(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】飼料搬送装置
(51)【国際特許分類】
A01K 61/80 20170101AFI20240729BHJP
【FI】
A01K61/80
(21)【出願番号】P 2020126047
(22)【出願日】2020-07-27
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】308030570
【氏名又は名称】株式会社エム・アイ・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】小田 要
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-103966(JP,A)
【文献】特開2016-000021(JP,A)
【文献】特開昭51-057597(JP,A)
【文献】登録実用新案第3190942(JP,U)
【文献】特開2017-077189(JP,A)
【文献】米国特許第08336492(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の船倉に設置可能な飼料搬送装置であって、
投入される飼料を回転移動させる回転槽と、
前記回転槽内部で回転する回転体と、
前記回転体の回転で、前記回転槽から移動する飼料を受ける射出路と、
前記射出路に空気圧を付与する空気圧付与部と、を備え、
前記回転体は、回転する軸部材と、前記軸部材の外周に突出する複数の回転羽根を有し、
前記回転体の回転によって、前記回転羽根は、投入される飼料を回転移動させ、
前記複数の回転羽根のそれぞれは、前記軸部材の回転軸に対して交差する所定角度を持った斜め方向に備わり、
前記複数の回転羽根のそれぞれは、前記軸部材の後方から前方に至るまで略同一角度での所定角度での斜め方向であり、
前記回転体の回転方向を基準とすると、前記複数の回転羽根の前記軸部材の前方部分は、前記複数の回転羽根の前記軸部材の後方部分よりも、回転進行側となっており、前記回転槽から前記射出路への飼料の移動は、前記回転槽の前方から後方にかけて順々に行われる、飼料搬送装置。
【請求項2】
前記回転槽に飼料を供給する飼料供給部をさらに備える、請求項1記載の飼料搬送装置。
【請求項3】
前記回転槽は、前記回転体を収容する内部空間を有し、
前記複数の回転羽根は、前記内部空間を複数の区分空間に区分し、
前記飼料供給部は、前記複数の区分空間のそれぞれに、飼料を供給する、請求項2記載の飼料搬送装置。
【請求項4】
前記回転槽は、
前記飼料供給部に対向する部位に開口する受け口と、
前記射出路に対向する部位に開口する出し口と、を備え、
前記受け口は、前記飼料供給部に対向する位置にある前記区分空間である受け区分空間と連通することで、前記飼料供給部から飼料を前記受け区分空間に供給し、
前記出し口は、前記射出路に対向する位置にある前記区分空間である出し区分空間と連通することで、前記受け区分空間内部の飼料を前記射出路に移動させる、請求項3記載の飼料搬送装置。
【請求項5】
前記複数の区分空間は、前記回転羽根の数に応じて、第1区分空間、第2区分空間・・、第N区分空間を有し、
前記回転体の回転に伴って、前記第1区分区間~前記第N区分空間のそれぞれが、順番に前記受け口と対向して、飼料の供給を受け、
前記回転体の回転に伴って、前記第1区分空間~前記第N区分空間のそれぞれが、順番に前記出し口と対向し、収容している飼料を前記射出路に移動させる、請求項4記載の飼料搬送装置。
【請求項6】
前記複数の回転羽根のそれぞれが、前記回転軸に対して交差する角度をもって斜めに突出していることで、
前記第1区分空間~前記第N区分空間のそれぞれは、回転軸に対して斜め方向に沿った空間を形成する、請求項5記載の飼料搬送装置。
【請求項7】
前記第1区分空間~第N区分空間のそれぞれは、収容している飼料を、前記射出路の射出口側から根元側にかけて、徐々に前記射出路に移動させる、請求項
6記載の飼料搬送装置。
【請求項8】
前記複数の回転羽根の前記所定角度は、前記回転軸に対して、10度~30度である、
請求項1から7のいずれか記載の飼料搬送装置。
【請求項9】
前記空気圧付与部は、前記射出路の根元側から射出口側に向けて、空気圧を付与し、
前記区分空間から前記射出路に移動された飼料は、前記空気圧により、前記射出口から射出される、
請求項3から8のいずれか記載の飼料搬送装置。
【請求項10】
前記射出路には、前記飼料を搬送する搬送路が連結可能であり、
前記射出路から射出された飼料は、前記搬送路を介して搬送され、
前記搬送路は、自動給餌装置および船舶の外部の少なくとも一方に、飼料を搬送可能である、
請求項1から9のいずれか記載の飼料搬送装置。
【請求項11】
前記船倉において、
上方から下方に向けて、前記飼料供給部、前記回転槽、前記射出路の順に位置し、
前記飼料供給部は、重力落下により、前記区分空間に飼料を供給し、
前記区分空間は、重力落下により、前記射出路に飼料を移動させる、
請求項3から10のいずれか記載の飼料搬送装置。
【請求項12】
前記飼料は、固形飼料を含む、
請求項1から11のいずれか記載の飼料搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に漁業において給餌そのものあるいは給餌装置に飼料を供給する飼料搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国をはじめとして多くの国で、魚介類が食用されている。我が国は周囲を海に囲まれた島国であるという地理的特性から、歴史的に魚介類を多く食してきた歴史がある。肉食が普及した現在においても、我が国においては、魚介類やこれの加工食品が多く食されている。加えて、近年では、我が国以外の国においても、和食ブームや健康ブームの結果、魚介類などの多くの水産資源が食用に供されている状況がある。
【0003】
このような状況において、過去のように天然の魚介類を捕獲するだけでは、必要となる魚介類の量が不足するようになってきている。魚介類の種類によっては、その不足の度合いは顕著になっている。このため、魚介類の養殖や蓄養が盛んになってきている。養殖や蓄養によって、不足する水産資源を補うことが、人口増加や魚介類の食用増加への対策となるからである。
【0004】
