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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】歩行者保護用自動車ヒンジ
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/38 20110101AFI20240726BHJP
   B62D 25/12 20060101ALI20240726BHJP
   E05D 11/06 20060101ALI20240726BHJP
   E05D 3/14 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
B60R21/38
B62D25/12 A
E05D11/06
E05D3/14 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023572909
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(86)【国際出願番号】 IB2022054884
(87)【国際公開番号】W WO2022249083
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-11-24
(31)【優先権主張番号】102021205306.8
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514056403
【氏名又は名称】マルチマティック インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】MULTIMATIC INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マクドナルド,ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】カーティス,チェスター
(72)【発明者】
【氏名】アバメイト,スティーブン
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-178208(JP,A)
【文献】特表2018-514456(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0182962(US,A1)
【文献】国際公開第2017/003641(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102007021840(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/38
B62D 25/12
E05D 11/06
E05D 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のヒンジ部分(18)と、部材ピン(32)によって互いに固定された第1の部材および第2の部材(28、30)を備えており、前記第1の部材または前記第2の部材(28、30)は、解放可能ピン(48)を解放可能に保持するように構成された開口部を有している第2のヒンジ部分(20)と、
互いに離隔して位置しており、各々が前記第1のヒンジ部分(18)および前記第1の部材(28)に枢動可能に相互接続されている、第1のリンケージおよび第2のリンケージ(22、24)であって、前記第1のヒンジ部分(18)および前記第2のヒンジ部分(20)が通常のフード閉位置(P1)と通常のフード開位置(P2)との間を互いに対して移動することを可能にするように構成された第1のリンケージおよび第2のリンケージ(22、24)と、
前記第2の部材(30)に係合し、衝突入力に応答して前記第2の部材を前記第1の部材(28)に対して移動させるように構成されたアクチュエータ(36)を備えるアクチュエータアセンブリ(34)と、
前記開口部(44)に隣接して位置するリテーナ(46)を備える解放アセンブリ(42)であって、前記解放可能ピン(48)は、前記第1の部材または前記第2の部材(28、30)の他方によって支持され、前記通常の閉位置および前記通常の開位置において前記リテーナによって前記開口部内に捕らえ、前記リテーナは、前記衝突入力に応答して前記解放可能ピンを解放し、前記第2の部材が前記部材ピンを中心にして前記第1の部材(28)に対して枢動することを可能にするように構成されている、解放アセンブリ(42)と、
