IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニコン エスエルエム ソルーションズ アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

特許75274793次元ワークピースを造形するための照射システムを動作させる方法、照射システムおよび装置
<>
  • 特許-3次元ワークピースを造形するための照射システムを動作させる方法、照射システムおよび装置 図1
  • 特許-3次元ワークピースを造形するための照射システムを動作させる方法、照射システムおよび装置 図2
  • 特許-3次元ワークピースを造形するための照射システムを動作させる方法、照射システムおよび装置 図3
  • 特許-3次元ワークピースを造形するための照射システムを動作させる方法、照射システムおよび装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】3次元ワークピースを造形するための照射システムを動作させる方法、照射システムおよび装置
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/85 20210101AFI20240726BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20240726BHJP
   B22F 10/322 20210101ALI20240726BHJP
   B22F 10/36 20210101ALI20240726BHJP
   B22F 10/366 20210101ALI20240726BHJP
   B22F 12/90 20210101ALI20240726BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20240726BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20240726BHJP
   B29C 64/364 20170101ALI20240726BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20240726BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240726BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240726BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240726BHJP
【FI】
B22F10/85
B22F10/28
B22F10/322
B22F10/36
B22F10/366
B22F12/90
B28B1/30
B29C64/153
B29C64/364
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023516593
(86)(22)【出願日】2021-10-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 EP2021077495
(87)【国際公開番号】W WO2022074029
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】102020126074.1
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】523394734
【氏名又は名称】ニコン エスエルエム ソルーションズ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ブリュック
(72)【発明者】
【氏名】クヌート クラウセ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ シェーベル
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-201068(JP,A)
【文献】特開2017-122265(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03587006(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0178287(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/28,10/322,10/36,10/366,
10/85,12/90
B28B 1/30
B29C 64/153,64/364,64/393
B33Y 10/00,30/00,50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元ワークピース(110)を造形する目的で電磁または粒子放射線を原料粉末の層に照射するために照射システム(10)を動作させる方法において、
- 造形すべきワークピース(110)の対応する層の幾何形状にしたがって電磁または粒子放射線を選択的に照射すべき原料粉末層(11)を複数の領域に細分するステップと;
- 前記領域に電磁または粒子放射線を選択的に照射する前に少なくとも1つの領域について、前記領域が微粒子不純物による影響を受けているかまたはけていないかを決定するステップと;
- 前記原料粉末層(11)の前記領域に電磁または粒子放射線を選択的に照射する際に、放射線ビーム(14a、14b)により原料粉末層(11)の前記領域に対して適用されるエネルギ密度を制御して、前記原料粉末層(11)の前記領域が微粒子不純物による影響をけていないことが決定された場合よりも、前記原料粉末層(11)の前記領域が微粒子不純物による影響を受けていると決定された場合の方が、前記エネルギ密度がより高くなるようにするステップと;
を含む方法。
【請求項2】
前記原料粉末層(11)の前記領域に対して適用される前記エネルギ密度が、前記原料粉末層(11)の前記領域を横断して導かれる放射線ビーム(14a、14b)の出力、焦点径および焦点形状のうちの少なくとも1つ、および/または前記放射線ビーム(14a、14b)が原料粉末層(11)の前記領域を横断して導かれるときにしたがう走査パターンおよび走査速度のうちの少なくとも1つ、を好適な形で適応させることによって制御される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記原料粉末層(11)の領域が微粒子不純物による影響を受けているかまたはけていないかの前記決定が、前記原料粉末層(11)を横断して導かれるガス流の流れ方向(F)に応じて、および/または、原料粉末層(11)を横断して導かれるガス流の流速、原料粉末層(11)を横断して導かれるガス流のガス流量プロファイルおよび/または微粒子不純物の粒子量に基づいて決定されるスパッタ軌跡に応じて行なわれる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記原料粉末層(11)を横断して導かれる前記ガス流の前記流れ方向(F)において前記原料粉末層(11)の上流側縁部(30)から予め定められた距離にわたって延在し、かつ/または前記原料粉末層(11)を横断して導かれる前記ガス流の前記流れ方向(F)において上流側照射開始位置(32)から予め定められた距離にわたって延在する、前記原料粉末層(11)の領域が、微粒子不純物による影響をけていない原料粉末層(11)の領域とみなされる、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
- 前記3次元ワークピース(110)の前記造形を開始する前にかつ/または前記3次元ワークピース(110)の造形中その場で、電磁または粒子放射線を選択的に照射すべき前記原料粉末層(11)が、複数の領域に細分され;かつ/または
- 前記原料粉末層(11)の領域が微粒子不純物による影響を受けているかけていないかの決定が、前記3次元ワークピース(110)の造形開始前にかつ/または前記3次元ワークピース(110)の造形中にその場で行なわれる、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記原料粉末層(11)の領域が微粒子不純物による影響を受けているかけていないかの前記決定が、電磁または粒子放射線を前記原料粉末層(11)に照射することによって生成されるワークピース層の幾何形状に応じて、および/または電磁または粒子放射線を先行原料粉末層(11)に照射することによって生成されるワークピース層の幾何形状に応じて行なわれる、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記原料粉末層(11)の領域が微粒子不純物による影響を受けているかまたは微粒子不純物による影響をけていないかの前記決定が、前記照射システム(10)によって前記原料粉末層(11)に対し適用されるように意図されているエネルギ密度の値の範囲、前記原料粉末層(11)の周囲環境内で支配的な圧力、前記原料粉末層(11)を横断して導かれる前記ガス流を形成するガスのタイプ、前記原料粉末層(11)の厚み、前記原料粉末層(11)を横断して導かれる前記ガス流の流量率、前記原料粉末層(11)に含まれる材料、放射線ビーム(14a、14b)が前記原料粉末層(11)に衝突する角度、特に、導かれた前記ガス流の前記流れ方向(F)との関係における前記原料粉末層(11)を横断した前記放射線ビーム(14a、14b)の移動方向、および前記原料粉末層(11)の上流側縁部および/またはガス流量入口からの距離、のうちの少なくとも1つに応じて行なわれる、
請求項3又は4に記載の方法。
【請求項8】
前記原料粉末層(11)の領域が微粒子不純物による影響を受けているかけていないかの前記決定が、複数の放射線ビーム(14a、14b)の互いとの関係における照射位置(14ba、14aa~14ag)に応じて行なわれる、
