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特許7527541情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G09C 1/00 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
G09C1/00 610A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022546765
(86)(22)【出願日】2020-09-02
(86)【国際出願番号】 JP2020033183
(87)【国際公開番号】W WO2022049655
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513099603
【氏名又は名称】兵庫県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】峯松 一彦
(72)【発明者】
【氏名】五十部 孝典
(72)【発明者】
【氏名】阪本 光星
【審査官】松平 英
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/087972(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/026624(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/132622(WO,A1)
【文献】阪本 光星 他,複数線形層を用いた低遅延ブロック暗号の構成方法,2020年 暗号と情報セキュリティシンポジウム予稿集,日本,電子情報通信学会情報セキュリティ(ISEC)研究会,2020年01月21日,2B2-2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F12/14
21/00-21/10
21/30-21/46
21/60-21/88
G09C 1/00-5/00
H04K 1/00-3/00
H04L 9/00-9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
128ビットを1ブロックの単位として平文の入力を受付ける入力受付手段と、
1ブロック分の前記平文を最初の入力として、第一の置換処理をa回(ただし、aは所定の整数)繰り返して、第一の中間文を出力する第一の置換処理手段と、
前記第一の中間文を最初の入力として、第二の置換処理をb回(ただし、bは所定の整数)繰り返して、第二の中間文を出力する第二の置換処理手段と、
前記第二の中間文を入力として暗号文を出力する終端処理を行う終端処理手段と
を有し、
前記第一の置換処理は、
入力に対して、ラウンド鍵とラウンド定数とを加算する加算処理と、
入力に対して、ニブルごとに、4ビットの入力を4ビットの出力に変換する非線形関数である4ビットS-boxを適用するS-box処理と、
入力をビット単位で並び替えるビット置換処理と、
入力を4ニブルごとに8つのワードに分けて、各ワードに対して、4行4列のAlmost MDS行列変換を適用する行列積処理と
を順番に行う置換処理であり、
前記第二の置換処理は、
前記加算処理と、
前記S-box処理と、
入力をニブル単位で並び替えるニブル置換処理と、
前記行列積処理と
を順番に行う置換処理であり、
前記終端処理は、
前記S-box処理と、
前記加算処理と
を順番に行う置換処理である
情報処理装置。
【請求項2】
前記ビット置換処理は、
入力32ニブルをX(1),...,X(32)とし、出力32ニブルをY(1),...,Y(32)とし、出力を4ニブルごとにまとめてW(1)=[Y(1),Y(2),Y(3),Y(4)], W(2)=[Y(5),Y(6),Y(7),Y(8)], ... ,W(8)=[Y(29),Y(30),Y(31),Y(32)]とし、入力X(i)の4ビットB(i,1),B(i,2),B(i,3),B(i,4)がマップされたニブルをそれぞれY(a), Y(b), Y(c), Y(d)とし(ただし、a, b, c, dは、いずれも1以上32以下の整数)、これらの4ニブルが所属するW(j)からY(a), Y(b), Y(c), Y(d)を除いた12ニブルをY(j[1]), Y(j[2]), ..., Y(j[12])とすると(ただし、j[1], j[2], j[12]は、いずれも1以上32以下の整数)、以下の第一の条件及び第二の条件を満たす並び替えを行う処理である
請求項1に記載の情報処理装置。
(第一の条件)
すべてのi=1,...,32について、入力X(i)の4ビットB(i,1),B(i,2),B(i,3),B(i,4)がすべて異なるW(j) (j = 1,...,8)へマップされる。
(第二の条件)
入力X(1),...,X(32)におけるニブルの位置がY(1),...,Y(32)におけるY(j[1]), Y(j[2]), ...., Y(j[12])の位置と対応している、入力の12ニブルX(j[1]), X(j[2]), ...., X(j[12])のマップによって、W(1),...,W(8)のすべてにおいて2ニブル以上がカバーされる。
【請求項3】
前記ニブル置換処理は、
Active S-box数が所定値以上になるために必要とされる当該ニブル置換処理のラウンド数が所定条件を満たす処理である
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
同一の平文に対する異なる前記暗号文である第一の暗号文と第二の暗号文を入力として、前記第一の暗号文と前記第二の暗号文を加算して、疑似乱数として出力する加算手段を
さらに有する
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第一の暗号文は、前記ニブル置換処理として第一の所定の並び替えを行うことにより得られる前記暗号文であり、前記第二の暗号文は、前記ニブル置換処理として第二の所定の並び替えを行うことにより得られる前記暗号文であり、
入力のビット列に対して4ビット毎に順番に0から31までのインデックスを付与して、当該インデックスの並びの変更により前記第一の所定の並び替えを表現した場合、前記第一の所定の並び替えによる前記ニブル置換処理は、入力時のインデックスの並びが(0,1,...,31)であり、出力時のインデックスの並びが(10,27,5,1,30,23,16,13,21,31,6,14,0,25,11,18,15,28,19,24,7,8,22,3,4,29,9,2,26,20,12,17)である処理であり、
入力のビット列に対して4ビット毎に順番に0から31までのインデックスを付与して、当該インデックスの並びの変更により前記第二の所定の並び替えを表現した場合、前記第二の所定の並び替えによる前記ニブル置換処理は、入力時のインデックスの並びが(0,1,...,31)であり、出力時のインデックスの並びが(26,13,7,11,29,0,17,21,23,5,18,25,12,10,28,2,14,19,24,22,1,8,4,31,15,6,27,9,16,30,20,3)である処理である
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
情報処理装置が、128ビットを1ブロックの単位として平文の入力を受付け、
前記情報処理装置が、1ブロック分の前記平文を最初の入力として、第一の置換処理をa回(ただし、aは所定の整数)繰り返して、第一の中間文を出力し、
前記情報処理装置が、前記第一の中間文を最初の入力として、第二の置換処理をb回(ただし、bは所定の整数)繰り返して、第二の中間文を出力し、
前記情報処理装置が、前記第二の中間文を入力として暗号文を出力する終端処理を行い、
前記第一の置換処理は、
入力に対して、ラウンド鍵とラウンド定数とを加算する加算処理と、
入力に対して、ニブルごとに、4ビットの入力を4ビットの出力に変換する非線形関数である4ビットS-boxを適用するS-box処理と、
入力をビット単位で並び替えるビット置換処理と、
入力を4ニブルごとに8つのワードに分けて、各ワードに対して、4行4列のAlmost MDS行列変換を適用する行列積処理と
を順番に行う置換処理であり、
前記第二の置換処理は、
前記加算処理と、
前記S-box処理と、
入力をニブル単位で並び替えるニブル置換処理と、
前記行列積処理と
を順番に行う置換処理であり、
前記終端処理は、
前記S-box処理と、
前記加算処理と
を順番に行う置換処理である
情報処理方法。
【請求項7】
128ビットを1ブロックの単位として平文の入力を受付ける入力受付ステップと、
1ブロック分の前記平文を最初の入力として、第一の置換処理をa回(ただし、aは所定の整数)繰り返して、第一の中間文を出力する第一の置換処理ステップと、
