(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】液晶光制御装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1347 20060101AFI20240726BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20240726BHJP
G02F 1/1343 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
G02F1/1347
G02F1/13 505
G02F1/1343
(21)【出願番号】P 2023511008
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2022013099
(87)【国際公開番号】W WO2022210083
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-09-19
(31)【優先権主張番号】P 2021061437
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】小糸 健夫
(72)【発明者】
【氏名】黒川 多惠
(72)【発明者】
【氏名】池田 幸次朗
【審査官】植田 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-076107(JP,A)
【文献】特開平07-318959(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0196318(US,A1)
【文献】特表2010-525388(JP,A)
【文献】特開2022-070474(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0257143(US,A1)
【文献】国際公開第2016/088658(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1333,1/1347
G02F 1/13
G02F 1/1343
G02F 1/136-1/1368
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1液晶セルと、
第2液晶セルと、を含み、
前記第1液晶セル及び前記第2液晶セルのそれぞれは、
第1帯状電極及び第2帯状電極を含む第1電極が設けられた第1基板と、
第3帯状電極及び第4帯状電極を含む第2電極が設けられた第2基板と、
前記第1基板の側に設けられ、前記第1帯状電極及び前記第2帯状電極を覆う第1配向膜と、
前記第2基板の側に設けられ、前記第3帯状電極及び前記第4帯状電極を覆う第2配向膜と、
を有し、
前記第1基板の前記第1電極が設けられた面と前記第2基板の前記第2電極が設けられた面とが対向して配置され、
前記第1基板と前記第2基板との間
に液晶層
が設けられ、
前記第1帯状電極と前記第2帯状電極とが交互に配置され、
前記第3帯状電極と前記第4帯状電極とが交互に配置され、
前記第1電極の
前記第1帯状電極及び前記第2帯状電極の長手方向と、前記第2電極の
前記第3帯状電極及び前記第4帯状電極の長手方向とが45度±10度の範囲の角度で交差するように配置さ
れ、
前記第1配向膜の配向方向が、前記第1帯状電極及び前記第2帯状電極の長手方向と90度±10度の範囲で交差する方向に向けられており、
前記第2配向膜の配向方向が、前記第3帯状電極及び前記第4帯状電極の長手方向と90度±10度の範囲で交差する方向に向けられており、
前記第1液晶セル及び前記第2液晶セルは、光源部から放射される光が入射する側から、前記第1液晶セルの第2基板と前記第2液晶セルの第1基板とが隣接するように、前記第1液晶セル、前記第2液晶セルがこの順番で配置され、
前記光源部から放射され前記第1液晶セル及び前記第2液晶セルに入射する光は、第1偏光成分及び前記第1偏光成分に直交する第2偏光成分を含む、ことを特徴とする液晶光制御装置。
【請求項2】
前記第1液晶セル
の前記第1帯状電極及び前記第2帯状電極の長手方向と前記第2液晶セルの前記第1帯状電極及び前記第2帯状電極の長手方向とが異なる方向に向けて配置され、
前記第1液晶セルの前記第3帯状電極及び前記第4帯状電極の長手方向と前記第2液晶セルの前記第3帯状電極及び前記第4帯状電極の長手方向
とが異なる方向に向けて配置されている、請求項1に記載の液晶光制御装置。
【請求項3】
前記第1液晶セルの前記第2電極の
前記第3帯状電極及び前記第4帯状電極と、前記第2液晶セルの前記第1電極の
前記第1帯状電極及び前記第2帯状電極とが90度±10度の範囲の角度で交差する、請求項1に記載の液晶光制御装置。
【請求項4】
前記第1液晶セルの前記第2電極の
前記第3帯状電極及び前記第4帯状電極と、前記第2液晶セルの前記第1電極の
前記第1帯状電極及び前記第2帯状電極とが45度±10度の範囲の角度で交差する、請求項1に記載の液晶光制御装置。
【請求項5】
第1液晶セルと、
第2液晶セルと、
第3液晶セルと、
第4液晶セルと、を含み、
前記第1液晶セル、前記第2液晶セル、前記第3液晶セル、及び前記第4液晶セルのそれぞれは、
第1帯状電極及び第2帯状電極を含む第1電極が設けられた第1基板と、
第3帯状電極及び第4帯状電極を含む第2電極が設けられた第2基板と、
前記第1基板の側に設けられ、前記第1帯状電極及び前記第2帯状電極を覆う第1配向膜と、
前記第2基板の側に設けられ、前記第3帯状電極及び前記第4帯状電極を覆う第2配向膜と、
を有し、
前記第1基板の前記第1電極が設けられた面と、前記第2基板の前記第2電極が設けられた面と、が対向して配置され、
前記第1基板と前記第2基板との間
に液晶層
が設けられ、
前記第1帯状電極と前記第2帯状電極とが交互に配置され、
前記第3帯状電極と前記第4帯状電極とが交互に配置され、
前記第1電極
の前記第1帯状電極及び前記第2帯状電極の長手方向と前記第2電極の
第3帯状電極及び第4帯状電極の長手方向
とが45度±10度の範囲の角度で交差するように配置さ
れ、
前記第1配向膜の配向方向が、前記第1帯状電極及び前記第2帯状電極の長手方向と90度±10度の範囲で交差する方向に向けられており、
前記第2配向膜の配向方向が、前記第3帯状電極及び前記第4帯状電極の長手方向と90度±10度の範囲で交差する方向に向けられており、
前記第1乃至第4液晶セルは、光源部から放射される光が入射する側から、前記第1液晶セルの第2基板と前記第2液晶セルの第1基板とが隣接し、前記第2液晶セルの第2基板と前記第3液晶セルの第1基板とが隣接し、前記第3液晶セルの第2基板と前記第4液晶セルの第1基板とが隣接するように、前記第1乃至第4液晶セルがこの順番で配置され、
前記光源部から放射され前記第1乃至第4液晶セルに入射する光は、第1偏光成分及び前記第1偏光成分に直交する第2偏光成分を含む、ことを特徴とする液晶光制御装置。
【請求項6】
第1液晶セルと、
第2液晶セルと、
第3液晶セルと、
第4液晶セルと、を含み、
前記第1液晶セル、前記第2液晶セル、前記第3液晶セル、及び前記第4液晶セルのそれぞれは、
第1帯状電極及び第2帯状電極を含む第1電極が設けられた第1基板と、
第3帯状電極及び第4帯状電極を含む第2電極が設けられた第2基板と、
前記第1基板の側に設けられ、前記第1帯状電極及び前記第2帯状電極を覆う第1配向膜と、
前記第2基板の側に設けられ、前記第3帯状電極及び前記第4帯状電極を覆う第2配向膜と、
を有し、
前記第1基板と前記第2基板との間
に液晶層
が設けられ、
前記第1帯状電極と前記第2帯状電極とが交互に配置され、
前記第3帯状電極と前記第4帯状電極とが交互に配置され、
前記第1電極
の前記第1帯状電極及び前記第2帯状電極の長手方向と前記第2電極の
第3帯状電極及び第4帯状電極の長手方向が67.5度±10度の範囲の角度で交差するように配置さ
れ、
前記第1配向膜の配向方向が、前記第1帯状電極及び前記第2帯状電極の長手方向と90度±10度の範囲で交差する方向に向けられており、
前記第2配向膜の配向方向が、前記第3帯状電極及び前記第4帯状電極の長手方向と90度±10度の範囲で交差する方向に向けられており、
前記第1乃至第4液晶セルは、光源部から放射される光が入射する側から、前記第1液晶セルの第2基板と前記第2液晶セルの第1基板とが隣接し、前記第2液晶セルの第2基板と前記第3液晶セルの第1基板とが隣接し、前記第3液晶セルの第2基板と前記第4液晶セルの第1基板とが隣接するように、前記第1乃至第4液晶セルがこの順番で配置され、
前記光源部から放射され前記第1乃至第4液晶セルに入射する光は、第1偏光成分及び前記第1偏光成分に直交する第2偏光成分を含む、ことを特徴とする液晶光制御装置。
【請求項7】
前記第1液晶セル、前記第2液晶セル、前記第3液晶セル、及び前記第4液晶セルのそれぞれの前記第1電極の
前記第1帯状電極及び前記第2帯状電極の長手方向
と、前記第1液晶セル、前記第2液晶セル、前記第3液晶セル、及び前記第4液晶セルのそれぞれの前記第2電極の前記第3帯状電極及び前記第4帯状電極の長手方向と、が異なる方向に向けて配置され、それぞれの前記第2電極の前
