(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】加工機械
(51)【国際特許分類】
B23K 26/21 20140101AFI20240726BHJP
B23K 26/34 20140101ALI20240726BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240726BHJP
B23P 23/04 20060101ALI20240726BHJP
B22F 10/25 20210101ALI20240726BHJP
B22F 12/50 20210101ALI20240726BHJP
B22F 12/82 20210101ALI20240726BHJP
B23B 31/02 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
B23K26/21 Z
B23K26/34
B33Y30/00
B23P23/04
B22F10/25
B22F12/50
B22F12/82
B23B31/02 601Z
(21)【出願番号】P 2023525336
(86)(22)【出願日】2021-06-04
(86)【国際出願番号】 JP2021021445
(87)【国際公開番号】W WO2022254720
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-12-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大多和 毅
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特許第6850934(JP,B1)
【文献】特開2018-24074(JP,A)
【文献】特開2003-334682(JP,A)
【文献】カナダ国特許出願公開第2913288(CA,A1)
【文献】中国特許出願公開第109676380(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
B33Y 30/00
B23P 23/04
B22F 10/25
B22F 12/50
B22F 12/82
B23B 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に平行な所定軸を中心に旋回可能に設けられ、ワークの除去加工のための工具を保持する工具保持部と、
前記工具保持部に対して着脱可能に設けられ、ワークに対して作業を行なう作業用ヘッドと、
前記工具保持部および前記作業用ヘッドに設けられ、前記工具保持部および前記作業用ヘッドを相互に接続する第1接続部と、
前記工具保持部および前記作業用ヘッドに設けられ、前記第1接続部から離れた位置に配置され、前記工具保持部および前記作業用ヘッドを相互に接続する第2接続部とを備え、
前記作業用ヘッドの重心位置および前記所定軸が含まれる仮想平面を挟んだ一方の側に、前記第1接続部が配置され、前記仮想平面を挟んだ他方の側に、前記第2接続部が配置され
、
前記工具保持部および前記作業用ヘッドのいずれか一方には、ピン挿入孔が設けられ、
前記工具保持部および前記作業用ヘッドのいずれか他方には、前記工具保持部に対する前記作業用ヘッドの装着時に前記ピン挿入孔に挿入され、前記ピン挿入孔とともに前記第1接続部をなすピン部材が設けられ、
前記ピン挿入孔に対する前記ピン部材の挿入方向は、前記所定軸と平行である、加工機械。
【請求項2】
水平方向に平行な所定軸を中心に旋回可能に設けられ、ワークの除去加工のための工具を保持する工具保持部と、
前記工具保持部に対して着脱可能に設けられ、ワークに対して作業を行なう作業用ヘッドと、
前記工具保持部および前記作業用ヘッドに設けられ、前記工具保持部および前記作業用ヘッドを相互に接続する第1接続部と、
前記工具保持部および前記作業用ヘッドに設けられ、前記第1接続部から離れた位置に配置され、前記工具保持部および前記作業用ヘッドを相互に接続する第2接続部とを備え、
前記作業用ヘッドの重心位置および前記所定軸が含まれる仮想平面を挟んだ一方の側に、前記第1接続部が配置され、前記仮想平面を挟んだ他方の側に、前記第2接続部が配置され、
前記所定軸の軸方向に見た場合に、前記作業用ヘッドの重心位置は、前記第1接続部および前記第2接続部を繋ぐ仮想直線上であって、前記第1接続部および前記第2接続部の間に配置される
、加工機械。
【請求項3】
水平方向に平行な所定軸を中心に旋回可能に設けられ、ワークの除去加工のための工具を保持する工具保持部と、
前記工具保持部に対して着脱可能に設けられ、ワークに対して作業を行なう作業用ヘッドと、
前記工具保持部および前記作業用ヘッドに設けられ、前記工具保持部および前記作業用ヘッドを相互に接続する第1接続部と、
前記工具保持部および前記作業用ヘッドに設けられ、前記第1接続部から離れた位置に配置され、前記工具保持部および前記作業用ヘッドを相互に接続する第2接続部とを備え、
前記作業用ヘッドの重心位置および前記所定軸が含まれる仮想平面を挟んだ一方の側に、前記第1接続部が配置され、前記仮想平面を挟んだ他方の側に、前記第2接続部が配置され、
前記工具保持部には、工具が挿入される工具挿入孔が設けられ、
前記工具保持部は、前記工具挿入孔に挿入された工具をクランプするための工具クランプ機構部を有し、
前記作業用ヘッドには、前記工具保持部に対する前記作業用ヘッドの装着時に、前記工具挿入孔に挿入されるとともに、前記工具クランプ機構部によりクランプされ、前記工具挿入孔とともに前記第2接続部をなすシャンク部が設けられ
、
前記第2接続部および前記仮想平面の間の最短距離は、前記第1接続部および前記仮想平面の間の最短距離よりも小さい、加工機械。
【請求項4】
前記作業用ヘッドは、ワークに対して材料粉末を吐出するとともにレーザ光を照射する付加加工用ヘッドである、請求項1から
