性である酸化物半導体膜は、キャリアトラップが少ない。そのため、当該酸化物半導体
膜を用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる
。なお、酸化物半導体膜のキャリアトラップに捕獲された電荷は、放出するまでに要する
時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、不純物濃度が高
く、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性が不安定とな
る場合がある。
【0098】
また、CAAC-OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特
性の変動が小さい。
【0099】
また、CAAC-OS膜は、例えば、多結晶である酸化物半導体スパッタリング用ター
ゲットを用い、スパッタリング法によって成膜する。当該スパッタリング用ターゲットに
イオンが衝突すると、スパッタリング用ターゲットに含まれる結晶領域がa-b面から劈
開し、a-b面に平行な面を有する平板状またはペレット状のスパッタリング粒子として
剥離することがある。この場合、当該平板状のスパッタリング粒子が、結晶状態を維持し
たまま基板に到達することで、CAAC-OS膜を成膜することができる。
【0100】
また、CAAC-OS膜を成膜するために、以下の条件を適用することが好ましい。
【0101】
成膜時の不純物混入を低減することで、不純物によって結晶状態が崩れることを抑制で
きる。例えば、成膜室内に存在する不純物濃度(水素、水、二酸化炭素および窒素など)
を低減すればよい。また、成膜ガス中の不純物濃度を低減すればよい。具体的には、露点
が-80℃以下、好ましくは-100℃以下である成膜ガスを用いる。
【0102】
また、成膜時の基板加熱温度を高めることで、基板到達後にスパッタリング粒子のマイ
グレーションが起こる。具体的には、基板加熱温度を100℃以上740℃以下、好まし
くは150℃以上500℃以下として成膜する。成膜時の基板加熱温度を高めることで、
平板状のスパッタリング粒子が基板に到達した場合、基板上でマイグレーションが起こり
、スパッタリング粒子の平らな面が基板に付着する。
【0103】
また、成膜ガス中の酸素割合を高め、電力を最適化することで成膜時のプラズマダメー
ジを軽減すると好ましい。成膜ガス中の酸素割合は、30体積%以上、好ましくは100
体積%とする。
【0104】
また、半導体層108として用いる酸化物半導体膜は、複数の酸化物半導体膜が積層さ
れた構造でもよい。例えば、酸化物半導体膜を、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半
導体膜の積層として、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜に、異なる組成の金
属酸化物を用いてもよい。例えば、第1の酸化物半導体膜に二元系金属酸化物乃至四元系
金属酸化物の一を用い、第2の酸化物半導体膜に第1の酸化物半導体膜と異なる二元系金
属酸化物乃至四元系金属酸化物を用いてもよい。
【0105】
また、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜の構成元素を同一とし、両者の組
成を異ならせてもよい。例えば、第1の酸化物半導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=
1:1:1とし、第2の酸化物半導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=3:1:2とし
てもよい。また、第1の酸化物半導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=1:3:2とし
、第2の酸化物半導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=2:1:3としてもよい。なお
、各酸化物半導体膜の原子数比は、誤差として上記の原子数比のプラスマイナス20%の
変動を含む。
【0106】
この時、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜のうち、ゲート電極に近い側(
チャネル側)の酸化物半導体膜のInとGaの含有率をIn>Gaとするとよい。またゲ
ート電極から遠い側(バックチャネル側)の酸化物半導体膜のInとGaの含有率をIn
≦Gaとするとよい。
【0107】
また、酸化物半導体膜を3層構造とし、第1の酸化物半導体膜~第3の酸化物半導体膜
の構成元素を同一とし、且つそれぞれの組成を異ならせてもよい。例えば、第1の酸化物
半導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=1:3:2とし、第2の酸化物半導体膜の原子
数比をIn:Ga:Zn=3:1:2とし、第3の酸化物半導体膜の原子数比をIn:G
a:Zn=1:1:1としてもよい。
【0108】
Ga及びZnよりInの原子数比が小さい酸化物半導体膜、代表的には原子数比がIn
:Ga:Zn=1:3:2である第1の酸化物半導体膜は、Ga及びZnよりInの原子
数比が大きい酸化物半導体膜、代表的には第2の酸化物半導体膜、並びにGa、Zn、及
びInの原子数比が同じ酸化物半導体膜、代表的には第3の酸化物半導体膜と比較して、
酸素欠損が生じにくいため、キャリア密度が増加することを抑制することができる。また
、原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:2である第1の酸化物半導体膜が非晶質構造で
あると、第2の酸化物半導体膜がCAAC-OS膜となりやすい。
【0109】
また、第1の酸化物半導体膜~第3の酸化物半導体膜の構成元素は同一であるため、第
1の酸化物半導体膜は、第2の酸化物半導体膜との界面におけるトラップ準位が少ない。
このため、酸化物半導体膜を上記構造とすることで、トランジスタの経時変化や光劣化に
よるしきい値電圧の変動量を低減することができる。
【0110】
酸化物半導体では主として重金属のs軌道がキャリア伝導に寄与しており、Inの含有
率を多くすることにより、より多くのs軌道が重なるため、In>Gaの組成となる酸化
物はIn≦Gaの組成となる酸化物と比較して高いキャリア移動度を備える。また、Ga
はInと比較して酸素欠損の形成エネルギーが大きく酸素欠損が生じにくいため、In≦
Gaの組成となる酸化物はIn>Gaの組成となる酸化物と比較して安定した特性を備え
る。
【0111】
チャネル側にIn>Gaの組成となる酸化物半導体を適用し、バックチャネル側にIn
≦Gaの組成となる酸化物半導体を適用することで、トランジスタの電界効果移動度及び
信頼性をさらに高めることが可能となる。
【0112】
また、第1の酸化物半導体膜乃至第3の酸化物半導体膜に、結晶性の異なる酸化物半導
体を適用してもよい。すなわち、単結晶酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、微結晶酸化
物半導体、非晶質酸化物半導体、またはCAAC-OSを適宜組み合わせた構成としても
よい。また、第1の酸化物半導体膜乃至第2の酸化物半導体膜のいずれか一に非晶質酸化
物半導体を適用すると、酸化物半導体膜の内部応力や外部からの応力を緩和し、トランジ
スタの特性ばらつきが低減され、また、トランジスタの信頼性をさらに高めることが可能
となる。
【0113】
酸化物半導体膜の厚さは、1nm以上100nm以下、更に好ましくは1nm以上30
nm以下、更に好ましくは1nm以上50nm以下、更に好ましくは3nm以上20nm
