IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ユニバンスの特許一覧

<>
  • 特許-トルク配分装置 図1
  • 特許-トルク配分装置 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】トルク配分装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 48/36 20120101AFI20240726BHJP
   F16H 48/08 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
F16H48/36
F16H48/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024504281
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(86)【国際出願番号】 JP2022009208
(87)【国際公開番号】W WO2023166680
(87)【国際公開日】2023-09-07
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000154347
【氏名又は名称】株式会社ユニバンス
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】加藤 忠彦
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-321435(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0158218(US,A1)
【文献】特開昭63-315327(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016218747(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 48/36
F16H 48/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸上に連結した第1の出力軸および第2の出力軸と、
前記中心軸を中心に自転する第1のサイドギヤと、
前記第1の出力軸が結合し前記中心軸を中心に自転する第2のサイドギヤと、
前記第1のサイドギヤ及び前記第2のサイドギヤにかみあい、前記中心軸に垂直な第1軸を中心に自転し前記中心軸の周りを公転する第1のピニオンと、
前記第1のピニオンと一体に前記第1軸を中心に自転し前記中心軸の周りを公転する第2のピニオンと、
前記第2のピニオンにかみあい、前記中心軸を中心に自転する第3のサイドギヤと、
前記第2の出力軸が結合し前記中心軸を中心に自転する第4のサイドギヤと、
前記第3のサイドギヤ及び前記第4のサイドギヤにかみあい、前記中心軸に直交する第2軸を中心に自転する第3のピニオンと、
前記第2のサイドギヤと前記第3のサイドギヤとの間の回転速度差を変化させる可変装置と、を備えるトルク配分装置。
【請求項2】
前記第2のサイドギヤに結合し前記中心軸を中心に自転する第5のサイドギヤと、
前記第5のサイドギヤ及び前記第3のサイドギヤにかみあう第4のピニオンと、を備え、
前記可変装置は、前記中心軸の周りに前記第4のピニオンを公転させる第2のモーターである請求項1記載のトルク配分装置。
【請求項3】
前記第3のサイドギヤは、前記第2のピニオンにかみあう歯面、前記第3のピニオンにかみあう歯面、及び、前記第4のピニオンにかみあう歯面が、前記第3のサイドギヤの歯幅方向に連続している請求項2記載のトルク配分装置。
【請求項4】
前記第2のモーターの回転速度を減速するギヤ機構と、
前記第1のサイドギヤにトルクを加える第1のモーターと、を備え、
前記ギヤ機構の一部は、前記中心軸に沿って延び、前記第1のモーターと前記第2のモーターとの間に位置する請求項2又は3に記載のトルク配分装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの出力軸のトルク配分を調整するトルク配分装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの出力軸に配分するトルクを調整するトルク配分装置として、特許文献1に開示された先行技術が知られている。先行技術は、同軸上に配置された2つの出力軸に沿って配置された5台の遊星歯車装置と、5台の遊星歯車装置のうち2台のリングギヤに減速機を介して取り付けられたモーターと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許発明第102014112602号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術は出力軸に沿って5台の遊星歯車装置が並ぶので、装置が大型化するという問題点がある。