前記第一の中間文を最初の入力として、第二の置換処理をb回(ただし、bは所定の整数)繰り返して、第二の中間文を出力する第二の置換処理ステップと、
前記第二の中間文を入力として暗号文を出力する終端処理を行う終端処理ステップと
をコンピュータに実行させ、
前記第一の置換処理は、
入力に対して、ラウンド鍵とラウンド定数とを加算する加算処理と、
入力に対して、ニブルごとに、4ビットの入力を4ビットの出力に変換する非線形関数である4ビットS-boxを適用するS-box処理と、
入力をビット単位で並び替えるビット置換処理と、
入力を4ニブルごとに8つのワードに分けて、各ワードに対して、4行4列のAlmost MDS行列変換を適用する行列積処理と
を順番に行う置換処理であり、
前記第二の置換処理は、
前記加算処理と、
前記S-box処理と、
入力をニブル単位で並び替えるニブル置換処理と、
前記行列積処理と
を順番に行う置換処理であり、
前記終端処理は、
前記S-box処理と、
前記加算処理と
を順番に行う置換処理である
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムが格納された非一時的なコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般の共通鍵暗号化方式について、遅延(レイテンシ、latency)という評価指標がある。これは処理を開始してから最初の出力結果が出るまでの時間を指すものであり、小さいほうが望ましい。例えばコンピュータ内部のメモリバスの保護や、リアルタイム処理が求められる通信、例えばオンラインゲームや無人機の制御など、では特に遅延が問題となるため、低遅延であることが望ましい。これらのアプリケーションの中でも、メモリの保護は特に普及が進んでおり、例えば近年のCPU(Central Processing Unit)では、非特許文献1に代表されるように、メモリの暗号化と改ざん検知機能を有するものがある。
【0003】
暗号化の場合、遅延は、複数ブロックからなる平文を入力した際に、最初の暗号文ブロックが出るまでの時間ないし処理量のことを指す。暗号化処理の時間当たりの処理量(スループット)は、ハードウェアでの処理の並列化などにより向上可能である。一方、遅延を下げるためには並列化は有効でない。遅延を下げるためには、暗号化処理内部のループ処理を展開した、フルアンロールド(full unrolled)実装が一般的である。このとき、遅延はフルアンロールド実装の回路のクリティカルパスの長さによって決まる。
【0004】
低遅延を目的とした暗号化処理の例として、非特許文献2のブロック暗号PRINCEがある。PRINCEは、64-bitブロックの軽量ブロック暗号の一種である。しかし、通常の軽量ブロック暗号が比較的シンプルなラウンド関数を数多く繰り返すのに対して、PRINCEは、比較的処理の多いラウンド関数を用い、かつ暗号化処理の中盤で鍵なしの置換層の処理を入れるなどの工夫がされている。これにより、少ないラウンド数で安全性を確保し、結果的に遅延を少なくすることに成功している。
【0005】
また、非特許文献3の軽量ブロック暗号Midoriは、64-bitブロックと128-bitブロックのバージョンを持つブロック暗号であり、もともとは省エネルギーを目的とした設計であるが、ラウンド数が比較的少なく低遅延暗号としてもすぐれている。
【0006】
また、非特許文献4のQARMAは軽量な可撚ブロック暗号(tweakable block cipher)であり、メモリの暗号化を目的として開発された低遅延暗号である。
【0007】
その他の関連する技術として、非特許文献5は、ブロック暗号の暗号利用モードであるGCMモードについて開示してる。また、非特許文献6は、高い安全性を持つ疑似ランダム関数(Pseudorandom Function, PRF)について開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】S. Gueron,“A Memory Encryption Engine Suitable for General Purpose Processors”, Cryptology ePrint Archive: Report 2016/204, February 2016.
【文献】J. Borghoff et al., “PRINCE - A Low-latency Block Cipher for Pervasive Computing Applications”(Full version), Cryptology ePrint Archive: Report 2012/529, September 2012.
【文献】S. Banik et al., “Midori: A Block Cipher for Low Energy”(Extended Version), Cryptology ePrint Archive: Report 2015/1142, November 2015.
【文献】R. Avanzi, “The QARMA Block Cipher Family: Almost MDS Matrices Over Rings With Zero Divisors, Nearly Symmetric Even-Mansour Constructions With Non-Involutory Central Rounds, and Search Heuristics for Low-Latency S-Boxes”, Cryptology ePrint Archive: Report 2016/444, May 2016.
【文献】M. Dworkin, “Recommendation for Block Cipher Modes of Operation: Galois/Counter Mode (GCM) and GMAC”,NIST Special Publication 800-38D, November 2007.
【文献】W. Dai et al., “Information-theoretic Indistinguishability via the Chi-squared Method”, Cryptology ePrint Archive: Report 2017/537, June 2017.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
PRINCEは64-bitブロック暗号であるため入力幅が64 bitであり、一般的な暗号利用モードの下では、いわゆるバースデー攻撃を避けるために、おおよそO(2^32)ブロックを処理した段階で鍵を更新する必要がある。これはメモリの保護などといった、高速に大量のデータを処理するアプリケーションでは実用上の困難をもたらす。
【0010】
Midoriの128-bit入力幅のバージョン(Midori-128)や、QARMAの128-bit入力幅のバージョンは低遅延であるものの、ブロックサイズが大きいこともあり、低遅延についてPRINCEには及ばない。
【0011】
そこで、128ビットの入力幅を持ち、低遅延性に優れた暗号プリミティブが重要となる。128-bitブロック暗号であれば上述のバースデー攻撃に必要なデータ量はO(2^64)ブロックになり大幅に安全性があがる。
【0012】
本開示はこのような問題点を解決するためになされたものであり、低遅延かつ大きい入力幅を持つ暗号化処理を実現できる情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の第1の態様にかかる情報処理装置は、
128ビットを1ブロックの単位として平文の入力を受付ける入力受付手段と、
1ブロック分の前記平文を最初の入力として、第一の置換処理をa回(ただし、aは所定の整数)繰り返して、第一の中間文を出力する第一の置換処理手段と、
前記第一の中間文を最初の入力として、第二の置換処理をb回(ただし、bは所定の整数)繰り返して、第二の中間文を出力する第二の置換処理手段と、
前記第二の中間文を入力として暗号文を出力する終端処理を行う終端処理手段と
を有し、
前記第一の置換処理は、
入力に対して、ラウンド鍵とラウンド定数とを加算する加算処理と、
入力に対して、ニブルごとに、4ビットの入力を4ビットの出力に変換する非線形関数である4ビットS-boxを適用するS-box処理と、
入力をビット単位で並び替えるビット置換処理と、
入力を4ニブルごとに8つのワードに分けて、各ワードに対して、4行4列のAlmost MDS行列変換を適用する行列積処理と
を順番に行う置換処理であり、
前記第二の置換処理は、
前記加算処理と、
前記S-box処理と、
入力をニブル単位で並び替えるニブル置換処理と、
前記行列積処理と
を順番に行う置換処理であり、
前記終端処理は、
前記S-box処理と、
前記加算処理と
を順番に行う置換処理である。
【0014】
本開示の第2の態様にかかる情報処理方法では、
