(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 37/12 20060101AFI20240729BHJP
D06F 23/04 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
D06F37/12 B
D06F23/04
(21)【出願番号】P 2020111516
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】川口 智也
(72)【発明者】
【氏名】永井 孝之
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-113231(JP,A)
【文献】特表2017-506108(JP,A)
【文献】特開2002-355491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 21/00-25/00
D06F 37/00-37/42
D06F 39/12-39/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルセータが底部に配置され、その内周面に複数の通水孔が形成された脱水槽と、
前記脱水槽の内周面に対して周方向に等間隔で配置される3つ以上のバッフルと、
各バッフルに個別に調整水を注水可能な注水装置とを備え、
前記バッフルの内部には、その外周側壁から径方向内側に向かって突出する水受け板が形成され、
前記バッフルは、
前記水受け板より上方に配置され、調整水を貯水する貯水空間と、
前記水受け板より下方に配置され、前記貯水空間から流れ出た調整水を排水する排水空間とを有しており、
前記貯水空間の周方向長さは、前記排水空間の周方向長さより長くなるように形成され、
前記貯水空間の内周面は、下方に進むにつれて径方向外側に配置されるように傾斜する傾斜面を有するとともに、
前記脱水槽における
前記貯水空間の下方の領域であり且つ前記排水空間の周方向両側領域に、前記通水孔が配置されることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記貯水空間の内周面の下端部近傍には、前記排水空間の周方向両側に向かって水の流れを分流させる分流部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記脱水槽における前記排水空間の周方向両側領域に形成される前記通水孔の開口面積は、上方から下方に向かって小さくなることを特徴とする請求項1または2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記脱水槽の内周面と前記バッフルの裏面との間に、隙間が形成されるとともに、
前記脱水槽の内周面において前記バッフルの裏面と対向する部分に、前記通水孔が配置されることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱水槽の回転を継続したまま脱水槽のアンバランスを解消して、脱水時における脱水槽の偏心による振動や騒音を抑制可能な洗濯機に関する。
【0002】
一般家庭あるいはコインランドリーなどに設置される一般的な洗濯機は、多数の通水孔が内周面に形成された脱水槽を有している。そのため、脱水時に脱水槽内の洗濯物から脱水された水は、多数の通水孔を介して脱水槽の外部へ排水される。また、脱水時に洗濯物の偏りが大きい場合、回転時の脱水槽の偏心が大きくなり、回転に大きなトルクが必要となるので脱水運転を開始することができない。
【0003】
そこで、特許文献1には、脱水時に洗濯槽内の衣類のアンバランス量およびアンバランス位置を検出し、アンバランスがある場合には、脱水槽の周方向に均等に複数設けられたバッフルへの注水を行うことにより脱水槽のアンバランス状態を積極的に解消しようとする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の洗濯機では、脱水槽の内周面に複数のバッフルが設けられているため、脱水槽の投入口の面積及び脱水槽内の容積が小さくなる課題がある。その課題をバッフル内への注水可能量を維持した状態で解消する方法として、バッフルの厚さを薄くして、その分、バッフルを周方向に広くすることが考えられる。