(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】金属製支柱の腐食状態調査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/04 20060101AFI20240729BHJP
G01B 17/02 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
G01N29/04
G01B17/02 B
(21)【出願番号】P 2020173615
(22)【出願日】2020-10-14
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】310020426
【氏名又は名称】有限会社渡辺製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 真知子
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-096678(JP,A)
【文献】特開2015-219020(JP,A)
【文献】特開2015-161533(JP,A)
【文献】特開2000-178955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
G01B 17/00-17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製支柱の腐食状態を調査する金属製支柱の腐食状態調査方法において、
前記金属製支柱が埋設される基礎部の表面である基礎部表面の前記金属製支柱周囲の一部又は全部に形成した調査・点検用空間を使用して、前記金属製支柱の埋設部分の内、前記基礎部表面との境目部分の腐食状態を調査する調査工程を備え、
前記調査・点検用空間は、窪み状又は溝状の形状で、且つ、深さは10mm以上で100mm以下であ
り、
前記調査・点検用空間を塞ぐ閉塞部材を設け、
前記調査工程では、前記調査・点検用空間から前記閉塞部材を外して前記金属製支柱の腐食状態を調査し、調査後に前記閉塞部材で前記調査・点検用空間を閉塞することを特徴とする金属製支柱の腐食状態調査方法。
【請求項2】
請求項1記載の金属製支柱の腐食状態調査方法であって、
前記調査工程では、目視又は金属の腐食度合を非破壊で測定するポータブル式の非破壊測定機で調査することを特徴とする金属製支柱の腐食状態調査方法。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2項記載の金属製支柱の腐食状態調査方法あって、
前記調査工程に先立って行われる前記調査・点検用空間を形成する形成工程と、
前記調査工程後に行われる前記調査・点検用空間を閉塞する閉塞工程と、を備えていることを特徴とする金属製支柱の腐食状態調査方法。
【請求項4】
請求項
3記載の金属製支柱の腐食状態調査方法あって、
前記形成工程では、前記金属製支柱が埋設される前記基礎部の表面を斫ることで前記調査・点検用空間を形成することを特徴とする金属製支柱の腐食状態調査方法。
【請求項5】
請求項1
又は請求項2記載の金属製支柱の腐食状態調査方法あって、
前記閉塞部材は、前記基礎部表面より上部側に突出し、前記金属製支柱側から外方に向かって下がるように傾斜した屋根部を備えていること特徴とする金属製支柱の腐食状態調査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、看板等の金属製支柱の腐食状態等を調査・点検する金属製支柱の腐食状態調査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、看板等の金属製支柱(以下、「支柱」という)の基礎部内の埋設部分の腐食状態等の調査・点検は、支柱の埋設部分の周囲の基礎部分を深く且つ広範囲に掘削した上で、点検者が目視を中心に行っている。
【0003】
図7は、このような従来の支柱の埋設部分の調査・点検の方法を説明する図である。
図7(a)に示すように、支柱100は地中101内に設けた基礎下部102及び基礎上部103からなる基礎部を設置する際に打ち込まれたアンカーボルト104に、ベースプレート105がアンカーナット106で固定されている。
【0004】
