(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】切断装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/38 20060101AFI20240729BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B29C45/38 C
B29C45/17
(21)【出願番号】P 2020137463
(22)【出願日】2020-08-17
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000132231
【氏名又は名称】株式会社スター精機
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 辰成
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0050199(KR,A)
【文献】特開平04-221621(JP,A)
【文献】特開平11-354551(JP,A)
【文献】特開平11-111745(JP,A)
【文献】実開昭54-092493(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランナー部にゲート部を介して製品部が接続されている成型品の前記ゲート部を切断する切断装置において、
所定の移動方向に沿って前進して前記ゲート部を切断する刃具と、
前記ゲート部を切断する際、前記刃具を加熱させる加熱部と、を備え、
前記刃具において、切断時に前記製品部側に配置される刃面は、刃先側が根元側に比較して前記製品部に近くなる形状を有して
いるものであって、
前記製品部側に配置される前記刃面は、刃先側が根元側に比較して前記製品部に近くなるように移動方向に対して傾斜しているものであり、
前記製品部側に配置される前記刃面において、刃先側の先端部分は、根元側の根元部分に比較して、移動方向に対して平行に近くなっている切断装置。
【請求項2】
前記製品部側に配置される前記刃面において、前記先端部分は、移動方向において0.5~3.0mmの範囲内で設けられている請求項
1に記載の切断装置。
【請求項3】
前記刃具を所定の移動方向に沿って前進及び後退させる駆動部と、
前記刃具を前進させて前記ゲート部を切断させた後、前記刃具を往復移動させるように前記駆動部を制御する制御部と、を備えた請求項1
又は2に記載の切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ゲート部を切断する切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹脂成型品をランナー部から切り離すために、ゲート部を切断するゲート切断装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1のゲート切断装置では、樹脂成型品を負圧で保持した状態で、ゲート部を切断するように構成されている。これにより、ゲート部を精度よく切断することができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、樹脂成型品が所定位置に精度よく固定されるように、保持したとしても、切断面に跡が残る場合があるという課題があった。特に、レンズなどの樹脂成型品では、この跡により乱反射が生じるなど不都合が生じる場合があるため、跡が残らないように切断することが望まれていた。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、きれいな切断面を形成することができる切断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、ランナー部にゲート部を介して製品部が接続されている成型品の前記ゲート部を切断する切断装置において、所定の移動方向に沿って前進して前記ゲート部を切断する刃具と、前記ゲート部を切断する際、前記刃具を加熱させる加熱部と、を備え、前記刃具において、切断時に前記製品部側に配置される刃面は、刃先側が根元側に比較して前記製品部に近くなる形状を有している。
【0007】
