(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】中空構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F16B 5/07 20060101AFI20240729BHJP
B29C 43/36 20060101ALI20240729BHJP
B60R 5/04 20060101ALI20240729BHJP
F16B 5/01 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
F16B5/07 L
B29C43/36
B60R5/04 Z
F16B5/01
(21)【出願番号】P 2020135867
(22)【出願日】2020-08-11
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000107619
【氏名又は名称】スターライト工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】早水 幹益
(72)【発明者】
【氏名】南 徹
(72)【発明者】
【氏名】伊東 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】新海 達也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 紘規
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-154947(JP,A)
【文献】特開2019-162968(JP,A)
【文献】特開2011-011615(JP,A)
【文献】特表2002-531287(JP,A)
【文献】特開2012-121424(JP,A)
【文献】特開2002-240188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/00-5/12
B60R 3/00-7/14
B32B 1/00-43/00
B29C 43/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルが並設された熱可塑性樹脂製の中空板材で構成され、
被係止部材に係止するための係止突部が、一体に形成されており、
前記係止突部は、前記中空板材が圧縮されて、該係止突部の壁厚が前記中空板材の壁厚より薄くされており、
前記係止突部は、弾性変形することにより前記被係止部材に形成された被係止部に係止可能に構成されてお
り、
前記係止突部は、前記中空板材の一方の主面から突出するように一体に形成されており、
前記係止突部には、前記中空板材を圧縮するように他方の主面側から凹む係止凹部が形成されて、該係止突部の壁厚が前記中空板材の壁厚より薄くされていることを特徴とす
る中空構造体。
【請求項2】
前記係止突部は、対向して配置された一対の係止突片を有しており、一対の前記係止突片が互いに接近する方向に弾性変形することにより、前記被係止部に係止可能に構成されていることを特徴とする請求項
1に記載の中空構造体。
【請求項3】
前記係止突部の先端部には、基端側より外径寸法が大きい拡径部が形成されていることを特徴とする請求項
1又は2に記載の中空構造体。
【請求項4】
複数のセルが並設された熱可塑性樹脂製の中空板材で構成され、
被係止部材に係止するための
板状の係止突部が、
側縁に一体に形成されており、
前記係止突部は、前記中空板材が圧縮されて、該係止突部の壁厚が前記中空板材の壁厚より薄くされており、
前記係止突部は、弾性変形することにより前記被係止部材に形成された被係止部に係止可能に構成されて
おり、
前記係止突部は、前記中空板材の一方の主面から突出するように形成された基端部と、前記基端部の先端から延びて該基端部に交差するように形成された先端部を備えていることを特徴とする中空構造体。
【請求項5】
複数のセルが並設された熱可塑性樹脂製の中空板材で構成され、被係止部材に係止するための係止突部が一体に形成された中空構造体の製造方法であって、
凹凸シート材で前記中空板材を形成する中空板材形成工程と、
加熱された前記中空板材をプレス成型して突部を有する中間体を成形するプレス成型工程と、
前記突部の一部を切断して前記係止突部を形成する後加工工程と
を備えていることを特徴とする中空構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に複数のセルを有する板状の中空構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製の中空構造体は、適度な強度を有し、軽量で取扱い性にも優れていることから、例えば、車両後部の荷室床面を構成するラゲッジボードに適用することが知られている。板状のラゲッジボードは、車両後部のフロアパネル上方の取付段部に載置されて、ラゲッジボード上方に荷物の収納空間を区画する。
【0003】
ラゲッジボードを取付段部上に安定して載置するために、クリップのような取付治具を用いて固定する場合がある。この場合、ラゲッジボードと取付段部との双方に貫設された取付孔内に、クリップを挿入してラゲッジボードを固定したり、ラゲッジボードに予め取り付けられたクリップを、取付段部に貫設された取付孔内に挿入してラゲッジボードを固定したりすることが考えられる。
【0004】
特許文献1には、車両後部のフロアパネルに形成されたスペアタイヤ収納用凹部の上方位置に物品収納用ボックスを配置するとともに、物品収納用ボックスの上方位置に、合成樹脂製で板状のリッドを配置することが記載されている。リッドは、車室後部の側面部分のクオータートリムに形成された取付部に、クリップによって着脱可能な状態で固定されて車両の荷室床面の一部を構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、クリップを使用して板材を取付部に取り付けると、部品点数が増えて取付作業の効率が悪くなることやクリップが外れて紛失することがある。
本発明は、従来のこうした問題を解決するためになされたものであり、取付作業のし易い中空構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の中空構造体は、複数のセルが並設された熱可塑性樹脂製の中空板材で構成され、被係止部材に係止するための係止突部が、一体に形成されており、前記係止突部は、前記中空板材が圧縮されて、該係止突部の壁厚が前記中空板材の壁厚より薄くされており、前記係止突部は、弾性変形することにより前記被係止部材に形成された被係止部に係止可能に構成されている。
【0008】
上記の構成によれば、被係止部材に係止するための係止突部が中空板材に一体に形成されている。そのため、被係止部材に係止するために別部材を準備する必要がない。被係止部材への取付作業がし易く、中空構造体の取付作業性が向上する。また、係止突部は、熱可塑性樹脂製の中空板材が圧縮されて、その壁厚が中空板材の壁厚より薄くなっている。そのため、係止突部では、中空板材を構成する熱可塑性樹脂の密度が高くなっており、係止突部以外の部分に比べてその剛性が向上している。係止突部は、弾性変形するための十分な強度を有している。
【0009】
上記の構成において、前記係止突部は、前記中空板材の一方の主面から突出するように一体に形成されており、前記係止突部には、前記中空板材を圧縮するように他方の主面側から凹む係止凹部が形成されて、該係止突部の壁厚が前記中空板材の壁厚より薄くされていることが好ましい。