詳細には、基礎部は、最初に打設される基礎下部102と、基礎上部103に分かれており、支柱よりも深い位置に設置される基礎下部102と、支柱100に溶接されているベースプレート105がアンカーナット106で固定された後に打設される基礎上部103との二層になっている。
【0005】
支柱100のうち、基礎部(基礎下部102、基礎上部103)内の埋設部分の腐食状態等の調査・点検を行うに当たっては、先ず
図7(a)に示すように、基礎上部103を掘削した際に支柱100が倒壊しないようにするための複数の補強用支柱107やロープ等を、支柱100と基礎上部103の外側の地面108に架設する倒壊防止対策の作業を行う。
【0006】
次に、
図7(b)に示すように、支柱100のベースプレート105のところまで、即ち支柱100の埋設部分の周囲の基礎部分である基礎上部103及びその周囲の地面108を掘削する。支柱100のベースプレート105のところまで掘削したとしても、予め支柱100に倒壊防止対策を施しておくことで、倒壊のおそれはない。
【0007】
基礎上部103の深さは、支柱100の太さや高さによって異なるが、多くは100mm~300mm、場合によっては1000mmの場合もあり得る。基礎上部103の広さは、支柱100を中心にその直径は、多くは75mm~150mm、場合によっては200mm以上の場合もある。したがって、調査・点検のための掘削作業は元の基礎上部103よりも大規模となる。
【0008】
このように、従来の調査・点検の方法は、支柱100の埋設部分の基礎部の周囲を深く且つ広範囲に掘削する作業を行い、支柱100の埋設部分が外部から目視できる状態にした上で、点検者が先ず支柱100の腐食状態等を目視で確認する。次に、腐食度合を詳しく確認したい部位を、腐食状態の調査で一般的に使用されるポータブル式の超音波厚さ計や探傷計といった非破壊測定機により詳しく調査する。調査の結果、支柱100の修繕が必要な場合は、そのまま腐食状態等に応じた修繕作業を行うことになる。修繕作業としては、研磨、塗装、鉄板の溶接等が行われる。
【0009】
図7(c)に示すように、調査や修繕の作業が終了した後に、基礎上部103及びその周辺の地面108を埋め戻してより大きな基礎上部109が必要となる。詳細には、埋め戻す場合は、既存の基礎下部102の古いコンクリートと埋め戻しの際に使う新しいコンクリートとの密着性や安定性を考慮して、埋め戻した基礎上部109は元の基礎上部103の範囲より広く施工することが一般的に行われる。埋め戻す作業が終了しコンクリートの硬化が確認できたら、最初に架設した補強用支柱107やロープ等を撤去する作業を行い、調査・修繕が完了する。
【0010】
また、アンカー形式でない形状の基礎部の場合は腐食部分が確認されている部分全てが明らかになる所まで掘削する事が一般的であるため、アンカー方式と同じ掘削方法となる。これら調査・点検等に係る一連の工程は、支柱100を補強する補強用支柱107の架設作業に1日、基礎上部103の掘削作業に1~2日、調査と修繕の作業に1~3日、基礎上部109を埋め戻す作業に1日、補強用支柱107の撤去作業に1日掛かるとすると、調査・修繕作業には少なくとも5日間以上を要することになる。
【0011】
このように支柱100の埋設部分の調査を行うための一連の作業には、時間も費用も大きくかかり、その負担の多さから、危険な部位であると認識されながらも実際に行われる件数は少なく、その結果、腐食が進行してしまい修繕が出来ないレベルまで放置されてしまう例も多く、倒壊やそれに伴う事故へと繋がる虞があった。
【0012】
一方、非破壊検査技術は、日々性能が進化してきており、支柱の埋設部分の腐食状態を非破壊で検査する高度な技術が提案、実用化されてきている(特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2016-85035号公報
【文献】特開2017-181122号公報
【文献】特開2019-95427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1の金属管腐食状態評価方法は、SH超音波に基づいて評価対象部における全周長を測定する工程と、健全部と評価対象部の全周長を対比して前記評価対象部の腐食状態を評価する工程と、を有しており、評価対象部における全周長を測定する技術である。特許文献2の鋼製支柱の変状検査方法は、超音波検査装置により腐食(変状)に起因する反射エコーを取得し、波形データから解析用データを作成し、解析用波形データから、変状部の検査に不必要なノイズ成分を除去し、腐食度合いを算出する技術である。特許文献3の鋼管の検査方法は、電磁気センサを励磁コイルと検出コイルとから構成し、電磁気センサを被検査鋼管の所定の箇所に取り付け、励磁コイルに交流電流を印加して被検査鋼管の管軸方向に磁束を発生し、検出コイルの検出電圧により被検査鋼管の減肉状態を検出する技術である。
