IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝ライテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-光触媒フィルタ、および光触媒装置 図1
  • 特許-光触媒フィルタ、および光触媒装置 図2
  • 特許-光触媒フィルタ、および光触媒装置 図3
  • 特許-光触媒フィルタ、および光触媒装置 図4
  • 特許-光触媒フィルタ、および光触媒装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】光触媒フィルタ、および光触媒装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/00 20060101AFI20240729BHJP
   B01J 35/39 20240101ALI20240729BHJP
   A61L 9/18 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
A61L9/00 C
B01J35/39
A61L9/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020160775
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2022053890
(43)【公開日】2022-04-06
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】津崎 修
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-033270(JP,A)
【文献】国際公開第2018/147444(WO,A1)
【文献】特開2018-130640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00 - 9/22
B01J 21/00 - 38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートと;
前記シートに坦持された複数の光触媒と;
を具備し、
前記シートは、
第1の方向に延び、金属を含む複数の第1の線状体と;
前記第1の方向と交差する第2の方向に延び、金属を含む複数の第2の線状体と;
を有し、
前記第1の線状体と、前記第2の線状体と、が交差する部分において、
少なくとも1つの前記第2の線状体を、隣接する2つの前記第1の線状体が挟んでおり、
前記光触媒は、前記第1の線状体、および前記第2の線状体に直接坦持されている光触媒フィルタ。
【請求項2】
前記第2の線状体は直線状に延び、
前記第1の線状体は、前記シートの厚み方向に、屈曲方向を交互に変えて延び、
前記第2の線状体の線径は、前記第1の線状体の線径よりも大きい請求項1記載の光触媒フィルタ。
【請求項3】
前記第1の線状体と、前記第2の線状体と、が交差する部分において、
隣接する2つの前記第2の線状体を、隣接する2つの前記第1の線状体が挟んでいる請求項1または2に記載の光触媒フィルタ。
【請求項4】
前記シートのメッシュ数は、500以下である請求項1~3のいずれか1つに記載の光触媒フィルタ。
【請求項5】
前記金属は、ステンレス、ニッケル、モネル、リン青銅、およびチタンからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1~のいずれか1つに記載の光触媒フィルタ。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1つに記載の光触媒フィルタと;
前記光触媒フィルタに坦持された光触媒に光を照射する発光素子を有する光源と;
箱状を呈し、内部に、前記光触媒フィルタ、および前記光源が設けられるフレームと;
を備えた光触媒装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光触媒フィルタ、および光触媒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
健康意識の高まりを反映して、自動車などの車内、冷蔵庫内、居住空間などの所謂、準閉鎖空間における空気の清浄化の要望が高まっている。例えば、食物から発生するアンモニアやエチレンの除去、タバコ煙に含まれるアセトアルデヒドなどのVOC(Volatile Organic Compounds;揮発性有機化合物)の除去、あるいは、細菌やウイルスの不活性化などの要求が高まっている。そのため、複数の発光ダイオードを有する光源と、光触媒が坦持された光触媒フィルタとを備えた光触媒装置が提案されている。
【0003】