【0010】
上記の構成によれば、係止突部では、熱可塑性樹脂製の中空板材が圧縮されるように係止凹部が形成されているため、中空板材を構成する熱可塑性樹脂の密度が高くなっている。係止突部以外の部分に比べてその剛性が向上しており、弾性変形するための十分な強度を有している。
【0011】
上記の構成において、前記係止突部は、対向して配置された一対の係止突片を有しており、一対の前記係止突片が互いに接近する方向に弾性変形することにより、前記被係止部に係止可能に構成されていることが好ましい。
【0012】
上記の構成によれば、係止突部は、対向配置された一対の係止突片を有しているため、被係止部に確実に係止することができる。
上記の構成において、前記係止突部の先端部には、基端側より外径寸法が大きい拡径部が形成されていることが好ましい。
【0013】
例えば、被係止部材が板状の部分を有し、被係止部がその板状の部分に形成された孔であるような場合、係止突部は、弾性変形しながら被係止部材の一方の面から孔内に挿入され、弾性変形に抗する方向に付勢されて孔に係止される。このとき、先端部に形成された拡径部が被係止部材の他方の面から突出すると、係止突部が弾性変形に抗する方向に付勢されることにより、拡径部が被係止部材の他方の面側に係止される。これにより、係止突部は、被係止部に対して自身の抜け方向への移動が規制された状態で係止される。係止突部が被係止部から抜け難く、中空構造体の安定した取付状態が維持される。
【0014】
上記の課題を解決するため、本発明の中空構造体の製造方法は、複数のセルが並設された熱可塑性樹脂製の中空板材で構成され、被係止部材に係止するための係止突部が一体に形成された中空構造体の製造方法であって、凹凸シート材で前記中空板材を形成する中空板材形成工程と、加熱された前記中空板材をプレス成型して突部を有する中間体を成形するプレス成型工程と、前記突部の一部を切断して前記係止突部を形成する後加工工程とを備えている。
【0015】
上記の構成によれば、プレス成型工程によって、中空板材に突部を一体成形することができる。取付作業性に優れた中空構造体を容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、取付作業のし易い中空構造体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態の中空構造体であるラゲッジボードを下方から見た斜視図。
【
図2】第1実施形態の係止突部を下方から見た斜視図。
【
図3】被係止部材である取付段部と係止突部との係止状態を示す断面図であって、
図1のα‐α線に相当する部分のラゲッジボードが取付段部に係止された状態について示す断面図。
【
図4】(a)は中空板材の斜視図、(b)は(a)におけるγ‐γ線断面図、(c)は(a)におけるσ‐σ線断面図。
【
図5】ラゲッジボードを製造する方法について説明する図であり、コア層を形成する工程について説明する図。(a)はコア層を構成するシート材の斜視図、(b)は同シート材の折り畳み途中の状態を示す斜視図、(c)は同シート材を折り畳んだ状態を示す斜視図。
【
図6】(a)~(e)はラゲッジボードを製造する方法について説明する図。
【
図7】(a)~(c)はラゲッジボードを製造する方法について説明する図であり、後加工工程について説明する図。
【
図8】(a)、(b)は係止突部を取付段部に係止する状態について説明する断面図。
【
図9】係止突部での熱可塑性樹脂の状態について説明する図。
【
図10】第2実施形態の中空構造体であるラゲッジボードの部分斜視図。
【
図11】(a)、(b)は係止突部を被係止孔に係止する状態について説明する断面図。
【
図12】(a)~(c)はラゲッジボードを製造する方法について説明する図。
【
図13】(a)、(b)はラゲッジボードを製造する方法について説明する図であり、後加工工程について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明の中空構造体を具体化した第1実施形態のラゲッジボード11について説明する。ラゲッジボード11は、車両の後部に設けられたラゲッジルームの底面を形成するものである。ラゲッジルームの周縁下方には支持部としての取付段部50が設けられており、ラゲッジボード11は取付段部50上に載置されて支持されている。
【0019】
図1に示すように、ラゲッジボード11は、車幅方向に長い長方形板状に形成されており、車幅方向に延びるヒンジ部12を介して、車両後側の後板部13と車両前側の前板部14とが一体的に接続された形状とされている。ラゲッジボード11は、複数のセルSが並設された熱可塑性樹脂製の中空板材10で構成されており、ヒンジ部12は、ラゲッジボード11を構成する中空板材10が圧縮されてその板厚が薄くされることによって形成されている。ヒンジ部12を回動軸として後板部13を上方に持ち上げると、ラゲッジボード11の下側の空間に保管された工具等を出し入れすることができる。ここで、ラゲッジボード11の上下とは、車両の上下を言うものとし、ラゲッジボード11の上方に位置する面を上面11a、下方に位置する面を下面11bと言うものとする。
【0020】
まず、ラゲッジボード11を構成する熱可塑性樹脂製の中空板材10について説明する。
図4(a)に示すように、中空板材10は、内部に複数のセルSが並設された熱可塑性樹脂製のコア層20と、コア層20の両主面でコア層20全体を覆うように接合された熱可塑性樹脂製のスキン層31、32とで構成されている。中空板材10は、スキン層31が接合された側がラゲッジボード11の上面11a側、スキン層32が接合された側がラゲッジボード11の下面11b側となるように配置されてラゲッジボード11を構成している。
【0021】
図4(a)に示すように、コア層20は、所定形状に成形された1枚の熱可塑性樹脂製のシート材を折り畳んで形成されている。そして、コア層20は、上壁部21と、下壁部22と、上壁部21及び下壁部22の間に立設されてセルSを六角柱形状に区画する側壁部23とで構成されている。以下で説明するように、コア層の上壁部21及び下壁部22は、1層構造と2層構造とが混在した構造とされているが、
図4(a)では、コア層20の上壁部21及び下壁部22を1層構造で示している。
【0022】
図4(b)及び(c)に示すように、コア層20の内部に区画形成されるセルSには、構成の異なる第1セルS1及び第2セルS2が存在する。
図4(b)に示すように、第1セルS1においては、側壁部23の上部に2層構造の上壁部21が設けられている。この2層構造の上壁部21の各層は互いに接合されている。また、2層構造の上壁部21には、コア層20の成形時に熱可塑性樹脂が熱収縮することにより、図示しない開口部が形成されている。第1セルS1においては、側壁部23の下部に1層構造の下壁部22が設けられている。
【0023】
一方、
図4(c)に示すように、第2セルS2においては、側壁部23の上部に1層構造の上壁部21が設けられている。また、第2セルS2においては、側壁部23の下部に2層構造の下壁部22が設けられている。この2層構造の下壁部22の各層は互いに接合されている。2層構造の下壁部22には、コア層20成形時の熱可塑性樹脂の熱収縮により、図示しない開口部が形成されている。
【0024】
また、