以下とすることが好ましい。
【0114】
半導体層108に用いる酸化物半導体膜において、二次イオン質量分析法(SIMS:
Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られるア
ルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、さ
らに好ましくは2×1016atoms/cm3以下であることが望ましい。アルカリ金
属及びアルカリ土類金属は、酸化物半導体と結合するとキャリアを生成する場合があり、
トランジスタのオフ電流の上昇の原因となるためである。
【0115】
また、半導体層108に用いる酸化物半導体膜において、二次イオン質量分析法により
得られる水素濃度を、5×1018atoms/cm3未満、好ましくは1×1018a
toms/cm3以下、より好ましくは5×1017atoms/cm3以下、さらに好
ましくは1×1016atoms/cm3以下とすることが好ましい。
【0116】
酸化物半導体膜に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水となると共に
、酸素が脱離した格子(あるいは酸素が脱理した部分)には欠損が形成されてしまう。ま
た、水素の一部が酸素と結合することで、キャリアである電子が生じてしまう。これらの
ため、酸化物半導体膜の成膜工程において、水素を含む不純物を極めて減らすことにより
、酸化物半導体膜の水素濃度を低減することが可能である。このため、水素をできるだけ
除去された酸化物半導体膜をチャネル領域とすることにより、しきい値電圧のマイナスシ
フトを抑制することができると共に、電気特性のばらつきを低減することができる。また
、トランジスタのソース及びドレインにおけるリーク電流を、代表的には、オフ電流を低
減することが可能である。
【0117】
また、半導体層108に用いる酸化物半導体膜の窒素濃度を5×1018atoms/
cm3以下とすることで、トランジスタのしきい値電圧のマイナスシフトを抑制すること
ができると共に、電気特性のばらつきを低減することができる。
【0118】
なお、水素をできるだけ除去することで高純度化された酸化物半導体膜をチャネル領域
に用いたトランジスタのオフ電流が低いことは、いろいろな実験により証明できる。例え
ば、チャネル幅が1×106μmでチャネル長が10μmのトランジスタであっても、ソ
ース電極とドレイン電極間の電圧(ドレイン電圧)が1Vから10Vの範囲において、オ
フ電流が、半導体パラメータアナライザの測定限界以下、すなわち1×10-13A以下
という特性を得ることができる。この場合、オフ電流をトランジスタのチャネル幅で除し
た数値に相当するオフ電流は、100zA/μm以下であることが分かる。また、容量素
子とトランジスタとを接続して、容量素子に流入または容量素子から流出する電荷を当該
トランジスタで制御する回路を用いて、オフ電流の測定を行った。当該測定では、上記ト
ランジスタに高純度化された酸化物半導体膜をチャネル領域に用い、容量素子の単位時間
あたりの電荷量の推移から当該トランジスタのオフ電流を測定した。その結果、トランジ
スタのソース電極とドレイン電極間の電圧が3Vの場合に、数十yA/μmという、さら
に低いオフ電流が得られることが分かった。従って、高純度化された酸化物半導体膜をチ
ャネル領域に用いたトランジスタは、オフ電流が著しく小さい。
【0119】
ソース電極110及びドレイン電極112としては、導電材料として、アルミニウム、
チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタ
ル、またはタングステンからなる単体金属、またはこれを主成分とする合金を単層構造ま
たは積層構造として用いる。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミ
ニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、タングステン膜上にチタン膜を積層する二層
構造、銅-マグネシウム-アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜ま
たは窒化チタン膜と、そのチタン膜または窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜または
銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜または窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブ
デン膜または窒化モリブデン膜と、そのモリブデン膜または窒化モリブデン膜上に重ねて
アルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜または窒化モリブデン
膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透
明導電材料を用いてもよい。
【0120】
なお、本実施の形態では、ソース電極110及びドレイン電極112を半導体層108
上に設けたが、ゲート絶縁膜106と半導体層108の間に設けても良い。
【0121】
第1の層間絶縁膜114としては、半導体層108として用いる酸化物半導体膜との界
面特性を向上させるため、酸化物絶縁膜を用いることが好ましい。第1の層間絶縁膜11
4としては、厚さ150nm以上400nm以下の酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜
、酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化ガリウム膜、またはGa-Zn系金属酸
化物膜等を用いることができる。また、第1の層間絶縁膜114としては、酸化物絶縁膜
と窒化物絶縁膜との積層構造としてもよい。例えば、第1の層間絶縁膜114として、酸
化窒化シリコン膜と、窒化シリコン膜との積層構造とすることができる。
【0122】
第2の層間絶縁膜116としては、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ベンゾシクロ
ブテン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂等の、耐熱性を有する有機絶縁材料を
用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、
第2の層間絶縁膜116を形成してもよい。第2の層間絶縁膜116を用いることにより
、第1のトランジスタ101等の凹凸を平坦化させることが可能となる。
【0123】
容量電極118としては、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステ
ンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含む
インジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す。)、インジウム亜鉛酸
化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を用い
ることができる。
【0124】
第3の層間絶縁膜120としては、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シ
リコン膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜などの無機絶縁材料を用いることができ