記第3帯状電極及び前記第4帯状電極の長手方向が異なる方向に向けて配置さ
れ、ことを特徴とする請求項5又は6に記載の液晶光制御装置。
【請求項8】
前記第1液晶セルの前記第2電極の
前記第3帯状電極及び前記第4帯状電極と前記第2液晶セルの前記第1電極の
前記第1帯状電極及び前記第2帯状電極、前記第2液晶セルの前記第2電極の
前記第3帯状電極及び前記第4帯状電極と前記第3液晶セルの前記第1電極の前記第1帯状電極及び前記第2帯状電極、及び、前記第3液晶セルの前記第2電極の
前記第3帯状電極及び前記第4帯状電極と前記第4液晶セルの前記第1電極の
前記第1帯状電極及び前記第2帯状電極、が90度±10度の範囲の角度で交差する、請求項5又は6に記載の液晶光制御装置。
【請求項9】
前記第1液晶セル及び前記第4液晶セルの前記第1電極の
前記第1帯状電極及び前記第2帯状電極及び前記第2電極の
前記第3帯状電極及び前記第4帯状電極が同じ方向に配置され、
前記第2液晶セル及び前記第3液晶セルの前記第1電極の
前記第1帯状電極及び前記第2帯状電極及び前記第2電極の
前記第3帯状電極及び前記第4帯状電極が同じ方向に配置されている、請求項5又は6に記載の液晶光制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、液晶の電気光学効果を利用して光源から放射される光の配光を制御する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶セルを用いて、光源から放射される光の配光を制御する技術が知られている。例えば、複数の液晶セルを重ね合わせて光源から放射される光の配光を制御する技術が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2018/0196318号明細書
【文献】米国特許第10126607号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶セルを用いた光の配光制御は、液晶セルに印加する電圧の大小により配光の角度を制御している。複数の液晶セルを重ねることで、光の配光パターンを増やすことができるが、液晶セル同士の干渉によりモアレが発生することが問題となる。
【0005】
本発明の一実施形態は、モアレや輝度の不均一性(色ムラ)を解消することのできる液晶光制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る液晶光制御装置は、第1液晶セルと、第1液晶セルと重なる第2液晶セルと、を含み、第1液晶セル及び第2液晶セルのそれぞれは、帯状パターンを含む第1電極が設けられた第1基板と、帯状パターン含む第2電極が設けられた第2基板と、第1基板と第2基板との間の液晶層と、を含み、第1電極の帯状パターンの長手方向と、第2電極の前記帯状パターンの長手方向とが45度±10度の範囲の角度で交差するように配置されている。
【0007】
本発明の一実施形態に係る液晶光制御装置は、第1液晶セルと、第1液晶セルと重なる第2液晶セルと、第2液晶セルと重なる第3液晶セルと、第3液晶セルと重なる第4液晶セルと、を含み、第1液晶セル、第2液晶セル、第3液晶セル、及び第4液晶セルのそれぞれは、帯状パターンを含む第1電極が設けられた第1基板と、帯状パターン含む第2電極が設けられた第2基板と、第1基板と第2基板との間の液晶層と、を含み、第1電極及び第2電極の前記帯状パターンの長手方向が45度±10度の範囲の角度で交差するように配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る液晶光制御装置の斜視図を示す。
【
図2】本発明の一実施形態に係る液晶光制御装置を構成する液晶光制御素子の展開図を示す。
【
図3】本発明の一実施形態に係る液晶光制御素子を構成する第1液晶セル、第2液晶セル、第3液晶セル、及び第4液晶セルの電極の配置を示す。
【
図4A】本発明の一実施形態に係る液晶光制御素子を構成する液晶セルの第1基板に設けられる電極を示す平面図である。
【
図4B】本発明の一実施形態に係る液晶光制御素子を構成する液晶セルの第2基板に設けられる電極を示す平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る液晶光制御素子を構成する液晶セルの断面構造の一例を示す。
【
図6A】本発明の一実施形態に係る液晶光制御素子を構成する液晶セルの第1基板に設けられる電極を示す平面図である。
【
図6B】本発明の一実施形態に係る液晶光制御素子を構成する液晶セルの第2基板に設けられる電極を示す平面図である。
【
図7A】本発明の一実施形態に係る液晶光制御素子を構成する液晶セルの動作を説明する図であり、電圧が印加されない状態の液晶分子の配向状態を示す。
【
図7B】本発明の一実施形態に係る液晶光制御素子を構成する液晶セルの動作を説明する図であり、電圧が印加されたときの液晶分子の配向状態を示す。
【
図7C】本発明の一実施形態に係る液晶光制御素子を構成する液晶セルの動作を説明する図であり、液晶を駆動する電極に印加される制御信号の波形を示す。
【
図8A】本発明の一実施形態に係る液晶光制御素子を構成する液晶セルの動作を説明する図であり、第1電極と第2電極の配置を示す斜視図を示す。
【
図8B】本発明の一実施形態に係る液晶光制御素子を構成する液晶セルの動作を説明する図であり、第1電極に電圧が印加されたときの液晶分子の配向状態を示す。
【
図8C】本発明の一実施形態に係る液晶光制御素子を構成する液晶セルの動作を説明する図であり、第2電極に電圧が印加されたときの液晶分子の配向状態を示す。
【
図9】本発明の一実施形態に係る液晶光制御素子を構成する液晶セルにより第1偏光成分及び第2偏光成分が拡散される方向を示す。
【
図10】本発明の一実施形態に係る液晶光制御素子の構成と拡散の状態を示す。
【
図11】本発明の一実施形態に係る液晶光制御素子の構成と拡散の状態を示す。
【
図12】本発明の一実施形態に係る液晶光制御素子の構成と拡散の状態を示す。
【
図13】本発明の一実施形態に係る液晶光制御素子の構成と拡散の状態を示す。
【
図14】本発明の一実施形態に係る液晶光制御素子の構成と拡散の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号(又は数字の後にa、bなどを付した符号)を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有しない。
【0010】
本明細書において、ある部材又は領域が他の部材又は領域の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限りこれは他の部材又は領域の直上(又は直下)にある場合のみでなく他の部材又は領域の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の部材又は領域の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
【0011】
本明細書において、「旋光」とは直線偏光成分が液晶層を通過する際にその偏光軸を回転させる現象をいう。
【0012】
本明細書において、配向膜の「配向方向」とは、配向膜に配向規制力を付与する処理(例えば、ラビング処理や光配向処理)を行って配向膜上に液晶分子を配向させた場合に、液晶分子が配向する方向をいう。配向膜に行われた処理がラビング処理である場合は、配向膜の配向方向は、通常ラビング方向である。
【0013】
本明細書において、帯状パターンの「長手方向」とは、平面視で帯状パターンを見たときに、短辺(幅)と長辺(長さ)を有するパターンの長辺が延びる方向をいう。なお、帯状パターンは、平面視で矩形状のパターンを含み、さらに長辺の途中で少なくとも1回屈曲又は湾曲したパターンも含むものとする。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る液晶光制御装置100の斜視図を示す。液晶光制御装置100は、液晶光制御素子102及び回路基板104を含む。液晶光制御素子102は複数の液晶セルを含む。本実施形態において、液晶光制御素子102は複数の液晶セルで構成されることが好ましく、例えば、2つの液晶セル、又は4つの液晶セルによって構成される。
【0015】
図1は、液晶光制御素子102が、第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30、及び第4液晶セル40で構成される一例を示す。第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30、及び第4液晶セル40は平板状のパネルであり、それぞれの液晶セルの平板面が重畳するように配置されている。第1液晶セル10と第2液晶セル20の間、第2液晶セル20と第3液晶セル30の間、第3液晶セル30と第4液晶セル40の間には図示されない透明接着層が設けられている。液晶光制御素子102は、前後に隣接して配置される液晶セル同士が透明接着層で接着された構造を有する。
【0016】