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
微粒子不純物による影響を受けていることが決定された前記原料粉末層(11)の領域を選択的に照射する際に、放射線ビーム(14a、14b)により前記原料粉末層(11)の前記領域に適用される前記エネルギ密度が、微粒子不純物による前記領域の干渉度に応じて変動させられる、
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
放射線ビーム(14a、14b)を前記原料粉末層(11)の領域に選択的に照射する際に、この領域が別の放射線ビーム(14a、14b)によって生成された微粒子不純物による影響を受けていることが決定されている場合、前記放射線ビーム(14a、14b)により前記領域に対して適用される前記エネルギ密度が、前記別の放射線ビーム(14a、14b)により前記原料粉末層(11)に適用される前記エネルギ密度と比べて増大させられる、
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
微粒子不純物による影響を受けていることが決定された前記原料粉末層(11)の領域を選択的に照射する際に、放射線ビーム(14a、14b)により前記原料粉末層(11)の前記領域に適用される前記エネルギ密度が、離散的な増分でかつ/または微粒子不純物による前記領域の干渉度の増加に伴って連続的に増大させられる、
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
3次元ワークピース(110)を造形する目的で電磁または粒子放射線を原料粉末の層に照射するための照射システム(10)において、
- 造形すべきワークピース(110)の対応する層の幾何形状にしたがって電磁または粒子放射線を選択的に照射すべき原料粉末層(11)を複数の領域に細分し;
- 前記領域に電磁または粒子放射線を選択的に照射する前の少なくとも1つの領域について、前記領域が微粒子不純物による影響を受けているかまたはけていないかを標示する決定入力を受信し;
- 前記原料粉末層(11)の前記領域に電磁または粒子放射線を選択的に照射する際に、放射線ビーム(14a、14b)により原料粉末層(11)の前記領域に対して適用されるエネルギ密度を制御して、前記原料粉末層(11)の前記領域が微粒子不純物による影響をけていないことが決定された場合よりも、前記原料粉末層(11)の前記領域が微粒子不純物による影響を受けていると決定された場合の方が、前記エネルギ密度がより高くなるようにする;
ように構成されている制御デバイス(18)を含む照射システム。
【請求項13】
前記制御デバイス(18)が、前記原料粉末層(11)の前記領域に対して適用される前記エネルギ密度を、前記原料粉末層(11)の前記領域を横断して導かれる放射線ビーム(14a、14b)の出力、焦点径および焦点形状のうちの少なくとも1つおよび/または、前記放射線ビーム(14a、14b)が原料粉末層(11)の前記領域を横断して導かれるときにしたがう走査パターンおよび走査速度のうちの少なくとも1つを好適な形で適応させることによって制御するように構成されている、
請求項12に記載の照射システム
【請求項14】
- 決定デバイス(20)は、前記原料粉末層(11)の領域が微粒子不純物による影響を受けているかまたはけていないかを、前記原料粉末層(11)を横断して導かれるガス流の流れ方向(F)に応じて、および/または原料粉末層(11)を横断して導かれるガス流の流速、原料粉末層(11)を横断して導かれるガス流のガス流量プロファイルおよび/または微粒子不純物の粒子量に基づいて決定されるスパッタ軌跡に応じて決定するように構成されており;かつ/または
- 前記原料粉末層(11)を横断して導かれる前記ガス流の前記流れ方向(F)において前記原料粉末層(11)の上流側縁部(30)から予め定められた距離にわたって延在し、かつ/または前記原料粉末層(11)を横断して導かれる前記ガス流の前記流れ方向(F)において上流側照射開始位置(p)から予め定められた距離にわたって延在する、前記原料粉末層(11)の領域が、微粒子不純物による影響をけていない原料粉末層(11)の領域とみなされる;かつ/または
- 前記制御デバイス(18)が、前記3次元ワークピース(110)の前記造形を開始する前に、かつ/または前記3次元ワークピース(110)の造形中その場で、電磁または粒子放射線を選択的に照射すべき前記原料粉末層(11)を複数の領域に細分するように構成されており;かつ/または
- 前記決定デバイス(20)は、前記原料粉末層(11)の領域が微粒子不純物による影響を受けているかけていないかを、前記3次元ワークピース(110)の造形開始前に、かつ/または前記3次元ワークピース(110)の造形中にその場で決定するように構成されており;かつ/または
- 前記決定デバイス(20)は、前記原料粉末層(11)の領域が微粒子不純物による影響を受けているかけていないかを、電磁または粒子放射線を前記原料粉末層(11)に照射することによって生成されるワークピース層の幾何形状に応じて、および/または電磁または粒子放射線を先行原料粉末層(11)に照射することによって生成されるワークピース層の幾何形状に応じて決定するように構成されており;かつ/または
- 前記決定デバイス(20)は、前記原料粉末層(11)の領域が微粒子不純物による影響を受けているかまたは微粒子不純物による影響をけていないかを、前記照射システム(10)によって前記原料粉末層(11)に対し適用されるように意図されているエネルギ密度の値の範囲、前記原料粉末層(11)の周囲環境内で支配的な圧力、前記原料粉末層(11)を横断して導かれる前記ガス流を形成するガスのタイプ、前記原料粉末層(11)の厚み、前記原料粉末層(11)を横断して導かれる前記ガス流の流量率、前記原料粉末層(11)に含まれる材料、放射線ビーム(14a、14b)が前記原料粉末層(11)に衝突する角度、特に、導かれた前記ガス流の前記流れ方向(F)との関係における前記原料粉末層(11)を横断した前記放射線ビーム(14a、14b)の移動方向、および前記原料粉末層(11)の上流側縁部および/またはガス流量入口からの距離、のうちの少なくとも1つに応じて決定するように構成されており;かつ/または
- 前記決定デバイス(20)は、前記原料粉末層(11)の領域が微粒子不純物による影響を受けているかけていないかを、複数の放射線ビーム(14a、14b)の互いとの関係における照射位置(14ba、14aa~14ag)に応じて決定するように構成されている;
請求項12または13のいずれか1項に記載の照射システム。
【請求項15】
- 微粒子不純物による影響を受けていることが決定された前記原料粉末層(11)の領域を選択的に照射する際に、前記制御デバイス(18)は、放射線ビーム(14a、14b)により前記原料粉末層(11)の前記領域に適用される前記エネルギ密度を、微粒子不純物による前記領域の干渉度に応じて変動させるように構成されており;かつ/または
- 放射線ビーム(14a、14b)を前記原料粉末層(11)の領域に選択的に照射する際に、この領域が別の放射線ビーム(14a、14b)によって生成された微粒子不純物による影響を受けていることが決定されている場合、前記制御デバイス(18)は、前記放射線ビーム(14a、14b)により前記領域に対して適用される前記エネルギ密度を、前記別の放射線ビーム(14a、14b)により前記原料粉末層(11)に適用される前記エネルギ密度と比べて増大させるように構成されており;かつ/または、
- 微粒子不純物による影響を受けていることが決定された前記原料粉末層(11)の領域を選択的に照射する際に、前記制御デバイス(18)は、放射線ビーム(14a、14b)により前記原料粉末層(11)の前記領域に適用される前記エネルギ密度を、離散的な増分でかつ/または微粒子不純物による前記領域の干渉度の増加に伴って連続的に増大させるように構成されている;
請求項12ないし14のいずれか1項に記載の照射システム。
【請求項16】
請求項12ないし15のいずれか1項に記載の照射システムが装備された3次元ワークピース(110)を造形するための装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元ワークピースを造形する目的で電磁または粒子放射線を原料粉末の層に照射するために照射システムを動作させる方法に向けられている。さらに、本発明は、この種の照射システムに向けられている。最後に、本発明は、3次元ワークピースを造形するための装置に向けられている。
【背景技術】
【0002】
粉末床溶融結合は、粉体の、特に金属および/またはセラミック原料を複雑な形状の3次元ワークピースへと加工することのできる付加積層プロセスである。このために、原料粉末層がキャリアに適用され、造形すべきワークピースの所望される幾何形状に応じて部位選択的な形でレーザ放射線に付される。粉末層内に浸透するレーザ放射線は、原料粉末粒子の加熱そして結果としての融解または焼結をひき起こす。その後、ワークピースが所望の形状およびサイズを有するまで、すでにレーザ処理に付されたキャリア上の層に対して、さらなる原料粉末層が連続して適用される。粉末床溶融結合は、プロトタイプ、工具、交換部品、高価値コンポーネントまたは医療用プロテーゼ、例えば歯科用または整形外科用プロテーゼを、CADデータに基づいて造形または修復するために利用可能である。
【0003】
特許文献1(欧州特許第3,321,003号明細書)に記載の粉末床溶融結合により3次元ワークピースを造形するための例示的装置は、原料粉末を受入れるためのキャリアを収容するプロセスチャンバを含む。ワークピースを造形する目的でキャリア上の原料粉末に電磁または粒子放射線を選択的に照射するために、照射デバイスが提供される。プロセスチャンバ内部に所望の雰囲気を確立し、プロセスチャンバから不純物を放出するためにプロセスチャンバを通って保護ガスが導かれる。
【0004】