光触媒フィルタは、光触媒材料を含む光触媒と、複数の光触媒を坦持するシートと、を備えている。一般的に、シートは、複数のガラス繊維を束ねたり、複数のガラス繊維を織り込んだりすることで形成されている。複数のガラス繊維を含むシートに、光触媒を坦持させると、複数のガラス繊維の間に光触媒が入り込むので坦持量を多くすることができる。
【0004】
ところが、複数のガラス繊維を用いて形成されたシートは、剛性が低いので、そのままでは光触媒装置に取り付けることができない。そのため、一般的には、シートの周縁近傍を保持する枠状部材が必要となる。枠状部材を用いれば、剛性が低いシートを光触媒装置に取り付けることができる。しかしながら、枠状部材により保持されたシートの周縁近傍には、発光ダイオードから照射された光が入射せず、また、処理対象のガスも流通することができない。そのため、処理能力の向上が図れなくなったり、光触媒装置の小型化が困難となったりするおそれがある。
【0005】
また、近年においては、光触媒装置の処理能力の向上が求められており、シートを透過するガスの流量や流速が増加する傾向にある。そのため、シートの周縁近傍を保持する枠状部材では、シートの中央領域の変形を抑制できなくなるおそれがある。この場合、枠状部材に桟を設けてシートの中央領域を支持すると、桟により支持された部分には、発光ダイオードから照射された光が入射せず、また、処理対象のガスも流通することができない。そのため、処理能力の向上を図れなくなるおそれがある。
そこで、処理能力の向上を図ることができる技術の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-240053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、処理能力の向上を図ることができる光触媒フィルタ、および光触媒装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る光触媒フィルタは、シートと;前記シートに坦持された複数の光触媒と;を具備している。前記シートは、第1の方向に延び、金属を含む複数の第1の線状体と;前記第1の方向と交差する第2の方向に延び、金属を含む複数の第2の線状体と;を有している。前記第1の線状体と、前記第2の線状体と、が交差する部分において、少なくとも1つの前記第2の線状体を、隣接する2つの前記第1の線状体が挟んでおり、前記光触媒は、前記第1の線状体、および前記第2の線状体に直接坦持されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、処理能力の向上を図ることができる光触媒フィルタ、および光触媒装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係る光触媒装置を例示するための模式分解図である。
図2図1における光触媒装置のA-A線方向の模式断面図である。
図3】メッシュ数と圧力損失との関係を例示するためのグラフである。
図4】(a)は、シートの実施形態を例示するための写真である。(b)は、(a)におけるシートをB方向から見た場合の模式図である。(c)は、(a)におけるシートをC方向から見た場合の模式図である。
図5】(a)は、シートの他の実施形態を例示するための写真である。(b)は、(a)におけるシートをD方向から見た場合の模式図である。(c)は、(a)におけるシートをE方向から見た場合の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本実施の形態に係る光触媒装置1を例示するための模式分解図である。
図2は、図1における光触媒装置1のA-A線方向の模式断面図である。
図1および図2に示すように、光触媒装置1は、例えば、フレーム2、蓋3、光源4、および光触媒フィルタ5を有する。
【0012】
フレーム2は、箱状を呈している。図1および図2に例示をしたフレーム2の断面の輪郭は略四角形であるが、これに限定されるわけではない。フレーム2の断面の輪郭は、例えば、略多角形とすることができる。ただし、後述する光源4および光触媒フィルタ5の着脱やスペース効率を考慮すると、フレーム2の断面の輪郭は、略四角形とすることが好ましい。
【0013】
フレーム2の、一方の端部2aは開口している。フレーム2の、端部2aに対向する端部2bは塞がっている。フレーム2の、一方の側面2cには孔2c1が設けられている。フレーム2の、側面2cに対向する側面2dには孔2d1が設けられている。
【0014】
側面2cの孔2c1、および側面2dの孔2d1は、処理の対象となるガスGの流入口または流出口とすることができる。この場合、図2に示すように、側面2cの孔2c1をガスGの流入口、側面2dの孔2d1をガスGの流出口とすることができる。なお、側面2cの孔2c1をガスGの流出口、側面2dの孔2d1をガスGの流入口としてもよい。すなわち、ガスGの流れ方向には特に限定がない。
【0015】