る。特に、第3の層間絶縁膜120としては、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸
化アルミニウム膜の中から選ばれたいずれか一であることが好ましい。窒化シリコン膜、
窒化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜の中から選ばれたいずれか一を第3の層間絶縁
膜120として用いることにより、第2の層間絶縁膜116からの水素、水分の放出を抑
制することができる。
【0125】
画素電極122としては、容量電極118に示す材料と同様の材料を用いることができ
る。容量電極118と画素電極122に用いる材料としては、同一の材料、または異なる
材料を用いても良いが、同一の材料の方が、製造コストを低減できるため好ましい。
【0126】
第1の配向膜124及び第2の配向膜164としては、アクリル系樹脂、ポリイミド系
樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂等の、耐熱性を有
する有機材料を用いることができる。
【0127】
液晶層162としては、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散
型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等の液晶材料を用いることができる。これらの液
晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラル
ネマチック相、等方相等を示す。
【0128】
また、横電界方式を採用する場合、配向膜(第1の配向膜124及び第2の配向膜16
4)を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つであり、コ
レステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現
する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善するため
に数重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いて液晶層に用いる。ブルー相
を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が短く、光学的等方性であるた
め配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくてもよいのでラ
ビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止する
ことができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。よって液
晶表示装置の生産性を向上させることが可能となる。酸化物半導体膜を用いるトランジス
タは、静電気の影響によりトランジスタの電気的な特性が著しく変動して設計範囲を逸脱
する恐れがある。よって酸化物半導体膜を用いるトランジスタを有する液晶表示装置にブ
ルー相の液晶材料を用いることはより効果的である。
【0129】
また、液晶材料の固有抵抗は、1×109Ω・cm以上であり、好ましくは1×101
1Ω・cm以上であり、さらに好ましくは1×1012Ω・cm以上である。なお、本明
細書における固有抵抗の値は、20℃で測定した値とする。
【0130】
表示装置に設けられる保持容量の大きさは、画素領域に配置されるトランジスタのリー
ク電流等を考慮して、所定の期間の電荷を保持できるように設定される。保持容量の大き
さは、トランジスタのオフ電流等を考慮して設定すればよい。高純度且つ酸素欠損の形成
を抑制した酸化物半導体層を有するトランジスタを用いることにより、例えば表示素子と
して、液晶素子を用いた場合、各画素における液晶容量に対して1/3以下、好ましくは
1/5以下の容量の大きさを有する保持容量を設ければ充分である。
【0131】
また、本実施の形態で用いる高純度化し、酸素欠損の形成を抑制した酸化物半導体を半
導体層に用いるトランジスタは、オフ状態における電流値(オフ電流値)を低くすること
ができる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くすることができ、電源オン状
態では書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくするこ
とができるため、消費電力を抑制する効果を奏する。
【0132】
また、
図1及び
図2に示す表示装置において、液晶素子150の駆動モードとしては、
TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In-Plane-Swit
ching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード
、ASM(Axially Symmetric aligned Micro-cel
l)モード、OCB(Optical Compensated Birefringe
nce)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal
)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Cryst
al)モードなどを用いることができる。特に、高視野角を得るにはFFSモードを用い
ると好ましい。
【0133】
また、ノーマリブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した
透過型の液晶表示装置としてもよい。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが、
例えば、MVA(Multi-Domain Vertical Alignment)
モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード
などを用いることができる。また、画素(ピクセル)をいくつかの領域(サブピクセル)
に分け、それぞれ別の方向に分子を倒すよう工夫されているマルチドメイン化あるいはマ
ルチドメイン設計といわれる方法を用いてもよい。
【0134】
また、
図1及び
図2においては、図示していないが、偏光部材、位相差部材、反射防止
部材などの光学部材(光学基板)などを適宜設けても良い。例えば、偏光基板及び位相差
基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを
用いてもよい。
【0135】
また、画素領域142における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式
等を用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、R
GB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、RGBW(Wは
白を表す)、又はRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上追加したものがあ
る。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい。ただし、開
示する発明はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表示の表示装置
に適用することもできる。
【0136】
また、第2の基板152の下方には、スペーサ160が形成されており、第1の基板1
