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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】無線通信装置及び移動体
(51)【国際特許分類】
   H04W 36/32 20090101AFI20240729BHJP
   H04W 72/0453 20230101ALI20240729BHJP
   H04W 4/33 20180101ALI20240729BHJP
【FI】
H04W36/32
H04W72/0453
H04W4/33
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022204605
(22)【出願日】2022-12-21
(65)【公開番号】P2024089318
(43)【公開日】2024-07-03
【審査請求日】2023-11-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】池田 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】國立 忠秀
(72)【発明者】
【氏名】児島 史秀
(72)【発明者】
【氏名】松村 武
(72)【発明者】
【氏名】沢田 浩和
(72)【発明者】
【氏名】伊深 和雄
【審査官】小林 正明
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-099233(JP,A)
【文献】特開2000-229571(JP,A)
【文献】池田 浩太郎 他8名,工場環境における無線LAN機器を用いた情報収集システム構築のための電波伝搬測定及び通信実験 Propagation Measurement and Communication Experiments using WLAN Devices for Constructing an Information Collection System in the Factory Environment,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.121 No.43 ,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2021年05月20日,第121巻第43号,47-52
【文献】中島 健智他5名,移動体の無線通信を安定化するための無線経路管理システムの設計,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.122 No.73,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2022年06月08日,第122巻第73号,253~257
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信エリアを移動する移動体に設けられる無線通信装置であって、
移動元の通信エリアで設定されている第1周波数チャネルを使用して、前記移動元の通信エリア内の固定局から、製造作業の指示を受信する無線通信部と、
前記製造作業の指示を製造装置に送信する通信部と、
前記複数の通信エリアの各々の位置情報と、前記複数の通信エリアの各々で設定されている周波数チャネルとを紐付けたテーブルを記憶する記憶部と、
前記移動体の移動に伴って、前記移動先の通信エリアの位置情報を取得する取得部と、
前記テーブルを参照して、前記取得部により取得された前記通信エリアの位置情報に紐付けられた周波数チャネルを、第2周波数チャネルとして識別する識別部と、
前記識別部が前記第2周波数チャネルを識別すると、前記通信部が前記製造装置から前記製造作業の完了通知を受信したか否かを判定する判定部と、
前記判定部が、前記通信部が前記製造装置から前記製造作業の完了通知を受信したと判定する場合、前記無線通信部が使用する周波数チャネルを、前記第1周波数チャネルから前記第2周波数チャネルに切り替える切替部と、
を備え、
前記製造装置は、前記移動先の通信エリアを出るまでに、前記移動元の通信エリアで指示された前記製造作業を完了し、
前記無線通信部は、前記第2周波数チャネルを使用して、前記移動先の通信エリア内の固定局から、次の製造作業の指示を受信する無線通信装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記通信部が前記製造装置から前記製造作業の完了通知を受信したと判定しない場合、前記識別部によって識別された前記第2周波数チャネルの情報を記憶部に記憶し、
前記判定部は、前記第2周波数チャネルの情報を記憶部に記憶した後、前記通信部が前記製造装置から前記製造作業の完了通知を受信したと判定する場合、前記記憶部に記憶した前記第2周波数チャネルの情報を用いて、前記周波数チャネルの切り替えを行うと判定する請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記移動体が移動を開始する前に、前記複数の通信エリアの位置情報のうち、製造対象に関する製造作業の指示が送信される特定の通信エリアの位置情報を設定する設定部と、
を更に備え、
前記判定部は、前記取得部により取得された前記通信エリアの位置情報が、前記特定の通信エリアの位置情報に含まれるか否かを判定し、
前記判定部が、前記取得部により取得された前記通信エリアの位置情報が、前記特定の通信エリアの位置情報に含まれると判定する場合、前記識別部は、前記テーブルを参照して、前記取得部により取得された前記通信エリアの位置情報に紐付けられた周波数チャネルを、前記第2周波数チャネルとして識別する請求項に記載の無線通信装置。
【請求項4】
複数の通信エリアを移動する移動体に設けられる無線通信装置であって、
移動元の通信エリアで設定されている第1周波数チャネルを使用して、前記移動元の通信エリア内の固定局から、製造作業の指示を受信する無線通信部と、
前記製造作業の指示を製造装置に送信する通信部と、
前記移動体が移動を開始する開始地点からの距離と、前記複数の通信エリアの各々で設定されている周波数チャネルとを紐付けたテーブルを記憶する記憶部と、
前記開始地点からの距離を取得する取得部と、
前記テーブルを参照して、前記取得部により取得された前記開始地点からの距離に紐付けられた周波数チャネルを、第2周波数チャネルとして識別する識別部と、
前記識別部が前記第2周波数チャネルを識別すると、前記通信部が前記製造装置から前記製造作業の完了通知を受信したか否かを判定する判定部と、
前記判定部が、前記通信部が前記製造装置から前記製造作業の完了通知を受信したと判定する場合、前記無線通信部が使用する周波数チャネルを、前記第1周波数チャネルから前記第2周波数チャネルに切り替える切替部と、
を備え、
前記製造装置は、前記移動先の通信エリアを出るまでに、前記移動元の通信エリアで指示された前記製造作業を完了し、
前記無線通信部は、前記第2周波数チャネルを使用して、前記移動先の通信エリア内の固定局から、次の製造作業の指示を受信する無線通信装置。
【請求項5】
複数の通信エリアを移動する移動体に設けられる無線通信装置であって、
移動元の通信エリアで設定されている第1周波数チャネルを使用して、前記移動元の通信エリア内の固定局から、製造作業の指示を受信する無線通信部と、
前記製造作業の指示を製造装置に送信する通信部と、
前記複数の通信エリアの各々の位置情報と、前記移動体の移動方向と、前記複数の通信エリアの各々で設定されている周波数チャネルとを紐付けたテーブルを記憶する記憶部と、
前記移動体の移動に伴って、通信エリアの位置情報を順次取得する取得部と、
前記取得部による通信エリアの位置情報の取得順序に基づいて、前記移動体の移動方向を特定する方向特定部と、
前記テーブルを参照して、前記取得部により取得された最新の通信エリアの位置情報と、前記方向特定部により特定された前記移動体の移動方向とに紐付けられた周波数チャネルを、第2周波数チャネルとして識別する識別部と、
前記識別部が前記第2周波数チャネルを識別すると、前記通信部が前記製造装置から前記製造作業の完了通知を受信したか否かを判定する判定部と、
前記判定部が、前記通信部が前記製造装置から前記製造作業の完了通知を受信したと判定する場合、前記無線通信部が使用する周波数チャネルを、前記第1周波数チャネルから前記第2周波数チャネルに切り替える切替部と、
を備え、
前記製造装置は、前記移動先の通信エリアを出るまでに、前記移動元の通信エリアで指示された前記製造作業を完了し、
前記無線通信部は、前記第2周波数チャネルを使用して、前記移動先の通信エリア内の固定局から、次の製造作業の指示を受信する無線通信装置。
【請求項6】
複数の通信エリアを移動する移動体であって、
請求項1~5の何れか1項に記載の無線通信装置と、
前記無線通信装置に接続されて、前記移動体の移動を制御する制御装置と、
を備える移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場内において、移動体が複数の通信エリアを移動しながら、各通信エリアで製造作業の指示を受信して、複数の製造作業が順次行われるシステムが開発されている。
【0003】
移動体には、各通信エリア内のアクセスポイントと通信を行う無線通信装置が設けられている。無線通信装置は、各通信エリア内のアクセスポイントから、製造作業の指示を受信する。
【0004】
通信エリア毎に、アクセスポイントとの通信に使用される周波数チャネルが設定されている。このため、無線通信装置は、移動体が新たな通信エリアに移動する度に、周波数チャネルを切り替えて、移動先のアクセスポイントと通信を行う。
【0005】
従来、周波数チャネルを切り替える方法として、無線通信装置が、移動先のアクセスポイントから、移動先の通信エリアで設定されている周波数チャネルの情報を受信して、周波数チャネルの切り替えを行うことが知られている(特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1では、アクセスポイントは、隣接するアクセスポイントと干渉しないように予め設定されたホッピングテーブルを用いて、周波数チャネルを設定し、設定した周波数チャネルの情報を、無線通信装置に通知することが開示されている。
【0007】