回路基板104は、液晶光制御素子102を駆動する回路を含む。第1液晶セル10は第1フレキシブル配線基板F1で回路基板104と接続され、第2液晶セル20は第2フレキシブル配線基板F2で回路基板104と接続され、第3液晶セル30は第3フレキシブル配線基板F3で回路基板104と接続され、第4液晶セル40は第4フレキシブル配線基板F4で回路基板104と接続される。回路基板104は、各液晶セルに対し、フレキシブル配線基板を介して液晶の配向状態を制御する制御信号を出力する。
【0017】
図1に示す液晶光制御装置100は、液晶光制御素子102の背面側に光源部106が配置されている。液晶光制御装置100は、光源部106から放射される光が液晶光制御素子102を通して図面の手前側に出射されるように構成されている。液晶光制御素子102は、光源部106の側から第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30、第4液晶セル40がこの順番に配置されている。
【0018】
光源部106は、白色光源を含み、必要に応じて白色光源と液晶光制御素子102との間にレンズ等の光学素子が配置されていてもよい。白色光源は自然光に近い光を放射する光源であり、昼白色、電球色と呼ばれるような調光された光を放射するものであってもよい。光源部106は配光範囲が狭い光源で構成されることが望ましく、例えば、LED光源にリフレクタ、レンズ等が組合わされた構成を有することが好ましい。液晶光制御装置100は、光源部106から放射された光の拡散方向を液晶光制御素子102によって制御する機能を有する。液晶光制御素子102は、光源部106から放射される光を、四角状、ライン状等の所定の配光パターンにすることができる。
【0019】
図2は、
図1に示す液晶光制御素子102の展開図を示す。液晶光制御素子102は、第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30、及び第4液晶セル40を含む一例を示す。なお、液晶光制御素子102は図示される構成に限定されず、例えば、第1液晶セル10及び第2液晶セル20の2つの液晶セルによって構成されてもよい。
【0020】
第1液晶セル10は、第1基板S11と、第2基板S12と、を含む。第1基板S11と第2基板S12とは対向し、かつ間隙を有して配置される。第1基板S11と第2基板S12との間隙には、図示されない液晶層が設けられる。第1フレキシブル配線基板F1は、例えば、第1基板S11に設けられた接続端子と接続される。
【0021】
第2液晶セル20は、第1基板S21、第2基板S22、及び第2フレキシブル配線基板F2を含み、第1液晶セル10と同様の構成を有する。第3液晶セル30は、第1基板S31、第2基板S32、及び第3フレキシブル配線基板F3を含み、第1液晶セル10と同様の構成を有する。第4液晶セル40は、第1基板S41、第2基板S42、及び第4フレキシブル配線基板F4を含み、第1液晶セル10と同様の構成を有する。
【0022】
第1液晶セル10と第2液晶セル20との間には、第1透明接着層TA1が設けられる。第1透明接着層TA1は、可視光を透過し、第1液晶セル10の第2基板S12と第2液晶セル20の第1基板S21とを接着するために設けられる。第2液晶セル20と第3液晶セル30との間には、第2透明接着層TA2が設けられる。第2透明接着層TA2は、可視光を透過し、第2液晶セル20の第2基板S22と第3液晶セル30の第1基板S31とを接着するために設けられる。第3液晶セル30と第4液晶セル40との間には、第3透明接着層TA3が設けられる。第3透明接着層TA3は、可視光を透過し、第3液晶セル30の第2基板S32と第4液晶セル40の第1基板S41とを接着するために設けられる。
【0023】
第1透明接着層TA1、第2透明接着層TA2、及び第3透明接着層TA3は透過率が高く、屈折率が第1基板S11、S21、S31、S41及び第2基板S12、S22、S23、S24に近いものが好ましい。第1透明接着層TA1、第2透明接着層TA2、及び第3透明接着層TA3としては、光学弾性樹脂を用いることができ、例えば、透光性を有したアクリル樹脂を含む接着材を用いることができる。また、液晶光制御素子102は光源部106から輻射される熱で温度が上昇するため、第1透明接着層TA1、第2透明接着層TA2、第3透明接着層TA3の熱膨張係数は、第1基板及び第2基板の熱膨張係数と近い値を有していることが好ましい。
【0024】
後述されるように、第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30、及び第4液晶セル40は、電極の構成が異なる他は実質的に同じ構造を有する。本実施形態に係る液晶光制御素子102は、第1液晶セル10の第1基板S11側の電極と第3液晶セル30の第1基板S31側の基板の電極とが交差するように配置される。この場合、第1液晶セル10及び第3液晶セル30の該当する電極のパターン自体を交差するように形成しても良いし、
図2に示すように、第1液晶セル10及び第3液晶セル30の一方を所定の角度(本実施形態では90度)だけ回転させて配置してもよい。
【0025】
液晶光制御素子102を構成する各液晶セルは、基板の主面に並置された帯状の電極を有し、その帯状の電極で横電界を発生させる。帯状の電極は、全ての液晶セルで同一の方向に向けられているのではなく、ある方向を0度とした場合、各液晶セルの第1基板及び第2基板で0度から180度の範囲で傾いた状態で(回転した状態で)配置されている。本実施形態に係る液晶光制御素子102は、各液晶セルの電極パターンの配置を工夫することでモアレ、輝度の不均一性(色ムラ)の発生を抑制することができる。以下にその詳細を説明する。
【0026】
図3は、第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30、及び第4液晶セル40のそれぞれに設けられる電極の配置を模式的に示す展開図である。
図3は、下から順に第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30、及び第4液晶セル40の電極配置を示す。
図3は、各液晶セルの第1基板及び第2基板に設けられる帯状の電極を第2基板側から見た状態を示すものとする。
【0027】
第1液晶セル10は、第1基板S11に第1電極E11が設けられ、第2基板S12に第2電極E12が設けられる。第1電極E11は帯状に形成された複数の第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bを含む。第1帯状電極E11Aと第2帯状電極E11Bとは交互に配置される。第2電極E12は帯状に形成された複数の第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12Bを含む。第3帯状電極E12Aと第4帯状電極E12Bとは交互に配置される。なお、実際には第1基板S11及び第2基板S12とは互いに対向して配置され、当該対向面を内面とし、内面と反対側の面を外面と定義することも可能である。この場合、第1電極E11は第1基板S11の内面に設けられ、第2電極E12は第2基板S12の内面に設けられている。以下に説明する第2液晶セル20、第3液晶セル30、及び第4液晶セル40についても同様である。
【0028】
第2液晶セル20は第1電極E21及び第2電極E22を有し、第3液晶セル30は第1電極E31及び第2電極E32を有し、第4液晶セル40は第1電極E41及び第2電極E42を有する。第1電極E21、E31、E41及び第2電極E22、E32、E42は、それぞれ帯状に形成された複数の帯状電極を有する。
【0029】
図3は、第1液晶セル10の第1電極E11の長手方向(第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bの長手方向)が90-270度と平行な方向(図中90度から270度に向かう方向のことを言う。以下同様。)に配置され、第2電極E21の長手方向(第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12Bの長手方向)が45-225度と平行な方向に配置されていることを示す。同様に、第2液晶セル20は、第1電極E21の長手方向が135-315度と平行な方向に配置され、第2電極E21が90-270度と平行な方向に配置され、第3液晶セル30は、第1電極E31が0-180度と平行な方向に配置され、第2電極E32が135-315と平行な方向に配置され、第4液晶セル40は、第1電極E41が45-225度と平行な方向に配置され、第2電極E42が0-180度と平行な方向に配置されている。
【0030】
図3に示す電極の配置によれば、第1液晶セル10の第1電極E11と第3液晶セル30の第1電極E31とが交差するように配置され、第1液晶セル10の第2電極E12が第3液晶セル30の第2電極E32と交差するように配置されている。第2液晶セル20の第1電極E21は第4液晶セル40の第1電極E41と交差するように配置され、第2電極E22は第4液晶セル40の第2電極E42と交差するように配置されている。別言すれば、各液晶セルの第1電極の長手方向(延在方向)は同じではなく異なっており、第2電極の長手方向(延在方向)も同じではなく異なっている。
【0031】