【0015】
ところで、支柱の基礎部内への埋設部分の内、基礎部表面との境目部分が最も注意すべき場所であることは知られている。支柱の基礎部との境目部分は、雨水やペットの排泄物の影響を直接受ける場所のためダメージを受け易く腐食が進行し易い場所であり、また、支柱の負荷を最も受ける場所でもあることから、支柱が倒壊する際の殆どはこの境目部分であるためである。
【0016】
また、腐食が原因で倒壊した支柱の基礎部内の腐食状態を分析したところ、基礎部表面との境目部分の腐食状態も、支柱根元側の腐食状態も大きな違いはなく、基礎部内全体として腐食状態が進行していたことが判明した。また、基礎部表面の境目部分の腐食状態よりも基礎部内部の腐食の度合いが大きい例は、発明者の事例としてまだ発見されていない。したがって、支柱の埋設部分の内、基礎部表面との境目部分の腐食状態を調査すれば、基礎部内全体としての腐食状態をある程度予想できることがわかってきた。
【0017】
この支柱の基礎部表面との境目部分の腐食状態を調査するには、従来は、
図7に示すように支柱の埋設部分の周囲の基礎部分を深く且つ広範囲に掘削した上で行うことから、修繕作業を行わないとしても時間も費用も大きく必要となるものであった。このため、支柱の最も注意すべき場所である基礎部表面との境目部分の腐食状態の調査を、簡易的に短時間で且つ安価に行うことができる方法が求められていた。
【0018】
しかし、特許文献1~3に記載されるような支柱の埋設部分の腐食状態を非破壊で検査する技術にあっては、基礎部分を掘削せずに腐食状態を検査・評価できることが記載されるものの、装置が高額である共に調査を実施する人に知識や資格等が求められることから、一般に普及していないのが現状である。
【0019】
本発明は、以上の点に鑑み、支柱の最も注意すべき場所である基礎部表面との境目部分の腐食状態を、簡易的に短時間で且つ安価に調査することができる金属製支柱の腐食状態調査方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
[1]金属製支柱の腐食状態を調査する金属製支柱の腐食状態調査方法において、
前記金属製支柱が埋設される基礎部の表面である基礎部表面の前記金属製支柱周囲の一部又は全部に形成した調査・点検用空間を使用して、前記金属製支柱の埋設部分の内、前記基礎部表面との境目部分の腐食状態を調査する調査工程を備え、
前記調査・点検用空間は、窪み状又は溝状の形状で、且つ、深さは10mm以上で100mm以下であることを特徴とする。
【0021】
かかる構成によれば、金属製支柱が埋設される基礎部の表面の金属製支柱周囲の浅いところ、具体的には、深さが10mm以上で100mm以下のところに形成した調査・点検用空間を使用して調査・点検を行う。調査・点検用空間が、基礎部の表面側の浅いところに設けられ且つ空間の体積が小さいため、調査・点検用空間の形成作業が容易であり、短時間の作業で行うことができる。従来のような倒壊防止対策のための作業も支柱の埋設部分の周囲の基礎部分を深く且つ広範囲に掘削する作業も不要となる。このため、本発明では時間もコストも大幅に削減することができる。さらに、金属製支柱の埋設部分の内、基礎部表面との境目部分の腐食状態を調査・点検すれば、基礎部内全体としての腐食状態を知ることができるので、金属製支柱が埋設される基礎部の表面の金属製支柱周囲の浅いところに形成した調査・点検用空間を使用して調査・点検を行うことで、簡易的に金属製支柱の腐食状態の調査・点検を確実に行うことができる。このように、支柱の最も注意すべき場所である基礎部表面との境目部分の腐食状態を、簡易的に短時間で且つ安価に調査することができる。
【0022】
[2]好ましくは、前記調査工程では、目視又は金属の腐食度合を非破壊で測定するポータブル式の非破壊測定機で調査することを特徴とする。
【0023】
かかる構成によれば、目視又は非破壊で測定するポータブル式の非破壊測定機で調査するので、簡易的に短時間で且つ安価に調査することができる。