【0005】
本発明はこの問題点を解決するためになされたものであり、装置を小さくできるトルク配分装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明のトルク配分装置は、中心軸上に連結した第1の出力軸および第2の出力軸と、中心軸を中心に自転する第1のサイドギヤと、第1の出力軸が結合し中心軸を中心に自転する第2のサイドギヤと、第1のサイドギヤ及び第2のサイドギヤにかみあい、中心軸に垂直な第1軸を中心に自転し中心軸の周りを公転する第1のピニオンと、第1のピニオンと一体に第1軸を中心に自転し中心軸の周りを公転する第2のピニオンと、第2のピニオンにかみあい、中心軸を中心に自転する第3のサイドギヤと、第2の出力軸が結合し中心軸を中心に自転する第4のサイドギヤと、第3のサイドギヤ及び第4のサイドギヤにかみあい、中心軸に直交する第2軸を中心に自転する第3のピニオンと、第2のサイドギヤと第3のサイドギヤとの間の回転速度差を変化させる可変装置と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
第1の態様によれば、第1のサイドギヤ及び第2のサイドギヤは中心軸を中心に自転し、第1の出力軸は第2のサイドギヤに結合する。第1のサイドギヤ及び第2のサイドギヤにかみあう第1のピニオンは、中心軸に垂直な第1軸を中心に自転し中心軸の周りを公転する。第2のピニオンは、第1のピニオンと一体に第1軸を中心に自転し中心軸の周りを公転する。第2のピニオンにかみあう第3のサイドギヤ、及び、第2の出力軸が結合する第4のサイドギヤは、中心軸を中心に自転する。第3のサイドギヤ及び第4のサイドギヤにかみあう第3のピニオンは、中心軸に直交する第2軸を中心に自転する。サイドギヤとピニオンとのかみあいによって装置が主に構成されるので、装置を小さくできる。
【0008】
第1のサイドギヤからトルクが入力されると、第3のサイドギヤは第2のサイドギヤと逆の向きに回転し、第3のピニオンによって、第4のサイドギヤは第3のサイドギヤと逆の向きに回転する。その結果、第4のサイドギヤは第2のサイドギヤと同じ向きに回転するので、第4のサイドギヤに結合する第2の出力軸は、第2のサイドギヤに結合する第1の出力軸と同じ向きに回転する。可変装置を作動すると第2のサイドギヤと第3のサイドギヤとの間の回転速度差が変化し、2つの出力軸に配分するトルクが変化する。よってトルク配分を調整できる。
【0009】
第2の態様によれば、第1の態様において、中心軸を中心に自転する第5のサイドギヤが第2のサイドギヤに結合し、第5のサイドギヤ及び第3のサイドギヤに第4のピニオンがかみあう。可変装置である第2のモーターを作動すると中心軸の周りに第4のピニオンが公転し、第2のサイドギヤと第3のサイドギヤとの間の回転速度差を変化させるトルクが加わる。この動作はサイドギヤとピニオンとのかみあいにより実現されるので、ヒステリシスがないに近い状態でトルクの大きさと方向を制御できる。
【0010】
第3の態様によれば、第2の態様において、第3のサイドギヤは、第2のピニオンにかみあう歯面、第3のピニオンにかみあう歯面、及び、第4のピニオンにかみあう歯面が、第3のサイドギヤの歯幅方向に連続している。これにより各ピニオンにかみあうサイドギヤをそれぞれ設けずに済むようにできる。
【0011】
第4の態様によれば、第2又は第3の態様において、第2のモーターの回転速度を減速するギヤ機構の一部は、中心軸に沿って延び、第1のサイドギヤにトルクを加える第1のモーターと第2のモーターとの間に位置する。これにより第1のモーター及び第2のモーターを含む範囲が過大にならないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施の形態におけるトルク配分装置のスケルトン図である。
図2】第1のモーター及び第2のモーターの位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は一実施の形態におけるトルク配分装置10のスケルトン図である。トルク配分装置10は2つの出力軸のトルク配分を調整する装置である。本実施形態では、自動車に配置されたトルク配分装置10を説明する。
【0014】