しかしながら、バッフルを周方向に広くした場合、脱水槽の内周面に形成された通水孔の数が少なくなるため、脱水時に脱水槽内の洗濯物から脱水された水が通水孔を介して脱水槽の外部へ効率よく排水することができなくなってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、脱水時において洗濯槽内の洗濯物から脱水された水を脱水槽の外部へ効率よく排水することができる洗濯機を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る洗濯機は、パルセータが底部に配置され、その内周面に複数の通水孔が形成された脱水槽と、前記脱水槽の内周面に対して周方向に等間隔で配置される3 つ以上のバッフルと、各バッフルに個別に調整水を注水可能な注水装置とを備え、前記バッフルの内部には、その外周側壁から径方向内側に向かって突出する水受け板が形成され、前記バッフルは、前記水受け板より上方に配置され、調整水を貯水する貯水空間と、前記水受け板より下方に配置され、前記貯水空間から流れ出た調整水を排水する排水空間とを有しており、前記貯水空間の周方向長さは、前記排水空間の周方向長さより長くなるように形成され、前記貯水空間の内周面は、下方に進むにつれて径方向外側に配置されるように傾斜する傾斜面を有するとともに、前記脱水槽における前記貯水空間の下方の領域であり且つ前記排水空間の周方向両側領域に、前記通水孔が配置されることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る洗濯機において、前記貯水空間の内周面の下端部近傍には、前記排水空間の周方向両側に向かって水の流れを分流させる分流部が形成されることが好適である。
【0009】
本発明に係る洗濯機において、前記脱水槽における前記排水空間の周方向両側領域に形成される前記通水孔の開口面積は、上方から下方に向かって小さくなることが好適である。
【0010】
本発明に係る洗濯機において、前記脱水槽の内周面と前記バッフルの裏面との間に、隙間が形成されるとともに、前記脱水槽の内周面において前記バッフルの裏面と対向する部分に、前記通水孔が配置されることが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、バッフルを周方向に広くした場合でも、バッフルの貯水空間の内周面が下方に進むにつれて径方向外側に配置されるように傾斜する傾斜面を有するため、脱水時に脱水槽内の洗濯物から脱水された水が、貯水空間の下方に導かれる。すると、貯水空間の下方には、通水孔が配置されているため、洗濯物から脱水された水が脱水槽の外部へ効率よく排水される。そのため、脱水時にスムーズに脱水を行うことができる。さらに、洗濯物から脱水された水が脱水槽の下部から集中して排水されるため、排水する水が外槽と脱水槽との間に溜まり難くなり、スムーズに外槽の排水孔に導くことができる。
【0012】
本発明によれば、貯水空間の内周面の下端部近傍に排水空間の周方向両側に向かって水の流れを分流させる分流部が形成されているため、洗濯物から脱水された水を貯水空間の下方に配置された通水孔に導くことができ、よりスムーズに排水することができる。
【0013】
本発明によれば、脱水槽における排水空間の周方向両側領域に形成される通水孔の開口面積が、上方から下方に向かって小さくなるため、脱水時にさらにスムーズに排水することができる。
【0014】
本発明によれば、脱水時に脱水槽内の洗濯物から脱水された水が、バッフルの左右両端部から裏面側に回り込んで、脱水槽の内周面とバッフルの裏面との間の隙間を通過して、通水孔から脱水槽の外部へ効率よく排水される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る洗濯機1の外観を示す斜視図である。
【
図3】
図1の洗濯機1の一部を上方から見た平面図である。
【
図4】
図1の洗濯機1が有する脱水槽2の横断面図である。
【
図5】
図5(a)は、脱水槽2の内周面2a1に形成されるバッフル8を内周側から見た図であり、
図5(b)は、
図5(a)のa
1-a
1線における断面図であり、
図5(c)は、
図5(a)のa
2-a
2線における断面図である。
【
図7】
図7(a)は、本発明の第2実施形態に係る洗濯機の脱水槽2の内周面2a1に形成されるバッフル8を内周側から見た図であり、
図7(b)は、
図7(a)のa
1-a
1線における断面図であり、
図7(c)は、
図7(a)のa
2-a
2線における断面図であり、
図7(d)は、
図7(a)のa