粉末床溶融結合装置のキャリア上に3次元ワークピースを構築する際に、原料粉末内に導入された放射線エネルギは、原料粉末を融解および/または焼結させる。具体的には、放射線ビームが原料粉末に衝突する領域内で、融解した原料の融液プールが生成される。原料粉末の融解中に、溶接煙が生成され、これが典型的には、軽量の微粒子不純物を含有する煙プリューム、例えば煙粒子、分散原料粉末粒子および煤粒子を形成する。軽い溶接煙粒子の大部分は、プロセスチャンバを通って誘導されたガス流に同伴されることによってプロセスチャンバから放出されるものの、軽量の微粒子不純物の煙プリュームはなおも、放射線ビームを所望されない形で遮蔽しかつ/または散乱させ、この放射線ビームは、照射すべき原料粉末に衝突する前に、煙プリュームを通って導かれる。
【0005】
さらに、融液プールからの原料の蒸発は、スプラッシュ粒子を融液プールから噴霧させ得る。しかしながら、融解した形で融液プールから噴霧しその後凝固するスプラッシュ粒子は、典型的に重すぎて、プロセスチャンバを通って誘導されるガス流に同伴され得ず、したがって、選択的に照射されたばかりの原料粉末層の照射されていない原料粉末の表面上か、または生成されたばかりのワークピース層上のいずれかに被着する。したがって、これらの凝固したスプラッシュ粒子は、ワークピース内に欠陥および/または不規則性を生成させる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】欧州特許第3,321,003号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、3次元ワークピースを造形する目的で電磁または粒子放射線を原料粉末の層に照射するために照射システムを動作させる方法、および高品質のワークピースの造形を可能にするこの種の照射システムを提供することにある。さらに、本発明は、高品質のワークピースの造形を可能にする3次元ワークピースを造形するための装置に向けられている。
【0008】
3次元ワークピースを造形する目的で電磁または粒子放射線を原料粉末の層に照射するために照射システムを動作させる方法においては、造形すべきワークピースの対応する層の幾何形状にしたがって電磁または粒子放射線を選択的に照射すべき原料粉末層が、複数の領域へと細分される。例えば、原料粉末層は、複数のストライプへと細分され得る。ストライプは互いに実質的に平行に延在し得る。さらに、ストライプは、微粒子不純物を除去するために原料粉末層を横断して導かれるガス流の流れ方向に実質的に直交して延在し得る。付加的にまたは代替的には、原料粉末層を横断して導かれるガス流の流れ方向に対し実質的に平行に延在し得る複数のストライプへと、原料粉末層を細分することも同様に構想可能である。原料粉末層の領域は、ワークピースを造形する際に照射すべき全ての原料粉末層について固定された状態のままであってよく、あるいは、原料粉末層のそれぞれ1つに選択的に照射することによって造形すべきワークピースのサイズ、形状および/または位置に応じて変動してよい。
【0009】
少なくとも1つの領域について、前記領域に電磁または粒子放射線を選択的に照射する前に、前記領域が微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないかが決定される。本出願に関連して「微粒子不純物による影響を受けている」なる用語は、原料粉末層の領域を選択的に照射することにより造形されるワークピース層部分の品質を損なう可能性のある原料粉末層領域の状態を標示するものとして理解されるべきである。したがって、本出願に関連して「微粒子不純物による影響を実質的に受けていない」なる用語は、微粒子不純物によってひき起こされる欠陥および不規則性を実質的に含まない原料粉末層領域を選択的に照射することによるワークピース層部分の造形を可能にする原料粉末層領域の状態を標示するものとして理解されるべきである。
【0010】
原料粉末層上に電磁または粒子放射線を選択的に照射するための照射システムは、放射線ビーム源、詳細にはレーザビーム源を含むことができ、付加的には、放射線ビーム源が発出する少なくとも1つの放射線ビームを分割し、誘導しかつ/または処理するための少なくとも1つの光学ユニットを含むことができる。光学ユニットは、対物レンズおよびスキャナユニットなどの光学素子を含んでいてよく、スキャナユニットは好ましくは回析光学素子および偏向ミラーを含む。照射システムは、単一の放射線ビームを原料粉末層に照射することができる。しかしながら、照射システムが原料粉末層上に2つ以上の放射線ビームを照射することも同様に構想可能である。
【0011】
原料粉末層は、原料粉末を分布させるためにキャリアを横断して移動させられる粉末適用デバイスを用いてキャリアの表面上に適用され得る。キャリアは、堅く固定されたキャリアであってよい。しかしながら、好ましくは、キャリアは、垂直方向に変位可能であるように設計されており、こうして、キャリアが原料粉末から層状に構築されるにつれて、ワークピースの構造的高さの増加に伴ってキャリアが垂直方向に下向きに移動できるようになっている。さらに、キャリアを冷却および/または加熱するように構成されている冷却デバイスおよび/または加熱デバイスがキャリアに具備されていてよい。キャリアおよび粉末適用デバイスは、周囲雰囲気に対して封止可能であるプロセスチャンバ内部に収容され得る。ガス入口を介してプロセスチャンバ内にガス流を導入することによってプロセスチャンバ内部に、不活性ガス雰囲気を確立することができる。プロセスチャンバを通りかつキャリア上に適用された原料粉末層を横断して導かれた後、ガス流は、ガス出口を介してプロセスチャンバから放出され得る。プロセスチャンバ内部でキャリア上に適用される原料粉末は、好ましくは金属粉末、詳細には金属合金粉末であるが、同様に、セラミック粉末または異なる材料を含有する粉末であってもよい。粉末は、任意の好適な粒度または粒度分布を有し得る。しかしながら、100μm未満の粒度の粉末を処理することが好ましい。
【0012】
直近のまたは後続する層内の原料粉末層領域に影響を及ぼし得る微粒子不純物は、プロセスチャンバを通って誘導されるガス流に同伴させてプロセスチャンバから除去するには重過ぎかつ/または大き過ぎることから、選択的に照射されたばかりの原料粉末層の(なおも)照射されていない原料粉末の表面上または前記原料粉末層に選択的に照射することによって生成されたばかりのワークピース層の表面上のいずれかに被着している粒子、例えば凝固したスプラッシュ粒子であり得る。原料粉末層に照射する際に生成される微粒子不純物が、さらに照射すべき原料粉末層の一部分内に被着している場合、これらの微粒子不純物は、前記原料粉末層部分に選択的に照射することによって生成されるワークピース層部分の品質にすでに影響を及ぼし得る。しかしながら、前記原料粉末層部分に選択的に照射することによって生成されるワークピース層部分の品質は、先行する原料粉末層に照射する際に生成されかつ前記原料粉末層部分の原料粉末で覆われかつ/またはこの原料粉末内に取込まれている微粒子不純物による影響を受ける可能性もある。
【0013】
それに代替的にまたは付加的に、原料粉末層の領域に影響を及ぼすものと予期される微粒子不純物は、より軽い粒子、例えば、放射線ビームが原料粉末上に衝突する領域内で生成される融解した原料粉末の融液プールに由来する煙プリュームを典型的に形成する、溶接煙粒子、分散した原料粉末粒子、および煤粒子であり得る。軽量の微粒子不純物の煙プリュームは、照射すべき原料粉末層上に衝突する前に煙プリュームを通って誘導される放射線ビームを遮蔽しかつ/または散乱させ得る。これも同様に、原料粉末層の領域に選択的に照射することによって生成されるワークピース層部分の品質に影響を及ぼし得る。
【0014】
領域が微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないかの決定がすでに行なわれている原料粉末層の少なくとも1つの領域に電磁または粒子放射線を選択的に照射する際に、放射線ビームにより原料粉末層の領域に適用されたエネルギ密度が制御される。より詳細には、エネルギ密度は、原料粉末層の領域が微粒子不純物による影響を実質的に受けていないことが決定された場合よりも、原料粉末層が微粒子不純物による影響を受けている場合の方が、エネルギ密度がより高くなるような形で制御される。
【0015】
微粒子不純物による影響を受けている場合の原料粉末層領域に適用される高いエネルギ密度に起因して、原料粉末粒子のみならず、原料粉末層の表面上に被着しているかまたは原料粉末層内に埋込まれている凝固したスプラッシュ粒子も同様に、放射線ビームが原料粉末層の領域を横断して誘導された場合に融解する。さらに、軽量の微粒子不純物の煙プリュームによってひき起こされる、例えば別のレーザビームまたは妨害を受けたビーム自体の融液プールによりひき起こされる遮蔽および/または散乱効果を補償することができる。その結果として、原料粉末粒子および/または微粒子不純物の不完全な融解の結果としてもたらされるワークピース層内の不規則性または欠陥を、最小限に抑えるか、さらには回避することさえ可能になる。
【0016】
同時に、微粒子不純物による影響を受けていない場合に原料粉末層領域に対しより低いエネルギ密度を適用することによって、例えば、望ましくないほどに大きい融液プールの形成および過度の蒸発によりひき起こされる融液プールからの融解した原料のスプラッシングの増加などの、過剰なエネルギの適用の望ましくない効果が回避される。最後に、原料粉末層領域は、領域の照射が開始される前に微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないものとして特定され、領域に対し適用されるエネルギ密度は、極めて高い信頼性で正確に調整可能である。要するに、原料粉末層を選択的に照射することによって生成されるワークピース層の全体的品質を改善することが可能である。
【0017】