【0028】
[3]好ましくは、前記調査工程に先立って行われる前記調査・点検用空間を形成する形成工程と、
前記調査工程後に行われる前記調査・点検用空間を閉塞する閉塞工程と、を備えていることを特徴とする。
【0029】
かかる構成によれば、形成工程で従来技術と比較して小さな調査・点検用空間を形成するだけであり、閉塞工程では小さな調査・点検用空間を閉塞するだけなので、簡易的に短時間で且つ安価に調査することができる。
【0030】
[4]好ましくは、前記金属製支柱が埋設される前記基礎部の表面を斫ることで前記調査・点検用空間を形成することを特徴とする。
【0031】
かかる構成によれば、基礎部の表面を斫るだけで調査・点検用空間を形成するので、簡易的に短時間で且つ安価に調査することができる。
【0036】
[1]好ましくは、前記調査・点検用空間を塞ぐ閉塞部材を設け、
前記調査工程では、前記調査・点検用空間から前記閉塞部材を外して前記金属製支柱の腐食状態を調査し、調査後に前記閉塞部材で前記調査・点検用空間を閉塞することを特徴とする。
【0037】
かかる構成によれば、閉塞部材を外すだけで調査工程に進むことができ、また調査後に閉塞部材で調査・点検用空間を塞ぐだけで済むので、簡易的に短時間で且つ安価に調査することができる。
【0038】
[5]好ましくは、前記閉塞部材は、前記基礎部表面より上部側に突出し、前記金属製支柱側から外方に向かって下がるように傾斜した屋根部を備えていること特徴とする。
【0039】
かかる構成によれば、閉塞部材は、基礎部表面より上部側に突出し、金属製支柱側から外方に向かって下がるように傾斜した屋根部を備えているので、雨等が降っても水が屋根部を伝って金属製支柱から離れた外側に流れるので、金属製支柱の根本を長期にわたって保護し、腐食を防ぐことができる。このため、調査も行い易く、簡易的に短時間で且つ安価に調査することができる。
【発明の効果】
【0040】
支柱の最も注意すべき場所である基礎部表面との境目部分の腐食状態を、簡易的に短時間で且つ安価に調査することができ、コスト面を考慮しても次の定期点検までの期間を短期間にする金属製支柱の腐食状態調査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の金属製支柱の腐食状態調査方法における調査工程を説明する図である。
【
図2】本発明の調査・点検用空間を説明する図である。
【
図3】本発明の調査・点検の全工程を説明する図である。
【
図6】さらなる実施形態の全工程を説明する図である。
【
図7】従来の調査・点検の方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は概念的(模式的)に示すものとする。
【実施例】
【0043】
図1に示すように、金属製支柱10は地面11に設けられた基礎部12に埋設している。金属製支柱10の腐食状態を調査・点検するため基礎部12の表面(基礎部表面)13と金属製支柱10との境目14の部分において、基礎部表面13を斫ることにより調査・点検用空間20が形成されている。この調査・点検用空間20は非破壊測定機40の先端部分41が配置できる広さを有する。調査・点検用空間20は、金属製支柱10の周囲の一部又は全部に形成されている。なお便宜上、調査・点検用空間20が金属製支柱10の周囲の一部に形成されたもので説明する。
【0044】
図2に示すように、調査・点検用空間20は、基礎部12の表面13と金属製支柱10との境目14を基準として、掘削用のノミや電動工具のサンダー等を用いて、丁寧に少量を斫ることで形成されている。
【0045】
従来の基礎部12を大きく掘削する場合は、電動用ピック等を使用するのが通例であるが、調査・点検用空間20は小さく、狭い空間であるため、通常使用する場合と同じ電動用ピックでは、破壊力が大きく金属製支柱10を傷つけるだけでなく、基礎部12の損傷も考えられる。その為、調査・点検用空間20は少量を斫ることが可能な手動のノミや電動工具のサンダーで、鋭く少量を切り取る方法を選択している。
【0046】
調査・点検用空間20の大きさは、金属製支柱10の一辺の長さLの同等以上の横幅Bと、横幅Bから非破壊測定機40の先端部分41が配置可能な調査・点検用空間の深さHと、先端部分41を操作して調査出来る調査・点検用空間の縦幅Wとで決められる大きさである。また、調査・点検用空間20は、底面21と、側面22、23、24、25とから形成されている。