図4(b)及び(c)に示すように、隣接する第1セルS1同士の間、及び隣接する第2セルS2同士の間は、それぞれ2層構造の側壁部23によって区画されている。この2層構造の側壁部23は、コア層20の厚み方向中央部に互いに熱溶着されていない部分を有する。したがって、コア層20の各セルSの内部空間は、2層構造の側壁部23の間を介して他のセルSの内部空間に連通している。
【0025】
図4(a)に示すように、第1セルS1はX方向に沿って列を成すように並設されている。同様に、第2セルS2はX方向に沿って列を成すように並設されている。第1セルS1の列及び第2セルS2の列は、X方向に直交するY方向において交互に配列されている。そして、これら第1セルS1及び第2セルS2により、コア層20は、全体としてハニカム構造をなしている。
【0026】
コア層20及びスキン層31、32を構成する熱可塑性樹脂は、従来周知の熱可塑性樹脂であればよく、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体樹脂、アクリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。本実施形態のコア層20及びスキン層31、32は、ポリプロピレン樹脂製とされている。コア層20を構成する熱可塑性樹脂と、スキン層31、32を構成する熱可塑性樹脂は、同じ材質であることが好ましい。本実施形態では、スキン層31とスキン層32の厚みは同一とされている。
【0027】
ラゲッジボード11は、こうした構成を有する中空板材10を所定の大きさの長方形状に切断したものを加工することによって形成されている。なお、
図3、
図6、
図8では、中空板材10の内部の中空構造を省略して示している。
【0028】
図1及び
図2に示すように、ラゲッジボード11の前板部14には、ラゲッジボード11の下面11bから下方に突出するように上面視略円形状の係止突部40が形成されている。係止突部40は、前板部14の両側部のそれぞれに1箇所ずつ形成されている。両側部の係止突部40は、同じ形状、同じ大きさである。
【0029】
係止突部40は、熱可塑性樹脂製の中空板材10が熱溶融されるとともに圧縮されることによってラゲッジボード11と一体に形成されている。係止突部40は、後に説明するプレス成型工程において、中空板材10を、上型71の凸部71cで下型72の凹部72bに向けてスキン層31側から押圧することにより成形される。そのため、
図3に示すように、ラゲッジボード11の下面11bから下方に突出するように形成された係止突部40には、ラゲッジボード11の上面11aから凹む係止凹部41が形成されている。また係止凹部41の側面は、下方ほど小径となる傾斜面として形成されている。傾斜面として形成されていることにより、中間体形成工程において、金型70の離型時に凸部71cが抜け易くなる。係止突部40の壁厚は、中空板材10の厚みより薄くされており、中空板材10の厚みの約1/4~1/2程度である。なお、係止突部40と係止凹部41とは表裏一体の関係であり、以下では、係止突部40として説明する。
【0030】
図2に示すように、係止突部40には、車幅方向に延びるようにラゲッジボード11を上下方向に貫通する開口部43が形成されている。開口部43が形成されることにより、係止突部40は、対向して配置された一対の係止突片42を有する構成とされている。一対の係止突片42は、側壁42a、底壁42b、及び側壁42aと底壁42bを繋ぐ断面R形状の湾曲壁42cを有している。側壁42a、底壁42b、及び湾曲壁42cの壁厚はほぼ同程度であって、中空板材10の厚みの約1/4~1/2程度である。
【0031】
図3及び
図9に示すように、ラゲッジボード11の前板部14における係止突部40の周囲には、ラゲッジボード11の上面11aから下方に向けて中空板材10が熱溶融されるとともに圧縮されることによってその厚みが薄くされた凹部15が形成されている。凹部15は、両側部の係止突部40のそれぞれに形成されており、同じ形状、同じ大きさである。凹部15は、係止突部40と同心円である上面視円形状に形成されている。凹部15の厚みは、係止突部40の厚みより少し厚くされており、中空板材10の厚みの約1/3~2/3程度である。
【0032】
図2及び
図3に示すように、係止突片42の側壁42aの上部には、側壁42aの基端部が切り欠かれた形状の開口44が形成されている。また、ラゲッジボード11の凹部15には、凹部15の壁が切り欠かれた形状の開口16が形成されている。開口16は、開口44に連通する一つの開口部として形成されている。側壁42aに開口44が形成されていることにより、側壁42aの下部(先端部)は、上部より外径寸法が大きい拡径部45とされている。拡径部45の上端縁は、開口44に臨む側壁42aの上端縁46で構成されている。また、側壁42aの上部(基端部)において開口44が形成されていない部分は、係止突片42の先端部を凹部15に連設する軸部47となっている。
【0033】
図3に示すように、ラゲッジボード11は、ラゲッジルームの周縁下方に設けられた板状の取付段部50に載置されて支持される。取付段部50において、ラゲッジボード11が支持された状態で係止突部40が載置される部分には、取付段部50が下方から凹むことによってその厚みが他の部分より薄くされた被係止凹部51が形成されている。被係止凹部51は、上面視円形状に形成されており、その中央部分には、取付段部50を上下方向に貫通するように被係止孔52が形成されている。被係止孔52は上面視円形状である。被係止孔52の直径は、係止突部40の一対の係止突片42における底壁42bの外径と同程度に形成されている。係止突部40が取付段部50の被係止孔52に係止されることで、ラゲッジボード11が取付段部50に係止される。取付段部50が請求項で言う被係止部材であり、被係止孔52が請求項で言う被係止部である。
【0034】
次に、ラゲッジボード11を製造する方法について、
図5~
図7に基づいて説明する。
ラゲッジボード11を製造する方法は、中空板材形成工程、加熱工程、プレス成型工程、及び後加工工程を備えている。中空板材形成工程は、一枚のシート材100からコア層20を形成するとともに、コア層20にスキン層31、32を接合する工程である。加熱工程は、中空板材10を加熱する工程である。プレス成型工程は、金型70内で中空板材10を成形して中間体60を得る工程である。後加工工程は、中間体60を加工してラゲッジボード11を得る工程である。
【0035】
図5(a)~(c)に示すように、中空板材形成工程では、まず、シート材100を折り畳むことによってコア層20を形成する。
図5(a)に示すように、シート材100は、1枚の熱可塑性樹脂製のシートを所定の形状に成形することにより形成されている。シート材100には、帯状をなす平面領域110及び膨出領域120が、シート材100の長手方向(Z1方向)に交互に配置されている。膨出領域120には、上面と一対の側面とからなる断面下向溝状をなす第1膨出部121が膨出領域120の延びる方向(Z2方向)の全体にわたって形成されている。なお、第1膨出部121の上面と側面とのなす角は90度であることが好ましく、その結果として、第1膨出部121の断面形状は下向コ字状となる。また、第1膨出部121の幅(上面の短手方向の長さ)は平面領域110の幅と等しく、かつ第1膨出部121の膨出高さ(側面の短手方向の長さ)の2倍の長さとなるように設定されている。
【0036】