第1の端部において前記第2の部材(30)に回転可能に取り付けられ、第2の端部に隣接する保持ピン(62)と、第1の端部(58)と第2の端部(59)との間の位置決めピン(64)と、を備えている保持リンク(56)と
を備えており、
前記位置決めピン(64)は、前記第2の部材が前記部材ピンを中心にして前記第1の部材に対して枢動するときに、前記第1の部材の湾曲スロット(66)内を移動して、前記第2の部材(30)に対する前記保持リンク(56)の向きを変えるように構成され、 前記第1のヒンジ部分は、保持スロット(68)と、それに取り付けられた可撓性保持クリップ(70)とを備え、前記保持クリップは、端部が開口した狭いチャネル(74)に接する開口部分(72)を備えており、
前記保持ピンは、前記保持スロット(68)に整列し、前記保持クリップが再び前記保持スロット(68)に隣接し、前記保持ピン(62)の運動が前記保持クリップ(70)によって抵抗されるよう、前記保持ピンの一部分を前記保持クリップの前記開口部分に進入させることによって前記保持クリップの付勢を覆すことができるように充分に、前記保持クリップ(70)を付勢するように構成される、歩行者保護用自動車ヒンジ(12)。
【請求項2】
前記保持クリップ(70)は、前記保持ピンが前記端部が開口した狭いチャネル(74)の開口端を出て、前記第1および第2の部材(28、30)の最終的な衝突終了フード位置への互いに対する移動を可能にするまで、さらなる力が前記保持クリップの抵抗に逆らって前記保持ピンによって加えられるときに前記保持ピン(62)が前記狭いチャネルに進入することを可能にするようにさらに構成される、請求項1に記載の歩行者保護用自動車ヒンジ(12)。
【請求項3】
前記リテーナ(46)は、破壊可能クリップおよびラッチの一方を備える、請求項1に記載の歩行者保護用自動車ヒンジ(12)。
【請求項4】
前記保持スロット(68)は、テーパ状である、請求項1に記載の歩行者保護用自動車ヒンジ。
【請求項5】
歩行者保護用自動車ヒンジ(12)を展開する方法であって、
第1のヒンジ部分(18)と、部材ピン(32)によって互いに固定された第1の部材および第2の部材(28、30)を備えており、前記第1の部材または前記第2の部材は解放可能ピン(48)を解放可能に保持するように構成された開口部を有している第2のヒンジ部分(20)と、を備えるヒンジを提供するステップであって、
互いに離隔して位置した第1のリンケージおよび第2のリンケージ(22、24)の各々が、前記第1のヒンジ部分および前記第1の部材に枢動可能に相互接続されており、前記第1および第2のリンケージは、前記第1および第2のヒンジ部分が通常のフード閉位置(P1)と通常のフード開位置(P2)との間を互いに対して移動することを可能にするように構成されている、ヒンジを提供するステップと、
衝突入力に応答してアクチュエータ(36)を作動させて前記第2の部材に係合させ、前記第2の部材を前記第1の部材に対して移動させるステップと、
前記衝突入力に応答して解放可能ピン(48)を解放アセンブリ(42)のリテーナ(46)および前記開口部から解放し、前記第2の部材が前記部材ピンを中心にして前記第1の部材に対して枢動することを可能にするステップと、
保持リンク(56)の第1の端部と第2の端部との間に位置する位置決めピン(64)を前記第1の部材の湾曲スロット(66)内で移動させて、前記第1の端部において前記第2の部材に回転可能に取り付けられた前記保持リンクの向きを、前記第2の部材が前記部材ピンを中心にして前記第1の部材に対して回転するときに変えるステップと、
保持ピン(62)を保持スロット(68)に整列させるステップと、
保持クリップ(70)を、前記保持ピンの一部分を前記保持クリップの開口部分に進入させることができるように充分に付勢するステップと、
前記保持クリップを介して前記保持ピンの運動に抵抗するステップと
を含む方法。
【請求項6】
前記保持ピンが、前記保持クリップ(70)における端部が開口した狭いチャネル(74)の開口端を出て、前記第1の部材および前記第2の部材(28、30)の最終的な衝突終了フード位置への互いに対する移動を可能にするまで、さらなる力が前記保持クリップの抵抗に逆らって前記保持ピンによって加えられるときに前記保持ピン(62)が前記狭いチャネルに進入することを可能にするステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載の歩行者保護用自動車ヒンジ(12)を展開する方法であって、衝突入力に応答してアクチュエータ(36)を作動させ、車両のフード(16)を上方に駆動するステップと、部材ピン(32)を中心にして第1の部材(28)に対して第2の部材(30)を枢動させるために、前記アクチュエータに応答して解放可能ピン(48)をリテーナ(46)から解放するステップと、保持ピン(62)を保持スロット(68)に係合させて、前記第2の部材の運動を拘束するステップと、前記車両のフードが、歩行者の頭部との接触が起こるまで、フード衝突開位置においてさらに偏向することを抑制するステップと、を含む方法。