【0047】
金属製支柱10の一辺の長さLは、主に75mm~200mmが一般的であるが、大きいものは200mm以上のものも使用されている。また、金属製支柱10の形状は円柱形や角柱形などがあるが、その様な場合でも、調査・点検用空間20を設けるにあたっては、調査・点検用空間20の横幅Bと縦幅W及び調査・点検用空間20の深さHに関しては所定の値であればよい。また、調査・点検用空間20は、窪み状又は溝状の形状で、且つ、深さHは10mm以上で100mm以下である。この調査・点検用空間20の形状は、非破壊測定機40の先端部分41を金属製支柱10に対して垂直に配置し、境目14部分の測定が可能となることを考慮して決めることができる。また、調査・点検用空間20の空間形状は、角柱状だけでなく、円柱状、半円柱状、多角柱状、湾曲した窪み形状などでもよく、深さHは10mm以上100mm以下で非破壊測定機40の先端部分41を配置して測定可能であれば形状は問わない。
【0048】
調査・点検用空間20は、前述した通りの省スペースであることから、従来の基礎部を掘削して点検や修繕を行う方法や非破壊測定機による腐食調査では大掛かりで手間と時間がかかるが、本発明は基礎部表面13との境目14部分の腐食状態を簡易的に短時間で且つ安価に調査することができる。
【0049】
本発明の実施例に係る調査・点検用空間20は、危険の大きい倒壊に対して最も重要とされている部位の基礎部12の表面13と金属製支柱10の境目14に対して直接、しかも小さいサイズで調査する簡易的な調査を対象としている。
【0050】
金属製支柱10の腐食度合いの調査については、現在は非破壊測機の開発が進んでいる中、基礎部12の掘削を行う理由として、基礎部12の表面13と金属製支柱10の境目14の腐食状況において、露出部分15に腐食が見られる場合でも埋設部分16(
図1参照)には、必ずしも腐食が達していない事例が多く見受けられたためである。それらの事から、金属製支柱10と基礎部12の境目14を目視することで、短時間で腐食の有無が確認出来ることに起因する。なお、金属製支柱10の下端部17は、基礎部12内に位置している。
【0051】
図3に示すように、(a)は金属製支柱10と基礎部12の表面13の境目14を基準に調査・点検用空間20を斫る基礎斫り部18を示したものである。また、(b)に示すように、基礎斫り部18を斫り、底面21と調査・点検用空間20の側面22、23、24、25によって調査・点検用空間20を形成する(形成工程)。(c)に示すように、斫って(掘削で)形成した調査・点検用空間20に非破壊測定機40の測定機先端41を移動させ、金属製支柱10と基礎部12の境目14に配置し、金属製支柱10に対して垂直になるよう当接させた状態で測定操作を行い、腐食の度合いを調査(測定)する(調査工程)。(d)に示すように、調査(測定)終了後に埋め戻し、埋め戻し閉塞部により閉塞する(閉塞工程)。
【0052】
このようにして、調査・点検用空間20を形成した時点で直ちに、腐食の有無が目視で点検できる。そして、目視で点検してより正確な調査が必要とされた場合、その腐食度合いは非破壊測定機40を使用し、数値により劣化のレベルを判断する。その場合でも腐食の部位が確定しているため、大がかりで高性能高度な機器は必要がなく、ポータブルの測定器で十分な測定精度を求めることができる。
【0053】
図4に調査完了後に調査・点検用空間20を塞ぐ(埋め戻す)方法を示す。(a)は、調査・点検用空間20を、基礎部12を補強する材料30(例えば、エレホン・化成工業株式会社製のマイルドスピリット)で埋め戻し、埋め戻し閉塞部30を形成する方法である。金属製支柱10の一辺あるいは二辺の調査でも腐食が認められない場合は修繕の必要がないため、(a)の方法にて埋め戻しを行う。一方、(b)は、金属製支柱10の周辺を全て浅く斫って(掘削して)調査・点検した後に、調査・点検用空間20を塞ぐ閉塞部材31を嵌めることで、調査・点検用空間20を閉塞する方法である。これにより、何度も斫る(掘削する)必要がなく、簡単に定期的に調査することも可能となる。
【0054】
金属製支柱10について、