02と第2の基板152との間隔(セルギャップともいう)を制御するために設けられて
いる。なお、セルギャップにより、液晶層162の膜厚が決定される。なお、スペーサ1
60としては、絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサ、球状の
スペーサ等の任意の形状のスペーサを用いればよい。
【0137】
また、有色膜153は、所謂カラーフィルタとして機能する。有色膜153としては、
特定波長帯域の光に対して透過性を示す材料を用いればよく、染料や顔料を含有した有機
樹脂膜等を用いることができる。
【0138】
また、遮光膜154は、所謂ブラックマトリクスとして機能する。遮光膜154として
は、隣接する画素間の放射光を遮光できればよく、金属膜、及び黒色染料や黒色顔料を含
有した有機樹脂膜等を用いることができる。なお、本実施の形態においては、黒色顔料を
含有した有機樹脂膜による遮光膜154を例示している。
【0139】
また、有機保護絶縁膜156としては、有色膜153に含まれるイオン性物質が液晶層
162中に拡散しないように設ける。ただし、有機保護絶縁膜156は、この構成に限定
されず、設けない構成としても良い。
【0140】
また、シール材166としては、熱硬化型樹脂、または紫外線硬化型の樹脂等を用いる
ことができる。なお、
図2に示すシール材166の封止領域においては、第1の基板10
2と第2の基板152間に、ゲート絶縁膜106、ソース電極110及びドレイン電極1
12と同一工程で形成される電極113、第1の層間絶縁膜114、及び第2の層間絶縁
膜116を設ける構成を例示したがこれに限定されない。例えば、ゲート絶縁膜106と
、第1の層間絶縁膜114のみの構成としても良い。なお、第2の層間絶縁膜116を除
去したほうが、外部からの水分等の入り込みがないため、
図2に示すように、第2の層間
絶縁膜116の一部を除去または一部を後退させる構造が好ましい。
【0141】
以上のように本実施の形態に示す表示装置は、画素領域と駆動回路領域のそれぞれに形
成されたトランジスタと、該トランジスタ上に形成された第1の層間絶縁膜と、第1の層
間絶縁膜上に形成された第2の層間絶縁膜と、第2の層間絶縁膜上に形成された第3の層
間絶縁膜と、を有し、第3の層間絶縁膜が画素領域上の一部に設けられ、第3の層間絶縁
膜の端部が駆動回路領域よりも内側に形成される構成である。このような構成とすること
で、第2の層間絶縁膜からの脱ガスがトランジスタ側へ入り込むのを抑制し、信頼性の高
い表示装置とすることができる。また、さらに第1の層間絶縁膜により、第2の層間絶縁
膜からの脱ガスがトランジスタ側へ入り込むのを抑制できる。
【0142】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態または実施例に示す構成と適宜組み合わせ
て用いることができる。
【0143】
(実施の形態2)
本実施の形態では、表示装置の一形態として、有機ELパネルを用いた表示装置につい
て
図3及び
図4を用いて説明する。なお、実施の形態1で示す構成と同一の箇所には同一
の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0144】
表示装置の一形態として、表示装置の上面図を
図3に、表示装置の断面図を
図4にそれ
ぞれ示す。なお、
図4は、
図3におけるX2-Y2の断面図に相当する。
【0145】
図3に示す表示装置において、第1の基板102上に設けられた画素領域142と、画
素領域142の外側に隣接し、該画素領域142に信号を供給する駆動回路領域であるゲ
ートドライバ回路部140及びソースドライバ回路部144を囲むようにして、シール材
166が設けられ、第2の基板152によって封止されている。また、画素領域142と
、ゲートドライバ回路部140及びソースドライバ回路部144が設けられた第1の基板
102と対向するように第2の基板152が設けられている。よって画素領域142と、
ゲートドライバ回路部140と、ソースドライバ回路部144とは、第1の基板102と
シール材166と第2の基板152によって、表示素子と共に封止されている。
【0146】
このように、トランジスタを含む駆動回路の一部または全体を、画素領域142と同じ
第1の基板102上に一体形成し、システムオンパネルを形成することができる。
【0147】
次に、
図3におけるX2-Y2の断面図に相当する
図4を用いて、画素領域142、及
びゲートドライバ回路部140の構成について、以下詳細に説明を行う。
【0148】
画素領域142において、第1の基板102と、第1の基板102上に形成されたゲー
ト電極104と、ゲート電極104上に形成されたゲート絶縁膜106と、ゲート絶縁膜
106と接し、ゲート電極104と重畳する位置に設けられた半導体層108と、ゲート
絶縁膜106、及び半導体層108上に形成されたソース電極110及びドレイン電極1
12と、により、第1のトランジスタ101が形成されている。
【0149】
また、画素領域142において、第1のトランジスタ101上、より詳しくはゲート絶
縁膜106、及び半導体層108、ソース電極110、及びドレイン電極112上に無機
絶縁材料で形成された第1の層間絶縁膜114と、第1の層間絶縁膜114上に有機絶縁
材料で形成された第2の層間絶縁膜116と、第2の層間絶縁膜116上に無機絶縁材料
で形成された第3の層間絶縁膜120と、第2の層間絶縁膜116、及び第3の層間絶縁
膜120上に形成された隔壁126と、第3の層間絶縁膜120、及び隔壁126上に形
成された画素電極122と、画素電極122上に形成された発光層128と、発光層12
8上に形成された電極130が形成されている。
【0150】
なお、画素電極122と、発光層128と、電極130と、により発光素子170が形
成されている。
【0151】
また、発光素子170上、より詳しくは電極130上には、充填材172が設けられ、
充填材172上には、第2の基板152が設けられている。すなわち、第1の基板102
と、第2の基板152との間に発光素子170、及び充填材172が挟持された構造であ
る。
【0152】
また、ゲートドライバ回路部140において、第1の基板102と、第1の基板102
上に形成されたゲート電極104と、ゲート電極104上に形成されたゲート絶縁膜10
6と、ゲート絶縁膜106と接し、ゲート電極104と重畳する位置に設けられた半導体
層108と、ゲート絶縁膜106、及び半導体層108上に形成されたソース電極110
及びドレイン電極112と、により、第2のトランジスタ103、及び第3のトランジス
タ105が形成されている。
【0153】
また、ゲートドライバ回路部140において、第2のトランジスタ103及び第3のト
ランジスタ105上、より詳しくはゲート絶縁膜106、及び半導体層108、ソース電
極110、及びドレイン電極112上に無機絶縁材料で形成された第1の層間絶縁膜11
4と、第1の層間絶縁膜114上に有機絶縁材料で形成された第2の層間絶縁膜116が
形成されている。
【0154】
すなわち、第3の層間絶縁膜120は、画素領域142上の一部に設けられ、第3の層
間絶縁膜120の端部が駆動回路領域であるゲートドライバ回路部140よりも内側に形
成される。
【0155】
このような構成とすることによって、外部から取り込まれる水分、または表示装置内部
で生じた水分、水素等のガスをゲートドライバ回路部140の第2の層間絶縁膜116か
ら上部へ放出することができる。したがって、第1のトランジスタ101、第2のトラン
ジスタ103、及び第3のトランジスタ105内部に水分、水素等のガスが取り込まれる
のを抑制することができる。