また、膨出領域120には、その断面形状が正六角形を最も長い対角線で二分して得られる台形状をなす複数の第2膨出部122が、第1膨出部121に直交するように形成されている。第2膨出部122の膨出高さは第1膨出部121の膨出高さと等しくなるように設定されている。また、隣り合う第2膨出部122間の間隔は、第2膨出部122の上面の幅と等しくなっている。
【0037】
なお、こうした第1膨出部121及び第2膨出部122は、シートの塑性を利用してシートを部分的に上方に膨出させることにより形成されている。また、シート材100は、真空成形法や圧縮成形法等の周知の成形方法によって1枚のシートから成形することができる。
【0038】
図5(a)及び(b)に示すように、上述のように構成されたシート材100を、境界線P、Qに沿って折り畳むことでコア層20が形成される。具体的には、シート材100を、平面領域110と膨出領域120との境界線Pにて谷折りするとともに、第1膨出部121の上面と側面との境界線Qにて山折りしてZ1方向に圧縮する。そして、
図5(b)及び(c)に示すように、第1膨出部121の上面と側面とが折り重なるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なることによって、一つの膨出領域120に対して一つのZ2方向に延びる角柱状の区画体130が形成される。こうした区画体130がZ1方向に連続して形成されていくことにより中空板状のコア層20が形成される。
【0039】
上記のようにシート材100を圧縮するとき、第1膨出部121の上面と側面とによってコア層20の上壁部21が形成されるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とによってコア層20の下壁部22が形成される。なお、
図5(c)に示すように、上壁部21における第1膨出部121の上面と側面とが折り重なって2層構造を形成する部分、及び下壁部22における第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なって2層構造を形成する部分がそれぞれ重ね合わせ部131となる。
【0040】
また、第2膨出部122が折り畳まれて区画形成される六角柱形状の領域が第2セルS2となるとともに、隣り合う一対の区画体130間に区画形成される六角柱形状の領域が第1セルS1となる。本実施形態では、第2膨出部122の上面及び側面が第2セルS2の側壁部23を構成するとともに、第2膨出部122の側面と、膨出領域120における第2膨出部122間に位置する平面部分とが第1セルS1の側壁部23を構成する。そして、第2膨出部122の上面同士の当接部位、及び膨出領域120における上記平面部分同士の当接部位が2層構造をなす側壁部23となる。なお、こうした折り畳み工程を実施するに際して、シート材100を加熱処理して軟化させた状態としておくことが好ましい。
【0041】
続いて、コア層20の上面にスキン層31を重ね合わせ、コア層20の下面にスキン層32を重ね合わせる。スキン層31、32は、加熱処理して軟化させた状態にしておくことが好ましい。スキン層31、32が加熱処理されることで、スキン層31、32にコーティングされた熱可塑性樹脂の接着層は、一部熱溶融された状態となっている。そのため、コア層20に重ね合わされたスキン層31、32は、コア層20に仮接合された状態で位置決めされる。コア層20及びスキン層31、32の温度低下により接着層が固化し、コア層20にスキン層31、32が接合されて中空板材10が形成される。
【0042】
次に、中空板材10を加熱する加熱工程について説明する。
図6(a)に示すように、まず、ラゲッジボード11に使用する中空板材10として、先に製造した中空板材10を、ラゲッジボード11より少し大きな形状に切断したものを準備する。具体的には、ラゲッジボード11の大きさより、長手方向及び短手方向のそれぞれで、例えば50mm程度大きい長方形状に切断したものを準備する。なお、中空板材10、中間体60、ラゲッジボード11の形状、大きさ等については実際のものとは異なり、必要な部分を誇張して示している。
図6(b)~(e)では、金型70、中間体60、及びラゲッジボード11について、
図1のβ‐β線に相当する部分についてのみ示している。
【0043】
加熱工程では、所定温度に設定された加熱炉H内に中空板材10を入れて、所定時間保持する。加熱炉H内の温度は、中空板材10を構成する熱可塑性樹脂が溶融する程度に設定されている。
【0044】
次に、中空板材10を成形して中間体60を得るプレス成型工程について説明する。
図6(b)に示すように、プレス成型工程に使用する金型70は、上型71及び下型72を備えている。本実施形態の上型71及び下型72は、全体が加熱されることなく常温に保持されている。上型71及び下型72の形状は、ラゲッジボード11の形状に対応しているが、ここでは、ラゲッジボード11の凹部15及び係止突部40に対応する部分についてのみ説明する。ヒンジ部12に対応する部分は、ヒンジ部12の形状の図示しない凸部が下型72に形成されている。
【0045】
図6(b)に示すように、下型72には凹部72a、72bが形成されている。凹部72aは、ラゲッジボード11の外側を形成する部分であり、ラゲッジボード11の大きさ、形状に形成されている。凹部72bは、係止突部40を成形するための部分であり、係止突片42の拡径部45の外径と同程度の大きさの上面視円形状に形成されている。
【0046】
上型には、凹部71a及び凸部71b、71cが形成されている。凹部71aは、中間体60の外側を形成する部分であり、ラゲッジボード11と同じ形状であって、ラゲッジボード11より少し大きく形成されている。凸部71bは、ラゲッジボード11の凹部15を成形するための部分であり、凹部15の直径と同程度の直径を有する上面視円形状に形成されている。凸部71cは、係止凹部41を成形するための部分であり、係止凹部41の内径と同程度の直径を有する上面視円形状に形成されている。
【0047】
図6(b)に示すように、まず、加熱された中空板材10を下型72の上に載置する。このとき、中空板材10は、その周縁部が凹部72aから少し外方に突出した状態とされている。
【0048】
図6(c)に示すように、上型71及び下型72の型締めによってキャビティが形成される。プレス時の圧力、プレス時間は、適宜設定すればよい。中空板材10はキャビティの形状に成形されて中間体60となる。
【0049】
図6(c)に示すように、中間体60のうち、上型71の凹部71a及び下型72の凹部72aの部分では、型締めによって、コア層20はその厚み方向にほとんど圧縮されることがない。また、コア層20を構成する熱可塑性樹脂はほとんど溶融しない。コア層20は上下方向に変形することなく、その高さ寸法を維持した形状となってコア層20のハニカム構造が維持されている。これにより、ハニカム構造体としての強度が保持されている。
【0050】
中間体60のうち、下型72の凹部72aより外側に位置する上型71の凹部71aの部分は、型締めによって、コア層20及びスキン層31、32を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融されるとともに圧縮されて圧縮部分61が形成される。圧縮部分61では、コア層20の上壁部21、下壁部22、及び側壁部23を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融されるとともに、スキン層31、32を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融されて一体化した状態となっている。