また、魚介類の種類によっては、水産資源として大きく減少あるいは枯渇し始めているものもある。このような現象などしている種類の魚介類については、天然での漁獲量が制限されているものもある。このような漁獲量の制限されている種類の魚介類については、需要を満たすために養殖や蓄養などの手段が必要となっている。
【0005】
魚介類の養殖や蓄養においては、例えば、海洋や河川に生簀や囲いを作り、その中で魚介類を育てることが行われる。あるいは、専用の施設が建築されて、専用施設で魚介類を育てることが行われる。このような魚介類の養殖や蓄養においては、育成対象の魚介類に餌を与えることが必要である。
【0006】
このような魚介類への給餌では、例えば、容器に入った餌を作業者が手作業で生簀や囲いに撒いて魚介類に与えることが行われる。あるいは、海洋や河川などに構築された大型の生簀などであれば、船で生簀内部を航行して、船から餌を撒くなどでの給餌が行われることもある。
【0007】
いずれの場合でも、作業者による人力作業であって負担が大きい問題がある。
【0008】
このため、自動で餌を放出して撒く自動給餌機が用いられることがある。このような自動給餌機についての技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1は、下部周囲に浮体2が設置され、かつ中空状筒管又は鋼板から成る矩形の枠体3と、枠体3の略全面を覆う水平な床体4と、床体4の表面に対し垂直となるように孔4aに挿通固定され、かつ床体4の下部より露出する一部が水没する略円柱形状の中央体5とから構成されている。中央体5は、上部空間と下部空間に分割された内部構造を有し、上部空間は機器収納室5hとなり、下部空間は、餌投入口を備える餌貯蔵室5gとなり、機器収納室5hには、餌貯蔵室5gから餌を上方に搬送する搬送装置6と、この搬送装置6から搬送された餌を餌放出部から外部に散布するフィードポンプ7と、が設置されている自動給餌装置を開示する。
【0011】
しかしながら、特許文献1は、餌貯蔵室から餌を搬送する際に、餌の搬送がスムーズにできない問題がある。餌が搬送装置において目詰まりを起こす懸念があるからである。搬送装置での餌の搬送がスムーズでないと、最終的に餌を散布するフィードポンプでの動作にも悪影響が生じかねない。結果として、貯蔵されている餌を、適切に散布して魚介類に与えることができない問題がある。
【0012】
また、特許文献1の自動給餌装置は、生け簀などに固定設置される専用の装置である。このため、大型の生簀や複数の生簀を移動しながら餌を与えていくことは難しい。養殖などでは、複数の生簀や大型の囲いの中で魚介類を育てることが多い。
【0013】
この場合には、自動給餌装置も海洋や河川などを移動しながら、複数の生簀のそれぞれに対して、あるいは囲いの中の複数の場所において餌を散布することが必要である。このため、自動給餌装置は、固定された専用の装置であるよりも移動可能な機器であることが好ましい。具体的には、船舶に自動給餌装置が備わっているなどが好ましい。また、船舶などを利用することで、地上での餌の供給と、水上での餌の散布とを繰り返すことが可能となるが、特許文献1ではこれが困難である。
【0014】
以上のように、従来技術においては、餌の搬送をスムーズに行うことができない問題や、移動しながらの餌の散布が困難である問題があった。
【0015】
本発明は上記の課題に鑑み、船に設置して船の本体に設けられた餌の収容部から、餌を散布するまでの間において目詰まりや餌の破損を抑制しながら、スムーズに餌を搬送できる飼料搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の飼料搬送装置は、船舶の船倉に設置可能な飼料搬送装置であって、
投入される飼料を回転移動させる回転槽と、
回転槽内部で回転する回転体と、
回転体の回転で、回転槽から移動する飼料を受ける射出路と、
射出路に空気圧を付与する空気圧付与部と、を備え、
回転体は、回転する軸部材と、軸部材の外周に突出する複数の回転羽根を有し、
回転体の回転によって、回転羽根は、投入される飼料を回転移動させ、
複数の回転羽根のそれぞれは、軸部材の回転軸に対して交差する所定角度を持った斜め方向に備わり、
前記複数の回転羽根のそれぞれは、前記軸部材の後方から前方に至るまで略同一角度での所定角度での斜め方向であり、
前記回転体の回転方向を基準とすると、前記複数の回転羽根の前記軸部材の前方部分は、前記複数の回転羽根の前記軸部材の後方部分よりも、回転進行側となっており、前記回転槽から前記射出路への飼料の移動は、前記回転槽の前方から後方にかけて順々に行われる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の飼料搬送装置は、飼料搬送装置からの飼料の搬送において、時間軸における搬送量の変動幅を抑制することができる。この変動幅を抑制できることで、搬送路での飼料の目詰まりなどの発生を抑制できる。
【0018】
また、搬送路での飼料の目詰まりや搬送速度の減速などが防止できることで、飼料の破損を防止できる。また、回転槽から射出路への飼料の落下移動が徐々に行われるので、飼料の破損が抑制される。破損が抑制されることで、最終的に散布された餌が無駄にされず、魚介類によって確実に食される。
【0019】
また、回転槽から射出路への飼料の落下移動においては、搬送路の排出方向側から根元方向にかけて順々に行われる。この結果、射出路での空気圧の付与による飼料の射出がスムーズに行われる。特に、射出路では、前方に飼料が塞ぐことにならないので、空気圧の付与で、前方に飼料のふさぎが無い状態で、前方から後方にかけて順々に射出されていく。
【0020】
これらにより、飼料の搬送路での目詰まりや飼料の破損が抑制され、散布された飼料が、適切に魚介類により食される。結果として、飼料を無駄にすることなく養殖や蓄養を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】参考技術における飼料搬送装置の平面図である。
【
図2】参考技術における飼料搬送装置の側面図である。
【
図3】参考技術における飼料搬送装置の正面図である。
【
図6】考技術の飼料搬送装置での搬送量と時間との関係である。
【
図7】本発明の実施の形態1における飼料搬送装置の平面図である。
【
図8】本発明の実施の形態1における飼料搬送装置の側面図である。