3のいずれか1項に記載の加工機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加工機械に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2017-1078号公報(特許文献1)には、ワークの除去加工のための工具を保持する工具主軸と、工具主軸に着脱可能に装着され、ワークの付加加工時に材料粉末を吐出するとともにレーザ光を照射する付加加工用ヘッドとを備える加工機械が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に開示される加工機械では、工具主軸(工具保持部)が、水平方向に平行な旋回中心軸を中心にして旋回可能に設けられている。このような構成において、ワークの付加加工時、工具主軸に対して装着された付加加工用ヘッド(作業用ヘッド)が、工具主軸と一体となって旋回動作すると、付加加工用ヘッドが工具主軸から脱落する可能性がある。
【0005】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、工具保持部に装着された作業用ヘッドによりワークに対して作業を行なう場合に、作業用ヘッドが工具保持部から脱落することを防ぐ加工機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従った加工機械は、水平方向に平行な所定軸を中心に旋回可能に設けられ、ワークの除去加工のための工具を保持する工具保持部と、工具保持部に対して着脱可能に設けられ、ワークに対して作業を行なう作業用ヘッドと、工具保持部および作業用ヘッドに設けられ、工具保持部および作業用ヘッドを相互に接続する第1接続部と、工具保持部および作業用ヘッドに設けられ、第1接続部から離れた位置に配置され、工具保持部および作業用ヘッドを相互に接続する第2接続部とを備える。作業用ヘッドの重心位置および所定軸が含まれる仮想平面を挟んだ一方の側に、第1接続部が配置され、仮想平面を挟んだ他方の側に、第2接続部が配置される。
【0007】
このように構成された加工機械によれば、所定軸を中心とする工具保持部の旋回時、工具保持部に装着された作業用ヘッドには、作業用ヘッドの重心位置を質点として、作業用ヘッドの重心位置および所定軸が含まれる仮想平面に平行な方向の遠心力が作用するとみなすことができる。この場合に、工具保持部および作業用ヘッドを相互に接続する第1接続部および第2接続部が、仮想平面を挟んだ一方の側および他方の側にそれぞれ配置されるため、工具保持部の旋回時に作業用ヘッドに生じる遠心力を、作業用ヘッドの重心位置を挟んだ両側でバランスよく受けたり、作業用ヘッド自体の重量を、作業用ヘッドの重心位置を挟んだ両側でバランスよく受けたりすることができる。これにより、工具保持部に装着された作業用ヘッドによりワークに対して作業を行なう場合に、工具保持部からの作業用ヘッドの脱落を防ぐことができる。
【0008】
また好ましくは、所定軸の軸方向に見た場合に、作業用ヘッドの重心位置は、第1接続部および第2接続部を繋ぐ仮想直線上であって、第1接続部および第2接続部の間に配置される。
【0009】
このように構成された加工機械によれば、工具保持部の旋回時に生じる遠心力を、作業用ヘッドの重心位置を挟んだ両側でよりバランスよく受けることができる。これにより、工具保持部からの作業用ヘッドの脱落をより確実に防ぐことができる。
【0010】
また好ましくは、工具保持部および作業用ヘッドのいずれか一方には、ピン挿入孔が設けられる。工具保持部および作業用ヘッドのいずれか他方には、工具保持部に対する作業用ヘッドの装着時にピン挿入孔に挿入され、ピン挿入孔とともに第1接続部をなすピン部材が設けられる。ピン挿入孔に対するピン部材の挿入方向は、所定軸と平行である。
【0011】
このように構成された加工機械によれば、工具保持部の旋回時に生じる遠心力の方向と、ピン挿入孔に対するピン部材の挿入方向とが直交関係となる。これにより、工具保持部からの作業用ヘッドの脱落をより確実に防ぐことができる。
【0012】
また好ましくは、工具保持部には、工具が挿入される工具挿入孔が設けられる。工具保持部は、工具挿入孔に挿入された工具をクランプするための工具クランプ機構部を有する。作業用ヘッドには、工具保持部に対する作業用ヘッドの装着時に、工具挿入孔に挿入されるとともに、工具クランプ機構部によりクランプされ、工具挿入孔とともに第2接続部をなすシャンク部が設けられる。
【0013】
このように構成された加工機械によれば、第2接続部において、工具をクランプするための工具クランプ機構部が利用される。これにより、工具保持部からの作業用ヘッドの脱落をより確実に防ぐことができる。
【0014】
また好ましくは、作業用ヘッドは、ワークに対して材料粉末を吐出するとともにレーザ光を照射する付加加工用ヘッドである。
【0015】
このように構成された加工機械によれば、工具保持部に装着された付加加工用ヘッドによりワークに対して付加加工を行なう場合に、工具保持部からの付加加工用ヘッドの脱落を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0016】
以上に説明したように、この発明に従えば、工具保持部に装着された作業用ヘッドによりワークに対して作業を行なう場合に、作業用ヘッドが工具保持部から脱落することを防ぐ加工機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明の実施の形態における加工機械を示す正面図である。
【
図2】工具主軸と、工具主軸に装着された付加加工用ヘッドとを示す斜視図である。
【
図3】
図2中の工具主軸および付加加工用ヘッドを示す正面図である。
【
図7】
図6中の付加加工用ヘッドを示す正面図である。
【
図8】
図6中の付加加工用ヘッドを示す上面図である。
【
図9】工具主軸および付加加工用ヘッドの接続構造を説明するための部分断面図である。
【
図10】
図2中のX-X線上の矢視方向に見た工具主軸および付加加工用ヘッドを示す断面図である。
【
図11】
図9中の2点鎖線XIで囲まれた範囲の工具主軸および付加加工用ヘッドを示す断面図である。
【
図12】
図3中の工具主軸および付加加工用ヘッドの変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0019】
図1は、この発明の実施の形態における加工機械を示す正面図である。
図1中には、加工機械の外観をなすカバー体を透視することにより、加工機械の内部が示されている。
【0020】