このような方法により、無線通信装置は、隣接するアクセスポイントとの干渉を抑えつつ、移動先の通信エリアで設定されている周波数チャネルを使用して、移動先のアクセスポイントと通信を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2009-171078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の方法では、無線通信装置は、移動先のアクセスポイントから、周波数チャネルの情報を受信するまで、当該アクセスポイントと通信を行うことができない。
【0010】
このため、移動先のアクセスポイントにおいて、周波数チャネルの情報の送信に遅延が生じると、無線通信装置において、当該アクセスポイントと通信を開始するタイミングが遅れてしまい、作業効率が低下する可能性がある。
【0011】
また、従来の方法では、無線通信装置は、移動先の通信エリア内のアクセスポイントから、周波数チャネルの情報を受信すると、直ちに、周波数チャネルの切り替えを行う。
【0012】
このため、例えば、通信エリアの一部が重なっている領域では、移動元の通信エリアで指示された製造作業が終了していないにも関わらず、無線通信装置が、移動先の通信エリア内のアクセスポイントから、次の製造作業の指示を受信する可能性がある。
【0013】
この場合、1つ前の製造作業が終了していないにも関わらず、次の製造作業が開始されるため、歩留まりが低下する可能性がある。
【0014】
したがって、移動体が複数の通信エリアを移動しながら、各通信エリアで製造作業の指示を受信して、複数の製造作業が順次行われ場合でも、作業効率の低下を抑えつつ、歩留まりの低下を抑えるためには、更なる改善が望まれていた。
【0015】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、移動体が複数の通信エリアを移動しながら、各通信エリアで製造作業の指示を受信して、複数の製造作業が順次行われる場合でも、作業効率の低下を抑えつつ、歩留まりの低下を抑えることが可能な無線通信装置及び移動体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様に係る無線通信装置は、複数の通信エリアを移動する移動体に設けられる。前記無線通信装置は、移動元の通信エリアで設定されている第1周波数チャネルを使用して、前記移動元の通信エリア内の固定局から、製造作業の指示を受信する無線通信部と、前記移動体の移動に伴って、移動先の通信エリアで設定されている第2周波数チャネルを識別する識別部と、前記識別部が前記第2周波数チャネルを識別すると、前記製造作業の進捗状況に基づいて、周波数チャネルの切り替えを行うか否かを判定する判定部と、前記判定部が、前記周波数チャネルの切り替えを行うと判定する場合、前記無線通信部が使用する周波数チャネルを、前記第1周波数チャネルから前記第2周波数チャネルに切り替える切替部と、を備え、前記無線通信部は、前記第2周波数チャネルを使用して、前記移動先の通信エリア内の固定局から、次の製造作業の指示を受信する。
【0017】
本発明の第2の態様に係る移動体は、複数の通信エリアを移動する。前記移動体は、第1の態様に係る無線通信装置と、前記無線通信装置に接続されて、前記移動体の移動を制御する制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、移動体が複数の通信エリアを移動しながら、各通信エリアで製造作業の指示を受信して、複数の製造作業が順次行われる場合でも、作業効率の低下を抑えつつ、歩留まりの低下を抑えることが可能な無線通信装置及び移動体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本実施形態に係る無線通信システムの全体概略構成図である。
図2図2は、本実施形態に係る移動体の構成の一例を示すブロック構成図である。
図3図3は、本実施形態に係る無線通信装置の機能的構成の一例を示すブロック構成図である。
図4図4は、本実施形態に係る無線通信装置のハードウェア構成の一例を示すブロック構成図である。
図5図5は、本実施形態に係るチャネル情報テーブルの一例を示す図である。
図6図6は、本実施形態に係る周波数チャネルの切替処理の一例を示すシーケンス図である。
図7図7は、本実施形態に係る無線通信装置の動作フローチャートの一例を示す図である。
図8図8は、本実施形態の第1変形例に係るチャネル情報テーブルの一例を示す図である。
図9図9は、本実施形態の第2変形例に係る無線通信システムの全体概略構成図である。
図10図10は、本実施形態の第2変形例に係る無線通信装置の機能的構成の一例を示すブロック構成図である。
図11A図11Aは、本実施形態の第2変形例に係るチャネル情報テーブルの一例を示す図である。
図11B図11Bは、本実施形態の第2変形例に係るチャネル情報テーブルの一例を示す図である。
図12図12は、本実施形態の第2変形例に係る無線通信装置の動作フローチャートの一例を示す図である。
図13図13は、本実施形態の第3変形例に係る無線通信システムの全体概略構成図である。
図14図14は、本実施形態の第3変形例に係る無線通信装置の機能的構成の一例を示すブロック構成図である。
図15図15は、本実施形態の第3変形例に係るチャネル情報テーブルの一例を示す図である。
図16図16は、本実施形態の第3変形例に係る無線通信装置の動作フローチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて本実施形態に係る無線通信装置及び移動体について詳細に説明する。なお、同一の機能や構成には、同一又は類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0021】
[無線通信システムの全体概略構成]
最初に、本実施形態に係る無線通信システム1の構成を説明する。本実施形態では、無線通信システム1は、工場内に設けられる。
【0022】
図1は、無線通信システム1の全体概略構成図である。図1に示すように、無線通信システム1は、固定局FS1,FS2と、移動体10を備える。なお、固定局の数は、2つに限定されない。また、移動体の数は、1つに限定されず、複数であってもよい。移動体の数が複数である場合、各移動体は、他の移動体と距離を取りつつ、後述する移動経路3に沿って、一方向に移動する。
【0023】
無線通信システム1では、移動体10が、通信エリアA1,A2を移動しながら、通信エリア毎に固定局から製造作業の指示を受信して、複数の製造作業が順次行われる。本実施形態では、製品は、通信エリアA1で実行される第1の製造工程と、通信エリアA2で実行される第2の製造工程とを経て製造される。なお、通信エリアの数は、2つに限定されない。また、製造工程の数は、2つに限定されない。
【0024】
固定局FS1,FS2の各々は、例えば、アクセスポイント又は制御局である。移動体10は、例えば、無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)である。後述するように、移動体10には、製造装置100が搭載されている(図2参照)。製造装置100は、移動体10の移動に伴って、通信エリアA1では、第1の製造工程を行い、かつ、通信エリアA2では、第2の製造工程を行って、製品を完成させる。製造装置100は、通信エリアA2で製品を完成すると、自装置から製品を降ろして、再び、通信エリアA1にて、第1の製造工程を行って、新たに製品を製造し始める。製造装置100は、予め設定された個数の製品を製造すると、製品の製造を終了する。
【0025】
通信エリアA1は、固定局FS1からの電波が届く範囲を示しており、第1の製造工程が行われる作業場をカバーしている。通信エリアA1において、移動体10は、後述する周波数チャネルFC1を使用して、固定局FS1から、第1の製造工程に関する製造作業の指示を受信する。なお、当該製造作業の指示は、第1の製造工程に関する製造作業の内容を含んでいる。
【0026】
通信エリアA2は、固定局FS2から電波が届く範囲を示しており、第2の製造工程が行われる作業場をカバーしている。通信エリアA2において、移動体10は、後述する周波数チャネルFC2を使用して、固定局FS2から、第2の製造工程に関する製造作業の指示を受信する。なお、当該製造作業の指示は、第2の製造工程に関する製造作業の内容を含んでいる。
【0027】
なお、通信エリアA1,A2が、1つの製造工程が行われる作業場をカバーしてもよい。この場合、通信エリアA1,A2は、それぞれ、1つの製造工程が行われる作業場のうち、第1の製造作業が行われる作業場、及び第2の製造作業が行われる作業場をカバーする。
【0028】
一般的に、工場内には、無線通信を使用するシステムが複数共存している。このため、無線通信システム1では、通信エリア毎に、無線通信に使用する周波数を予め規定しておき、他のシステムとの相互干渉を抑制している。
【0029】
本実施形態では、通信エリア毎に、無線通信に使用する周波数チャネルが予め設定されている。具体的には、通信エリアA1,A2には、電波の相互干渉を抑制するために、それぞれ、互いに異なる周波数チャネルFC1,FC2が設定されている。
【0030】
例えば、無線LAN(Local Area Network)の通信規格IEEE802.11bでは、2.4GHzの周波数帯域が使用される。通信規格IEEE802.11bでは、14チャネル(1ch~14ch)が利用可能であり、1つのチャネル幅は22MHzであり、隣接するチャネルは5MHzずれている。
【0031】
このため、周波数チャネルFC1,FC2として、1ch、6ch、11ch、及び14chのうち、互いに異なる2つのチャネルを設定することにより、電波の相互干渉を抑制することができる。なお、1ch、6ch、11ch、及び14chの中心周波数は、それぞれ、2.412GHz、2.437GHz、2.462GHz、及び2.484GHzである。
【0032】
周波数チャネルFC1,FC2として、通信規格IEEE802.11bのチャネルに限定されず、他の通信規格のチャネルを設定してもよい。
【0033】
図1に示すように、移動経路3は、ループ状に形成されて、通信エリアA1内の第1の製造工程が行われる作業場、及び通信エリアA2内の第2の製造工程が行われる作業場を通る。本実施形態では、移動体10は、移動経路3に沿って移動方向DR1に進む。
【0034】