128ビットを1ブロックの単位として平文の入力を受付け、
1ブロック分の前記平文を最初の入力として、第一の置換処理をa回(ただし、aは所定の整数)繰り返して、第一の中間文を出力し、
前記第一の中間文を最初の入力として、第二の置換処理をb回(ただし、bは所定の整数)繰り返して、第二の中間文を出力し、
前記第二の中間文を入力として暗号文を出力する終端処理を行い、
前記第一の置換処理は、
入力に対して、ラウンド鍵とラウンド定数とを加算する加算処理と、
入力に対して、ニブルごとに、4ビットの入力を4ビットの出力に変換する非線形関数である4ビットS-boxを適用するS-box処理と、
入力をビット単位で並び替えるビット置換処理と、
入力を4ニブルごとに8つのワードに分けて、各ワードに対して、4行4列のAlmost MDS行列変換を適用する行列積処理と
を順番に行う置換処理であり、
前記第二の置換処理は、
前記加算処理と、
前記S-box処理と、
入力をニブル単位で並び替えるニブル置換処理と、
前記行列積処理と
を順番に行う置換処理であり、
前記終端処理は、
前記S-box処理と、
前記加算処理と
を順番に行う置換処理である。
【0015】
本開示の第3の態様にかかるプログラムは、
128ビットを1ブロックの単位として平文の入力を受付ける入力受付ステップと、
1ブロック分の前記平文を最初の入力として、第一の置換処理をa回(ただし、aは所定の整数)繰り返して、第一の中間文を出力する第一の置換処理ステップと、
前記第一の中間文を最初の入力として、第二の置換処理をb回(ただし、bは所定の整数)繰り返して、第二の中間文を出力する第二の置換処理ステップと、
前記第二の中間文を入力として暗号文を出力する終端処理を行う終端処理ステップと
をコンピュータに実行させ、
前記第一の置換処理は、
入力に対して、ラウンド鍵とラウンド定数とを加算する加算処理と、
入力に対して、ニブルごとに、4ビットの入力を4ビットの出力に変換する非線形関数である4ビットS-boxを適用するS-box処理と、
入力をビット単位で並び替えるビット置換処理と、
入力を4ニブルごとに8つのワードに分けて、各ワードに対して、4行4列のAlmost MDS行列変換を適用する行列積処理と
を順番に行う置換処理であり、
前記第二の置換処理は、
前記加算処理と、
前記S-box処理と、
入力をニブル単位で並び替えるニブル置換処理と、
前記行列積処理と
を順番に行う置換処理であり、
前記終端処理は、
前記S-box処理と、
前記加算処理と
を順番に行う置換処理である。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、低遅延かつ大きい入力幅を持つ暗号化処理を実現できる情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態の概要にかかる情報処理装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2】実施の形態1にかかる情報処理装置の構成の一例を示す模式図である。
図3】第一の条件について説明する模式図である。
図4】第二の条件について説明する模式図である。
図5】実施の形態1にかかる情報処理装置の動作の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】第一の置換処理のラウンド関数(ただし、入力に対するラウンド鍵とラウンド定数の加算処理を除く)を示す模式図である。
図7】第二の置換処理のラウンド関数(ただし、入力に対するラウンド鍵とラウンド定数の加算処理を除く)を示す模式図である。
図8】比較例のラウンド関数(ただし、入力に対するラウンド鍵とラウンド定数の加算処理を除く)を示す模式図である。
図9】実施の形態2にかかる情報処理装置の構成の一例を示す模式図である。
図10】実施の形態2にかかる情報処理装置の動作の流れの一例を示すフローチャートである。
図11】コンピュータの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施の形態の概要>
実施形態の詳細を説明する前に、まず、実施形態の概要について説明する。図1は、実施形態の概要にかかる情報処理装置10の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、情報処理装置10は、入力受付部11と、第一の置換処理部12と、第二の置換処理部13と、終端処理部14とを有する。
【0019】
入力受付部11は、128ビットを1ブロックの単位として平文の入力を受付ける。第一の置換処理部12は、入力受付部11が受付けた1ブロック分の平文を最初の入力として、第一の置換処理をa回繰り返して、第一の中間文を出力する。なお、aは任意の所定の整数である。第二の置換処理部13は、第一の置換処理部12が出力した第一の中間文を最初の入力として、第二の置換処理をb回繰り返して、第二の中間文を出力する。なお、bは任意の所定の整数である。終端処理部14は、第二の置換処理部13が出力した第二の中間文を入力として暗号文を出力する終端処理を行う。
【0020】
ここで、上述した第一の置換処理は、加算処理、S-box処理、ビット置換処理、及び行列積処理を順番に行う置換処理である。これらの処理は、具体的には次のような処理である。加算処理は、入力に対して、ラウンド鍵とラウンド定数とを加算する処理である。S-box処理は、入力に対して、ニブルごとに、4ビットS-boxを適用する処理である。なお、4ビットS-boxは、4ビットの入力を4ビットの出力に変換する非線形関数である。ビット置換処理は、入力をビット単位で並び替える処理である。行列積処理は、入力を4ニブルごとに8つのワードに分けて、各ワードに対して、4行4列のAlmost MDS行列変換を適用する処理である。
【0021】
また、上述した第二の置換処理は、加算処理、S-box処理、ニブル置換処理、及び行列積処理を順番に行う置換処理である。第二の置換処理で行われる加算処理、S-box処理、及び行列積処理は、第一の置換処理で行われる処理と同様の処理である。第二の置換処理では、第一の置換処理と異なり、ビット置換処理の代わりに、ニブル置換処理が行われる。ニブル置換処理は、入力をニブル単位で並び替える処理である。
【0022】
また、上述した終端処理は、S-box処理及び加算処理を順番に行う置換処理である。終端処理で行われるS-box処理及び加算処理は、第一の置換処理で行われる処理と同様の処理である。
【0023】
このような構成を備える情報処理装置10によれば、低遅延かつ大きい入力幅を持つ暗号化処理を実現できる。
【0024】
次に、実施形態の詳細について説明する。
<実施の形態1>
図2は、実施の形態1にかかる情報処理装置100の構成の一例を示す模式図である。情報処理装置100は、図2に示すように、入力受付部110と、第一の置換処理部120と、第二の置換処理部130と、終端処理部140と、出力制御部150とを有する。ここで、入力受付部110、第一の置換処理部120、第二の置換処理部130、終端処理部140は、図1に示した入力受付部11、第一の置換処理部12、第二の置換処理部13、終端処理部14と対応している。本実施の形態にかかる情報処理装置100は、ブロック暗号化装置とも称される。また、本実施の形態では、1ブロックの長さは128ビットである。したがって、情報処理装置100は、入力幅が128ビットのブロック暗号化装置である。
【0025】
入力受付部110は、情報処理装置100に対する入力を受付けるハードウェア回路である。入力受付部110は、例えばキーボードなどの入力装置を介して入力されたデータを受付ける。本実施の形態において、入力受付部110は、平文Mの入力を受付ける。入力受付部110は、128ビットを1ブロックの単位として、平文の入力を受付ける。
【0026】
第一の置換処理部120は、ブロックを処理単位として、処理を行う。第一の置換処理部120は、入力受付部110が受付けた1ブロック分の平文を最初の入力として、第一の置換処理をa回繰り返して、第一の中間文S1を出力するハードウェア回路である。繰り返される第一の置換処理における2回目以降では、前回の第一の置換処理の処理結果が第一の置換処理の入力に用いられる。ここで、繰り返し回数を規定するaの値は予め定められている。
【0027】
第一の置換処理部120は、第一の置換処理として、具体的には、まず、加算処理161を行ない、次に、S-box処理162を行ない、次に、ビット置換処理163を行ない、最後に行列積処理164を行う。
【0028】
