(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】導電性組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 61/12 20060101AFI20240729BHJP
C08L 65/00 20060101ALI20240729BHJP
C08L 25/18 20060101ALI20240729BHJP
C08L 41/00 20060101ALI20240729BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
C08G61/12
C08L65/00
C08L25/18
C08L41/00
C08J5/18 CEZ
(21)【出願番号】P 2020078056
(22)【出願日】2020-04-27
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】520148208
【氏名又は名称】クレバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100167645
【氏名又は名称】下田 一弘
(72)【発明者】
【氏名】椋木 康雄
(72)【発明者】
【氏名】金井 大介
(72)【発明者】
【氏名】金井 文彦
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-511808(JP,A)
【文献】特開2016-204643(JP,A)
【文献】特開2008-115215(JP,A)
【文献】特開2006-182958(JP,A)
【文献】特開2009-001625(JP,A)
【文献】島津製作所Application News,https://www.an.shimadzu.co.jp/sites/an.shimadzu.co.jp/files/pim/pim_document_file/an_jp/applications/application_note/17258/an_01-00183-jp.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08L
C08J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役系導電性モノマーと、前記共役系導電性モノマーにドープするポリアニオンを主体として水性媒体中での酸化重合反応により形成される共役系導電性組成物の製造方法において、第1段目の重合開始時における前記共役系導電性モノマーの濃度と水性媒体中の溶存酸素濃度のモル比が10~110であり、かつ第1段目の重合開始時
の30分~180分経過後に、第2段目以降の共役系導電性モノマー及び重合開始剤を追加して重合反応され、
前記共役系導電性組成物が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)であり、前記ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸またはそれらの1種以上を共重合構成体として含むものであることを特徴とする共役系導電性組成物の製造方法。
【請求項2】
前記第1段目の重合開始時における水性媒体中の溶存酸素量が、水性媒体1リットル当たり3.5~20mgの範囲の量であることを特徴とする請求項1に記載の共役系導電性組成物の製造方法。
【請求項3】
前記共役系導電性組成物の液中の濃度が0.2~5質量%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の共役系導電性組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つによって製造された共役系導電性組成物を含む溶液、フィルム、又はシート成形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役系導電性組成物の製造方法に関し、優れた導電性を有する共役系導電性組成物に関する。特に前記共役系導電性組成物と樹脂成分とを混合して成る導電性樹脂組成物及び当該帯導電性樹脂組成物を用いて作製されるインク、フィルム、シートなどの成形物に関する。
さらには、水性媒体中で共役系導電性モノマーをポリアニオンの存在下にて酸化重合反応することで共役系導電性組成物を得る製造方法及び前記共役系導電性組成物の溶液もしくは分散液を製造する方法に関する。特にモノマーである3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOTの略称)から誘導されるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOTの略称)およびポリスチレンスルホン酸(PSSの略称)からなる共役系導電性組成物(PEDOT/PSSの略称)である共役系導電性組成物に関する製造方法及び共役系導電性モノマーをポリアニオンの存在下にて酸化重合反応することで共役系導電性組成物を含む樹脂組成物およびフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアニオン(ポリ酸)をドープした共役系導電性組成物(例えば、ポリチオフェン化合物)は、高い導電性と高い透明性を示し、また優れた耐熱性と安定性とを示す導電性組成物として知られており、実際に帯電防止剤、タッチパネルや液晶表示素子用電極、固体電解コンデンサの形成材料、有機エレクトロルミネッセンス(EL)のホール注入層の形成材料、電磁波シールド材、磁気シールド材等、幅広く使用されている。この代表的素材であるPEDOT/PSSについては、非特許文献1に詳しい説明がある。
【0003】
これらの共役系導電性組成物の溶液もしくは分散液は、チオフェン化合物のポリアニオンを含有する水性媒体中での酸化重合反応により製造することができることが知られている。酸化重合法では、共役系導電性組成物を構成する主鎖の共役系の成長に伴い、溶媒に対する溶解性が乏しくなるのが一般的である。そのため、共役系導電性組成物は、溶媒特に水系溶媒では不溶性分散物で得られるのが通常である。得られる共役系導電性組成物は、溶媒中での保存安定性が不十分であることが多く、経時により沈殿や凝集を生じるという欠陥がある。
【0004】
水分散体として使用されるPEDOT/PSS等は優れた導電性を有するものであるが、分散安定性改良としては分子量2,000~500,000のアニオン基含有高分子酸としてのポリスチレンスルホン酸の存在下で酸化剤を用いて、3,4-ジアルコキシチオフェンを酸化重合し、ポリ(3,4-ジアルコキシチオフェン)水溶液を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、ポリアクリル酸の存在下で、共役系導電性組成物を形成するための前駆体モノマーを酸化重合し、共役系導電性組成物のコロイド水溶液を製造する方法も知られている(例えば、特許文献2を参照)。 特許文献3には、チオフェン化合物(3,4-ジアルコキシチオフェンなど)のポリアニオン(ポリ酸)の存在下での水性媒体中の酸化重合反応によってポリチオフェン化合物からなる共役系導電性組成物の分散体を得る方法が開示されている。
【0005】
特許文献4には、ポリチオフェン化合物の製造方法において、酸化重合反応の開始時(具体的には、反応開始剤の添加時)における水性媒体(反応媒体)中の酸素濃度を、反応媒体1リットル当たりの酸素量が3mgよりも少ない量となるような低濃度とすることにより、導電性が向上したポリチオフェン化合物の溶液もしくは分散液が得られるとの開示がある。この低濃度酸素を実現するために、酸化重合反応の開始に際して、反応媒体中で窒素ガスをバブリングするなどの方法によって反応媒体中の酸素濃度を低くしているが、酸素濃度の低減操作が煩雑であるため、導電性ポリチオフェン化合物の溶液あるいは分散液の製法、特に工業的な製法としては必ずしも有利と言えない。なお、特許文献4の実施例においては、開始時のEDOT/酸素のモル比を計算すると比較例1では141(酸素濃度6.5mg/L)、比較例2では47(酸素濃度38.45mg/L)、実施例1では2107(酸素濃度0.52mg/L)、実施例2では412(酸素濃度2.66mg/L)、実施例3では11531(酸素濃度0.008mg/L)であることはすでに公知事項であり、開始時のEDOT/酸素のモル比は広範囲で使用可能である。