【0051】
中間体60のうち、上型71の凸部71c及び下型72の凹部72bの部分では、型締めによってコア層20及びスキン層31、32を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融されて圧縮されるとともに、上型71の凸部71cによって下型72の凹部72bに向かって熱溶融された熱可塑性樹脂が引き伸ばされる。圧縮されるとともに引き伸ばされた熱可塑性樹脂は一体化した状態となり、ラゲッジボード11の係止突部40となる突部62が成形される。
図7(a)に示すように、突部62は中間体60の下面から突出するように円筒形状に成形される。突部62の周壁62aでは、コア層20及びスキン層31、32を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融されて一体化して、熱可塑性樹脂の密度が中空板材10での密度より高くなっている。
【0052】
中間体60のうち、上型71の凸部71b及び下型72の凹部72aの部分では、型締めによってコア層20の側壁部23が上下方向に圧縮されて折り曲げられた部分と、コア層20及びスキン層31、32を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融されて一体化した部分とが混在した状態となって、ラゲッジボード11の凹部15となる凹部63が形成される。凹部63では、溶融一体化した熱可塑性樹脂と僅かな隙間を残して溶融一体化した熱可塑性樹脂が混在した状態となっており、熱可塑性樹脂の密度が中空板材10での密度より高くなっている。
【0053】
図6(d)に示すように、下型72から上型71を離間させた後、中間体60を下型72から取り出す。プレス成型工程を経て得られた中間体60は、ラゲッジボード11に相当する大きさを有する部分の周縁部全周に亘って圧縮部分61が形成されている。
【0054】
次に、中間体60を加工してラゲッジボード11を得る後加工工程について説明する。後加工工程では、中間体60の周縁部の圧縮部分61を切り落して側面の形状を整えるとともに、突部62及び凹部63を加工して係止突部40及び凹部15を形成する。
【0055】
図6(d)及び(e)に示すように、中間体60に形成された圧縮部分61を、図示しない切断冶具で切断する。圧縮部分61が切断された後を研磨、塗装等して、ラゲッジボード11の形状を整える。なお、圧縮部分61を切断する切断冶具としてトムソン刃やレーザー等を使用した場合には、研磨、塗装等を必ずしも行わなくてもよい。
【0056】
図7(a)に示すように、突部62は中間体60の下面から突出するように円筒形状に成形されている。
図7(b)に示すように、まず、円筒形状の突部62の周壁62aを、図示しない切断治具で上下方向に切り欠いて、対向する一対の突片64を形成する。続いて、
図7(c)に示すように、一対の突片64のそれぞれについて、周壁62aの上部から凹部63にかけて切り欠いて開口65を形成する。なお、
図7(c)では一方の突片64に開口65を形成した状態を示している。これにより、
図6(e)に示すように、円筒形状の突部62から、一対の係止突片42を有する係止突部40が形成される。突部62を上下方向に切り欠いた部分が係止突部40の開口部43となり、周壁62aの上部から凹部63を切り欠いた形成された開口65が、係止突部40の開口44及び凹部15の開口16となる。切り欠いた部分を研磨、塗装等して、係止突部40の形状を整える。
【0057】
以上の各工程を経て、ラゲッジボード11が得られる。
次に、本実施形態のラゲッジボード11の作用について、
図8及び
図9に基づいて説明する。
【0058】
図8(a)に示すように、ラゲッジボード11を取付段部50上に載置する際には、ラゲッジボード11の前板部14に形成された係止突部40を、取付段部50の被係止孔52の位置に合わせる。被係止孔52の直径が、一対の係止突片42における底壁42bの外径と同程度に形成されていることから、係止突部40を被係止孔52に位置合わせした状態では、係止突片42の底壁42bと湾曲壁42cとの境界部分が被係止孔52の内周縁部に当接する。
【0059】
係止突部40は、開口部43を挟んで一対の係止突片42が対向して配置されているため、一対の係止突片42が互いに近づく方向に弾性変形可能である。また、側壁42aの上部には、ラゲッジボード11の開口16に連通する開口44が形成されることにより、係止突片42の先端部は、軸部47を介して凹部15に連設されているため、より弾性変形し易くなっている。ラゲッジボード11を下方に向けて押すと、係止突片42は、拡径部45の湾曲壁42cから側壁42aにかけての外面が被係止孔52の内周縁部に沿うようにして下方に移動する。ラゲッジボード11への押圧力は、係止突片42の拡径部45における湾曲壁42c及び側壁42aを介して、係止突片42を互いに接近させる方向へ弾性変形させる力となって作用する。湾曲壁42cが断面R形状となっていることで、ラゲッジボード11は下方へスムーズに移動する。
【0060】
図8(b)に示すように、係止突片42の拡径部45が被係止孔52を通り抜けて、係止突片42の開口44が、被係止孔52の位置まで進むと、被係止孔52の内周縁部からの押圧力が係止突片42に作用しなくなる。これにより、一対の係止突片42は互いに離間する方向へ付勢される。このとき、拡径部45の上端縁46が、取付段部50の被係止凹部51の下面に当接し、軸部47の外面が、被係止孔52の内面に当接する。係止突片42は、自身の上方への移動が規制された状態で、被係止孔52に係止される。
【0061】
図9に示すように、中空板材10は熱可塑性樹脂製であり、係止突部40は、中空板材10が熱溶融されるとともに圧縮されることによって、その壁厚が中空板材10の厚みより薄くされている。また、係止突部40の周囲に形成された凹部15も、中空板材10が熱溶融されるとともに圧縮されることによって、その厚みが中空板材10の厚みより薄くされている。そのため、ラゲッジボード11では、中空板材10の圧縮の程度によって中空板材10を構成する熱可塑性樹脂の状態や密度が異なっている。ラゲッジボード11の係止突部40や凹部15での熱可塑性樹脂の密度は、中空板材10での熱可塑性樹脂の密度より高くなっている。
【0062】
係止突部40の壁厚は、中空板材10の厚みの約1/4~1/2程度である。ここでは、スキン層31、32の間で、コア層20を構成する熱可塑性樹脂が、コア層20の上壁部21、下壁部22、及び側壁部23がその形状をとどめない程度にまで熱溶融されて一体化している。係止突部40は、中空体成形工程において、熱溶融されて一体化した熱可塑性樹脂が引き伸ばされて形成されているため、一体化した熱可塑性樹脂の内部には、熱可塑性樹脂が引き伸ばされることにより形成された隙間が混在した状態となっている。熱可塑性樹脂の密度は、ヒンジ部12を除くラゲッジボード11全体において最も高くなっている。
【0063】
凹部15の厚みは、中空板材10の厚みの約1/3~2/3程度であり、係止突部40の厚みより少し厚くされている。ここでは、スキン層31、32の間で、コア層20の上壁部21、下壁部22、及び側壁部23がその形状をとどめない程度にまで熱溶融されて、コア層20を構成する熱可塑性樹脂が一体化した部分と、側壁部23が熱溶融しつつ折り曲げられて、上壁部21と下壁部22との間に僅かな隙間を残しつつ熱可塑性樹脂が一体化した部分とが混在している。凹部15では、溶融一体化した熱可塑性樹脂と僅かな隙間を残して溶融一体化した熱可塑性樹脂が混在した状態となっており、熱可塑性樹脂の密度は、係止突部40に次いで高くなっている。