【
図9】本発明の実施の形態1における飼料搬送装置の正面図である。
【
図10】本発明の実施の形態1における回転体の斜視図である。
【
図11】本発明の実施の形態1における回転体の正面図である。
【
図12】本発明の実施の形態1における飼料搬送装置からの飼料の搬出量を時間軸で見た場合のグラフである。
【
図13】本発明の実施の形態1における飼料搬送装置の平面図である。
【
図14】本発明の実施の形態1における飼料搬送装置の斜視図である。
【
図15】本発明の実施の形態1における回転体の回転状態を示す説明図である。
【
図16】本発明の実施の形態2における飼料搬送装置を備える船舶の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の第1の発明に係る飼料搬送装置は、船舶の船倉に設置可能な飼料搬送装置であって、
投入される飼料を回転移動させる回転槽と、
回転槽内部で回転する回転体と、
回転体の回転で、回転槽から移動する飼料を受ける射出路と、
射出路に空気圧を付与する空気圧付与部と、を備え、
回転体は、回転する軸部材と、軸部材の外周に突出する複数の回転羽根を有し、
回転体の回転によって、回転羽根は、投入される飼料を回転移動させ、
複数の回転羽根のそれぞれは、軸部材の回転軸に対して交差する所定角度を持った斜め方向に備わる。
【0023】
この構成により、あるタイミングで射出される飼料の量を抑制して、時間軸における飼料の搬送量の変動を抑制できる。結果として、スムーズな搬送を実現できる。
【0024】
本発明の第2発明に係る飼料搬送装置では、第1の発明に加えて、回転槽に飼料を供給する飼料供給部をさらに備える。
【0025】
この構成により、回転槽の内部に、確実に飼料を供給できる。特に、連続的に供給することもできる。
【0026】
本発明の第3発明に係る飼料搬送装置では、第2の発明に加えて、回転槽は、回転体を収容する内部空間を有し、
複数の回転羽根は、内部空間を複数の区分空間に区分し、
飼料供給部は、複数の区分空間のそれぞれに、飼料を供給する。
【0027】
この構成により、区分空間ごとに飼料を回転移動させる。また、区分空間から射出路に飼料を移動させる。これにより、一定量に抑えた状態で、飼料が搬出路から搬送される。
【0028】
本発明の第4発明に係る飼料搬送装置では、第3の発明に加えて、回転槽は、
飼料供給部に対向する部位に開口する受け口と、
射出路に対向する部位に開口する出し口と、を備え、
受け口は、飼料供給部に対向する位置にある区分空間である受け区分空間と連通することで、飼料供給部から飼料を受け区分空間に供給し、
出し口は、射出路に対向する位置にある区分空間である出し区分空間と連通することで、受け区分空間内部の飼料を射出路に移動させる。
【0029】
この構成により、区分空間のそれぞれに飼料が供給され、それぞれから飼料が射出路に移動する。
【0030】
本発明の第5発明に係る飼料搬送装置では、第4の発明に加えて、複数の区分空間は、回転羽根の数に応じて、第1区分空間、第2区分空間・・、第N区分空間を有し、
回転体の回転に伴って、第1区分区間~第N区分空間のそれぞれが、順番に受け口と対向して、飼料の供給を受け、
回転体の回転に伴って、第1区分空間~第N区分空間のそれぞれが、順番に出し口と対向し、収容している飼料を射出路に移動させる。
【0031】
この構成により、複数の区分空間は、順々に飼料を受け取り、順々に飼料を射出路に移動させる。このことにより、徐々に飼料を搬送させることができる。特に、区分空間が斜めとなっていることで、射出路に一気に飼料を移動させないので、時間軸での飼料の搬送は、少ない変動量で実現される。
【0032】
本発明の第6発明に係る飼料搬送装置では、第5の発明に加えて、複数の回転羽根のそれぞれが、回転軸に対して交差する角度をもって斜めに突出していることで、
第1区分空間~第N区分空間のそれぞれは、回転軸に対して斜め方向に沿った空間を形成する。
【0033】
この構成により、射出路に一気に飼料を移動させることが無く、徐々に飼料を搬出路に移動させる。この徐々の移動に合わせて、搬出路は、徐々に飼料を搬出させる。結果として、時間軸での変動量の小さな飼料の搬送が実現される。
【0034】
本発明の第7発明に係る飼料搬送装置では、第6の発明に加えて、回転体において、複数の回転羽根のそれぞれは、受け口平面で見る場合に、
回転方向において、射出路の根元側の位置は、射出路の射出口側の位置よりも回転進行方向に偏っている位置関係を有し、
位置関係により、回転羽根は、回転軸に対して斜め方向となっている。
【0035】
この構成により、区分空間から射出路に飼料が移動する際に、前方から徐々に移動する。これにより、射出路での空気圧の射出において、前方に飼料が塞がりにくくなって、射出がスムーズに行われる。
【0036】
本発明の第8発明に係る飼料搬送装置では、第7の発明に加えて、位置関係に基づいて、第1区分空間~第N区分空間のそれぞれは、収容している飼料を、射出路の射出口側から根元側にかけて、徐々に射出路に移動させる。
【0037】
この構成により、射出路での空気圧の射出において、前方に飼料が塞がりにくくなって、射出がスムーズに行われる。結果として、搬送での目詰まりなどを防止できる。
【0038】
本発明の第9発明に係る飼料搬送装置では、第1から第8のいずれかの発明に加えて、複数の回転羽根の所定角度は、回転軸に対して、10度~30度である。
【0039】
この構成により、搬送のスムーズさなどを最適に生じさせることができる。
【0040】
本発明の第10発明に係る飼料搬送装置では、第3から第9のいずれかの発明に加えて、空気圧付与部は、射出路の根元側から射出口側に向けて、空気圧を付与し、
区分空間から射出路に移動された飼料は、空気圧により、射出口から射出される。
【0041】
この構成により、射出路に移動した飼料は、そのまま空気圧で射出される。結果として、必要な位置へ搬送されるようになる。
【0042】
本発明の第11発明に係る飼料搬送装置では、第1から第10のいずれかの発明に加えて、射出路には、飼料を搬送する搬送路が連結可能であり、
射出路から射出された飼料は、搬送路を介して搬送され、
搬送路は、自動給餌装置および船舶の外部の少なくとも一方に、飼料を搬送可能である。
【0043】
この構成により、最終的に養殖対象の魚介類に飼料を供することができる。
【0044】