3-a
3線における断面図である。
【
図8】
図8(a)は、本発明の第3実施形態に係る洗濯機の脱水槽2の内周面2a1に形成されるバッフル8を内周側から見た図であり、
図8(b)は、脱水槽2の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の洗濯機1について、図に基づいて詳細に説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る縦型の洗濯機(以下、「洗濯機」と称す。)1の外観を示す斜視図である。
図2は、本実施形態の洗濯機1の構成を示す模式図である。
図3は、本実施形態の洗濯機1の一部を上方から見た平面図である。
図4は、洗濯機1が有する脱水槽2の横断面図である。
【0018】
本実施形態の洗濯機1は、洗濯機本体1aと、脱水槽2と、外槽3と、受水リングユニット5と、注水装置30(ノズルユニット)と、駆動部50と、制御手段60(
図6参照)とを備える。
【0019】
図1に示す洗濯機本体1aは、略直方体形状である。洗濯機本体1aの上面には、脱水槽2に対して洗濯物を出し入れするための開口11が形成されるとともに、この開口11を開閉可能な開閉蓋11aが取り付けられる。
【0020】
外槽3は、洗濯機本体1aの内部に配置された有底筒状の部材であり、内部に洗濯水を貯留可能である。外槽3の底面には、排水口10が形成され、排水口10には、排水配管10aが接続される。
図2に示すように、外槽3の外周面3aには、水平と垂直の2方向の加速度を検出可能な加速度センサ56が取り付けられる。
【0021】
脱水槽2は、外槽3内において外槽3と同軸に配置されるとともに、回転自在に支持される有底筒状の部材である。脱水槽2は、内部に洗濯物を収容可能で、その壁面2aに多数の通水孔2t(
図5(a)参照)を有する。
【0022】
このような脱水槽2の底部2c中央には、パルセータ(撹拌翼)4が回転自在に配置される。
図2に示すように、パルセータ4は、略円盤形状のパルセータ本体4aと、パルセータ本体4aの上面に形成される複数の上羽根部4bと、パルセータ本体4aの下面に形成される複数の下羽根部4cとを有する。このようなパルセータ4は、外槽3内に貯留された洗濯水を撹拌して水流を発生させる。
【0023】
図4に示すように、脱水槽2の内周面2a1には、周方向に等間隔(等角度)で通水管部としてのバッフル(注水管)8が3つ設けられる。各バッフル8は、脱水槽2の底部2cから上端部に亘って上下方向に延び、脱水槽2の内周面2a1から軸線S1に向けて突出して形成される。また、各バッフル8は、中空状であり、横断面形状が円弧状に形成される。このように、バッフル8の形状が、脱水槽2の軸線S1への突出が小さく、脱水槽2の周方向に沿って広がる形状であることで、脱水槽2の収容空間が狭くなることを抑制できる。
【0024】
図2に示すように、このようなバッフル8の上端部には、横長の循環水口80が形成される。また、バッフル8の下端部には、脱水槽2の底部2c近傍、より具体的にはパルセータ本体4aよりも下方で開口する開口部81が形成される。
【0025】
そのため、排水バルブ10a
1(
図2参照)が閉じられて外槽3内に洗濯水が貯められた状態にある洗い工程では、
図2において矢印で示すように、パルセータ4の下羽根部4cで撹拌された洗濯水が開口部81より浸入してバッフル8内をかけあがり、循環水口80より吐出され、衣類がシャワー洗いされる。またこの動作が繰り返されることで、洗濯水が脱水槽2内で循環する。すなわち、バッフル8は、洗濯水の循環機能を有する。
【0026】
バッフル8内の上端近傍には、循環水口80から脱水槽2の内周面2a1の近接位置まで延びる仕切片8aが設けられる。仕切片8aは、循環水口80の上端縁から半径方向外側に向かって延びて、その後、下方に湾曲する。このような仕切片8aと脱水槽2の内周面2a1との間には隙間8b(
図2参照)が形成されており、受水リングユニット5から供給される調整水は隙間8bを介して下方に流れ込む。
【0027】
受水リングユニット5は、
図3に示すように、上方に向けて開放された環状の導水樋5a,5b,5cが脱水槽2の軸線S1に向けて径方向に三層重層されて構成されるもので、
図2に示すように脱水槽2の内周面2a1の上端部に固定される。導水樋5a,5b,5cは、バッフル8と同数だけ設けられ、単独で何れかのバッフル8に調整水を流せるように形成される。
【0028】
導水樋5aの下端部には、