【請求項8】
前記第2の部材(30)を前記アクチュエータ(36)と係合させて、前記解放するステップを開始させるステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
破壊可能クリップおよびラッチの一方を使用して前記解放可能ピンを解放するステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記車両のフード(16)の減速を助けるためにテーパ状の前記保持スロット(68)を提供するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
歩行者保護用自動車ヒンジ(12)を展開する方法であって、衝突入力に応答してアクチュエータ(36)を作動させ、車両のフード(16)を上方に駆動するステップと、部材ピン(32)を中心にして第1の部材(28)に対して第2の部材(30)を枢動させつつ、保持ピン(62)を保持スロット(68)に係合させるステップと、前記保持ピンを保持クリップ(70)に係合させ、前記保持ピンを前記保持クリップを通って前記保持クリップの外へと直動させることにより、前記車両のフードが最終的なフード衝突開位置(P3)へと跳ね返ることを可能にするステップと、を含む方法。
【請求項12】
請求項1~4のいずれか1項に記載の歩行者保護用自動車ヒンジ(12)を備える車両(10)。
【請求項13】
歩行者との衝突を示す情報を検出し、かつこの情報をコントローラ(38)を介して前記歩行者保護用自動車ヒンジ(12)の前記アクチュエータアセンブリ(34)の前記アクチュエータ(36)に通信するように構成されたセンサ(40)
をさらに備える、請求項12に記載の車両(10)。
【請求項14】
車両(10)における請求項1~4のいずれか1項に記載の歩行者保護用自動車ヒンジ(12)の使用。
【請求項15】
車両(10)の歩行者との衝突の際に、歩行者の衝撃を吸収し、歩行者の保護を提供するための、請求項1~4のいずれか1項に記載の歩行者保護用自動車ヒンジ(12)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
本開示は、歩行者保護用自動車ヒンジに関する。
【0002】
近年、自動車産業は、自動車における歩行者保護機能の採用を拡大している。そのような機能の1つは、歩行者との正面衝突の際に、車両の前部、とくにはフードを、より柔らかくすることである。
【0003】
フードで歩行者の衝撃を吸収するための1つの手法は、フードヒンジに組み合わせられたアクチュエータを展開して、フードをわずかに持ち上げることで、フードとエンジン室コンパートメントとの間に衝撃吸収ゾーンを生じさせることである。典型的には、シートベルトプリテンショナなどの他の車両安全システムと共通の火薬アクチュエータが使用される。
【0004】
ヒンジは、それらの通常の機能を維持する必要があるため、ヒンジは、通常のヒンジ動作状態においてはヒンジの構成要素間の所望の構造的関係を保持するが、アクチュエータの展開時にはヒンジの特定の要素が互いに対して移動することを選択的に可能にする解放アセンブリを備える。歩行者との衝突の事象においてフードがわずかに持ち上げられると、フードをわずかに開いた状態に保持しなければならず、なぜならば、火薬アクチュエータは(安全上の理由で)作動後に圧力を解放し、フードをこのわずかに開いた位置に維持することができないからである。
【0005】
別の手法は、エンジンの排気量がより小さい車両において、歩行者との衝突の事象においてフードを閉じたままにする。閉じたフードと小型のエンジンとの間の充分な衝撃吸収ゾーンが、歩行者との衝突の際にアクチュエータを必要とせずにフードがエンジン室内へと潰れることを可能にする。
【0006】
