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特許7527556計量機構、及びそれを備えた定量吐出容器並びに定量塗布具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】計量機構、及びそれを備えた定量吐出容器並びに定量塗布具
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/20 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
B65D47/20 220
B65D47/20 111
B65D47/20 300
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2019164285
(22)【出願日】2019-09-10
(65)【公開番号】P2021041956
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000206185
【氏名又は名称】大成化工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000124269
【氏名又は名称】科研製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107593
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 智広
(72)【発明者】
【氏名】小川 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】長尾 達郎
(72)【発明者】
【氏名】伊関 弘
(72)【発明者】
【氏名】木下 恵介
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-148066(JP,U)
【文献】特開2019-081591(JP,A)
【文献】特開2003-075228(JP,A)
【文献】特開2019-023091(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0259277(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状の組成物を保存するための容器本体と、容器本体に装着される計量機構とを備え、
前記計量機構は、前記容器本体に取り付けられるベースと、前記ベースとの間に計量空間を形成するヘッドとを備え、これらベース及びヘッドは、前記ヘッドの操作によって前記計量空間の体積を変化可能に構成され、
前記ベースは、前記容器本体内部から前記組成物を前記計量空間に流入させる第1流路と、前記第1流路に設けられた第1逆止弁とを備え、
前記ヘッドは、前記計量空間内の前記組成物を外部に吐出する第2流路と、前記第2流路に設けられた第2逆止弁とを備え、
前記ベースの前記第1逆止弁は、前記ヘッドの操作によって前記計量空間の体積を減少させることにより生じる前記計量空間内の陽圧を受ける上面を有する弁体を備え、前記弁体の前記上面は、前記陽圧を前記上面に受けることによって前記計量機構が傾いた場合でも前記第1逆止弁を封止させる封止力が前記弁体に生じるよう構成されている、定量吐出容器。
【請求項2】
請求項1に記載の定量吐出容器において、
前記第1流路には略平坦な弁座が形成され、前記第1逆止弁の前記弁体は、前記弁座に前記計量空間側から前記容器本体側へと当接する板状である、定量吐出容器。
【請求項3】
請求項2に記載の定量吐出容器において、前記第1逆止弁の前記弁体は、円板状であり、かつ、前記計量空間と外部の圧力が実質的に同じ場合、又は前記計量空間の圧力が外部の圧力に対して陽圧となった場合に、前記上面及び外周面のみが前記計量空間に露出する、定量吐出容器。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の定量吐出容器において、
前記第1逆止弁は、前記弁体を前記弁座に向けて付勢するよう前記弁体の外周部を支持する弾性支持片を有する、定量吐出容器。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の定量吐出容器において、
前記容器本体内部を外気に連通させる外気導入孔が前記ベース又は前記容器本体に設けられており、前記第1逆止弁は、前記ヘッドの操作によって前記計量空間の体積が増大するように変化したときの前記計量空間内の陰圧と前記容器本体内の外気圧との圧力差によって開弁動作し、前記第2逆止弁は、前記ヘッドの操作によって前記計量空間の体積が減少するように変化したときの前記計量空間内の陽圧と外気圧との圧力差によって開弁動作する、定量吐出容器。
【請求項6】
請求項5に記載の定量吐出容器において、
前記外気導入孔は前記ベースに設けられており、
前記計量空間の体積が最小値であるとき前記外気導入孔を閉塞し、前記計量空間が増加するようヘッドを操作すると前記外気導入孔を開放するプラグが前記ヘッドに設けられている、定量吐出容器。
【請求項7】
請求項6に記載の定量吐出容器において、
前記プラグは、前記計量空間を形成するシリンダの先端部によって構成されている、定量吐出容器。
【請求項8】
液状の組成物を計量するための計量機構であって、
前記計量機構は、ベースと、前記ベースとの間に計量空間を形成するヘッドとを備え、
前記ベースは、液状の前記組成物が供給部から前記計量空間に流入するための第1流路と、前記第1流路に設けられた第1逆止弁とを備え、
前記ヘッドは、前記計量空間内の組成物を外部に吐出するための第2流路と、前記第2流路に設けられた第2逆止弁とを備え、
前記計量機構は、前記計量空間の体積を増大させる計量操作と、前記計量空間の体積を減少させる吐出操作からなる前記ヘッドの所定の操作によって、予め定めた一定量又は任意の容量が計量された組成物を外部に吐出することができ、
前記ベースの前記第1逆止弁は、前記ヘッドの操作によって前記計量空間の体積を減少させることにより生じる前記計量空間内の陽圧を受ける上面を有する弁体を備え、前記弁体の前記上面は、前記陽圧を前記上面に受けることによって前記計量機構が傾いた場合でも前記第1逆止弁を封止させる封止力が前記弁体に生じるよう構成されている、計量機構。
【請求項9】
前記計量操作が、
前記ヘッドを前記ベースに対して引き上げることにより、前記第2逆止弁が閉塞されたまま前記第1逆止弁が開放され、液状の前記組成物が前記ベースと前記ヘッドの間に設けられた前記計量空間に流入することにより、予め定めた一定量又は任意の容量を計量する操作であり、かつ、
前記吐出操作が、
前記ヘッドを前記ベースに対して押し下げることにより、前記第1逆止弁が閉塞されるとともに、前記第2逆止弁が開放され、計量された前記組成物を外部に吐出する操作である、請求項8に記載の計量機構。
【請求項10】
前記第1流路に、弁座が設けられ、前記第1逆止弁の前記弁体が、前記弁座に対し前記計量空間側に配置され、
前記第1逆止弁は、
a) 前記計量空間と外部の圧力が実質的に同じ場合に、前記第1逆止弁の前記弁体が、前記第1流路に設けられた前記弁座に、前記計量空間側から前記供給部側へと、当接することで閉塞し、
b) 前記計量空間の圧力が前記供給部の圧力に対して陰圧となった場合に、開放される逆止弁であり、かつ、
前記第2流路に、弁座が設けられ、前記第2逆止弁の弁体が、前記第2流路の前記弁座に対し外部側に配置され、
前記第2逆止弁は、
c) 前記計量空間と外部の圧力が実質的に同じ場合に、前記第2逆止弁の前記弁体が、前記第2流路に設けられた前記弁座に、外部側から前記計量空間側へと、当接することで閉塞し、
d) 前記計量空間の圧力が外部の圧力に対して陽圧となった場合に、開放される逆止弁である、請求項8、又は請求項9に記載の計量機構。
【請求項11】
前記第1流路に設けられた前記弁座は略平坦である、請求項10に記載の計量機構。
【請求項12】
前記第1逆止弁の前記弁体が、シリコンを含む素材からなる円板状の形状であり、かつ、前記計量空間と前記供給部の圧力が実質的に同じ場合、又は前記計量空間の圧力が前記供給部の圧力に対して陽圧となった場合に、前記弁体の上面及び外周面のみが前記計量空間に露出する、請求項8から請求項11のいずれか一つに記載の計量機構。
【請求項13】
前記第1逆止弁が、前記弁体を前記弁座に向けて付勢するよう前記弁体の外周部を支持する弾性支持片を有する、請求項10又は請求項11に記載の計量機構。
【請求項14】
前記組成物が、ヒトの身体表面に塗布するための組成物であって、液剤、ローション剤、クリーム剤、軟膏剤、軽軟膏剤、泡剤、リニメント剤、又はゲル剤の形態で提供される医薬製剤又は化粧品である、請求項8から請求項13のいずれか一つに記載の計量機構。
【請求項15】
前記組成物の25℃における粘度が、95000mPa・s以下である医薬製剤である、請求項8から請求項14のいずれか一つに記載の計量機構。
【請求項16】
前記組成物が、ヒトの身体表面に塗布され、真菌症、爪白癬症、アトピー性皮膚炎、乾癬、掻痒、疼痛、酒さ、創傷、褥瘡、表皮水疱症、色素性乾皮症、先天性白皮症、性腺機能低下症、多汗症の治療、予防、又は処置の為に用いられる医薬製剤である、請求項8から請求項15のいずれか一つに記載の計量機構。
【請求項17】
前記組成物が、ヒトの身体表面に塗布され、真菌症、性腺機能低下症、又は多汗症の治療、予防、又は処置の為に用いられる医薬製剤である、請求項8から請求項15のいずれか一つに記載の計量機構。
【請求項18】
前記組成物が、ヒトの腋下に塗布され、性腺機能低下症、又は多汗症の治療、予防又は処置に用いられる医薬製剤である、請求項15に記載の計量機構。
【請求項19】
計量機構と塗布面を含む、定量塗布具であって、
前記計量機構は、請求項8から請求項18のいずれか一つに記載の計量機構であり、
前記塗布面は、前記ヘッドの上面側に備えられ、前記ヘッドの所定の操作によって計量され吐出された組成物を、身体表面に塗布するために保持する塗布面である、定量塗布具。
【請求項20】
前記ヘッドはヘッド本体を備え、前記塗布面が、前記ヘッド本体の上面であるか、前記ヘッド本体の上面側に備えられた液ホルダーの上面であるか、あるいは、前記ヘッド本体の上面と前記液ホルダーの上面との組み合わせである、請求項19に記載の定量塗布具。
【請求項21】
前記第2流路は、前記塗布面に開口する1又は複数の液吐出口を有する、請求項19又は請求項20に記載の定量塗布具。
【請求項22】
前記第2流路の複数の液吐出口が前記塗布面の中央部に設けられている、請求項21に記載の定量塗布具。
【請求項23】
前記塗布面の平面視形状が、直径が20mmから45mmの円形、又は短径及び長径が20mmから45mmの楕円形であり、前記塗布面が、前記液吐出口の他には穴及び突起物がない平坦面、凹面又は凸面であり、かつ、前記塗布面は、その外周縁に設けられた堤部によって取り囲まれている、請求項21又は22に記載の定量塗布具。