図3に示すように、径方向外側に向かって開口する開口5Aが形成されており、導水樋5aとバッフル8の内部とは連通している。導水樋5bの下端部には、径方向外側に向かって開口する開口5Bが形成されており、導水樋5aの下方を通過する通水経路5Baを介して、導水樋5bとバッフル8の内部とは連通している。導水樋5cの下端部には、径方向外側に向かって開口する開口5Cが形成されており、導水樋5a及び導水樋5bの下方を通過する通水経路5Caを介して、導水樋5cとバッフル8の内部とは連通している。
【0029】
受水リングユニット5の外周側には、環状の流体バランサ12が取り付けられている。流体バランサ12は、既知の流体バランサと同様のものである。
【0030】
注水装置30は、このような導水樋5a,5b,5cに個別に調整水を注水するものである。注水装置30は、導水樋5a,5b,5cの上方に配置された3本の注水ノズル30a,30b,30cと、これらの注水ノズル30a,30b,30cにそれぞれ接続される給水バルブ31a,31b,31cとを有する。注水ノズル30a,30b,30cは、導水樋5a,5b,5cと同数だけ設けられ、それぞれ別々の導水樋5a,5b,5cに注水可能な位置に、外槽3の上端部に取り付けられる。なお、本実施形態では調整水として水道水が用いられる。また、給水バルブ31a,31b,31cとしては、方向切換給水バルブを採用することも可能である。
【0031】
図2に示す駆動部50は、モータ51によりプーリー52およびベルト53を回転させるとともに、脱水槽2の底部2cに向けて延出する駆動軸54を回転させて、脱水槽2やパルセータ4に駆動力を与え、脱水槽2やパルセータ4を回転させる。洗濯機1は、洗い工程では主としてパルセータ4のみを回転させ、脱水工程では脱水槽2とパルセータ4とを一体的に高速で回転させる。また、一方のプーリー53の近傍には、プーリー52に形成されたマーク52aの通過を検出できる近接スイッチ55が設けられる。
【0032】
図5(a)は、脱水槽2の内周面2a1に形成されるバッフル8を内周側から見た図であり、
図5(b)は、
図5(a)のa
1-a
1線における断面図であり、
図5(c)は、
図5(a)のa
2-a
2線における断面図である。
【0033】
バッフル8の内周側壁の下端近傍には、
図5(b)に示すように、径方向内側に突出した突出壁部82を有している。すなわち、バッフル8の内周側壁の一部が径方向内側に向かって突出している。バッフル8の内部には、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、その外周側壁から径方向内側に向かって突出する水受け板85が形成されている。
【0034】
水受け板85は、突出壁部82と同一高さに配置されており、水受け板85の径方向内側端部85aは、突出壁部82の内部に配置される。水受け板85の径方向内側端部85aと突出壁部82の先端内周面との間には、空隙が形成されており、貯水空間8Taに供給された調整水は、その空隙を介して排水空間8Tbに流れ込む。
【0035】
バッフル8の内部空間は、水受け板85が配置された突出壁部82より上方に配置される貯水
空間8Taと、突出壁部82より下方に配置される排水空間8Tbとを有している。貯水空間8Taは、導水樋5a,5b,5cからの調整水を貯水する空間であり、排水空間8Tbは、貯水空間8Taから流れ出た調整水を排水する空間である。
【0036】
図5(a)及び
図5(b)に示すように、貯水空間8Taの径方向厚さと排水空間8Tbの径方向厚さとは略同一であるのに対し、排水空間8Tbの上下方向長さは貯水空間8Taの上下方向長さより短い。貯水空間8Taの周方向長さは、排水空間8Tbの周方向長さより長くなるように形成される。そのため、貯水空間8Taの体積は、排水空間8Tbの体積より大きい。
【0037】
バッフル8の貯水空間8Taに注水された調整水は、突出壁部82内に配置された水受け板85により下方に流れないように保持され、水受け板85の上面に沿って突出壁部82内を径方向内側に向かって流れる。脱水槽2が回転した状態でバッフル8の貯水空間8Taに調整水が注水されると、調整水は遠心力により導水樋5a,5b,5cの外周壁に貼りつくため、調整水は貯水空間8Ta内に保持される。
【0038】
図5(b)及び
図5(c)において、上下方向に延びた点線は、貯水空間8Taの下端を通過し且つ鉛直方向に平行な直線を示している。貯水空間8Taの内周面は、