これにより、製品部側に配置される刃面において、根元側の部分を、製品部から離すことができる。このため、切断後において刃面から熱が切断面に伝わりにくくなり、切断面が溶けることを抑制できる。なお、刃先側は、製品部に近いため、製品部からゲート部をきれいに切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】(a)は、第1刃具及び第2刃具の斜視図、(b)は、第1刃具及び第2刃具の側面図、(c)は、第1刃具及び第2刃具の拡大側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、ゲート部を切断する切断装置を具体化している。切断装置は、ランナー部にゲート部を介して製品部が接続されている成型品のゲート部を切断するために利用されるものである。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0010】
切断装置としてのゲートカット装置1は、上下方向に縦長となる長方形状の枠体2と、枠体2の上方に取り付けられた第1可動台10と、枠体2の下方に取り付けられた第2可動台20と、を備える。以下、枠体2の長手方向を、単に上下方向と示し、枠体2の短手方向を、単に左右方向と示す場合がある。
【0011】
枠体2の長辺(左右の辺)には、それぞれレール3が設けられており、第1可動台10は、レール3に移動可能に取り付けられている。すなわち、第1可動台10は、上下方向に沿って移動可能とされている。第2可動台20も同様に、レール3に取り付けられ、上下方向に沿って移動可能とされている。
【0012】
また、ゲートカット装置1は、第1可動台10を駆動させる第1駆動部としての第1モータ30と、第2可動台20を駆動させる第2駆動部としての第2モータ40と、第1モータ30及び第2モータ40を制御する制御部としての制御装置50と、を備える。第1モータ30は、枠体2の短辺のうち、第1可動台10の側(上側)の短辺(上辺)に、固定されており、第1モータ30の出力軸が第1可動台10に駆動連結されている。第1モータ30の出力軸が回転駆動すると、第1可動台10に駆動力が伝わり、第1可動台10は、レール3に沿って、上下方向に移動する。
【0013】
同様に、第2モータ40は、枠体2の短辺のうち、第2可動台20の側(下側)の短辺(下辺)に、固定されており、第2モータ40の出力軸が第2可動台20に駆動連結されている。第2モータ40の出力軸が回転駆動すると、第2可動台20に駆動力が伝わり、第2可動台20は、レール3に沿って、上下方向に移動する。そして、第1モータ30及び第2モータ40には、制御装置50が接続されている。
【0014】
図1及び
図3に示すように、第1可動台10には、外側(枠体2とは反対側)の表面に加熱部としての第1ヒータユニット11が固定されている。この第1ヒータユニット11に、第1刃具60が固定されている。第1ヒータユニット11は、図示しない温度調節用サーミスタと、ヒータ12とを内部に備えている。左右方向において、ヒータ12は、第1刃具60の幅以上の幅で、平行に設けられており、第1刃具60を均等に加熱する。また、第1ヒータユニット11は、制御装置50に接続されている。第1刃具60は、左右方向に沿って直線状となる刃先61が形成されており、刃先61が前進方向(下方向)に向けられて配置されている。
【0015】
同様に、第2可動台20には、外側表面に加熱部としての第2ヒータユニット21が固定されている。この第2ヒータユニット21に、第2刃具70が固定されている。第2ヒータユニット21は、図示しない温度調節用サーミスタと、ヒータ22とを内部に備えている。左右方向において、ヒータ22は、第2刃具70の幅以上の幅で、平行に設けられており、第2刃具70を均等に加熱する。第2ヒータユニット21は、制御装置50に接続されている。
【0016】
第2刃具70は、左右方向に沿って直線状となる刃先71が形成されており、刃先71が前進方向(上方向)に向けられて配置されている。第2刃具70は、第1刃具60に対して上下方向において、対向するように配置されている。より詳しくは、第1刃具60と第2刃具70との接近時に、互いの刃先61,71がほぼ一致するように第1刃具60及び第2刃具70が配置されている。この実施形態において、上下方向(枠体2の長手方向)が、第1刃具60及び第2刃具70の対向方向であり、かつ、移動方向となる。