【請求項24】
液状の組成物を収容することができる容器本体と、定量塗布具とを備える定量吐出容器であって、
前記定量塗布具は、請求項19から請求項23のいずれか一つに記載の定量塗布具であり、
前記定量塗布具に備えられた前記計量機構の前記ベースは、前記容器本体に取り付けられるベースであり、前記第1流路を介して、前記計量空間と前記供給部としての容器本体内部とが連通することができる、定量吐出容器。
【請求項25】
前記容器本体内部を外気に連通させる外気導入孔が前記ベース又は前記容器本体に設けられている、請求項24に記載の定量吐出容器。
【請求項26】
前記外気導入孔が前記ベースに設けられており、
前記計量空間の体積が最小値であるとき前記外気導入孔を閉塞し、前記計量空間が増加するよう前記ヘッドを操作すると前記外気導入孔を開放するプラグが前記ヘッドに設けられている、請求項25に記載の定量吐出容器。
【請求項27】
液状の組成物を保存するための容器本体と、前記容器本体に装着される計量機構とを備え、
前記計量機構は、前記容器本体に取り付けられるベースと、前記ベースとの間に計量空間を形成するヘッドとを備え、これらベース及びヘッドは、前記ヘッドの操作によって前記計量空間の体積を変化可能に構成され、
前記ベースは、前記容器本体内部から組成物を前記計量空間に流入させる第1流路と、前記第1流路に設けられた第1逆止弁とを備え、
前記ヘッドは、前記計量空間内の組成物を外部に吐出する第2流路と、前記第2流路に設けられた第2逆止弁とを備え、
前記ベースの前記第1逆止弁は、前記計量空間内の圧力が高いほど封止力が増大するような外表面形状を有する弁体を備えており、
前記容器本体内部を外気に連通させる外気導入孔が前記ベースに設けられており、前記第1逆止弁は、前記ヘッドの操作によって前記計量空間の体積が増大するように変化したときの前記計量空間内の陰圧と前記容器本体内の外気圧との圧力差によって開弁動作し、前記第2逆止弁は、前記ヘッドの操作によって前記計量空間の体積が減少するように変化したときの前記計量空間内の圧力と外気圧との圧力差によって開弁動作し、
前記計量空間の体積が最小値であるとき前記外気導入孔を閉塞し、前記計量空間が増加するよう前記ヘッドを操作すると前記外気導入孔を開放するプラグが前記ヘッドに設けられている、定量吐出容器。
【請求項28】
請求項27に記載の定量吐出容器において、
前記プラグは、前記計量空間を形成するシリンダの先端部によって構成されている、定量吐出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状の組成物の予め定めた一定量又は任意の容量を計量して吐出するための計量機構、及びそれを備えた定量吐出容器、及び定量塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、液状の組成物を計量し、吐出することができる様々な定量吐出容器が提供されている。
例えば、使用者がポンプを押し込むことで、吐出操作と、バネの反発による自動の計量操作とが同時に行われる一般的なボール弁を用いたポンプは、市場に多く流通している(参考文献:株式会社三谷バルブ製品カタログ Z-700-CO14、及び、実開平6-69161号公報等)。
【0003】
簡単な操作で常時略一定量の液を計量、注出することのできる容器も提供されている。
下記の特許文献1に開示されている液体定量注出容器は、容器体(A)と、容器体(A)に装着される計量機構とを備えている。計量機構は、容器体(A)に取り付けられるシリンダ(B)と、シリンダ(B)との間に計量空間を形成する可動計量部(C)とを備えている。これらシリンダ(B)及び可動計量部(C)は、可動計量部(C)の引き上げ操作によって計量空間の体積が最大となり、可動計量部(C)の押し下げ操作によって計量空間の体積が最小となるよう構成されている。そして、可動計量部(C)の引き上げ及び押し下げ操作によって、可動計量部(C)の上端に設けた計量カップ(19)に略一定量の内容液を計量可能に構成されている。
【0004】
より詳細には、シリンダ(B)の下端部には連結筒部(9)が設けられ、この連結筒部(9)に吸い上げパイプ(15)の上端部が固定されており、これら吸い上げパイプ(15)及び連結筒部(9)を介して容器体(A)の底部から吸い上げた内容液が計量空間に流入するよう構成されている。また、連結筒部(9)内には弁座(11)が突設されており、この弁座(11)上に玉状弁体(12)を載置することにより吸い込み弁(7)が構成されている。
【0005】
また、可動計量部(C)は、吐出弁(17)を有する吸い上げ管(18)と、この吸い上げ管(18)の下端部外周より突設するピストン(16)とを有し、ピストン(16)はシリンダ(B)に内嵌されている。
【0006】
なお、シリンダ(B)上部周壁には外気導入孔(a)が設けられ、この外気導入孔(a)を介して容器体(A)の内部が外気と連通することによって、容器体(A)の内部圧力が外気圧に維持されるよう構成されている。
【0007】
上記従来の定量注出容器を使用する際は、まず、可動計量部(C)の押し下げ状態でその下方のシリンダ(B)内に液を充満させる初期動作を行う。その状態から可動計量部(C)を最上昇位置まで引き上げると、吸い込み弁(7)が開いて容器体(A)内の液がパイプ(15)を介してシリンダ(B)内へ導入される。次いで、可動計量部(C)を最下降位置まで押し下げると、吐出弁(17)が開いてシリンダ(B)内の略一定量の液が計量カップ(19)内へ導入される。
【0008】
これまで、塗布具としての機能を有する計量容器も提供されている。
例えば、下記の特許文献2に開示されている計量注出塗布容器は、容器本体(12)と、キャップ(82)と、バルブ(60)と、塗布ヘッド(76)と、計量空間(46)を有する計量器(38)とを備えている。
特許文献2の容器本体(12)から薬液を取り出して使用するときは、まずキャップ(82)を軸周りに回して引き上げて外す。この時、キャップ(82)の引き上げに伴い、バルブ(60)と塗布ヘッド(76)は摺動して引き上げられる。この時、バルブ(60)の第2弁が閉鎖し、第1弁が開いて、容器本体(12)の内部空間が計量器(38)に連通する計量状態になる。
【0009】
そして、この計量状態で容器本体(12)を倒立させると、容器本体(12)の薬液が計量器(38)の計量空間(46)に流入して充満し、一定量が計量される。そして、その状態のまま頭皮等の被塗布面に近づけ、塗布ヘッド(76)で被塗布面に押し付ける。すると、バルブ(60)が計量器(38)に押し下げられて、第1弁が閉鎖し、第2弁が弁座から離れ、計量空間(46)内に充満していた薬液だけが吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第3667497号公報
【文献】特許第6496655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一般的なボール弁を用いたポンプは、使用者がポンプを押し込むことで、吐出操作と、バネの反発による自動の計量操作とが同時に行われる。しかし、特に低粘度の組成物を計量および吐出する場合、ポンプを傾けて操作すると、ボール弁が動き定量性が損なわれる。また、ポンプの吐出量は、押し込む量と必ずしも比例していないことから、使用者が任意の量を吐出することが難しい。さらに、部品点数が多く製造コストが嵩む。
したがって、本発明が解決しようとする課題の一つは、一般的なボール弁を用いたポンプとは全く異なる計量機構を提供することであり、具体的には、部品点数が少なく、製造コストが低く、使用者にとって簡便に使用でき、かつ、使用者が任意の量で計量し、吐出することができる計量機構を提供することである。
さらに、本発明が解決しようとする課題の一つは、前記の計量機構を備える定量塗布具、及び定量吐出容器の提供することである。
【0012】
特許文献1に記載された従来の定量注出容器では、吸い込み弁が球状弁体によって主構成されており、この球状弁体は、それ自体の自重によって弁座上に載置された状態となる。
したがって、吐出操作をする際に容器を傾けると、球状弁体が転がって弁座から離脱してしまい、吸い上げられたシリンダ内の組成物の一部が逆流してしまい、計量した量を正確に吐出できないという問題がある。
【0013】
また、特許文献1に記載された従来の定量注出容器では、外気導入孔がシリンダの上部周壁に設けられているが、この外気導入孔は常時開口しているため、容器を横倒しにしたり上下反転したりすると、外気導入孔から内容液が漏れ出す可能性がある。
そこで、本発明で解決しようとする課題の一つは、傾きによって計量性能及び吐出性能が損なわれない計量機構、及びその計量機構を備える定量塗布具若しくは定量吐出容器を提供することである。
【0014】
特許文献2に記載された従来の計量注出塗布容器は、第一弁、第二弁がバルブに一体的に設けられ、塗布ヘッドに連結されている。バルブは塗布ヘッドの引き上げ、押し込みによって上下し、開閉を切り替える開閉弁であり逆止弁ではなく、しかも、計量空間と容器本体との閉鎖と、計量空間と外気との連通が同時に行われるため、使用時の容器の傾き、引き上げ力、あるいは、押し込み力(押し込み速度も含む)などによっては、組成物が逆流し、あるいは、液漏れが生じ、上手く計量できないことがある。また、引き上げ力や押し込み力によって、逆流や液だれの程度が変動する一方で、これらは組成物の粘度にも依存するため、特許文献2に記載された計量注出塗布容器は、種々の粘度の薬剤に適用可能な計量注出塗布容器とは言い難い。
【0015】
加えて、特許文献2に記載された計量注出塗布容器は、容器を倒立させて、計量空間内に液を充填し、倒立状態を維持したまま、吐出することが必要となることから、使用者にとって、操作が煩雑であり誤操作が生じやすい。
そこで、本発明で解決しようとする課題の一つは、吐出した時に、液状の組成物が液漏れや噴出することなく、適切かつ簡便に身体表面に塗布することができる定量塗布具、又は塗布具としての機能を有する定量吐出容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明者らは、容器等の傾きに依存せず、使用者が簡便に組成物を計量及び吐出できる計量機構を鋭意検討した。その結果、本発明者らは、ベースと、ベースとの間に計量空間を形成するヘッドとを備え、ベース及びヘッドが、所定のヘッドの操作によって計量空間の体積を増減できるように変化可能に構成される計量機構は、前記課題を解決する計量機構であることを見出した。
【0017】
さらに、本発明者らは、本発明の前記計量機構と、容器本体とを組み合わせた定量吐出容器が、容器を傾けても計量及び吐出ができ、液状の医薬品や化粧品の定量吐出容器として有用であることを見出した。
