(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】情報処理装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 30/20 20180101AFI20240729BHJP
G16H 10/60 20180101ALI20240729BHJP
A61C 19/04 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
G16H30/20
G16H10/60
A61C19/04 Z
(21)【出願番号】P 2020192701
(22)【出願日】2020-11-19
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390011121
【氏名又は名称】株式会社モリタ東京製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100113310
【氏名又は名称】水戸 洋介
(72)【発明者】
【氏名】小川 和伸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 響子
【審査官】早川 学
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0235729(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111388125(CN,A)
【文献】特表2018-534050(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0129602(KR,A)
【文献】特開2012-203572(JP,A)
【文献】特開2014-091047(JP,A)
【文献】特表2010-511181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
A61C 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科の診療を行う患者の顔の映像を取得する映像取得手段と、
前記映像取得手段により取得された顔の映像に基づき、前記患者の歯科の診療についての状況を把握する状況把握手段と、
を備え
、
前記状況把握手段は、撮影日時が互いに異なる複数の顔の映像の類似度に基づき、前記患者の歯科の診療についての状況を把握する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記状況把握手段は、口を閉じた状態の顔の映像
であって撮影日時が互いに異なる複数の顔の映像の類似度に基づき、前記患者の歯科の診療についての状況を把握する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記状況把握手段は、
撮影日時が互いに異なる前記複数の顔の映像のうちの特定の部分の類似度に基づき、前記患者の歯科の診療についての状況を把握する請求項
1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
歯科の診療を行う患者の顔の映像を取得する映像取得手段と、
前記映像取得手段により取得された顔の映像
に映っている顔の特定部分の長さに基づき、前記患者の歯科の診療についての状況を把握する状況把握手段と、
を備え
、
前記状況把握手段は、撮影日時が互いに異なる複数の前記顔の映像の各々における前記特定部分の長さに基づき、前記患者の歯科の診療についての状況を把握する情報処理装置。
【請求項5】
前記状況把握手段は、前記顔の鼻背が延びる方向における、前記特定部分の長さに基づき、
前記患者の歯科の診療についての状況を把握する請求項
4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記状況把握手段は、把握した診療の状況を示す数値の出力をさらに行う請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
歯科の診療を行う患者の顔の映像を取得する映像取得機能と、
前記映像取得機能により取得された顔の映像に基づき、前記患者の歯科の診療についての状況を把握する状況把握機能と、
をコンピュータに実現させるためのプログラム
であり、
前記状況把握機能は、撮影日時が互いに異なる複数の顔の映像の類似度に基づき、前記患者の歯科の診療についての状況を把握する、
プログラム。
【請求項8】
歯科の診療を行う患者の顔の映像を取得する映像取得機能と、
前記映像取得機能により取得された顔の映像
に映っている顔の特定部分の長さに基づき、前記患者の歯科の診療についての状況を把握する状況把握機能と、
をコンピュータに実現させるためのプログラム
であり、