ガスGは、例えば、空気を主成分とし、処理の対象となる物質、細菌、ウイルスなどを含む気体とすることができる。なお、ガスGは、例示をしたものに限定されるわけではなく、光触媒作用により浄化可能なものであればよい。
【0016】
また、フレーム2の、側面2cおよび側面2dの少なくともいずれかにはフィルタや格子などを設けることもできる。フィルタが設けられていれば、フレーム2の内部にゴミなどが吸引されるのを抑制することができる。そのため、ゴミなどにより光触媒作用が低下するのを抑制することができる。格子が設けられていれば、指や異物がフレーム2の内部に侵入するのを抑制することができる。
【0017】
フレーム2の、側面2cに交差する側面2eには複数の溝2e1が設けられている。フレーム2の、側面2eに対向する側面2fには複数の溝2f1が設けられている。複数の溝2e1および複数の溝2f1は、フレーム2の内部に開口ている。複数の溝2e1および複数の溝2f1は、フレーム2の側面2cと側面2dとの間に並べて設けられている。複数の溝2e1および複数の溝2f1は、フレーム2の端部2aと端部2bとの間を延びている。
【0018】
溝2e1は、対向する溝2f1と略平行に設けられている。互いに対向する一対の溝2e1、2f1は、いわゆるスロットとなる。光源4および光触媒フィルタ5のそれぞれは、一対の溝2e1、2f1(スロット)に挿入される。一対の溝2e1、2f1に挿入された光触媒フィルタ5は、他の一対の溝2e1、2f1に挿入された光源4と略平行となる。そのため、光源4から照射された光を光触媒フィルタ5に効率よく入射させることができる。
【0019】
光源4および光触媒フィルタ5のそれぞれが挿入される一対の溝2e1、2f1が設けられていれば、光源4および光触媒フィルタ5を、フレーム2の内部に抜き差し自在に設けることができる。そのため、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0020】
フレーム2の材料には、特に限定はない。ただし、フレーム2の材料を熱可塑性樹脂とすれば、射出成形法を用いてフレーム2を形成することができる。そのため、製造コストの低減を図ることができる。
【0021】
例えば、フレーム2の材料は、ABS樹脂(アクリルニトリルーブタジエンースチレン共重合合成樹脂)とすることができる。フレーム2の材料が、ABS樹脂であれば、成形性の向上と低コスト化を図ることができる。この場合、フレーム2の材料を強化ABS樹脂とすれば、フレーム2の強度を向上させることができる。なお、強化ABS樹脂は、ABS樹脂にガラス繊維などを混合させたものである。
【0022】
また、フレーム2の材料は、例えば、ポリプロピレン樹脂やアクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル樹脂)などであってもよい。この場合、フレーム2の材料が、アクリル樹脂であれば、光源4から照射された紫外線に対する耐性と、ガスGに含まれるVOCに対する耐性が向上する。また、アクリル樹脂の重合度を10000~15000程度とすれば、発臭を抑制することができる。
【0023】
また、フレーム2の材料は、金属とすることもできる。フレーム2の材料を金属とすれば、光触媒装置1の剛性を高めることができる。金属は、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム合金などとすることができる。
【0024】
蓋3は、フレーム2の端部2aに設けられている。蓋3は、端部2aに設けられた開口を覆ってる。蓋3が設けられていれば、フレーム2の内部に設けられた光源4および光触媒フィルタ5が、脱離するのを抑制することができる。また、フレーム2の内部にゴミなどが侵入するのを抑制することができる。蓋3は、ネジなどを用いてフレーム2に取り付けることができる。また、蓋3にフックなどを設け、フレーム2に設けられた凹部や凸部にフックを保持させるようにしてもよい。蓋3がフレーム2に着脱自在に設けられていれば、メンテナンス性の向上を図ることができる。蓋3の材料には特に限定がない。例えば、蓋3の材料は、フレーム2の材料と同じとすることができる。
【0025】
光源4は、少なくとも1つ設けることができる。光源4は、フレーム2の内部に設けられる。光源4は、光触媒フィルタ5と対峙している。ガスGの流れ方向において、光源4は、光触媒フィルタ5の上流側に設けられていてもよいし、下流側に設けられていてもよいし、両側に設けられていてもよい。
【0026】
光源4は、例えば、基板4a、および発光素子4bを有する。
基板4aは、板状を呈している。基板4aはガスGの流路に設けられることになる。そのため、基板4aが設けられていると、ガスGの流通が妨げられるおそれがある。この場合、厚み方向を貫通する複数の孔を基板4aに設けることができる。しかしながら、孔の大きさが小さければ圧力損失が大きくなるのでガスGの流通が妨げられる。孔の大きさを大きくすると、発光素子4bや配線パターンの配置や数などに制約が生じる。