【0018】
続いて、本発明者らは、塗布具としての機能を有する塗布面を備えた計量機構を検討した。その結果、前記計量機構の液吐出口を塗布面に設けた定量塗布具において、液吐出口を複数設け、流路を分散させると、吐出操作を素早く行った場合おいても組成物の噴出が抑えられることを見出した。加えて、塗布面を略面一にし、かつ、堤部を設けることで、液だれが防止されることが判明した。
本発明者らは、さらに検討を行い、このような定量塗布具が、身体表面に医薬製剤又は化粧品を塗布するために簡便に使用でき、かつ、液だれや液の噴出が少なく、使用者にとって極めて有用であることを明らかにした。
【0019】
さらに、本発明者らは、上記の定量塗布具を用いて、医薬製剤又は化粧品を身体表面に塗布することで、身体表面に生じた様々な医療上又は美容上の必要な処置、治療又は予防の方法を見出し、計量機構、定量吐出容器、及び定量塗布具に係る本発明を完成させた。
【0020】
すなわち、本発明は以下の実施形態を含む。
【0021】
[1] 液状の組成物を保存するための容器本体と、容器本体に装着される計量機構とを備え、
計量機構は、容器本体に取り付けられるベースと、前記ベースとの間に計量空間を形成するヘッドとを備え、これらベース及びヘッドは、ヘッドの操作によって計量空間の体積を変化可能に構成され、
ベースは、容器本体内部から組成物を計量空間に流入させる第1流路と、前記第1流路に設けられた第1逆止弁とを備え、
ヘッドは、計量空間内の組成物を外部に吐出する第2流路と、前記第2流路に設けられた第2逆止弁とを備え、
ベースの第1逆止弁は、計量空間内の圧力が高いほど封止力が増大するような外表面形状を有する弁体を備えている、定量吐出容器。
【0022】
[2] 前記[1]に記載の定量吐出容器において、
第1流路には略平坦な弁座が形成され、第1逆止弁の弁体は、前記弁座に計量空間側から容器本体側へと当接する板状であって、封止力が増大するように計量空間内の圧力を受ける上面を有する、定量吐出容器。
[3] 前記[2]に記載の定量吐出容器において、第1逆止弁の弁体は、円板状であり、かつ、計量空間と外部の圧力が実質的に同じ場合、又は計量空間の圧力が外部の圧力に対して陽圧となった場合に、前記上面及び外周面のみが計量空間に露出する、定量吐出容器。
[4] 前記[2]又は前記[3]に記載の定量吐出容器において、
第1逆止弁は、弁体を弁座に向けて付勢するよう弁体の外周部を支持する弾性支持片を有する、定量吐出容器。
[5] 前記[1]から前記[4]のいずれかに記載の定量吐出容器において、
容器本体内部を外気に連通させる外気導入孔がベース又は容器本体に設けられており、第1逆止弁は、ヘッドの操作によって計量空間の体積が増大するように変化したときの計量空間内の陰圧と容器本体内の外気圧との圧力差によって開弁動作し、第2逆止弁は、ヘッドの操作によって計量空間の体積が減少するように変化したときの計量空間内の圧力と外気圧との圧力差によって開弁動作する、定量吐出容器。
[6] 前記[5]に記載の定量吐出容器において、
外気導入孔はベースに設けられており、
計量空間の体積が最小値であるとき外気導入孔を閉塞し、計量空間が増加するようヘッドを操作すると外気導入孔を開放するプラグがヘッドに設けられている、定量吐出容器。
[7] 前記[6]に記載の定量吐出容器において、
前記プラグは、計量空間を形成するシリンダの先端部によって構成されている、定量吐出容器。
【0023】
[8] 液状の組成物を計量するための計量機構であって、
前記計量機構は、ベースと、前記ベースとの間に計量空間を形成するヘッドとを備え、
前記ベースは、液状の前記組成物が供給部から計量空間に流入するための第1流路と、前記第1流路に設けられた第1逆止弁とを備え、
前記ヘッドは、計量空間内の組成物を外部に吐出するための第2流路と、前記第2流路に設けられた第2逆止弁とを備え、
前記計量機構は、計量空間の体積を増大させる計量操作と、計量空間の体積を減少させる吐出操作からなるヘッドの所定の操作によって、予め定めた一定量又は任意の容量が計量された組成物を外部に吐出することができる、計量機構。
【0024】
[9] 前記計量操作が、
前記ヘッドを前記ベースに対して引き上げることにより、第2逆止弁が閉塞されたまま第1逆止弁が開放され、液状の組成物が前記ベースと前記ヘッドの間に設けられた計量空間に流入することにより、予め定めた一定量又は任意の容量を計量する操作であり、かつ、
前記吐出操作が、
前記ヘッドを前記ベースに対して押し下げることにより、第1逆止弁が閉塞されるとともに、第2逆止弁が開放され、計量された前記組成物を外部に吐出する操作である、前記[8]に記載の計量機構。
【0025】
[10] 前記第1流路に、弁座が設けられ、前記第1逆止弁の弁体が、弁座に対し計量空間側に配置され、
前記第1逆止弁は、
a) 計量空間と外部の圧力が実質的に同じ場合に、第1逆止弁の弁体が、前記第1流路に設けられた弁座に、計量空間側から供給部側へと、当接することで閉塞し、
b) 計量空間の圧力が供給部の圧力に対して陰圧となった場合に、開放される逆止弁であり、かつ、
前記第2流路に、弁座が設けられ、前記第2逆止弁の弁体が、弁座に対し外部側に配置され、
前記第2逆止弁は、
c) 計量空間と外部の圧力が実質的に同じ場合に、第2逆止弁の弁体が、前記第2流路に設けられた弁座に、外部側から計量空間側へと、当接することで閉塞し、
d) 計量空間の圧力が外部の圧力に対して陽圧となった場合に、開放される逆止弁である、前記[8]又は前記[9]に記載の計量機構。
【0026】
[11] 前記第1流路に設けられた弁座は略平坦であり、
前記第1逆止弁は、さらに、
f) 計量空間の圧力が供給部の圧力に対して陽圧となった場合に、封止力が増大するように形成される、前記[10]に記載の計量機構。
【0027】
[12] 第1逆止弁の前記弁体が、シリコンを含む素材からなる円板状の形状であり、かつ、計量空間と供給部の圧力が実質的に同じ場合、又は計量空間の圧力が供給部の圧力に対して陽圧となった場合に、前記弁体の上面及び外周面のみが計量空間に露出する、前記[8]から前記[11]のいずれか一つに記載の計量機構。
[13] 前記第1逆止弁が、弁体を弁座に向けて付勢するよう弁体の外周部を支持する弾性支持片を有する、前記[8]から前記[12]のいずれか一つに記載の計量機構。
【0028】
[14] 前記組成物が、ヒトの身体表面に塗布するための組成物であって、液剤、ローション剤、クリーム剤、軟膏剤、軽軟膏剤、泡剤、リニメント剤、又はゲル剤の形態で提供される医薬製剤又は化粧品である、前記[8]から前記[13]のいずれか一つに記載の計量機構。
[15] 前記組成物の25℃における粘度が、100000mPa・s以下である医薬製剤である、前記[8]から前記[14]のいずれか一つに記載の計量機構。
[16] 前記組成物の25℃における粘度が、95000mPa・s以下である医薬製剤である、前記[8]から前記[15]のいずれか一つに記載の計量機構。
[17] 前記組成物の25℃における粘度が、30000mPa・s以下である医薬製剤である、前記[8]から前記[16]のいずれか一つに記載の計量機構。
[18] 前記組成物の25℃における粘度が、1000mPa・s以下である医薬製剤である、前記[8]から前記[17]のいずれか一つに記載の計量機構。
【0029】
[19] 前記組成物が、ヒトの身体表面に塗布され、真菌症、爪白癬症、アトピー性皮膚炎、乾癬、掻痒、疼痛、酒さ、創傷、褥瘡、表皮水疱症、色素性乾皮症、先天性白皮症、性腺機能低下症、多汗症の治療、予防、又は処置の為に用いられる医薬製剤である、前記[8]から前記[18]のいずれか一つに記載の計量機構。
[20] 前記組成物が、ヒトの身体表面に塗布され、真菌症、性腺機能低下症、又は多汗症の治療、予防、又は処置の為に用いられる医薬製剤である、前記[8]から前記[18]のいずれか一つに記載の計量機構。
[21] 前記組成物が、ヒトの腋下に塗布され、性腺機能低下症、又は多汗症の治療、予防又は処置に用いられる医薬製剤である、前記[16]に記載の計量機構。
【0030】
[22] 計量機構と塗布面を含む、定量塗布具であって、
前記計量機構は、前記[8]から前記[21]のいずれか一つに記載の計量機構であり、
前記塗布面は、前記ヘッドの上面側に備えられ、前記ヘッドの所定の操作によって計量され吐出された組成物を、身体表面に塗布するために保持する塗布面である、定量塗布具。
【0031】
[23] 前記塗布面が、ヘッド本体の上面であるか、ヘッド本体の上面側に備えられた液ホルダーの上面であるか、あるいは、ヘッド本体の上面と液ホルダーの上面との組み合わせである、前記[22]に記載の定量塗布具。
[24] 前記第2流路は、前記塗布面に開口する1又は複数の液吐出口を有する、前記[22]又は前記[23]に記載の定量塗布具。
[25] 前記第2流路の複数の液吐出口が前記塗布面の中央部に設けられている、前記[24]に記載の定量塗布具。
[26] 前記塗布面が、前記第2流路の液吐出口の他には穴及び突起物がない平坦面、凹面又は凸面である、前記[24]又は前記[25]に記載の定量塗布具。
【0032】
[27] 前記塗布面の平面視形状が、円形、又は楕円形である、前記[22]から前記[26]のいずれか1つに記載の定量塗布具。
[28] 前記塗布面の平面視形状が、直径が20mmから45mmの円形、又は短径及び長径が20mmから45mmの楕円形である、前記[27]に記載の定量塗布具。
[29] 前記塗布面の平面視形状が、直径が20mmから45mmの円形、又は短径及び長径が20mmから45mmの楕円形であり、前記塗布面が、前記液吐出口の他には穴及び突起物がない平坦面、凹面又は凸面であり、かつ、前記塗布面は、その外周縁に設けられた堤部によって取り囲まれている、前記[22]から前記[25]のいずれか1つに記載の定量塗布具。
【0033】
[30] 液状の組成物を収容することができる容器本体と、定量塗布具とを備える定量吐出容器であって、
前記定量塗布具は、前記[22]から前記[29]のいずれか一つに記載の定量塗布具であり、
前記定量塗布具に備えられた計量機構のベースは、容器本体に取り付けられるベースであり、前記第1流路を介して、前記計量空間と前記供給部としての容器本体内部とが連通することができる、定量吐出容器。
[31] 容器本体内部を外気に連通させる外気導入孔が前記ベース又は容器本体に設けられている、前記[30]に記載の定量吐出容器。
[32] 前記外気導入孔が前記ベースに設けられており、
計量空間の体積が最小値であるとき外気導入孔を閉塞し、計量空間が増加するようヘッドを操作すると外気導入孔を開放するプラグがヘッドに設けられている、前記[30]又は前記[31]に記載の定量吐出容器。
【0034】
[33]ヒトの身体表面に医薬製剤を塗布することよって、ヒトの疾病を治療、予防、又は処置するための方法であって、