前記状況把握機能は、撮影日時が互いに異なる複数の前記顔の映像の各々における前記特定部分の長さに基づき、前記患者の歯科の診療についての状況を把握する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、患者情報に係る第1の情報を入力する第1の入力手段と、入力された第1の情報をデータベース上に第1の記憶として格納する第1の格納手段と、入力された第1の情報のうちの少なくとも最新の情報を表示する第1の表示手段と、第1の情報により特定される患者情報の分析に関する第2の情報を入力する第2の入力手段と、入力された第2の情報をデータベース上に第2の記憶として格納する第2の格納手段と、第2の情報を表示する第2の表示手段と、第2の情報に基づいて少なくとも最新の情報が得られるように処理する処理手段と、第1の情報を共有する共有手段と、を備えるシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
歯科における診療では、一般に、患者に対し、診療の状況の説明が行われる。この説明にあたり、診療の状況を客観的に示す情報があるとこの説明を行いやすくなる。
本発明の目的は、歯科の診療の状況をより客観的に把握できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと、本発明が適用される情報処理装置は、歯科の診療を行う患者の顔の映像を取得する映像取得手段と、前記映像取得手段により取得された顔の映像に基づき、前記患者の歯科の診療についての状況を把握する状況把握手段と、を備える情報処理装置である。
【0006】
ここで、前記状況把握手段は、口を閉じた状態の顔の映像に基づき、前記患者の歯科の診療についての状況を把握することを特徴とすることができる。
また、前記状況把握手段は、撮影日時が互いに異なる複数の顔の映像に基づき、前記患者の歯科の診療についての状況を把握することを特徴とすることができる。
また、前記状況把握手段は、前記複数の顔の映像の類似度に基づき、前記患者の歯科の診療についての状況を把握することを特徴とすることができる。
また、前記状況把握手段は、前記複数の顔の映像のうちの特定の部分の類似度に基づき、前記患者の歯科の診療についての状況を把握することを特徴とすることができる。
また、前記状況把握手段は、前記顔の映像に映っている顔の特定部分の長さに基づき、前記患者の歯科の診療についての状況を把握することを特徴とすることができる。
また、前記状況把握手段は、前記顔の鼻背が延びる方向における、前記特定部分の長さに基づき、当該患者の歯科の診療についての状況を把握することを特徴とすることができる。
また、前記状況把握手段は、撮影日時が互いに異なる複数の前記顔の映像の各々における前記特定部分の長さに基づき、前記患者の歯科の診療についての状況を把握することを特徴とすることができる。
また、前記状況把握手段は、補綴が行われた後の顔の映像と、当該補綴が行われた箇所に前記患者自身の歯が存在していたときの顔の映像又は当該補綴が行われた箇所に位置する歯に対する切削が行われる前の顔の映像とに基づき、前記患者の歯科の診療についての状況を把握することを特徴とすることができる。
また、前記状況把握手段は、把握した診療の状況を示す数値の出力をさらに行うことを特徴とすることができる。
また、前記状況把握手段は、前記顔の映像に映っている顔のうちの、鼻背を通って延びる直線を挟んで相対する2つの領域のうちの一方の領域に位置する第1の部分の位置と、他方の領域に位置する第2の部分の位置とに基づき、当該患者の歯科の診療についての状況を把握することを特徴とすることができる。
また、前記状況把握手段は、前記顔の映像に映っている前記顔を構成する要素のうちの、前記2つの領域のそれぞれの領域に位置する同じ要素の位置に基づき、前記患者の歯科の診療についての状況を把握することを特徴とすることができる。
また、前記状況把握手段は、前記顔の映像に映っている顔を構成する要素のうち、鼻背を通って延びる直線を挟んで相対する2つの領域のそれぞれの領域に位置する同じ要素の形状に基づき、前記患者の歯科の診療についての状況を把握することを特徴とすることができる。
【0007】
また、本発明をプログラムと捉えた場合、本発明が適用されるプログラムは、歯科の診療を行う患者の顔の映像を取得する映像取得機能と、前記映像取得機能により取得された顔の映像に基づき、前記患者の歯科の診療についての状況を把握する状況把握機能と、
をコンピュータに実現させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、歯科の診療の状況をより客観的に把握できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】情報処理装置のハードウエアの構成を示した図である。
【
