(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】バチルス菌由来の酵素群を利用した生物転換された機能性薬豆粉末の生物転換の工程開発及びその用途
(51)【国際特許分類】
A23L 33/185 20160101AFI20240726BHJP
A23L 11/00 20210101ALI20240726BHJP
C12P 1/04 20060101ALI20240726BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20240726BHJP
【FI】
A23L33/185
A23L11/00 E
C12P1/04 Z
C12N1/20 Z
(21)【出願番号】P 2023518310
(86)(22)【出願日】2021-09-23
(86)【国際出願番号】 KR2021012930
(87)【国際公開番号】W WO2022060200
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0121670
(32)【優先日】2020-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0124802
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCTC KCTC 11751BP
(73)【特許権者】
【識別番号】520495010
【氏名又は名称】ククミンバイオ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】KOOKMINBIO, CORP.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】サン ムンヒ
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/022425(WO,A2)
【文献】国際公開第2020/004809(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0021576(US,A1)
【文献】特開2001-340059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 31/00-33/29
A23L 11/00-11/70
C12P 1/00-41/00
C12N 1/00-7/08
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE/(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物転換粉末の製造方法であって、
(1)水に浸漬してふやかした大豆を粉砕する段階と、
(2)前記粉砕された大豆を熱処理して全豆乳として収得する段階と、
(3)前記全豆乳にバチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株、その培養液、その発酵物、またはこれらの混合物を処理する段階と、
を含む、生物転換粉末の製造方法。
【請求項2】
前記バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株、その培養液、その発酵物、またはこれらの混合物は、3~7%(v/v)の濃度で処理することを特徴とする請求項1に記載の生物転換粉末の製造方法。
【請求項3】
前記バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株、その培養液、その発酵物、またはこれらの混合物は、35~40℃で3~8時間処理することを特徴とする請求項1に記載の生物転換粉末の製造方法。
【請求項4】
前記培養液は、バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株を培養した人工培地であることを特徴とする請求項1に記載の生物転換粉末の製造方法。
【請求項5】
前記発酵物は、バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株を用いて発酵した天然培地であることを特徴とする請求項1に記載の生物転換粉末の製造方法。
【請求項6】
前記培養液及び発酵物は、プロテアーゼ、GGT(γ-グルタミル転移酵素)、及びナットウキナーゼの活性を有することを特徴とする請求項1に記載の生物転換粉末の製造方法。
【請求項7】
前記生物転換粉末は、抗酸化活性を示すことを特徴とする請求項1に記載の生物転換粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性及び栄養学的特性が向上した薬豆生物転換粉末の製造方法に係り、より詳細には、バチルス・ポリファーメンチカス(Bacillus polyfermenticus)菌株由来の酵素液を処理して多様な生理活性機能が向上した薬豆生物転換粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