a)液状の医薬製剤を収容することができる容器本体と、容器本体に装着される計量機構とを備え、
計量機構は、容器本体に取り付けられるベースと、前記ベースとの間に計量空間を形成するヘッドとを備え、
前記計量機構は、身体表面に医薬製剤を塗布するための塗布面を有し、
前記ベースは、医薬製剤が容器本体内部から計量空間に流入するための第1流路と、前記第1流路に設けられた第1逆止弁とを備え、
前記ヘッドは、計量空間内の医薬製剤が塗布面に吐出するための第2流路と、前記第2流路に設けられた第2逆止弁とを備え、
前記計量機構は、計量空間の体積を増大させる計量操作と、計量空間の体積を減少させる吐出操作からなるヘッドの所定の操作によって、予め定めた一定量又は任意の容量が計量された医薬製剤を外部に吐出することができる計量機構である、定量吐出容器を提供する工程と、
b)前記ヘッドを前記ベースに対して引き上げることにより、第2逆止弁が閉塞されたまま第1逆止弁が開放され、医薬製剤が前記ベースと前記ヘッドの間に設けられた計量空間に流入することにより、予め定めた一定量又は任意の容量を計量する工程と、
c)前記ヘッドを前記ベースに対して押し下げることにより、第1逆止弁が閉塞されるとともに、第2逆止弁が開放され、計量された前記医薬製剤を前記塗布面に吐出する工程と、
d)塗布面に吐出された前記医薬製剤を身体表面に塗布する工程と、
を含む方法。
【0035】
[34] 前記身体表面が、腋下である、前記[33]に記載の方法。
[35] 前記疾病が、真菌症、乾癬、アトピー性皮膚炎、掻痒、性腺機能低下症、又は多汗症である、前記[33]、又は前記[34]に記載の方法。
【0036】
さらに、本発明は以下の実施形態を含む。
【0037】
[1A] 液状の組成物を収容することができる容器本体と、容器本体に装着される計量機構とを備える定量吐出容器であって、
計量機構は、容器本体に取り付けられるベースと、前記ベースとの間に計量空間を形成するヘッドとを備え、
前記ベースは、組成物が容器本体内部から計量空間に流入するための第1流路と、前記第1流路に設けられた第1逆止弁とを備え、
前記ヘッドは、計量空間内の組成物が前記塗布面に吐出するための第2流路と、前記第2流路に設けられた第2逆止弁とを備え、
前記計量機構は、計量空間の体積を増大させる計量操作と、計量空間の体積を減少させる吐出操作からなるヘッドの所定の操作によって、予め定めた一定量又は任意の容量が計量された組成物を前記塗布面に吐出することができる、定量吐出容器。
[8A] 液状の組成物を計量するための計量機構であって、
前記計量機構は、ベースと、前記ベースとの間に計量空間を形成するヘッドとを備え、
前記ベースは、液状の前記組成物が供給部から計量空間に流入するための第1流路と、前記第1流路に設けられた第1逆止弁とを備え、
前記ヘッドは、計量空間内の組成物を外部に吐出するための第2流路と、前記第2流路に設けられた第2逆止弁とを備え、
ベースの第1逆止弁は、計量空間内の圧力が高いほど封止力が増大するような外表面形状を有する弁体を備えており、
前記計量機構は、計量空間の体積を増大させる計量操作と、計量空間の体積を減少させる吐出操作からなるヘッドの所定の操作によって、予め定めた一定量又は任意の容量が計量された組成物を外部に吐出することができる、計量機構。
【0038】
[22A] 計量機構と塗布面からなる、定量塗布具であって、
計量機構は、液状の組成物を計量するための計量機構であって、
前記計量機構は、ベースと、前記ベースとの間に計量空間を形成するヘッドとを備え、
前記ベースは、液状の組成物が供給部から計量空間に流入するための第1流路と、前記第1流路に設けられた第1逆止弁とを備え、
前記ヘッドは、計量空間内の組成物を塗布面に吐出するための第2流路と、前記第2流路に設けられた第2逆止弁とを備え、
前記計量機構は、計量空間の体積を増大させる計量操作と、計量空間の体積を減少させる吐出操作からなるヘッドの所定の操作によって、予め定めた一定量又は任意の容量が計量された組成物を塗布面に吐出することができる、計量機構であり、
塗布面は、前記ヘッドの上面側に備えられ、前記ヘッドの所定の操作によって、計量され吐出された前記組成物を受けて、かつ、前記組成物を身体表面に塗布するための塗布面である、定量塗布具。
【発明の効果】
【0039】
本発明の計量機構、及びそれを備える定量吐出容器並びに定量塗布具は、計量機構を傾けた状態で計量操作及び吐出操作を行う場合でも、予め定めた一定量又は任意の容量を計量し及び吐出することができる。したがって、本発明の計量機構等は、医薬製剤又は化粧品の容器等として適する。例えば制汗剤容器など、使用者が手に持って、簡便に計量操作、吐出操作、並びに、組成物の塗布操作を行うことができるため、特に有用である。
さらに、本発明の計量機構等は、部品点数が少なく、低コストで製造することができる点においても、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る定量吐出容器の全体縦断面図である。
図2図2は、図1の容器の分解縦断面斜視図である。
図3図3は、図1の容器のヘッドの底面側の拡大斜視図である。
図4図4は、計量空間が最小となるようヘッドを操作したときの図1の容器の斜視図である。
図5図5は、計量空間が最大となるようヘッドを操作したときの図1の容器の斜視図である。
図6図6は、計量空間が最小となるようヘッドを操作したときの図1の容器の要部拡大縦断面図である。
図7図7は、計量空間が最大となるようヘッドを操作したときの図1の容器の要部拡大縦断面図である。
図8図8は、図1の容器における第1逆止弁の拡大斜視図である。
図9図9は、本発明の別の実施形態に係る定量吐出容器の全体縦断面図である。
図10図10は、図9の容器の分解縦断面斜視図である。
図11図11は、計量空間が最小となるようヘッドを操作したときの図9の容器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の計量機構、定量吐出容器、及び定量塗布具の実施形態、並びにそれらの各部材について説明する。
【0042】
本発明の計量機構は、ベースとヘッドを有し、ベースとヘッドとの間には計量空間が形成される。使用者は、ヘッドをベースに対して上下に摺動させる操作を行い、それにより前記計量空間の体積が変動する。
本発明に含まれる定量吐出容器、及び定量塗布具は、前記の計量機構を備える。
なお、本明細書中、「上下」、「高低」、「垂直」など、方向を指し示す用語は、添付の図1における状態で容器を静置した場合における表現である。
【0043】
本発明の計量機構のベースは、ベース本体と、第1流路に設けられた第1逆止弁とを備え、ベース本体には、液状の組成物が供給部(例えば、容器本体内部)から計量空間に流入するための第1流路が設けられる。
本発明の計量機構のヘッドは、ヘッド本体と、第2流路に設けられた第2逆止弁とを備え、ヘッド本体には、計量空間内の組成物を外部(例えば、塗布面)に吐出するための第2流路が設けられる。
また、本発明の計量機構のヘッドは、吐出操作を素早く行った場合においても、組成物が勢いよく噴出することを防ぐために、複数の液吐出口に向けて第2流路を分岐させるための液ホルダーを備えていてもよい。
本発明の計量機構は、計量空間の体積を増大させる計量操作と、計量空間の体積を減少させる吐出操作からなるヘッドの所定の操作によって、予め定めた一定量又は任意の容量が計量された組成物を外部に吐出することができる。
ここで、本明細書中、第1逆止弁において、供給部側(例えば、容器本体側)を一次側とも呼び、計量空間側を二次側とも呼ぶ。また、第2逆止弁において、計量空間側を一次側とも呼び、外部側(例えば、塗布面側)を二次側とも呼ぶ。
【0044】
より具体的には、本発明の計量機構に設けられたベースは、ベース本体と、計量機構の外部に設けられた供給部(例えば、容器本体内部)から組成物を計量空間に流入させる第1流路と、前記第1流路に設けられた第1逆止弁とを備える。これにより、第1逆止弁の一次側(すなわち、例えば容器本体側)よりも二次側(すなわち、計量空間側)の圧力が低くなると、この圧力差によって第1逆止弁が開弁動作して、第1流路を介して供給部から計量空間に組成物が流入する。
なお、本発明の一実施形態において、第1流路には、吸い上げ管が設けられてもよい。後述するように、容器本体と前記計量機構からなる定量吐出容器においては、吸い上げ管が設けられることが好ましい。
【0045】
本発明の計量機構に設けられたヘッドは、ヘッド本体と、計量空間内の組成物を外部(例えば、塗布面)に吐出する第2流路と、前記第2流路に設けられた第2逆止弁とを備える。これにより、第2逆止弁の二次側の圧力(すなわち外気圧)よりも一次側の圧力(すなわち、計量空間内の内圧)が高くなると、この圧力差によって第2逆止弁が開弁動作して、第2流路を介して計量空間内から外部へ組成物が吐出される。
【0046】
以上の通り、本発明の計量機構は、供給部及び外部と計量空間との圧力差によって、第1逆止弁と第2逆止弁が交互に開閉し、液状の組成物の計量と吐出が行われる。なお、供給部が外部に開放されるか、又は、供給部を外部と連通させることで供給部と外部の圧力が同じになっていてもよい。
前記の計量と吐出は、使用者が、ヘッドをベースに対して上下に摺動させる操作を行い、計量空間の体積が変動することで実現する。
【0047】
前記の「操作」とは、計量操作と吐出操作からなる。
本明細書中において、「計量操作」とは、計量空間の体積を増大させる操作であり、具体的には、使用者が手動で、ヘッドをベースに対して引き上げることにより、第2逆止弁が閉塞されたまま第1逆止弁が開放され、組成物が供給部(例えば、容器本体内部)から、ベースとヘッドの間に設けられた計量空間に流入することにより、予め定めた一定量又は任意の容量を計量する操作である。
本明細書中において、「吐出操作」とは、計量空間の体積を減少させる操作であり、具体的には、使用者が手動で、ヘッドをベースに対して押し下げることにより、第1逆止弁が閉塞されるとともに、第2逆止弁が開放され、計量された組成物を外部(例えば、塗布面)に吐出する操作である。
【0048】
ここで、計量操作においては、供給部側(例えば、容器本体側)に対して計量空間側が陰圧となり、第1逆止弁の開弁動作により、組成物が計量空間に流入する。このとき、第2逆止弁は、外部側(例えば、塗布面側)に対して計量空間側が陰圧となることで閉弁動作する。
一方、吐出操作においては、外部側(例えば、塗布面側)に対して計量空間側が陽圧となり、第2逆止弁の開弁動作により、組成物が外部(例えば、塗布面)に流出する。このとき、第1逆止弁は、供給部側に対して計量空間側が陽圧となることで閉弁動作する。
【0049】
また、本発明の一実施形態において、ベースは、ベース側面の外側表面に設けられた凸部を有し、かつ、ヘッドは、前記凸部と嵌合するための案内溝を備えていてもよい。