【0006】
特許文献5においても、製造開始時の溶媒中の酸素濃度低減処理などを施していない水、あるいは水と水相溶性の有機溶媒との混合物などの水性媒体の反応媒体を用いながらも、高い導電性を示す導電性ポリチオフェン化合物の溶液、あるいは分散液の製造を可能とする改良方法を提供することが提案されている。すなわち、酸化重合反応の開始時における水性媒体中の溶存酸素量に対するチオフェン化合物の量のモル比を120以上とするとの提案である。これによると、高い導電性を示す導電性ポリチオフェン化合物の溶液あるいは分散液の新規な製造方法、特に工業的な製造に有利に採用できるとの記載がある。
【0007】
しかし、特許文献4に開示された酸素量低減化での製造方法、および通常の空気条件下での製造方法を提起した特許文献5によるPEDOT/PSSの製造は簡便になったが、導電性と水性溶媒中でPEDOT/PSSの製造時の均一分散液の作製は困難であることが問題となることが多々見られた。特に製造時に反応液中に塊状物が多数存在し、撹拌羽根や製造容器への付着が問題であった。このために製造したPEDOT/PSSの重合度の不均一性や製造容器からの取り出し、イオン交換時のイオン交換不良、再分散時の均一性が不十分であり、得られるPEDOT/PSSの粒子サイズのバラツキ、導電性や保存時の分散液安定性に劣り、大きな問題であることが判明した。特に、大量製造時の重合に伴う粘度上昇による攪拌困難により、製造装置内に塊状物が発生して不均一なPEDOT/PSSが生じるという問題が推測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平7-090060号公報
【文献】特開平7-165892号公報
【文献】特開平7-90060号公報
【文献】特表2005-511808号公報
【文献】再表2014/171534号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】「PEDOTの材料物性とデバイス応用」奥崎秀典監修、サイエンス&テクノロジー社、2012年発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は通常の大気中での環境下で、共役系導電性組成物を製造することにより、優れた導電性と保存安定性を改良することにある。
このために、本発明者等は開始時の第一段階で、酸化重合反応の開始時における水性媒体中の溶存酸素量に対するチオフェン化合物のモル比を適切な範囲にコントロールして、重合第1段目での共役系導電性組成物を好適な素材とした。その後に重合第2段目以降に共役系導電性及び/又は重合開始剤を追加添加することで課題を解決したものである。
【0011】
本発明は、共役系導電性モノマーと、前記共役系導電性モノマーにドープするポリアニオンを主体として水性媒体中での酸化重合反応により形成される共役系導電性組成物の製造方法において、第1段目の重合開始時における前記共役系導電性モノマー濃度と水性媒体中の溶存酸素濃度のモル比が10~110であり、かつ第1段目の重合開始時の少なくとも30分経過後に、第2段目以降の共役系導電性モノマー及び又は重合開始剤を追加して重合反応されることを特徴とする共役系導電性組成物の製造方法、によって達成された。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の課題は、以下の態様により解決できる。具体的には、
【0013】
(態様1) 共役系導電性モノマーと、前記共役系導電性モノマーにドープするポリアニオンを主体として水性媒体中での酸化重合反応により形成される共役系導電性組成物の製造方法において、第1段目の重合開始時における前記共役系導電性モノマーの濃度と水性媒体中の溶存酸素濃度のモル比が10~110であり、かつ第1段目の重合開始時の30分~180分経過後に、第2段目以降の共役系導電性モノマー及び重合開始剤を追加して重合反応され、前記共役系導電性組成物が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)であり、前記ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸またはそれらの1種以上を共重合構成体として含むものであることを特徴とする共役系導電性組成物の製造方法である。
【0014】
(態様2) 前記第1段目の重合開始時における水性媒体中の溶存酸素量が、水性媒体1リットル当たり3.5~20mgの範囲の量であることを特徴とする態様1に記載の共役系導電性組成物の製造方法である。
【0018】
(態様3) 前記共役系導電性組成物の液中の濃度が0.2~5質量%であることを特徴とする態様1又は態様2に記載の共役系導電性組成物の製造方法である。
【0020】
(態様4) 態様1から態様3のいずれか1つによって製造された共役系導電性組成物を含む溶液、フィルム、又はシート成形物である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の製造方法を利用することにより、大気環境下で優れた導電性を有する共役系導電性組成物を製造することができる。
また、得られる共役系導電性組成物は、分散物である場合はその粒子径が均一であり、溶液の場合は分子量が均一であることを特徴とするものであり、前記共役系導電性組成物が優れた特性を示すものである。
さらに、本発明の製造方法を利用することにより、安価で高濃度の共役系導電性組成物の溶液あるいは分散液を製造することができる。また、得られる共役系導電性組成物は、水性溶剤中での低粘度化を達成する事も可能であり、それにより高濃度化も可能となる。
このようにして製造された共役系導電性組成物は、樹脂素材と混合することで塗布組成物を得ることができ、各種基板への塗布膜を作製して優れたフィルムやシート等の成形物を形成することができる。特に、市場で安価で有用なPEDOT/PSSの製造を可能としたものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る共役系導電性組成物およびその製造方法、その共役系導電性組成物を含む共役系導電性樹脂組成物ならびに共役系導電性樹脂皮膜の各実施の形態について説明する。
(共役系導電性組成物)
本発明の実施の形態に係る共役系導電性組成物は、共役系導電性高分子と、共役系導電性高分子にドープしたポリアニオンとの反応生成物とをから成るものである。本発明で用いられるポリアニオンをドーパントとしている共役系導電性組成物は、分散物である場合は、おおよそ2nm~500nmの粒子径を持つ微粒子から形成されるものを示す。
【0023】
(製造方法)
この実施の形態に係る共役系導電性組成物は、一例として、以下の方法によって製造することができる。
(共役系導電性高分子/ポリアニオン錯体水分散体の溶液からの製造方法)
共役系導電性高分子/ポリアニオン錯体水分散体は、共役系導電性高分子用のモノマーとドーパントとが共存した水溶液または水分散体の状態に、酸化剤の存在下で重合を行う。以下に使用される素材と、合成時の本発明の条件等を記載する。
【0024】
(共役系導電性組成物)
共役系導電性組成物は、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば、何らの限定もなく用いることができる。例えばポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、およびこれらの内の2以上の共重合体を好適に挙げることができる。重合の容易性、空気中における安定性の観点では、特に、ポリピロール類、ポリチオフェン類あるいはポリアニリン類を好適に用いることができる。π共役系導電性組成物は、無置換のままでも、十分に高い導電性およびバインダーへの相溶性を示すが、導電性、バインダーへの分散性若しくは溶解性をより高めるためには、アルキル基、アルケニル基、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、シアノ基などの官能基が導入されても良い。