図5】情報処理装置のCPUにより実現される機能部を示した図である。
【
図6】情報処理装置による処理の具体例を示した図である。
【
図7】過去映像、途中映像が表示された表示装置を示した図である。
【
図8】映像取得部が取得した映像の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態にかかる診療システム1の全体構成を示した図である。
同図に示すように、本実施形態の診療システム1には、歯科の診療に用いられる歯科用診療装置100が設けられている。さらに、この診療システム1には、コンピュータ装置により構成される情報処理装置200が設けられている。
なお、本実施形態では、歯科用診療装置100とは別に情報処理装置200が設けられている場合を説明するが、情報処理装置200を歯科用診療装置100に設置し、情報処理装置200が有する機能を、歯科用診療装置100に持たせてもよい。
【0011】
図2は、歯科用診療装置100の一例を示した図である。
図2にて示すこの歯科用診療装置100では、床面の上に、患者を下方から支持する歯科用の診療台2が設けられている。診療台2は、基台2a、基台2aにより昇降される座板2bを備える。さらに、診療台2は、背もたれ2cを有する。
背もたれ2cは、一端が座板2bに取り付けられ、この一端を中心に回転する。
さらに、診療台2には、背もたれ2cに取り付けられ患者の頭を支えるヘッドレスト2dが設けられている。また、診療台2には、患者の脚部を支持する脚部支持部2eが設けられている。
【0012】
また、歯科用診療装置100には、診療台2の脇に(診療台2の周囲に)、医師用のトレーテーブル3が設けられ、さらに、医師用のインスツルメントホルダ10が設けられている。さらに、診療台2を挟みトレーテーブル3の反対側には、アシスタント用のインスツルメントホルダ4が設けられている。
さらに、トレーテーブル3、インスツルメントホルダ10を支持する支持腕13が設けられている。
また、患者の口腔への光照射を行う歯科用照明装置90、歯科用照明装置90を支持するアーム6b、アーム6bを支持する支柱6cが設けられている。
【0013】
図3は、歯科用照明装置90の正面図である。
歯科用照明装置90には、光源90Aが設けられている。また、歯科用照明装置90には、光源90Aの他に、カメラ96が設けられている。
撮影手段の一部として機能するこのカメラ96は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子を含んで構成され、このカメラ96は、患者の口腔の撮影に用いられる。
【0014】
ドクター用のインスツルメントホルダ10(
図2参照)及びアシスタント用のインスツルメントホルダ4には、歯科用の診療用器具11(患者の診療に用いる診療用器具、インスツルメント)が抜差し自在に保持される(
図2では、アシスタント用の診療用器具11のみを図示)。
ドクター用の診療用器具11としては、例えば、エアタービンハンドピース、マイクロモータハンドピース、スケーラ、スリーウェーシリンジ、根管長測定器、根管拡大器、口腔内カメラを挙げることができる。
【0015】
また、アシスタント用の診療用器具11としては、例えば、患者の口腔内の唾液、血液、切削屑など(以下、「廃液」と称することがある)を吸引する吸引用器具20を挙げることができる。
なお、
図2では、インスツルメントホルダ4によって、吸引用器具20の一例としてのサクションシリンジ(バキュームシリンジ)21、サライバエジェクタ22が保持されている。
【0016】
また、診療台2の脇(周囲)には、患者がうがいに用いるコップ(不図示)に水を供給する供給装置5が設けられている。
供給装置5には、患者の口腔内から排出された廃液を受ける廃液受け部52、コップに対し水を供給するコップ用給水部53、清掃用の水を廃液受け部52に供給する清掃用給水部54が設けられている。
また、供給装置5の内部には、歯科用診療装置100の各部の制御を行う制御装置61が設けられている。
【0017】
図4は、情報処理装置200のハードウエアの構成を示した図である。
情報処理装置200は、いわゆるコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)201、ROM(Read Only Memory)202、RAM(Random Access Memory)203を備える。さらに、情報処理装置200は、ハードディスク装置などにより構成される情報記憶装置204を備える。また、情報処理装置200には、情報入力用機器205、および、表示装置206が設けられている。
【0018】
ROM202は、CPU201により実行されるプログラムを記憶する。プロセッサの一例としてのCPU201は、ROM202に記憶されているプログラムを読み出し、RAM203を作業エリアにして、プログラムを実行する。