この場合、本発明の計量機構のヘッドは、前記ベースに対して上下に摺動可能であるが、そのストローク距離は、凸部と、それに嵌合する案内溝により規定される。
なお、本明細書中において、「ストローク距離」とは、ベースに対する、ヘッドの垂直方向における摺動距離を指し、ストローク距離の増減は、計量空間の体積の増減と概ね比例する。すなわち、前記凸部が案内溝の一端にある時、計量空間の体積は最小となり、前記凸部が案内溝の他端にある時、計量空間の体積は最大となる。
【0050】
案内溝は、垂直方向に、一本のスロットとして設けられていてもよいが、ヘッドを引き上げることができれば、特に限定されない。例えば、案内溝は、螺旋状に設けていてもよい。この場合、ヘッドは軸方向(垂直方向)に移動するとともに、軸心周りに回転する。
【0051】
本発明の一実施形態において、計量できる組成物の容量は、一容量に限られない。例えば、案内溝の途中に角等を設けたり、目盛等を設けたりすることで、ストローク距離を調節することにより計量空間の体積を調節できる。したがって、二段階の容量を計量することができる計量機構や、案内溝の途中に角や目盛を複数設けることにより、任意の容量を計量し、吐出することができる計量機構も本発明に含まれる。
【0052】
本発明の一実施形態において、通常の手動による操作では、前記凸部が案内溝から抜けることはないため、本発明の計量機構等により、使用者は簡便に、予め定めた一定量又は任意の容量の組成物を計量することができる。
なお、本明細書中、「本発明の計量機構等」とは、本発明の計量機構、及びそれを備えた定量吐出容器並びに定量塗布具を含み、本明細書で開示される全ての発明を指す。
【0053】
次に、本発明の計量機構等において用いられる逆止弁について、詳細に説明する。
本明細書中、逆止弁とは、流体の流れを常に一定方向に保ち、逆流を防止する機能を持つ弁を指す。
本発明の一実施態様において、好ましい逆止弁は、傾けて操作しても定量性が殆ど損なわれない。
本発明の一実施態様において、好ましい逆止弁は、計量空間内の圧力が高いほど封止力が増大するような外表面形状を有する弁体を備える。
本発明の一実施態様において、さらに好ましい逆止弁は、傾けて操作しても定量性が殆ど損なわれず、計量空間内の圧力が高いほど封止力が増大するような外表面形状を有する弁体を備える。
【0054】
本発明の計量機構において、ベースには第1流路と第1逆止弁が設けられ、ヘッドには第2流路と第2逆止弁が設けられる。
本発明の計量機構は、ベースとヘッドを上下に摺動させ、計量空間の体積を変動させることができる。第1流路と第2流路にそれぞれ逆止弁を設けることにより、液状の組成物は、計量操作と吐出操作の過程において、通常、実質的には逆流しない。
【0055】
本発明の一実施態様において、本発明の計量機構に備えられる逆止弁は、弁体と弾性支持片とバルブベースを有する。第1流路と第2流路には、弁体と当接することができる弁座が設けられる。
本発明の一実施態様において、逆止弁の弁体は、弁座に対して、二次側に設けられ、一次側と二次側の圧力が実質的に同じ場合、弁体は、弾性支持部材により、二次側から一次側に向かって弁座に当接し、流路を閉塞する。
【0056】
本発明の一実施態様において、本発明の計量機構に備えられる逆止弁は、前記の計量操作により、二次側の圧力が一次側の圧力よりも低くなった場合、弾性支持部材の弾力が圧力差に抗しきれず、弁体が二次側に動く。その結果、流路が開放され、同時に、圧力差により、組成物が一次側から二次側に流動する。一方、前記の吐出操作により、二次側の圧力が一次側の圧力よりも高くなった場合は、閉塞状態が維持される。
本発明の一実施態様において、好ましい逆止弁は、二次側の圧力が一次側の圧力よりも高い場合に、その圧力差が大きくなるにつれて、封止力が増大する逆止弁である。前記逆止弁を備える計量機構は、封止力が強いため、計量機構の傾きに依存せずに予め定めた一定量又は任意の容量を計量することができるため、好ましい。
【0057】
ベースに設けられた第1逆止弁は、好ましくは、計量空間内が陽圧である時、その圧力が高いほど封止力が増大するような外表面形状を有する弁体を備えている。これによれば、吐出操作により、第1逆止弁の二次側(すなわち計量空間内)の圧力が一次側の圧力よりも高くなると、圧力差によって弁体の弁座に対する封止力が増大する。したがって、例えば、計量空間内に一定量の組成物が充填された状態で、計量空間の体積を減少させるようにヘッドを操作すると、計量空間内の圧力が上昇し、この圧力によって第1逆止弁の弁体の封止力を増大させることができる。したがって、容器を傾けて計量操作を行う場合でも、第1逆止弁を確実に機能させることができ、予め定めた一定量若しくは任意の容量の組成物が吐出することができる。
【0058】
本発明の一実施態様において、より具体的には、本発明の第1逆止弁は、第1流路に略平坦な弁座が形成され、第1逆止弁の弁体は、二次側(計量空間側)に配置され、前記弁座に二次側(計量空間側)から一次側(例えば、容器本体側)へと当接する円板状の弁体である逆止弁が好ましい。
【0059】
本発明の一実施態様において、より好ましい本発明の逆止弁は、さらに、封止力が増大するように計量空間内の圧力を受ける上面(二次側の面)を有し、かつ、閉塞時に、下面(一次側の面)が弁座に当接する逆止弁である。これによれば、例えば、板状の弁体は、上面に計量空間の圧力を受け、かつ、下面が弁座に当接しているため、上面に作用する封止力を最大化することができるため、好ましい。
【0060】
本発明の一実施態様において、第1逆止弁は、多角形板状、楕円板状、又は円板状の弁体を備え、前記弁体は、吐出操作時に、弁体の上面(二次側の面)及び外周面のみが計量空間に露出するような逆止弁が好ましい。これによれば、弁体の下面(一次側の面)が弁座に当接しているため、弁体の上面に作用する封止力を打ち消すような力が弁体にかからず、封止力が最大化される。その結果、吐出操作をする際に、より確実に第1逆止弁の弁体が弁座に閉塞させることができ、計量機構を傾けても、弁体が弁座から離反しないため、計量した量を正確に吐出することができる。
ここで、多角形板状とは、三角板状、四角板状、五角板状、六角板状、七角板状、八角板状等が挙げられる。
【0061】
本発明の一実施態様において、第1逆止弁は、弁体を二次側から一次側の弁座に向けて付勢するよう弁体の外周部を支持する弾性支持片を有していてよい。これにより、計量操作(計量空間の体積を増大させるヘッド操作)の後、計量空間内に組成物が流入することによって計量空間内の陰圧が解消し、一次側と二次側の圧力差が実質的に無くなれば、吐出操作(計量空間の体積を減少させるヘッド操作)を開始しなくとも弾性支持片の付勢力によって弁体が弁座に付勢されて弁座を閉塞することができる。したがって、一連の計量操作に不慣れな使用者が計量操作を行う場合でも、第1逆止弁における組成物の逆流を阻止できる。
【0062】
本発明の一実施態様において、逆止弁の弁体は、封止力を高めるために、適度に撓る軟質な素材で形成されることが好ましい。例えば、弾性体が好ましく、具体例として、シリコンゴム、天然ゴム、熱可塑性エラストマーなどを用いることができる。また、これらの素材を複数組み合わせてもよい。
本発明の一実施態様において、本発明の逆止弁は、弁体と弾性支持片とバルブベースとからなるが、好ましくは、これらを同一の素材で、一体的に成形した逆止弁が好ましい。より好ましくは、弁体と弾性支持片とバルブベースとを弾性素材で一体的に成形した逆止弁であり、特に好ましくは、シリコンで一体的に成形した逆止弁である。
一方、本発明の一実施態様において、流路に設けられた弁座は、硬質な部材でも軟質な部材でもよいが、硬質な部材で構成されることが好ましい。弁座と流路は一体に成形されることが好ましく、さらに、ベース本体又はヘッド本体と一体的に成形されることがより好ましい。
【0063】
本発明の一実施態様において、第1逆止弁は、ヘッドの操作によって計量空間の体積が増大するように変化したときの計量空間内の陰圧と容器本体内の外気圧との圧力差によって開弁動作する。
本発明の一実施態様において、第2逆止弁は、ヘッドの操作によって計量空間の体積が減少するように変化したときの計量空間内の陽圧と外気圧との圧力差によって開弁動作する。
本発明の典型的な一実施態様おいては、本発明の計量機構は、計量空間の体積を最小値と最大値との間で変化させることにより組成物を計量及び吐出するが、別途、目盛を設けるか、案内溝と凸部によりストローク距離を規定し、それに応じて組成物を計量してもよい。
【0064】
本発明の一実施態様において、第1逆止弁と第2逆止弁は、同じ逆止弁であってもよい。しかし、上記の機能を有する逆止弁であれば、第1逆止弁と第2逆止弁は異なる形状を有する逆止弁であってもよい。
上記計量機構は、上述した好ましい逆止弁を有することが好ましい。
【0065】
次に、本発明における定量吐出容器について、説明する。
【0066】
本発明において、定量吐出容器とは、上記の計量機構と、液状の組成物を収容する容器本体とを備える容器である。これらに加えて、さらに他の部材を備えていてもよく、例えば、液状の組成物を身体表面に塗布するための塗布部材や、キャップ等が備えられていてもよい。
【0067】
本発明の一実施態様において、容器本体は、略円柱状、略楕円柱状、又は略多角柱状である。好ましくは、容器本体は、略円柱状又は略楕円柱状であり、より好ましくは、略円柱状である。
本発明の一実施態様において、横断面の直径が20mmから45mmの円形、又は短径及び長径が20mmから45mmの楕円形である容器本体は好ましい。横断面の直径が20mmから45mmの円形、又は短径及び長径が20mmから45mmの楕円形で、外観が実質的に略円筒状である容器本体はより好ましい。
【0068】
本発明の典型的な一実施態様において、本発明の定量吐出容器は、容器本体の上部の口部に、前記の計量機構が設けられる。
本発明の一実施態様において、計量機構の第1流路に、吸い上げ管が設けられることが好ましい。
この場合、吸い上げ管の一方の端部が、組成物を収容する容器本体の内部空間の底部に位置するように開口させ、他方の端部が第1流路に連通するようにベースに取り付けることが好ましいが、ベースの第1流路を容器本体の底部近傍にまで延設させてもよい。
【0069】
本発明の一実施態様において、定量吐出容器には、容器本体内部を外気に連通させる外気導入孔がベース又は容器本体に設けられていてよい。外気導入孔は、使用時に液漏れが生じないように、ベース又は容器本体の上部に設けられることが好ましい。