【0025】
上記のπ共役系導電性組成物の好適な例としては、ポリピロール、ポリ(N-メチルピロール)、ポリ(3-メチルピロール)、ポリ(3-エチルピロール)、ポリ(3-n-プロピルピロール)、ポリ(3-ブチルピロール)、ポリ(3-オクチルピロール)、ポリ(3-デシルピロール)、ポリ(3-ドデシルピロール)、ポリ(3,4-ジメチルピロール)、ポリ(3,4-ジブチルピロール)、ポリ(3-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルピロール)、ポリ(3-ヒドロキシピロール)、ポリ(3-メトキシピロール)、ポリ(3-エトキシピロール)、ポリ(3-ブトキシピロール)、ポリ(3-ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール)、ポリチオフェン、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3-エチルチオフェン)、ポリ(3-プロピルチオフェン)、ポリ(3-ブチルチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリ(3-デシルチオフェン)、ポリ(3-ドデシルチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルチオフェン)、ポリ(3-ブロモチオフェン)、ポリ(3-クロロチオフェン)、ポリ(3-ヨードチオフェン)、ポリ(3-シアノチオフェン)、ポリ(3-フェニルチオフェン)、ポリ(3,4-ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4-ジブチルチオフェン)、ポリ(3-ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3-メトキシチオフェン)、ポリ(3-エトキシチオフェン)、ポリ(3-ブトキシチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3-デシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-メトキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-エトキシチオフェン)、ポリ(3-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2-メチルアニリン)、ポリ(3-イソブチルアニリン)、ポリ(2-アニリンスルホン酸)、ポリ(3-アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
【0026】
上記のπ共役系導電性組成物の例において、抵抗値あるいは反応性を考慮すると、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリ(N-メチルピロール)、ポリ(3-メトキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)から選択される1種若しくは2種以上からなる共重合体を、特に好適に用いることができる。高導電性および高耐熱性の面では、さらに、ポリピロール、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)を好適に用いることができる。
(ポリアニオン)
ポリアニオンは、アニオン性化合物であれば、特に限定されない。アニオン性化合物とは、分子中に、(a)共役系導電性組成物への化学酸化ドーピングが起こりうるアニオン基を有する化合物である。アニオン基としては、製造の容易さおよび高い安定性の観点から、硫酸エステル基、リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシル基、スルホン基、などが好ましい。これらのアニオン基の内、(a)共役系導電性組成物へのドープ効果に優れる理由から、スルホン基、硫酸エステル基、カルボキシル基がより好ましい。
【0027】
ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸)を好適に挙げることができる。これらの中でも好ましくはポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸である。特には、ポリスチレンスルホン酸である。
本発明で使用されるポリアニオンの重合度は、特に限定されるものではないが、通常、モ3000~500000が好ましく、より好ましくは10000~200000であり、特に好ましくは20000~150000である。
なおアニオン性化合物がアニオン塩である場合には、アニオン酸に変質させるのが好ましく、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、透析法、限外ろ過法などを挙げることができる。
【0028】
本発明の製造において使用されるポリアニオンの含有量は、好ましくは共役系導電性組成物1モルに対して0.1~10モルの範囲、より好ましくは0.1~7モルの範囲である。これらの範囲は、所望とする共役系導電性組成物の特性に応じて調整すればよく、導電性を高めるにはポリアニオンを少なくすることで達成できる。なお、本発明においては、製造後に、更にポリアニオンを追加して添加することも好ましく、その場合にはポリアニオンは製造時に使用された素材以外も好ましく使用される。
共役系導電性組成物とポリアニオンとの組み合わせとしては、化学的安定性、導電性、保存安定性、入手容易性などの観点から、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)と、ポリスチレンスルホン酸との組み合わせであるPEDOT/PSSが好ましい。
【0029】
(重合開始剤)
本発明の共役系導電性モノマーの酸化重合反応に際しては、反応媒体中に酸化重合反応の開始剤を存在させる。使用するのに好ましい開始剤の例としては、FeCl3、有機酸の三価鉄塩、ペルオキソ二硫酸ナトリウム(過硫酸ナトリウム)、過酸化水素、クロム酸カリウム、過マンガン酸カリウム、を挙げることができる。その使用量は、製造において支障ない範囲であれば限定されないが、製造品の不純物として残留するために出来るだけ少量であることが好ましい。
【0030】
(反応溶剤)
本発明の共役系導電性モノマーの溶液もしくは分散液の製造方法において用いられる反応溶媒としては水が好ましいが、水と水相溶性の有機溶媒との混合溶媒も好ましく利用できる。水相溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどの炭素原子数1~5の低級アルコール、エチレングリコールやグリセリンなどのグリコール、アセトン、メチルエチルケトン、あるいはメチルイソブチルケトンなどのケトンなどを用いることも可能である。これらの水相溶性の有機溶媒の中でも、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールやグリセリン、アセトンが好ましく、特にはメタノール、エタノール、イソプロパノールが好ましい。
【0031】