原料粉末層の領域に対して適用されるエネルギ密度は、原料粉末層を横断して導かれる放射線ビームの出力、焦点径および焦点形状のうちの少なくとも1つを好適な形で適応させることによって制御され得る。具体的には、原料粉末層領域に対して適用されるエネルギ密度は、放射線ビームの出力を増大させることによって、放射線ビームの焦点径を減少させることによって、および/または放射線ビームの焦点面積が削減されるような形で放射線ビームの焦点形状を変更することによって増大させることができる。本出願の意味合いにおける「放射線ビームの焦点形状」なる表現は、丸形、環状または矩形といった原料粉末上に入射する放射線ビームスポットの外側形状または輪郭としてのみならず、ガウス分布、トップハット分布またはドーナツ分布における内部強度プロファイルとしても理解され得る。
【0018】
これに対して代替的にまたは付加的に、原料粉末層の領域に対して適用されるエネルギ密度は、放射線ビームが原料粉末層を横断して導かれるときにしたがう走査パターンおよび走査速度のうちの少なくとも1つを好適な形で適応させることによって制御され得る。詳細には、原料粉末層領域に対して適用されるエネルギ密度は、走査速度を減速させることによって、および/または走査パターンを定義する隣接する走査ベクトル間の距離が削減されるような形で走査パターンを修正することによって、増大させることができる。
【0019】
原料粉末層の領域が微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないかの決定は、原料粉末層を横断して導かれるガス流の流れ方向に応じて、すなわち、プロセスチャンバ内部に所望の雰囲気を確立する目的でかつプロセスチャンバから微粒子不純物を除去する目的でプロセスチャンバを通って導かれるガス流の流れ方向に応じて行なわれる。
【0020】
原料粉末の材料、使用されるシールドガス、照射ビームの入射角などの、スパッタおよび/またはプリュームの生成に影響を及ぼし得るさらなるプロセスパラメータを、決定のために考慮することができる。したがって、原料粉末層の領域が微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないかの決定は同様に、原料粉末層を横断して導かれるガス流の流速、原料粉末層を横断して導かれるガス流のガス流量プロファイルおよび/または微粒子不純物の粒子量に基づいて決定されたスパッタ軌跡に応じて行なわれる。
【0021】
例えば、原料粉末層を横断して導かれるガス流の流れ方向との関係において原料粉末層の下流側領域内に、すなわちプロセスチャンバのガス入口から遠位に、かつプロセスチャンバのガス出口の近傍に配設されている原料粉末層領域は、典型的に、原料粉末層を横断して導かれるガス流の流れ方向との関係において、原料粉末層の上流側領域内すなわちプロセスチャンバのガス入口の近傍でかつプロセスチャンバのガス出口から遠位に配設されている原料粉末層領域を放射線ビームが照射するときに融液プールから発出される軽量の微粒子不純物の煙プリュームおよびスプラッシュ粒子の両方による影響を受ける。その結果として、原料粉末層の下流側領域内に配設された原料粉末層領域は、微粒子不純物による影響を受けておりかつ選択的に照射される際に高いエネルギ密度にさらされているものとして決定される可能性がある。
【0022】
原料粉末層を横断して導かれるガス流の流れ方向において原料粉末層の上流側縁部から予め決定された距離にわたって延在する原料粉末層の領域が、微粒子不純物による影響を実質的に受けていない原料粉末層の領域とみなされ得る。本出願に関連して「上流側縁部」なる用語は、原料粉末層を横断して導かれるべきガス流がプロセスチャンバ内に導入されるときに経由するガス入口と対面している原料粉末層の縁部を表わす。
【0023】
これに対して代替的にまたは付加的に、原料粉末層を横断して導かれるガス流の流れ方向において上流側照射開始位置から予め決定された距離にわたって延在する原料粉末層の領域が、微粒子不純物による影響を実質的に受けていない原料粉末層の領域とみなされ得る。本出願に関連して「上流側照射開始位置」なる用語は、原料粉末層を横断して導かれるガス流がプロセスチャンバ内に導入されるときに経由するガス入口の方向で最も遠くに位置する照射位置、すなわち原料粉末層上で放射線ビームが衝突する場所を表わす。予め決定された距離は、プロセスチャンバを通って導かれるガス流の「浄化効果」の推定に基づいて決定され、好ましくは、原料粉末層領域が微粒子不純物による影響を実質的に受けていない状態にとどまることが保証されるような形で選択される。
【0024】
電磁または粒子放射線を選択的に照射すべき原料粉末層は、3次元ワークピースの造形を開始する前に複数の領域へと細分されてよい。例えば、原料粉末層は、ワークピースを生成するための造形プロセスが開始される前に、複数のストライプ、複数の正方形または矩形または他の形で整形された領域へと細分され得る。上述のように、原料粉末層を選択的に照射することによって造形すべきワークピースの形状および/または位置は、原料粉末層を個別の領域へと細分する際に考慮され得る。特にワークピース層のパラメータを考慮しなければならない場合、細分を行なうためにコンピュータ支援シミュレーションを使用することができる。
【0025】
しかしながら、電磁または粒子放射線を選択的に照射すべき原料粉末層を、3次元ワークピースの造形中にその場で複数の領域へと細分することも同様に構想可能である。例えば、先行する原料粉末層または(同じ)原料粉末層の別の領域のいずれかを照射する際に発生するスプラッシュ粒子および/または煙プリュームが、好適なセンサデバイスを用いて監視され、その後、領域の形状およびサイズが、センサデバイスの出力に基づいて画定される。例えば、画定すべき領域の縁部は、微粒子不純物によるこの領域の汚染についての閾値に達した時点で直ちに設定され得る。しかしながら、3次元ワークピースの造形開始に先立って領域を画定する際に閾値汚染値を考慮することもできる。
【0026】
例えば、センサデバイスは、原料粉末層の照射中に生成された煙プリュームおよび/またはスプラッシュ粒子の発生を直接監視するカメラを含み得る。しかしながら、カメラを使用して、次の原料粉末層が適用される前に原料粉末層の表面上に被着した凝固したスプラッシュ粒子を直接検出することもできる。したがって、原料粉末層領域が微粒子不純物による影響を実質的に受けていないかまたは受けているかを決定する際に、先行する原料粉末層を監視する際にカメラが捕捉した監視結果を考慮に入れられることができる。カメラを用いて監視する際に、原料粉末層を異なる角度から検分しかつ/または照明することができ、かつ/または異なる波長の光で照明することができる。これに対して代替的または付加的に、融液プール監視システムを用いて、融液プールからの近赤外放射線の発出を検出しかつ/または例えば毛管変動を検出するために、蒸気毛管を監視することができる。検出された発出から、スプラッシュ粒子および/または煙プリュームの量および方向を決定することができる。同様に、信号から、粉末上の別の放射線ビームの相互作用によって生成された微粒子不純物上の放射線の散乱を決定することも可能であり得る。
【0027】
原料粉末層を細分する際に画定された領域のサイズおよび/または形状は、個別の原料粉末層の間および/または(同じ)原料粉末層の内部で変動し得る。さらに、3次元ワークピースの造形開始に先立って原料粉末層を複数の領域へと細分することができ、必要に応じて領域のサイズおよび/または形状をその場で適応させることができる。
【0028】
原料粉末層の領域が微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないかの決定は、3次元ワークピースの造形開始に先立って行なわれ得る。例えば、原料粉末層の領域を、原料粉末層内の領域の場所に基づいて、微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないものとして定義することができる。前記定義のためには、コンピュータ支援シミュレーションを使用することができる。
【0029】
これに対して代替的または付加的に、原料粉末層の領域が微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないかの決定は、3次元ワークピースの造形中にその場で行なうことができる。例えば、先行する原料粉末層または(同じ)原料粉末層の別の領域のいずれかに照射する際に発生する煙プリュームおよび/またはスプラッシュ粒子の発生を、好適なセンサデバイスを用いて監視することができ、その後、センサデバイスの出力に基づいて、原料粉末層の領域が微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないかの決定を行なうことができる。
【0030】
複数の原料粉末層から3次元ワークピースを造形する際に、原料粉末層の領域が微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないかの決定を、影響を受けていないおよび/または受けている領域がいくつかのまたは全ての層内で一致するような形で、行なわれる。しかしながら、好ましくは、原料粉末層の領域が微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないかの決定は、層毎に変動するように行なわれる。
【0031】
照射システムを動作させる方法の極めて好ましい実施形態において、原料粉末層の領域が微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないかの決定は、電磁または粒子放射線を原料粉末層に照射することによって生成されるワークピース層の幾何形状に応じて行なわれる。原料粉末層領域が微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないかを決定する際に、生成すべきワークピース層の幾何形状が考慮される場合、ワークピース層と一致せずしたがって照射を受けていない原料粉末層の部分を無視することができる。一方で、ワークピース層と一致する原料粉末層部分は、原料粉末層の一部の部分内で微粒子不純物が生成される傾向に対するワークピースの幾何形状の効果を考慮することが可能であるために、それらの部分が微粒子不純物による影響を受けていないかまたは受けているかを決定する目的でより正確に検討され得る。