本発明の一実施態様において、外気導入孔をベースに設けられた計量機構は好ましい。また、ヘッドには、計量空間の体積が最小値であるとき外気導入孔を閉塞し、計量空間が増加するようヘッドを操作すると外気導入孔を開放するプラグを設けることができる。これによれば、計量操作前は計量空間の体積が最小となる位置にヘッドを操作しておくことで、プラグによって外気導入孔を閉塞して、外気導入孔から組成物が漏れ出すことを阻止できる。一方、計量操作時は、計量空間が最小値ではない任意のヘッド位置において外気導入孔が開放されるので、容器本体の内部空間を外気圧に維持することができ、計量操作及び吐出操作を繰り返し行っても予め定めた一定量又は任意の容量を計量し、吐出することができる。
【0070】
より好ましくは、前記プラグは、計量空間を形成するシリンダの先端部によって構成することができる。これによれば、計量空間を形成するためのシリンダの先端部をプラグとして機能させることにより、計量機構の構成の簡素化、装置構成のコンパクト化を図ることができる。
【0071】
上記の好ましい容器本体を備える定量吐出容器は好ましい。
上記の好ましい容器本体と、上記の好ましい計量機構を備える定量吐出容器はより好ましい。
【0072】
次に、本発明における定量塗布具について、説明する。
【0073】
本発明における定量塗布具とは、上述の計量機構と、塗布面を備える塗布具である。これらに加えて、さらに他の部材を備えていてもよく、例えば、液状の組成物を収容するための容器本体や、キャップ等が備えられていてもよい。
【0074】
本明細書中、「塗布面」とは、身体表面に、液状の組成物を塗布するための面であり、一般に、塗布面を有する器具を「塗布具」と呼ぶ。塗布面には、液状の組成物を保持し、身体表面へと送達し、塗り広げる役割がある。
【0075】
本発明の典型的な一実施態様において、塗布面は、本発明の計量機構のヘッドの上面側に設けられる。
本発明における塗布面は、塗布具としての機能を有する面であれば特に限定されないが、具体的には、ヘッド本体の外表面の一部を構成する上面、又は、ヘッド本体の上面側に設けられた液ホルダーの上面であってもよい。あるいは、ヘッド本体の上面と、液ホルダーの上面の組み合わせであってもよい。ヘッド本体の上面と、液ホルダーの上面の組み合わせからなる塗布面の場合、液ホルダーの外周部にヘッド本体の上面が配置される。
【0076】
ここで、液ホルダーとは、本発明の一実施態様において、第2流路の液吐出口が設けられる部材である。
本発明の一実施態様において、液ホルダーは、液状の組成物が吐出される際に、複数の液吐出口に向けて第2流路を分岐させることで、組成物が噴出する勢いを減衰させるために設けられる。
液ホルダーは、様々な形態をとりえる。例えば、本発明の一実施態様において、液ホルダーは、塗布面の一部、又は全部を構成することができる。
本発明の一実施態様において、液ホルダーは、ヘッド本体の上面と一緒になって、塗布面を形成しうる。
本発明の一実施態様において、液ホルダーは、ヘッド本体を覆うように設けられる。この場合、上記の案内溝等も一緒に覆われていてもよい。
【0077】
本発明の一実施態様において、第2流路は、前記塗布面に開口する1又は複数の液吐出口を有する。例えば、複数の液吐出口が塗布面に設けられる時は、複数の液吐出口は塗布面の中央部に環状に配置されることが好ましい。
【0078】
本発明の一実施態様において、第2流路の複数の液吐出口が塗布面の中央部に設けられる。これにより組成物が液吐出孔から勢いよく噴出することを防ぐことができる。
本発明の一実施態様において、塗布面は、液吐出口の他には穴及び突起物がない平坦面、凹面又は凸面であることが好ましい。さらに好ましくは、塗布面を構成する部材(すなわち、液ホルダー及び/又はヘッド本体)は、硬質の部材であってよい。
【0079】
本発明の一実施態様において、塗布面の平面視形状は、円形又は楕円形が好ましい。
本発明の一実施態様において、塗布面の平面視形状は、直径が20mmから45mmの円形、又は短径及び長径が20mmから45mmの楕円形が好ましい。さらに好ましくは、塗布面は、その外周縁に設けられた堤部によって取り囲まれていてよい。
なお、堤部は、塗布面と一緒になって液状の組成物を保持する役割と、塗布面と一緒になって液状の組成物を身体表面へと送達し、塗り広げる役割を有する。
【0080】
本発明の一実施態様において、塗布面の最外周に円周状若しくは楕円周状の堤部を設けることが好ましい。
本発明の一実施態様において、塗布面の最外周に円周状若しくは楕円周状の堤部が設けられ、堤部と塗布面とにより全体として略凹状の組成物保持部が構成されることがより好ましい。
本発明の一実施態様において、塗布面の最外周に円周状若しくは楕円周状の堤部が設けられ、堤部と塗布面とにより全体として略凹状の組成物保持部が構成され、塗布面は第2流路の液吐出口の他には穴及び突起部がなく、かつ、塗布面を構成する部材は硬質の部材である定量塗布具は、さらに好ましい。
【0081】
上記の好ましい塗布面を備える定量塗布具は好ましい。
上記の好ましい塗布面と、上記の好ましい計量機構を備える定量塗布具はより好ましい。
上記の好ましい塗布面と、上記の好ましい容器本体と、上記の好ましい計量機構を備える定量塗布具はさらに好ましい。
【0082】
次に、本明細書中における各用語について説明する。
【0083】
本明細書中で用いられる「粘度」とは、粘稠度と同義であり、液体の流動に対する抵抗の大きさを示す。液体の粘度は0mPa・sよりも大きい。
【0084】
本明細書中で用いられる「組成物」とは、ヒトの身体表面に塗布するための医薬製剤又は化粧品である。
本発明の計量機構等に適した組成物は、液状の組成物である。
本明細書中「液状の組成物」とは、広義に解釈され、例えば、液剤、ローション剤、クリーム剤、軟膏剤、軽軟膏剤、泡剤、リニメント剤、又はゲル剤の形態で提供される医薬製剤が挙げられ、好ましくは、ゲル剤であるが、本発明の計量機構等で計量できる組成物であれば、特に限定されない。
【0085】
本発明の計量機構等に適した組成物は、100000mPa・s以下の粘度を有する製剤であり、950000mPa・s以下の粘度を有する製剤がより好ましく、30000mPa・s以下の粘度を有する製剤が更に好ましく、3000mPa・s以下の粘度を有する製剤がより一層好ましい。
本発明の別の実施態様において、本発明の計量機構等に適した組成物は、1000mPa・s以下の粘度を有する製剤である。
上記粘度は、所定の温度、例えば25℃における粘度であってよい。
【0086】
本発明の一実施態様において、本発明の計量機構等に適した組成物は、身体表面に塗布するための組成物である。
本明細書中における「身体表面」とは、典型的には、ヒトの皮膚表面等を指す。具体的には、四肢、体部、頭部の皮膚表面等を指し、より具体的には、掌、顔面、肩部、胸部、臀部、腹部、背部、陰部、腋等の皮膚表面や、毛髪、爪等を意味する。本発明の一実施形態によれば、塗布に適した身体表面(適用部位)は、特に限定されないが、例えば、皮膚表面が好ましく、特に腋等の皮膚表面が好ましい。
【0087】
本明細書中における組成物は、身体に作用する少なくとも一種以上の有効成分を含有することができる。有効成分は、様々な生理活性物質であってよく、限定されないが、例えば、抗真菌薬、抗菌薬、ホルモン代替薬、鎮痛薬、呼吸器薬、真菌症治療薬、爪白癬症治療薬、皮膚疾患治療薬(アトピー性皮膚炎、乾癬、掻痒、酒さ等の治療薬)、創傷治療薬、褥瘡治療薬、表皮水疱症治療薬、色素性乾皮症治療薬、先天性白皮症治療薬、性腺機能低下症治療薬、多汗症治療薬、制汗剤、美白剤、保湿剤などであってよい。
【0088】
本発明の一実施態様において、本発明の計量機構等に適した液状の組成物は、好ましくは、抗真菌剤を含む組成物である。
本発明の一実施態様において、本発明の計量機構等に適した液状の組成物は、好ましくは、エフィナコナゾールを含む組成物である。
本発明の一実施態様において、本発明の計量機構等に適した液状の組成物は、好ましくは、腋下に投与される医薬製剤である。
本発明の一実施態様において、本発明の計量機構等に適した液状の組成物は、好ましくは、多汗症治療剤又は制汗剤である。
本発明の一実施態様において、本発明の計量機構等に適した液状の組成物は、好ましくは、塩化アルミニウムを含む組成物である。
本発明の一実施態様において、本発明の計量機構等に適した液状の組成物は、好ましくは、グリコピロニウム又はその薬学的に許容される塩を含む組成物である。
本発明の一実施態様において、本発明の計量機構等に適した液状の組成物は、好ましくは、オキシブチニン又はその薬学的に許容される塩を含む組成物である。
本発明の一実施態様において、本発明の計量機構等に適した液状の組成物は、好ましくは、性腺機能低下症治療薬である。
本発明の一実施態様において、本発明の計量機構等に適した液状の組成物は、好ましくは、有効成分が、テストステロンである医薬製剤である。
【0089】
本発明の一実施態様において、本明細書中における組成物は、溶媒、共溶媒、浸透促進剤、pH調整剤、及び粘度調整剤からなる群から選ばれる一つ又は複数の担体又は賦形剤を含むことができる医薬製剤又は化粧品として調製される。
本発明の一実施態様において、本明細書中における組成物は、増粘剤を含み、例えば、HPC、又はHPMCを含む。
【0090】
本発明の計量機構等に適するヒトの疾病の治療、予防、又は処置には、好ましくは、真菌症、乾癬、アトピー性皮膚炎、掻痒、性腺機能低下症、手掌多汗症、又は腋下多汗症が含まれる。
この場合、本発明の計量機構等は、医薬製剤を、一日に少なくとも1回吐出し身体表面に塗布するために用いられる。例えば、本発明の計量機構等は、必要に応じて、一日に複数回用いてもよく、使用の便宜上、通常、本発明の方法は、一日に1回から一日に4回実施される。
【0091】
本明細書中、「塗布操作」とは、身体表面に液状の組成物を塗布する操作である。具体的には、塗布面に液状の組成物を吐出した後、そのまま容器を把持しながら、身体表面の所望とする部位に押し当てることで、吐出された組成物を塗布する操作である。
【0092】
次に、添付の図面を参照して、本発明の各実施形態について更に詳細に説明する。
なお、以下の説明はあくまでも一例を示すものであって、本発明の技術的範囲を以下の実施形態に限定する趣旨ではない。また、図面では、同一、又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0093】
図1図7は、本発明の一実施形態にかかる定量吐出容器としての容器1を示している。本実施形態の容器1は、液状の医薬製剤又は化粧品を組成物として収容し、所定の計量操作によって予め定めた一定量又は任意の容量の組成物を塗布面に吐出し、保持させた状態で、使用者の身体表面(例えば、脇下など)に吐出した組成物を塗布するのに用いられる。
【0094】
容器1は、口部21を有する有底円筒状のボトルにより構成される容器本体2と、容器本体2の口部21に装着される計量機構3とを備える。