図5(b)及び
図5(c)に示すように、その下端から上端に進むにつれて径方向内側に配置されるように傾斜する。すなわち、貯水空間8Taの内周面は、上端から下端に進むにつれて径方向外側に配置されるように傾斜する傾斜面Aに形成される。本実施形態では、貯水空間8Taの内周面の全域が、傾斜面Aである。
【0039】
脱水槽2における排水空間8Tbの周方向両側領域には、
図5(a)に示すように、脱水槽2の内周面2a1においてバッフル8が形成されない領域と同様に、複数の通水孔2tが配置される。
【0040】
貯水空間8Taの下端に近接した領域に配置された通水孔2tの直径が大きく、脱水槽2の底部2cに近接した領域に形成された通水孔2tの直径が小さい。すなわち、排水空間8Tbの周方向両側領域にそれぞれ配置される通水孔2tの直径は、上方から下方に向かって小さくなる。
【0041】
また、脱水槽2の内周面2a1においてバッフル8が形成されない領域に形成された通水孔2tの直径は、脱水槽2の底部2cに近接した領域に形成された通水孔2tの直径と略同一である。
【0042】
そのため、通水孔2tの開口率を、所定面積における通水孔2tの開口の割合とすると、排水空間8Tbの周方向両側領域における通水孔2tの開口率は、脱水槽2の内周面2a1においてバッフル8が形成されない領域における通水孔2tの開口面積より大きい。排水空間8Tbの周方向両側領域における通水孔2tの開口率は、上方から下方に向かって小さくなる。
【0043】
本実施形態の洗濯機1では、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、脱水槽2の内部において脱水時に脱水された水は、遠心力により貯水空間8Taの内周面に押圧されて、貯水空間8Taの上端より径方向外側に配置される貯水空間8Taの下端に向かって流れやすくなる。その後、脱水時に脱水された水は、排水空間8Tbの周方向両側領域に形成された通水孔2tから脱水槽2の外部に排水され、外槽3の排水孔に導かれる。
【0044】
図6は、本実施形態の洗濯機1の電気的構成を示すブロック図である。この洗濯機1の動作は、マイクロコンピュータを含む制御手段60によって制御される。制御手段60は、システム全体の制御を司る中央制御部(CPU)61を備え、この制御手段60に種々の設定値などを記憶させたメモリ62を接続する。また、制御手段60により、メモリ62に記憶されたプログラムをマイクロコンピュータが実行することにより、予め定められた運転動作が行われるとともに、メモリ62には、上記プログラムを実行する際に用いられるデータ等が一時的に記憶される。
【0045】
中央制御部61は、回転速度制御部63へ制御信号を出力し、さらにその制御信号をモータ制御部(モータ制御回路)64へ出力してモータ51の回転制御を行う。なお、回転速度制御部63は、モータ制御部64からモータ51の回転速度を示す信号を実時間で入力し、制御要素となるようにしている。アンバランス量検出部65には、加速度センサ56を接続するとともに、アンバランス位置検出部66には、加速度センサ56および近接スイッチ55を接続する。
【0046】
これにより、近接スイッチ55がマーカー52a(
図2参照)を検知すると、加速度センサ56からの水平方向と垂直方向の加速度の大きさから、アンバランス量検出部65においてアンバランス量(M)が算出され、このアンバランス量がアンバランス量判定部67へ出力される。アンバランス位置検出部66は、近接スイッチ55から入力されたマーカー52aの位置を示す信号からアンバランス方向の角度を算出し、アンバランス位置信号を注水制御部68へ出力する。
【0047】
注水制御部68は、アンバランス量判定部67およびアンバランス位置検出部66からのアンバランス量とアンバランス位置を示す信号が入力されると、脱水槽2内の何れのバッフル8に給水を行うかおよびその給水量を予め格納される制御プログラムに基づいて判断する。そして選定した給水バルブ31a,31b,31cを開き、調整水の注水を開始する。脱水槽2にアンバランスが生じたときは、このアンバランス量の算出に基づいて選定された注水ノズル30a,30b,30cから受水リングユニット5の導水樋5a,5b,5cに調整水の注水を開始し、バッフル8によりアンバランスが解消されたとき、調整水の注水を停止する。
【0048】
なお、注水制御部68は、例えば