【0027】
そこで、図1に示すように、基板4aの幅寸法W1は、光触媒フィルタ5の幅寸法W2よりも小さくしている。なお、幅寸法は、一対の溝2e1、2f1(スロット)が延びる方向である。この様にすれば、適切なガスGの流通を確保することができるとともに、発光素子4bや配線パターンの配置や数などに制約が生じるのを抑制することができる。
本発明者の得た知見によれば、「W1(mm)/W2(mm)」が、0.5より小さければ、適切なガスGの流通を確保するのが容易となる。
【0028】
基板4aの材料や構造には特に限定はない。例えば、基板4aは、酸化アルミニウムや窒化アルミニウムなどの無機材料(セラミックス)、紙フェノールやガラスエポキシなどの有機材料などから形成することができる。また、基板4aは、金属板の表面を絶縁材料で被覆したメタルコア基板などであってもよい。
【0029】
発光素子4bの発熱量が多い場合には、放熱性の観点から熱伝導率の高い材料を用いて基板4aを形成することが好ましい。熱伝導率の高い材料としては、例えば、酸化アルミニウムや窒化アルミニウムなどのセラミックス、高熱伝導性樹脂、メタルコア基板などを例示することができる。高熱伝導性樹脂は、例えば、PET(Polyethylene terephthalate)やナイロン等の樹脂に、酸化アルミニウムや炭素(カーボン)などからなるフィラーを混合させたものである。
また、基板4aは、単層構造を有するものであってもよいし、多層構造を有するものであってもよい。
【0030】
発光素子4bは、基板4aの、光触媒フィルタ5と対峙する側の面に設けることができる。光触媒フィルタ5が光源4の一方の側に設けられている場合には、発光素子4bは、基板4aの一方の面に設けることができる。光触媒フィルタ5が光源4の両側に設けられている場合には、発光素子4bは、基板4aの両側の面に設けることができる。
【0031】
発光素子4bは、例えば、基板4aの面に設けられた配線パターンと電気的に接続される。発光素子4bの形式には特に限定はない。発光素子4bは、例えば、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)型などの表面実装型の発光素子とすることができる。発光素子4bは、例えば、砲弾型などのリード線を有する発光素子とすることもできる。
【0032】
また、発光素子4bは、COB(Chip On Board)により実装されるものとしてもよい。COBにより実装される発光素子4bとする場合には、チップ状の発光素子と、発光素子と配線パターンを電気的に接続する配線と、チップ状の発光素子と配線を覆う封止部などと、を基板4aの上に設けることができる。
【0033】
発光素子4bは、少なくとも1つ設けることができる。ただし、複数の発光素子4bが設けられていれば、光触媒フィルタ5の広い領域に光を照射することができる。複数の発光素子4bは、直列接続することができる。複数の発光素子4bの配置には特に限定はないが、基板4aの面にほぼ均等に設けることが好ましい。この様にすれば、光触媒フィルタ5の表面に均等に光を照射するのが容易となる。
【0034】
ここで、光触媒5bの反応の速度は、光触媒5bの吸収波長領域と光強度(光量)によって変化する。そのため、複数の発光素子4bの配置や数は、1つの発光素子4bが照射する光の光量と、光触媒5bを坦持しているシート5aの面積と、発光素子4bの発光面とシート5aとの間の距離と、に基づいて決定することができる。
例えば、光源4に最も近い光触媒フィルタ5(シート5a)の、全面積の60%以上で、光照射強度が1mW/cm以上となるように、複数の発光素子4bの配置や数などを設定することが好ましい。
【0035】
発光素子4bは、光触媒5bが坦持されたシート5aに向けて所定の波長を有する光を照射する。この場合、光触媒5bの材料や組成が変われば、光触媒5bの吸収波長領域が変化する。そのため、光触媒5bの吸収波長領域に応じて、適切な波長の光を照射する発光素子4bを選択する。
【0036】
例えば、光触媒5bが酸化チタンなどの紫外光応答型の光触媒材料を含む場合には、発光素子4bは、ピーク波長が380nm以下の光を照射する発光ダイオードやレーザダイオードなどとすることができる。また、光触媒5bが酸化タングステンなどの可視光応答型の光触媒材料を含む場合には、発光素子4bは、ピーク波長が380nm以上(例えば、400nm~600nm程度)の光を照射する発光ダイオード、レーザダイオード、有機発光ダイオードなどとすることができる。この場合、発光素子4bはピーク波長が同じものを複数設けることもできるし、ピーク波長が異なるものを複数種類設けることもできる。
【0037】
光触媒フィルタ5は、少なくとも1つ設けることができる。複数の光触媒フィルタ5を設ける場合には、複数の光触媒フィルタ5を、フレーム2の側面2cと側面2dの間に並べて設けることができる。光触媒フィルタ5は、光源4と並べて設けることができる。光触媒フィルタ5は、基板4aの発光素子4bが設けられる側に、光源4と並べて設けることができる。