【0156】
なお、有機絶縁材料により形成される第2の層間絶縁膜116は、表示装置を構成する
トランジスタの凹凸等を低減するために、平坦性の高い有機絶縁材料が必要とされる。し
かしながら、該有機絶縁材料は加熱等により、水素、水分、または有機成分をガスとして
放出してしまう。
【0157】
しかし、半導体層108に、例えば、シリコン系半導体材料であるシリコン膜を用いた
トランジスタにおいては、上述の水素、水分、または有機成分のガスが大きな問題になる
可能性が低い。しかし、本発明の一態様においては、半導体層108に酸化物半導体膜を
用いるため、有機絶縁材料により形成される第2の層間絶縁膜116からのガスを外部に
好適に放出させる必要がある。なお、第3の層間絶縁膜120の端部が駆動回路領域であ
るゲートドライバ回路部140よりも内側に形成される構成は、半導体層108を酸化物
半導体膜により形成した場合において、優れた効果を奏する。ただし、半導体層108に
酸化物半導体以外の材料(例えば、シリコン系半導体材料である非晶質シリコン、結晶性
シリコンなど)により形成したトランジスタにおいても、同様の効果が得られる。
【0158】
また、第2の層間絶縁膜116上に形成される第3の層間絶縁膜120は、本実施の形
態においては、第2の層間絶縁膜116から放出するガスが発光素子170側へ入り込む
のを抑制するため、及び/または画素電極122と、第2の層間絶縁膜116との密着性
を向上させるために形成されている。このような構成とすることで発光素子170側へ第
2の層間絶縁膜116からの水素、水分等のガスが入り込むのを抑制することができる。
【0159】
しかしながら、第3の層間絶縁膜120をゲートドライバ回路部140に用いる第2の
トランジスタ103、及び第3のトランジスタ105上の第2の層間絶縁膜116上に形
成すると、第2の層間絶縁膜116に用いる有機絶縁材料から放出されるガスを外部に拡
散することができず、第2のトランジスタ103、及び第3のトランジスタ105内部に
入り込んでしまう。
【0160】
上述したガスがトランジスタの半導体層108に用いる酸化物半導体に入り込むと、酸
化物半導体膜中で不純物として取り込まれ、該半導体層108を用いたトランジスタの特
性が変動してしまう。
【0161】
しかし、
図4に示すように、ゲートドライバ回路部140に用いる第2のトランジスタ
103、及び第3のトランジスタ105上の第3の層間絶縁膜120が開口された構成、
すなわち第3の層間絶縁膜120が、画素領域142の一部に設けられ、第3の層間絶縁
膜120の端部がゲートドライバ回路部140よりも内側に形成される構成とすることに
よって、第2の層間絶縁膜116から放出されるガスを、外部へ拡散できる構造とするこ
とができる。
【0162】
なお、
図4に示すように、画素領域142に用いる第1のトランジスタ101において
も、半導体層108の重畳する位置の無機絶縁材料で形成された第3の層間絶縁膜120
が除去された構成が好ましい。このような構成とすることで、有機絶縁材料で形成された
第2の層間絶縁膜116から放出されるガスが、第1のトランジスタ101への入り込む
のを抑制することができる。
【0163】
ここで、
図3及び
図4に示す表示装置の他の構成要素について、実施の形態1に示す表
示装置と異なる構成について、以下詳細な説明を行う。
【0164】
隔壁126としては、有機絶縁材料、又は無機絶縁材料を用いて形成する。特に感光性
の樹脂材料を用い、画素電極122上に開口部を形成し、その開口部の側壁が連続した曲
率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。
【0165】
充填材172としては、窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化樹脂ま
たは熱硬化樹脂を用いることができ、PVC(ポリビニルクロライド)、アクリル系樹脂
、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、PVB(ポリビニルブチラル
)またはEVA(エチレンビニルアセテート)を用いることができる。例えば充填材17
2として、窒素を用いればよい。
【0166】
発光素子170としては、エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子を適用するこ
とができる。エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子は、発光材料が有機化合物で
あるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機EL素子、後者は
無機EL素子と呼ばれている。ここでは、有機EL素子を用いて説明する。
【0167】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極(画素電極122
及び電極130)から電子および正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され
、電流が流れる。そして、それらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、
発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。
このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0168】
発光素子170は発光を取り出すために少なくとも一対の電極(画素電極122または
電極130)の一方が透光性であればよい。そして、第1の基板102とは逆側の面から
発光を取り出す上面射出や、第1の基板102側の面から発光を取り出す下面射出や、第
1の基板102側及び第1の基板102とは反対側の面から発光を取り出す両面射出構造
の発光素子があり、どの射出構造の発光素子も適用することができる。
【0169】
また、発光素子170に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が入り込まないように、電極
130、及び隔壁126上に保護膜を形成してもよい。保護膜としては、窒化シリコン膜
、窒化酸化シリコン膜等を形成することができる。また、第1の基板102、第2の基板
152、及びシール材166によって封止された空間には充填材172が設けられ密封さ
れている。このように外気に曝されないように気密性が高く、脱ガスの少ない保護フィル
ム(貼り合わせフィルム、紫外線硬化樹脂フィルム等)やカバー材でパッケージング(封
入)することが好ましい。
【0170】
また、必要であれば、発光素子170の射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を
含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設
けてもよい。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹
凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0171】
また、発光層128としては、三重項励起エネルギーを発光に変える発光性材料である
ゲスト材料と、該ゲスト材料よりも三重項励起エネルギーの準位(T1準位)が高いホス
ト材料と、を含む有機化合物を用いると好適である。なお、発光層128は、発光層が複
数積層された構造(所謂タンデム構造)や、発光層以外の機能層(正孔注入層、正孔輸送