加算処理161は、入力に対して、ラウンド鍵とラウンド定数とを加算する処理である。ここで、加算処理161の入力は128ビットのデータである。以下、加算処理161について具体的に説明する。加算処理161では、128ビットの入力Xと、秘密鍵Kと、ループのカウンタiとを用いて、次のような処理が行われる。まず、加算処理161では、秘密鍵Kとカウンタiにより決まる値であるラウンド鍵K_iが導出されるとともに、カウンタiより決まる値であるラウンド定数c_iが導出される。秘密鍵Kとカウンタiとから算出されるラウンド鍵K_iと、カウンタiから算出されるラウンド定数c_iの長さは高々128ビットであり、128ビットに満たないビット数である場合には、ゼロパディングにより128ビットとなるよう調整される。秘密鍵Kは、入力受付部110により受付けられたものであってもよいし、情報処理装置100が予め記憶している所定の鍵データが用いられてもよい。秘密鍵Kは、例えば128ビット又は256ビットの任意のビット列であるが、秘密鍵Kのビット数はこれらに限られない。カウンタiは、ループ回数、すなわち処理の繰り返し回数を表すカウンタであり、第一の置換処理として加算処理161が行われる場合、例えば、i = 1,2,...,aである。なお、後述する通り、加算処理161は、第二の置換処理として行われる場合もあり、この場合、例えば、i = 1,2,...,bである。
【0029】
本実施の形態では、例えば、ラウンド鍵K_iとラウンド定数c_iは次のように導出される。本実施の形態では、秘密鍵Kは128ビットであり、ラウンド鍵K_iは、カウンタiが偶数なら秘密鍵Kの前半64ビットであり、奇数なら後半64ビットである。また、ラウンド定数c_iは円周率(3.14159...)のビット表現から、カウンタiの値に応じて抜き出された4ビットである。ただし、これらは、例に過ぎず、ラウンド鍵K_iとラウンド定数c_iは他の導出方法により導出されてもよい。
【0030】
そして、加算処理161では、次に、入力Xへラウンド定数c_iとラウンド鍵K_iを加算する処理が行われる。なお、この加算は、例えば、排他的論理和であるが、算術加算などであってもよい。加算処理161では、この加算結果として128ビットのデータ列が出力される。
【0031】
S-box処理162は、入力に対して、4ビットの非線形関数である4ビットS-boxを並列に適用する処理である。本実施の形態では入力は128ビットなので、S-box処理162では32個の4ビットS-boxが並列に適用される。このように、S-box処理162では、入力に対して、ニブルごとに、4ビットS-boxが適用される。そして、S-box処理162は、128ビットのデータ列を出力する。S-boxは4ビットの範囲で全拡散(full diffusion)することが求められる。すなわち、S-boxの4ビットの入力をxとし、S-boxの4ビットの出力をyとすると、yの各ビットがxの全ビットに依存していることが求められる。換言すると、x[i]をxのi番目ビットとし、y[i]をyのi番目ビットとすると、y[i]がx[1],x[2],x[3],x[4]の全てを用いた論理式で表現されていることが求められる。そのようなS-boxとして、任意のS-boxを用いることが可能であるが、一例として、以下の表のような置換として定義される、MidoriのSb1を用いてもよい。なお、以下の表では、入力xと出力Sb1(x)が16進表記されている。
【0032】
【表1】
【0033】
ビット置換処理163は、入力をビット単位で並び替える処理であり、入力された128ビット(すなわち、32ニブル)のデータ列を並び替えて、128ビットのデータ列を出力する。加算処理161、S-box処理162、ビット置換処理163、及び行列積処理164からなるループを1ラウンドとすると、ビット置換が拡散性能に関して最適であれば、2.5ラウンドで128ビットのデータが全拡散することが示せる。ここで、2.5ラウンドとは、3ラウンド目の途中まで行うこと、より詳細には、3ラウンド目の加算処理161及びS-box処理162までを行うことを指す。このため、第一の置換処理の繰り返し回数aの値は3であってもよい。2.5ラウンドでの全拡散を保証するためには、以下の2条件を満たせばよい。ここで、入力32ニブルをX(1), ... ,X(32)とし、出力32ニブルをY(1), ... ,Y(32)とし、さらに出力を4ニブルごとにまとめてW(1) = [Y(1), Y(2), Y(3), Y(4)], W(2) = [Y(5), Y(6), Y(7), Y(8)], ... ,W(8) = [Y(29), Y(30), Y(31), Y(32)]とする。また、入力X(i)の4ビットB(i,1),B(i,2),B(i,3),B(i,4)がマップされたニブルをそれぞれY(a), Y(b), Y(c), Y(d)とし(ただし、a, b, c, dは、いずれも1以上32以下の整数)とする。そして、これら(すなわち、Y(a), Y(b), Y(c), Y(d))の4ニブルが所属するW(j)からY(a), Y(b), Y(c), Y(d)を除いた12ニブルをY(j[1]), Y(j[2]), ..., Y(j[12])とする(ただし、j[1], j[2], j[12]は、いずれも1以上32以下の整数)。
【0034】
2.5ラウンドでの全拡散を保証するためのビット置換処理163は、以下の第一の条件及び第二の条件を満たす並び替えを行う処理である。
【0035】
(第一の条件)
すべてのi=1,...,32について、入力X(i)の4ビットB(i,1),B(i,2),B(i,3),B(i,4)がすべて異なるW(j) (j = 1,...,8)へマップされる。
【0036】
(第二の条件)
入力X(1),...,X(32)におけるニブルの位置がY(1),...,Y(32)におけるY(j[1]), Y(j[2]), ...., Y(j[12])の位置と対応している、入力の12ニブルX(j[1]), X(j[2]), ...., X(j[12])のマップによって、W(1),...,W(8)のすべてにおいて2ニブル以上がカバーされる。
すなわち、入力の12ニブルX(j[1]), X(j[2]), ...., X(j[12])をマップしたときに、W(1),...,W(8)のそれぞれにおいて、W(j) (j = 1,...,8)を構成する4つのY(k), Y(k+1), Y(k+2), Y(k+3) (k=1,5,9,13,17, 21, 25, 29)のうちの2つ以上がマップ先として選ばれる。
【0037】
図3は、第一の条件について説明する模式図である。図3では、S-box処理162において並列に適用される32個のS-box170と、後述する行列積処理164において並列に適用される8個の行列171が図示されており、ビット置換処理163がS-box170の出力から行列171の入力へ延びる矢印として表されている。ここで、各S-box170による合計32ニブルの出力は、ビット置換処理163における32ニブルの入力X(1), ... ,X(32)に対応している。また、各行列171における合計32ニブルの入力は、ビット置換処理163における32ニブルの出力Y(1), ... ,Y(32)に対応している。
【0038】
上述した通り、第一の条件を満たす並び替えでは、各S-box170の出力4ビットが異なる行列171の入力へマップされる。図3では、図の見やすさを損なわないよう、左端のS-box170から出力された4ビット(X(1))のマップ先だけを示している。この例では、X(1)の1つ目のビットB(1,1)がW(1)を構成するY(1)にマップされ、X(1)の2つ目のビットB(1,2)がW(2)を構成するY(6)にマップされ、X(1)の3つ目のビットB(1,3)がW(4)を構成するY(15)にマップされ、X(1)の4つ目のビットB(1,4)がW(5)を構成するY(18)にマップされている。
【0039】
図4は、第二の条件について説明する模式図である。図4でも、図3と同様、S-box処理162において並列に適用される32個のS-box170と、後述する行列積処理164において並列に適用される8個の行列171が図示されている。そして、ビット置換処理163がS-box170の出力から行列171の入力へ延びる矢印として表されている。
【0040】
上述した通り、第二の条件を満たす並び替えでは、入力の12ニブルX(j[1]), X(j[2]), ...., X(j[12])のマップによって、W(1),...,W(8)のすべてにおいて2ニブル以上がカバーされる。ここで、12ニブルX(j[1]), X(j[2]), ...., X(j[12])は、入力X(1),...,X(32)におけるニブルの位置がY(1),...,Y(32)におけるY(j[1]), Y(j[2]), ...., Y(j[12])の位置と対応しているX(i)である。そして、上述の通り、Y(j[1]), Y(j[2]), ...., Y(j[12])は、入力X(i)の4ビットB(i,1),B(i,2),B(i,3),B(i,4)がマップされたニブルY(a), Y(b), Y(c), Y(d)が所属するW(j)からY(a), Y(b), Y(c), Y(d)を除いた12ニブルである。
【0041】