【0064】
これにより、熱可塑性樹脂の密度が高い係止突部40や凹部15では、ヒンジ部12を除くラゲッジボード11の他の部分に比べて剛性が向上している。係止突部40やその周囲の凹部15は、係止突片42が弾性変形するために必要な剛性を有している。
【0065】
本実施形態のラゲッジボード11によれば、次のような効果を得ることができる。
(1-1)ラゲッジボード11は、複数のセルが並設された熱可塑性樹脂製の中空板材10で構成されており、被係止部材としての取付段部50に形成された被係止孔52に係止するための係止突部40が、ラゲッジボード11の下面11bから突出するように一体に形成されている。係止突部40は、弾性変形することにより被係止孔52に係止可能に構成されている。
【0066】
そのため、取付段部50に取り付けるための部材を別途準備する必要がなく、取付段部50への取付作業がし易くなり、取付作業性が向上する。また、係止突部40が、ラゲッジボード11の下面11bから突出するように一体に形成されているので、加工コストに優れる。
【0067】
(1-2)係止突部40は、中空板材10が圧縮されるように係止凹部41が形成されて、その壁厚が中空板材10の壁厚より薄くなっている。
そのため、係止突部40では、中空板材10を構成する熱可塑性樹脂の密度が高くなっており、係止突部40以外の部分に比べてその剛性が向上している。係止突部40は、弾性変形するための十分な剛性を有している。
【0068】
(1-3)係止突部40には、車幅方向に延びるようにラゲッジボード11を上下方向に貫通する開口部43が形成されており、開口部43が形成されることにより、対向して配置された一対の係止突片42を有する構成とされている。
【0069】
そのため、係止突部40が被係止孔52内に挿入され易く、取付作業がし易い。
(1-4)係止突片42の側壁42aの上部には、側壁42aが切り欠かれた形状の開口44が形成されている。また、ラゲッジボード11の凹部15には、側壁42aの開口44に連通するように開口16が形成されている。
【0070】
そのため、係止突片42が弾性変形し易く、被係止孔52内に挿入され易い。
(1-5)係止突片42の先端側である下部には、上部より外径寸法が大きい拡径部45が形成されている。そして、係止突片42が被係止孔52に係止された状態では、拡径部45の上端縁46が取付段部50の被係止凹部51の下面に当接する。
【0071】
そのため、係止突片42の上方への移動が規制される。係止突部40が被係止孔52から外れ難く、取付段部50に対するラゲッジボード11の取付状態が安定する。
(1-6)係止突片42の側壁42aと底壁42bとの間には、断面R形状の湾曲壁42cが形成されている。
【0072】
そのため、ラゲッジボード11を取付段部50の取り付ける際には、被係止孔52の内周縁部に係止突片42の外面が沿い易い。湾曲壁42cに沿わせながら係止突片42が下方移動することで、ラゲッジボード11は下方へスムーズに移動する。ラゲッジボード11の取付作業がスムーズに行える。
【0073】
(1-7)係止突部40の周囲には、中空板材10が熱溶融されるとともに圧縮されてその厚みが薄くされた凹部15が形成されており、凹部15では、中空板材10に比べて熱可塑性樹脂の密度が高くなっている。
【0074】
そのため、係止突部40の基端部の剛性が向上し、係止突部40が弾性変形するための十分な強度を有している。
(1-8)ラゲッジボード11の係止突部40、凹部15、ヒンジ部12以外の部分では、中空板材10のコア層20を構成する熱可塑性樹脂はほとんど溶融していない。また、コア層20は上下方向に変形することなく、その高さ寸法を維持した形状となってコア層20のハニカム構造が維持されている。
【0075】
そのため、ラゲッジボード11のほぼ全体に亘ってコア層20のハニカム構造が維持されており、ハニカム構造体としての強度が保持されている。
(1-9)係止突部40は、プレス成型工程で円筒形状の突部62を形成した後、後加工により形成している。
【0076】
そのため、円筒形状の突部62を一度のプレス加工により成形することができる。係止突部40を容易に成形することができる。また、後加工工程を別工程として設けることで、係止突部40が複雑な形状であっても容易に加工することができる。
【0077】
(第2実施形態)
次に、本発明の中空構造体を具体化した第2実施形態のラゲッジボード80について、第1実施形態のラゲッジボード11と異なる点を中心に説明する。ラゲッジボード80は、車両の後部に設けられたラゲッジルームの底面を形成するものであり、ラゲッジルームの周縁に設けられた被係止孔54に係止されて支持される。
【0078】
図10及び
図11に示すように、ラゲッジボード80の前板部の両側縁のそれぞれには、ラゲッジボード80の下面80bから下方に突出するように板状の係止突部81が形成されている。両側縁の係止突部81は、同じ形状、同じ大きさである。係止突部81は、熱可塑性樹脂製の中空板材10が熱溶融されるとともに圧縮されることによってラゲッジボード80と一体に形成されている。なお、
図11、
図12では、中空板材10の内部の中空構造を省略して示している。
【0079】
図10に示すように、係止突部81は、ラゲッジボード80の内方側の基端部82と、ラゲッジボード80の外方側の先端部83が略直交するような形状で連設されて形成されている。係止突部81の基端側の部分には、ラゲッジボード80の厚みが薄くされた凹部84が形成されている。係止突部81の壁厚は、中空板材10の厚みより薄くされており、中空板材10の厚みの約1/4~1/2程度である。また、凹部84の厚みは、係止突部81の厚みより少し厚くされており、中空板材10の厚みの約1/3~2/3程度である。
【0080】
係止突部81の両側には、車両前後方向に延びるように板状部85が形成されている。板状部85は、係止突部81の基端部82とほぼ同形状、ほぼ同程度の厚みに形成されている。板状部85と基端部82との間には、溝状の開口部86が形成されている。
【0081】
図11(a)及び(b)に示すように、ラゲッジボード80は、ラゲッジルームの周縁を構成する側壁53に設けられた被係止孔54に係止されて支持される。側壁53が請求項で言う被係止部材であり、被係止孔54が請求項で言う被係止部である。
【0082】
次に、ラゲッジボード80を製造する方法について、
図12、
図13に基づいて第1実施形態と異なる点を中心に説明する。プレス成型工程で使用する金型90の内面形状が異なること、後加工工程が異なること以外は、第1実施形態と同様である。
【0083】
図12(a)に示すように、プレス成型工程に使用する金型90は、上型91及び下型92を備えている。上型91及び下型92の形状は、ラゲッジボード80の形状に対応しているが、
図12では、ラゲッジボード80の凹部84及び係止突部81に対応する部分のみを示している。
【0084】
図12(a)に示すように、上型91には凹部91a、91b、91cが形成されている。また、下型92には、主に凸部92aが形成されている。凹部91aは、係止突部81の先端部83、及び板状部85より外側となる部分を成形するための部分である。凹部91bは、ラゲッジボード80の凹部84を成形する部分である。凹部91cは、係止突部81及び凹部84以外を成形する部分である。また、凸部92aは、ラゲッジボード80の主要部であって、係止突部81以外を成形する部分である。