いくつかの歩行者保護用ヒンジシステムが、先行技術において提案されている。Kuhrらの米国特許出願公開第2013/0074284号明細書が、枢支接続部において接合されたボディヒンジ部材とフードヒンジ部材とを備えるフードヒンジを記載している。フードヒンジ部材は、ブラケットに、せん断ピンならびにフードヒンジ部材の遠位端およびブラケットの第1の端部に隣接して配置されたピボットピンにおいて接続される。ブラケットは、第1の(水平)壁においてフードに接続される。せん断ピンは、通常のフード開閉時に、フードヒンジ部材とブラケットとの間の相対移動を防止する。したがって、通常の動作において、フードヒンジは、フードヒンジ部材が枢支接続部を中心にしてボディヒンジ部材に対して枢動するため、フードが前方から開くことを可能にする。フードヒンジ部材に固定されたアップストップピンが、ブラケットの第2の(垂直)壁のスロットに位置する。通常の動作において、アップストップピンは、せん断ピンがフードヒンジ部材とブラケットとの間の相対移動を防止するため、ヒンジの移動においていかなる役割も果たさない。アップストップピンは、締結具によってブラケットの第1の(水平)壁に締結された可撓性ラッチ部材の戻り止めに接触している。車両の前端部において歩行者の衝突が発生すると、信号が導電体を介してアクチュエータに送信される。アクチュエータは、ブラケットの第1の壁を上方に押し上げ、せん断ピンをせん断する。これにより、ブラケットがピボットピンを中心にしてフードヒンジ部材に対して回転でき、したがってフードの後部をフードの前部に対して持ち上げることができる。せん断ピンのせん断後、フードヒンジ部材に締結されたアップストップピンは、可撓性ラッチ部材の戻り止めから押し出され、ブラケットの第2の壁のスロットの下限まで下方に移動する。ラッチ部材がアップストップピンに対して及ぼす圧力は、アップストップピンが戻り止めを離れた後に著しく減少する。ラッチ部材の自由端は、依然としてアップストップピンと接触しているが、最小限の力を及ぼすにすぎない。したがって、ラッチ部材に対するアップストップピンの作用は、システムがその最大移動点に到達するときに、システムの制御された減速をもたらすことがない。アップストップピンは、本質的に、スロットの下端に衝突して、フードの移動を終了させる。これは、歩行者との衝突の事象においてシステムがその最終停止位置に達するときに、激しい「フードのばたつき」をもたらし、歩行者の接触の加速度を大きくする可能性がある。衝突の後に、運転者がフロントガラスを通して前方をよりよく見て取ることができるよう、フードをより通常の位置へと戻すことが望まれる場合、フードを手で下方へと押すことによって、アップストップピンを、スロット内で上方へと再びラッチ部材の輪郭に沿って戻り止めまで移動させることができる。ラッチ部材は、歩行者との衝突後にフードが展開位置にあるときに、いかなるロックも提供せず、ブラケットとフードヒンジ部材とを有意に離して保持することもないように見受けられる。
【0007】
Koestlerらの独国特許出願公開第102008046145号明細書が、2つの歩行者保護装置を記載しており、一方は受動式(図1図3)であり、一方は能動式(図8および図9)である。いずれの場合も、互いに離隔して位置する第1および第2のリンケージが存在する。受動モードにおいては、リンケージ間の間隔を、枢支点の横移動を可能にすることによって変化させることができる。能動モードにおいては、枢支点は不変のままである。リンケージは、第1および第2のヒンジ部分(すなわち、第1のヒンジ部分および第2のヒンジ部分の第1の部材)と相互接続されていない。上部枢支点がヒンジ部品に接続され、ヒンジ部品はフードに直接的または間接的に接続されるが、下部枢支点は、車両の本体に接続される。このように、Koestlerのリンケージは、歩行者との衝突時に関与するが、2つのヒンジ部分には接続されていない。
【0008】
Zippertらの欧州特許出願公開第2634047号明細書が、フックによって拘束されることがなく、むしろフックを形成するスロットの一端から解放され得るピンを開示している。ピンをフック内に保持する壊れやすいクリップは、存在しない。むしろ、別個のせん断ねじ(係合手段)が、衝突の際にせん断されるように設計される。第1のヒンジ部分および第1の部材に枢動可能に相互接続される第1および第2のリンケージは存在しない。
【0009】
Pattersonの国際公開第2017/003641号パンフレットが、解放アセンブリを含む歩行者保護用自動車ヒンジを開示しており、解放アセンブリは、第1および第2の端部の一方に支持されたクリップと、第1および第2の部材の他方によって支持されたストップピンとを含んでいる。ストップピンは、通常の閉位置および通常の開位置において、クリップに捕捉されている。ストップピンは、衝突入力に応答してクリップを破壊するように構成され、第2の部材が部材ピンを中心にして第1の部材に対してフード衝突開位置へと枢動し、ストップピンがスロットの第2の端部へと移動することを可能にする。アクチュエータが、第2の部材と係合し、衝突入力に応答して第2の部材を第1の部材に対して上方に移動させ、クリップを破壊するように構成される。ストップピンは、スロットに拘束されたままであり、第1および第2の部材の広がりを制限する。さらに、別個の傾斜路を備える保持システムを使用して、フードを展開の過程において急速に減速させることができる。