ここで、CPU201によって実行されるプログラムは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスクなど)、光記録媒体(光ディスクなど)、光磁気記録媒体、半導体メモリなどのコンピュータが読取可能な記録媒体に記憶した状態で、情報処理装置200へ提供し得る。
また、CPU201によって実行されるプログラムは、インターネットなどの通信手段を用いて情報処理装置200にダウンロードしてもよい。
【0019】
情報入力用機器205は、マウスやキーボードやタッチパネルなどにより構成される。情報入力用機器205は、歯科医師などの操作者により操作され、操作者が入力する情報を受け付ける。
表示装置206は、液晶ディスプレイなどにより構成され、患者の歯科の診療についての各種の情報を表示する。
【0020】
図5は、情報処理装置200のCPU201により実現される機能部を示した図である。
情報処理装置200は、映像取得部211と、状況把握部212とを備える。これらの機能は、CPU201がROM202に格納されているプログラムを実行することで実現される。
映像取得手段の一例としての映像取得部211は、歯科の診療を行う患者の顔の映像(画像)を取得する。
【0021】
本実施形態では、患者の顔の映像(以下、「顔映像」と称する)が取得される。具体的には、本実施形態では、例えば、歯科医師が、デジタルカメラを用い、患者の顔を撮影することにより顔映像が取得される。
そして、本実施形態では、このデジタルカメラから、接続ケーブルや、SDカードなどの記録媒体を介して、情報処理装置200へ顔映像が提供される。そして、本実施形態では、情報処理装置200の映像取得部211が、この顔映像の取得処理を行う。
なお、顔映像は、歯科用照明装置90(
図3参照)に設けられたカメラ96を用いて取得してもよい。また、顔映像は、患者が有するデジタルカメラ、スマートフォン、タブレット端末を用いて取得してもよい。
【0022】
状況把握手段の一例としての状況把握部212は、映像取得部211により取得された顔映像に基づき、患者の歯科の診療についての状況を把握する。
より具体的には、状況把握部212は、口を閉じた状態の顔映像に基づき、患者の歯科の診療についての状況を把握する。
本実施形態では、上記のデジタルカメラ等によって顔映像が取得される際、患者の口が閉じた状態で、顔映像の取得が行われる。そして、状況把握部212は、口が閉じた状態の顔映像に基づき、患者の歯科の診療についての状況を把握する。
【0023】
図6は、情報処理装置200による処理の具体例を示した図である。
図6では、表示装置206に表示される表示画面の一例を示している。
本実施形態の状況把握部212は、撮影日時が互いに異なる複数の顔映像に基づき、患者の歯科の診療についての状況を把握する。本実施形態では、この複数の顔映像が、表示装置206に表示される。
図6の符号6Aで示す顔映像(以下、「過去映像」と称する場合がある)は、過去に撮影された顔映像を示し、
図6の符号6Bで示す顔映像は、符号6Aで示す顔映像よりも後に撮影された顔映像であって、診療の途中にある患者の顔映像(以下、「途中映像」と称する場合がある)を示している。
状況把握部212は、この2つの顔映像(過去映像、途中映像)に基づき、患者の歯科の診療についての状況を把握する。
【0024】
より具体的には、符号6Aで示す過去映像は、歯科医師による一連の診療が開始される前に取得された顔映像であり、符号6Bで示す途中映像は、この一連の診療の途中で取得された顔映像である。
より具体的には、符号6Bで示す途中映像は、歯が喪失した箇所に対して補綴が行われた後の顔映像を示している。また、符号6Aで示す過去映像は、この補綴が行われた箇所に患者自身の健全な歯が以前存在していたときの顔映像を示している。
言い換えると、符号6Aで示す過去映像は、歯が喪失する前の顔映像を示し、符号6Bで示す途中映像は、この歯が喪失した箇所に対して補綴を行った後の顔映像を示している。
なお、「補綴」とは、歯が喪失した箇所や歯の一部が失われた箇所に対して、クラウン、入れ歯(総入れ歯、部分入れ歯)(義歯)、インプラントなどの人工の歯を設置したり、ブリッジにより人工の歯を設置したりすることを指す。
【0025】
状況把握部212は、この2つの顔映像に基づき、患者の歯科の診療についての状況を把握する。より具体的には、状況把握部212は、この2つの顔映像の類似度に基づき、患者の歯科の診療についての状況を把握する。
より具体的には、状況把握部212は、歯が存在していた際の過去映像と、補綴が行われた後の途中映像との類似度を把握し、この類似度に基づき、患者の歯科の診療についての状況を把握する。なお、類似度の把握は、顔認証に関する公知の手法を用いて行えばよい。
【0026】