層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層など)を含む構成としてもよい。
【0172】
また、シール材166としては、実施の形態1に示す材料に加えて、ガラス材料を含む
材料、例えば粉末ガラス(フリットガラスともよぶ)を溶解、凝固させて形成されたガラ
ス体を用いてもよい。このような材料は、水分やガスの透過を効果的に抑制することがで
きるため、表示素子として、発光素子170を用いた場合、該発光素子170の劣化を抑
制し、極めて信頼性の高い表示装置を実現できる。
【0173】
また、
図4に示すシール材166の封止領域においては、第1の基板102と第2の基
板152の間に、ゲート絶縁膜106のみを設ける構成を例示したが、これに限定されな
い。例えば、ゲート絶縁膜106と、第1の層間絶縁膜114を積層した構成としても良
い。ただし、
図4に示すように、第2の層間絶縁膜116が除去された領域において、シ
ール材166が配置されるような構成が好ましい。
【0174】
以上のように本実施の形態に示す表示装置は、画素領域と駆動回路領域のそれぞれに形
成されたトランジスタと、該トランジスタ上に形成された第1の層間絶縁膜と、第1の層
間絶縁膜上に形成された第2の層間絶縁膜と、第2の層間絶縁膜上に形成された第3の層
間絶縁膜と、を有し、第3の層間絶縁膜が画素領域上の一部に設けられ、第3の層間絶縁
膜の端部が駆動回路領域よりも内側に形成される構成である。このような構成とすること
で、第2の層間絶縁膜からの脱ガスがトランジスタ側へ入り込むのを抑制し、信頼性の高
い表示装置とすることができる。また、さらに第1の層間絶縁膜により、第2の層間絶縁
膜からの脱ガスがトランジスタ側へ入り込むのを抑制できる。
【0175】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態または実施例に示す構成と適宜組み合わせ
て用いることができる。
【0176】
(実施の形態3)
本実施の形態では、先の実施の形態で示した表示装置と組み合わせが可能な、イメージ
センサについて説明する。
【0177】
図5(A)に、イメージセンサ付の表示装置の一例を示す。
図5(A)はイメージセン
サ付の表示装置の一画素を示す等価回路である。
【0178】
フォトダイオード素子4002は、一方の電極がリセット信号線4058に、他方の電
極がトランジスタ4040のゲート電極に電気的に接続されている。トランジスタ404
0は、ソース電極またはドレイン電極の一方が電源電位(VDD)に、ソース電極または
ドレイン電極の他方がトランジスタ4056のソース電極またはドレイン電極の一方に電
気的に接続されている。トランジスタ4056は、ゲート電極がゲート選択線4057に
、ソース電極またはドレイン電極の他方が出力信号線4071に電気的に接続されている
。
【0179】
また、第1のトランジスタ4030は、画素スイッチング用のトランジスタであり、ソ
ース電極またはドレイン電極の一方が映像信号線4059に、ソース電極またはドレイン
電極の他方が容量素子4032及び液晶素子4034に電気的に接続されている。また、
第1のトランジスタ4030のゲート電極は、ゲート線4036に電気的に接続されてい
る。
【0180】
なお、第1のトランジスタ4030、容量素子4032、液晶素子4034は、実施の
形態1で示した表示装置と同様の構造を適用すればよい。
【0181】
図5(B)は、イメージセンサ付の表示装置の一画素の一部を示す断面図と、駆動回路
部の断面図であり、画素領域5042においては、第1の基板4001上に、フォトダイ
オード素子4002および第1のトランジスタ4030が設けられている。また、駆動回
路であるゲートドライバ回路部5040においては、第1の基板4001上に、第2のト
ランジスタ4060、及び第3のトランジスタ4062が設けられている。
【0182】
なお、画素領域5042におけるフォトダイオード素子4002、及び第1のトランジ
スタ4030上には、第1の層間絶縁膜4014、第2の層間絶縁膜4016、及び第3
の層間絶縁膜4020が形成されている。また、第2の層間絶縁膜4016上に第3の層
間絶縁膜4020を誘電体として用いる容量素子4032が形成されている。
【0183】
すなわち、第3の層間絶縁膜4020が、画素領域5042の一部に設けられ、第3の
層間絶縁膜4020の端部がゲートドライバ回路部5040よりも内側に形成される構成
である。このような構成とすることによって、第2の層間絶縁膜4016から放出される
ガスを、外部へ拡散できる構造とすることができる。したがって、第2の層間絶縁膜40
16からの脱ガスがトランジスタ側へ入り込むのを抑制し、信頼性の高い表示装置とする
ことができる。
【0184】
なお、フォトダイオード素子4002は、第1のトランジスタ4030のソース電極及
びドレイン電極と同一の工程で形成される下部電極と、液晶素子4034の画素電極と同
一工程で形成される上部電極と、を一対の電極とし、該一対の電極間にダイオードを有す
る構成である。
【0185】
フォトダイオード素子4002に用いることのできるダイオードとしては、p型半導体
膜、n型半導体膜の積層を含むpn型ダイオード、p型半導体膜、i型半導体膜、n型半
導体膜の積層を含むpin型ダイオード、ショットキー型ダイオードなどを用いればよい
。
【0186】
また、フォトダイオード素子4002上には、第1の配向膜4024、液晶層4096
、第2の配向膜4084、対向電極4088、有機絶縁膜4086、有色膜4085、第
2の基板4052等が設けられている。
【0187】
なお、pin型ダイオードはp型の半導体膜側を受光面とする方が高い光電変換特性を
示す。これは、正孔移動度は電子移動度に比べて小さいためである。本実施の形態におい
ては、第2の基板4052の面から、有色膜4085、液晶層4096等を介して、フォ
トダイオード素子4002に入射する光を電気信号に変換する構成について例示している
が、これに限定されない。例えば、有色膜4085を設けない構成としてもよい。
【0188】
本実施の形態で示したフォトダイオード素子4002は、フォトダイオード素子400
2に光が入射することで、一対の電極間に電流が流れることを利用する。フォトダイオー
ド素子4002が光を検出することによって、被検出物の情報を読み取ることができる。
【0189】
本実施の形態で示したイメージセンサ付の表示装置は、トランジスタの作製など、表示
装置およびイメージセンサの工程を共通化させることで、生産性を高めることができる。
ただし、先の実施の形態で示した表示装置と、本実施の形態で示したイメージセンサを異
なる基板上に作製しても構わない。具体的には、先の実施の形態で示した表示装置におい
て、第2の基板上にイメージセンサを作製しても構わない。
【0190】
本実施の形態は、他の実施の形態または他の実施例に記載した構成と適宜組み合わせて
実施することが可能である。
【0191】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の表示装置を用いたタブレット型端末の一例を説明
する。
【0192】
図6(A)及び
図6(B)は2つ折り可能なタブレット型端末である。
図6(A)は、
タブレット型端末を開いた状態である。タブレット型端末は、筐体8630と、筐体86
30に設けられた、表示部8631a、表示部8631b、表示モード切り替えスイッチ
8034、電源スイッチ8035、省電力モード切り替えスイッチ8036、留め具80
33および操作スイッチ8038と、を有する。
【0193】
本発明の一態様である表示装置は、表示部8631a、表示部8631bに適用するこ
とができる。
【0194】
表示部8631aは、一部または全部をタッチパネルとして機能させることができ、表