【0017】
制御装置50は、第1モータ30及び第2モータ40を駆動制御する装置である。制御装置50は、ゲートカット装置1に一体に設けられていてもよい。制御装置50は、CPU、ROM、RAM及びI/O等を備えたマイクロコンピュータを主体として構成されており、CPUがROMに記憶されているプログラムを実行することにより、各種機能を実現する。例えば、制御装置50は、温度調節用サーミスタからの温度情報を入力し、温度情報に基づいてヒータ12,22をそれぞれ制御可能に構成されている。
【0018】
また、制御装置50は、第1モータ30及び第2モータ40を個別に制御可能に構成されており、第1モータ30及び第2モータ40の駆動制御を行うことにより、第1刃具60及び第2刃具70を上下方向に沿って前進及び後退させるように構成されている。
【0019】
また、ゲートカット装置1には、
図2に示すようなランナー部101にゲート部102を介して製品部103が接続されている成型品100が、図示しないホルダ装置により所定位置に保持されるように構成されている。成型品100は、例えば、射出成型機などにより成形される樹脂成型品であり、製品部103は、例えば、レンズなどである。そして、制御装置50は、
図3(c)に示すように、成型品100の製品部103が所定位置に固定されている状態で、第1刃具60及び第2刃具70が互いに接近するように、上下方向に沿って駆動させることにより、ゲート部102を切断するように構成されている。
【0020】
ところで、従来、第1刃具及び第2刃具によってゲート部102を切断する際、切断面に跡(凹凸)が形成されてしまうという課題があった。例えば、第1刃具及び第2刃具の刃先は、鋭く繊細に構成されているため、刃先同士が直接衝突すると、刃がかけてしまう虞がある。そこで、接近する際、刃先同士が接触しないようにわずかな隙間を空けて停止させることが一般的である。このため、
図4(a)に示すように、製品部103の切断面には、刃先の隙間に沿って直線状の跡200が残ってしまう可能性があった。
【0021】
また、従来から、第1刃具及び第2刃具を加熱して、時間をかけて樹脂成型品を柔らかくすることにより、少ない押圧力でゲート部を切断している。しかしながら、
図4(b)に示すように、製品部103と刃面とが長時間接触していると、切断面が溶けて、その跡201が残ってしまう可能性があった。
【0022】
そこで、本実施形態では、切断面にこのような跡が形成されないように、第1刃具60及び第2刃具70及び切断時の動作について工夫をした。以下、詳しく説明する。まず、第1刃具60及び第2刃具70の形状について説明する。なお、第1刃具60の形状と、第2刃具70の形状は、上下対称で同様であるため、第1刃具60の形状について説明し、第2刃具70の形状についての説明は省略する。
【0023】
図5に、第1刃具60の断面形状を示す。
図5に示すように、第1刃具60は、片刃のような形状に構成されている。つまり、切断時に製品部103側(枠体2側)に配置される刃面としての内側刃面62は、内側刃面62の反対側側面である外側刃面64に比較して、上下方向(移動方向、対向方向)に対して平行に近くなるように構成されている。すなわち、外側刃面64は、内側刃面62と比較して、上下方向に対して傾斜している。具体的には、外側刃面64は、上下方向に対して約23度の傾斜角度を有して、傾斜している。
【0024】
また、第1刃具60において、内側刃面62は、刃先61の側が根元63の側に比較して製品部103にわずかに近くなるように上下方向に対して傾斜している。すなわち、内側刃面62は、所定位置に配置された製品部103に対して、刃先61の側が製品部103に近くなり、かつ、根元63の側が製品部103から遠くなるように、傾斜している。具体的には、内側刃面62は、上下方向に対して約3度の傾斜角度γを有して、傾斜している。
【0025】
なお、本実施形態において、成型品100の製品部103は、第1刃具60よりも枠体2の側に配置される。このため、第1刃具60の刃先61が、根元63の側に比較して、枠体2の側に近くなるように、内側刃面62が傾斜しているともいえる。
【0026】
また、内側刃面62のうち、刃先61側の先端部分62aは、根元63側の根元部分62bに比較して、上下方向に対して平行に近くなるように構成されている。具体的には、