この処理例では、状況把握部212が、2つの顔映像の類似度を80%であると把握した場合を例示しており、状況把握部212は、この80%を、患者の診療の状況を示す数値として取得し出力する。そして、本実施形態では、この数値が、表示装置206に表示される。
ここで、本実施形態では、診療(治療)が終了に近づくほど、類似度が上がり、表示装置206に表示される値が100%に近くなる。
例えば、補綴が行われた部分の高さが、歯が存在していた際のこの歯の高さよりも高い場合、過去映像と途中映像とは異なるようになり、この場合、上記の80%のように、類似度が100%以外となる。
この場合、補綴が行われた部分が歯科医師によって削られる等の処置が行われる。この結果、過去映像と途中映像とが類似するようになり、表示装置206に表示される値が100%により近くなる。
【0027】
状況把握部212は、「80%」のように、診療の状況を示す具体的な数値を出力する。ここでは、類似度そのものが、患者の診療の状況を示す数値として出力された場合を例示している。
なお、これに限らず、状況把握部212は、把握した上記の類似度を補正し、補正した後の類似度により特定される値を、患者の歯科の診療についての状況として出力してもよい。
【0028】
具体的には、状況把握部212は、例えば、歯科の診療による要因以外の要因によって(例えば、患者の髪型の変更などの要因によって)、類似度が下がっているか否かを判断するようにする。
そして、状況把握部212は、歯科の診療による要因以外の要因によって類似度が下がっていると判断した場合は、類似度に加算値を加える補正を行う。そして、状況把握部212は、加算値を加えた後の類似度の値を、患者の歯科の診療についての状況として出力する。
【0029】
図6では、顔映像の全体に基づき、類似度を把握する場合を一例に示している。但し、これに限らず、顔映像の一部を構成する特定の部分の画像に基づき、類似度を把握してもよい。
より具体的には、例えば、歯科の診療の影響が出やすい、患者の口腔の周囲に位置する部分の画像や、鼻から下に位置する部分の画像などに基づき、類似度を把握してもよい。
また、状況把握部212は、特定の部分の画像に基づき、類似度を把握する場合、予め定められた部分の類似度を把握してもよいし、歯科医師などの指定者により指定された部分の類似度を把握してもよい。
【0030】
指定者により指定された部分の類似度を把握する場合は、例えば、
図6の符号6Xで示すように、指定者により領域の選択を行ってもらうようにする。
より具体的には、マウスなどの情報入力用機器205を操作者に操作してもらい、2つの顔映像(過去映像、途中映像)のそれぞれについて、領域の選択を行ってもらう。
そして、この場合、状況把握部212は、指定者により選択された領域内の画像同士の類似度を把握し、この類似度を基に、上記と同様、患者の診療の状況を把握する。
【0031】
顔映像の全体に基づき、患者の診療の状況を把握する場合(類似度を把握する場合)、上記の通り、変化しやすい髪型などの影響を受け、類似度が低下するおそれがある。
これに対し、本実施形態のように、顔画像の一部を構成する特定の部分同士を比較する場合、変化しやすい髪の部分などを比較の対象から除外でき、類似度の低下を抑えられる。
【0032】
図6では、抜歯を行った後に補綴を行う診療を行う場合において、顔映像を取得する場合を一例に説明した。
ところで、これ以外に、歯の診療としては、抜歯ではなく、歯の一部を切削した後に補綴を行う場合がある。
この場合は、一連の診療の途中で取得される途中映像として、切削を行った箇所に対して補綴を行った後の顔映像を取得するようにする。
【0033】
また、この場合、歯科医師による一連の診療が開始される前の過去映像として、歯に対する切削が行われる前の顔映像を取得する。
そして、この場合も、状況把握部212は、一連の診療が開始される前の過去映像と、一連の診療の途中における途中映像との類似度を把握し、この類似度に基づき、診療についての状況を把握する。
【0034】
また、
図6では、一部の歯について、抜歯や切削を行い、次いで、補綴を行う場合を説明したが、その他の診療(治療)として、全ての歯(下顎の全ての歯及び上顎の全ての歯の一方又は両方)を失った場合における総入れ歯(総義歯)の作成も挙げられる。
この場合は、歯が残存していたときの過去映像と、製作途中の総入れ歯を装着した状態における途中映像とを比較するようにする。
そして、この場合も、上記と同様、状況把握部212は、類似度に基づき、診療についての状況を把握し、この診療の状況についての情報を出力する。
なお、歯が残存していたときの過去映像としては、右上の奥歯、左上の奥歯、右下の奥歯、左下の奥歯の各々に歯が残存しているときの過去映像を用いることが好ましい。
ここで、歯を喪失したり歯の一部が欠損したりする要因としては、様々な要因が挙げられ、要因としては、例えば、う蝕(虫歯)、歯周病、外傷が挙げられる。補綴は、1つの歯のうちの切削等により一部が欠損している箇所や、歯の喪失により一部の歯がそもそも存在しない箇所に対して行われる。また、補綴は、総入れ歯のように顎全体に亘って行われる場合もある。