さらには、導電性付与に有効なN-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホニウムトリアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル等に代表される極性溶媒、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、オリゴグリセリンなどの多価アルコール類、エチレングリコールモノ(又はジ)アルキルエーテル、プロピレングリコールモノ(又はジ)アルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(又はジ)アルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノ(又はジ)アルキルエーテル等に代表されるエーテル類、更には3-メチル-2-オキサゾリジノン等に代表される複素環化合物などを好適に例示できる。
【0032】
本発明の反応媒体中の共役系導電性モノマーの酸化重合反応の反応温度や反応圧力については特別な限定はない。ただし、好ましく採用される反応温度は、0~40℃の範囲の温度であり、更に2~35℃が好ましく、特には5~30℃である。また、反応圧力は通常、大気圧が利用されるが、加圧下あるいは減圧下で反応を行うこともできる。反応時に発生しうる反応熱は、反応液を直接あるいは外部からの何らかの冷却装置を利用して冷却し、最適な反応温度を維持することが好ましい。
【0033】
(重合反応)
本発明の導共役系導電性モノマーの溶液もしくは分散液の製造方法の開始に際しては、大気中でもよく、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガス等)あるいは酸素ガスなどの気流や反応溶液中へのバブリングなどを利用してもよく、反応媒体中の本発明の共役系導電性モノマーと溶存酸素量のモル比が製造開始時に5~110であればよい。特に重合開始時においては、大気圧化で実施する事が作業上で優位であり、かつ製造コストも安価であり推奨される。
【0034】
本発明の共役系導電性モノマーの溶液もしくは分散液の製造方法の第1段目の重合開始に際しては、反応媒体に溶存している酸素量を予め測定することにより溶存酸素濃度(DO:mg/L)を確認した上で、その溶存酸素濃度を考慮して、第1段目の重合開始時の反応に供する共役系導電性モノマーの量を決定することが好ましい。
ここで、第1段目の重合開始時の反応媒体に溶存している酸素濃度は、一般的な溶存酸素系により測定することができる。なお、反応媒体中の溶存酸素の測定は、反応原料である共役系導電性モノマーおよび反応開始剤を加える直前の反応媒体について行う。本発明では、通常の環境下で製造することが好ましく、大気中での一般的溶存酸素濃度中で実施される。特に水媒体に溶存している酸素濃度は、水温1~40℃においては通常6mg/L~15mg/Lであり、この範囲での製造が好ましい(参照 :水質汚濁研究 第6巻第4号237~244頁、1983年 純水に対する溶存酸素の測定、或いはフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 溶存酸素量)。
【0035】
すなわち、本発明によれば、酸化重合反応の開始時における水性媒体中の溶存酸素量に対する共役系導電性モノマーの量のモル比を10~110に調整して重合反応を行う。その後に第1段目の重合開始時から少なくとも20分経過後に、更に共役系導電性モノマー及び又はポリアニオン及び/又は重合開始剤を追加して第2段目以降の重合開始時の製造されることを特徴とする共役系導電性組成物の製造方法である。これにより、高い導電性を示す共役系導電性組成物を得ることができ、その最終物も液安定性に優れたものとなる。その結果、高濃度の共役系導電性組成物を得ることができる。
なお。本発明においては追加される共役系導電性モノマー及び又はポリアニオン及び/又は重合開始剤は1回でもよく、数回に分けて追加されも良い。
【0036】
本発明では、第1段目の重合開始時から20分経過後以降に、更に共役系導電性モノマー及び/又はポリアニオン及び/又は重合開始剤を追加することが特徴としており、これらの共役系導電性モノマー及び/又はポリアニオン及び/又は重合開始剤は重合開始時に使用した素材と同じでもよく、また異なっていても良い。これらの素材を追加する時間は、第1段目の重合開始をした後に一定の重合が進行した後の20分経過以後に実施される。更には重合開始時から30分後から200分後が好ましい。より好ましくは重合開始時から30分後から180分後であり、更に好ましくは重合開始時から30分後か180分後である。これらの追加される素材は、その添加順序は特に限定されないが、酸化重合に用いる重合開始剤を追加する場合には、好ましくは追加する共役系導電性モノマー及び又はポリアニオンの添加直後が好ましい。この手法により、共役系導電性組成物の高導電性で溶液安定に富む均一な高濃度溶液を得ることが可能となった。
【0037】
その他にも、重合反応を阻害しない範囲で種々の添加物を反応液に添加してもよい。例えば、樹脂からなるバインダー、界面活性剤、有機酸及びその塩、無機酸或いはその塩、有機微粒子、無機微粒子、滑り剤、増粘剤、帯電防止剤等の種々の素材を挙げることが出来る。
共役系導電性モノマーと、前記共役系導電性モノマーにドープするポリアニオンを主体として水性媒体中での重合反応により形成される共役系導電性組成物の製造方法において得られる共役系導電性組成物は、その濃度は特に限定されるものではないが、好ましくは0.05~6質量%であり、更には0.1~4質量%が好ましく、特には0.3~3.5質量%である。
【0038】
本発明で得られる共役系導電性組成物は、その利用において特に限定されるものではなく、共役系導電性組成物単独でもよく、他の併用素材を利用しても良い。それらの併用素材としては、有機溶剤、共役系導電性組成物溶液に有機溶剤、バインダー、界面活性剤、有機酸及びその塩、無機酸或いはその塩、前述の導電性向上剤、有機微粒子、無機微粒子、滑り剤、増粘剤、帯電防止剤等の種々の素材を挙げることが出来る。特に製造後に、更にポリアニオンを追加して添加することも好ましく、その場合にはポリアニオンは製造時に使用された素材以外も好ましく使用される。また、製造時に用いうる水混和性有機溶剤も好ましい。
【0039】
本発明の製造方法において得られた共役系導電性組成物は、組成部中に存在する無機塩類を除去することで、優れた導電性を得ることが出来る。すなわち得られる共役系導電性組成物は、重合直後、水中または水溶液中に分散した状態で得られ、酸化剤としての過硫酸塩や触媒として用いた硫酸鉄塩やその分解物などを含んでいる。そこで、その不純物を含んでいる共役系導電性組成物の水溶液または水分散液を直接にカチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂を用いて、金属成分や無機イオンなどを除去するか、場合により高速ホモミキサー、超音波ホモジナイザーや遊星ボールミルなどの分散機にかけて分散させた後、カカチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂を用いて、金属成分や無機イオンなどを除去することが好ましい。
【0040】
この時に分散される共役系導電性組成物の粒径としては、2~300μm以下が好ましく、更には2~200μm以下が好ましく、特に2~100μm以下が好ましい。使用するカチオン交換樹脂やアニオン交換樹脂は特に限定されず、市販品として容易に入手できる。好ましいカチオン交換樹脂はアルキルアンモニウムカチオン基が好ましく、アニオン交換樹脂はスルホン酸基が好ましい。
ここで、カチオン交換樹脂やアニオン交換樹脂により重合反応物の分解生成物である金属イオンやアニオンイオンは全て除去することが好ましいが、共役系導電性組成物溶液中に少量残存しても良く、例えば溶液中に2000ppm以下、好ましくは500ppm以下、特には100ppm以下が好ましい。本発明においては、得られた共役系導電性組成物は種々の用途に利用でき、特に限定されないが、共役系導電性組成物を含む溶液、フィルム、乃至はシートなどの成形物が挙げられる。その際には、一般的に他の併用素材が使用されることが一般的であり、以下に簡単に記述するが、それらに限定されるものではない。