移動経路3は、通信エリアA1の一部が通信エリアA2の一部と重なる重複領域を通る。このため、移動体10は、位置P1で通信エリアA1に入った後、移動経路3に沿って移動方向DR1に進むと、位置P2で通信エリアA2を出る。同様に、移動体10は、位置P3で通信エリアA2に入った後、移動経路3に沿って移動すると、位置P4で通信エリアA1を出る。このように、位置P1,P2,P3,P4は、それぞれ、移動経路3における、通信エリアA1の入口、通信エリアA2の出口、通信エリアA2の入口、及び通信エリアA1の出口に対応する。なお、本実施形態では、位置P1は、移動体10が移動を開始する地点でもあり、位置P2は、移動体10が移動を終了する地点でもある。
【0035】
移動体10が、移動経路3に沿って、通信エリアA1から通信エリアA2に移動する場合、通信エリアA1,A2は、それぞれ、移動元の通信エリア、及び移動先の通信エリアとも呼称される。この場合、周波数チャネルFC1,FC2は、それぞれ、第1周波数チャネル、及び第2周波数チャネルとも呼称される。
【0036】
同様に、移動体10が、移動経路3に沿って、通信エリアA2から通信エリアA1に移動する場合、通信エリアA2,A1は、それぞれ、移動元の通信エリア、及び移動先の通信エリアとも呼称される。この場合、周波数チャネルFC2,FC1は、それぞれ、第1周波数チャネル、及び第2周波数チャネルとも呼称される。
【0037】
移動体10は、例えば、誘導方式により、移動経路3に沿って移動方向DR1に進む。具体的には、通信エリアA1内の第1の製造工程が行われる作業場の床面、及び通信エリアA2内の第2の製造工程が行われる作業場の床面には、移動経路3に沿って、磁気テープが貼られている。移動体10は、磁気センサを用いて、磁気テープを読み取りながら、移動経路3に関する情報を取得して、取得した情報に基づいて、移動経路3に沿って移動方向DR1に進む。
【0038】
なお、磁気テープの代わりに、通信エリアA1内の第1の製造工程が行われる作業場の床面、及び通信エリアA2内の第2の製造工程が行われる作業場の床面に、移動経路3に沿って、QRコード(登録商標)などのマーカが貼られてもよい。この場合、移動体10は、画像認識により、マーカを読み取りながら、移動経路3に関する情報を取得して、取得した情報に基づいて、移動経路3に沿って移動方向DR1に進む。
【0039】
移動体10が移動経路3を移動する方式は、誘導方式に限定されず、自立移動方式であってもよい。この場合、移動体10は、カメラ、レーダーなどを用いて、工場内での自車両の位置を推定しながら、移動経路3に沿って移動方向DR1に進む。
【0040】
移動経路3において、位置P1,P2,P3,P4には、それぞれ、QRコードなどの位置マーカが設置されている。位置P1に設置された位置マーカは、通信エリアA1の入口であることを示す位置情報PI1を含んでいる。位置P2に設置された位置マーカは、通信エリアA2の出口であることを示す位置情報PI2を含んでいる。位置P3に設置された位置マーカは、通信エリアA2の入口であることを示す位置情報PI3を含んでいる。位置P4に設置された位置マーカは、通信エリアA1の出口であることを示す位置情報PI4を含んでいる。移動体10は、画像認識により、各位置マーカを読み取って、対応する位置情報を取得する。なお、位置情報PI1,PI4は、通信エリアA1の位置情報とも呼称される。また、位置情報PI2,PI3は、通信エリアA2の位置情報とも呼称される。
【0041】
[移動体の構成]
次に、移動体10の構成を説明する。図2は、移動体10の構成の一例を示すブロック構成図である。図2に示すように、移動体10は、制御装置20と、無線通信装置30とを備える。
【0042】
制御装置20は、移動体10の移動を制御する。制御装置20は、例えば、上述したように、磁気センサを用いて、移動経路3に沿って設けられた磁気テープを読み取りながら、移動経路3に関する情報を取得する。制御装置20は、移動経路3に関する情報を取得すると、取得した情報に基づいて、移動体10の移動機構(図示略)を制御する。これにより、移動体10は、移動経路3に沿って移動方向DR1に移動する。
【0043】
無線通信装置30は、無線又は有線により、制御装置20と通信を行う。無線通信装置30は、上述したように、移動体10の移動に伴って、位置P1,P2,P3,P4の各々にて、画像認識により、位置マーカを読み取り、当該位置マーカから、位置情報PI1,PI2,PI3,PI4の各々を取得する。
【0044】
無線通信装置30は、移動体10が位置P1を1巡目に通過する場合、位置情報PI1を取得して、後述するように、周波数チャネルFC1を識別すると、自装置が使用する周波数チャネルとして、周波数チャネルFC1を設定する。
【0045】
無線通信装置30は、移動体10が位置P1を2巡目以降に通過する場合、位置情報PI1を取得して、後述するように、周波数チャネルFC1を識別すると、製造作業の進捗状況に基づいて、自装置が使用する周波数チャネルの切り替えを行うか否かを判定する。無線通信装置30は、周波数チャネルの切り替えを行うと判定する場合、自装置が使用する周波数チャネルを、周波数チャネルFC2から周波数チャネルFC1に切り替える。
【0046】
無線通信装置30は、移動体10が位置P3を通過する場合、位置情報PI3を取得して、後述するように、周波数チャネルFC2を識別すると、製造作業の進捗状況に基づいて、自装置が使用する周波数チャネルの切り替えを行うか否かを判定する。無線通信装置30は、周波数チャネルの切り替えを行うと判定する場合、自装置が使用する周波数チャネルを、周波数チャネルFC1から周波数チャネルFC2に切り替える。
【0047】
なお、無線通信装置30の代わりに、制御装置20が、移動体10の移動に伴って、位置P1,P2,P3,P4の各々にて、画像認識により、位置マーカを読み取り、当該位置マーカから、位置情報PI1,PI2,PI3,PI4の各々を取得してもよい。この場合、制御装置20は、位置情報PI1,PI2,PI3,PI4の各々を取得すると、取得した位置情報を無線通信装置30に送信する。
【0048】
無線通信装置30は、無線又は有線により、移動体10に搭載された製造装置100と通信を行う。
【0049】
無線通信装置30は、通信エリアA1にて、周波数チャネルFC1を使用して、固定局FS1から、第1の製造工程に関する製造作業の指示を受信すると、受信した製造作業の指示を製造装置100に送信する。製造装置100は、製造作業の指示を受信すると、当該指示に基づいて、通信エリアA1内の移動経路3を移動しながら、製造作業(例えば、部品の加工、部品の組み立てなど)を行う。製造装置100は、製造作業を完了すると、製造作業の完了通知を無線通信装置30に送信する。
【0050】
同様に、無線通信装置30は、通信エリアA2にて、周波数チャネルFC2を使用して、固定局FS2から、第2の製造工程に関する製造作業の指示を受信すると、受信した製造作業の指示を製造装置100に送信する。製造装置100は、製造作業の指示を受信すると、当該指示に基づいて、通信エリアA2内の移動経路3を移動しながら、製造作業(例えば、部品の加工、部品の組み立てなど)を行う。製造装置100は、製造作業を完了すると、製造作業の完了通知を無線通信装置30に送信する。
【0051】
[無線通信装置の機能的構成]
次に、無線通信装置30の機能的構成を説明する。図3は、無線通信装置30の機能的構成の一例を示すブロック構成図である。図3に示すように、無線通信装置30は、無線通信部31、制御部33、記憶部35、通信部37、取得部39、識別部41、判定部43、及び切替部45を備える。
【0052】
無線通信部31は、アンテナANTを使用して、各種信号を送受信する。本実施形態では、無線通信部31は、無線通信に使用する周波数チャネルとして、周波数チャネルFC1が設定されている場合、周波数チャネルFC1を使用して、通信エリアA1内の固定局FS1から、第1の製造工程に関する製造作業の指示を受信する。無線通信部31は、無線通信に使用する周波数チャネルとして、周波数チャネルFC2が設定されている場合、周波数チャネルFC2を使用して、通信エリアA2内の固定局FS2から、第2の製造工程に関する製造作業の指示を受信する。
【0053】
制御部33は、無線通信装置30における処理全体を制御する。具体的には、制御部33は、無線通信部31、記憶部35、通信部37、取得部39、識別部41、判定部43、及び切替部45の各々の動作を制御する。
【0054】
記憶部35は、無線通信に必要な制御パラメータ、チャネル情報テーブルなどを記憶する。
【0055】
図5は、チャネル情報テーブルの一例を示す図である。図5に示すように、チャネル情報テーブルにおいて、位置情報PI1,PI3は、それぞれ、周波数チャネルFC1,FC2に紐付けられている。一方、チャネル情報テーブルにおいて、位置情報PI2,PI4には、周波数チャネルは紐付けられていない。このように、本実施形態では、無線通信装置30は、各通信エリアの入口で、当該通信エリアの位置情報を取得して、周波数チャネルの切り替えを行う。なお、チャネル情報テーブルにおいて、周波数チャネルが、位置情報PI2,PI4にも紐付けられていてもよい。通信エリアの位置情報が、当該通信エリアで設定されている周波数チャネルに紐付けられたチャネル情報テーブルは、第1テーブルとも呼称される。
【0056】
通信部37は、制御装置20及び製造装置100との通信を行う。本実施形態では、通信部37は、無線通信部31により受信された、第1の製造工程に関する製造作業の指示、及び第2の製造工程に関する製造作業の指示を、製造装置100に送信する。通信部37は、第1の製造工程に関する製造作業の完了通知、及び第2の製造工程に関する製造作業の完了通知を、製造装置100から受信する。通信部37は、製品の製造を終了することを示す終了通知を、製造装置100から受信する。
【0057】
取得部39は、通信エリアA1の位置情報、及び通信エリアA2の位置情報を取得する。本実施形態では、取得部39は、画像認識により、位置マーカを読み取ったか否かを判定する。取得部39は、位置マーカを読み取ったと判定する場合、当該位置マーカから、通信エリアの位置情報を取得する。具体的には、取得部39は、画像認識により、位置P1,P2、P3,P4の各々に設置されている位置マーカを読み取ると、当該位置マーカから、位置情報PI1,PI2,PI3,PI4の各々を取得する。
【0058】
なお、無線通信装置30の代わりに、制御装置20が、画像認識により、位置マーカを読み取り、当該位置マーカから、通信エリアの位置情報を取得する場合、取得部39は、通信部37を介して、制御装置20から、位置情報PI1,PI2,PI3,PI4の各々を取得する。
【0059】