【0032】
これに対して代替的または付加的に、原料粉末層の領域が微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないかの決定は、先行する原料粉末層に電磁または粒子放射線を照射することによって生成されるワークピース層の幾何形状に応じて行なわれ得る。原料粉末層領域が微粒子不純物による影響を受けていないか受けているかを決定する際に、先に生成されたワークピース層の幾何形状を考慮することによって、先行する原料粉末層に照射した際に被着された埋込まれた凝固スプラッシュ粒子による影響を受け得る現在の原料粉末層の部分を識別し、微粒子不純物による影響を受けている原料粉末層領域と結び付けることができる。
【0033】
原料粉末層の領域が微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないかの決定は、照射システムによって原料粉末層に対し適用されるように意図されているエネルギ密度の値の範囲、原料粉末層を横断して導かれるガス流を形成するガスのタイプ、原料粉末層を横断して導かれるガス流の流量率、原料粉末層の周囲環境内で支配的な圧力、原料粉末層の厚み、原料粉末層に含まれる材料、放射線ビームが原料粉末層に衝突する角度、特にガス流の流れ方向(F)との関係における原料粉末層を横断した放射線ビームの移動方向、および原料粉末層の上流側縁部および/またはガス流量入口からの距離、のうちの少なくとも1つに応じて行なわれてよい。
【0034】
照射システムにより原料粉末層に適用される原料粉末層への照射の際に微粒子不純物が形成される傾向は、原料粉末層に対し適用されるエネルギ密度の増加に伴って、かつ、プロセスチャンバ内ひいては原料粉末層の周囲環境内の圧力の減少に伴って、増大する。同様に、プロセスチャンバ内部に制御された雰囲気を確立する目的で、およびプロセスチャンバから微粒子不純物を除去する目的でプロセスチャンバに供給されるガスのタイプは、原料粉末層に選択的に照射される際のスプラッシュ粒子の形成傾向に影響を及ぼす。例えば、プロセスチャンバ内部のヘリウムガス雰囲気は、窒素ガス雰囲気に比べてスプラッシュ粒子の形成傾向を削減する。原料粉末層の厚みは、原料粉末層を照射する際に形成される蒸気毛管の長さ、ひいては融液プールからスプラッシュ粒子が発出される傾向を直接決定する。さらに、原料粉末層が厚くなればなるほど、原料粉末層への照射時に適用すべきエネルギ密度は高くなる。その結果として、原料粉末層が微粒子不純物による影響を受けていないかまたは受けているかを決定する際に、これらのプロセスパラメータのうちの少なくとも1つを考慮することが有利である。
【0035】
原料粉末層を横断して導かれるガス流の流量率は、ガス流に同伴されることによって原料粉末層を横断してどれほど遠くにスプラッシュ粒子が輸送されるかを決定する。原料粉末層の材料は、スプラッシュ粒子の形成傾向およびスプラッシュ粒子のサイズに影響を及ぼす。放射線ビームが原料粉末層に衝突する角度は、スプラッシュ粒子の形成の傾向およびスプラッシュ粒子が発出される方向に影響を及ぼす。放射線ビームの移動方向、詳細には、原料粉末層を横断して導かれるガス流の流れ方向との関係における放射線ビームの移動方向は、スプラッシュ粒子が発出される方向、そして、ガス流に同伴されることによって原料粉末層を横断してどの方向にスプラッシュ粒子が輸送されるか、に影響を及ぼす。したがって、これらのパラメータを考慮することで、或る原料粉末層領域が微粒子不純物による影響を受けていないかまたは受けているかのより正確な決定を可能にすることもできる。
【0036】
原料粉末層が複数の放射線ビームによる照射を同時に受ける場合、別の放射線ビームの照射位置の周囲環境内で1つの放射線ビームによる照射を受ける原料粉末層の領域が、原料粉末層と他方の放射線ビームの相互作用に起因して生成された微粒子不純物による影響を受ける可能性がある。実際、原料粉末層の前記領域は、他方の放射線ビームが原料粉末層を照射したときに生成される煙プリュームとスプラッシュ粒子の両方による影響を受ける可能性がある。例えば、原料粉末層を横断して導かれるガス流の流れ方向との関係において、他方の放射線ビームの照射位置の下流側に配設されている原料粉末層の領域が、放射線ビームによる前記領域の照射と干渉する微粒子不純物による影響を受ける可能性がある。
【0037】
したがって、原料粉末層の領域が微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないかの決定は、複数の放射線ビームの互いとの関係における照射位置に応じて行なわれ得る。詳細には、原料粉末層の前記領域が原料粉末層と別の放射線ビームとの相互作用に起因して生成される微粒子不純物による影響を受けていることが決定された場合、放射線ビームにより原料粉末層の領域に対して適用されるエネルギ密度を増大させることができる。
【0038】
微粒子不純物による影響を受けている領域内で原料粉末層に対して適用される増大したエネルギ密度を、影響を受けた領域全体において一定に維持することが構想可能である。しかしながら、微粒子不純物による領域の干渉は、原料粉末層内部の場所、ワークピースの幾何形状および上述のプロセスパラメータに応じて、領域を横断して変動し得る。その結果として、領域の異なる部分が、異なる度合で微粒子不純物による影響を受ける可能性がある。したがって、微粒子不純物による影響を受けていると決定された原料粉末層の領域を選択的に照射する際に、放射線ビームにより原料粉末層の領域に対して適用されるエネルギ密度を、微粒子不純物による領域の干渉度に応じて変動させることが好ましい。
【0039】
例えば、放射線ビームによる原料粉末層の領域の照射の際に、原料粉末層と別の放射線ビーム(さらには妨害を受けた放射線ビーム自体)の相互作用に起因して生成される軽量の微粒子不純物の煙プリュームが、他方の放射線ビームの近傍で原料粉末層を照射する放射線ビームを遮蔽しかつ/または散乱させる可能性がある。したがって、放射線ビームにより原料粉末層の領域を選択的に照射する際に、この領域は、別の放射線ビームにより生成される微粒子不純物による影響を受けていることが決定されており、放射線ビームによってこの領域に適用されるエネルギ密度は、前記別の放射線ビームによって原料粉末層に対し適用されるエネルギ密度と比べて、増大させられる。
【0040】
放射線ビームが他方の放射線ビームによって生成される煙プリュームの影響を受ける度合は、放射線ビームが実質的に円錐形の煙プリュームに衝突する位置に応じて変動する。特に、頂部粉末層を混乱させることなく微粒子不純物を同時に捕捉する上で最も有効である、ガスの量および速度によって与えられる正規ガス流量パラメータが適用される場合が、これに該当する。例えば、放射線ビームが煙プリュームの中央領域において煙プリュームに衝突する場合、放射線ビームが他方の放射線ビームの照射位置の先端部領域内または他方の放射線ビームの照射位置から遠位の煙プリュームの縁部領域内で煙プリュームに衝突する場合に比べて、放射線ビームに影響を及ぼす遮蔽および/または散乱効果はより重大なものとなる。したがって、別の放射線ビームにより生成される煙プリュームの影響を受けている原料粉末層の領域に対して放射線ビームが適用するエネルギ密度は、前記別の放射線ビームによって生成される煙プリュームとの関係における放射線ビームの照射位置に応じて変動させられる可能性がある。
【0041】
煙プリュームの中央領域は典型的に、煙プリュームを通って延在しかつ第1の放射線ビームの照射位置からおおよそ60mmの距離のところに位置設定されている平面から、煙プリュームを通って延在しかつ第1の放射線ビームの照射位置からおおよそ400mmの距離のところに位置設定されている平面まで延在する。しかしながら、煙プリュームの形状および中央領域の位置は、特に、原料粉末層を横断して導かれるガス流の流れ方向および流量率との関係における他方の放射線ビームの位置および移動方向に応じて変動し得る。プリュームの生成が概して、公知の影響要因、例えば原料粉末の材料、放射線ビームの入射角、使用されるシールドガスなどにもさらに依存し得る、ということは明白である。
【0042】
微粒子不純物による影響を受けていることが決定されている原料粉末層の領域を選択的に照射する際に、放射線ビームにより原料粉末層の領域に適用されるエネルギ密度を、微粒子不純物による領域の干渉度の増加と共に、離散的増分で増大させることができる。しかしながら、放射線ビームにより原料粉末層の領域に適用されるエネルギ密度を、微粒子不純物による領域の干渉度の増加に伴って連続的に増大させることも同様に構想可能である。最後に、領域のいくつかの部分においては、微粒子不純物による領域の干渉度の増加に伴って離散的増分でエネルギ密度を増大させ、その一方で、領域の他の部分においては、微粒子不純物による領域の干渉度の増加に伴って連続的にエネルギ密度を増大させることが構想可能である。例えば、微粒子不純物による影響を受けているものと決定されている原料粉末層の領域に対して適用されるエネルギ密度の増大は、+1%から+100%まで、詳細には+5%から+50%まで変動し得る。
【0043】
3次元ワークピースを造形する目的で電磁または粒子放射線を原料粉末の層に照射するための照射システムは、造形すべきワークピースの対応する層の幾何形状にしたがって電磁または粒子放射線を選択的に照射すべき原料粉末層を複数の領域に細分するように構成された制御デバイスを含む。該制御デバイスはさらに、前記領域に電磁または粒子放射線を選択的に照射する前の少なくとも1つの領域について、前記領域が微粒子不純物による影響を受けているかまたは実質的に受けていないかを標示する決定入力を受信するように構成されている。選択的に照射すべき原料粉末層の領域が影響を受けているか実質的に受けていないかの決定は、適切な決定デバイスを用いて行われ、かつ/または制御デバイス内へのユーザ入力によっても同様に達成され得る。
【0044】