また、本発明においては得られる共役系導電性組成物は酸性でありPH2近辺であるが、アルカリ化合物で中和することにより中性あるいはアルカリ性にして利用することも問題なく、導電性への大きな支障とならない。中和に使用されるアルカリ化合物は特に限定されないが、水酸化アルカリ金属類、水酸化アンモニウム、アミン類、などであり、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、リチウム、N,N-ジメチルエタノールアミン、などを挙げることが出来る。特には、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、N,N-ジメチルエタノールアミンである。
【0041】
以下に好ましい添加併用素材について記述する。
(樹脂(バインダー))
導電性組成物はその使用において、導電性塗膜の耐傷性や硬度を高くし、かつ塗膜と基材との密着性を向上させる観点から、好適にはバインダーの機能を持つ樹脂(バインダー、あるいはバインダー樹脂とも称する)を利用することが好ましい。好ましいバインダー樹脂としては、例えばゼラチン、ゼラチン誘導体、カゼイン、寒天、アルギン酸ソーダ、でんぷん、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド等のポリアミド、ポリフッ化ビニリデン,ポリフッ化ビニル,ポリビニルアルコール,ポリビニルエーテル,ポリビニルブチラール,ポリ酢酸ビニル,ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、アラミド樹脂、ポリウレア、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテル、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂; およびこれらの共重合体や混合物などを好適に例示できる。
【0042】
上記のバインダー樹脂は、水溶性或いは水分散物でもよく、場合により有機溶剤に溶解されていても良い。更に、アニオン基(例えば、スルホン酸基やカルボン酸基、リン酸基など)及びそれらの塩の官能基が付与されて水溶液化されていても良く、あるいは乳化の形態で水に分散されていても良い。バインダー樹脂の中でも、溶剤に可能な樹脂若しくは液状であって容易に導電性組成物と混合可能なものとして、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリイミドシリコーン、シリコーン樹脂のいずれか1種以上を用いるのが好ましい。アクリル樹脂は、高硬度で透明性に優れるため、光学フィルタの用途において特に適している。
【0043】
本発明では、塗料化して塗布される場合はその製造工程での取り扱い性を向上させるために、マット剤や滑り剤が好ましく併用される。
使用されるマット剤としては無機化合物、有機化合物から選択され、例えば硫酸バリウム、マンガンコロイド、二酸化チタン、硫酸ストンチュウムバリウム、二酸化ケイ素、などの無機物の微粉末があるが、さらに例えば湿式法やケイ酸のゲル化よりえられる合成シリカ等の二酸化ケイ素やチタンスラングと硫酸により生成する二酸化チタン(ルチル型やアナタース型)等が挙げられる。また、粒径の比較的大きい、例えば20μm以上の無機物から粉砕した後、分級(振動濾過、風力分級など)することによっても得られる。
【0044】
また、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチレンカーボネート、澱粉等の有機高分子化合物の微粒子があげられる。懸濁重合法で合成した高分子化合物、スプレードライ法あるいは分散法等により球型にした高分子化合物、または無機化合物を用いることができる。また重合しうる各種の単量体化合物の1種又は2種以上の重合体である高分子化合物を種々の手段によって粒子としたものであってもよい。これらのモノマー化合物のうち、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、ビニルエステル類、スチレン類、オレフィン類が好ましく用いられる。これらのマット荊は、好ましくは0.1~5μmの平均粒径が好ましく、更に好ましくは平均粒径0.3~4μmである。マット剤の含有量は、0.1~30mg/m2が好ましく、より好ましくは0.2~20mg/m2である。なお、上記の導電性高分子を含有する透明導電性塗膜には、導電性能を向上させるという観点からジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどが含まれていてもよい。また、分子内にアミド結合を有する室温では液体の水溶性化合物が含まれていてもよい。
【0045】
次に、本発明にかかる透明導電性塗膜には、得られる塗膜の強度を向上させる目的で、アルコキシシラン化合物を添加してもよい。これらのシラン化合物は、加水分解され、その後の縮合反応された反応生成物の形態で塗膜中に存在する。これらのシラン化合物としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトライソブトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのアルコキシ基以外の反応性官能基を有するトリアルコキシシランがあげられ、特にエポキシ基を有する3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが好ましい。
【0046】
このようなアルコキシシラン化合物の添加量は、導電性高分子固形分100重量部に対して、20~500重量部の範囲が好ましい。該添加量が20重量部より少ない場合には塗膜強度の改善効果が小さくなり、一方500重量部を超える場合には表面抵抗率が増大する傾向にある。このようなシラン化合物の加水分解/縮合を効率よく進行させるためには触媒を併用することが好ましい。触媒としては酸性触媒または塩基性触媒のいずれをも用いることができる。酸性触媒としては、酢酸、塩酸、硝酸等の無機酸、酢酸、クエン酸、プロピオン酸、しゅう酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸が好適である。一方塩基性触媒としてはアンモニア、トリエチルアミン、トリプロピルアミン等の有機アミン化合物、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物などが好適である。更に本発明においては、導電性塗膜の膜強度や耐溶剤性を向上するために各種の反応性架橋剤を使用してもよい。例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、ビニル系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤などが挙げられる。
【0047】
さらに必要に応じて、バインダーを溶解させる目的、もしくは基材フィルムへの濡れ性を改善する目的、固形分濃度を調整する目的などで、水と相溶性のある適当な溶媒を添加することができる。例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなど)、アミド類(ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド)などが好ましく用いられる。 さらに、上記コーティング組成物には、基材フィルムに対する濡れ性を向上させる目的で、少量の界面活性剤を加えてもよい。好ましい界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステルなど)、およびフッ素系界面活性剤(例えばフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、パーフルオロアルキル4級アンモニウム塩、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなど)があげられる。
【0048】