豆は、体に良いタンパク質及び脂肪と各種の機能性成分とを含有しており、栄養学的に非常に優れた理想的な食品として食生活において非常に重要であり、必須的な食品である。同様に、最近、抗ガン特性及び免疫性強化など新たな生理的機能がさらに知られながら、機能性食品として豆の食品栄養学的価値は日増しに増大しつつある。しかし、豆は、タンパク質と脂肪との栄養供給源として重要な役割を行うが、組織が堅固であって、消化吸収が非常に困難である。また、青臭いと消化がよくできない炭水化物、トリプシン阻害剤などの生理的な阻害物質によって、加工処理が間違っている場合、消化吸収に問題が発生して、下痢などの副作用を誘発する。
【0003】
豆の代表的な加工食品の1つである豆乳(soy milk)は、豆のタンパク質利用率を高めた代表的な大豆加工製品であって、大豆タンパク質と必須アミノ酸及び必須脂肪酸とが豊かであり、鉄分、リン、カリウムなどの無機質とイソフラボン、サポニン、及びフィチン酸など機能性成分である生理活性物質とが多量含有されており、機能性栄養飲料として知られている。最近、食品成分が有する各種の生体調節機能を解明することにより、食品の機能性強化及び食品由来の機能性素材を開発しようとする研究が活発に行われている。
【0004】
豆乳の場合、豆乳にタンパク質分解酵素を処理して大豆タンパク質を分解させて、消化、吸収を促進する栄養的機能を含めて血圧強化、カルシウム吸収促進、抗アレルギー及び血清コレステロール低下作用など生理活性を有するペプチドを生産して機能性を改善する研究が行われている。しかし、大豆タンパク質の酵素的加水分解を通じて加工目的に適した機能性調節生物素材の開発及び関連素材の産業化段階に関する研究は依然として不十分な実情である。
【0005】
また、発酵豆乳は、大豆を原料として食品に使用が可能な微生物を用いて発酵するものであって、豆自体のみを摂取した場合、約30%のみ吸収され、残りの70%は、そのまま排泄されてしまうが、豆を発酵させた場合には、豆の栄養素が90%以上体内に吸収されて、栄養分の吸収の側面において優れただけではなく、発酵豆乳には、豆の栄養成分だけではなく、微生物が生産したアミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ及び血栓溶解酵素などの酵素と、これらの酵素が分解して生成されたペプチド、アミノ酸、オリゴ糖、脂肪酸、活性イソフラボン、フィトステロール、レシチン、サポニンなどの多様な生理活性物質が多く含まれている。しかし、特有の生臭いである大豆臭が豆乳と同様に問題になっており、粗い組織感によって飲む時、抵抗感を与え、味も発酵によって豆乳固有の味が消えて、消費者の好みを満たすことができず、熱処理によって製品が凝結するか、不快な味が発生するという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】大韓民国公開特許公報第10-2011-0027247号(2011.03.16.公告)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記問題点を解決するために、本発明の目的は、機能性が向上した生物転換粉末の製造方法を提供するものであって、バチルス・ポリファーメンチカス菌株から由来した多様な分解酵素及びペプチド合成酵素が混合された発酵液で全豆乳を処理して、低分子のアミノ酸、ペプチド及び多様な機能性成分が形成されることを確認することにより、バチルス・ポリファーメンチカス菌株の発酵液を利用した生物転換粉末の製造方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、生物転換粉末の製造方法であって、(1)水に浸漬してふやかした大豆を粉砕する段階;(2)前記粉砕された大豆を熱処理して全豆乳として収得する段階;及び(3)前記全豆乳にバチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株、その培養液、その発酵物、またはこれらの混合物を処理する段階;を含む生物転換粉末の製造方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、前記生物転換粉末の製造方法で製造された生物転換粉末を有効成分として含む健康機能食品組成物を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、バチルス・ポリファーメンチカス菌株から由来した多様な分解酵素及びペプチド合成酵素が混合された発酵液で全豆乳を処理して、低分子のアミノ酸、ペプチド及び多様な機能性成分が形成されることを確認することにより、バチルス・ポリファーメンチカス菌株の発酵液を利用した生物転換粉末の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】バチルス・ポリファーメンチカスKMU01菌株の遺伝子地図及び酵素群の遺伝子を示す図面である。