計量機構3は、容器本体2の口部21に取り付けられるベース31と、ベース31との間に計量空間を形成するヘッド32とを備えている。これらベース31及びヘッド32は、ヘッド32の回転操作によって、上下に摺動し、計量空間の体積を所定の最小値から所定の最大値まで変化可能に構成されている。
【0095】
ベース31は、口部21に取り付けられるベース本体311と、ベース本体311に取り付けられる第1逆止弁312とを備えている。ベース本体311は、口部21に取り付けることによって、後述する第1流路P1及び外気導入孔Hを除いて、容器本体2の口部21を液密に密封する。
【0096】
ベース本体311は、円筒状の外筒部311aを有する。外筒部311aの下部は容器本体2の口部21に外嵌されている。外筒部311aの上部は、ヘッド32を軸方向移動可能、かつ、軸心周りに回転可能に支持する支持部として機能する。外筒部311aの上部の所定部位には、ヘッド本体321の外筒部321aに設けられる案内溝3Aに係合する凸部3Bが設けられている。なお、案内溝3Aをベース31側に設け、凸部3Bをヘッド32側に設けてもよい。案内溝3Aは所定の回転角、例えば90°の範囲にわたって螺旋状に延びる凹溝であっていてもよい。図示実施例では径方向に貫通する孔として形成されているが、貫通していなくてもよい。なお、案内溝が、螺旋状に延びる場合、右回りでも、左回りでもよい。また、図示実施例では、2つの案内溝3A及び2つの凸部3Bが直径方向に対向する位置にそれぞれ設けられている。
【0097】
ベース本体311は、外筒部311aの軸方向中途部に設けられた隔壁部311bを有する。隔壁部311bは、容器本体2の口部21の口上面を覆って、口部21を密封する。シール性確保のため、図示実施例では、口部21の開口端部に液密状に内嵌する筒状シール部311cが隔壁部311bに設けられている。
【0098】
隔壁部311bの軸中央部には、容器本体2の内部から組成物を計量空間に流入させる第1流路P1を軸心部に有するベースシリンダ311dが設けられている。ベースシリンダ311dの軸心はベース本体311の外筒部311aの軸心と一致している。ベースシリンダ311dの下部には、吸い上げパイプ313の上端部が内嵌されており、これにより容器本体2の底部から組成物を吸い上げて第1流路P1に流入させるように構成されている。ベースシリンダ311dの内側には、第1流路P1に連なる弁座311eが設けられ、弁座311eの上部に第1流路P1の上端開口を開閉するように第1逆止弁312が設けられている。
【0099】
第1逆止弁312は、図2に示すように、略円筒状のバルブベース312aと、弾性支持片312bを介してバルブベース312a内部に弾性的に軸方向移動可能に支持される円板状の弁体312cとを備えている。
第1逆止弁312は、その拡大図を図8で示すように、ベースシリンダ311dは二重筒状に構成され、バルブベース312aはベースシリンダ311dの外筒部分に液密状に内嵌されている。なお、バルブベース312aの上端部には径方向外方に延びるフランジが一体成形されており、このフランジはベースシリンダ311dの外筒部分の上端面に接触している。
【0100】
第1逆止弁312は例えばシリコン製であってよい。弁体312cの外周面とバルブベース312a内周面との間に組成物の流通路を確保しつつ弁体312cを安定的に弾性支持するために、好ましくは複数の弾性支持片312bを周方向に等間隔で設けることが好ましく、例えば、3つの弾性支持片312bを周方向に等間隔で設けることができる。
【0101】
ベースシリンダ311dの上端面には、第1流路P1の開口部分に環状の弁座311eが設けられており、第1逆止弁312の弁体312cの下面の外周縁部が弁座311eに接触することによって第1流路P1が封止されるようになっている。弾性支持片312bは、図1において、上方(二次側)から下方(一次側)に向かって、弁体312cを弁座311eに押し当てるように付勢している。この付勢力は比較的弱い力であり、ヘッド32の操作によって計量空間が陰圧になると、弁体312cの二次側(すなわち、計量空間側であり、弁体の上面側である。)と一次側(すなわち、容器本体側であり、下面側である。)との圧力差によって付勢力に抗して弁体312cが弁座311eから離反するようになっている。
【0102】
ヘッド32は、螺旋状案内溝3Aと凸部3Bとの係合によってベース本体311に対して所定角度範囲内で螺進操作可能に取り付けられるヘッド本体321と、ヘッド本体321に取り付けられる第2逆止弁322と、第2逆止弁322から吐出された組成物が保持される上面を有する液ホルダー323とを有する。
【0103】
ヘッド本体321は、円筒状の外筒部321aを有する。図示実施例では、ヘッド本体321の外筒部321aはベース本体311の外筒部311aに外嵌されているが、内嵌されていてもよい。
【0104】
図2及び図3に示すように、ベース本体311の外筒部311aの外周面には、周方向に延びる2つの凸条311fが軸方向に離間して設けられており、ヘッド本体321の外筒部321aの内周面には凸条321bが設けられている。ヘッド32を上限位置(すなわち計量空間が最大となる位置)まで回転操作したときヘッド本体321の凸条321bはベース本体311の外筒部311aの2つの凸条311fのうち上側の凸条を乗り越えて前記上側凸条の上部側に係合する。一方、ヘッド32を下限位置(すなわち計量空間が最小となる位置)まで回転操作したときヘッド本体321の凸条321bはベース本体311の外筒部311aの2つの凸条311fのうち下側の凸条を乗り越えて前記下側凸条の下部側に係合する。これらによりヘッド32を上限位置、又は下限位置まで操作したときにクリック感が生じるようになっており、適切な回転操作位置まで操作したことが使用者に容易に分かるようにしている。
【0105】
ヘッド本体321は、下方に向けて凹状の構造を有する天板部分を有し、この天板部分の軸中央部には、計量空間の内部に計量された組成物を外部に吐出させる第2流路P2を軸心部に有する吐出筒部321cと、ベースシリンダ311dに外嵌するヘッドシリンダ321dとが軸方向に連設されている。吐出筒部321cは天板部分から上方に延設され、ヘッドシリンダ321dは天板部分から下方に延設されている。
【0106】
ベースシリンダ311dとヘッドシリンダ321dとによって囲まれた空間が計量空間とされ、ヘッド32が図4及び図6に示す下限位置にあるとき、計量空間の体積はほぼ0mLである。一方、ヘッド32が図5及び図7に示す上限位置にあるとき、計量空間の体積は、計量できる最大の組成物の体積と等しくなる。但し、予め定めた一定量又は任意の容量が計量できれば、上限位置まで回転操作し、ヘッド32を引き上げる必要はなく、例えば、一回の使用量が、計量できる最大の組成物量に対して半分の場合は、案内溝3Aを目安に、下限位置から、半分程度回転することで計量操作を行ってもよい。
【0107】
吐出筒部321cの下端部には、ヘッド32が下限位置にあるときに第1逆止弁312の弁体312cが弁座311eに押し付けられるように弁体312cの上面を押さえるバルブロック部321fが設けられている。
【0108】
第2逆止弁322は、略円筒状のバルブベース322aと、弾性支持片322bを介してバルブベース322a内部に弾性的に軸方向移動可能に支持される円板状の弁体322cとを備えている。図示実施例では、吐出筒部321cは二重筒状に構成され、バルブベース322aは吐出筒部321cの外筒部分に液密状に内嵌されている。なお、バルブベース322aの上端部には径方向外方に延びるフランジが一体成形されており、このフランジは吐出筒部321cの外筒部分の上端面に接触している。
【0109】
第2逆止弁322は例えばシリコン製であってよい。弁体322c外周面とバルブベース322a内周面との間に組成物の流通路を確保しつつ弁体322cを安定的に弾性支持するために、好ましくは複数の弾性支持片322bを周方向に等間隔で設けることが好ましく、例えば3つの弾性支持片322bを周方向に等間隔で設けることができる。
【0110】
吐出筒部321cの上端面には、第2流路P2の開口部分に環状の弁座321eが設けられており、第2逆止弁322の弁体322cの下面の外周縁部が弁座321eに接触することによって第2流路P2が封止されるようになっている。弾性支持片322bは、図1において、上方(二次側)から下方(一次側)に向かって、弁体322cを弁座321eに押し当てるように付勢している。この付勢力は比較的弱い力であり、ヘッド32の操作によって、外部に対して計量空間が陽圧になると、弁体322cの二次側(すなわち上面側)と一次側(すなわち下面側)との圧力差によって付勢力に抗して弁体322cが弁座321eから離反するようになっている。
【0111】
液ホルダー323は、第2逆止弁322を覆うようにヘッド本体321の凹状の天板部分に嵌合され、液ホルダー323の上面と、ヘッド本体321の天板部分が、一体となって略面一となっており、さらにヘッド本体321の天板部分に堤部が備えられることで、全体として略凹状となっている。液ホルダー323の中央部分には液吐出口323aが設けられており、第2逆止弁322を通過した組成物は、液吐出口323aから液ホルダー323の上面上に吐出され、組成物自体の粘性と塗布面Sの濡れ性とによって液ホルダー323上に保持される。
【0112】
なお、保管時にヘッド32が不慮に回転操作されることを防止するとともに液ホルダー323の上面を覆うために、計量機構3全体を上方から覆うキャップ4がベース本体311に対して着脱自在に装着されている。
【0113】
図4で示すように、本実施例の容器1は、塗布面Sを備える。本実施例の塗布面Sは、液ホルダー323の上面323Aと、ヘッド本体321の外側上面部321Aとからなる。ヘッド本体321の外側上面部321Aは、液ホルダー323の上面323Aを取り囲むようように、外周上に配置される。
図4で示すように、塗布面Sの中央部には、平面視略三角状の4つの液吐出口323aが環状に4つ配置される。第2流路P2が液吐出口323aに向けて4つに分岐することで、素早い吐出操作時において、液状の組成物が噴出することが抑えられる。
塗布面Sは、液吐出口323a以外に、実質的に凹凸がなく、略面一であり、かつ、平面視において円形である。また、塗布面Sを構成する部材(本実施例においては液ホルダー323及びヘッド本体321)は硬質の部材である。
塗布面Sは、その外周縁に設けられた堤部321Bによって取り囲まれており、本実施例の場合、堤部321Bは、ヘッド本体321に備えられる。その結果、塗布面Sおよび堤部321Bは、全体として略凹状の組成物保持部を構成する。
本実施例の容器1の塗布面Sの直径は、34mmである。
【0114】
図4で示すように、本実施例の容器1は、略円筒状である。しかし、本発明はこれに限定されず、例えば、容器本体は、略三角筒、略四角筒、略五角筒のような略角筒状でもよい。
また、図4で示すように、本実施例の容器1の容器本体の底は、やや中央部が凹んだ略フラット状の形状であるが、適宜設計変更できる。