図4(a)の露出部分15は、目視が可能な部分であるため定期的に調査することで的確な修繕を行っているが、本来であれば倒壊に対して最も危険な部位である境目14部分においても、むしろ定期点検が必要である。しかし、実際には露出部分15の調査・点検よりも金属製支柱10と基礎部12の境目14の部位の調査・点検が格段に少ない。その理由は作業に要する時間や費用が大きいことによるものである。また、大きな掘削を何度も繰り返すことは、それ自体が金属製支柱10や基礎部12に及ぼす影響もまた大きいリスクと成り兼ねない等の事情によるものである。
【0055】
図4(b)はこの点に注目し、一度斫って(掘削して)形成した調査・点検用空間20を何度使用しても金属製支柱10や基礎部12に損傷を与えない方法として考えた方法である。調査・点検用空間20を閉塞する閉塞部材31を設けたことを特徴とする。調査・点検を行う際には、形成工程において、閉塞部材31を調査・点検用空間20から取り除いて調査・点検用空間20を形成する。調査工程において、調査・点検用空間20を使用して腐食状態を調査・点検し、調査工程後の閉塞工程において、調査・点検用空間20に閉塞部材31を閉塞して調査・点検を完了するものである。
【0056】
閉塞部材31は、調査・点検用空間20を閉塞するための本体部32と、この本体部32の上部に形成される基礎部表面13より上部側に突出し、金属製支柱10側から外方に向かって下がるように傾斜した屋根部33とから構成される。屋根部33には、外方に向かって低くなるように傾斜する傾斜面34を備えている。
【0057】
(b)に示す閉塞部材31の形状は、閉塞部材31の切り離し面35の左右の二つを組み合わせる形状で、閉塞部材31の上部面36の上部が金属製支柱10と密着し、雨などの水分は閉塞部材31の傾斜面34を伝って基礎部12の表面13に流れ落ちる構造となっている。
【0058】
また、閉塞部材31の下部接地面(基礎部12との接地面)37と、この下部設置面に連続する挿入面38と、この挿入面38に連続し底面21に対向する閉塞底面39とは、調査・点検用空間20の溝に嵌め込まれることで、調査・点検用空間20の溝を埋めるだけでなく、金属製支柱10と基礎部12の境目14を保護する役目も担っている。なお、屋根部33の形状は、基礎部表面13より上部側に突出していれば、円柱状、角柱状、円錐形状、角錐形状等どのような形状であっても構わない。
【0059】
また、閉塞部材31が二分割になっているのは、次の調査・点検の際に取り外しが容易に出来るように考えられたためで、三分割、四分割などそれ以外の分割でもよい。
【0060】
次に他の実施形態について説明する。
図5に示すように、(a)は基礎斫り部18に調査・点検用空間20を形成する形成工程を示している。(b)は金属製支柱10の周辺全てを掘削している状態である(形成工程)。(c)は、(b)で確認した腐食部分を非破壊測定機40にて測定している状態である(調査工程)。このように、腐食を確認した部分のみを測定できることで調査結果の信憑性が増す。(d)は調査終了後に閉塞部材31を用いて、調査・点検用空間20の溝を埋める状態である(閉塞工程)。
【0061】
図5の(a)~(d)に示す金属製支柱の腐食状態調査方法において、金属製支柱10の周辺を全て掘削して調査・点検用空間20を設けることに加えて、埋め戻し工程を閉塞部材31による閉塞工程とすることにより、従来の調査方法と比較した場合、さらに負担を軽減することが可能となる。
【0062】
次にさらなる実施形態について説明する。
図3~
図5は、金属製支柱10が設置された後に、基礎部表面13と金属製支柱10と基礎部12の境目14を掘削して調査・点検用空間20を設けるものとしたが、
図6は、新規に金属製支柱10を設置する際に、同時に調査・点検用空間20を設ける方法を示している。
【0063】
図6に示すように、(a)は新規設置の図であり、(b)に示すように閉塞部材31を取り外すと調査・点検用空間20となる。(c)は金属製支柱10の腐食部位を非破壊測定機40にて測定(調査・点検)している状態である。(d)は測定(調査・点検)後に再び閉塞部材31にて調査・点検用空間20の溝を埋めた状態である。(e)は二分割の閉塞部材31のつなぎ目をコーキング材にて処理している閉塞部材31の合わせ面31aである。
【0064】
さらに(f)では閉塞部材31の全体をコンクリート用修復材で修復している状態である。閉塞部材31と金属製支柱10の設置面に、(e)のコーキングと(f)に示す閉塞部材31の表面31bとのヘラ50による修復により、基礎部12と閉塞部材31が一体化して見えることで、いたずらによる閉塞部材31の破壊を防ぐことや、金属製支柱10と基礎部12を保護することができる。