【
図2】全豆乳と生物転換粉末の豆タンパク質分解図及び豆ペプチド生成程度を確認した結果である。
【
図3】全豆乳及び生物転換粉末の抗酸化活性を評価した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で使われる用語は、本発明での機能を考慮しながら可能な限り現在広く使われる一般的な用語を選択したが、これは、当業者の意図または判例、新たな技術の出現などによって変わりうる。また、特定の場合は、出願人が任意に選定した用語もあり、この場合、該当する発明の説明部分で詳しくその意味を記載する。したがって、本発明で使われる用語は、単純な用語の名称ではない、その用語が有する意味と本発明の全般に亘った内容とに基づいて定義されなければならない。
【0013】
取り立てての定義がない限り、技術的や科学的な用語を含んで、ここで使われるあらゆる用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有している。一般的に使われる辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上の意味と一致する意味を有すると解釈されなければならず、本明細書で明白に定義しない限り、理想的であるか、過度に形式的な意味として解釈されてはならない。
【0014】
数値範囲は、前記範囲に定義された数値を含む。本明細書にわたって与えられたあらゆる最大の数値制限は、低い数値制限が明確に書き込まれているように、あらゆるさらに低い数値制限を含む。本明細書にわたって与えられたあらゆる最小の数値制限は、さらに高い数値制限が明確に書き込まれているように、あらゆるさらに高い数値制限を含む。本明細書にわたって与えられたあらゆる数値制限は、さらに狭い数値制限が明確に書き込まれているように、さらに広い数値範囲内のさらに良いあらゆる数値範囲を含む。
【0015】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0016】
本発明者らは、このような点を勘案して、本発明者らは、機能性及び栄養学的特性が向上した生物転換粉末の製造方法を開発するために鋭意努力した結果、発酵食品から分離したGRAS発酵食品微生物が分泌生産する多様なタンパク質分解酵素及びペプチド合成酵素が混合されている酵素群を使用して全豆乳の酵素的加水分解条件を最適化し、全豆乳加水分解物の機能性を調査して機能性及び栄養学的特性が向上した生物転換粉末及び粉末などとして活用可能な差別化された製造方法を開発することにより、本発明を完成した。
【0017】
前記生物転換とは、微生物または微生物が生産する酵素の生物学的反応を用いて既存の素材(基質)を変換する技術であって、具体的に、前記生物転換は、バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株が生産する多様な酵素が含まれている培養上澄み液である酵素群を使用して豆または薬豆(基質)を変換することを意味し、前記の生物転換を通じて作られた生成物を生物転換粉末と言う。
【0018】
本発明は、生物転換粉末の製造方法であって、(1)水に浸漬してふやかした大豆を粉砕する段階;(2)前記粉砕された大豆を熱処理して全豆乳として収得する段階;及び(3)前記全豆乳にバチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株、その培養液、その発酵物、またはこれらの混合物を処理する段階;を含む生物転換粉末の製造方法を提供する。
【0019】
前記バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株は、2010年8月25日付で生物資源センター(KCTC)にバチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)Kimchiという名称で受託されたが、以後、明確な菌株の種名がバチルス・ポリファーメンチカスと明らかになることにより、2018年6月27日にバチルス・ポリファーメンチカスKMU01に種名が変更された。
【0020】
前記豆乳は、従来の方法によって得られるあらゆる豆乳を含み、商業的に販売されている豆乳を使用することができる。例えば、脱皮した大豆または脱脂大豆を水に浸漬して膨潤させた豆類蒸煮を摩砕して得られる液体を使用することができ、前記液体からおからを除去した液体を使用することができるが、これに制限されるものではない。また、全粒大豆粉、脱脂大豆粉などを溶解した液を使用することができ、JAS規格としては、大豆固形分8.0%以上の豆乳を使用することができ、調剤豆乳として大豆固形分を6.0%以上含むものを使用することができ、豆乳飲料として大豆固形分を4.0%以上含むものを使用することができるが、大豆固形分量に対しては、これに制限されるものではない。