次に本発明で利用されるフィルムやシート及び成型体に用いられる基材は特に制限されないが、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコーン、フッ化ビニリデン、塩化ビニリデンならびにこれらのブレンドおよび共重合体、ならびにフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ABS樹脂などからなる基板が好ましい。なかでも、ポリエステルフィルム、特に二軸配向したポリエステルフィルムが、寸法安定性、機械的性質、耐熱性、電気的性質などに優れているので好ましく、さらに好ましくはポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン-2,6-ナフタレートが、高ヤング率である等の機械的特性に優れ、耐熱寸法安定性がよい等の熱的特性等に優れているのでより好ましい。またポリエステルとしてはポリメチルメタクリレートが推奨される。なお、基材フィルムの厚みも特に制限されないが、フィルムやシートの場合は500μm以下が好ましい。500μmは成型体で利用されることが好ましい。
【0049】
以上に説明した本発明で好ましく利用される共役系導電性組成物を用いたフィルム、シートや成形物は、さらにその全光線透過率が70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは83%以上であると同時に透明導電性塗膜側の表面抵抗率が10~1×1*E11Ω/□、好ましくは10~1*E9Ω/□である。全光線透過率が60%未満の場合には透明性が不充分となり、例えばタッチパネルを作成しても暗くて表示画面が見えにくくなるので好ましくない。
【0050】
透明導電性塗膜層の塗布方法は、それ自体公知の方法を採用できる。例えばリップダイレクト法、コンマコーター法、スリットリバース法、ダイコーター法、グラビアロールコーター法、ブレードコーター法、スプレーコーター法、エアーナイフコート法、ディップコート法、バーコーター法などが好ましくあげられる。加熱乾燥条件としては80~160℃で10~600秒間、特に100~150℃で20~240秒間が好ましい。本発明で利用できる導電性フィルムは、上述のとおり基材フィルムの少なくとも片面にポリチオフェン系の透明導電性塗膜層が積層されているが、透明導電性塗膜層が形成される側と反対の面には必要に応じてアンカーコート層、ハードコート層などの塗膜を設けることもできる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例として具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中における各評価は下記の方法にしたがった。
(1)反応媒体の溶存酸素濃度
溶存酸素計(THI9146N,HANNA instruments)を用いて測定した。
【0052】
(2)重合直後の外観
得られたPEDOT/PSS溶液の外観を目視で評価した。
A:塊状物はほとんど存在していなかった。
B:数mm塊状物が少量認められた。
C:数mmの塊状物がかなり認められた。
D:1cm前後の大きい塊状物が認められた。
【0053】
(3)最終分散液の濾過性
ナイロンメッシュ(100メッシュと200メッシュを重ね合わせ)を用いて、その濾過性を評価した。
A:濾過に支障は認められなかった。
B:少し時間を必要としたが、濾過は問題なかった。
C:ナイロンメッシュに目詰まりが認められ、濾過に支障が認められた。
D:ナイロンメッシュに目詰まりが大量に認められ、濾過が困難であった。
【0054】
(4)PEDOT/PSSの水分散液の濃度(固形成分濃度)
赤外水分計(MOC-120H,(株)島津製作所製)にて測定した。なお、反応に用いたPEDOT/PSSの水分散液は、この測定値に基づき、固形成分濃度が約1.5質量%となるように純水で希釈して得た水分散液である。
【0055】
(5)pH
pHメーター((株)堀場製作所製)を用いて測定した。
【0056】
(6)綿棒擦り
試料を綿棒で10往復擦り、その試料の表面状態を目視で観察して評価した。なお、耐溶剤は綿棒に評価する溶液を付着して、同様に評価した。
【0057】
(7)表面抵抗値
作製したPEDOT/PSS溶液に、純水を加えて1.0質量%とした溶液10gに、更に1質量%のトリトンX-100水溶液を100mg、およびエチレングリコール0.5gを加えて導電性評価溶液を作製した。この溶液を、親水性下塗りしたPET基板(膜厚100μm)に、0.5mg/m2となるようにバーコーターで塗布した。その後、110℃で10分間乾燥して導電性評価フィルムを得た。得られたPEDOT/PSS膜の表面抵抗値(Ω)は、三菱化学社製Lorester MCP-T600を用いて、JIS K7194に準拠してシート抵抗値を測定した。測定は任意の箇所を5回測定し、それらの平均値とした。
【0058】
(比較例1)
20℃のイオン交換水754g中に、硫酸第一鉄・水和物3gを加えて撹拌し、更にポリ(4-スチレンスルホン酸)(分子量約7万)の18質量%水溶液140gを加えて、よく攪拌して水溶液を作製した。該混合液の酸素濃度は、8.1mg/L(0.253mM/L)であった。この混合液に、3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)7.5g(52.7mM/L)を滴下し、さらに過硫酸ナトリウムの14.5質量%水溶液95gを加えて混合溶液を調製した。混合溶液を20℃にて10時間撹拌して酸化重合反応を実施し、固形分(PEDOT/PSS)の濃度が約3.27質量%の反応溶液を得た。次いで、反応溶液を純水で希釈して固形分濃度が1.5質量%の希釈液を得た後、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とをそれぞれ12質量%加えて12時間撹拌した後、ナイロンメッシュ(100メッシュと200メッシュを重ね合わせ)で濾過した。濾過液は、再度高圧ホモジナイザーで90MPa、10回の分散処理を実施してPEDOT/PSS水分散液を得た。得られた溶液のpHは2.3であった。なお、反応開始時の3,4-エチレンジオキシチオフェン量と酸素量とのモル比([EDOT]/[O2])は208であった。得られたPEDOT/PSS溶液を用いて、その特性を評価した。得られた反応液中には、粗大な塊状物が多量見られ評価Dであった、また濾過性もランクDであり、保存安定性もランクDであり、問題のある素材であった。導電性も、1050Ωであり不十分な導電性材料であった。一括で共役系導電性モノマーとポリアニオンを酸化重合する事では、優れた特性の導電性材料を得ることは困難であることが確認された。
【0059】
(比較例2)
比較例1において、純水754gを760gに変更し、3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)7.5gを2.5gに変更する以外は、比較例1と全く同様にして、比較例2を実施した。 該混合液の酸素濃度は、8.5mg/L(0.266mM/L)であった。なお、反応開始時の3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)量と酸素量とのモル比([EDOT]/[O2])は66であった。得られたPEDOT/PSS溶液を用いて、その特性を評価した。得られた反応液中には、微小な塊状物が多量見られ評価Cであった、また濾過性もランクCであり、保存安定性もランクCであり、問題のある素材であった。導電性も、1800Ωであり不十分な導電性材料であった。本比較例では、反応開始時の3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)量と酸素量とのモル比([EDOT]/[O2])は66であり、本発明の範囲であるが一括での重合反応であるために、優れた特性の導電性材料を得ることは困難であるものと推測される。
【0060】
(比較例3)