図5に示すように、内側刃面62のうち、刃先61側の先端部分62aは、上下方向とほぼ平行となるように(上下方向に対する傾斜角度がほぼ0度となるように)、設けられている。この先端部分62aの上下方向における幅は、製品部103の上下方向における高さ寸法以下となるように構成されている。本実施形態では、1mm程度の幅となるように、先端部分62aが設けられている。
【0027】
また、刃先61における刃角αは、根元63側における刃角βに比較して、大きくなるように形成されている。具体的には、刃先61における刃角αは、25度程度に設定されており、根元63側における刃角βは、20度程度に設定されている。
【0028】
次に、切断時の動作について説明する。制御装置50は、ホルダ装置により成型品100が所定の位置にて保持されると、
図6に示す切断処理を実行する。
【0029】
まず、制御装置50は、第1ヒータユニット11及び第2ヒータユニット21を制御して、第1刃具60及び第2刃具70が所定の温度となるまで加熱させる(ステップS101)。ステップS101では、第1刃具60及び第2刃具70を、上下方向において所定位置に配置し、離間している状態で加熱している。なお、加熱温度は、成型品100の材料等により異なり、予め設定されている。また、制御装置50は、温度調整用サーミスタから温度情報を入力し、所定の温度となるまでヒータ12,22によって加熱させる。
【0030】
次に、制御装置50は、第1刃具60及び第2刃具70が上下方向からゲート部102に接近するように、第1モータ30及び第2モータ40を駆動させる(ステップS102)。これにより、
図7(a)に示すように、第1モータ30及び第2モータ40は、第1刃具60及び第2刃具70によって、ゲート部102が切断されるまで、第1刃具60及び第2刃具70をそれぞれ上下方向に沿って前進させる。
【0031】
ステップS102を実行する際、制御装置50は、第1モータ30及び第2モータ40を個別に制御する。すなわち、第1モータ30及び第2モータ40は、第1刃具60の移動速度と第2刃具70の移動速度をそれぞれ設定するにより、ゲート部102の切断位置を調整するようにしている。なお、制御装置50は、ゲート部102を切断する際、第1刃具60及び第2刃具70に加わるトルクが一定となるように第1モータ30及び第2モータ40のトルク制御を実行する。
【0032】
図7(b)に示すようにゲート部102を切断した後、制御装置50は、第1刃具60を、第2刃具70から離間させるように第1モータ30を制御する(ステップS103)。すなわち、
図7(b)の矢印に示すように、第1モータ30は、第2刃具70から離間させるように、上下方向に沿って上側に第1刃具60を駆動(後退)させる。これにより、
図7(c)に示すように、第1刃具60は、切断位置よりも、上側に移動することとなる。その際、第2モータ40は駆動せず、第2刃具70は、停止したままとなっている。
【0033】
そして、制御装置50は、第2刃具70を、第1刃具60に接近させるように第2モータ40を制御する(ステップS104)。すなわち、
図7(c)の矢印に示すように、第2モータ40は、第1刃具60に近づくように、上下方向に沿って上側に第2刃具70を駆動(前進)させる。その際、第1モータ30は駆動せず、第1刃具60は、停止したままとなっている。これにより、
図7(d)の矢印に示すように、第2刃具70も、切断位置よりも、上方側に移動することとなる。
【0034】
次に、制御装置50は、第2刃具70を、第1刃具60から離間させるように第2モータ40を制御する(ステップS105)。すなわち、
図7(d)の矢印に示すように、第2モータ40は、第1刃具60から離間させるように、上下方向に沿って下側に第2刃具70を駆動(後退)させる。その際、
図7(e)に示すように、第2刃具70を、切断位置よりも、下側となるまで移動させる。このとき、第1モータ30は駆動せず、切断位置よりも上方側において、第1刃具60が、停止したままとなっている。
【0035】
そして、制御装置50は、第1刃具60を、第2刃具70に接近させるように第1モータ30を制御する(ステップS106)。すなわち、