【0021】
前記バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株、その培養液、その発酵物、またはこれらの混合物は、全豆乳に3~7%(v/v)の濃度で処理され、望ましくは、5%(v/v)の濃度で処理される。
【0022】
前記バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株、その培養液、その発酵物、またはこれらの混合物は、35~40℃で3~5時間処理することができ、望ましくは、37℃で4時間処理することができる。
【0023】
前記培養液は、バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株を培養した人工培地であり、前記発酵物は、バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株を用いて発酵した天然培地である。
【0024】
前記人工培地は、バチルス・ポリファーメンチカスまたは細菌を培養することができる商業的に製造される合成培地であり、例えば、TBS(Tryptic Soy Broth)、TSB(Tryptic Soy Broth)、NB(Nutrient Broth)、及びLB(Luria-Bertani broth)であるが、これらに制限されるものではない。
【0025】
前記天然培地は、細菌で発酵する天然物を意味し、例えば、ジャガイモ、トマト、牛乳のような自然産物を利用した培地であるが、これらに制限されるものではない。
【0026】
前記培養液及び発酵物は、プロテアーゼ(protease)、GGT(Gamma-glutamyltransferase、γ-グルタミル転移酵素)、及びナットウキナーゼ(Nattokinase)の活性を示すことができる。
【0027】
前記プロテアーゼは、タンパク質分解酵素でタンパク質を成しているアミノ酸間のペプチド結合を加水分解する酵素であり、あるタンパク質分解酵素の場合、タンパク質のアミノ末端(aminopeptidase)、またはカルボキシル末端(carboxypeptidase)を切るエキソペプチダーゼ(exopeptidase)があり、ある場合は、タンパク質の中間を切るエンドペプチダーゼ(endopeptidase、例、トリプシン、ケモトリプシン、ペプシン、パパイン、エラステアーゼ)がある。前記GGT(γ-グルタミル転移酵素)は、γ-グルタミル化合物のグルタミル基を適当な受容体(アミン)に転移する酵素であって、トランスアシラーゼの一種である。前記ナットウキナーゼは、豆を発酵させる時、納豆菌(Bacillus natto)が豆の栄養成分を摂取及び生育しながら作り出す血栓溶解酵素としてビタミンB群と多量の抗酸化酵素とを含有している。
【0028】
前記生物転換粉末は、抗酸化活性を示すことができる。
【0029】
また、本発明は、前記生物転換粉末の製造方法で製造された生物転換粉末を有効成分として含む健康機能食品組成物を提供する。
【0030】
本発明は、通用される食品として一般的に使われる。
【0031】
本発明の食品組成物は、健康機能食品として使われる。前記「健康機能食品」とは、健康機能食品に関する法律による人体に有用な機能性を有した原料や成分を使用して製造及び加工した食品を意味し、「機能性」とは、人体の構造及び機能に対して栄養素を調節するか、生理学的作用のような保健用途に有用な効果を得る目的として摂取することを意味する。
【0032】
本発明の食品組成物は、通常の食品添加物を含み、前記「食品添加物」としての適否は、他の規定がない限り、食品医薬品安全処に承認された食品添加物公典の総則及び一般試験法などによって当該品目に関する規格及び基準によって判定する。
【0033】
前記「食品添加物公典」に収載された品目としては、例えば、ケトン類、グリシン、クエン酸カリウム、ニコチン酸、ケイ皮酸などの化学的合成物、紺色素、甘草抽出物、結晶セルロース、コウリャン色素、グアーガムなどの天然添加物、L-グルタミン酸ナトリウム製剤、麺類添加アルカリ剤、保存料製剤、タール色素製剤などの混合製剤類が挙げられる。
【0034】
本発明の食品組成物は、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、液状、丸などの形態に製造及び加工することができる。
【0035】
例えば、カプセル形態の健康機能食品のうち、硬質カプセル剤は、通常の硬質カプセルに本発明による組成物を賦形剤などの添加剤と混合及び充填して製造することができ、軟質カプセル剤は、本発明による組成物の賦形剤などの添加剤と混合し、ゼラチンなどカプセル基剤に充填して製造することができる。前記軟質カプセル剤は、必要に応じてグリセリンまたはソルビトールなどの可塑剤、着色剤、保存剤などを含有することができる。
【0036】