比較例1において、温度20℃を30℃に変更し、3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)EDOT7.5gを6.8gに変更する以外は、比較例1と全く同様にして、比較例3を実施した。 該混合液の酸素濃度は、14.2mg/L(0.444mM/L)であった。なお、反応開始時の3,4-エチレンジオキシチオフェン量と酸素量とのモル比([EDOT]/[O2])は108であった。得られたPEDOT/PSS溶液を用いて、その特性を評価した。得られた反応液中には、微小な塊状物が多量見られ評価Cであった、また濾過性もランクCであり、保存安定性もランクCであり、問題のある素材であった。導電性も、2100Ωであり不十分な導電性材料であった。本比較例でも、反応開始時の3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)量と酸素量とのモル比([EDOT]/[O2])は108であり、本発明の範囲であるが一括での重合反応であるために、優れた特性の導電性材料を得ることは困難であるものと推測される。
【0061】
(実施例1)
20℃の純水754g中に硫酸第一鉄・水和物3gを加えてよく攪拌し、更にポリ(4-スチレンスルホン酸)(分子量約7万)の18質量%水溶液140gを加えてよく攪拌混合して水溶液を作製した。該混合液の酸素濃度は、8.4mg/L(0.263mM/L)であった。この混合液に3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)2.5g(0.0189M/L)を滴下し、さらに14.5質量%の過硫酸ナトリウム水溶液30gを加え、これに全質量が1000mlとなるように純水を加えて混合溶液を調製した。ここで、反応媒体中の3,4-エチレンジオキシチオフェン量と酸素量とのモル比([EDOT]/[O2])は72であった。混合溶液を20℃にて撹拌して、第一段階目の酸化重合反応を実施した。60分後に、この重合溶液に更に3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)5gと14.5質量%の過硫酸ナトリウム65gを加え、9時間攪拌し第二段階目の重合反応を実施し、固形分(PEDOT/PSS)の濃度が約3.27質量%の反応溶液を得た。次いで、反応溶液を純水で希釈して固形分濃度が1.5質量%の希釈液を得た後、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とをそれぞれ12質量%加えた後、さらに12時間撹拌した後、ナイロンメッシュ(100メッシュと200メッシュを重ね合わせ)で濾過した。濾過液は、再度高圧ホモジナイザーで90MPa、10回の分散処理を実施してPEDOT/PSS水分散液を得た。溶液のPHは2.3であった。得られたPEDOT/PSS溶液を用いて、その特性を評価した。得られた反応液中には塊状物は見られず評価ランクAであった、また濾過性もランクAであり、保存安定性もランクAであり、問題のない素材であった。導電性も、310Ωであり優れた導電性材料であった。以上の結果から、比較例1の3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)一括添加に対して、本発明の製造方法によって作成された共役系導電性組成物は、比較例1に示された従来の製造方法よりも優れていることが分かる。
【0062】
(実施例2)
実施例1において、第一段回目の3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)2.5gを3.5gに変更し、第二段階目の3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)を4.0gに変更する以外は、実施例1と全く同様にして実施した。該混合液の酸素濃度は、8.2mg/L(0.256mM/L)であった。なお、反応開始時の3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)量と酸素量とのモル比([EDOT]/[O2])は102であった。
得られたPEDOT/PSS溶液を用いて、その特性を評価した。得られた反応液中には微小な塊状物が少量見られ評価ランクAであった、また濾過性はランクAであり、保存安定性もランクAであり、問題のない素材であった。導電性も、290Ωであり優れた導電性材料であった。
【0063】
(実施例3)
実施例1において、 混合溶液を20℃にて60分撹拌を20分撹拌に変更する以外は、実施例1とまったく同様にして本発明のPEDOT/PSS溶液を作製した。重合開始時の酸素濃度は、8.4mg/L(0.263mM/L)であり、3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)量と酸素量とのモル比([EDOT]/[O2])は72であった。得られたPEDOT/PSS溶液を用いて、その特性を評価した。得られた反応液中には塊状物は少し見られ、また濾過性も共にランクBであったが、保存安定性はランクAであり、問題のない素材であった。導電性も、380Ωであり優れた導電性材料であった。
【0064】
(実施例4)
実施例1において、温度を20℃から10℃に変更する以外は、実施例1と全く同様にして、本発明のPEDOT/PSS溶液を作製した。なお、重合開始時の酸素濃度は、10.8mg/L(0.338mM/L)であり、反応媒体中の3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)量と酸素量とのモル比([EDOT]/[O2])は52であった。得られたPEDOT/PSS溶液を用いて、その特性を評価した。得られた反応液中には塊状物は見られず評価ランクAであった、また濾過性もランクAであり、保存安定性もランクAであり、問題のない素材であった。導電性も、330Ωであり優れた導電性材料であった。
【0065】
(実施例5)
実施例1において、温度を20℃から30℃に変更する以外は、実施例1と全く同様にして、本発明のPEDOT/PSS溶液を作製した。なお、重合開始時の酸素濃度は、7.4mg/L(0.231mM/L)であり、反応媒体中の3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)量と酸素量とのモル比([EDOT]/[O2])は76であった。得られたPEDOT/PSS溶液を用いて、その特性を評価した。得られた反応液中には塊状物は見られず評価ランクAであった、また濾過性もランクAであり、保存安定性もランクAであり、問題のない素材であった。導電性も、350Ωであり優れた導電性材料であった。
【0066】
(実施例6)
実施例1において、温度を20℃から2℃に変更する以外は、実施例1と全く同様にして、本発明のPEDOT/PSS溶液を作製した。なお、重合開始時の酸素濃度は、14.3mg/L(0.447mM/L)であり、反応媒体中の3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)量と酸素量とのモル比([EDOT]/[O2])は39であった。得られたPEDOT/PSS溶液を用いて、その特性を評価した。得られた反応液中には塊状物は見られず評価ランクAであった、また濾過性もランクAであり、保存安定性もランクAであり、問題のない素材であった。導電性も、290Ωであり優れた導電性材料であった。
【0067】
(実施例7)
実施例1において、初期の第一段階目の3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)2.5g(0.263M/L)を3.0g(0.0211M/L)に、さらに追加の第二段階目の3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)5gを7.0gに変更する以外は、実施例1と全く本発明のPEDOT/PSS溶液を作製した。なお重合開始時において、酸素濃度は8.3mg/L(0.259mM/L)であり、3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)量と酸素量とのモル比([EDOT]/[O2])は81であった。得られたPEDOT/PSS溶液を用いて、その特性を評価した。得られた反応液中には塊状物は見られず評価ランクAであった、また濾過性もランクAであり、保存安定性もランクAであり、問題のない素材であった。導電性も、330Ωであり優れた導電性材料であった。