【0035】
〔第2の実施形態〕
上記では、顔映像の類似度に基づき、診療の状況の把握を行ったが、これに限らず、状況把握部212は、例えば、顔映像に映っている顔の特定の部分の長さに基づき、診療についての状況を把握してもよい。
より具体的には、この場合、状況把握部212は、撮影日時が互いに異なる複数の顔映像の各々における特定部分の長さに基づき、診療についての状況を把握する。
言い換えると、状況把握部212は、この場合も、過去映像、途中映像の各々における特定部分の長さに基づき、診療についての状況を把握する。
【0036】
より具体的には、状況把握部212は、例えば、顔の鼻背(鼻筋)が延びる方向における、特定の部分の長さに基づき、診療についての状況を把握する。
より具体的には、状況把握部212は、
図7(過去映像、途中映像が表示された表示装置206を示した図)に示すように、例えば、鼻根F1(両目の間に位置する箇所)と顎の先端F2との間に位置する部分の長さL1に基づき、患者の歯科の診療についての状況を把握する。
【0037】
過去映像は、一連の診療が開始される前の顔映像であって、健全な歯が存在していた際の患者の顔映像を示している。
また、途中映像は、一連の診療の途中における顔映像であって、作成された総入れ歯が装着された状態の患者の顔映像を示している。
本実施形態では、総入れ歯の作成を含む診療が行われる場合を例示しており、途中映像では、作成途中にある総入れ歯が装着された状態の患者の顔映像を示している。
【0038】
この例では、状況把握部212は、例えば、まず、過去映像について、符号7Aで示す部分の長さを把握する。すなわち、上記の通り、鼻根F1と顎の先端F2との間に位置する部分L1の長さを把握する。
また、状況把握部212は、入れ歯を装着した状態の途中映像について、符号7Bで示す部分の長さを把握する。すなわち、この場合も、鼻根F1と顎の先端F2との間に位置する部分の長さL1を把握する。
【0039】
なお、鼻根F1と顎の先端F2との間に位置する部分の長さL1の把握は、公知の顔認証技術を利用して行えばよい。具体的には、公知の顔認証技術を利用して、目や鼻などの顔を構成する要素を把握する。そして、把握したこの要素に基づき、鼻根F1や顎の先端F2を特定し、特定したこの鼻根F1と顎の先端F2との間に位置する部分の長さL1を把握する。
より具体的には、過去映像および途中映像の2つの顔映像のそれぞれについて、鼻根F1と顎の先端F2との間に位置する部分の長さL1を把握する。これにより、本実施形態では、状況把握部212が、2つの長さL1を把握することになる。
【0040】
そして、状況把握部212は、把握した2つのこの長さL1が一致する場合、例えば、100%という値を出力する。これにより、この場合、符号7Xで示すように、表示装置206には、この100%という値が表示される。この場合、歯科医師は、入れ歯の高さが患者に適合していることを確認する。また、この場合、患者も、自身の入れ歯の高さについての状況を把握する。
一方で、状況把握部212は、把握した2つの長さL1が一致しない場合、100%よりも小さい値を出力する。より具体的には、状況把握部212は、把握した2つの長さL1の差が大きいほど、100%から離れた値を出力するようにする。
この場合、歯科医師は、入れ歯の高さが患者に適合しておらず、入れ歯の高さの修正が必要であることを確認する。また、この場合も、患者は、自身の入れ歯の高さについての状況を把握する。
歯科医師は、自身の経験により、表示装置206における表示を見ないでも、入れ歯の高さが適切か否かを把握できるが、本実施形態のように、表示装置206に具体的な数値が表示されると、歯科医師は、自身の認識が確かなものであることを確認できるようになる。
【0041】
総入れ歯を新たに作成して患者が装着した場合に、この総入れ歯が高かったり、低かったりすると、上記の2つの長さL1が互いに異なるようになる。
そして、この場合、本実施形態では、表示装置206に、100%以外の値の数値が表示される。この場合、歯科医師や患者は、この数値を参照し、総入れ歯の高さが患者に合っていないことを確認する。
【0042】
なお、ここでは、総入れ歯の場合を説明したが、この第2の実施形態の処理は、総入れ歯以外の場合も適用できる。
具体的には、部分的な補綴が行われる場合であっても、この補綴が合っていない場合には、上記の2つの長さL1が互いに異なるようになる。
この場合も、この2つの長さL2が互いに異なることを把握することで、補綴が適合していないことを把握できる。
【0043】
また、上記では、「特定の部分」として、鼻根F1と顎の先端F2との間に位置する部分を一例に挙げたが、「特定の部分」としては、その他に、例えば、唇と顎の先端F2との間に位置する部分なども一例に挙げることができる。