図4に示すように、アンバランスの要因となっている洗濯物の塊D(X)が脱水槽2のバッフル8(A)とバッフル8(C)の間にある場合は、バッフル8(B)に調整水を供給するよう制御する。また、洗濯物の塊D(Y)がバッフル8(B)の近傍にある場合は、バッフル8(A)とバッフル8(C)の両方に調整水を供給するよう制御する。
【0049】
このように本実施形態の洗濯機1は、パルセータ4が底部2cに配置され、その内周面2a1に複数の通水孔2tが形成された脱水槽2と、脱水槽2の内周面2a1に対して周方向に等間隔で配置される3つ以上のバッフル8と、各バッフル8に個別に調整水を注水可能な注水装置30とを備え、バッフル8の内部には、その外周側壁から径方向内側に向かって突出する水受け板85が形成され、バッフル8は、水受け板85より上方に配置され、調整水を貯水する貯水空間8Taと、水受け板85より下方に配置され、貯水空間8Taから流れ出た調整水を排水する排水空間8Tbとを有しており、貯水空間8Taの周方向長さは、排水空間8Tbの周方向長さより長くなるように形成され、貯水空間8Taの内周面は、下方に進むにつれて径方向外側に配置されるように傾斜する傾斜面Aを有するとともに、脱水槽2における排水空間8Tbの周方向両側領域に、通水孔2tが配置される。
【0050】
このような構成であると、バッフル8を周方向に広くした場合でも、貯水空間8Taの内周面が下方に進むにつれて径方向外側に配置されるように傾斜する傾斜面Aを有するため、脱水時に脱水槽2内の洗濯物から脱水された水が、脱水槽2の下方に導かれる。すると、貯水空間8Taの下方には、通水孔2tが配置されているため、洗濯物から脱水された水が脱水槽2の外部へ効率よく排水される。これにより、脱水時にスムーズに脱水を行うことができる。さらに、洗濯物から脱水された水が脱水槽2の下部から集中して排水されるため、排水する水が外槽3と脱水槽2との間に溜まり難くなり、スムーズに外槽3の排水孔に導くことができる。
【0051】
このように本実施形態の洗濯機1において、脱水槽2における排水空間8Tbの周方向両側領域に形成される通水孔2tの開口面積は、上方から下方に向かって徐々に小さくなる。
【0052】
このような構成であると、脱水槽2における排水空間8Tbの周方向両側領域に形成される通水孔2tの開口面積が、上方から下方に向かって小さくなるため、脱水時にさらにスムーズに排水することができる。
【0053】
(第2実施形態)
本実施形態に係る縦型の洗濯機が、第1実施形態に係る縦型の洗濯機と異なる点は、バッフル8の内周面の形状である。本実施形態に係る縦型の洗濯機の構成において、第1実施形態に係る縦型の洗濯機と同様である部分については、その詳細説明を省略する。
【0054】
図7(a)は、第2実施形態に係る洗濯機の脱水槽2の内周面2a1に形成されるバッフル8を内周側から見た図であり、
図7(b)は、
図7(a)のa
1-a
1線における断面図であり、
図7(c)は、
図7(a)のa
2-a
2線における断面図であり、
図7(d)は、
図7(a)のa
3-a
3線における断面図である。
【0055】
貯水空間8Taの内周面は、
図7(b)及び
図7(c)に示すように、上端から下端に進むにつれて径方向外側に配置されるように傾斜する傾斜面Aに形成される。また、貯水空間8Taの内周面の下端部近傍には、
図7(a)及び
図7(d)に示すように、脱水槽2の内側に向かって突出する分流部8Tcが形成される。分流部8Tcの水平方向に沿った幅は、上方から下方にいくにつれて広くなっている。そのため、貯水空間8Taの内周面に沿って上方から下方に向かって流れる水は、分流部8Tcの上端において左右に分流して、排水空間8Tbの周方向両側に向かって流れる。
【0056】
このように本実施形態の洗濯機において、貯水空間8Taの内周面の下端部近傍には、排水空間8Tbの周方向両側に向かって水の流れを分流する分流部8Tcが形成される。
【0057】
このような構成であると、貯水空間8Taの内周面の下端部近傍に排水空間8Tbの周方向両側に向かって水の流れを分流する分流部8Tcが形成されているため、洗濯物から脱水された水を貯水空間8Taの下方に配置された通水孔2tに導くことができ、よりスムーズに排水することができる。
【0058】
(第3実施形態)
本実施形態に係る縦型の洗濯機が、第1実施形態に係る縦型の洗濯機と異なる点は、脱水槽2の内周面2a1とバッフル8との間の隙間が形成される点である。本実施形態に係る縦型の洗濯機の構成において、第1実施形態に係る縦型の洗濯機と同様である部分については、その詳細説明を省略する。