制御デバイスはさらに、原料粉末層の前記領域に電磁または粒子放射線を選択的に照射する際に、放射線ビームにより原料粉末層の領域に対して適用されるエネルギ密度を制御して、原料粉末層の領域が微粒子不純物による影響を実質的に受けていないことが決定された場合よりも、原料粉末層の領域が微粒子不純物による影響を受けていると決定された場合の方が、エネルギ密度をより高くするように構成されている。
【0045】
制御デバイスは、原料粉末層の領域に対して適用されるエネルギ密度を、原料粉末層の領域を横断して導かれる放射線ビームの出力、焦点径および焦点形状のうちの少なくとも1つを好適な形で適応させることによって制御するように構成され得る。代替的又は付加的に、制御デバイスは、放射線ビームが原料粉末層の領域を横断して導かれるときにしたがう走査パターンおよび走査速度のうちの少なくとも1つを好適な形で適応させることによって、原料粉末層の領域に対して適用されるエネルギ密度を制御するように構成され得る。
【0046】
決定デバイスは、原料粉末層の領域が微粒子不純物による影響を受けているかまたは実質的に受けていないかを、原料粉末層を横断して導かれるガス流の流れ方向に応じて、および/または原料粉末層を横断して導かれるガス流の流速、原料粉末層を横断して導かれるガス流のガス流量プロファイルおよび/または微粒子不純物の粒子量に基づいて決定されるスパッタ軌跡に応じて決定するように構成され得る。
【0047】
原料粉末層を横断して導かれるガス流の流れ方向において原料粉末層の上流側縁部から予め定められた距離にわたって延在しかつ/または、原料粉末層を横断して導かれるガス流の流れ方向において上流側照射開始位置から予め定められた距離にわたって延在する原料粉末層の領域が、微粒子不純物による影響を実質的に受けていない原料粉末層の領域とみなされ得る。
【0048】
制御デバイスは、3次元ワークピースの造形を開始する前にかつ/または3次元ワークピースの造形中その場で、電磁または粒子放射線を選択的に照射すべき原料粉末層を、複数の領域に細分するように構成され得る。
【0049】
決定デバイスは、原料粉末層の領域が微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないかを、3次元ワークピースの造形開始前に(例えばシミュレーションの形で)、かつ/または3次元ワークピースの造形中にその場で決定するように構成され得る。
【0050】
決定デバイスは、原料粉末層の領域が微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないかを、電磁または粒子放射線を原料粉末層に照射することによって生成されるワークピース層の幾何形状に応じて、および/または、電磁または粒子放射線を先行原料粉末層に照射することによって生成されるワークピース層の幾何形状に応じて決定するように構成され得る。
【0051】
決定デバイスは、原料粉末層の領域が微粒子不純物による影響を受けているかまたは微粒子不純物による影響を実質的に受けていないかを、照射システム(10)によって原料粉末層に対し適用されるように意図されているエネルギ密度の値の範囲、原料粉末層の周囲環境内で支配的な圧力、原料粉末層を横断して導かれるガス流を形成するガスのタイプ、原料粉末層の厚み、原料粉末層を横断して導かれるガス流の流量率、原料粉末層に含まれる材料、放射線ビームが原料粉末層に衝突する角度、特に、導かれたガス流の流れ方向との関係における原料粉末層を横断した放射線ビームの移動方向、および原料粉末層の上流側縁部および/またはガス流量入口からの距離、のうちの少なくとも1つに応じて決定するように構成され得る。
【0052】
決定デバイスは、原料粉末層の領域が、微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないかを、複数の放射線ビームの互いとの関係における照射位置に応じて決定するように構成され得る。
【0053】
微粒子不純物による影響を受けていることが決定された原料粉末層の領域を選択的に照射する際に、制御デバイスは、放射線ビームにより原料粉末層の領域に適用されるエネルギ密度を、微粒子不純物による領域の干渉度に応じて変動させるように構成され得る。
【0054】
放射線ビームを原料粉末層の領域に選択的に照射する際に、この領域が別の放射線ビームによって生成された微粒子不純物による影響を受けていることが決定されている場合、制御デバイスは、放射線ビームにより領域に対して適用されるエネルギ密度を、前記別の放射線ビームにより原料粉末層に適用されるエネルギ密度と比べて増大させるように構成され得る。
【0055】
微粒子不純物による影響を受けていることが決定された原料粉末層の領域を選択的に照射する際に、制御デバイスは、放射線ビームにより原料粉末層の領域に適用されるエネルギ密度を、離散的な増分でかつ/または微粒子不純物による領域の干渉度の増加に伴って連続的に増大させるように構成され得る。
【0056】
3次元ワークピースを造形するための装置には、上述の照射システムが装備されている。
【0057】
本発明の好ましい実施形態について、添付の概略的図面に関連して以下でさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1図1は、電磁または粒子放射線を原料粉末層に照射することによって、3次元ワークピースを造形するための装置を示す。
図2図2は、原料粉末層の側縁部の領域内に配設されたガス入口から原料粉末層を横断して向けられたガス流がオーバーフローしている原料粉末層の異なる領域に対する微粒子不純物の影響を示す。
図3図3は、原料粉末層の中央領域内に配設されたガス入口から原料粉末層を横断して向けられたガス流がオーバーフローしている原料粉末層の異なる領域に対する微粒子不純物の影響を示す。
図4図4は、複数の放射線ビームによって照射されている間の原料粉末層を示し、ここで1つの放射線ビームは、他方の放射線ビームの照射位置との関係における放射線ビームの照射位置に応じた異なる度合で別の放射線ビームによって生成された微粒子不純物による影響を受けている。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1は、付加積層プロセスによって3次元ワークピースを造形するための装置100を示す。装置100は、キャリア102およびキャリア102上に原料粉末を適用するための粉末適用デバイス104を含む。キャリア102および粉末適用デバイス104は、好ましくは周囲雰囲気に対し封止可能であるプロセスチャンバ106の内部に収容される。キャリア102は、キャリア12上の原料粉末から層状に構築されるにつれて、ワークピース110の構造高さの増大に伴ってキャリア102を下向きに移動させることができるような形で、構築済みシリンダ108内へと垂直方向に変位可能である。キャリア102は、加熱器および/または冷却器を含んでいてよい。
【0060】
装置100はさらに、キャリア102上に適用された原料粉末層11上に電磁または粒子放射線を選択的に照射するための照射システム10をさらに含む。図1に示された装置100の実施形態において、照射システム10は、各々レーザビーム14a、14bを発出するように構成されている2つの放射線ビーム源12a、12bを含む。放射線ビーム源12a、12bによって発出される放射線ビーム14a、14bを誘導し処理するための光学ユニット16a、16bが、放射線ビーム源12a、12bの各々に結び付けられている。しかしながら、照射システム10には、2つ以上または1つのみの放射線ビーム源および1つのみの光学ユニットが装備されていて、その結果として単一の放射線ビームしか発出しないことも同様に構想可能である。照射システム10および装置100のさらなるコンポーネント、例えば粉末適用デバイス104の動作を制御するために、制御デバイス18が具備される。
【0061】
プロセスガス入口112を介してプロセスチャンバ106へシールドガスを供給することによって、プロセスチャンバ106内に制御されたガス雰囲気、好ましくは不活性ガス雰囲気が確立される。プロセスチャンバ106を通り、キャリア102上に適用された原料粉末層11を横断して導かれた後、ガスは、プロセスガス出口114を介してプロセスチャンバ106から放出される。プロセスガスは、プロセスガス出口114からプロセスガス入口112まで再循環され得、その時点で冷却または加熱され得る。プロセスチャンバ106の側壁内のガス入口112の図示された配設は、単なる一例であり、限定的なものではない。特に原料粉末層11全体にわたる、例えばプロセスチャンバ106の床または天井からといったプロセスチャンバ106内のガス流を利用できると考えられるあらゆる配設が実現可能である、ということは明白である。同様に、複数のガス入口112が存在してもよい。
【0062】
3次元ワークピースを造形するための装置100の動作中、粉末適用デバイス104を用いてキャリア102上に原料粉末の層11が適用される。原料粉末層11を適用する目的で、粉末適用デバイス104は、制御ユニット18の制御下で、キャリア102を横断して移動させられる。その後、再び制御ユニット18の制御下で、原料粉末の層11には、照射デバイス10を用いて造形すべきワークピース110の対応する層の幾何形状にしたがって、電磁または粒子放射線が選択的に照射される。キャリア102上に原料粉末の層11を適用するステップおよび、造形すべきワークピース110の対応する層の幾何形状にしたがって原料粉末の層11に電磁または粒子放射線を選択的に照射するステップは、ワークピース110が所望の形状およびサイズに達するまで繰返される。
【0063】
原料粉末層11に衝突する放射線ビーム14a、14bにより原料粉末内に導入される放射線エネルギは、原料粉末を融解および/または焼結させる。具体的には、放射線ビーム14a、14bが原料粉末に衝突する領域内で、融解した原料の融液プールが、生成される。原料粉末の融解中に、溶接煙が生成され、これが、軽量の微粒子不純物を含有する煙プリューム124、例えば煙粒子、分散原料粉末粒子および煤粒子を形成する。軽い溶接煙粒子の大部分は、プロセスチャンバ106を通って誘導されたガス流に同伴されることによってプロセスチャンバ106から放出されるものの、放射線ビーム14bの相互作用に起因して生成される軽量の微粒子不純物の煙プリューム124はなおも、放射線ビーム14aを所望されない形で遮蔽しかつ/または散乱させ得、この放射線ビーム14aは、照射すべき原料粉末に衝突する前に、放射線ビーム14bによって引き起こされた煙プリューム124を通って導かれる。