また、その他に、例えば、一方の目尻と一方の口角との間に位置する部分なども一例に挙げられる。
上記のように部分的に補綴がなされる場合や、総入れ歯が装着される場合、目尻と口角との間に位置する部分の長さについても、この補綴や総入れ歯による影響を受ける。
過去映像におけるこの部分の長さと、途中映像におけるこの部分の長さとを比較することで、診療の状況の把握を行える。
【0044】
また、その他に、特定の部分の長さそのものを比較するのに限らず、特定の部分の長さと顔の他の部分(治療が行われてもその長さが変化しにくい部分(治療による影響を受けにくい部分))の長さとの比同士を比較して、診療の状況の把握を行ってもよい。
具体的には、例えば、特定の部分の長さと右目と左目との離間距離との比同士を比較して、診療の状況の把握を行ってもよい。
より具体的には、この場合、過去映像、途中映像の各々について、この比を把握するようにする。そして、この比を比較することで、診療の状況の把握を行う。
【0045】
〔第3の実施形態〕
第3の実施形態では、状況把握部212は、顔映像に映っている顔のうち、鼻背を通って延びる直線を挟んで相対する2つの領域のうちの一方の領域に位置する第1の部分の位置と、他方の領域に位置する第2の部分の位置とに基づき、患者の歯科の診療についての状況を把握する。
【0046】
図8は、映像取得部211が取得した映像の一例を示した図である。なお、この
図8では、途中映像のみを表示している。
この
図8では、鼻背を通って延びる直線SLを表示し、また、この直線SLを挟んで相対する領域である一方の領域R1および他方の領域R2を表示している。
状況把握部212は、この一方の領域R1に位置する第1の部分91の位置と、他方の領域R2に位置する第2の部分92の位置とに基づき、患者の歯科の診療についての状況を把握する。
【0047】
より具体的には、状況把握部212は、この第1の部分91の、直線SLが延びる方向における位置と、第2の部分92の、直線SLが延びる方向における位置とを比較する。
言い換えると、状況把握部212は、第1の部分91の、図中上下方向における位置と、第2の部分92の、図中上下方向における位置とを比較する。
そして、状況把握部212は、この比較の結果に基づき、患者の歯科の診療についての状況を把握する。
【0048】
より具体的には、この例では、状況把握部212は、途中映像に映っている顔を構成する要素のうち、一方の領域R1、他方の領域R2のそれぞれの領域に位置する同じ要素の位置に基づき、患者の歯科の診療についての状況を把握する。
より具体的には、この例では、一方の領域R1に位置する一方の口角の位置であって直線SLの延び方向における位置と、他方の領域R2に位置する他方の口角のこの延び方向における位置とに基づき、患者の歯科の診療についての状況を把握する。
【0049】
そして、状況把握部212は、一方の口角の位置と他方の口角の位置とが一致する場合、診療(治療)が終了したと判断する。言い換えると、状況把握部212は、補綴等の高さの調整についての処置は終了したと判断する。
そして、この場合、状況把握部212は、上記と同様、例えば、100%という数字を出力する。これにより、
図8に示すように、表示装置206に、この100%という数字が表示される。
【0050】
一方、状況把握部212は、一方の口角の位置と他方の口角の位置とが一致しない場合は、未だ診療が終了していないと判断する。
この場合、状況把握部212は、100%よりも小さい数値を出力する。より具体的には、状況把握部212は、一方の口角の位置と他方の口角の位置との差が大きくなるほど、数値が小さくなるように数値を決定し、この数値を出力する。
これにより、この場合は、表示装置206に、100%よりも小さい値が表示される。
なお、ここでは、患者の顔の左右のそれぞれに位置する口角の位置に基づき、診療の状況を把握する場合を一例に説明したが、その他に、例えば、患者の顔の左右のそれぞれに位置する目尻の位置や、眉毛の位置などに基づき、診療の状況を把握してもよい。
【0051】
また、その他に、状況把握部212は、例えば、途中映像に映っている顔を構成する要素のうちの、上記の2つの領域(一方の領域R1、他方の領域R2)のそれぞれの領域に位置する同じ要素の形状に基づき、患者の歯科の診療についての状況を把握してもよい。
具体的には、状況把握部212は、例えば、
図9(途中映像を示した図)に示すように、患者の顔の輪郭であって一方の領域R1に位置する輪郭98の形状と、他方の領域R2に位置する輪郭99の形状とに基づき、患者の歯科の診療についての状況を把握してもよい。
【0052】
より具体的には、この例では、状況把握部212は、一方の領域R1に位置し且つ一方の領域R1に位置する左頬71の横に位置する輪郭98の形状と、他方の領域R2に位置し且つ他方の領域R2に位置する右頬72の横に位置する輪郭99の形状とに基づき、歯科の診療についての状況を把握する。