識別部41は、記憶部35に記憶されたチャネル情報テーブルを参照して、取得部39により取得された通信エリアA1又は通信エリアA2の位置情報に紐付けられた周波数チャネルを識別する。本実施形態では、識別部41は、チャネル情報テーブルを参照して、取得部39により取得された位置情報PI1に紐付けられた周波数チャネルFC1を識別する。識別部41は、チャネル情報テーブルを参照して、取得部39により取得された位置情報PI3に紐付けられた周波数チャネルFC2を識別する。
【0060】
一方、チャネル情報テーブルには、位置情報PI2,PI4に紐付けられた周波数チャネルは存在しない(図5参照)。このため、識別部41は、取得部39が位置情報PI2,PI4の各々を取得した場合、位置情報PI2,PI4に紐付けられた周波数チャネルを識別できず、対応する周波数チャネルは存在しないと判定する。
【0061】
判定部43は、通信部37が、製造装置100から製造作業の完了通知を受信したか否かを判定する。判定部43は、通信部37が、製造装置100から製造作業の完了通知を受信したと判定する場合、製造装置100は製造作業を完了したと判定する。判定部43は、通信部37が、製造装置100から製造作業の完了通知を受信していないと判定する場合、製造装置100は製造作業を完了していないと判定する。
【0062】
判定部43は、製造装置100における製造作業の進捗状況に基づいて、無線通信に使用する周波数チャネルの切り替えを行うか否かを判定する。本実施形態では、判定部43は、識別部41が周波数チャネルFC1を識別すると、製造装置100における製造作業の進捗状況に基づいて、無線通信に使用する周波数チャネルの切り替えを行うか否かを判定する。判定部43は、識別部41が周波数チャネルFC2を識別すると、製造装置100における製造作業の進捗状況に基づいて、無線通信に使用する周波数チャネルの切り替えを行うか否かを判定する。
【0063】
判定部43は、製造装置100が製造作業を完了したと判定する場合、周波数チャネルの切り替えを行うと判定する。判定部43は、製造装置100が製造作業を完了していないと判定する場合、周波数チャネルの切り替えを行わないと判定する。この場合、判定部43は、識別部41により識別された周波数チャネルの情報を、記憶部35に記憶する。
【0064】
切替部45は、判定部43が周波数チャネルの切り替えを行うと判定する場合、無線通信に使用する周波数チャネルを、周波数チャネルFC2から周波数チャネルFC1に、又は、周波数チャネルFC1から周波数チャネルFC2に切り替える。
【0065】
切替部45が、周波数チャネルFC2から周波数チャネルFC1への切り替えを行うと、無線通信部31は、周波数チャネルFC1を使用して、無線通信を行う。切替部45が、周波数チャネルFC1から周波数チャネルFC2への切り替えを行うと、無線通信部31は、周波数チャネルFC2を使用して、無線通信を行う。
【0066】
[無線通信装置のハードウェア構成]
次に、無線通信装置30のハードウェア構成について説明する。図4は、無線通信装置30のハードウェア構成の一例を示すブロック構成図である。
【0067】
図4に示すように、無線通信装置30は、CPU(Central Processing Unit)201、ROM(Read Only Memory)203、RAM(Random Access Memory)205、ストレージ207、アンテナ209、送受信回路211、カメラ213、及び外部インターフェース215を備える。
【0068】
CPU201は、ROM203に記憶されたプログラムを実行する。CPU201は、当該プログラムに従って、RAM205にロードされたデータを演算処理して、無線通信装置30の各部を統括的に制御する。なお、CPUは、プロセッサーとも呼称される。
【0069】
ROM203は、CPU201が実行するプログラム等を記憶する。本実施形態では、ROM203は、少なくとも、後述する、周波数チャネルの切替処理を制御するためのプログラムを記憶する。RAM205は、CPU201がROM203に記憶されたプログラムを実行する際に、演算データを一時的に保持する。なお、ROM及びRAMは、それぞれ、不揮発性メモリ及び揮発性メモリとも呼称される。
【0070】
ストレージ207は、無線通信に必要な制御パラメータ、チャネル情報テーブルなどを記憶する。CPU201は、ROM203に記憶されたプログラムに従って、ストレージ207に対するデータの読み取り及び書き込みを制御する。なお、ストレージ207は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)であり、ストレージ207として、HDDとSSDとを併用してもよい。
【0071】
アンテナ209は、CPU201の制御により、電波を放射する。送受信回路211は、CPU201の制御により、無線通信を行うための各種処理、周波数チャネルの設定及び切り替えなどを行う。
【0072】
カメラ213は、位置マーカが作業場の床面に設置されている場合、CPU201の制御により、移動体10の下方の画像を周期的に取得する。カメラ213は、位置マーカが作業場の柱又は天井に設置されている場合、CPU201の制御により、移動体10の側方又は上方の画像を周期的に取得する。
【0073】
カメラ213が画像を取得すると、CPU201は、画像認識により、取得した画像に位置マーカが存在するか否かを判定する。CPU201は、取得した画像に位置マーカが存在すると判定する場合、位置マーカを読み取って、当該位置マーカから、通信エリアの位置情報を取得する。
【0074】
なお、無線通信装置30の代わりに、制御装置20が、画像認識により、位置マーカを読み取り、当該位置マーカから、通信エリアの位置情報を取得する場合、無線通信装置30において、カメラ213を省略してもよい。
【0075】
外部インターフェース215は、無線又は有線により、制御装置20及び製造装置100に接続されている。CPU201は、外部インターフェース215を介して、制御装置20及び製造装置100とデータ及び信号の送受信を行う。なお、外部インターフェース215は、無線又は有線により、センサ(図示略)に接続されてもよい。この場合、CPU201は、外部インターフェース215を介して、センサからセンサ情報を受信する。
【0076】
[無線通信システムの動作]
次に、無線通信システム1の動作例について説明する。具体的には、無線通信システム1における周波数チャネルの切替処理を説明する。
【0077】
図6は、周波数チャネルの切替処理の一例を示すシーケンス図である。図6に示すように、無線通信装置30は、時刻t1にて、通信エリアの位置情報を取得し、チャネル情報テーブルを参照して、取得した通信エリアの位置情報に紐付けられた周波数チャネルを識別する。
【0078】
無線通信装置30は、時刻t2にて、製造作業の完了通知を、製造装置100から受信すると、直ちに、周波数チャネルの切り替えを行う。無線通信装置30は、時刻t3にて、固定局FS1又は固定局FS2へのアクセスを行う。
【0079】
具体的には、無線通信装置30は、自装置が使用する周波数チャネルを、周波数チャネルFC1から周波数チャネルFC2に切り替える場合、周波数チャネルFC2を使用して、固定局FS2へのアクセスを行う。無線通信装置30は、自装置が使用する周波数チャネルを、周波数チャネルFC2から周波数チャネルFC1に切り替える場合、周波数チャネルFC1を使用して、固定局FS1へのアクセスを行う。
【0080】
無線通信装置30は、時刻t4にて、次の製造作業の指示を、固定局FS1又は固定局FS2から受信すると、時刻t5にて、受信した製造作業の指示を、製造装置100に送信する。製造装置100は、次の製造作業の指示を、無線通信装置30から受信すると、当該指示に基づいて、次の製造作業を行う。
【0081】
[無線通信装置の動作]
次に、無線通信装置30の動作例について説明する。具体的には、無線通信装置30における周波数チャネルの切替処理を説明する。
【0082】
本動作例では、移動体10が、移動経路3に沿って移動方向DR1に進み、通信エリアA1から通信エリアA2に移動する場合における、無線通信装置30の動作を説明する。なお、本動作例では、移動体10は、通信エリアA1にて、周波数チャネルFC1を使用して、固定局FS1から、第1の製造工程に関する製造作業の指示を受信し、当該製造作業の指示を、製造装置100に送信済みである。また、本動作例では、無線通信装置30は、通信エリアA2の入口(位置P3)で、通信エリアA2の位置情報PI3を取得して、通信エリアA2で設定されている周波数チャネルFC2を識別する。
【0083】
図7は、無線通信装置30の動作フローチャートの一例を示す図である。図7に示すように、無線通信装置30は、移動体10の移動に伴って、画像認識を用いて、位置マーカを読み取ったか否かを判定する(ステップS1)。
【0084】
無線通信装置30は、位置マーカを読み取っていないと判定する場合、移動体10の移動に伴って、再度、ステップS1の動作を行う。一方、無線通信装置30は、位置マーカを読み取ったと判定する場合、当該位置マーカから、通信エリアの位置情報を取得する(ステップS3)。
【0085】
具体的には、取得部39は、位置P3にて、位置マーカを読み取ったと判定すると、当該位置マーカから位置情報PI3を取得する。取得部39は、位置P4にて、位置マーカを読み取ったと判定すると、当該位置マーカから位置情報PI4を取得する。
【0086】
なお、無線通信装置30の代わりに、制御装置20が、画像認識により、位置マーカを読み取り、当該位置マーカから、通信エリアの位置情報を取得する場合、ステップS1,S3は省略される。
【0087】
無線通信装置30は、通信エリアの位置情報を取得すると、チャネル情報テーブルを参照して、取得した通信エリアの位置情報に紐付けられた周波数チャネルが存在するか否かを判定する(ステップS5)。
【0088】
具体的には、取得部39が位置情報PI3を取得した場合、チャネル情報テーブルには、位置情報PI3に紐付けられた周波数チャネルFC2が存在する(図5参照)ため、識別部41は、周波数チャネルFC2を識別する。一方、取得部39が位置情報PI4を取得した場合、チャネル情報テーブルには、位置情報PI4に紐付けられた周波数チャネルは存在しない(図5参照)ため、識別部41は、周波数チャネルを識別しない。
【0089】