【0064】
さらに、融液プールからの原料の蒸発は、スプラッシュ粒子126を融液プールから噴霧させる。融解した形で融液プールから噴霧しその後凝固するスプラッシュ粒子126は、典型的に重すぎて、プロセスチャンバ106を通って誘導されるガス流に同伴され得ず、したがって、選択的に照射されたばかりの原料粉末層11の照射されていない原料粉末の表面上か、または生成されたばかりのワークピース層上のいずれかに被着する。スプラッシュ粒子126が、放射線ビーム14aまたは14bのいずれかによる照射をなおも受けるべき原料粉末層11の部分の中に被着している場合、これらの微粒子不純物はすでに、原料粉末層11の前記部分を選択的に照射することによって生成されるワークピース層部分の品質に影響を及ぼし得る。
【0065】
しかしながら、前記原料粉末層11を選択的に照射することによって生成されるワークピース層の品質は、同様に、先行する原料粉末層の照射の際に生成されかつ原料粉末層11の原料粉末で覆われかつ/またはこの原料粉末層11内に取込まれている微粒子不純物による影響も受ける可能性がある。原料粉末層11の表面上に存在しかつ/または原料粉末層11の照射の際に原料粉末層11内に埋込まれる凝固したスプラッシュ粒子は、ワークピース110内の欠陥および/または不規則性を生み出す可能性がある。
【0066】
装置100には、複数のセンサデバイス116、118、120が装備されている。センサデバイス116、118は、さまざまなプロセスパラメータ、例えばプロセスチャンバ106内部のガス雰囲気の温度、キャリア106の温度および放射線ビーム14a、14bの焦点においておよび/またはこの焦点周りの部域内で融液プールから発出された放射線を監視するために適応されている。センサデバイス116、118は、例えば、融液プール監視システムの一コンポーネントを構成することができ、原料粉末の層上の複数の場所に対し分解された赤外放射線を検出しかつ/または例えば毛管変動を検出する目的で蒸気毛管を監視するように適応されている好適なカメラまたはパイロメータを含み得る。検知された放射線は、光学ユニット16a、16bを通ってセンサデバイス116、118に誘導される。
【0067】
センサデバイス120は、電磁または粒子放射線の照射を受けている間およびその後の原料粉末/ワークピース層の温度を検出するように適応されている。センサデバイス120は、例えば、融液プール監視システムまたは層制御システムの一コンポーネントを構成していてよく、適用された粉末層の均一性を監視するように適応されている好適なカメラを含むことができる。センサデバイス120は同様に、原料粉末層11の照射中に生成される煙プリューム124および/またはスプラッシュ粒子126の発生を直接監視するためにも適応されていてよい。しかしながら、センサデバイス120は、次の原料粉末層が適用される前に、原料粉末層11の表面上に被着させられた凝固したスプラッシュ粒子を直接検出するためにも使用可能である。センサデバイス120を用いて監視される際には、原料粉末層11は、異なる角度から検分されかつ/または照明され得、かつ/または照明デバイス122を用いて異なる波長の光で照明されてもよい。
【0068】
別の例示的実施形態においては、センサデバイス116、118、120のうちの少なくとも1つが、例えば原料粉末層上といった、プロセスチャンバ106の内部の特定の点における温度、または例えば原料粉末層上といった、プロセスチャンバ106の内部の部域全体にわたる平均温度を検出することのできるパイロメータデバイスであり得る。装置100は、例えばプロセスガス入口112または別の場所におけるプロセスガスの温度を測定するため、またはプロセスチャンバ106の内部のプロセスガスの組成を測定するためのさらなるセンサデバイスを含み得る。この例は限定的なものではなく、本発明に係る装置100が、名前を挙げたセンサのうちの幾つかのみまたはそれらの全てを含むことができ、さらなるセンサを含むこともできる、ということが理解される。
【0069】
照射システム10を動作させる際に、造形すべきワークピースの対応する層の幾何形状にしたがって電磁または粒子放射線を選択的に照射する対象である原料粉末層11が、3次元ワークピースの造形開始に先立ってまたは3次元ワークピースの造形中にその場で、複数の領域へと細分される。
【0070】
さらに、前記領域に電磁または粒子放射線を照射する前に、領域の各々について、前記領域が微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないかが決定される。原料粉末層11の領域が微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないかの決定は、決定デバイス20によって行なわれる。決定デバイス20は、制御デバイス18と結び付けられていてよく、あるいは制御デバイス18と一体化して形成されてもよい。
【0071】
原料粉末層11の領域が微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないかの決定デバイス20を用いた決定は、例えば好ましくはコンピュータ支援型のシミュレーションに基づいて、3次元ワークピース110の造形に先立って行なわれ得る。これに対して代替的または付加的に、決定デバイス20は、センサデバイス116、118、120のうちの少なくとも1つの出力に基づいて、3次元ワークピース110の造形中にその場で、原料粉末層11の領域が微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないかの決定を実施することができる。
【0072】
例えば、原料粉末層11の特定の領域が微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないかを決定するために、先行する原料粉末層または(同じ)原料粉末層11の異なる領域の照射の際のスプラッシュ粒子126および/または煙プリューム124の発生を、照明デバイス122を援用してセンサデバイス120を用いて監視することができ、その後、センサデバイス120の出力に基づいて、原料粉末層11の領域が微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないかの決定を行なうことができる。
【0073】
原料粉末層11を横断して導かれるガス流の流れ方向Fとの関係において、原料粉末層11の下流側部域内、すなわちプロセスチャンバ106のガス入口112から遠位に、そしてプロセスチャンバ106のガス出口114の近傍に配設されている原料粉末層領域は、典型的に、原料粉末層11を横断して導かれるガス流の流れ方向Fとの関係において原料粉末層11の上流側部域内、すなわちプロセスチャンバ106のガス入口112の近傍でかつプロセスチャンバ106のガス出口114から遠位に配設されている原料粉末層領域を放射線ビーム14a、14bが照射したときに融液プールから発出される軽量微粒子不純物の煙プリュームおよびスプラッシュ粒子の両方による影響を受ける。
【0074】
図2は、プロセスチャンバ106の側壁内ひいては原料粉末層11の側縁部の領域内に配設されたガス入口112から流れ方向Fで原料粉末層11を横断して、かつプロセスチャンバ106を通って導かれたガス流がオーバーフローしている原料粉末層11の上面図を示す。図2中の破線は、現在の原料粉末層11の下の先行する原料粉末層を照射することによって生成されるワークピース層22の横断面を標示しており、生成されるべきワークピース層22の横断面の標示として理解されてもよい。図3に示されている原料粉末層11は、プロセスチャンバ106内へそして原料粉末層11を横断してガスを導くためのガス入口112が、原料粉末層11の側縁部の領域内ではなく原料粉末層11の中央領域内に配設されているという点でのみ、図2の原料粉末層11と異なっている。図3中のガス出口(図示せず)は、相応して、原料粉末層11の周りに配設される。
【0075】
図2および3に示されている原料粉末層11の各々は、微粒子不純物による影響を実質的に受けていない第1の領域24、微粒子不純物による影響を適度に受けている第2の領域26、および微粒子不純物による影響を激しく受けている第3の領域28を含む。図2および図3にしたがった例示的原料粉末層11において、原料粉末層11の第2および第3の領域26、28に影響を及ぼす微粒子不純物は、先行する原料粉末層を照射した際に生成されたものであり、今は、第2および第3の領域26、28において原料粉末層11の原料粉末で覆われておりかつ/またはこの原料粉末内に埋込まれている。
【0076】
しかしながら、図2および3は、原料粉末層11の下流側領域内に配設された原料粉末層領域26、28が、原料粉末層11の上流側領域内に配設されている原料粉末層領域24よりも激しく微粒子不純物による影響を受けているということを明確に標示している。したがって、原料粉末層11の領域が微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないかを決定する際に、決定デバイス20は、プロセスチャンバ106内部に所望の雰囲気を確立する目的で、かつプロセスチャンバ106から微粒子不純物を除去する目的でプロセスチャンバ106を通ってかつ原料粉末層11を横断して導かれるガス流の流れ方向Fを考慮する。
【0077】