【0038】
光触媒フィルタ5の数には特に限定はない。光触媒フィルタ5の数は、ガスGの流量、ガスGに含まれている物質の量、光源4から照射される光の光強度(光量)などに応じて適宜変更することができる。この場合、光触媒フィルタ5の数は、光源4の数と同じとすることもできるし、光源4の数よりも多くすることもできる。
【0039】
ここで、基板4aの両側の面に発光素子4bを設ければ、光触媒フィルタ5と光触媒フィルタ5との間に光源4を設けることができる。光源4と光触媒フィルタ5との間の距離が長くなるほど、または、光源4と光触媒フィルタ5との間に設けられる他の光触媒フィルタ5の数が多くなるほど光触媒反応の速度が遅くなる。光源4の両側のそれぞれに光触媒フィルタ5を設ければ、光源4と、光源4から最も遠い光触媒フィルタ5との間の距離を短くすることができる。また、光源4と光触媒フィルタ5との間に設けられる他の光触媒フィルタ5の数を少なくすることができる。そのため、光触媒反応の速度を速くするのが容易となる。
【0040】
また、複数の光触媒フィルタ5を設ける場合には、複数の光触媒フィルタ5に含まれる光触媒材料を同じとすることもできるし、少なくとも1つの光触媒フィルタ5に含まれる光触媒材料を異なるものとすることもできる。例えば、紫外光応答型の光触媒材料を含む光触媒フィルタと、可視光応答型の触媒材料を含む光触媒フィルタとを設けることができる。また、1つの光触媒フィルタ5に、複数種類の光触媒材料が含まれていてもよい。
【0041】
1つの光触媒フィルタ5に、複数種類の光触媒材料が含まれている場合には、光源4に、ピーク波長が異なる複数種類の発光素子4bを設けることができる。例えば、1つの光触媒フィルタ5に、紫外線応答型の光触媒材料と、可視光応答型の光触媒材料とが含まれている場合には、光源4に、ピーク波長が380nm以下の光を照射する発光素子と、ピーク波長が380nm以上(例えば、400nm~600nm程度)の光を照射する発光素子とを設けることができる。
【0042】
また、光触媒材料の種類によって、特定の処理対象(例えば、アンモニア、エチレン、VOC、細菌、ウイルスなど)に対する光触媒効果が異なる場合がある。また、複数種類の処理対象がガスGに含まれている場合がある。そのため、光触媒装置1に、複数種類の光触媒材料が含まれるようにしてもよい。この様にすれば、光触媒装置1の汎用性を高めることができる。また、各処理対象を効率よく処理することができる。
【0043】
ここで、一般的には、光触媒を坦持するシートは、複数のガラス繊維を用いて形成される。この様なシートは剛性が低いので、シートの周縁を保持する枠状部材が必要となる。また、近年においては、光触媒装置の処理能力の向上が求められており、シートを透過するガスの流量や流速が増加する傾向にある。そのため、シートの中央領域の変形を抑制するために、枠状部材に桟などが設けられる場合がある。枠状部材や桟などが設けられると、発光素子4bから照射された光が入射せず、ガスGも流通することができない領域が生じるので、処理能力の向上を図れなくなる。また、光触媒装置の小型化も困難となる。
そこで、本実施の形態に係る光触媒フィルタ5は、以下の構成を有している。
【0044】
光触媒フィルタ5は、例えば、シート5a、および、複数の光触媒5bを有する。
シート5aは、例えば、複数の線状体5a1(第1の線状体の一例に相当する)と、複数の線状体5a2(第2の線状体の一例に相当する)と、を有する。線状体5a1および線状体5a2は、金属を含む。複数の線状体5a1は、一方の方向に延びている。複数の線状体5a2は、複数の線状体5a1が延びる方向と交差する方向に延びている。線状体5a1および線状体5a2の材料は、例えば、ステンレス、ニッケル、モネル、リン青銅、チタンなどとすることができる。
線状体5a1および線状体5a2の線径(太さ)は、例えば、0.016mm以上、2.0mm以下とすることができる。この場合、線状体5a1および線状体5a2の線径は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0045】
シート5aは、例えば、複数の線状体5a1と、複数の線状体5a2とを織り込んだものである。複数の線状体5a1は、一方の方向に延び、所定の間隔で並べて設けられている。複数の線状体5a2は、複数の線状体5a1が延びる方向と交差する方向に延び、所定の間隔で並べて設けられている。この場合、線状体5a1と、線状体5a2と、が交差する部分において、少なくとも1つの線状体5a2を、隣接する2つの線状体5a1が挟むことができる(図4(b)、図5(b)を参照)。
【0046】