図1を参照して、加工機械100は、ワークの付加加工と、ワークの除去加工(切削加工)とが可能なAM/SMハイブリッド加工機である。加工機械100は、SM加工の機能として、固定工具を用いた旋削機能と、回転工具を用いたミーリング機能とを有する。
【0021】
加工機械100は、コンピュータによる数値制御によって、ワーク加工のための各種動作が自動化されたNC(Numerically Control)加工機械である。
【0022】
なお、本明細書においては、加工機械100の左右方向(幅方向)に平行で、水平方向に延びる軸を「Z軸」といい、加工機械100の前後方向(奥行き方向)に平行で、水平方向に延びる軸を「Y軸」といい、鉛直方向に延びる軸を「X軸」という。X軸、Y軸およびZ軸は、互いに直交する3軸である。
図1中における右方向を「+Z軸方向」といい、左方向を「-Z軸方向」という。
図1中における紙面の手前方向を「+Y軸方向」といい、奥方向を「-Y軸方向」という。
図1中における上方向を「+X軸方向」といい、下方向を「-X軸方向」という。
【0023】
まず、加工機械100の全体構造について説明すると、加工機械100は、カバー体166を有する。カバー体166は、加工エリア160を形成するとともに、加工機械100の外観をなしている。
【0024】
加工エリア160は、ワークの加工が行なわれる空間であり、ワークの除去加工に伴う切屑およびクーラント(ミスト)、ならびに、ワークの付加加工に伴うヒュームが加工エリア160の外側に漏出しないように密閉されている。
【0025】
加工機械100は、ベッド136と、第1ワーク主軸111と、第2ワーク主軸116と、工具主軸121と、刃物台131とを有する。
【0026】
ベッド136は、第1ワーク主軸111、第2ワーク主軸116、工具主軸121および刃物台131等を支持するためのベース部材であり、工場などの床面に設置されている。
【0027】
第1ワーク主軸111および第2ワーク主軸116は、Z軸方向において、互いに対向して配置されている。第1ワーク主軸111および第2ワーク主軸116の各ワーク主軸は、ワークを保持可能である。第1ワーク主軸111および第2ワーク主軸116の各ワーク主軸には、ワークを着脱可能に保持するためのチャック機構(不図示)が設けられている。第1ワーク主軸111は、保持したワークをZ軸に平行な回転中心軸101を中心に回転させる。第2ワーク主軸116は、保持したワークをZ軸に平行な回転中心軸102を中心に回転させる。
【0028】
第1ワーク主軸111は、ベッド136に固定されている。第2ワーク主軸116は、各種の送り機構、案内機構およびサーボモータなどにより、Z軸方向に移動可能に設けられている。第2ワーク主軸116は、ベッド136に固定される構成であってもよい。
【0029】
なお、第2ワーク主軸116に替わって、第1ワーク主軸111に保持されたワークの回転中心を支持するための心押し台が設けられてもよいし、第1ワーク主軸111に保持されたワークをその外周上から支持し、ワークの振れを防ぐためのワーク振れ止め装置が設けられてもよい。
【0030】
工具主軸121は、加工エリア160内に設けられている。工具主軸121は、ワークの除去加工のための工具を保持可能である。工具主軸121は、ワークのミーリング加工のための回転工具を保持可能である。工具主軸121には、工具を着脱可能に保持するための工具クランプ機構部271(後出の
図11を参照)が設けられている。工具主軸121は、回転工具を用いたワークのミーリング加工時に、保持した回転工具をX軸-Z軸平面に平行な回転中心軸105を中心に回転させる。
【0031】
工具主軸121は、さらに、水平方向に平行な所定軸104を中心に旋回可能である(B軸旋回)。所定軸104は、Y軸と平行である。工具主軸121の旋回範囲は、工具主軸121の主軸端面123(後出の
図5を参照)が下方を向く基準姿勢(
図1中に示す姿勢)に対して±90°以上の範囲であることが好ましい。工具主軸121の旋回範囲は、基準姿勢に対して±90°の範囲であってもよいし、±120°の範囲であってもよい。
【0032】
工具主軸121は、図示しないコラム等によりベッド136上に支持されている。工具主軸121は、コラム等に設けられた各種の送り機構、案内機構およびサーボモータなどにより、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に移動可能である。工具主軸121に装着された回転工具による加工位置は、3次元的に移動する。
【0033】
なお、
図1中には示されていないが、第1ワーク主軸111の周辺には、工具主軸121に保持される工具を自動交換するための自動工具交換装置(ATC:Automatic Tool Changer)と、工具主軸121に保持する交換用の工具を収容する工具マガジンとが設けられている。
【0034】
刃物台131は、旋削加工のための複数の固定工具を装着する。刃物台131は、いわゆるタレット形であり、複数の固定工具が放射状に取り付けられ、旋回割り出しを行なう。
【0035】
より具体的には、刃物台131は、旋回部132を有する。旋回部132は、Z軸に平行な旋回中心軸106を中心に旋回可能に設けられている。旋回中心軸106を中心にその周方向に間隔を隔てた位置には、固定工具を保持するための工具ホルダが取り付けられている。旋回部132が旋回中心軸106を中心に旋回することによって、工具ホルダに保持された固定工具が周方向に移動し、旋削加工に用いられる固定工具が割り出される。
【0036】
刃物台131は、図示しないサドル等によりベッド136上に支持されている。刃物台131は、サドル等に設けられた各種の送り機構、案内機構およびサーボモータなどにより、X軸方向およびZ軸方向に移動可能である。刃物台131は、回転工具を回転させるミーリング機能を備えてもよい。
【0037】
加工機械100は、付加加工用ヘッド141と、パウダーフィーダおよびレーザ発振装置(不図示)と、ケーブル146とをさらに有する。
【0038】
付加加工用ヘッド141は、ワークに対して作業を行なう。付加加工用ヘッド141は、ワークに対して粉末(材料粉末)を吐出するとともにレーザ光を照射することにより付加加工を行なう(指向性エネルギ堆積法(Directed Energy Deposition))。粉末としては、ステンレス、ニッケル基合金、コバルト基合金もしくはチタン等の金属粉末を利用することができる。なお、粉末は、金属粉末に限られない。