例えば、決定デバイス20は、原料粉末層11の上流側縁部30から予め決定された距離にわたって原料粉末層11を横断して導かれるガス流の流れ方向Fに延在する原料粉末層の領域を、微粒子不純物による影響を実質的に受けていない原料粉末層11の領域として考慮することができる。これに対して代替的または付加的に、決定デバイス20は、上流側照射開始位置32から予め決定された距離にわたって原料粉末層11を横断して導かれるガス流の流れ方向Fに延在する原料粉末層11の領域を、微粒子不純物による影響を実質的に受けていない原料粉末層の領域として考慮することができる。予め決定された距離は、プロセスチャンバ106を通って導かれるガス流の「浄化効果」(微粒子不純物を捕捉し放出するガス流の効率を表わす)の推定に基づいて決定デバイス20を用いて決定され得る。
【0078】
複数の原料粉末層から3次元ワークピース110を造形する際に、決定デバイス20は、影響を受けていない領域および/または影響を受けている領域がいくつかの層または全ての層において一致するような形で、原料粉末層の領域が微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないかを決定することができる。しかしながら、好ましくは、原料粉末層の領域が微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないかの決定は、層毎に変動するように行なわれる。
【0079】
詳細には、決定デバイス122は、原料粉末層11の領域が微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないかの決定を、電磁または粒子放射線を原料粉末層11に照射することによって生成されるワークピース層22の幾何形状に応じて実施することができる。これに対して代替的または付加的に、決定デバイス122は、原料粉末層11の領域が微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないかを、電磁または粒子放射線を先行原料粉末層11に照射することによって生成されるワークピース層の幾何形状に応じて決定することができる。
【0080】
さらに、決定デバイス20は、原料粉末層11の領域が微粒子不純物による影響を受けているか実質的に受けていないかを決定する際に、照射システム10によって原料粉末層11に対し適用されるように意図されているエネルギ密度の値の範囲、原料粉末層11を横断して導かれるガス流を形成するガスのタイプ、原料粉末層11を横断して導かれるガス流の流量率、原料粉末層11の周囲環境内で支配的な圧力、原料粉末層11の厚み、原料粉末層11に含まれる材料、放射線ビーム14a、14bが原料粉末層11に衝突する角度、そして特にガス流の流れ方向Fとの関係における原料粉末層11を横断した放射線ビーム14a、14bの移動方向、のうちの少なくとも1つを考慮することができる。
【0081】
図2および3に示されている原料粉末層11の例示的実施形態において、決定デバイス20は、先行する粉末層内で生成されたワークピース層22の幾何形状を考慮する際に、ガス入口112に直接隣接して配設されている領域を無視する。ガス流の流れ方向Fに原料粉末層11の上流側縁部30から予め決定された距離にわたって延在しかつ同様にガス流の流れ方向Fで上流側照射開始位置32から予め決定された距離にわたって延在する原料粉末層11の領域Iについて、決定デバイス20は、前記領域Iが微粒子不純物による影響を実質的に受けていないことを決定する。
【0082】
ガス流の流れ方向Fとの関係において影響を受けていない領域Iの下流側に配設されている領域IIが、決定デバイス20によって、微粒子不純物による影響を適度に受けている原料粉末層11の領域を構成するものと決定される。最後に、ガス流の流れ方向Fとの関係において適度に影響を受けている領域IIの下流側に配設されている領域IIIが、決定デバイス20によって、微粒子不純物による影響を激しく受けている原料粉末層11の領域を構成するものとして決定される。図2および3は、決定デバイス20により識別された領域IIおよびIIIが、領域26、28と完全には一致しないが、領域26、28とかなりの程度まで重複していることを標示している。
【0083】
図4は、複数の放射線ビーム14a、14bによる照射を受けている間の原料粉末層11を示す。図4中の破線は、それぞれ放射線ビーム14aおよび14bの照射対象である照射区分34、36を標示している。重複区分38は、放射線ビーム14aおよび14bの両方の照射受ける可能性がある。図4の原料粉末層11は、第1の領域24において、先行する原料粉末層の照射の際に生成される微粒子不純物による影響を実質的に受けていない。第2の領域26において、原料粉末層11は、先行する原料粉末層の照射の際に生成されかつ現在は原料粉末層11の中に埋込まれている微粒子不純物による影響を受けている。第3の領域28では、原料粉末層11は、先行する原料粉末層の照射の際および現在の原料粉末層11の照射の際に生成される微粒子不純物、詳細にはスプラッシュ粒子による影響を受けている。
【0084】
さらに、放射線ビーム14bは、原料粉末層11に衝突する際に、実質的に円錐形状の煙プリューム124を生成する。前記煙プリューム124は、放射線ビーム14aが、照射すべき原料粉末に衝突する前に煙プリューム124を通って導かれる場合、放射線ビーム14aを望ましくないほどに遮蔽しかつ/または散乱させ得る。放射線ビーム14aが放射線ビーム14bによって生成される煙プリューム124による影響を受ける度合は、放射線ビーム14aが実質的に円錐形の煙プリューム124に衝突する位置に応じて変動する。放射線ビーム14aが、煙プリューム124の中央領域で煙プリューム124に衝突する場合、放射線ビーム14aに影響を及ぼす遮蔽および/または散乱効果は、放射線ビーム14aが、放射線ビーム14bの照射位置の近傍で煙プリューム124の先端部領域においてかまたは放射線ビーム14bの照射位置から遠位の煙プリューム124の縁部領域において煙プリューム124に衝突する場合に比べて、より重大なものである。
【0085】
したがって、決定デバイス20は、同様に、複数の放射線ビーム14a、14bの互いとの関係における照射位置に応じて、原料粉末層11の領域が影響を受けているか実質的に受けていないかの決定を実施する。図4では、放射線ビーム14bの照射位置14baとの関係における放射線ビーム14aの異なる照射位置14aa~14agが示されている。
【0086】
原料粉末層11に電磁または粒子放射線を選択的に照射する際に、制御デバイス18を用いて、原料粉末層11の領域が微粒子不純物による影響を実質的に受けていないことが決定されている場合に比べて原料粉末層11の領域が微粒子不純物による影響を受けていることが決定されている場合の方が、エネルギ密度が高くなるような形で、放射線ビーム14a、14bによって原料粉末層11の領域に適用されるエネルギ密度が制御される。微粒子不純物による影響を受けている場合に原料粉末層領域に対して適用されるエネルギ密度の増大に起因して、原料粉末粒子のみならず、原料粉末層11の表面上に被着されるかまたは原料粉末層11内に埋込まれている凝固したスプラッシュ粒子も同様に、原料粉末層11の領域を横断して放射線ビーム14a、14bが誘導された場合に融解する。さらに、軽量の微粒子不純物の煙プリューム124によってひき起こされる遮蔽および/または散乱効果を補償することが可能である。
【0087】
原料粉末層11の領域に対して適用されるエネルギ密度は、原料粉末層11を横断して導かれる放射線ビーム14a、14bの出力、焦点径および焦点形状のうちの少なくとも1つを好適に適応させることによって制御され得る。これに対して代替的または付加的に、原料粉末層11の領域に適用されるエネルギ密度は、放射線ビーム14a、14bが原料粉末層11を横断して導かれるときにしたがう走査速度および走査パターンのうちの少なくとも1つを好適に適応させることによって制御され得る。
【0088】
さらに、微粒子不純物による影響を受けていることが決定されている原料粉末層11の領域を選択的に照射する際に、制御デバイス18の制御下で、放射線ビーム14a、14bによって原料粉末層11の領域に適用されるエネルギ密度は、微粒子不純物による領域の干渉度に応じて変動させられる。
【0089】
図2および3の実施例において、微粒子不純物による影響を実質的に受けていない領域I内で、照射の際に前記領域Iに適用されるエネルギ密度を増大させることは求められず、したがって0%に設定されている。微粒子不純物による影響を適度に受けている領域IIにおいては、前記領域IIに適用されるエネルギ密度の増大が+5%に設定される。最後に、微粒子不純物による影響を激しく受けている領域IIIでは、前記領域IIIに対して適用されるエネルギ密度の増大は、+15%に設定される。
【0090】
図4の例において、先行する原料粉末層の照射の際に生成される微粒子不純物の影響、現在の原料粉末層11の照射の際に生成される微粒子不純物の影響および煙プリューム124の影響は、下表に示されているように、放射線ビーム14a、14bによって適用されるエネルギ密度を設定する際に考慮される。
【0091】
【表1】
【0092】
この表から明らかになるように、放射線ビーム14aにより原料粉末層11の領域に適用されるエネルギ密度は、この領域が放射線ビーム14bにより生成された煙プリューム124の影響を受けている場合、放射線ビーム14bにより生成される煙プリューム124との関係における放射線ビーム14aの照射位置に応じて変動させられる。さらに、放射線ビーム14aにより原料粉末層11の領域を選択的に照射する際に、この領域が放射線ビーム14bによって生成された微粒子不純物による影響を受けているものと決定されている場合、放射線ビーム14aにより領域に適用されるエネルギ密度は、放射線ビーム14bにより原料粉末層11に適用されるエネルギ密度と比べて増大させられる。
【0093】
上表において、放射線ビーム14a、14bによって原料粉末層11の領域に適用されるエネルギ密度は、微粒子不純物による領域の干渉度の増加に伴って、離散的増分で増大した。しかしながら、微粒子不純物による領域の干渉度の増加に伴って連続的に放射線ビーム14a、14bによって、原料粉末層11の領域に適用されるエネルギ密度を増大させることも同様に構想可能である。
図1
図2
図3
図4