無線通信装置30は、取得した通信エリアの位置情報に紐付けられた周波数チャネルが存在しないと判定する場合、再度、ステップS1の動作を行う。一方、無線通信装置30は、取得した通信エリアの位置情報に紐付けられた周波数チャネルが存在すると判定する場合、製造装置100が製造作業を完了しているか否かを判定する(ステップS7)。
【0090】
具体的には、識別部41が周波数チャネルFC2を識別した場合、判定部43は、通信部37が、製造作業の完了通知を製造装置100から受信したか否かを判定する。判定部43は、通信部37が、製造作業の完了通知を製造装置100から受信していない場合、製造装置100は製造作業を完了していないと判定する。一方、判定部43は、通信部37が、製造作業の完了通知を製造装置100から受信した場合、製造装置100は製造作業を完了したと判定する。
【0091】
無線通信装置30は、製造装置100が製造作業を完了していないと判定する場合、再度、ステップS7の動作を行う。この場合、無線通信装置30は、ステップS5で識別した周波数チャネルの情報を記憶する。一方、無線通信装置30は、製造装置100が製造作業を完了したと判定する場合、製造装置100が製品の製造を終了するか否かを判定する(ステップS9)。
【0092】
具体的には、判定部43は、通信部37が、製品の製造を終了することを示す終了通知を、製造装置100から受信したか否かを判定する。本実施形態では、製造装置100は、予め設定された個数の製品を製造すると、製品の製造を終了する。このため、製造装置100は、予め設定された個数の製品を製造すると、終了通知を通信部37に送信する。
【0093】
判定部43は、通信部37が、終了通知を製造装置100から受信した場合、製造装置100は製品の製造を終了すると判定する。一方、判定部43は、通信部37が、終了通知を製造装置100から受信していない場合、製造装置100は製品の製造を終了しないと判定する。
【0094】
無線通信装置30は、製造装置100が製品の製造を終了すると判定する場合、周波数チャネルの切替処理を終了する。一方、無線通信装置30は、製造装置100が製品の製造を終了しないと判定する場合、ステップS5で識別した周波数チャネルに基づいて、周波数チャネルの切り替えを行う(ステップS11)。
【0095】
具体的には、判定部43が、製造装置100は製品の製造を終了しないと判定すると、切替部45は、無線通信に使用する周波数チャネルを、周波数チャネルFC1から周波数チャネルFC2に切り替える。
【0096】
無線通信装置30は、周波数チャネルの切り替えを行うと、ステップS5で識別した周波数チャネルを使用して、通信エリア内の固定局と無線通信を行う(ステップS13)。具体的には、切替部45が、無線通信に使用する周波数チャネルを、周波数チャネルFC1から周波数チャネルFC2に切り替えると、無線通信部31は、周波数チャネルFC2を使用して、通信エリアA2内の固定局FS2と無線通信を行う。
【0097】
無線通信装置30は、通信エリア内の固定局から、次の製造作業の指示を受信すると、当該製造作業の指示を、製造装置100に送信する(ステップS15)。具体的には、無線通信部31が、通信エリアA2内の固定局FS2から、第2の製造工程に関する製造作業の指示を受信すると、通信部37は、受信した製造作業の指示を製造装置100に送信する。無線通信装置30は、次の製造作業の指示を製造装置100に送信すると、再度、ステップS1の動作を行う。
【0098】
なお、本実施形態において、移動経路3における位置P1(通信エリアA1の入口)及び位置P3(通信エリアA2の入口)のみに、位置マーカを設置してもよい。この場合、チャネル情報テーブルには、位置情報PI1と周波数チャネルFC1との紐付け、及び位置情報PI3と周波数チャネルFC2との紐付けのみが記憶される。
【0099】
[作用・効果]
本実施形態によれば、無線通信装置30は、複数の通信エリア(例えば、通信エリアA1,A2)を移動する移動体10に設けられて、無線通信部31、識別部41、判定部43、及び切替部45を備える。
【0100】
無線通信部31は、移動元の通信エリア(例えば、通信エリアA1)で設定されている第1周波数チャネル(例えば、周波数チャネルFC1)を使用して、移動元の通信エリア内の固定局(例えば、固定局FS1)から、製造作業の指示を受信する。
【0101】
識別部41は、移動体10の移動に伴って、移動先の通信エリア(例えば、通信エリアA2)で設定されている第2周波数チャネル(例えば、周波数チャネルFC2)を識別する。判定部43は、識別部41が第2周波数チャネルを識別すると、製造作業の進捗状況に基づいて、周波数チャネルの切り替えを行うか否かを判定する。切替部45は、判定部43が、周波数チャネルの切り替えを行うと判定する場合、無線通信部31が使用する周波数チャネルを、第1周波数チャネルから第2周波数チャネルに切り替える。無線通信部31は、第2周波数チャネルを使用して、移動先の通信エリア内の固定局(例えば、固定局FS2)から、次の製造作業の指示を受信する。
【0102】
本実施形態によれば、移動体10は、複数の通信エリア(例えば、通信エリアA1,A2)を移動し、上述の無線通信装置30と制御装置20とを備える。制御装置20は、無線通信装置30に接続されて、移動体10の移動を制御する。
【0103】
このような構成により、無線通信装置30は、自装置側で第2周波数チャネルを識別し、製造作業の進捗状況に基づいて、自装置が使用する周波数チャネルを、第1周波数チャネルから第2周波数チャネルに切り替える。
【0104】
このため、移動先の通信エリアにおいて、無線通信装置30は、製造作業が完了するまで、周波数チャネルの切り替えを行わず、かつ、製造作業が完了すると、直ちに、周波数チャネルの切り替えを行うことができる。したがって、移動体10が複数の通信エリアを移動しながら、各通信エリアで製造作業の指示を受信して、複数の製造作業が順次行われる場合でも、作業効率の低下を抑えつつ、歩留まりの低下を抑えることが可能な無線通信装置30及び移動体10を提供することができる。
【0105】
また、上述した構成により、通信エリア内では、無線通信装置30は、周波数ホッピングなどの周波数チャネルの切り替えを行わずに、単一の周波数チャネルを使用して、無線通信を行うことができる。このため、通信エリア内では、周波数チャネルの切り替えにかかるロス時間がなく、通信時間の効率が良い。
【0106】
上述した構成により、無線通信装置30は、移動先の通信エリアで設定されている第2周波数チャネルを識別して、自律的に周波数チャネルの切り替えを行うことができる。このため、無線通信装置30と各固定局との間の接続を短時間に実施して、通信効率を向上させることができる。
【0107】
上述した構成により、通信エリア毎に使用する周波数チャネルが予め設定されているため、固定局の間で、各通信エリアで使用する周波数チャネルを、事前にやり取りすることなく、電波の相互干渉を抑制することができる。
【0108】
上述した構成により、無線通信装置30が、通信エリア内の位置情報、及び通信エリア内で使用される周波数チャネルを判別するため、各固定局は、通信エリア内における、製造装置100の製造作業に関する情報のみを管理すればよい。このため、各固定局の負荷を大きく低減することができる。
【0109】
上述した構成により、通信エリア毎に、無線通信装置30がアクセスする固定局が明確に決まっているため、無線通信装置30は、他の固定局と通信可能であっても、他の固定局にアクセスすることを回避することができる。
【0110】
本実施形態によれば、判定部43は、製造作業が完了していない場合、周波数チャネルの切り替えを行わないと判定して、第2周波数チャネルの情報を記憶部35に記憶する。判定部43は、製造作業が完了した場合、記憶部35に記憶した第2周波数チャネルの情報を用いて、周波数チャネルの切り替えを行うと判定する。
【0111】
このような構成により、無線通信装置30は、製造作業が完了するまで、周波数チャネルの切り替えを行わず、かつ、製造作業が完了すると、再度、第2周波数チャネルを識別することなく、直ちに、周波数チャネルの切り替えを行うことができる。このため、通信効率を更に向上させることができる。
【0112】
本実施形態によれば、無線通信装置30は、記憶部35、取得部39、及び識別部41を備える。取得部39は、移動先の通信エリアの位置情報(例えば、位置情報PI3)を取得する。記憶部35は、複数の通信エリアの各々の位置情報(例えば、位置情報PI1,PI3)と、複数の通信エリアの各々で設定されている周波数チャネル(例えば、周波数チャネルFC1,FC2)とを紐付けた第1テーブル(チャネル情報テーブル)を記憶する。識別部41は、第1テーブルを参照して、取得部39により取得された通信エリアの位置情報(例えば、位置情報PI3)に紐付けられた周波数チャネル(例えば、周波数チャネルFC2)を、第2周波数チャネルとして識別する。
【0113】
このような構成により、無線通信装置30は、第1テーブルを参照するだけで、取得した通信エリアの位置情報に基づいて、当該通信エリアで設定されている周波数チャネルを簡易に識別することができる。このため、通信効率を更に向上させることができる。
【0114】
[第1変形例]
上述した実施形態では、チャネル情報テーブルには、通信エリアの位置情報と、当該通信エリアで設定されている周波数チャネルとが紐付けられているが、これに限定されない。例えば、チャネル情報テーブルには、移動体10が移動を開始する開始地点(位置P1)からの距離と、通信エリアで設定されている周波数チャネルとが紐付けられていてもよい。なお、移動体10が移動を開始する開始地点からの距離を用いる代わりに、製造装置100が製造を開始する開始地点からの距離を用いてもよい。
【0115】
本変形例では、移動経路3において、位置P1(通信エリアA1の入口)から位置P3(通信エリアA2の入口)までの距離はXmであり、位置P3から位置P1までの距離はY-Xmである。開始地点(位置P1)からの距離Dが0mとXmとの範囲内にある場合、当該距離における通信エリアは、通信エリアA1に対応する。一方、開始地点(位置P1)からの距離DがXmとYmとの範囲内にある場合、当該距離における通信エリアは、通信エリアA1に対応する。
【0116】
図8は、チャネル情報テーブルの一例を示す図である。図8に示すように、チャネル情報テーブルにおいて、開始地点からの距離Dが0mとXmとの範囲内にある場合、当該距離Dは、周波数チャネルFC1に紐付けられている。チャネル情報テーブルにおいて、開始地点からの距離DがXmとYmとの範囲内にある場合、当該距離Dは、周波数チャネルFC2に紐付けられている。なお、開始地点からの距離Dが、通信エリアで設定されている周波数チャネルに紐付けられたチャネル情報テーブルは、第2テーブルとも呼称される。