図7(e)の矢印に示すように、第1モータ30は、第2刃具70に近づくように、上下方向に沿って下側に第1刃具60を駆動(前進)させる。その際、第2モータ40は駆動せず、第2刃具70は、停止したままとなっている。これにより、
図7(f)に示すように、第1刃具60及び第2刃具70は、切断位置よりも、下方側に移動することとなる。
【0036】
次に、制御装置50は、ゲート部102を切断してからステップS103~ステップS106の処理を所定回数繰り返したか否かを判定する(ステップS107)。つまり、ステップS107において、制御装置50は、切断後、第1モータ30及び第2モータ40が、第1刃具60及び第2刃具70を上下方向に往復移動させたか否かを判定している。
【0037】
この判定結果が否定の場合、制御装置50は、ステップS103以降の処理を再び実行する。なお、ステップS103~S106の動作中、第1刃具60及び第2刃具70は、第1ヒータユニット11及び第2ヒータユニット21により加熱された状態が維持されるようになっている。
【0038】
一方、ステップS107の判定結果が肯定の場合、制御装置50は、第1刃具60及び第2刃具70が離間するように、第1モータ30及び第2モータ40を駆動させる(ステップS108)。これにより、
図7(g)に示すように、制御装置50は、第1刃具60及び第2刃具70がそれぞれ所定位置に移動(後退)するまで、第1モータ30及び第2モータ40を駆動させる。その後、切断処理を終了する。
【0039】
上記実施形態によれば、以下に示す効果を有する。
【0040】
ゲートカット装置1は、上下方向に沿って第1刃具60を前進及び後退させる第1モータ30と、上下方向に沿って第2刃具70を前進及び後退させる第2モータ40と、を備え、第1モータ30及び第2モータ40は、第1刃具60と第2刃具70とを独立して駆動させるように構成されている。これにより、切断後、第1刃具60と第2刃具70を上下方向に沿ってともに往復移動させることが可能となる。また、第1刃具60及び第2刃具70のうちいずれか一方のみを移動させ、他方を停止させることや、移動速度をそれぞれ変更することが可能となる。これにより、切断面の位置を調整し、また、切断後に切断面を整えることが可能となる。
【0041】
制御装置50は、ゲート部102の切断後、第1刃具60及び第2刃具70を上下方向に沿って往復移動させるように第1モータ30及び第2モータ40を制御する。これにより、切断面の凹凸を削り取り、滑らかにすることが可能となる。
【0042】
制御装置50は、第1刃具60及び第2刃具70を上下方向に沿って往復移動させる場合、接近している第1刃具60及び第2刃具70のうちいずれか一方の刃具を、他方の刃具から離間(後退)させたのち、他方の刃具を接近(前進)させる動作を繰り返させるように、第1モータ30及び第2モータ40を制御する。このように動作開始のタイミングの違いにより、刃先61,71同士が衝突することを確実に防止することができる。
【0043】
第1刃具60及び第2刃具70は、加熱された状態で、切断後、往復移動するように構成されている。このため、小さな力で、切断面に形成された跡を切除し、切断面を整えることが容易にできる。
【0044】
制御装置50は、第1刃具60の動作と第2刃具70の動作をそれぞれ個別に設定して、刃先61,71の隙間位置、すなわち、ゲート部102の切断位置を調整している。このため、刃先61,71の隙間によって形成される跡の位置を上下方向において任意にずらすことができ、製品部103の品質に影響のない位置に変更することが可能となる。
【0045】
第1刃具60及び第2刃具70において、切断時に製品部103側に配置される内側刃面62は、刃先61側が根元63側に比較して製品部103に近くなるように上下方向(移動方向)に対して傾斜している。具体的には、内側刃面62は、上下方向に対して3度の傾斜角度を有している。これにより、切断後に、製品部103と内側刃面62との間に隙間が形成され、第1刃具60及び第2刃具70の熱により、切断面が溶け、凹凸が形成されてしまうことを抑制できる。
【0046】
内側刃面62及び外側刃面64がともに、長手方向に対して傾斜していると、傾斜に沿って、製品部103の側に食い込むように、刃先61,71が進んでしまい、まっすぐ切れない。そこで、製品部103側に配置される内側刃面62のうち、刃先61,71側の先端部分62aを、根元63側の根元部分62bに比較して、上下方向に対して平行に近くなるように構成した。より詳しくは、刃先61,71側の先端部分62aを、上下方向に平行となるように構成した。これにより、上下方向に沿ってきれいに切断することが容易となる。