【0059】
図8(a)は、第3実施形態に係る洗濯機の脱水槽2の内周面2a1に形成されるバッフル8を内周側から見た図であり、
図8(b)は、脱水槽2の模式図である。
【0060】
貯水空間8Taの内周面は、上端から下端に進むにつれて径方向外側に配置されるように傾斜する傾斜面Aに形成される。
図8(b)に示すように、脱水槽2の内周面2a1とバッフル8の裏面(バッフル8の径方向外側の面)との間には、隙間が形成される。そのため、脱水時に脱水槽2内の洗濯物から脱水された水は、脱水槽2の内周面2a1とバッフル8の裏面との間の隙間を通過可能である。
【0061】
脱水槽2の内周面2a1において、バッフル8の裏面と対向する部分に、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、複数の通水孔2tが配置される。このように、本実施形態では、脱水槽2の内周面2a1において、バッフル8の貯水空間8Taで隠れる部分に、複数の通水孔2tが配置される。そのため、脱水時に脱水槽2内の洗濯物から脱水された水は、バッフル8の貯水空間8Taの左右両端部から裏面側に回り込んで、脱水槽2の内周面2a1とバッフル8の裏面との間の隙間を通過した後、通水孔2tから脱水槽2の外部へ排水される。
【0062】
このように本実施形態の洗濯機において、脱水槽2の内周面2a1とバッフル8の裏面との間に、隙間が形成されるとともに、脱水槽2の内周面2a1においてバッフル8の裏面と対向する部分に、通水孔2tが配置される。
【0063】
このような構成であると、脱水時に脱水槽2内の洗濯物から脱水された水が、バッフル8の左右両端部から裏面側に回り込んで、脱水槽2の内周面2a1とバッフル8の裏面との間の隙間を通過して、通水孔2tから脱水槽2の外部へ効率よく排水される。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本実施形態の構成は上述したものに限定されず、種々の変形が可能である。
【0065】
例えば、上記第1~第3実施形態では、貯水空間8Taの内周面の全域が、下方に進むにつれて径方向外側に配置されるように傾斜する傾斜面Aであるが、貯水空間8Taの内周面の一部分のみが、下方に進むにつれて径方向外側に配置されるように傾斜する傾斜面Aでもよい。
【0066】
上記第1~第3実施形態では、脱水槽2における排水空間8Tbの周方向両側領域に形成される通水孔2tの開口率が、上方から下方に向かって小さくなるが、それに限られない。例えば、脱水槽2における排水空間8Tbの周方向両側領域に形成される通水孔2tの開口率は、その全域において一定でもよい。上記第1~第3実施形態において、脱水槽2の内周面に形成される通水孔2tの開口面積、数、配置は任意である。
【0067】
上記第1~第3実施形態では、3つのバッフル8が設けられ、3つのバッフル8に対して注水するための3つの導水樋5a,5b,5cを有する受水リングユニット5を備えるが、これに限らず、バッフル8が3個以上設けられ、各バッフル8に個別に調整水を注水可能な注水装置を備える構成であればよい。
【0068】
上記第3実施形態では、脱水槽2の内周面2a1に対するバッフル8の支持構造の説明を省略したが、脱水槽2の内周面2a1とバッフル8との間に隙間が形成される構成であれば、上記の支持構造は任意である。
【0069】
上記第1~第3実施形態では、バッフル8の内周側壁が径方向内側に突出した突出壁部82を有しており、水受け板85の径方向内側端部は突出壁部82の内部に配置されるが、それに限られない。例えば、バッフル8の内周側壁が径方向内側に突出した突出壁部82を有しなくてよい。
【0070】
上記第1~第3実施形態において、バッフル8の形状の例を示したが、それに限られない。バッフル8の形状、貯水空間8Ta及び排水空間8Tbの形状は、任意であり、例えば上広がり、或いは下広がりの形状であってもよい。
【0071】
上記第1~第3実施形態では、水受け板85の形状の例を示したが、それに限られない。水受け板85の位置(上下方向高さ)及び径方向長さは、任意である。
【0072】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 洗濯機
2 脱水槽
2c 脱水槽の底部
2t 通水孔
4 パルセータ
8 バッフル
8Ta 貯水空間
8Tb 排水空間
8Tc 分流部
30 注水装置
85 水受け板
A 傾斜面