図3は、各基板に設けられる配向膜が省略されているが、配向膜の配向方向が矢印で示されている。第1液晶セル10の第1基板S11の配向膜の配向方向ALD11は、第1電極E11の長手方向と交差する方向に向けられており、すなわち0-180度の方向に向けられており、第2基板S12の配向膜の配向方向ALD12は、第2電極E12の長手方向と交差する方向に向けられており、すなわち135-315度と平行な方向に向けられている。第2液晶セル20、第3液晶セル30、及び第4液晶セル40についても同様であり、各基板に設けられる配向膜の配向方向は、各電極の長手方向と交差する方向に向けられている。なお、それぞれの配向方向と電極とが交差する角度は90度±10度の範囲で設定可能である。
【0032】
また、
図3には示されないが、各液晶セルの第1基板と第2基板との間には液晶層が設けられる。液晶層の初期配向の状態は配向膜の配向方向によって決められ、第1電極及び第2電極に印加される電圧によって液晶分子の配向状態が制御される。
【0033】
第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30、及び第4液晶セル40は、電極の配置及び配向膜の配向方向が異なることの他は実質的に同様の構成を有している。以下、代表して第1液晶セル10についてより具体的に説明する。
【0034】
図4Aは、第1基板S11の平面図を示し、
図4Bは、第2基板S12の平面図を示す。より具体的には、
図4Aは、第1基板S11の内面の平面図を示し、
図4Bは、第2基板S12の内面の平面図を示す。
【0035】
図4Aに示すように、第1基板S11に第1電極E11が設けられる。第1電極E11は、複数の第1帯状電極E11Aと複数の第2帯状電極E11Bとを含む。複数の第1帯状電極E11A及び複数の第2帯状電極E11Bは帯状パターンを有している。複数の第1帯状電極E11Aの帯状パターンと複数の第2帯状電極E11Bの帯状パターンとは、長手方向と交差する方向に、所定の間隔で離隔して交互に配置される。
【0036】
複数の第1帯状電極E11Aは、それぞれが第1給電線PL11と接続され、複数の第2帯状電極E11Bは、それぞれが第2給電線PL12と接続される。第1給電線PL11は第1接続端子T11と接続され、第2給電線PL12は第2接続端子T12と接続される。第1接続端子T11と第2接続端子T12は第1基板S11の端部の一辺に沿って設けられる。第1基板S11には、第1接続端子T11に隣接して第3接続端子T13が設けられ、第2接続端子T12に隣接して第4接続端子T14が設けられる。第3接続端子T13は、第5給電線PL15と接続される。第5給電線PL15は、第1基板S11の面内の所定の位置に設けられた第1給電端子PT11と接続される。第4接続端子T14は、第6給電線PL16と接続される。第6給電線PL16は、第1基板S11の面内の所定の位置に設けられた第2給電端子PT12と接続される。
【0037】
複数の第1帯状電極E11Aは第1給電線PL11と接続されることで同一の電圧が印加される。複数の第2帯状電極E11Bは第2給電線PL12と接続されることで同一の電圧が印加される。
図4Aに示すように、複数の第1帯状電極E11Aと複数の第2帯状電極E11Bとは交互に配置される。複数の第1帯状電極E11Aと複数の第2帯状電極E11Bとは電気的に分離されている。複数の第1帯状電極E11Aと複数の第2帯状電極E11Bとにそれぞれ異なるレベルの電圧が印加されると、電位差により両電極間に電界が発生する。すなわち、複数の第1帯状電極E11Aと複数の第2帯状電極E11Bとにより横方向の電界を発生させることができる。
【0038】
図4Bに示すように、第2基板S12には第2電極E12が設けられる。第2電極E12は、複数の第3帯状電極E12Aと複数の第4帯状電極E12Bとを含む。複数の第3帯状電極E12A及び複数の第4帯状電極E12Bとは帯状パターンを有する。複数の第3帯状電極E12Aの帯状パターンと複数の第4帯状電極E12Bの帯状パターンとは、長手方向と交差する方向に、所定の間隔で離隔して交互に配置されている。複数の第3帯状電極E12A及び複数の第4帯状電極E12Bは、複数の第1帯状電極E11A及び複数の第2帯状電極E11Bの長手方向に対して45度傾いた状態で配置されている。なお、複数の第3帯状電極E12A及び複数の第4帯状電極E12Bと、複数の第1帯状電極E11A及び複数の第2帯状電極E11Bとが交差する角度は、45度±10度の範囲で設定可能である。
【0039】
複数の第3帯状電極E12Aは、それぞれが第3給電線PL13と接続され、複数の第4帯状電極E12Bは、それぞれが第4給電線PL14と接続される。第3給電線PL13は第3給電端子PT13と接続され、第4給電線PL14は第4給電端子PT14と接続される。第3給電端子PT13は、第1基板S11の第1給電端子PT11に対応する位置に設けられ、第4給電端子PT14は、第1基板S11の第2給電端子PT12に対応する位置に設けられる。
【0040】
複数の第3帯状電極E12Aは第3給電線PL13と接続されることで同一の電圧が印加される。複数の第4帯状電極E12Bは第4給電線PL14と接続されることで同一の電圧が印加される。
図4Bに示すように、複数の第3帯状電極E12Aと複数の第4帯状電極E12Bとは交互に配置される。複数の第3帯状電極E12Aと複数の第4帯状電極E12Bとは電気的に分離されている。複数の第3帯状電極E12Aと複数の第4帯状電極E12Bとにそれぞれ異なるレベルの電圧が印加されると、電位差により両電極間に電界が発生する。すなわち、複数の第3帯状電極E12Aと複数の第4帯状電極E12Bとにより横方向の電界を発生させることができる。
【0041】
第1基板S11に設けられる第1接続端子T11、第2接続端子T12、第3接続端子13、及び第4接続端子T14は、フレキシブル配線基板と接続される端子である。第1液晶セル10は、第1給電端子PT11と第3給電端子PT13とはが導電性材料により電気的に接続され、第2給電端子PT12と第4給電端子PT14とが導電性材料に電気的に接続される。
【0042】
図5は、第1液晶セル10の断面図を示す。
図5に示す第1液晶セル10の断面構造は、
図4Aに示す第1基板S11及び
図4Bに示す第2基板S12のA1-A2線に対応する断面構造を示す。
【0043】
第1液晶セル10は、入射光を偏光し、散乱する(拡散する)ことが可能な有効領域AAを有する。第1電極E11及び第2電極E12は有効領域AAの中に配置される。第1基板S11及び第2基板S12は、有効領域AAの外側に設けられたシール材SEによって接着される。第1基板S11と第2基板S12との間には第1液晶層LC1を封入する間隙が設けられる。第1液晶層LC1は、シール材SEによって第1基板S11と第2基板S12との間に封入される。
【0044】
第1基板S11は、第1電極E11、第1給電端子PT11を有し、第1電極E11の上に第1配向膜AL11が設けられた構造を有する。第1電極E11は、第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bを含む。第1給電端子PT11は第5給電線PL15から連続する構造を有し、シール材SEの外側に配置される。
【0045】
第2基板S12は第2電極E12、第3給電端子PT13を有し、第2電極E12の上に第2配向膜AL12が設けられた構造を有している。第2電極E12は、第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12Bを含む。第3給電端子PT13は第3給電線PL13から連続する構造を有し、シール材SEの外側に配置される。
【0046】
第1電極E11と第2電極E12とは、帯状の電極パターンの長手方向が交差するように設けられる。すなわち、第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bの長手方向と、第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12Bの長手方向とが交差するように配置される。第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bと、第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12Bとは、本実施例においては概ね45度の角度で交差する。なお、第1電極E11と第2電極E12の交差角度については、例えば、45度±10度の範囲で設定可能である。第1電極E11及び第2電極E12をX軸方向及びY軸方向に沿って配置するだけでなく、45度±10度の範囲で回転させた方向にも配置することで、電極配置のバリエーションを増やすことができ、液晶光制御素子102が複数の液晶セルを重ねる場合でも、同一の電極配置を有する液晶セルが重ならないようにして干渉を防ぎ、モアレの発生を抑制することができる。
【0047】
第1給電端子PT11と第3給電端子PT13とは対向し、シール材SEの外側の領域で対向するように配置される。第1導電性部材CP11は、第1給電端子PT11と第3給電端子PT13との間に配置され、両者を電気的に接続する。第1導電性部材CP11は、導電性のペースト材で形成することができ、例えば、銀ペースト、カーボンペーストが用いられる。なお、