本発明の第12発明に係る飼料搬送装置では、第3から第11のいずれかの発明に加えて、船倉において、
上方から下方に向けて、飼料供給部、回転槽、射出路の順に位置し、
飼料供給部は、重力落下により、区分空間に飼料を供給し、
区分空間は、重力落下により、射出路に飼料を移動させる。
【0045】
この構成により、落下移動を利用することで、余分な動力を必要とせず、飼料の供給、回転による量の調整、搬送と、それぞれを実現できる。
【0046】
本発明の第13発明に係る飼料搬送装置では、第1から第12のいずれかの発明に加えて、飼料は、固形飼料を含む。
【0047】
この構成により、魚介類が必要とする飼料を供給できる。また、固形飼料の破損などを抑制でき、無駄を削減できる。
【0048】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0049】
(発明者の解析)
図1~
図5を用いて、発明者による参考技術での飼料搬送装置の問題点解析を説明する。
図1は、参考技術における飼料搬送装置の平面図である。
図2は、参考技術における飼料搬送装置の側面図である。
図1は、飼料搬送装置100を上から見た状態を示しており、
図2は、
図1の飼料搬送装置100を側面から見た状態を示している。
【0050】
図3は、参考技術における飼料搬送装置の正面図である。
図3は、
図1、
図2の飼料搬送装置100を正面から見た状態を示している。
図3の飼料搬送装置100は、射出路104を正面から見た状態であり、回転槽102を正面から見た状態である。
【0051】
参考技術における飼料搬送装置100は、投入される飼料を回転移動させる回転槽102と、回転槽102内部で回転する回転体110と、回転体110の回転で回転槽102から移動する飼料を受ける射出路104と、射出路104に空気圧を付与する空気圧付与部105とを備える。
【0052】
回転槽102の上から回転槽102の内部に飼料が投入される。回転槽102内部では、回転体110が回転している。回転体110は、回転する軸部材107と軸部材107の外周に突出する複数の回転羽根103を備える。軸部材107が回転すると、これに伴い、回転羽根103も回転する。すなわち、回転槽102の内部空間で、回転羽根103が回転する状態となる。
【0053】
この回転羽根103により、回転槽102の内部空間は、複数の区分空間に区分される。回転槽102に投入された飼料は、回転羽根103の回転に伴って、複数の区分空間のそれぞれに順々に入っていく。すなわち、回転体110が回転すると、回転羽根103も回転する。この回転羽根103の回転に伴い、回転槽102へ投入される飼料が入っていく区分空間は入れ替わっていく。この状態で回転体110が回転し続けると、ある区分空間に収容されている飼料は、回転槽102の下にある射出路104に落下移動する。
【0054】
射出路104には、
図1、
図2の矢印のように、空気圧付与部105から空気圧が付与されている。射出路104のある方向から空気圧が付与される。この空気圧の付与がなされている状態で、射出路104に落下移動してきた飼料は、その方向に射出される。
図1、
図2では、矢印により飼料が射出されている状態が示されている。
【0055】
射出路104は、搬送路などに接続している。この接続している搬送路に飼料がそのまま射出されて搬送される。搬送路は、実際に飼料を散布する飼料散布装置などに接続されており、搬送された飼料が養殖設備などに散布される。この散布により、養殖対象の魚介類への給餌が実現できる。
【0056】
参考技術における回転体110は、
図4、
図5に示される態様を有している。
図4は、参考技術における回転体の正面図であり、
図5は、参考技術における回転体の斜視図である。
図4、
図5から分かる通り、軸部材107の回転軸に対して、回転羽根103のそれぞれは平行である。回転羽根103のそれぞれは、軸部材107の軸方向に沿って突出している。
【0057】
このため、回転槽102の内部空間において、回転軸に沿って回転羽根103が回転する状態となる。すなわち、回転羽根103のすべては常に回転軸に平行状態を維持して回転する。この回転によって、回転羽根103のそれぞれで区切られて形成される区分空間から、射出路104に飼料が落下移動する。このとき、ある区分空間が射出路104に対向する位置(下方の位置)に到達すると、この区分空間に収容されている飼料が射出路104に落下移動する。この落下移動した飼料は、空気圧付与部105から付与された空気圧で射出される。
【0058】
回転体110は、回転し続けるので回転に伴い、次の区分空間が射出路104に対向する位置に到達する、この次の区分空間に収容されている飼料が射出路104に落下移動する。落下移動すると、この次の区分空間からの飼料が空気圧で射出される。
【0059】
このように、回転体110の回転により、区分空間からの飼料の落下移動と射出とが繰り返される。
【0060】
このとき、
図4、
図5に示されるように、回転羽根103のそれぞれは回転軸に平行である。このため、回転羽根103によって形成される区分空間のそれぞれも、回転軸に平行となる。このため、ある区分空間からは一気に収容している飼料が射出路104に落下移動する。そしてこの落下移動した飼料は、そのまま射出される。そして次の区分空間が回転してくると、次の区分区間からの飼料が射出路104に一気に落下して、そのまま射出される。
【0061】
このようになることで、参考技術の飼料搬送装置には、次のような問題があることを、発明者は解析した。
【0062】
(問題1)
ある区分空間から飼料が一気に落下して射出され、回転に要する時間をおいて次の区分空間から飼料が一気に落下して射出される。これにより、搬送量の変動が
図6のように粗くなる問題がある。
図6は、参考技術の飼料搬送装置での搬送量と時間との関係である。
【0063】
並行した区分空間から、回転に合わせて飼料が落下して射出される。この結果、
図6のような搬送量の変動が生じる。この
図6から明らかなとおり、搬送量の変動が大きい。変動が大きいことで、ある時間においては大量の飼料が射出路104から搬送路に射出されて搬送される。他の時間においては、ほとんど射出されない。
【0064】
このような変動量が大きいと、搬送路での搬送が目詰まりを起こしてしまったりする問題がある。目詰まりによって、確実かつスムーズな飼料の搬送とこれに続く散布とが難しくなる問題がある。