また、互いに隣接する2つの線状体5a1と、互いに隣接する2つ線状体5a2とにより画された領域に隙間が生ずる。すなわち、シート5aには、厚み方向を貫通する複数の隙間が設けられる。厚み方向を貫通する複数の隙間が設けられていれば、複数の隙間がガスGの流路となる。
【0047】
ここで、1インチ(25.4mm)の間にある隙間の数、すなわち、メッシュ数が大きくなると、断面積の小さな隙間が設けられることになる。隙間の断面積が小さくなると、隙間を流通するガスの圧力損失が大きくなる。
本発明者の得た知見によれば、圧力損失が50Paを越えると、シート5aを通り抜けるガスGの流量が少なくなり、所望の処理能力が得られなくなることが判明した。
【0048】
図3は、メッシュ数と圧力損失との関係を例示するためのグラフである。
図3から分かるように、メッシュ数を500以下にすれば、圧力損失を50Pa以下とすることができる。そのため、メッシュ数は、500以下とすることが好ましい。
【0049】
図4(a)は、シート5aの実施形態を例示するための写真である。
図4(b)は、図4(a)におけるシート5aをB方向から見た場合の模式図である。 図4(c)は、図4(a)におけるシート5aをC方向から見た場合の模式図である。 図4(a)~(c)に例示をしたように、線状体5a1と、線状体5a2と、が交差する部分において、隣接する2つの線状体5a2を、隣接する2つの線状体5a1が挟むことができる。例えば、線状体5a1の線径は、線状体5a2の線径と略同じとすることができる。この様な織り方は、綾畳折と称される。綾畳折とすれば、シート5aの厚み方向に曲がりくねった隙間が形成される。綾畳折とすれば、シート5aの剛性を向上させることができ、圧力損失も低減させることができる。
【0050】
本実施の形態に係るシート5aとすれば、ガラス繊維を用いたシートのように枠状部材や桟などを設ける必要がない。そのため、光素子4bから照射された光が入射する領域と、ガスGが流通する領域を大きくすることができるので、処理能力の向上を図ることができる。また、光触媒装置1の小型化を図ることができる。
【0051】
図5(a)は、シート5aaの他の実施形態を例示するための写真である。
図5(b)は、図5(a)におけるシート5aaをD方向から見た場合の模式図である。
図5(c)は、図5(a)におけるシート5aaをE方向から見た場合の模式図である。
図5(a)~(c)に例示をしたように、線状体5a1と、線状体5a2と、が交差する部分において、1つの線状体5a2を、隣接する2つの線状体5a1が挟むことができる。この場合、図5(c)に例示をしたように、例えば、線状体5a2の線径は、線状体5a1の線径よりも大きくすることができる。この様な織り方は、平畳折と称される。平畳折とすれば、隣接する2つの線状体5a1同士の間に隙間が形成される。平畳折とすれば、シート5aの剛性を向上させることができ、圧力損失も低減させることができる。
【0052】
本実施の形態に係るシート5aaとすれば、ガラス繊維を用いたシートのように枠状部材や桟などを設ける必要がない。そのため、光素子4bから照射された光が入射する領域と、ガスGが流通する領域を大きくすることができるので、処理能力の向上を図ることができる。また、光触媒装置1の小型化を図ることができる。
【0053】
複数の光触媒5bは、シート5a、5aaに坦持されている。複数の光触媒5bは、例えば、粒状を呈している。複数の光触媒5bは、光触媒材料を含んでいる。光触媒材料は、光触媒装置1の用途や、ガスGに含まれる物質などに応じて適宜選択することができる。例えば、前述したように、光触媒材料は、紫外光応答型の光触媒材料や可視光応答型の光触媒材料などとすることができる。紫外光応答型の光触媒材料は、例えば、酸化チタンなどとすることができる。可視光応答型の光触媒材料は、例えば、酸化タングステン、窒素などをドープした酸化チタン、異種金属をイオン注入した酸化チタンなどとすることができる。
【0054】
光触媒フィルタ5は、例えば、以下のようにして形成することができる。
まず、複数の線状体5a1と、複数の線状体5a2とを織り込んでシート5a、5aaを形成する。
次に、エマルジョン溶液を生成する。
例えば、純水に燐酸などを加えて、pH(水素イオン濃度)を2~7に調整した水溶液を生成する。
続いて、水溶液に、複数の光触媒5bを加える。
以上の様にして、エマルジョン溶液を生成することができる。
次に、シート5a、5aaをエマルジョン溶液に10分間程度浸漬させる。
次に、エマルジョン溶液からシート5a、5aaを引き上げて乾燥させる。
乾燥は、加熱乾燥とすることができる。
以上の様にして、光触媒フィルタ5を形成することができる。
【0055】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 光触媒装置、2 フレーム、3 蓋、4 光源、4a 基板、4b 発光素子、5 光触媒フィルタ、5a シート、5aa シート、5a1 線状体、5a2 線状体、5b 光触媒、G ガス
図1
図2
図3
図4
図5