図4では、入力X(i)の4ビットB(i,1),B(i,2),B(i,3),B(i,4)として、入力X(1)の4ビットB(1,1),B(1,2),B(1,3),B(1,4)を考えた場合の例を示している。図4に示した例では、Y(a), Y(b), Y(c), Y(d)は、破線の矢印で示されるマップ先のニブルであり、具体的には、Y(1)、Y(6)、Y(15)、Y(18)である。そして、Y(j[1]), Y(j[2]), ...., Y(j[12])は、ニブルY(1), Y(6), Y(15), Y(18)が所属するW(j)からY(1), Y(6), Y(15), Y(18)を除いた12ニブルである。Y(1)はW(1)に所属し、Y(6)はW(2)に所属し、Y(15)はW(4)に所属し、Y(18)はW(5)に所属しているため、Y(j[1]), Y(j[2]), ...., Y(j[12])は、具体的には、Y(2), Y(3), Y(4), Y(5), Y(7), Y(8), Y(13), Y(14), Y(16), Y(17), Y(19), Y(20)である。よって、12ニブルX(j[1]), X(j[2]), ...., X(j[12])は、具体的には、X(2), X(3), X(4), X(5), X(7), X(8), X(13), X(14), X(16), X(17), X(19), X(20)である。
【0042】
したがって、第二の条件を満たすためには、図4に示すように、入力の12ニブルX(2), X(3), X(4), X(5), X(7), X(8), X(13), X(14), X(16), X(17), X(19), X(20)のマップによって、W(1),...,W(8)のすべてにおいて2ニブル以上がカバーされる必要がある。なお、図4では、X(2), X(3), X(4), X(5), X(7), X(8), X(13), X(14), X(16), X(17), X(19), X(20)のマップは、太線の矢印で示されているが、図の見やすさを損なわないよう、一部のビットのマップだけを示している。すなわち、例えば、X(2)(左から2番目のS-boxの出力)のマップとして、具体的にはX(2)の4ビットのそれぞれのマップが存在するが、図4ではそのうちの1つのマップのみを図示している。図4に示した例では、X(i)(i=2,3,4,5,7,8,13,14,16,17,19,20)のマップにより、W(1)を構成する4つのY(1), Y(2), Y(3), Y(4)のうちの少なくともY(1)及びY(3)がマップ先として選択されている。すなわち、W(1)を構成する4つのY(1), Y(2), Y(3), Y(4)のうち2つ以上がマップ先として選ばれている。同様に、図4に示すように、W(2), W(3), W(4), W(5), W(6), W(7), W(8)についても、W(j)を構成する4つのY(k), Y(k+1), Y(k+2), Y(k+3)のうち2つ以上がマップ先として選ばれている。
【0043】
行列積処理164は、入力を4ニブルごとに8つのワードに分けて、各ワードに対して、4行4列のAlmost MDS行列変換を適用し、合計128ビットのデータ列を出力する処理である。第一の置換処理として行われる行列積処理164では、上述したビット置換処理163の出力Y(1), ... ,Y(32)を8つに分けたワードW(1),...,W(8)のそれぞれに対して、Almost MDS行列変換が行われる。なお、後述する通り、行列積処理164は、第二の置換処理として行われる場合もあり、この場合、ニブル置換処理165の出力を4ニブルごとに8つに分けたワードのそれぞれに対して、Almost MDS行列変換が行われる。
【0044】
Almost MDS行列への入力がA = (a_1,a_2,a_3,a_4)(ただし各a_iはニブル)のとき、Almost MDS行列を適用した結果(b_1,b_2,b_3,b_4)(ただし各b_iはニブル)は、Almost MDS行列とAの転置ベクトルとの積で得られる。ここで、Almost MDS行列について説明する。任意の異なる2入力 A = (a_1,a_2,a_3,a_4) と A' = (a'_1,a'_2,a'_3,a'_4)について、その差分 A xor A' (xorは要素ごとの排他的論理和を行うことを示す)をとり、そのハミング重みをd_Aとする。またそれぞれに行列Mbを適用した出力を B = (b_1,b_2,b_3,b_4)と B' = (b'_1,b'_2,b'_3,b'_4) とし、同様に、差分 B xor B' のハミング重みをd_Bとする。このとき、d_A + d_Bが常に4以上となる場合、行列MbをAlmost MDS行列と称す。
【0045】
例えば以下の行列がAlmost MDS行列である。
【0046】
【数1】
【0047】
この行列を用いた場合、入力 A = (a_1,a_2,a_3,a_4)に対応する出力B = (b_1,b_2,b_3,b_4)は、以下のように表される。
b_1 = a_2+a_3+a_4
b_2 = a_1+a_3+a_4
b_3 = a_1+a_2+a_4
b_4 = a_1+a_2+a_3
【0048】
以上、第一の置換処理で行われる各処理について説明した。上述の通り、第一の置換処理部120は、第一の置換処理をa回繰り返して、第一の中間文S1を出力する。1回目の処理では、入力受付部110が受付けた1ブロック分の平文に対して加算処理161が行われる。そして、加算処理161の結果に対してS-box処理162が行われ、S-box処理162の結果に対してビット置換処理163が行われ、ビット置換処理163の結果に対して行列積処理164が行われる。これにより1回目の第一の置換処理が終了する。そして、1回目の第一の置換処理における行列積処理164の結果が、2回目の第一の置換処理における加算処理161の入力に用いられる。そして、2回目の第一の置換処理における加算処理161の結果に対して、2回目の第一の置換処理におけるS-box処理162が行われる。以降、同様に、処理が行われ、第一の置換処理がa回繰り返される。第一の置換処理部120は、第一の置換処理をa回繰り返すと、最終的な処理結果を第一の中間文S1として第二の置換処理部130に出力する。
【0049】
次に、第二の置換処理部130について説明する。第二の置換処理部130は、第一の置換処理部120が出力した128ビットのデータ列である第一の中間文S1を最初の入力として、第二の置換処理をb回繰り返して、第二の中間文S2を出力するハードウェア回路である。繰り返される第二の置換処理における2回目以降では、前回の第二の置換処理の処理結果が第二の置換処理の入力に用いられる。ここで、繰り返し回数を規定するbの値は予め定められている。
【0050】
第二の置換処理部130は、第二の置換処理として、具体的には、まず、加算処理161を行ない、次に、S-box処理162を行ない、次に、ニブル置換処理165を行ない、最後に行列積処理164を行う。第二の置換処理として行われる加算処理161、S-box処理162、及び行列積処理164は、第一の置換処理として行われるこれらの処理と同様なので、説明を省略する。
【0051】
ニブル置換処理165は、入力をニブル単位で並び替える処理であり、入力された32ニブル(すなわち、128ビット)のデータ列を並び替えて、32ニブル(すなわち、128ビット)のデータ列を出力する。本実施の形態では、ニブル置換処理165として、Active S-box数が、少ないラウンド数で所定値に達するような処理を行う。所定値とは、具体的にはS-boxの最大差分確率の指数とActive S-box数との積が-128になる値である。4ビットS-boxの場合、S-boxの最大差分確率が2^-2であるため、この所定値は、具体的には64である。
【0052】
ニブル置換処理165は、例えば5ラウンドで、64というActive S-box数を保証する。このため、第二の置換処理の繰り返し回数bの値は5であってもよい。例えば、次のようなニブル置換処理165は、5ラウンドで、64というActive S-box数を保証する。なお、入力のビット列に対して4ビット毎に順番に0から31までのインデックスを付与して、当該インデックスの並びの変更により、ニブル置換処理165の並び替えを表現するものとする。例えば、ニブル置換処理165は、入力時のインデックスの並びが(0, 1, ..., 31)であり、出力時のインデックスの並びが(10, 27, 5, 1, 30, 23, 16, 13, 21, 31, 6, 14, 0, 25, 11, 18, 15, 28, 19, 24, 7, 8, 22, 3, 4, 29, 9, 2, 26, 20, 12, 17)である並び替え処理である。また、別の例では、ニブル置換処理165は、入力時のインデックスの並びが(0, 1, ..., 31)であり、出力時のインデックスの並びが(26, 13, 7, 11, 29, 0, 17, 21, 23, 5, 18, 25, 12, 10, 28, 2, 14, 19, 24, 22, 1, 8, 4, 31, 15, 6, 27, 9, 16, 30, 20, 3)である並び替え処理である。