【0010】
したがって、Pattersonの機能を備えつつ、解放アセンブリを保持アセンブリから分離し、歩行者の衝撃が特定の衝撃荷重を超える場合にヒンジ機構が潰れることも可能にすることができる保持アセンブリを提供する歩行者保護用フードヒンジを有することが、好都合であると考えられる。
【0011】
概要
第1の態様によれば、歩行者保護用自動車ヒンジが提供され、この歩行者保護用自動車ヒンジは、第1のヒンジ部分と、部材ピンによって互いに固定された第1および第2の部材を備えており、第1および第2の部材の一方は、解放可能ピンを解放可能に保持するように構成された開口部を有している第2のヒンジ部分と、互いに離隔して位置しており、各々が第1のヒンジ部分および第1の部材に枢動可能に相互接続されている、第1および第2のリンケージであって、第1および第2のヒンジ部分が通常のフード閉位置と通常のフード開位置との間を互いに対して移動することを可能にするように構成された第1および第2のリンケージと、第2の部材に係合し、衝突入力に応答して第2の部材を第1の部材に対して移動させるように構成されたアクチュエータを備えるアクチュエータシステムと、開口部に隣接して位置するリテーナを備え、解放可能ピンは、第1および第2の部材の一方の他方によって支持され、通常の閉位置および通常の開位置においてリテーナによって開口部内に捕らえ、リテーナは、衝突入力に応答して解放可能ピンを解放し、第2の部材が部材ピンを中心にして第1の部材に対して枢動することを可能にするように構成されている、解放アセンブリと、第1の端部において第2の部材に回転可能に取り付けられ、第2の端部に隣接する保持ピンおよび第1の端部と第2の端部との間の位置決めピンを備えている保持リンクと、を備えており、位置決めピンは、第2の部材が部材ピンを中心にして第1の部材に対して枢動するときに、第1の部材の湾曲スロット内を移動して、第2の部材に対する保持リンクの向きを変えるように構成され、第1のヒンジ部分は、保持スロットと、それに取り付けられた可撓性保持クリップとを備え、保持クリップは、端部が開口した狭いチャネルに接する開口部分を備えており、保持ピンは、保持スロットに整列し、保持クリップが再び保持スロットに隣接し、保持ピンの運動が保持クリップによって拘束されるよう、保持ピンの一部分を保持クリップの開口部分に進入させることによって保持クリップの付勢を覆すことができるように充分に、保持クリップを付勢するように構成される。
【0012】
歩行者保護用自動車ヒンジのさらなる実施形態において、保持クリップは、第1および第2の部材の最終的な衝突終了フード位置への互いに対する移動を可能にするために、さらなる力が保持クリップの増加する抵抗に逆らって保持ピンによって加えられるときに保持ピンが端部が開口した狭いチャネルに進入することを可能にするようにさらに構成される。
【0013】
歩行者保護用自動車ヒンジのさらなる実施形態において、リテーナは、破壊可能クリップおよびラッチの一方を備える。
【0014】
さらなる実施形態によれば、保持スロットは、テーパ状である。
第2の態様によれば、歩行者保護用自動車ヒンジを展開する方法が提供される。本方法は、以下のステップ、すなわち、第1のヒンジ部分と、部材ピンによって互いに固定された第1の部材および第2の部材を備えており、第1の部材または第2の部材は、解放可能ピンを解放可能に保持するように構成された開口部を有している第2のヒンジ部分と、を備えるヒンジを提供するステップであって、互いに離隔して位置した第1のリンケージおよび第2のリンケージの各々が、第1のヒンジ部分および第1の部材に枢動可能に相互接続されており、第1および第2のリンケージは、第1および第2のヒンジ部分が通常のフード閉位置と通常のフード開位置との間を互いに対して移動することを可能にするように構成されている、ヒンジを提供するステップと、衝突入力に応答してアクチュエータを作動させて第2の部材に係合させ、第2の部材を第1の部材に対して移動させるステップと、衝突入力に応答して解放可能ピンを解放アセンブリのリテーナおよび開口部から解放し、第2の部材が部材ピンを中心にして第1の部材に対して枢動することを可能にするステップと、保持リンクの第1の端部と第2の端部との間に位置する位置決めピンを第1の部材の湾曲スロット内で移動させて、第1の端部において第2の部材に回転可能に取り付けられた保持リンクの向きを、第2の部材が部材ピンを中心にして第1の部材に対して回転するときに変えるステップと、保持ピンを保持スロットに整列させるステップと、保持クリップを、保持ピンの一部分を保持クリップの開口部分に進入させることができるように充分に付勢するステップと、保持クリップを介して保持ピンの運動に抵抗するステップと、を含む。