図5には示されないが、第2給電端子PT12と第4給電端子PT14とも同様に導電性部材で電気的に接続される。
【0048】
第1基板S11及び第2基板S12は透光性を有する基板であり、例えば、ガラス基板、樹脂基板である。第1電極E11及び第2電極E12は、インジウム錫酸化物(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)などの透明導電材料によって形成された透明電極である。給電線(第1給電線PL11、第2給電線PL12、第3給電線PL13、第4給電線PL14、第5給電線PL15、第6給電線PL16)、接続端子(第1接続端子T11、第2接続端子T12、第3接続端子T13、第4接続端子T14)、及び給電端子(第1給電端子PT11、第2給電端子PT12、第3給電端子PT13、第4給電端子PT14)は、アルミニウム、チタン、モリブデン、タングステンなどの金属材料によって形成される。なお、給電線(第1給電線PL11、第2給電線PL12、第3給電線PL13、第4給電線PL14、第5給電線PL15、第6給電線PL16)は、第1電極E11及び第2電極E12と同じ透明導電膜で形成されてもよい。配向膜AL1及びAL2は、基板の主平面に略平行な配向規制力を有する水平配向膜で形成される。第1液晶層LC1は、例えば、ねじれネマチック液晶(TN(Twisted Nematic)液晶)が用いられる。なお、
図5には図示されないが、第1基板S11と第2基板S12との間には、両基板の間隔を一定に保つためのスペーサが設けられていてもよい。
【0049】
なお、
図4は、第2基板S12側の第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12Bを基板上で斜めに配置するパターンを示すが、
図6A及び
図6Bに示すように、有効領域AAが整合するように形成された第1基板S11及び第2基板S12を用いて、一方の基板を所定の角度だけ回転させて貼り合わせることで液晶セルを構成してもよい。
【0050】
次に、第1液晶セル10の電気光学効果について説明する。
図7A及び
図7Bは、第1液晶セル10の部分的な断面模式構造を示し、説明に必要な要素が図示されている。
図7A及び
図7Bは、第1基板S11に設けられた第1帯状電極E11A、第2帯状電極E11B、第1配向膜AL11、第2基板S12に設けられた第2配向膜AL12、及び第1液晶層LC1を示す。
図7A及び
図7Bにおいて、第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12Bは、説明を簡略化するため省略されている。
【0051】
図7Aは、第1配向膜AL11の配向方向と第2配向膜AL12の配向方向とが異なることを示す。具体的には、第1配向膜AL11は、
図4Aに示すように、第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bの長手方向と90度の角度で交差する配向方向ALD1に配向処理がされ、第2配向膜AL12は、
図4Bに示すように、第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12Bの長手方向に90度の角度で交差する配向方向ALD2に配向処理がされている。このため、
図7A及び
図7Bに示す第1液晶セル10の第1配向膜AL11の配向方向と第2配向膜AL12の配向方向は45度±10度の範囲の角度で交差している。なお、配向処理としては、ラビング処理でもよいし、光配向処理であってもよい。また、配向膜の配向方向は、帯状電極の延在方向に対し90度±10度の範囲で設定可能である。
【0052】
第1液晶層LC1としてTN液晶が用いられる。第1配向膜AL11の配向方向ALD1と第2配向膜AL12の配向方向ALD2とは交差するため、第1液晶層LC1の液晶分子は、外部電場の作用を受けない状態で第1配向膜AL11から第2配向膜AL12にかけて、液晶分子の長軸方向が45度捩れるように配向する。
図7Aは、第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bに電圧が印加されない状態を示し、液晶分子の長軸方向が45度捩れて配向している状態を示す。
【0053】
なお、
図7Aは、第1液晶層LC1がポジ型のねじれネマチック液晶(TN液晶)で形成され、液晶分子の長軸が配向膜の配向方向と同じ方向に配向する例を示すが、配向膜の配向方向を90度回転させる、すなわち、各配向膜AL11、AL12の配向方向を各基板S11、S12の帯状電極E11A、E12Aの延在方向に沿わせることにより、ネガ型の液晶を用いることができる。液晶には、液晶分子にねじれを付与するカイラル剤が含まれていることが好ましい。
【0054】
図7Bは、第1帯状電極E11Aにローレベルの電圧VLが印加され、第2帯状電極E11Bにハイレベルの電圧VHが印加された状態を示す。この状態では、第1帯状電極E11Aと第2帯状電極E11Bとの間に横方向の電界が発生する。
図7Bに示すように、第1基板S11側の液晶分子は横電界の影響を受けて配向方向が変化する。例えば、第1基板S11側の液晶分子は、長軸方向が電界の方向と平行な方向に向くように配向が変化する。
【0055】
第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bに印加されるローレベルの電圧VL、ハイレベルの電圧VHの値は適宜設定される。例えば、ローレベルの電圧VL1として0Vが印加され、ハイレベルの電圧VH1として5~30Vの電圧が印加される。第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bには、ローレベルの電圧VLとハイレベルの電圧VHが交互に入れ替わる電圧が印加される。例えば、
図7Cに示すように、ある一定期間において、第1帯状電極E11Aにローレベルの電圧VLが印加され第2帯状電極E11Bにハイレベルの電圧VHが印加され、次の一定期間では、第1帯状電極E11Aにハイレベルの電圧VHが印加され第2帯状電極E11Bにローベルの電圧VLが印加されるように、2つの電極間で電圧のレベルが同期して、周期的に変化するように電圧を印加してもよい。
【0056】
第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bに交互にローレベルの電圧VLとハイレベルの電圧VHを印加することにより、交番電界を発生させ、第1液晶層LC1の劣化を抑制する。なお、第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bに印加する電圧の周波数は、液晶分子が電界の変化に追従できる周波数であればよく、例えば、15~100Hzであればよい。
【0057】
図8Aは、第1液晶セル10の部分的な斜視図であり、第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11B、第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12B、並びに第1液晶層LC1の配置を示す。
図8B及び
図8Cは第1液晶セル10の断面模式図を示す。
図8Bは、
図8Aに示す第1液晶セル10を図中に示すA側からみたときの断面模式図を示し、
図8Cは、図中に示すB側からみたときの断面模式図を示す。なお、
図8B及び
図8Cは、第1配向膜AL11の配向処理方向と第2配向膜AL12の配向処理方向とが異なることを示す。
【0058】
図8B及び
図8Cに示すように、第1帯状電極E11Aと第2帯状電極E11Bとは中心間距離Wで配置され、第3帯状電極E12Aと第4帯状電極E12Bとは同様に中心間距離Wで配置されている。この中心間距離Wは、
図7Aに示す第1帯状電極E11Aの幅a、第1帯状電極E11Aの端部から第2帯状電極E11Bの端部までの間隔bに対して、W=a+bの関係を有している。
【0059】
また、第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bと、第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12Bとは離隔し、互いに45度±10度の範囲の角度で交差した状態で対向配置されている。第1基板S11と第2基板S12は間隔Dで対向して配置されており、間隔Dは、実質的に第1液晶層LC1の厚さに相当する。実際には、第1基板S11に第1帯状電極E11A及び第1配向膜AL11が設けられ、第2基板S12には第3帯状電極E12A及び第2配向膜AL12等が設けられるが、これらの電極及び配向膜の厚さは、間隔Dの大きさに比べて十分に小さいので、第1液晶層LC1の厚さは間隔Dと同視することができる。
【0060】
第1液晶セル10において、帯状電極が第1液晶層LC1を挟んで間隔Dは、帯状電極の中心間距離Wに対して同じか、それ以上の大きさを有していることが好ましい。すなわち、間隔Dは、中心間距離Wの1倍以上の長さを有することが好ましい。例えば、間隔Dは、帯状電極の中心間距離Wに対して2倍以上の大きさを有していることが好ましい。第1帯状電極E11Aの幅が5μmであり、第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bの幅aが5μmであり、第1帯状電極E11Aの端部から第2帯状電極E11Bの端部までの間隔bが5μmである場合、帯状電極の中心間距離Wは10μmとなる。これに対し、間隔Dは10μm以上の大きさを有していることが好ましい。