トルク配分装置10は、中心軸O上に連結した第1の出力軸11及び第2の出力軸12と、中心軸Oを中心に自転する第1のサイドギヤ13及び第2のサイドギヤ14と、第1のサイドギヤ13及び第2のサイドギヤ14にかみあう第1のピニオン15と、第1のピニオン15よりも中心軸Oの近くに配置された第2のピニオン16と、中心軸Oを中心に自転する第3のサイドギヤ18及び第4のサイドギヤ22と、第3のサイドギヤ18及び第4のサイドギヤ22にかみあう第3のピニオン23と、を備えている。
【0015】
トルク配分装置10は、さらに中心軸Oを中心に自転する第5のサイドギヤ30と、第5のサイドギヤ30及び第3のサイドギヤ18にかみあう第4のピニオン31と、第4のピニオン31にトルクを加える第2のモーター43と、を備えている。サイドギヤ13,14,18,22,30及びピニオン15,16,23,31はベベルギヤであり、ベベルギヤ同士のかみあいにより動力の伝達方向を変更する。第2のモーター43は、第2のサイドギヤ14と第3のサイドギヤ18との間の回転速度差を変える可変装置である。
【0016】
第1から第5のサイドギヤ13,14,18,22,30は、第1のサイドギヤ13、第4のサイドギヤ22、第5のサイドギヤ30、第3のサイドギヤ18及び第2のサイドギヤ14の順に、中心軸Oに沿って配置されている。第1のサイドギヤ13の外径は第4のサイドギヤ22の外径より大きく、第4のサイドギヤ22の外径は第5のサイドギヤ30の外径より大きい。第2のサイドギヤ14の外径は第3のサイドギヤ18の外径より大きい。
【0017】
第1のサイドギヤ13の歯面は、第4のサイドギヤ22に近いほど縮径しており、第4のサイドギヤ22の歯面は、第5のサイドギヤ30に近いほど縮径している。第5のサイドギヤ30の歯面は、第3のサイドギヤ18に近いほど縮径している。第2のサイドギヤ14の歯面は、第3のサイドギヤ18に近いほど縮径しており、第3のサイドギヤ18の歯面19,20,21は、第5のサイドギヤ30に近いほど縮径している。
【0018】
第1のサイドギヤ13に、中心軸Oと同軸に配置された被動ギヤ44が結合している。第1のモーター46が駆動する駆動ギヤ45が、被動ギヤ44にかみあう。これにより駆動ギヤ45及び被動ギヤ44を介して第1のモーター46のトルクが第1のサイドギヤ13に入力される。
【0019】
第1の出力軸11は、第2のサイドギヤ14に中心軸O上で結合し、かつ、第3のサイドギヤ18を中心軸Oに沿って貫通し第5のサイドギヤ30に中心軸O上で結合している。第2の出力軸12は、第1のサイドギヤ13を中心軸Oに沿って貫通し第4のサイドギヤ22に中心軸O上で結合している。第1の出力軸11及び第2の出力軸12は、中心軸O上に連結していれば、軸の全長に亘って同軸である必要はない。第1の出力軸11及び第2の出力軸12は、中心軸Oに対して角度があっても良い。
【0020】
第1の出力軸11及び第2の出力軸12には、それぞれ車輪47が取り付けられている。第1の出力軸11及び第2の出力軸12は自動車の駆動軸である。トルク配分装置10は、第1のモーター46が駆動する駆動ギヤ45の回転を減速して車輪47に伝えると共に、左右の車輪47の回転速度差を許容しつつ左右の車輪47にトルクを能動的に配分する。
【0021】
第2のピニオン16は第3のサイドギヤ18にかみあう。第2のピニオン16の外径は第1のピニオン15の外径より小さい。ピニオン15,16の歯面は、中心軸Oに近いほど縮径している。第2のピニオン16は、第1のピニオン15の歯数と異なる歯数を有する。サイドギヤ13,14,18,22,30及びピニオン15,16の歯数は、減速比などを考慮して適宜設定される。第1のピニオン15や第2のピニオン16の数は、第1のモーター46の最大トルク、自動車の重量や用途などにより1個または複数個がそれぞれ適宜設定される。
【0022】
第1軸17は、第1のピニオン15と第2のピニオン16とを連結している。第1軸17は中心軸Oに直交する。第1軸17によって連結された第1のピニオン15及び第2のピニオン16は、一体となって第1軸17を中心に自転し、一体となって中心軸Oの周りを公転する。
【0023】
第3のピニオン23は、第2のピニオン16よりも中心軸Oの近くに配置されている。第3のピニオン23の外径は第2のピニオン16の外径より小さい。第3のピニオン23の歯面は、中心軸Oに近いほど縮径している。第3のピニオン23は、中心軸Oに直交する第2軸24を中心に自転する。第2軸24は、第3のピニオン23に対して中心軸Oから離れる方向へ延びている。第2軸24は支持部25に配置されている。
【0024】