【0015】
一実施形態によれば、本方法は、保持ピンが、保持クリップにおける端部が開口した狭いチャネル狭いチャネルの開口端を出て、第1の部材および第2の部材の最終的な衝突終了フード位置への互いに対する移動を可能にするまで、さらなる力が保持クリップの抵抗に逆らって保持ピンによって加えられるときに保持ピンが狭いチャネルに進入することを可能にするステップをさらに含む。
【0016】
さらなる態様によれば、歩行者保護用自動車ヒンジを展開する方法が提供される。本方法は、以下のステップ、すなわち、衝突入力に応答してアクチュエータを作動させ、車両のフードを上方に駆動するステップと、部材ピンを中心にして第1の部材に対して第2の部材を枢動させるために、アクチュエータに応答して解放可能ピンをリテーナから解放するステップと、保持ピンを保持スロットに係合させて、第2の部材の運動を拘束するステップと、車両のフードが、歩行者の頭部との接触が起こるまで、フード衝突開位置においてさらに偏向することを抑制するステップと、を含む。
【0017】
一実施形態によれば、本方法は、第2の部材をアクチュエータと係合させて、解放するステップを開始させるステッを含む。
【0018】
さらなる実施形態によれば、本方法は、破壊可能クリップおよびラッチの一方を使用して解放可能ピンを解放するステップを含む。
【0019】
さらなる実施形態によれば、本方法は、車両のフードの減速を助けるためにテーパ状の保持スロットを提供するステップをさらに含む。
【0020】
さらなる態様によれば、歩行者保護用自動車ヒンジを展開する方法が提供される。本方法は、以下のステップ、すなわち、衝突入力に応答してアクチュエータを作動させ、車両のフードを上方に駆動するステップと、部材ピンを中心にして第1の部材に対して第2の部材を枢動させつつ、保持ピンを保持スロットに係合させるステップと、保持ピンを保持クリップに係合させ、保持ピンを保持クリップを通って保持クリップの外へと直動させることにより、車両のフードが最終的なフード衝突開位置へと跳ね返ることを可能にするステップと、を含む。
【0021】
さらなる態様によれば、歩行者保護用自動車ヒンジを備える車両が提供される。
一実施形態によれば、車両は、歩行者との衝突を示す情報を検出し、かつ/またはこの情報をコントローラを介して歩行者保護用自動車ヒンジのアクチュエータアセンブリのアクチュエータに通信するように構成されたセンサ、をさらに備える。センサは、歩行者保護用自動車ヒンジのアクチュエータにさらに接続されたコントローラに接続されてよい。
【0022】
さらなる態様によれば、車両における歩行者保護用自動車ヒンジの使用が提供される。
さらなる態様によれば、車両の歩行者との衝突の際に、歩行者の衝撃を吸収し、歩行者の保護を提供するための、歩行者保護用自動車ヒンジの使用が提供される。
【0023】
これらの態様および他の態様は、以下で説明される図面により、実施形態から明らかになり、実施形態を参照して説明されるであろう。
【0024】
図面の簡単な説明
本開示を、以下の詳細な説明を参照し、添付の図面と併せて検討することで、さらに理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】通常の閉状態、通常の開状態、および衝突展開状態における自動車フードの向きを示す概略の側面図である。
図2】フードが通常の閉位置にある構成における例示的な歩行者保護用自動車ヒンジの斜視図である。
図3図2に示したヒンジの反対側からの斜視図である。
図4】通常の開位置にあるフードに対応する位置にある図2に示したヒンジのいくつかの部分の斜視図である。
図5図4のヒンジのいくつかの部分の反対側からの側面図である。
図6】初期フード衝突位置にある図2のヒンジの反対側の斜視図である。
図7】第1の中間フード衝突位置にある図2のヒンジの斜視図である。
図8図7のヒンジのいくつかの部分の反対側からの斜視図である。
図9】第2の中間フード衝突位置にある図2のヒンジのいくつかの部分の斜視図である。
図10】第3の中間フード衝突位置にある図2のヒンジの斜視図である。
図11図10のヒンジのいくつかの部分の斜視図である。
図12】第4の中間フード衝突位置にある図2のヒンジの斜視図である。
図13】第4の中間フード衝突位置のわずかに後の図12のヒンジの斜視図である。