【0039】
付加加工用ヘッド141は、工具主軸121に対して着脱可能に設けられている。ワークの付加加工時、付加加工用ヘッド141は、工具主軸121に装着されることにより、工具主軸121と一体となって、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に移動したり、所定軸104を中心に旋回したりする。ワークの除去加工時、付加加工用ヘッド141は、工具主軸121から離脱され、後述するヘッドストッカ170に格納される。
【0040】
パウダーフィーダおよびレーザ発振装置は、加工機械100の機外に設置されている。パウダーフィーダは、付加加工に用いられる粉末を付加加工用ヘッド141に向けて送り出す。レーザ発振装置は、付加加工に用いられるレーザ光を発振する。
【0041】
ケーブル146は、付加加工用ヘッド141から延出し、パウダーフィーダおよびレーザ発振装置に接続されている。ケーブル146は、パウダーフィーダからの粉末を付加加工用ヘッド141に供給し、レーザ発振装置からのレーザ光を付加加工用ヘッド141に供給する。ケーブル146は、レーザ光を導くための光ファイバと、粉末を導くための配管と、空気の流路となるエア配管と、不活性ガスの流路となるガス配管と、冷媒の流路となる冷却配管と、電気配線と、これらを収容するフレキシブルチューブとを含む。ケーブル146は、可撓性を有する。
【0042】
付加加工用ヘッド141は、ヘッド本体151と、レーザツール142とを有する。ヘッド本体151には、ケーブル146を通じて、レーザ光および粉末が導入される。ヘッド本体151には、レーザ光をレーザツール142に向けて導くためのミラー、および、レーザ光を平行光にするためのコリメーションレンズ等の各種の光学部品が内装されている。
【0043】
ヘッド本体151には、ケーブルガイド部143が設けられている。ケーブルガイド部143は、筒形状を有し、その内側にはケーブル146が挿入されている。ケーブルガイド部143は、ケーブル146をヘッド本体151の内部に案内している。
【0044】
レーザツール142は、ヘッド本体151に取り付けられている。レーザツール142は、ワークに向けてレーザ光を出射するとともに、ワークにおけるレーザ光の照射領域を定める。レーザツール142は、集光レンズを有してもよい。レーザツール142からワークに向けて出射されるレーザ光の光軸107は、工具主軸121の回転中心軸105と平行に延びている。レーザツール142には、ワークに向けて粉末を吐出するためのノズル孔が設けられている。なお、付加加工用ヘッド141は、パイプ形状を有するノズルを通じて粉末を吐出する構成であってもよい。
【0045】
加工機械100は、ワーク上に定められるレーザ光の照射領域の形状および/または大きさが異なる複数のレーザツール142を有してもよい。この場合に、ヘッド本体151には、実行する付加加工の条件に合わせて、複数のレーザツール142のうちいずれか1つのレーザツール142が選択的に装着されてもよい。
【0046】
カバー体166は、格納エリア161をさらに形成している。格納エリア161は、Z軸方向において、加工エリア160と並んで設けられている。格納エリア161は、第2ワーク主軸116の上方に設けられている。
【0047】
カバー体166は、内カバー167と、開閉カバー169とをさらに有する。内カバー167は、格納エリア161を形成している。内カバー167には、開口部168が設けられている。開口部168は、加工エリア160および格納エリア161の間を開通させる開口からなる。開閉カバー169は、開口部168に設けられている。開閉カバー169は、開口部168を閉塞する閉状態と、開口部168を開放する開状態との間で動作可能に設けらている。
【0048】
加工機械100は、ヘッドストッカ170と、ヘッドストッカ支持台181とをさらに有する。ヘッドストッカ170は、格納エリア161に設けられている。ヘッドストッカ支持台181は、ベッド136に立設されている。ヘッドストッカ170は、ヘッドストッカ支持台181によって、第2ワーク主軸116の上方の位置に支持されている。ヘッドストッカ170は、ワークの除去加工時に、付加加工用ヘッド141を格納エリア161に格納する。
【0049】
ヘッドストッカ170は、ヘッド保持部171と、基台172と、ケーブル支持部176とを有する。
【0050】
ヘッド保持部171は、付加加工用ヘッド141を着脱可能に保持する。開閉カバー169は、ワークの除去加工および付加加工の間における移行時に開状態に動作される。付加加工用ヘッド141は、ワークの除去加工から付加加工への移行時に、工具主軸121からヘッド保持部171に受け渡され、開口部168を通じて格納エリア161に格納される。付加加工用ヘッド141は、ワークの付加加工から除去加工への移行時に、開口部168を通じて加工エリア160に進入し、ヘッド保持部171から工具主軸121に受け渡される。
【0051】
基台172は、Y軸-Z軸平面に平行に配置される板部材からなる。基台172には、ヘッド保持部171およびケーブル支持部176が搭載されている。
【0052】
ケーブル支持部176は、付加加工用ヘッド141から延出するケーブル146を支持している。ケーブル支持部176は、滑車部177を有する。滑車部177は、Y軸方向に平行な回転中心軸108を中心に回転可能で、かつ、Z軸方向にスライド移動可能なように設けられている。滑車部177には、図示しないバネ部材によって、加工エリア160から格納エリア161に向けた張力(弾性力)が付与されている。滑車部177には、Z軸方向において、加工エリア160内の付加加工用ヘッド141から遠ざかる方向(+Z軸方向)の張力が付与されている。
【0053】
付加加工用ヘッド141から延出するケーブル146は、基台172上において、+Z軸方向に延びている。ケーブル146は、滑車部177に掛け回され、180°反転して-Z軸方向に延びている。-Z軸方向に延びるケーブル146の先端部は、基台172により支持されている。
【0054】