【0065】
(問題2)
さらには、搬送路で多くの飼料が一度に搬送されることで、搬送路において飼料が衝突したりすることもある。飼料が固形飼料であると、飼料が衝突や目詰まりによって破損することもあり得る。破損すると固形飼料のそれぞれの大きさが変わってしまう。
【0066】
養殖される魚介類は、飼料の種類に加えて飼料の大きさについても好んで食するものが決まる。このため、飼料搬送装置100により搬送されて最終的に散布される飼料は、養殖される魚介類の種類や成長ステージに対応して、その大きさも調整されている。
【0067】
この飼料が搬送路で破損して大きさが小さくなってしまうと、魚介類はこの小さくなった飼料を食さない。このため、無駄になる飼料が多く出てしまう問題がある。
【0068】
(問題3)
区分空間が回転軸と平行であると共に、射出路104に対しても平行である。このため、区分空間からの飼料が一気に射出路104に落下するだけでなく、区分空間の長手方向(射出路104に沿った方向)においても一度に落下する。
【0069】
すなわち、射出路104の前方でも中央でも後方でも、それらの位置関係に関係なく、射出路104に飼料が落下移動する。ここで、射出路104には空気付与部105からの空気が付与される。この空気付与の際に、射出路104の回転槽102に対応する長手方向の領域には飼料が落下移動している状態となってしまう。
【0070】
このため、ある瞬間では多くの量の飼料が射出路104にあり、これを空気圧で射出させるのが難しい問題がある。すなわち、空気圧が不足して、すべての飼料を射出できないこともあり得る。これは、結果的に目詰まりとなってしまう問題がある。
【0071】
このように、発明者は従来技術やこれに基づく技術での参考技術である飼料搬送装置100には、幾つかの問題点があることを解析した。この解析結果に基づいて、発明者は、本発明に至った。
【0072】
(実施の形態1)
【0073】
実施の形態1について説明する。
【0074】
図7は、本発明の実施の形態1における飼料搬送装置の平面図である。
図7は、飼料搬送装置1を上方から見た状態を示している。
図8は、本発明の実施の形態1における飼料搬送装置の側面図である。
図7の飼料搬送装置1を、側面から見た状態を示している。
図9は、本発明の実施の形態1における飼料搬送装置の正面図である。
図7、
図8の飼料搬送装置の根元側正面(
図7、8の左側正面)からの状態を示している。
【0075】
飼料搬送装置1は、船舶の船倉に設置可能である。船倉に設置されることで、養殖施設などで船舶が移動しながら、飼料を散布することができる。船倉に設置された飼料搬送装置1は、飼料を間欠的に搬送する。飼料搬送装置1から搬送された飼料は、船舶の外部にそのまま散布されてもよいし、船舶に設置されている自動給餌装置に送られてもよい。後者の場合には、自動給餌装置に搬送された飼料は、自動給餌装置によって、適切に散布される。
【0076】
散布された飼料は、養殖施設などで養殖されている魚介類に与えられる。
【0077】
実施の形態1における飼料搬送装置1は、回転槽2、回転体3、射出路4、空気圧付与部5を備える。また、回転槽2に飼料を供給する飼料供給部6を更に備える。
図7~
図9に示されるように、飼料供給部6、回転槽2、射出路4の順に、上から下に向けた方向で構成されることも好適である。
【0078】
このような上下方向の位置関係を有することで、上方の飼料供給部6から飼料が供給される。このとき、飼料供給部6から下方にある回転槽2に、飼料は落下する。後述するように、回転槽2内部には回転体3があり、回転体3に備わる回転羽根32が回転することで、飼料が回転槽2内部で回転移動させられる。回転体3の回転により、やがてある回転羽根32と隣接する回転羽根32との間にある飼料は、下方の位置に到達する。下方の位置に到達すると、飼料は、その下にある射出路4に落下移動する。
【0079】
射出路4には、空気圧付与部5からの空気圧が付与されている。
図7などの矢印にあるように、射出路4の根元41から先端42に向けた方向に、空気圧が付与される。この空気圧を受けて、射出路4に落下移動した飼料は、射出路4の先端42から射出される。
【0080】
この射出によって、上述した船舶の外部に散布されることに繋がったり、自動給餌装置への搬送に繋がったりする。
【0081】
飼料供給部6は、回転槽2に飼料を供給する。上述したように、物理的な位置関係として、飼料供給部6が回転槽2の上部にあれば、飼料供給部6は、重力落下で回転槽2に飼料を供給(投入)する。
【0082】
回転槽2は、飼料搬送装置1の外形の一部を構成する。回転槽2は、投入される飼料を回転移動させる。回転槽2は、内部空間21を有する形態である。すなわち、内部空間を持った箱状の部材である。
【0083】
回転槽2は、内部空間21に回転体3を備える。回転体3は、内部空間21に軸固定されており、この軸固定により回転する。回転体3の回転によって、回転槽2の内部空間21に供給された飼料が回転移動できるようになる。すなわち、回転槽2は、回転する回転体3を内部空間21に備えた態様をもっている。
【0084】
射出路4は、回転体3の回転で、回転槽2から回転移動する飼料を受ける。空気圧付与部5は、射出路4の根元41から空気圧を付与する。この空気圧の付与を受けて、射出路4に移動した飼料は、射出路4の先端42から射出される。
図7~9のように、射出路4が、回転槽2の物理的な下方の位置にある場合には、回転によって落下して射出路4に回転槽2から飼料が移動してくる。これが、射出される。
【0085】
回転体3は、
図10のような形態を有している。
図10は、本発明の実施の形態1における回転体の斜視図である。回転体3は、回転軸として回転する軸部材31と、軸部材31の外周に突出する回転羽根32を有する。この回転軸となる軸部材31が矢印Xのように回転する(回転方向は矢印X方向でも、逆方向でもいずれでもよい)。この軸部材31の回転に合わせて、回転羽根32も回転する。
【0086】
回転体3が回転すると、回転羽根32は、投入された飼料を回転移動させる。
図10に示されるように、軸部材31の外周に、複数の回転羽根32が突出している。この複数の回転羽根32のそれぞれにより、内部空間21が複数の区分空間25に区分される。
【0087】