【0047】
また、内側刃面62及び外側刃面64がともに、上下方向に対して傾斜していると、上下方向に往復移動させる際、切断面に刃先61,71が引っ掛かり、傷をつける可能性があるが、そのようなことを防止できる。
【0048】
刃先61,71における刃角αは、根元63側における刃角βに比較して、大きくなるように形成されている。これにより、切れやすく、刃先61,71を欠けにくくすることができる。
【0049】
制御装置50は、ゲート部102を切断する際、第1刃具60及び第2刃具70に加わるトルクが一定となるように第1モータ30及び第2モータ40のトルク制御を実行する。これにより、第1刃具60及び第2刃具70が過度に送り込まれることを防止でき、製品部103にクラック(ひび割れ)が生じることを防止できる。
【0050】
(他の実施形態)
上記実施形態の構成の一部を変更して、以下のような形態に変更することも可能である。
【0051】
・上記実施形態では、第1刃具60及び第2刃具70により、上下方向から挟み込むようにして切断したが、切断方向(対向方向、移動方向)は、任意の方向に変更してもよい。
【0052】
・上記実施形態において、ランナー部101、ゲート部102、製品部103、及び成型品100の形状は任意に変更してもよい。
【0053】
・上記実施形態では、第1刃具60及び第2刃具70を備えていたが、いずれか一方のみの刃具によって、切断してもよい。
【0054】
・上記実施形態において、刃先61,71において所定間隔の隙間を維持しつつ、第1刃具60及び第2刃具70を上下に動作させてもよい。
【0055】
・上記実施形態において、切断後に第1刃具60及び第2刃具70を往復移動させなくてもよい。
【0056】
・上記実施形態において、第1刃具60及び第2刃具70を駆動連結して、1つのモータによって、第1刃具60及び第2刃具70を連動させるように構成してもよい。
【0057】
・上記実施形態において、内側刃面62の先端部分62aが、上下方向に対して平行に構成されていなくてもよい。
【0058】
・上記実施形態において、刃角α,β、内側刃面62の傾斜角度γ、外側刃面64の傾斜角度、先端部分62aの傾斜角度を任意に変更してもよい。例えば、刃角αは、15~25度の範囲内で変更してもよい。刃角βは、刃角αよりも小さい角度であって、15~25度の範囲内で変更してもよい。内側刃面62の傾斜角度γは、外側刃面64の傾斜角度よりも小さい角度であって、1~5度の範囲内で変更してもよい。先端部分62aの傾斜角度は、0度~3度の範囲内で変更してもよい。
【0059】
・上記実施形態において、内側刃面62のうち、刃先61,71側の先端部分62aの上下方向における幅は、製品部103の長さよりも短ければ、任意に変更してもよい。この場合、先端部分62aの長さは、ゲート部102(切断面)の上下方向の長さよりも短いことが望ましい。また、先端部分62aの長さを、0.5mm~3.0mm程度の範囲で任意に変更してもよい。
【0060】
・上記実施形態の内側刃面62を、
図8(a)に示すように、根元63側に比較して、刃先61,71側が上下方向に対して平行に近くなるように、曲面状に構成してもよい。これにより、製品部103と内側刃面62との接触面積を小さくすることができる。
【0061】
・上記実施形態の内側刃面62において、
図8(b)に示すように、先端部分62aと根元部分62bとの間で段差を設けてもよい。この場合、先端部分62aを、根元部分62bに比較して製品部103の側に近くなるように構成すればよい。その際、根元部分62bは、上下方向に平行な平面にしてもよい。これにより、製品部103と根元部分62bとを確実に離間させることができる。
【符号の説明】
【0062】
1…ゲートカット装置、2…枠体、10…第1可動台、11…第1ヒータユニット、20…第2可動台、21…第2ヒータユニット、30…第1モータ、40…第2モータ、50…制御装置、60…第1刃具、61…刃先、62…内側刃面、64…外側刃面、70…第2刃具、71…刃先、100…成型品、102…ゲート部、103…製品部。