このような構成によれば、加工エリア160内におけるケーブル146の撓みを抑制することができる。また、滑車部177がZ軸方向にスライド移動することによって、付加加工用ヘッド141の位置に合わせて加工エリア160内におけるケーブル146の長さを自動的に調整することができる。
【0055】
続いて、工具主軸121および付加加工用ヘッド141のより具体的な構造と、工具主軸121および付加加工用ヘッド141の接続構造とについて説明する。
【0056】
図2は、工具主軸と、工具主軸に装着された付加加工用ヘッドとを示す斜視図である。
図3は、
図2中の工具主軸および付加加工用ヘッドを示す正面図である。
図4は、工具主軸を示す斜視図である。
図5は、
図4中の工具主軸を示す正面図である。
図6は、付加加工用ヘッドを示す斜視図である。
図7は、
図6中の付加加工用ヘッドを示す正面図である。
図8は、
図6中の付加加工用ヘッドを示す上面図である。
【0057】
なお、
図2から
図8、および、後出の
図9から
図11中には、基準姿勢における工具主軸121と、その工具主軸121に装着される付加加工用ヘッド141とが、X軸、Y軸およびZ軸の3軸と合わせて示されている。以下、その基準姿勢時におけるX軸、Y軸およびZ軸を参照しながら、工具主軸121および付加加工用ヘッド141の構造について説明する。
【0058】
図2から
図8を参照して、工具主軸121は、外装体122と、主軸本体124(後出の
図11を参照)とを有する。
【0059】
外装体122は、工具主軸121の外観をなしている。外装体122は、直方体形状を有する。外装体122は、第1側面122aと、第2側面122bとを有する。
【0060】
図4および
図5に示されるように、第1側面122aは、+Y軸方向を向いている。第1側面122aは、
X軸-Z軸平面と平行に配置されている。所定軸104は、第1側面122aと交わっている。第2側面122bは、所定軸104からその半径方向外側に離れた位置に設けられている。第2側面122bは、回転中心軸105および所定軸104と平行な平面からなる。第2側面122bは、所定軸104の半径方向外側を向いている。第2側面122bは、所定軸104を中心とする工具主軸121の旋回動作に伴って、所定軸104の周方向に移動する。
【0061】
図5および後出の
図11に示されるように、主軸本体124は、外装体122に内装されている。主軸本体124は、回転中心軸105の軸方向に延びる筒体からなる。主軸本体124は、回転中心軸105を中心に回転可能なように支持されている。
【0062】
主軸本体124は、主軸端面123を有する。主軸端面123は、回転中心軸105の軸方向における主軸本体124の端部に配置されている。主軸端面123は、所定軸104からその半径方向外側に離れた位置に設けられている。主軸端面123は、回転中心軸105と直交し、かつ、所定軸104と平行な平面からなる。主軸端面123は、回転中心軸105を中心とするリング状を有する。主軸端面123は、所定軸104を中心とする工具主軸121の旋回動作に伴って、所定軸104の周方向に移動する。
【0063】
付加加工用ヘッド141(ヘッド本体151)は、第1側部152と、第2側部153と、底部154とを有する。
【0064】
図8に示されるように、付加加工用ヘッド141をX軸方向に見た場合に、第1側部152は、光軸107から+Y軸方向に離れた位置に設けられている。第1側部152は、X軸-Z軸平面と平行に配置され、Y軸方向が厚み方向となるブロック形状を有する。第2側部153は、光軸107から+Z軸方向、かつ+Y軸方向に離れた位置に設けられている。第2側部153は、X軸-Y軸平面と平行に配置され、Z軸方向が厚み方向となるブロック形状を有する。+Y軸方向における第2側部153の端部が、+Z軸方向における第1側部152の端部と連なって、角部をなしている。
【0065】
ケーブルガイド部143は、第1側部152および第2側部153がなす角部に接続されている。ケーブルガイド部143は、+Z軸方向を向いて開口している。
【0066】
底部154は、Y軸-Z軸平面と平行に配置され、X軸方向が厚み方向となるブロック形状を有する。+Y軸方向における底部154の端部が、-X軸方向における第1側部152の端部と連なって、角部をなしている。+Z軸方向における底部154の端部が、-X軸方向における第2側部153の端部と連なって、角部をなしている。+Z軸方向、かつ、+Y軸方向における底部154の端部が、+Z軸方向、かつ、-X軸方向における第1側部152の端部と、+Y軸方向、かつ、-X軸方向における第2側部153の端部とに連なって、頂部をなしている。
【0067】
レーザツール142は、底部154に取り付けられている。レーザツール142は、底部154から-X軸方向に突出するように設けられている。
【0068】
工具主軸121に対して付加加工用ヘッド141が装着された状態において、第1側面122aと、第1側部152とが、Y軸方向において互いに対向し、第2側面122bと、第2側部153とが、Z軸方向において互いに対向し、主軸端面123と、底部154とが、X軸方向において互いに対向している。
【0069】
工具主軸121に対して付加加工用ヘッド141が装着された状態において、Y軸方向に延長された工具主軸121における所定軸104は、付加加工用ヘッド141の第1側部152と交わっている。X軸方向に延長された工具主軸121における回転中心軸105は、付加加工用ヘッド141の底部154と交わっている。X軸方向に延長された付加加工用ヘッド141における光軸107は、外装体122と交わっている。
【0070】
図6から
図8に示されるように、付加加工用ヘッド141は、シリンダーカバー157をさらに有する。シリンダーカバー157は、+X軸方向における第2側部153の端部に取り付けられている。シリンダーカバー157は、後述するピストンシリンダー231を覆うように設けられている。
【0071】
なお、
図2および
図3では、シリンダーカバー157の図示が省略されることにより、シリンダーカバー157の内部構造が示され、後出の
図9では、シリンダーカバー157と、その内部構造との図示が省略されている。
【0072】
図9は、工具主軸および付加加工用ヘッドの接続構造を説明するための部分断面図である。