区分空間25のそれぞれに、飼料供給部6から飼料が供給される。回転体3の回転に伴い、区分空間25のそれぞれが回転移動する。回転移動により、ある区分空間25の位置が変わっていく。この位置変化に応じて、区分空間25内部の飼料が内部空間21の中で回転移動させられる。
【0088】
回転体3の回転に伴って、ある区分空間25は、射出路4に対向する位置に到達する。この到達によって、射出路4に、区分空間25の飼料が移動する。物理的な上下関係が、
図8のようであると、区分空間25の飼料が、射出路4に落下移動する。
【0089】
こうして、ある区分空間25の収容する飼料が射出路4に移動して、射出路4に付与されている空気圧で射出される。射出後に搬送される。
【0090】
ここで、
図10に示されるように、複数の回転羽根32のそれぞれは、軸部材31の回転軸に対して交差する所定角度をもった斜め方向に備わっている。すなわち、参考技術と異なり、回転軸に沿った平行方向ではなく、回転軸に交差する斜め方向に、回転羽根32が備わっている。このため、区分空間25のそれぞれも、回転軸に対して斜め方向になっている。
【0091】
回転槽2は、飼料供給部6に対向する部位に開口する受け口22と、射出路4に対向する部位に開口する出し口23を、備える。
図9に、これの位置関係が示されている。受け口22は、飼料供給部6に対向する位置にある区分空間25(受け区分空間)と飼料供給部6とを連通させる。この連通によって、飼料供給部6から受け口22と連通する区分空間25に飼料が供給される。
【0092】
ここで、内部空間21には、回転羽根32の数に応じた複数の区分空間25が形成される。複数の区分空間25は、回転体3の回転に合わせて回転移動するので、受け口22に連通する区分空間25は、変わっていく。この回転に伴う連通する区分空間25は、入れ替わっていく。この入れ替わりにより、飼料供給部6は、複数の区分空間25のそれぞれに飼料を供給する。
【0093】
すなわち、受け口22に連通する区分空間25に飼料が供給されてこの区分空間25が回転する。回転すると次の区分空間25が受け口22に連通して、この区分空間25に飼料が供給される。
【0094】
飼料が供給された区分空間25は、回転していくと射出路4に近づいていく。射出路4に対向する部位には出し口23が備わる。このため、区分空間25は、出し口23を介して射出路4に連通する状態が生じる。この射出路4と連通する区分空間25は、出し区分空間として、出し口23から収容している飼料を射出路4に移動させることができる。
図8のような位置関係であれば、飼料を落下移動させることができる。
【0095】
この落下移動した飼料は、射出路4に付与される空気圧によって、射出路4から射出される。回転体3が回転するので、次の区分空間25が回転して次の出し区分空間になって射出路4に飼料を落下移動させることができる。
【0096】
このように、回転体3の回転に伴って、複数の区分空間25は、順々に受け区分空間となって飼料の供給を受けて、受け区分空間内部に飼料を収容する。更に、回転体3の回転に伴って、飼料を収容している区分空間25は、下方に移動して出し口23に到達する。出し口23に到達すると出し区分空間として、射出路4に飼料を落下移動させる。この出し区分空間25も順々に生じる。
【0097】
こうして、複数の区分空間25のそれぞれは、順々に飼料を受けて、順々に飼料を落下移動させる。この順々の落下移動に伴って、順々に射出路4から飼料が射出されて搬送される。
【0098】
ここで、
図10、
図11のように、回転羽根32は、回転軸に対して交差する斜め方向になっている。結果として、区分空間25は、回転軸に対して斜めとなる。この形態であることで、出し口23を通じて射出路4と対向するときには、区分空間25の開口部全体が一度に連通するのではなく、斜め角度に従って、徐々に連通するようになる。すなわち、出し区分空間と射出路4との連通は徐々に生じる。
【0099】
図11は、本発明の実施の形態1における回転体の正面図である。
【0100】
この結果、一つの出し区分空間から射出路4への飼料の落下移動は、徐々に行われる。一つの出し区分空間から、一度に飼料が落下移動しない。徐々に落下移動する。射出路4には、恒常的に空気圧が付与されている。空気圧付与部5は、連続的あるいは、連続的に近い断続的な状態で空気圧を付与する。このため、出し区分空間から徐々に射出路4に落下移動する飼料は、落下移動するたびに徐々に射出路4から射出される(射出後は、搬送路などを通じて搬送される)。
【0101】
この徐々な量と態様での射出により、搬送される飼料の変動量は、参考技術と異なり小さくなる。これは、参考技術の
図6で説明した場合と異なる。
図12のように時間軸における飼料の射出量は、その変動量が小さく、なだらかな変化曲線での射出がなされる。
【0102】
図12は、本発明の実施の形態1における飼料搬送装置からの飼料の搬出量を時間軸で見た場合のグラフである。
図6に対応するものである。
【0103】
図12のように、変動量は小さく、なだらかな曲線での射出がなされる。このような射出により、参考技術を用いた解析で説明した問題1~問題3を解消している。
【0104】
すなわち、(問題1)にある、射出路4からその先の搬送路における目詰まりやスムーズ性の弱い搬送を抑制できる。また、(問題2)にある、搬送がスムーズでないことにより飼料が破損することが抑制できる。更に、(問題3)にある、射出路4での射出困難が生じにくくなる。
【0105】
変動量が小さいことで、空気圧によって射出される際にも、射出目詰まりなどが防止できる。特に、射出路4に接続される搬送路などは、カーブ部分などを有している。あるいは、射出路4と搬送路との接続部分に屈曲部を有していたりする。このカーブ部分や屈曲部などにおいて、参考技術などや従来技術などでは、飼料の目詰まりが生じうる。しかし、実施の形態1における飼料搬送装置1では、
図12のように射出量の変動量が小さくなだらかな射出量変化を持つことで、このようなカーブ部分や屈曲部での目詰まりを防止できる。
【0106】
また、目詰まりを防止できることで、最終的な目的位置への搬送がスムーズに行える。スムーズであることで、空気圧付与部5により付与される空気圧を小さくできる。小さくできれば、空気圧付与部5の大きさ、コストを減少できる。また、空気圧が小さくできることで、後述するように、飼料の破損も抑制できる。
【0107】