【0115】
本実施形態の容器1においては、第1逆止弁312の弁体312cは、計量空間内の圧力が高いほど弁座311eに対する封止力が増大するような外表面形状を有している。本実施形態では、第1流路P1の弁座311eは略平坦に形成され、弁体312cは、弁座311eに二次側(すなわち、図において上方側)から当接する円板状であって、封止力が増大するように計量空間内の圧力を受ける上面を有している。さらに、本実施形態では、円板状の弁体312cは、弁座311eへの閉塞時に、上面及び外周面のみが計量空間に露出し、弁体312cの下面は、弁座311eと当接し、計量空間に露出しない。かかる構成により、計量空間内が加圧されて陽圧になったとき、弁体312cに対しては、弁体312cを弁座311eに押し付ける方向の力のみが加わることとなるため、確実に閉塞状態を維持できる。したがって、計量操作時に、使用者が容器を傾けたり多少の振動を与えたりしても、弁体312cが弁座311eから離反して計量空間内の組成物が逆流してしまうことを防止できる。
【0116】
また、本実施形態では、容器本体2の内部空間を外気に連通させる外気導入孔Hがベース本体311に設けられている。より詳細には、外気導入孔Hは、ベースシリンダ311dの基部に隣接して隔壁部311bを上下貫通するように設けられている。ベースシリンダ311dの外周側且つ隔壁部311bの上方の空間は、ベース本体及びヘッド本体の外筒部311a,321aとの間の隙間を介して外気に連通しており(すなわち、シール部が設けられていない)、この空間と容器本体内部空間とが外気導入孔Hを介して連通されている。
【0117】
本実施形態では、ヘッド32を下限位置まで操作したとき、ヘッドシリンダ321dの先端部によって外気導入孔Hが閉塞され、その位置から計量空間が増加するようヘッドを少しでも操作すると外気導入孔Hが開放されるよう構成されている。したがって、本実施形態では、ヘッドシリンダ321dの先端部が、外気導入孔Hを閉塞するプラグとして機能する。
【0118】
次に、本実施形態の容器1の典型的な使用例として、最大の計量空間の体積が、一回使用量の組成物の体積と等しい場合の使用例を説明する。ただし、本実施形態の容器1は、任意の容量を計量して吐出するために用いてもよく、容器1の使用法は、以下の使用例に限定されない。
なお、容器1について、最大の計量空間の体積は、0.7mLである。
【0119】
本実施形態の容器1を使用するには、キャップ4を取り外して、図4及び図6に示す状態(計量空間が最小の状態)から、図5及び図7に示す状態(計量空間が最大の状態)となるまでヘッド32を回転操作する。すると、ヘッド32がベース31に対して、一定のストローク距離分上昇して、ベースシリンダ311d及びヘッドシリンダ321dに囲まれた計量空間の体積が予め定められた最大値となるまで増大する。その結果、計量空間内が陰圧となる。このとき、第2逆止弁322は陰圧によって一層封止力が増大するように作用するが、第1逆止弁312は、容器本体2の内部の外気圧と計量空間内の陰圧との圧力差によって開弁動作し、計量空間内の陰圧によって容器本体2内の組成物が吸い上げられ、予め定めた一定量又は任意の容量の組成物が計量空間内に計量される。計量空間内の陰圧が実質的に解消すると、弾性支持片312bの付勢力によって第1逆止弁312の弁体312cは弁座311eに押し付けられ、これにより計量空間内に一旦流入した組成物が容器本体側に逆流することが防止される(計量操作)。
【0120】
次に、図5及び図7に示す状態から図4及び図6に示す状態となるまでヘッド32を回転操作すると、計量空間内の組成物が加圧されて計量空間内が陽圧となる。第1逆止弁312の弁体312cは、計量空間内の圧力を受けると封止力が増大するため、このときに、使用者が容器を傾けて操作しても、多少の振動を与えても、第1逆止弁312が開弁動作してしまうことが防止され、より確実に逆流を防止できる。一方、第2逆止弁322は、外部に対して計量空間内が陽圧となると容易に開弁動作し、計量空間内の組成物が塗布面S上に吐出される(吐出操作)。
【0121】
最後に、そのまま容器を把持しながら、身体表面の所望とする部位に押し当てることで、吐出された組成物を塗布することができる。例えば、腋下等の体部に医薬製剤を塗布することができる(塗布操作)。
【0122】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜設計変更できる。
【0123】
例えば、図9図11は、本発明の別の実施形態にかかる定量吐出容器としての容器1’を示している。本実施形態の容器1’は、液状の医薬製剤又は化粧品を組成物として収容し、所定の計量操作によって予め定めた一定量又は任意の容量の組成物を塗布面に吐出し、保持させた状態で、使用者の身体表面(例えば、脇下など)に吐出した組成物を塗布するのに用いられる。
【0124】
容器1’に関し、上述した容器1と同様の構成及び作用効果については同符号を付して詳細説明を省略し、異なる構成及び作用効果について以下説明する。なお、図9図11において、キャップ4の図示は省略した。
【0125】
容器1’においては、ヘッド本体321に一体的に取り付けられる液ホルダー323が、天板部3231と、天板部3231の周縁部から下方に延びる筒状の周壁部3232とを備えている。天板部3231は、ヘッド本体321の上面全体を覆っている。液ホルダー323の周壁部3232は、ヘッド本体321の外筒部321aの外周面全体を外周側から覆っている。これにより、案内溝3Aなどの機構部を液ホルダー323によって覆い隠すことができ、塗布面Sに吐出された組成物が周壁部3232に滴り落ちても、案内溝3Aに組成物が入り込むことがなく、使用後の洗浄操作が容易で、衛生的である。なお、この容器1’においては、周壁部3232は、案内溝3Aを外周側から覆い隠すものであるが、本発明の容器等はこれに限られず、例えば、外筒部321aの外周面の一部を外周側から覆い、案内溝3Aを視認できるようにしてもよい。
液ホルダー323の色調や透明度は特に限定されないが、例えば、外部から案内溝3Aが視認できるように透明又は半透明で構成される液ホルダーは好ましい。
また、周壁部3232は、好ましくは円筒状であるが、三角筒や四角筒や五角筒などの角筒状であってもよい。
【0126】
容器1’の塗布面Sは、液ホルダー323の上面のみからなる。容器1’の塗布面Sは、中央部の凹面S1と、凹面S1の周囲を取り囲む平面視リング状の拡張面S2とを含む。複数の液吐出口323aは、凹面S1に開口形成されている。凹面S1は、拡張面S2よりも僅かに低くなっており、液吐出口323aから吐出された組成物は、まず凹面S1内に保持される。凹面S1の面積及び深さは、一回の計量操作によって吐出される組成物を保持可能な大きさとすることが好ましい。また、使用者の身体表面への塗布を行う際に、組成物は拡張面S2に広がって保持され、塗布面S全体を用いて効率的に身体表面への塗布を行うことができる。なお、本実施形態の各液吐出口323aは円形の開口形状を有している。また、4つの液吐出口323aが凹面S1の中心周りに環状に等間隔で配置されている。
【0127】
容器1’の塗布面Sは、液ホルダー323の上面の外周縁部近傍に設けられた堤部323bによって取り囲まれている。この堤部323bの構造は、容器1の堤部321bと同様であるので詳細説明を省略する。なお、図9図11の断面位置が図1及び図2とは異なるため、図9図11において凸部3B、外気導入孔H等が現れていないが、容器1’のベース31は容器1のベース31と同様の構造を有する。
【0128】
上記実施形態では、ヘッドをベースに対して螺進可能に取り付けたが、単なる軸方向の引き上げ操作及び押し込み操作によって計量空間の体積を増減させるように構成してもよい。また、上記実施形態ではヘッドシリンダを外気導入孔閉塞用のプラグとして機能させたが、ヘッドシリンダとは構造上別の部位としてプラグを設けることもできる。
【0129】
また、第1逆止弁の弁体は、円板状の弁体が好ましいが、これに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で設計変更された形状ないし構造の弁体を採用できる。例えば、二次側が略球面で、一次側が略平面であるような半円球のような弁体であってもよい。
【符号の説明】
【0130】
1 定量吐出容器
2 容器本体
3 計量機構
31 ベース
312 第1逆止弁
312b 弾性支持片
312c 弁体
32 ヘッド
322 第2逆止弁
P1 第1流路
P2 第2流路
H 外気導入孔
【実施例
【0131】
以下、本発明について、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。
【0132】
<試験例>液状の組成物の粘度と吐出時の傾きによる吐出精度の確認
粘度の異なる製剤(HPMC水溶液、及びHPCエタノール溶液)を図1に記載の本発明の定量吐出容器に充填した。
計量時は容器を正立させ、吐出時は製剤ごとに容器を正立、平行、又は逆さにさせ、計量できる最大容量を計量し吐出した。計量操作及び吐出操作を10回繰り返し、吐出量の平均値、標準偏差、及び変動係数(CV値)を算出した。なお、正立とは図9のように容器を置いて操作する状態を指し、平行とは正立に対しておよそ90度傾けて操作する状態を指し、逆さとは正立に対しておよそ180度傾けて操作する状態を指す。
【0133】
粘度は、東機産業(株)社製RE550型粘度計の円すい-平板形回転型粘度計を用いて、以下に示す条件で測定した。
【0134】
【表1】
【0135】
<HPMC水溶液における計量及び吐出精度評価結果>
【0136】
【表2】
【0137】
<HPCエタノール溶液における計量及び吐出精度評価結果>
【0138】
【表3】
【0139】
以上の通り、処方4を除く全ての処方において、吐出時の容器角度にかかわらず、CV値が十分に低い値であった。したがって、本発明の定量吐出容器は、ほぼ0mPa・sの低粘度から85000mPa・sの高粘度までの極めて広範な粘度範囲で高い吐出精度を発揮する容器であることが明らかとなった。
また、処方1から処方3は水溶液であり、処方5から処方7は、非水溶液(エタノール溶液)であり、溶媒の液性に依存せずに、CV値が十分に低い値であった。すなわち、本発明の計量機構等は、溶媒の液性に依存せずに高い計量精度及び吐出精度を発揮することが明らかとなった。
また、処方1から処方3の増粘剤はHPCであり、処方5から処方7の増粘剤はHPMCであり、増粘剤の種類に依存せずに、CV値が十分に低い値であった。すなわち、本発明の計量機構等は、増粘剤の種類に依存せずに高い計量精度及び吐出精度を発揮することが明らかとなった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11