【0053】
このように、本実施の形態では、ニブル置換処理165は、Active S-box数が所定値以上になるために必要とされる当該ニブル置換処理165のラウンド数(処理の繰り返し数)が所定条件を満たす処理である。
【0054】
以上、第二の置換処理で行われる処理について説明した。上述の通り、第二の置換処理部130は、第二の置換処理をb回繰り返して、第二の中間文S2を出力する。1回目の処理では、第一の置換処理部120が出力したデータ列に対して加算処理161が行われる。そして、加算処理161の結果に対してS-box処理162が行われ、S-box処理162の結果に対してニブル置換処理165が行われ、ニブル置換処理165の結果に対して行列積処理164が行われる。これにより1回目の第二の置換処理が終了する。そして、1回目の第二の置換処理における行列積処理164の結果が、2回目の第二の置換処理における加算処理161の入力に用いられる。そして、2回目の第二の置換処理における加算処理161の結果に対して、2回目の第二の置換処理におけるS-box処理162が行われる。以降、同様に、処理が行われ、第二の置換処理がb回繰り返される。第二の置換処理部130は、第二の置換処理をb回繰り返すと、最終的な処理結果を第二の中間文S2として終端処理部140に出力する。
【0055】
次に、終端処理部140について説明する。終端処理部140は、第二の置換処理部130が出力した128ビットのデータ列である第二の中間文S2を入力として、暗号文Cを出力する終端処理を行うハードウェア回路である。
【0056】
終端処理部140は、終端処理として、具体的には、まず、S-box処理162を行ない、次に、加算処理161を行う。すなわち、終端処理部140は、第二の置換処理部130が出力した第二の中間文S2に対し、まず、S-box処理162を行ない、次に、S-box処理162の結果に対して、加算処理161を行う。そして、終端処理部140は、加算処理161の結果を暗号文Cとして出力する。
【0057】
出力制御部150は、終端処理部140の処理結果をディスプレイなどの出力装置に出力するための制御を行うハードウェア回路である。すなわち、出力制御部150は、暗号文Cを出力装置に出力するための制御を行う。
【0058】
図5は、情報処理装置100の動作の流れの一例を示すフローチャートである。以下、図5を参照しつつ、情報処理装置100の動作の流れについて説明する。
【0059】
ステップS10において、入力受付部110は、平文Mの入力を受付ける。
【0060】
次に、ステップS11において、第一の置換処理部120は、加算処理161を行う。
次に、ステップS12において、第一の置換処理部120は、S-box処理162を行う。
次に、ステップS13において、第一の置換処理部120は、ビット置換処理163を行う。
次に、ステップS14において、第一の置換処理部120は、行列積処理164を行う。
【0061】
次に、ステップS15において、第一の置換処理部120は、ステップS11からステップS14までの一連の処理をa回繰り返したか否かを判定する。処理がa回繰り返されていない場合、第一の置換処理部120は、ステップS11からステップS14までの一連の処理を再度繰り返す。これに対して、処理がa回繰り返された場合、ステップS16が行われる。ここで、例えば、aの値は3である。
【0062】
ステップS16において、第二の置換処理部130は、加算処理161を行う。
次に、ステップS17において、第二の置換処理部130は、S-box処理162を行う。
次に、ステップS18において、第二の置換処理部130は、ニブル置換処理165を行う。
次に、ステップS19において、第二の置換処理部130は、行列積処理164を行う。
【0063】
次に、ステップS20において、第二の置換処理部130は、ステップS16からステップS19までの一連の処理をb回繰り返したか否かを判定する。処理がb回繰り返されていない場合、第二の置換処理部130は、ステップS16からステップS19までの一連の処理を再度繰り返す。これに対して、処理がb回繰り返された場合、ステップS21が行われる。ここで、例えば、bの値は5である。
【0064】
ステップS21において、終端処理部140は、S-box処理162を行う。
次に、ステップS22において、終端処理部140は、加算処理161を行う。
【0065】
最後に、ステップS23において、出力制御部150は、ステップS22で得られた128ビットのビット列を暗号文Cとしてディスプレイ等に出力する。なお、上述した例では、繰り返し回数についてa=3, b=5としたが、繰り返し回数はこれらの値に限られない。例えば、より安全性を高めるために、aの値は3より大きくてもよく、bの値は5より大きくてもよい。例えば、a=4, b=7としてもよい。
【0066】
次に、本実施の形態の効果について説明する。本実施の形態によれば、128-bitの入力幅を持つ、低遅延な暗号化処理を実現できる。本実施の形態のラウンド関数はMidoriで導入されたAlmost MDS行列を用いる置換ネットワーク構造(Substitution-Permutation Network, SPN)をベースとしているが、Midoriとは異なり、複数の異なる線形層を用いている。具体的には前半のラウンド(第一の置換処理)でビット置換を用い(図6参照)、後半のラウンド(第二の置換処理)ではニブル置換を用いている(図7参照)。ここで、図6は、第一の置換処理のラウンド関数(ただし、入力に対するラウンド鍵とラウンド定数の加算処理を除く)を示す模式図である。また、図7は、第二の置換処理のラウンド関数(ただし、入力に対するラウンド鍵とラウンド定数の加算処理を除く)を示す模式図である。Midori-128でもビット置換とニブル置換とを用いるが、Midoriでは単一のラウンドにおいて両者を利用する点が本実施の形態とは異なる。また、Midori-128のビット置換は、4ビットS-box二つを並べて、これらを実質的に8ビットS-boxとして機能させるために用いられており、Midori-128のビット置換は8ビット入出力のビット置換を並べることで実現されている(図8参照)。ここで、図8は、Midoriのラウンド関数(ただし、入力に対するラウンド鍵とラウンド定数の加算処理を除く)を示す模式図である。これに対し、本実施の形態のビット置換は128ビット全体を攪拌するためのものである。本実施の形態がビット置換を前半のラウンドで用いる理由は、暗号の安全性評価において重要な全拡散(full diffusion)、すなわち任意の入力データの変化が出力の全体へ波及すること、を少ないラウンド数で担保するためである。ビット置換はニブル置換と比べてデータをより細かく分割するために拡散性能を高めることが可能である。加算処理161、S-box処理162、ビット置換処理163、及び行列積処理164からなる一連の処理を1ラウンドと換算した場合、上述した第一の条件及び第二の条件を満たすビット置換であれば、2.5ラウンドで全拡散が担保される。ここで、2.5ラウンドとは、3ラウンド目の途中まで行うこと、より詳細には、3ラウンド目の加算処理161及びS-box処理162までを行うことを指す。一方ビット置換でなくニブル置換のみを用いた場合は、全拡散を担保するためには少なくとも4ラウンドが必要となる。Midori-128の場合は上述のようにビット置換とニブル置換を組み合わせているが、ビット置換の変化の波及の幅が小さいため、全拡散には3ラウンドを要している。そして、Active S-boxといった評価条件を満たすために、Midori-128は、最終的に、全体で20ラウンドを必要とする。これに対し、本実施の形態では、例えば、a=4, b=7とした場合、終端処理を1ラウンドとしてカウントしても、合計12(=4+7+1)ラウンドで十分である。したがって、本実施の形態によれば、128-bitの入力幅を持ち、Midori-128と比べて低遅延な暗号化処理が提供される。
【0067】
なお、本実施の形態がニブル置換を後半のラウンド(第二の置換処理)で用いる理由は、代表的な安全性評価指標であるActive S-box数における優位性を確保するためである。Active S-box数は重要な暗号解析手法である差分攻撃に対する安全性を反映する。ある暗号において、任意の異なる入力対に対してActive S-box数の最小値が所定値以上となることが示せれば、その暗号は差分攻撃に対して十分な耐性を持つといえる。一般にビット置換は粒度が細かいため、Active S-box数の最小値を精密に導出することが困難になる。結果として、Active S-box数の最小値が所定値以上となることを保証するために必要なラウンド数が大きくなる。したがって、前半のラウンドでビット置換を用い、全拡散したのちはニブル置換に切り替える本実施の形態の構成により、少ないラウンド数で安全性を担保することが可能となる。なお、低遅延暗号の実装は一般的にフルアンロール実装であるため、前半のラウンド(第一の置換処理)と後半のラウンド(第二の置換処理)で構成が変わることはハードウェア実装上問題とならない。