【0085】
図12(b)に示すように、上型91及び下型92の型締めによってキャビティが形成される。プレス成型工程によって、中空板材10はキャビティの形状に成形されて中間体87となる。中間体87のうち、上型91の凹部91c及び下型92の凸部92aの部分では、型締めによって、コア層20はその厚み方向にほとんど圧縮されることがない。また、コア層20を構成する熱可塑性樹脂はほとんど溶融しない。コア層20は上下方向に変形することなく、その高さ寸法を維持した形状となってコア層20のハニカム構造が維持されている。これにより、ハニカム構造体としての強度が保持されている。
【0086】
図12(c)に示すように、中間体87のうち、上型91の凹部91aの部分は、型締めによって、コア層20及びスキン層31、32を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融されて圧縮されるとともに、下型92に向かって熱溶融された熱可塑性樹脂が引き伸ばされる。圧縮されるとともに引き伸ばされた熱可塑性樹脂は一体化した状態となり、ラゲッジボード80の係止突部81、及び板状部85より外側となる部分を構成する圧縮部分88が形成される。圧縮部分88では、コア層20の上壁部21、下壁部22、及び側壁部23を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融されるとともに、スキン層31、32を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融されて一体化した状態となっている。
【0087】
中間体87のうち、上型91の凹部91bの部分では、型締めによってコア層20の側壁部23が上下方向に圧縮されて折り曲げられた部分と、コア層20及びスキン層31、32を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融されて一体化した部分とが混在した状態となって、ラゲッジボード80の凹部84となる部分が形成される。この部分では、溶融一体化した熱可塑性樹脂と僅かな隙間を残して溶融一体化した熱可塑性樹脂が混在した状態となっており、熱可塑性樹脂の密度が中空板材10での密度より高くなっている。
【0088】
図13(a)に示すように、中間体87の両側縁には圧縮部分88が形成されている。後加工工程では、圧縮部分88の一部を図示しない切断治具で切断する。切断する箇所は、概略として説明すれば、圧縮部分88のうち凹部84が形成されていない部分と、凹部84において幅方向に離間した2箇所である。
図13(b)に示すように、圧縮部分88のうち凹部84が形成されていない部分では、ラゲッジボード80で板状部85となる部分以外の部分を切断する。また、凹部84において幅方向に離間した2箇所は、凹部84の幅方向に直交する方向に切断する。切断された部分は、研磨、塗装等して、ラゲッジボード80の形状を整える。これにより、側端縁に係止突部81及び板状部85が形成され、係止突部81の先端部83が、車幅方向において板状部85から外方へ突出するような形状のラゲッジボード80が得られる。
【0089】
次に、本実施形態のラゲッジボード80の作用について、
図11に基づいて説明する。
図11(a)に示すように、ラゲッジボード80を側壁53に取り付ける際には、係止突部81を、側壁53の被係止孔54の上方の位置に合わせる。係止突部81の先端部83は板状部85から外方へ突出していることから、先端部83の先端を側壁53に沿わせてラゲッジボード80を下方へ押圧すると、先端部83が内方へ撓むように変形する。
【0090】
図11(b)に示すように、係止突部81の先端部83が被係止孔54の位置まで進むと、側壁53からの押圧力が係止突部81に作用しなくなる。これにより、係止突部81の先端部83はもとの状態に戻る。このとき、先端部83は被係止孔54に保持されて、自身の上方への移動が規制された状態で、被係止孔54に係止される。
【0091】
係止突部81は、中空板材10が熱溶融されるとともに圧縮されることによって、その壁厚が中空板材10の厚みより薄くされている。また、係止突部81の基端側に形成された凹部84も、中空板材10が熱溶融されるとともに圧縮されることによって、その厚みが中空板材10の厚みより薄くされている。そのため、係止突部81や凹部84での熱可塑性樹脂の密度が、中空板材10での熱可塑性樹脂の密度より高くなっている。
【0092】
第2実施形態のラゲッジボード80によれば、第1実施形態のラゲッジボード11による効果(1-1)、(1-2)、(1-7)、(1-8)、(1-9)に加えて、次のような効果を得ることができる。
【0093】
(2-1)係止突部81の基端部82は、熱可塑性樹脂の密度が高くなって剛性が向上している。
そのため、被係止孔54に係止する際に先端部83が内方に撓むように変形することが可能である。先端部83の変形を許容するだけの剛性を備えている。
【0094】
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0095】
・被係止部は、被係止孔52のように取付段部50を貫通する貫通孔として形成されていなくてもよい。例えば、取付段部50を貫通しない凹部として形成されていてもよい。第2実施形態の被係止孔54についても同様である。
【0096】
・係止突部40の拡径部45は、係止突片42の側壁42aに開口44を形成することによって形成されているものでなくてもよい。例えば、側壁42aの外面側を一部切り欠き、側壁42aの厚みを薄くすることによって形成されているものであってもよい。
【0097】
・係止突部40は、一対の係止突片42を有する構成でなく、3個以上の係止突片42を有する構成であってもよい。この場合、ラゲッジボード11を製造する後加工工程において、突部62を切り欠く箇所を多くすればよい。
【0098】
・第1実施形態の係止突部40は、車幅方向に延びるように形成された開口部43により、車両前後方向に対向する係止突片42を有しているが、係止突片42の形成方向はこれに限定されない。開口部43が車両前後方向に延びるように形成されていることによって、係止突片42が車幅方向に対向していてもよい。また、車幅方向に対して傾斜する方向に延びるように開口部43が形成されていてもよい。
【0099】
・係止突部40は、円筒形状に成形された突部62を切り欠き加工することによって形成されており、上面視円形状に形成されているが、係止突部40の形状はこれに限定されない。例えば、突部62を四角筒形状に成形し、四角筒の4つの周壁の幅方向中央部を上下方向に切り欠くようにして係止突片を形成してもよい。この場合、四角筒の角形状を有する4つの係止突片が形成されることになり、係止突部40は上面視四角形状に形成されることになる。
【0100】
・第1実施形態の係止突片42では、側壁42a、底壁42b、及び湾曲壁42cの壁厚がほぼ同程度であるが、これに限定されない。側壁42a、底壁42b、及び湾曲壁42cの壁厚がそれぞれ異なっていてもよく、いずれかが異なっていてもよい。例えば、底壁42bの壁厚が側壁42a及び湾曲壁42cの壁厚より厚くなっていてもよい。成形時に中空板材10が引き伸ばされることによって壁厚に差が生じる場合がある。これは、中空板材10を構成するコア層20の厚みの差や、スキン層31、32の厚みの差として生じる場合がある。