【0061】
帯状電極の中心間距離Wと上記の間隔Dとがこのような関係を有することで、第1帯状電極E11Aと第2帯状電極E11Bとで生成される電界と第3帯状電極E12Aと第4帯状電極E12Bとで生成される電界との相互干渉を可及的抑制できる。すなわち、
図8Bに示すように、第1帯状電極E11Aと第2帯状電極E11B間の電界によって、その近傍にある液晶分子の配向を変化させる際、第3帯状電極E12Aと第4帯状電極E12B間に電界が発生する場合でも、間隔Dが十分に大きいのでその影響はほとんどない。また、
図8Cに示すように、第3帯状電極E12Aと第4帯状電極E12B間に電界を発生させる場合も上記と同様である。
【0062】
ところで、液晶は配向状態により屈折率が変化することが知られている。
図7Aに示すように、第1液晶層LC1に電界が作用していないオフ(OFF)状態では、液晶分子の長軸方向が基板の表面に水平に配向し、かつ第1基板S11側から第2基板S12側にかけて45度捩れた状態で配向している。第1液晶層LC1は、この配向状態でほぼ均一な屈折率分布を有している。このため、第1液晶セル10へ入射した光の第1偏光成分PL1及び第1偏光成分PL1に直交する第2偏光成分PL2は、液晶分子の初期配向の影響を受けて旋光するものの、ほとんど屈折(あるいは散乱)されることなく第1液晶層LC1を透過する。ここで、第1偏光成分PL1とは、自然光のうち、例えばP偏光に相当し、第2偏光成分とは、例えばS偏光に相当するものとする。
【0063】
一方、
図7Bに示すように、第1帯状電極E11Aと第2帯状電極E11Bに電圧が印加され電界が形成されたオン(ON)状態では、第1液晶層LC1が正の誘電率異方性を有している場合、液晶分子は長軸が電界に沿うように配向する。その結果、
図7Bに示すように、第1液晶層LC1には、液晶分子が、第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bの上方でほぼ垂直に立ち上がる領域、第1帯状電極E11Aと第2帯状電極E11Bとの間で電界の分布に沿って斜めに配向する領域、第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bから離れた領域で初期配向状態が維持される領域等が形成される。
【0064】
図7Bに示すように、第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bの電極間においては、液晶分子の長軸が電界の発生する方向に沿って凸円弧状に配向される。すなわち、
図7A及び
図7Bに示すように、液晶分子の初期配向の方向と、第1帯状電極E11Aと第2帯状電極E11Bとの間に生じる横電界の方向が同じであり、
図7Bに模式的に示すように、両電極間の略中央に位置する液晶分子の配向方向はほとんど変化しないものとなるが、中央部からそれぞれの電極側に位置する液晶分子は電界の強度分布に従って第1基板S11の表面に対し法線方向に傾いて(チルトして)配向する。したがって、第1基板S11側の液晶を全体として見れば、第1帯状電極E11Aと第2帯状電極E11Bとの間で液晶分子が円弧状に配向する。
【0065】
図8Bに示すように、第1基板S11側では第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bによる横電界の影響を受けて第1液晶層LC1に円弧状の屈折率分布(誘電率分布)が形成され、入射した光のうち液晶分子の初期配向の方向と平行な偏光成分が放射状に拡散する。また、
図8Cに示すように、第2基板S12側では第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12Bよる横電界の影響を受けて第1液晶層LC1に円弧状の屈折率分布が形成され、入射した光のうち液晶分子の初期配向の方向と平行な偏光成分が放射状に拡散する。
【0066】
そして、
図8B及び
図8Cを参照して説明したように、第1液晶層LC1の厚さが十分に厚いため、第1基板S11側及び第2基板S12側で、それぞれ独立して異なる偏光成分の拡散を制御することができる。
【0067】
液晶分子は、屈折率異方性Δnを有している。このため、オン状態の第1液晶層LC1は、液晶分子の配向状態に応じた屈折率分布、あるいは、リタデーション分布を有する。ここでのリタデーションとは、第1液晶層LC1の厚さをdとしたとき、Δn・dで表されるものである。液晶分子が円弧状に配向した状態では、液晶分子の長軸方向と平行な偏光成分が第1液晶層LC1を透過する際に、第1液晶層LC1の屈折率分布の影響を受けて散乱される(拡散される)こととなる。なお、本実施形態においては、ポジ型の液晶分子を有する液晶層が用いられている。
【0068】
図9は、第1液晶セル10に入射した第1偏光成分PL1及び第2偏光成分PL2が、第1液晶層LC1によって拡散される現象を模式的に示す。
図9では、0度、45度、90度、135度、180度、225度、270度、315度の方向が凡例に示す関係にあるものとして示す。そして、X軸方向は0-180度方向と同じであり、Y軸方向は90-270度方向と同じであるものとする。また、45-225度方向とは、X軸とY軸が直交する場合にその交差角を二等分する線分に沿った方向をいうものとする。以下の説明において、X軸方向を0-180度方向と示し、Y軸方向を90-270度方向と示すことがある。また、
図9に示すように、X軸を0度として反時計回りに回転角を示し、その回転角に応じた方向を45-225方向、90-270方向(Y軸方向)のように示すことがある。なお、
図9中に示される各軸方向と角度の関係及び
図9中右側の各偏光成分の偏光軸の向きを示す図における各角度の関係は、
図10~
図14についても同様である。
【0069】
図9は、左側欄に第1液晶セル10の電極配置、配向膜の配向方向、液晶分子の長軸の方向を示し、各方向は凡例に示す方向に基づいている。
図9は、第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bの長手方向がY軸方向(90-270度の方向)に向けて配置され、第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12Bの長手方向がY軸方向に対し45度±10度の範囲で時計回りに回転した方向(45-225度の方向)に向けて配置された状態を示す。したがって、第1基板S11の側の配向膜の配向方向はX方向にあり、第2基板S12側の配向膜の配向方向はX軸方向から45度時計回りに回転した方向(135-315度の方向)にあるものとする。また、第1偏光成分PL1は偏光軸がY軸方向にあり、第2偏光成分PL2がX軸方向にあるものとする。また、第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bの間には電位差が生じており、これらの間に電界が生じている。第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12Bの間にも電位差が生じており、これらの間に電界が生じている。
【0070】
図9の右側欄は、第1偏光成分PL1及び第2偏光成分PL2の偏光方向を凡例に示す角度に当てはめて示す。
図9において、第1偏光成分PL1に着目すると、第1液晶セル10に入射する第1偏光成分PL1の偏光方向は、第1液晶層LC1の第1基板S11側の液晶分子の長軸方向に対し交差する方向(直交する方向)にある。このため、第1基板S11側の液晶分子が第1電極E11によって生じる電界によって屈折率分布を変化させているものの、第1偏光成分PL1は拡散されずそのまま第2基板S12側に向かう。また、当該第1偏光成分PL1は、第1液晶層LC1を第1基板S11側から第2基板S12側に向かう過程で液晶分子のねじれ配向に従って45度旋光される。旋光後の第1偏光成分PL1の偏光軸は45-225度の方向)にあるため第2基板S12側の液晶分子の長軸方向と交差する方向にある。このため、第2基板S12側の液晶分子が第2電極E12によって生じる電界によって屈折率分布を変化させているものの、第2偏光成分PL2はその影響を受けず、そのまま透過する。このように、第1偏光成分PL1は、第1液晶セル10を通過する過程で45度旋光されるが、拡散等はされないで第1液晶セル10を透過する。
【0071】
一方、第2偏光成分PL2は、その偏光方向が第1液晶層LC1の第1基板S11側の液晶分子の長軸方向に対し平行な方向である。このため、第1電極E11によって生じる電界によって第1基板S11側の液晶分子が屈折率分布を有し、この作用を受けて第2偏光成分PL2は拡散される。そして、第2偏光成分PL2は、第1液晶層LC1を第1基板S11側から第2基板S12側に向かう過程で液晶分子のねじれ配向に従って45度旋光される。これにより、第2偏光成分PL2の偏光軸は45度時計回りに回転した方向(135-315度の方向)にあるため第2基板S12側の液晶分子の長軸方向と平行な方向にある。第2基板S12側の液晶分子が第2電極E12によって生じる電界によって屈折率分布を変化させているので、第1液晶層LC1によって遷移された第1偏光成分PL1は、第2基板S12側の液晶分子により形成される屈折率分布により135-315度の方向に拡散される。すなわち、第1液晶セル10に入射した第2偏光成分PL2は、第1液晶セル10を通過する過程で45度旋光され、X方向(0-180度の方向)及び135-315度の方向に拡散する。