図10は、
図2中のX-X線上の矢視方向に見た工具主軸および付加加工用ヘッドを示す断面図である。
図11は、
図9中の2点鎖線XIで囲まれた範囲の工具主軸および付加加工用ヘッドを示す断面図である。
【0073】
図9および
図10を参照して、加工機械100は、第1接続部211をさらに有する。第1接続部211は、工具主軸121および付加加工用ヘッド141に設けられている。第1接続部211は、工具主軸121および付加加工用ヘッド141を相互に接続するように構成されている。
【0074】
図10に示されるように、工具主軸121は、ブロック体221をさらに有する。ブロック体221は、外装体122に取り付けられている。ブロック体221は、外装体122の第2側面122bから突出するように設けられている。ブロック体221は、付加加工用ヘッド141の第2側部153よりも上方に設けられている。
【0075】
ブロック体221には、ピン挿入孔222が設けられている。ピン挿入孔222は、Y軸方向に凹む凹形状をなしている。ピン挿入孔222は、ブロック体221において+Y軸方向を向いて開口している。ピン挿入孔222は、Y軸方向に平行な中心軸206の軸上に設けられている。ブロック体221が中心軸206に直交する平面により切断された場合に、ピン挿入孔222は、円形の開口形状をなしている。
【0076】
付加加工用ヘッド141は、ピストンシリンダー231をさらに有する。ピストンシリンダー231は、+X軸方向における第2側部153の端部に取り付けられている。ピストンシリンダー231は、Y軸方向において、ブロック体221と対向する位置に設けられている。
【0077】
ピストンシリンダー231は、シリンダーブロック242と、ピストン243と、ピン部材233と、ガイドブロック232とを有する。シリンダーブロック242は、ピストン243をY軸方向においてスライド動作が可能なように支持している。シリンダーブロック242に油圧または空圧等の流体圧が供給されることによって、ピストン243は、+Y軸方向および-Y軸方向のいずれかの方向にスライド動作する。
【0078】
ガイドブロック232は、Y軸方向において、シリンダーブロック242と並んで設けられている。ガイドブロック232は、Y軸方向において、シリンダーブロック242およびブロック体221の間に配置されている。ガイドブロック232は、ピン部材233をY軸方向においてスライド動作が可能なように支持している。
【0079】
ピン部材233は、Y軸方向に延びるピン形状を有する。ピン部材233は、中心軸207の軸上で延びている。付加加工用ヘッド141が工具主軸121に装着された状態において、中心軸207は、中心軸206と一直線上に配置されている。
【0080】
ピン部材233は、Y軸方向において、ピン挿入孔222と対向して設けられている。ピン部材233は、-Y軸方向に向けて突出する凸形状を有する。ピン部材233は、中心軸207に直交する平面により切断された場合に、ピン挿入孔222に対応する断面形状を有する。ピン部材233は、円形の断面形状を有する。
【0081】
ピン部材233は、ピストン243に接続されている。+Y軸方向におけるピン部材233の端部が、-Y軸方向におけるピストン243の端部に接続されている。ピン部材233は、ピストン243と一体になって、Y軸方向にスライド動作する。
【0082】
このような構成において、第1接続部211は、ピン挿入孔222およびピン部材233から構成されている。工具主軸121に対する付加加工用ヘッド141の装着時に、シリンダーブロック242に対して流体圧を供給することによって、ピストン243を-Y軸方向にスライド動作させる。ピン部材233は、ピストン243とともに-Y軸方向にスライド動作することによって、ピン挿入孔222に挿入される。これにより、工具主軸121および付加加工用ヘッド141が、第1接続部211によって相互に接続される。
【0083】
ピン挿入孔222に対するピン部材233の挿入方向は、所定軸104と平行であるY軸方向(-Y軸方向)である。
【0084】
一方、工具主軸121からの付加加工用ヘッド141の離脱時に、シリンダーブロック242に対して流体圧を供給することによって、ピストン243を+Y軸方向にスライド動作させる。ピン233は、ピストン243とともに+Y軸方向にスライド動作することによって、ピン挿入孔222から抜ける。これにより、第1接続部211による工具主軸121および付加加工用ヘッド141の接続が解除される。
【0085】
図9および
図11を参照して、加工機械100は、第2接続部261をさらに有する。第2接続部261は、工具主軸121および付加加工用ヘッド141に設けられている。第2接続部261は、第1接続部211から離れた位置に配置されている。第2接続部261は、工具主軸121および付加加工用ヘッド141を相互に接続するように構成されている。
【0086】
図11に示されるように、工具主軸121(主軸本体124)には、工具挿入孔125が設けられている。工具挿入孔125は、回転中心軸105の軸方向に凹む凹形状をなしている。工具挿入孔125は、主軸端面123に開口している。ワークの除去加工時、工具主軸121に工具を装着する場合に、工具挿入孔125に工具(のシャンク部)が挿入される。
【0087】
工具挿入孔125は、テーパ面125cを規定している。テーパ面125cは、回転中心軸105を中心とする主軸本体124の内周面からなる。テーパ面125cの直径は、回転中心軸105の軸方向において主軸端面123から遠ざかるほど小さくなる。
【0088】
工具主軸121は、工具クランプ機構部271をさらに有する。工具クランプ機構部271は、主軸本体124に設けられている。工具クランプ機構部271は、ワークの除去加工時に、工具を工具主軸121に保持するための機構である。工具クランプ機構部271は、工具をクランプするクランプ状態と、工具をアンクランプするアンクランプ状態との間で動作が可能である。本実施の形態では、工具クランプ機構部271により保持可能な工具のシャンク仕様が、ポリゴンテーパシャンクである。
【0089】
図8および
図11に示されるように、付加加工用ヘッド141は、シャンク部156をさらに有する。
【0090】