また、カーブ部分や屈曲部において飼料の目詰まりが生じないことで、飼料の破損などの問題2を生じさせにくい。破損が生じないと、魚介類の嗜好に合わせた大きさより小さい飼料が散布されることを防止できる。これが防止されると、食されないままの小さくなった飼料が、養殖施設で無駄になることも防止できる。
【0108】
射出路4は、
図8に示されるように、一定の長さを持っている。この長さにおいて、回転槽2と対向する部分である出し口23も、この射出路4と区分空間25の長さに対応して、一定の長さを持っている。この長さは、射出路4の長手方向に沿った長さである。
【0109】
参考技術のように、回転羽根が回転軸に平行で区分空間も平行の場合には、区分空間が射出路と連通すると、その区分空間の長手方向のすべてで、飼料が一気に落下移動する。
【0110】
これに対して、
図10や
図11に示されるように、実施の形態1の回転羽根32は、回転軸に対して斜めに設けられている。結果として、区分空間25も回転軸に対して斜めである。回転軸に対して斜めであるということは、区分空間25と射出路4との連通は、区分空間25の前方(射出路4の前方42)から始まっていき、次第に後方が連通していく。
【0111】
このような連通が次第に生じることで、区分空間25に収容されている飼料も、連通する前方から順に、射出路4に落下していく。射出路4には、空気圧付与部5からほぼ連続的に空気圧が付与されている(物理的には断続的であっても、実質的には連続的である状態も含む)。このため、ある第1タイミングで射出路4の前方に飼料が落下移動する。この第1タイミングでは、前方の飼料に空気圧がそのまま付与されて射出される。
【0112】
第1タイミングの次の第2タイミングでは、区分空間25の中央付近が射出路4に連通して、中央付近からの飼料が落下する。この落下により、射出路4の中央付近に飼料が落下する(区分空間25との位置関係での中央付近)。この第2タイミングでは、前方に落下していた飼料は第1タイミングで射出されているので、前方には飼料が残っていない。このため、中央付近に落下した飼料は、前方に邪魔が無い状態で、空気圧を受ける。これにより、確実に射出される。
【0113】
第2タイミングの後の第3タイミングでは、区分空間25の後方付近が射出路4に連通して、後方付近から飼料が落下する。この時には、前方も中央付近でも、飼料は射出された後なので、邪魔されることなく、後方に落下した飼料が、空気圧によって射出される。
【0114】
このように、飼料搬送装置1は、問題3も解決している。
【0115】
これは、回転体3において、複数の回転羽根32のそれぞれは、受け口22平面で見る場合に、回転方向において、射出路4の根元41側の位置は、射出路4の前方42側の位置(射出口側の位置)よりも回転方向に偏っている位置関係を有している。
図10、
図11には、この状態が示されている。
【0116】
この位置関係により、上述したように、射出路4においては、区分空間25の前方から後方にむけて、次第に順々に飼料が落下していく。この落下順序によって、射出路4での射出時に、前方の飼料が邪魔にならなくなってスムーズとなる。
【0117】
(動作説明)
【0118】
上述でも、飼料搬送装置1の構造および動作を説明したが、区分空間25の回転とこれによる飼料の搬送について説明する。
【0119】
図13は、本発明の実施の形態1における飼料搬送装置の平面図である。
図7と同様であるが、飼料搬送装置1の形態をより簡略化して示している。
図14は、本発明の実施の形態1における飼料搬送装置の斜視図である。
図13の簡略化した飼料搬送装置1を、斜め後方から見た状態を示している。簡略化かつ斜視図であることで、動作をより分かりやすくしている。
【0120】
図14に示されるように、回転槽2の上から(飼料供給部6を介して)飼料が供給される。これは、回転槽2の上からの矢印に示されている。矢印の方向に供給されると、回転槽2の中で飼料は回転する。回転体3の回転に伴い、回転羽根32の間に形成される区分空間25のそれぞれに収容された飼料は回転移動させられる。
【0121】
この回転移動によって、下方にある射出路4に連通する区分空間25が生じる。回転羽根32が回転軸に斜めとなっていることで、区分空間25も斜めとなっている。この斜め状態であることで、区分空間25は、その一部ずつが次第に射出路4に連通するようになる。こうして、区分空間25に収容されている飼料が徐々に射出路4に落下移動する。
【0122】
射出路4においては、実質的に連続的に空気圧が付与されている。このため、射出路4に徐々に落下移動してきた飼料は、空気圧によって射出される。
図14の射出路4からの矢印のように、飼料が射出される。射出路4は、後述するように搬送路などに連結されており、必要な場所に搬送される。
【0123】
また
図15を用いて、回転槽2をより分かりやすく示すことで、動作をより理解しやすくする。
図15は、本発明の実施の形態1における回転体の回転状態を示す説明図である。
図15の上は、ある状態での回転体3を上方から見た状態であり、
図15の下は、上の状態から回転が進んだ状態を示している。
【0124】
複数の区分空間25は、回転羽根32の数に応じて、第1区分空間25A、第2区分空間25B・・・第N区分空間25Nである。回転羽根32が6枚であれば、6個の区分空間25がある。回転体3が回転するのに合わせて、第1区分空間25A~第N区分空間25Nのそれぞれが、順番に受け口22と対向する。
図15では、最初に第1区分空間25Aが受け口22と対向しており、回転が進むと、次の第2区分空間25Bが受け口22と対向するようになる。回転体3の回転が進めば、このように、第1区分空間25Aから第N区分空間25Nにかけて順々に受け口22に対向するように切り替わっていく。この切り替わりによって、第1区分空間25A~第N区分空間25Nの順番で、それぞれの内部に、飼料が供給される。
【0125】
同様に、回転体3の回転に伴って、第1区分空間25A~第N区分空間25Nのそれぞれが、順番に出し口23と対向する。この順番での対向に伴って、第1区分空間25A~第N区分空間25Nの順番で、射出路4に収容している飼料を落下移動させる。
【0126】
このとき、上述したように、回転軸に対して斜めとなっている第1区分空間25A~第N区分空間25Nのそれぞれは、収容している飼料を、射出路4の前方から根元側にかけて、徐々に射出路4に落下移動させることができる。これらが相まって、参考技術で説明したような問題1~3を解消できる。