【0072】
このように、第1液晶セル10の第1電極E11に対し第2電極E12が45度±10度の範囲で回転した状態で配置されている場合、入射する光の偏光軸の方向によって液晶層により拡散される偏光成分と拡散されない偏光成分が存在する。次に、このような液晶セルを光の進行方向に複数個並べ、さらに帯状電極を配置する方向をそれぞれ異ならせた場合について、いくつかの例を参照しながら説明する。
【0073】
第1実施形態:
図10は、第1実施形態に係る液晶光制御素子102の各液晶セルにおける帯状電極の配置と、拡散される偏光成分の関係を示す。液晶光制御素子102は、光の入射側から第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30、及び第4液晶セル40が重ねられた構成を有する。なお、
図10は、左側欄に第1液晶セル10、第2液晶セル20、第3液晶セル30、第4液晶セル40の電極配置、配向膜の配向方向、液晶分子の長軸の方向を示し、右側欄には
図9と同様に第1偏光成分PL1及び第2偏光成分PL2の偏光方向を凡例に示す角度に当てはめて示す。入射光の第1偏光成分PL1及びこれに直交する第2偏光成分PL2は、第1液晶セル10に入射してから、第4液晶セル40から出射されるまでの過程で、各液晶セルの液晶層で旋光されるので、
図10の右側欄では各液晶セルにおける第1偏光成分PL1及び第2偏光成分PL2の旋光状態を矢印で示す。このような表示は、
図11~
図14についても同様である。
【0074】
第1実施形態に係る液晶光制御素子102は、各液晶セルの第1電極の配置及び第2電極の配置が全て異なっている。具体的に、第1液晶セル10の第1帯状電極E11A及び第2帯状電極E11Bの長手方向(以下の説明において「第1電極E11の長手方向」ともいう)が90-270度方向に向けられており、第3帯状電極E12A及び第4帯状電極E12B(以下の説明において「第2電極E12の長手方向」ともいう)は45-225度方向に向けられている。そして、図示されない配向膜の配向方向は帯状電極の長手方向と交差する方向に設けられるため、第1基板S11側の配向膜の配向方向が0-180度方向にあり、第2基板S12側の配向膜の配向方向が135-315度方向にある。すなわち、第1液晶セル10において、第1電極E11に対して第2電極E12は45度±10度の範囲の角度(本実施形態においては45度)で交差するように配置され、配向膜の配向方向も第1基板S11側と第2基板S12側で45度の角度で交差するように設けられている。
【0075】
第2液晶セル20は、第1電極E11の長手方向が135-315度方向に向けられており、第2電極E22の長手方向が90-270度方向に向けられており、第1基板S21側の配向膜の配向方向が45-225度方向に向けられており、第2基板S22側の配向膜の配向方向が0-180度方向に向けられている。第3液晶セル30は、第1電極E31の長手方向が0-180度方向に向けられており、第2電極E32の長手方向が135-315度方向に向けられており、第1基板S31側の配向膜の配向方向が90-270度方向に向けられており、第2基板S32側の配向膜の配向方向が45-225度方向に向けられている。第4液晶セル40は、第1電極E41の長手方向が45-225度方向に向けられており、第2電極E42の長手方向が90-270度方向に向けられており、第1基板S41側の配向膜の配向方向が135-315度方向に向けられており、第2基板S42側の配向膜の配向方向が0-180度方向に向けられている。また、第1液晶セル10の第2電極E12の長手方向と第2液晶セル20の第1電極E21の長手方向、第2液晶セル20の第2電極E22の長手方向と第3液晶セル30の第1電極E31の長手方向、及び、第3液晶セル30の第2電極E32の長手方向と第4液晶セル40の第1電極E41の長手方向が90度±10度の範囲の角度(本実施形態では90度)で交差している。
【0076】
次に、各液晶セルに入射した光の拡散について説明する。以下の説明では、各液晶セルの第1電極及び第2電極に所定の電圧が印加され、第1基板側及び第2基板側でそれぞれ液晶層に円弧状の屈折率分布が形成されているものとする。
【0077】
第1液晶セル10では、第1基板S11側の液晶分子の長手方向が0-180度方向を向いており、第2基板S12側の液晶分子の長手方向が135-315度方向を向いている。第1基板S11側から入射した光のうち、0-180度方向の平行な偏光成分(PL0/180)は第1液晶層LC1の円弧状の屈折率分布の影響を受けて0-180度方向に拡散され、これに直交する偏光成分(PL90/270)は透過する。偏光成分(PL0/180)は第1液晶層LC1を第1基板S11側から第2基板S12側へ進むことにより時計回りに45度旋光され135-315度方向に偏光軸を有する偏光成分(PL135/315)となる。この偏光成分(PL135/315)の偏光軸の方向は第2基板S12側の液晶分子の長軸の配向方向と同じであるので、第2基板S12側で再び135-315方向に拡散される。一方、偏光成分(PL90/270)は第1液晶層LC1によって時計回りに45度旋光され、偏光軸の方向が45-225度方向にある偏光成分(PL45/225)になるが、この偏光成分(PL45/225)は第2基板S12側の液晶分子の配向方向と直交する関係にあるので拡散されずそのまま透過する。
【0078】
このように、第1液晶セル10に入射した光のうち、0-180度方向の平行な偏光成分(PL0/180)は旋光の前後で2回拡散され、これに直交する偏光成分(PL90/270)は拡散されず旋光のみして透過する。
【0079】
このような特定の偏光成分が拡散され、又は透過する現象が、第2液晶セル20、第3液晶セル30、及び第4液晶セル40で発生する。
第2液晶セル20では、45-225度方向の偏光成分(PL45/225)が第2液晶セル20を透過する過程で45-225度方向及び0-180度方向に拡散され、135-315度方向の偏光成分(PL135/315)として入射した光が拡散されずに透過する。第3液晶セル30では、90-270度方向の偏光成分(PL90/270)として入射した光が第3液晶セル30を透過する過程で90-270度方向及び45-225度方向に拡散され、0-180度方向の偏光成分(PL0/180)として入射した光が拡散されずに透過する。第4液晶セル40では、135-315度方向の偏光成分(PL135/315)として入射した光が第4液晶セル40を透過する過程で135-315度方向及び90-270度方向に拡散され、45-225度方向の偏光成分(PL45/225)として入射した光が拡散されずに透過する。
【0080】
第1実施形態に係る液晶光制御素子102は、各液晶セルで特定の偏光成分を拡散させ旋光した後再び拡散するが、液晶光制御素子102に入射する前の特定の偏光成分に着目すると、その偏光成分はある一つの液晶セルを透過するときに2回拡散されるが、他の液晶セルによっては拡散されない。すなわち、第1実施形態に係る液晶光制御素子102は、入射光の特定の偏光成分を複数の液晶セルに亘って拡散しないような電極の組み合わせを有している。このような第1実施形態に係る液晶光制御素子102によれば、入射光の偏光成分のうち、同一の偏光成分を異なる液晶セル同じ方向に拡散しないようにすることで、液晶セル間での干渉を防ぐことができ、モアレの発生、輝度の不均一性(色ムラ)を解消することができる。
【0081】
第2実施形態:
図11は、第2実施形態に係る液晶光制御素子102の各液晶セルにおける帯状電極の配置と、拡散される偏光成分の関係を示す。
【0082】
第2実施形態に係る液晶光制御素子102は、第1液晶セル10と第4液晶セル40の電極配置が同じであって、且つ、第2液晶セル20と第3液晶セル30の電極配置が同じである。具体的に、第1液晶セル10の第1電極E11の長手方向が90-180度方向に向けられており、第2電極E12の長手方向が45-225度方向に向けられている。第4液晶セル40の第1電極E41及び第2電極E42についても同様である。そして、図示されない配向膜の配向方向は帯状電極の長手方向と交差する方向に設けられるため、第1基板S11、S41側の配向膜の配向方向が0-180度方向にあり、第2基板S12、S42側の配向膜の配向方向が135-315度方向にある。
【0083】
第2液晶セル20は、第1電極E21の長手方向が0-180度方向に向けられており、第2電極E22の長手方向が135-315度方向に向けられている。第3液晶セル30の第1電極E31及び第2電極E32も同様である。そして、図示されない配向膜の配向方向は帯状電極の長手方向と交差する方向に設けられるため、第1基板S21、S31側の配向膜の配向方向が90-270度方向にあり、第2基板S22、S22側の配向膜の配向方向が135-315度方向にある。