【0117】
本変形例では、周波数チャネルの切替処理において、図7のステップS1~S5の動作が変更される。具体的には、制御装置20は、磁気センサを用いて、移動経路3に沿って設けられた磁気テープを読み取りながら、移動経路3に関する情報とともに、開始地点からの距離Dの情報を取得する。制御装置20は、開始地点からの距離Dの情報を取得すると、無線通信装置30に送信する。
【0118】
無線通信装置30は、開始地点からの距離Dを取得すると、チャネル情報テーブルを参照して、受信した距離Dに紐付けられた周波数チャネルを識別する。無線通信装置30は、識別した周波数チャネルが、自装置が現在使用している周波数チャネルと異なるか否かを判定する。
【0119】
無線通信装置30は、識別した周波数チャネルが、自装置が現在使用している周波数チャネルと同じであると判定する場合、移動体10の移動に伴って、再度、開始地点からの距離Dを取得する。一方、無線通信装置30は、識別した周波数チャネルが、自装置が現在使用している周波数チャネルと異なると判定する場合、図7のステップS7の動作を行う。
【0120】
なお、制御装置20は、磁気テープから、開始地点からの距離Dの情報を取得する代わりに、移動体10のタイヤの回転数を周期的に検出して、検出したタイヤの回転数から、開始地点からの距離を算出してもよい。
【0121】
本変形例によれば、無線通信装置30は、記憶部35、取得部39、及び識別部41を備える。取得部39は、移動体10が移動を開始する開始地点からの距離Dを取得する。記憶部35は、開始地点からの距離Dと、複数の通信エリア(例えば、通信エリアA1,A2)の各々で設定されている周波数チャネル(例えば、周波数チャネルFC1,FC2)とを紐付けた第2テーブル(チャネル情報テーブル)を記憶する。
【0122】
識別部41は、第2テーブルを参照して、取得部39により取得された開始地点からの距離Dに紐付けられた周波数チャネル(例えば、周波数チャネルFC2)を、第2周波数チャネルとして識別する。
【0123】
上述した実施形態では、無線通信装置30が位置マーカを読み取れない場合、移動先の通信エリアで設定されている周波数チャネルを識別することができなくなる可能性がある。これに対して、本変形例では、上述した構成により、無線通信装置30は、開始地点からの距離Dを随時取得することができるため、移動先の通信エリアで設定されている周波数チャネルを識別し損ねることを回避することができる。
【0124】
[第2変形例]
上述した実施形態では、移動経路の数は1つであるが、これに限定されない。例えば、移動経路の数は複数であってもよい。なお、本変形例では、移動経路の数は2つである。
【0125】
図9は、無線通信システム1aの全体概略構成図である。図9に示すように、無線通信システム1aは、固定局FS11,FS12,FS21,FS22と、移動体10とを備える。
【0126】
通信エリアA11は、固定局FS11からの電波が届く範囲を示しており、第1の製品における第1の製造工程が行われる作業場をカバーしている。通信エリアA11では、無線通信に使用する周波数チャネルとして、周波数チャネルFC11が設定されている。周波数チャネルFC11は、例えば、通信規格IEEE802.11bにおける1chである。通信エリアA11において、移動体10は、周波数チャネルFC11を使用して、固定局FS11から、第1の製品における第1の製造工程に関する製造作業の指示を受信する。
【0127】
通信エリアA12は、固定局FS12から電波が届く範囲を示しており、第1の製品における第2の製造工程が行われる作業場をカバーしている。通信エリアA12では、無線通信に使用する周波数チャネルとして、周波数チャネルFC12が設定されている。周波数チャネルFC12は、例えば、通信規格IEEE802.11bにおける6chである。通信エリアA12において、移動体10は、周波数チャネルFC12を使用して、固定局FS12から、第1の製品における第2の製造工程に関する製造作業の指示を受信する。
【0128】
通信エリアA21は、固定局FS21からの電波が届く範囲を示しており、第2の製品における第1の製造工程が行われる作業場をカバーしている。通信エリアA21では、無線通信に使用する周波数チャネルとして、周波数チャネルFC21が設定されている。周波数チャネルFC21は、例えば、通信規格IEEE802.11bにおける11chである。通信エリアA21において、移動体10は、周波数チャネルFC21を使用して、固定局FS21から、第2の製品における第1の製造工程に関する製造作業の指示を受信する。
【0129】
通信エリアA22は、固定局FS22から電波が届く範囲を示しており、第2の製品における第2の製造工程が行われる作業場をカバーしている。通信エリアA22では、無線通信に使用する周波数チャネルとして、周波数チャネルFC22が設定されている。周波数チャネルFC22は、通信規格IEEE802.11bにおける1chである。通信エリアA22は、通信エリアA11と重ならないため、周波数チャネルFC11,FC22が、通信規格IEEE802.11bにおける1chであっても、電波の相互干渉は生じない。通信エリアA22において、移動体10は、周波数チャネルFC22を使用して、固定局FS22から、第2の製品における第2の製造工程に関する製造作業の指示を受信する。
【0130】
移動経路5aは、ループ状に形成されて、通信エリアA11内の、第1の製品における第1の製造工程が行われる作業場、及び通信エリアA12内の、第1の製品における第2の製造工程が行われる作業場を通る。本変形例では、移動体10は、移動経路5aを移動する場合、移動経路5aに沿って移動方向DR11に進む。
【0131】
なお、移動経路5aは、通信エリアA11の一部が通信エリアA21の一部に重なる領域を通るが、通信エリアA21は、第1の製品における製造工程とは関係ないため、当該領域において、周波数チャネルFC21への切り替えは行われない。同様に、移動経路5aは、通信エリアA12の一部が通信エリアA22の一部に重なる領域を通るが、通信エリアA22は、第1の製品における製造工程とは関係ないため、当該領域において、周波数チャネルFC22への切り替えは行われない。
【0132】
移動経路5bは、ループ状に形成されて、通信エリアA21内の、第2の製品における第1の製造工程が行われる作業場、及び通信エリアA22内の、第2の製品における第2の製造工程が行われる作業場を通る。本変形例では、移動体10は、移動経路5bを移動する場合、移動経路5bに沿って移動方向DR21に進む。
【0133】
なお、移動経路5bは、通信エリアA21の一部が通信エリアA11の一部に重なる領域を通るが、通信エリアA11は、第2の製品における製造工程とは関係ないため、当該領域において、周波数チャネルFC11への切り替えは行われない。同様に、移動経路5bは、通信エリアA22の一部が通信エリアA12の一部に重なる領域を通るが、通信エリアA12は、第2の製品における製造工程とは関係ないため、当該領域において、周波数チャネルFC12への切り替えは行われない。
【0134】
製造装置100は、移動経路5aに沿った移動体10の移動に伴って、通信エリアA11では、第1の製品における第1の製造工程を行い、かつ、通信エリアA12では、第1の製品における第2の製造工程を行って、第1の製品を完成させる。
【0135】
製造装置100は、移動経路5bに沿った移動体10の移動に伴って、通信エリアA21では、第2の製品における第1の製造工程を行い、かつ、通信エリアA22では、第2の製品における第2の製造工程を行って、第2の製品を完成させる。
【0136】
位置P11は、移動経路5aにおける、通信エリアA11の入口及び通信エリアA12の出口に対応する。位置P12は、移動経路5aにおける、通信エリアA12の入口に対応する。位置P13は、移動経路5aにおける、通信エリアA11の出口に対応する。なお、本変形例では、位置P11は、移動経路5aにおいて、移動体10が移動を開始する地点、及び移動体10が移動を終了する地点でもある。
【0137】
位置P11は、移動経路5bにおける、通信エリアA22の出口に対応する。位置P14は、移動経路5bにおける、通信エリアA21の入口に対応する。位置P15は、移動経路5bにおける、通信エリアA22の入口に対応する。位置P16は、移動経路5bにおける、通信エリアA21の出口に対応する。なお、本変形例では、位置P11は、移動経路5bにおいて、移動体10が移動を開始する地点、及び移動体10が移動を終了する地点でもある。
【0138】
位置P11,P12,P13,P14,P15,P16には、それぞれ、QRコードなどの位置マーカが設置されている。位置P11に設置された位置マーカは、通信エリアA11の入口、通信エリアA12の出口、及び通信エリアA22の出口であることを示す位置情報PI11を含んでいる。位置P12に設置された位置マーカは、通信エリアA12の入口であることを示す位置情報PI12を含んでいる。位置P13に設置された位置マーカは、通信エリアA11の出口であることを示す位置情報PI13を含んでいる。位置P14に設置された位置マーカは、通信エリアA21の入口であることを示す位置情報PI14を含んでいる。位置P15に設置された位置マーカは、通信エリアA22の入口であることを示す位置情報PI15を含んでいる。位置P16に設置された位置マーカは、通信エリアA21の出口であることを示す位置情報PI16を含んでいる。
【0139】
移動体10は、画像認識により、各位置マーカを読み取って、対応する位置情報を取得する。なお、位置情報PI11,PI13は、通信エリアA11の位置情報とも呼称され、位置情報PI11,PI12は、通信エリアA12の位置情報とも呼称される。位置情報PI14,PI16は、通信エリアA21の位置情報とも呼称される。位置情報PI11,PI15は、通信エリアA22の位置情報とも呼称される。
【0140】
図10は、無線通信装置30aの機能的構成の一例を示すブロック構成図である。図10に示すように、無線通信装置30aは、無線通信装置30の無線通信部31、制御部33、記憶部35、通信部37、取得部39、識別部41、判定部43、及び切替部45に加えて、設定部47を備える。
【0141】