示された操作キーに触れることで入力することができる。例えば、表示部8631aの全
面にキーボードボタンを表示し、タッチパネルとして機能させ、表示部8631bを表示
画面として用いても構わない。
【0195】
また、表示部8631aと同様に、表示部8631bの一部または全部をタッチパネル
として機能させることができる。
【0196】
また、表示部8631aのタッチパネルの領域と表示部8631bのタッチパネルの領
域を同時にタッチ入力することもできる。
【0197】
また、表示モード切り替えスイッチ8034は、縦表示または横表示などの表示の向き
の切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替え
スイッチ8036は、タブレット型端末に内蔵している光センサで検出される外光に応じ
て表示の輝度を最適なものとすることができる。なお、タブレット型端末は、光センサだ
けでなく、傾きを検出可能なジャイロ、加速度センサなど、他の検出装置を有してもよい
。
【0198】
また、
図6(A)では、表示部8631bと表示部8631aの面積が同じ例を示して
いるが特に限定されない。表示部8631bと表示部8631aの面積が異なっていても
よく、表示の品質が異なっていてもよい。例えば、一方が他方よりも高精細な表示を行え
る表示パネルとしてもよい。
【0199】
図6(B)は、タブレット型端末を閉じた状態である。タブレット型端末は、筐体86
30と、筐体8630に設けられた、太陽電池8633および充放電制御回路8634と
、を有する。なお、
図6(B)では充放電制御回路8634の一例としてバッテリー86
35、DCDCコンバータ8636を有する構成について示している。
【0200】
なお、タブレット型端末は2つ折り可能なため、未使用時に筐体8630を閉じた状態
にすることができる。従って、表示部8631a、表示部8631bを保護できるため、
耐久性に優れ、長期使用の観点からも信頼性に優れる。
【0201】
また、この他にも
図6(A)及び
図6(B)に示したタブレット型端末は、様々な情報
(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付または時刻など
を表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作または編集するタッチ
入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、などを有す
ることができる。
【0202】
タブレット型端末は、太陽電池8633によって得られた電力を、タブレット型端末の
動作に用いることができる。または、当該電力をバッテリー8635に蓄積することがで
きる。なお、太陽電池8633は、筐体8630の二面に設ける構成とすることもできる
。なおバッテリー8635としては、リチウムイオン電池を用いると、小型化を図れるな
どの利点がある。
【0203】
また、
図6(B)に示す充放電制御回路8634の構成、及び動作について
図6(C)
にブロック図を示し説明する。
図6(C)には、太陽電池8633と、バッテリー863
5と、DCDCコンバータ8636と、コンバータ8637と、スイッチSW1と、スイ
ッチSW2と、スイッチSW3と、表示部8631と、を示している。
図6(C)におい
て、バッテリー8635、DCDCコンバータ8636、コンバータ8637、スイッチ
SW1、スイッチSW2およびスイッチSW3が、
図6(B)に示す充放電制御回路86
34に対応する。
【0204】
太陽電池8633により発電がされる場合、太陽電池で発電した電力は、バッテリー8
635を充電するための電圧となるようDCDCコンバータ8636で昇圧または降圧さ
れる。次に、スイッチSW1をオンし、コンバータ8637で表示部8631に最適な電
圧に昇圧または降圧をする。また、表示部8631での表示を行わない際は、スイッチS
W1をオフし、スイッチSW2をオンしてバッテリー8635の充電を行う。
【0205】
なお、発電手段の一例として太陽電池8633について示したが、特に限定されず、圧
電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段で代替して
も構わない。例えば、無線(非接触)で電力を送受信して充電する無接点電力伝送モジュ
ールなど、他の充電手段を組み合わせて行う構成としてもよい。
【0206】
本実施の形態は、他の実施の形態または他の実施例に記載した構成と適宜組み合わせて
実施することが可能である。
【0207】
(実施の形態5)
本実施の形態では、先の実施の形態で示した表示装置などを搭載した電子機器の例につ
いて説明する。
【0208】
図7(A)は携帯型情報端末である。
図7(A)に示す携帯型情報端末は、筐体930
0と、ボタン9301と、マイクロフォン9302と、表示部9303と、スピーカ93
04と、カメラ9305と、を具備し、携帯型電話機としての機能を有する。表示部93
03に先の実施の形態で示した表示装置または/およびイメージセンサ付の表示装置を適
用することができる。
【0209】
図7(B)は、ディスプレイである。
図7(B)に示すディスプレイは、筐体9310
と、表示部9311と、を具備する。表示部9311に先の実施の形態で示した表示装置
または/およびイメージセンサ付表示装置を適用することができる。
【0210】
図7(C)は、デジタルスチルカメラである。
図7(C)に示すデジタルスチルカメラ
は、筐体9320と、ボタン9321と、マイクロフォン9322と、表示部9323と
、を具備する。表示部9323に先の実施の形態で示した表示装置または/およびイメー
ジセンサ付表示装置を適用することができる。
【0211】
本発明の一態様を用いることで、電子機器の信頼性を高めることができる。
【0212】
本実施の形態は、他の実施の形態または他の実施例に記載した構成と適宜組み合わせて
実施することが可能である。
【実施例1】
【0213】
本実施例においては、表示装置に用いることのできる代表的な有機樹脂であるアクリル
樹脂の放出ガスについて調査した。
【0214】
試料は、ガラス基板上にアクリル樹脂を塗布し、窒素ガス雰囲気下、250℃にて1時
間の加熱処理を行った。なお、アクリル樹脂は加熱処理後に厚さが1.5μmとなるよう
に形成した。
【0215】
作製した試料に対し、TDS(Thermal Desorption Spectr
oscopy:昇温脱離ガス分光法)による放出ガスの測定を行った。
【0216】
図8に、基板表面温度250℃のときの、各質量電荷比(M/zともいう。)における
放出ガスのイオン強度を示す。
図8において、横軸は質量電荷比を、縦軸は強度(任意単
位)を、それぞれ示す。
図8より、試料からは、水起因と見られる質量電荷比が18(H
2O)のガスと、炭化水素起因と見られる質量電荷比が28(C
2H
4)、44(C
3H
8)および56(C
4H
8)のガスが検出された。なお、各質量電荷比の近傍には、それ
ぞれのフラグメントイオンが検出された。
【0217】
同様に、
図9に、基板表面温度に対する各質量電荷比(18、28、44および56)
のイオン強度を示す。
図9において、横軸は基板表面温度(℃)を、縦軸は強度(任意単
位)を、それぞれ示す。基板表面温度を55℃から270℃の範囲とした場合、水起因と
見られる質量電荷比が18のイオン強度は、55℃以上100℃以下および150℃以上
270℃以下にピークを有することがわかった。一方、炭化水素起因と見られる質量電荷
比が28、44および56のイオン強度は、150℃以上270℃以下にピークを有する
ことがわかった。
【0218】