【0068】
<実施の形態2>
次に、実施の形態2について説明する。図9は、実施の形態2にかかる情報処理装置200の構成の一例を示す模式図である。情報処理装置200は、図9に示すように、入力受付部210と、第一のブロック暗号化部220と、第二のブロック暗号化部230と、加算部240と、出力制御部250とを有し、実施の形態1で述べた暗号化処理を用いて疑似乱数を生成する。本実施の形態にかかる情報処理装置200は、疑似ランダム関数装置とも称される。
【0069】
入力受付部210は、入力受付部110と同様の処理を行うハードウェア回路である。すなわち、入力受付部210は、実施の形態1における平文Mに相当する入力を受付ける。入力受付部210は、例えばキーボードなどの入力装置を介して情報処理装置200に入力されたデータを受付ける。
【0070】
第一のブロック暗号化部220及び第二のブロック暗号化部230は、いずれも実施の形態1で示した暗号化処理を行うハードウェア回路である。すなわち、第一のブロック暗号化部220及び第二のブロック暗号化部230は、上述した第一の置換処理部120、第二の置換処理部130、及び終端処理部140の処理を順に行い、入力受付部210が受付けた128ビットのデータ列を暗号化する。つまり、第一のブロック暗号化部220及び第二のブロック暗号化部230は、いずれも入力Mに対する暗号文を出力する。ここで、第一のブロック暗号化部220及び第二のブロック暗号化部230は、入力M(すなわち、同一の平文)に対し、異なる2つの暗号文を出力する。ここでは、第一のブロック暗号化部220が、第一の暗号文Xを出力し、第二のブロック暗号化部230が、第二の暗号文Yを出力するものとして説明する。なお、第一のブロック暗号化部220及び第二のブロック暗号化部230は、異なる秘密鍵(ラウンド鍵)を用いることにより、異なる暗号文XとYを出力してもよいし、異なるニブル置換を行うことにより、異なる暗号文XとYを出力してもよい。異なるニブル置換を行う場合、第一のブロック暗号化部220及び第二のブロック暗号化部230は、同じ秘密鍵(ラウンド鍵)を用いてもよい。このように、第二の暗号文Yは、第一の暗号文Xの生成に用いられた鍵(ラウンド鍵)とは異なる鍵(ラウンド鍵)を用いることにより得られる暗号文であってもよい。また、第二の暗号文Yは、第一の暗号文Xの生成に用いられたニブル置換処理165での並び替えとは異なる並び替えが行われるニブル置換処理165を用いることにより得られる暗号文であってもよい。
【0071】
ここで、ニブル置換処理165における異なる並び替えは、上述した2つの並び替えであってもよい。つまり、入力のビット列に対して4ビット毎に順番に0から31までのインデックスを付与して当該インデックスの並びの変更によりニブル置換処理165の並び替えを表現した場合、ニブル置換処理165における異なる並び替えは次のようなものであってもよい。第一の並び替えを行うニブル置換処理165は、入力時のインデックスの並びが(0, 1, ..., 31)であり、出力時のインデックスの並びが(10, 27, 5, 1, 30, 23, 16, 13, 21, 31, 6, 14, 0, 25, 11, 18, 15, 28, 19, 24, 7, 8, 22, 3, 4, 29, 9, 2, 26, 20, 12, 17)である並び替え処理である。そして、第二の並び替えを行うニブル置換処理165は、入力時のインデックスの並びが(0, 1, ..., 31)であり、出力時のインデックスの並びが(26, 13, 7, 11, 29, 0, 17, 21, 23, 5, 18, 25, 12, 10, 28, 2, 14, 19, 24, 22, 1, 8, 4, 31, 15, 6, 27, 9, 16, 30, 20, 3)である並び替え処理である。
このように、第一の暗号文Xは、ニブル置換処理165として第一の所定の並び替えを行うことにより得られる暗号文であり、第二の暗号文Yは、ニブル置換処理165として第二の所定の並び替えを行うことにより得られる暗号文であってもよい。
【0072】
第一のブロック暗号化部220及び第二のブロック暗号化部230は、第一の暗号文Xと第二の暗号文Yを加算部240に出力する。
加算部240は、第一の暗号文Xと第二の暗号文Yを入力として、第一の暗号文Xと第二の暗号文Yを加算して、疑似乱数として出力するハードウェア回路である。すなわち、加算部240は、第一の暗号文Xと第二の暗号文Yを加算することにより疑似乱数Cを生成し、これを出力する。これにより、加算部240の処理結果として128ビットの疑似乱数Cが出力される。なお、この加算は、例えば、排他的論理和であるが、算術加算などであってもよい。
【0073】
出力制御部250は、加算部240の処理結果をディスプレイなどの出力装置に出力するための制御を行うハードウェア回路である。すなわち、出力制御部250は、疑似乱数Cを出力装置に出力するための制御を行う。
【0074】
図10は、情報処理装置200の動作の流れの一例を示すフローチャートである。以下、図10を参照しつつ、情報処理装置200の動作の流れについて説明する。
【0075】
ステップS30において、入力受付部210は、入力Mを受付ける。
次に、ステップS31において、第一のブロック暗号化部220が第一の暗号文Xを生成し、第二のブロック暗号化部230が第二の暗号文Yを生成する。
次に、ステップS32において、加算部240が第一の暗号文Xと第二の暗号文Yを加算し、疑似乱数Cを生成する。
最後に、ステップS33において、出力制御部250は、ステップS22で得られたビット列を疑似乱数Cとしてディスプレイ等に出力する。
【0076】
情報処理装置200では、実施の形態1で説明した暗号化処理を二つ並列に並べ、両者の出力を加算することで、高い安全性を持つ疑似ランダム関数を構成している。上述した文献“Information-theoretic Indistinguishability via the Chi-squared Method”に示される疑似ランダム関数は独立な鍵を二つ要するものである。本実施の形態では、それぞれのブロック暗号の中で、異なるニブル置換を用いれば、鍵を複数用意しなくてもよい。特に、それぞれのブロック暗号の中で用いるニブル置換を、Active S-boxの観点で性能のよいものから2種類選択することで安全性を担保することができる。
【0077】
実施の形態1に示したような128-bitブロック暗号であればバースデー攻撃に必要なデータ量はO(2^64)ブロックになり大幅に安全性があがる。しかし、ネットワークなどの高速化・大容量化を考えた場合に、長期的なセキュリティを求める際にはより大量のデータを用いた攻撃にも耐えられることが望ましい。この点において、情報処理装置200により実現される128ビットの入力幅の疑似ランダム関数は、一般的な暗号化や、認証暗号のモード(例えばカウンターモードやGCMモードなど)で用いられた場合に、攻撃に必要なデータ量がO(2^128)ブロックとなる。このため、長期的にみても十分な安全性を有する暗号化が可能となる。
【0078】
なお、上述の説明では、図2又は図9に示す要素についてハードウェアの構成として説明したが、これに限定されるものではない。これらの要素の一部又は全ては、コンピュータのプロセッサがコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0079】
図11は、図2又は図9に示す要素を実現するコンピュータ300の構成の一例を示すブロック図である。図11に示すように、コンピュータ300は、入出力インタフェース301、メモリ302、及び、プロセッサ303を含む。
【0080】
入出力インタフェース301は、他の任意の装置と通信するために使用される。
メモリ302は、例えば、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの組み合わせによって構成される。メモリ302は、プロセッサ303により実行される、1以上の命令を含むソフトウェア(コンピュータプログラム)などを格納するために使用される。
【0081】
プロセッサ303は、メモリ302からソフトウェア(コンピュータプログラム)を読み出して実行することで、上述した図2又は図9に示す各構成要素の処理を行う。
【0082】
プロセッサ303は、例えば、マイクロプロセッサ、MPU(Micro Processor Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)などであってもよい。プロセッサ303は、複数のプロセッサを含んでもよい。