設定部47は、移動体10が移動を開始する前に、通信部37を介して、制御装置20から、製造対象に関する製造作業の指示が送信される特定の通信エリアの情報を受信する。設定部47は、特定の通信エリアの情報を受信すると、複数の通信エリアの位置情報のうち、当該特定の通信エリアの位置情報を設定して、設定した位置情報を記憶部35に記憶する。
【0142】
例えば、移動体10が、移動経路5aに沿って移動方向DR11に進む場合、設定部47は、特定の通信エリアの位置情報として、位置情報PI11,PI12,PI3を設定する。移動体10が、移動経路5bに沿って移動方向DR21に進む場合、設定部47は、特定の通信エリアの位置情報として、位置情報PI11,PI14,PI15,PI16を設定する。
【0143】
なお、設定部47は、無線通信装置30aの入出力部(図示略)から、製造対象に関する製造作業の指示が送信される特定の通信エリアの情報を受信してもよい。
【0144】
記憶部35は、移動経路5a用のチャネル情報テーブルと、移動経路5b用のチャネル情報テーブルとを記憶する。図11Aは、移動経路5a用のチャネル情報テーブルの一例を示す図である。図11Bは、移動経路5b用のチャネル情報テーブルの一例を示す図である。
【0145】
図11Aに示すように、移動経路5a用のチャネル情報テーブルにおいて、位置情報PI11,PI12は、それぞれ、周波数チャネルFC11,FC12に紐付けられている。一方、移動経路5a用のチャネル情報テーブルにおいて、位置情報PI13には、周波数チャネルは紐付けられていない。なお、チャネル情報テーブルにおいて、周波数チャネルが、位置情報PI13にも紐付けられていてもよい。
【0146】
図11Bに示すように、移動経路5b用のチャネル情報テーブルにおいて、位置情報PI14,PI15は、それぞれ、周波数チャネルFC21,FC22に紐付けられている。一方、移動経路5b用のチャネル情報テーブルにおいて、位置情報PI11,PI16には、周波数チャネルは紐付けられていない。なお、チャネル情報テーブルにおいて、周波数チャネルが、位置情報PI11,PI16にも紐付けられていてもよい。
【0147】
このように、本変形例では、無線通信装置30aは、各通信エリアの入口において、設定部47により設定された通信エリアの位置情報を取得して、周波数チャネルの切り替えを行う。
【0148】
図12は、無線通信装置30aの動作フローチャートの一例を示す図である。なお、図12のステップS1a,S3a,S5a,S7a,S9a,S11a,S13a,S15aは、図7のS1,S3,S5,S7,S9,S11,S13,S15と同様な動作を行うため、説明を適宜省略する。
【0149】
無線通信装置30aは、移動体10が移動する前に、制御装置20又は無線通信装置30aの入出力部から、第1の製品の製造を行うことを示す信号又は第2の製品の製造を行うことを示す信号を受信する。無線通信装置30aは、第1の製品の製造を行うことを示す信号を受信すると、後述するステップS5aにて、移動経路5a用のチャネル情報テーブルを参照する。無線通信装置30aは、第2の製品の製造を行うことを示す信号を受信すると、後述するステップS5aにて、移動経路5b用のチャネル情報テーブルを参照する。
【0150】
無線通信装置30aは、移動体10の移動に伴って、通信エリアの位置情報を取得すると、取得した位置情報は、特定の通信エリアの位置情報に含まれるか否かを判定する(ステップS4a)。
【0151】
例えば、取得部39が、位置P14にて、位置情報PI14を取得する場合、判定部43は、取得した位置情報PI14が、設定部47により設定された特定の通信エリアの位置情報に含まれるか否かを判定する。移動体10が移動経路5aを移動している場合、設定部47は、特定の通信エリアの位置情報として、位置情報PI11,PI12,PI3を設定しているため、判定部43は、取得した位置情報PI14は、特定の通信エリアの位置情報に含まれないと判定する。一方、移動体10が移動経路5bを移動している場合、設定部47は、特定の通信エリアの位置情報として、位置情報PI11,PI14,PI15,PI16を設定しているため、判定部43は、取得した位置情報PI14は、特定の通信エリアの位置情報に含まれると判定する。
【0152】
無線通信装置30aは、取得した位置情報が、特定の通信エリアの位置情報に含まれないと判定する場合、移動体10の移動に伴って、再度、ステップS1aの動作を行う。一方、無線通信装置30aは、取得した位置情報が、特定の通信エリアの位置情報に含まれると判定する場合、移動経路5a又は移動経路5b用のチャネル情報テーブルを参照して、取得した位置情報に紐付けられた周波数チャネルが存在するか否かを判定する(ステップS5a)。
【0153】
例えば、移動体10が移動経路5aを移動している場合、識別部41は、移動経路5a用のチャネル情報テーブルを参照して、位置P11にて取得された位置情報PI11に紐付けられた周波数チャネルFC11を識別する。この場合、ステップS11aにて、切替部45によって周波数チャネルの切り替えが行われる。
【0154】
一方、移動体10が移動経路5bを移動している場合、識別部41は、移動経路5b用のチャネル情報テーブルを参照し、位置P11にて取得された位置情報PI11に紐付けられた周波数チャネルは存在しないため、周波数チャネルを識別しない。この場合、ステップS1aの動作に戻るため、周波数チャネルの切り替えは行われない。
【0155】
本変形例によれば、無線通信装置30aは、取得部39、識別部41、判定部43、及び設定部47を備える。設定部47は、移動体10が移動を開始する前に、複数の通信エリアの位置情報(例えば、位置情報PI11~PI16)のうち、製造対象に関する製造作業の指示が送信される特定の通信エリアの位置情報(例えば、位置情報PI11~PI13)を設定する。
【0156】
判定部43は、取得部39により取得された通信エリアの位置情報(例えば、位置情報PI11)が、特定の通信エリアの位置情報に含まれるか否かを判定する。判定部43が、取得部39により取得された通信エリアの位置情報が、特定の通信エリアの位置情報に含まれると判定する場合、識別部41は、第1テーブル(例えば、移動経路5a用のチャネル情報テーブル)を参照して、取得部39により取得された通信エリアの位置情報に紐付けられた周波数チャネル(例えば、周波数チャネルFC11)を、第2周波数チャネルとして識別する。
【0157】
このような構成により、無線通信装置30aは、移動体10の移動に伴って、製造対象に関する製造作業の指示が送信されない通信エリアの位置情報を取得しても、当該通信エリアで使用されている周波数チャネルへの切り替えは行わない。このため、チャネルの切り替え時間を更に短くして、作業効率の低下を更に抑えることができる。
【0158】
なお、本変形例は、1つの移動経路が複数の通信エリアを通る場合にも適用することができる。
【0159】
[第3変形例]
上述した実施形態では、移動経路3において、移動体10が移動可能な方向は一方向(移動方向DR1)であるが、これに限定されない。移動経路3において、移動体10が移動可能な方向は双方向であってもよい。
【0160】
図13は、無線通信システム1bの全体概略構成図である。図13に示すように、無線通信システム1bの移動経路3において、移動体10が移動可能な方向は、移動方向DR1と、移動方向DR1とは逆方向の移動方向DR2との2つである。
【0161】
本変形例では、通信エリアA1によってカバーされる作業場では、第1の製品における第1の製造工程と、第2の製品における第2の製造工程とが行われる。具体的には、通信エリアA1において、移動体10は、移動経路3に沿って移動方向DR1に進む場合、周波数チャネルFC1を使用して、固定局FS1から、第1の製品における第1の製造工程に関する製造作業の指示を受信する。一方、通信エリアA1において、移動体10は、移動経路3に沿って移動方向DR2に進む場合、周波数チャネルFC3を使用して、固定局FS1から、第2の製品における第2の製造工程に関する製造作業の指示を受信する。
【0162】
本変形例では、通信エリアA2によってカバーされる作業場では、第1の製品における第2の製造工程と、第2の製品における第1の製造工程とが行われる。具体的には、通信エリアA2において、移動体10は、移動経路3に沿って移動方向DR1に進む場合、周波数チャネルFC2を使用して、固定局FS2から、第1の製品における第2の製造工程に関する製造作業の指示を受信する。一方、通信エリアA2において、移動体10は、移動経路3に沿って移動方向DR2に進む場合、周波数チャネルFC4を使用して、固定局FS2から、第2の製品における第1の製造工程に関する製造作業の指示を受信する。
【0163】
したがって、移動体10が、移動経路3に沿って移動方向DR1に進む場合、製造装置100は、通信エリアA1では、第1の製品における第1の製造工程を行い、かつ、通信エリアA2では、第1の製品における第2の製造工程を行って、第1の製品を完成させる。この場合、位置P1は、移動体10が移動を開始する地点であり、位置P2は、移動体10が移動を終了する地点である。
【0164】
一方、移動体10が、移動経路3に沿って移動方向DR2に進む場合、製造装置100は、通信エリアA2では、第2の製品における第1の製造工程を行い、かつ、通信エリアA1では、第2の製品における第2の製造工程を行って、第2の製品を完成させる。この場合、位置P2は、移動体10が移動を開始する地点であり、位置P1は、移動体10が移動を終了する地点である。
【0165】
なお、通信エリアA1によってカバーされる作業場では、製品における第1の製造工程と、製品における第4の製造工程とが行われてもよい。この場合、通信エリアA2によってカバーされる作業場では、製品における第2の製造工程と、製品における第3の製造工程とが行われる。移動体10が、位置P1から移動経路3に沿って移動方向DR1に進むと、製造装置100は、通信エリアA1では、製品における第1の製造工程を行い、かつ、通信エリアA2では、製品における第2の製造工程を行う。移動体10は、移動経路3に沿って移動方向DR1に進んで位置P2に達すると、移動方向を変えて、位置P2から移動経路3に沿って移動方向DR2に進む。移動体10が、位置P2から移動経路3に沿って移動方向DR2に進むと、製造装置100は、通信エリアA2では、製品における第3の製造工程を行い、かつ、通信エリアA1では、製品における第4の製造工程を行って、製品を完成させる。
【0166】
通信エリアA1では、無線通信に使用する周波数チャネルとして、上述した周波数チャネルFC1,FC3が設定されている。周波数チャネルFC1,FC3は、例えば、通信規格IEEE802.11bにおける1ch,6chである。