【0068】
(比較例4)
実施例1において、初期の第一段階目の3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)2.5g(0.263M/L)を5.0g(0.0211M/L)に、さらに追加の第二段階目の3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)5gを2.5gに変更する以外は、実施例1と全く本発明のPEDOT/PSS溶液を作製した。なお重合開始時において、酸素濃度は8.0mg/L(0.250mM/L)であり、3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)量と酸素量とのモル比([EDOT]/[O2])は151であった。得られたPEDOT/PSS溶液を用いて、その特性を評価した。得られた重合直後の外観は、数mmの塊状物がかなり認められてランクCであった。また濾過性もナイロンメッシュに目詰まりが認められ、濾過に支障が認められてランクCであり、保存安定性も粘度の上昇が相当認められランクCであり、問題のある素材であった。導電性も、860Ωであり導電性材料としては劣るものであった。
【0069】
(比較例5)
実施例1において、第二段階目の3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)の添加を5分後にする以外は、実施例1と全く本発明のPEDOT/PSS溶液を作製した。なお重合開始時において、酸素濃度は8.2mg/L(0.256mM/L)であり、3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)量と酸素量とのモル比([EDOT]/[O2])は74であった。得られたPEDOT/PSS溶液を用いて、その特性を評価した。得られた重合直後の外観は、1cm前後の大きい塊状物が認められてランクDであった。また濾過性もナイロンメッシュに目詰まりが大量に認められ、ランクDであり、保存安定性も粘度の大幅な上昇が認められランクDであり、問題のある素材であった。導電性も、1360Ωであり導電性材料としては劣るものであった。
【0070】
(実施例8)
20℃の純水756g中に硫酸第一鉄・水和物3gを加えてよく攪拌し、更にポリ(4-スチレンスルホン酸)(分子量約7万)の18質量%水溶液140gを加えてよく攪拌混合して水溶液を作製した。該混合液の酸素濃度は、8.5mg/L(0.27mM/L)であった。この混合液に3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)1.0g(0.0076mM/L)を滴下し、さらに14.5質量%の過硫酸ナトリウム水溶液30gを加え混合溶液を調製した。ここで、反応媒体中の3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)量と酸素量とのモル比([EDOT]/[O2])は29であった。混合溶液を20℃にて撹拌して、第1段階目の酸化重合反応を実施した。60分後に、この重合溶液に更に3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)3gと14.5質量%の過硫酸ナトリウム35gを加え、120分間攪拌し第2段階目の重合反応を実施した。更に重合開始180分後に3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)3.5gと14.5質量%の過硫酸ナトリウム30gを加え、6分間攪拌し第3段階目の重合反応を実施し、固形分(PEDOT/PSS)の濃度が約3.27質量%の重合反応溶液を得た。次いで、反応溶液を純水で希釈して固形分濃度が1.5質量%の希釈液を得た後、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とをそれぞれ12質量%加えた後、さらに12時間撹拌した後、ナイロンメッシュ(100メッシュと200メッシュを重ね合わせ)で濾過した。濾過液は、再度高圧ホモジナイザーで90MPa、10回の分散処理を実施してPEDOT/PSS水分散液を得た。得られたPEDOT/PSS溶液を用いて、その特性を評価した。得られた反応液中には塊状物は見られず評価ランクAであった、また濾過性もランクAであり、保存安定性もランクAであり、問題のない素材であった。導電性も、210Ωであり優れた導電性材料であった。以上の結果から、本発明の製造方法によって作成された共役系導電性組成物は、従来の製造方法よりも優れていることが分かる。
【0071】
(実施例9)
実施例4で得られた本発明の共役系導電性組成物を有する溶液(1.5質量%)を、1N水酸化ナトリウムで中和してPH7にした中和液を作製した。この溶液を用いてその導電性を評価したところ、300Ωであり優れた導電性を得ることが出来た。本発明の共役系導電性組成物がPHの影響を受けることがない優れた組成物であることが確認できた。
【0072】
(実施例10)
実施例4で得られた本発明の共役系導電性組成物を有する溶液(1.5質量%)を、1N水酸化ナトリウムで中和してPH7にした中和液を作製した。この溶液にバインダーとして第一工業薬品(株)製SF210、三洋化成(株)製R-967を、また架橋剤として日清紡ケミカル(株)製SV-02、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、トリトンX-100、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを添加して共役系導電性組成物を有する塗布液を作製した。共役系導電性組成物を有する溶液(1.5質量%)を、1N水酸化ナトリウムで中和してPH7にした中和液を作製した。これらの固形分含有量は、共役系導電性組成物/SF210/R-967/SV-02/トリトンX-100/ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの比率として、1/0.5/1/0.5/0.01/0.01であった。また塗布液中のエチレングリコール、ジメチルスルホキシドの含有量はそれぞれ2.5質量%であった。次に。この塗布液を用いて、基板として100μmPET(東洋紡績(株)コスモシャイン4000を用いて易接着側に、本発明の共役系導電性組成物が0.2g/m2となるように塗布し、温風乾燥器を用いて110℃で5分間乾燥して均一面状の導電性フィルムを得た。得られたフィルムは均一な面状であり、導電性は330Ωであり、ドライ及び水での綿棒擦りでも傷のない優れたフィルムであった。またエタノール、イソプロパノール、アセトン、MEK、トルエン、酢酸エチルの綿棒擦りでも損傷のない優れた膜質であった。
以上から、本発明の共役系導電性組成物は優れたフィルムを作製できることを確認した。
【0073】
(実施例11)
実施例10において、基板として100μmPET(東洋紡績(株)コスモシャイン4000の代わりに5mmPMMA基板に変更し、その表面を紫外線照射(254nm)で20分、25℃で表面処理する以外は、実施例10と全く同様にして、PMMA基板に本発明の共役系導電性組成物塗布膜からなる透明プラスチックシートを作製した。その特性は実施例10で得たフィルムと同様に優れたものであった。以上から、本発明の共役系導電性組成物は優れたフィルムを作製出できことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本願発明の共役系導電性組成物の製造方法により、安価に製造できて高導電性で保存安定性も優れた高導電性素材を提供できる。