支持部25は、第2のピニオン16と第3のピニオン23との間に配置された第1部26と、第1のサイドギヤ13と第4のサイドギヤ22との間に配置された第2部27と、第1のサイドギヤ13を中心軸Oに沿って貫通する第3部28と、を備え、それらがつながっている。第1部26に第3のピニオン23の第2軸24が配置されている。第3部28はトルク配分装置10のケース29に固定されているので、支持部25は中心軸Oの周りの回転が規制されている。よって第3のピニオン23は中心軸Oの周りを公転できない。
【0025】
第1部26に取り付けられた第2軸24は、中心軸Oの周りを第1軸17が公転する軌跡を含む平面48上に位置する。第2軸24は、第2のピニオン16より中心軸Oの近くに位置するので、第2のピニオン16と中心軸Oとの間に、第3のピニオン23を配置するスペースを確保できる。また、平面48に対し中心軸Oの方向に延びる第3部28が設けられているので、第3部28を介して支持部25を容易にケース29に固定できる。
【0026】
第4のピニオン31は、第3のサイドギヤ18及び第5のサイドギヤ30にかみあう。第4のピニオン31は、第3のピニオン23よりも中心軸Oの近くに配置されている。第4のピニオン31の外径は第3のピニオン23の外径より小さい。第4のピニオン31の歯面は、中心軸Oに近いほど縮径している。ピニオン23,31の数は、第1のモーター46の最大トルク、自動車の重量や用途などにより1個または複数個が適宜設定される。
【0027】
本実施形態では、第3のサイドギヤ18は、第2のピニオン16にかみあう歯面19と、第3のピニオン23にかみあう歯面20と、第4のピニオン31にかみあう歯面21と、が第3のサイドギヤ18の歯幅方向に分かれている。これにより歯形の異なる歯面19,20,21をもつ第3のサイドギヤ18を簡易に製造できる。
【0028】
これに限らず、歯面19,20,21をもつ少なくとも2つ以上のサイドギヤを一体とし第3のサイドギヤ18としても良い。これにより歯形の異なる歯面19,20,21をもつ第3のサイドギヤ18を簡易に製造できる。また、歯面19,20,21が歯幅方向に連続した第3のサイドギヤ18としても良い。これにより第2のピニオン16にかみあう歯面19、第3のピニオン23にかみあう歯面20、及び、第4のピニオン31にかみあう歯面21を分けて設けずに済むようにできる。
【0029】
第4のピニオン31は、中心軸Oに直交する第3軸32を中心に自転する。第3軸32は、中心軸Oを中心に自転するデフケース33に取り付けられている。デフケース33には、中心軸Oと同軸のリングギヤ34が一体に設けられている。第2のモーター43のトルクは、ギヤ機構35を介してデフケース33に伝えられる。ギヤ機構35は、第2のモーター43の回転速度を減速する。
【0030】
ギヤ機構35は、最終減速ギヤであるリングギヤ34と、リングギヤ34にかみあう第1ギヤ36と、第1ギヤ36に連結軸37を介して結合する第2ギヤ38と、第2ギヤ38にかみあい中心軸Oと同軸上に配置された第3ギヤ39と、第3ギヤ39に連結軸40を介して結合する、中心軸Oと同軸上に配置された第4ギヤ41と、を備えている。第2のモーター43が駆動する駆動ギヤ42は第4ギヤ41にかみあう。第1ギヤ36は、第2のピニオン16と第4のピニオン31との間に配置されている。第2ギヤ38及び第3ギヤ39は、第1のサイドギヤ13と第4のサイドギヤ22との間に配置されている。
【0031】
連結軸37は中心軸Oに沿って配置されている。連結軸40は、中心軸Oに沿って第1のサイドギヤ13を貫通している。第4ギヤ41及び駆動ギヤ42と第1のサイドギヤ13との間に、被動ギヤ44及び駆動ギヤ45が配置されている。ギヤ機構35は平行軸歯車装置なので、かみあい損失を小さくできる。
【0032】
図2は、第1のモーター46及び第2のモーター43の位置を示す、中心軸Oの方向から見た図である。図2に示すように、中心軸Oは第1のモーター46と第2のモーター43との間に位置する。第1のモーター46と第2のモーター43との間に中心軸Oが位置するとは、中心軸Oに平行な平面49上に、第1のモーター46の回転軸の投影図51と第2のモーター43の回転軸の投影図50との間に中心軸Oの投影図52が位置するように、投影図法によって描くことができることをいう。
【0033】
トルク配分装置10は、ギヤ機構35のうち連結軸40が中心軸Oに沿って延び、第1のモーター46と第2のモーター43との間に中心軸Oが位置する。中心軸Oを挟んだ両側に第1のモーター46及び第2のモーター43がそれぞれ位置するので、中心軸Oを境にして片方に第1のモーター46及び第2のモーター43が位置する場合に比べ、第1のモーター46及び第2のモーター43を含む部分が占める範囲が過大にならないようにできる。
【0034】