【0084】
次に、各液晶セルに入射した光の拡散について説明する。以下の説明では、各液晶セルの第1電極及び第2電極に所定の電圧が印加され、第1基板側及び第2基板側でそれぞれ液晶層に円弧状の屈折率分布が形成されているものとする。
【0085】
第1液晶セル10の構成は第1実施形態と同じであり、第1液晶セル10に入射する光のうち、0-180度方向の平行な偏光成分(PL0/180)は、0-180度方向に1回、旋光後に135-315方向に1回、で合計2回拡散され、これに直交する偏光成分(PL90/270)は拡散されず旋光のみして透過する。第1液晶セル10に入射した光のうち、上記0-180度方向の平行な偏光成分(PL0/180)に着目すると、この偏光成分(PL0/180)は第1液晶セル10で時計回りに45度旋光されて偏光成分(PL135/315)となる。この偏光成分(PL135/315)は第2液晶セル20でさらに時計回りに45度旋光されて偏光成分(PL90/270)となる。この偏光成分(PL90/270)は、第3液晶セル30の第1基板S31側の液晶分子の長軸方向と偏光軸が同じであるので、90-270度方向に拡散される。そして、第1基板S31側から第2基板S32側に進む過程で第3液晶層LC3によりさらに時計回りに45度旋光され偏光成分(PL45/225)となる。この偏光成分(PL45/225)の偏光軸の方向は第2基板S32側の液晶分子の長軸の配向方向と同じであるので、第2基板S12側で再び45-225方向に拡散される。この偏光成分(PL45/225)は第4液晶セル40で時計回りに45度旋光されて偏光成分(PL0/180)となるものの、第4液晶セル40では拡散はされない。
【0086】
上記第1液晶セルを通過した偏光成分(PL90/270)は、第2液晶セル20では、第1電極E21側で90-270度の方向に拡散される。この偏光成分(PL90/270)は、第1基板S21側から第2基板S22へ進むことにより時計回りに45度旋光されて偏光成分(PL45/225)となる。この偏光成分(PL45/225)は、第2液晶セル20の第2基板S22側の液晶分子の長軸方向と偏光軸が同じであるので、45-225度方向に拡散される。この偏光成分(PL45/225)は第3液晶セル30で時計回りに45度旋光されて偏光成分(PL0/180)となる。この偏光成分(PL0/180)は、第4液晶セル40の第1基板S41側の液晶分子の長軸方向と偏光軸が同じであるので、0-180度方向に拡散される。そして、第1基板S41側から第2基板S42側に進む過程で第4液晶層LC4により時計回りに45度旋光され偏光成分(PL135/315)となる。この偏光成分(PL135/315)の偏光軸の方向は第2基板S42側の液晶分子の長軸の配向方向と同じであるので、第2基板S42側で再び135-315方向に拡散される。
【0087】
このように、第2実施形態に係る液晶光制御素子102は、第1液晶セル10で2回拡散された偏光成分が第3液晶セル30で再び2回拡散されるが、その拡散方向は全て異なっている。また、第2液晶セル20で2回拡散された偏光成分が第4液晶セル40で再び2回拡散されるが、その拡散方向は全て異なっている。このように、第2実施形態に係る液晶光制御素子102は、入射光のうち特定の偏光成分を2つの液晶セルで合計4回拡散することができるが、拡散の方向が全て異なっているため、液晶セル間での干渉を防ぐことができ、モアレの発生、輝度の不均一性(色ムラ)を解消することができる。
【0088】
第3実施形態:
図12は、第3実施形態に係る液晶光制御素子102の各液晶セルにおける帯状電極の配置と、拡散される偏光成分の関係を示す。
【0089】
本実施形態において液晶光制御素子102は4つの液晶セルを含むが、各液晶セルは第1電極と第2電極とが67.5度±10度の範囲の角度で交差している。なお、
図12では分かり易さの為各液晶セルは第1電極と第2電極とが67.5度で交差しているとする。例えば、第1液晶セル10の第1電極E11が0-180度方向に配置される場合、第2電極E12は67.5-247.5度方向に配置され、第2液晶セル20の第1電極E21が45-225度方向に配置される場合、第2電極E22は112.5-292.5度方向に配置され、第3液晶セル30の第1電極E31が90-270度方向に配置される場合、第2電極E32は157.5-337.5度方向に配置され、第4液晶セル40の第1電極E41が135-315度方向に配置される場合、第2電極E42は22.5-202.5度方向に配置されている。また、第1液晶セル10に対して第2液晶セル20は45度回転した関係にあり、第3液晶セル30と第4液晶セル40も45度回転した関係にある。このような電極の配置は、液晶光制御素子102を組む場合にパネルを回転させてもよいし、電極を作製するときにフォトマスク又は基板を回転させてフォトリソグラフィーの処理を行ってもよい。
【0090】
このように、全ての液晶セルの全ての電極の配置が異なるため液晶セル間での干渉を防ぐことができ、モアレの発生、輝度の不均一性(色ムラ)を解消することができる。また、本実施形態では、0-180度方向、22.5-202.5度方向、45-225度方向、67.5-247.5度方向、90-180度方向、112.5-292.5度方向、135-315度方向、157.5-337.5度方向の8方向に拡散することができ、より均一な配光をすることができる。
【0091】
第4実施形態:
図13は、第4実施形態に係る液晶光制御素子102の各液晶セルにおける帯状電極の配置と、拡散される偏光成分の関係を示す。第4実施形態に係る液晶光制御素子102は、第1液晶セル10及び第2液晶セル20の2つの液晶セルで構成されている。
【0092】
図13に示すように、第1液晶セル10の第1電極E11と第2電極E12、第2液晶セル20の第1電極E21と第2電極E22とは、45度±10度の範囲の角度で交差している。また、第1液晶セル10の第1電極E11と第2液晶セル20の第1電極E21、及び第1液晶セル10の第2電極E12と第2液晶セル20の第2電極E22とは90度±10度の範囲の角度で交差している。
【0093】
第1実施形態で説明したように、このような構成を有することで、第1液晶セル10及び第2液晶セル20の2つの液晶セルで直交する2つの偏光成分を拡散することができる。さらに、第1液晶セル10及び第2液晶セル20の第1電極E11、E21、第2電極E12、E22は電極の方向が全て異なっており、電極間で光の拡散に干渉することがないためモアレの発生を防止することができる。
【0094】
図14は、第2液晶セル20を反転させた場合を示す。電極の配置のみに着目すると、
図13の電極配置に対して第2液晶セル20の第1電極E21と第2電極E22を45度回転させた状態であるということもできる。このような配置にすることによっても、2つの液晶セルで直交する2つの偏光成分を拡散することができ、電極間の干渉を防ぎモアレの発生を防止することができる。
【0095】
以上、第1乃至第4実施形態によって説明したように、液晶光制御素子102を構成する液晶セルは、セル内で2つの電極を45度±10度の範囲の角度(又は22.5度±10度の範囲の角度)で交差するように配置し、隣接するセル間でも同じ電極構成とならないようにすることで、モアレの発生を防ぎ、輝度の不均一性を無くすことができる。
【0096】
なお、第1乃至第4実施形態に例示される液晶光制御素子102の構成は一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で液晶セルの並び順、電極の配置を適宜変更することができる。また、液晶セルの数は2つのセルの組み合わせ、4つのセルの組み合わせに限定されず、さらに多くのセルを組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0097】
10:第1液晶セル、20:第2液晶セル、30:第3液晶セル、40:第4液晶セル、100:液晶光制御装置、102:液晶光制御素子、104:回路基板、106:光源部、S11、S21、S31、S41:第1基板、S12、S22、S32、S42:第2基板、F1:第1フレキシブル配線基板、F2:第2フレキシブル配線基板、F3:第3フレキシブル配線基板、F4:第4フレキシブル配線基板、TA1:第1透明接着層、TA2:第2透明接着層、TA3:第3透明接着層、LC1:第1液晶層、LC2:第2液晶層、LC3:第3液晶層、LC4:第4液晶層、E11、E21、E31、E41:第1電極、E11A、E21A、E31A、E41A:第1帯状電極、E11B、E21B、E31B、E41B:第2帯状電極、E12、E22、E32、E42:第2電極、E12A、E22A、E32A、E42A:第3帯状電極、E12B、E22B、E32B、E42B:第4帯状電極、PL11:第1給電線、PL12:第2給電線、PL13:第3給電線、PL14:第4給電線、PL15:第5給電線、PL16:第6給電線、T11:第1接続端子、T12:第2接続端子、T13:第3接続端子、T14:第4接続端子、PT11:第1給電端子、PT12:第2給電端子、PT13:第3給電端子、PT14:第4給電端子、AL11:第1配向膜、AL12:第2配向膜、SE:シール材、CP11:第1導電性部材