より具体的には、状況把握部212は、この場合、左頬71の横に位置する輪郭98の形状と、右頬72の横に位置する輪郭99の形状との一致度に基づき、歯科の診療についての状況を把握する。
【0053】
より具体的には、状況把握部212は、この場合、左頬71の横に位置する輪郭98を、直線SL(鼻背を通って延びる仮想の直線SL)を対象軸として反転させた場合の、この輪郭98の形状と、右頬72の横に位置する輪郭99の形状との一致度に基づき、歯科の診療についての状況を把握する。
より具体的には、状況把握部212は、左頬71の横に位置する輪郭98を、直線SLを対象軸として反転させた場合のこの輪郭98を構成する各画素の位置(対象軸である直線SLと直交する方向における位置)と、右頬72の横に位置する輪郭99を構成する各画素の位置(直線SLと直交する方向における位置)との一致度を、各画素毎に得る。
【0054】
そして、状況把握部212は、各画素毎に得るこの一致度に基づき、歯科の診療についての状況を把握する。
具体的には、状況把握部212は、全ての画素の各々においてその位置が一致する場合、100%を出力する。この場合、上記と同様、表示装置206には、100%という値が表示される(
図9では不図示)。
【0055】
また、状況把握部212は、その位置が一致しない画素が存在する場合は、位置が一致しない画素の数や位置のずれの程度などに基づき、100%よりも小さい値を決定し、この値を出力する。
より具体的には、この場合、状況把握部212は、位置が一致しない画素の数が多いほど、また、位置のずれの程度が大きいほど、値が小さくなるように値を決定し、この値を出力する。この場合、表示装置206には、100%よりも小さい値が表示される(
図9では不図示)。
【0056】
また、上記の第2の実施形態、第3の実施形態の処理内容は、矯正についての診療(治療)にも適用できる。
第2の実施形態を、矯正についての診療(治療)に適用する場合は、一連の診療の途中で取得された顔映像であって、歯科矯正用の器具が装着されている患者の顔映像を、途中映像として取得する。
【0057】
また、第2の実施形態を、矯正についての診療に適用する場合は、上記と同様、状況把握部212が、この途中映像を解析し、特定の部分の長さを把握する。なお、第2の実施形態を、矯正についての診療に適用する場合は、過去映像は用いない。
また、第2の実施形態を、矯正についての診療に適用する場合は、歯科医師等の情報入力者が、情報入力用機器205を介して、予め、特定の部分の長さについての目標値を入力する。
【0058】
そして、この場合、状況把握部212は、把握した特定部分の長さと、情報入力者が入力した目標値とを比較することで、診療の状況を把握し、さらに、診療の状況を示す具体的な数値を出力する。さらに、この数値が、表示装置206に表示される。
この場合、把握した特定部分の長さが目標値に近いほど、表示装置206に表示される値が100%に近くなる。
ここで、この数値が100%から大きく離れ、矯正治療が未完了である場合は、歯科矯正用の器具が患者の口腔に装着された状態が継続され、矯正治療が継続される。
【0059】
また、第3の実施形態を、矯正についての診療(治療)に適用する場合は、この場合も、一連の診療の途中で取得された顔映像であって、歯科矯正用の器具が装着されている患者の顔映像を、途中映像として取得する。
また、第3の実施形態を、矯正についての診療に適用する場合は、上記と同様、状況把握部212が、途中映像を解析し、例えば、上記の2つの領域(一方の領域R1、他方の領域R2)の各々に位置する、同じ要素の各々の位置や同じ要素の各々の形状を把握する。
【0060】
そして、状況把握部212は、この同じ要素の位置同士や、同じ要素の形状同士を比較することで、診療の状況を把握する。さらに、状況把握部212は、診療の状況を示す具体的な数値を出力し、この数値が、表示装置206に表示される。
ここで、この実施形態では、同じ要素の位置が近いほど、また、同じ要素の形状が近いほど、表示装置206に表示される値が100%に近くなる。
【0061】
矯正の治療を受ける患者は、表示装置206に表示されるこの値を参照することで、診療の状況を、より客観的に把握できる。より具体的には、患者は、例えば、数値が100%に近い場合は、矯正治療が終了に近いことを把握でき、数値が100%に満たない場合は、矯正治療が未完了であることを把握できる。
矯正治療が未完了である場合は、上記の通り、歯科矯正用の器具が患者の口腔に装着された状態が継続され、矯正治療が継続される。
【符号の説明】
【0062】
91…第1の部分、92…第2の部分、98…輪郭、99…輪郭、200…情報処理装置、211…映像取得部、212…状況把握部、R1…一方の領域、R2…他方の領域