前記賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤、着香剤などに対する用語の定義は、当業者に公知の文献に記載されたものであって、その機能などが同一ないし類似したものを含む。前記食品の種類には、特に制限がなく、通常の意味での健康機能食品をいずれも含む。
【0037】
以下、本発明の理解を助けるために、実施例を挙げて詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明の内容を例示するものであり、本発明の範囲が、下記の実施例に限定されるものではない。本発明の実施例は、当業者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0038】
実施例1.発酵食品微生物由来の多様な酵素活性の評価
【0039】
機能性発酵全豆乳を製造するために、発酵菌株であるバチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株の多様な酵素活性を評価した。
【0040】
まず、プロテアーゼ、GGT(γ-グルタミル転移酵素)、及びナットウキナーゼの活性を評価した。発酵菌株をTSB培地50mLに接種して37℃で24時間培養し、培養液の上澄み液を収集して8,000rpmで20分間遠心分離した。遠心分離された培養液の上澄み液を用いて各酵素活性を評価した。
【0041】
プロテアーゼの活性は、基質として0.5%のアゾカゼイン(azocasein)溶液0.1mlと助酵素液0.1mlとをEppendorf tubeに入れ、恒温水槽37℃で1時間反応させた後、10% トリクロロ酢酸(trichloroacetic acid)溶液0.4mlを添加して反応を中止させた。この反応液を13,000rpmで5分間遠心分離して上澄み液を回収した後、上澄み液0.6mlに0.525N NaOH溶液0.6mlを添加して中和させ、420nmで吸光度を測定し、この反応条件下で1分間にチロシン(tyrosine)1μgを遊離させる酵素量を1unintとしてプロテアーゼの活性を評価した。
【0042】
GGT(γ-グルタミル転移酵素)の活性は、0.01ml助酵素液とγ-L-glutamyl-p-nitroaniline(p-NA-Glu,Sigma-Aldrich)とを0.1mM含有した50mMリン酸緩衝溶液(pH7.0)0.09mlを混合して40℃で30分反応させた後、3.5N酢酸(acetic acid)0.01mlを添加して反応を中止させた。遊離されたp-ニトロアニリン(p-nitroaniline)の量を410nmで測定した。p-ニトロアニリンを標準溶液としてstandard curveを描いて酵素活性を計算した。GGT酵素活性1unitは、1分当たりp-NA-Gluから1moleのp-ニトロアニリンを遊離させる酵素量で計算してGGT酵素活性度を評価した。
【0043】
ナットウキナーゼの活性は、50mM Borate buffer(pH8.5)350μlと1%フィブリノーゲン(fibrinogen)溶液100μl、10unintトロンビン(Thrombin)溶液25μlとを混合して37℃で10分間反応させた後、助酵素液25μlを添加して37℃で1時間反応させる。この反応液に0.2M TCA溶液500μlを添加して反応を停止させた後、37℃で10分間静置させた。この反応液を8,000rpmで20分間遠心分離して上澄み液を回収した後、275nmで回収した上澄み液の吸光度を測定し、下記の計算式によって酵素活性を計算して、血栓溶解酵素活性度を評価した。
【0044】
血栓溶解活性度(FU/ml)=A1-A0/0.01X1/60X1/0.025XD
【0045】
A1:試料の吸光値
【0046】
A0:助酵素液を入れずに製造した空試験試料の吸光値(blank)
【0047】
0.01:1分間吸光度が0.01増加した酵素の活性
【0048】
60:酵素反応時間(分)
【0049】
0.025:使用した酵素の量
【0050】
D:試料の希釈倍数
【0051】
下記表1に示されたように、プロテアーゼ活性は、78U/mlに表われ、GGT活性は、3500mU/mlに表われ、血栓分解活性を示すナットウキナーゼ活性は、24U/mlに表われた。
【0052】
【0053】
また、バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株の誘電体をPacBio_20K sequncenrとSMRT 2.3.0(HGAP2)assemblerとで分析して、多様な機能性酵素の遺伝子を確認した。その結果、
図1に示されたように、バチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株は、61個のペプチダーゼ(peptidase)遺伝子、23個のプロテアーゼ遺伝子、8個のグルコシダーゼ(glucosidase)遺伝子、6個のリパーゼ(lipase)遺伝子、2個のGGT(γ-グルタミル転移酵素)遺伝子、2個のセルラーゼ(cellulase)遺伝子、アミラーゼ(amylase)遺伝子、及びナットウキナーゼ遺伝子を保有しているということを確認した。