図14図13のヒンジの一部分の斜視図である。
図15】フード衝突後の最終展開位置にある図2のヒンジの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
前述の段落、特許請求の範囲、あるいは以下の説明および図面の実施形態、例、および代替形態は、それらのさまざまな態様またはそれぞれの個別の特徴のすべてを含め、単独または任意の組み合わせにて理解することができる。或る実施形態に関連して説明される特徴は、そのような特徴が不適合でない限り、すべての実施形態に適用可能である。
【0027】
詳細な説明
車両10の一部分が、図1に示されている。車両10は、ヒンジ12によってエンジン室の側壁である本体14に対して支持されたフード16を含む。フード16は、本体14に対して、通常のフード閉位置をもたらすように位置P1に閉じられる。フード16は、ヒンジ12の通常のヒンジ動作状態において、メンテナンスのためにエンジン室へのアクセスを提供するために、通常のフード開位置に対応する全開位置P2まで開かれる。
【0028】
歩行者との衝突の事象において、フード16は、歩行者の衝撃をより良好に吸収し、歩行者の保護を強化するために、フード衝突開位置に対応する位置P3まで或る程度持ち上げられる。
【0029】
図2に示されるように、ヒンジ12は、本体14に取り付けられた第1のヒンジ部分18を備える。第2のヒンジ部分20が、第1および第2のリンケージ22、24によって第1のヒンジ部分18に相互接続されており、各々のリンケージの両端部が、第1および第2のヒンジ部分18、20に、これらの要素の互いに対する枢動を可能にするリンケージピン26によって固定されている。
【0030】
第2のヒンジ部分20は、通常のヒンジ動作状態において互いに一致して動く第1および第2の部材28、30を備える。第1および第2の部材28、30は、歩行者衝突入力に応答して第2の部材30が第1の部材28に対して回転することを可能にするように、部材ピン32によって接合される。
【0031】
アクチュエータアセンブリ34は、コントローラ38と通信するアクチュエータ36を備える。センサ40が、車両の前部への歩行者の衝突または歩行者の衝突が差し迫っていることを示す情報を検出し、この情報をコントローラ38に通信する。コントローラ38が、歩行者の衝撃を吸収するためにフード16を位置P1から位置P3まで或る程度持ち上げることが望ましいと判断すると、アクチュエータ36が作動し、矢印Fによって示されるようにアクチュエータ36の一部分を上方へと駆動して第2の部材30と係合させる。
【0032】
アクチュエータ36が第2の部材30と衝突すると、解放アセンブリ42が、第2の部材30が部材ピン32を中心にして第1の部材28に対して回転することを可能にする。フード16が位置P3に向かって移動するとき、保持アセンブリ60が、フード16の移動を位置P3に制限し、次いでフードをわずかに弛緩させて歩行者の衝撃を吸収することを可能にする。
【0033】
図2図12を参照すると、解放アセンブリ42は、第2の部材30に設けられた開口部またはスロット44を備える。例えばラッチ(図示せず)または脆弱クリップ46などのいくつかの形態をとることができるリテーナが、第2の部材30に取り付けられ、開口部またはスロット44内に配置される。解放可能ピン48が、第1の部材28に取り付けられ、クリップ46の開口を通って延びる。解放アセンブリはフード16の移動を制限しないため、開口部44は、解放可能ピンが特定の点を過ぎて移動することを阻止するための終端部を有するスロットである必要はない。
【0034】
衝突入力に応答してアクチュエータ36が作動すると、第2の部材30は上方へと駆動され、弱化領域を提供する脆弱接続部54においてプラスチッククリップ46を破壊する。解放可能ピン48は、フード衝突開位置においてリテーナまたはクリップ46によって開口部またはスロット44内にもはや拘束されることがない。
【0035】
脆弱クリップ44の使用の代替形態は、アクチュエータ36によってトリガされて解放可能ピン48を解放するラッチ(図示せず)の使用である。
【0036】
保持アセンブリ60が、図6図14にさらに詳細に示されている。一例において、保持アセンブリ60は、第1の端部58において第2の部材に回転可能に取り付けられ、第2の端部59には保持ピン62が位置する保持リンク56を備える。保持リンク56は、第1の端部58と第2の端部59との間に位置決めピン64をさらに備える。位置決めピン64は、衝突の事象の際に第1の部材28の湾曲スロット66内を移動するように構成される。位置決めピン64は、湾曲スロット66内で円弧状に移動して、保持リンク56の滑らかかつ幾何学的に矛盾のない運動を容易にする。第2の部材30に対する保持リンク56の向きは、第2の部材30が部材ピン32を中心にして第1の部材28に対して枢動するにつれて変化する。