【0101】
・第1実施形態では、凹部15の厚みが係止突部40の厚みより少し厚くされているが、これに限定されない。例えば、係止突部40の側壁42a、底壁42b、湾曲壁42cの壁厚と同程度であってもよい。第2実施形態の凹部84の厚みについても同様である。係止突部81の厚みと同程度であってもよい。
【0102】
・凹部15、84では、コア層20を構成する上壁部21と下壁部22との間に僅かな隙間が存在して中空部分が残存しているが、この中空部分は残存していなくてもよい。つまり、コア層20を構成する上壁部21、下壁部22、側壁部23がその形状をとどめない程度にまで熱溶融されて一体化していてもよい。
【0103】
・
図3に示すように、凹部15に形成された開口16は、開口16の外周側に凹部15が残存するような大きさに形成されているが、これに限定されない。外周側に凹部15が残存しない程度の大きさに開口16が形成されていてもよい。
【0104】
・係止突部40は、ラゲッジボード11の前板部14の両側部にそれぞれ形成されている場合に限定されない。ラゲッジボード11を支持する取付段部50の形状に合わせて適宜形成する場所を設定すればよい。例えば、前板部14において車幅方向に並設されるように複数箇所に形成されていてもよく、車両前後方向に複数箇所形成されていてもよい。第2実施形態の係止突部81についても同様である。
【0105】
・ラゲッジボード11は、係止突部40及びヒンジ部12以外に凹凸形状を有していてもよい。例えば、ラゲッジボード11より下方に位置する車両構造体の凹凸形状を吸収するようにラゲッジボード11の下面11bに凹凸形状を有していてもよい。第2実施形態のラゲッジボード80についても同様である。
【0106】
・ラゲッジボード11、80は、平坦な板状でなくてもよく、例えば湾曲板状であってもよい。
・ラゲッジボード11、80は車幅方向に長い長方形板状に限定されない。適用される車両の形状に応じて適宜変更することができる。
【0107】
・本発明の中空構造体をラゲッジボード11、80以外のものに適用することができる。被係止部材に係止するものであれば、例えば、棚板等に適用してもよい。
・ラゲッジボード11、80を構成する中空板材10として、スキン層31、32の少なくともいずれかが接合されていないものを使用してもよい。
【0108】
・スキン層31、32は一層構造としたが、多層構造であってもよい。
・中空板材10のスキン層31、32は、熱可塑樹脂製のシート材で構成したが、少なくともいずれか一方を不織布とすることもできる。スキン層31、32を不織布とする場合、一方の面に熱可塑性樹脂(例えば、ポリプロピレン樹脂)製の接着層をコーティングし、接着層を介してコア層20に接合することができる。スキン層31、32を構成する不織布は、例えばポリアミド繊維、アラミド繊維、セルロース繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、レーヨン繊維、ガラス繊維などの従来公知の各種繊維で成形することができる。スキン層31、32をいずれも不織布とする場合、スキン層31とスキン層32とは同一の構成であってもよく、異なる構成であってもよい。
【0109】
・スキン層31、32は、樹脂フィルムに印刷されたものであってもよい。ラゲッジボード11の意匠性を向上させることができる。
・スキン層31、32は接着層を介してコア層20に接合されているが、接着層を省略することもできる。この場合でも、コア層20及びスキン層31、32を構成する熱可塑性樹脂が一部溶融して互いに接合される。
【0110】
・コア層20は、一枚のシート材100を折り畳み成形して構成するのに限らない。例えば、複数の帯状のシートを所定間隔毎に屈曲させて配置してセルの側壁を構成し、これら帯状のシートの上下両側にシート層を配置してセルの上壁及び下壁を構成するようにしてもよい。
【0111】
・上記各実施形態では、コア層20の内部に六角柱状のセルSが区画形成されているが、セルSの形状は、特に限定されるものでない。例えば、四角柱状、八角柱状等の多角形状や円柱状としてもよい。また、セルSの形状は、接頭円錐形状であってもよい。その際、異なる形状のセルが混在していてもよい。また、各セルは隣接していなくともよく、セルとセルとの間に隙間(空間)が存在していてもよい。
【0112】
・コア層20は、柱形状のセルSが区画されたものに限らない。例えば、所定の凹凸形状を有するコア層の上下両面にシート層を接合したものであってもよい。このような構成のコア層としては、例えば特開2014-205341号公報に記載のものが挙げられる。また、断面がハーモニカ状のプラスチックダンボール等であってもよい。
【0113】
・上記各実施形態では、一枚のシート材100を折り畳み成形して、コア層20の内部に六角形状のセルSが区画形成されたハニカム構造体としてのコア層20を形成したが、成形方法はこれに限定されない。例えば、特許第4368399号に記載されるように、断面台形状の凸部が複数列設された三次元構造体を順次折り畳んでいくことにより、ハニカム構造体としてのコア層20を形成してもよい。
【0114】
・コア層20及びスキン層31、32を構成する熱可塑性樹脂として、各種機能性樹脂を添加したものを使用してもよい。例えば、熱可塑性樹脂に難燃性の樹脂を添加することにより、難燃性を高めることが可能である。コア層20及びスキン層31、32のすべてに対して各種機能性樹脂を添加したものを使用することも可能であり、また、コア層20及びスキン層31、32の少なくともいずれかに対して使用することも可能である。
【0115】
・プレス成型工程で使用する上型71、91及び下型72、92には、吸引孔が複数形成されているものを使用してもよい。この場合、吸引孔の形状、位置は特に限定されない。
【0116】
・上型71、91及び下型72、92は全体が加熱されることなく常温に保持されるようにしたが、上型71、91及び下型72、92を加熱してもよい。
上記実施形態及び変更例から把握される技術思想について記載する。
【0117】
(イ)複数のセルが並設された熱可塑性樹脂製の中空板材で構成され、被係止部材に係止するための係止突部が、一方の主面から突出するように一体に形成された中空構造体であって、前記係止突部には、前記中空板材を圧縮するように他方の主面側から凹む係止凹部が形成されて、該係止突部の壁を構成する熱可塑性樹脂の密度が前記中空板材を構成する熱可塑性樹脂の密度より高くされており、前記係止突部は、弾性変形することにより前記被係止部材に形成された被係止部に係止可能に構成されている。
【0118】
上記の構成によれば、係止突部が弾性変形する際の剛性が向上する。
(ロ)前記係止突部の周囲には、前記中空板材を圧縮するように該中空板材の厚みより薄い厚みを有する凹部が形成されており、前記凹部を構成する熱可塑性樹脂の密度は、前記中空板材を構成する熱可塑性樹脂の密度より高くされている。
【0119】
上記の構成によれば、係止突部の周囲に熱可塑性樹脂の密度が高い凹部が形成されていることにより、係止突部が弾性変形する際の剛性がさらに向上する。
【符号の説明】
【0120】
10…中空板材
11、80…ラゲッジボード(中空構造体)
11a、80a…上面(主面)
11b、80b…下面(主面)
40、81…係止突部
41…係止凹部
42…係止突片
45…拡径部
S…セル