【0054】
実施例2.発酵菌株を利用した機能性生物転換粉末の製造
【0055】
全豆乳を生物転換するための酵素液としてバチルス・ポリファーメンチカスKMU01(受託番号:KCTC 11751BP)菌株をTSB培地に37℃で24時間培養した上澄み液を使用した。全豆乳を製造するために、大韓民国益山の鼠目太を洗浄した後、14時間水に浸漬させた後、水分を除去し、磨砕機を用いて水を除去しながら磨砕した。磨砕された試料を100℃で30分間煮込んだ後、全豆乳を収得した。前記収得された全豆乳に前記酵素液を5%(v/v)の比率で処理し、37℃で4時間反応させて生物転換後、凍結乾燥して生物転換粉末を製造した。
【0056】
【0057】
実施例3.生物転換粉末の加水分解度の評価
【0058】
前記実施例2から製造された生物転換粉末のタンパク質に対する加水分解度を評価した。各試料の加水分解物2mLを取って20%(w/v)トリクロロ酢酸(TCA)2mLが入っている試験管に入れ、混合した後、遠心分離(3,000Хg、10min)して、遠心分離した上澄み液を一定量取ってタンパク質量を測定して加水分解度を計算した。計算した結果、前記生物転換粉末の加水分解度は、53.8%に表われた。
【0059】
また、10%ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(sodium dodecyl sulfate polyacrylamide gel electrophoresis;SDS-PAGE)を行って薬豆タンパク質の分子量の差を確認した結果、
図2に示されたように、対照群(薬豆全豆乳)に比べて、前記生物転換粉末(薬豆酵素処理豆乳)で10,000Da以下の豆ペプチドが1.23倍増加すると表われた。
【0060】
実施例4.生物転換粉末のアミノ酸組成分析
【0061】
アミノ酸自動分析器(Biochrom 30+)を使用して生物転換粉末内の機能性アミノ酸を分析した。下記表3に示されたように、筋肉の成長に必要な分枝鎖アミノ酸(Branched Chain Amino Acids、BCAA)と神経伝達物質の前駆体アミノ酸である芳香族アミノ酸など機能性アミノ酸との含量が増加したと表われた。
【0062】
【0063】
実施例5.生物転換粉末の成分分析
【0064】
生物転換粉末の機能性成分を確認するために、韓国機能食品研究院、韓国分析試験研究院、及び韓国基礎科学支援研究院に依頼して大豆食餌繊維、大豆オリゴ糖、イソフラボン、フラボノイド、及びアントシアニンを分析した。下記表4に示されたように、生物転換粉末の成分として大豆食餌繊維、大豆オリゴ糖(Raffinose、Stachyose)、非配糖体イソフラボン、フラボノイド、アントシアニンの各成分が確認された。
【0065】
【0066】
また、韓国基礎科学支援研究院に依頼してG-peptideを分析した結果、下記表5に示されたように、味(kokumi)増加、炎症性腸疾患及び炎症緩和機能が報告されたγ-glutamyl glycine(γ-Glu-Gly)、γ-glutamyl-valine(γ-Glu-Val)、γ-glutamyl-cysteine(γ-Glu-Cys)、γ-Glutamyl-leucine(γ-Glu-Leu)、及びγ-glutamyl-glutamine(γ-Glu-Gln)が酵素処理豆乳で増加するということを確認した。
【0067】
【0068】
実施例6.生物転換粉末の抗酸化活性の評価
【0069】
前記生物転換粉末の抗酸化活性を評価するために、DPPHラジカル消去活性を分析した。DPPHラジカル消去能は、安定した自由ラジカルである1.1-diphenyl-2-picryl hydrazyl(DPPH)を一定の試料溶液と反応させてDPPHラジカルが減少する程度は、分光光度計を用いて測定する方法で、サンプル50μlと0.1mM DPPH溶液50μlとを混合した後、室温の暗室で30分間放置した後、517nmで吸光度を測定してControlに比べて、ラジカル減少程度を計算した。Blank吸光度は、水50μlと0.1mM DPPH溶液50μlとを混合して測定し、各試料のControl吸光度は、サンプル50μlと95%エタノールとを混合して測定する。陽性対照群のサンプルとしては、アスコルビン酸(ascorbic acid)を使用した。
図3に示されたように、対照群(薬豆全豆乳)に比べて、生物転換粉末で74%の高いDPPHラジカル消去活性が表われた。
【0070】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳しく記述したところ、当業者において、このような具体的な記述は、単に望ましい実施形態であり、これにより、本発明の範囲が制限されるものではないという点は明白である。すなわち、本発明の実質的な範囲は、下記の特許請求の範囲とそれらの等価物とによって定義される。