【0167】
通信エリアA2では、無線通信に使用する周波数チャネルとして、上述した周波数チャネルFC2,FC4が設定されている。周波数チャネルFC2,FC4は、例えば、通信規格IEEE802.11bにおける11ch,14chである。
【0168】
移動体10が移動方向DR1に進む場合、位置P1,P2,P3,P4は、それぞれ、通信エリアA1の入口、通信エリアA2の出口、通信エリアA2の入口、通信エリアA1の出口に対応する。
【0169】
移動体10が移動方向DR2に進む場合、位置P1,P2,P3,P4は、それぞれ、通信エリアA1の出口、通信エリアA2の入口、通信エリアA2の出口、通信エリアA1の入口に対応する。
【0170】
位置P1,P2,P3,P4には、それぞれ、QRコードなどの位置マーカが設置されている。位置P1に設置された位置マーカは、通信エリアA1の入口又は出口であることを示す位置情報PI1を含んでいる。位置P2に設置された位置マーカは、通信エリアA2の入口又は出口であることを示す位置情報PI2を含んでいる。位置P3に設置された位置マーカは、通信エリアA2の入口又は出口であることを示す位置情報PI3を含んでいる。位置P4に設置された位置マーカは、通信エリアA1の入口又は出口であることを示す位置情報PI4を含んでいる。
【0171】
本変形例では、移動体10の移動方向を特定する情報として、各通信エリアの位置情報を使用する。
【0172】
図14は、無線通信装置30bの機能的構成の一例を示すブロック構成図である。図14に示すように、無線通信装置30bは、無線通信装置30の無線通信部31、制御部33、記憶部35、通信部37、取得部39、識別部41、判定部43、及び切替部45に加えて、方向特定部49を備える。
【0173】
方向特定部49は、取得部39による通信エリアの位置情報の取得順序に基づいて、移動体10の移動方向を特定する。例えば、方向特定部49は、位置情報PI1、PI2の順に、取得部39が通信エリアの位置情報を取得したと判定する場合、移動体10は、移動経路3に沿って移動方向DR1に進んでいると判定する。一方、方向特定部49は、位置情報PI2、PI1の順に、取得部39が通信エリアの位置情報を取得したと判定する場合、移動体10は、移動経路3に沿って移動方向DR2に進んでいると判定する。
【0174】
記憶部35は、通信エリアの位置情報と、移動体10の移動方向と、当該通信エリアで設定されている周波数チャネルとが紐付けられたチャネル情報テーブルを記憶する。図15は、チャネル情報テーブルの一例を示す図である。
【0175】
本変形例では、図15に示すように、チャネル情報テーブルにおいて、位置情報PI1は、移動方向DR1及び周波数チャネルFC1に紐付けられている。位置情報PI3は、移動方向DR1及び周波数チャネルFC2に紐付けられている。一方、位置情報PI2には、移動方向DR1が紐付けられているが、周波数チャネルは紐付けられていない。位置情報PI4には、移動方向DR1が紐付けられているが、周波数チャネルは紐付けられていない。
【0176】
同様に、本変形例では、図15に示すように、チャネル情報テーブルにおいて、位置情報PI2は、移動方向DR2及び周波数チャネルFC4に紐付けられている。位置情報PI4は、移動方向DR2及び周波数チャネルFC3に紐付けられている。一方、位置情報PI1には、移動方向DR2が紐付けられているが、周波数チャネルは紐付けられていない。位置情報PI3には、移動方向DR2が紐付けられているが、周波数チャネルは紐付けられていない。
【0177】
このように、本変形例では、無線通信装置30bは、移動体10が移動経路3に沿って移動方向DR1又は移動方向DR2に進む場合、各通信エリアの入口で、当該通信エリアの位置情報を取得して、周波数チャネルの切り替えを行う。なお、通信エリアの位置情報と、移動体10の移動方向と、当該通信エリアで設定されている周波数チャネルとが紐付けられたチャネル情報テーブルは、第3テーブルとも呼称される。
【0178】
図16は、無線通信装置30bの動作フローチャートの一例を示す図である。なお、図12のステップS1b,S3b,S5b,S7b,S9b,S11b,S13b,S15bは、図7のS1,S3,S5,S7,S9,S11,S13,S15と同様な動作を行うため、説明を適宜省略する。
【0179】
無線通信装置30bは、通信エリアの位置情報の取得順序に基づいて、移動体10の移動方向を特定する(ステップS4b)。具体的には、方向特定部49は、取得部39による通信エリアの位置情報の取得順序に基づいて、移動体10の移動方向を特定する。
【0180】
無線通信装置30bは、チャネル情報テーブルを参照して、ステップS3bで取得された最新の通信エリアの位置情報と、ステップS4bで特定された移動体10の移動方向とに紐付けられた周波数チャネルが存在するか否かを判定する(ステップS5b)。
【0181】
具体的には、識別部41は、チャネル情報テーブルを参照して、取得部39により取得された最新の通信エリアの位置情報と、方向特定部49により特定された移動体10の移動方向とに紐付けられた周波数チャネルが存在する否かを判定する。
【0182】
本変形例によれば、無線通信装置30bは、記憶部35、取得部39、識別部41、及び方向特定部49を備える。取得部39は、移動体10の移動に伴って、通信エリアの位置情報を順次取得する。方向特定部49は、取得部39による通信エリアの位置情報の取得順序に基づいて、移動体10の移動方向(例えば、移動方向DR1)を特定する。記憶部35は、複数の通信エリアの各々の位置情報(例えば、位置情報PI1,PI2,PI3,PI4)と、移動体10の移動方向(例えば、移動方向DR1,DR2)と、複数の通信エリアの各々で設定されている周波数チャネル(例えば、周波数チャネルFC1,FC2,FC3,FC4)とを紐付けた第3テーブル(チャネル情報テーブル)を記憶する。
【0183】
識別部41は、第3テーブルを参照して、取得部39により取得された最新の通信エリアの位置情報(例えば、位置情報PI1)と、方向特定部49により特定された移動体10の移動方向(例えば、移動方向DR1)とに紐付けられた周波数チャネル(例えば、周波数チャネルFC1)を、前記第2周波数チャネルとして識別する。
【0184】
このような構成により、各通信エリアにおいて、1つの移動経路を用いて、異なる2つの製造作業を行うことができる。例えば、移動経路の一方の側に、一方の製造作業で使用される部材などが配置され、かつ、移動経路の他方の側に、他方の製造作業で使用される部材などが配置される。このため、移動経路の長さを抑えて、作業効率を上げることができる。
【0185】
[他の変形例]
上述した実施形態では、無線通信装置30が、画像認識により、位置マーカを読み取り、当該位置マーカから、通信エリアの位置情報を取得するが、これに限定されない。無線通信装置30は、カメラ、レーダーなどを用いて、工場内の状況を監視し、例えば、移動体10が通過した柱の数から、通信エリアの位置を特定してもよい。この場合、無線通信装置30は、通信エリアの位置と、当該通信エリアに設定された周波数チャネルとを紐付けたチャネル情報テーブルを参照して、特定した通信エリアの位置に紐付けられた周波数チャネルを識別してもよい。
【0186】
上述した実施形態では、無線通信装置30は、通信エリアの位置情報の取得に、カメラを用いているが、これに限定されない。無線通信装置30は、レーダーセンサを用いて、通信エリアの位置を検知してもよい。また、無線通信装置30は、工場内に、位置を測定するためのGPS(Global Positioning System)、無線ビーコンなどを設置して、通信エリアの位置を検知してもよい。
【0187】
上述した実施形態では、無線通信装置30は、チャネル情報テーブルを参照して、取得した通信エリアの位置情報に紐付けられた、当該通信エリアで設定されている周波数チャネルを識別するが、これに限定されない。無線通信装置30は、通信エリアによってカバーされる作業場の床面に貼られた、QRコードなどのマーカに対して、当該通信エリアで設定されている周波数チャネルの情報を含めてもよい。この場合、無線通信装置30は、画像処理により、マーカを読み取り、当該マーカから、通信エリアで設定されている周波数チャネルを直接識別する。これにより、無線通信装置30は、通信エリアの位置情報を取得せずに、周波数チャネルの切り替えを行うことができる。
【0188】
無線通信装置30は、上述したような、通信エリアで設定されている周波数チャネルを識別するための複数の方法のうち、2つ以上の方法を組み合わせて、通信エリアで設定されている周波数チャネルを総合的に判断してもよい。
【0189】
上述した実施形態では、移動体10として、AGVを例に示しているが、これに限定されない。移動体10は、製造ラインを流れる製造機器、工場内を移動する作業員が持つ無線機能を有したタブレット端末などにも適用可能である。
【0190】
上述した実施形態では、製造装置100は、移動先の通信エリアを出るまでには、移動元の通信エリア内で指示される製造作業を終えることを前提としているが、これに限定されない。移動元の通信エリア内で指示される製造作業が多い場合には、移動体10が移動先の通信エリアを出るとしても、無線通信装置30は、製造装置100が当該作業を終えるまでは、周波数チャネルの切り替えを行わなくてよい。
【0191】
上述した第1~第3変形例及び他の変形例のうち、2つ以上を組み合わせて、上述した実施形態に適用してもよい。
【0192】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0193】
10 移動体
20 制御装置
30 無線通信装置
31 無線通信部
35 記憶部
39 取得部
41 識別部
43 判定部
45 切替部
47 設定部
49 方向特定部
D 距離
FS1,FS2,FS11,FS12,FS21,FS22 固定局
A1,A2,A11,A12,A21,A22 通信エリア
FC1~FC4,FC11,FC12,FC21,FC22 周波数チャネル
図1
図2
図3
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図5
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図11A
図11B
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