以上に示したように、有機樹脂からの水、炭化水素などの酸化物半導体膜にとっての不
純物が放出されることがわかった。特に、水は55℃以上100℃以下の比較的低温でも
放出されることがわかった。即ち、有機樹脂に起因する不純物が酸化物半導体膜に到達し
た場合、トランジスタの電気特性を劣化させることが示唆された。
【0219】
また、有機樹脂を水、炭化水素などの放出ガスを透過しない膜(窒化シリコン膜、窒化
酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜など)で覆った場合、有機樹脂からガスが放出され
ることで水、炭化水素などの放出ガスを透過しない膜への圧力が高まり、最終的に水、炭
化水素などの放出ガスを透過しない膜が破壊され、トランジスタの形状不良となることが
示唆された。
【実施例2】
【0220】
本実施例では、トランジスタを作製し、断面形状および電気特性を評価した。
【0221】
各試料には、ボトムゲート・トップコンタクト型のチャネルエッチ構造の酸化物半導体
膜を用いたトランジスタが設けられている。当該トランジスタは、ガラス基板上に設けら
れたゲート電極と、ゲート電極上に設けられたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜を介しゲー
ト電極上に設けられた酸化物半導体膜と、酸化物半導体膜上にあり酸化物半導体膜と接し
て設けられた一対の電極と、を有する。ここで、ゲート電極はタングステン膜を、ゲート
絶縁膜は窒化シリコン膜、および窒化シリコン膜上の酸化窒化シリコン膜を、酸化物半導
体膜はIn-Ga-Zn酸化物膜を、一対の電極はタングステン膜、タングステン膜上の
アルミニウム膜、およびアルミニウム膜上のチタン膜を、それぞれ用いた。
【0222】
一対の電極上には保護絶縁膜(450nmの厚さの酸化窒化シリコン膜と、酸化窒化シ
リコン膜上に設けられた50nmの厚さの窒化シリコン膜)が設けられている。
【0223】
なお、実施例試料は、保護絶縁膜上に2μmの厚さでアクリル樹脂が設けられており、
アクリル樹脂上にはアクリル樹脂の側面の一部を露出するように200nmの厚さで窒化
シリコン膜が設けられている。また、比較例試料は、保護絶縁膜上に1.5μmの厚さで
アクリル樹脂が設けられており、アクリル樹脂上にはアクリル樹脂を覆うように200n
mの厚さで窒化シリコン膜が設けられている。
【0224】
図10に、比較例試料の一部を拡大した領域のTEMによる透過電子像(Transm
itted Electron:TE像ともいう。)断面形状を示す。断面形状の観察に
は、株式会社日立ハイテクノロジーズ製「日立超薄膜評価装置HD-2300」を用いた
。なお、
図10においては、一対の電極の一方の電極のみしか図示していない。
図10に
示す電極および電極を覆うように設けられた保護絶縁膜に着目すると、電極が形成する段
差部から保護絶縁膜に亀裂が生じていることがわかった。なお、観察領域において、実施
例試料と比較例試料は概略同様の構造であるため、実施例試料の断面形状は省略する。
【0225】
従って、実施例試料はアクリル樹脂からの放出ガスが実施例試料外部へ抜ける構造であ
り、比較例試料はアクリル樹脂からの放出ガスが比較例試料外部へ抜けない構造である。
即ち、比較例試料において、アクリル樹脂からの放出ガスは、外部へは抜けず、保護絶縁
膜に生じた亀裂を介してトランジスタに到達することがわかった。
【0226】
次に、各試料のトランジスタの電気特性であるゲート電圧(Vg)-ドレイン電流(I
d)特性を測定した。Vg-Id特性は、チャネル長が3μm、チャネル幅が3μmのト
ランジスタを用いて測定した。なお、Vg-Id特性の測定においては、ドレイン電圧(
Vd)を1Vまたは10Vとし、ゲート電圧(Vg)を-20Vから15Vへ掃引した。
【0227】
図11に各試料のVg-Id特性を示す。なお、600mm×720mmのガラス基板
において、なるべく均等に20個のトランジスタのVg-Id特性を測定した。なお、図
11(A)に実施例試料のトランジスタのVg-Id特性および電界効果移動度を示し、
図11(B)に比較例試料のトランジスタのVg-Id特性を示す。なお、
図11(A)
に示す電界効果移動度はドレイン電圧(Vd)が10Vにおける値を示す。また、
図11
(B)においては、電界効果移動度の算出が困難であったため省略する。
【0228】
図11(A)より、実施例試料のトランジスタでは、良好なスイッチング特性が得られ
ることがわかった。また、
図11(B)より、比較例試料のトランジスタでは、スイッチ
ング特性が得られず、常時オンであることがわかった。
【0229】
実施例試料との比較により、比較例試料のスイッチング特性不良は、アクリル樹脂から
の放出ガスがトランジスタに影響を及ぼしたためとわかる。具体的には、アクリル樹脂か
らの放出ガスの影響で酸化物半導体膜のキャリア密度が高まり、ゲート電極からの電界に
よってトランジスタをオフすることができなかったためと推察される。
【0230】
本実施例より、有機樹脂を水、炭化水素などの放出ガスを透過しない膜(ここでは厚さ
が200nmの窒化シリコン膜)で覆うと、有機樹脂からの放出ガスによってトランジス
タのスイッチング特性不良が引き起こされることがわかる。また、有機樹脂を覆う、水、
炭化水素などの放出ガスを透過しない膜の一部に、放出ガスの試料外部への抜け道を設け
ることで、当該トランジスタのスイッチング特性不良を回避でき、良好なスイッチング特
性を得られることがわかる。
【符号の説明】
【0231】
101 第1のトランジスタ
102 第1の基板
103 第2のトランジスタ
104 ゲート電極
105 第3のトランジスタ
106 ゲート絶縁膜
107 容量素子
108 半導体層
110 ソース電極
112 ドレイン電極
113 電極
114 第1の層間絶縁膜
116 第2の層間絶縁膜
118 容量電極
120 第3の層間絶縁膜
122 画素電極
124 第1の配向膜
126 隔壁
128 発光層
130 電極
140 ゲートドライバ回路部
142 画素領域
144 ソースドライバ回路部
146 FPC端子部
148 FPC
150 液晶素子
152 第2の基板
153 有色膜
154 遮光膜
156 有機保護絶縁膜
158 対向電極
160 スペーサ
162 液晶層
164 第2の配向膜
166 シール材
170 発光素子
172 充填材
4001 第1の基板
4002 フォトダイオード素子
4014 第1の層間絶縁膜
4016 第2の層間絶縁膜
4020 第3の層間絶縁膜
4024 第1の配向膜
4030 第1のトランジスタ
4032 容量素子
4034 液晶素子
4036 ゲート線
4040 トランジスタ
4052 第2の基板
4056 トランジスタ
4057 ゲート選択線
4058 リセット信号線
4059 映像信号線
4060 第2のトランジスタ
4062 第3のトランジスタ
4071 出力信号線
4084 第2の配向膜
4085 有色膜
4086 有機絶縁膜
4088 対向電極
4096 液晶層
5040 ゲートドライバ回路部
5042 画素領域
8033 留め具
8034 スイッチ
8035 電源スイッチ
8036 スイッチ
8038 操作スイッチ
8630 筐体
8631 表示部
8631a 表示部
8631b 表示部
8633 太陽電池
8634 充放電制御回路
8635 バッテリー
8636 DCDCコンバータ
8637 コンバータ
9300 筐体
9301 ボタン
9302 マイクロフォン
9303 表示部
9304 スピーカ
9305 カメラ
9310 筐体
9311 表示部
9320 筐体
9321 ボタン
9322 マイクロフォン
9323 表示部