【0037】
第1のヒンジ部分18は、第2の部材30が第1の部材28に対して回転するときに保持ピン62が押し付けられる開口端を有する保持スロット68を備える。典型的には、保持スロット68は、比較的剛的である。可撓性保持クリップ70が、保持ピン62の保持スロット68への進入の方向とは反対側で保持スロット68に隣接して取り付けられている。保持クリップには、端部が開口した狭いチャネル74につながる開口部分72が設けられている。
【0038】
図示の実施形態において、保持ピン62が保持スロット68に進入すると、保持ピン62は、保持クリップ70の後面に接触し、保持ピン62が保持スロット68の閉鎖端に近づくまで、保持クリップ70を保持スロット68から離れるように押す。保持スロット68は、保持ピン62が保持スロット68の開口端から閉鎖端に向かって移動するときに、保持ピン62のシャフトへと加わる抵抗が増加するようにテーパ状であってもよい。或る時点において、保持クリップ70が保持ピン62から離れるように付勢された状態で、保持ピン62は、保持クリップ70の開口部分72に遭遇し、そこを通過する。フード衝突事象の最中のこの時点で、フード16は、車両の本体に対する最大角度P3にある。保持ピン62は、保持スロット68の閉鎖端から跳ね返るが、依然として保持クリップ70の開口部分72に留まり、歩行者がフード16との接触に向かって移動する際に、フード16を或る運動範囲内に維持することができる。この制御された減速は、歩行者との衝突の事象において、激しい「フードのばたつき」を防止し、歩行者の接触の加速度が大きくなることを防止するために望ましい。したがって、すべて約30ms以内で、フードを可能な限り迅速に押し上げ、フードを可能な限り緩やかに比較的安定した位置にすることが望ましい。
【0039】
歩行者への衝撃を低減するために、歩行者の頭部がフード16に接触するときに、フード16のいくらかの屈折を可能にすることが有益である。跳ね返りの段階において、フードに当接する歩行者の頭部は、保持ピン62を再び保持スロットから押し出す。今や保持ピン62と接触している保持クリップ70の前面は、保持ピン62が開口部分72から保持クリップ70の端部が開口した狭いチャネル74へと押され、このチャネル74を通って移動するときに、保持ピン62を付勢するように構成される。随意により、保持クリップ70は、保持ピン62が端部が開口した狭いチャネル74に沿って徐々に移動するにつれて弾性変形および抵抗の増加を生じさせるために、開口部分72を含む部分と端部が開口した狭いチャネル74を含む部分との間で角度が付けられていてもよい。保持ピン62が端部が開口した狭いチャネル74を出ると、フードは、もはや保持クリップ70によって抵抗されることがなく、本質的に浮遊する。
【0040】
本発明を図面および以上の説明において詳細に図示および説明してきたが、そのような図示および説明は、例示または典型であって、限定ではないと考えられるべきであり、本発明は開示された実施形態に限定されない。図面、開示、および添付の特許請求の範囲を検討することで、当業者であれば、特許請求される発明を実施することによって、開示された実施形態に対する他の変形例を理解および達成することができる。特許請求の範囲において、「・・・を備える(comprising)」という語は、他の要素を排除せず、不定冠詞「a」または「an」は、複数であることを排除しない。単一のプロセッサまたはコントローラあるいは他のユニットが、特許請求の範囲に記載のいくつかの項目の機能を果たしてもよい。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0057】
本発明を図面および以上の説明において詳細に図示および説明してきたが、そのような図示および説明は、例示または典型であって、限定ではないと考えられるべきである。特許請求の範囲において、「・・・を備える(comprising)」という語は、他の要素を排除せず、不定冠詞「a」または「an」は、複数であることを排除しない。単一のプロセッサまたはコントローラあるいは他のユニットが、特許請求の範囲に記載のいくつかの項目の機能を果たしてもよい。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
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