トルク配分装置10は、第1のモーター46のトルクが第1のサイドギヤ13から入力されると、第1のピニオン15及び第2のピニオン16の自転および公転により各ギヤが回転し、第2のサイドギヤ14及び第4のサイドギヤ22にトルクを配分する。第3のサイドギヤ18は第2のサイドギヤ14と逆の向きに回転し、第2軸24を中心に自転する第3のピニオン23によって、第4のサイドギヤ22は第3のサイドギヤ18と逆の向きに回転する。その結果、第4のサイドギヤ22は第2のサイドギヤ14と同じ向きに回転するので、第4のサイドギヤ22に結合する第2の出力軸12は、第2のサイドギヤ14に結合する第1の出力軸11と同じ向きに回転する。これにより車輪47を駆動して自動車は走行する。
【0035】
自動車の旋回のとき等に第2のモーター43を作動すると、第2のサイドギヤ14と第3のサイドギヤ18との間の回転速度差が変化し、2つの出力軸11,12に配分するトルクが変化する。これにより自動車の旋回制御のパラメータである重心回りのヨーモーメントの制御ができる。
【0036】
トルク配分装置10は、第5のサイドギヤ30が第2のサイドギヤ14に結合し、第5のサイドギヤ30及び第3のサイドギヤ18に第4のピニオン31がかみあっている。第2のモーター43が作動していない状態では、第2のサイドギヤ14と第3のサイドギヤ18との間の回転速度差によって、第4のピニオン31は第3軸32を中心に自転するが、第3軸32を支持するデフケース33は回転が止まっているので、第2のモーター43に負荷が加わらないようにできる。
【0037】
第2のモーター43を作動するとギヤ機構35を介してデフケース33が回転し、第4のピニオン31は、第3軸32を中心に自転すると共に中心軸Oの周りを公転する。サイドギヤ18,30にかみあう第4のピニオン31の公転によって、第2のサイドギヤ14と第3のサイドギヤ18との間の回転速度差を変化させるトルクが加わる。この動作はサイドギヤ18,30とピニオン31とのかみあいにより実現されるので、ヒステリシスがないに近い状態でトルクの大きさと方向を制御し、正確に左右の車輪47に駆動力を能動的に配分できる。さらにデフケース33は第2のモーター43の小さいトルクで回転するので、第2のモーター43は最大トルクが小さいものを採用できる。
【0038】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明はこの実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0039】
実施形態では、第2のサイドギヤ14と第3のサイドギヤ18との間の回転速度差を変える可変装置が、モーター43の場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。他の可変装置としてはブレーキが例示される。可変装置がブレーキの場合、第5のサイドギヤ30、第4のピニオン31、第3軸32、デフケース33、ギヤ機構35及び第2のモーター43に代えて、第2のサイドギヤ14と一体に回転する運動体と、第3のサイドギヤ18と一体に回転する運動体と、を設ける。ブレーキを作動することにより運動体と静止体との相互作用によって運動体を減速し、第2のサイドギヤ14と第3のサイドギヤ18との間の回転速度差を変える。
【0040】
実施形態では、第1の出力軸11及び第2の出力軸12にそれぞれ車輪47が取り付けられる場合、すなわち自動車の左右に延びる駆動軸にトルク配分装置10が設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1の出力軸11及び第2の出力軸12を自動車の前後に延びるように配置し、前後に延びる駆動軸(プロペラシャフト)にトルク配分装置10を設けることは当然可能である。この場合、トルク配分装置10は前後輪間のトルク配分を調整する。
【0041】
実施形態では、第1のサイドギヤ13にモーター46の駆動力が加えられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1のサイドギヤ13にエンジンの駆動力が加えられるようにすることは当然可能である。この場合、エンジンと第1のサイドギヤ13との間に変速機を介在させることは当然可能である。
【符号の説明】
【0042】
10 トルク配分装置
11 第1の出力軸
12 第2の出力軸
13 第1のサイドギヤ
14 第2のサイドギヤ
15 第1のピニオン
16 第2のピニオン
17 第1軸
18 第3のサイドギヤ
19,20,21 歯面
22 第4のサイドギヤ
23 第3のピニオン
24 第2軸
30 第5のサイドギヤ
31 第4のピニオン
35 ギヤ機構
43 第2のモーター(可変装置)
46 第1のモーター
図1
図2