シャンク部156は、底部154に設けられている。シャンク部156は、底部154から+X軸方向に突出するように設けられている。シャンク部156は、中心軸201の軸上に設けられている。付加加工用ヘッド141が工具主軸121に装着された状態において、中心軸201は、回転中心軸105と一直線上に配置されている。中心軸201は、光軸107から-Z軸方向に離れた位置に配置されている。中心軸201および光軸107は、Y軸方向において揃った位置に配置されている。なお、中心軸201および光軸107は、Y軸方向においてずれた位置に配置されてもよい。
【0091】
シャンク部156は、工具クランプ機構部271により保持可能な工具のシャンク仕様(ポリゴンテーパシャンク)に対応するシャンク形状を有する。
【0092】
より具体的には、シャンク部156は、中心軸201を中心とする円筒形状を有し、その内周面には、回転中心軸105の半径方向外側に向けて凹む凹部281が設けられている。シャンク部156は、テーパ面156dと、シャンク端面156eとを有する。テーパ面156dは、回転中心軸105を中心とするシャンク部156の外周面からなる。テーパ面156dは、テーパ面125cに対応するテーパ形状を有する。シャンク端面156eは、中心軸201と直交する平面からなる。シャンク端面156eは、中心軸201を中心とするリング形状を有する。
【0093】
シャンク部156は、工具挿入孔125に挿入されている。工具挿入孔125に対するシャンク部156の挿入方向は、所定軸104の半径方向(回転中心軸105の軸方向)である。工具クランプ機構部271によるシャンク部156のクランプ状態において、テーパ面156dは、テーパ面125cと当接し、シャンク端面156eは、主軸端面123と当接している。
【0094】
工具クランプ機構部271は、ドローバ272と、コレット273と、バネ部材274と、アンクランプシリンダー(不図示)とを有する。
【0095】
ドローバ272は、回転中心軸105の軸上に設けられている。ドローバ272は、回転中心軸105の軸方向にスライド移動が可能なように設けられている(回転中心軸105の軸方向において、主軸端面123が位置する側を「前方側」といい、その反対側を「後方側」という)。
【0096】
コレット273は、ドローバ272の前端部に取り付けられている。コレット273は、円筒形状を有するシャンク部156の内側に配置されている。コレット273は、回転中心軸105の軸方向におけるドローバ272のスライド移動に伴って、回転中心軸105を中心に縮径したり、拡径したりするように変形する。バネ部材274は、ドローバ272の外周上に設けられている。バネ部材274は、ドローバ272に対して回転中心軸105の軸方向の後方側に向けた弾性力を作用させている。アンクランプシリンダーは、ドローバ272の後端部に設けられている。アンクランプシリンダーは、油圧が供給されることによって、ドローバ272を回転中心軸105の軸方向の前方側にスライド移動させるように動作する。
【0097】
このような構成において、第2接続部261は、工具挿入孔125およびシャンク部156から構成されている。工具主軸121に対する付加加工用ヘッド141の装着時、バネ部材274の弾性力によって、ドローバ272を回転中心軸105の軸方向の後方側に向けてスライド移動させる。コレット273は、ドローバ272のスライド移動に伴って回転中心軸105を中心に拡径するように変形し、凹部281に係合される。コレット273が、シャンク部156を回転中心軸105の軸方向の後方側に引き込むことによって、工具クランプ機構部271によるシャンク部156のクランプ状態が得られる。これにより、工具主軸121および付加加工用ヘッド141が、第2接続部261によって相互に接続される。
【0098】
一方、工具主軸121からの付加加工用ヘッド141の離脱時、アンクランプシリンダーに油圧を供給することによって、ドローバ272を回転中心軸105の軸方向の前方側に向けてスライド移動させる。コレット273は、ドローバ272のスライド移動に伴って回転中心軸105を中心に縮径するように変形し、凹部281に対するコレット273の係合が解除される。ドローバ272が、シャンク部156を回転中心軸105の軸方向の前方側に押し出すことによって、工具クランプ機構部271によるシャンク部156のアンクランプ状態が得られる。これにより、第2接続部261による工具主軸121および付加加工用ヘッド141の接続が解除される。
【0099】
なお、本発明における工具クランプ機構部により保持可能な工具のシャンク仕様は、ポリゴンテーパシャンクに限定されず、たとえば、中空テーパシャンクであってもよい。
【0100】
図9を参照して、付加加工用ヘッド141の重心位置Gおよび所定軸104が含まれる仮想平面310を挟んだ一方の側に、第1接続部211が配置され、仮想平面310を挟んだ他方の側に、第2接続部261が配置されている。所定軸104は、仮想平面310の面内で延びている。所定軸104の軸方向に見た場合に、付加加工用ヘッド141の重心位置Gは、仮想平面310と重なっている。
【0101】
重心位置Gは、工具主軸121と分離された状態における付加加工用ヘッド141の単体の重心位置である。
【0102】
工具主軸121および付加加工用ヘッド141を所定軸104の軸方向に見た場合に、付加加工用ヘッド141の重心位置Gは、所定軸104から、+Z軸方向、かつ、-X軸方向にずれた位置に配置されている。重心位置Gは、第1側部152と重なる位置に配置されている。重心位置Gは、第2側部153から-Z軸方向にずれ、かつ、底部154から+X軸方向にずれた位置に配置されている。重心位置Gは、X軸方向(上下方向)において、第1接続部211および第2接続部261の間に配置されている。重心位置Gは、Z軸方向(水平方向)において、第1接続部211および第2接続部261の間に配置されている。
【0103】
重心位置Gは、付加加工用ヘッド141の形状および付加加工用ヘッド141の構成部品の各重量をコンピュータに入力し、FEM(Finite Element Method)解析により特定されてもよい。重心位置Gの特定は、コンピューターによる解析に限られず、たとえば、紐により付加加工用ヘッド141を任意の一点で吊るした場合の紐の延長線と、紐により付加加工用ヘッド141を別の一点で吊るした場合の紐の延長線との交点を、付加加工用ヘッド141の重心位置とする手法が用いられてもよい。