【0083】
なお、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0084】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0085】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
(付記1)
128ビットを1ブロックの単位として平文の入力を受付ける入力受付手段と、
1ブロック分の前記平文を最初の入力として、第一の置換処理をa回(ただし、aは所定の整数)繰り返して、第一の中間文を出力する第一の置換処理手段と、
前記第一の中間文を最初の入力として、第二の置換処理をb回(ただし、bは所定の整数)繰り返して、第二の中間文を出力する第二の置換処理手段と、
前記第二の中間文を入力として暗号文を出力する終端処理を行う終端処理手段と
を有し、
前記第一の置換処理は、
入力に対して、ラウンド鍵とラウンド定数とを加算する加算処理と、
入力に対して、ニブルごとに、4ビットの入力を4ビットの出力に変換する非線形関数である4ビットS-boxを適用するS-box処理と、
入力をビット単位で並び替えるビット置換処理と、
入力を4ニブルごとに8つのワードに分けて、各ワードに対して、4行4列のAlmost MDS行列変換を適用する行列積処理と
を順番に行う置換処理であり、
前記第二の置換処理は、
前記加算処理と、
前記S-box処理と、
入力をニブル単位で並び替えるニブル置換処理と、
前記行列積処理と
を順番に行う置換処理であり、
前記終端処理は、
前記S-box処理と、
前記加算処理と
を順番に行う置換処理である
情報処理装置。
(付記2)
前記ビット置換処理は、
入力32ニブルをX(1),...,X(32)とし、出力32ニブルをY(1),...,Y(32)とし、出力を4ニブルごとにまとめてW(1)=[Y(1),Y(2),Y(3),Y(4)], W(2)=[Y(5),Y(6),Y(7),Y(8)], ... ,W(8)=[Y(29),Y(30),Y(31),Y(32)]とし、入力X(i)の4ビットB(i,1),B(i,2),B(i,3),B(i,4)がマップされたニブルをそれぞれY(a), Y(b), Y(c), Y(d)とし(ただし、a, b, c, dは、いずれも1以上32以下の整数)、これらの4ニブルが所属するW(j)からY(a), Y(b), Y(c), Y(d)を除いた12ニブルをY(j[1]), Y(j[2]), ..., Y(j[12])とすると(ただし、j[1], j[2], j[12]は、いずれも1以上32以下の整数)、以下の第一の条件及び第二の条件を満たす並び替えを行う処理である
付記1に記載の情報処理装置。
(第一の条件)
すべてのi=1,...,32について、入力X(i)の4ビットB(i,1),B(i,2),B(i,3),B(i,4)がすべて異なるW(j) (j = 1,...,8)へマップされる。
(第二の条件)
入力X(1),...,X(32)におけるニブルの位置がY(1),...,Y(32)におけるY(j[1]), Y(j[2]), ...., Y(j[12])の位置と対応している、入力の12ニブルX(j[1]), X(j[2]), ...., X(j[12])のマップによって、W(1),...,W(8)のすべてにおいて2ニブル以上がカバーされる。
(付記3)
前記ニブル置換処理は、
Active S-box数が所定値以上になるために必要とされる当該ニブル置換処理のラウンド数が所定条件を満たす処理である
付記1又は2に記載の情報処理装置。
(付記4)
同一の平文に対する異なる前記暗号文である第一の暗号文と第二の暗号文を入力として、前記第一の暗号文と前記第二の暗号文を加算して、疑似乱数として出力する加算手段を
さらに有する
付記1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
(付記5)
前記第一の暗号文は、前記ニブル置換処理として第一の所定の並び替えを行うことにより得られる前記暗号文であり、前記第二の暗号文は、前記ニブル置換処理として第二の所定の並び替えを行うことにより得られる前記暗号文であり、
入力のビット列に対して4ビット毎に順番に0から31までのインデックスを付与して、当該インデックスの並びの変更により前記第一の所定の並び替えを表現した場合、前記第一の所定の並び替えによる前記ニブル置換処理は、入力時のインデックスの並びが(0,1,...,31)であり、出力時のインデックスの並びが(10,27,5,1,30,23,16,13,21,31,6,14,0,25,11,18,15,28,19,24,7,8,22,3,4,29,9,2,26,20,12,17)である処理であり、
入力のビット列に対して4ビット毎に順番に0から31までのインデックスを付与して、当該インデックスの並びの変更により前記第二の所定の並び替えを表現した場合、前記第二の所定の並び替えによる前記ニブル置換処理は、入力時のインデックスの並びが(0,1,...,31)であり、出力時のインデックスの並びが(26,13,7,11,29,0,17,21,23,5,18,25,12,10,28,2,14,19,24,22,1,8,4,31,15,6,27,9,16,30,20,3)である処理である
付記4に記載の情報処理装置。
(付記6)
128ビットを1ブロックの単位として平文の入力を受付け、
1ブロック分の前記平文を最初の入力として、第一の置換処理をa回(ただし、aは所定の整数)繰り返して、第一の中間文を出力し、
前記第一の中間文を最初の入力として、第二の置換処理をb回(ただし、bは所定の整数)繰り返して、第二の中間文を出力し、
前記第二の中間文を入力として暗号文を出力する終端処理を行い、
前記第一の置換処理は、
入力に対して、ラウンド鍵とラウンド定数とを加算する加算処理と、
入力に対して、ニブルごとに、4ビットの入力を4ビットの出力に変換する非線形関数である4ビットS-boxを適用するS-box処理と、
入力をビット単位で並び替えるビット置換処理と、
入力を4ニブルごとに8つのワードに分けて、各ワードに対して、4行4列のAlmost MDS行列変換を適用する行列積処理と
を順番に行う置換処理であり、
前記第二の置換処理は、
前記加算処理と、
前記S-box処理と、
入力をニブル単位で並び替えるニブル置換処理と、
前記行列積処理と
を順番に行う置換処理であり、
前記終端処理は、
前記S-box処理と、
前記加算処理と
を順番に行う置換処理である
情報処理方法。
(付記7)
128ビットを1ブロックの単位として平文の入力を受付ける入力受付ステップと、
1ブロック分の前記平文を最初の入力として、第一の置換処理をa回(ただし、aは所定の整数)繰り返して、第一の中間文を出力する第一の置換処理ステップと、
前記第一の中間文を最初の入力として、第二の置換処理をb回(ただし、bは所定の整数)繰り返して、第二の中間文を出力する第二の置換処理ステップと、
前記第二の中間文を入力として暗号文を出力する終端処理を行う終端処理ステップと
をコンピュータに実行させ、
前記第一の置換処理は、
入力に対して、ラウンド鍵とラウンド定数とを加算する加算処理と、
入力に対して、ニブルごとに、4ビットの入力を4ビットの出力に変換する非線形関数である4ビットS-boxを適用するS-box処理と、
入力をビット単位で並び替えるビット置換処理と、
入力を4ニブルごとに8つのワードに分けて、各ワードに対して、4行4列のAlmost MDS行列変換を適用する行列積処理と
を順番に行う置換処理であり、
前記第二の置換処理は、
前記加算処理と、
前記S-box処理と、
入力をニブル単位で並び替えるニブル置換処理と、
前記行列積処理と
を順番に行う置換処理であり、
前記終端処理は、
前記S-box処理と、
前記加算処理と
を順番に行う置換処理である
プログラムが格納された非一時的なコンピュータ可読媒体。
【符号の説明】
【0086】
10 情報処理装置
11 入力受付部
12 第一の置換処理部
13 第二の置換処理部
14 終端処理部
100 情報処理装置
110 入力受付部
120 第一の置換処理部
130 第二の置換処理部
140 終端処理部
150 出力制御部
161 加算処理
162 S-box処理
163 ビット置換処理
164 行列積処理
165 ニブル置換処理
170 S-box
171 行列
200 情報処理装置
210 入力受付部
220 第一のブロック暗号化部
230 第二のブロック暗号化部
240 加算部
250 出力制御部
300 コンピュータ
301 入出力インタフェース
302 メモリ
303 プロセッサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11