【0065】
次に以上に述べた金属製支柱の腐食状態調査方法の作用、効果を説明する。
本発明の実施例によれば、金属製支柱10が埋設される基礎部12の表面13の金属製支柱10周囲の浅いところに形成した調査・点検用空間20を使用して調査・点検を行う。調査・点検用空間20が、基礎部12の表面13側の浅いところに設けられ且つ空間の体積が小さいため、調査・点検用空間20の形成作業が容易であり、短時間の作業で行うことができる。従来のような倒壊防止対策のための作業も支柱の埋設部分の周囲の基礎部分を深く且つ広範囲に掘削する作業も不要となる。このため、本発明では時間もコストも大幅に削減することができる。さらに、金属製支柱10の埋設部分16の内、基礎部表面13との境目14部分の腐食状態を調査・点検すれば、基礎部12内全体としての腐食状態を知ることができるので、金属製支柱10が埋設される基礎部12の表面13の金属製支柱周囲10の浅いところに形成した調査・点検用空間20を使用して調査・点検を行うことで、簡易的に金属製支柱10の腐食状態の調査・点検を確実に行うことができる。このように、金属製支柱10の最も注意すべき場所である基礎部表面13との境目14部分の腐食状態を、簡易的に短時間で且つ安価に調査することができる。
【0066】
さらに、調査工程では、目視又は非破壊で測定するポータブル式の非破壊測定機40で調査するので、簡易的に短時間で且つ安価に調査することができる。
【0067】
さらに、調査工程では、非破壊測定機40を使用するときに、調査・点検用空間20に非破壊測定機40の測定部先端(先端部分)41を配置するだけなので、一人の作業者により簡易的に短時間で且つ安価に調査することができる。
【0068】
さらに、非破壊測定機40は、超音波厚さ計又は探傷計であるので、一般的に安価に入手するこができ、調査費用を安価にすることができる。
【0069】
さらに、形成工程で従来技術と比較して小さな調査・点検用空間20を形成するだけであり、閉塞工程では小さな調査・点検用空間20を閉塞するだけなので、簡易的に短時間で且つ安価に調査することができる。
【0070】
さらに、基礎部12の表面13を斫るだけで調査・点検用空間20を形成するので、簡易的に短時間で且つ安価に調査することができる。
【0071】
さらに、閉塞工程では、小さな調査・点検用空間20を埋め戻すだけなので、簡易的に短時間で且つ安価に調査することができる。
【0072】
さらに、基礎部12の表面13に予め調査・点検用空間20を形成することで、点検時には既に形成された調査・点検用空間20を使用できるので、簡易的に短時間で且つ安価に調査することができる。
【0073】
さらに、閉塞部材31を外し、調査後に閉塞部材31で調査・点検用空間20を塞ぐだけで済むので、簡易的に短時間で且つ安価に調査することができる。
【0074】
さらに、閉塞部材31は、基礎部表面13より上部側に突出し、金属製支柱10側から外方に向かって下がるように傾斜した屋根部33を備えているので、雨等が降っても水が屋根部33を伝って金属製支柱10から離れた外側に流れるので、金属製支柱10の根本を長期にわたって保護し、腐食を防ぐことができる。このため、調査も行い易く、簡易的に短時間で且つ安価に調査することができる。
【0075】
尚、実施例では、埋め戻し用のコンクリート又は閉塞部材として、エレホン・化成工業株式会社製のマイルドスピリットを使用したが、これに限定されず、埋め戻し可能であれば、モルタル、他のコンクリート、合成樹脂、防錆を有する金属等でもよい。基礎部12を補強する材料30としては、古い基礎部12との接着性が高く、長期に亘り安定した接着力を有する材料が望ましい。
【0076】
即ち、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は看板等の金属製支柱の腐食状態等を調査・点検する金属製支柱の腐食状態調査方法に好適である。
【符号の説明】
【0078】
10…金属製支柱、11…地面、12…基礎部、13…基礎部表面(表面)、14…境目、15…露出部分、16…埋設部分、18…基礎斫り部、20…調査・点検用空間、30…埋め戻し閉塞部、31…閉塞部材、32…本体部、33…屋根部、34…傾斜面、40…非破壊測定機、41…先端部分。