【0104】
第1接続部211および仮想平面310の間の最短距離は、第2接続部261および仮想平面310の間の最短距離よりも大きい。第1接続部211および仮想平面310の間の最短距離は、第2接続部261および仮想平面310の間の最短距離以下であってもよい。
【0105】
所定軸104を中心とする工具主軸121の旋回時、工具主軸121に装着された付加加工用ヘッド141には、付加加工用ヘッド141の重心位置Gを質点として、付加加工用ヘッド141の重心位置Gおよび所定軸104が含まれる仮想平面310に平行な方向の遠心力が作用するとみなすことができる。
【0106】
この場合に、工具主軸121および付加加工用ヘッド141を相互に接続する第1接続部211および第2接続部261が、仮想平面310を挟んだ一方の側および他方の側にそれぞれ配置されるため、工具主軸121の旋回時に生じる遠心力を、付加加工用ヘッド141の重心位置Gを挟んだ両側でバランスよく受けることができる。また、付加加工用ヘッド141の重量を、付加加工用ヘッド141の重心位置Gを挟んだ両側でバランスよく受けることができる。これにより、ワークの付加加工時に、付加加工用ヘッド141が工具主軸121から脱落することを防止できる。
【0107】
ピン挿入孔222に対するピン部材233の挿入方向は、所定軸104と平行であるY軸方向である。このような構成によれば、工具主軸121の旋回時に生じる遠心力の方向と、ピン挿入孔222に対するピン部材233の挿入方向とが直交関係となる。これにより、ワークの付加加工時に、付加加工用ヘッド141が工具主軸121から脱落することをより確実に防止できる。
【0108】
図12は、
図3中の工具主軸および付加加工用ヘッドの変形例を示す正面図である。
図12を参照して、本変形例では、工具主軸121および付加加工用ヘッド141を所定軸104の軸方向に見た場合に、付加加工用ヘッド141の重心位置Gが、第1接続部211および第2接続部261を繋ぐ仮想直線320上であって、第1接続部211および第2接続部261の間に配置されている。
【0109】
仮想直線320は、第1接続部211において、ピン部材233の中心軸207(ピン挿入孔222の中心軸206)を通っている。仮想直線320は、第2接続部261において、工具挿入孔125の中心軸に対応する回転中心軸105の軸上であって、テーパ面125cおよびテーパ面156dの当接部の内周側の任意の点208を通っている。
【0110】
このような構成によれば、工具主軸121の旋回時に生じる遠心力を、付加加工用ヘッド141の重心位置Gを挟んだ両側でさらにバランスよく受けることができる。これにより、ワークの付加加工時に、付加加工用ヘッド141が工具主軸121から脱落することをより確実に防止できる。
【0111】
以上に説明した、この発明の実施の形態における加工機械100の構造についてまとめると、本実施の形態における加工機械100は、水平方向に平行な所定軸104を中心に旋回可能に設けられ、ワークの除去加工のための工具を保持する工具保持部としての工具主軸121と、工具主軸121に対して着脱可能に設けられ、ワークに対して作業を行なう作業用ヘッドとしての付加加工用ヘッド141と、工具主軸121および付加加工用ヘッド141に設けられ、工具主軸121および付加加工用ヘッド141を相互に接続する第1接続部211と、工具主軸121および付加加工用ヘッド141に設けられ、第1接続部211から離れた位置に配置され、工具主軸121および付加加工用ヘッド141を相互に接続する第2接続部261とを備える。付加加工用ヘッド141の重心位置Gおよび所定軸104が含まれる仮想平面310を挟んだ一方の側に、第1接続部211が配置され、仮想平面310を挟んだ他方の側に、第2接続部261が配置される。
【0112】
このように構成された、この発明の実施の形態における加工機械100によれば、工具主軸121に装着された付加加工用ヘッド141によりワークに対して付加加工を行なう場合に、付加加工用ヘッド141が工具主軸121から脱落することを防止できる。
【0113】
なお、本発明における作業用ヘッドは、付加加工用ヘッド141に限られず、たとえば、ワークのレーザ加工に用いられるレーザ加工用ヘッドであってもよいし、ワークを測定するためのプローブを備えた測定用ヘッドであってもよい。また、本発明における工具保持部は、工具主軸に限られず、たとえば、固定工具を保持するための刃物台であってもよい。
【0114】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0115】
この発明は、たとえば、ワークの除去加工と、付加加工とが可能な加工機械に適用される。
【符号の説明】
【0116】
100 加工機械、101,102,105,108 回転中心軸、104 所定軸、106 旋回中心軸、107 光軸、111 第1ワーク主軸、116 第2ワーク主軸、121 工具主軸、122 外装体、122a 第1側面、122b 第2側面、123 主軸端面、124 主軸本体、125 工具挿入孔、125c,156d テーパ面、131 刃物台、132 旋回部、136 ベッド、141 付加加工用ヘッド、142 レーザツール、143 ケーブルガイド部、146 ケーブル、151 ヘッド本体、152 第1側部、153 第2側部、154 底部、156 シャンク部、156e シャンク端面、157 シリンダーカバー、160 加工エリア、161 格納エリア、166 カバー体、167 内カバー、168 開口部、169 開閉カバー、170 ヘッドストッカ、171 ヘッド保持部、172 基台、176 ケーブル支持部、177 滑車部、181 ヘッドストッカ支持台、201,206,207 中心軸、211 第1接続部、221 ブロック体、222 ピン挿入孔、231 ピストンシリンダー、232 ガイドブロック、233 ピン部材、242 シリンダーブロック、243 ピストン、261 第2接続部、271 工具クランプ機構部、272 ドローバ、273 コレット、274 バネ部材、281 凹部、310 仮想平面、320 仮想直線、G 重心位置。