【0127】
ここで、空気圧付与部5は、射出路4の根元側から射出口側に向けて空気圧を付与する。これにより、区分空間25から射出路4に落下移動した飼料は、射出路4の前方から射出される。
【0128】
以上のように、実施の形態1における飼料搬送装置1は、参考技術の解析で説明したような、従来技術や参考技術にあった問題を解消できる。結果として、スムーズかつ無駄となる飼料を生じさせることなく、飼料を搬送させることができる。最終的には、無駄なくスムーズに散布して魚介類に与えることができる。
【0129】
(実施の形態2)
【0130】
次に、実施の形態2について説明する。
【0131】
(回転羽根の角度)
【0132】
複数の回転羽根32は、実施の形態1で説明した通り、回転軸に対して所定角度の交差角度をもって斜めとなっている。この所定角度は、10度~30度であることが好ましい。
【0133】
この程度の所定角度で交差する斜め状態であることで、射出路4に飼料を落下移動させる際に、一気に落下移動させずに済む。
図12のようななだらかな射出量の変動量を生じさせやすい。また、飼料を供給する際にも、複数の区分空間25のそれぞれに適切に供給しやすくなる。
【0134】
交差角度がこれより小さいと、射出路4への落下移動が一気になりやすく、
図6のように、変動量が大きくなって問題1~3を解決しにくい。一方で、交差角度がこれより大きいと、複数の区分空間25の形成が難しくなることもあり得る。
【0135】
これらから、10度~30度程度であることが好ましい。勿論、製造の対応や調整、射出路4や回転槽2の構造や大きさ、回転体3の回転速度などによって、この交差角度は、この範囲外であってもよい。ただ、交差角度をもって斜めであることは必要である。
【0136】
(搬送路)
図16は、本発明の実施の形態2における飼料搬送装置を備える船舶の模式図である。船舶200の内部である船倉201に飼料搬送装置1を収容している状態を、可視化して、
図16は示している。船舶200の船倉201には、実施の形態1、2で説明した飼料搬送装置1が設置されている。
【0137】
ここで、搬出路4には、搬送路7が連結されている。搬送路7は、船倉201に設置されている飼料搬送装置1から射出される飼料を、船舶200の上に搬送する。飼料そのものは、船舶200から最終的には外部に散布される必要がある。船舶200は、養殖施設などで、魚介類に飼料を与えるために使用されるからである。
【0138】
このため、船舶200には、必要に応じて自動給餌装置50が備わっている。船舶200から、外部の海洋や湖沼などの養殖領域にいる魚介類に飼料を散布するためである。搬送路7は、射出路4とこの自動給餌装置50とを結んでいる。すなわち、搬送路7は、射出路4から射出された飼料を自動給餌装置50へ搬送する。
【0139】
自動給餌装置50は、搬送されてきた飼料を、散布する。散布方法は、種々の技術を用いればよい。空気噴射やその他の技術などが用いられれば良い。
【0140】
あるいは、自動給餌装置50に搬送路7が飼料を搬送するのではなく、搬送路7が、船舶200の外部に直接的に、飼料を散布することでもよい。この場合でも、搬送路7が、射出路4から射出された飼料を船倉201から船舶200の上まで搬送する。
【0141】
このような搬送路7の搬送によって、船倉201で設置された飼料搬送装置1から射出される飼料が、自動給餌装置50あるいは直接的に、船舶200の外部に散布される。散布によって、魚介類に適切に飼料を付与できる。
【0142】
ここで、実施の形態1、2で説明したように、飼料搬送装置1は、従来技術や参考技術のような問題を解消している。一方で、
図16のように、搬送路7は屈曲部やカーブ部分を備える。船倉201から船舶200の上部に搬送するためには、屈曲部やカーブ部分が生じざるを得ないからである。船舶200が小型であれば、搬送路7の形状を工夫することが必要であり、この工夫に伴って、屈曲部やカーブ部分が生じることは多い。
【0143】
しかしながら、本発明の飼料搬送装置1は、既に説明したように、飼料の射出がスムーズであり屈曲部やカーブ部分での目詰まりを抑制できる。この結果、屈曲部やカーブ部分での飼料の衝突や目詰まりにより、飼料が破損することも抑制できる。最終的に散布される飼料の中に、破損によって本来の大きさよりも小型化した飼料が混ざることが抑制されて、魚介類が食さない無駄な飼料の発生を抑制できる。
【0144】
また、飼料としては、固形飼料を含むことも好適である。ペレット形状などの形状をした固形飼料であることで、魚介類の成長に合わせることができるからである。特に、小型魚、中型魚の場合には、必要となる栄養素を含む固形飼料が適切であることが多い。飼料搬送装置1は、このような固形飼料を搬送して、最終的には自動給餌装置50などを介して、魚介類に散布できる。
【0145】
このような固形飼料である場合には、上述のように目詰まりや破損が防止されやすいことは好適である。このようにして、固形飼料の搬送を行う場合でも、飼料搬送装置1は、従来技術や参考技術の問題を解消できる。
【0146】
また、
図16に示されるように、船倉に飼料搬送装置1が設置される場合には、上方から下方に向けて、飼料供給部6、回転槽2、射出路4の順序での位置関係であることも好適である。このような位置関係にあることで、飼料供給部6は、重力落下により回転槽2の区分空間25に飼料を供給し、区分空間25は、重力落下により、射出路4に飼料を移動させることができる。
【0147】
このような重力落下を利用した移動経路を取ることで、効率よくかつ余分な機動力を必要とせず。飼料搬送装置1は、時間軸においてある量ずつの飼料を搬送することができる。
【0148】
このようにある量ずつの飼料の搬送により、魚介類への飼料の散布量が、時間単位で適切に維持される。この維持により、魚介類の健康を維持しながらの養殖が可能となる。
【0149】
以上、実施の形態1~2で説明された飼料搬送装置は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0150】
1 飼料搬送装置
2 回転槽
21 内部空間
22 受け口
23 出し口
25 区分空間
3 回転体
31 軸部材
32 回転羽根
4 搬出路
5 空気圧付与部
6 飼料供給部
7 搬送路
200 船舶
201 船倉